Roosevelt&Nile Rogers

 

ドイツ/ケルンを拠点に活動する電子音楽家、ルーズヴェルトの作品は、クラブカルチャーへの深い愛と、幅広い、ほとんど普遍的な音楽の嗜好から生み出されている。2021年のアルバム「Polydans」はそのような影響への賛歌であり、この新しいシングルでは彼のディスコへの愛が前面に出ている。

 

今回リリースされた「Passion」は、彼の泡立つようなエレクトロニクスと、シックの生みの親であるナイル・ロジャースの切り取られたギターラインがマッチしています。

 

ナイル・ロジャースのルネッサンスと、ルーズベルトのサウンドの幅を広げる作品です。ルーズべルトは次のようにコメントしている。

 

 

「ナイルは私が長年にわたって最も影響を受けてきた人物の一人なので、彼と一緒にトラックを作るのは本当に夢のようなことでした。

 

このトラックは2年近くにわたって様々な形があったので、最終的に満足のいくバージョンができてとても嬉しい。

 

ナイルとは電話やメールなど遠隔操作で作業を進め、最後にロサンゼルスで彼に会って完成を祝いました。彼は私にとって生ける伝説であり、初期のディスコ時代について彼と話をするだけでも大きなインスピレーションを受けました。Passion」はスタジオ54へのオードで、70年代後半のディスコのエネルギーとエクスタシーへのオマージュでもある。

 

 

 

 映画監督ブレット・モーゲンの新作デヴィッド・ボウイのドキュメンタリーで、何千時間もの貴重なパフォーマンス映像から作られた「没入型映画体験」である「Moonage Daydream」は、今夜カンヌ映画祭でワールドプレミアされます。昨日、ティーザー予告編も公開されました。


ボウイの名言や、1974年にボウイが出演したトーク番組「ディック・キャベット」のイントロダクションが流れる中、パフォーマンス映像は控えめに、ボウイのキャリアが一瞬で映し出され、より雰囲気のあるものになっています。もっと見たいと思わせること間違いなし!! ティーザー・トレーラーは以下より御覧下さい。

 

Moonage Daydream』は、NEONを通じて今秋に劇場公開、IMAX公開され、2023年にHBO Maxでストリーミング配信される予定です。

 

 

Official Visualizer 

 

米ニュージャージー州のシンガーソングライター、Fousheéがニューシングル「I'm fine」を発表しました。この曲は、昨年のデビュープロジェクト「time machine」、そのヒット曲「deep end」に続くものです。

 


「I'm fine」は、Fousheéが、複雑な内向性とメタル調のノイズの間を行き来しながら、相反する力を融合させているのがわかります。


BNYXと共に制作されたこのビデオは、Fousheé自身が監督を務め、この曲の矛盾する要素を突き詰めている。


「i'm fine」は、この新しいプロジェクトのために最初に書いた曲です」とFousheéは語っています。前作から 「i'm fine」ができるまでの間、多くのことが抑圧されていた。きれいな外見と混沌とした内面とのコントラストが強調されている。このコントラストが最終的にプロジェクト全体にインスピレーションを与えた。

 

Victoria Canal
 

ロンドン在住のシンガーソングライター、ヴィクトリア・カナルは、ミュンヘンで生まれたスペイン系アメリカ人の女性で、国際的な生育環境で培われた感性によって、周囲の人々に大きな共感をもたらす存在です。

 

現在、米アトランタの男性シンガーソングライター、テディ・スウィムズと共に、イギリス、アイルランド、二国間のツアーを予定するヴィクトリア・カナルは、新作EP「Elegy」を9月16日にリリースすると発表しました。告知に合わせて、涼やかで癒やしにとんだ麗しいポップスが魅力の先行シングル「ownme」をドロップしています。

 

「ownme」は、複雑なピアノラインを中心とする柔らかな雰囲気が曲で、次作EPの強力なイントロダクションとなる。ドイツのニルス・フラームのような繊細なミニマリズムを駆使し、サウンドプロダクションにおいてハンマーの反響を活かし、 繊細なピアノのタッチ、ハンマーの軋む音を実際に耳にすることが出来ます。

 

ヴィクトリア・カナルの歌声は終始、落ち着いており、また聴いていて安心感に満ちています。言葉遊びもありますが、それらがつや消しのような役割を果たし、美しい響きを楽曲の印象にもたらしている。R&B調でもあり、クラシカル調でもある独特な雰囲気のあるシングルについて、カナルは以下のように説明しています。

 

私がこの曲を最初に書いた時、とてもおそろしいくらいに正直すぎて、なおかつ、私のいうことが許されているかどうかわからない幾つかの出来事を歌っていたため、私はこの曲を誰かに聞かせるなんてことは出来なるはずがなかった。

 

それでも、偶々、その後、友人た家族がこの曲を最初に聴いて純粋に涙をながしてくれた時、この曲を世に送り出すとしたら、それは自分のためではないんだと考えるようになった。この歌は、喪失を経験し、それらの悲しみをすべてキレイに洗い流す過程にある人々の奉仕のためのもの、ようやく、世に送り出すことに決めました。


 


 Jawboxのフロントマン、J. RobbinsとのスプリットをリリースしたばかりのHer Head's On Fire(Garrison、Gay For Johnny DeppのJoseph GrilloことSid Jaggerがフロントマンで、Small Brown BikeやSaves The Dayのメンバーも参加する新バンド)は、Iodine Recordingsから、7月15日にデビューアルバム「College Rock & Clove Cigarettes」をリリースすべく準備中とのことです。


Her Head's On Fire

 

