The New Pornographers 『Continue As A Guest』/Review

 The New Pornographers 『Continue As A Guest』

 

Label: Merge Records

Release: 2023/3/31


Review


ご存知の方も少ないないと思われますが、Merge Recordsは、Superchunkのマック・マコーン氏が主宰するレーベルなわけで、少なからず、このバンドのユニークな気風のようなものは、ジャンルを問わず所属するアーティストに受け継がれているようです。スーパー・チャンクについては、Yo La Tengoや、Pixiesとならんで、USインディーの伝説的なバンドで80年代から活動する長いキャリアを持つロックバンドです。

 

先日、発表されたように、スーパーチャンクのドラマーのJon Wurster(ジョン・ワースター)が脱退することが報じられた。 もう心ここにあらずという感じなので一線を退くという発表をしているわけですが、これはまた他の意味があって、後継的なバンドが見つかったという安心感もあったようです。つまり、何を言わんとするのかというと、ワシントンのザ・ニュー・ポルノ・グラファーこそ、スーパー・チャンクの正当な後継のロックバンドなのだということです。

 

ワシントンの6人組のインディーロックバンドは、90年代のSuperchunkや、Throwing Musesのインディーロック性をこのアルバムの中で展開させようとしているように感じられる。

 

アルバムの全体には、バンドのリーダーであるA.C.ニューマンのマック・マコーンを彷彿とさせる穏やかなボーカル/メロディーライン、Throwing Musesを思い起こさせる柔らかい女性コーラスがかけ合わさり、90年代のノスタルジア満載のUSインディーのコアな音楽性が通奏低音のように響いている。それがトラック全体のシンセの雰囲気と合わさり、現代のオルトロックとは一線を画す内容となっていることが分かる。オープニングトラック「Really Really Shape」は、上記の2バンドに加え、Weezerの初代ベーシスト/マット・シャープのバンド、The Rentalsのようなエモーショナルなインディーロックを気風が受け継がれた最高の一曲となっている。

 

一方、The New Pornographersを単なるスーパー・チャンクやヨ・ラ・テンゴの後継者として見做すことは惜しい。6人組のバンドのアプローチには、明らかにシンセ・ポップの影響が反映されており、以前のUSオルタナとは少し違った風味をもたらしている。「Cat and Mouse With The Light」では、Superchunkの可愛らしい音楽性の影響をとどめつつ、そこにコンテンポラリーフォークの要素を加えて新鮮味をもたらそうとしている。


その他、TOTOの「Africa」のようなポップネスを受けついだ「Last and Beautiful」もアフリカの民族音楽を彷彿とさせ、先行のオルトロックっぽくはないし、タイトル曲「Continue As a Gurest」もネオソウル/ラップ、シンセポップの影響を絡めた上で新時代のオルトロックへと歩みを進めようとしている。これはどういうことかと言うと、USオルトの良い部分を受け継いだ上で、何かしら現代的な新しい解釈を加えようというバンドのチャレンジ精神を読み解くことが出来るわけなのです。


また、そうかと思えば、「Bottle Episode」ではSuperchunkのノスタルジックな雰囲気に舞い戻り、「Detroit Has A Skyline」を彷彿とさせる和やかなオルトロックで楽しませてくれる。「Marie and the undersea」では一転して先鋭的なアプローチを展開させ、ダイナミックなシンセポップを通して清新な解釈を付け加えようとしている。これらの新旧の音楽の影響をジグザグに織り交ぜた曲の流れは、行けども行けどもゴールが見えない曲がりくねった坂道のような印象を与える。

 

その後にも、バンドはある一つの地点に留まるのを極力避けるかのように、バリエーション溢れる展開力を見せることに驚きを覚える。「Angelcover」では、ビートルズを思い起こさせるバロック・ポップへと転じ、音の核心に迫ったかと思えば、すっとかわされてしまうようなユニークな感覚に満ちている。次いで、「Firework in the Falling Show」に関しては、Tears For Fearsを想起させるニュー・ロマンティックやソフトロックの名曲の雰囲気を受け継いだナンバーとして楽しめる。


全体的にみれば、『Continue As A Guest』はSuperchunkやGalaxie 500、R.E.Mの音楽性に触発された音楽として位置付けられる。しかし、オルトロックという固定観点から距離をおいて聴いてみると、AOR/ソフトロックのようにも聞こえるし、その他、オアシス/ブラーのような良質なブリット・ポップにも聞こえる。音楽の核心に迫るほど聞こえるものが変化する。ジャンルを問わず、洋楽ファンにチェックしてみてもらいたい作品です。

 

 

85/100 

 


Featured Track 「Fireworks In The Falling Snow」

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