【Feature Review】 The WAEVE  『City Lights』   グラハム・コクソンとローズ・エリナー・ドーガルによるセカンドアルバム

The WAEVE 



 ザ・ウェーヴの新作『シティ・ライツ』と彼らのデビュー作『2023』を並べてみると、2枚のまったく異なるレコードが浮かび上がってくる。グラハム・コクソンとローズ・エリナー・ドーガルの初共演作で、2人は不穏と恐怖の影に美と優しさが存在する、時に夢のような世界を作り出した。


 2人のヴォーカル、モジュラー・シンセ、コクソンのサックスは、ブロードキャスト、トーク・トーク、70年代フォークの影を引き寄せるのに役立つ一方で、プログレやポスト・パンクの影響を受けた、より複雑な下草に引っかかることを可能にしている。

 

 これらの要素は『City Lights』でも健在だが("Simple Days "のアコースティック・ドリフト、"You Saw "の浮遊感溢れるモーターリク・ポップ、"Druantia "の8分に及ぶプログレッシブ・ロックの冒険など)、今回はより大胆で広がりのある、自信に満ちたものに仕上がっている。

 

 ジェームス・フォードとの共同プロデュースにより、タイトル曲の煽情的なアート・ロックのスコールや「Broken Boys」のキャバレー・ヴォルテールのような騒々しさなど、よりトゲトゲしく、よりアグレッシブな作品に仕上がっている。以前はイメージや寓話を通して感情やメッセージを投影していたかもしれないが、ここでは何を、あるいは誰について歌っているのかがより明確になっている。


「今回はバンドにアイデンティティがあったから、自分たちがどう動くか、もう少し枠組みがあったんだ。しかし、明らかに状況はかなり異なっていた...」


 2020年当時、コクソンとドーガルは漂流していた。ある夜、ロンドンのジャズ喫茶で行われたチャリティ・ギグの楽屋で出会ったドゥーガルは、一緒に曲を書こうと提案した。レトロ・ポップ・トリオ、ザ・ピペッツのメンバーだったドーガルは、前年に3枚目のソロ・アルバム『A New Illusion』をリリースしており、コヴィッドの襲来と同時にLAからロンドンに戻ってきたコクソンは、流動的な状態にあった。ローズが "一緒に書いてみない?"と言ってくれるまで、いつまた仕事をするのか、また書いてみるのか、わからなかったんだ」とギタリストは言う。

 

「ファースト・アルバムを聴くと、僕とグラハムがレコード制作を通してお互いを知っていくのがわかるんだ。一緒に曲を書き、レコーディングをする過程で、コクソンとドゥーガルはお互いを知るようになっただけでなく、恋に落ち、2022年8月には娘のイライザがこの世に誕生した。

 

「最初のアルバムは、世の中で起こっていることの窮屈さから逃れるための方法だった。「このアルバムは、より家庭的な制約に立ち向かうためのものだったと思う。それが、いくつかの曲の切迫感にもつながっているんだ」


 しかし、オープニングのタイトル・トラックの最初の数小節を聴けば、この曲が独りよがりの満足のレコードでないことは明らかだ。この曲のベルリン時代のデヴィッド・ボウイのような眩しさで描かれる夜の外出には、影に潜む恐ろしい怪物や、常に頭をもたげようとしている不安がある。

 

 この光と影の組み合わせが、『シティ・ライツ』を聴き応えのあるものにしている。I Belong To's "のようなポップで軽快な献身宣言や、ある朝コクソンが娘に叩きつけたコードから始まった "Sunrise "の牧歌的な素晴らしさなど、穏やかな瞬間には必ず現実があり、不和や厳しさが牡蠣の中にある。


 グラハム・コクソンはアルバムの制作について次のように説明する。「このアルバムは間違いなく、より神経質で、より不機嫌だ。醜いものであれ美しいものであれ、私はいつも感情をストレートに表現してきた。音は必ずしも聴き心地がよくなければならないとは思わない。本当に素敵なものの隣に不快感を置くというダイナミズムは、私がいつも興味を持っていることなんだ」

 

「Song For Eliza May」は間違いなくアルバムのハイライトのひとつだ。フェアポート/レッド・ツェッペリン3世フォーク・ロックの嵐が吹き荒れる中、ドゥーガルが自分たちがこの世に送り出した娘が直面するかもしれない危険や困難について詳しく語り始める。