先日、リード・シングル "Burn" をリリースしましたが、今回はセカンド・シングル "Common Shame" をプレミアでご紹介します。


このようなラインナップのバンドから予想されるように、Her Head's On Fireの新曲は、90年代のエモ、ポストハードコア、インディーロックのサウンドに回帰しており、これらの熱くアンセミックな曲は、Samiam、Superchunk、The Get Up Kidsなどの領域のどこかに位置する。新曲についてジョセフは、「全く何もしないのに名声と評価を得たいというアメリカの病」と語っています。実際に、何かを成し遂げたわけでもなく、単に「有名である」ことで称賛されるセレブリティたち・・・。私はそれを嫌悪し、人間の状態を侮辱しているとさえ思う。




 



Her Head's On Fire  「College Rock & Clove Cigarettes」

 



 

Label: Iodine Recorgings

 

Release Date: 2022年7月15日


Tracklisting



1. Burn
2. Call Me Up
3. Lexicon of Doubt
4. Common Shame
5. Pristine Heart
6. Rising Tide
7. So Beautiful
8. Matchsticks
9. Sugar Lips
10. Are We Enough


https://deathwishinc.com/collections/iodine-recordings/products/her-heads-on-fire-college-rock-and-clove-cigarettes

Cariou

 

 アメリカの電子音楽家、さらに天才数学者として知られるCaribou、ダン・スナイスは、ダフニ名義でのニューシングル「Cherry」をリリースしました。これは2019年のEP「Sizzlng」に続くシングルとなります。これまでのCaribouの作風と同様に、リズムそのものの複雑性とアナログシンセサイザーの音色に重点が置かれている。この新曲について、スナイスは以下のように説明しています。

 

「例えば、FMシンセの際限なく渦巻くポリリズムほど、愛を語るものはこの世に存在しえない。このトラックを作成することは、謂わば、蛇に自分の尻尾を食べさせるようなものだった」

 

どうやら、ハリー・スタイルズが先週リリースしたばかりの3枚目のスタジオ・アルバム『ハリーズ・ハウス』のシングル曲が、英国シングル・チャートでは非常に?珍しい3冠を達成しそうです。




チャート週の前半の売上とストリーミングデータによると、ハリースタイルズの "As It Was "は8週連続の1位に爆進している最中で、さらに、最新アルバム曲の "Late Night Talking "と "Music For a Sushi Restaurant "がそれぞれ続いてランク入りを果たしています。


"As It Was "はFirst Lookチャートで堂々首位を獲得しており、もし仮にこの破格の勢いが続けば、ディズニーのファミリー向けアニメ映画『Encanto』の "We Don't Talk About Bruno "を抜いて今年最も長い首位記録を保持することになるかもしれません。


OCC(オフィシャル・チャート)によると、このチャートでトップ3を独占しているのは3組だけです。ジャスティン・ビーバーは2016年1月に初めて、エド・シーランは2017年3月に達成し、この二人が最後となっています。


また、ティオン・ウェインとラ・ルーの「IFTK」が16-9と急上昇し、チャートで印象的な存在となっている。このままいけば、ウェインは6回目のトップ10入りを果たし、ラ・ルーは2回目のトップ10入りを果たすことになる。「IFTK」は、ラ・ルーの2009年のシングル「In for the Kill」をサンプリングしたもので、最高位は2位でした。



Official Chart: First Look Top 20 - May 22 2022



LW

TW

TITLE

ARTIST

LABEL

1

1

AS IT WAS

HARRY STYLES

COLUMBIA

NEW

2

LATE NIGHT TALKING

HARRY STYLES

COLUMBIA

NEW

3

MUSIC FOR A SUSHI RESTAURANT

HARRY STYLES

COLUMBIA

2

4

SPACE MAN

SAM RYDER

PARLOPHONE

3

5

GO

CAT BURNS

RCA/SINCE 93

4

6

ABOUT DAMN TIME

LIZZO

ATLANTIC

5

7

FIRST CLASS

JACK HARLOW

ATLANTIC

11

8

BAM BAM

CAMILA CABELLO FT ED SHEERAN

ASYLUM/COLUMBIA

16

9

IFTK

TION WAYNE & LA ROUX

ATLANTIC

8

10

PERU

FIREBOY DML & ED SHEERAN

ISLAND/YBNL NATION/EMPIRE



official charts.comより抜粋

 Watashi Wa 「People Like People」


 

 

Label:  Tooth&Nail

 

Release Date:  5/20,2022


 

ワタシワは、カルフォルニアのサン・ルイス・オビスポで2000年に結成されたロックバンドで、何度か活動休止を挟みながら今日まで活動を継続しています。Tooth&Nailと契約するバンドということもあって、初期はポップパンク、エモ寄りの音楽を奏でていますが、コテコテのパンクバンドではなく、どちらかといえば、スタンダードなアメリカンロックをバンドの主な音楽性としています。

 

先週末、これまでと同じく、USパンクのレーベル「Tooth&Nail」からリリースされた「People Like People」は、ポップ・パンクの質感に加え、アメリカンロック、ソフトロック、エモ、それからほんのりとR&Bの影響を滲ませたミドルテンポのカラフルなロックが展開されています。

 

さながら、90年代のカルフォルニアのオレンジカウンティのポップパンク/スケーターパンクの全盛期に舞い戻ったかのような音楽であり、グリーンデイやオフスプリング、その後のセイヴズ・ザ・デイあたりのポップパンクムーブメントで完全に消費されてしまったスタイルではあるものの、むしろそれが逆に、2020年代にやると、不思議な新鮮味が感じられるのが興味深い点です。

 

