ウェールズ/カーディフ出身のシンガーソングライター、H. Hawklineは、近日発売予定のアルバム『Milk for Flowers』から、最新シングル「Plastic Man」を発表しました。前作「Suppression Street」、タイトル曲に続く作品です。
「アルバムのために書かれた最後の曲で、真夏の溶けた階段を杖を振りながらトップハットで滑走する、マストよりも必要な曲だ。」とHuw Evans(ヒュー・エヴァンス)は声明の中で説明しています。
「ティム・プレスリーは冒頭のギターラインを書いた。私は彼がそれを走り書きのように組み立て、マイブリッジの切り絵のようにアニメーション化するのを見ました。」
実は、「Plastic Man」には、「Milk for Flowers」で使用された素材と同様の映像が添えられている。彼のアプローチについて、ヒュー・エヴァンスはこう語っている。
「1つのビデオを作り、音楽だけを変えるつもりだ "私はそれについて考えて、自分自身に笑いました。曲は変わっても、他のものは変わらないことがある。それまで眠っていた感情の板が、見慣れたありふれたものにぶつかり、大地から新しいモニュメントが突き出し、空の建物、風景が再編成されるんだ。」
『Milk for Flowers』は、3月10日にHeavenly Recordingsからリリースされます。アルバムの先行予約はこちら。
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©︎Daniel Sunwald |
絶大的な人気を誇るスペインのシンガーソングライター、ロザリアが新曲「LLYLM」を公開した。ロザリアは、フラメンコのようなスペイン音楽をダンサンブルなポップスとして落とし込む次世代の歌手と目されている。"Lie like you love me "を略したこの英語のトラックは、このスペイン人シンガーの2023年初のニュー・シングルとなる。楽曲の各種ストリーミングはこちら。
ロザリアの英語での曲は、ボニー・プリンス・ビリーの名曲「I See a Darkness」のカバーで、この曲はデビューLP『Los Ángeles』に収録されています。昨年リリースされたサード・アルバム『MOTOMAMI』のデラックス・エディションには、「Despechá」のリミックスが収録されています。
さらに、ロザリアは、昨年末、日本にプライベートで来日しており、和風の旅館に宿泊し、奈良公園で鹿と戯れていた。さすがのスターシンガーも、自分のもとに押し寄せる鹿には悪戦苦闘していた様子だった。またロザリアはロラパルーザ・パリ 2023でアクトを行うことを決定している。
今年3月、渋谷での来日公演を予定しているUK/ブラントンのシンガー、Maisie Peters(メイジー・ピーターズ)がニューシングル「Body Butter」を公開しました。
セカンドアルバムからのファーストシングルとなるこの曲は、Ines Dunn (Griff, Mimi Webb) とプロデューサーの Matias Téllez (girl in red, AURORA) と共に書き下ろされたものです。
「”Body Better "は、これまでリリースした曲の中で最も正直な曲のひとつで、間違いなく最もパーソナルな曲です」とメイジーは説明する。
この曲は、別れた後に書いたもので、その後に自分がしたこと、していたこと、変えたかったことなど、小さなことまで丹念に調べながら、自分に対して思う醜いことを扱っている。この曲は、不安と弱さ、そして、もうそれを望まないと決めた人に自分の多くを捧げ、そこからどこへ行くべきかについて歌っている。
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Maisie Peters |
23年3月に渋谷で来日公演を開催予定のイギリス/ブライトンのシンガー、メイジー・ピーターズは、新しいクリスマス・コメディ映画『Your Christmas Or Mine?』のために録音されたシングル「Together This Christmas」を発表、さらに心温まるミュージックビデオを同時公開しています。
「"Your Christmas Or Mine"の監督であるジムとは、"Trying "を作った時に一緒に仕事をしていたんだ。”Trying: Season 2”のサウンドトラックを作ったとき、Your Christmas Or Mineのディレクターのジムと仕事をしたんだけど、彼がまた連絡してきて、彼のクリスマス映画に参加したいかどうか聞いてきたとき、明らかに答えは大きなお祝いの”イエス”でした、その結果、できたのが”Together This Christmas”よ」とメイジー・ピーターズは説明しています。
「明るく陽気なものを作りつつ、自分自身の歌詞や技術に忠実であろうとする挑戦は本当に楽しくて、クリスマスの定番を自分なりにどうアレンジするか、という課題がとても気に入りましたね。当時、私のハウスメイトが毎週末働いていた地元のパブ、"The Ten Bells"も加えてみたわ!」
「Together This Christmas」のミュージックビデオは以下からご覧ください。
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Gena Rose Bruce ©Maximum Person |
オーストラリア/メルボルンを拠点に活動するシンガーソングライターGena Rose Bruceが、セカンドアルバム『Deep Is the Way』から最新曲「Mistery and Misfortune」を公開しました。
この曲は、前作「Foolishly in Love」、米国のシンガー、Bill Callahan(ビル・キャラハン)をフィーチャーしたタイトル曲に続くシングルです。ミドルテンポのシンセ・ポップで、ヴォーカルとシンセが対旋律のように重なり合うナンバーです。ジーナ・ローズ・ブルースのボーカルのメロディーは、ほのかに切ない情感を漂わせています。
