Julianna Barwick

 

ジュリアナ・バーウィックは、アメリカ・ルイジアナ出身のアンビエントアーティスト。2006年から音楽家としての道のりを歩み、現在はLAを拠点に活動している。

 

ジュリアナ・バーウィックは、幼少期に過ごしたルイジアナの教会の聖歌隊への参加が自分の音楽的なルーツであると語っています。  


ジュリアナ・バーウィックは、録音した自身のボーカルのサンプリングを幾層にもトラックメイクの段階でレイヤーとして重ね合わせることにより、ゴシック建築のような重厚な趣を持つ奥行きのある音響空間を生み出します。それは、ときに絵画のような色彩、また、教会建築そのもののような奥行きのある空間性を生み出し、聞き手を陶然とした心地に誘います。

 

ジュリアナ・バーウィックのミュージシャンとしてのキャリアの原点は、 2007年のデビュー・アルバム「Sanguine」に求められます。

 

この作品で、バーウィックはループステーションとループペダルを使用し、ヴォーカルのサンプリングとシンセサイザーのレイヤーをダブのような技法を用いて組み合わせることにより、立体的な構造を持つ、ヴォーカル曲とも電子音楽ともつかないような前衛的な作風を生み出している。2010年からは、レディオヘッドの「レコナー」のリミックスを手掛ける傍ら、共同作業を行うようになり、NYアンダーグランドシーンで活躍する森郁恵との作品「FRKWYS Vol.6:Juliana Barwick Ikue Mori」を発表しています。

 

 


 

 

 

最初のフルレングスアルバム「The Magic Place」は、最初にスタジオレコーディングが行われ、実際のピアノ演奏と、ヴォーカルのループを融合した叙情性あふれるアンビエント音楽を確立しています。この作品タイトルは、ジュリアナ・バーウィックの家庭の農場にあった一本の木に因んでいる。

 

2011年発表「Matrimony Remixes」では、ディプロ、ヘラルド・ネグロ、プリンス・ラマ、アリアス・ペイルをゲストに招いてリミックスを制作する。2012年、ヘラルド・ネグロとデュオ「Ombre」を結成、アルバム「Believe You Me」をリリースしています。


その後、2013年に二作目のオリジナル・アルバム「Nepenthe」を発表する。親戚の死に触発されて書き上げられた作品で、古代ギリシャ文学、エドガー・アラン・ポーの作品のモチーフとして用いられている「忘却の薬」に題材をとった神秘的な作風です。また、この作品には、アイスランドの室内楽グループAmiinaが参加し、十代の少女の合唱団の演奏、合唱に脚光が当てられている。

 

2016年には、ボーカル芸術としてのアンビエントの新たな領域へ踏みだし、サード・アルバム「Will」をDead Oceansから発表する。教会内の広々とした空間性を思わせる独特なヴォーカル形式を確立。このアルバムに収録されている「Nebula」は、アメリカのラジオネットワークNPRにて初演された。この作品を手掛けたデリック・ベルチャム監督のMVは「フィリップ・ジョンソン・グラス・ハウス」にて撮影がおこなわれています。


2019年12月、ジュリアナ・バーウィックはEP「Circumstances Synthesis」をリリース。その後、2020年7月には、これまでの最新作「Healing Is A Miracle」を発表しています。




Julianna Barwickの主要作品      

  

1.「The Magic Place」 Athmatic Kitty 2011 

 

 

 

 

ジュリアナ・バーウィックは、2010年の半ば、最初のアルバムの制作を開始し、翌年のはじめ、この作品を「Athmatic Kitty」からリリースし、ミュージシャンとしての出発を果たす。

 

一般的に、デビュー作「The Magic Place」は、アンビエント、ニューエイジからの影響が色濃い作品と評されており、バーウィックは前作「Sanguine」よりアンビエントに対する強い接近を試みています。ヴォーカルの形式は実験的です。それはポップスの歌謡曲のようでもあり、教会音楽のようでもある。

 

先述したように、ジュリアナ・バーウィックは、ヴォーカルのループを多用し、独創的な音響空間をスタジオレコーディングにおいて生み出しています。また、このスタジオ・アルバム全体に、自然味あふれる叙情性、子供のような遊び心が感じられる点について、ジュリアナ・バーウィックは以下のように話しています。

 

 

「マジックプレイスは私達の農場の木でした。それは家の後ろの牧草地にあり、上下左右に成長した一本の木でした。それは私達が這う必要があって、そして、その木の中に入ってみると、そこがまた別の空間に続いているような感覚でした。そして私達はその木の枝に横たわることも出来ました。

