Weekly Recommend Jungle 「Loving in Stereo」

 Jungle 

Jungleは、ジョッシュロイド・ワトソンとトム・マクファーランドによって2013年に結成されたソウル、R&B,ファンクユニットで、イギリスを拠点に活動している。母国ではかなり人気の高いアーティストでもあります。

このワトソンとマクファーランドは子供の頃、ロンドンのシェパーズブッシュで隣に住んでいたといい、その頃からの幼馴染であったといいます。また、2人は共に、ハマースミスの私立学校ラティマー高等学校に通っていました。学校を卒業した後、つまり、2013年にワトソンとマクファーランドは、このクラブミュージックユニット、Jungleを結成します。彼らの言葉によれば、このユニットは「真の友情の繋がりへの欲求」から結成された音楽デュオでもあるといいます。

Jungleの音楽性は、1960年代後半に盛んであったファンク、ソウルに触発を受けたディスコサウンドで、ファンカデリック、スライ・ザ・ファミリーストーン、また、ウィリアム・ブーツイー・コリンズといったアーティストからの影響が色濃いブラックミュージック。これまでの音楽シーンにおいて、ローリング・ストーンズやエリック・クラプトンがそうであったように、多くの白人アーティストはロックミュージックを介し、黒人音楽に対する接近を試みてきましたが、近年のロンドン周辺のクラブシーンにおいては、電子音楽、ダンスミュージックを介してブラックミュージックへ接近を図るアーティストが増えてきているという印象を受けます。

勿論、Jungleも、年代に関わらず、ブラックミュージックに対して敬意を持ち、それらの音楽性の核心を現代に引き継ぎ、リテイクしていくという点では同じであるように思えます。まだまだ60.70年代に一世を風靡したソウル、ファンク、ディスコ、これらのブラックミュージックには開拓の余地が残されているということを、現代のクラブシーンのアーティストは証明しようとしているように思える。そのあたりのクラブシーンの活気に後押しされ、これらの60.70年代のブラックミュージックのリバイバルの動きの延長線上に、ディスコサウンドの立役者「ABBA」の復活の理由があるのかもしれません。

これらの音楽、つまり、懐古サウンドといわれていたブラックミュージックは、2020年代には再び脚光を浴びる可能性が高くなっている。このイギリスのユニット、デュオ、Jungleについていうなら、近年のアーティストらしく、ラップ寄りのサンプリングといった技法も取り入れられているのがクールで、現代のユーロ圏のクラブシーンにおいて人気を博している理由でしょう。

2013年10月、シングル盤「This Heat」をチェスクラブレコードからリリース。この楽曲の発表後、BBCの"Sound of 2014"にノミネート、大きな話題を呼ぶ。また、翌年7月リリースされたデビューアルバム「Jungle」は、国内のクラブシーンで好意的に迎えられ、2014年のイギリスのマーキュリー賞の最終候補に選出されています。このBPIによりゴールドディスク認定を受けたデビュー作は、商業的にも大成功を収め、イギリスチャートにおいて、最高7位を獲得、鮮烈なデビューを飾る。とりわけ、イギリス国内とベルギーといったユーロ圏の国において根強い人気を獲得している。それからもJungleの快進撃は留まることを知らず、2018年に発表されたセカンド・アルバム「For Ever」も内外のチャートで健闘を見せ、イギリスチャートでは最高10位、ベルギーチャートで13位を獲得、ユーロ圏で安定した人気を見せているアーティストです。


Jungleの楽曲は、主にCMやゲームに頻繁に使用されていることでも有名。AppleやO2、スターバックス、トヨタ・ヤリスのCM、EAスポーツ、FIFA15.19でもJungleの楽曲が使用されています。つまり、単なるクラブ音楽としての踊れるという要素だけにとどまらず、バックグラウンドミュージックとしての重要な要素、聞き流す事のできる陽気な音楽としても適しています。

また、Jungleは、ミュージックビデオ制作にも力が入れており、専門の監督、振り付け師、ダンサーを器用する。映像作品を音楽から独立したアート作品というように捉えているアーティストです。

既に、イギリスの著名な音楽フェスティヴァル、グラストンベリー、レディングへの出演を果たしており、ライブパフォーマンスでは、サポートメンバーを追加し、六、七人編成まで膨らんで、ファンカデリックやスライ・ザ・ファミリーストーンのようなソウルフルなロックバンドへの様変わりを果たす。楽曲の制作自体は、ジョッシュロイド・ワトソンとトム・マクファーランドの2人で行われていますが、実際の活動としては流動的な形態を持つアーティストです。

  

 「Loving in Stereo」 2021

 

今回ご紹介するJungleの2021年の8月13日に、自主レーベル、Caiola Recordsからリリースされた「Loving in Stereo」は、発表時に予告編のミュージックビデオが話題を呼んだ作品。 
 
 
 
 

 TrackListing

 
 