「この曲は、自分の感情を実際に感じることができたときに感謝し、また、感謝されることを歌っています」とコメントしている。
「たとえ、その感情の一部がポジティブなものでなかったとしても、少なくとも五感のスイッチを入れて、自分がまだ生きていることを思い出させてくれる」
『Deep Is the Way』は1月27日にDot Dash/Remote Control Recordsからリリースされる予定だ。
H. ホークライン(Huw Evans)が今週末、ニューシングル 「Suppression Street」公開した。(カーディフ出身のシンガーソングライター、英語とウェールズ語の双方を駆使する。テレビ番組の司会者としても活躍している)Cate Le Bon(ケイト・ル・ボン)がプロデュースしたこの曲は、Huw Evans(ヒュー・エヴァンス)が2023年3月10日にHeavenlyからリリースする新作アルバム『Milk For Flowers』からの最新シングルとなります。試聴は以下からお願いします。
プレスリリースで、ヒュー・エヴァンスは、この新曲について次のように説明する。「私は自分自身を2度知りました」
「私は新しい言語を学び、それを話すすべての人を知っています。それは死語で、いくつかの単語が必要なだけです。私はアイススケートをするカウボーイで、銀行の小さな男の子だ。私たちは二人で、不潔なフランスの窓のガラスを押しつけ、反対方向に滑らせる。これは私の膝の上に落ちてきたんだ」
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Elton John |
エルトン・ジョンは、Farewell Yellow Brick Road Tourの英国での最終公演に向け、大々的なイベントを開催します。彼は6月25日にグラストンベリー・フェスティバルのヘッドライナーを務め、この名高いイベントに初めて出演する見込みだ。
「これはエルトンの最後のツアーの最後のイギリスでのショーになるので、私たちはフェスティバルを締めくくり、すべての送別の母で私たちの両方の歴史の中でこの大きな瞬間をマークします」とグラストンベリー共同主催者のエミリー・イーヴィスは述べています。「私たちは、ついにロケットマンをウォルティー・ファームにお連れすることができて、とても幸せです!」
「毎週、私は、自分のラジオ番組で新しいアーティストと話をしていますが、グラストンベリーはしばしば、彼らのキャリアを開始する重要な瞬間として挙げられます。最高の新しい才能に対するこのフェスティバルの純粋で熱心なサポートは、私が長い間賞賛してきたことはご存知のはずです。私のイギリスでの最後のショーに、エミリー・イーヴィスを招待してくれてありがとう」
イギリスの世界最大規模の音楽祭、グラストンベリーのヘッドライナーは、来年早々に追加発表される予定。2022年の同フェスティバルでは、ビリー・アイリッシュ、ケンドリック・ラマー、そして、この80歳の誕生日の数日後にはポール・マッカートニーがヘッドライナーとして出演していた。
Mazey Hazeがニューシングル「I Feel Like A Child」をリリース。アムステルダム出身のアーティストは、同地で活躍するフレッシュな存在感を放ち、ユニークな歌声でファンを魅了している。
メイジー・ヘイズは4月7日にEP「Back To The Start」をリリースする予定で、「I Feel Like A Child」はこの新作からの先行シングルとなる。
「I Feel Like A Child」は、甘く無邪気で、ボサノバ調の風通しの良いメロディーが満載。彼女の作品には映画のような輝きがあり、メイジー・ヘイズは、夏のアムステルダムの暮らしの一面を優雅に表現しようとしている。この曲についてメイジー・ヘイズは以下のように説明している。
「夏の木々は、本当にきれいで、太陽の光と葉っぱの動きを見ることができます。この曲は、人それぞれの捉え方があって、それでいいんじゃないか、ということを歌っています。正しいも間違いもない。真実もない。大切なのは、自分のイマジネーションに触れ続けることなんです」
「"I Feel Like A Child”は、表面的な人間性と比較して、美しい平凡さについて歌った曲です。この2つは隣り合わせで素晴らしいコントラストをなしていると思うし、この2つは私をいつも魅了する」
「私は、なぜ一人で空の鳥や葉の茂った木々を見たり、クラシック音楽を聴いたりすると、とても素晴らしく穏やかな気持ちになるのかを理解しようと思っていた。そして、なぜ私はこれほどまでに多くの人(自分も含めて)に圧倒され、混乱するのだろう? ほとんどの場合、これらのことについて考えることに大きな意味はなく、それよりもそれを行動し、感じること自体に意味があることを理解したのです」
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柴田聡子 |
日本の新鋭シンガーソングライター、柴田聡子がクリスマスシングル「サイレント・ホーリー・マッドネス・オールナイト」のリミックスバージョンをリリースした。
この二曲入りのシングルは、ニューアルバム「ぼちぼち銀河」より、先行シングルという形で2021年12月にデジタル・リリースされたクリスマス・ソング「サイレント・ホーリー・マッドネス・オールナイト」をDUB MASTER Xが新たにリミックスした作品となっている。カバーアートは、オリジナルからKazuhiko Fujita(Marfa)による追加デザインが施されたものとなっている。
柴田聡子 「サイレント・ホーリー・マッドネス・オールナイト」 New Single
Label: IDEAL MUSIC LLC.
