リヴァイバルエモからポストエモ  現代のインディー音楽構造の変化

「ペンシルバニア州、Midwestから始まったエモリヴァイバル アメリカの音楽産業の変遷」


エモというイリノイ州、シカゴで九十年代に始まったインディー音楽ムーブメントは、一度はアメリカン・フットボール、ミネラルを始めとするグループの解散により、二千年を前にして一時的にその熱狂は収まっていく。

しかし、その九十年代の音を聴き込んだ若い世代が再び、このエモコアというジャンルを再興しようと試みるようになる。これもまたエモが生まれた土地のシカゴ周辺、中西部のMidwestから始まったムーブメントであったことは偶然とは言い難い。とりわけ、最初の動きは、ミッドウェストの盟友、Algernon Cadwallder、そして、Snowingの台頭から始まり、Midwest Pen Palsに引き継がれていき、その後、全米全体のインディーズシーンに広がっていった。

 

これらのエモリバイバルの動きは、1990年代のアメリカで起こった第一次エモムーブメントと同じように、オーバーグラウンドで発生したムーブメントではない。いかにも、DIYのインディーらしい独自の活動形態によって支えられていた。リリースするレコードは地元や小さなレコード屋にしか作品を流通させず、インターネットの配信サイトで主なプロモーションを独自に展開していく。

もちろん、この時代から、Appleがそれまでの音楽市場の常識を打ち破り、ワンコインで音楽を売るというスタイルを確立させたことが、こういったアーティストたちの活動の形態に予想以上の影響を及ぼした。

アメリカの音楽業界は、当初、スティーブ・ジョブズの音楽をワンコインで売るという提案に頑強に抵抗したものの、その後にはジョブズの熱意に降参した。この動きは徐々に世界中に広まっていき、やがて日本の音楽業界も渋々ながら追従し、欧米に数年遅れてサブスク配信時代へと舵を取る。それまでレコード会社を通さずに音楽を一般的に流通させることが困難だったミュージシャンたちは、独自に、無料音楽視聴配信サイトや、定額のサブスク配信を介して音楽を世界に向けて発信していく。

また、このジョブズが切り開いた新たな可能性に連動するような形で、2000代から、ネット上のミュージシャン向けの配信サイト、Myspace、Bandcamp、Soundcloud、Audioleafが立ち上がり、アーティストたちが自身の楽曲をネット上にアップロードし、無料で音楽を視聴する動きが強まっていった。ミュージシャンの音楽の流通という面でも以前よりも容易になり、この時点で、レコードマネージメント契約を通さずとも、自分たちの音楽を世界に向けて発信していくことが可能となった。

 

ミュージシャンたちは、売上のマージンを配給元のレコード会社、あるいは業界に提供することにより、これまで長らくレコード会社と持ちつ持たれつの関係でやってきたが、この2千年代から徐々にこれまでの構造が崩れていく。

必ずしも、2000年代までのように、売上に対する多額の印税や、多額の権料を支払うこともない。これは、時代が後に進んでいけばいくほど、どのような業界もこの問題から逃れられなくなっていくかもしれない。

あまり偉そうなことは言えないが、そのあたりの変化を察知し、転換していくべき時期が現在の風潮である。これをチャンスと捉え、新たな産業を生み出すのか、あるいは、そこに停滞し、存亡の危機とするのかはその業界自体の発案如何により、天地の差が生まれるように思える。

 

もちろん、これまでの体制を築き上げるのには大変な苦労があったのは承知で申し上げるのだけれども、殊、音楽産業という側面で語るのなら、これからは間違いなく旧態依然としたシステム、販売構造は維持しきれなくなっていくのは必定である。今や、どのような地域にいても、インターネット環境さえ整備されていれば、地球の裏側に住まう人にも音楽が届けられるようになった。反対に言えば、地球の裏側に住むアーティストの音楽を聴けるというなんともワクワクするようなイノヴェーション。これは世界の情報を一つに収束させ、それをすべての人が平等に共有させるため、「インターネット」という媒体が誕生し、普及していった所以でもある。

 

音楽の話に限定して言えば、スティーヴ・ジョブズの発案した、サブスク配信という概念、業界人を仰天させるようなとんでもないワガママが、これまでの音楽業界の巨大な権利構造を変容させたのである。

