ラベル Indie Folk の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル Indie Folk の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

 


カナダの5人組、Foxwarren(フォックスウォーレン)は、アンディ・シャウフ、エイブリー&ダリル・キシック、ダラス・ブライソン、コリン・ニーリスの4人組。彼らのニューアルバム『2』が5月30日にANTI-からリリースされる。


『2』は、ジャンルと曲の境界線が常に曖昧な、楽しくて驚くべきアルバムだ。フォックスウォーレンは、表向きはフォーク・ミュージックを演奏しており、温かみのあるトーンと奔放なリズムが、軽薄なヴォーカルの中で実存的な苦悩と格闘する登場人物の歌を支えている。


しかし、ジュノー賞にノミネートされた2018年のセルフタイトル・デビューアルバムをツアーした後、フォックスウォーレンはこれまでとは違うやり方でやっていこうと決心し、最終的にはおなじみのバンド・イン・ルームのルーティンをやめ、代わりにこれらの曲や他のさまざまなサウンドをサンプラーに差し込んで『2』を作っていった。


4つの州にまたがるそれぞれの自宅スタジオで、5人のメンバー全員が曲のアイデアやメロディックなフレーズ、リズムの断片を共有フォルダにアップロードした。


トロントでは、アンディ・シャウフがこれらをサンプラーに接続し、バンドメンバーから提供された断片から曲を構築した。フォックスウォーレンは毎週オンライン・ミーティングを開き、曲がどのように変化するかについて遠距離から提案した。その結果、37分間のコラージュ・アートを通して、ある関係の表裏をなぞるような、魅惑的で不気味なアルバムが完成した。

 

 

「Yvonne」


Foxwarren 『2』


Label: ANTI-

Release: 2025年5月30日

 

Tracklist:


1. Dance
2. Sleeping
3. Say It
4. Listen2me
5. QuiteAlot2
6. Strange
7. Havana
8. Yvonne

9. Deadhead
10. True
11. Round&round
12. Dress
13. Wings
14. Serious
15. Again&

▪世界的な評価も高めている東京拠点の孤高のエクスペリメンタル・フォーク・シンガー、SatomimagaeがRVNG Intl.からニューアルバム『Taba』を4月25日にリリース


 

©︎Norio

東京を中心に活動しているミュージシャン、ソングライター、そして内なる世界と外なる世界を旅するSatomimagaeの2021年の傑作『Hanazono』に続くニューアルバムが四年ぶりに完成した。

 

本作は今週末(4/25)にRVNG(日本ではPlanchaからリリースされる。RVNGは、実験音楽に特化した名物的なレーベルで、アメリカ版のWARPといっても過言ではない。カタログの中には、NYでオノ・ヨーコと交流があったドローン音楽のイノベーター、Tashi Wadaのアルバムが含まれている。

 

サトミ・マガエは、日本国内の大学で研究的な分野に携わった後、ソロシンガーソングライターの道のりを歩んできた。実験的なポピュラー、フォークを日本的な感性と組み合わせ、比類なき音楽の境地を探る。音楽的な原点は、彼女が幼い頃に住んでいたアメリカでの生活にあった。

 

日本の著名なエレクトリック・プロデューサー、畠山地平にその才能を見出された後、White Paddy Mountainに所属したあと、ニューヨークのRVNGからリリースを行うようになった。以降、ソロアルバムの制作、Duennとのコラボレーションアルバムなどに取り組んできた。また、シンガーは、音楽的な活動にとどまらず、アーティストとしての広汎な分野に興味を見出している。

 

待望の四年ぶりとなるフルアルバム『Taba』は、想像力豊かな考察を集め、広大な観念を辿り、つつましい瞬間に静かな余韻を残す。個人と集団、構築的なものと宇宙的なもの、明瞭なものと感じられるものの間を鮮やかにつなぐ。本作は個人的なことと普遍的なこと、目に見えることと見えないことの両方を記録した一連のヴィネットとして展開する。自宅スタジオの外に流れる人生のつかの間のシーンやサウンドを観察し吸収しながら、彼女は自分自身を超え、現在と記憶の奇妙な流動の両方の魂とシステムの軌道の中で歌い、直線的なソングライティングではなく、トーンやテクスチャーが拡大し、広がりのあり 深みのあるストーリーが展開される。 


『Taba』のリード・シングル「Many」は、疎外された時代のフォーク・ミュージックであり、より有機的な曲作りと、Satomiを 取り巻く世界の自然な響きを強調し、取り入れるアレンジへの微妙だが意図的なシフトを示している。

 

気づかれなかった人生や集合的な記憶についての考察に導かれ、個人やグループを結びつけたり解いたりする結合組織を繊細になぞる「Many」は、不明瞭なエコーや漠然とした音のジェスチャーが織り成すエーテルに対して、ループやスパイラルの中でSatomiが考えを巡らせている。 


このアルバムは、「Taba- 束(たば)」(異なるものを束ねたもの、束ねたもの、ひとまとめにしたものを意味する日本語)の論理に従い、緩やかな短編小説集として組み立てられている。詩人のような語り手へと変貌を遂げたSatomiは、疎外されつつある現代を定義するありふれた出来事や、やりとりから形成される不可解な形に作家の目を投げかけている。


前作『Hanazono』 (2021年)が、私的な内面という青々としたフィールドから花開いたのに対して、『Taba』の鳥瞰図は、アーティストをより広く、よりワイルドな世界のどこかに位置づけようとしている。 

 


「グループとしての人間、そしてグループの中の個人をどう見るかについて考えていました」とサトミ・マガエiは言う。

 

グループはどの ようにつながっているのか、また、どのように境界線が存在するのか。

 

私たちは集団(束)の中の一要素に過ぎないのに、一人ひと りの目に見えない経験や記憶がどこかに残っていて、気づかないうちに私たちや社会に影響を与えているという意識……。つまり、私たちは塊の中の小さな点なのだ。


 

『Taba』の最初のざわめきは、Satomiの曲「Dots」で聴くことができる。この曲は、RVNG Intl.からリリースされた2021年のコンピ『Salutations』の星座にマッピングされた多くのきらめく点のひとつ。パンデミック初期、SatomiがiPhoneに録音していた素材の奥から引き出された「Dots」は、彼女を影のようでありながら誘う道を案内する、言葉のない内なるガイドだった。 

 

興味をそそられ、インスピレーションを受けたサトミは、この感覚を大切にし、新しい創造的な環境の中で新しいコード、リズム、テンポを試した。しかし、Tabaの精神を呼び起こしたのは、サウンドアーティスト、duennとのコラボレーションアルバム『Kyokai(境界)』 でのやりとりであった。 


“俳句以上、音楽未満”というテーマを掲げた『Kyokai』は感覚を言葉にし、Satomiが記録している音の断片が単なる未完成のスケッチではなく、強力な造形物であることを明示した。伝統的なフォーク・ソング的アプローチを脇に置き、デモの質感を取り払ったSatomiのソングライティングは、パズルやパッチワークに近い内容に進化し、音楽の礎となるアコースティック・ギターとヴォーカルが『Taba』全体で聴かれるイマジネーション豊かなアレンジへとピースを繋ぐ。

 

 
Satomiの世界観に近い他のアーティストやミュージシャンとのコラボレーションが、アルバムのサウンドに一層彩りを添えている。写真と映像でアルバムのビジュアル・アイデンティティを決定づけた、Norioのシンセサイザーラインは、優しいバラード 「Kodama」を盛り上げている。

 

「Dottsu」は、鈴のようなローズ・ピアノがSatomiのギターの周りで鳴り響き 、2021年の『Colloid EP』のジャケット・アートを手がけたAkhira Sanoが演奏している。

 

「Spells」を完成させるパズルのピースとなったYuya Shitoのクラリネットは、有機的なテクスチャーとエレガントなエッジの擦り切れを聴き取りながらTabaをミックスし、Satomiのこれまで の表現とは明らかに異なるエネルギーを発散させた。 


これらの曲の土台となっている音色とリズムの遊びは、メロディーのジェスチャー、ノイズのような共鳴、Satomiの手元の レコーダーが捉えた尖った瞬間など、カラフルなパレットにも活気を与えている。

 

『Taba』は、これまでのSatomiの音楽を特徴づけてきた生来の親密さにまだ貫かれているが、これらの曲は、彼女の新しく広々とした、探究心旺盛なソングライティング・アプローチに沿ったものである。そしてそのプロセスで珍らかなレイヤーが解明されている。サウンド・デザインの思索的な詩学に包まれた曲もあ れば、ベッドルーム・ポップの窓からのぞく曲もある。 


想像力豊かな考察を集め、広大な観念を辿り、つましい瞬間に静かな余韻を残す『Taba』は音楽的な意義を越え、個人と集団、構築的、宇宙的、明瞭的と感覚的な概念の狭間を鮮やかにつなぎ合わせる。


Satomiの音の物語は、会話の中に存在するという単純な事実によって雄弁な一貫性を獲得し、動き回る人生のもつれた回路がうなるようなパーツのハーモニーを奏でる。 洋楽として聞いても、そして邦楽として聞いても新鮮さがある。サトミマガエの象徴的なアルバムといえそうだ。

 

 

「Many」

 

 

▪️過去のインタビュー:  SATOMIMAGAE(サトミマガエ)   デビューアルバム「AWA」から最新作「境界」までを語る           

 


【新譜情報】 Satomimagae 『Taba』 




トラックリスト:

01. Ishi
02. Many
03. Tonbo
04. Horo Horo
05. Mushi Dance
06. Spells
07. Nami
08. Wakaranai
09. Dottsu
10. Kodama
11. Tent
12. Metallic Gold
13. Omajinai
14. Ghost
15. Kabi (Bonus Track)

 

 

【Satomimagae】

 

東京を中心に活動しているアーティスト。暖かさと冷たさの間を行き来する変化に富んだフォークを創造している。

 

畠山地平が手掛ける''White Paddy Mountain''より2作のアルバムをリリース後、2021年にNYのRVNG Intl.へ移籍。4枚目のアルバム『Hanazono』を幾何学模様のメンバーが主催するGuruguru Brainと共同リリース。 

 

2012年にセルフリリースしていたデビューアルバム『Awa』のリマスター拡張版『Awa (Expanded)』を2023年にRVNG Intl. よりリリースした。

 

コロラドを拠点に活動するシンガーソングライター、Sarah Banker(サラ・バンカー)が新作EP『Into the Heart』をリリースした。くつろいだ感じのポップスで、邦楽がお好きな方にもおすすめです。下記よりEPの収録曲「COCKADOODLEDOO」のミュージックビデオをご覧ください。

 

本作はレジリエンス(回復力)を中心とする変容的な歌のコレクション。生き生きとした4曲入りのフォーク・ポップEPは、コロラド州インディアンピークス荒野の標高9,000フィートの歌手のスタジオで、ジェフ・フランカ(Thievery Corporation)がレコーディングとプロデュースを手がけた。その結果、感動的で、音に遊び心があり、オーガニックな音楽の旅が生まれた。

 

サラ・バンカーは、コロラドの山奥を拠点に活動するハートフルなシンガー・ソングライターである。幼少期に演劇作品に出演した経験からさまざまなインスピレーションを得たサラは、文化人類学の学位取得後、ギターを学び、ソングライティングを通して自分の本当の声を見出した。

 

ギターを始めてわずか3ヶ月で、初めてのギター・パフォーマンスを経験。すぐに夢中になった彼女は、1年半後、持ち物のほとんどを売り払い、バックパックとギターだけを持って旅に出かけた。探検と好奇心の旅は、ハワイのジャングルから太平洋岸北西部の森、ユタ州南部の砂漠、コロラド州の山頂まで及んだ。



サラ・バンカーの能力は、シンプルでありながら表現力豊かな歌詞で複雑な感情を捉えることで、彼女の音楽全体に一貫した強みを生み出している。彼女の曲は普遍的であると同時に、深く個人的な感情を感じさせ、リスナーを内省させ、癒し、これから起こることを受け入れるよう誘う。

 

最終的に彼女の音楽的意図は、音を通して光と愛の源となること。彼女はまた、自分の音楽が、他の人たちが自分自身のベスト・バージョンになるよう鼓舞することを願っている。

 

「あなたは一つ、自分の人生を切り開くために必要なものをすべて自分の中に持っているのだから」とサラは言う。

 



「COCKADOODLEDOO」- EP『Into The Heart』に収録

 

 

 

Sarah Banker is a heartfelt singer/songwriter based in the mountains of Colorado. Drawing inspiration from her childhood experiences performing in theatrical productions, Sarah found her true voice through songwriting after learning guitar, following her degree in Cultural Anthropology. 

 

After only three months of playing, she had her first guitar performance. Instantly hooked, 18 months later, she sold most of her belongings and set out on the road with just a backpack and her guitar. 

 

Her journey of exploration and curiosity has taken her from the jungles of Hawaii to the forests of the Pacific Northwest, down to the deserts of southern Utah, and up to the peaks of Colorado—each place influencing her musical releases and touching others along the way.



Her new EP, Into the Heart, is a collection of authentic and transformative songs centered around resilience. The vibrant four-song folk-pop EP was recorded and produced by Jeff Franca (Thievery Corporation) in his studio, at 9,000' feet elevation in the Indian Peaks Wilderness in Colorado. The result is a musical journey that is touching, sonically playful, and organic.



Sarah Banker's ability to capture the complexity of emotions in simple yet expressive lyrics is a consistent strength across her music. Her songs feel both universal and deeply personal, inviting listeners to reflect, heal, and embrace what’s to come.



Ultimately, her musical intention is to be a source of light and love through sound. She also hopes her music inspires others to be the best version of themselves, sharing, "You are the ONE, the one who has the potential to make the changes that lead to a fulfilling life experience. You have everything you need within you to take charge of your life."