Release:2022年11月23日
収録曲
01. サイレント・ホーリー・マッドネス・オールナイト – Dub’s Galactic Dance Floor Remix
02. サイレント・ホーリー・マッドネス・オールナイト
楽曲のストリーミング:
https://satokoshibata.lnk.to/SHMA
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BoA |
韓国のシンガーソングライター、BoAは、かつて日本のミュージック・シーンに深いかかわりを持ち、ヒットチャートを賑わせた歌手であり、さらに日本のテレビにもよく出演していたことを覚えている方も少なくはないだろう。もちろん、BoAは現在もアーティストとして大活躍中だ。
昨日、BoAが発表した『Forgive Me』は、彼女にとって2019年の『Starry Night』に続く3枚目のEP。本作は、2020年の10thアルバム『Better』以来、BoAにとって初のソロ・プロジェクトとなる。
BoAは、昨年12月、aespaのウィンターとカリーナ、Red Velvetのスルギ、ウェンディ、少女時代のテヨン、ヒョヨンとともに”Girls On Top”のメンバーとして活動することが発表された。さらに、今年1月にデビューシングル「Step Back」をリリースしている。今後の活躍にも期待していきたい。
BoAの「Forgive Me-The 3rd Mini Album」は、日本ではAvexから発売されている。Avexの公式サイトでは特典キャンペーンが始まっているのでぜひチェックしてみてください。このEPはHMV、Tower Recordsでも販売中となっている。アルバムの全曲ストリーミングはこちらから。
Weekly Recommendation
Weyes Blood 『And In The Darkness,Hearts Glow』
Label: Sub Pop
Release: 2022年11月18日
Review
ウェイズ・ブラッドの名を冠して活動するナタリー・メリングは、前作『Titanic Rising』で歌手としての成功を収め、その地位を確立したが、この三部作の二作目となる『And In The Darkness,Hearts Aglow』で今日のディストピアの世界の暗闇に救いや明るい光を見出そうとしている。三部作は、ナタリー・メリングのとって、恋愛小説のような意義を持ち、それはいくらかロマンティックな表現によって縁取られている。
しかし、理想主義者としての表情を持つこのシンガーソングライターは、それらのロマンチシズムを絵空事として描こうとはしていないことに気づく。幼い時代からのキリストの信仰における宗教観、近年では、仏教の中道の観点から現代社会の問題を直視し、その中にある問題解決の端緒を訪ね求めようとする。しかし、これらの二作目のアルバムの楽曲は、問題解決の答えを独りよがりに提示するのではなく、聞き手とともに、またそれらの問題に直面する人たちと、同じ歩みで、その問題について議論を交わし、そして何らかの解決策を求めようとする試みなのである。
「この音楽に対してカタルシスを感じてもらいたい」という趣旨のメッセージを込めるナタリー・メリングではあるが、これは2020年の時代に絶望を感じていた人々にとり、いや、それにとどまらず2022年の世界に絶望を感じている人々にとって、大きな癒やしとなり、そして、その心の傷を癒やす、言わば、ヒーリングのようなエネルギーを持ち合わせる作品となるだろう。それは、メリング本人にとってもソングライティングや実際の録音、全般的な作品制作の過程において同様の感慨をもたらしたに違いない。ちょうど歌手としての地位を盤石にした傑作『Titanic Rising』から一年、パンデミックが発生し、LAでレコーディングを開始したメリングではあるが、皮肉にも前作アルバムに込めたテーマは予言的なものとなった。このセカンド・アルバムは、単なるコンセプチュアルな作品の続編であるにとどまらず、絶望的な世界の到来を未来に見る時間から、メリングはその地点から移動し、それらの次の段階へと進み、その渦中に自分/自分たちが存在することを、このセカンド・アルバム全体で概念的に描き出そうというのである。
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Weyes Blood |