最初期の00年代のワタシワとは異なり、「How Will We Live?」で聴けるようなトロピカルソウルの雰囲気を擁するリラックスナンバーに新しくチャレンジしているのも面白さが感じられます。その他、パンクバンドらしく、COVID-19を皮肉ったものと思われる「x COVID-19x」もブラックジョークの雰囲気に塗れた興味深いトラックで、メロディックハードコアに奇妙なエレクトロの雰囲気を付け加えた「Land Of The Free」を始めとする、真面目なのかフザケてるのかよくわからないような曲もある。一作品として散漫な雰囲気もありながら、ところどころ瞬間的な煌めきがあり、捉えどころがない反面、バラエティーに富んだ面白いアルバムであることは確かです。

 

もちろん、このアルバムの楽曲には、表向きには人目をひきつけるような華美さこそ乏しいものの、ソフトロックとして気楽に楽しめる良質な曲も複数収録されており、さらに、バンドとして円熟味が加えられた地味な渋さを滲ませている。ワタシワのアプローチには、少しだけ古臭さを感じる一方、長年、活動するバンドとしての信頼感もある。スピードチューンにそろそろ飽きてきたパンクファンは、このアルバムに何らかの面白みを見出せるかもしれません。


ジョージ・ルーカスが監督を務めた往年の名画「アメリカン・グラフィティ」のようなアートワーク、そして、バンド名の下に記された「愛が答えです」という日本語のメッセージも、なんとなくユニークで可愛く、微笑ましい。アメリカの古き良き時代を体現したようなエモーショナルなアルバムで、現代のミュージック・シーンに大きな影響力こそ与えないと思われるものの、音楽における淡いアメリカン・ノスタルジアへの憧憬が遺憾なく引き出された作品です。

 

 70/100

 

 


「Trust Me」


 

 

 

 

Apple Music Link 

 

 

CVC

 

ウェールズ出身のCVCは、4月中にデビューシングル「Docking The Pay」をリリースしている6人組のコレクティヴです。CVCは、先週、自主レーベルからデビューEP「Real To Reel」をデジタル盤を7月28日、次いでレコード盤を9月16日にリリースすると発表。この告知に併せて、二作目のシングル「Wiston」をドロップしています。

 

ウェールズのカーディフから北に向かうこと約10マイル、そこにはウェールズバレーの丘陵地帯が広がっていて、”CVC”が結成されたチャーチビレッジは、その一帯のいくつかのラグビーのグランド、複数のパブが、徒歩圏内には立ち並んでいるのどかな町。彼らはまだ、英国内でのライブしか行ったことがないものの、今後、その活動の領域を広げ、英国内、そして、海を越えた世界へ広げていきたいという野望を、密かに胸にいだきながら、2019年から細やかな活動を行っています。

 

コレクティブの名、CVCは、チャーチ・ビレッジという出身地に因んで付けられました。このバンドには、アドオンやギミックのようなまやかしは存在しません。彼らは、60年代から70年代のシンプルなロックンロール、ザ・ビートルズ、ニール・ヤング、ビーチ・ボーイズを聴いて育ち、ロックンロールの歴史に浸り、豊かでメロディアスな音楽を生み出します。立ち上がってそれほど間もないこのインディーコレクティヴは、主に、「ジャムバンドとして活動するため、結成された」とグループのフロントパーソンのオルシは説明しています。2019年結成当初の音楽の素地であったバンドサウンドのサイケデリックな側面の残しつつ、最近では、ジャズの影響下にあるメロディアスな性格が付け加えられた。オルシ、バッシー、ブラッドフィールドというコレクティブの支柱的な存在は、CVCの音楽に、個性的で心楽しいキャラクターを反映しています。

 


CVCの活動は、 ウェールズがロックダウンを行っていた2020年に、ブラッドフィールドの自宅のリビングルームで4週間にわたって、他のデモトラックと共に「Docking Party」が録音されたことで始まった。最初は、ただのジャムセッションであった演奏、それは徐々に洗練されていき、本格的な音楽として仕上げられていった。先月中旬にリリースされたデビューシングル「Docking The Pay」について、「人間の持つ本格的なエネルギーを表している」と、彼らは言い、同時に、バンドの存在を多くの人々に印象づけるのに最適なデビューシングルと考えています。 

 

六人組という大編成のバンドの演奏から齎されるパワフルさ、そして、ただならぬ明るいエネルギー。それは、ファットなギターリフ、豊かな3つの楽器パートの織りなすハーモニー、そして、それらの演奏を一つに束ねるタイトなビートとして組み上げられていきます。これらの音楽的な要素は、軍隊の打ち上げパーティーで期待できるような派手で楽しい衣装と結びつき、このコレクティヴの主なキャラクターを形作っています。ウェールズ出身のCVCは、ザ・ビートルズの「サージェント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブバンド」をリアルで再現するコレクティヴであり、今後、英国内にとどまらず、ワールドワイドな活躍に期待したいバンドです。

 

 

 

 1st Single 「Docking The Party」 

 




2nd Single 「Winston」


 





CVC 「Real To Reel」EP

 

 


 

Label: CVC Recording

 

Release Date:2022年9月16日 



ダイアナ・ロスとテーム・インパラは、三日前、新たに、ジャック・アントノフがプロデュース、キュレーションを手掛けた手掛けた1970年代のヒット曲のカバーを特集した「ミニオンズ:ザ・ライズ・オブ・グル」のサウンドトラックの最初の先行シングルをドロップしました。

 

Diana Ross&Tame Impala

 

ロス、インパラの両者は、一見、いや、完全に想像できない組合せのように思えるものの、新しいコラボレーション曲「Turn Up The Sunshine」は二人のアーティストの長所が存分に引きされたバップです。ファンキーかつリズミカルなパーカッション、エネルギッシュなストリングスアレンジ、それに加え、シンプルにリッピングするベースを備えたグルーブ感が満載のシングルトラックです。

 

ダイアナ・ロスは悠々と感動的なボーカルと歌詞を提供し、そして、「私たちはたえず何かを動かし続けねばならない」、ほかにも、「それが元に戻らぬよう変化を加える/失うことはとても難しい」と、クールに歌い上げています。ディスコムーブメントにおける最高のディーヴァ、そして、モダン・サイケデリックの旗手である二人の楽曲に対して、他に何を期待するべきでしょう??



