What's Hot? This Month New Singles

 


その名の通り、今月9月にリリースされた作品の中から最もアツいシングル作を取り上げていくというコーナーです。インディーアーティストが中心となります。是非、音楽フリークの方はチェックしてみて下さい!!



1.Beach Fossils 

「The Other Side Of Life:Piano Ballads 」

 

今月のインディーアーティストの新作で再注目のリリースは、ニューヨークのインディーロックバンド、ビーチ・フォッシルズの「This Year(Piano)」。最新スタジオ・アルバムのリリースを機にCaptured TracksからBayonet Recordsに移籍し、「Somersault」という傑作を2017年に発表しています。

今回のシングル「The Other Side Of Life」は「Somersault」に収録されている「This Year」を始めとする三つの楽曲のジャズアレンジメントとなります。

これまで、2010年からインディーロック・バンドとしてニューヨークのライブハウスを中心に活動してきたビーチ・フォッシルズは、前作「Somersault」でクラブミュージック寄りの方向性に進み、ファンをあっと驚かせたわけですが、最新シングルでビーチフォッシルズは、さらに”ジャズ”という思ってもみなかった未知の領域に踏み入れました。このシングル作は、これまでは作品のアレンジではありながら、本格派の落ち着いたニューヨークジャズに挑んだ意欲作。人生の別領域と名付けられたタイトルも何か次なる作に対する期待感を感じさせるようです。ピアノ、ウッドベース、トランペットのゴージャスな都会派の雰囲気を持った見事なアレンジを是非御堪能あれ。



 

2.Snail Mail 

「Valentine」 

 

スネイル・メイルはアメリカのインディーロックというジャンルを中心に活躍するリンジー・ジョーダンのソロ・プロジェクト。

デビュー作「Habit」は米国内のメディアに絶賛、この約六年の間、多くのファンを獲得している再注目の女性シンガーソングライター。そして、今月に発売されたニューシングル「Valentine」は次回作のスタジオ・アルバムの期待感をより高めるような魅力的な楽曲。これまでのローファイ、ギターロックの路線からビッグシンガーへの道のりを歩みはじめたと感じさせる雰囲気を持った楽曲。

「Valentine」は、これまでのアメリカのインディー・ロックの醍醐味を凝縮した上で、キャッチーさ、ポップ性が付加され、より一般的なリスナーの琴線にも触れうるような楽曲といえるはず。

もちろん、スネイル・メイルのヴォーカルの質感も以前よりもグレードアップし、いよいよビックアーティストに近づきつつあるのかも。さて、今月27日から、米、リッチモンドの公演を皮切りに、イタリア、フランス、UK、と、世界ツアーを控えているスネイル・メイル。今、最も旬なアメリカのインディーロックアーティストとして最注目のミュージシャンです。 

 

 

3.Sharon Van Etten

「Femme Fetale」

 

今、アメリカではメタリカの「ブラック・アルバム」のカバーアルバムがリリースをまもなく迎えようとしており、しかも、この作品は四枚組、と目玉の飛び出そうなヴォルーム、さらに50組以上!?ものアーティストが参加しているという豪華コンピレーション作品。しかも、この作品の売上のほとんどは寄付されるらしい。そして、このコンピレーションには、ポップス、ヒップ・ホップからロックまでメタリカを敬愛する様々なジャンルのアーティストが参加しており、つまり、今、アメリカの音楽シーンでは空前のカバー・ムーブメントが到来していると言えそう。

さて、この「ブラック・アルバム」のカバーの流れを受けてか、アメリカのドラマ、「ツイン・ピークス」の新ヴァージョンの出演など女優としても活躍するシャロン・ファン・エッテンは我が道を行かんとばかりに、ヴェルベット・アンダーグラウンドのデビューアルバムの「Femme Fetale」のカバー作品をシングルとして発表しています。

これから、テレビタレント、女優業に専心するのかというと、このカバー作品を聴くかぎりでは、やはりあくまで女優業はサイドプロジェクトにとどまり、ミュージシャンとしての看板を下ろす気はさらさらないようです。そういった気迫がこのベルベットアンダーグラウンドの名曲のカバーにはひしひしと感じられます。

ここでは、原曲よりもテンポはスローダウンし、この楽曲の良さをファン・エッテンの渋みのある正統派のボーカルにより懸命に引き出そうとしている雰囲気。やはり、このカバーを聴くと、素晴らしいVocalistだと痛感します。エンジェル・オルソンとの共作シングルについても同じでしたが、シャロン・ファン・エッテンのヴォーカルというのは、女性シンガーでありながら、中音域がきわめて強く、独特な渋みに彩られています。このカバー曲「Femme Fetale」は、複雑なアレンジメントが施されていますが、やはり、原曲に対するリスペクトを感じる一曲。ザ・ヴェルベット・アンダーグラウンドがお好きな方は聴き逃せませんよ。 