世界を描く・・・。こういった壮大な試み、あまりにも大がかりにも思えるテーマが成功することは非常に稀有なことである。アーティスト、もしくはバンドが、それらのテーマをどのように描くか、自分の現時点の位置を嘘偽りのない目で見極めながら、それらの理想郷に手を伸ばさねばならない。しかしながら、ナタリー・メリングは、もともとが電車に乗って、路上ライブを行っていた人物であるからか、様々な階級の世界をその目で見てきた人物としての複数の視点、それは王侯から奴隷までを愛おしく描くウィリアム・シェイクスピアのような、すべての世の人を愛するという温かい心に満ちあふれているのだ。にとどまらず、ナタリー・メリングは、時に、実際的な社会の問題を見た際には悲観的にならざるをえない、きわめて理知的かつ現実的な視点を持ちあせ、さらに、そのユートピア的な思想を実現するための音楽的な素養と深い見識に裏打ちされた「知」がしっかりと備わっている。暗澹とした先行き不透明なディストピアの世界に対峙する際、その暗闇の向こうにかすかに見える一筋の光を手がかりに、メリングはモダン/クラシカルの双方のポップスの世界を探訪していく。これらの音楽を思想的に強化しているのが「God Turn Me Into a Flower」のナルキッソスの神話や、オープニング・トラック「It's Just Me,It's Everyone」での傷ついた人を温かく、慈しみ深く包み込むような共感性にあるのだ。これらは、単なる作品舞台の一装置として機能しているのではなく、その楽曲を生み出すためのバックボーン、強い骨組みのようなものになっているため、そこで、実際の音楽として聴くと、深く心を打たれ、そして、深く聴き入ってしまうような説得力を持ち合わせているのである。
ナタリー・メリングは、その他にもソーシャルメディア全盛の時代に警鐘を鳴らす。もちろん、多くの人々が経験していることではあるが、日々、我々は何かにリンクするという感覚を持っているか、それを何がしかのツールで、そのリンクという概念を体験する。しかし、そもそも、それはその名が示すように本当に誰かしらとリンクしているのだろうか。それはリンクしていると考えているだけにとどまらないのではないか、という疑念も生ずることも少なくはない。ナタリー・メリングは、それらのソーシャルメディアを通じて行われる交流が人間そのものの分離を加速させているのではないかという提言を行う。つまり、このシンガーソングライターの考えでは、それらのデジタルでの交流はインスタントなものであり、本質的な人間の交流とは異なるものという意見なのである。それらの考えを足がかりにして、メリングは本質的な人間の交流という概念が何であるのかを探求していく。そして、それは前にも述べたように、そのための議論が人々の間で建設的に何度もかわされることがこれらの問題解決への糸口となるというのだ。最初から明確な答えを求めるのではなく、その間にある過程を重視するのがナタリー・メリングというアーティストであり、世界で数少ない正真正銘のSSWなのである。
それでは、実際の音楽はどうか。ナタリー・メリングの楽曲は古き時代のポップスやフォークを彷彿とさせるのみならず、それ以前の時代の偉大な音楽への眼差しが注がれている。表向きには、カーペンターズの音楽を思い起こさせるが、アーティスト本人によれば、それはカーペンターズの音楽をなぞらえたいというけではなく、カーペンターズと同じ音楽のルーツを持っているとメリングは考えている。つまり、このアーティストの楽曲に現れるチェンバロのアレンジを用いたバロックポップ/チェンバーポップの要素は、本人の話では、ビートルズのジョン・レノンにあるわけでもなく、カレン・カーペンターに求められるわけでもなく、それよりもさらに時代をさかのぼり、ジュディー・ガーランドの時代のモノクロの映画音楽、ホーギー・カーマイケル、ジョージ・ガーシュウィン、バート・バカラックの時代の音楽に求められるという。もちろん、知られているように、幼年時代に聖歌隊に属していたということから、教会音楽やルネッサンス音楽の影響が、このアーティストの楽曲に崇高性を付与していることは容易に窺える。
ナタリー・メリングのセカンド・アルバム『And In The Darkness,Hearts Aglow』の収録曲は、クラシカルなポップスの雰囲気に彩られている。それは実際に、ナタリー・メリング自身が最近の音楽をあまり聴かず、シューマンや、メシアンを始めとする新旧の古典音楽に親しんでいるのが主な理由として挙げられる。しかし、ドローン・アンビエントのシーンで活躍するブルックリンの電子音楽家、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーのDanel Lopatin(ダニエル・ロパティン)がシンセの反復的なフレーズを提供した、「God Turn Me Into a Flower」にも見受けられるように、これらの曲は、決して、古びているわけでもないし、懐古的なアプローチであるとか、アナクロニズムに堕しているとも言いがたい。常に、このセカンドアルバムでは、ポスト・モダンに焦点が絞られ、そして、メリング本人が話している通りで、既存の音楽を破壊し刷新するような「脱構築主義」にポイントが置かれているのである。古典的なポップス、映画音楽、そして、ジャズ、クラシックの要素がごく自然に入り混じったナタリー・メリングの楽曲は、モダンなエレクトロのアレンジが付け加えられることで、複雑な構造を持つ音楽へと転化されている。さらに、メリングの女性的なロマンチシズムを込めた叙情的な歌詞や、伸びやかな歌唱によって、これらの曲は、ほとんど信じがたい、神々しい領域にまで引き上げられていくのである。
