1. Eli Kezler「The Vaulting Sky」


ニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動する実験音楽家・パーカッション奏者のイーライ・ケスラー。

 

3月リリースされた新作シングル「The Vaulting Sky」は、これまでのケスラーの音楽性と同様、実験音楽として未知の領域に踏み入れており、アンビエント音楽をパーカッションの視点から解釈しているように思えます。前作のアルバム「Icons」で見せた涼し気な打楽器的なアプローチと、都会的なアンビエンスが絶妙に組み合わされた独特な音楽がここに生み出されました。


 

 

 

2.Patric Shiroishi 「 442」


モダンジャズ、またアヴァンギャルドジャズのアルトサックス奏者として、LAを拠点に活動するパトリック・シロイシ。

 

今月にリリースされた「442」は、二つの異なる解釈を交えた実験音楽です。現代音楽とモダンジャズの要素を融合した独特の作風が生み出されています。アルトサックスの芳醇で落ち着いた音色が魅力の作品です。一曲目はアバンギャルドジャズ、現代音楽として、二曲目はノイズアバンギャルドの領域に踏み入れた実験性の高い作風です。 

 

 

 

 

3.Maia Friedman 「Sunny Room」


メイヤ・フリードマンは、NY・ブルックリンを拠点に活動するマルチインストゥルメンタリスト/シンガーソングライター。ダーティー・プロジェクターズとしても、2018年から活動している。

 

メイヤ・フリードマンは、先日、アルバム「Under The New Light」を発表していますが、この作品を紹介しそびれたので、今回、アルバムの六曲目に収録の「Sunny Room」を取り上げておきます。

 

メイヤ・フリードマンの紡ぐ音楽は自然味にあふれ、余分な力が抜けており、あるがままで心やすさが込められています。メイヤ・フリードマンは、ソングライターとして秀でた才覚に恵まれており、インディーポップ/フォーク音楽を介して独特な物語性を作品中に込めています。しかし、現在、それほど注目を受けていないので、これからの活躍が非常に楽しみなシンガーソングライターです。

 

女性シンガーソングライターの爽やかで清涼感のある作品をお探しの方はぜひこのシングル「Sunny Room」、そして、アルバム「Under The New Light」をおすすめしておきます。 

 

 

 

 

4.Aldous   Harding 「Fever」

 

オルダス・ハーディングは、ニュージーランドを拠点に活動するシンガーソングライターです。ユミ・ゾウマを始め、ニュージーランドには魅力的な音楽を奏でるアーティストが数多く活躍しています。

 

そして、オルダス・ハーディングもまたニュージーランドシーンの注目すべきシンガーソングライターに挙げられます。

 

この先行シングル作品「Fever」で、人を選ばず、多くの方に楽しんでいただける内容。往年のバブルガム・ポップの近いアプローチが採られ、1960-70年近辺の懐かしいポピュラー・ミュージックの方向性が図られ、跳ねるようなリズムを持った音楽が提示されています。また、オルダス・ハーディングは、先週、注目作のアルバム「Warm Chris」をリリースしていますので、こちらの方もおすすめです。全体的なサウンドの印象としましては、とっつきやすい雰囲気のあるバブルガム・ポップで、往年のビートルズファンには何か琴線に触れるものがあるかもしれません。



 

5.Sven Wunder 「Mosaic」


「スウェーデンの謎多き鬼才」と称される音楽家のスヴェン・ワンダーは、今回、3月にリリースされた「Mosaic」において西洋音楽のアプローチとは一定の距離を置き、イスラム圏、あるいはインドや日本の雰囲気を感じさせる異国情緒漂う作風を確立。

 

スヴェン・ワンダーは、今作において、民族楽器とオーケストレーションの融合を図り、リムスキー・コルサコフの「シェエザラード」のアラビアンナイトのようなロマンチシズム、或いは、西洋社会から見た東洋のエキゾチズムを音楽を介し表現しています。ジャズとも、クラシックとも、ポップスとも、また、映画音楽ともつかない、ミステリアスな雰囲気を持つ注目のシングル作です。 

 

 

 

 

6.Eydis Evensen 「The Light Ⅰ」

 