ついで、スウェーデン企業Spotifyも、以前のP2Pのようなファイル共有ソフト/サイトを撲滅するという表向きの名目上、ジョブズの発案したインターネットの概念の延長線上にある「音楽という情報の一般的な開放」の流れを引き継いだ形でサブスク配信事業を確立させ、音楽好きのニーズに答え、シェア、支持層を徐々に拡大し、世界的な企業Spotifyとしての立ち位置をより盤石にした。つまり、春先、国際法の裁判で争っていた、Apple、Spotifyという二つの世界企業。そもそも、この巨大企業の試みようとしている未来の事業計画が同じだからこそ、係争上での穏当な解決を図ろうとしている気配も伺えなくはない。

 

この流れに続く形で、様々なサブスクリプション配信アプリケーションが乱立、それが、今日へのミュージックシーンへの新たな潮流を作り、インディー・ロック、ベッドルームポップ、以前のアマチュアの宅録と変わらない音楽を、メジャーアーティストにも引けを取らないくらいの知名度にまで引き上げた。

 

つまり、インディーロック、ベッドルーム・ポップというのは、大手レコード企業と契約せずとも、以前のスターミュージシャンのような素晴らしい音楽を完成品としてパッケージ出来ることを示してみせた一大改革なのである。

そして、このサブスクやサイトでの無料音楽配信という流れから見えること、これは表向きには、それまでの音楽巨大産業の商業的な支配構造を壊滅的にしたように思えたが、また、その中には、同時に、新たなサブスク配信という産業を生み、音楽産業の将来への可能性を押し広げたとも言える。

その恩恵によって、音楽を演奏する方も、音楽を聴く方にも、音楽の選ぶ際の選択肢は、以前よりもはるかに広がったというわけである。そして、メジャーアーティストにも同じような傾向が伺える。


そういった面では、このエモリバイバルというアメリカのペンシルバニア周辺からはじまったジャンルは、今日の音楽の流れまでの線を上手く捉えていたように思える。これらのインディー界隈のアーティストは何万もの観客を前にして演奏するわけでなく、音楽スタジオ、小さなサウンドホールでのスタジオライブを活動の主軸としていた。

つまり、数十人から百人くらいの客を前にして、熱狂的なライブパフォーマンスを行っていたのである。お世辞にも、この一般的に有名とはいえない、ニッチな雰囲気のあるエモリバイバル界隈の音楽は、当初、2000年代に、上記のインターネットサイトで配信されていたのを思い出す。筆者が、Snowing、Algernon Cadwallderといったバンドの音を最初に聞いたのは、まだそれほど設立してまもない、Bandcamp、Audioleafといった、サブスク配信が一般化する以前の音楽視聴の無料配信サイトだった。レコード店にもほとんど流通していなくて、それ以外には聴く方法がなかったのだ。


今、よく考えてみると、アメリカのメジャーアーティストではなく、インディーズアーティストの押し上げのような流れが、より大きな渦を起こし、オーバーグラウンドの盤石だった音楽産業の構造を揺るがしていったように思える。

往時、スティーヴ・ジョブズが体現したかったのは、ミュージシャンとリスナーの距離を狭め、そして一体化させるという試みである。

その線上に、ipodというデバイスが発明されたわけである。それは最後には、イギリス音楽業界のスポークスマン、レディオヘッドのトム・ヨークも自作品において、リスナーに自由に値段を決めてもらうという投げ銭方式をとり、この年代からはじまった「音楽の一般開放」の流れに対し賛同してみせたことが、音楽業界の様相を一変させていく段階の最後の決定打となった。

 

そして、無類の音楽フリークでもあるスティーヴ・ジョブズは、次の時代への音楽産業の変遷の気配を巧みに嗅ぎ分け、それを時代に先駆ける形、イノベーションという形で見事に実現させていった。

そもそも、考えてみれば、Appleを生んだカルフォルニアというのは、1970年代からずっと、インディー音楽が非常に盛んな土地だったのだし、こういったインディーズの音楽形態をスティーヴ・ジョブズが知らぬはずもなく、このインディーという音楽活動形態中に、重要なビジネス上のヒントを見出した可能性もある。特に、この2000年代のインディーミュージック、インディーズを周辺に活躍するアーティストたちは、ロック、電子音楽といったジャンルを問わず、次の10年の音楽産業の主題「音楽の一般的な解放」を呼び込むような流れを作っていた。

 