 

 

 

Black Country, New Road 『Forver Howlong』 



Label: Ninja Tune

Release: 2025年4月4日


Review

 

ファーストアルバム『For The First Time』では気鋭のポストロック・バンドとして、続く『Ants From Up There』では、ライヒやグラスのミニマリズムを取り入れたロックバンドとして発展を遂げてきたロンドンのウィンドミルから登場したBC,NR(ブラック・カントリー、ニューロード)。


マーキュリー賞へのノミネート、それから、UKチャート三位にランクインするなど高評価を獲得し、さらには、フジ・ロック、グリーンマン、プリマヴェーラを始めとする世界的なフェスティバルでライブ・バンドとしての実力を磨いてきた。すでにライブ・パフォーマンスの側面では世界的な実力を持つバンドという前提を踏まえ、以下のレビューをお読みいただければと思います。

 

メンバーチェンジを経て制作された三作目。フジロックでの新曲をテストしたりというように、バンドは作品ごとに音楽性を変化させてきた。ロンドンではポストロック的な若手バンドが多く登場しており、BC,NRは視覚芸術を意図したパフォーミング・アーツのようなアルバムを制作している。また、ブッシュホールでの三日三晩の即興的な演奏の経験にも表れている通り、即興的なアルバムが誕生したと言えるかもしれない。メンバーが話している通り、スタジオ・アルバムにとどまらない、精細感を持つ演劇的な音楽がアルバムの収録曲の随所に登場している。音楽的に見ると、三作目のアルバムではバロックポップ、フォーク、ジャズバンドの性質が強められた。これらが実際のライブパフォーマンスでどのような効果を発揮するのかがとても楽しみ。

 

今回、バンドはミニマリズムを回避し、ジョン・アダムスの言葉を借りれば、ミニマリズムに飽きたミニマリスト、としての表情を伺わせる。しかし、全般的にはクラシック音楽の影響もあり、アルバムの冒頭を飾る「Besties」ではチェンバロの演奏を交え、バロック音楽を入り口として即興的なジャズバンドのような音楽性へと発展していく。ボーカルが入ると、バロックポップの性質が強くなり、いわばメロディアスな楽曲の表情が強まる。一曲目「Besties」は新しい音楽性が上手く花開いた瞬間である。


一方で、ビートルズの中期以降のアートロックを現代のバンドとして受け継いでいくべきかを探求する「The Big Spin」が続く。「ラバーソウル」の時代のサイケ性もあるが、何より、ピアノとサックスがドラムの演奏に溶け込み、バンドアンサンブルとして聞き所が満載である。新しいボーカリスト、メイ・カーショーの歌声は難解なストラクチャーを持つ楽曲の中にほっと息をつかせる癒やしやポピュラー性を付与する。


そういったバンドアンサンブルを巧緻に統率しているのがドラムである。現在のバンドの(隠れた)司令塔はドラムなのではないか、とすら思わせることもある。散漫になりがちな音楽性も、巧みなロール捌きによって楽曲のフレーズにセクションや規律を設けている。上手く休符を駆使すれば最高だったが、音楽性が持続的な印象が強いのは好き嫌いが分かれる点かもしれない。休符が少ないので、音楽そのものが間延びしてしまうことがあるのは少し残念な点だった。

 

そんな中で、これまでのBC,NRとは異なり、ポピュラー性やフォークバンドとしての性質が強まるときがある。そして、従来のバンドにはなかった要素、これこそ彼等の今後の強みとなっていくのでは。「Socks」では60〜70年代のバロックポップの影響をもとにして、心地よいクラシカルなポピュラーを書いている。メロディーの良さという側面がややアトモスフェリックの領域にとどまっているが、この曲はアルバムを聴くリスナーにとってささやかな楽しみとなるに違いない。そしてこの曲の場合、賛美歌、演劇的なセリフを込めた断片的なモノローグといったミュージカルの領域にある音楽も登場する。 これらは新しい「ポップオペラ」の台頭を印象づける。


次いで、クイーンのフレイディ・マーキュリーのボヘミアン的な音楽性を受け継いだ曲が続いている。「Salem Sisters」は「ボヘミアン・ラプソディー」の系譜にあるピアノのイントロで始まり、その後、アートポップやジャズ的なイディオムを交えた前衛的な音楽が続いている。一曲目と同じように、チェンバロの演奏も登場するという点ではジャズとクラシック、そしてポピュラーの中間域に属する。ボーカルは優雅な雰囲気があり素晴らしく、この曲でもドラムの華麗なロールが楽曲に巧みな変化や抑揚の起伏を与えている。いわば、BC,NRの目指す即興的な音楽が上手く昇華された瞬間を捉えられる。そして曲の後半部にかけて、ボーカルはミュージカルに傾倒していく。いわば、このアルバムの中核を担うシアトリカルな音楽の印象が一番強まる瞬間だ。

 

 アルバムの中盤では中性的なアイルランド民謡に根ざしたフォーク/カントリーミュージック「Two Horses」、「Mary」がアルバムの持つ世界観を徐々に拡張させていく。そして同じタイプの曲でも調理方法が異なり、前者では変拍子を交えたプログレッシブな要素、さらに後者では、ジャズやメディエーションのニュアンスが色濃い。また、賛美歌やクワイアのような聴き方も出来るかもしれない。すくなくとも、それぞれ違う聴き方や楽しみ方が出来るはずだ。

 

ブラック・カントリー、ニュー・ロードの掲げる新しい音楽が日の目を見た瞬間が「Happy Birthday」となる。印象論としては、ビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・クラブ・ハーツ・バンド」のミュージカルの系譜にある音楽を踏襲し、それらをクイーン的にならしめたものである。この曲ではボーカルはもちろん、サックス、ドラム、ピアノの演奏がとても生き生きとして聞こえる。また、チェンバロの導入など遊び心のある演奏もこの曲に個性的な印象を付け加える。しかし、やはり、このバンドの曲が最も輝かしい印象を放つのは、ロック的な性質が強まる瞬間であると言える。無論、調性の転回など、音楽としてハイレベルなピアノの旋律進行もフレーズの合間に導入されることもあり、動きがあって面白く、さらに音楽的にも無限のひらめきに満ちているが、音符の配置が忙しないというか、手狭な印象があるのが唯一の難点に挙げられるかもしれない。その反面、一分後半の箇所のように、ダイナミックスが感じられる瞬間がバンドとして溌剌としたイメージを覚えさせる。 曲の後半では、カーショーの伸びのあるビブラートがこの曲に美麗な印象を添える。音楽的な枠組みに囚われないというのは、バンドの現在の美点であり、今後さらに磨きがかけられていくのではないかと推測される。

 

ロック寄りの印象を持つ瞬間もあるが、終盤では古楽やバロックの要素が強まり、さらにアルバムの序盤でも示されたフォークバンドとしての性質が強められる。「For The Cold Country」では、ヴィヴァルディが使用した古楽のフルートが登場し、スコットランドやアイルランド、ないしは、古楽の要素が強まる。結局のところ、これは、JSバッハやショパン、ハイドンのようなクラシック音楽の大家がイギリスの文化と密接に関わっていたことを思い出させる。特にショパンに関しては、フランス時代の最晩年において結核で死去する直前、スコットランドに滞在し、転地療養を行った。彼の葬式の費用を肩代わりしたのはスコットランドの貴族である。ということで、イギリス圏の国々は意外とクラシック音楽と歴史的に深い関わりを持ってきたのだった。

 

この曲は、スコットランドの古城や牧歌的な風景のサウンドスケープを呼びさます。そして実際に、そういった異国の土地に連れて行くような音楽的な換気力に満ちている。


タイトル曲「Forver Howlong」に関してもケルト民謡の要素が色濃い。これらの中世的な音楽性は、今後のブラック・カントリー、ニューロードの強みとなっていくかもしれない。かなり複雑で入り組んだアルバムであるため、一度聴いただけではその真価はわからないかもしれない。ただ、それゆえに、聴く時のたのしみも増えてくると思う。


今回は''バンド''という言葉を使用させていただいたが、BC, NRは、ひとつの共通概念を共有するグループーーコレクティヴの性質が強い。バンド/コレクティヴとして純粋な音楽性を感じさせたのがアルバムのクローズを飾る「Goodbye」だった。一貫して、ポスト・ブリットポップ的な音楽を避けてきたバンドが珍しくそれに類する音楽を選んでいる。ただ、それはやはり、フォークバンドとしての印象が一際強いと付言しておく必要があるかもしれない。今後どうなるのかが全くわからないのがこのバンドの魅力。潜在的な能力は未知数である。

 

 

 

84/100

 

 

「Goodbye(Don't Tell Me)」


 

テキサス生まれでオクラホマシティ在住のフィンガースタイル・ギタリスト、Hayden Pedigo(ヘイデン・ペディゴ)が、ジャンルを超えた注目のニューアルバム『I'll Be Waving As You Drive Away』をメキシカン・サマーから6月6日にリリースすると発表した。 

 

ヘイデン・ペディゴは重要なカントリー/フォークの継承者であるが、彼の音楽にはモダンな雰囲気が漂う。渋いといえば渋いし、古典的といえば古典的だが、このSSWの魅力はそれだけにとどまらない。彼の音楽は、南部の壮大な風景、幻想的な雰囲気を思い起こさせることがある。 ヘイデンのカントリーに触れれば、不思議とその魅力に取りつかれたようになってしまう。


アルバムのオープニングを飾る「Long Pond Lily」が最初のシングルとして公開された。 ヘイデン・ペディゴの前作を彷彿とさせると同時に派手な逸脱を感じさせる。

 

彼の華麗なギターのプレイはパット・メセニーの最初期のスタイル、カントリー・ジャズを彷彿とさせる。この曲の場合は、エレクトリック/ギターの両方が演奏に使われるが、ギターだけでこれほど大きなスケールを持つ曲を書ける人は見当たらない。

 

この曲についてヘイデンは次のように述べている。「とても重く、巨大な曲だなん。ローエンドがガラガラと音を立てている。 この曲は最大主義的で、今まで書いたどの曲よりもずっとエネルギッシュなんだ」

 

マット・ミュアによる映画的なミュージック・ビデオが付属し、小さな町のスケート場をオープンすることがアメリカンドリームのように感じられる。

 

「Long Pond Lily」

 

 

Hayden Pedigo 『I'll Be Waving As You Drive Away』


Label: Mexican Summer

Release: 2025/6/6

 

Tracklist

1.Long Pony Lily

2 All The Way Across 

3 Smoked 

4 Houndstooth 

5 Hermes 

6 Small Torch

7 I'll Be Waving As You Drive Away

 

Pre-save:https://haydenpedigo.ffm.to/longpondlily.OYD

 


 

ニューヨークの四人組のインディーフォークバンド、フローリスト(Florist)は、エイドリアン・レンカー/バック・ミーク擁するBig Thiefと並んで同地のフォークシーンをリードする存在である。もちろん彼等はニューヨークのインディーズ音楽の最前線を紹介するグループ。

 

フローリストはエミリー・A・スプラグを中心に四人組のバンドとしてたえず緊密な人間関係を築いてきた。2017年にリリースされた2ndアルバム『If Blue Could Talk』の後、バンドは少しの休止期間を取ることに決めた。直後、エミリー・スプラグは母親の死の報告を受けたが、なかなかそのことを受け入れることが出来なかった。「どうやって生きるのか?」を考えるため、西海岸に移住。その間、エミリー・A・スプラグは『Emily Alone』をリリースしたが、これは実質的に”Florist”という名義でリリースされたソロアルバムとなった。しかし、このアルバムで、スプラグは、既に次のバンドのセルフタイトルの音楽性の萌芽のようなものを見出していた。バンドでの密接な関係とは対極にある個人的な孤立を探求した作品が重要なヒントとなった。



その後、エミリー・スプラグは、3年間、ロサンゼルスで孤独を味わい、自分のアイデンティティを探った。深い内面の探求が行われた後、彼女はよりバンドとして密接な関係を築き上げることが重要だと気がついた。それは、この人物にとっての数年間の疑問である「どうやって生きるのか」についての答えの端緒を見出したともいえるかも知れなかった。このときのことについてスプラグは、「ようやく家に帰る時期が来たと思いました。そして、複雑だから、辛いからという理由で、何かを敬遠するようなことはしたくない」と振り返っている。「だから、もう一人でいるのはやめようと思いました。もう1人でいるのは嫌だと思った」と話している。


彼女は2019年6月、フローリストの残りのメンバーであるリック・スパタロ、ジョニー・ベイカー、フェリックス・ウォルワースと再び会い、レコーディングに取り掛かった。セルフタイトルへの制作環境を彼女はメンバーとともに築き上げていく。バンドは、アメリカ合衆国の東部、ニューヨーク州を流れるハドソン渓谷の大きな丘の端にある古い家をフローリストは間借りし、その裏には畑と小川があった。

 

バンドのスプラグとスパタロは先に家に到着し、自然の中に完全に浸ることができる網戸付きの大きなポーチで機材をセットアップすることに決めた。これらの豊かな自然に包まれた静かな制作環境は、前作のセルフタイトルアルバム『Florist』に大きな影響を与え、彼らに大きなインスピレーションを授けた。フォークミュージックとネイチャーの融合というこのアルバムのに掲げられる主要な音楽性は、この制作段階の環境の影響を受けて生み出された。もちろん、アルバムの中に流れる音楽の温もりやたおやかさについてはいうまでもないことである。これらのハドソン川流域の景色は、このメンバーに音楽とは何たるかを思い出させたとも言えるだろう。 


『Jellywish』で、フローリストはリスナーをあらゆることに疑問を投げかけ、魔法、超現実主義、超自然的なものが日常生活の仲間である世界を想像するよう誘う。 "ジェリーウィッシュ"は、杓子定規で、制限的で、ひどく感じられる時代に、あえて可能性と想像力の領域を提示する。


このアルバムでFloristは明確な答えを提示することなく、人生の大きな問いを探求している。 その代わりに、バンドはおそらく最も難しい問いを投げかけている 。「染み付いた思考サイクルや、ありきたりな生き方から抜け出すことは可能なのだろうか? それこそが、真に幸福で、満たされ、自由になる唯一の方法なのかもしれない」