これらの「ポスト・モダン・ポップスの最新鋭」とも称すべき、親しみやすさと円熟味を兼ね備えた楽曲の合間に、オーケストラ・ストリングスを交えた間奏曲が導入され、作品として十分な緩急を織り交ぜながら、空気や水の流れのように、流動的な雰囲気を持ち、その場に一時たりともとどまらず、音楽における贅沢な恋愛物語がロマンチックかつスムーズに展開されていく。そして、メリングは、それらのロマンチシズムに現実的な視点を込めることにより、我々が生きる先行きの見えない、2020年代の灰色の時代の中にある救いや光を見出そうとするのだ。
では、果たして、ナタリー・メリングが追い求めようとする救いは、ここに見いだされたのだろうか? それはアルバム『And In The Darkness,Hearts Aglow』全編を聴いてのお楽しみとなるが、このアルバムの中で「God Turn Me Into a Flower」と合わせて、最もロマンティックな楽曲といえるクローズド・トラック「A Given Thing-与えられたもの」では、昨今の二年間にわたり、このアーティストが訪ね求めていた答えらしき何かが、暗喩的に示されているのに気がつく。
ピアノのシンプルな伴奏、古めかしいハモンド・オルガンのゴージャスなアレンジを交えたクラシック・ジャズ的な芳醇さを持ち合わす、このクライマックスを劇的に彩る楽曲において、ウェイズ・ブラッドは、楽曲が幾つか出来つつあり、今後開催するツアーで段階的に観客の前で新曲を披露していくと話す、三部作の最後のスタジオ・アルバムのテーマがどうなるのかを予兆的に示し、二年間にわたる分離された社会に自分が見出した感慨を、さながら劇的な恋愛小説のクライマックスを演出するかのように、甘美に、あまりにも甘美に歌いながら、『And In The Darkness,Hearts Aglow』の持つ、穏やかで、麗しい、この壮大な物語から名残惜しげに遠ざかっていく。「ああ、それは、きっと与えられたものなのだ、愛は、永遠に続く・・・」 というように。
97/100
Weekend Featured Track 「A Given Thing」
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Beth Orton |
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Jenny Hva ©Jenny Berger Myhre |
ノルウェー/オスロのシンガーソングライター、Jenny Hval(ジェニー・ヴァル)がニューシングル「Buffy」をリリースした。このシングルは、今年初めに発売されたノルウェー人シンガーソングライターの最新アルバム『Classic Objects』に続くものです。下記よりご覧ください。
「Buffy The Vampire Slayerを何度も観たからか、即興で歌詞を書いたんだ」とHvalは説明している。
「バフィーのような多くのエピソードを持つテレビシリーズは、創造的かつ政治的なリハーサルとして使うことができるという考え方が好きなんだ。独裁政権、プルトクラシー、神権政治を打倒するリハーサルをするエピソード形式?」
「"バフィー”はスレヤーやスーパーヒーロー、フェミニストのアイコンについての歌ではないの "と彼女は付け加えた。「どちらかというと、希望についての歌だけど、控えめで、エピソード的な方法でね。私にとって、希望は繊細な方法で提示されたときに、より希望に満ちたものになるからよ」
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Mitki©︎lisa czech |
NYのシンガーソングライター、Mitski(ミツキ)が新しいデモEPを独占的にリリースしました。
Rough Tradeの店舗、店頭、オンラインにて限定発売される4曲入りの『Stay Soft, Get Eaten: Laurel Hell Demos』は12インチレコードで12月に発売予定。ストリーミングやダウンロードは配信されません。Rough Tradeは今年のアルバム「Laurel Hell」の新しい "Ruby & White Bloom "カラーのビニール盤を在庫限り販売する予定。
このデモEPのリリースに関して、プレスリリースでは、次のように説明されている。"「Stay Soft, Get Eaten: Laurel Hell Demos' EPは、Mitskiの曲の核となる部分が、その年のアルバムに結実する前の、骨格となる形、そして進行中の作業として聴ける貴重な機会となるでしょう。"