このエモ・リバイバルという動きもまたミュージシャンとファンの距離が非常に近いという側面で、2千年代のアメリカのインディーカルチャーの最先端を行っていたうに思える。彼らは音楽のスターというものに対して、一定の疑いを持ち、そのスターという存在、ショービジネスの馬鹿らしさを端から痛快に笑い飛ばしている。これは、アメリカのインディーの源流にある概念である。このシカゴから9時間ほどの距離にあるペンシルバニアで始まったリバイバルの動きは、その後、ニューヨークと連動しながら、テキサスといったアメリカ南部にも広がっていく。

 

大きく離れているようでいて、各地の小国ほどの規模を持つ各地域の音楽は、実はインディー音楽シーンにおいて、緊密に連動していて、このリバイバルの流れは、やがて米国全体に広がっていった。

これらのロックバンドに共通する概念、大きな音楽産業に対峙するアートとしてのロックンロール。それは、以前の80年代のワシントンDC、あるいはカルフォルニアのオレンジカウンティ、ボストン、ニューヨークを中心としたインディーカルチャーの活動形態を後の世代に引き継いだ形でもある。

そして、これらのロックバンドは、画家でいう個展のようなライブを開きつつ、活動を行っていく。そして、このミッドウェストというアメリカの中西部で起こったエモリバイバルの動きは、ワシントンDC,ミネアポリスの80年代のパンク・ハードコアの台頭と同じような雰囲気が感じられる十代から二十代の若者を主体としたムーブメントの一つであった。

 

もちろん、それらの若者たちは、九十年代のエモーショナル・ハードコアという音楽を聞きながら、多感な思春期を過ごしてきたはずだ。このエモ・リヴァイバルの動きは、現在もアメリカの若い世代でひっそり継続しているが、実に、アメリカらしい肩肘をはらない商業感を度外視したアート活動の形と、そのマニアック性を寛容する度量の広いファン層によって熱狂的に支えされているジャンルでもある。音楽性というのも、1990年代のエモコアの内省的な抒情性と2000年代のポスト・ロックを融合したジャンルで、苛烈でテクニカルでありながら掴みやすさがあり、どことなくゆったりとした雰囲気がある。音楽的にもそれほど難解でなく、音楽性自体は、それほど90年代のメロディック・パンクのスタイルを受け継いだキャッチーさ、親しみやすさがある。

 

今回は、これらの後の音楽解放時代の先駆けとなったエモリヴァイバル、そして、サブスク配信の時代のアーティストを探っていく。

いかにも、アメリカのインディー音楽の旨みがこれらのロックバンドににじみ出ていることを見いだせるはずだ。そして、これらの幾つかのロックバンドは、のちの音楽の一般的な解放を告げ知らせるような雰囲気を持っている。その独自の気風は現在も引き続いており、再び、何らかの面白い流れがこのあたりのエモリバイバルシーンには見つかるかもしれない。

少しマニアックな選出ではありますが、エモ好きな方、「Emo Digger」の良曲探しの手助けになればいいなと思ってます。

  

 エモリバイバルからポストエモ世代までの名盤

 

1.Snowing





Snowingは、米、ペンシルバニア出身のスリーピースのロックバンド。2019年には来日公演を果たしている。アメリカ中西部を中心とするエモリバイバルの動きはここから始まったわけで、このムーブメントをくだくだしく説明するよりは、このスノーイングの作品を聴くほうが手っ取り早いかもしれません。

およそ既にエモなどという言葉が廃れかけていた時代、彼らは勇猛果敢にこのジャンルを引っさげてインディーズシーンに登場、熱狂的なエモリバイバルムーブメント旋風を沸き起こした。往年のDCハードコアサウンドを踏襲した苛烈なサウンドは現在でも鮮やかな魅力を放っています。

スノーイングは、これまでのアメリカのインディーズの正統派の活動形態を受け継ぎ、大きなライブハウスでは演奏して来ませんでした。

しかし、観客と演奏者の距離感のなさ、観客の異様なテンションと、それに答える形でのスノーイングの面々の激烈なアジテーションのもの凄さは筆舌に尽くしがたいものがある。これは、もちろん、八十年代のディスコード周辺の流れが受け継がれており、ライブこそスノーイングの音の醍醐味といえるはず。スタジオ・ライブでの熱狂性は2000年代の時代において群を抜く。また、そのパッションは再結成を記念しての二年前の来日公演でも見事な形で再現された。