 


4.James Blake 

「Famous Last Words」 

 

こちらは、UKのクラブミュージックシーンを沸かせているジェイムス・ブレイク。サウスロンドンのアーティスト。今月に入り、三作品のシングルをリリースしているジェイムス・ブレイクですが、新作スタジオ・アルバム「Friends That Break Your Heart」が10月8日に控えています。グロテスクなアルバムアートワークなので賛否両論を巻き起こしそうな作品ですが、それまではこのシングル、Spotify特典の二曲のシングルを聴いて、アルバムの発売を心待ちにしたいところです。

今月、アルバムの先行リリースという形で、「Say What You Will」「Life Is Not The Same」「Famous Last Words」の三作が既に発表されています。特に、「Famous Last Words」という楽曲は、今後のイギリスのクラブシーン、UKソウルシーンの潮流を変えてしまいそうな力を感じる作品として注目しておきたいところです。

これまでの音楽の方向性と同じように、「人間味のあるソウル」というジェイムス・ブレイクの掲げる概念、根本的な音楽性については保持した上で、ここではバックトラックにかなり独特な雰囲気が漂っており、バッハの「平均律クラヴィーア」のような、古典的な旋律進行の影響が感じられる。元々、幼少期に、クラシック・ピアノを学んでいたジェイムス・ブレイクですが、これから後、自身の音楽の原体験に向けて遡上していくかのような雰囲気もなんとなく感じられるよう。

最新シングル作「Famous Last Words」でジェイムス・ブレイクは、ディープソウルとクラシック音楽の融合に果敢に挑戦したような意図も伺えます。ストリングスのアレンジというのも上品な感じが漂っています。来月発売されるスタジオ・アルバム作「Friends That Break Your Heart」の他の収録曲の出来栄えがどうなるのかが見どころでしょう。しかし、現時点において、2020年代のUKクラブ・ミュージック最先端を行くのは、やはり、サウスロンドンのアーティスト、ジェイムス・ブレイクのよう。なんとなく、来年開催のブリット・アワードで一部門のウィナーに輝きそうな作品になるかもしれないと予測。もちろん、レディオ・ヘッドのトム・ヨークに近いアプローチ性を感じさせる楽曲で、そのあたりの音楽がお好きな方も要Check!!です。


 

5.Black Marble 

「Preoccupution」


ブラック・マーブルは、米、ニューヨーク、ブルックリンの宅録アーティスト、クリス・スチュワートのソロ音楽プロジェクト。これまでテクノ音楽の醍醐味を踏襲したスタジオ・アルバム「It's Imatterial」のリリースを機に、アメリカのインディーシーンで注目を集めています。ブラック・マーブルは、独特な陶酔感のある雰囲気の漂うテクノ・ポップ、エレクトロ・ポップを現代のミュージックシーンに体現しています。

「Ceiling」「Somewhere」のシングル二作に続いて、9月21日にリリースされた最新シングル「Preoccupution」も、ブラック・マーブルらしいヴィンテージ感あふれる痛快なテクノ・ポップ作品として、レコメンドしておきます。ここでは、現代的なテクノから完全に背を向けた古き良き時代の電子音楽のピコピコ感が堪能出来、また、ブラック・マーブルらしい独特なメロディーセンスを体感できる一枚となっています。懐古主義の中に今まで見過ごされてきた新規な音楽性を新たに発見するという点では、ニューヨークのリバイバルシーンの流れにある電子音楽家といえるでしょう。ブラック・マーブルの音楽性を「孤独感」というように称される場合もごく偶に見受けられますが、どちらかと言えば「クールさ」と言ったほうがふさわしいかもしれません。

シングル盤でありながら、三曲+ラディオ・エディットが収録されているEP作品に近い聴き応えのある作品。独特なニュー・オーダーに近いエレクトロ・ポップは、これまでの作品に比べてさらに洗練されたという印象。そして、古いタイプのリズムマシーンを使用したシンプルなビート、そして、独特なブラック・マーブル節ともいうべき、内省的な叙情性をはらんだ雰囲気を持った浮遊感ある宅録ヴォーカルというのがこのアーティストの音楽の醍醐味。時代の流行をまったく度外視し、オリジナルなサウンドを追求する電子音楽アーティストの快作として挙げておきます。

 

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