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テネシーのシンガーソングライター、Marissa Nadler(マリッサ・ナドラー)が10枚目のフルアルバム『New Radiations』をSacred Bonesからリリースする。 今年、Spelllingの新作をリリースし勢いに乗るレーベルの待望の新作は女性シンガーソングライターのアルトフォークとなる。


最初の一音から、ナドラーのみずみずしい歌声と複雑なフィンガーピッキングが前面に出ている。 ファズがかったディストーション、ハモンド・オルガン、不吉なシンセサイザーなど、夢のようで寂しげなサウンドスケープにエヴァリー・ブラザーズ・スタイルのハーモニーを重ねる。 各トラックは、まるで生きてきた人生のヴィネットのように展開し、静かな激しさをもって響く感情の重みを伝える。


このアルバムはリードシングルに見いだせるようなフォークを基調としたポップソングを中心に構成されているが、その荒唐無稽とも呼ぶべきイマジネーションがアルバムの核心には存在する。空飛ぶセスナ機、宇宙船、逃走用の車、そして異次元の世界.......。 甘くキャッチーなメロディーとダークで直感的な歌詞のコントラスト。 一人称の物語から歌おうが、他の人々とチャネリングしようが、このアルバムは愛と喪失の普遍性を重厚さと共感をもって表現している。


『New Radiations』はナドラー自身がプロデュースし、ランダル・ダン(Earth、Sunn O)))がミックスした。長年のコラボレーターであるミルキー・バージェスによる繊細なアレンジが特徴で、ウージーなスライド・ギター、催眠術のようなシンセサイザー、硬質なリフが印象的だ。 

 

ジャンルにとらわれない彼女らしいこのアルバムは、世界のノイズを一瞬の美しさと荘厳さで凍りつかせる。 マリッサ・ナドラーの唯一無二のビジョンと芸術性の証であり、キャリアのハイライトである。

 

アルバムの発表と合わせて公開されたリードシングルはタイトル曲である。アコースティックギター/ボーカルを中心に構成されるこの曲はシンガーソングライターの悲しみを体現させている。

 

 「New Radiations」 

 

 

 

Marissa Nadler 『New Radiations』  




Label: Sacred Bones

Release: 2025年8月15日


Tracklist:

 

1. It Hits Harder

2. Bad Dreams Summertime

3. You Called Her Camelia

4. Smoke Screen Selene

5. New Radiations

6. If It's An Illusion

7. Hatchet Man

8. Light Years

9. Weightless Above The Water

10. To Be The Moon King

11. Sad Satellite

 

 

Pre-save :https://bfan.link/new-radiations 

 

Photo: Bobby Doherty

ニューヨークのフォークプロジェクト、Big Thiefがニューアルバムをアナウンスした。『Double Infinity』はグラミー賞にノミネートされた2022年のアルバム『Dragon New Warm Mountain I Believe In You』に続く作品で、昨年の冬にニューヨークのパワー・ステーションでレコーディングされた。 


トリオは3週間、ブルックリンとマンハッタンを結ぶ凍てついた道を自転車で走り、パワー・ステーションの温かみのあるウッドパネル張りの部屋に集合した。  


アレナ・スパンガー、ケイレブ・ミッシェル、ハンナ・コーエン、ジョン・ネレン、ジョシュア・クラムリー、ジューン・マクドゥーム、ララアジ、ミケル・パトリック・エイブリー、マイキー・ブイシャスといったミュージシャンとともに、彼らは1日9時間演奏し、同時にトラッキングを行い、即興でアレンジを作り、集団的な発見をした。 


アルバムは最小限のオーバーダビングでライヴ録音された。  プロデュース、エンジニアリング、ミックスは、長年ビッグ・シーフとコラボレートしてきたドム・モンクスが担当した。


"生きている美しさとは、真実以外の何ものでもないのだろうか?" リード・シングルの「Incomprehensible」で、エイドリアンヌは子供の頃の思い出の品々を未来に突きつけながら問いかける。  


彼女は、"これから見るものすべてが新しいものになる "と理解している。  肩の銀髪も新しい。 しかし、老いに対する恐れは、その証明によって打ち砕かれる。  


人生が生きることによって形作られるのであれば、"重力に彫刻を、風に髪を任せて"。  生まれること、そしてしばらくとどまることは、最大の謎のままである。  エイドリアンヌは自分の場所と時間を主張する。 "理解しがたい存在よ、私をそうさせて" 


リードシングル「Incomprehensible」はビックシーフのアルトフォークが新境地に到達したことを窺わせる。実験的な音楽性だが、そこにはやはりこのバンドらしい繊細な抒情性が漂っている。



「Incomprehensible」

 




Big Thief     『Double Infinity』




Label: 4AD
Release: 2025月9月5日


Tracklist:

1. Incomprehensible
2. Words
3. Los Angeles
4. All Night All Day
5. Double Infinity
6. No Fear
7. Grandmother
8. Happy With You
9. How Could I Have Known


Pre-order(日本国内はBeatinkで予約受付中): https://bigthief.ffm.to/doubleinfinity

©︎Phoebe Fox

 

22歳のイギリス系インドネシア人アーティスト、Nadia Kadek(ナディア・カデック)を紹介しよう。

 

ミニマルなアルト・ポップとシンガー・ソングライターの感性を融合させた刺激的なサウンドは、現代音楽における魅力的な新しいヴォイスの登場を予感させる。 暖かく、豊かな質感を持つヴォーカルで、内省的なパワーを放つカデック。峻烈でありながら深い感情を揺さぶる曲を作り上げる。 


彼女のデビューシングル「Feeling It All」は力強いファースト・ステートメント。生のアコースティック・トーンと淡々としたリリックに支えられ、リスナーを静かな激しさと親密な語り口の世界へと引き込む。



今日のシングル・リリースについて、ナディアは次のように語っている。

 

『フィーリング・イット・オール』を書くことで、大人になることの現実味を処理し、子供の頃の理想主義的な期待を手放し、そもそもそれを抱いていた自分を許すことができた。


この曲を書き始めた翌日、親しい友人でコラボレーターのマット・イングラムが、一緒にこの曲を完成させるべきだと説得してくれた。 この曲は後でテープに録音したんだけど、とても親密で正直な演奏が撮れたの。


ノーフォークの静かな田園地帯で育ったナディアは、自分自身を "フェスティバル・ベイビー "だと言ってのける。フローレンス+ザ・マシーン、ジェフ・バックリーなどのサウンドトラックを聴きながら、キャンプ場までの長い車中泊の旅の中で、初期の音楽的記憶を形成していった。 


フェスティバルを楽しむ仲間たちの肩の上でヒーローを見守り、グラストンベリー2024の''エマージング・タレント・コンペティション''で準優勝し演奏するまでになった彼女の物語は、すでに一周した瞬間と静かな並外れた決意を示唆する。


現在、ロンドンを拠点に活動するカデックは、ライブ・パフォーマンスの力で着実に熱狂的なファンを増やしている。 


生の才能と粘り強さを見せつけるセルフ・ブッキング・ライブの後、カデックは、今日最も尊敬され、境界を押し広げるアーティストを育てることで有名なレーベル、Transgressive Recordsの目に留まった。


ナディアは最近、ザ・グレート・エスケープで2セットを演奏し、ロンドンのカムデン・アッセンブリーではコーデリアをサポートした。


今後、グラストンベリー、BSTハイド・パーク、ラティテュード、ピッチフォーク・フェスティバルへの出演が決定した。 2025年ブレイク必須のシンガーだ。今後のライブ日程は以下の通りです。



Nadia Kadek Tour Date: 

 

29th May - Green Room @ 21 Soho, London

18th June - Fresh Blooms @ Folklore, London

29th June - Glastonbury Festival

28th June - BST Hyde Park (Zach Bryan support)

26th July - Latitude Festival

8th November - Pitchfork Festival, London

 


「Feeling It All」は、ノスタルジア、傷ついた家族の絆、つかの間のロマンス、そして赦しの静かな回復力をナビゲートする、夏の終わりのほろ苦い輝きの中にあるコレクションである。 彼女のリリシズムは、エイドリアン・レンカーやリジー・マカルパインのようなアーティストの感情的な明晰さを思い起こさせる。

 

 

「Feeling It All」



Nadia Kadek: 「Feeling It All」- New Single

 

▪Listen/Stream: https://transgressive.lnk.to/feelingitall




Introducing Nadia Kadek, a 22-year-old British-Indonesian artist whose evocative blend of minimalist alt-pop and singer-songwriter sensitivity signals a compelling new voice in contemporary music. With a warm, richly textured vocal presence that channels introspective power, Kadek crafts songs that are both stark and deeply emotive. 


Her debut single, ‘Feeling It All’ is a powerful first statement - anchored in raw acoustic tones and unflinching lyricism, it draws listeners into a world of quiet intensity and intimate storytelling.

 

Speaking about today’s single release, Nadia shares “Writing ‘Feeling It All’ helped me process the realism of growing up, letting go of the idealistic expectations of childhood and forgiving yourself for having them in the first place.''


''The day after I started writing the song, my close friend and collaborator, Matt Ingram, convinced me we should finish it together and I feel like that process really put me on the path to finding my other songs. I recorded it to tape later on and that captured a very intimate and honest performance.”

 

Raised in the quiet countryside of Norfolk, Nadia describes herself as a “festival baby,” with early musical memories formed on long car journeys to campsites, soundtracked by the likes of Florence + The Machine and Jeff Buckley. 


From watching her heroes on the shoulders of fellow festival-goers, to playing Glastonbury 2024 after placing runner up in their Emerging Talent Competition, her story is already one of full-circle moments and quietly extraordinary determination.

 

Now based in London, Kadek has steadily built a devoted following through the power of her live performances. After a string of self-booked live shows that showcased both her raw talent and tenacity, Kadek caught the attention of Transgressive Records, a label renowned for nurturing some of the most respected and boundary-pushing artists of today.

 


 

昨日(5月21日)、オーストラリア/メルボルンを拠点に活動するTamas Wells(タマス・ウェルズ)が2曲入りのニューシングルをデジタルでリリースした。

 

「Please Don't Leave」はアーティストにとって一年半振りの新作。タマス・バンドの長年のメンバーとして知られるメルボルンのアーティストNathan Collinsによる新プロジェクトThe Ground Applesとのコラボレーション作品。近年はバンド・サウンドに移行していましたが、「Please Don't Leave」「It's Not Right That You're Alone, Madison」では、かつてのアコースティック・サウンドに回帰。美しいメロディを擁する上質なフォークソングとなっている。

 

タマス・ウェルズは、ミュージシャンとして活動するほか、東アジアの政治学者として学術的な活動を行っている。メルボルン大学の社会政治学の学者であり、学会に入る以前には、ミャンマーの七年間滞在し、NGOで公衆衛生やカバナンスのプログラムに携わっていた。最近の主要な著書には、「ミャンマーの民主主義を語る」等がある。

 

この新曲は、イースト・ブランズウィック・トーン果樹園でレコーディングされた。ザ・グラウンド・アップルズとウェルズが共同プロデュースを手掛けた。タマス・ウェルズは、ビートルズからの強い影響を受けたと明かしているが、マッカートニー/レノン・ライクのソングライティングに加えて、ニック・ドレイク風のコンテンポラリーフォークの要素が付け加えられている。

 

「Please Don't Leave」では、ミュージシャン自身によるみずみずしいアコースティックギターの音色とボーカルの美しいハーモニーを体感することが出来る。 他方、「It’s Not Right That Alone, Madison」ではアメリカの最初のインディーロックスター、アレックス・チルトン(Big Star)を彷彿とさせる、奥深い雰囲気を持つインディーズライクのフォークミュージックを収録している。いずれの楽曲も良質なメロディーと心地よいサウンドを楽しむことが出来ます。

 

タイトル曲のリリックビデオが公開されているので、下記よりご覧下さい。The Ground Applesが映像のプロデュースを手掛けています。

 

 

「Please Don't Leave」

 

 

 

 

The Ground Apples & Tamas Wells 「Please Don't Leave」- New Single




アーティスト:The Ground Apples & Tamas Wells
タイトル:Please Don't Leave


リリース日:2025年5月21日


フォーマット:デジタル・ダウンロード/ストリーミング

 

ストリーミング: https://lirico.lnk.to/groundappletamaswells

Levi Robin

Livi Robin(リーヴァイ・ロビン)のニューシングル「When the Walls Fall」を聴いてみよう。このシネマティックなトラックは、ムードたっぷりのサウンドにアンセミックなフックをフィーチャーしている。


 「このシングルは良心の叫びを歌っている。 壁が崩れ落ち、すべてが壊れたように見えるとき、それは魂の深い眠りから目覚めるためのアラームだ」とリーバイは宣言している。 


