TRENDSは、提携レーベルからご提供いただいたリリース情報を中心に、J-POPの注目のシングルをジャンルレスに紹介するというコーナーです。
3月は渋谷系の伝説的なソングライター、カジヒデキの新作アルバム『Being Pure At Heart−ありのままでいいんじゃない』のリリースが発表され、タイトル曲が公開されたほか、Luby SparksのYeah Yeah Yeahsのカバーソングもリリース。注目は、Space Showerの新星、tiger bae。”FLAU”からミステリアスなエクスペリメンタルポップアーティストも登場しています。アルバムのシングルカットも含めて、下記よりJ-POPの注目曲を改めてチェックしてみて下さい。
カジヒデキ 「Being Pure Heart -ありのままでいいんじゃない」
平成時代の渋谷系の伝説的なシンガーソングライターに挙げられるカジヒデキ。
5年ぶりとなるアルバム「Being Pure Heart -ありのままでいいんじゃない」のリリースを発表した。アルバムは今月24日に発売予定。アルバムに関しては、北欧で録音され、渋谷系の重要な音楽性を司るギターポップやネオアコースティックへの原点回帰を果たした作品となる。
先行公開されたタイトル曲は、アーティストのプレスリリースのときに言葉に違わず、平成時代のJ-Popの核心を捉え、渋谷系の重要な特徴である親しみやすいメロディラインが展開される。シングルを聴くと、平成時代の音楽がどのようなものであったのか、その魅力の一端にふれることができる。今聴くと、現代のソフト・ロックやAORにも近い音楽性があることがわかる。
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Luby Sparks 「Maps」
洋楽としても聴くことが出来るし、邦楽としても結構楽しめるのがLuby Sparksの最大の魅力である。バンドは、2ndアルバム発表後の2023年からアジアやUSツアーを行い、徐々にその活躍のフィールドを広げつつある。年明けに2024年最初のシングル「Stayaway」を発表したバンドは、今回、数年前から恒例となっているカバーリリースに挑んでいる。「Maps」の原曲はニューヨークのYeah Yeah Yeahsで、2003年のアルバム『Fever To Tell』に収録されている。
原曲はYYY’Sの最初期からのガレージ・ロックの色合いをポップソングの中にとどめているが、Sparksのカバーはそれよりもさらにポップソング寄りである。アレンジも含め、ファンシーなイメージが加えられるが、アウトロのギターリフがロックソングのテイストの余韻を残す。シンプルなカバーではありながら、原曲とは異なる雰囲気が味わえるナイスなカヴァーソングとなっている。
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https://lubysparks.lnk.to/Maps
soraya 「ひとり」
先月はじめにセルフタイトルのデビュー・アルバムを発表した壺阪健登と石川紅奈によるユニット、Soraya。日本のジャズポップスシーンを担う期待のユニット。
セルフタイトルアルバムに収録される「ひとり」は、壺阪健登のジャズ・ピアノと石川紅奈のふんわりとしたボーカルが巧みにマッチし、親しみやすいポップソングとして昇華されている。sorayaとしてはじめて作った星座にまつわる内容でsorayaのテーマ曲とも言える内容であり、同時にリリースされた「ちいさくさよならを」は、ピアノ、パーカッション、フルートによるアンサンブルが心地よい雰囲気を醸し出す。童謡のように誰でも親しめるメロディが魅力。
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Drawgss 「Black Rain」
ベース・ヴォーカル森光奏太とドラムの上原俊亮によるR&Bユニット、 Drawgss(ドーグス)。2022年のデビューシングル「ORANGE」を筆頭に、MELRAWがホーンアレンジにて参加した「FINALE」、ゲスト・ヴォーカルに”さらさ”を迎えた「祈り」といった楽曲を次々とリリースした。
ソウルを軸にしたグルーヴ感とメロウネス、ベースとドラムを中心とした抜群のバンドアンサンブルも高評価を受けた。同年6月に開催した初のワンマン・ライブはソールドアウト。VIVA LA ROCK、Fuji Rock Festival、Local Green Festivalといった大型フェスの出演経験がある。
