偉大なるアメリカのフォークシンガー、そして、2016年度のノーベル文学賞受賞者としても知られるボブ・ディランは、およそ20年ぶりの新刊「The Philosophy of MODERN SONG」を刊行した。この書籍は、エルヴィス・コステロ、ニーナ・シモン、ハンク・ウィリアムズらの楽曲の解析がディランによって行われている。 

 

Bob Dylan - Azkena Rock Festival 2010 2.jpg
CC 表示 2.0, リンクによる

 

ノーベル文学賞を受賞してから6年、ボブ・ディランは、2022年11月8日に、サイモン&シュスター社から出版される予定の二十年ぶりの新刊「The Philosophy of Modern Song」を発表した。

 

ディランは、2010年に60を超えるエッセイコレクションの執筆に取り組みはじめた。プレスリリースのおいては、「作詞作曲の芸術とその工程に関するマスタークラス」との説明が行われている。この本では、ディランがスティーヴ・フォスター、エルヴィス・コステロ、ニーナ・シモンらのアーティストの楽曲を解析している。さらに、アメリカの伝説的なカントリーシンガー、ハンク・ウィリアムズの楽曲分析においては、「”Trap of Easy Rythmes"と呼ばれるウィリアムズ独自の作曲の技法、音節の追加のリズムや半音下げの手法について分析し、ブルーグラスが、以後のヘヴィ・メタルと、どのように関連しているのかについて説明がなされている。


「The Philosophy of MODERN SONG」には、ボブ・ディランによりキュレーションされた150枚の写真、"dream-like riffs"も含まれる。また、この書籍は、ディランが一部の文章を読み、残りを他の声のミックスでナレーションする、オーディオブック形式としても利用出来るようなので、英語力に自信のある方、あるいは洋書に抵抗のない知的な方に是非お勧めしておきたい。


 

 

本書を刊行したサイモン&シュスターの社長兼最高経営責任者、ジョナサン・カープ氏は次のように述べている。  

 

「”The Philosophy of Modern Song」は、ボブ・ディラン以外には執筆しえなかったであろう書籍です。

 

彼の声は独特であり、彼の作品には、歌、それらの歌を生き生きとさせる人々、そして、歌がすべての人にとって何を意味するのかについての彼の深い感謝が伝えられているのです」

 

ボブ・ディランは2000年以降、ミュージシャンとしてではなく、執筆家としての活動を行ってきた。

 

2004年に回想録・クロニクルを刊行している。以後、彼は歌詞に関する書籍を複数出版している。ミュージシャンとしては、2020年の「Rough and Rowdy Ways」がオリジナル・アルバムの最新作となる。

 

また、今年の1月に、ユニバーサル・ミュージックとの作詞作曲カタログ全体の契約を結んだ後、レコードカタログの権利をソニー・ミュージックに2億ドルで売却している。


現在、ボブ・ディランは、長期的なライブツアーを敢行中。「Never Ending Tour」は、2024年まで続く見込み。80歳にして未だ衰えぬ偉大なミュージシャンの豊かなクリエイティヴィティに喝采を送りたい。


ロンドンを拠点に活動する詩人、劇作家、スポークンワードのパフォーマー、ケイト・テンペストが、同じく、英国で活動するシンガー・ソングライター、リラン・ラ・ハヴァスとのコラボレーションシングル「No Prize」を3月7日に発表しました。この曲は、4月8日にリリース予定の新作アルバム「The Line Is A Curve」からの先行シングルとなり、ラップ、R&B、ポップスを巧みに融合させています。 

 

 

Kate Tempest - Haldern Pop Festival 2017-6.jpg CC BY-SA 4.0, Link

 

4月8日にリリースされる「The Line Is A Curve」は、テキサスのヒップホップボーイズバンド”Brockhampthon”に在籍していたKevin Abstractからの素材提供を含む、いくつかのコラボレーションが行われた。


昨日公開された先行シングル「No Prize」は、ケイト・テンペストの輝かしいスポークンワード、英国のマーキュリー賞にノミネート経験のある女性シンガー、リラン・ラ・ハヴァスの声が見事にマッチした楽曲です。

 

ケイト・テンペストは、プレスリリースにおいて、この新曲「NO Prize」について以下のように述べています。


「私の親友であり、驚くべき才能を持つアーティスト、リラン・ラ・ハヴァスと今回、楽曲を制作しました。世界、そして、今回のレコーディングでの彼女のすばらしい歌声に感謝をしています」

 

 

 

ナイジェリア出身の英国人歌手、イーノ・ウィリアムズ率いるフューチャー・アフロバンド、Ibibio Sound Machineは、まもなく到着する新作スタジオアルバム「Electricity」からの先行シングル「17 18 19」を公開した。

 



「これは、私達のスタジオジャムから生まれた伝統的なスタイルのIbibio Sound Machine の楽曲です」とバンドはプレスリリースで述べている。

 