彼らの名盤としては、最初期の怒涛の勢いが十分に味わうことの出来るEP盤「 Fuck You emotinal Bullsit」あるいは「Pump Fake」が音の荒々しさがあり痛快で必聴ですが、入門編としては、最初のスタジオアルバム「That Time I Sat a Pile of Chocolate」をおすすめしておきましょう。 

今作「That Time I Sat a Pile of Chocolate」には、スノーイングのライブの重要なレパートリーとなっている「Pump Fake」「Sam Rudich」が収録されている。このスノーイングが、日本のインディー音楽愛好家の間で何故神格化されているのかは、この二曲を聞いてみればなんとなくその理由がつかめるはず。

異様な青臭いテンションに彩られた激烈なエモーション性。

この二つの楽曲を引っさげてスノーイングは登場し、アメリカのエモムーブメントの再来を高らかに宣言しました。

 

 

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2.Algernon Cadwallder

 

 

 

これまた、Snowingの盟友ともいえるアルジャーノン・キャッドワラダーもペンシルバニア出身のエモリバイバルムーブブームの火付け役といえる存在。ボーカルのPeter Helmisはこのバンド解散後、Dogs On Acidという次のバンドで活躍中。 アメリカン・フットボールと共に、「Polyvinyl records」を代表するインディー・ロックバンドといえるでしょう。2012年から2105年という短い活動期間でありながら、このバンドはまさに90年代初頭のキャップンジャズの再来といえ、衝撃的なインパクトをアメリカのインディーシーンにもたらしました。

ベースボーカルのPeter Helmisのちょっと裏声がかったユニークな絶叫ボーカル、そしてJoe Reinhartの高速タッピングというのは、この後のエモリバイバルというジャンルの音楽の骨格を形作った。また、スノーイングと同じように、少ない収容人数のスタジオ・ライブの観客との一体感、そして、異様な熱狂性がアルジャーノン・キャッドワラダーの最大の魅力といえるでしょう。

 アルジャーノンのオススメのアルバムとしては、「Somekind of cadwallder」そして最後の作品となった「Parrot Files」とまあ全部聴いてみてほしい。

最初のLPレコード版を再編集した2018年リリースの「Algernon Cadwallder」。この中の一曲「Sailor Set Sail」を聴いたときの驚きと感動というのは今も色褪せないものがある。なんというか、一言でいえば、青春ですこれは。

穏やかさと激烈さ、相反するような要素がガッチリとかみ合ったキャップ・ン・ジャズを彷彿とさせる名曲でもあります。

マレットの音の響きもなんとなくノスタルジックで、切ない彩りに覆われている。何となく、湖畔ちかくの情景を思わせる素晴らしい自然味あふれる楽曲。今、考えてみれば、マスロックの雰囲気もあるバンドだったと回想。とにかく、このアルジャーノンを差し置いてはエモリバイバルを語ることなかれ。 

 

 

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3.Perspective,a lovely Hand to Hold

 

 


上記、Snowing、Algernon Cadwallderと入れ替わって台頭してきたのが、この perspective,a lovely Hand to Hold。

このバンドのサウンドアプローチは幅広く、表面的にはエモ、パンクロックよりではあるものの、その中にも電子音楽や、ポストロック/マスロック、あるいは、インディーフォークの雰囲気も感じられるバンドです。

ホーンセクションやグロッケンシュピールを積極的に取り入れたりといった特長は、如何にも現代のエモリバイバルといった音楽性ではあるものの、全然付け焼き刃ではなく、バンドサウンドの中にしっかりとそういったオケの楽器が溶け込んでいるのがこのバンドの感性の良さといえるでしょう。

その中にも良質で飽きの来ないメロディセンスを感じさせうるバンドで、非常に他のバンドに比べ演奏力も高く、特にリズム隊も音の分厚さがあり、聴いていて安心できるような感じがあります。

彼らのオススメとしては軽快さのある秀曲、「Pepe Silva」を収録したEP「Play Pretrend」、あるいは勢いと絶妙な切なさを併せ持ったポップチューン「Mosh Town USA」が収録されている「Autonomy」2014でしょう。楽曲の中にメロディックパンクのような痛快さと勢いがありながらもメロディ性をしっかり失っていない秀逸な音楽性。これからも頑張ってもらいたいバンドです。  

 

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4.Tigers Jaw


 

 