 

この作品を「マジックプレイス」と名付けたのは、特に、子供にとって、あの木が魔法のようなものだったからです。それが、今の私の人生についての率直な気持ちです」

 

 

ジュリアナ・バーウィックが話しているように、この作品は、彼女のデビュー作としての重要な意味を持つだけでなく、人生の分岐点、神秘的な空間へ繋がる瞬間でもあったのかもしれません。誰にでも以上のような経験はあるはず、子供のときふと見た情景が年をとっても目にやきついているかのような・・・。子供ながらに見たのどかで神秘的な農場の風景、それがのちにバーウィックの重要な音楽性、強固な概念を形作り、ここに新鮮な雰囲気を持つ音楽として再現されています。この後の、ヴォーカルアンビエントの出発点ともなった作品です。 

 

 

 

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2.「FRKWYS Vol.6:Juliana Barwick Ikue Mori」 RVNG INTL  2011 






「FRKWYS Vol.6」は、NYのアンダーグランドシーンで活躍する森郁恵とジュリアナ・バーウィックが共同制作を行った作品で、これまでのバーウィックの作品の中でも最も実験音楽の色合いが強いアルバムです。

 

しかし、実験音楽だからといって方向性は変わらず、二人の女性アーティストの歌声が生み出す独特な音響性をときにテクノ的な側面、また、実験音楽の側面と、様々な方向からアプローチを図った作品です。聞きやすい作品とはいいがたいものの、ヴォーカルの響きという概念に焦点を絞り、それを美麗なハーモニクスへと昇華している。人の歌声の美しさを追求する二人の日本とアメリカのアーティストの音楽にたいする価値観が見事に合致した興味深い作品です。

 

 

 

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3.「Nepenthe」 Dead Ocean  2013




 

ジュリアナ・バーウィックがデッド・オーシャンとの契約にサインして発表された二作目のスタジオ・アルバム。

 

一作目よりアンビエント色が強まり、ボーカルトラックの作り込みもさらに洗練されています。「The Magic Place」がバーウィックにとっての幼少時代の農場の懐かしい記憶に立ち返ったものであるとするなら、この作品「ネペンテ」では、さらにそこにルイジアナの教会で聖歌隊に参加していた時代のバーウィックの音楽的なルーツを追求しなおした作品といえるかもしれません。

 

「ネペンテ」では、ボーカルに、ディレイ、リバーブのエフェクトをほどこし、ミニマル音楽としての要素が一作目より色濃く反映されています。さらに、シンセサイザーのシークエンスを巧みに駆使することにより、教会音楽と、電子音楽の中間にある独創性の高い音楽へと昇華されています。作品で展開される清涼感のあるボーカル、そして、そのボーカルのループエフェクトをミニマル・ミュージックの視点で捉えた、教会音楽のような崇高さを併せもつ。

 

 

  

 

 

 

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4.「Will」Dead Ocean 2016






中世ヨーロッパの教会音楽に近い雰囲気を持つアンビエント、前作「ネペンテ」で掲げた音楽性をより先鋭的に突き詰めた作品が、ジュリアナ・バーウィックの通算三作目となる「Will」です。


この作品で、バーウィックはアンビエントの重要な要素のひとつである癒やしという感覚に重きを置き、いくつかの手法、ボーカル、そしてピアノ、さらにはシンセサイザーというこれまでのキャリアにおいて積み上げてきた技術を用い、創造性に富んだ作風を生み出しています。ボーカリストとしての力量もさらに磨きがかかり、本格派オペラ歌手に比する歌声を込めた楽曲もいくつか収録されています。それに加えて、このアーティストの最も重要な気質、癒やしや清涼感といったアンビエンスが随所に漂い、それは、空気の住んだ高原の夜空に浮かぶ星空のような美麗さを想起させます。 

 

 

 

 

 

 

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5.「Healing Is A Miracle」 Ninja Tune  2020



 


 

ジュリアナ・バーウィックを中心に、ヨンシー、メアリー・ラティモア、ノッサジ・シング、といった豪華なヴォーカリストを迎えて制作された通算四作目のオリジナル・アルバム。デッド・オーシャンからNinja Tuneへ移籍しての第一作となります。


これまでの中で最高傑作の呼び声の高い作品です。アルバムのタイトル「Healing Is A Miracle」はジュリアナ・バーウィックが人間の身体の組織の修復について考えを巡らせ、「例えば、手を切ってしまったとき、傷は痛々しくとも、二週間後には見た目の上では、何もなかったようになってしまう、これってなんだかすごいことでしょう」と、我々が見過ごしてしまうような出来事に神秘性を見出したことに因んでいます。