リーバイ・ロビンの探求と好奇心の旅は、彼を様々な道へと導いてきた。 魂を剥き出しにしたフォーク・アーティストの独特な音楽スタイルは、深く個人的で変容的な歌詞と感情を揺さぶるヴォーカルを組み合わせ、意味とつながりに満ちたサウンドを生み出している。


カリフォルニア州オレンジ郡で育ったリーヴァイは、10代の頃、彼や多くの人が "ベルトコンベアー式の学校システム "と表現するものに深い不満を抱くようになった。 

 

背中のシャツとギターしかなかった彼は、別の道、つまり音楽の道に踏み出した。 「家出から東洋のスピリチュアリティとの出会い、サイケデリアから自分自身の古代ユダヤ教的ルーツの発掘まで、ソングライティングはユニークに統合する不変のものだった」とリーヴァイは打ち明ける。  


ソングライティングは、彼の心の奥底にある感情をメロディと詩へと変換するパワフルな方法となった。 バッハ、ストラヴィンスキー、ミンガス、ヘンドリックス、ディラン、ベック、ゲイ、ディアンジェロ、レディオヘッドなど、多彩なアーティストからインスピレーションを得て、リーバイ・ロビンは独自のマインドフルでジャンルを超えた音楽作品を生み出している。 


このアーティストが最初に注目を集めたのは2014年、セルフタイトルのデビューEPのリリースと、それに続くマティスヤフとのツアーだった。 以来、シングルやアルバムを次々と発表し、100万回以上のストリーミングを記録、世界中にファンを獲得した。 


2023年、LeviはあるコンサートでプロデューサーのYoel Kreisler、通称'FRAYMES'と出会い、セレンディピティな瞬間を経験した。 すぐにクリエイティブなつながりと友情が生まれ、ふたりはスタジオに入った。


彼らは音楽と影響を交換し始め、この新しい音楽をレコーディングするための新しい方法を構想し始めた。 この新しいコラボレーションの結果であり、最初の試みがシングル「Whole As A Broken Heart」である。 

 

「When the Wall Falls」


Levi Robin's journey of exploration and curiosity has taken him down many roads. The soul-baring folk artist’s distinctive musical style combines deeply personal and transformative lyrics with emotive stirring vocals, creating a sound that is filled with meaning and connection.


Growing up in Orange County, California, as a teenager Levi became deeply dissatisfied with what he and many describe as “the conveyor belt trajectory of the school system.” With nothing but a shirt on his back and guitar in hand, he took a chance on a different path - a musical one. Levi confides, “From being a runaway to encountering eastern spirituality, from psychedelia to unearthing my own ancient Judaic roots, songwriting has been a uniquely integrating constant.”  

 

Songwriting became a powerful way to translate his deepest feelings into melody and verse. Taking inspiration from an eclectic array of artists including Bach, Stravinski, Mingus, Hendrix, Dylan, Beck, Gaye, D'Angelo and Radiohead, and more, Levi Robin creates his own mindful and genre-defying musical releases. 


The artist first attracted attention in 2014, with the release of his debut self-titled EP as well as his subsequent tour with Matisyahu. Since then, he has shared a series of singles and albums, racking up over a million streams, garnering him a fanbase worldwide. In 2023, Levi experienced a serendipitous moment when he met producer Yoel Kreisler, aka 'FRAYMES', at one of his concerts. 

 

Sparking up an instant and immediate creative connection and friendship, the duo entered the studio. He shares, “We started trading music and influences, and began conceptualizing new ways of approaching recording this new music.” The result and first taste of this new collaboration is the single “Whole As A Broken Heart”. 


His single "Healing Is Coming", "is a song of surrender and courage, to face all obstacles, to face the ineffable truth of life, to face the darkness, to bring forth the light of our unique souls and look the serpent in the eyes," shares Levi. 


The track "When the Walls Fall" features an anthemic hook over mood-drenched sonics. "The single sings of an uproaring from the voice of conscience. When the walls fall and all seems broken, it's an alarm to wake up from the deep slumber of the soul," proclaims Levi. 

 

 



Chartreuse(チャートリュース)が新曲「I'm Losing It」を発表した。ブラック・カントリーの4人組は、健康上の緊急事態をきっかけに新曲を発表した。 ヴォーカルのハティ・ウィルソンは29歳の時に大手術を受け、その後療養生活を送ったが、その期間は彼女の創造的な認識をゆるやかに変化させた。

 

プロデューサーのサム・ペッツ=デイヴィーズと仕事をするため、新しいアイデアをアイスランドに持ち込んだニュー・シングル「I'm Losing It」は、緊張と解放を美しいフレームで描いている。オルタナティヴフォークとインディーロックの中間にある楽曲で、ハティのヴォーカルの優しさが際立っている。ヴォーカルは、一音一音を大切にし、ハティの言葉と彼女の経験の喚起に重きを置いている。この曲について、ハティ・ウィルソンは次のように語っています。

 

昨年12月に大腿骨の大手術を受けたの。 この曲は、そのことが分かってすぐに書いた。 手術のことが何カ月も頭の中でループしていた。 手術がどれほど長い旅になるかは分かっていたし、それは今も続いている。 疑問は山ほどあったし、歩き方を学び直すだけの力が自分にあるのかどうかも疑問だった。 当時は、自分の周りで人生が普通に動いていることが理解できず、それが怖かった。 

 

コーラスは、ある種の自作自演の罪悪感だった。 回復の過程で、ボーイフレンドや家族、友人たちから多くの助けを必要とすることに、果てしない罪悪感を感じていた。 重荷のように感じた......でも、これらの感情はすべて私のゆがんだ認識でしかなく、周りの人はみんな信じられないほど助けてくれて、気遣ってくれた。


「I'm Losing It」

©︎Daniel Topete

サッカー・マミー(ソフィ・アリソンのプロジェクト)は、2024年のアルバム『エバーグリーン』(レビューを読む)を再構築したEP『Evergreen (stripped)』を6月6日にロマ・ヴィスタからリリースすると発表した。 

 

この再構築では、アルバムのハイライト曲をピックアップし、ロック主体の原曲をアコースティックソングに組み直し、曲の持つメロディーの良さを引き出そうと試みている。

 

ソフィー・アリソンは新曲「She Is (stripped)」を公開し、現在進行中のワールド・ツアーを延長し、今年9月に2度目のアメリカ公演を行うことを明らかにした。


『Evergreen (stripped)』には、ジミー・キンメル・ライブで初披露された「Driver (stripped)」を含む、アリソンの4枚目のアルバムからの5曲のリワーク・ヴァージョンが収録されている。


オリジナル・ヴァージョンの「She Is」はエバーグリーンの最終トラックリストには入らなかったが、アリソンはプレスリリースで、この曲が彼女の心の中で特別な位置を占めていることを明かした。


「この曲はエバーグリーンのトラックリストには入らなかったけれど、私にとって特別な曲だった。 この曲はエバーグリーンに収録されなかったけど、私にとってずっと特別な曲だったの」


アコースティックな曲で、誰かを、痛みを引き起こすこともある拠り所として描写している。"She Is "には、"[She is] the one I think of when I'm losing faith/ The one who leads me back this way "といった歌詞がある。


サッカー・マミーは今年来日公演を予定しています。12月2日には大阪アニマ、3日には東京リキッドルームで公演を開催する。

 

 

 「She Is (stripped)」




Soccer Mommy  Evergreen (stripped) EP

 

Label: Loma Vista

Release: 2025年6月6日

 

Tracklist:

 

1. Abigail (stripped)

2. She Is (stripped)

3. Driver (stripped)

4. Some Sunny Day (stripped)

5. Thinking Of You (stripped)

6. M (stripped)

 


エディンバラのフォークデュオ、No Windows(ノー・ウィンドウズ)が、近日リリース予定のEP『The Great Traitor』の最終プレビューとして「Tricky」を公開した。先行シングル「Easter Island」に続く静かでほろ苦いフォーク・ソングだ。

 

このシングルについてモーガン・モリスはこう語っている。”ヴェリティと私はかなり皮肉屋なので、ラブソングが良質に思えることもある。 でも、時と場合というものがある。 この曲は、ライブで演奏するのが嫌いなほど難しいギターパートがあるにもかかわらず、書くのが楽しかった。”


2020年の結成以来、エディンバラのデュオ、ノー・ウィンドウズは急成長を遂げてきた。マルチ・インストゥルメンタリストのモーガン・モリスと作詞家のヴェリティ・スランゲンによるクラシック・ポップとフォークの刺激的なブレンドは、ラジオやプレスから広く支持された。


2023年にはスコティッシュ・アルバム・オブ・ザ・イヤー(SAY)アワードで切望されていたサウンド・オブ・ヤング・スコットランド賞を受賞した。


2024年、彼らはファット・ポッサム・レコードと契約し、自主制作EPを1枚リリースした。地球上で最も孤立した場所にちなんで名付けられた彼らの『Point Nemo EP』(2024年)は、孤独と疎外感をテーマにしている。


No Windowsの新譜『The Great Traitor』は5月9日にFat Possum Recordsからリリースされる。

 

「Tricky」

Sam Robbins  『So Much I Still Don't See』      〜45,000マイルの旅から生み出された良質なフォークミュージック〜

 

Sam Robbins


アメリカの国土の広さ、それは人生の旅という視点から見ると、人間性を大きく成長させることがある。それは今までとは違う自分に出会い、そして今までとは異なる広い視点を見つけるということだ。サム・ロビンスさんの場合は自分よりも大きな何かに出会い、そしていかに自分の考えが小さかったかということを、神妙なフォークミュージックに乗せて歌い上げている。


ニューイングランドを拠点に活動するシンガー・ソングライター、サム・ロビンスのニュー・アルバム『So Much I Still Don't See』は、年間45,000マイルをドライブし、ニューハンプシャー出身の20代の男である彼自身とは全く異なる背景や考え方を持つ多くの人々と出会ったことで生み出された。


サム・ロビンスのサード・アルバム『So Much I Still Don't See』は、シンガー・ソングライターとしての20代、年間45,000マイルに及ぶツアーとトルバドールとしてのキャリアの始まりという形成期の旅の証だ。 そして何よりも、ハードな旅と大冒険を通して集めた実体験の集大成なのだ。


リスナーにとっては、これらの大冒険がソフトで内省的なサウンドスケープを通して聴くことができる。 シンガー・ソングライターのセス・グリアーがプロデュースしたこのアルバムは、ソロのアコースティック・ギターとヴォーカルを中心に、ステージで生演奏されるのと同じようにライブ・トラックで惜しげもなく構成されている。 


マサチューセッツ州/スプリングフィールドにある古めかしい教会でレコーディングされた『So Much I Still Don't See』のサウンドの中心は、旅をして自分よりはるかに大きな世界を経験することで得られる謙虚さである。 アップライトベース、キーボード、オルガン、エレキギターのタッチで歌われるストーリーテリングだが、アルバムの核となるのは、ひとりの男と、数年前にナッシュビルに引っ越して1週間後に新調したばかりの使い古されたマーティン・ギターだ。


『So Much I Still Don't See』のサウンドは、ジェイムス・テイラー、ジム・クローチェ、ハリー・チャピンといったシンガー・ソングライターのレコーディングにインスパイアされている。 ニューハンプシャーで育ったロビンズは、週末になると父親と白い山へハイキングに出かけ、古いトラックには70年代のシンガー・ソングライターのCDボックスセットが積まれていた。 


この音楽はロビンズの魂に染み込み、幼少期の山の風景を体験することと相まって、この "オールド・ソウル・シンガー・ソングライター "は、これらのレコーディングと、それらが例証する直接的でソフトかつ厳格なソングライティング・ヴォイスによって形作られた。 


『So Much I Still Don't See』のストーリーテリングは、タイトル曲の冒頭を飾る「食料品店でグラディスの後ろに並んで立ち往生した/孫娘のために新しい人形を見せてくれて微笑む」といった歌詞に見られるように、小さな瞬間を通して構築されている、 


そして、オープニング・トラック「Piles of Sand」の "I'm standing in the sunlight in a public park in Tennessee/ and I know the soft earth below has always made room for me "や、チェット・アトキンスにインスパイアされたアップビートな「The Real Thing」の "The Hooters parking lots are all so bright "などの歌詞がある。 


2018年にNBCの『ザ・ヴォイス』に短期間出演したロビンスは、2019年にバークリー音楽大学を卒業し、すぐにナッシュビルに拠点を移した。 


ミュージック・シティでの波乱万丈の5年間を経て、2024年初めにボストン地域に戻った後に制作された最初のレコーディングが『So Much I Still Don't See』である。 週に5日、カントリー・ソングの共作に挑戦した後、ロビンズは路上ライブに活路を見出し、今では全米のリスニング・ルームやフェスティバルで年間200本以上のライブをこなしている。


