フィールド・レコーディングの初心者向けガイド これから録音に挑戦する人のために


フィールドレコーディングを行うミュージシャン、Chris Watson

 

フィールドレコーディングとはいうのは文字通り、屋外の自然の中にマイクを立て、それを録音する手法のことです。上掲した写真を見ると分かる通り、そんなに気軽にできるものではなく、プロフェッショナリティーと体力と忍耐が必要とされます。音楽でもよく使用される場合があり、アンビエントを始めとするエレクトロニック、最近ではポピュラーミュージックやインディーロックで使用される場合もあるようです。  


主要な効果としては音楽そのものにナラティヴな試みを取り入れられることや、楽曲に映像的な効果やメタ構造を生み出すことが出来ます。外側の風の音や、鳥の声、虫の鳴き声、それから水の流れの音等、録音する内容によって、その音響効果はまったく異なります。以前は、AppleのLogic Studioのサウンドループに標準的に付属しており、実際にSonic Youthは『Daydream Nation』で飛行機のパイロットの無線の声やエンジンの音を取り入れたりしています。

 

現在のポピュラー・ミュージックでは、録音そのものの他に効果音(SE)を導入する場合が多く、これらはプロのプロデューサーにより導入されるため、高品質のサウンドが提供されますが、フィールドレコーディングを行う際には、風や外気音のノイズを軽減する必要がありますし、さらに意図したものとは別の音声が録音されてしまうケースもある。つまり、簡単にマイクを立てて録音すれば良いというものではなく、あまりミックスやマスタリング、そして録音機材に詳しくない方が挑戦すると、思うように意図する録音が出来ないケースもあるようです。

 

機材のピックアップについては、録音の専門家や、あるいは専門のショップで質問してもらいたいと思いますが、今回フィールドレコーディングをどのような段階を踏んで行うのかについて大まかにご紹介します。

 

フィールドレコーディングの定義

 


フィールドレコーディングとはスタジオの外で現実的な環境のもと、自然に発生するサウンドをマイクロフォンで拾うことを意味します。

 

それらの音のスペクトルの中には、様々なものがあり、森林や都市環境といった対極にある雰囲気から、他の珍しい音響に至るまで、非常に広汎です。意図的に制作されたスタジオの録音とは異なり、何が録音されるのかは、実際に行ってみるまでは分からないというおもしろさもあるようです。つまり、フィールドレコーディングは多種多様な場所のユニークな音響を録音することを意味しているわけです。

 

そもそもこの録音技術は、音楽にとどまらず、様々なシーンで活用されています。芸術、科学研究、メディア制作等、広汎なシーンで使用されています、もちろん音楽的なプロジェクトとしても使用することが可能で、録音されたサウンドスケープから音楽的な基礎を作り上げられる。フィールドレコーディングは録音した後に、様々な音響効果を及ぼすことも出来ます。科学的な観点からもフィールドレコーディングは様々な環境をテクストにする手助けをしています。


 

 ・録音に必要な機材

 

 

フィールドレコーダー

 



フィールドレコーディングを行うときに不可欠となるのが、フィールドレコーダーと呼ばれるオーディオレコーダーの一種です。これらは屋外の環境で高品質のオーディオをキャプチャするように設計されたデバイスです。これらのデバイスには、ステレオマイクが内蔵され、屋外のあらゆる種類のサウンドを録音するのに適しています。特に、この機材で有名なのはTescamがあります。手頃な価格で使いやすいと評判で、Tascam DR-05Xを始めとするデバイスは、初心者にとっても最適となりそうです。

 

これらの専用機材に加えて、スマートフォンのようなデバイスでも録音を行うことが可能です。アプリストアでは無償で録音のAppが提供されている場合がありますので、ぜひ探してみて下さい。高品質のオーディオデバイスや指向性マイクに比べ、ノイズを拾いやすく、外気のザーッという音を拾ってしまう欠点こそありますが、本録音の前の仮録音として、どのような感じになるのかを掴むのに最適です。もちろんその後のポストプロダクションでこれらのサウンドに磨きをかけることも可能でしょう。

 