 

バーウィックは、この作品においてさらに、「自分の力で何かを作り、ただ、愛という形にする・・・・・・それは感動的な体験でした。私がレコーディングしていたのは、自分の心から出てきた音楽であって、決して課題や仕事のためではなかったのだから・・・・・・少しだけ涙することもあった」と語っている通り、純粋な感情を交えて制作された作品で、このアルバムには、純粋なアーティストとしての美しい感情の貫流を感じ取っていただけるでしょう。

 

 

 

 

 

 

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蓮沼執太

 

 

蓮沼執太さんは、東京都出身のミュージシャン兼アーティスト。蓮沼執太フィルの主宰者でもあり、国内外でのコンサートをはじめ、映画、ドラマといった劇伴音楽から、ダンス、音楽プロデュースと幅広い制作分野に携わっている。この他にも、展覧会やプロジェクトを同時進行している。

 

2014年には、アジアン・カルチュラル・カウンシル(ACC)の助成を受け渡米。2017年には、文化庁東アジア文化交流使の指名を受け、中国北京に向かう。また、音楽家だけではなくアートの領域でも活躍なさっており、「Compositons」(NY Pioneer Works)、「〜ing」(資生堂ギャラリー)と二回個展を開催している。2019年には、「〜ing」で第69回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞している。


2006年には「Self Titled」を米、テキサスのインディーレーベル「Western Vinyle」からリリースしてデビューを飾った。その後、最初のアルバム「Shuta Hasunuma」を同レーベルから同年に発表した。これまで、メジャー、インディーと形態を問わず作品のリリースをおこなっている。オーケストラを率いて活動を行う”蓮沼執太フィル”としては、Space Shower Musicから「時が奏でるTime plays-and so do we」、日本コロンビアから「アントロポセン」をリリースしている。また、劇伴音楽の主な仕事として、NHKドラマ「Kireinokuni」のサントラなどを手掛けている。



 

U-Zhaan

 

 

ユザーンさんは、埼玉県出身のタブラ奏者。1996年からインドの民族打楽器タブラの演奏を始める。1998年、インドに向かい、コルカタの伝説的なタブラ奏者アニンド・チャタルジーに師事する。

 

翌年、BoredomsのYoshimio(横田佳美),日本国内のシタール奏者、ヨシダ・ダイキチと共に、”Alaya Vijana”を結成する。日本のポピュラーシンガー、UAをフューチャリングした楽曲「Alaya Vjana」をリリースするが、翌年脱退している。その後、毎年のように、インド・コルカタに出向き、タブラの演奏技術に磨きをかけるかたわら、江崎グリコのCMにも出演。これまで、Rei Harakamiをはじめ,坂本龍一、Cornelius、ハナレグミ、HIFANA,環ROY,鎮座DOPENESS、DE DE MOUSEらと共同作業を行い、電子音楽、現代音楽、J-POP,ヒップホップ、ジャンルを問わず、数々のアーティストとのコラボレーションの機会を積極的に設けている。

 

2017年、蓮沼執太との共同制作を行い、「2 Tone」を自主制作としてリリース、電子音楽と民族楽器を見事に融合させた新たな音楽性を確立している。また、同作「2 Tone」には、坂本龍一、NYノーウェイヴの祖、アート・リンゼイ、デヴェンドラ・ハンバートらがゲスト参加している。

 

 

 

 

「Good News」 Gold Harvest Recording 

 

 

 

 

 

Tracklisting

 

1.Good News

2.Go Around

3.6 Perspectives

4.Septem

5.Guess Who

6.Dawning

7.Mister D

8.NWF

9.Overtakes

10.Door

 

 

今週の一枚としてご紹介させていただくのは、2月16日に発表された蓮沼執太とU-zhaanの新作アルバム「Good News」となります。

 

今回、蓮沼さんとU-zhaanさんがデュオとして作品を発表したのは、2017年に坂本龍一やアート・リンゼイをゲストに迎えて制作されたスタジオアルバム「2 Tone」以来、二度目のことです。

 

時間をかけて丁寧に作った10曲の吉報をお届けします。これは僕たちの耳に心地よく響く音だけで作られたインスト楽曲集です。謂わば、「言葉のない手紙」のようなアルバムとなっています。皆さんにとっての「いいニュース」がこのアルバムと共にやってきますように

 

今回の作品について、蓮沼さんは公式ホームページにおいて上記のコメントを掲載しています。 作品のマスタリングを手掛けたのは木村健太郎さん。そして、どことなく手作り感のある可愛らしい封筒のようなデザインがあしらわれたアートワークを手掛けたのは、village Rの長島りかこさんです。