長年のツアーを通してアコースティック・ギターの腕前を成長させたロビンスは、フィンガースタイル・ギターの多くのファンを獲得した。


『So Much I Still Don't See』は、彼の妻のミドルネームにちなんで名付けられたオリジナル・インストゥルメンタル・トラック「Rosie」を含む初のアルバムである。 この曲は、アルバムの中盤に位置する過渡期の曲で、あるメロディー・ラインを最後までたどり、そのラインを中心にコード・カラーを変化させながら流れていくという、画家のようなスタイルで書かれている。 


このインストゥルメンタル・ライティングへの進出は、ロビンスが単にヴォーカルの伴奏者としてだけでなく、米国のフィンガースタイル・ギター演奏における強力なボイスとして認知されつつあることを受けてのこと。


このツアーとその後のソングライティングの成長により、ロビンスはいくつかの賞を受賞し、フェスティバルに出演するようになった。2021年カーヴィル・フォーク・フェスティバルのニュー・フォーク・コンテスト優勝者、2022年ファルコン・リッジ・フォーク・フェスティバルの「Most Wanted to Return」アーティスト、その後、2023年と2024年には各フェスティバルのソロ・メインステージ出演者となった。 


ロビンズはミシガン州のウィートランド・フェスティバル、フォックス・ヴァレー・フォーク・ミュージック・アンド・ストーリーテリング・フェスティバルなど全米のフェスティバルにツアーを広げ、「同世代で最も有望な新人ソングライターのひとり」-マイク・デイヴィス(英Fateau Magazine誌)の称号を得た。


2023年初頭、サム・ロビンスは、16代ローマ皇帝が記した名著、マルクス・アウレリウスの『瞑想録』を贈られた。 ストイシズムの概念を中心としたこの本からのアイデアは、『So Much I Still Don't See』の楽曲に染み込んでいった。 このアルバムの多くは、過去1年間の旅を通してこの本を読んで発見したストイックな哲学によって見出された内なる平和を反映している。 


「All So Important」の軽快でアップビートなバディ・ホリー・サウンドは、この哲学を瞑想した歌詞と相性がよく、私たちは、皆、大きな宇宙の中の砂粒に過ぎないという感覚を表現している。 「ローマ帝国の支配者のブロンズの胸像、太陽が照らすあらゆる場所の皇帝/彼の名前は永遠に生き続けると思っていた/それでも、今は目を細めなければ読めなくなった」というような歌詞の後に、「It's all so, all so important」という皮肉なコーラスがシンプルに繰り返される。


『So Much I Still Don't See』の曲作りにもうひとつ影響を与えたのが、ロビンズが主催するグループ、ミュージック・セラピー・リトリートでの活動だ。 


この団体は、ソングライターと退役軍人のペアを組み、彼らがしばしば耳にすることのない感動的なストーリーを歌にする手助けをする。 この人生を変え、人生を肯定する体験は、ロビンス自身の作曲と音楽に、より深い感情とより深い物語を引き出し、幸運にも一緒に仕事をすることになった退役軍人の開かれた心と物語に触発された。


『So Much I Still Don't See』のラストは、全米ツアー中のシンガーソングライターであり、ロビンスの婚約者でもあるハレー・ニールとの静かで穏やかなひととき。 2人はバークリー音楽大学で出会った後、別々のキャリアを歩んできたが、ここぞというときに一緒になる。 最後の10曲目に収録されているビートルズのカバー「I Will」は、レコーディング最終日にスタジオの隅にあった安物のナイロン弦ギターでレコーディングされた。 短くて甘いラブソングは、内省的で温かみのあるアルバムのシンプルな仕上げであり、『So Much I Still Don't See』に貫流する真の精神である。冷静さとシンプルさ、そして、常に未来を見据えていることにスポットを当てている。 



「What a Little Love Can Do」



アルバムからの最初のシングル「What a Little Love Can Do」は、ある瞬間を切り取った曲だ。 ナッシュビルで起きた銃乱射事件のニュースを聞いた後、ロビンズは一人でギターを抱えていた。 ニューイングランドの故郷から遠く離れた赤い州の中心部に住んでいた彼は、その日の出来事によって、今まで見たこともないような亀裂がくっきりと浮かび上がった。 


その瞬間に現れた歌詞が、この曲の最初の歌詞である。"It's gonna be a long road when we look at where we started, one nation broken hearted, always running from ourselves"。 (長い道のりになりそうだ、私たちがどこから出発したかを見渡せば、ひとつの国が傷つき、いつも自分自身から逃げていたのだった)


その日のニュース、そして、それ以降の毎日のニュースの重苦しさは、この曲が作られた2023年以降も収まっていない。 


この歌詞から導かれたのは、流れ作業のような作曲作業だった。 ロビンズがツアーで全米を旅し、2年間で10万マイル以上を走り、何百ものショーをこなし、まったく異なる背景を持つ何千人もの人々と出会ったことから築かれた学びとつながりの物語。 


バーミンガムからデトロイト、ニューオリンズからロサンゼルス、ボストンからデンバーまで、この曲は知らず知らずのうちに、これらの冒険から学んだ教訓の集大成として書かれた。 お互いに物理的に一緒にいるとき、話したり、笑ったり、お互いを見ることができるときに見出される一体感の深さが、『What a Little Love Can Do』、そしてこのアルバム全体の核心となる。


この曲では、「閉め切った窓から光が射すのを見た/ケンタッキーの未舗装の道やニューヨークの月も」、「愛が目の前にあるときが一番意味があることを知っている/でも、周りを見渡しても、新聞には載っていない/スクリーンには映っていないけど、君の中には見えるんだ」といった歌詞に、この考えがはっきりと感じられる。


ヴァースとサビ前の歌詞は、モータウンにインスパイアされたシンプルなコーラスへと続く。 「君に手を伸ばそう、君に手を伸ばそう/小さな愛ができることを見せてあげよう、小さな愛ができることを見せてあげよう」 当初は、これは場当たり的なフレーズだったという。 しかし、この歌詞を中心に曲が構成されていくにつれ、この歌詞が曲全体を支えるピースであることが明らかになった。


「What a Little Love Can Do」のサウンド・ランドスケープは、アルバムの中でもユニークだ。セス・グリアーが優しく弾く、荒々しく柔らかいピアノの瞬間から始まる唯一の曲である。


この曲のピアノとアコースティック・ギターの織り成すハーモニーは、ロビンズのライヴとサウンド・センスを象徴している。 ギター、ピアノ、そしてサム自身の温かみのあるリード・ヴォーカルが一体となった 「What a Little Love Can Do」は、サード・アルバム『So Much I Still Don't See』への完璧なキックオフだ。



『So Much I Still Don't See』のセカンド・シングルでありオープニング・トラックである、きらびやかで内省的な「Piles of Sand」は、このアルバムのために書かれた最初の曲だった。 この曲はナッシュビルで書かれ、アルバムの多くと同様、シンプルで観察的な視点から出発している。


冒頭の「テネシーの公園で陽の光の中に立っている/その下にある柔らかい大地が、いつも私の居場所を作ってくれているのがわかる」という控えめな歌詞が曲の土台を作る。この曲は過ぎゆく時間と、私たちの人生のそれぞれの舞台となる小さな瞬間についての謙虚だが力強い瞑想へと花開く。



この曲は、『So Much I Still Don't See』に収録されている多くの曲と同様、ある瞬間のために書かれた。 ナッシュビルの川沿いの小道を歩いていて、刑務所の有刺鉄線の横を通り、向かいの高層マンションのために砂利がぶちまけられるのを見たり感じたりしたのは感動的な瞬間だった。


さらにロビンスは歩き、通りの向こうに高くそびえ立つ巨大な砂利の山を見た後、最初のコーラスの歌詞はすぐに書き留められた。 「山だと思ったけど、ただの砂の山だ!」  このセリフとリズムは、その日の午後に書かれた、ストイシズムに彩られた曲の残りの部分への踏み台となった。


アルバムのオープニング・トラックである "Piles of Sand "のサウンドは、一人の男とギターのシンプルなサウンドを中心に構成されており、アルバムの幕開けにふさわしい完璧なサウンドだ。 ジェームス・テイラーのライヴ・アルバム『One Man Band』にインスパイアされた、この曲には、ピアノの音だけがまばらに入っている。サム・ロビンスの見事なギター・ワークとフレッシュで明瞭なソングライティング・ヴォイスを披露するアルバムの重要な舞台となっている。


『So Much I Still Don't See』からの3枚目のシングル、チェット・アトキンスにインスパイアされたアップビートな "The Real Thing "は、アルバムの2曲目に収録されており、10曲からなるコレクション全体の様々なエネルギーの一例である。


 「The Real Thing」は、歌詞のグルーヴから始まった。ツアー中のアメリカのある都市を車で出発し、自宅から何千マイルも離れた場所で、12時間のドライブを前にして、インスピレーションの火花が散った。 「郊外の柔らかな灯りの下、滑らかなハイウェイを走っている/アップルビーズが角を曲がるたびに視界に飛び込んでくる」という最初の行のノリから、「The Real Thing 」の残りの部分は、アメリカの人里離れたホテルで一晩で書き上げられた。 



この曲は、アルバム全体に存在する実存的な問いかけを軽やかに表現している。 環境保護主義、世界における人間の居場所、作家の居場所についての質問に言及する「The Real Thing」は、ソフトでカッティング、詮索好きな「So Much I Still Don't See」へのアップビートなキックオフ曲である。 


サウンド的には、「The Real Thing」はロビンスがギターで影響を受けた偉大なフィンガースタイル・プレイヤー、チェット・アトキンスへのオマージュである。 


チェットの特徴である親指をトントンと鳴らす奏法により、サム・ロビンスは、この古典的なサウンドを生かしながら、彼独自のモダンなテイストを加えたサウンド・パレットを作り上げた。 歌詞の雰囲気、ようするに、埃っぽいハイウェイを疾走して、今いる場所以外のどこへでも行くという、いかにもアメリカ的な感覚を、西部劇風のド迫力のグルーヴが体現しているのだ。



「So Much I Still Don't See」





『So Much I Still Don't See』のタイトル・トラックは、白人としてニューハンプシャーで育ったロビンズの人生と生い立ちの瞬間を中心とした、澄んだ瞳と澄んだ声の曲だ。
 
 
歌詞のニュアンスとしては''世界には自分はまだ知らないことがたくさんあった''ということを感嘆を込めて歌っている。曲全体を通して歌われる「There's so much I still don't see(まだ見えないものがたくさんある)」という柔らかく、小康状態で瞑想的なリフレインが、テーマをひとつにまとめる結びとなっている。 


その物語は、テネシー州の食料品店で、年配の黒人女性が孫娘のために黒人のディズニー・プリンセスの人形を買うのを彼が目撃するという偶然の出会いから始まった。 


この偶然の出会いは、サム・ロビンスに、彼が幼少期に経験したメディアの表現をふと思い起こさせた。 白人男性はどこにでもいて、支配的なアイデンティティが表現されている。従って表現について深く考える機会がなかった。 このことは、次のヴァースの歌詞にはつきりとした形で表れている。「私は古典の中で育った、英雄と愛の物語/私が何になれるかを映し出す淡い海」



「So Much I Still Don't See」の最後のヴァースは、曲の残りの部分を通して聴かれる小さな物語を最も明確に表している。 


「マーティン・ルーサー・キング牧師を読み、南北戦争について学んだつもりだった/でもすべてが遠く感じられ、彼らと私をつなぐ100万の小さな糸を信じるのはとても難しかった/ああ、まだ見えないことがたくさんあるんだ」


中心的な歌詞の微妙なひねりは、ロビンスの作詞の特徴である。この曲のソフトでありながら鋭いメッセージに貢献している。 


明確な認識(気がつくこと)は変化への第一歩であり、「So Much I Still Don't See」は政治的な歌の静かな瞑想として書かれた。 ただこれは、説教じみた、不遜なマニフェストではない。 この曲は、明瞭で、柔らかく、内向きの曲であり、書き手と聴き手の内省のひとときを意味している。



「So Much I Still Don't See」のサウンドは、歌詞とメッセージの瞑想的な雰囲気を反映している。鳴り響くオープン・アコースティック・ギターのストリングス、うねるような暖かいコード、ロビンスの柔らかく誘うようなヴォーカルが、聴く者を曲の世界へ、そして曲とともに自分自身の物語や歴史へと導いていく。


 「So Much I Still Don't See」は、同名のアルバムのアンカーとして、そして、10曲の核となる曲として、ロビンスの明晰な眼差しと真摯でフレッシュなソングライティング・ヴォイスを端的に表している。
 