お次に紹介するタイガーズ・ジョーも、またまた、ペンシルバニア出身のロックバンドです。結成したのが2006年とすると、十六年という長いキャリアを持つアーティスト。

これまで何度かメンバーチェンジを繰り返しつつも、このバンドの顔は、紅一点のブリアナ・コリンズでしょう。

このタイガーズジョーは上記のエモリバイバルのバンドよりはパンク色は薄く、歌物としても十分楽しめる親しみやすさのある音楽性が魅力。

これまでYellowcardやNew Found Gloryとツアーを行っており、イージーコアのロックバンドとのかかわり合いも深い。メロディックパンクの次世代を担っていく存在でしょう。

音楽性としては、初期はローファイ味あふれるインディーロックでしたが、徐々に音楽的に洗練されていき、ジミー・イート・ワールドのようなキャッチーさを突き出していった。エモの雰囲気を感じさせるストレートなアメリカンロック。いかにもアメリカンな程よく加味されるエモーション性が魅力。それほど捻りのある楽曲ではなく、普通のポップスとしても楽しめる。ツインボーカルが特徴で、そのあたりの楽曲の歌い分けがこのバンドの持ち味でしょうか。

 

タイガーズ・ジョーのおすすめアルバムとしては、2017年のアルバム「spin」が挙げられるでしょう。上記のスノーイングやアルジャーノンのようなハードコアを下地にした強烈なインパクトこそないものの、「これぞ、ド直球アメリカンロック!」というような佳曲がずらりと並んでいる。これは、ため息出ますね。全く。中でも、「June」はブリアナ・コリンズの歌声が秀逸な楽曲。醸し出される切なさは筆舌に尽くせない。ジミー・イート・ワールドを彷彿とさせるエモエモさ。他にも佳曲が多し。往年のエモ/メロディックパンク好きはガツンとやられること間違いなし。 

 


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5.Oso Oso

 

 

 

NYのロングビーチ拠点に活動するインディーロックバンド、オソ・オソ。ロングビーチというのはNYの北部の方にあり、結構寒そうなところです。このバンドのフロントマンが以前組んでいたバンド、osoosoosoというバンドの解散後に組んだプロジェクトがOso Oso。また、日本にも、Os Ossosというバンドが東京(下北界隈)を拠点に活動中。この有名なバンド名からもじって、自分のバンドネーミングにするというのは、それもこれも、全部、アメリカン・フットボールという存在のせいです。これも、後に、チャイニーズ・フットボールとか、フットボール Etcとか、フォロワーバンドがじゃんじゃん出てきすぎていて、正直、言いますと、もう増えすぎてこれよく訳わかんねえなという状態。osoosooso、oso oso、Os Ossosとか、これ以上プロモートする側の頭を撹乱するのはやめてあげて下さい。もう、何が何だか、、、判別つきません。 

さて、しかし、このオソ・オソは良いロックバンドです。勢いとパンチのある親しみやすいポップパックロックバンドとエモコアの中間にあるような良質なサウンドを特長としている。アルバムジャケットも可愛らしいアートワークの作品が多いですが、これはたぶん全部狙ってやってますよ。

オソオソの音自体も、九十年代のポップパンクシーンの美味しいとこ取りをしたような感じであり、往年のBraidのフレーズをそのまんまなぞられてたりとか、おもわず、「おい、そりゃ卑怯でしょう」と言ってしまいそうになりますが、これが伝家の宝刀ともいうべきソリッドさ、鋭さがあり、音自体が痛快なため、まあいいかなと許せちゃうところがあるのが不思議です。

 

メロディック・パンク、ポップ・パンクとしても充分楽しめるオソオソですが、エモリバイバルの名盤として見逃せないのが、シカゴのレコード・レーベル「Audiotree」のLiveを収録した「Oso Oso on Audioleaf Live」2017です。

スタジオ・アルバムでは、いかにもポップパンクバンド寄りのマスタリング処理を施しているオソオソ。しかし、オーディオツリーのライブでは、精彩のあるパワーポップバンドへの痛快な変身ぶりが味わう事ができます。特に、#1の「The Cool」(スタジオ・アルバム「the yunahon mixtape」収録)ではポップパンクよりの疾走感のある楽曲ですが、このオーディオツリーのライブでは、テンポダウンされていて、楽曲に独特な切なさと色気が漂ってます。特に、この一曲目「The Cool」は素晴らしく、(以前、アジカンのツアーに参加したことがある)Ozmaを彷彿とさせるアメリカンパワーポップの名曲に大変身しているのに驚き。どことなくアルバムとは異なるへっぽこテイストが味わうことが出来、エモ感はこちらのライブの方が遥かに上、そのあたりが良い味出てます。 