 

Bret McKenzie Photo:Rebecca McMilan

 

俳優やコメディアンとして世界的な名声を獲得しており、これまで「ロード・オブ・ザ・リング」に出演、「ザ・マペッツ」ではアカデミー歌曲賞の栄冠に輝いているニュージーランド/ウェリントン出身のブレット・マッケンジーは、今後、フルレングスのソロ・デビュー作「ソングス・ウィズアウト・ジョーク」を、サブ・ポップから8月26日にリリースする予定です。


リード・シングル「A Little Tune」、「Dave's Place」「If You Wanna Go」「America Goodbye」を収録したこのデビューアルバムは、ミッキー・ペトラリアとマッケンジーがプロデュース、ダレル・ソープがミックスを担当。さらに、「East West StudiosとUnited Recordings」でレコーディング、ロサンゼルスの「101 Mastering」でデイヴ・アイヴスがマスタリングを手掛けた作品です。

 

ブレット・マッケンジーが主演し、エズラ・サイモンズが監督を務め、ニュージーランドに残る最後のビクトリア調の劇場、「ロイヤル・ワンガヌイ・オペラハウス」で撮影されたチャーミングな(公式にもチャーミングな...)「A Little Tune」のビデオを是非、以下で御覧ください。


なんとも、きらびやかなアルバムタイトルからおわかりのように、ブレット・マッケンジーは、コメディデュオのフライト・オブ・ザ・コンチョーズ、映画『マペッツ』リブート版やその他のファミリー向け映画のサウンドトラック、ロード・オブ・ザ・リングのファンブログ、ザ・シンプソンズのゲストソング、故郷ニュージーランドのストリートでのサイクリングなど、現代の音楽の宝庫としてご存じの方も多いと思われますが、新しいソロレコードは、コメディソングではない曲ばかりです。このレコードをリリースするにあたり、マッケンジーは以下のように述べています。


「コンコードの後、マペッツの映画のために曲を作っていたんだけど、あるセッションで、誰かのためじゃない、ストーリーを語る必要もなく、面白くなくても、物語の筋を続ける必要もなく、映画の中のキャラクターのすべての条件を満たす曲を作ったらいつか楽しいだろうなって思った。そんなレコードを作ったら楽しいと思ったんだ」


ポップミュージックのほとんどのジャンルで作曲と演奏をして成功した実績に加え、ブレット・マッケンジーは、例えば、ハリー・ニルソン、スティーリー・ダン、ランディ・ニューマン、ダイアー・ストレイツといった辛辣で文学的なアーティストの音楽に影響を受けています。彼は、複数の楽器を演奏する才能があり、ギター、ピアノ、ドラム、ウクレレ、シンセサイザーを奏でるマルチインストゥルメンタリストでもある。その昔、ニュージーランドでレゲエをベースにしたフュージョン・グループ、ブラック・シードなど、コメディ以外のバンドをいくつも経験した音楽のベテランでもあります。


しかし、ジョークを使わない曲もジョークを使う曲と同様に、彼の血筋にあるといえるでしょう。彼の作品を知っているほとんどの人は笑いを期待してやってくることを彼は認識している。それゆえ、サブ・ポップレコードによると、アルバムのタイトルは上記の通りになったそうです。

 

ブレット・マッケンジーは、7人編成のバンドを従えて、2022年秋に『Songs Without Jokes』を引っさげての海外ヘッドライナー公演を予定しており、9月2日にニュージーランドのネルソン、トラファルガーセンターで始まり、11月20日の日曜日にはジョージアのアトランタ、イースタンで終了する予定です。今後は、俳優としてだけでなく、シンガーとしての活躍も期待されます。Father John Mistyのようなヒットとなるか、注目しておきたいミュージシャンの一人です。

 

 

 



 

 

Bret McKenzie  「Songs Without Jokes」


 

Label:  Sub Pop

 

Release Date: 2022年8月26日


 

Tracklist:


1. This World
2. If You Wanna Go
3. Dave’s Place
4. Here for You
5. That’s L.A.
6. Up in Smoke
7. Carry On
8. A Little Tune
9. America Goodbye
10. Tomorrow Today
11. Crazy Times




ローリングストーンズのボーカル、ミック・ジャガーは、先日、新作アルバムを発表したハリー・スタイルズについて言及している。ジャガーは、スタイルズについて尋ねられると、このシンガーを「若い頃の自分に表面的に似ている」と発言し、さらに、「私のような声を持っていないし、私のようにステージで動くこともない」と述べた。


ローリング・ストーンズのフロントマンは、バンドの60周年記念ツアーの宣伝のために企画されたロンドン・タイムズ紙の平凡なインタビューの中で、コーチェラからポップシーンの話題をさらっているハリー・スタイルズについて眉をひそめるようなコメントをしたのだ。


ミック・ジャガーは、自分がスタイルズを好ましく考えているということ、2人は「簡単な関係」だと前置きした上で、こう言った。しかしながら、ジャガーは2人の間に比較対象がない理由を並べ立てたので、歓談はそこで終わった。