「Black Rain」は4月3日に発売された同名のEPのオープナー。他の曲に関してはファンク、ソウル、アフロジャズ的なニュアンスが含まれているが、このシングルは、ユニットのJ-POPに近い要素と甘酸っぱいメロディーが融合している。森光のボーカルには、少し渋谷系やAORに近いニュアンスがある。少なくとも、日曜の午後に鼻歌で口ずさみたくなるような爽快なナンバー。
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https://ssm.lnk.to/Tenderness_
tiger bae ー 「Distant Calls」 ー Best New Tracks(J-POP)
2021年東京で結成されたシンセポップ・バンド、tiger bae。
Pitchfork、FADER等でも高評価を受け世界的な活動を展開しながら2013年突如解散した”HOTEL MEXICO”のメンバー2人にヴォーカリスト”Yuco”を加え、2021年に結成された3ピースバンド。
率直に言うと、素晴らしいバンド。西海岸のチルアウト、ローファイの雰囲気を漂わせながらも、それをJ-POPの文脈に置き換えるセンスには脱帽するしかない。今後急上昇が予想され、当サイトでもイチオシしたいシンセ・ポップバンドとなる。ロンドンのbeabadoobee、Mui Zyu、あるいはニューヨークのマーガレット・ソーンなど、注目のアジア系シンガーが台頭しており、その一角に入ったとしても違和感がない。海外でも活躍しそうな気配。
配信リンク:
https://ssm.lnk.to/DistantCalls
marucoporoporo 「Cycle of Love」
デビューEP「In Her Dream」が「ファナ・モリーナやアントニオ・ロウレイロを想起させる」と評されるなど注目を集めた''marucoporoporo''。アコースティックギターの弾き語りのスタイルで活動することが多い。数年間の沈黙を経て、ついにファーストアルバムをFLAUから5月15日にリリースする。
アルバムの最初の先行シングル「Cycle of Love」は、命の循環をテーマにした新作の幹となる、メロディアスなエスノ・アンビエント・フォークともいえる楽曲。日本人ばなれした歌唱力と抽象的な音像の中にじんわり溶け込むハートフルなボーカルが神秘的な雰囲気を生み出す。その歌唱力の透明感美麗なナチュラルさは北欧のアイスランドのシンガーに比するものがある。
独自の変則チューニングから繰り出されるアコースティック・ギター、そして唸るような低音から透き通るハイトーンまでを行き来する美しい歌声、深遠な水の底まで落ちていくかのようなドリーミーなアンビエンスが、唯一無二の世界を形作っている。
配信リンク:
https://marucoporoporo.lnk.to/ConceivetheSea
柴田聡子 「Movie Light」
アルバムのジャケット |
2月下旬に待望のニューアルバム『Your Favorite Thing』をリリースしたシンガーソングライター、柴田さん。本作のオープナーとして収録されている「Movie Light」は、日本語歌詞によるドリーム・ポップ風の淡いエモーションが漂う。
シンガーの日本の昭和時代の歌謡曲に軸をおいたノスタルジア満点のボーカルは、何か古き時代へといざなわれそうな雰囲気。細野晴臣の「ハネムーン」に見られるヨットロック風の安らかなギター、ボンゴのような民族的なパーカッションの導入も◎。曲を聞き終えた時、メロウな気分に浸れるはずだ。
MVの映像を手掛けたのは、林響太朗さん。インスタレーション、パフォーミングアーツ、プロジェクトマッピングを用いた映像作品を手掛ける。2016年のヴェネチア・ヴィエンナーレの日本館、上海ワールド・フィナンシャル・センターの8周年を記念するプロモーションを監修した。
星野源、スピッツ、Mr.Children、Bump Of Chicken、米津玄師、あいみょん、菅田将暉、緑黄色社会、秦基博のミュージックビデオを手掛けている。J-POPシーンでは著名な敏腕クリエイターである。TVのCM関連では、資生堂、ソニー、トヨタ、ホンダの映像も手掛けている。
映像については、春めいた穏やかさ、ファンシー&ドリーミーな空気感が絶妙にマッチしている。
・前回のJ-Pop Trends(2月号)はこちらからお読み下さい。