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LAのシンガーソングライター、Laufey(レイヴェイ)が『Bewitched』の4thシングル「California and Me (feat. Philharmonia Orchestra)」を公開した。日本国内では、Asteri Entertainmentより本日発売される。ストリーミングは本記事の下部より。

 

アイスランドと中国、両方のルーツを持ち、現在はLAを拠点に活動するシンガー・ソングライター、マルチ奏者のレイヴェイ。 2023年6月5日(月)に行われたブルーノート東京での初来日公演が2ステージとも5分で即完した。


秋のワールドツアーも35公演瞬く間にソールドアウトさせるなど、全世界でレイヴェイ旋風を巻き起こす中リリースとなる「California and Me (feat. Philharmonia Orchestra)」は、前シングル「Bewitched」に続き、ロンドンを拠点とするフィルハーモニア管弦楽団を迎えた一曲。

 

「アイアンマン3」、「アベンジャーズ / エイジ・オブ・ウルトロン」、「ベイビー・ドライバー」、「王様と私」などの数々のハリウッド映画のサウンドトラックでも知られる、世界的に有名なオーケストラの豊かなサウンドが、“ジャズ、クラシック、ポップを温かく融合させたスタイル” と称されるレイヴェイのドリーミーなサウンドとマッチしている。


「子供たちはもちろん、生粋のクラシック批評家たちも、彼女の音楽を愛しています。彼女のサウンドを『ジャズポップ』と表現することもできますが、彼女の、時代を超越したサウンドを1つのジャンルに当てはめることは不可能でしょう。」—「VOGUE Scandinavia」


 

 

      

また、Laufeyはファンからのクロスワードパズルの解答を募る形で、『Bewitched』のトラックリストを下記の通り公表している。

 

新作には、先行シングルとして公開された「From The Start」「Promise」「Bewitched」、「California and Me (feat. Philharmonia Orchestra)」を含む珠玉の14曲が収録される。

 

 

 

数々のメディアから、「クラシックやスタンダード・ジャズからインスピレーションを得て
オリジナルの音楽スタイルを確立している」と称賛されるレイヴェイ。若い世代から着実に支持を集める次世代の歌姫の時代を超えたサウンドスケープをお楽しみください。



Laufey 「California and Me (feat. Philharmonia Orchestra)」ーNew Single-


 

リリース日:2023年8月24日(木)

レーベル:ASTERI ENTERTAINMENT (アステリ・エンタテインメント)


ストリーミング/ダウンロード:

https://asteri.lnk.to/california

 

©Brianna Blank


ビヴァリー・グレン=コープランドが、ニューアルバム『The Ones Ahead』の新曲「Stand Anthem」を発表した。グレン=コープランドと彼の長年のパートナーであるエリザベスとのコラボレーションで、「Harbour (Song for Elizabeth)」「Africa Calling」に続く作品です。


「"Stand Anthem”は元々、エリザベスが書いた「Bearing Witness」という一人芝居のエッセンスを表現するために書かれた曲だった。「彼女はこのショーの脚本、プロデュース、演出、出演を担当し、マウント・アリソン大学のサポートのもと、あの比類なき(今は亡き)カナダのドラマトゥルク、シャロン・ポロックの支援を得てワークショップを行った。ショーでは、私と先住民の長老が「長老の声」を代弁した。これはエリザベスの先見的で、地球活動家的なショーで、まったく素晴らしいものでした」

 

「Stand Anthem」



Beverly Glenn Copelandの新作アルバム『The Ones Ahead』はTransgressiveより7月28日発売予定。

 Maisie Peters -『The Good Witch』

 

Label: Warner Bros.

Release: 2023/6/24



Review


結局、アルバムの発売日というのは大局的に見ると、売上を大きく左右する場合がある。レーベル側の売り込みの定石としては、話題のイベント開催と重ならないように慎重にリリース日を選ぶということに尽きる。去年もそうだったが、現地の音楽メディアのプレス・ルームが、音楽フェスティバルが開催される日には空っぽになり、メールなどを送っても連絡がつかなくなる場合が多い。 


今年、来日公演も行ったブライトンのシンガーソングライター、メイジ−・ピーターズはグラストンベリー・フェスティバルの初日に、ニューアルバム『The Good Witch』の発売日を合わせてきたわけだが、これはレーベルが相当この作品によほど自信があるか、もしくは発売日に無頓着であるかのどちらかである。もちろん後者については考えづらいので、他のアーティストのリリースが先延ばしにされる日を見計らい、前者の奇策を打ったのが、アルバムの宣伝の意図とも推測される。

 

そして、世界有数の巨大レーベルの奇策はそれなりに成功を収めるかもしれない。もちろん、イギリスの全ての音楽ファンがグラストンベリーに参加出来るわけではない。このフェスティバルはチケット発売日から数時間後にソールドアウトとなった。チケットが取れずに、夜な夜な枕を濡らした音楽ファンも少なくはない。つまり、メイジー・ピーターズの新作はグラストンベリーに参加できなかったポップスファンの心を慰め、フェスティバル級の楽しみを与えてくれるはずだ。

 

アーティストはポップネスに欠かさざる清涼感溢れる音楽で、ミュージック・シーンに清新な風を巻き起こそうとしている。アルバムには、アーティスト自身の恋愛観などを絡めながら、「Good Witch-良き魔女」として振る舞おうとするポップスターの姿を捉えることが出来る。スタジアムでのライブを意識したアンセミックなポップナンバーの数々は、ポップミュージックファンの最低限の要求に応えるもので、もしかすると、それ以上の至福の瞬間を与えてくれる可能性もある。前2作では、甘酸っぱいキャンディー・ポップとも称すべき音楽性を提示していたメイジー・ピーターズだったが、三作目では、さらにオープンハートな曲作りが行われている。メイジ−・ピーターズは、UKポップスのトレンドを踏襲し、旧来のアヴリル・ラヴィーンの名曲のようにロックのテイストを交えた王道のポピュラー・ミュージックを展開する。表向きには親しみやすさを意識してはいるが、聴き応えがあるため一度聴いて飽きるような作品ではない。どころか何度も聞き返したくなるような中毒性もあるように思えるが、これはアーティストの音楽に対する強い愛情がこれらの収録曲に余すところなく込められているがゆえなのだ。

 

特に、前2作に比べて、昨年ヒットを記録したサワヤマの音楽性を少なからず意識したダイナミックなポップスナンバーがずらりと並んでいる。ナイーブさとパワフルさが混在する絶妙なポップスの数々である。もちろん、Tiktokのように、一曲だけ取り出して気軽に楽しんでみるのもいいだろうし、アルバムを購入し、最初から最後までじっくりと聴いてみてもいい。聞き方を選ばない自由なモダン・ポップという面では、昨年のサワヤマの最新作「Hold The Girl」に近いものがある。リナ・サワヤマは、昨年の最新作において、ハイパーポップの理想的な形を提示したのだったが、ポップスの中にエヴァネッセンスのメタリックな要素や、フックの効いたロックないしはフォーク・ミュージックの要素を絶妙に織り交ぜることで、最高傑作を生み出した。