シンガー、ギタリスト、そして主要ソングライターであるエミリー・スプレイグは、このアルバムはわざと複雑にしてあると言う。 『本当に混沌としていて、混乱していて、多面的なものを優しく伝えようとしている』と彼女は説明する。 

 

「私たちの世界にインスパイアされたテクニカラーと、私たちの世界から脱出するためのファンタジー的な要素もある」


バンドはおよそ2年間ツアーを中心に活動しながら、苦しみや喜びをはじめとする様々な感覚が人々とどこかで繋がっているのを感じていた。そのことをエミリー・スプレイグは哲学や思想的な側面から解き明かそうとしている。もちろん、それは西海岸に住んでいた時代から続いていたものだった。我々は多くの経験をして学ぶ生き物なのであり、地球に生まれたからにはそのことを心に留めなければ。そしてどのような人も生きている限りは例外ではない。さらにフローリストは目に見えないものを大切にし続け、より良い世界を作るために音楽を作り続ける。


「セルフタイトルのレコードをリリースしてから数年間、私たち(人間は集合体として、多くの小さな行動、感情、反応によって互いに影響し合い、周りの世界に影響を与えている。 この曲は、私たちのそばにある目に見えない世界を信じ、その視点を使ってベールを突き破り、謙虚な現実の中で、共感、愛、他者との繋がりを生み出すための強力なツールを作ることを提案している」

 

「私たちの種としての力を引き出し、実際の善のための変化を生み出し、すべての人々の人生をより良く、平等にするため、私たちはあえて互いを大切にし、地球上の生命を大切にしないものに反対を唱えたい」



Florist 『Jellywish』- Double Double Whammy



フローリストと出会ったのは2022年のセルフタイトル『Florist』だった。結局、この時期と前後して、バーモントのLutaloという素晴らしいシンガーの音楽にも出会うことができたことに感謝したい。古くはパンクやロックのメッカとして栄えてきたニューヨークという土地が現在では様相が変化し、インディーズのフォーク音楽の重要な生産地であるということが掴めてきた。


あるミュージシャンの話によると、現在の同地には、CBGBのフォークシーン、マクシス・カンサス・シティのような固まったロックムーブメントというものは存在しないかもしれない。しかし、CBGBの創業者のクリスタルがカントリー・グラスのムーブメントを作ろうとした壮大な着想が花開いたのは、2020年代に入ってからだった。


しかも、それは、CBGBが閉店してずいぶん後になってからといえるかもしれない。元々、ニューヨークのパンクは、実はそのほとんどがカントリー・ミュージックを宣伝しようとするライブハウスから始まったせいもあり、テレビジョンを筆頭に、詩学などの文学性やインテリジェンスを感じさせる音楽性が含まれていたのである。同時に、ウォール街を象徴として発展してきた金融街であるニューヨークは、その時代ごとに音楽文化を様変わりさせてきた。

 

パティ・スミスにせよ、ラモーンズのような存在にせよ、また、バックストリートで屯していたヒップホップミュージシャン、あるいは2000年以降のミレニアム世代のフォークミュージックを象徴するビックシーフ、あるいはBODEGAのようなポスト世代のパンクバンドですら、彼等は20世紀の経済発展の象徴とも言えるニューヨークの街角で生活し、資本主義の価値観が蔓延する中で、それぞれが人間としてどのように生きるのかというテーマを探し求めてきた。 


なぜそこまでをするのか、と考える人もいるかもしれない。そして、それは摩天楼の世界があまりに強大であるがゆえ、個人やグループとして音楽を作るということが、異質なほど切実な意味を持つようになるからだ。音楽やそれに付随する何らかの芸術作品を制作し、ライブハウスやファンと交流すること、それは自分の存在を確認するためでもあった。これは専業か否かという問題ではなく、音楽そのものがもの凄く切実な意味を持っていた。そうでもしなければ、個人という存在すらかき消されてしまうことがある。これが資本主義社会の実態なのである。

 

今後の社会情勢がどのように移ろい変わっていくにしても、大局というのはそれほど大きくは変化しないのではないだろうか。近年、後期資本主義という概念を提唱する経済学者もいたかもしれないが、結局、これらは手を変え品を変えといった具合に、別のルートをぐるぐる回っていくのだろう。ある資本主義の形態に限界が来ると、次の資本形態に移行していく。確かにそうかもしれない。繰り返しが今後も続く事が予測される。しかし、人間はいつも制限的な社会の中で暮らさねばならないが、こういった外的な環境に左右されない普遍性というものが存在する。いつの時代もそれに人々は癒やされ、心を躍らせる。そして外側の風景などは移ろい変わっていくだけの、ただの風物のようなものであると気が付かずにはいられない。こんなことを言うのは、いま現在、世界でカオスをもたらす原因が再び発生しようとしているからである。

 

 

そして、政治は敵対意識や反抗意識を市民に植え付けるが、もし、世界の中に融和や協調という概念が生じるとすれば、それはやはりリベラルアーツを始めとする分野、それから音楽のようなものを通してと言わざるを得ない。最近では日本の大手銀行の社員研修で芸術鑑賞をするという話題があったが、''なぜ仕事に関係のないことをするのか''と疑念を抱く人もいるに違いない。そういうことをするのは、この世界には無数の道筋があるということを確認するためなのだ。それは、何らかの苦境に陥った時、安心や癒やしの瞬間をもたらす場合がある。もし、この世の中のすべての生産物が何らかの経済的な利益を生み出すため”だけ”に存在しているすれば、利益を生み出さないものは存在価値がないということになる。しかし、人生が順風満帆であるときにはわからないけれど、利益を生み出さなくとも意義を持つ生産物は限りなく存在する。そういうことを理解したとき、本当のものの価値を知ることになる。そして、同時に、この世界の多くのものが相対的な価値という杓子定規で計測されているに過ぎないことに気がつく。

 

 

フローリストの音楽は少なくとも、こういった相対的な価値に軸足を置いていない。 流行り廃りというのは確実に存在し、昨日までは絶対的な価値を持つとされていたものが、数年経つと、なんの価値も見出されないようになる事例がよくある。そして、これが相対的な価値を元にした世界のかなり残酷な一面なのである。


しかし、上記のようなことを踏まえた上で大切にすべきポイントがある。それは、好き、熱中する、もしくはワクワクする、というような独自の評価軸を人生の指針にするということである。誰かの意見やお墨付きをもらわなくとも、自分の感覚を重要視してゆっくりと歩いていくべきなのだ。そして、水かけ論のようになってしまうけれど、『Jerrywish』は四人組のフォークバンドの”好き”という感覚が重要視されている。彼等は音楽に心から夢中になっているし、そして、彼らは音楽の力を心から信じている。

 

 

現在の米国の社会情勢はカオスに陥っている印象である。考えの相違によって何らかの分断が起きていても不思議ではない。例えば、フォークミュージックの象徴であるニール・ヤングは、グラストンベリーに出演するため、アメリカを出国したあと、母国に帰れなくなるのではないかと懸念しているのだという。また、ノーベル賞受賞者のボブ・ディランは、近年は公の発言を控えている印象であるが、社会的な提言を言いたくて、うずうずしているかもしれない。


そして、フローリストに関して言えば、彼等の伝統的なフォーク音楽を受け継いで、それらを未来の世代に伝える重要な継承者のような存在である。そして、このアルバム『Jerrywish』では、幻想主義を交えながら、現実世界を俯瞰し、2020年代を生きるミュージシャンとして何を歌うべきかという点に照準が絞られている。


すべてが理想の通りにいったとはいえないかもしれないが、エミリー・ スプラグを中心とするバンドは、より良き社会を作り上げるため、軽やかなフォーク音楽に乗せて、建設的な提言を行っている。そしてそれは、ヤングやディランと同じように、社会を変えるような大きなパワーを持っている。また、本来は地球の人々が一つに繋がっているという理想主義的な概念を捉えられる。条件や環境、価値観の違いを乗り越えるという考え、それらはジョン・レノンに近いものである。同時にそれは、現実社会では容易には達成しがたいので、リベラルアーツや音楽という形で多くのクリエイターたちが提言してきた、ないしは伝えてきた内容でもあるのだ。

 

 

フローリストは、ニューヨークの山岳地帯のキャッツキルのプロジェクトとして知られている通り、自然主義者としての側面を持っている。それはアルバムの全体に通奏低音のように響きわたり、生き物全般を愛するという普遍的な博愛主義に縁取られている。アルバムはオーガニックな質感を持つアコースティックのフォークミュージックで始まり、「Levitate」はその序章となる。


「Levitate」は、音楽の助走のような役割を果たし、風車小屋の水の流れを補佐するかのように、アルバムの世界を少しずつ広げていく。


アルペジオを中心とする滑らかなフォークギターに合わせて、エミリー・スプラグは、心を和ませるような和平的な歌を歌い上げて、混乱した世界に規律をもたらす。こういった音楽は、世界と自分の生きている社会がどこかで繋がっていることを知らないと作れない。そしてまた、自分たちの音楽が聴き手にどんな影響を及ぼすのかを考えないと到達しえない。実際的に、スプラグはディランの影響下にある渋いボーカルを披露し、牧歌的な世界観を押し広げていく。

 

野原や牧草地のような情景を思わせる伸びやかな音楽で始まり、「Have Heaven」では、まるで小川の縁に堰き止めている小舟に乗り、実際に櫂を漕ぎながら、歌をうたうかのように雰囲気だ。ローファイなサウンド処理、マイクでドラムの近い音域を拾う指向性など、VUのような音楽作りを元に、どことなくシネマティックで幻想的なフォーク・ミュージックが構築される。音楽そのものが実際的な情景を呼び起こすのが素晴らしい点で、聞き手は映画「草原の実験」のように自由に発想をめぐらすことが出来る。バンドとしての音の運びもお見事としかいいようがなく、ロマンティックな感覚を滑らかなフォークミュージックによって表現している。ここでは、そよ風に揺られて、歌をつむぐような独特なサウンドスケープを呼び起こすことがある。そして印象的なフレーズ「私の中には天国がある」という、啓示的な歌詞を幻想的に歌う。 


 

「Have Heaven」

 

 

アルバムは一連なりの川の流れのように繋がっている。「Jellyfish」について、スプラグは次のように語る。


「Jellyfishはアルバムのタイトル曲であり、また、世界観を押し広げるための役割を担っている」


「この曲は、私たちの世界の神秘に驚嘆すると同時に、人間の手によってその多くが破壊されたことを嘆いている。 私たちの心と自然界との間に一本の線を引き、この曲とレコードの重要なテーマを確立している」


「この曲は、リスナーに対して、私たちは幸せと愛に値するというパワーセンターを思い出させることで終わっている。これは、以前の歌詞を反映している。"地球のすべてを破壊する "という歌詞は、物事がどのように見えるかについての考察である」 


制作者の言葉の通り、タイトル曲は人生の嘆きのなかで本質的な概念とはなんなのかを思い出させる。暗さと明るさの感情の合間を行き来するフォークミュージックをベースにし、少し遊び心のある水の音のサンプリングなどを介して、魅惑的な音楽が繰り広げられる。

 

 

「Started To Glow」は、具体的な曲名が思い浮かばないが、ビートルズの初期の楽曲を彷彿とさせる。柔らかいアコースティックギターのストロークが音楽的な開放感をもたらし、そしてソフトな感じのボーカルが乗せられる。 曲はどこまでも爽やかで、ピアノのユニゾンのフレーズを相まってどこまでも精妙かつ静謐である。ギターの開放弦を強調したコードの演奏は滑らかであるが、ボーカルも他のアンサンブルとの息の取り方をよく配慮していて、ボーカルとギターそれぞれが主役として入れ替わる。これが音楽の休符の重要性を示唆するにとどまらず、癒やしの瞬間をもたらす。時々、これらのフレーズの合間に入るアンビエント風のシンセも幻想的な雰囲気を与えている。録音全体にもさりげない工夫が凝らされ、テープディレイの処理が入ることも。これらは実験的な要素もあるが、全体的な音楽の聴きやすさが維持されている。

 

制作者のコメントでは「タイトル曲が暗め」ということであるが、「This Was A Gift」は、より物憂げなトーンに縁取られている。しかし、曲自体は内省的な雰囲気があるとしても、ドラムがそのメロディーをリズム的な側面から支えることで、曲全体の印象をダイナミックにしている。


「This Was A Gift」はドラムが傑出している。他の曲では、ジャズで使われるブラシの音色が登場することもあるが、この曲ではスティックでゆったりとしたリズムを作り出している。スネアにリバーブ/ディレイを施し、程よい広さの音像を作り上げ、空間的なアンビエンスを維持している。大切なのは、ドラムのフィルが曲の憂鬱なイメージをドラマティックにしていることだろう。つまり、パーカッションがボーカルの旋律の情感を上手く引き出そうと手助けしている。


ドラムがボーカルのフレーズとユニゾンを描き、三連符のように省略されて演奏されたりもする。バンドの演奏の連携がうまく取れていて、音楽自体が高い水準に達しているが、それを感じさせず、気楽に演奏しているのがクール。さらに、ローズピアノも登場し、アクセントをつけるため、きらめきのあるフレーズが導入される。どの楽器も乱雑に演奏されるのではなく、各々の楽器が器楽的に重要な役割を担い、しかもタイトにまとめ上げられているのが素晴らしい。

 

 

アルバムの前半ではモダンなフォークバンドとしての姿を見出だせる。一方で、中盤の収録曲において、Floristは古典的なコンテンポラリーフォークにも取り組んでいる。


「All The Same Light」ではボブ・ディラン風のフォークソングとして楽しめる。ただやはり、男性的な音楽であったフォーク音楽は時代が変わり、レッテルや性別を超えた中性的な音楽に代わりつつあるのを実感せざるをえない。これらは完全に女性のものになったとは言えないけれど、少なくとも、従来のカントリー/ブルーグラスのヒロイックな男性シンガーという枠組みだけではこの音楽を語りつくせないものがある。