 

アイディス・イーヴェンセンは、一度注目のアーティストとして取り上げていますが、アイスランドのポスト・クラシカルシーンの中でも期待のアーティストです。

 

今回、リリースされた「The Light Ⅰ」では、これまでと同様、アイディス・イーヴェンセンはレイキャビクのオーラブル・アルナルズにように、古典音楽のロマン派に近い叙情的なピアノ曲に取り組んでいます。

 

このシングル曲では、イーヴェンセンの元モデルとしてのセンスの良さが滲み、そこに物語性あふれる起伏にとんだピアノ曲が生み出されています。アイスランドのレイキャビクの四季折々の厳しさと麗しさの両側面を持つ北欧の風景を思い浮かばせるかのようで、明るさと暗さの両極端な叙情性が、イーヴェンセンの繊細な演奏タッチによって見事に描き出された楽曲です。

 



 

7.Lullatone 「Shapes In Time」


ララトーンは、名古屋を拠点に活動中のショーン・ジェームス・シーモア、その妻の富田叔美による電子音楽ユニットです。これまで、ささやかではありながら、素晴らしい活動を続けています。

 

エレクトロニック(電子音楽)とフォーク音楽を絶妙にかけ合わせた落ちついてリラックスできる作品を数多く残しているララトーンは、今回も心やさしいサウンドのコンセプトについてはなんら変わることはありません。たとえるなら、春の海辺で、穏やかな波風に揺られるような温もり、心地よさ。昔の日本の民謡を耳にするようなノスタルジーに溢れるとても素敵な一曲です。

 

マックス・リヒターは、西ドイツ生まれの作曲家であり、エディンバラ大学とロイヤル・アカデミー・オブ・ミュージックで作曲を学んでいます。その後、映画音楽を中心にポスト・クラシカルのコンポーザーとして活躍して来ました。ソロ作としては「Bluenotebook」を始めとする傑作を持ち、昨年には、Apple TVの「Invasion」のオリジナルスコアを手掛けていることでも知られています。

 

マックス・リヒターは、2014年、ヴィヴァルディの「四季」を再作曲した「New Four Seasons」を発表しています。今回、この作曲家の記念碑的なアルバムの発表から約10年を経て、マックス・リヒターは、再びヴィヴァルディの四季のサウンドの世界に立ち返ろうとしています。 

 

 

Max-Richter-3.jpg CC 表示-継承 3.0, リンクによる

 

 

今年6月に発売予定である「New Four Seasons」のマックス・リヒターの手による二度目のリコンポーズ・アルバムは、ヴァイオリニストのエレナ・ウリオステの二人のミュージシャンと録音が行われています。さらに、オーケストラ楽曲集「New Four Seasons」は、リヒターがヴィヴァルディの実在した中世イタリアの時代に実際に使用された楽器のためのスコアを再作成し、そこに、新たな現代的なニュアンスを交え、新しいバージョンの楽曲が収録されます。

 

今回の新作アルバムのレコーディング作業の中で、マックス・リヒターは、ガット弦、ビンテージ・シンセサイザーを使用し、「よりグリッターで、パンクロックのような雰囲気を持つアルバム」を志向しているという。アルバムは、2022年6月10日に、ドイツ・グラモフォンからリリースされる。3月25日、リヒターは、新作アルバムの先行シングルとなる「Spring 1」を公開しています。また、6月16日の木曜日、「Recomposed」の収録曲を、英国の夏の限定ショー「Live At Chelsea」において、Chineke! Orchestraと連れ立ってお披露目をする予定です。

 

2012年夏にリリースされたリヒターのイタリア・バロック音楽の傑作を再定義した「New Four Seasons」は、22カ国でクラシック・チャートの上位を独占しました。リヒターは、かつて愛していたものの、商業的な音楽とみなされることによって本来の影響力を失ってしまったアルバムとして、この作品を取り上げ、「個人的な救済措置」と呼ばれるものに今回着手することに決めました。彼は、イタリアン・バロックの名手・ヴィヴァルディの音楽の再解釈に着手し、前回よりも新鮮でエキサイティングなものに生まれ変わらせようと試みています。全世界でベストセラーとなった「New Four Seasons」は、「Spring 1」の1億1,000万再生を含む、全体で4億5,000万以上のデジタルストリーミングでの再生記録を打ち立てています。また、この影響を受けて、リヒターの総体的なストリーミング記録は、30億以上という凄まじい数字に上っています。