メイジー・ピーターズも、その成功例に倣い、ポップスの中に複数のジャンルを織り交ぜ、強いスパイスを加えることに成功している。シンガーソングライターの作曲における試行錯誤の成果が、「Body Better」、「Lost The Breakup」、「Therapy」といったハイライト曲に顕著な形で現れている。これらの曲は、ラムネ・ソーダを飲み干すときの爽快感があり、青春の甘酸っぱい雰囲気に溢れている。曲の構成もすごくわかりやすく、サビに近いフレーズもあるので、それほど洋楽に詳しくないJ-Popのリスナーにも強烈にプッシュしておきたい。

 

スタジアム級のダイナミックなポップスの楽曲群に加えて、終盤の収録曲では多彩な音楽性を織り交ぜて新たなチャレンジをしている。「Run」では、グライムなどをはじめとするUKのクラブミュージックを基調にしたポップスに、さらに、「Two Weeks Ago」では、シャナイア・トゥエインを彷彿とさせるフォーク・ミュージックに取り組み、さらに「History Of Man」では、しっとりとしたバラード・ソングにも取り組んでいる。


表向きのガーリーなイメージとは別の大人の雰囲気を交えたバラードは、アーティストが「良き魔女」に変身した瞬間だ。これらの多彩な音楽性は、以前の作風にはなかった要素で、アーティストがシンガーソングライターとしての次なるステップに歩みを進めた証でもある。本作の音楽性には、まだ見ぬソングライターとしての潜在的な可能性が秘められている。ブライトンのメイジー・ピーターズは、世界的なポップ・スターへの階段を着実に駆け上っている最中なのである。

 

  

86/100

 

 

 Featured Track 「Lost The Breakup」

 

 ©︎Chuck Grant

 

ラナ・デル・レイの父親であるロブ・グラントは、デビュー・アルバム『Lost at Sea』をリリースしました。

 

このアルバムから新しいシングルが公開されました。「Hollywood Bowl」は先にリリースされたタイトル曲(MVはこちらより)に続き、アルバムに収録された娘との2つのコラボレーションのうちの1つです。以下よりお聴きください。アルバムのストリーミングはこちらからどうぞ。


ローラ・シスク、ザック・ドーズ、ジャック・アントノフとの共同プロデュースによるこの曲で、ラナ・デル・レイは「2回、ハリウッド・ボウルで歌った/そして私のパパはビリー・ジョエルのように演奏する/そして私は年をとっても若いし、年をとっても若い/私のハートと魂の気まぐれで」と歌いあげています。


ロブ・グラントはこの作品について次のように説明しています。「このアルバムの中で一番好きな曲のひとつだ!ラナが見せるヴォーカルの幅は信じられないほどだ。ピアノは繊細なメロディで始まり、美しいリリースへと発展していく...そこで音楽は突然あなたを持ち上げ、そして席巻するだろう」

 

「Hollywood Bowl」

 

 ©︎Briana  Blank

 

米国出身で、カナダでその半生の多くを過ごした歌手、Beverly Glenn-Copeland(ビバリー・グレン=コープランド)は、約20年ぶりのアルバム『The Ones Ahead』から2ndシングル「Harbour (Song for Elizabeth)」を公開しました。先行公開された「Africa Calling」に続く作品で、Indigo Risingのメンバー、Jeremy Costello(ジェレミー・コステロ)がボーカルを務めています。

 

ノバスコシア州のLakewind Sound Studiosで撮影され、Posy Dixonが監督した新しいライブ・パフォーマンス・ビデオも下記からチェックしてみてください。

 

「エリザベスの誕生日には、毎回彼女に曲を書いていますよ」とグレン=コープランドは声明でコメントしています。「この曲を書いた日付は定かではないが、彼女がそのコピーを持っていたのは幸運だった。さもなければ失われていただろうから。私はすっかり忘れていたんです」

 

 「Harbour (Song for Elizabeth)」

 

 

エリザベスと私は、1992年以来の友人でした。2007年、共通の友人の結婚式で、個人的な深い愛の火花が散りました(その結婚式の前に彼女が見た私たちに関する夢について、ここには素晴らしい話があるのですが、それは彼女が語ることになるでしょう)。私たちは2009年に結婚した。以来、彼女は個人的にもクリエイティブな面でも、人生のあらゆる場面で私のパートナーとなってくれています。 


 この曲は、結婚当初の数年間、私たちを支えてくれた彼女の深い愛と私への献身を称えるためにこのアルバムに収録しました。この数年間、肉体的にも精神的にも辛い時期があり、私の世話をするため、自分の創作活動を諦めねばならなかった彼女の献身を、私は認め、称えなければなりません。私にとり、港は、人生の荒波にもまれたときに安全な場所を意味します。エリザベスは、私にとってまさにそのような存在だった。彼女は、世界中の誰も気にしていないような時代でも、私の仕事を信じて切ってくれた。彼女は宇宙が与えてくれた私の人生の愛であり、私は真心から感謝しています。


ビバリーグレン=コープランドの新作アルバム『The Ones Ahead』は、7月28日にTransgressiveからリリースされる予定です。

 


カナダ/アメリカの歌手で作曲家のビバリー・グレン=コープランドが、約20年ぶりのニューアルバムを発表しました。『The Ones Ahead』は7月28日にTransgressiveから発売されます。直近のソロ・リリースは2004年の『Primal Prayer』だが、2020年には『Transmissions』を共有している。『The Music of Beverly Glenn-Copeland』は、ライブ演奏やアーカイヴ録音を含む優れたコンピレーションです。

 

『The Ones Ahead』は、インディゴ・ライジングをバックバンドに迎え、ジョン・ハーバーマンがプロデュースして録音された。トランスの先駆者であり、熱心なスピリチュアリストでもあるビバリーは、「古い世界が崩れ去る中、新しい世界が生まれるのを待っているのです。私たちのさまざまな力が必要とされているのです。まだ来ていない人たちの世代が、私たちを呼び寄せているのです」


ニューアルバムからの最初のシングルは、ポリリズムのパーカッションと暖かいボーカルで高揚感を与える「Africa Calling」です。

 

「80年代、私はDidoという西アフリカの太鼓の名手と共演する機会に恵まれました。このドラムの伝統の美しさは、『アフリカ・コーリング』の中で探求されています」と、ビバリーは話してくれました。

 

「長年にわたり、多くの会話をする中で、私は、アフリカン・ディアスポラの他の多くのメンバーと、定義できない、名前のない感覚、つまり天職を共有していることを理解するようになりました。悲しみと同時に、大西洋を横断する奴隷貿易の時代に家系が引き裂かれ、隠されてきた自分たちのルーツを知りたいという切望がある。植民地主義のしがらみにとらわれた世界で、この何世代にもわたる切望に耳を傾ける必要があるのは、私一人ではないことを私は知っています」


「Africa Calling」


 

Beverly Glenn-Copeland 『The Ones Ahead』


 

Label: Transgressive

Release: 2023/7/28

 

Tracklist:


1. Africa Calling

2. Harbour (Song For Elizabeth)

3. Love Takes All

4. People Of The Loon

5. Stand Anthem

6. The Ones Ahead

7. Prince Caspian’s Dream

8. Lakeland Angel

9. No Other

 

Florence + the Machine

Florence + the Machine(フローレンス・ウェルチ)は、2022年に発表した『Dance Fever』の「完全版」と称される作品に収録されている新曲「Mermaids」を公開しました。


昨年10月には、IDLESがリミックスを手掛けた「Heaven Is Here」をリリース、12月には、フローレンス・ウェルチがEthe Cain(エセル・カイン)とコラボレーションし、ダンス・フィーバーの楽曲「Morning Elvis」の新バージョンを発表しています。今年の初めには、Showtimeのシリーズ「Yellowjackets」のためにNo Doubtの「Just a Girl」をカバーしています。

 

また、フローレンス・ウェルチは以前から自らの意志で断酒をしており、この習慣は続いているようです。さらに、昨年、ウェルチは公演中に足を怪我をしていますが、幸いにも、それほど深刻な事態にはならなかったようで、現在、アーティスト活動に復帰しています。

 

「Mermaids」

 Fenne Lily 『Big Picture』

 


Label: Dead Oceans

Release: 2023年4月15日

 

 

 

Review

 

イギリスのシンガーソングライター、フェン・リリーの最新作は、ブリストルで制作され、20年の思いを手放すために曲が書かれました。レトロなポップスの影響を感じさせる一方で2020年代を生きる私達の日常的な感覚を繊細かつ巧みに表現した一作となっています。アルバムにはフェン・リリーというアーティストが音楽をどれだけ愛しているか、そして日常的に溢れる感覚を温かな感慨によって包み込もうとしているのか理解出来るはずです。

 

このアルバムの全体は、アメリカの90年代のUSインディーロックと、アーティストの趣向である70、80年代のポップスをかけ合わせた柔らかい感覚に充ちた作品となっている。フェン・リリーは詩の言葉を抱きしめるかのように丹念に歌っている。結果的には、ディストーションを交えたギターロックや、ノスタルジア溢れるフォーク・ミュージックと結びつくことで、心地よいサウンドが生み出された。フェン・リリーのサウンドは、海のように果てしなく、そして癒やされる感慨が漂っている。そして、それが彼女らしい素朴な表現性により、聞きやすい音楽という形で昇華されている。こういった音楽が嫌いという人はあまりいないのではないでしょうか?

 

オープニングトラックとして収録され、また、先行シングルとして紹介された「Map Of Japan」はアルバムの代表的なナンバーとなる。まるで春の到来を告げ知らせるかのようなリリーの歌声は、聞き手の心を和ませ、穏やかな感慨をもたらす。そして、オーストラリアのジュリア・ジャックリンのように、ポップスの中には、コアなオルタナティヴロックの要素が自然な形で入り込んでいる。ただし、オルタナの要素があるにしても、それらは部分的な効果として導入されているに過ぎず、ポピュラーな歌そのものが持つ柔らかさを損ねることはありません。また曲の終わりにかけて導入されるエレクトリックピアノの音色は切ない余韻を残しています。

 

続く「Downcolored House」は一曲目の雰囲気を受け継ぎ、カントリーやフォークの影響を絡めたインディーロックであり、自然味に溢れるフェン・リリーの歌声がバックトラックと絶妙な合致を果たしている。 そして、一曲目と同様に、彼女は内向的な感覚を自然な形で歌っていますが、特にアルバム全体の穏やかな雰囲気は、この曲を通じて、深みを増していくように思える。さらに、同じくカントリーの影響を交えた「Light Light Up」でも、二曲目の温和な雰囲気が受け継がれている。続く「2+2」は、それ以前の曲よりもブルージーに歌い、コアなインディーロックと絡めることで、心地よい雰囲気がを生み出されている。それらは繊細なギターフレーズと彼女自身のコーラスの多重録音により、アンセミックな音響効果すら兼ね備えている。

 

これらの前半の流れを受け継いで、穏やかなスローテンポのオルタナティヴフォークが清らかな川の流れのごとく続いていく。フェン・リリーの繊細なビブラートを交えたボーカルによって心地よい音楽空間を先んじて提供し、聞き手がそのことを受け入れるのならば、それはやはり、作者が予測していた以上のコンフォータブルな空間に変化する。そして、そのフレンドリーな雰囲気が作品の後半に至るほど、音楽の深みと温かみが増していくように感じられる。それは歌の中に日常の些細な出来事を織り交ぜることで、聞き手に近づきやすさをもたらしているとも言える。これは内省的なエモーショナルな音楽として胸に迫る場合もある。

 

そういったアーティストの持つ温和さと親しみやすさが最高潮に達するのが終盤に収録されている「Red Deer Day」となる。おそらく、Get Up Kidsの「Red Letters Day」に因んだと思われる、バンジョーのようなギターの音色とペダルスティールの音色が織り交ぜられたカントリーポップスは、フェン・リリーというアーティストの正体がボン・イヴェールの女性版であることの証ともなるかもしれません。これらの曲は2020年代のポップスのメインストリームにある音とは別の側面を刻印したものとしてアルバムの最後まで続いていくのです。


このアルバムはアーティストと聞き手の対話のようでもあり、またそれは聞き手がフェン・リリーの作品に参加してはじめて完成となる。穏やかな週末の午後、ゆったりした気分に浸りたいときにお勧めしたい作品です。

 

 

84/100 



Featured Track 「Map Of Japan」

 

Angel Olsen


昨日、jagujaguwarより発売となった米国の実力派シンガーソングライター、Angel Olsen(エンジェル・オルセン)の最新作である『Forever Means』EPは、昨年リリースされたフルアルバム『Big Time』に続く作品で、実際に続編のような意味を持つ作品です。また、前作のフルレングスで製作者が言い残した何かを伝えるコーダのような役割を持つ作品として位置づけられるかもしれません。エンジェル・オルセンは、昨年のプロジェクトのアイデアを共有し、それを再確認しながら、愛と友情の文脈で「『永遠』とは何か」という問いを投げかけています。

 

オルセンは、私たちがいかにして成長しているか、そして「永遠」という概念を変化し続ける人生にどのように適応させればいいのかについて熟考する。このEPを構成する4曲の中で、オルセンは自分の考えを深く掘り下げています。


この最新作のオープニングを飾る "Nothing's Free "では、エンジェル・オルセンはEPのテーマである質問に対する答えを、「永遠は変化を説明できない」と外見的に暗示することから始めている。この歌詞は、ブルージーなインストゥルメンタルとともに、オルセンの声が反響し、彼女が誰もいない部屋に一人でいるような印象を与える。美しいピアノの音と力強いサックスで構成されたこの曲のブルージーな側面は、変化が避けられないという事実を彼女がどのように受け止めているか示唆しています。しかし、「そう、私たちは永遠に友達でいられる」と言われたら、それはどういう意味でしょう? 私たちの「永遠」という概念は、しばしば現在の私たちを満足させるための誇張表現になるようですが、実際には永遠とは言い難いのです。