フォーク音楽は、古くは男性的なロマンやアウトサイダーの心情を反映してきたが、類型的な表現から個人的な表現へと少しずつ変化してきている。そして、それらは西部劇的な英雄というイメージのあったフォーク歌手の従来の固定概念から脱却し、一般的な音楽へと変化しつつあるのかもしれない。これらはアメリカのフォークミュージックの源泉を再訪する意味がもとめられる。


「Sparkle Song」も同じタイプの曲として楽しめるはず。おそらくフローリストはアルバムの制作するときに、スムーズな流れを断ち切らないように、前の曲の雰囲気を重視した上で、その雰囲気を壊さないように曲を慎重に収録している。それは実際的に、アルバムの楽しむ際に、聴きやすさをもたらすにとどまらず、何度もリピートしたいという欲求すら生じさせるのである。

 

 

一作品として語る上で、アルバムの真の醍醐味や凄さは、終盤のいくつかの収録曲に見出せる。フローリストが掲げる全体的なモチーフやテーマも、聴きすすめていくうち、なんとなく直感的に掴めてくるようになるはず。例えば、絵画や文学も同様であるが、はじめは手探りで不思議な世界を垣間見ていくと、なんとなく全体像が掴めてくるという感じ。そして、このアルバムは、音楽の持つ世界にじっくりと浸らせてくれる懐深さがあるということも重要だろうか。


それがなんに依るものかは明言出来ないが、少なくとも、アルバムをハンドクラフトのように制作する根気強さ、音楽に対する普遍的な信頼感、さらには前述したようなニューヨークに綿々と受け継がれる文化的な感覚が、こういった奥深いフォークミュージックの世界を形作ったのかもしれない。曲単体では即効性がないように思えるかもしれないが、必ずしもそうではないことが分かる。フローリストの曲はフルレングスとして聴くと、その真価が掴めるようになる。いうなればフローリストの音楽は聴けば聴くほど、深〜い味わいが滲み出てくるのである。

 

「Moon, Sea , Devil」、「Our Hearts In A Room」はフローリストの代表曲となる可能性があるだけではなく、2020年代のインディーフォークミュージックの名曲であるため、この音楽のファンは出来るだけ聞き逃さないようにしていただきたい。


「Moon, Sea , Devil」は同地のビック・シーフとも共鳴するような音楽であるが、フローリストの曲はよりオープンで、オーガニックな雰囲気に満ちている。そして、フローリストの音楽は、このアルバム全体を通して泣かせる要素を出来るかぎり避けているが、パーソナルでセンチメンタルな心情をバンド全体で共有したとき、心を揺さぶられるような崇高な感覚が現れる。


そしてそれは、ソングライターの個人的な考えが、バンドメンバーと共有された素晴らしい瞬間であり、抽象的な概念が音楽という目に映らないかたちを通じて、しっかりと具象化された''奇跡の瞬間''なのである。

 

音楽の核心のようなコアが最後に出現する。そして、その音楽が持つコアに触れたとき、アルバムやバンドのイメージが変化する。『Jellywish』の最も感動的な瞬間ーーそれはギミック的なものとは対極にあるささやかな喜びと驚きと共に到来する。彼らが伝えたいこと……、たぶんそれは、なにかを心から純粋に愛することの尊さである。


「Our Hearts In A Room」は雄大な感じがし、フォークソングとして普遍的な光輝を放ってやまない。メインボーカルとコーラスが合わさる時、フローリストのフォークバンドとしての圧倒的な偉大さが明らかになる。そしてそういう感覚を普段は控えめにしているのがこのバンドの魅力。『Jellywish』は清涼感を持って終わる。音楽そのものがさっぱりしていて後味を残すことがない。

 

 

 

95/100

 

 

 

 Best Track- 「Our Hearts In A Room」

 


フォークポップシンガー、リーヴァイ・ロビン(Levi Robin)が新曲「Healing Is Coming」をリリースした。哀愁を感じさせるフォークポップ。リリックビデオも下記よりチェックしてみよう。


この曲は、降伏と勇気の歌であり、あらゆる障害に立ち向かい、人生の計り知れない真実に立ち向かい、暗闇に立ち向かい、私たちのユニークな魂の光をもたらし、蛇の目を見据えるための歌です」とリーバイは語っている。 

 

「Healing Is Coming」では、ぶつかり合うギターに乗せて、リーヴァイの紛れもないヴォーカルがフィーチャーされている。 魂を揺さぶる繊細なハーモニーが曲に華を添え、美しさとほろ苦さが同居するフォーク・ポップ・トラックを作り上げている。 


リーヴァイは100万回以上のストリーミングを記録し、世界中にファンを獲得している。 また、マティスヤフの前座を務めたこともある。 


リーバイ・ロビンの探求と好奇心の旅は、彼を様々な道へと導いてきた。 魂を剥き出しにしたフォーク・アーティストの独特な音楽スタイルは、深く個人的で変容的な歌詞と感情を揺さぶるヴォーカルを組み合わせ、意味とつながりに満ちたサウンドを生み出している。


カリフォルニア州オレンジ郡で育ったリーヴァイは、10代の頃、彼や多くの人が "ベルトコンベアー式の学校システム "と表現するものに深い不満を抱くようになった。 背中のシャツとギターしかなかった彼は、別の道、つまり音楽の道に踏み出した。 

 

家出から東洋のスピリチュアリティとの出会い、サイケデリアから自分自身の古代ユダヤ教的ルーツの発掘まで、ソングライティングはユニークに統合する不変のものだった」とリーヴァイは打ち明ける。 

 

 ソングライティングは、彼の心の奥底にある感情をメロディと詩へと変換するパワフルな方法となった。 バッハ、ストラヴィンスキー、ミンガス、ヘンドリックス、ディラン、ベック、ガイ、ディアンジェロ、レディオヘッドなど、多彩なアーティストからインスピレーションを得て、リーバイ・ロビンは独自のマインドフルでジャンルを超えた音楽作品を生み出している。

 

 

「Healing Is Coming」



このアーティストが最初に注目を集めたのは2014年、セルフタイトルのデビューEPのリリースと、それに続くマティスヤフとのツアーだった。 以来、シングルやアルバムを次々と発表し、100万回以上のストリーミングを記録、世界中にファンを獲得した。

 

2023年、LeviはあるコンサートでプロデューサーのYoel Kreisler、通称'FRAYMES'と出会い、セレンディピティな瞬間を経験した。 すぐにクリエイティブなつながりと友情が生まれ、ふたりはスタジオに入った。 私たちは音楽と影響を交換し始め、この新しい音楽をレコーディングするための新しい方法を構想し始めた。 この新しいコラボレーションの結果であり、最初の試みがシングル "Whole As A Broken Heart "である。 


彼の新しいシングル "Healing Is Coming "は、「あらゆる障害に立ち向かい、人生の計り知れない真実に立ち向かい、暗闇に立ち向かい、私たちのユニークな魂の光をもたらし、蛇の目を見据える、降伏と勇気の歌です」とリーヴァイは語っている。 

 

「Healing Is Coming "では、ぶつかり合うギターに乗せて、リーヴァイの紛れもないヴォーカルがフィーチャーされている。 魂を揺さぶる繊細なハーモニーが曲に華を添え、美しさとほろ苦さが同居するフォーク・ポップに仕上がっている。 




Levi Robin's journey of exploration and curiosity has taken him down many roads. The soul-baring folk artist’s distinctive musical style combines deeply personal and transformative lyrics with emotive stirring vocals, creating a sound that is filled with meaning and connection.


Growing up in Orange County, California, as a teenager Levi became deeply dissatisfied with what he and many describe as “the conveyor belt trajectory of the school system.” With nothing but a shirt on his back and guitar in hand, he took a chance on a different path - a musical one. Levi confides, “From being a runaway to encountering eastern spirituality, from psychedelia to unearthing my own ancient Judaic roots, songwriting has been a uniquely integrating constant.”  Songwriting became a powerful way to translate his deepest feelings into melody and verse. Taking inspiration from an eclectic array of artists including Bach, Stravinski, Mingus, Hendrix, Dylan, Beck, Gaye, D'Angelo and Radiohead, and more, Levi Robin creates his own mindful and genre-defying musical releases. 


The artist first attracted attention in 2014, with the release of his debut self-titled EP as well as his subsequent tour with Matisyahu. Since then, he has shared a series of singles and albums, racking up over a million streams, garnering him a fanbase worldwide. In 2023, Levi experienced a serendipitous moment when he met producer Yoel Kreisler, aka 'FRAYMES', at one of his concerts. Sparking up an instant and immediate creative connection and friendship, the duo entered the studio. He shares, “We started trading music and influences, and began conceptualizing new ways of approaching recording this new music.” The result and first taste of this new collaboration is the single “Whole As A Broken Heart”. 


His new single "Healing Is Coming", "is a song of surrender and courage, to face all obstacles, to face the ineffable truth of life, to face the darkness, to bring forth the light of our unique souls and look the serpent in the eyes," shares Levi. "Healing Is Coming" features Levi's unmistakable vocal hues over colliding guitars. Soul-baring delicate harmonies add to the song, creating a folk pop track that is equal parts beautiful and bittersweet. 

 

 

 


ジュリアン・ベイカー&TORRESは、4月18日にマタドール・レコードからリリースされるコラボ・アルバム『Send a Prayer My Way』の新たな一面を垣間見ることができるニューシングル「Dirt」をリリースした。(楽曲のストリーミングはこちらから)


 Julien Baker & TORRESは、『Send a Prayer My Way』からすでに3枚のシングルをリリースし、高評価を得ている。

 

「Sylvia」と「Tuesday」は、カントリーミュージックへの共通の愛を示すと同時に、このジャンルに対する2人の作曲スタイルと解釈を際立たせている。その前に、彼らは「ジミー・ファロン主演のザ・トゥナイト・ショー」で「Sugar in the Tank」を初披露した。今月初めには、ザ・デイリー・ショーへの出演とインタビューで「Bottom of a Bottle」をプレビューした。


先週、デュオはロンドンのラフ・トレード・イーストとセント・ジョンズ・チャーチでソールドアウトのインストア・ライヴを行った。


ベイカー&トレスは、4月23日のヴァージニア州リッチモンドを皮切りに、5月12日のネバダ州オマハまでのヘッドライン日程で、Send A Prayer My Way米国ツアーを開始する。さらに、すでに発表されているフェスティバルにも出演する。 


 Send A Prayer My Way』は、ベイカーとトレスが2016年に初めて一緒にライヴを行い、最後に片方のシンガーがもう片方に向かって "カントリー・アルバムを作るべきだね "と言って以来、制作が進められてきた。

 

これはカントリー・ミュージックの世界では伝説的な原点であり、余裕のあるエレガントな歌詞と苦悩を分かち合う勇気ですでに賞賛されている2人のアーティストのコラボレーションの始まりである。

 


「Dirt」

Nico Paulo  『Interval_o』EP
 

Label:  Foward Music Group

Release: 2025年3月21日

 

 

Review    

 

ニコ・パウロはポルトガル系カナダ人のミュージシャン、ビジュアル・アーティスト。パウロは芸術と音楽を追求するために2014年にカナダに移住し、当初はトロントに根を下ろし、この街の活気あるクリエイティブ・コミュニティに身を置いた。

 

2020年代初頭にはセント・ジョンズに移り住み、ニューファンドランドの名高い音楽シーンに欠かせない存在となった。この島を拠点に活動するパウロは、世界中のステージにおいて、うなり、うっとりし、はしゃぎ、踊る、魅惑的なライブ・パフォーマーとしての地位を確立した。

 

絶賛されたセルフ・タイトルのデビュー作(2023年4月)は、豊かで洗練されたポップ・アレンジの中で、人間関係の相互関連と時間の流れを探求し、メロディアスでオープンハートなソングライティングをリスナーに紹介した。最新のEP『Interval_o』(2025年3月)は、温かみのあるアンビエントとミニマルなサウンドスケープの中で、直感的なソングライティングで変容の時を謳歌し、そうなりつつある過程に存在の意義を見出す。上記2枚のアルバムのテクスチャーの複雑さは、友人でありコラボレーターでもあるジョシュア・ヴァン・タッセルの貢献によるものだ。


このEPは忙しい人のささやかな休息のためにぴったりのポピュラーソング集である。EPは記憶のムーブメントで占められている。ニコ・パウロ、そして彼女が率いるバンドからの招待状を受け取ったリスナーはどのような世界を見出すだろう。

 

本作は声楽の響きを追求した『Interval 1 : Invitation』で幕を開ける。2つのボーカルを組み合わせた声楽形式のアカペラで聞き手を安息の境地へといざなう。背景となるトラックには水の音のサウンドスケープが敷き詰められ、それがパウロのゆったりとした美しいボーカルと溶け合う。

 

「Interval 2: Grow Somthing」はアコースティックギターをベースとしたフォーク・ソングである。どことなく寓話的でお伽話のような音楽の世界が繰り広げられる。ミニマルで反復的なギターフレーズが続く中、パーカッションが入り、パウロのコーラスとメインボーカルが美しく融和している。南国のサーフミュージックのように開けた安らいだ感覚を味わうことが出来る。アウトロではパウロのボーカルがフィードバックしながら、夢心地のままとおざかっていく。

 

その後、シネマティックなサウンドに接近する。「Memory 3: In Company」は再びクワイアのコラージュサウンドに舞い戻る。一貫してミニマルな構成と美しいハーモニーを交えながら淡々とした曲が続く。 

 

しかし、その中には、アーティストがライブで培ってきたアートパフォーマー的なセンスとサーフミュージックのようなトロピカルな要素が溶け合い、陶酔的なアートポップが構築される。最もアップテンポなトラックが「Memory 4: Move Like A Flame」。ワールド・ミュージックの要素をベースに、ボサ・ノヴァ的なアコースティックギター、そしてリズムの中でシンプルなボーカルワーク、エレクトロニカ風のサウンド処理が心楽しげな雰囲気を醸し出している。