 

過去10年間、再作曲を幾度も試みてきたマックス・リヒターは「ヴィヴァルディ自身の色彩を使用したテキストの新しい旅」を行うため、中世イタリアの時代の楽器に関する作品の特別演出に触発されました。「New Four Seasons」は、バロックパレットをスコアに適用、元の4つのヴァイオリン協奏曲の断片を音楽におけるプリズムで屈折させ、また、多種多様な形や色に回転させ、完全に異なるオーケストラ構成で包み込み、それらの断片を変形、破壊させるのです。

 

リヒターは、今回のリコンポーズ・アルバムにおいて、 電子楽器の使用を再検討し、今回のレコーディングで、1970年代のムーグシンセサイザーを選択しました。これは、リヒター本人曰く、「ストラディバリウスに相当する」といいます。現代のヴァイオリンの音、過去のバイオリンの相違について、マックス・リヒターは、いくらかを交え以下のように語っています。

 

「現代のシンセサイザーで出力するヴァイオリンの音色、過去のストラディヴァリウスの音の相違については、なめらかなピーナッツバターか、それとも、かりかりのピーナッツバターか、という違いに喩えられると他の誰かが言ってましたけれども、なかなか言い得て妙だと思いましたね・・・」

 

Chineke! Orchestraは、リコンポーズ・アルバムの制作において、マックス・リヒターと協力し、2018年に「ワルツとバシール」のパフォーマンスでコラボレーションを行っています。Chineke! Orchestraは、2015年、chi−chi Nwanoku OBEにより設立された楽団で、ヨーロッパで最初の黒人で構成された多様な人種を擁するオーケストラです。Chineke!は、クラシック音楽の多様性を祝福し、リヒター自身の言葉を拠れば、「アンサンブルが私達の住む世界の現実をいかに反映できるのか、今後のクラシック音楽の道を照らす規範となりえる」といいます。

 

今回行われたレコーディングについては、マックス・リヒターと彼のパートナー・ユリア・マールによって設立されたオックスフォードシャーの「Studio Complex」で行われました。今回のレコーディングに参加した作曲家と演奏家は、指揮者なしで緊密に協力しあい、イタリアバロック楽器の技法から、アントニオ・ヴィヴァルディの「四季」のスコアに含まれる彼独自の語法やストーリーテリングに至るまで、音楽のあらゆる側面について真摯な議論を交わしました。

 

マックス・リヒターの新作アルバムについて、「Chi−chi Nwanoku OBE」は以下のように説明しています。

 

「それは、以前と同じような物語のような音楽です。この作品は21世紀の世界にひねりについて描かれています」


リヒターは、彼の新たなスタジオでの最初のレコーディングに満足しており、共同作業を行った音楽家への賞賛の言葉を送っています。

 

「Chineke!は、まだ若い楽団ですから、私達は今回、未来の音楽に取り組んだように感じました。ウリオステについては・・・」と、リヒターは続けて、以下のように語っています。

 

「正直言いますと、彼女が音楽を語らせる独自の方法を見つけるのを傍から見守るのはとても素晴らしい経験でした!! そう、彼女は今回の制作において、素晴らしい働きをしてくれましたよ!!」

 

また、今回、英国のオックスフォードシャーのスタジオで行われた録音について、エレナ・ウリオステは以下のように話しています。

 

「今回の音楽制作は、私にとって有機的であり、素敵で温かいものでした。そして、私がこういったプロジェクトに望む全てが込められているように感じられました」


  

 

・Max Richiter「Spring 1」 Deusch Grammophon



 

Architecs

 

2004年にアーキテクツは、双子の兄弟、ダン・サールとトム・サールによって、イギリス・イーストサセックスのブライトンで結成された。

 