「つまり、僕は、かって、彼よりもたくさんどきついアイメイクをしていたんだ。つまりさ、俺はもっとアンドロジナスだったんだよ」とミック・ジャガーは言いはなった。「そしてね、彼は私のような声を持っていないし、私のようにステージ上でアクティブに動くこともない。彼は、ただ私の若い頃の自分に表面的に似ているだけなんだ」


ハリー・スタイルズは、ファッションを含め、ジャガーに最も影響を受けた人物の一人として、頻繁にミック・ジャガーの名を挙げている。スタイルズは2017年にSNLで司会を務めた際、ザ・ローリング・ストーンズのシンガーの物まねをしたことでも有名だ。


今度の英国きっての大御所シンガー、ミックジャガーのコメントのタイミングは、スタイルズが最新ソロ・アルバム『ハリーズ・ハウス』の成功を祝い、自身の広大なヘッドライン・ツアーの開始に向けて準備を進めている時だった。少なくともジャガーはスタイルズを、人物的には好ましく考えているようだが、一人前のシンガーとしてみとめていないのかもしれない。もちろんスタイルズは若いこれからのシンガーである。この日、ミックジャガーは、さらにMachine Gun KellyとYungbludをロックミュージックの未来だというように断言している。

 

Fake Creators


日本のテクノシーンを牽引するDE DE MOUSE,及び、日本のポスト・ロックシーンを率いるLITE,両者の新たな合体プロジェクト、「Fake Creators」が立ち上がったことが判明しました。

 

LITEの井澤淳によると、「コロナパンデミック時代から音楽の本来の姿を取り戻すべく企画されたプロジェクトである」とのこと。さらに、「抜群の運動神経で荒々しくも軽やかに紡ぎ出されたミューテーションサウンドによる新しいクリエイティブの表現」をテーマに掲げて始動した。

 

バンドは、この新プロジェクトの発表と共に、DROPBOXにて、ファンに無料で新曲「五月雨前夜」を公開。 さらに、Fake Creatorsは、今年開催のフジロック・フェスティヴァル’22への出演が決定しています。どのような刺激的なライブパフォーマンスになるのか期待したいところです。



Fake Creators 「五月雨前夜」




 

Fake Creatorsの新曲「五月雨前夜」は、以下のDropboxのアドレスにて無料ファイルで提供されています。

 

https://www.dropbox.com/sh/oehdvb42ova2ry7/AAAdKSgG22J5wqBRiJ4c09uza?dl=0 

 


元オアシスのリアム・ギャラガーは新作アルバム「C'mon You Know」のリリースを来週の5月27日に控えています。

 

新作アルバムリリースに先駆けて、リアム・ギャラガーはシングル「Everything's Electric」「Better Days」と二曲の先行シングルを公開しています。さらに、リアム・ギャラガーは、権威あるBBCショーに5月14日に出演を果たし、上記の二作のシングル、そして、アルバム収録の「World's In Need」のパフォーマンスを披露。そして、この日、BBCのスタジオには、ロックダウン以来、すべてのミュージシャンのゲストがスタジオに集まったことでも大きな話題を呼びました。

 

英国の最大手の音楽メディア、NMEが指摘している通り、このシングルは、ブラックバーンのキングジョージズホールのライブステージでファンの前で最初に半ばシークレットで披露されました。今回、リアム・ギャラガーは、より小さなスタジオでこの曲のライブを再現しています。

 

 

 

 

  レディオヘッドのボーカルは、この年、旅客機の窓から見えるフランスの牧歌的な風景を無性に眺めていた。

 

彼は、しかしながら、ユーロスターの眼下に広がる羊や農場を見ていない、そこにあるものがたちどころにふっと消え、そのまま暗いトンネルに入り、深い深い海の底にいることを痛感している。不思議な感覚である。それでも、かつて『The Bends』というアルバムを書いた男、そして次の世界的なアルバムを書くであろう男にとって、これはとても重要なことでもあった。


ユーロスターに同乗したある音楽メディアの取材記者が、トム・ヨークに尋ねる。

 

「あなたは閉所恐怖症なのか?」

 

「そうだ」


さらにその後、沈黙を重ねた末に、彼はあっけらかんと「そうです」と答えた。実は、最近ますますそうなってきているんだ」。


数日間のツアーで、トム・ヨークが様々な恐怖症に悩まされていないときでさえ、彼はその閉所恐怖症の症状が一段と強烈であることを教えられた。ヨークは、まるで粉々になった小さな王子のような動きをしたかとおもえば、突然、爆発するような、切り詰めた笑い方をしていた。髪は短く、黒く、とげとげしい。ヨークの怠け眼は垂れ下がり、それは欠点であると同時に、彼の砕けた魅力でもある。子供の頃、よくそのことでからかわれたという。そのためか、時折、彼は、自分を傲慢な嫌な奴と勘違いする人がいるのが気になる。


時に、欠点は長所となり、このミュージシャンの強い強迫観念は反感を生み、恐怖は彼の音楽、ひいては、レディオヘッドの生み出す音楽にインスピレーションを与える。トム・ヨークは飛行機が嫌いで、もちろん車も大嫌いだから、電車にばかり乗っている。それがこのアーティストの日常的な習慣である。

 

ある日、記者が、不思議に思い、この男に尋ねる。

 

「なぜ、あなたは車の衝突をテーマにした曲をたくさん書いているのか?」


「それは、地球上で最も危険な交通手段のひとつである自動車で、住みたくもない家を出て、行きたくもない仕事に向かうために、人々はあまりにも早起きしていると思うからだ。僕は、それに全然慣れることができない」