 

EPの音楽を聞き出すと、惜しいほどすぐに終わってしまう。それでも、情報過多な時代においてスペースや余白の多い音楽ほど美しいものは存在しない。クローズ「Movement 5:  Two Ends」はボサ・ノヴァやハワイアン音楽を基底にし、夕日を浜辺で見るような甘美さを表現する。ほんの瞬きのように儚く終わるEP。音楽そのもののセンスの良さ、そして歌の本当の美しさによって、ニコ・パウロはカナダの注目のフォークシンガーとして名乗りを挙げようとしている。


 


82/100

 



マリカ・ハックマンが、ローラ・マーリングをゲストに迎えた楽曲「Skin」の新バージョンをリリースした。


この特別バージョンは、ハックマンのデビューアルバム「We Slept At Last」から10周年を記念して制作された。


ハックマンは、アビイ・ロード・スタジオのザ・ゲートハウスと自身のスタジオの間でレコーディングを行い、この曲の新しい姿を自らプロデュースした。これは、アビー・ロードとピッチフォーク・ロンドンとの毎年恒例のコラボレーションの一環として実現した。


余裕のある広々としたレコーディングでは、マーリングのヴォーカルが曲に深みと音色を加え、最小限の楽器編成が心を揺さぶるような親密な効果を与えている。ビジュアライザーは以下より。



 


 コロラドを拠点に活動するシンガーソングライター、Sarah Banker(サラ・バンカー)がシングル「FRIENDS」をリリースした。インディーフォークとヨットロックを結びつけ、自己受容を表現している。ミュージックビデオが公開されていますので、お茶のお供に下記よりこの映像をご覧ください。


 「FRIENDS」でサラは、生涯を共にする人を見つけるという親近感のわく物語を、楽しく、軽快で、時代を超えた歌に仕上げている。 この曲は、コミュニケーションの重要性や試行錯誤についても触れている。 繊細でありながら力強い歌声で、サラは正直でありのままの弱さを表現している。 プロダクションは親しみやすく控えめで、歌詞と彼女のソウルフルな表現が主役となる。


 この曲は、彼女がリリースを予定しているEP『Into the Heart』からの最新曲である。 プロデューサー/ミュージシャンのジェフ・フランカ(Thievery Corporation)と彼女の新曲のためにチームを組んだ。 彼女はTedXのスピーカーとして成功を収め、その魅惑的なサウンドとソングライティングで、分かち合うべき愛というユニークな贈り物を解き放つ鍵として、自己を慈しみ、受け入れるという感動的なメッセージを紡ぎ出した。 

 

 「FRIENDS」

  



Colorado-based singer/songwriter Sarah Bunker has released her single "FRIENDS". It expresses self-acceptance by combining indie folk and yacht rock. The music video has been released and can be viewed below.


 With the single "FRIENDS," Sarah creates a fun, flirty, and timeless song about the relatable narrative of finding someone to spend a lifetime with. The song also touches on the importance of communication and trial and error. With her delicate yet powerful voice, Sarah conjures an honest, unfiltered sense of vulnerability that resonates throughout. The production is intimate and understated, allowing the lyrics and her soulful delivery to take center stage.


 The song is the latest off of her upcoming EP Into the Heart, a collection of authentic and transformative songs centered around resilience. The artist teamed up with producer/musician Jeff Franca (Thievery Corporation) for her new music. She has found success as a speaker on TedX where she weaved her captivating sound and songwriting with her inspirational message of self-compassion and acceptance as the key to unlocking our unique gifts of love to share. 

 

 

 サラ・バンカーはコロラドの山奥を拠点に活動するハートフルなシンガー・ソングライター。 幼少期に演劇作品に出演した経験からインスピレーションを得たサラは、文化人類学の学位取得後、ギターを学び、ソングライティングを通して自分の本当の声を見つけた。 

 

 ギターを始めてわずか3ヶ月で、初めてのギター・パフォーマンスを経験した。 すぐに夢中になった彼女は、18ヵ月後、持ち物のほとんどを売り払い、バックパックとギターだけを持って旅に出た。 探検と好奇心の旅は、ハワイのジャングルから太平洋岸北西部の森、ユタ州南部の砂漠、コロラド州の山頂へと彼女を連れて行った。


 今度のEP『Into the Heart』は、レジリエンス(回復力)を中心とした、本物で変容的な曲のコレクションである。 生き生きとした4曲入りのフォーク・ポップEPは、コロラド州インディアンピークス荒野の標高9,000フィート(約3,000メートル)にあるジェフ・フランカ(Thievery Corporation)のスタジオでレコーディングされ、プロデュースされた。 その結果、感動的で、音に遊び心があり、有機的な音楽の旅が生まれた。


 シングル「FRIENDS」でサラは、生涯を共に過ごす相手を見つけるという親近感のわく物語を、楽しく、軽快で、時代を超えた歌に仕上げた。 この曲は、コミュニケーションの重要性や試行錯誤についても触れている。 繊細でありながら力強い歌声で、サラは正直でありのままの弱さを表現している。 プロダクションは親しみやすく控えめで、歌詞と彼女のソウルフルな表現が主役となる。


 サラ・バンカーの能力は、シンプルでありながら表現力豊かな歌詞で複雑な感情をとらえることで、彼女の音楽全体に一貫した強みを生み出している。 彼女の曲は普遍的でありながら、深く個人的なものであるように感じられ、リスナーを内省させ、癒し、これから起こることを受け入れるように誘う。


 最終的に彼女の音楽的な意図は、音を通して光と愛の源となることだ。 彼女はまた、自分の音楽が、他の人たちが自分自身のベスト・バージョンになるよう鼓舞することを願っている。 ーーあなたは自分の人生を切り開くために必要なものをすべて自分の中に持っているのですーー

 




Sarah Banker is a heartfelt singer/songwriter based in the mountains of Colorado. Drawing inspiration from her childhood experiences performing in theatrical productions, Sarah found her true voice through songwriting after learning guitar, following her degree in Cultural Anthropology. 

 

 After only three months of playing, she had her first guitar performance. Instantly hooked, 18 months later, she sold most of her belongings and set out on the road with just a backpack and her guitar. Her journey of exploration and curiosity has taken her from the jungles of Hawaii to the forests of the Pacific Northwest, down to the deserts of southern Utah, and up to the peaks of Colorado—each place influencing her musical releases and touching others along the way.


 Her upcoming EP, Into the Heart, is a collection of authentic and transformative songs centered around resilience. The vibrant four-song folk-pop EP was recorded and produced by Jeff Franca (Thievery Corporation) in his studio, at 9,000' feet elevation in the Indian Peaks Wilderness in Colorado. The result is a musical journey that is touching, sonically playful, and organic.


 With the single “FRIENDS,” Sarah creates a fun, flirty, and timeless song about the relatable narrative of finding someone to spend a lifetime with. The song also touches on the importance of communication and trial and error. With her delicate yet powerful voice, Sarah conjures an honest, unfiltered sense of vulnerability that resonates throughout. The production is intimate and understated, allowing the lyrics and her soulful delivery to take center stage.


 Sarah Banker's ability to capture the complexity of emotions in simple yet expressive lyrics is a consistent strength across her music. Her songs feel both universal and deeply personal, inviting listeners to reflect, heal, and embrace what’s to come.


 Ultimately, her musical intention is to be a source of light and love through sound. She also hopes her music inspires others to be the best version of themselves, sharing, "You are the ONE, the one who has the potential to make the changes that lead to a fulfilling life experience. You have everything you need within you to take charge of your life."

 




ボストンのフォークシンガー、Sam Robbins(サム・ロビンス)が心に染みる名曲「Piles Of Sand」をリリースした。エルトン・ジョンやジャクソン・ブラウンを彷彿とさせる繊細なフォークバラードとなっている。

 

"Piles of Sand "と題されたこの曲は、内省的できらびやか。アルバムのオープニング・トラックである 「Piles of Sand」のサウンドは、一人の男とギターのシンプルなサウンドを中心に構成されており、アルバムの幕開けにふさわしい完璧なサウンドである。

 

ジェームス・テイラーのライヴ・アルバム『One Man Band』にインスパイアされたこの曲は、曲全体を通してまばらなピアノの瞬間だけが盛り込まれ、ロビンスの見事なギターワークとフレッシュで明瞭なソングライティング・ヴォイスを披露するアルバムの舞台となっている。

 

この曲は、近日発売予定のアルバム『So Much I Still Don't See』のセカンドシングル。「過去4年間のツアー、年間45,000マイルのドライブ、ニューハンプシャー出身の20代の私とは異なる背景や考え方を持つ多くの人々との出会いを主題にしている」とアーティストは宣言している。

 

 

 「Piles Of Sand」

 

 

 


Boston folk singer Sam Robbins has released the haunting classic “Piles Of Sand”. The delicate folk ballad is reminiscent of Elton John and Jackson Browne. 

Called "Piles of Sand", the song is sparkling and introspective, written in a moment of reflection. As the opening track to the album, the sounds of “Piles of Sand” are built around the stark simplicity of a man and his guitar, the perfect sound to kick off the album. Inspired by the James Taylor live album One Man Band, only sparse piano moments are included throughout the song, setting the stage for an album that showcases Robbins’ stunning guitar work and fresh, clear songwriting voice.

The song is the second single off of the album So Much I Still Don’t See which "is based around my touring over the past four years – driving 45,000 miles per year, meeting so many people from so many different backgrounds and perspectives than me, a guy in his 20’s from New Hampshire," proclaims the artist. 


 

▪Sam Robbins 『So Much I Still Don't See』


サム・ロビンスのサード・アルバム『So Much I Still Don't See』は、シンガー・ソングライターとしての20代、年間45,000マイルに及ぶツアーとトルバドールとしてのキャリアの始まりという形成期の旅の証である。そして何よりも、ハードな旅と大冒険を通して集めた実体験の集大成を意味する。

 

リスナーにとって、これらの大冒険は、ソロのアコースティック・ギターとヴォーカルを中心に、生演奏と同じようにトラックされたサウンドを惜しみなく使用した、ソフトで内省的なサウンドスケープを通して聴くことができる。

 

マサチューセッツ州スプリングフィールドの古い教会でレコーディングされた『So Much I Still Don't See』のサウンドの中心は、旅をして自分よりはるかに大きな世界を経験することで得られる謙虚さである。アップライトベース、キーボード、オルガン、エレキギターのタッチで歌われるストーリーテリングだが、アルバムの核となるのはひとりの男、それから、数年前にナッシュビルに引っ越して1週間後に新調したばかりの使い古されたマーティン・ギターだ。



『So Much I Still Don't See』のサウンドは、ジェイムス・テイラー、ジム・クローチェ、ハリー・チャピンといったシンガーソングライターのレコーディングにインスパイアされている。ニューハンプシャーで育ったロビンズは、週末になると父親と白い山へハイキングに出かけ、古いトラックには70年代のシンガーソングライターのCDボックスセットが積まれていた。この音楽はロビンズの魂に染み込み、その結果、ロビンズの音楽家としての才能が開花したのである。

 

2018年にNBCの『The Voice』に短期間出演した後、ロビンスは2019年にバークリー音楽大学を卒業し、すぐにナッシュビルに拠点を移した。ミュージック・シティでの波乱万丈の5年間を経て、2024年初めにボストン地域に戻った後に制作された最初のレコーディングが『So Much I Still Don't See』である。週に5日、カントリーソングの共作に挑戦した後、ロビンズはツアーに活路を見出し、今では全米のリスニング・ルームやフェスティバルで年間200回以上の公演を行った。



このツアーとソングライティングの著しい成長により、ロビンスはいくつかの賞を受賞し、フェスティバルに出演するようになり、2021年にはカーヴィル・フォーク・フェスティバルのニュー・フォーク・コンテストの優勝者となり、2022年にはファルコン・リッジ・フォーク・フェスティバルの 「Most Wanted to Return」アーティストに選ばれた。その後2023年と2024年には各フェスティバルのソロ・メインステージに出演した。

 

その後、サム・ロビンズは精力的にライブツアーを行った。ミシガン州のウィートランド・フェスティバル、フォックス・バレー・フォーク・ミュージック・アンド・ストーリーテリング・フェスティバルなど、全米のフェスティバルにツアーを広げ、「同世代で最も有望な新人ソングライターのひとり」(マイク・デイヴィス、Fateau Magazine誌{イギリス})の称号を得た。 


2023年初頭、ロビンスはマルクス・アウレリウスの『瞑想録』を贈られた。ストイシズムの概念を中心としたこの書籍からのアイデアは、『So Much I Still Don't See』の楽曲に浸透している。アルバムの多くは、この1年間の旅を通してこの本を読んで発見した、ストイックな哲学によって見出された内なる平和を反映している。

 

『So Much I Still Don't See』の曲作りにもうひとつ影響を与えたのは、ロビンズが音楽療法リトリートというグループで活動していることだ。この団体は、ソングライターと退役軍人のペアを組み、彼らがあまり耳慣れない感動的なストーリーを歌にする手助けをする。この人生を変え、人生を肯定する体験は、ロビンス自身の作曲と音楽に、さらに深い感情と深い物語を引き出し、幸運にも一緒に仕事をすることになった退役軍人の開かれた心と物語に触発された。



アルバムからの最初のシングル 「What a Little Love Can Do」は、あるショッキングな瞬間を捉えた曲だ。ナッシュビルで起きた銃乱射事件のニュースを聞いた後、ロビンズは一人ギターを抱えて座り、ギターを無心にかき鳴らした。ニューイングランドの故郷から遠く離れた赤い州の中心部に住んでいたロビンスは、その日の出来事によって、今まで見たこともないような亀裂がくっきりと浮かび上がった。その瞬間に現れた歌詞が、この曲の最初のヴィネットである。

 

 

 「What a Little Love Can Do」

 

 

 

「It's gonna be a long road when we look at where we started, one nation broken hearted, always running from ourselves

 

(長い道のりになりそうだ......われわれがどこから出発したかを考えるとき、ひとつの国は傷つき、いつも自分自身から逃げていた)

 

 

その歌詞から導かれたのは、フロー状態にある作曲プロセスだった。ロビンズがツアーで全米を旅し、2年間で10万マイルを超える距離を走り、何百ものショーをこなし、まったく異なる背景を持つ何千人もの人々と出会ったことから築かれた学びとつながりの物語.......。バーミンガムからデトロイト、ニューオリンズからロサンゼルス、ボストンからデンバーまで、この曲は知らず知らずのうち、これらの冒険から学んだ教訓の集大成として書かれた。互いに物理的に一緒にいるとき、話したり笑ったり、本当にお互いを見ることができるときに見出されるつながりの深さが、『What a Little Love Can Do』の核心であり、アルバム全体の主題でもある。



『So Much I Still Don't See』からのセカンド・シングルでオープニングトラックである、きらびやかで内省的な「Piles of Sand」は、このアルバムのために書かれた最初の曲だ。この曲はナッシュビルで書かれ、アルバムの多くと同様、シンプルで観察的なところから書かれている。ナッシュビルの川沿いの小道を歩いていて、刑務所の有刺鉄線のすぐ横で、向かいの高層マンションのために砂利がぶちまけられるのを見たり感じたりしたのは、とても感動的な瞬間だった。

 

さらに彼はすこし歩き、通りの向こうに高くそびえ立つ巨大な砂利の山を見た後、最初のコーラスの歌詞がすぐに書き留められて、そして今の曲になった。 「山だと思ったけど、高くそびえ立つ単なる砂の山だった。このセリフとリズムが、この曲の残りの部分の土台となったんだ」



 

   

 

Sam Robbins’ third album, So Much I Still Don’t See is a testament to a singer songwriter’s journey through his 20’s, through his formative years of 45,000 miles per year touring and the beginning of a troubadour’s career. Most of all, it is the culmination of firsthand experiences gathered through hard travel and big adventures.