1.Dry Your Tears
2.Keep Moving
3.All Of the Time
4.Romeo
5.Lifting You
6.Bonnie Hill
7.Fire
8.Talk About It
9.No Rules
10.Truth
11.What D'you Know About Me?
12.Just Fly,Don't Worry
13.Goodbye My Love
14.Can't Stop The Stars
 

 
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前々からのミュージックビデオでも登場していた"ビネット"というダンサーを起用し、廃墟となった複合施設、刑務所で映像が撮影されています。また、ゲストとしてラッパーのBas,そしてスイスのTamilミュージシャンPriya Raguを起用している辺りも見過ごせない点といえるかもしれない。
  
このアルバムの実際の音楽性としては、これまでの方向性を引き継いだ往年の60.70年代のディスコサウンド、あるいはファンク、ソウルの王道を行くもので、大きな捻りはなし。ソウル、ファンクの核をこれでもかというくらいに突き詰めたサウンド。白人としての黒人音楽への憧憬というのは、イギリスの近代大衆音楽の重要なイデアとも呼べそう。このブラックミュージックの音楽を知る人なら、音楽性の真正直さに面食うはず。それでも、懐古感、アナクロニズムという要素はとことんまで突き詰めていくと、新しい質感をもたらすことの証明でもある。
 
アースウインドアンドファイヤー等のディスコサウンド全盛期の時代の熱狂性を現代のロンドンのアーティストとして受け継ぎ、その旨みをギュウギュウに凝縮したサウンドとしか伝えようがなし。もちろん、リアルタイムでのリスナーだけでなく、後追い世代のリスナーもこのJungleの生み出す真正直なディスコサウンドを聴けば、妙なノスタルジックさに囚われ、さながら自分がこれらのディスコサウンド時代のダンスフロアに飛び込んでいくような錯覚を覚えるはず。

しかし、現代の他のファンクサウンドを追求するアーティストにも通じることだけれども、もちろん懐古主義一辺倒ではないことは、Jungleがユーロ圏で大きな人気を獲得している事実からも伺えます。

一曲目のトラック「Dry Your Tears」はアルバムの序章といわんばかりに、ストリングスを用いたボーカル曲としてのドラマティックなオーケストラレーションで壮大な幕開け。そして、そこからは、いかにもJungleらしい怒涛のソウルサウンドラッシュに悶絶するよりほかなし。
 
特に、#2「Keep Moving」から#3「All Of Time」のディスコサウンド風のノスタルジーにはもんどり打つほどの熱狂性を感じざるをえない。ダンスフロアのミラーボールが失われた時代に、Jungleは、ミラーボールを掲げ、現代の痛快なソウル、ファンクを展開する。この力強さにリスナーは手を引かれていけば「Love in Stereo」の持つ独自の世界から抜けで出ることは叶わなくなるでしょう。
 
 
音自体のノスタルジーさもありながら、サンプリングをはじめとするラップ色もにじむクールなトラックの連続。これには、目眩を覚えるほどの凄みを感じるはず。この土道のR&Bラッシュは、アルバム作品として中だるみを見せず、#8「Talk About It」で最高潮を見せる。ここでも、往年のディスコサウンドファンを唸らせるような通好みのコアなファンクサウンドが爽快なまでに展開される。また、#12「Just Fly,Dont't Warry」というタイトルには笑いを禁じ得ませんが、ここではブーツイー・コリンズ並のコアなファンクサウンドを体感することが出来るはず。


そして、Jungleのアルバムとしての熱狂性は、中盤で最高潮を迎えた後、徐々にしっとりとしたソウルバラードにより徐々に転じていく。特に、アルバム終盤に収録されている「Goodbye My Love」は聞き逃すことなかれ、実に、秀逸なR&Bバラードであり、チルアルト的な安らいだ雰囲気を持ったトラック。
 
 
もちろん、アルバムトラックの最後でリスナーの気分を盛り上げずにはいられないのがJungleのサービス精神旺盛たるゆえんなのでしょう。彼らは、このアルバム制作について

「私達が音楽を書くときには希望がある、私達は人々に影響を与えるような何かを作るでしょう。あなた方の気持ちを持ち上げるに足る作品を作れる事ができれば一番素晴らしい」と語る。
 
 
そして、それは彼等2人の9歳の頃からの友情により培われたソウルでもある。彼等の言葉のとおりで、作品の幕引きを飾る「Cant’ Stop The Stars」は、ソウルサウンドによって、リスナーの気持ちを引き上げていく力強さに満ちあふれている。シンセサイザーのアレンジメントも、往年のブラックミュージックファンも舌を巻かずにはいられない素晴らしさ。現代的な洗練性、そして、往年のノスタルジーを見事にかけ合わせ、ブレンドしてみせた、この素晴らしきネオ・ソウルサウンドをぜひ、一度ご堪能あれ!!
 



References


 
Wikipedia 


 



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