 

タイトル曲では、オルセンがこの言葉を定義しているが、それは期待されたものではありません。しかし、それが重要です。彼女は永遠をさまざまな方法で表現し、それぞれを変化や自己成長に結びつけています。

 

「Foreverは、Take your timeという意味」と歌う彼女は、自分自身に集中するようにと呼びかけているように思える。一方、"Time Bandits "では、時間と "現在 "という感覚、つまり時間を失うことへの恐れと、一人の人間との時間を失うこと、それがその人に対する渇望を増加させることについて考察しています。そして、"Holding On "では、オルセンの考えていることに触れることができ、この曲の歌詞は、ミシシッピのウィリアム・フォークナーの意識の流れに近い感覚を擁している。彼女は恨みを抱くこと、それはいつも永遠に続くように感じられると表現し、女性的な感覚をうまく表現しようとしています。

 

さらに、新作EPの終わりには、オルセンはタイトルが約束するものを正確に検分し、リスナーを彼女の個人的な理解や経験へと導きます。Forever Meansは、人間関係、友情、つながり、思い出の捉え方について考える方法を提供し、オルセンはアーティスト、ミュージシャン、そして個人としての微妙な成長を示しています。

 

 

「Forever Means」


 

Lana Del Reyは、6枚目の全英アルバムNo.1を獲得し、これまでで最大の週間売上を達成しました。


オフィシャル・チャート・カンパニーによると、『Did You Know That There's A Tunnel Under Ocean Blvd』は、41,925枚の売上で首位に輝いた。


その過程で、デル・レイの9枚目のスタジオ・アルバムは、これまでのところ2023年の最速セールスとなった。CD9,717枚、ビニール・アルバム20,809枚、カセット2,582枚、デジタル・ダウンロード998枚を売り上げ、さらに売上等価ストリームから7,819枚を売り上げました。また、同アルバムはヴァイナル・チャートでも1位を獲得しています。


ラナ・デル・レイはこれまで、『ボーン・トゥ・ダイ』(2012年)、『ウルトラヴァイオレンス』(2014年)、『ラスト・フォー・ライフ』(2017年)、『ノーマン・ファッキング・ロックウェル』(2019)、『Chemtrails Over The Country Club』(2021)で一位を獲得している。


重要なのは、『Did You Know That There's A Tunnel Under Ocean Blvd』が9年前に48,028枚を売り上げ、『Ultraviolence』が1位にデビューして以来最大のオープニング週を達成したことです。この作品は、ラナ・デル・レイが最近リリースした作品の中で、2021年の『Blue Banisters』が、『Chemtrails Over The Country Club』の1位(初週売上40,111枚)からわずか7ヶ月後に2位にチャートインしたことで、売上が増加するパターンを踏襲しています。


ポリドール社長のベン・モーティマーは、次のように述べています。「私は2022年10月にこのアルバムのプレビューを手に入れることができて幸運でした。ラナがカリフォルニアの自宅で演奏してくれたのですが、想像通り、絶対的なキャリア・ハイライトでした。私は驚かされました。それ以来、私たちはアルバムの準備を続けています。彼女は世界で最も偉大なソングライターの一人であり、私たちは彼女をサポートできることをとても幸運に思っています」



タップ・ミュージックのベン・モーソンとエド・ミレットは、次のように述べています。「ラナは、自分自身に忠実であることで、記録と期待を破り続けています。

 

彼女は自分のレーンに立ち、決して揺らぐことなく、意図と芸術的な目的を持ってすべてを行い、偉大なアーティスト、長寿のアーティストは、その創造的な直感に突き動かされているものであることを思い出させてくれるのです。TikTokがカタログの発見を促し、素晴らしい新曲が生まれたことで、彼女のファン層はこれまで以上に広くなり、まったく新しい若いオーディエンスも増えています。


ラナのアルバムのリリースで重要なのは、彼女のアルバムの物語に入り込み、アルバムに生命を吹き込むことです。従来のメディアやソーシャル・メディアが他のアーティストと同じようなドライバーにならない場合、セットアップからリリースまで、こうしたイベント化された瞬間を作り出すことが、ファンベースを活気づけ、口コミで広めるための鍵となります。私たちは、この13年間、ラナの旅の一部であったことを誇りに思うと同時に、次のステップにワクワクしています。


3月24日(金)は、デル・レイのSpotifyにおける史上最大の1日で、全世界で3300万ストリーミングを記録しました。Did You Know...は、彼女のアルバムの中で最大のSpotify初日を迎え、世界中で1800万ストリーミングを記録しました。


Lana Del Reyは、Arctic Monkeys、Radiohead、Blurと並んで、最も多くのUK No.1を獲得したアーティストとなった。マドンナ(12枚)、テイラー・スウィフト(9枚)、カイリー・ミノーグ(8枚)、バーブラ・ストライサンド(7枚)に続く。


オフィシャル・チャート・カンパニーのチーフ・エグゼクティブであるマーティン・タルボットは、次のように述べています。 「ラナ・デル・レイがわずか11年の間に6枚のNo.1アルバムを獲得したことは、非常に素晴らしいことであり、特に彼女が今年のどのアルバムよりも大きな初週の数字を記録したことを考えると、その功績は大きい。彼女は、この時代の真のスーパースターです」

 

©︎Si Fish

Romi Oは、本日、ニューシングル「M2M」を発表した。Romi Oは創造性と情熱を第一に考えるシンガーソングライターで、最新のスタジオワークは、『M2M』というタイトルの素晴らしい新作(NYを拠点とするプロデューサー、ダニエル・ブロンドによるプロデュース)で、まさに唯一無二の音楽の旅の集大成のように感じられます。

 

この曲の流れを理解するには、このアーティストについて少し裏話をする必要があります。実はこの曲は、2023年後半にリリースが予定されている彼女のデビューアルバムからのセカンドシングルである。


イスラエルのテルアビブ出身のRomi Oは、物心ついたときからずっと音楽を作ってきた。彼女はソングライティングのチップを開発し続け、最終的にはヘブライ語で歌い書くことから、英語でパフォーマンスすることに切り替えました。彼女の音楽スタイルは、典型的なバラードから、ユニークでほろ苦いものへと進化していきました。

 

ロミ・オーの音楽が特別なのは、控えめな質感、親しみやすい歌詞、ハードなグルーヴが並存しているため。22歳になる頃、ニューヨークのブルックリンに移り住み、音楽で再出発を図る。バンド「PowerSnap」を結成し、ハイテンションなパンクやガレージの美学を追求する。やがて、バラードが好きだったころの自分に戻る。パンクやオルタナティヴ・ミュージックの要素を残しつつも、よりソフトに、より魅力的に、よりダイナミックに表現している。

 

彼女のステージネームは、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」に登場する「ロミオ」に由来しています。シェイクスピアの大ファンである彼女は、このキャラクターと特別なつながりを感じており、完璧な呼称だと感じたのです。

 

「M2M」は、彼女の芸術と音楽的技巧を示す例として際立っています。この曲は、主旋律が非常にキャッチーで、心をつかむものである。

 