今回、ゴールデン・ハーヴェストから発表されたインストゥルメンタルアルバム「Good News」は、蓮沼執太とユザーンという本来全然趣向の異なる二人のアーティストの息がピタリとあった作品です。電子音楽と民族音楽が見事な融合を果たし、テクノとも、ニューエイジとも、民族音楽ともつかない、これまで存在しなかったタイプの音楽をお二人はものの見事に生み出しています。


北インドの弦楽器サロードの奏者Babuiを迎えて制作されたタイトル曲「Good News」、あるいは、民族音楽とテクノをスタイリッシュにかけ合わせ、サロードとタブラのメロディーをユニゾンさせた異国情緒あふれる作風の「Go Around」、これらの二曲は、アメリカの電子音楽家、天才数学者でもあるCaribouの「Start Breaking My Heart」、さらには、Isanの「plans drawn in pencil」のグリッチに肉薄し、二人は緻密なシンセサイザーの音色にタブラの涼し気な演奏をマッチしてみせています。

 

その他にも、このインストアルバムの聞き所を挙げると、北インド古典音楽の伝統的なリズムRupakの「七拍子」という西洋音楽にはあまり見られない独特なリズム感を打ちだした「Septem」。インドネシアのガムランのような涼し気な雰囲気をタブラとシンセサイザー、トランペットの演奏をフーチャーした「Mister D」。さらに、ポリリズムを導入、実験性の強い音響を追求したテクノグリッチの未来を形作ったといえる「NWF」。アルバムの導入から最後にいたるまで、二人の音楽の実験性が遺憾なく発揮された作品と言えるかもしれません。

 

この作品の最大の魅力は、「2 Tone」では、ゲスト参加した坂本龍一、アート・リンゼイといった大御所のミュージシャンに遠慮して少し見えづらかった蓮沼執太とユザーン、お二人のミュージシャンとしての個性が顕著に表れ出ていることに尽きるでしょう。


特に、蓮沼さんのグリッチテクノに対する強いアプローチ、そして、ユザーンさんのインドの民族打楽器タブラの演奏により、果たしてどこまで行けるのか、未知への挑戦をいどんだ意欲作ともいえるかもしれません。そして、シンセとタブラの演奏は白熱味を帯び、生きた質感となり、ときに、ジャズのインプロヴァイゼーション、フリー・ジャズのようなアバンギャルドな領域に入り込んでいく場合もある。表向きには、爽やかさ、涼やかさ、掴みやすさが感じられる一方で、聴き応えのあるインスト楽曲が勢揃いしたアルバムとなっているのではないでしょうか?

 

さらに、個人的な感慨を述べるなら、この二人の演奏には何か、シンセサイザーとタブラを介して対話をしているようにも感じられ、ライブセッションのような緊迫感が込められています。それがこのアルバムを聴いて、なんとなく読み取ることが出来た二人の「メッセージ」のようなものでした。

 

「シンセサイザー」ー「タブラ」=「人工機械」ー「手作りの楽器」、本来、この2つの楽器は相容れないはずなのに、今回、二度目となるインストアルバムにおけるお二人の演奏は、そういった、機械と人の間にある距離を無くして、本来、分離した何かを一つに融合させているように思えます。


これは、以前、レイ・ハラカミとユザーンのコラボレーションの過程において実験段階に過ぎなかった概念、謂わば、遺志のようなものを引き継いで、今回、蓮沼さんとユザーンさんが完成させたようにも思えます。


特に、レイ・ハラカミの雰囲気を感じさせるのが、「Go Around」「Dawning」です。


ここで、お二人は、日本らしい侘び寂び、間のとれた電子音楽を生み出しています。その他、「Guess Who」は、蓮沼執太のピアノ演奏の才覚が遺憾なく発揮された作品。爽やかで、明るく、華やいだ心地に導いてくれ、最初のコラボレーション作品「2 Tone」よりもはるかに奥深さをました未知の音響空間が無辺にひろがっています。


これはまさしく、「欧米のグリッチテクノ」に対する「アジアのグリッチテクノ」が誕生した記念すべき瞬間、と称せるかもしれません。少なくとも、今回、リリースされたインスト楽曲集は、多くの音楽ファンにとって、この上ない至福の瞬間をもたらす「Good News」となりそうな作品です。

 


 

 


 

 

・「Good News」のリリース情報詳細につきましては、以下、蓮沼執太公式ホームページを御覧ください。

 

http://www.shutahasunuma.com/ 

 