もちろん、ミュージシャンという仕事柄、移動の多いヨークは、常に車に乗っていなければならない。レディオヘッドの最新シングル "Karma Police "のビデオを撮影するため、リモコン・ドライバー付きの車に乗り込んだこともある。そして、後部座席に座ってリップシンクをしていると、何かがまかり間違って、不意に、一酸化炭素のガスが車内に流れ込んできた。ヨークは恐怖を感じる。そして、気が遠くなるような感覚を覚えながら、"ああ、これが僕の人生だ... "と思う。


レディオヘッドは、現在活動している中で最もお堅い偏執狂的なアートロックバンドに数えられるかもしれない。でも、そのようなバンドであっても、彼らはかなり幸運な人たちだ。ヨーク、ベーシストのコリン・グリーンウッド、ギタリストのジョニー・グリーンウッドとエド・オブライエン、そしてドラマーのフィル・セルウェイからなるこのグループは、自分が無価値であることを歌った大ヒット曲でそのキャリアをスタートさせた。


特に、この曲がスラックロックのアンセムとなり、バンドが最後の恋人の名前のタトゥーを入れるように後悔するようなタイムリーなヒットとなった後、彼らは「クリープ」、そして、1992年のアルバム「Pablo Honey」が受け入れられるかどうかさえ確信が持てなかった。しかし、そのアルバムはグランジの最盛期の世代に、じわじわと熱烈なリスナーを惹きつけることに成功する。

 

1995年、彼らはより優れた、より奇妙な、セカンド・アルバム(The Bends)、ピンク・フロイドの最高級アルバム・カバーを思わせる、非常にクールなビデオの数々を制作したのである。前作のアルバムがピクシーズの後継者としてのオルタナティヴロックだと仮定すると、このアルバム「The Bends」は何かが前作とは違った。「Fake Plastic Tree」に代表されるように、後のレディオヘッドの内省的で、孤独で、繊細かつデリケートな音楽の素地がこの作品で完成されていた。ロック評論家たちがこぞって、Radioheadを褒め称えたのは、何も偶然ではなかったのだ。


2ndアルバムの異例のリアクションについてトム・ヨークは当時、話している。「音楽が人々にとってどのような意味を持つのか、私は驚きました」

 

「私たちは斬新なバンドから、NMEやMelody Makerの "Musicians wanted "欄で誰もが引用するバンドになった。”クリープ”のようなヒットの後では、バンドは普通、生き残れない。死んでしまうこともある。でも、そうはならなかった」。

 


そのあと、レディオヘッドは、1年半にわたって『The Bends』のツアーを行った。バンドの故郷であるオックスフォードに戻ったヨークには、新たな不安材料でいっぱいだった。彼はいつも自分の頭の中にある怖いものをよく知っていたが、国際的なツアーは、彼に全く新しいインスピレーションを与えるホブゴブリンの世界を授けてくれた。今、彼は、あらゆる種類の恐ろしいことについて歌を書かなければならないことを知っていた。家庭内暴力、政治家、車、ベーコン等。


だから、ヨークとレディオヘッドは、世界の醜悪さを題材にとった大掛かりなアルバム制作に取りくむ必要があった。ヨークは、ことさら騒いで、悩み、知り合いに迷惑をかけたが、最終的にそれらはすべておおきな価値があった。なぜなら、『OK Computer』は壮大かつ繊細で心にしみる深い情感にあふれるレコードだからだ。グリーンウッドの紡ぎ出す緻密なギターフレーズとフリークアウトしたノイズ、ビートルズ風のジョークが入ったポピュラーな曲、そして、実際に曲になるまでに何分もかかるナンバーに満ちており、謎に満ちている。この作品については何も説明されず、すべてが暗示の領域に留まっている。それはリスナーに想像力、喚起力をさずけるものである。「OK Computer」は恐怖とシニシズムに満ち、皮肉や自意識はない。どうやら、ヨークを快くさせるのは、かなり美しく、心から不気味なものを作るというアイデアだけのようだ。

 




  「OK Computerを聴くと、多くの人は、気分が悪くなると思う」と、当時、トム・ヨークは話している。「吐き気は、私たちが作ろうとしていたことの一部だった。The Bendsは、いわば慰めのレコードだった。でも、この作品は悲しかった。その理由がよくわからなかったんだ」

 

「嘔吐」、まさにサルトルのような得難い気味悪さ、そしてそ内省的な質感がこの作品には込められている。他のロックアルバムとは何かが決定的に違う。つまり、それが歴史に残るレコードでもある。何か聞き手に考えさせ、何かを働きかけ、受動的でなく、能動的に何かをさせるような自発的な主旨が込められている。またサウンドは古典的な響きがありながらも、コンピューターの黎明期のように未来的な響きが込められていた。いまだロボットが出現する以前の時代、人類はロボットに憧れていた。イエスやピンク・フロイドのような壮大なテーマを擁しながら、そこにはそれ以前のレコーディングで体現しえなかったコンピュータープログラミングの技術が明らかに取り入れられていた。あろうことか、Windows 98が登場する前の年に・・・。なぜそれが出来たのかは、彼らはジョブズの生み出したアップル・コンピューターのファンだったからだ。「OK Computer」はまさに、人類の未来への希望、そして、そのイノヴェーションの難しさを表したアルバムである。これはロック史における一つの「事件」だった。