現時点のバンドのライナップは、ドラムのダン・サール、ボーカルのサム・カーター、ベースのアレックス・ディーン、ギターのアダム・クリスティアンソン、ジョシュ・ミドルトン。2013年、オフスプリング、NOFX、Bad Religionをレーベルメイトとして要するEpitaphと契約を結んでいる。



 

The Dillinger Escape Planをはじめとするポストハードコアバンドの影響を受けた最初のアーキテクツの通算3枚目のアルバム「The Here and Now」からメロディアスなポスト・ハードコアの方向性へ進んでいった。彼らは、その後、「Daybreak」で最初期のスタイルに原点回帰し、政治的な歌詞を導入しながら、楽曲におけるメロディーと演奏テクニックの均衡を図るようになった。2014年、六枚目のアルバム「Lost Forever//Lost Together」のリリース後、アーキテクツは、英国内の屈指のメタルコアバンドとして不動の人気と批評家の賞賛を獲得した。

 

7作目の「All Our Gods Have Abandoned Us」のリリース直後、バンドは不幸に見舞われた。2016年にギタリスト兼ソングライターのトム・サールが三年間皮膚がんの闘病を送った後、この世を去っている。この後、オリジナルメンバーはダン・サールのみとなった。2017年9月、トム・サールが死に見舞われる直前に取り組んでいたシングル「Doomsday」をリリースする。これは、トム・サールなしでレコーディングされたアルバム「Holy Hell」に収録されている。その後、最高傑作との呼び声高い「For Those That Wish To Exist」を2021年にリリースしている。







「For Those That Wish To Exist At Abbey Road」 Epitaph   2022





Tracklist

 

1.Do You Dream of Armageddon? ーAbbey Road Versionー

2.Black LungsーAbbey Road Versionー

3.Giving BloodーAbbey Road Versionー

4.Discourse is DeadーAbbey Road Versionー

5.Dead ButterfliesーAbbey Road Versionー

6.An Ordinary ExtinctionーAbbey Road Versionー

7.ImpermanenceーAbbey Road Versionー

8.Fight Without FeathersーAbbey Road Versionー

9.Little WonderーAbbey Road Versionー

10.AnimalsーAbbey Road Versionー

11.LibertineーAbbey Road Versionー

12.GoliathーAbbey Road Versionー

13.Demi GodーAbbey Road Versionー

14.MeteorーAbbey Road Versionー

15.Dying Is Absolutely SafeーAbbey Road Versionー




今週の一枚としてご紹介させていただくのは、UKのメタルコアバンド・アーキテクツの最新作「For Those That Wish To Exist At Abbey Road」となります。



 

この作品は、昨年リリースされたアーキテクツの最新のオリジナルアルバムのリテイクとなります。何と言っても、このアルバムの最大の魅力は、ザ・ビートルズ、ピンク・フロイド、英国内の偉大なロックバンドがレコーディングを行ってきたレコーディングスタジオ「アビー・ロード・スタジオ」で録音が行われたことに尽きるでしょう。

 

この作品には、ライブ盤のような生演奏のド迫力、ハリウッドの映画音楽のような大掛かりなスケール、そして、物語性を感じさせる話題作です。前作のスタジオ・アルバム「For Those That Wish To Exist At Abbey Road」についても同様に、UKメタルシーンの屈指の名作に挙げられる作品で、インディペンデントレーベルからのリリースだったのにも関わらず、英国内のチャートで堂々1位を獲得。彼らの現時点での最高傑作と言っても差し支えないでしょう。



 

今作のアルバムは、メタルミュージックのこれまでの歴史を振り返っても屈指の名作の一つに挙げてもおかしくはないかもしれません。それくらいの壮大なスケール、物語性を兼ね備えているように思えます。メタル・コアというパンクロック寄りのアプローチが図られていながらも、1980年代のメタルミュージックの「様式美」に対する敬意がにじみ出たような作品です。今作では、ライブ・アルバムのコンセプトが取られ、メタリカの往年の名作「S&M」に近いスタイルーーメタルバンドの演奏とオーケストラレーションの融合ーーを試み、それらを長大な交響曲として完成させようという試みが行われています。

 