Mitskiは、今年始めにDead Oceansから最新アルバム『Laurel Hell』を発表し、ビルボードトップアルバムチャートの1位を獲得した。レビューはこちらからお読み下さい。
Mitski 『Stay Soft, Get Eaten: Laurel Hell Demos』
Label: Dead Oceans
Release: 2022年12月9日
Tracklist:
1.Valentine,Texas(Demo Version)
2.Love Me More(Demo Version)
3.Stay Soft(Demo Version)
4.Gride(Demo Version)
Rough Trade:
https://www.roughtrade.com/gb/product/mitski/stay-soft-get-eaten-laurel-hell-demos
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©︎Neil Krug |
Weyes Bloodは、今週金曜日(11月18日)にリリースされるアルバム『And In The Darkness, Hearts Aglow』からの最後のシングルを公開しました。「God Turn Me Into a Flower」は、Oneohtrix Point NeverのDaniel Lopatinがシンセで参加しています。
"God Turn Me Into A Flower "は、メリングのクリスタルな歌声が痛々しいほど近くに感じられるバラード曲です。
メリングのボーカルは、Oneohtrix Point NeverのDaniel Lopatinのドリーミーなシンセサイザーによって縁取られ、時折ストリングスとチャイムがアクセントを加えている。しかし、メリングの声の大きさ、輝きに匹敵するものは他にない。彼女は神聖なソプラノと、より深く苦悩に満ちた遠吠えの間で揺れ動く。「この音域で彼女は「あなたは簡単に粉々になる」と歌い、その破片をすべて拾い集めることはできない。自分を見失う呪い/鏡があなたを遠くに連れて行くとき」。
34歳のメリングはカリフォルニア州サンタモニカ出身だが、ペンシルベニア州ドイルタウンで育ち、教会で育った彼女は、賛美歌や合唱曲、クラシック曲に惹かれるようになった。"God Turn Me Into A Flower "のような曲には、宗教というより教会の音楽的影響が色濃く出ている。「現代の素晴らしいクラシック音楽や初期の音楽のほとんどは、神聖な空間で神のために書かれている」と、メリングは過去に語っている。"だから聖なる音楽、聖なる空間の音楽、それが私の好きな音楽だったんだ"
ナタリー・メリングは、このアルバムを発表した際の声明の中で、次のように説明している。「God Turn Me into a Flower 」では、ナルキッソスの神話を再現している。彼はプールに映る自分の姿に執着し、飢餓状態に陥り、夢中になっている自分以外の知覚を失ってしまう。傲慢な彼は、あれほど情熱的に望んだものが、結局は自分自身に過ぎないことに気づきませんでした。神は彼を、宇宙とともに揺れ動くしなやかな花に変えてしまったのだ。
そして、2019年の『タイタニック・ライジング』に続く『イン・ザ・ダークネス、ハーツ・アグロー』には、先に公開されたシングル「グレープヴァイン」と「イッツ・ノット・ジャスト・ミー、イッツ・エヴリバディ」が収録されています。
カーディフ出身のシンガーソングライターで、テレビ司会者としても活躍するH. ホークラインことHuw Evansは、5枚目のアルバム『Milk for Flowers』のリリースを発表しました。本作は、Heavenly Recordingsから3月10日にリリースされる予定となっている。
ヒュー・エヴァンズはアルバムのタイトル・トラックと、さらにBen Hardyが撮影、Casey Raymondが編集、Daisy Smithが振り付け、Gus SharpeがスタイリングしたMVを公開しました。映像は以下よりご覧ください。
「Griefは聴かずにはいられない曲で、覚えた瞬間から歌うのをやめられなくなる」とHuw Evans(ヒュー・エヴァンズ)はコメントしている。
「その音楽は風景を描き、毎日の糸を引く。忘れ去られた片隅や手入れのされていない庭は、病的な植物で豊かになり、アイスリンクや遊び場はコードごとに朽ち果てていきます。このビデオ(今回で3作目)は、その感覚を最も直接的な方法で表現しようとしたものです。毎日がオーディション。少なくとも、私はサウンドトラックを選ぶ」
『Milk for Flowers』は、エヴァンスの長年のコラボレーターであるケイト・ル・ボンが制作と音楽で参加しています。