この曲は、角ばったギターリフと深みのあるベースシンセラインを持つ催眠的で魅惑的なグルーヴを持っている。この曲は、人生の選択や決断に常に疑問を持ち、物事を深刻に捉えすぎることを恐れず、何事にも取り組むという考えを扱っている。バランスを取ることが重要であり、この曲は、人生の中で自分の選択によって切り開く道の儚さについて、非常に痛烈な観察をしている。

 

特に、多くのクリエイターが自分の目的や仕事について常に疑問を抱いているように、この思考プロセスはアーティストにとって真実味がある。同時公開された曲のミュージックビデオは、別のレイヤーのよう。ある意味、ストーリーを語るための別のアプローチであり、このリリースの原動力となる核となるコンセプトを視覚的に表現している。この曲では、パンチの効いた電子音と、ボーカルやギターなどの有機的な要素が、この曲の幅広い音色のパレットを構成している。

 

セットデザインは比較的素朴ですが、アーティストは、表情や背景のディテールや違いを使って、彼女の個性のさまざまな面を表現している。アーティストの描写はそれぞれ性格の特徴、願望、性別にとらわれないひねり、野心などを示す機会となっている。結局のところ、それらはすべて同じモザイクの房であり、ロミ・オーの信じられないほど万華鏡のような芸術性とビジョンを表しているのだ。

 

ロミ・オーは、インディー・ミュージックに対する素晴らしいアプローチを確立し、より幅広いジャンルの音楽を取り入れることで、より魅力的で興味深い音楽を聴衆に提供している。プロダクションのクオリティも素晴らしく、作曲にさらなる価値を与え、サウンドの完成度、情熱、音楽の美学において、Romi Oをまったく新しいレベルに引き上げている。このナンバーでは、Romi Oがすべての面で優れているため、これはまさにWin-Winの状況と呼ばれるものである。

 

ソングライターとしての道を歩み始めた頃、ロミ・オーの曲はビタースイートなバラードに傾き、強いメランコリー感を漂わせていた。自分のジェンダー・アイデンティティに悩む彼女は、不安や自己嫌悪を抱え、それが「甘すぎる、ガーリーすぎる」と思われるジャンルへの嫌悪感となって表れていた。そのため、パンクやハードロックの世界へ飛び込み、ジェンダーレスで男性的なサウンドを目指した。シンガーソングライターとしての柔らかいイメージを捨て、女性らしさを前面に出したくない女性たちに道を開くために、低く、うなるように歌う。それが、内面的で苦しい性の葛藤に変わっていった。

 

二年前、精神的な目覚めの一環として、ロミは自分の女性的な側面を再発見し、彼女の甘く、柔らかく、心に響くバラードがリスナーの魂そのものに触れた。それ以来、彼女は自分の女性性と男性性を共に受け入れ、受け入れるという美しい旅を続け、その過程が彼女の音楽の折衷主義に寄与している。

 

この新しいスタジオワークは、Tune-Yards、Kimbra、Charli XCX、Dead Rituals、Trent Reznor、Bjorkといった影響力のあるアーティストの好みにぴったりかもしれませんが、Romi Oは決して他人の波に乗ろうとしているわけではありません。

 

 

「M2M」

 

 

 Romi O released her new single "M2M" today.Romi O is a singer-songwriter who puts creativity and passion first with her latest studio work, a stunning new album titled "M2M" (produced by NY-based producer Daniel Blonde), It feels like the culmination of a truly unique musical journey.

To understand the flow of this song, a little backstory about the artist is in order. The song is actually the second single from her debut album, which is scheduled for release in late 2023.

Originally from Tel Aviv, Israel, Romi O has been making music ever since she can remember. She continued to develop her songwriting chops and eventually switched from singing and writing in Hebrew to performing in English. Her musical style evolved from typical ballads to something unique and bittersweet.

What makes Romi O's music special is the juxtaposition of understated textures, relatable lyrics, and hard-hitting grooves. at the age of 22, she moved to Brooklyn, New York, to make a fresh start in music. He formed the band PowerSnap and pursued a high-octane punk and garage aesthetic. Eventually, he returned to his love of ballads. She retains elements of punk and alternative music, but expresses them in a softer, more engaging, and more dynamic way.

Her stage name comes from "Romeo" in Shakespeare's Romeo and Juliet. As a huge Shakespeare fan, she feels a special connection to the character and felt it was the perfect moniker.

M2M" stands out as an example of her art and musical craft. The main melody of this song is very catchy and gripping.

The song has a hypnotic and seductive groove with angular guitar riffs and deep bass synth lines. The song deals with the idea of always questioning life's choices and decisions and not being afraid to take things too seriously. It is all about balance, and the song makes some very poignant observations about the fragility of the paths we carve out for ourselves through our choices in life.

This thought process rings especially true for artists, as many creators are constantly questioning their purpose and work. The music videos for the songs released at the same time seem to be another layer. In a way, it is another approach to telling a story, a visual representation of the core concept that drives this release. The punchy electronic sounds and the organic elements of vocals and guitars make up the song's broad tonal palette.

Although the set design is relatively rustic, the artist uses details and differences in facial expressions and backgrounds to represent different aspects of her personality. Each of the artist's depictions is an opportunity to demonstrate personality traits, aspirations, gender-neutral twists, and ambitions. Ultimately, they are all clusters of the same mosaic, representing Romi-O's incredibly kaleidoscopic artistry and vision.

Romi-O has established a great approach to indie music, incorporating a wider range of musical genres to provide his audience with more engaging and interesting music. The production quality is also excellent, adding more value to the compositions and taking Romi O to a whole new level in terms of sonic perfection, passion, and musical aesthetics. This is what one might call a win-win situation, as Romi O excels in every aspect of this number.

When she first started out as a songwriter, Romi O's songs leaned toward bittersweet ballads and had a strong sense of melancholy. Struggling with her gender identity, she had insecurities and self-loathing, which manifested itself in an aversion to genres that were considered "too sweet or too girly. Therefore, she dove into the world of punk and hard rock, aiming for a genderless, masculine sound. She sings in a low, growling way, abandoning her soft image as a singer-songwriter to make way for women who do not want to put their femininity at the forefront. This turned into an internal and painful sexual struggle.

Two years ago, as part of a spiritual awakening, Romi rediscovered her feminine side, and her sweet, soft, haunting ballads touched the very souls of listeners. Since then, she has been on a beautiful journey of embracing and embracing her femininity and masculinity together, a process that has contributed to the eclecticism of her music.

While this new studio work may be right up the alley of influential artists like Tune-Yards, Kimbra, Charli XCX, Dead Rituals, Trent Reznor, and Bjork, Romi O is by no means trying to ride someone else's wave Romi O is by no means trying to ride someone else's wave.