さらに高性能な製品を求める場合は、Zoomを使用することが出来ます。Zoom H4n Proを始めとするフィールドレコーダーには外部マイク用のXLRの出力があり、録音時に役立つ可能性があるでしょう。サウンドデバイスでは、プロのメディア業界でもよく使用されている、Sound Device Mix Ore-6 Ⅱなども有名です。最大8トラックが付属しており、映画製作でも使用されることがあるようです。

 

フィールドレコーダーは基本的にサンプルレート 44.1k Hzの24ビットWAVが使用されるのが一般的です。 ファイルの容量が大きくなるという欠点があるものに、高品質の音でファイルを書き出すことが可能です。

 

マイクロフォン 



フィールドレコーダーにマイクは標準的に装備されてはいるものの、別のマイクが必要になるケースもあるようです。追加のマイクは、特定の音をキャプチャするために必要となり、正確な録音を行うためにも不可欠です。

 

たとえば、ショットガンマイクには極性パターンの高い志向性があり、目の前の音を正確に拾うように設計されているので、フィールドレコーディングの際に親しまれています。さらにこのマイクは多く場合、内蔵されたマイクよりも優れた音質を提供します。二種のマイクを使用することは思惑通りの録音を行うために不可欠となるかもしれません。

 

たとえば、RODEは低価格帯ながら、ショットガンマイクの高品質のクオリティーを提供しています。完全な周波数の応答、及びノイズ軽減を備えたプレミアムコンデンサーマイク、NTG--1は初心者にとってはおすすめとなるでしょう。理想を言えばノイマンがおすすめですが、高価なので、初心者向きではありません。


 

ヘッドフォン

 


録音を行う時にもう一つ不可欠なのは、ヘッドフォン。どのように音が録音されたのかを確認するために使用します。フィールドレコーディングの録音に最適な種類を選択することが重要となるでしょう。

 

フィールドレコーディングで使用されるヘッドフォンは、外側の音との分離のためにクローズドバックする必要があり、フラットな周波数の出力を特徴とする製品がおすすめとなります。(iPhoneのライトニングやBluetooth接続のイヤホンなどはほとんどフラットでは出力されず、ゲインが出て、派手な音になります)これによって特定の周波数を増強させることなく、自然なサウンドを聞き取ることが出来るようになります。マスタリングの際には必ずフラットな音域が出力されるヘッドホン、あるいは専用のスピーカーで出音を確認してください。


つまり、具体例は挙げませんが、フィールドレコーディングでは脚色のある製品ではなく、リアルな音が聞き取れるヘッドフォンを選んで使用する必要がありそうです。ゲインが出るヘッドフォンは使わないのが最善です。Beyer(ベイヤー)のDTRシリーズが良いかも??



オーディオソフトウェア



フィールドの録音を終えた後、音源ファイルを編集し、ラップトップなどに書き出す必要があります。オーディオ編集ソフトウェアは、波形のトリミングや強化、全般的な編集作業が可能であるため、マスタリングソフトと合わせて必要になってくるでしょう。


編集作業の種類によっては無償のAudiocityや、Logic Studio、そしてプロ御用達のPro Tools等の有償のソフトウェアを使用するケースも考えられます。


音源そのものの他に映像も同期させたいという場合は、フィールドの録画の編集するために適した広汎なツールが用意されています。例えば、AbletonやReaperのようなソフトウェアは、幅広いオーディオ編集ツールとサウンドデザインを制作するために最適となるかもしれません。より低コストで編集したいと言う場合は、AppleのGaragebandを使用するのもありかもしれません。

 

フィールド録音を編集するには必要となるツールは、イコライザー(EQ)、ノイズリダクション、及び、音の圧縮を行うためのリミッターやコンプレッサーです。これらはLogic Studioなどにも標準装備されていますが、よりプロフェッショナルなものを求めるなら、WAVESやアナログの機材も必要になるでしょう。


これらのプラグインはサウンドそのものを洗練させる効果があり、不要な音を除去するために不可欠となります。また、音に艶を出すためにリバーブとディレイの導入も考えると最高の音質になるかもしれませんよ。

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