アルバムはビルボードチャートで21位でデビューしたが、ヨークにとって幸運なことに、多くの人が「OK Computer」の意味を熱心に説明してくれた。Addicted to Noiseのオンラインの特派員は、OK Computerは、フィリップ・K・ディックの「V.A.L.I.S.」に基づいていると指摘したが、あいにく、ヨークはその本を読んでいなかった。他の批評家は、アルバムのタイトルと、奇妙なファーストシングルの「ParAnoid Android」のような曲に飛びつき、アルバムはレディオヘッドのテクノロジーに対する恐怖についてと決めつけたが、彼らはヨークとジョニーが、実は熱心な「Macファン」だということを知らない。トム・ヨーク自身は、「パラノイド・アンドロイド」はローマ帝国の滅亡をテーマにしていると主張する以外、あまり詳しい説明をしなかった。


バンドは、ロサンゼルスとニューヨークで行われたソールドアウトの話題のコンサートで、アルバムのほとんどの曲を披露した。


出席者は、リヴ・タイラー、マドンナ、マリリン・マンソン、コートニー・ラブ、R.E.M.のマイケル・スタイプとマイク・ミルズ、ビースティ・ボーイズのマイクD、謎の無名のスーパーモデル3人、そして、リアム・ギャラガーであったようだ。リアムギャラガーは、このページで、レディオヘッドは「ファッキング・スタンデント」、もっとわかりやすく言えば、大卒だと指摘する必要があると感じたようだ。少なくとも、それはほとんど真実だった。 

 


一方、バンドの長年のサポーターであるMTVは、「Paranoid Android」の不穏なアニメーション・ビデオをバズ・クリップに選出した。


6月、ヨークは "Street Spirit (Fade Out) "の監督ジョナサン・グレイザーとロンドンから3時間離れた人気のない道で会い、OKコンピュータのセカンドシングル "Karma Police" のオーウェル風の冷たいビデオを撮っている。9月下旬、"Karma Police "は音楽チャンネルでヘビーローテーションでデビューしたが、ビデオには、数年前にBeavis and Butt-headが大問題になったのと同じ「炎上」の要素があるという事実がある。つまりMTVにとって、レディオヘッドは法の上に立つ存在なのだ。真実はもっと奇妙だ。MTVの人たちは、Radioheadのビデオが好きなのだ。


MTVの音楽担当副社長ルイス・ラージェントは、「彼らのビデオはどれも魅力的だ」と説明する。

 

「レディオヘッドのビデオはどれも興味深いものだ。例えば、『The Bends』のなかの「Just」のビデオでは、男が死ぬシーンがありますが、そのような謎があるからこそ、何度でも見ることができるのです。けれども、Paranoid Android "は100回観ても、全部はわからないはずだ」


グレイザーは、「カルマポリス」が報復をテーマにしていると考えているが、それが重要かどうかはわからないという。「レディオヘッドはサブテキスト、アンダーバーについて全て知っている」と彼は言っています。「Thomは、私が映画について考えるのと同じように、音楽について考えているんだ、彼はそれが対話だと考えている。だからビデオで、彼はコーラスを歌っているんだ。


実際、レディオヘッドが、『OK Computer』をレコーディングしたとき、ヨークは、各曲を12種類の脳の内側からのルポルタージュのように聴かせようとしていたんだ。このレコードは、真実かもしれないフィクションの集まりです。それは、ここ数年のオルタナティヴ・ロックだけでなく、私たちの告白の文化全体からレディオヘッドを際立たせている要因のひとつだった」

 


「正直に言うと、私は、果てしない自己顕示欲に耐えられないんだ」とヨークは話している。「正直というのは、ある意味でたらめな性質なんだ。そうなんだ。これが、正直であり、これが正直だ。正直であることを公言するよりも、不正直であることに正直である方がより健全だろう?」


良くも悪くも、レディオヘッドは、ほとんどのギターバンドがまだハードコア・パンクやアメリカン・インディー・ロックの遺産に苦しんでいる時期に登場し、したがって、ほとんどのラップスターと同様に「リアルさ」を気にしていた。しかし、Radioheadは気取ることを恐れていない。彼らが壮大で広範なロック音楽を作るのは、彼らの曲が、例えば、Pavementのように素朴さがあり、Tortoiseのように前衛的に見えることがあっても、より確実にPink Floydの壮大なパラノイア、Queenのバロックの壮大さを思い起こさせることができると信じているからである。これらの上記のバンドのように、Radioheadは自分たちが空を飛べるような魔力を持っていると、本気で信じている。彼らは、ロックスターのように振る舞うには至っていなかったけれども、『OK Computer』は間違いなく、ロックスターのアルバム、ロック史の傑作である。

 

 


  バンドは1996年の夏、リンゴ小屋を改造したリハーサルスタジオでアルバムの最初の部分を録音し始めた。9月、レディオヘッドは、女優ジェーン・シーモアの邸宅、セント・キャサリンズ・コートを借り、すべての機材を運び込み、そこで、レコーディングを開始した。物事はうまくいった。


「天国と地獄だった」とトム・ヨークは言う。「最初の2週間は、基本的にアルバム全体をレコーディングしたんだ。地獄はそのあとだった。あの家は......」ヨークは、間を置いて、言った。

 

「圧迫感があった。最初は私たちに興味津々だった。それから、私たちに飽きた。そして、物事を難しくするようになった。スタジオのテープ・マシーンのスイッチを入れたり切ったり、巻き戻したりするようになったんだ」


「ああ、素晴らしい体験だったよ。それに、バースの郊外の谷間にあったんだ、人里離れたところにね。だから、音楽を止めても、そこには静寂が広がっていた。窓を開けても、何もない。鳥のさえずりさえ聞こえない、まったく不自然な静寂。すごく恐ろしかった。眠れなかったよ」。


レディオヘッドは、1997年2月に「OK Computer」のレコーディングとマスタリングを終了した。出来上がったレコードから少し距離を置いた後、彼らは再びマスターテープに接してみると、そのレコードの真の凄さに驚かされた。「11時間目に、自分たちが何をしたのか気づいたとき、自分たちがかなり反乱を起こすようなものを作ってしまったという事実に疑問を持った 」とヨークは認めている。