ROMI O 「M2M」 New Single

 


 

Listen/Streaming:https://nanadisc.lnk.to/M2M 

 Sandrayati 『Safe Ground』

 



 

Label: Decca/Universal Music

Release Date: 2023年3月17日

 


 

 

Review

 

インドネシアのサンドラヤティは、今後世界的な活躍が期待されるシンガーソングライターである。


米国人とフィリピン人の両親を持つ歌手、サンドラヤティは、既に最初のアルバム『Bahasa Hati』をリリースしているが、自主レーベルからイギリスの大手レーベルのDeccaへ移籍しての記念すべき第一作となる。元々、英国の名指揮者とロンドン交響楽団のリリースを始め、クラシック音楽の印象が強いデッカではあるものの、サンドラヤティはソフトなポピュラーシンガーに属している。いかにこのシンガーに対するレーベルの期待が大きいか伺えるようである。

 

説明しておくと、サンドラヤティは、メジャー移籍後の2ndアルバムにおいて自身のルーツを音楽を通じて探求している。東インドネシアの固有の民族であるモロ族から特殊なインスピレーションを受けて制作された。

 

彼女の2つのルーツ、英語とインドネシアの言語を融合させ、コンテンポラリー・フォークとポピュラー・ミュージックの中間点に位置するリラックスした音楽性を提示している。サンドラヤティの音楽は、南アジアの青く美しい海、そして自然と開放感に溢れた情景を聞き手の脳裏に呼び覚ますことになるだろう。そして、サンドラヤティの慈しみ溢れる歌声、温かな文学的な眼差しは、インドネシアの先住民の文化性、また、土地と家の関係や父祖の年代との関係、それから、近年の環境破壊へと注がれる。彼女は、COP26で代表としてパフォーマンスを行っているように、ある地域にある美しさ、それは人工物ではなく、以前からそこに存在していた文化に潜む重要性を今作で見出そうとしているように思える。そして、曲中に稀に現れるインドネシアの民族的な音階と独特な歌唱法は、そのことを明かし立てている。穏やかな歌声と和やかなアコースティックギターを基調にした麗しい楽曲の数々は、普遍的な音楽の良さを追求したものであるともいえるかもしれない。

 

オープニングの「Easy Quiet」から最後までサンドラヤティの音楽は終始一貫している。繊細なアコースティックギターをバックに、その演奏に馴染むような形で、雰囲気を尊重した柔らかな感じのボーカルが紡がれていく。英語とインドネシア語の混交はある意味では、このアーティストのルーツを象徴づけるものといえそうだが、一方で、実際にこのアルバムにゲスト参加しているアイスランドのアーティスト、ジョフリズール・アーカドッティルと同じように、アイスランドのフォークミュージックに近い雰囲気も感じ取ることが出来る。地域性を重んじた上で、そして、その中にしか存在しえぬ概念をサンドラヤティは抽出し、それらの要素を介し、やさしく語りかけるようなボーカルを交え、純粋で聞きやすいフォーク・ミュージックを提示するのである。


サンドラヤティのフォーク・ミュージックは、東南アジアとヨーロッパ、あるいは、米国といった他地域の間を繊細に揺れ動いていくが、中盤に収録されている「Saura Dunia」ではインドネシア語のルーツに重点を置き、モロ族の民族音楽的な音響性を親しみやすい音楽として伝えようとする。特に音楽的に言えば、アイスランドの音楽にも親和性のある開放的で伸びやかな彼女の歌声、そして、この民族音楽の特有の独特なビブラートは他のどの地域にも見出すことが叶わない。地上の音楽というより、天上にある祝福的な音楽とも称せるこの曲は、実際の音楽に触れてみなければ、その音の持つ核心に迫ることは難しいだろう。


他にも「Vast」では、ピアノとストリングスとボーカルの融合させたサウンドトラックのような壮大な音楽性を楽しむ事ができる。しかし、一見して映画のBGMなどではお馴染みの形式は、決して古びたものになっていないことに気がつく。サンドラヤティという歌手の繊細なトーンの変化や、そのボーカルスタイルの変化があり、清新な印象を聞き手に与える場合もある。コラボレーターのアイスランドのオーラブル・アーノルズのピアノは絶妙にシンガーの歌声を抒情的に強化し、繊細かつダイナミックな喚起力を呼び覚ますことに成功している。

 

また、アルバムの最後に収録されている「Holding Will Do」ではゴスペルに近いアーティストのソロボーカルを楽しめる。ピアノのフレーズと共に、ジャズ・ボーカルの影響を受けた曲で、アルバムのクライマックスに仄かな余韻を添える。最後には、語りに近いスタイルに変化するが、これで終わりではなく、次作アルバムへとこれらのテーマが持ち越されていきそうな期待感がある。

 

サンドラヤティの2ndアルバム『Safe Ground』には、インドネシアやバリ島、ジャワ島、それらの土地にゆかりを持つアーティストの人生観が温和なポピュラーミュージックの中に取り入れられている。アーティストは、これらの10曲を通じて、安全な地帯を見出そうと努めているように思える。そして、それらの表現はロジカルな音楽ではなく、詩情を織り交ぜた感覚的な音楽として紡がれてゆく。最初から完成しているものを小分けにして示すというわけではなく、各々のトラックを通じて、何らかの道筋を作りながら、最後に完成品に徐々に変化していくとも捉えることが出来る。


セカンドアルバムで、サンドラヤティの語るべきことが語り尽くされたとまでは言いがたいが、しかし、一方で、シンガーの歌の卓越性の一端に触れる事が出来る。本作は、週末をゆったり過ごしたいとお考えの方に潤沢な時間を授けてくれると思われる。



86/100



チケットマスターの販売時のトラブルなどもありましたが、テイラー・スウィフトのthe Eras Tourが3月17日、アリゾナ州グレンデールにて無事開幕しました。

 

今回、埋め合わせのような形で、テイラー・スウィフトは複数の新しいシングルバージョンを四曲同時にファンに対して公開します。

 

そのうちの3曲は、カタログに掲載されている曲のテイラーズ・ヴァージョンを再録音した「Eyes Open」、「Safe & Sound」、「If This Was A Movie」。また、加えて、スウィフトがルイス・ベルとフランク・デュークスと共同プロデュースした2019年のアルバム『Lover』のアウトテイク「All Of The Girls You Loved Before」という新曲も併せて公開された。


「Eyes Open」と「Safe and Sound」は、いずれも2012年の『ハンガー・ゲーム』のサウンドトラックとして提供されている。

 

シビル・ウォーズとしてスウィフトと「Safe and Sound」でコラボしたジョイ・ウィリアムズとジョン・ポール・ホワイトは、この新しいバージョンで個別にクレジットされています。「If This Was a Movie」は、2010年の『Speak Now』のデラックス・エディションに収録されている。


 

  

  

 

 


Feistが、近日発売予定の新作アルバム『Multitudes』に収録される新曲「Borrow Trouble」を公開しました。

 

この曲は、アルバムの発表と同時にリリースされた「In Lightning」、「Hiding Out in the Open」、「Love Who We Meant To」に続く楽曲です。以下の付属のビデオでチェックしてみてください。


「"Borrow Trouble''は、レコーディングを終わらせようとする際に、いくつかのトラブルを引き起こしました。」Feistは、声明の中でコメントしています。


