Yaya Bey インスピレーションを受けたアーティスト、ロバータ・フラック&ダニー・ハサウェイについて語る

 


2020年代の新たなブラックミュージックの潮流を形作るアーティストとしてあげられるのが、ワシントン出身のソウルシンガー、Yaya Bey。彼女は現在、ワシントンからブルックリンに拠点を移し、活動を行なっている。

 

2022年6月17日、ブルックリンのシンガーソングライター、Yaya Bay(ヤヤ・ベイ)は、大胆かつ優しいデビューアルバム『Remember Your North Star』をリリースし、高評価を受けて、国内外で期待アーティストとして注目を浴びることになりました。

 

ヤヤ・ベイは、モダンR&Bの新しい潮流として位置づけられる自身の音楽性の骨格を形作る上で、そのインスピレーションの源泉として、グラミー賞を受賞し、今年50周年を迎えるロバータ・フラック&ダニー・ハサウェイの1972年のデュエット・アルバム「ロバータ・フラック&ダニー・ハサウェイ」を挙げています。そして彼女の音楽の聴き方を変えたという幼少期のエピソードを語った。

 

ヤヤ・ベイは自分の音楽観を形成する上で欠かすことができないものとして、ロバータ・フラックとドニー・ハサウェイのセルフタイトルのデュエットアルバムの影響を挙げています。最初にこの素晴らしいレコードに出会ったのは、13歳の頃、祖母の家の地下室で叔父のレコードをこっそり聴いた時だったという。

 

この劇的なアルバムを発見したのと同時期、ラッパーのスカーフェイスの「On My Block」という曲がラジオで流れているのを聴き、フラックとハサウェイの曲「Be Real Black For Me」をみずからサンプリングした。つまり彼女の父親が、この2曲の点と点を結ぶように手ほどきをしてくれたのです。

 

「父はラッパーであり、ヒップホップのプロデューサーでもあるので、おさないころの私にレコードをかけては、サンプルを当てさせたり、古いレコードをかけては、こんなものが、これをサンプリングしているんだと色々教えてくれました。私が初めて曲の中にあるサンプルを確認できたのは、たぶん『Be Real Black For Me』だったかと思います」


ヤヤ・ベイの父親はラッパーの”Grand Daddy I.U”。1989年に、Biz MarkieのCold Chillin' Recordsと契約していた。ヤヤ・ベイによると、彼女の父は、幼い頃から音楽について多くのことを教えてくれたというが、歌うことについては何度か思いとどまらせられたという。「父は、私に歌うべきでない、と言いましたが、曲を書くことを勧めてくれた」と彼女は語る。「父はいつも私が良い作曲家だと思ってくれていた」と。


ヤヤ・ベイが詩や歌を書き始めたのは、小学生の時だった。ハサウェイとフラックのコラボレーションアルバムのオープニング曲「I (Who Have Nothing)」は、片思いを嘆く憂鬱な歌詞であり、彼女はその歌詞に惹きつけられたことをいまでもよく覚えているのだそうです。この曲は、「ハウンド・ドッグ」や「監獄ロック」で有名なジェリー・ライバーとマイク・ストーラーの伝説的コンビがカルロ・ドニーダの書いたイタリアの曲をアレンジして書いたものです。有名なところでは、トム・ジョーンズやシャーリー・バッシーもカバーしています。


「この曲は、私が座って聴いて、頭の中にイメージが浮かび、歌詞から物語を作ることができた最初の曲でした。そして、ダニー・ハサウェイの歌声は、私たちがこれまで経験した中で最も特別な歌声のひとつだった」

 

ダニー・ハサウェイは、これからの活躍が期待された時代に、悲劇にも、わずか33歳の若さで自殺したものの、重要なアーティストにはかわりありません。ジョージ・ベンソン、アリーヤ、コモン、アリシア・キーズなど様々なアーティストに影響を及ぼしたとも言われる。例えば、エイミー・ワインハウスは、ハサウェイを、これまでで最も好きなアーティストと呼んでいたのです。


「ダニー・ハサウェイが歌うものはすべて、彼が言っていることと関係があると信じるれるほど歌詞を誠実に歌っている」と語る。さらに、ロバータ・フラック&ダニー・ハサウェイは「自身の音楽の聴き方そのものを変えた」とも語っている。「特に作家として、より多くのものを聴くようになってから、耳をオープンにするのに役立った。歌詞を聴き、メロディーを聴き、彼らの声のトーンを聴くようになった。このアルバムを聴くまでは、そんなことはしていなかったし、意識もしていなかったと思う」


フラック、ハサウェイ、両者のR&Bシンガーに影響を受けたヤヤ・ベイの歌詞はすべて、”愛と人間関係”をテーマに置いている。ヤヤ・ベイがインスピレーションを受けたのは、愛の物語をより広い政治的・文化的テーマと絡める先人たちの特質なのです。


「ただ、単にロマンチックな愛だったり、公園の散歩を歌っているように見える曲でも、そこには必ずその時代に人々が経験している感覚を反映している」と「Be Real Black For Me」について次のように語っている。

 

「この時代は、ブラック・パワー・ムーブメントの黎明期であって、黒人が髪をナチュラルにし始めたり、つまり黒人であることに誇りを持ち始めた過渡期だったのね」彼女は語る。「"Be Real Black For Me "はラブソングだけど、曲の物語に連なりを与える表面的なレベルを超え、人々にとって重要なことを取り上げる方法を見つけだした」と。

 

ヤヤ・ベイ自身の歌詞も同様に重層的である。アルバムのある曲では、世代間のトラウマと透明感の感情を表しており、さらに、別の曲では、自己価値と資本主義の破壊的な影響を巧みに融合してみせている。今年6月にリリースされた『Remember Your North Star』は、ヤヤ・ベイが別のEPとLPを手掛けながら制作したアルバムだった。しかし、当初は『Safe Travels(安全な旅)』というタイトルになる予定だったという。これはどういう意味があったのだろう??


「曲を煮詰めるための時間が必要でしたし、このアイデアを実現するために、私は別の、より強く、より経験豊かなアーティストとして成長する必要がありました」とヤヤ・ベイは振り返り、新しいタイトルの『Remember Your North Star』は、仮タイトルの”Safe Travels”よりも自己主張性が強いように感じた、と付け加えている。さらに、「”北極星”というコンセプトは、それ自体がより確かなものに感じられる。自分の北極星が何であるかを知らなければ、それを目指すことはできない」とも話している。

 

ヤヤ・ベイはまだデビューアルバムをリリースしたばかりですが、これからブラックミュージックの新たな流れを形成してくれそうなシンガーソングライターとして注目です。


 

 Yaya Bay  『Remember Your North Star』

 


 

 Listen/Buy:

 

https://yaya-bey.lnk.to/rynsAT 


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