本作は、ジェイムズ・テイラー(James Taylor)、 ジャクソン・ブラウン(Jackson Browne)のような良質なシンガーソングライターの系譜にある渋い魅力に満ちた深遠なフォークソング集である。
 
 

▪️Sam Robbins  「So Much I Still Don't See」- Sam Robbins c/o Shamus Records
 
 

 
 
 


 


カナダの5人組、Foxwarren(フォックスウォーレン)は、アンディ・シャウフ、エイブリー&ダリル・キシック、ダラス・ブライソン、コリン・ニーリスの4人組。彼らのニューアルバム『2』が5月30日にANTI-からリリースされる。


『2』は、ジャンルと曲の境界線が常に曖昧な、楽しくて驚くべきアルバムだ。フォックスウォーレンは、表向きはフォーク・ミュージックを演奏しており、温かみのあるトーンと奔放なリズムが、軽薄なヴォーカルの中で実存的な苦悩と格闘する登場人物の歌を支えている。


しかし、ジュノー賞にノミネートされた2018年のセルフタイトル・デビューアルバムをツアーした後、フォックスウォーレンはこれまでとは違うやり方でやっていこうと決心し、最終的にはおなじみのバンド・イン・ルームのルーティンをやめ、代わりにこれらの曲や他のさまざまなサウンドをサンプラーに差し込んで『2』を作っていった。


4つの州にまたがるそれぞれの自宅スタジオで、5人のメンバー全員が曲のアイデアやメロディックなフレーズ、リズムの断片を共有フォルダにアップロードした。


トロントでは、アンディ・シャウフがこれらをサンプラーに接続し、バンドメンバーから提供された断片から曲を構築した。フォックスウォーレンは毎週オンライン・ミーティングを開き、曲がどのように変化するかについて遠距離から提案した。その結果、37分間のコラージュ・アートを通して、ある関係の表裏をなぞるような、魅惑的で不気味なアルバムが完成した。

 

 

「Yvonne」


Foxwarren 『2』


Label: ANTI-

Release: 2025年5月30日

 

Tracklist:


1. Dance
2. Sleeping
3. Say It
4. Listen2me
5. QuiteAlot2
6. Strange
7. Havana
8. Yvonne

9. Deadhead
10. True
11. Round&round
12. Dress
13. Wings
14. Serious
15. Again&

▪世界的な評価も高めている東京拠点の孤高のエクスペリメンタル・フォーク・シンガー、SatomimagaeがRVNG Intl.からニューアルバム『Taba』を4月25日にリリース


 

©︎Norio

東京を中心に活動しているミュージシャン、ソングライター、そして内なる世界と外なる世界を旅するSatomimagaeの2021年の傑作『Hanazono』に続くニューアルバムが四年ぶりに完成した。

 

本作は今週末(4/25)にRVNG(日本ではPlanchaからリリースされる。RVNGは、実験音楽に特化した名物的なレーベルで、アメリカ版のWARPといっても過言ではない。カタログの中には、NYでオノ・ヨーコと交流があったドローン音楽のイノベーター、Tashi Wadaのアルバムが含まれている。

 

サトミ・マガエは、日本国内の大学で研究的な分野に携わった後、ソロシンガーソングライターの道のりを歩んできた。実験的なポピュラー、フォークを日本的な感性と組み合わせ、比類なき音楽の境地を探る。音楽的な原点は、彼女が幼い頃に住んでいたアメリカでの生活にあった。

 

日本の著名なエレクトリック・プロデューサー、畠山地平にその才能を見出された後、White Paddy Mountainに所属したあと、ニューヨークのRVNGからリリースを行うようになった。以降、ソロアルバムの制作、Duennとのコラボレーションアルバムなどに取り組んできた。また、シンガーは、音楽的な活動にとどまらず、アーティストとしての広汎な分野に興味を見出している。

 

待望の四年ぶりとなるフルアルバム『Taba』は、想像力豊かな考察を集め、広大な観念を辿り、つつましい瞬間に静かな余韻を残す。個人と集団、構築的なものと宇宙的なもの、明瞭なものと感じられるものの間を鮮やかにつなぐ。本作は個人的なことと普遍的なこと、目に見えることと見えないことの両方を記録した一連のヴィネットとして展開する。自宅スタジオの外に流れる人生のつかの間のシーンやサウンドを観察し吸収しながら、彼女は自分自身を超え、現在と記憶の奇妙な流動の両方の魂とシステムの軌道の中で歌い、直線的なソングライティングではなく、トーンやテクスチャーが拡大し、広がりのあり 深みのあるストーリーが展開される。 


『Taba』のリード・シングル「Many」は、疎外された時代のフォーク・ミュージックであり、より有機的な曲作りと、Satomiを 取り巻く世界の自然な響きを強調し、取り入れるアレンジへの微妙だが意図的なシフトを示している。

 

気づかれなかった人生や集合的な記憶についての考察に導かれ、個人やグループを結びつけたり解いたりする結合組織を繊細になぞる「Many」は、不明瞭なエコーや漠然とした音のジェスチャーが織り成すエーテルに対して、ループやスパイラルの中でSatomiが考えを巡らせている。 


このアルバムは、「Taba- 束(たば)」(異なるものを束ねたもの、束ねたもの、ひとまとめにしたものを意味する日本語)の論理に従い、緩やかな短編小説集として組み立てられている。詩人のような語り手へと変貌を遂げたSatomiは、疎外されつつある現代を定義するありふれた出来事や、やりとりから形成される不可解な形に作家の目を投げかけている。


前作『Hanazono』 (2021年)が、私的な内面という青々としたフィールドから花開いたのに対して、『Taba』の鳥瞰図は、アーティストをより広く、よりワイルドな世界のどこかに位置づけようとしている。 

 


「グループとしての人間、そしてグループの中の個人をどう見るかについて考えていました」とサトミ・マガエiは言う。

 

グループはどの ようにつながっているのか、また、どのように境界線が存在するのか。

 

私たちは集団(束)の中の一要素に過ぎないのに、一人ひと りの目に見えない経験や記憶がどこかに残っていて、気づかないうちに私たちや社会に影響を与えているという意識……。つまり、私たちは塊の中の小さな点なのだ。


 

『Taba』の最初のざわめきは、Satomiの曲「Dots」で聴くことができる。この曲は、RVNG Intl.からリリースされた2021年のコンピ『Salutations』の星座にマッピングされた多くのきらめく点のひとつ。パンデミック初期、SatomiがiPhoneに録音していた素材の奥から引き出された「Dots」は、彼女を影のようでありながら誘う道を案内する、言葉のない内なるガイドだった。 

 

興味をそそられ、インスピレーションを受けたサトミは、この感覚を大切にし、新しい創造的な環境の中で新しいコード、リズム、テンポを試した。しかし、Tabaの精神を呼び起こしたのは、サウンドアーティスト、duennとのコラボレーションアルバム『Kyokai(境界)』 でのやりとりであった。 


“俳句以上、音楽未満”というテーマを掲げた『Kyokai』は感覚を言葉にし、Satomiが記録している音の断片が単なる未完成のスケッチではなく、強力な造形物であることを明示した。伝統的なフォーク・ソング的アプローチを脇に置き、デモの質感を取り払ったSatomiのソングライティングは、パズルやパッチワークに近い内容に進化し、音楽の礎となるアコースティック・ギターとヴォーカルが『Taba』全体で聴かれるイマジネーション豊かなアレンジへとピースを繋ぐ。

 

 
Satomiの世界観に近い他のアーティストやミュージシャンとのコラボレーションが、アルバムのサウンドに一層彩りを添えている。写真と映像でアルバムのビジュアル・アイデンティティを決定づけた、Norioのシンセサイザーラインは、優しいバラード 「Kodama」を盛り上げている。

 

「Dottsu」は、鈴のようなローズ・ピアノがSatomiのギターの周りで鳴り響き 、2021年の『Colloid EP』のジャケット・アートを手がけたAkhira Sanoが演奏している。

 

「Spells」を完成させるパズルのピースとなったYuya Shitoのクラリネットは、有機的なテクスチャーとエレガントなエッジの擦り切れを聴き取りながらTabaをミックスし、Satomiのこれまで の表現とは明らかに異なるエネルギーを発散させた。 


これらの曲の土台となっている音色とリズムの遊びは、メロディーのジェスチャー、ノイズのような共鳴、Satomiの手元の レコーダーが捉えた尖った瞬間など、カラフルなパレットにも活気を与えている。

 

『Taba』は、これまでのSatomiの音楽を特徴づけてきた生来の親密さにまだ貫かれているが、これらの曲は、彼女の新しく広々とした、探究心旺盛なソングライティング・アプローチに沿ったものである。そしてそのプロセスで珍らかなレイヤーが解明されている。サウンド・デザインの思索的な詩学に包まれた曲もあ れば、ベッドルーム・ポップの窓からのぞく曲もある。 


想像力豊かな考察を集め、広大な観念を辿り、つましい瞬間に静かな余韻を残す『Taba』は音楽的な意義を越え、個人と集団、構築的、宇宙的、明瞭的と感覚的な概念の狭間を鮮やかにつなぎ合わせる。


Satomiの音の物語は、会話の中に存在するという単純な事実によって雄弁な一貫性を獲得し、動き回る人生のもつれた回路がうなるようなパーツのハーモニーを奏でる。 洋楽として聞いても、そして邦楽として聞いても新鮮さがある。サトミマガエの象徴的なアルバムといえそうだ。

 

 

「Many」

 

 

▪️過去のインタビュー:  SATOMIMAGAE(サトミマガエ)   デビューアルバム「AWA」から最新作「境界」までを語る           

 


【新譜情報】 Satomimagae 『Taba』 




トラックリスト:

01. Ishi
02. Many
03. Tonbo
04. Horo Horo
05. Mushi Dance
06. Spells
07. Nami
08. Wakaranai
09. Dottsu
10. Kodama
11. Tent
12. Metallic Gold
13. Omajinai
14. Ghost
15. Kabi (Bonus Track)

 

 

【Satomimagae】

 

東京を中心に活動しているアーティスト。暖かさと冷たさの間を行き来する変化に富んだフォークを創造している。

 

畠山地平が手掛ける''White Paddy Mountain''より2作のアルバムをリリース後、2021年にNYのRVNG Intl.へ移籍。4枚目のアルバム『Hanazono』を幾何学模様のメンバーが主催するGuruguru Brainと共同リリース。 

 

2012年にセルフリリースしていたデビューアルバム『Awa』のリマスター拡張版『Awa (Expanded)』を2023年にRVNG Intl. よりリリースした。

 

コロラドを拠点に活動するシンガーソングライター、Sarah Banker(サラ・バンカー)が新作EP『Into the Heart』をリリースした。くつろいだ感じのポップスで、邦楽がお好きな方にもおすすめです。下記よりEPの収録曲「COCKADOODLEDOO」のミュージックビデオをご覧ください。

 

本作はレジリエンス(回復力)を中心とする変容的な歌のコレクション。生き生きとした4曲入りのフォーク・ポップEPは、コロラド州インディアンピークス荒野の標高9,000フィートの歌手のスタジオで、ジェフ・フランカ(Thievery Corporation)がレコーディングとプロデュースを手がけた。その結果、感動的で、音に遊び心があり、オーガニックな音楽の旅が生まれた。

 

サラ・バンカーは、コロラドの山奥を拠点に活動するハートフルなシンガー・ソングライターである。幼少期に演劇作品に出演した経験からさまざまなインスピレーションを得たサラは、文化人類学の学位取得後、ギターを学び、ソングライティングを通して自分の本当の声を見出した。

 

ギターを始めてわずか3ヶ月で、初めてのギター・パフォーマンスを経験。すぐに夢中になった彼女は、1年半後、持ち物のほとんどを売り払い、バックパックとギターだけを持って旅に出かけた。探検と好奇心の旅は、ハワイのジャングルから太平洋岸北西部の森、ユタ州南部の砂漠、コロラド州の山頂まで及んだ。



サラ・バンカーの能力は、シンプルでありながら表現力豊かな歌詞で複雑な感情を捉えることで、彼女の音楽全体に一貫した強みを生み出している。彼女の曲は普遍的であると同時に、深く個人的な感情を感じさせ、リスナーを内省させ、癒し、これから起こることを受け入れるよう誘う。

 

最終的に彼女の音楽的意図は、音を通して光と愛の源となること。彼女はまた、自分の音楽が、他の人たちが自分自身のベスト・バージョンになるよう鼓舞することを願っている。

 

「あなたは一つ、自分の人生を切り開くために必要なものをすべて自分の中に持っているのだから」とサラは言う。

 



「COCKADOODLEDOO」- EP『Into The Heart』に収録

 

 

 

Sarah Banker is a heartfelt singer/songwriter based in the mountains of Colorado. Drawing inspiration from her childhood experiences performing in theatrical productions, Sarah found her true voice through songwriting after learning guitar, following her degree in Cultural Anthropology. 