「イーノ・ウィリアムズのボーカルは、楽器の遊び心満載のサウンドと完璧に調和しているように見えるナイジェリアの遊び場の聖歌に基づいている。歌詞はその日の特定の世界の出来事を参照し、人々の口から出てくる一見無意味に思える言葉を修辞的に疑問視しています。ドラムトラックを作り直し、Tom Tom Clubの影響を元にし、ポスト・パンク/ニューウェイヴ路線を突き進めています」


新作「Electricity」は、スーパー・チャンクのマック・マコーンの主宰するMerge Recordsを通じて3月25日にリリース予定。この新譜には、既に先行シングルとして公開されている「All That You Want」「Protection From Evil」「Electricity」今回の新曲「17 18 19」が収録される。

 

Ibibio Sound Macineは、西アフリカ音楽、ディスコ、ポスト・パンク、エレクトロを融合した革新性の高い作品をリリースしている。今月下旬の新作「Electricity」がどのような作品になるのか、お楽しみに!!


 

 

 

 ・MERGE RECORDS Official 


https://www.mergerecords.com/news/5619

 

 

・Apple Music Link 


「The Island :Music For The Piano part .1」Mary Elizabeth Sutton


クランキーレコードからのデビュー作となった2018年の「The Deep End」で、サロリは、アナログシンセを用いた環境音楽や電子音楽の領域にある作風を提示しています。彼女はこの一作目について、サティとサウナにインスピレーションを受けたと述べています。

 

今回、自主制作盤としてリリースされた二作目の「The Island Piano:Music For The Piano part .1」でサロリは、シンセサイザーではなくピアノを用いた印象派に近い楽曲に挑んでいます。

 

アルバムに収録されている作品は、一作目とは打ってかわって、ポスト・クラシカルの王道をいくような楽曲がずらりと並んでいます。サロリの演奏は、一貫して瞑想的であり、静けさに満ちています。そして、そこに、小瀬村晶やGoldmundを彷彿とさせるような抒情性な内向性が加味されています。さらに、近代フランスのサロン音楽に対する憧憬も伺えます。表向きには、技巧的な演奏から距離を取っているものの、時折、ドビュッシーのような低音の組み立て方をするので侮れないものがあります。楽曲の中に、主旋律に対比してセンスよく組み入れられる低音が楽曲の節々にドラマティックかつダイナミックな効果をもたらしています。

 

ピアノの演奏自体はミニマルフレーズが多く、繰り返しが多いですが、その中にも旋律自体の運行がこのアーティストらしいダイナミックス、そして意図的に崩された色彩感のある和音構造が、リラクゼーション効果を発揮し、それらの反復性が嫌にならないどころか、聴いていて心地良さを与えてくれます。

 

「The Island Piano:Music For The Piano part .1」は、コンセプト・アルバムのような意図を持って作られた作品かと思われますが、楽曲のわかりやすさに加えて、サティやドビュッシーといったフランスの近代の印象派に近い性格をもったピアノ曲が数多く収録。全体的な作品として聞きやすく、クラシックにそれほど詳しくない方でも充分楽しんでいただけだろうと思います。喧騒や刺激といった性質から距離をおいた、聞き手に何かを深く考え込ませるような音楽です。


1.Bells

2.Mirror

3.The Island

4.Shadow

5.Promenade

6.A Good Rainy Day

7.Mediation

8.Winter


bandcamp: https://saloli.bandcamp.com/album/the-island-music-for-piano-vol-i


Saloli

サロリは、オレゴン州ポートランドを拠点に活動するメアリー・サットンのソロプロジェクト。 


サロリは、アナログシンセサイザー、ピアノを演奏し、電子音楽、実験音楽やアンビエントといった幅広い音楽を生み出している。

 

サロリは、オーバーダビングやポストプロダクションといったレコーディングの技術を用いずに、アナログ・シンセサイザーを使用した自然な音色の楽曲を書き、またライブでもシンセサイザーの演奏をするのが特徴である。

 

その音楽は、とくに、アナログシンセサイザーを使用していながら、どことなく温かみに溢れており、さらに人間味を感じさせる。

 

これまでに、サロリは、アメリカ、シカゴのクランキー・レコードから、2018年に「The Deep End」をリリースしている。デビュー作は、アナログシンセを用いた実験音楽。日本の環境音楽の先駆者のひとり、吉村弘に近い癒やしの質感をもった作風でデビューしている。

 フィラデルフィアを拠点に活動するカート・ヴァイルは4月15日にリリース予定の次のアルバム「Watch Me My Moves」からの先行シングル「Hey Like A Child」を3月4日に公開しました。 

 

 

 

 「Watch Me My Moves」は、カート・ヴァイルの2018年にMatadorから発表された「Bottle It In」以来の新作アルバムとなり、Verve Recordsとの契約に署名してのリリースです。

 