 

 

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6.Emo Side Project

 

 


あまり知名度という点ではイマイチのEmo Side Project。

カンザス州ローレンス出身のmae macshaによるソロプロジェクトです。このEmo Side Projectは、現代的な音の進化という面、あるいは派手なサウンド面での特長には乏しいかもしれませんが、穏やかなエモーション性をはらんだ良質なインディーロックを奏でている隠れた名バンドです。すでに2001年から活動しており、かなり長いキャリアを持つプロジェクトといっていいでしょう。

エモサイドプロジェクトの音楽性は、まさにアメリカン・フットボールとしかいいようがない、またはマイク・キンセラのOWENの良いところ取りをしたようなサウンド。そこに、インディー・フォーク的なゆったりした雰囲気を纏う。聴いていて派手さはないものの、穏やかで安心して聴けるようなサウンドが魅力。

このB級感としか例えるべき青臭いエモ感をなんと例えるべきか。ダサいけれども、それで良い。そして、そこに内省的な雰囲気がほんのり漂っている。外向きに音を楽しむというよりも、家の中でひとりでぬくぬくと音の世界に耽溺する。アメリカン・フットボールと同じように、ミニマルな趣向性を持つギターフレーズが延々と続くあたりは、音響系ポストロックに近いアプローチが計られている。Mae Machaのボーカルというのもキンセラの弟という感じで、ヘタウマな感じですが、そのあたりが重度の「Emo Digger」にはグッと来るものがあると思います。

エモサイドプロジェクトの推薦盤としては「You Know What Sucks,Everything」という2015年のスタジオ・アルバム。

音楽性の良さというよりは雰囲気を楽しむエモのB級的な名盤。しかし、ロックとして聴くなら完全にB級の作品。しかし、独特なローファイ、インディーフォークとして聴くなら独特な魅力が感じられるはず。

このあたりのどことなくダラッとした感じのエモは余り他のアーティストの作品では聴くことのできない、このプロジェクトならではの音楽性。

いかにもアメリカらしいぬくぬくとしたインディー音楽は、まさに通好みと言えるものでしょう。名エモバンド、アメリカンフットボールの内省的なエンパシー性を継承した穏やかな清流のようなサウンド、この青臭い切なさのもんどり打つような感じに、君たちは耐え切れるか??  

 

 Bandcamp

https://emosideproject.bandcamp.com/album/you-know-what-sucks-everything


  

7.Origami Angel 

 



オリガミ・エンジェルは、ギタリストのRyland Heagyと、ドラマーのPat Dohertyによって2017年に結成されたワシントンDCを拠点に活動するツインユニットです。

以前は、ロックバンドいうのは最低限三人は必要であるという考えが一般的だった。2人でロックを完結してしまうのは多分B'zくらいと思ってたのに、近年、既成概念をぶち破り、2人で活動するロックユニットがアメリカで徐々に台頭してきています。もちろん、それらのバンドが人数が少ないからと言って音が薄いのかというと、全然そうではなく、音の分厚さと重さを誇るのには、正直びっくり。そして、このオリガミ・エンジェルもまたツインユニットとは思えないほどの重厚感のあるエモ/ポップパンクサウンドを聴かせてくれる秀逸なロックバンドです。 

そして、近年のエモリバイバルのロックバンドに代表されるようなツインクルエモという括りには当たらないのがオリガミ・エンジェル。

どことなくひねくれたコード感を持ち、重厚なディストーションギター、そして、ドラムの迫力あるリズミングがこのロックバンドの最大の特長でしょう。長和音進行の中に巧みに短調を打ち込んでくるあたりは、これまでの無数のツインクルエモのバンドとは違い、新たな風のようなものをアメリカのエモシーンに吹き込んでくれるだろうと期待してしまいます。

オリガミ・エンジェルは、活動期間は四年でありながら、すでに「Somewher City」という頼もしい名盤をリリースしています。何より、このツインユニットには音楽の間口の広さが感じられて、今後、その異なるジャンルとの融合性を強めていってもらいたいと思います。インディーフォークであるとか、ニューメタル、さらには、近年のクラブミュージックのテイストも交え、ジミー・イート・ワールドを思わせるような爽快感のあるメロディック・パンクが全力的に展開されている。

この若さゆえのみずみずしさは、往年のポップパンクファンにはたまらないものがあると思います。これから2020年代のアメリカのメロディックパンクシーンを牽引していくであろう非常に楽しみなロックバンドです。「24 Drive Thru」の痛快な疾走感は言うに及ばず、「The Title Track」の独特なコード感、涼風のように吹き抜けていくポップチューンを心ゆくまで楽しむべし!!!!