 

After only three months of playing, she had her first guitar performance. Instantly hooked, 18 months later, she sold most of her belongings and set out on the road with just a backpack and her guitar. 

 

Her journey of exploration and curiosity has taken her from the jungles of Hawaii to the forests of the Pacific Northwest, down to the deserts of southern Utah, and up to the peaks of Colorado—each place influencing her musical releases and touching others along the way.



Her new EP, Into the Heart, is a collection of authentic and transformative songs centered around resilience. The vibrant four-song folk-pop EP was recorded and produced by Jeff Franca (Thievery Corporation) in his studio, at 9,000' feet elevation in the Indian Peaks Wilderness in Colorado. The result is a musical journey that is touching, sonically playful, and organic.



Sarah Banker's ability to capture the complexity of emotions in simple yet expressive lyrics is a consistent strength across her music. Her songs feel both universal and deeply personal, inviting listeners to reflect, heal, and embrace what’s to come.



Ultimately, her musical intention is to be a source of light and love through sound. She also hopes her music inspires others to be the best version of themselves, sharing, "You are the ONE, the one who has the potential to make the changes that lead to a fulfilling life experience. You have everything you need within you to take charge of your life."

 

 

 

Black Country, New Road 『Forver Howlong』 



Label: Ninja Tune

Release: 2025年4月4日


Review

 

ファーストアルバム『For The First Time』では気鋭のポストロック・バンドとして、続く『Ants From Up There』では、ライヒやグラスのミニマリズムを取り入れたロックバンドとして発展を遂げてきたロンドンのウィンドミルから登場したBC,NR(ブラック・カントリー、ニューロード)。


マーキュリー賞へのノミネート、それから、UKチャート三位にランクインするなど高評価を獲得し、さらには、フジ・ロック、グリーンマン、プリマヴェーラを始めとする世界的なフェスティバルでライブ・バンドとしての実力を磨いてきた。すでにライブ・パフォーマンスの側面では世界的な実力を持つバンドという前提を踏まえ、以下のレビューをお読みいただければと思います。

 

メンバーチェンジを経て制作された三作目。フジロックでの新曲をテストしたりというように、バンドは作品ごとに音楽性を変化させてきた。ロンドンではポストロック的な若手バンドが多く登場しており、BC,NRは視覚芸術を意図したパフォーミング・アーツのようなアルバムを制作している。また、ブッシュホールでの三日三晩の即興的な演奏の経験にも表れている通り、即興的なアルバムが誕生したと言えるかもしれない。メンバーが話している通り、スタジオ・アルバムにとどまらない、精細感を持つ演劇的な音楽がアルバムの収録曲の随所に登場している。音楽的に見ると、三作目のアルバムではバロックポップ、フォーク、ジャズバンドの性質が強められた。これらが実際のライブパフォーマンスでどのような効果を発揮するのかがとても楽しみ。

 

今回、バンドはミニマリズムを回避し、ジョン・アダムスの言葉を借りれば、ミニマリズムに飽きたミニマリスト、としての表情を伺わせる。しかし、全般的にはクラシック音楽の影響もあり、アルバムの冒頭を飾る「Besties」ではチェンバロの演奏を交え、バロック音楽を入り口として即興的なジャズバンドのような音楽性へと発展していく。ボーカルが入ると、バロックポップの性質が強くなり、いわばメロディアスな楽曲の表情が強まる。一曲目「Besties」は新しい音楽性が上手く花開いた瞬間である。


一方で、ビートルズの中期以降のアートロックを現代のバンドとして受け継いでいくべきかを探求する「The Big Spin」が続く。「ラバーソウル」の時代のサイケ性もあるが、何より、ピアノとサックスがドラムの演奏に溶け込み、バンドアンサンブルとして聞き所が満載である。新しいボーカリスト、メイ・カーショーの歌声は難解なストラクチャーを持つ楽曲の中にほっと息をつかせる癒やしやポピュラー性を付与する。


そういったバンドアンサンブルを巧緻に統率しているのがドラムである。現在のバンドの(隠れた)司令塔はドラムなのではないか、とすら思わせることもある。散漫になりがちな音楽性も、巧みなロール捌きによって楽曲のフレーズにセクションや規律を設けている。上手く休符を駆使すれば最高だったが、音楽性が持続的な印象が強いのは好き嫌いが分かれる点かもしれない。休符が少ないので、音楽そのものが間延びしてしまうことがあるのは少し残念な点だった。

 

そんな中で、これまでのBC,NRとは異なり、ポピュラー性やフォークバンドとしての性質が強まるときがある。そして、従来のバンドにはなかった要素、これこそ彼等の今後の強みとなっていくのでは。「Socks」では60〜70年代のバロックポップの影響をもとにして、心地よいクラシカルなポピュラーを書いている。メロディーの良さという側面がややアトモスフェリックの領域にとどまっているが、この曲はアルバムを聴くリスナーにとってささやかな楽しみとなるに違いない。そしてこの曲の場合、賛美歌、演劇的なセリフを込めた断片的なモノローグといったミュージカルの領域にある音楽も登場する。 これらは新しい「ポップオペラ」の台頭を印象づける。


次いで、クイーンのフレイディ・マーキュリーのボヘミアン的な音楽性を受け継いだ曲が続いている。「Salem Sisters」は「ボヘミアン・ラプソディー」の系譜にあるピアノのイントロで始まり、その後、アートポップやジャズ的なイディオムを交えた前衛的な音楽が続いている。一曲目と同じように、チェンバロの演奏も登場するという点ではジャズとクラシック、そしてポピュラーの中間域に属する。ボーカルは優雅な雰囲気があり素晴らしく、この曲でもドラムの華麗なロールが楽曲に巧みな変化や抑揚の起伏を与えている。いわば、BC,NRの目指す即興的な音楽が上手く昇華された瞬間を捉えられる。そして曲の後半部にかけて、ボーカルはミュージカルに傾倒していく。いわば、このアルバムの中核を担うシアトリカルな音楽の印象が一番強まる瞬間だ。

 

 アルバムの中盤では中性的なアイルランド民謡に根ざしたフォーク/カントリーミュージック「Two Horses」、「Mary」がアルバムの持つ世界観を徐々に拡張させていく。そして同じタイプの曲でも調理方法が異なり、前者では変拍子を交えたプログレッシブな要素、さらに後者では、ジャズやメディエーションのニュアンスが色濃い。また、賛美歌やクワイアのような聴き方も出来るかもしれない。すくなくとも、それぞれ違う聴き方や楽しみ方が出来るはずだ。

 

ブラック・カントリー、ニュー・ロードの掲げる新しい音楽が日の目を見た瞬間が「Happy Birthday」となる。印象論としては、ビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・クラブ・ハーツ・バンド」のミュージカルの系譜にある音楽を踏襲し、それらをクイーン的にならしめたものである。この曲ではボーカルはもちろん、サックス、ドラム、ピアノの演奏がとても生き生きとして聞こえる。また、チェンバロの導入など遊び心のある演奏もこの曲に個性的な印象を付け加える。しかし、やはり、このバンドの曲が最も輝かしい印象を放つのは、ロック的な性質が強まる瞬間であると言える。無論、調性の転回など、音楽としてハイレベルなピアノの旋律進行もフレーズの合間に導入されることもあり、動きがあって面白く、さらに音楽的にも無限のひらめきに満ちているが、音符の配置が忙しないというか、手狭な印象があるのが唯一の難点に挙げられるかもしれない。その反面、一分後半の箇所のように、ダイナミックスが感じられる瞬間がバンドとして溌剌としたイメージを覚えさせる。 曲の後半では、カーショーの伸びのあるビブラートがこの曲に美麗な印象を添える。音楽的な枠組みに囚われないというのは、バンドの現在の美点であり、今後さらに磨きがかけられていくのではないかと推測される。

 

ロック寄りの印象を持つ瞬間もあるが、終盤では古楽やバロックの要素が強まり、さらにアルバムの序盤でも示されたフォークバンドとしての性質が強められる。「For The Cold Country」では、ヴィヴァルディが使用した古楽のフルートが登場し、スコットランドやアイルランド、ないしは、古楽の要素が強まる。結局のところ、これは、JSバッハやショパン、ハイドンのようなクラシック音楽の大家がイギリスの文化と密接に関わっていたことを思い出させる。特にショパンに関しては、フランス時代の最晩年において結核で死去する直前、スコットランドに滞在し、転地療養を行った。彼の葬式の費用を肩代わりしたのはスコットランドの貴族である。ということで、イギリス圏の国々は意外とクラシック音楽と歴史的に深い関わりを持ってきたのだった。

 

この曲は、スコットランドの古城や牧歌的な風景のサウンドスケープを呼びさます。そして実際に、そういった異国の土地に連れて行くような音楽的な換気力に満ちている。


タイトル曲「Forver Howlong」に関してもケルト民謡の要素が色濃い。これらの中世的な音楽性は、今後のブラック・カントリー、ニューロードの強みとなっていくかもしれない。かなり複雑で入り組んだアルバムであるため、一度聴いただけではその真価はわからないかもしれない。ただ、それゆえに、聴く時のたのしみも増えてくると思う。


今回は''バンド''という言葉を使用させていただいたが、BC, NRは、ひとつの共通概念を共有するグループーーコレクティヴの性質が強い。バンド/コレクティヴとして純粋な音楽性を感じさせたのがアルバムのクローズを飾る「Goodbye」だった。一貫して、ポスト・ブリットポップ的な音楽を避けてきたバンドが珍しくそれに類する音楽を選んでいる。ただ、それはやはり、フォークバンドとしての印象が一際強いと付言しておく必要があるかもしれない。今後どうなるのかが全くわからないのがこのバンドの魅力。潜在的な能力は未知数である。

 

 

 

84/100

 

 

「Goodbye(Don't Tell Me)」


 

テキサス生まれでオクラホマシティ在住のフィンガースタイル・ギタリスト、Hayden Pedigo(ヘイデン・ペディゴ)が、ジャンルを超えた注目のニューアルバム『I'll Be Waving As You Drive Away』をメキシカン・サマーから6月6日にリリースすると発表した。 

 

ヘイデン・ペディゴは重要なカントリー/フォークの継承者であるが、彼の音楽にはモダンな雰囲気が漂う。渋いといえば渋いし、古典的といえば古典的だが、このSSWの魅力はそれだけにとどまらない。彼の音楽は、南部の壮大な風景、幻想的な雰囲気を思い起こさせることがある。 ヘイデンのカントリーに触れれば、不思議とその魅力に取りつかれたようになってしまう。


アルバムのオープニングを飾る「Long Pond Lily」が最初のシングルとして公開された。 ヘイデン・ペディゴの前作を彷彿とさせると同時に派手な逸脱を感じさせる。

 

彼の華麗なギターのプレイはパット・メセニーの最初期のスタイル、カントリー・ジャズを彷彿とさせる。この曲の場合は、エレクトリック/ギターの両方が演奏に使われるが、ギターだけでこれほど大きなスケールを持つ曲を書ける人は見当たらない。

 

この曲についてヘイデンは次のように述べている。「とても重く、巨大な曲だなん。ローエンドがガラガラと音を立てている。 この曲は最大主義的で、今まで書いたどの曲よりもずっとエネルギッシュなんだ」

 

マット・ミュアによる映画的なミュージック・ビデオが付属し、小さな町のスケート場をオープンすることがアメリカンドリームのように感じられる。

 

「Long Pond Lily」

 

 

Hayden Pedigo 『I'll Be Waving As You Drive Away』


Label: Mexican Summer

Release: 2025/6/6

 

Tracklist

1.Long Pony Lily

2 All The Way Across 

3 Smoked 

4 Houndstooth 

5 Hermes 

6 Small Torch

7 I'll Be Waving As You Drive Away

 

Pre-save:https://haydenpedigo.ffm.to/longpondlily.OYD

 


 

ニューヨークの四人組のインディーフォークバンド、フローリスト(Florist)は、エイドリアン・レンカー/バック・ミーク擁するBig Thiefと並んで同地のフォークシーンをリードする存在である。もちろん彼等はニューヨークのインディーズ音楽の最前線を紹介するグループ。

 

フローリストはエミリー・A・スプラグを中心に四人組のバンドとしてたえず緊密な人間関係を築いてきた。2017年にリリースされた2ndアルバム『If Blue Could Talk』の後、バンドは少しの休止期間を取ることに決めた。直後、エミリー・スプラグは母親の死の報告を受けたが、なかなかそのことを受け入れることが出来なかった。「どうやって生きるのか?」を考えるため、西海岸に移住。その間、エミリー・A・スプラグは『Emily Alone』をリリースしたが、これは実質的に”Florist”という名義でリリースされたソロアルバムとなった。しかし、このアルバムで、スプラグは、既に次のバンドのセルフタイトルの音楽性の萌芽のようなものを見出していた。バンドでの密接な関係とは対極にある個人的な孤立を探求した作品が重要なヒントとなった。