「それは瞑想的なアコースティック道徳物語として始まり、トラブルそのものの音に形を変えた。それは、自分自身の論理を保持する混乱です。それは、思考が持つ納得のいく不協和音である。それは、あなたの圧倒的な力が、別のアイデアという形で空気を供給し、完璧というものはないと受け入れることから始まる解決策を生み出すまで、あなたを鋸で切り裂くのです。」


マイク・ミルズ(映画監督)は、私をより深く絡め取るように指示し、「あなたはドラマーじゃないから!」と私がドラムを演奏することを主張し、アミール・ヤグマイはバイオリンの拳を突き上げるようなドローンをもたらしてくれました」と彼女は付け加えました。


「初期の頃、この曲を書いているときにチャールズ・スピアリンが『ああ、でもborrowing troubleってどういう意味なんだろう』と言った。そして私は『昔からの表現だ』と言い、それがサビになった。今やっているように、歌に説明させたほうがいいかもしれないと言ったんだ」


Feistの新作アルバム『Multitudes』は4月14日にInterscope Recordsから発売されます。

 

「Borrow Trouble」

 

©Mat Maitland

イギリスのエレクトロ・デュオ、Goldfrappのボーカリスト、Alison Goldfrapp(アリソン・ゴールドフラップ)がソロデビューアルバムを発表しました。『The Love Invention』は、5月12日にSkint/BMG Musicから発売されます。

 

最初の発表では「Digging Deeper」、「Fever」に続く新曲「So Hard So Hot」のリリースが発表されました。これらの曲のソロ・バージョンは新作アルバムに収録され、コラボソングはエクステンデッド・バージョンに収録される予定です。

 

「So Hard So Hot」の試聴は以下より。アルバムのアートワークとトラックリストは下記より御覧下さい。 

 

 

 

 

Alison Goldfrapp 『The Love Invention』 

 

Label: Skint/BMG

Release Date: 2023年5月12日

 

Tracklist:

 

1. NeverStop
2. Love Invention
3. Digging Deeper Now
4. In Electric Blue
5. The Beat Divine
6. Fever
7. Hotel (Suite 23)
8. Subterfuge
9. Gatto Gelato
10. So Hard So Hot
11. SLoFLo

 

今週のジミー・ファロン主演のテレビ番組「The Tonight Show Starring Jimmy Fallon」の音楽ゲストに米国の俳優/シンガーソングライター、Maya Hawke(マヤ・ホーク)が登場し、昨年発売された新作アルバム「Moss」の収録曲「Thérèse」を披露しました。演奏の模様は以下よりご覧いただけます。


『Moss』はマヤホークの2枚目のフルアルバム。今回ステージで披露された「Thérèse」のほか、初期のシングル「Sweet Tooth」「Luna Moth」が収録されています。


 

©Referece Studios


Lana Del Rey(ラナ・デル・レイ)は、3/31に発売予定のアルバム「Did You Know That There's a Tunnel Under Ocean Blvd」のオープニング曲「The Grant」を公開しました。


この曲は、Del Reyの本当の家族名をタイトルにしており、Melodye Perry、Pattie Howard、Shikena Jonesがバックボーカルを務めています。この曲の試聴は以下からどうぞ。


ラナ・デル・レイのニューアルバムは、2021年10月の『ブルー・バニスターズ』に続く作品となり、3月24日に到着する。これまでにシェアされたシングル「Did You Know That There's a Tunnel Under Ocean Blvd」と「A&W」が収録されています。


ラナ・デル・レイの新作アルバムの発売日は3/24となります。最初のリリース情報では発売日を10日としていましたが誤りでした。海外盤は24日に、国内盤は翌週の31日に発売されます。訂正とお詫び申し上げます。


「The Grant」

 

Rihanna(リアーナ)は第95回アカデミー賞のステージで、ディズニーが配給する映画『ブラックパンサー』に提供した「Lift Me Up」を披露しました。ライブパフォーマンスの様子は以下よりご覧ください。この他にも、アカデミー賞ではレディー・ガガ、デイヴィット・バーンらがパフォーマンスを行っている。


「Lift Me Up」はオリジナル楽曲賞にノミネートされましたが、結局RRRの「Naatu Naatu」に敗れました。レディー・ガガの「Hold My Hand」(『トップガン:マーベリック』)、Son Lux、Mitski、David Byrneの「This Is a Life」(『Everything Everywhere All at Once』)、Rahul Sipligunj, Kaala Bhairava, M.M. Keeravaniの「Naatu Naatu」(RRR)、ソフィア・カーソンの「Applause」(Tell It Like a Woman)も同部門にノミネートされていました。


リアーナは先月、スーパーボウルのハーフタイムショーで5年ぶりにライブステージに返り咲いている。

 

 

Miley Cyrus 『Endless Summer Vacation』 

 

 

Label: Columbia/Sony Music Entertainment

Release: 2023 3/10




マイリー・サイラスは歌手として大成功を収めたメガスターとも言え、さらに人気ドラマにも出演し、歌手、俳優として活躍するテネシー州出身のシンガー。ソロキャリアの売り上げは2000万枚超。シングルセールスは2億枚を誇る。また、俳優としても活躍目覚ましく、社会現象となったドラマ「ハンナ・モンタナ」にも出演したことで知られる。


2008年には『タイム』誌の最も影響力のある100人の内の一人、『ピープル』誌の最も美しい100人の内の一人に選ばれ、フォーブズ誌の有名人100では2,500万ドルを獲得し、35位だった。まさに、スターになるために生まれてきた人物といえますが、それでは、現地の主要メディアはこのシンガーについてどう見ているのでしょう? 


ローリング・ストーンのサイラスの賞賛記事「Miley’s Whole Career Has Been Building to This Moment」には次のように書かれています。


マイリー・サイラスのファンとして、なんという瞬間だろう。「Flowers」は、単なるサプライズ・カムバック・ヒットではなく、マイライズムの勝利である。タブロイド・スキャンダルやエレクトロ・スリーゼが渦巻く『Bangerz』時代の「Wrecking Ball」以来、10年ぶりのナンバーワン・ヒットとなった。


しかし、今、彼女はついに、ずっとなりたかったオールドスクールな大人の伝説へと変貌を遂げた。土曜日にリリースされる離婚後のアルバム『Endless Summer Vacation』のリード・シングル「Flowers」は、ハンナ・モンタナから世界的な大人への旅の集大成となる。この瞬間は現代のポップス界で最も長く、最も奇妙な物語の1つの頂点にあるチェリーである。


マイリーはまだ30歳ではあるが、すでに20年近くメガフェイマスアーティストとして活躍している。彼女は、普通のアメリカ人女性としての秘密の生活を持つ架空のポップスターを演じるディズニーのモペットとしてスタート。ハンナ・モンタナは、アイデンティティの面では楽しい鏡の家だ。彼女の父親は、実の父親である「Achy Breaky Heart」のビリー・レイ・サイラスが演じており、彼はすでにデヴィッド・リンチの映画の悪夢のシーンで自分を演じていた。