 

 ダガールにとって、娘の誕生について率直に書くという決断は、当初は難しいものだった。「出産について言及することにしばらくは抵抗がありました。でも実際、その経験をもっと大きなテーマを探求するのに使えると気づいたの。ニュースで起きていること、残虐な行為、世界が崩壊していく様子を見てね。そしてそれと並行して、人生がどのように進化していくのか、自分自身の感覚がどのように発展してきたのかを考える。それは曲作りのプロセスにとって本当に良い手段となった」

 

 コクソンのギター・プレイもより際立っている。Moth To The Flame」のロボティックなニューウェーブではロバート・フリップのようなグライドを、「Girl Of The Endless Night」ではバート・ヤンシュのような巧みなフィンガー・ピッキングでオールド・ワールド・テイストを、そして至福のフロイド・スライド・ギターでアルバムを地平線の彼方へと送り出している。

 

 ファースト・アルバムの暫定的な歩み以上に、『City Lights』はグラハム・コクソンとローズ・エリナー・ドーガルを如実に表している。ミュージシャンとしての彼ら、そして人間としての彼ら。最初の曲から最後の曲までの旅が終わりに近づくにつれ、このアルバムが彼らの物語を語るレコードでもあり、一緒に音楽を作ることが彼らをどこに連れて行ったかという物語でもあることに気づくかも知れない。




Though there’s been little over a year between the two releases, line up The Waeve’s new album City Lights next to their 2023 debut and two very different records emerge. On Graham Coxon and Rose Elinor Dougall’s first record together, the pair conjured up an at times dreamlike world where beauty and tenderness existed under a shadow of disquiet and dread. The pair’s vocals, modular synths and Coxon’s saxophone helping to draw together shades of Broadcast, Talk Talk and 70s folk, while allowing them to get snagged on a knottier undergrowth of prog and post-punk influences.

 

While those elements are still present on City Lights (witness "Simple Days’" beatific acoustic drift, "You Saw’s" floating motorik pop or the eight-minute progressive rock adventuring within "Druantia,") this time around they’ve solidified into something bolder, more expansive and self-assured.

 

Co-produced by James Ford, it’s at times spikier and more aggressive, as on the title track’s agitated, art-rock squall or "Broken Boys’" Cabaret Voltaire-like racket, and swaps out the more oblique lyrical imagery of its predecessor for something more personal and direct. Where before they might have projected an emotion or a message through imagery or allegory, here it’s much clearer what, or who, they might be singing about.

“The band had an identity this time around so we had a little bit more of a framework to know how we might operate,” notes Dougall of their differing approaches. “But obviously, the circumstances were quite different…”

 

Back in 2020, Coxon and Dougall were adrift. When they met backstage at a charity gig at London’s Jazz Café one night, Dougall suggested they write some songs together. Formerly of retro-pop trio The Pipettes, Dougall had released her third solo album A New Illusion the previous year and having relocated from LA back to London just as Covid struck, Coxon was in a state of flux. “I didn’t know when I was going to work again or try writing again until Rose came out and said, ‘How about we try writing together?’” says the guitarist.

 

“When I listen to the first album, I can hear me and Graham getting to know each other through making the record,” says Dougall today. Through the process of writing and recording together, not only did Coxon and Dougall get to know each other, they fell in love, and in August 2022 welcomed their baby daughter Eliza into the world.

 

“The first record was a way of escaping the constrictions of what was going on in the world,” says Dougall. “I think this one was a way of railing against the more domestic constraints that we had. That’s partly where some of the urgency of some of the songs come from.”

Domesticity isn’t always the richest of wellsprings when it comes to artistic inspiration, but from the first few bars of the opening title track, it’s clear this isn’t a record of smug contentment. The night out detailed in the song’s Berlin-era Bowie dazzle has scary monsters lurking in its shadows, anxieties always ready to rear their head.

 

That combination of light and shade is what makes City Lights such a rewarding listen. For every moment of serenity – "I Belong To's" wonky pop declaration of devotion or the pastoral splendour of "Sunrise", which began life as chords Coxon strummed to their daughter one morning - there’s a bump of reality, some discord and grit in the oyster.