その後、エミリー・スプラグは、3年間、ロサンゼルスで孤独を味わい、自分のアイデンティティを探った。深い内面の探求が行われた後、彼女はよりバンドとして密接な関係を築き上げることが重要だと気がついた。それは、この人物にとっての数年間の疑問である「どうやって生きるのか」についての答えの端緒を見出したともいえるかも知れなかった。このときのことについてスプラグは、「ようやく家に帰る時期が来たと思いました。そして、複雑だから、辛いからという理由で、何かを敬遠するようなことはしたくない」と振り返っている。「だから、もう一人でいるのはやめようと思いました。もう1人でいるのは嫌だと思った」と話している。


彼女は2019年6月、フローリストの残りのメンバーであるリック・スパタロ、ジョニー・ベイカー、フェリックス・ウォルワースと再び会い、レコーディングに取り掛かった。セルフタイトルへの制作環境を彼女はメンバーとともに築き上げていく。バンドは、アメリカ合衆国の東部、ニューヨーク州を流れるハドソン渓谷の大きな丘の端にある古い家をフローリストは間借りし、その裏には畑と小川があった。

 

バンドのスプラグとスパタロは先に家に到着し、自然の中に完全に浸ることができる網戸付きの大きなポーチで機材をセットアップすることに決めた。これらの豊かな自然に包まれた静かな制作環境は、前作のセルフタイトルアルバム『Florist』に大きな影響を与え、彼らに大きなインスピレーションを授けた。フォークミュージックとネイチャーの融合というこのアルバムのに掲げられる主要な音楽性は、この制作段階の環境の影響を受けて生み出された。もちろん、アルバムの中に流れる音楽の温もりやたおやかさについてはいうまでもないことである。これらのハドソン川流域の景色は、このメンバーに音楽とは何たるかを思い出させたとも言えるだろう。 


『Jellywish』で、フローリストはリスナーをあらゆることに疑問を投げかけ、魔法、超現実主義、超自然的なものが日常生活の仲間である世界を想像するよう誘う。 "ジェリーウィッシュ"は、杓子定規で、制限的で、ひどく感じられる時代に、あえて可能性と想像力の領域を提示する。


このアルバムでFloristは明確な答えを提示することなく、人生の大きな問いを探求している。 その代わりに、バンドはおそらく最も難しい問いを投げかけている 。「染み付いた思考サイクルや、ありきたりな生き方から抜け出すことは可能なのだろうか? それこそが、真に幸福で、満たされ、自由になる唯一の方法なのかもしれない」


シンガー、ギタリスト、そして主要ソングライターであるエミリー・スプレイグは、このアルバムはわざと複雑にしてあると言う。 『本当に混沌としていて、混乱していて、多面的なものを優しく伝えようとしている』と彼女は説明する。 

 

「私たちの世界にインスパイアされたテクニカラーと、私たちの世界から脱出するためのファンタジー的な要素もある」


バンドはおよそ2年間ツアーを中心に活動しながら、苦しみや喜びをはじめとする様々な感覚が人々とどこかで繋がっているのを感じていた。そのことをエミリー・スプレイグは哲学や思想的な側面から解き明かそうとしている。もちろん、それは西海岸に住んでいた時代から続いていたものだった。我々は多くの経験をして学ぶ生き物なのであり、地球に生まれたからにはそのことを心に留めなければ。そしてどのような人も生きている限りは例外ではない。さらにフローリストは目に見えないものを大切にし続け、より良い世界を作るために音楽を作り続ける。


「セルフタイトルのレコードをリリースしてから数年間、私たち(人間は集合体として、多くの小さな行動、感情、反応によって互いに影響し合い、周りの世界に影響を与えている。 この曲は、私たちのそばにある目に見えない世界を信じ、その視点を使ってベールを突き破り、謙虚な現実の中で、共感、愛、他者との繋がりを生み出すための強力なツールを作ることを提案している」

 

「私たちの種としての力を引き出し、実際の善のための変化を生み出し、すべての人々の人生をより良く、平等にするため、私たちはあえて互いを大切にし、地球上の生命を大切にしないものに反対を唱えたい」



Florist 『Jellywish』- Double Double Whammy



フローリストと出会ったのは2022年のセルフタイトル『Florist』だった。結局、この時期と前後して、バーモントのLutaloという素晴らしいシンガーの音楽にも出会うことができたことに感謝したい。古くはパンクやロックのメッカとして栄えてきたニューヨークという土地が現在では様相が変化し、インディーズのフォーク音楽の重要な生産地であるということが掴めてきた。


あるミュージシャンの話によると、現在の同地には、CBGBのフォークシーン、マクシス・カンサス・シティのような固まったロックムーブメントというものは存在しないかもしれない。しかし、CBGBの創業者のクリスタルがカントリー・グラスのムーブメントを作ろうとした壮大な着想が花開いたのは、2020年代に入ってからだった。


しかも、それは、CBGBが閉店してずいぶん後になってからといえるかもしれない。元々、ニューヨークのパンクは、実はそのほとんどがカントリー・ミュージックを宣伝しようとするライブハウスから始まったせいもあり、テレビジョンを筆頭に、詩学などの文学性やインテリジェンスを感じさせる音楽性が含まれていたのである。同時に、ウォール街を象徴として発展してきた金融街であるニューヨークは、その時代ごとに音楽文化を様変わりさせてきた。

 

パティ・スミスにせよ、ラモーンズのような存在にせよ、また、バックストリートで屯していたヒップホップミュージシャン、あるいは2000年以降のミレニアム世代のフォークミュージックを象徴するビックシーフ、あるいはBODEGAのようなポスト世代のパンクバンドですら、彼等は20世紀の経済発展の象徴とも言えるニューヨークの街角で生活し、資本主義の価値観が蔓延する中で、それぞれが人間としてどのように生きるのかというテーマを探し求めてきた。 


なぜそこまでをするのか、と考える人もいるかもしれない。そして、それは摩天楼の世界があまりに強大であるがゆえ、個人やグループとして音楽を作るということが、異質なほど切実な意味を持つようになるからだ。音楽やそれに付随する何らかの芸術作品を制作し、ライブハウスやファンと交流すること、それは自分の存在を確認するためでもあった。これは専業か否かという問題ではなく、音楽そのものがもの凄く切実な意味を持っていた。そうでもしなければ、個人という存在すらかき消されてしまうことがある。これが資本主義社会の実態なのである。

 

今後の社会情勢がどのように移ろい変わっていくにしても、大局というのはそれほど大きくは変化しないのではないだろうか。近年、後期資本主義という概念を提唱する経済学者もいたかもしれないが、結局、これらは手を変え品を変えといった具合に、別のルートをぐるぐる回っていくのだろう。ある資本主義の形態に限界が来ると、次の資本形態に移行していく。確かにそうかもしれない。繰り返しが今後も続く事が予測される。しかし、人間はいつも制限的な社会の中で暮らさねばならないが、こういった外的な環境に左右されない普遍性というものが存在する。いつの時代もそれに人々は癒やされ、心を躍らせる。そして外側の風景などは移ろい変わっていくだけの、ただの風物のようなものであると気が付かずにはいられない。こんなことを言うのは、いま現在、世界でカオスをもたらす原因が再び発生しようとしているからである。

 

 

そして、政治は敵対意識や反抗意識を市民に植え付けるが、もし、世界の中に融和や協調という概念が生じるとすれば、それはやはりリベラルアーツを始めとする分野、それから音楽のようなものを通してと言わざるを得ない。最近では日本の大手銀行の社員研修で芸術鑑賞をするという話題があったが、''なぜ仕事に関係のないことをするのか''と疑念を抱く人もいるに違いない。そういうことをするのは、この世界には無数の道筋があるということを確認するためなのだ。それは、何らかの苦境に陥った時、安心や癒やしの瞬間をもたらす場合がある。もし、この世の中のすべての生産物が何らかの経済的な利益を生み出すため”だけ”に存在しているすれば、利益を生み出さないものは存在価値がないということになる。しかし、人生が順風満帆であるときにはわからないけれど、利益を生み出さなくとも意義を持つ生産物は限りなく存在する。そういうことを理解したとき、本当のものの価値を知ることになる。そして、同時に、この世界の多くのものが相対的な価値という杓子定規で計測されているに過ぎないことに気がつく。

 

 

フローリストの音楽は少なくとも、こういった相対的な価値に軸足を置いていない。 流行り廃りというのは確実に存在し、昨日までは絶対的な価値を持つとされていたものが、数年経つと、なんの価値も見出されないようになる事例がよくある。そして、これが相対的な価値を元にした世界のかなり残酷な一面なのである。


しかし、上記のようなことを踏まえた上で大切にすべきポイントがある。それは、好き、熱中する、もしくはワクワクする、というような独自の評価軸を人生の指針にするということである。誰かの意見やお墨付きをもらわなくとも、自分の感覚を重要視してゆっくりと歩いていくべきなのだ。そして、水かけ論のようになってしまうけれど、『Jerrywish』は四人組のフォークバンドの”好き”という感覚が重要視されている。彼等は音楽に心から夢中になっているし、そして、彼らは音楽の力を心から信じている。

 

 

現在の米国の社会情勢はカオスに陥っている印象である。考えの相違によって何らかの分断が起きていても不思議ではない。例えば、フォークミュージックの象徴であるニール・ヤングは、グラストンベリーに出演するため、アメリカを出国したあと、母国に帰れなくなるのではないかと懸念しているのだという。また、ノーベル賞受賞者のボブ・ディランは、近年は公の発言を控えている印象であるが、社会的な提言を言いたくて、うずうずしているかもしれない。


そして、フローリストに関して言えば、彼等の伝統的なフォーク音楽を受け継いで、それらを未来の世代に伝える重要な継承者のような存在である。そして、このアルバム『Jerrywish』では、幻想主義を交えながら、現実世界を俯瞰し、2020年代を生きるミュージシャンとして何を歌うべきかという点に照準が絞られている。


すべてが理想の通りにいったとはいえないかもしれないが、エミリー・ スプラグを中心とするバンドは、より良き社会を作り上げるため、軽やかなフォーク音楽に乗せて、建設的な提言を行っている。そしてそれは、ヤングやディランと同じように、社会を変えるような大きなパワーを持っている。また、本来は地球の人々が一つに繋がっているという理想主義的な概念を捉えられる。条件や環境、価値観の違いを乗り越えるという考え、それらはジョン・レノンに近いものである。同時にそれは、現実社会では容易には達成しがたいので、リベラルアーツや音楽という形で多くのクリエイターたちが提言してきた、ないしは伝えてきた内容でもあるのだ。

 

 

フローリストは、ニューヨークの山岳地帯のキャッツキルのプロジェクトとして知られている通り、自然主義者としての側面を持っている。それはアルバムの全体に通奏低音のように響きわたり、生き物全般を愛するという普遍的な博愛主義に縁取られている。アルバムはオーガニックな質感を持つアコースティックのフォークミュージックで始まり、「Levitate」はその序章となる。


「Levitate」は、音楽の助走のような役割を果たし、風車小屋の水の流れを補佐するかのように、アルバムの世界を少しずつ広げていく。


アルペジオを中心とする滑らかなフォークギターに合わせて、エミリー・スプラグは、心を和ませるような和平的な歌を歌い上げて、混乱した世界に規律をもたらす。こういった音楽は、世界と自分の生きている社会がどこかで繋がっていることを知らないと作れない。そしてまた、自分たちの音楽が聴き手にどんな影響を及ぼすのかを考えないと到達しえない。実際的に、スプラグはディランの影響下にある渋いボーカルを披露し、牧歌的な世界観を押し広げていく。

 

野原や牧草地のような情景を思わせる伸びやかな音楽で始まり、「Have Heaven」では、まるで小川の縁に堰き止めている小舟に乗り、実際に櫂を漕ぎながら、歌をうたうかのように雰囲気だ。ローファイなサウンド処理、マイクでドラムの近い音域を拾う指向性など、VUのような音楽作りを元に、どことなくシネマティックで幻想的なフォーク・ミュージックが構築される。音楽そのものが実際的な情景を呼び起こすのが素晴らしい点で、聞き手は映画「草原の実験」のように自由に発想をめぐらすことが出来る。バンドとしての音の運びもお見事としかいいようがなく、ロマンティックな感覚を滑らかなフォークミュージックによって表現している。ここでは、そよ風に揺られて、歌をつむぐような独特なサウンドスケープを呼び起こすことがある。そして印象的なフレーズ「私の中には天国がある」という、啓示的な歌詞を幻想的に歌う。 