レコード・レーベル側のスタッフ、つまり、キャピトル・レコード の人たちも最初はトム・ヨークと同じように感じていた。

 

「OK Computer 」には、"Creep "はもちろん、シングルらしい音はひとつもなかったから。キャピトルの社長ゲーリー・ガーシュは、レディオヘッドについて聞かれると、こんなことまで言っている。「彼らが世界最大のバンドになるまで、我々は少しも、手を緩めるつもりはない 」と。


Radioheadのツアー最終日、バンドは、英国、ブライトンの海辺のアリーナで演奏を行っている。The Bends "のアンセム的なコードから "Karma Police "のエレガントな精神分裂症まで、繊細でスペイシーなサイケデリアと悲鳴にも似たギターが飛び交う瞬間の間、バンドは常にライブ毎に変化し続けた。より大きなモンスターロックバンドに変身していく階段を一つずつ登りつづけていた。トム・ヨークは、キュービズムのキリスト像のように両手を広げ、時折、観客に度重なるリクエストをしていた。「左右に動くのはやめてくれないか、人が倒れるから、これはサッカーの試合じゃない!!」、さらに、「クラウド・サーフィンもやめてくれ!!」


並み居るオーディエンスは、トム・ヨークのマイク越しの呼びかけに快く応えた。観客の多くは、メガネをかけた少年と少女だった。俗に言われる"Stoodents "達だ。図書館のかわいいカップルは、Radioheadがスローな曲を演奏するたびに抱き合っていたが、話しかけようとすると、彼らはただ緊張して堅苦しく笑うだけで、それほどうまく話すことができないことがわかった。


ライブショーの後、満月の下、ビーチに立ち、バックステージで出会ったレディオヘッドファンとともに、大西洋に石を投げながら、偶発的に笑っている人間がいた。実は、そのうちの一人がマイケル・スタイプであり、ブライトン公演は彼が先週観た3回目のレディオヘッドのライブだった。ある音楽メディアの記者は、彼を見つけるなり、声を掛けた。ライブはどうだったのか。マイケル・スタイプは最初、難しい表情をしていたが、やがてその表情を少しばかり緩めた。


「ええ。彼らは金曜日の夜、レディングで演奏したのです。バンドは金曜日にライブに負けるわけにはいかないのです」

 

「でも、今日の彼らは、本当に素晴らしかった。2年前、一緒にツアーをしたとき、彼らは毎晩のように”Creep”を演奏していた。でも、今、彼らはあの曲をファンから取り戻し、本当に美しいものに仕上げてくれた」


マイケル・スタイプが言っていたのは、コンコルドのような音がするギターを使ったあの曲のことである。レディオヘッドを、それほどパッとしない駆け出しのインディーバンドだと思わせた大ヒット曲である。もちろん、これはただの悪口ではない。そして、彼の言う通り、レディオヘッドは素晴らしいライブパフォーマンスを行った。トム・ヨークは、そのステージの合間に少しばかりアドリブも披露した。正確には、あのブライトンのライブステージにおいて、トム・ヨークは、コーラスの言葉を "I'm a weirdo" から "I'm a winner" に変更した。風変わりな人物から世界の勝者へ・・・。それは、この男の数年前からの本質、未来の姿を浮き彫りにするものだった。数年後、トム・ヨークは、世界的な勝者となり、強い影響力を持つようになった。

 

「OK Computer」は、多くのフォロワーを生み出すに至った。しかしいまだに彼らの高みに到達できたアーティストはいない。今後もこのアルバムの高みに到達できるミュージシャンは数少なく、それは、フランスの文学者アンドレ・ジッドのいう「狭き門」に入るようなものだ。限られた本当の芸術家だけが到達できる神々しい領域で生み出された神聖な雰囲気を持つ伝説的なアルバム「OK Computer」は、ヨーロッパの各国のアルバムチャートで1位を獲得したほか、複数のゴールド、プラチナムディスクの認定を受け、さらに、世界の音楽メディアの多くがこのアルバムに文句なしの満点評価を与えた。彼のもとには多くの名声が雨あられと降ってきた。

 

それでもなお妥当な評価が足りないといわんばかりに、「OK Computer」のセンセーショナルな騒ぎは終わらなかった。奇しくも、翌年は、「WINDOWS’98」が生み出される記念すべきコンピューターイヤー、あるいは、ITイノベーションの幕開けの年に当たった。世界が変わろうとしている時代、この数奇なアルバムはやがて、大きな社会現象のように新旧問わず幅広いリスナーに浸透し、「OK Computer」は、音楽的な価値にとどまらない、世紀の大傑作としての評価が一般的に確立されていった。それと同時に、レディオヘッドがミュージシャンとしてだけでなく、政治的な発言力を持つにいたり、英国内の最も著名なグループのひとつに引き上げられていった。

 

今、思い返せば、「OK Computer」は、何かしら熱に浮かされたような不思議な現象であったともいえる。しかし、人々はそれを明らかに望んでいた。リスナーが切望するものを、彼らは、リスナーにそのまま与えた。1997年の「OK Computer」の時代の後、レディオヘッドは、音楽を知らない人でさえ一度くらいはその名を耳にしたことがある、世界最大のモンスターロックバンドに上り詰めた。「OK Computer」がリリースされた1997年は、ロック史の転換期に当たり、また、世界的な転換期ともなった。彼らが巻き起こした凄まじいムーブメント、ビッグセンセーション。まさに、それは1990年代を通しての大きな「事件」でもあったのだ。



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