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ウィメンズ・メンズウェアブランド、daisuke tanabe(ダイスケ タナベ)は、最新となる2026年秋冬コレクション season 04 "atom" を発表しました。コレクションのルックは以下よりご覧いただけます。
ーー前シーズンのコレクション「x」では、James Blakeの楽曲『Like the End』に端を発する危機感から、不要な関心の増幅がもたらす社会全体の「無関心」をテーマに据えました。真偽の曖昧な情報が速度優先で拡散される時代において、“x”を未定数や不確かさの象徴とし、揺らぐ真実の輪郭をグレーの階調で、未然の予兆をブルーで表現しました。
今シーズンの「atom」は、その霧を晴らすための答えを出すのではなく、霧の中にいながら希望を見失わないために個人という最小単位へ、視点を落としていく試みです。
転換のきっかけは、昨年の夏、図らずも耳にした山下達郎氏の「アトムの子」でした。
自ずから抱いていたぼんやりとした危機感や不安を追い越し、先に体温だけを立ち上げてしまうプリミティブな力。それは「自己肯定」という別の選択が可能であることを理屈ではなく身体が先に知ってしまう、心地よいバグのような経験でした。ここで言うatomは、これ以上分割できない「不可分なもの」、外部がどれほど個を解体しようとしても奪えない核の比喩です。希望とは、世界が明るくなることを保証する言葉ではなく、今ここにある自分自身を肯定するための、静かな選択であると定義しました。
本コレクションの思想的背景には、映画『ブレードランナー 2049』が提示した実存主義があります。主人公Kが、自らが「特別な本質」を持つ複製体ではないと知った絶望の淵で、自らの意志による選択によって自らの実存(魂)を確立したように、私たちもまた、自らの手で自らを定義します。たとえ世界が無機質なグレーの階調に沈もうとも、今この瞬間を肯定すること。その静かな決意こそが、本コレクションにおける「希望」の定義です。
衣装デザイナーのRenée Aprilは、この作品を「ファッショナブルな映画ではない」と捉え、世界の湿度や汚染、厳しさに従って服を作り、物語に不要な“尖り”をあえて削いだと語っています。 さらにKは映画を通してほぼ同じ装いで生き延びる。撮影のために同型のコートが何着も用意されたという事実も含めて、衣装は装飾ではなく、環境に耐えるための「ユニフォーム」として設計されている。 私はその姿勢を、今季のコレクションに適用しようと思いました。
この視点を拡張するために、私は身体を守るために洗練されてきた機能主義の系譜に着目しました。1892年創業のD. Lewis(現Lewis Leathers)が、航空用装備「Aviakit」を手掛け、第二次大戦期のRAF(英国空軍)パイロットたちが生存のためにその装備を私費で求めた歴史は、衣服が「装い」から「防護(シェルター)」へと役割を拡張してきた過程でもあります。これらリサーチを元に、各製品の外骨格としてのデザイン画を描きました。
しかし、私が目指したのは単なる生存のための「機械」としての服ではありません。Le Corbusierが「住宅は住むための機械である」と合理性を追求したのに対し、建築家Eileen Grayはその冷徹な機械主義を批判し、デザインは身体だけでなく「精神の避難所」でなければならないと説きました。彼女にとって建築やテキスタイルは、機能を満たすだけの器ではなく、住まい手の心理的な充足までを包み込み、拡張するための装置でもあります。ーー
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| Photo: Taro Mizutani |
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今シーズンのパレットの起点は、Eileen Grayが描いたラグのデザインにあります。彼女が引く幾何学的なラインを理性、その底に流れる温かみのある配色を感情の象徴として捉え直しました。『Centimetre』などに見られる秩序ある線は、混沌を整理しようとする知性を表し、一方で豊かな色彩や手織りの質感は、人が生きるための根源的な情動を示しているように思えます。抑制されたトーンの中に置かれたブルーとゴールドは、暗さを破るための派手さではなく、静けさの中で確かに残る体温の印です。
中でもブルーは、孤独な空白の中で自らの位置を特定するための座標として配置しました。この色を、冷徹な世界の中で絶えることなく燃え続ける「青い炎」として扱っています。シルクとカシミヤのダブルフェイスは、カシミヤのマットな質感の奥から、内なる輝きとしてベージュゴールドのシルクが覗くよう設計しました。随所に走るベージュゴールドのファスナーテープも同様に、内側の熱が消えていないことを知らせる小さなサインです。また、カルガンラムのファーが幾何学的なシルエットの輪郭をわずかに曖昧にし、ベビーカーフやカシミヤと響き合うことで、コレクションに生命の揺らぎを与えています。
常に今の自分の最大出力を表現すること。次があるという考えを捨て、ひたすら「今」に勢力を注ぎ込むことこそ、黄金の朝日に繋がると信じています。
Nothing Gold Can Stay
Nature’s first green is gold, Her hardest hue to hold. Her early leaf’s a flower; But only so an hour. Then leaf subsides to leaf. So Eden sank to grief, So dawn goes down to day. Nothing gold can stay.
— Robert Frost
▪daisuke tanabe season 04 Tokyo showroom
会期:2026年2月9日(月)〜 2月15日(日)
会場:3E STUDIO
住所:〒107-0062 東京都港区南青山3-14-15 Kawamata Bldg. 2F
about daisuke tanabe:
daisuke tanabeは2024年に設立されたウィメンズ・メンズウェアブランド。映画や小説、写真を元に創作したフィクションをベースに、世界各地の伝統的な職人技術と、前衛的なテクノロジーをミックスしたコレクションを展開する。実験的なクリエイションはファッションという概念の軽やかさと、ものづくりの厳かさの両面性を表現し、ハイエンドな素材と独創的なパターンを織り交ぜて体現する。
about designer:
2021年に京都大学経済学部を卒業後、株式会社細尾に入社。2023年に独立し、ファッションブランド「daisuke tanabe」を立ち上げる。2024年2月にファーストコレクションを発表し、国内外での展開を始める。





