 

3月11日に新作アルバム「The Jacket」のリリースを間近に控えるWidowspeakが、「Everything Is Simple」「While You Wait」に続き、 シングル「The Jacket」のMVを公開しました。

 

 

Widowspeak Facebook

 

 

この新たに届いたMVを手掛けるのは、上記の作品と同じくOtium監督です。この新たなシングル作について、バンドは、再び、哲学的なコメントを出しています。

 


「ジャケットは、本来、私達が選び、ドレスアップし、そして、私たちが誰であるのかを象徴づけるものとして取り入れるものです。私達が、最終的にそれを無くすか捨てるまでは、この意味のある対象物は概念として成長し続ける。それは、曲のタイトルの意義のとおりで、時には文脈としてカルチャーの意義にまで敷衍され、バンド、ロックンロール、若者、といった象徴的な意味を持つだけでなく、クールという概念そのものを表す場合もあります。そして、ジャケットというのは、ときに自分のアイデンティティのようなものを定める象徴的なアイテムとなる場合もあるでしょう」

 

 

さらに、バンドは以下のようにジャケットという概念についてプレスリリースにおいて述べています。


「最終的には、「ジャケット」が世界一好きなものであり、自分の一部であるように感じられた瞬間から、その時代に結びついた、場所、経験、関係性のようなものにまで考えが及んでいく場合もあります。この考えを手放すことは難しい。しかし、ジャケットを着込んだとたん、あなたは以前のような人ではないと気がつく。ジャケットとそれがあらわすすべての概念は、その過程でどこかに置き去られるのです」

 

 

MVには、これまでと同様、Widowspeakのバンドメンバー、ロバート・アール・トーマス、モリー・バーチが演じています。

 

「The Jacket」のMVには、これまでの二作のシングルに続き、西部劇のようなワイルドな雰囲気が漂う。「ジャケット」という概念がモチーフとして暗示的に登場するのはこれまでと同じ。今回、ロバート・アール・トーマスは、ザ・ビートルズが「サージェント・ペパーズ」のアルバムジャケットで着ていたようなジャケットの上に、さらに現代風のジャケットを着込んでいます。


 






・Captured Tracks official





4月20日に新作2ndアルバム「our hope」のリリースを控えている羊文学が「夕凪」のMVを公開致しました。

 

 


 

 

この楽曲は、2月25日公開の映画「この日々が凪いだら」のために書き下ろされた主題歌となります。ミュージックビデオの監督を務めたのは、上記の映画撮影を担当している常間地裕さんです。

 

羊文学の塩塚モエカは、この楽曲の公開にあたって、以下のようなコメントを出しています。

 

「夕凪は不思議な曲です。監督から届いた脚本を夕方のベッドにもぐって読みました。読み終えて、ギターを手に取ると、イントロのフレーズが浮かびどこか夢見心地のまま一息にかきあげました。何かがとても揺らいでいた平成と令和の狭間で起きた日々の記憶の延長線上にある若者たちの話。この映画と過ごした2019年の透き通る夏のことを、今も時々思い出します」

 


今回、MV「この日々が凪いだら」の監督を務めた常間地裕さんは、この作品について、「この歌は、自分にとって宝物のような楽曲です。こうしてMVを素敵な方々と作り届けられることが、幸せです。優しくも力強いこの歌が、どうかあなたに寄り添いますようにーー。」とコメントを出しています。

 

 

 

 

Yusuf/Cat Stevens

 

キャット・スティーヴンスはイギリスのミュージシャンである、現在はユスフ・イスラムを名乗っている。

 

キャット・スティーヴンスは1960年後半以来、世界中で6000万枚以上のアルバムセールスを誇る。アルバム「父と子」「ティーザーアンドファイヤーキャット」はアメリカ合衆国内だけでぞれぞれ300万枚以上のセールスを記録し、全米レコード協会によてトリプルプラチナムの認定を受けている。


続く、「キャッチ・ブル・アット・フォー」はアメリカ国内だけで、発売後の2週間で50万枚を売り上げ、ビルボードのアルバムチャートのトップの座を3週間に渡って守り続けた。楽曲「ザ・ファースト・カット・イズ・ザ・ディーベスト」がロッド・スチュワートをはじめ四人のアーティストのカバー楽曲がそれぞれ大ヒットしたことにより、彼の作品は2つのASCAPソングライティングアワードの表彰を受けた。

 