この両者に違いがあるとするなら、メタリカの方は、観客を入れて視覚的なエンターテインメント性を確立したのに対して、今回のアーキテクツの試みは、純粋な音楽として未知の領域へ挑んでいます。往年のUKの名ロックバンド、ピンク・フロイドやビートルズの恩恵に浴し、このライブレコーディングにおいて、メタルとクラシックの融合をレコーディングライブとして行っています。



 

レコーディングに際して、アーキテクツは、パララックス・オーケストラの指揮者、英国作曲家賞(BASCA)を三度受けているサイモン・ドブソンに前作の編曲を依頼。今回、編み出されたアビー・ロードのライブレコーディングでは、原曲に忠実なアレンジメントが施され、さらにそこに、ハリウッド級のドラマ性、緩急、迫力が加わり、ゴシック建築のような堅固な構造を持つ楽曲が生み出され、メタリカの名作「S&M」のような緊迫感を持ったスリリングな傑作が誕生しています。

 

例えば、メタリカの「S&M」に代表されるメタルとクラシックを融合したライブレコーディングにおいて、こういった異なるジャンルの試みとして、どうしても大きな障壁となっていたのが、オーケストラの楽器とロックバンドの楽器の音域の重複でした。 ロックバンドとオーケストラの演奏を並列させてみた際には、ベースにしろ、ドラムにしろ、ギターにしろ、ストリングスと管楽器の特性であるミドルレンジの音域が重なってしまうので、ライブとして出音される楽曲の印象がぼやけてしまうという難点があります。



 

そこで、かつて、メタリカのライブステージの音楽監督を担当したマイケル・エメリックは、この問題に対して、ドラマーのラーズ・ウルリッヒと何度も話し合いを重ねた結果、最終的には、カラヤンがベルリン・フィルとチャイコフスキーの交響曲を演奏した時に近い、画期的な管弦楽法の手法を選び、弦楽器の奏者の数を単純に倍加させ、オーケストラ奏者の大編成を作ることによって、なんとかメタリカのサウンドに負けない、分厚い中音域を生み出すことに成功しました。

 

しかし、このメタリカのS&Mでの先例を知ってのことなのか、今回、サイモン・ドブソンはこれと異なる手法を選ぶことによって、前作の「For Those That Wish To Exist」自体を新たに生まれ変わらせました。ストリングスや管楽器の編成を増やすという手法ではなく、このバンドの楽曲を徹底分析し、ミドルレンジの音域が重複しないように細心の注意を払いつつ既存の楽曲に巧みなアレンジメントを施し、ギター、ベース、ドラムのフレーズの引きどころを踏まえた上で、ギターのフレーズ、ドラムのショットを利用し、4つのストリングスのトレモロ、パーカッションのオーケストラ・ベル、フレンチホルンを始めとする、迫力ある金管楽器のアレンジメントを導入することで、これらの原曲にダイナミックでドラマチックな効果を添えています。



 

前作のアルバムと同じく、アーキテクツの今回のライブ・アルバムには、The Usedに代表されるスクリーモの影響を受けた激しい火花のような印象を持つメタル・コアの楽曲、北欧メタルやパワー・メタルの美麗な叙情性の滲んだ楽曲、それらの苛烈な楽曲の合間に挿入されるクールダウンの効果を持つドラマティックなバラード、これらの三つの要素を擁する楽曲がバランス良く収録されています。今回のアビー・ロード・スタジオでのライブは、きわめて聴き応えがあり、メタルとしての熱狂性を持ち、それと対比的な思索性を兼ね備えた非の打ち所のない作品です。

 

さらに、アーキテクツのメンバーは、このレコーディングに凄まじい覇気をこめており、それがライブの音の中にありありと込められているように思えます。今回の貴重なライブレコーディングを聞くかぎりでは、やはり、英国のロックバンドにとって、Abbey Road Studioは、格別の思い入れが込められた「聖域」とも呼べる場所なのでしょう。さらに、アーキテクツのメンバーのこの伝説的なスタジオに対する深いリスペクトがこのレコーディングの瞬間に全力で投じられています。それが、作品自体に、鬼気迫るような迫力、まばゆいばかりの煌めきをもたらしています。

 