 

「Have Heaven」

 

 

アルバムは一連なりの川の流れのように繋がっている。「Jellyfish」について、スプラグは次のように語る。


「Jellyfishはアルバムのタイトル曲であり、また、世界観を押し広げるための役割を担っている」


「この曲は、私たちの世界の神秘に驚嘆すると同時に、人間の手によってその多くが破壊されたことを嘆いている。 私たちの心と自然界との間に一本の線を引き、この曲とレコードの重要なテーマを確立している」


「この曲は、リスナーに対して、私たちは幸せと愛に値するというパワーセンターを思い出させることで終わっている。これは、以前の歌詞を反映している。"地球のすべてを破壊する "という歌詞は、物事がどのように見えるかについての考察である」 


制作者の言葉の通り、タイトル曲は人生の嘆きのなかで本質的な概念とはなんなのかを思い出させる。暗さと明るさの感情の合間を行き来するフォークミュージックをベースにし、少し遊び心のある水の音のサンプリングなどを介して、魅惑的な音楽が繰り広げられる。

 

 

「Started To Glow」は、具体的な曲名が思い浮かばないが、ビートルズの初期の楽曲を彷彿とさせる。柔らかいアコースティックギターのストロークが音楽的な開放感をもたらし、そしてソフトな感じのボーカルが乗せられる。 曲はどこまでも爽やかで、ピアノのユニゾンのフレーズを相まってどこまでも精妙かつ静謐である。ギターの開放弦を強調したコードの演奏は滑らかであるが、ボーカルも他のアンサンブルとの息の取り方をよく配慮していて、ボーカルとギターそれぞれが主役として入れ替わる。これが音楽の休符の重要性を示唆するにとどまらず、癒やしの瞬間をもたらす。時々、これらのフレーズの合間に入るアンビエント風のシンセも幻想的な雰囲気を与えている。録音全体にもさりげない工夫が凝らされ、テープディレイの処理が入ることも。これらは実験的な要素もあるが、全体的な音楽の聴きやすさが維持されている。

 

制作者のコメントでは「タイトル曲が暗め」ということであるが、「This Was A Gift」は、より物憂げなトーンに縁取られている。しかし、曲自体は内省的な雰囲気があるとしても、ドラムがそのメロディーをリズム的な側面から支えることで、曲全体の印象をダイナミックにしている。


「This Was A Gift」はドラムが傑出している。他の曲では、ジャズで使われるブラシの音色が登場することもあるが、この曲ではスティックでゆったりとしたリズムを作り出している。スネアにリバーブ/ディレイを施し、程よい広さの音像を作り上げ、空間的なアンビエンスを維持している。大切なのは、ドラムのフィルが曲の憂鬱なイメージをドラマティックにしていることだろう。つまり、パーカッションがボーカルの旋律の情感を上手く引き出そうと手助けしている。


ドラムがボーカルのフレーズとユニゾンを描き、三連符のように省略されて演奏されたりもする。バンドの演奏の連携がうまく取れていて、音楽自体が高い水準に達しているが、それを感じさせず、気楽に演奏しているのがクール。さらに、ローズピアノも登場し、アクセントをつけるため、きらめきのあるフレーズが導入される。どの楽器も乱雑に演奏されるのではなく、各々の楽器が器楽的に重要な役割を担い、しかもタイトにまとめ上げられているのが素晴らしい。

 

 

アルバムの前半ではモダンなフォークバンドとしての姿を見出だせる。一方で、中盤の収録曲において、Floristは古典的なコンテンポラリーフォークにも取り組んでいる。


「All The Same Light」ではボブ・ディラン風のフォークソングとして楽しめる。ただやはり、男性的な音楽であったフォーク音楽は時代が変わり、レッテルや性別を超えた中性的な音楽に代わりつつあるのを実感せざるをえない。これらは完全に女性のものになったとは言えないけれど、少なくとも、従来のカントリー/ブルーグラスのヒロイックな男性シンガーという枠組みだけではこの音楽を語りつくせないものがある。


フォーク音楽は、古くは男性的なロマンやアウトサイダーの心情を反映してきたが、類型的な表現から個人的な表現へと少しずつ変化してきている。そして、それらは西部劇的な英雄というイメージのあったフォーク歌手の従来の固定概念から脱却し、一般的な音楽へと変化しつつあるのかもしれない。これらはアメリカのフォークミュージックの源泉を再訪する意味がもとめられる。


「Sparkle Song」も同じタイプの曲として楽しめるはず。おそらくフローリストはアルバムの制作するときに、スムーズな流れを断ち切らないように、前の曲の雰囲気を重視した上で、その雰囲気を壊さないように曲を慎重に収録している。それは実際的に、アルバムの楽しむ際に、聴きやすさをもたらすにとどまらず、何度もリピートしたいという欲求すら生じさせるのである。

 

 

一作品として語る上で、アルバムの真の醍醐味や凄さは、終盤のいくつかの収録曲に見出せる。フローリストが掲げる全体的なモチーフやテーマも、聴きすすめていくうち、なんとなく直感的に掴めてくるようになるはず。例えば、絵画や文学も同様であるが、はじめは手探りで不思議な世界を垣間見ていくと、なんとなく全体像が掴めてくるという感じ。そして、このアルバムは、音楽の持つ世界にじっくりと浸らせてくれる懐深さがあるということも重要だろうか。


それがなんに依るものかは明言出来ないが、少なくとも、アルバムをハンドクラフトのように制作する根気強さ、音楽に対する普遍的な信頼感、さらには前述したようなニューヨークに綿々と受け継がれる文化的な感覚が、こういった奥深いフォークミュージックの世界を形作ったのかもしれない。曲単体では即効性がないように思えるかもしれないが、必ずしもそうではないことが分かる。フローリストの曲はフルレングスとして聴くと、その真価が掴めるようになる。いうなればフローリストの音楽は聴けば聴くほど、深〜い味わいが滲み出てくるのである。

 

「Moon, Sea , Devil」、「Our Hearts In A Room」はフローリストの代表曲となる可能性があるだけではなく、2020年代のインディーフォークミュージックの名曲であるため、この音楽のファンは出来るだけ聞き逃さないようにしていただきたい。


「Moon, Sea , Devil」は同地のビック・シーフとも共鳴するような音楽であるが、フローリストの曲はよりオープンで、オーガニックな雰囲気に満ちている。そして、フローリストの音楽は、このアルバム全体を通して泣かせる要素を出来るかぎり避けているが、パーソナルでセンチメンタルな心情をバンド全体で共有したとき、心を揺さぶられるような崇高な感覚が現れる。


そしてそれは、ソングライターの個人的な考えが、バンドメンバーと共有された素晴らしい瞬間であり、抽象的な概念が音楽という目に映らないかたちを通じて、しっかりと具象化された''奇跡の瞬間''なのである。

 

音楽の核心のようなコアが最後に出現する。そして、その音楽が持つコアに触れたとき、アルバムやバンドのイメージが変化する。『Jellywish』の最も感動的な瞬間ーーそれはギミック的なものとは対極にあるささやかな喜びと驚きと共に到来する。彼らが伝えたいこと……、たぶんそれは、なにかを心から純粋に愛することの尊さである。


「Our Hearts In A Room」は雄大な感じがし、フォークソングとして普遍的な光輝を放ってやまない。メインボーカルとコーラスが合わさる時、フローリストのフォークバンドとしての圧倒的な偉大さが明らかになる。そしてそういう感覚を普段は控えめにしているのがこのバンドの魅力。『Jellywish』は清涼感を持って終わる。音楽そのものがさっぱりしていて後味を残すことがない。

 

 

 

95/100

 

 

 

 Best Track- 「Our Hearts In A Room」

 


フォークポップシンガー、リーヴァイ・ロビン(Levi Robin)が新曲「Healing Is Coming」をリリースした。哀愁を感じさせるフォークポップ。リリックビデオも下記よりチェックしてみよう。


この曲は、降伏と勇気の歌であり、あらゆる障害に立ち向かい、人生の計り知れない真実に立ち向かい、暗闇に立ち向かい、私たちのユニークな魂の光をもたらし、蛇の目を見据えるための歌です」とリーバイは語っている。 

 

「Healing Is Coming」では、ぶつかり合うギターに乗せて、リーヴァイの紛れもないヴォーカルがフィーチャーされている。 魂を揺さぶる繊細なハーモニーが曲に華を添え、美しさとほろ苦さが同居するフォーク・ポップ・トラックを作り上げている。 


リーヴァイは100万回以上のストリーミングを記録し、世界中にファンを獲得している。 また、マティスヤフの前座を務めたこともある。 


リーバイ・ロビンの探求と好奇心の旅は、彼を様々な道へと導いてきた。 魂を剥き出しにしたフォーク・アーティストの独特な音楽スタイルは、深く個人的で変容的な歌詞と感情を揺さぶるヴォーカルを組み合わせ、意味とつながりに満ちたサウンドを生み出している。


カリフォルニア州オレンジ郡で育ったリーヴァイは、10代の頃、彼や多くの人が "ベルトコンベアー式の学校システム "と表現するものに深い不満を抱くようになった。 背中のシャツとギターしかなかった彼は、別の道、つまり音楽の道に踏み出した。 

 

家出から東洋のスピリチュアリティとの出会い、サイケデリアから自分自身の古代ユダヤ教的ルーツの発掘まで、ソングライティングはユニークに統合する不変のものだった」とリーヴァイは打ち明ける。 

 

 ソングライティングは、彼の心の奥底にある感情をメロディと詩へと変換するパワフルな方法となった。 バッハ、ストラヴィンスキー、ミンガス、ヘンドリックス、ディラン、ベック、ガイ、ディアンジェロ、レディオヘッドなど、多彩なアーティストからインスピレーションを得て、リーバイ・ロビンは独自のマインドフルでジャンルを超えた音楽作品を生み出している。

 

 

「Healing Is Coming」



このアーティストが最初に注目を集めたのは2014年、セルフタイトルのデビューEPのリリースと、それに続くマティスヤフとのツアーだった。 以来、シングルやアルバムを次々と発表し、100万回以上のストリーミングを記録、世界中にファンを獲得した。

 

2023年、LeviはあるコンサートでプロデューサーのYoel Kreisler、通称'FRAYMES'と出会い、セレンディピティな瞬間を経験した。 すぐにクリエイティブなつながりと友情が生まれ、ふたりはスタジオに入った。 私たちは音楽と影響を交換し始め、この新しい音楽をレコーディングするための新しい方法を構想し始めた。 この新しいコラボレーションの結果であり、最初の試みがシングル "Whole As A Broken Heart "である。 


彼の新しいシングル "Healing Is Coming "は、「あらゆる障害に立ち向かい、人生の計り知れない真実に立ち向かい、暗闇に立ち向かい、私たちのユニークな魂の光をもたらし、蛇の目を見据える、降伏と勇気の歌です」とリーヴァイは語っている。 

 

「Healing Is Coming "では、ぶつかり合うギターに乗せて、リーヴァイの紛れもないヴォーカルがフィーチャーされている。 魂を揺さぶる繊細なハーモニーが曲に華を添え、美しさとほろ苦さが同居するフォーク・ポップに仕上がっている。 




Levi Robin's journey of exploration and curiosity has taken him down many roads. The soul-baring folk artist’s distinctive musical style combines deeply personal and transformative lyrics with emotive stirring vocals, creating a sound that is filled with meaning and connection.


Growing up in Orange County, California, as a teenager Levi became deeply dissatisfied with what he and many describe as “the conveyor belt trajectory of the school system.” With nothing but a shirt on his back and guitar in hand, he took a chance on a different path - a musical one. Levi confides, “From being a runaway to encountering eastern spirituality, from psychedelia to unearthing my own ancient Judaic roots, songwriting has been a uniquely integrating constant.”  Songwriting became a powerful way to translate his deepest feelings into melody and verse. Taking inspiration from an eclectic array of artists including Bach, Stravinski, Mingus, Hendrix, Dylan, Beck, Gaye, D'Angelo and Radiohead, and more, Levi Robin creates his own mindful and genre-defying musical releases. 


The artist first attracted attention in 2014, with the release of his debut self-titled EP as well as his subsequent tour with Matisyahu. Since then, he has shared a series of singles and albums, racking up over a million streams, garnering him a fanbase worldwide. In 2023, Levi experienced a serendipitous moment when he met producer Yoel Kreisler, aka 'FRAYMES', at one of his concerts. Sparking up an instant and immediate creative connection and friendship, the duo entered the studio. He shares, “We started trading music and influences, and began conceptualizing new ways of approaching recording this new music.” The result and first taste of this new collaboration is the single “Whole As A Broken Heart”. 