For the listener, these big adventures are heard through a soft, introspective soundscape, with sounds built sparingly around solo acoustic guitar and vocals, tracked live, just as they are performed live. Recorded in an old church in Springfield, MA, the sounds of So Much I Still Don’t See center around the humility that comes with traveling and experiencing a world much larger than yourself – looking inward and reveling in the quiet of the inner mind while facing an expansive landscape of life on the road. The storytelling in the songs is draped with touches of upright bass, keyboards, organ, and electric guitar, but the core of the album is one man and his worn out Martin guitar, bought new just a few years ago a week after moving to Nashville.

The sonic landscape of So Much I Still Don’t See was largely inspired by the recordings of James Taylor, Jim Croce, Harry Chapin and singer songwriters of the like. Growing up in New Hampshire, Robbins would frequently drive up to the white mountains for weekend hiking trips with his father, accompanied in the old truck by a 70’s singer songwriter CD box set. This music seeped into Robbins’ soul, and coupled with experiencing the mountain landscape of his childhood, this “old soul singer songwriter” was shaped by these recordings and the direct, soft and exacting songwriting voices that they exemplified. The storytelling in So Much I Still Don’t See is built through small moments.

After a brief stint on NBC’s The Voice in 2018, Robbins graduated from Berklee College of Music in 2019 and quickly made his move down to Nashville. After a tumultuous five years in Music City, So Much I Still Don’t See is the first recording made after moving back to the Boston area in early 2024. After trying his hand at co-writing country songs five days a week, Robbins found his way to a home on the road, now performing over 200 shows per year in listening rooms and festivals across the country.

This touring and subsequent songwriting growth has led to several awards and festival performances, making Robbins a 2021 Kerrville Folk Festival New Folk contest winner, a 2022 Falcon Ridge Folk Festival “Most Wanted to Return” artist, and later a solo mainstage performer at each festival in 2023 and 2024. Robbins has expanded his touring to festivals nationwide, including the Wheatland Festival in Michigan, the Fox Valley Folk Music and Storytelling Festival, and has earned a title as “One of the most promising new songwriters of his generation” — Mike Davies, Fateau Magazine, UK

In early 2023, Robbins was gifted Marcus Aurelius’s “Meditations”, a collection of the Roman Emperor’s diaries in the early 100’s AD. The ideas from this book, centered around the concepts of stoicism, seeped into the songs of So Much I Still Don’t See. Much of the album reflects on the inner peace found through stoic philosophy that was discovered in reading this book throughout the past year on the road.

Another influence on the songwriting of So Much I Still Don’t See is Robbins’ work with the group Music Therapy Retreats. This is the first recording made after starting his work with the organization, which pairs songwriters with veterans to help write their often unheard and inspiring stories into songs. This life changing and life-affirming experience has drawn out deeper emotions and deeper stories in Robbins’ own writing and music, inspired by the open hearts and stories of the veterans he is lucky to work with.

The first single off the album, “What a Little Love Can Do” is a song that captured a moment. Sitting in Nashville after hearing the news of a shooting in the city, Robbins sat alone with his guitar and strummed. Living in the heart of a red state, far away from his New England home, the events of the day made the cracks appear clearer than he’d ever seen them. The first lyrics that appeared in that moment are the first lyrics in the song – “It’s gonna be a long road when we look at where we started, one nation broken hearted, always running from ourselves”. The heaviness of the news of the day, and the news of every day since, has not subsided since this song was written in 2023.

What led from that lyric was a flow-state writing process. A story of the learning and connections built from Robbins’ travels across the US on tour, driving over 100,000 miles in two years, playing hundreds of shows and meeting thousands of people from very different backgrounds. From Birmingham to Detroit, New Orleans to Los Angeles, Boston to Denver, this song was unknowingly written as the culmination of the lessons learned from these adventures. The depth of connection found when we are physically with one another, when we can talk and laugh and truly see each other, is at the heart of “What a Little Love Can Do”, and the album as a whole.

The second single and opening track from So Much I Still Don’t See, the sparkling and introspective “Piles of Sand”, was the first song written for the album. The song was written in Nashville and is, like much of the album, written from a place of simplicity and observation. He shares, "Walking down a riverside path in Nashville, next to the barbed wire of a prison, watching and feeling gravel being blasted for a high flying condo building across the street was a very inspiring moment. After walking further and seeing a huge pile of gravel soaring high across the street, the first chorus lyric was immediately written down as it appears in the song now: “I thought it was a mountain but it was just a pile of sand towering so high, a nine to five creation”. This line and rhythm was springboard for the rest of the song, steeped in Stoicism, written that afternoon."

As the opening track to the album, the sounds of “Piles of Sand” are built around the stark simplicity of a man and his guitar, the perfect sound to kick off the album. Inspired by the James Taylor live album One Man Band, only sparse piano moments are included throughout the song, setting the stage for an album that showcases Robbins’ stunning guitar work and fresh, clear songwriting voice.

 


受賞歴のあるシンガー・ソングライターであり、社会正義の戦士でもあるCrys Matthews(クライス・マシューズ)がニューアルバム『Reclamation』を1月下旬にリリースした。改めて下記よりこのアルバムをチェックしてもらいたい。

 

バンジョーを演奏に用いた古典的なゴスペル、カントリー/フォーク・ミュージックを融合した先行シングル「Walking Up The Dead」のミュージックビデオ、及びアルバムの試聴は下記より。

 

「このアルバムは、サウンド的にもイデオロギー的にも、アーティストとして、そして人間としての私を最大限に表現している」と彼女は語る。

 

伝道師の子供であり、黒人女性であり、ブッチ・レズビアンであり、「伝統的な」カントリーやアメリカーナ・ミュージックと並行して社会正義の音楽を歌う誇り高き南部人であるクライズ・マシューズは、カントリーやアメリカーナ・ミュージックにおいて黒人アーティストが否定されてきたスペースを取り戻すだけでなく、信仰のコミュニティにおいてLGBTQが否定されてきたスペースを取り戻すだけでなく、女性が自らの身体に対する自律性を否定されてきたスペースを取り戻すだけでなく、自分を育ててくれた南部を取り戻す。

 

ビルボードやNPRのアン・パワーズは彼女を「新進フォーク・ミュージック・スター」と絶賛。クライス・マシューズは、フォーク・アライアンスのソング・オブ・ザ・イヤーも受賞している。

 

 

「Walking Up The Dead」

 

 

Award-winning singer, songwriter, and social justice warrior Crys Matthews will release new album, Reclamation.

The music video for the preceding single “Walking Up The Dead,” which combines classic gospel and country/folk music with the banjo in the performance, and a sample of the album are available.

 "This album is both sonically and ideologically the fullest representation of who I am as an artist and as a human," she says. A preacher's kid, a Black woman, a Butch lesbian, and a proud Southerner who sings social justice music right alongside 'traditional' Country and Americana music, Matthews is reclaiming not just of the space Black artists have been denied in Country and Americana music, not just of the space LGBTQ people have been denied in communities of faith, not just of the autonomy women have been denied over their own bodies, she is reclaiming the South that raised her.

Crys has received acclaim from the likes of Billboard and NPR whose Ann Powers called her "a rising folk music star". Crys Matthews has also received the award for Folk Alliance's Song of the Year.




ナッシュビル在住のクライス・マシューズは、新世代の社会正義ミュージック・メーカーで最も輝かしいスターの一人である。受賞歴のある多作な作詞家・作曲家であるマシューズは、カントリー、アメリカーナ、フォーク、ブルース、ブルーグラスを融合させ、伝統的なメロディーを誠実なオリジナル歌詞で彩った大胆で複雑なパフォーマンスを披露する。彼女はこの時代のために作られたのだ。

マシューズについて、ASCAP副社長兼クリエイティブ・ディレクターのエリック・フィルブルックはこう語る。「社会的なメッセージを素直な感情で包み込み、温かいハートと力強い歌声でダイナミックに伝えることで、この困難な時代に最も必要な時に、彼女は私たちの気分を高めてくれる」。ブルーグラス・シチュエーション』のジャスティン・ヒルトナーは、彼女の贈り物は、「私たちが隔たりを埋めるとき、どんな美が生まれるかを思い出させてくれる 」と付け加えている。マシューズ自身の言葉を借りれば、彼女の使命は、「聴こえない人々の声を増幅し、見えないものに光を当て、希望と愛こそが公平と正義への真の道であることを揺るぎなく思い出させること 」だという。彼女の新しいアルバムは、その使命を体現したものであり、その証でもある。

2024年2月、マシューズがフォーク・アライアンス・インターナショナルのパネルに出席したとき、あるスコティッシュ・フォークのアーティストが、そのアーティストが言うところの「私の伝統からの音楽」を追求するレコード・レーベルはどのくらいあるのか、と質問するのを聞いた。「私はそのアイデアが気に入りました。自分たちの伝統とは何か、自分たちの民族とは誰か、自分たちの織物とは何か。

 

A troubadour of truth, Nashville resident Crys Matthews is among the brightest stars of the new generation of social justice music-makers. An award-winning, prolific lyricist and composer, Matthews blends Country, Americana, Folk, Blues, and Bluegrass into a bold, complex performance steeped in traditional melodies punctuated by honest, original lyrics. She is made for these times.

Of Matthews, ASCAP VP & Creative Director Eric Philbrook says, “By wrapping honest emotions around her socially conscious messages and dynamically delivering them with a warm heart and a strong voice, she lifts our spirits just when we need it most in these troubled times.” Justin Hiltner of Bluegrass Situation adds, her gift is a "reminder of what beauty can occur when we bridge those divides." In her own words, Matthews says her mission is: "to amplify the voices of the unheard, to shed light on the unseen, and to be a steadfast reminder that hope and love are the truest pathways to equity and justice." Her new album is an embodiment of and a testament to that mission.

When Matthews attended a panel at Folk Alliance International in February of 2024, she heard a Scottish Folk artist inquire as to how many record labels pursue what the artist referred to as "music from my tradition," four words that intrigued Matthews. "I loved the idea of that. It seems like the best way to talk about music: what is your tradition, who are your people, what is the fabric of you?"

A daughter of the South by way of Nashville now and North Carolina forever, and the self-proclaimed poster child of intersectionality, Matthews is boldly answering those questions on her new album aptly titled Reclamation.   

Recorded in Nashville, TN at Sound Emporium Studios, Reclamation was produced by Levi Lowry (co-writer of Zac Brown Band's hit song Colder Weather). The project features her partner on and off stage Heather Mae, her friends and fellow singer-songwriters Kyshona, Melody Walker, and Chris Housman, and some of the best musicians in Music City like Megan Coleman, Megan Elizabeth McCormick, Ellen Angelico, Ryan Madora, Jen Gunderman, and Michael Majett.

"This album is both sonically and ideologically the fullest representation of who I am as an artist and as a human," she says. A preacher's kid, a Black woman, a Butch lesbian, and a proud Southerner who sings social justice music right alongside 'traditional' Country and Americana music, Matthews is reclaiming not just of the space Black artists have been denied in Country and Americana music, not just of the space LGBTQ people have been denied in communities of faith, not just of the autonomy women have been denied over their own bodies, she is reclaiming the South that raised her.