15年前の最初のトップ10ヒット「シー・ユー・アゲイン」でも、マイリーは自分の人格の危機を歌っている。サビのフックは「親友のレスリーは、『ああ、彼女はマイリーのままなんだ!』と歌っている。そして、以来、多くの変身を経て、常にマイリーであり続けている。最近、彼女は「あなたは私がトワークでマリファナを吸い、口の悪いヒルビリーだと言うことができますが、私は嘘つきではありませんから」とも打ち明けている。


「Flowers」がサイラスの最大のヒット曲となったのは、彼女にとって最もリアルであり、離婚後に再出発し、自分を愛することを学ぶための痛烈な頌歌だからである。彼女は「自分に花を買うことができる」という誓いで元彼に別れを告げた。元夫のリアム・ヘムズワースとの繋がりは誰にでもわかることで、10年連れ添った2人の結婚は1年足らずで終わり、2019年に燃え尽きた。

 

彼女は、"We were right till we weren't/Built a home and watched it burn "という言葉で、マリブ(カルフォルニア)の家が炎上するのを見た実体験を歌い上げている。また、2020年のカバーストーリーでローリング・ストーン誌のブリタニー・スパノスに語っている。「この火事は自分ではできなかったことをやってくれたのです。もはや目的を果たさないものから私を取り除いてくれたんです」



歌手、俳優として注目を受けた後、結婚生活のあっけない終焉、悲劇的なカルフォルニアのマリブの自宅の火事、こういった一連のゴシップに関連する出来事は、もちろんすべてがそうではないにしても、マイリー・サイラスに前進する勇気を与えたのではないでしょうか。そして世間的な幸福や成功というものが幻想のようにいかにいかに儚いものであるか気づかせたのかもしれない。

 

『Endless Summer Vacation』はマライア・キャリーの全盛期を彷彿とさせる米国らしさのあるポピュラー・ミュージックとなっている。それは近年の米国のポップスの文脈から見てもそれほどかけ離れた内容とはいいがたいものがある。アルバムには、ポップス、シンセポップ、R&B,南米的な情熱を交えた痛快なポピュラーアルバムとなっているが、そこには、マイリー・サイラスの表面的な華美さに加え、純粋で素朴な性質も感じられます。

 

『Endless Summer Vacation』の発売前には、オリジナルとデモの2つのバージョンを併録する「Flower」だけしか公開されなかった。これは興行の面で大きな効果を生むためのコロンビア・レコードの奇策の一つと言え、当日まで、アルバムの内容をミステリアスなベールで覆うことにより、発売時の音楽の印象を際立たせようとしたのです。

  

すでに、かなりの賛否両論を巻き起こしている作品ですが、年代を問わず楽しめるアルバムとなっています。少なくとも、哀愁と情熱を織り交ぜた「Flowers」や、それ続く、繊細さとダイナミックス性を兼ね備えた「Jaded」の2つの王道のポピュラー・ソングにおいて、サイラスは歌手としての抜群の安定力を見せ、華美さにとらわれない音楽を通じ、安らぎと晴れやかさを与えてくれる。これはサイラスなるシンガーの歌が類い稀な存在感を持ち、さらにオーディエンスを聴き入らせる情感の深さを持ち合わせていることを証左しているように思える。 

 

「Flowers」 

 

 

マイリー・サイラスの音楽性は、マライア・キャリーの時代のポピュラーソング、プリンスの時代の華やかなシンセポップ、スタックス・レコードの時代のR&B,少し前の時代のエイミー・ワインハウス、最近のリアーナを彷彿とさせるソウルフルなポピュラーソング、最新のトレンドのラップソング、その他にも、彼女の重要なルーツであるテネシーのカントリーミュージックが織り交ぜられています。


それらの要素が一つ前に出たかと思えば、別の曲では他の要素が前に出たりと、柔軟かつ流動的な役割を果たしている。どの音楽の影響が色濃く反映されているかまでは明言できませんが、アーティストが慣れ親しんできた音楽文化がナチュラルな形で曲に表れ出ている。これは、先にも述べたように、複数のプライベートの困難な出来事を通じ、現実的な出来事の中にある虚栄というものの寂しさや侘しさをアーティスト自身が感じとったからなのかもしれません。

 

これらの感覚は、派手なシンセを交えたダンサンブルなポピュラーミュージックの渦中にあって、哀愁と称するべき抒情性によって縁取られている。このブルージーな感覚が色濃く反映されたのが「You」となるでしょう。  


「You」

 


 往年の米国らしいバラードソングのスタイルを踏襲し、アーティストのルーツであるテネシーのカントリーとスタックス・レコードのR&Bのワイルドな雰囲気を交えたこのトラックは、新しいとも古いともつかない時代を超越したバラードとなっている。また、これは他のどの地域にも求められない特性で、アーティストの故郷テネシーへの淡い郷愁が表されている。サイラスのハスキーな渋いボーカルは開放感にあふれており、米国の広大で豊かな土地へのロマンを思わせる素晴らしい楽曲となっています。

 

さらに、天文学的なストリーミング回数記の記録を打ち立てた「Flowers」、美しさと圧巻の迫力を兼ね備えるバラードソング「You」の2曲に加えて、終盤に収録されている「Wonder Woman」も同じく、アーティストの代表的なレパートリーとなってもおかしくないようなトラックです。表面的なキャラクター性を越えた作品のクライマックスを飾る、繊細さと純粋さを兼ね備えたこのダイナミックな名曲には、表側には見えないスターシンガーの飾らない姿が垣間見える。特に、歌手の真の実力が試される簡素なバラードソング「Wonder Woman」において、マイリー・サイラスは、均一化されたデジタルレコーディングであるにも関わらず、自らの歌唱力と声量によって他を圧倒するような存在感を示しています。




 92/100 



Weekend Featured Track 「Wonder Woman」


 

©Phobymo

米国のシンガーソングライター、Lucy Dacus(ルーシー・デイカス)が、2018年の2ndアルバム『Historian』からのシングル「Night Shift」の公式ミュージック・ビデオを公開しました。

 

先日、初公開されたビデオクリップは、Jane Schoenbrun (We're All Going to the World's Fair)が監督し、Lucy Dacus、Jasmin Savoy Brown (Yellowjackets), E.R. Fightmaster, Liza Anneらが出演しています。撮影はペンシルバニア州のイーストストラウドバーグの”Poconos Palace”で行われました。以下からご覧ください。

 

Matador Recordsは『Historian』の5周年を記念し、5月26日に発売予定のヴァイナル・リイシューで、Dacusが最初に書いたオリジナルのアルバム・アートワークのドラフトを掲載する予定です。その次のサードアルバム『Home Video』は2021年に発売済みです。 

 

さらに、今年、ルーシー・デイカスは、フィービー・ブリジャーズ、ジュリアン・ベイカーとのスーパーグループ、boygeniusのデビュー作をリリースします。こちらもまた今年の注目作の一つで、3者のこれまでとは異なるインディーロックやオルタナティヴ・ロックへの強い意外な愛着を感じさせる作品となりそうです。boygeniusの『the record』は3月31に発売されます。

 

 「Night Shift」