Weekly Recommendation Pillow Queens 「Leave The Light On」



Pillow Queens

 

ピロー・クイーンズは、アイルランド・ダブリンで2016年に結成されたインディー・ロックバンド。

 

バンドは、二人のリード・ボーカルのSarah Corcoran,Pamela Connolly,ギタリストのCathy McGuiness,ドラマーのRachel Lyonsで構成されている。ピロー・クイーンズは、バンドとして面白い特徴を持つ。コーコランとコノリーの楽器演奏の役割は、どちらがボーカルを務めるかによって流動的に変化する。リードボーカルをコーコランが担当する場合、コーコランはリズムギターを演奏し、コノリーはベースを演奏する。一方、コノリーがリード・ボーカルを務める場合、その逆となり、コノリーがリズムギターを演奏し、コーコランがベースを務める。


ピロー・クイーンズの叙情的な楽曲性は、英国、アイルランドで軒並み高い評価を受けている。このバンドの音楽性については、アイルランドのカソリック信仰、及び、バンドメンバーがLGBTを公言していることに少なからず影響があるという指摘もなされている。イギリスの大手音楽メディア”NME”はこのバンドについて、「クイアネスの交差点を探求する」と述べている。また、イギリスの大手新聞”The Gurdian”は、「性別が反対の条件で一生を過ごすとしても、前向きな社会変化に適用しようとするバンドの心理的な挑戦を大いに讃えたい」と最大の賛辞を送っている。

 

2020年、ピロー・クイーンズはファースト・アルバム「In Waiting」をリリースし、デビューを飾った。アイルランドの新聞”Irish Times"は、この作品に「感動的な傑作」という高評価を与えている。最新作となる通算二枚目のLP「Leave The Light On」は、2022年4月1日にリリースされた。

 

 

 

 

「Leave The Light On」 

 
 
Royal Mountain Records  4/1,2022

 

 

 

Tracklisting

 

1.Be By Your Side

2.The Wedding Band

3.Hearts&Minds

4.House That Sailed Away

5.Delivered

6.Well Kept Wife

7.No Good Woman

8.Historian

9.My Body Moves

10.Try Try Try


今回、ダブリンのピロー・クイーンズは、二枚目のフルアルバム「Leave The Light On」を制作するために、内省に目を向けています。今日の世界において、内面に目を向けることはかなり勇気のいることだと言えるでしょう。

 

ダブリンのピロー・クイーンズは、2021年の春に、「Leave The Light On」のレコーディングを行っています。3ヶ月間、ソングライティングを行い、その後、スタジオ入りし、前作「In Waiting」で共同制作を行ったTommy McLaughinと共にアルバム製作を行いました。レコーディング作業については迅速に進み、アルバムとしてコンパクトに纏められた作品が生み出されました。

 

「これは、孤独的な記録であり、あなたが一日を消化する中で、さながら静かに車線変更をする深夜のドライブのような独特な感覚を引き起こすであろう作品です。孤独を反射し、瞑想を行うための温かい空間を提示している」と、発売元のロイヤルマウンテンはプレスリリースにおいて、この作品について述べており、さらに作品のコンセプトについて「孤独であることは、必ずしも一人であるとは限らない」と説明しています。

 

全体の作風としては、一曲目の「Be By Your Side」に顕著であるように、ポピュラー・ミュージックの色合いを見せながらも、そこには、インディーロックバンドらしい抜けさがなさも込められている。特に、ギターの演奏については、苛烈なノイズ性をにじませる場合もあって、単なるポピュラー音楽と断じて聴くような作品ではないかもしれません。ピロー・クイーンズのバンドアンサンブルとして生み出される音の裏側に世界には、内省的な世界がひろがり、そこにはまた、叙情詩のような表現性や哲学性も、音楽の中にはっきりと読み解くことも出来ます。

 

今回のピロー・クイーンズの二作目のアルバムは、表面的には、デビュー当時のセイント・ヴィンセント、U2のようなキャッチーで清涼感あふれる印象を放つ楽曲が収録されています。しかし、よく聴きこむと、このアルバムには底知れない奥深い精神的な世界が満ち広がっている。外側の世界よりも内的な世界のほうが無限の神秘的な空間が広がっていることを、このバンド、ピロー・クイーンズのアルバムは聞き手に発見させてくれるのです。

 

「最初のレコードである2020年の「In Waiting」 が成功した後」と、ロイヤル・マウンテン・レコードはプレスリリースを通じて述べています。

 

「ピロー・クイーンズは、さらに大きな会場やフェスティバルで演奏するようになり、バンドのメンバーは、ようやくフルタイムのプロミュージシャンとなりました。ほとんどのアーティストが商業的な道のりを歩む過程で、内省的な個性やキャラクターを失っていく中、ピロー・クイーンズは過去の事例とは真逆のアプローチを図っている。バンドのキャリアの中で、最も、内面に焦点を当てたリリースとなるはずです」 

 

さらに、リリース元のロイヤル・マウンテン・レコードは、以下のように「Leave The Light On」の作風についてきわめて的確に捉えていますので、それを以下に御紹介し、今回のレビューを締めくくらさせていただきます。

 

「このレコードは、バンドにとって音の出発点となるだろう作品です。ポピュラー音楽のように巨大に聞こえますが、柔らかさ、親密さの両面を持ち合わせている。それは、このバンドの二元性を象徴するものです。今回の作品は、エリザべス・ビショップ(1911-1979 編注:アメリカ合衆国の詩人で、ピュリッツァー賞の詩部門と全米図書館賞の栄冠に輝いている)の詩、そして、平凡で日常的な生活を通して生み出された作品であり、多くに人にとって、自らの考えと向き合うために一人でいる時間に、ヘッドフォンを通して、じっくり聴くことが出来るはずです」

 

(Score:81/100)

 

 

 


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