 

“This album is definitely more neurotic and more grumpy - and that comes from me!” laughs Coxon. “I’ve always liked to be pretty straightforward about feelings, whether they’re ugly or beautiful, and I’ve always approached sound in the same way. I don’t always think that sound needs to be comfortable to listen to. That dynamic of putting discomfort next to something that is really lovely is something that I’ve always been interested in.”

 

"Song For Eliza May" is undoubtedly one of the album’s highlights. A mandolin strummed ode to their daughter during which a surging Fairport/Led Zeppelin III folk rock storm begins to build as Dougall starts to detail dangers and difficulties the person they’ve brought into the world might face.

 

For Dougall, the decision to write quite frankly about the birth of their daughter was initially a difficult one. “I was really resistant for a while to even consider referencing it," she says. “But actually, when I realized that I could use that experience to explore bigger themes - watching what’s happening in the news, all these terrible atrocities and the world falling apart. And in tandem with that, thinking about how life evolves and how my own sense of self has developed. It became a really good vehicle for the song-writing process.”

 

Coxon’s guitar playing is more prominent, too. Not overtly, it’s more deconstructed to help build up layers - a Robert Fripp-like glide in "Moth To The Flame’s" robotic new wave, some deft finger picking a lá Bert Jansch to really dredge up an olde worlde feel for "Girl Of The Endless Night," or some blissful Floydian slide guitar to help send the album off over the horizon.

 

Even more so than on the tentative steps of their first album, City Lights is a true representation of Graham Coxon and Rose Elinor Dougall. Who they are as musicians and who they are as people. As the journey from the first song to the last comes to an end, you realize that it’s also a record that tells their story, the story of where making music together has taken them.   -Transgressive


 『City Lights』 

 

 

・グラハム・コクソンとローズ・エリナー・ドーガルのセカンドアルバム。ロンドンの音楽文化の奥深さ

 

 実は、Blurが再始動する以前から、グラハム・コクソンは新しいプロジェクト、The WAEVEを立ち上げていたことをご存知だろうか。それはブラーのドラマーであるDave Rowntree(デイヴ・ロウントゥリー)がソロ・アルバムを発表した時期と大方重なっていた。The Waeve(ザ・ウェイヴ)は、グラハム・コクソンとその妻であるローズ・ドーガルのデュオとして発足した。グラハム・コクソンの英国の音楽シーンでの目覚ましい活躍については最早くだくだしく説明するまでもないだろう。ローズ・ドーガルについては''ローズ・ピペット''というガールズ・グループで活動していた。異なる才能の化学反応、似た性質を持つ二人の男女のユニットであるThe WAEVEの音楽性は、70年代後半のニューウェイヴから、80、90年代のポピュラーミュージックを踏襲し、次いで現代的なポピュラー・ミュージックのニュアンスや文脈をもたらすという趣旨である。


 ファースト・アルバム『The WAEVE』を聞けば分かる通り、このユニットは単なるサイドプロジェクトのようなお遊びのためのプロジェクトではない。いわばブラーのアート・ロックの側面を受け継ぎ、そして、ニューウェイヴやノーウェイヴのニュアンスから、ビートルズ時代のチェンバーポップ、90年代のオアシスのブリット・ポップ、2010年代以降のエクスペリメンタルポップを隈なく吸収し、それらを現代的なポピュラーミュージックとして昇華するという趣旨である。楽曲のスタイルは、二人の音楽的な見識の深さを反映するかのように幅広い。グラハム・コクソンのボーカルの渋さ、そして、一方、クリアで清涼感のある高いトーンを主な特徴とするローズ・ドーガルの対象的な声の性質により、聴き応え十分のポピュラーソングが生み出される。その中には、現代のパンクバンドが失いかけている反抗心もある。しかし、グラハム・コクソンがこのニューウェイヴというアウトプットの形式を選んだのは、おそらくこのジャンルにはまだ未知の潜在的な可能性が眠っていて、そして最も夢のある音楽だからである。

 

 