既に、多くの音楽メディア、音楽雑誌で報じられているように、アメリカのロックバンド、フー・ファイターズのドラマーとして活躍してきたテイラー・ホーキンスが50歳で死去した。バンドは、この訃報を金曜日の夜(アメリカ現地時間)に発表した。現時点では死亡原因については判明していない。



「我々、フー・ファイターズのメンバーは、私達の最愛のテイラー・ホーキンスの悲劇的で突然の喪失に非常に打ちのめされています」とバンドは声明を通じて述べている。「彼の音楽的精神、そして周囲を巻き込むようなユニークさは、私達全員と共に永遠に生き続けるでしょう」

 

「私達の心は、彼の妻、子供たち、そして、家族に向けられています。この想像を絶する困難な時期、彼らのプライバシーが最大限の敬意を持って扱われるように求めます」

 

イギリスの「Evening Standard」が報じた記事によれば、テイラー・ホーキンスは、コロンビアのボゴダにあるホテルの部屋で死去しているところを発見された。そこは、フー・ファイターズがエステレオ・ピクニック・フェスティヴァルを演奏する土地でもあった。彼の最後の公演は、3月20日の日曜にアルゼンチンで行われたサン・イシドロのロラパルーザのライブショーとなった。


テイラー・ホーキンスは、1972年にテキサス州フォートワースで生まれ、カルフォルニア州ラグナ・ビーチで育った。

 

フー・ファイターズには、サニー・デイ・リアル・エステイトのドラマーのウィリアム・ゴールドスミス脱退後に加入をはたし、このロックバンドの骨太なリズムを力強く支え続けた。1997年、フー・ファイターズに加入する以前は、アラニス・モリセットのツアーバンドでドラムを演奏していた。

 

その後、ホーキンスは、デイブ・グロールのバンドの最重要メンバーとなり、 1999年の「There is Nothing To Left Lose」から昨年の「Medicine At Midnight」にいたるまで、フー・ファイターズの10作のスタジオ・アルバムの8つのアルバムのレコーディングに参加した。テイラー・ホーキンスはこれまでのフー・ファイターズのメンバーとして11回グラミー賞の栄誉に輝いている。

 

テイラー・ホーキンスの活躍はバンドにとどまらなかった。2006年からはソロアーティストとして活動し、三枚のスタジオ・アルバムを残している。さらに、テイラー・ホーキンスは、2021年に、フィー・ファイターズのメンバーとしてロックの殿堂入りを果たしている。今年の2月、彼は、ホラー・コメディー「Studio 666」で、バンドと演奏を行ったところだった。

 

さらに、フー・ファイターズの中心人物であるデイブ・グロールは、2021年の回想録「Storyteller」において、バンドメンバーのテイラー・ホーキンスを「別の母親の兄弟、私の親友、私が看取る男」と呼んでおり、次のように感慨深く書いている。「すべての曲、私達が演奏したすべてのノート(音符)は永遠なるものです。私達は、絶対にそうなるであろうことを確信しており、この生涯において、互いの存在を見出したことに、深く深く感謝しています」と書いている。

 

 

アメリカのインディー・ロックシンガー、Soccer Mommyは、シングル「Rom Com 2004」、さらに、同シングルのリミックス版で、日本人シンガーを要するケロ・ケロ・ボニトとのコラボレートを行い、実験的なエレクトロニカとローファイの領域へ踏み入れ、画期的なアプローチを試みました。

 

今回、サッカー・マミーは、新作アルバム「Sometimes,Forever」のリリースを3月23日に発表しました。


新作アルバムは、アンビエントシーンで活躍するダニエル・ロパティン(ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー)がプロデュースを手掛け、6月24日にロマ・ビスタ経由でリリースされます。この発表に伴い、サッカー・マミーは恋愛にまつわるニューシングル「Shotgun」をリリースしました。

 

 サッカー・マミーとして知られるソフィー・アリソンは、プレスリリースにおいて以下のように述べています。

 

「ショットガンは恋に落ちる喜びがすべて。私は、それが誰かと固執する関係の小さな瞬間を捉えたかったんです」

 