これまで、ソロギタリストとしての活動を中心に活躍して来たカート・ヴァイルは、シンガーソングライターとしての才覚を発揮した作品をリリースしていますので、次の4月15日に発売されるアルバム「Watch Me My Moves」はインディーロックファンとしては楽しみな作品となりそうです。

 

また、カート・ヴァイルは、2月15日に先行シングル「Like Exploding Stone」を発表しています。今回のシングル「Hey Like a Child」は、前作に続いて二番目のリリース作品となります。

 

カート・ヴァイルは4月15日に新作アルバムのリリースを終えた後、下旬からアメリカでのツアーを控え、また、秋にはヨーロッパツアーを開催する予定。

 



Netflix、Tik Tokは、ロシア政府がウクライナ戦争についての言論を封じる意向を示したため、今週日曜日(3月6日)にロシア国内でのサービスの多くを停止すると発表した。

 

Netflix 本社



今回、TikTokが新たに講じた対策により、当該ソーシャルメディアアプリのロシア国内のユーザーは、動画やライブストリームを投稿出来なくなり、世界の他の場所から共有された動画を鑑賞することができなくなった。


Netflixもこの流れに追従し、ロシアでのサービスを停止している。同社は「現状を考慮し、私達はロシアでのサービスを停止することを決定した」とコメントしているが、その詳細については明らかになっていない。Netflixは以前、ロシアのプロジェクトと買収の保留を発表し、ロシアの法律下でホストする必要がある20のロシアのプロパガンダチャンネルの運用を拒否している。

 

欧米の経済制裁をはじめ、ウクライナ侵攻に対する包囲網が敷かれつつある。多くの企業がロシアを金融サービスないし技術製品における圧力をかけているが、今回の出来事を受けて、さらに、ロシア国家とその国民を孤立化させる可能性が高まってきている。


ロシアのウラジミール・プーチン大統領は、先週の金曜日(3月4日)に、クレムリンの意向に沿わない、メディア、個人、戦争のおける言論にたいする規制を強化するべく、facebookとTwitterをブロックし、フェイク情報の拡散を取り締まる法案にサインしている。

 

今回、ロシアのフェイクニュース法案の提出の事実を受け、TikTokは上記のような対策を講じた。

 

「この法律の安全性についての議論が行われている間、ビデオサービスのライブストリーミング、新たなコンテンツを一時的に停止する」とTikTokは、Twitterの声明において述べている。さらに、同社は「当社のアプリ内のメッセージングのサービスは今回の決定における影響は受けない」と付け加えている。

日本こポスト・ロックシーンの重鎮、MONOは、新たに三曲入りのEPをデジタル盤として3月4日にリリースしました。もともとは2曲入りのシングル「Scarlet Holiday」、「First Winter」として、昨年のクリスマス・イブにサプライズリリースが行われましたが、この作品については「Epilogue」の取り上げた拡張バージョンとしてBandcampで限定的に配信されていた作品でした。

 

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CC 表示-継承 4.0, リンクによる

 

トンネルの終わりにほの見えるソニックライト、そして、すべての人達に向けられたエピローグ、あなたがそれをなんと呼ぼうとも、EP「Scaret Holiday」はすべてのひとにとっての巡礼の旅を意味します。内向的に踏みにじられた人たちのサウンドトラック、それはまた厳粛な独白を意味する。これらの曲は規定の順序で再生する必要があり、気を散じさせるものがあってはならない、これらの音楽があなたの頭、心にスッと浸透していく間、この音楽で部屋中を満たすべきです。それこそがこの素晴らしい音楽を心に留めるための最良の方法になりえるでしょう。

 

MONOはCOVID-19が2020年に世界を席巻した後、メンバーは、落胆した多くの人々のためのクリスマスの特別な贈り物をすることを強いられたとかんじました。クリスマスイブに「Epilogue」の拡張バージョンがリリースされた際のメッセージは、とてもシンプルなものでした。

 

「新たな年を迎えるにあたって、皆様が、健康、幸せ、元気になるように心から願っています」

 

元々、このシングルは、彼らの自宅で録音がおこなわれました。昨年末、Bandcamp上で発表されたデジタルリリースは、「Scarlet Holiday」「First Winter」という2曲で構成されていました。

 

今回、改めて三曲収録のシングルとして発表された「Scarlet Holiday」は、バンドの長年のコラボレーターであるスティーブ・アルビニによって録音、トータスのジョン・マッケンタイアによってリミックス、シェラックのボブ・ウェストンによってマスタリングがおこなわれた作品であり、3月4日からデジタル配信を通じてリリース。フィジカル版は夏頃発売の予定です。

 

今回のリリースについて、MONOは、「暗闇に光をあてるべく、揺るぎない決意のもと制作をおこなった」と話しています。




「Scarlet Holiday」EP  Temporary Residence

 



 

Tracklisting


1.Scarlet Holiday

2.First Winter

3.Epilogue

 

 

 


・Mono Officail HP

 

https://www.monoofjapan.com/