 

 

 

 

©︎Ebru Yildi

Julian Baker & Torres(ジュリアン・ベイカー&トーレス)は、4月18日にマタドール・レコードからリリースされるコラボレーションアルバム『Send a Prayer My Way』の新たな一面を垣間見させるニューシングル「Tuesday」をリリースした。 


トレスがフロントシンガーを務めるこの曲は、ストリップバックなアメリカーナ・サウンドで、多くの人々が自分のアイデンティティを発見し、クィアとして成長する過程で経験する罪悪感、羞恥心、宗教的虐待を克服し、癒そうとすることをテーマにしている。 


 「Tuesday」は、この曲の主題の名前であり、TORRESの過去の恋人の名前である。 「もし過去に戻れるなら/私たちの物語を全部書き直したい」と彼女は歌う。 以下からチェックしてほしい。


ジュリアン・ベイカー&トレスは、『Send a Prayer My Way』からすでに2枚のシングルをリリースし、高い評価を得ている。 「Sylvia」は、カントリーミュージックに対する彼らの共通の愛を示すと同時に、このジャンルに対する彼ら独自のソングライティング・スタイルと解釈を強調している。 この曲はAAAラジオで最も追加された曲の第2位となり、現在チャート17位をキープしている。


LPを引っさげて、ベイカー&トレスは4月23日のリッチモンドを皮切りに、Send A Prayer My Way USツアーを開始する。 さらに、この春と夏には、すでに発表されている北米のフェスティバルにも出演する。『Send a Prayer My Way』は、マタドール・レコードから4月18日にリリースされる。


「Tuesday」

 

 

カルフォルニアの高名なシンガーソングライター、Levi Robin(リーバイ・ロビン)のシングル「Whole as a Broken Heart」をリリースした。リーヴァイはこれまで100万回以上のストリーミングを記録し、世界中にファンを獲得している。また、レゲエ歌手マティスヤフの前座を務めたこともある。

 

このシングルは、豊かで痛烈なハーモニーとゆったりとした楽器の調べに照らされた、心を揺さぶるような見事なヴォーカルが特徴で、カタルシスと説得力のある一曲となっている。

 

レヴィはコッツクとゾハールの精神的巨匠メナケム・メンデルの知恵にインスパイアされたという。そして、新曲は闇や傷つくということから前向きな意味を見出すというテーマが含まれている。

 

「『傷ついた心ほど完全なものはない』『大きな闇から生まれる光のようなものはない』」とレヴィは打ち明ける。

 

「私の人生において、苦いものや傷ついたものを引き受けることを自分に許し、謙虚な降伏のうちに心の壁を壊させるとき、苦いものが甘美なものに変わり、傷ついたものが肥沃な土壌に変わる。これは、ありのままのあなたで、傷ついた心を丸ごと持って来なさい、という招待状だと思ってください」



リーバイ・ロビンの探求と好奇心の旅は、彼を様々な道へと導いてきた。魂を剥き出しにしたフォーク・アーティストの独特な音楽スタイルは、深く個人的で変容的な歌詞と感情を揺さぶるヴォーカルを組み合わせ、意味とつながりに満ちたサウンドを生み出している。



カリフォルニア州オレンジ郡で育ったリーヴァイは、10代の頃、彼や多くの人が 「ベルトコンベアー式の学校システム」と表現する全般的な教育の構造に深い疑念を抱くようになった。背中のシャツとギターしかなかった彼は、別の道、つまり音楽の道に踏み出した。家出から東洋のスピリチュアリティとの出会い、サイケデリアから自分自身の古代ユダヤ教的ルーツの発掘まで、ソングライティングはユニークに統合する不変のものだった」とリーヴァイは打ち明ける。 

 

ソングライティングは、彼の心の奥底にある感情をメロディと詩へと変換するパワフルな方法となった。バッハ、ストラヴィンスキー、ミンガス、ヘンドリックス、ディラン、ベック、ガイ、ディアンジェロ、レディオヘッドなど、多彩なアーティストからインスピレーションを得て、リーバイ・ロビンは独自のマインドフルでジャンルを超越した音楽作品を生み出している。



このアーティストが最初に注目を集めたのは2014年、セルフタイトルのデビューEPのリリースと続くマティスヤフとのツアーだった。以来、シングルやアルバムを次々と発表し、100万回以上のストリーミングを記録、世界中にファンを獲得。2023年、リーヴァイはあるコンサートでプロデューサーのヨエル・クライスラー、通称「フレイムス」と出会い、セレンディピティな瞬間を経験した。その瞬間から、彼は瞬く間に、そして即座に、音楽への情熱と情熱に火がついた。

 



「Whole as a Broken Heart」

 

 

 
A
cclaimed California singer-songwriter Levi Robin has released his single “Whole as a Broken Heart”.

The single features hauntingly stunning vocals illuminated by rich, poignant harmonies and slow-burning instrumentation for a cathartic and compelling listen. Inspired by the wisdom of spiritual master Menachem Mendel of Kotzk and Zohar, Levi confides, “‘There's nothing so whole as a broken heart’ and ‘there is no light like that which comes from great darkness’. In my life, I've seen that when I allow myself to take on the bitter and broken, letting the walls of my heart break in humble surrender, then the bitter turns to sweet, and the brokenness turns into fertile soil, in which  ‘those who sow in tears will reap in joy’. Consider this an invitation, to come as you are, whole as a broken heart.”

Levi Robin's journey of exploration and curiosity has taken him down many roads. The soul-baring folk artist’s distinctive musical style combines deeply personal and transformative lyrics with emotive stirring vocals, creating a sound that is filled with meaning and connection.

Growing up in Orange County, California, as a teenager Levi became deeply dissatisfied with what he and many describe as “the conveyor belt trajectory of the school system.” With nothing but a shirt on his back and guitar in hand, he took a chance on a different path - a musical one. Levi confides, “From being a runaway to encountering eastern spirituality, from psychedelia to unearthing my own ancient Judaic roots, songwriting has been a uniquely integrating constant.”  Songwriting became a powerful way to translate his deepest feelings into melody and verse. Taking inspiration from an eclectic array of artists including Bach, Stravinski, Mingus, Hendrix, Dylan, Beck, Gaye, D'Angelo and Radiohead, and more, Levi Robin creates his own mindful and genre-defying musical releases.

The artist first attracted attention in 2014, with the release of his debut self-titled EP as well as his subsequent tour with Matisyahu. Since then, he has shared a series of singles and albums, racking up over a million streams, garnering him a fanbase worldwide. In 2023, Levi experienced a serendipitous moment when he met producer Yoel Kreisler, aka 'FRAYMES', at one of his concerts. Sparking up an instant and immediate creative connection and friendship, the duo entered the studio. He shares, “We started trading music and influences, and began conceptualizing new ways of approaching recording this new music.” The result and first taste of this new collaboration is the single “Whole As A Broken Heart”.

The new single “Whole As A Broken Heart” features hauntingly stunning vocals illuminated by rich, poignant harmonies and slow-burning instrumentation for a cathartic and compelling listen. Inspired by the wisdom of  spiritual master Menachem Mendel of Kotzk and Zohar, Levi confides, “‘There's nothing so whole as a broken heart’ and ‘there is no light like that which comes from great darkness’. In my life, I've seen that when I allow myself to take on the bitter and broken, letting the walls of my heart break in humble surrender, then the bitter turns to sweet, and the brokenness turns into fertile soil, in which  ‘those who sow in tears will reap in joy’. Consider this an invitation, to come as you are, whole as a broken heart.”

 


リチャード・ドーソン(Richard Dawson)はニューカッスル/アポンタイン出身のフォークミュージシャン。 アートビジュアルの作品も発表しています。2014年のアルバム『Nothing Important』はWeird Worldからリリースされ、批評家から絶賛された。 2017年のアルバム『Peasant』も同様の評価を受け、『The Quietus』誌のアルバム・オブ・ザ・イヤーに選ばれました。


ドーソンは長年にわたって地元ニューカッスルで多くの人々に愛されてきました。稀に見る激しさと特異なスタイルで歌い、ギターを弾く、歪んだトルバドールである。 まさしく現代に蘇った吟遊詩人と言えるかもしれません。

 

ドーソンのボロボロのアコースティック・ギターは、リチャード・ビショップやキャプテン・ビーフハートを彷彿とさせるような、つまずきから崇高さへと変化する。リチャード・ドーソンは、北東部のエレメンタル・アーケタイプの渦から長い草稿を引き出してきた。 大胆不敵なまでのリサーチとインスピレーションへの意欲で、ドーソンは古代の神話と現代の恐怖に彩られた印象的な音楽と語りのカタログを作り上げました。 


リチャード・ドーソンの多くのレコードには、病、トラウマ、無言の必然性の霧のような感覚が立ち込めており、それはしばしば、ドーソンの手が、持ち主と同じように傷つき、個性的で、不屈の楽器である、長年苦悩してきたギターから音を生み出す大混乱の中で表現されています。


リチャード・ドーソンのニューアルバム『End of the Middle』のタイトルは、実に微妙な矛盾をはらんでいる。中年? 中流階級? ドーソンのキャリアの中間点? レコードの中心? 一般的な中道主義? 二極化? 何かについてバランスの取れた議論をする可能性? あなたと真ん中? イングランドの真ん中? 中途半端な曲作り? 『エンド・オブ・ザ・ミドル』は、家族(同じ家族の何世代か)の営みを覗き見るような奇妙な美しい作品です。


「このアルバムは、小規模で非常に家庭的なものにしたかった」とドーソンは説明し、「そして、歌詞とメロディーが、曲の中で彼ら自身と人々を語れるようにしたかった」と付け加えている。物事を徹底的に削ぎ落とすことで、驚くほど冷静で、奇妙なほどエレガントで美しい音楽が完成した。

 

 

Richard Dawson 『End of the Middle』 -Domino Recording

 

果たして、この世に普遍な存在などあるのでしょうか。これは非常に難しい問題だと思います。多くの人々は何かが変わることを恐れますが、変わらないことは何ひとつもない。外側からは変わっていないように見えますが、その内側は、明らかな変化が生じているのです。こと、音楽に関していうならば、女性シンガーの年齢ととも人生におけるテーマの変化があるのと同様に、男性シンガーもまた年齢とともにテーマ(主題)が変わっていくのは当然のことでしょう。


結局のところ、自分が最も輝かしい時代だった頃と同じ主題を歌いたいという気持ちを持つことは分かるのですが、十年後に同じことを伝えることはむつかしい。なぜなら、十年後のその人物の人格は以前とは内側からも外側からも変わっているからです。その点では、ニューキャッスルのリチャード・ドーソンは、その年齢しかわからないことを音楽でストレートに伝えてくれます。


ドーソンの音楽には、その年齢の人々が知るべき何かが彫刻のように刻まれています。例えば、二十歳のミュージシャンと、四、五十代のミュージシャンでは伝えたい内容が全く異なるはずです。二十歳の人物が五十歳の表情をして音を奏でるのは妥当といえないでしょう。なぜなら、異なる年代に対して、その年代しか伝えられないことを伝えられるかがいちばん重要なのだから。

 

さらに、リチャードは、ニューキャッスルという街の風をリスナーのもとに届けてくれます。音楽というのは、制作者が感じたもの、そして生活の基底から引き出された感慨を伝えるためにある。そして、また、制作者のいる地域の特性を伝える。その中には、優雅なものもあれば、それとは対極的に素朴なものも存在する。どのような地域に住んでいようと、他の国や都市とは異なる特性が存在するはずで、それは同じ内容になりえないのである。そして、伝える人によって音楽の本質は異なる。なぜなら神様は、人間や生物に異なるキャラクターを付与することによって、おのおのの役割を分散させることにしたのです。結局のところ、なぜ音楽を創るのか、それから何を伝えたいか、これを明確にしないかぎり、本質に近づくことなどできないでしょう。

 

聞き手側としては、音楽の制作者の考えやそのひとがいる地域の特性に触れたとき、もしくはその本質に突き当たったとたんに、見ず知らずの人物の音楽が切実な意味を帯びはじめる。ドーソンの歌は、他の地域に住む人には作ることができず、ニューキャッスルの土地柄を的確に反映させている。

 

音楽というのは、離れた地域にあるリアリズムを伝える能力があるのをひしひしと感じることがあります。たとえば、リチャード・ドーソンのギター、そして歌は、吟遊詩人のような響きが込められています。しかし、彼の歌は、特権階級のためのものではありません。労働者階級のためのものでもあり、キャプテンビーフハートが志したブルースとロックの融合のように、胸にずしりとのしかかり、長い余韻を残す。ドーソンの歌はまったく重くなく、ブルースの要素はほとんどなく、それ以前の鉄道夫が歌ったレイルロード・ソングのペーソスに近い。でも、なぜか、それは現代の労働歌のような誠実な響きがあり、現実的な質感を持って私たちの心を捉えることがあります。

 

『End Of The Middle』は、切実なニュアンスを帯びています。アッパーとロウワーという二つの階級に現代社会が完全に分かたれていることを暗示する。そして多くの人は、その社会問題を矮小化したり、責任転嫁したり、もっと酷い場合には、まったく無きものとして無視したりすることもあるわけです。また、これらの二つの階級は、両者を敵視することも稀にあるでしょう。しかし、リチャード・ドーソンは、社会の基底にぽっかりと開いた空白のなかに位置取り、空想と現実がないまぜとなったフォークミュージックを説き聞かせるように優しく奏でます。それは現代社会に対する内向きな風刺のようでもあり、また、リリシズムの観点から見たアートの領域に属する。

 

リチャード・ドーソンのアコースティックギターは、ジム・オルークや彼のプロジェクトの出発であるGastr Del Solに近い。しかし、単なるアヴァンフォークなのかといえばそうとも言いがたい。彼の音楽にはセリエリズムは登場せず、しかも、明確な構成と和音の進行をもとに作られる。しかし、彼の演奏に前衛的な響きを感じるのはなぜなのか。ドーソンの音楽はカウンターに属し、ニューヨークパンクの源流に近く、The Fugsのようなアート志向のフォーク音楽の原点に近い。それは、以降のパティ・スミスのような詩的な感覚と現実感に満ちている。 彼の作品にひとたび触れれば、音楽という媒体が単なる絵空事とは言えないことが何となく理解してもらえるでしょう。

 

ドーソンの音楽は、米国の作家、ジャック・ケルアックの『On The Road』で有名な”ビートニク”の文化のヒッピー思想の系譜にある。ビートニクは西海岸から発生した文化と捉えられがちですが、ニューヨークのマンハッタンにもよく似たムーブメントがありました。例えば、アヴァンフォークの祖であるThe Fugsです。1965年の当時、マンハッタンのイースト/ウェストヴィレッジの路上で雑誌や詩集を販売していたトゥリ、そして、雑誌の編集長を務めていたエド・サンダースが「詩を読むだけでは不十分。曲を作って歌えるようにバンドをやろう」と結成したのが”The Fugs”だったのです。