フォークアーティストとして栄光の頂点にあった1977年に、キャット・スティーヴンスはムスリムに改宗する。その翌年にはみずからの名をユスフ・イスラムに改めた。この時代からキャット・スティーヴンスは、ムスリム共同体の教育問題、慈善活動に身を捧げるために音楽業界から距離をとるようになった。しかし、2006年になって突如、ポピュラー・ミュージックシーンに電撃復帰し、「アン・アザー・カップ」と題されたアルバムをリリースしている。

 

これまで、キャット・スティーヴンスは慈善活動家としての功績が讃えられ、2004年には「マン・フォー・ピース・アワード」 、2007年にはメディタレニアン・プライズ・フォー・ピース」など世界平和を訴える活動により、これまでいくつかの賞を受賞している。

 

 




「Harold And Maude」 Island Records





Harold and Maude -Hq- [12 inch Analog]

 

 

Scoring

 

 

 

Tracklisting

 

1.Don't Be Shy

2.Dialogue 1(I Go To Funerals)

3.On The Road To Find Out-Remasterd 2020

4.I Wish,I Wish-Remasterd 2020

5.Tchaikovsky's Concerto No.1 in B

6.Dialogue 2(How Many Suicides)

7.Marching Band/Dialogue 3(Harold Meet Maude)

8.Miles From Nowhere-Remasterd 2020

9.Tea For The Tillerman-Remasterd 2020

10.I Think I See The Light-Remasterd 2020

11.Dialogue 4(Sunflower)

12.Where Do The Children Play?-Edit

13.If You Want Sing Out,Sing Out-Ruth Gordon & Bud Cort Vocal Version

14.Strauss' Blue Danube

15.Dialogue 5(Somersaults)

16.If You Sing Out,Sing Out

17.Dialogue 6(Harold Loves Maude)

18.Trouble-Remasterd 2020

19.If You Sing Out,Sing Out-Ending

 

 

 

「ハロルドとモード 少年は虹を渡る」は、ヘヴィーな映画マニアの方なら御存知の作品だろうと思われる。今から五十年前に公開されたカルト的な人気を誇るブラックコメディー映画で、コリン・ビギンズの原作を映画化したものである。

 

この作品「Harold And Maude」の大まかなストーリーは、自殺願望を持つ19歳の少年が他人の葬式に出ることを趣味とするようになったが、そこで、モードなる老年の破天荒な婦人と出会い、将来に明るい希望を見出すという筋書きである。


このモードという老婦人は、他人のクルマを盗んで乗り回したり、大きな木を勝手に伐採し、それを他の森に植え付けたりと破天荒な性質を持っている。その破天荒さに惹かれたハロルドは、この老婦人との関わりを通して、人生というものの醍醐味を学んでいく。正直、この作品だけでなく、スティーヴンスという音楽家について、私は長らく知らなかったわけで、もしかすると、本筋にそぐわない部分もあるかもしれないとあらかじめお断りしておきたい。


そもそもこの作品のサウンドトラックが2007年までリリースされなかったことについては、映画配給会社、レコード会社の意向に添ったものではなく、このサウンドトラックを担当したフォークシンガー、キャット・スティーヴンスの意向によるものだった。彼はまだこの映画音楽を担当した1970年代、自分がまだ駆け出しのミュージシャンであることを自覚していたため、このサウンドトラックがグレイテスト・ヒッツ、ベスト・アルバムとみなされるのを避けるため、かなりの間、このサウンドトラックをお蔵入りさせ、2007年まで音源としてリリースすることを躊躇していたという。

 

2000年代までのキャット・スティーヴンスの人生には様々な出来事があったと思われる。それは、ムスリムへの改宗、そして、慈善活動への転向。しかし、2006年に再び音楽業界に戻ってきたことが、2007年になって、この幻のサウンドトラック作品の公開へ踏み切らせたという経緯もあったかもしれない。それはともかくとして、この作品を聴いて、なんとなく感じるのは、懐かしい映画音楽への淡い慕情にくわえ、ユスフ・イスラムの音楽の才覚の鋭さなのである。

 

このサウンドトラックは、映画音楽として、非の打ち所の無い音源のように思える。音楽、あるいは、ダイアログ、劇中曲という3つの側面を通して映画音楽が物語を形作っている。これは書いてみると、結構、単純な要素と思えるかも知れないが、この約束事が守れている作品というのは意外にも少ないのである。

 