 


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8.Bigger Better Sun 「Adjust to Wellness」


 

 

そして、個人的にこれから最も有望視しているのがこの”Bigger Better Sun”というロックバンド。

あまり他ではエモリバイバルというカテゴライズではあまり紹介されないような存在ではあるし、エモというカテゴライズ上で語ることは趣旨から外れているような気もするものの、エモの雰囲気は少なからず漂っている。 

もちろん何の根拠もありませんが、なんとなく、このバンドは要チェックです。特に、2010年代のエモサウンドをより未来に進化させたポストエモ的なサウンドを体現させているバンドでもある。

往年のエモサウンド、とりわけゲット・アップ・キッズのような親しみやすいキャッチーさもありながら、アメリカのヒップホップシーンあるいはテクノ、EDMシーンに呼応したようなサウンド面での進化を、Bigger Better Sunのサウンドには見て取ることが出来る。

そもそも、スノーイング、アルジャーノンの2000年代初めのアメリカのインディーズシーンへの台頭は、およそ無数のタッピング奏法を駆使し、メタルサウンドを取り込んだようなツインクルエモ勢を発生させはしたものの、それと同時に、音楽の停滞をもたらした弊害もなくはなかったお決まりのサウンドの流行というのは未来への針をその場に押しとどまらせてしまうというわけです。そのあたりの停滞を次世代のサウンドへと進めようとしているのが、Bigger Better Sunという存在。

彼らのオススメアルバムとしては「Adjust To Wellness」。

「fillers」のようなゲット・アップ・キッズを彷彿とさせるような温かみのあるバラードソングの良さもさることながら、他にも独特の進化を辿った2020年代のポストエモシーンの台頭を告げるような電子音楽風のサウンドも提示されている。

これはかつてゲット・アップ・キッズのバンドサウンドのムーグシンセの導入をさらに作曲という図面の上で広げて行こうという意図を感じなくはない。つまり、オートチューン等を駆使し、エモの音楽性にクラブミュージックに対する風味を付け加えようというチャレンジ性が感じられる。

Bigger Better Sunの音楽性は、2020年代のエモシーンの音楽性を予見させる。音楽自体のポピュラリティー、聞きやすさも失わず、エモというジャンルをさらに前進させようという実験性もある。あまり有名なロックバンドではないですが、非常に見どころのあるバンドとして紹介しておきます!!

 

 

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9.Posture & the Grizzly 




最後の一バンドとして紹介したいのがPosture&the Grizzlyです。フォールアウトボーイのようなイージーコアをサウンドの特長とし、ボーカリストの巨体から生み出されるパワフルなサウンドが特長。 

2000年代のニュースクールハードコア、メタルコアといったソリッドなサウンドを踏襲し、クールで勢いのある音楽性が魅力。こういったわかりやすさのあるイージーコアサウンドというのは、近年それほど多くなかったんですが、Posture& the Grizzlyは現代にそれを見事に蘇らせています。

スクリーモ勢の後の世代としてのメロディックパンクの流行のスタイルを追究したといえる痛快な激クールサウンド。もちろん、エモさという要素も少なからずあるのがこのバンドの特徴。

彼らの入門作品としては「I am Satan」2016をまずはじめにレコメンドしておきたいところです。

ここにはライズ・アゲインストのようなメタルコア風の力強さもありながらまたそこはなとなくエモーショナル性、そして、モグワイのような音響系ポストロックの雰囲気も漂っています。

こういった様々な現代の音楽を融合したサウンドが今日のエモリバイバル、あるいはポストエモ勢のトレンドなのかなあという気がします。上記のBigger Better Sunとともに、リバイバルという括りでは語れない2020年代のポストエモの台頭を予感させるようなロックバンドとしてオススメ!!

 


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