「Sometimes,Forever」は、サッカーマミーの通算三作目のスタジオアルバム、2020年の「color theory」 のフォローアップとなります。今回のシングル「Shotgun」は、エフェクトがほどこされたドラム、サーフミュージックの雰囲気たっぷりのギターのフレーズが組み合わされ、アンニュイな作風に立ち返った作品。MVは、ケヴィン・ロンバルドが監督を担当しています。

 

 


 Perfume Geniusとして活動するアメリカのアートロッカー、マイケル・オールデン・ハドレアスは今夏、新作スタジオアルバム「Ugly Season」のリリースを発表しました。 

 

 


新作アルバムは、振付師のケイト・ウォリックの2019年に発表されたダンス作品「The Sun Still Burns Here」の伴奏曲として制作されたという背景があります。 この作品は、Seattle Theatre GroupとMASS MoCAから委託されて制作、ミネアポリスのレジデンシーを通じて演奏が行われました。


音楽は視覚的な媒体を対象としていたため、パフューム・ジーニアスは、ディレクターのJacolby Satterwhiteと協力、アルバムの本来のダンス中心のコンセプトを実現する短編映画を同時に制作。Satterwhiteは、以前、Solangeの「When It Get Home」の短編映画を制作したチームの一員でした。

 

「今回のプロジェクトは、私が企図するまったく新しい方向性のひとつであり、2020年以来この固有の文化の中で思案してきたものです」と、Satterwhite氏は語っています。

 

「マイクと私は、はどちらもスクリプトの概念を作品の中で書いています。私の生み出す視覚的な物語は、彼の音楽の叙情的な方向性を偶然にも反映しています。それは、珍しい、志を同じくする絆とも呼ぶべきものでしょう。また言い換えれば、創造神話とも称せるものです。理想化されたバージョンの理想郷を、どのようにアーキテクチャで生成し、さらにレンダリングを行うのか?? それは自、分たちがこれまで想定していた範疇を超え、具体的な形として取り組むのが非常に困難となるものです」 


「Ugly Seasons」は、2020年に絶賛を受けた「Set My Heart on Fire Immediately」以来の通算六枚目のフルレングスのアルバムとなります。

 

現在、パフューム・ジーニアスは、「Set My Heart on Fire Immediately」の宣伝を兼ねたツアーに出ている最中、次作アルバムについては、間隔を置かず制作が行われる予定です。


先行シングル「Pop Song」のミュージックビデオは、以下で御覧いただけます。新作アルバム「Ugly Season」は、2022年6月17日に、Matadorからリリース予定です。

 

Mia Mala McDonald
 

オーストラリア出身のシンガーソングライター、コットニー・バーネットは、昨年、自身の最高傑作と呼ぶべきスタジオアルバム「Things Take Time,Take Time」を発表したことはまだ記憶に新しい。

 

2019年、コットニー・バーネットは、ベルギーのコルトレイクで開催されるミュージックフェスティバル「Sonic City」の二日間のライナップをキュレーションを行いました。


また、その一年後、パンデミックが発生する直前、アメリカのニューポート・フォーク・ファンデーションにおいて、特別のバレンタインデーショーの音楽監督とキュレーターを務めています。バーネットは、これらの体験を心から楽しんでおり、上記二つのライブ企画に続く、アメリカ国内の主要なインディー・ロックスターとのツーリング・フェスティバルの開催を発表致しました。

 

2022年の夏、バーネットの主催する音楽フェスティバル「Here And There」がアメリカで開催されます。

 

このライブのラインナップは、ショーごとにメンバーの構成が流動的となり、バーネットだけが不動の参加メンバーとなります。今回、コットニー・バーネットは、特にアメリカ国内のインディーロックアーティストを取りまとめるため、素晴らしい仕事を行いました。


今夏にアメリカで開催される音楽フェスティバルに参加するのはそうそうたるインディーロックスター、スリーター・キニー、オールウェイズ、ジャパニーズ・ブレックファースト、ルーシー・ダカス、ワクサハッチー、インディゴ・デ・ソウザ、スネイル・メイル、ベス、キャロライン・ローズ、ウェット・レッグ、ジュリア・ジャックリン、リド。ピミエンタ、バーティーズ・ストレンジ、フェイ・ウェブスタ。世界のインディー・ロックのカリスマたちがラインナップとして挙げられています。


