Weekly Recommendation  Alvvays 『Blue Rev』

 

 

 

Label: Polyvinyl/P-Vine

 

Release:  2022年10月7日


 

Official-order

 

 

 

Review

 

 

 カナダ・ トロントを拠点に活動するインディーロックバンド、アルヴェイズは、2014年にリリースされたセルフタイトルアルバムに収録されている、大学卒業後の世代の若者の声を代弁した「Archie,Marry Me」で一躍、注目を浴びるに至った。その後、リリースされた2ndアルバム「Antisocialites」も好評を博し、カナダ国内のポラリス音楽賞にもノミネートされています。

 

続く、3rdアルバム「Blue Rev」は五年ぶりのアルバムとなる。なぜ、これほど長い期間を擁することになったのか? それは、レコーディングの最初期には多くの障壁がバンドの前に立ちはだかったことによる。多くのファンが知っていることではあるが、モリー・ランキンのデモテープが盗まれたり、地下のスタジオが洪水に見舞われたりと散々だった。もちろん、パンデミックの国境封鎖もそのひとつで、レコーディングが遅遅として進まなかったのも頷ける。こんなことが起きれば、普通なら嫌になりそうなのだけれど、しかし、意外に、フロントパーソンのモリー・ランキンは、これらの難事に対し、あっけらかんと対処している。人生という荒波を乗りこなすには、こういった一種の豪放磊落な性質が、時にはぜひとも必要となってくるのでしょう。

 

2021年10月、改めてバンドは、カナダ人のプロデューサーのショーン・エヴェレットとLAに場所を変え、レコーディングを開始する。そして、このアルバムの制作を急ピッチで仕上げたという。どのような作品でも同じことですが、出来上がった作品を聴くのは、一瞬のことだとしても、その背景にある出来事が作品には反映され、そして、製作者の実体験がその作品に(本人たちが否定するとしても)何らかの形で表れてくるものです。そして、このアルヴェイズの三作目は、アルバム全編を聴き通した時に、スピード感のある作品だという印象を受けます。

 

もちろん、これまでのジャグリーなインディー・ポップ、そして、My Bloody Valentineのようにシューゲイザー寄りのアプローチ、さらに、このバンドの最初期からのエヴァーグリーンな音楽性の要素などなど、一作目、二作目のバンドとしての成果をしっかり踏まえたアルバムとなっている。ところが、二作目とは何かが異なっています。

 

一体、それは何なのか?? それは、バンド自体の音楽性の変化よりも、モリー・ランキンのヴォーカルスタイルの微細な変化、モデルチェンジにあるように思える。前作まで、このヴォーカリストは少なくともインディーロックバンド内のシンガーという役割を十二分に果たしていましたが、この作品からバンドには収まりきらない圧倒的な存在感が現れている。モリー・ランキンのボーカルは、以前よりも抒情的で、さらにエヴァーグリーンな雰囲気を醸し出している。これは紆余曲折あったにせよ、三作目にチャレンジしたバンドのみに与えられる収穫をカナダ・トロントのオールヴェイズはこのアルバムで大いに享受しているのです。


先週も同じようなことを述べましたが、バンド、ひいては、このボーカリストの音楽に対する喜びが凝縮されたのがサード・アルバム「Blue Rev」の本質であり正体です。それは、曲のドライブ感、パンキッシュなサウンドアプローチにより、アルバムの序盤から中盤にかけて加速していくようにも感じられる。始めこそ遅かったが、エンジンをかければ、このバンドは、誰よりも速く、誰よりも遠くへリスナーを運んでみせてくれる何とも頼もしい存在なのです。

 

本作には、ハイライトが幾つもある。それはバンドのたどってきた軌跡のようなものが反映されているとも言え、しっかりと聴きこまなければ、その全容を把握することは難しそうな作品です。オリジナル・シューゲイズの要素を受け継ぎ、このバンドらしい音楽性のひとつ、Nu-Gazeとして昇華させた「Pharmacist」、「Easy On Yoru Own?」、その他にも、村上春樹の小説にインスピレーションを受けた「After The Quake」をはじめ、インディーロックバンドらしからぬ、アンセミックなポップソング、そして、アリーナで演奏されるとシンガロングを誘うようなポップ・バンガーも収録されています。その他、メロウなポップソング、ローファンに触発された楽曲も中盤の展開を強固にしており、バラエティに富んだ世界観を体験することが出来るはずです。

 

特に、オールヴェイズのバンドとしての進化を示しているのがアルバムの終盤に収録されている「Belinda Say」ではないでしょうか。ここでは、このバンドの最初期からの特徴であるエバーグリーンな性質を受け継いだポップ・バラードが提示されていますが、それはショーン・エヴェレットのマスタリングの手腕により、クオリティの高い楽曲に引き上げられており、圧倒されるものがある。アルバムを聞き終えた後には、”アルバムを聴いた”という実感がある。きっと、それは、全14曲が細部まで丹念に作り込まれており、それらが、LAのレコーディングにおいて一気呵成に演奏されているため勢いがあるからなのでしょう。


米国、英国を始め、国外でも評価が高まっているオールヴェイズでありますが、この勢いに満ちたパワフルな作品『Blue  Lev』を聴くかぎりでは、今後、さらにワールドワイドな活躍が期待出来るかもしれません。

 

 

 84/100

 

 

Weekend Featured Track 「Easy On Your Own?」



0 comments:

コメントを投稿