New Album Review Caitlin Rose 『CAZIMI』

 Caitlin Rose  『CAZIMI』

 

 

 Label: Pearl Tower

 Release: 2022年11月18日


 

Review

 


米・ナッシュビルのソングライター、ケイトリン・ローズは、シングルこそ2012年からリリースしているようですが、最初のアルバムのリリースは21年で、九年の月日を要している下積み期間を長く積んできたシンガーです。

 

占星術の専門用語に因んだタイトルが冠されて発表されたセカンド・アルバム『CAZIMI』は、パンデミック以前に録音が行われ、プロデューサーのJohn Lehningと二人三脚で生み出された作品となっています。前作のリリース後、ケイトリン・ローズは、一時的に、ミュージシャンとして完全に自信を喪失しかけており、やめようとも考えていたようですが、結果的にプロデューサー、ジョン・レーニングに後押しされる形で、2ndアルバムのリリースにこぎつけています。この作品『CAZIMI』はこの歌手としての自信を取り戻すためのきっかけともなりえるでしょう。

 

ケイトリン・ローズの音楽は、古き良きUSポップスを彷彿とさせ、温和な雰囲気に彩られています。それほど肩肘をはらず、自然体で歌う姿勢は、多くの共感を呼び覚ますものとなっている。しかし、その現実的な姿勢は常に、ロマンチックな感慨へと眼差しが注がれている。このあたりのメルヘンチックな感じに本作の最大の魅力が込められています。これはこのアーティストの神秘的な概念に対する憧れがいわく言いがたいミステリアスな雰囲気として、このアルバムの全編を覆い、音楽性の表面性を形作っています。また、音楽的にいえば、本作では、スティールギターを交えたカントリーソングや、キッシュな感じのあるインディーロックソングと、このシンガーソングライターらしさが全面的に引き出されています。70年代の懐かしのポップス、ファンシーなキャラクターが、このアルバムの独特なまったりとしながらも神秘的な世界観を形成し、それらはシンセやグロッケンシュピールといった楽器、他にもギターの絶妙なカッティングにより、楽曲本来の持つドラマ性やダイナミック性が引き立てられているのです。

 

明らかに古典的なカントリー/フォークを志向していたデビューアルバム「Own Side Now」とは打って変わって、やはり、ミュージシャンとしての試行錯誤の跡が残っている作品で、ケイトリン・ローズは、オルタナティヴ・ロックの性質を突き出し、前作よりもフックの効いた楽曲が目立ちます。そして、この点については、未知の領域を開拓しているように感じられますが、あくまでケイトリン・ローズの音楽性の核心にあるのは、ささやかなフォーク/カントリー性にあり、ラジオ全盛期にかかっていたような名ポピュラー・ミュージックの踏襲にあるわけなのです。


それに加え、オープニングトラック「Carried Away」や「Black Obsidan」で見られるこのアーティストの占星術に対する興味が窺えるような曲も作品全体に強い個性をもたらしています。ケイトリン・ローズは、これらの懐古的なフォーク・カントリーの要素に、占星術への興味からくる特異なミステリアスな雰囲気を付け加えて、それを包み込むような温みのあるボーカルでさらりと歌いこんでいます。このあたりの漂うチェンバーポップ/バロックポップの要素は、じっくりと聴きこめる要素を作品自体に与えており、先日リリースされたウェイズ・ブラッドと同様、古い時代の音楽への共鳴が示されているようにも思えます。ケイトリン・ローズのヴォーカルはそれらの往年の名ポピュラー・ミュージックへの大いなる讃歌ともなっているわけです。

 

本作には他にも聴き逃がせない曲が収録されており、「Holdin'」やクローズを飾る「Only Lies」では、ファースト・アルバムとは異なるアプローチを図り、現代的なオルタナティヴ・ロックへの傾倒を見せています。これらの二曲は、はつらつとしたエネルギーに満ちていて、リスナーを巻き込む力に溢れており、このシンガーソングライターが次のステップへ進んだことを証明するものとなっています。


現時点では、カルト的な立ち位置に甘んじている感のあるケイトリン・ローズではあるものの、ソングライティングにおける高い能力は、この作品で証明しているので、もし、フォーク/カントリーというルーツをより究め、このアーティストの意外な魅力の1つであるオルタナティヴな要素がより強く出た場合には、より幅広い人気を獲得出来る余地があるように感じられます。



67/100

 

 

Featured Track 『Black Obsidian」


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