 The WAEVEの音楽には表向きに聞こえるものよりも、かなり深甚な文化性が内包されている。それは、先日、ラフ・トレードが公開した大掛かりなロンドンの音楽の数十年の歩みを収めたプレイリストを見ると分かる通り、70年代から20年代にかけてのUKミュージックの50年の流れを現代人としてあらためて俯瞰するかのようである。1970年代頃、一大的なムーヴメントとなったロンドン・パンクというジャンルは、三大バンドを始め、無数のサブジャンルとフォロワーを輩出したが、他方、ジョニー・ロットンのバンドがメジャーレーベルと契約した頃から、急速に最初のウェイブは衰退していくことになった。それは、簡単に言えば、パンクバンドが次々とメジャーレーベルと契約を交わしたことに大きな原因があった。パンクバンドが商業的な成功を収めていく中、音楽性そのものに精神性が失われていったことが要因であった。

 

 しかしながら、この最初のロンドンのパンク・ウェイブが衰退しかけた頃、もうひとつのジャンルがニューヨークと連動するようにして台頭した。それが、現在では「Post Punk」と称されるウェイヴであり、Crass、The Fall、1/2 Japanese、PILを始めとするムーヴメントを発生させた。その最終形が、当時、公務員と音楽家の兼業をしていたイアン・カーティス率いるJoy Division。ニューウェイヴのサウンドには特徴があり、Kraftwerk、NEUといったヨーロッパの実験的な電子音楽、ポピュラーミュージック、先行していたパンクロック、これらの3つの文脈を結びつけるというものである。更に的確に言えば、「アート・ロック」の音楽性が含まれていた。

 

 それが、1980年代後半からのマンチェスターのハシエンダ(カタログ形式のリリース番号の発祥)のクラブカルチャー、及び、米国のノーザン・ソウルを受け継いで登場したStone Roses、Smithという最初の形になり、以後、それらの総決算としての90年代初頭のブリット・ポップのブームが沸き起こった。メインストリーム、アンダーグラウンド問わず、イギリスの音楽の系譜を結実させたのが、1990年代のバンドであり、それはまた、60年代のビートルズ、ストーンズのチェンバーポップという側面をも映し出していた。しかし、このウェイヴは、音楽産業が最も盛んだった時代の流れを受け、宣伝的な側面も含まれていたことは改めて指摘しておくべきだろう。以降、新しい音楽はいくつも登場したが、どうしても「宣伝のための音楽」という範疇から逃れられないという長年の課題を抱えざるを得なかった。これは現在の音楽業界が抱える問題でもある。企業としての利益性を重視せざるを得ない側面があるからである。

 

 

 ある意味では、イギリスの音楽は、過去を振り返って懐かしむというより、何らかの別のジャンルを吸収したり、もしくは、クロスオーバーを図ることで、音楽をアップデートさせてきた。それは、むしろ過去を全て肯定するというより、半ば否定しつつ、新しい表現を生み出すという、英国人らしい気風を象徴付けている。この点においては、ブライアン・イーノがプロデュースを務め、主導したニューヨークの「No Wave」の動きと連動するような傾向があったと言える。これは単に、アナクロニズム(時代錯誤)に陥ることが、現代人としての沽券に関わると考えるミュージシャンが一定数いたことを表す。要するに、現代人として生きるからには過去の遺産をそのまま提示するのではなく、「新しい意味を与えたい」という欲求を抱えざるを得ない。The WAEVEは、これらの系譜に属し、過去を半ば否定し、新しい表現を生み出すようなタイプのユニットである。もちろん、往年の音楽を踏襲しつつ、それに敬意を払いながらも、その中には、自分たちが過去に埋没することを拒絶する何かが存在する。これがおそらく、グラハム・コクソンが示したいもので、それは表向きの人気バンドのギタリストという姿とは異なる、もう一人のミュージシャンの実像のようなものをありありと浮かび上がらせるのだ。

 