コットニー・バーネットは、今回の「Here And There」の開催について、以下のように述べています。


「子供の頃、ミックステープを作って、自分が主催する音楽フェスティバルを開催することを楽しく夢見ていました。Tシャツをデザインしたり、ミュージシャンを組み合わせて、象徴的なコラボレーションを行ったり・・・。その他にも、ミックステープを聴いて、コンサートのライブレコーディングの仕草をしたり、お気に入りのアーティスト全員が一緒にステージに上るのを想像したり・・・。

 

およそ10年前、私はこういった歌詞を書いたことがあるんです。”あちこちで迷子になりました。街の名はわからない”

 

そのことを自分なりに、地理的、感情的、哲学的な旅として解釈していたかどうかに関わらず、私は、今回のローミング・フェスティバルの名を考える際、この歌詞がぴったりくるタイトルだなと思っていました。

 

 

コットニー・バーネットは更に以下の通りに続けています。

 

今回のローミング・フェスティバルのコンセプトは、私が音楽を演奏し始めた時、私の心の奥にふっと浮かんでいたものでした。「Here And There」は、何年にもおよぶライブツアー、私の主催するレーベル”Milk"での10年間の作業といった、長年、蓄積して来たエネルギーの自然な集大成の記録ーークロニクルーーのようにも感じられます。それは私が永遠に空想に明け暮れていたものであり、何らかの空間を共有し、私がこれだ!というように考えるアートやアーティストのための新たなプラットフォームを構築するための、常に進化しつづけるプロジェクトでもあります。

 

このたび、尊敬する人やインスピレーションを与えてくれるアーティストとステージパフォーマンスを共に行うことは、私のミュージシャンとしてのキャリアにおいてきわめて貴重な経験となります。 そのため、今回、この素晴らしいライブツアーにおけるラインアップを公表できることに大変興奮しており、多くの方々に感謝しております」



・「Here And There」Tour Date:

 


・8/08 – Kansas City, MO @ Arvest Bank Theatre at the Midland (Courtney Barnett, Lucy Dacus, & Quinn Christopherson)
 

・8/09 – St. Louis, MO @ The Factory (Courtney Barnett, Lucy Dacus, & Quinn Christopherson)
 

・8/10 – Cleveland, OH @ Agora (Courtney Barnett, Lucy Dacus, & Quinn Christopherson)
 

・8/12 – Harrisburg, PA @ XL Live (Courtney Barnett, Lucy Dacus, Faye Webster, & Caroline Rose)
 

・8/13 – North Adams, MA @ Mass Moca (Courtney Barnett, Lucy Dacus, Faye Webster, the Beths, Bartees Strange, & Hana Vu)
 

・8/14 – Syracuse, NY @ Beak N Skiff (Courtney Barnett, Snail Mail, Faye Webster, & Hana Vu)
 

・8/16 – Chicago, IL @ Salt Shed (Courtney Barnett, Alvvays, & the Beths)

 
・8/20 – Portland, OR @ Edgefield (Sleater-Kinney, Courtney Barnett, Waxahatchee, & Fred Armisen)
 

・8/21 – Seattle, WA @ Marymoore (Courtney Barnett, Sleater-Kinney, Waxahatchee, Fred Armisen, & Leith Ross)
 

・8/23 – Vancouver, BC @ Orpheum Theater (Courtney Barnett & Lido Pimienta)
 

・8/26 – Stanford, CA @ Frost Amphitheater (Courtney Barnett, Japanese Breakfast, Chicano Batman, & Julia Jacklin)
 

・8/28 – San Diego, CA @ Humphrey’s (Courtney Barnett, Indigo De Souza, & Ethel Cain)
 

・8/31 – Dallas, TX @ Bomb Factory (Courtney Barnett, Wet Leg, & Indigo De Souza)
 

・9/01 – Austin, TX @ ACL Moody (Courtney Barnett, Indigo De Souza, & Ethel Cain)
 

・9/03 – Denver, CO @ Mission Ballroom (Japanese Breakfast, Courtney Barnett, Arooj Aftab, & Bedouine)