今回、およそ十五年ぶりに再編集された「Harold And Maude」の映画サウンドトラックは、キャット・スティーヴンスの手掛けた楽曲「If You Want Sing Out」を中心に構成されている。他にも、「Don’t  Be Shy」「Tea For The Tillerman」をはじめ、キャット・スティーヴンスの爽やかなフォークの名曲群が収録されているが、これは、ジョージ・ハリスンの全盛期の領域に近い神々しい光を放っているようにも思える。さらに、曲間に挿入される映画のダイアログも鳥肌が立ちそうな雰囲気が漂い、古い映画しか醸し出すことができない、独特な陶然としたアトモスフェールに満ちている。(これは映画ファンであれば、うなずいてもらえるだろうと思われる)

 

さらに、チャイコフスキーのピアノ協奏曲、あるいは、ヨハン・ストラウスの「スケーターズ・ワルツ」といった劇中曲として挿入される楽曲が、この映画音楽の年代感、ヴィンテージ感を引き立てている。

 

そして、本作の最大の魅力はなんといっても、アカデミー助演女優賞を二度受賞している、今は亡き女優ルース・ゴードンの生の歌声が記録されていること。もちろん、ルース・ゴードンの歌はお世辞にも上手いといえない。しかし、それさえも”演じている”のだとしたら・・・。そして、彼女の歌声はなぜかしれないが、私達に大きな勇気を与えてくれる。本来、私達の人生は、無限の希望と冒険に満ちあふれているという事を、名女優の歌声は教え諭してくれるのである。

 

この音源「Harold And Maurd」が、今回、新たにリリースされたことについては、アメリカのフォークファンだけでなく、映画マニアの表情をニヤリとさせるものがあるはずだ。この作品は、今回、よりサウンドトラックとしての純度を高めるため、サンフランシスコで、ユスフ・イスラムは新しく二曲のレコーディングを行っており、当時の作品の雰囲気を損ねないように、意図的に荒削りなリミックスがほどこされている。

 

キャット・スティーヴンスは、今回の作品の出来栄えについてこの上なく満足していると語る。それは長きにわたり活動を続けた音楽家としての矜持にあふれた本懐ともいえ、今回、若き日に感じた「グレイテスト・ヒッツ」という概念を超越することが出来たと実感したからにほかならないのだろう。

 

今回、マスタリングしなおされたキャット・スティーヴンスの1970年代の名曲群は、いくつかの語りとアナログノイズと絶妙な融合を果たし、モノクロ映画のような甘美で陶然とした魅力を放ってやまない。さらに、新たに書き下ろされた2つの新曲が音楽としての物語を緻密に形成し、重層的な構成をなしている。サウンドトラックは本来、映画の内容を「音」を介して物語らねばならない。繰り返しになるが、今作品ほぼ非の打ち所がない完璧な傑作と言える。

 

 

・Apple Music Link

 

 

 

 

ミネアポリスのインディーシーンの伝説的なロックバンド、Husker Duのボーカリストとして知られるボブ・モールドがソロライブ音源「The Ocean」のリリースを2月15日に発表しました。




 

「The Ocean」はSuperchunkのマック・マコーンの主宰するレーベル「Merge Record」からリリースされています。この作品は三曲のモールドのソロアコースティックライブの模様を収録。現在、DSPとストリーミングサービスを通じて配信されています。

 

 

この度、Merge Recrodからリリースされた「The Ocean」は、NPR’s World Cafeという企画のために、サンフランシスコにあるMould's Granary Music home studioでのライブパフォーマンスを音源としてまとめたものです。2020年にリリースされ好評を博したスタジオアルバム「Blue Hearts」収録の「The Ocean」「Forecast Of Rain」の二曲が、ライブバージョンとして新たに収められています。アコースティックギターでなく、エレクトリックのボブモールドの弾き語りのライブの模様が収録されています。


ボブ・モールドはこの新たなソロライブ音源のコンセプト、作品の世界観について以下のように語っています。

 

 

「私にとって、特別な場所の一つは、サンフランシスコのオーシャン・ビーチです。過去の12年間、私は、早朝に海岸線を歩いて過ごしました。私が散歩をする夜明けには、漁師、犬とジョギングする人、サーファーなど、海岸線に人の気配はまったくありません。潮の満ち引きに応じて、ビーチの外観は異なります。反射ガラスの砂のシート、ユキチドリ、他の鳥のための絶え間なく変化する遊び場、海岸へと打ち上げられた海の物質。

 

塩、砂、風、水の混合物の最中をあるいていくとき、私は、はっきりと感じるのです。足元の海岸、目に見えるかぎりの波、きらめく夜空が次第しだいに色とりどりの朝の光に変わっていきます。そして、波の絶え間ない喧騒は、私の耳鳴りとなり、不思議な感覚をもたらします。それは、落ち着きのある、落ち着いた、そう、きわめて落ち着いた感じであり、私の精神が休まる場所でもあるのです。そして常に引き波が見えます。これらの情景と接した際に、私の思いは深い海の底へとつながっていくのです。