「ケイトは、他の誰にもできないことをやってのけたんだ。ケイトがいつもやっていることだよ」とエヴァンスは語っています。
「私の親愛なる友人であるH.Hawklineが、自分自身に折り重なるように、恐ろしい時間から、絶妙に生々しく、しかし巧みに優雅なアルバムを抽出するのを私は見ていました。私はプロデューサーとして信頼され、彼がこの美しい作品を存在させるために優しく手助けをするという大変な名誉を得ました。彼は、一日のあらゆる色彩に対応できるような音楽と歌詞を書く。彼は不条理と一緒に哀愁を漂わせるテーブルに座り、誰も目を伏せることはない。努力せずにはいられないが、いつも自然な手つきで、内側からピースを動かしている。旧友に感動し、驚かされ続けることは、とても美しいことだ」
このアルバムでは他に、デイビー・ニューイントンがドラム、ポール・ジョーンズがピアノ、ティム・プレスリーがギター、スティーブン・ブラックとユアン・ヒンシェルウッドがサックス、ハリー・ボーヘイがペダルスティール、ジョン・パリッシュがボンゴでコラボレートしています。Milk for FlowersはJoe Jonesがエンジニアリングを担当し、Krissy Jenkinsが追加エンジニアリングを担当した。ミキシングはPatrik Berger、マスタリングはHeba Kadryが担当しています。
H.Hawkline 『Milk for Flowers』
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Kae Tempest |
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Romy ©︎Vic Lentagne |
The xxのRomyが、Fred Again.をフィーチャーしたニューシングル「Strong」を発表しました。Fred Again.とStuart Priceとともにプロデュースしたこの曲は、Romyの妻で映像作家・写真家のVic Lentaigneが監督したビデオも公開されている。こちらは下記よりご覧下さい。
「Strong」は、Romyの2020年のシングル「Lifetime」、ソロ・デビュー作、そしてFred again...とのコラボレーション「Lights Out」に続く作品となる。
ロミーは、声明の中で、「『Strong』は、私が過去の悲しみを処理している時に生まれた」と述べている。
「歌詞を書きながら、いとこのLuisのことを考えてたの。私たちは、幼い頃に母親を亡くしたという共通の経験を持っている。私たちは、幼い頃に母親を亡くしたという共通の経験を持っています。彼は、感情を抑え、勇敢な顔をしようとする私と同じような性質を持ってます。この曲は、このような感情とつながり、サポートを提供し、最終的には音楽の幸福感の中で解放感を得るための方法だったのです。シングルのジャケットとミュージックビデオには、ルイスが一緒にいてくれて、本当に特別な気持ちになりました」
ロミーはさらに続ける。「フレッドとの友情は私にとってとても大切なもので、私たちの距離が近いからこそ、安心して正直で傷つきやすい歌詞を書くことができるし、ソングライティングやダンスミュージックにおける感情への愛で、私たちは間違いなくつながっているのよ。フレッドがソロでやっていることを見たり聞いたりするのは素晴らしいことだし、刺激になるし、一緒にこの曲をリリースできることにとても興奮している」
昨日、米国のシンガーソングライター、Sharon Van Etten(シャロン・ヴァン・エッテン)は最新アルバム『We've Been Going About This All Wrong』のデラックス・エディションをリリースしました。全曲のストリーミング/ご購入はこちら。アルバムのレビューは下記よりお読み下さい。
リリースに合わせて、このアルバムの収録曲「When I Die」のリリックビデオが公開されました。この曲のリリック・ビデオも公開されています。
Sharon Van Ettenは以前のプレスリリースで、リスナーがアルバム全体を一度に聴くことを望むことについて、次のように語っている。
「最初から最後まで、このアルバムは、私たちがそれぞれの方法で経験したこの2年間のジェットコースターを記録した感情の旅です。その旅に一緒に乗っていただければと思います。私の側にいてくれてありがとう」
以前、ヴァン・エッテンがアルバムの予告編を公開していた。このアルバムには彼女の2022年のシングル「Used to It」は収録されておらず、またデラックス・エディションにも収録されていない。
『We've Been Going About This All Wrong』は、Jagjaguwarから2019年にリリースされた『Remind Me Tomorrow』に続く作品である。