 セカンドアルバムの冒頭を飾る「1-City Light」では、ニューウェイヴ、あるいはニューヨークのノーウェイヴの系譜にある不協和音が、現代的なポスト・パンクサウンドの向こうに揺らめく。それはエレクトリック・ギターのノイズ的な側面に立ち現れたかと思えば、曲の中盤部のギターソロの代わりに登場するサクソフォンのジョン・ゾーンのような前衛的なフリージャズの文脈中に登場することもある。しかし、包括的な音楽のディレクションは、一貫して絶妙なバランスが保たれている。音楽そのものが危うくなることを許容しつつも、グラハム・コクソンのボーカルは、ポピュラリティと歌いやすさにポイントが置かれている。それはパブ・カルチャーのような気風を反映させたり、もしくは、The Clashの『London Calling』の作風に見受けられるブリクストンの夜の雰囲気を音楽的な表現としてかたどった秀逸なロックソングとして繰り広げられる。大げさに言えば、The WAEVE(ザ・ウェイヴ)はノスタルジアとモダニズムの中間を歩くような音楽で聞き手の心を鷲掴みにする。全体的なサウンドプロダクションとしては、70年代のニューウェイヴの性質が押し出されている。そして、このアルバムの一曲目を通じて、The Waeveは失われた夢のある音楽、未知の可能性に充ちた音楽を私達に見せてくれる。


 そうかと思えば、コクソンの妻であるローズ・ドーガルがメインボーカルを取る「2-You Saw」は、一曲目とはまったく対象的なトラックである。ドーガルの清涼感のあるボーカル、そして音楽性は、80年代のガールズ・グループに象徴付けられる楽しげな音楽の気風をもたらす。これらは、70年代のX-Rey Specsや、それ以降のアメリカのミラーボールの華やかで煌びやかなディスコサウンド、そしてアート・ロックという複数の音楽形式を取り巻くようにして進行していく。全体的には、長調の曲であるが、アルバムの一曲目と同じように、部分的に単調の旋律進行や不協和音を織り交ぜ、多彩なスケールとコード進行を描く。それは現実に生じた抽象的な空間を彷徨うかのようで、シュールレアリスティックな音楽性が内包されているといえる。


 しかし、これらの音楽性が多少マニアックだとしても、グラハム・コクソンの曲と同じように、ドーガルのボーカルがポピュラリティを付与している。不協和音や奇妙な移調が取り入れられようとも、全体的にはキャッチーなポップソングとして楽しむことが出来る。そして、3分06秒近辺からいきなり曲調が一変し、チェンバーポップ/バロックポップの要素が顔をのぞかせる。そして、グラハム・コクソンの紳士的なボーカルが入ると、曲の雰囲気がガラリと変化してゆく。


 「You Saw」のイントロでは、ニューウェイブや同年代のディスコ・サウンドをベースにした音楽か、と思わせておきながら、曲の後半では、壮大なスケールを持つ現代的なポップソングへと変遷を辿っていく。そして、メインボーカルがグラハム・コクソンへとスムーズに引き継がれ、ドーガルの夢想的なコーラスワークを背景にして、Televison、Talking Headsに代表されるNYのプロトパンクを掛け合わせたアブストラクトな音楽へと変化していき、最終的にはドーガルのボーカルが現代的なポップソングの印象を形作る。まるで、この曲は、種子に水をやり、その苗がゆっくりと成長し、美しい花を咲かせる様子を見届けるかのような素晴らしい一曲である。

 

 ポストパンク・ユニットとしての性質は、「3-Moth To The Flame」においてひとまず発揮される。ゴツゴツとしたオーバードライブのかかったベースラインに、グラハム・コクソンは、拡張器のようなボーカルのエフェクトを掛け、「声明代わり」と言わんばかりにふてぶてしいボーカルを披露し、この曲を牽引していく。求心力がある曲で、ライブではかなり盛り上がりそうだ。しかし、ルート進行のベースに対して歌われるコクソンのボーカルは、意外なことにかなり迫力があり、そして精細感もある。いわばコクソンさんが現代のミュージシャン/ボーカリストであることを実証するようなパンクサウンドである。


 何より、アルバムの一曲目と同じように、フリージャズやフュージョンの影響を反映させたサックスフォンのスムーズなレガートが、この曲にダンサンブルな印象と楽しげな気風を添えている。ニューウェイブのジャンルを紐解く上で不可欠であるシンセサイザーの同音進行は、この曲の持つエナジーを巧みに引き立てている。