 

 

 

 

 

 

「The Ocean」 Merge Records

 

 


 


Tracklisting

 

1.The Ocean -World Cafe Session

2.Forecast Rain -World Cafe Session

3.Divide and Conquer -World Cafe Session

 

 

 

・「The Ocean」のリリース情報につきましては、オフィシャルリンクをご参照下さい。

 

https://lnk.to/The-Ocean 

 

 


 

昨日、2月15日に、三年ぶりの開催となるクリエイティブマンの運営する日本最大規模のロックフェス「SUMMER SONIC 2022」の開催日程、及び、出演アーティストの第一弾が発表されました!!


今回は冗談抜きに出演アーティストが豪華です。まだ第一弾のみの発表ですが、とくに注目すべきは、The Libertines、St.Vincent、KASABIAN、イギリス、アメリカの豪華なビックアーティストの来日です。

 

さらに、日本のロックシーンの雄、ONE OK ROCKの出演も見逃すことも出来ません。また、メロディックパンク勢も豪華です。2000年代のオレンジカウンティパンクの体現者、ザ・オフスプリング、LA気鋭のティーンネイジャー・パンクバンド、The Linda Lindasの来日が予定されています。

 

 

 

今年のサマーソニック2022は、8月21日(土)、22日(日)の二日間にわたって、千葉と大阪の二会場で開催される予定です。

 

今回、三年ぶりのサマーソニック開催について、運営会社クリエイティブマン代表の清水直樹氏は、以下のような声明を特設サイトを通じて出しています。三年ぶりの開催ですので、プロモーターとしてただならぬ情熱と誠意を込めて、このサマーソニックの開催を企画なさっているはずです。

 

 

2019年の夏、サマーソニックは、B’z、RED HOT CHILIPEPPERS、THE CHAINSMOKERSというヘッドライナーを迎えて、およそ30万人が熱狂する中で一旦幕を閉じました。そして様々な苦難を乗り越えて開催にいたった昨年のスーパーソニックから、今復活のバトンが手渡されて3年ぶりに戻ってきます。

第一弾発表にして世界的に見てもハイレベルのアーティスト達が出揃いました。全米を制して今やジャンルレスの象徴、自らのフェス をも持つPOST MALONE。新時代の先頭を走り最も重要なバンドとなったイギリスの至宝THE 1975。東京は2013年以来の出演、世界を活動のベースにするスタジアム級バンドのONE OK ROCK。イタリアから全世界中を熱狂させてTHE ROLLONG STONESのツアーにも招かれ、今一番観たいロックバンドのMÅNESKIN。世界のラップクイーンにして大の日本アニメ好きMEGAN THEE STALLIONなどなど。今後も日本やアジアから追加アーティストが続々と発表されていきます。

海外の音楽関係者には、いつまで日本は鎖国しているんだと言われることもあります。日本から海外に進出したアーティストは隔離もなく自由にツアーしているのにも関わらず、そのような状況下でもこれだけのアーティスト達が日本を愛し続けてくれて世界中から千葉と大阪に集結してくれるのは、今まで半世紀以上に及ぶ招聘プロモーターが作ってくれた強いパイプとファンの愛があるからこそでしょう。

この先8月の開催までにどのようなレギュレーションになっていくかお伝えします。私達が目指すのは完全復活です。世界のフェスはもうそこに近づいていてコーチェラを始めどんどん前に進んでいます。失われた時間は戻って来ませんが、この夏その埋め合わせをするチャンスを下さい。もう萎縮していないでサマソニを体感することで日本が世界と繋がっていることを一緒に実感しませんか。もう一度あの夢のような素晴らしいフェスでの日々を取り戻しましょう。夢がなければそれを叶えることも出来ないのです。

                                                        クリエイティブマン代表 清水直樹

 

去年は、日本国内の幾つかの大規模フェス、サマーソニックをはじめ、ロッキング・オン・ジャパンフェスティバルが相次いで中止となり、音楽ファンにとっては悔しい一年になっただろうと思います。今年こそ、素晴らしい音楽フェスが日本国内で開催されるように心から願っています。

 

 

サマーソニック2022のチケットの先行販売は、2月18日(金)から開始されます。追加の公演情報も続々と掲載されていくようですので、是非、以下の特設公式ホームページを御覧下さい!!

 

 

・Summer Sonic 2022 公式ホームページ 


 https://www.summersonic.com/