ヴァン・エッテンは『We've Been Going About This All Wrong』をダニエル・ノウルズと共同制作し、ロサンゼルスの実家に新設した特注スタジオでそのほとんどを自らレコーディング、エンジニアリングしている。Van Ettenはこのアルバムでギター、シンセサイザー、ピアノ、ドラムマシン、ウーリッツァー、鍵盤などを演奏していますが、ドラムにJorge Balbi、ベースにDevon Hoff、シンセサイザーとギターにライブ音楽監督のCharley Damskiという彼女の通常のツアー・バンドが参加しています。
ヴァン・エッテンは、前回のプレスリリースで、「今回のリリースでは、アルバム全体をひとつの作品として提示するために、これまでとは異なるアプローチで、意図的にファンを巻き込みたかった」と語っています。「この10曲は、希望、喪失、憧れ、回復力といったより大きな物語が語られるように、順番に、一度に聴くことができるように設計されている」
アルバム・ジャケットについて、ヴァン・エッテンはこう語っている。「必ずしも勇敢ではなく、必ずしも悲しくもなく、必ずしも幸せでもない、全てから立にち去る私をイメージして、それを伝えたかった」
Sharon Van Etten 『We've Been Going About This All Wrong』 deluxe edition
Label: jagujaguwar
Release: 2022年11月11日
Review
オリジナル盤は5月に発売され、軒並み、海外のレビューは概ね好評であったものの、傑作以上の評価まで到達したわけではなかった。この作品のレビューを飛ばしたのは、その週に多くの注目作がリリースされたことがあったのが1つ、そして音楽性の本質を掴むことが出来なかったという理由である。
アルバムは、ロックダウン中、LAの自宅のスタジオでレコーディングされた。5月に聴いた際には、オープンニングトラック「Darkness Fades」を始め、重苦しい雰囲気に充ちた楽曲が印象的であった。これは、シャロン・ヴァン・エッテンが、この作品に、家族との生活を通して見る、内面の探求というものがテーマに掲げられているからだと思う。このアルバムは非常に感覚的であり、抽象的な音楽性であるためか、第一印象としては影の薄い作品の一つだった。
ところが、このアルバムは聴いてすぐ分かるタイプの作品ではないのかもしれないが、少し時間を置いて改めて聞き返したとき、他のアルバムより遥かに優れた作品であることが理解出来る。アルバムの出足は鈍さと重々しさに満ちているが、徐々に作品の終盤にかけて、このシンガーの存在感が表側に出てきて、クライマックスでは、このアーティストらしい深い情緒が出てきて、その歌声に、神々しい雰囲気すら感じられるようになるのである。特に、オリジナル盤の収録曲として、#7「come back」と#8「Darkish」が際立っている。この2曲は、このアーティストのキャリアにおける最高傑作の1つと言っても差し支えなく、ダイナミックさと繊細さを兼ね備えた傑出したポップミュージックであるため、ぜひとも聞き逃さないでいただきたい。
しかし、全般的に高評価を与えられたにも関わらず、傑作に近い評価が出なかったのには原因があり、全体的に素晴らしい作品ではあるものの、オリジナル盤は、展開が盛り上がった来た時に、作品の世界が閉じてしまうというような、いくらか寂しさをリスナーにもたらしたのも事実だったのだろうと思われる。これらは5月の始めに聴いた時も思ったことで、オリジナル・バージョンについては作品自体が未完成品という感もあり、聞き手が、この音楽の世界にもっと浸っていたいと思わせた瞬間に、作品の世界が終わり、突如として遠ざかっていってしまったのである。つまり、この聞き手の物足りなさや寂しさを補足する役目を果たすのが、今回、4曲を新たに追加収録して同レーベルからリリースされたデラックスバージョンなのではないかと思う。
オリジナルアルバム発売の直前に公開された、Covid-19のロックダウン中の閉塞した精神状態からの回復について歌った「Porta」や、同じく発売以前に公開された「I Used To」といったスタイリッシュな現代的なシンセ・ポップが追加収録されている。二曲目は、曲名が似ているが、昨年リリースされたエンジェル・オルセンとのフォーク・デュエット曲「Like I Used To」とは別作品となっている。これらの曲については、アーティスト本人が、この最新アルバムの収録曲にふさわしくないと考えたかもしれない。
しかし、改めてこのデラックス・バージョンを聴くと、作品の印象が一転しているのに気がつく。不思議なことに、オリジナルバージョンでなくて、今回発売されたデラックスバージョンこそが完成品なのではないかと思えてくる。デラックスバージョンとして見ると、名盤に近い、傑出した作品である。
Feature Track 『Come Back』