Weekly Recommendation  Pixies 『Doggerel』

  Pixies    『Doggerel』

 

 

 

Label:  BMG

Release:  2022 9/30

 


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Review

 

 

 US・インディーロックの伝説であるピクシーズは、最新アルバム「Doggerel」で復活の兆しを見せたと言えるでしょう。

 

 1980年代後半から、ニルヴァーナ、ウィーザー、日本のナンバーロックバンドに強い影響を及ぼしてきたピクシーズは、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドに次いで、このオルト・ロックという文脈を語る上で欠かすことが出来ない最重要バンドです。以前にも記しましたが、元々、マサチューセッツの大学生だったブラック・フランシスがハレー彗星を見るか、大学に残るか迷ったあげく、この伝説的なプロジェクト、Pixiesを立ち上げることになったというエピソードもある。


80年代後半から90年代にかけて、ピクシーズは「Surfer Rosa」「Come On Pilgrim」「Bossanova」といった名作群で、数々のオルタナティヴ・ロックの金字塔を打ち立てました。(『Surfer Rosa』収録の「Where is My Mind?」は、ブラッド・ピット主演映画『ファイト・クラブ』の主題歌としても知られています)

 

その後、ピクシーズのベーシストのキム・ディールは、Amps,Breedersといったバンドで活躍しました。その後、ピクシーズは一度は解散をするものの、2004年に再結成を果たす。その後、脱退したオリジナル・メンバー、キム・ディールの後任として、パズ・レンチャンティンをメンバーに迎え再結成。以後、今作『Doggerel」を含め、二作のオリジナルアルバムをリリースしている。 

 

Pixies

 

  『Doggerel』は、まさにオルタナティヴ(亜流)という概念を掴む上で聞き逃すことが出来ない作品であるとともに、以前より普遍的なロックミュージックへ傾倒をみせたレコードとなっている。今作には、ピクシーズの雑多な音楽、ロカビリー、カントリー、スパニッシュ、アメリカーナにいたるまで、幅広いジャンルが内包されている。

 

 アルバムの序盤は、マイナーコード主体のミドルテンポの楽曲が繰り広げられていく。『No Matter Day』でピクシーズは、ピクシーズワールドの中にリスナーを誘う。その次のトラック「Vault Of Heaven」では、ピクシーズ節ともいうべき独特なコード進行で、さらに、その世界観を徐々に押し広げていく。ブラック・フランシスのボーカルはこれらのオープニングをさらりと歌い上げ、作品のテーマ性を丹念に引き出し、中盤部分へと物語を引き継いでいきます。


 #3の「Dregs Of Wine」では、ビートルズの「Because」を彷彿とさせるマイナー調のチェンバー・ポップ風のイントロから、曲のサビにかけて渋さのあるロックミュージックへと変容していく。ここでもピクシーズらしさは健在であり、特異なコード進行が見られる点にも注目したいが、さらにツインボーカルの兼ね合いにも着目です。


 ブラック・フランシスのボーカルは、90年代は勢いのみで突っ走るような感もありましたが、現在ではそれに加え、ヴォーカリストとしての貫禄が備わっており、それはまさに「オルタナティヴ界のボス」とも称すべき。フランシスのボーカルは、迫力とパワフルさに独特なダンディズムが加わっていることを確認出来る。そのアクの強さを上手く中和するのが、パズ・レンチャンティンのコケティッシュなコーラスです。レンチャンティンのボーカルは、以前のキム・ディールの雰囲気を顕著に受け継いでいるため、以前からのファンも、それほど違和感をおぼえることはないと思われます。

 

 アルバムの序盤において、ピクシーズはより円熟味を帯びたクラシカルなロックバンドの一面を見せているが、中盤にさしかかると、オルタナティヴ・ロックの始祖としての独特なひねりを持つ楽曲が徐々に現れて来る。「Get Simulated」から、変拍子を交えた荒削りなギターフレーズを生かした、ピクシーズらしいサウンドに回帰を果たしています。「The Lord Has Come Back Sound」は、往年の名曲「Here Comes Your Man」を彷彿とさせる、温和なインディー・ロックで、初見のリスナーにも親しめるような楽曲となっている。これらの曲の流れに、ピクシーズの熱烈なファンは、甘美なノスタルジアを覚えるに違いありません。さらに、それに続く「Thunder and Lightning」で、ピクシーズは、クラシカルなフォークミュージックに依拠したオルト・ロックに挑戦している。ブラック・フランシスは、近年のソロ活動の経験を踏まえ、シンガーソングライターとしての才覚を十分発揮してみせている。聴けば、聴くほどに、渋さが滲み出てくるような楽曲です。

 

 「Pegan Man」を聴いた時、リスナーは、このピクシーズの真の魅力の一端に触れることが出来る。こういった素朴な哀愁あふれるバラードソングは、涙を誘うような温かな情感が漂う。曲のクライマックスに挿入される口笛は、モリコーネ・サウンドの影響か、はたまた坂本九の影響なのか、ワイルドでありながら淡い哀愁に満ちている。

 

 

「Pegan Man」 

 

 

  最新アルバム『Doggrel』は隙きがなく、細部まで入念に作り込まれており、終盤からエンディング近くになっても、このアルバムは緊張感を緩めることを知りません。


#11「You’re Such A Sadduce」で、ピクシーズは、オルト・ロックの未知なる領域に踏み入れている。ジョーイ・サンティアゴの名ギタリストとしての才覚が遺憾なく発揮されているにとどまらず、バンドサウンドとしての1つのスパークが見受けられる。ブラック・フランシスの覇気のあるパワフルなボーカル、パズ・レンチャンティンのキム・ディールを彷彿とさせるコケティッシュなボーカル、さらに、デイヴィッド・ラヴァリングのシンプルでタイトなドラミングが見事に劇的な合致を果たし、緊密なバンドアンサンブルが生み出されている。さらに、ジョーイ・サンティアゴのギターは、かつての「River Euphrates」時代のように、”宇宙的な壮大さ”を内包しています。

 

「You’re Such A Sadducee」は、ピクシーズの”New Classic”と称すことが出来る。さらにクローズド・トラック「Doggerel」で、ピクシーズは、この作品で終わりではないという宣誓をファンに提示し、ダブ、ファンクの雰囲気を取り入れたロックソングで、リスナーの期待を良い意味で裏切ってみせる。これまでのピクシーズの音楽性からは想像できないような楽曲となっている。

 

少なくとも、私見においては、ピクシーズは、このアルバム「Doggerel」で、復活の呼び声を高らかに告げており、現行のオルタナティヴ・ロックバンドとの存在感の違いを明確に示すことにも成功している。また、前作「Beneath the Eyrie」とは別のバンドに転身を果たしたような印象を受ける。

 

 

90/100

 

 

Weekly Featured Track 「You’re Such A Sadducee」

 

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