His new single "Healing Is Coming", "is a song of surrender and courage, to face all obstacles, to face the ineffable truth of life, to face the darkness, to bring forth the light of our unique souls and look the serpent in the eyes," shares Levi. "Healing Is Coming" features Levi's unmistakable vocal hues over colliding guitars. Soul-baring delicate harmonies add to the song, creating a folk pop track that is equal parts beautiful and bittersweet. 

 

 

 


ジュリアン・ベイカー&TORRESは、4月18日にマタドール・レコードからリリースされるコラボ・アルバム『Send a Prayer My Way』の新たな一面を垣間見ることができるニューシングル「Dirt」をリリースした。(楽曲のストリーミングはこちらから)


 Julien Baker & TORRESは、『Send a Prayer My Way』からすでに3枚のシングルをリリースし、高評価を得ている。

 

「Sylvia」と「Tuesday」は、カントリーミュージックへの共通の愛を示すと同時に、このジャンルに対する2人の作曲スタイルと解釈を際立たせている。その前に、彼らは「ジミー・ファロン主演のザ・トゥナイト・ショー」で「Sugar in the Tank」を初披露した。今月初めには、ザ・デイリー・ショーへの出演とインタビューで「Bottom of a Bottle」をプレビューした。


先週、デュオはロンドンのラフ・トレード・イーストとセント・ジョンズ・チャーチでソールドアウトのインストア・ライヴを行った。


ベイカー&トレスは、4月23日のヴァージニア州リッチモンドを皮切りに、5月12日のネバダ州オマハまでのヘッドライン日程で、Send A Prayer My Way米国ツアーを開始する。さらに、すでに発表されているフェスティバルにも出演する。 


 Send A Prayer My Way』は、ベイカーとトレスが2016年に初めて一緒にライヴを行い、最後に片方のシンガーがもう片方に向かって "カントリー・アルバムを作るべきだね "と言って以来、制作が進められてきた。

 

これはカントリー・ミュージックの世界では伝説的な原点であり、余裕のあるエレガントな歌詞と苦悩を分かち合う勇気ですでに賞賛されている2人のアーティストのコラボレーションの始まりである。

 


「Dirt」

Nico Paulo  『Interval_o』EP
 

Label:  Foward Music Group

Release: 2025年3月21日

 

 

Review    

 

ニコ・パウロはポルトガル系カナダ人のミュージシャン、ビジュアル・アーティスト。パウロは芸術と音楽を追求するために2014年にカナダに移住し、当初はトロントに根を下ろし、この街の活気あるクリエイティブ・コミュニティに身を置いた。

 

2020年代初頭にはセント・ジョンズに移り住み、ニューファンドランドの名高い音楽シーンに欠かせない存在となった。この島を拠点に活動するパウロは、世界中のステージにおいて、うなり、うっとりし、はしゃぎ、踊る、魅惑的なライブ・パフォーマーとしての地位を確立した。

 

絶賛されたセルフ・タイトルのデビュー作(2023年4月)は、豊かで洗練されたポップ・アレンジの中で、人間関係の相互関連と時間の流れを探求し、メロディアスでオープンハートなソングライティングをリスナーに紹介した。最新のEP『Interval_o』(2025年3月)は、温かみのあるアンビエントとミニマルなサウンドスケープの中で、直感的なソングライティングで変容の時を謳歌し、そうなりつつある過程に存在の意義を見出す。上記2枚のアルバムのテクスチャーの複雑さは、友人でありコラボレーターでもあるジョシュア・ヴァン・タッセルの貢献によるものだ。


このEPは忙しい人のささやかな休息のためにぴったりのポピュラーソング集である。EPは記憶のムーブメントで占められている。ニコ・パウロ、そして彼女が率いるバンドからの招待状を受け取ったリスナーはどのような世界を見出すだろう。

 

本作は声楽の響きを追求した『Interval 1 : Invitation』で幕を開ける。2つのボーカルを組み合わせた声楽形式のアカペラで聞き手を安息の境地へといざなう。背景となるトラックには水の音のサウンドスケープが敷き詰められ、それがパウロのゆったりとした美しいボーカルと溶け合う。

 

「Interval 2: Grow Somthing」はアコースティックギターをベースとしたフォーク・ソングである。どことなく寓話的でお伽話のような音楽の世界が繰り広げられる。ミニマルで反復的なギターフレーズが続く中、パーカッションが入り、パウロのコーラスとメインボーカルが美しく融和している。南国のサーフミュージックのように開けた安らいだ感覚を味わうことが出来る。アウトロではパウロのボーカルがフィードバックしながら、夢心地のままとおざかっていく。

 

その後、シネマティックなサウンドに接近する。「Memory 3: In Company」は再びクワイアのコラージュサウンドに舞い戻る。一貫してミニマルな構成と美しいハーモニーを交えながら淡々とした曲が続く。 

 

しかし、その中には、アーティストがライブで培ってきたアートパフォーマー的なセンスとサーフミュージックのようなトロピカルな要素が溶け合い、陶酔的なアートポップが構築される。最もアップテンポなトラックが「Memory 4: Move Like A Flame」。ワールド・ミュージックの要素をベースに、ボサ・ノヴァ的なアコースティックギター、そしてリズムの中でシンプルなボーカルワーク、エレクトロニカ風のサウンド処理が心楽しげな雰囲気を醸し出している。

 

EPの音楽を聞き出すと、惜しいほどすぐに終わってしまう。それでも、情報過多な時代においてスペースや余白の多い音楽ほど美しいものは存在しない。クローズ「Movement 5:  Two Ends」はボサ・ノヴァやハワイアン音楽を基底にし、夕日を浜辺で見るような甘美さを表現する。ほんの瞬きのように儚く終わるEP。音楽そのもののセンスの良さ、そして歌の本当の美しさによって、ニコ・パウロはカナダの注目のフォークシンガーとして名乗りを挙げようとしている。


 


82/100

 



マリカ・ハックマンが、ローラ・マーリングをゲストに迎えた楽曲「Skin」の新バージョンをリリースした。


この特別バージョンは、ハックマンのデビューアルバム「We Slept At Last」から10周年を記念して制作された。


ハックマンは、アビイ・ロード・スタジオのザ・ゲートハウスと自身のスタジオの間でレコーディングを行い、この曲の新しい姿を自らプロデュースした。これは、アビー・ロードとピッチフォーク・ロンドンとの毎年恒例のコラボレーションの一環として実現した。


余裕のある広々としたレコーディングでは、マーリングのヴォーカルが曲に深みと音色を加え、最小限の楽器編成が心を揺さぶるような親密な効果を与えている。ビジュアライザーは以下より。



 


 コロラドを拠点に活動するシンガーソングライター、Sarah Banker(サラ・バンカー)がシングル「FRIENDS」をリリースした。インディーフォークとヨットロックを結びつけ、自己受容を表現している。ミュージックビデオが公開されていますので、お茶のお供に下記よりこの映像をご覧ください。


 「FRIENDS」でサラは、生涯を共にする人を見つけるという親近感のわく物語を、楽しく、軽快で、時代を超えた歌に仕上げている。 この曲は、コミュニケーションの重要性や試行錯誤についても触れている。 繊細でありながら力強い歌声で、サラは正直でありのままの弱さを表現している。 プロダクションは親しみやすく控えめで、歌詞と彼女のソウルフルな表現が主役となる。


 この曲は、彼女がリリースを予定しているEP『Into the Heart』からの最新曲である。 プロデューサー/ミュージシャンのジェフ・フランカ(Thievery Corporation)と彼女の新曲のためにチームを組んだ。 彼女はTedXのスピーカーとして成功を収め、その魅惑的なサウンドとソングライティングで、分かち合うべき愛というユニークな贈り物を解き放つ鍵として、自己を慈しみ、受け入れるという感動的なメッセージを紡ぎ出した。 

 

 「FRIENDS」

  



Colorado-based singer/songwriter Sarah Bunker has released her single "FRIENDS". It expresses self-acceptance by combining indie folk and yacht rock. The music video has been released and can be viewed below.


 With the single "FRIENDS," Sarah creates a fun, flirty, and timeless song about the relatable narrative of finding someone to spend a lifetime with. The song also touches on the importance of communication and trial and error. With her delicate yet powerful voice, Sarah conjures an honest, unfiltered sense of vulnerability that resonates throughout. The production is intimate and understated, allowing the lyrics and her soulful delivery to take center stage.


 The song is the latest off of her upcoming EP Into the Heart, a collection of authentic and transformative songs centered around resilience. The artist teamed up with producer/musician Jeff Franca (Thievery Corporation) for her new music. She has found success as a speaker on TedX where she weaved her captivating sound and songwriting with her inspirational message of self-compassion and acceptance as the key to unlocking our unique gifts of love to share. 

 

 

 サラ・バンカーはコロラドの山奥を拠点に活動するハートフルなシンガー・ソングライター。 幼少期に演劇作品に出演した経験からインスピレーションを得たサラは、文化人類学の学位取得後、ギターを学び、ソングライティングを通して自分の本当の声を見つけた。 

 

 ギターを始めてわずか3ヶ月で、初めてのギター・パフォーマンスを経験した。 すぐに夢中になった彼女は、18ヵ月後、持ち物のほとんどを売り払い、バックパックとギターだけを持って旅に出た。 探検と好奇心の旅は、ハワイのジャングルから太平洋岸北西部の森、ユタ州南部の砂漠、コロラド州の山頂へと彼女を連れて行った。


 今度のEP『Into the Heart』は、レジリエンス(回復力)を中心とした、本物で変容的な曲のコレクションである。 生き生きとした4曲入りのフォーク・ポップEPは、コロラド州インディアンピークス荒野の標高9,000フィート(約3,000メートル)にあるジェフ・フランカ(Thievery Corporation)のスタジオでレコーディングされ、プロデュースされた。 その結果、感動的で、音に遊び心があり、有機的な音楽の旅が生まれた。


 シングル「FRIENDS」でサラは、生涯を共に過ごす相手を見つけるという親近感のわく物語を、楽しく、軽快で、時代を超えた歌に仕上げた。 この曲は、コミュニケーションの重要性や試行錯誤についても触れている。 繊細でありながら力強い歌声で、サラは正直でありのままの弱さを表現している。 プロダクションは親しみやすく控えめで、歌詞と彼女のソウルフルな表現が主役となる。


 サラ・バンカーの能力は、シンプルでありながら表現力豊かな歌詞で複雑な感情をとらえることで、彼女の音楽全体に一貫した強みを生み出している。 彼女の曲は普遍的でありながら、深く個人的なものであるように感じられ、リスナーを内省させ、癒し、これから起こることを受け入れるように誘う。


 最終的に彼女の音楽的な意図は、音を通して光と愛の源となることだ。 彼女はまた、自分の音楽が、他の人たちが自分自身のベスト・バージョンになるよう鼓舞することを願っている。 ーーあなたは自分の人生を切り開くために必要なものをすべて自分の中に持っているのですーー

 




Sarah Banker is a heartfelt singer/songwriter based in the mountains of Colorado. Drawing inspiration from her childhood experiences performing in theatrical productions, Sarah found her true voice through songwriting after learning guitar, following her degree in Cultural Anthropology. 

 

 After only three months of playing, she had her first guitar performance. Instantly hooked, 18 months later, she sold most of her belongings and set out on the road with just a backpack and her guitar. Her journey of exploration and curiosity has taken her from the jungles of Hawaii to the forests of the Pacific Northwest, down to the deserts of southern Utah, and up to the peaks of Colorado—each place influencing her musical releases and touching others along the way.


 Her upcoming EP, Into the Heart, is a collection of authentic and transformative songs centered around resilience. The vibrant four-song folk-pop EP was recorded and produced by Jeff Franca (Thievery Corporation) in his studio, at 9,000' feet elevation in the Indian Peaks Wilderness in Colorado. The result is a musical journey that is touching, sonically playful, and organic.


 With the single “FRIENDS,” Sarah creates a fun, flirty, and timeless song about the relatable narrative of finding someone to spend a lifetime with. The song also touches on the importance of communication and trial and error. With her delicate yet powerful voice, Sarah conjures an honest, unfiltered sense of vulnerability that resonates throughout. The production is intimate and understated, allowing the lyrics and her soulful delivery to take center stage.


 Sarah Banker's ability to capture the complexity of emotions in simple yet expressive lyrics is a consistent strength across her music. Her songs feel both universal and deeply personal, inviting listeners to reflect, heal, and embrace what’s to come.


 Ultimately, her musical intention is to be a source of light and love through sound. She also hopes her music inspires others to be the best version of themselves, sharing, "You are the ONE, the one who has the potential to make the changes that lead to a fulfilling life experience. You have everything you need within you to take charge of your life."