 

一般的にはThe Velvet Undergroundがパンクの先駆者であるような紹介をされる場合が多いですが、以降のCBGBやノーウェイブの流れを呼び込んだのは、このフォークグループだったはずです。この最初のニューヨークのアヴァンギャルドミュージックの流れは、アリストテレスのギリシャ思想、ダダイズム、ジャズ、ポエトリー、ジョン・ケイジの前衛音楽、チャック・ベリーのR&R、それから賛美歌までを網羅し、どの音楽にも似ておらず、唯一無二のアヴァン・フォークの形態を確立させたのでした。まさしく様々な文化の折衝地であるマンハッタンの音楽。彼等は、現代社会の無気力や鋭い風刺を織り交ぜて、「月曜にはなにもないし、火曜にもないにもない!」と歌った。これはウディ・ガスリーやボブ・ディランのフォークよりも尖っていました。

 

リチャード・ドーソンのフォークミュージックは、フランク・ザッパ、キャプテン・ビーフハート/マジックバンドに象徴される''鬼才''ともいうべき特性によってつむがれ、ちょっと近寄りがたい印象もある。それは聞き手側がアーティストの個性的な雰囲気に物怖じしたり、たじろいだり、腰が引けるからです。でももし、純粋な感覚があれば、心に響く何かがあるはずです。賛美歌、ビートルズの『ラバーソウル』以降のアートロックの要素、パブロックのような渋さ、リバプール発祥のマージービート、それから60年代のフォークミュージック、そして、おそらくニューキャッスルの街角で聞かれるであろうストリートの演奏が混在し、ワイアードな形態が構築される。アルバムには、ほとんどエレクトリックの要素は稀にしか登場せず、音楽自体はアコースティックの素朴な印象に縁取られている。それにもかかわらず電撃的なのです。

 

アコースティックギターのガット弦の硬い響き、奥行きのあるドラムテイクの録音がこのアルバムの美点です。「Bolt」は、さながらシカゴのアヴァン・フォークの巨人であるジム・オルークを彷彿とさせる抽象的なサウンドで始まり、哀愁溢れるドーソンのヴォーカルが音楽的な世界をゆっくりと押し広げていきます。そして、アコースティックギターに合わせ、フランク・ザッパ的なボーカルが乗せられます。さらに、コード進行による弾き語り、それからもう一つの楽曲における対句のような構成を持つボーカルとのユニゾンなどを通して、対比的な音楽の構造を生み出し、そしてほとんど途切れることのないアヴァンフォークの音楽観を構築していく。


そしてそれは、日曜の休日のために歌われる賛美歌、安息日のための歌のような響きが強調されます。しかし、それは教会音楽のようなきらびやかな宗教歌ではなく、日曜の食卓で歌われるような質朴で控えめな歌/労働者のためのささやかな賛美歌です。かつてハンガリーにルーツを持つクラシックの音楽家が、「農民カンタータ」のような音楽を書いたように、一般的な市民のつましい暮らしを賛美するための素朴なフォークソングを、ドーソンはさらりと華麗に歌い上げます。これは、''誰に向けて歌われるのか''という意義を失いつつある現在の音楽に一石を投じる内容です。彼の音楽は、哀愁や暗さに満ちていますが、そこには共感性と癒やしが存在するわけです。

 

冒頭部は、夕暮れの切なさを思わせますが、続く「Gondola」は、意外なほど軽妙な印象を放つ。まるで故郷を飛び出し、ヴェネチアへ小さな旅行に出かけるように、陽気な気分を表現しています。しかし、商業的な音楽のように見え透いた明るさにはならない。それはまた一般的な人間の性質にある多極性、明るさのなかにある暗さ、あるいは、暗さのなかにある明るさ、というような正常な感覚をストレートに吐露しているからでしょう。この曲では、音楽制作者のペシミスティックな心情を鏡のように現実に反映させるかのように、和声進行は単調と長調の間をせわしなく行き来しています。音楽自体は、ちょっと陽気になったかと思えば、それと対象的に、悲しみに溢れる音楽の表情があらわになる。アコースティックギターの演奏はリズミカルで軽快なのに、ドーソンの歌のヴァーズはペシミスティックな感覚がある。これがトラックの背景となるメロトロンのぼんやりした響きと混在し、ビートルズのデモソングのような雰囲気を持ったラフなアートロック/アートポップソングが出来上がっていくのです。

 

 

 「Bullies」は、ロック風の曲をアコースティックで演奏しています。そして、表面的にはビートルズのルーツであるマージービートの系譜をうかがわせる。もしかすると、60年代以前には、リバプール、マンチェ、そういった主要な港町で船乗りが歌う「舟歌」のような音楽が存在しただろうと思われます。この曲は、そういった英国の「労働歌」を彷彿とさせる。最近、英国的な音楽というのが薄れつつある印象ですが、この曲は、海外の人間から見ると、奇妙なほど”英国的”である。それは王室の話題とは無縁な市井の人々のための音楽なのです。


そして、リズムも独特で面白いですが、この曲はなぜか心を奮い立たせる何かが存在します。おそらく、そういった民謡や労働歌のようなものに合わせて、ドーソンは自らの心情を織り交ぜたエモーショナルな歌を紡いでいる。この曲は、中盤以降、ポピュラーソングに接近したかと思えば、ジョン・ゾーンのようなサクソフォンの特殊奏法を通して、前衛音楽と商業音楽の間を変幻自在に行来し、印象を著しく変化させます。そして、曲は一貫して難解になりすぎず、叙情的なアルペジオのアコースティックギターの間奏を織り交ぜ、落ち着いていて聞きやすいフォークソングを展開させていく。

 

基本的には、リチャード・ドーソンのソングライティングは終止形を設けず、一つのフレーズの後、移調などの技法を用いて、曲の持つイメージを変化させ、そのまま息をきらさず、次の曲の進行へと繋げていく。これはどちらかといえば、クラシックの作曲法で、基音と次の転調の導入音を繋げて次の調性に転回していくのです。ドーソンの音楽は、ものすごく独創的であるため、一見すると、ポストモダニズムのように思えますが、必ずしもそうとは言いがたい。全体的に聴きこんでみると、楽節の枠組みを用意した上で、それを順繰りに繋げている。つまり、ガスター・デル・ソルやジム・オルークの音楽が脱構造の印象を持つのとは対象的であり、ドーソンの音楽はどこまでも構造性を重視しています。しかし、こういった一定の決まりがありながらも、自由闊達な気風を感じさせる。変幻自在なギターの演奏が繰り広げられ、一つの枠組みを通して音楽的な奥行きを広げていく。考え方によっては、そこにあると思っていたものがスッと消えてなくなり、ないと思っていたものがふと出現したりします。つまり、音楽的な驚きが満載なのです。

 

ドーソンのヴォーカルの魅力的な側面がひときわ際立つ瞬間もある。「The question」 では、いわゆる''ヘタウマ''のボーカルが登場し、気安く穏和な雰囲気のあるギターの音色と重なり合う。まさしく、ここでは冒頭で述べたように年齢を重ねたがゆえの深さ、包み込むような温かい感情があらわとなる。それがこのアルバムでは最も牧歌的な印象を持つ音楽とまざりあう。


曲の途中では、即興的な演奏が登場し、これが間奏の役割を担う。それが最終的にはサーカスの音楽のようなリズムと重なり合い、音楽的なエンターテインメント性を創り出す。そして、ドーソンはくるくると調性を移調させながら、面白いようにシークエンスを変化させる。すると、聞き手は、その感覚に釣り込まれるように、楽しみに充ちた感覚を享受する。さらに、わざとピッチ(音階)をずらしたファルセットを通じてコメディー的な音楽の要素を強める。これが少しシリアス過ぎる音楽が多い昨今の中で、ほのかな安らぎの要素をもたらすのです。音楽というのはときどき、固定観念から開放させる働きをなすこともあり、また、それが知られざる魅力でもある。サーカスのようなコメディーにもよく似た音楽は、旧来のビートルズやストーンズの直系にある。いや、もしかすると、見方によれば、フランク・ザッパ的であるのかもしれません。

 

「Boxing Day Sale」はタイトルが秀逸で、小説や映画のタイトルのようです。祝日の讃歌なのか。”ボクシング・デー”とは12月26日の休日で、いわゆる主人と召使いの関係を象徴付ける休日であるという。しかし、この曲には、バックストーリーのようなものが込められているような気がします。

 

アルバムの序盤の収録曲のように、哀愁溢れるメロディーと高らかなボーカルが特徴的です。しかし、一貫してドーソンの曲には奇妙な癒やしが感じられる。それは、暗さの向こうにある明るさともいうべきもので、ボーカルの真心にほっと安堵させられる。


この曲が、貧しき人々に捧げられたチャールズ・ディケンズの小説のような慈しみの音楽であっても驚くには当たりません。彼の歌声は純粋な響きがあり、それがゆえ琴線に触れる何かが込められています。ときどき、ほろりとさせるような人情を感じさせます。下町の風情といった感じでしょうか。

 

 

 「Boxing Day Sale」

 

 

 

いつの時代もポピュラーミュージックの醍醐味というのは、歌手や制作者の真心を表し、それが一般的ではないほど共感を誘う。''なぜそんなことを歌ったのか''という曲ほど、共鳴する部分があったりします。本意を明らかにせず、上辺の感情で別の思いを塗りたくるのは最善とはいいづらい。それはつまらないコマーシャル音楽に堕してしまい、聞き手を絶望のどん底に突き落とし、救われるところがほとんどないのです。暗さや悲しみに共鳴する曲がいつの時代から途絶えてしまい、それがいつ、偽りの音楽に塗り替えられたのでしょうか。そして誰がそれらを称賛しているのでしょうか。


「Knot」は、そういった奇妙な風潮に対抗するカウンターに位置づけられる音楽です。ここでは、ビートニクの範疇にある自由な考え、フリースタイルのフォークソングに縁取られている。こういった曲に共感を覚えるのは、どのような明るい人も暗い感情を内に抱えることがあるからなのでしょう。

 

アルバムの音楽を聞き進めていると、リチャード・ドーソンという人物が教会の聖職者のように思えてきます。しかし、彼の音楽やそれにまつわる思いは、一方方向ではなく、円環状の感覚に充ちています。みんなで輪を広げていこうというオープンな感覚で、そして、それは単一の考えを押し付けるものではなく、答えを見つけるための暗示に過ぎません。本作の音楽は、結局、明確な答えを示すためのものではなく、手がかりだけを示した上で、この音楽に接した人々がそれぞれの答えを見出すという趣旨なのです。多くの人々は、なんらかの明確な答えを求めたがり、ときに自分の理想とする人にそれをあてがってもらったりします。それでもたぶん、答えというのは、最終的には、それぞれが違ったものであるのだから、一つの正解は存在しません。それをおのおのが見つけていくべきなのでしょう。

 

『End Of The Middle』の素晴らしさは、世界からミドルが消えかけているという悲観論だけで終わらず、旧態依然とした世界から前に進むという建設的な考えがほのめかされている点にある。このアルバムの出発点はペシミズムにまみれていますが、アルバムの音楽の世界を歩き終わったあと、別の世界に繋がっていることに気づく。そのための道筋が以降の三曲に示唆されている。「Polytunnel」は、賛美歌をフォークミュージックでかたどったもので、何か清らかな感覚に充ちている。このアルバムの中では、最も気品に充ちた一曲かもしれません。

 

「Removals Van」はビートルズを彷彿とさせるフォークミュージックで、とてもさわやか。厳格に言えば、ジョージ・ハリスンやリンゴ・スターが歌いそうなユニークな一曲である。しかし、ドーソンらしい音楽性があり、感情の起伏という形であらわれる。実際的には、明るく軽快な曲調と哀愁のある曲調という対比によって導かれる。サックスかファゴットのアバンギャルドな響きを絡め、軽快さと前衛の間を巧みに揺れ動いている。ジャズなのか、フォークなのか、クラシックなのか、ロックなのか、それともポップスなのか?? いずれとも言えないですが、ここには、基本的には音楽を楽しむという最大の魅力が宿っている。そしてそれはジャンルを超えている。だからこそ聴いていて心地よいのでしょう。

 

クローズ曲だけは作風がかなり異なります。「More Than Real」ではモジュラーシンセが登場し、悠々たる雰囲気でドーソンはバラードソングを歌い上げています。 これまで一貫してギミック的な音楽を避けて、質朴な音楽を提示してきたソングライターの真骨頂のような瞬間を味わえます。まるでこの曲だけは、舞台やオペラの主人公になったかのように、ドーソンは明るく開けた感覚のボーカルを披露しています。聴いていると、同調して、なぜか開放的な気分になり、前向きで明るい気分になれるはずです。また、そこに、失望に打ちひしがれた人の心を癒やす何かがあると思います。

 

ゲストボーカルをあまり起用してきませんでしたが、クローズでは、女性ボーカルのソロが最後の最後で登場します。唐突にギリシア神話の女神が登場したかのような神々しさが充ち広がっていきます。最終的には、男女のデュエットという、真善美の瞬間が立ちあらわれる。次いで、この曲は、シンセサイザーやサックスの前衛的なパッセージに導かれ、エンディングを迎えます。アウトロの音の波形のうねりのフェードアウトは、ワープから去年発売されたロンドンのアーティストのEPのサウンドによく似ています。空の中の泳ぎ方の模倣。実にうまくやったなあという感じですね。

 

 

 

92/100

 

 

 

「Gondola」

 

 

 

■ Richard Dawson(リチャード・ドーソン)のニューアルバム『End of the Middle」は本日(2/14)、Domino Recordsingから発売済み。各種ストリーミングはこちらから。