 コクソンのボーカルにも力がこもっていて、言葉が上滑りになったり、キャッチフレーズに終始しないのに驚きを覚える。これは、The Waeveの音楽的な表現が尖っていて、少なからず体制的な考えや気風に対する反抗心を持ち合わせていることを表す。これは、表面的な反抗心ではなく、長年の間培われた尽くせぬ思いや感情を内側から反映させたかのようである。少なくとも、従来のグラハム・コクソンというミュージシャンのイメージを覆すことに成功しているのではないか。

 

 

 こういったパンク的な性質を持ち合わせた上で、オーケストラと電子音楽をポピュラーソングの形に落とし込む曲も収録されている。「4-I Belong To」は、1970年代の夢のあった時代の何かを現代に蘇らせ、それを新たにアップデートしている。そして、The Who、The Jamのモッズ・ロック、『Tommy』に象徴付けられるロック・オペラまでを的確に吸収し、ハードロック、プログレッシヴ、電子音楽、そして、ブリット・ポップに至るまで多角的に捉えた音楽を示している。音楽的に深い領域に入り込んでいるのは事実だが、何より大切なのは、ロック・オペラの核心にある音楽性をこのユニットが的確に捉えていることである。この音楽に欠かさざるものは、今や現代的に失われつつある英国人としての矜持や、紳士性、いわばジェントリーな節回しをするスポークンワードに近いボーカルの形式にある。ロック・オペラの核心にあるもの、それは扇動性ではなく、古典的な演劇に象徴される紳士的な表現にあったことが判然とする。

 

 特に、アルバムの中で最も素晴らしいのが続く2曲である。「5-Simple Days」は、ボサノヴァのような南米のワールド・ミュージックやフュージョンジャズを、80年代のノスタルジックなポピュラーセンスで包み込み、夢想的な感覚と安らいだ感覚を結びつける。アコースティックギター/エレクトリック・ギターの演奏も素晴らしいが、この曲の天国的な雰囲気を的確に表現しているのが、ドーガルのボーカルとシンセサイザーの心地よいテクスチャーである。スライド・ギターを中心とする抽象的なギター、そして、エンリオ・モリコーネの口笛をモチーフとしたマカロニ・ウェスタンは、音楽の持つ開放的な素晴らしさ、そして祝福的な感覚を体現させている。

 

 それは南国に束の間の休暇にやって来て、ヤシの木や海の向こうに沈んでいく太陽の残光を目の端に捉えるような幻想的な美しさに縁取られている。これらの美的な感覚は、アウトロのギターのアルペジオに至るとき最高潮に達する。この曲にはコクソンとドーガルのこの世界の美しさへの賛美とも言える。それはまた、さらに言えば、自然や情景の驚異に接する際の慈しみにも似た眼差しが、こういった天国的な雰囲気を持つ楽曲を生み出す契機となったのか。続く「6-Broken Boys」は、UNCUT誌が絶賛し、ユニットのポスト・パンク的な側面が色濃く反映されている。これらの天国的な音楽から、現実的な側面を何らかの考えで縁取った曲への移行は、対象的な印象で聞き手に驚きを及ぼし、大きなインパクトをもたらすかもしれない。実際的に、苛烈なイメージのあるギター、ベースに対して歌われるドーガルのボーカルは、このシンガーがガールズグループの性質をThe Waeveのサウンドにもたらしていることが分かる。彼らの最もクールな側面が立ち表れ、それは都会の街を肩で風を切るような感覚がにじみ出ている。


 アルバムの音楽的な性質は収録曲ごとに変化し、スムーズでゆるやかな変遷をたどる。UKの70年代のフォーク・ミュージックの受け継いだ「7-Song For Eliza May」では、再び、ローズ・ドーガルがメインボーカルを取り、コクソンのバンジョーの巧みな演奏に合わせて、スコットランドのケルト民謡のテイストを作り出す。6/8のワルツの形式を踏まえ、バンジョー、ギター、ピアノの演奏が舞楽的な音楽的な効果を生み出し、ドーガルのボーカルは、優雅さや開放的な空気感、ケルト民謡の持つ牧歌的なアトモスフィアを醸成する。ひとつひとつのアコースティック楽器の演奏がきわめて精妙に演奏、録音されているため、比較的自由な歌い方をしても、曲全体の構成が崩れることがない。これらの卓越した演奏力と録音技術に合わせて、実際的にボーカルの夢想的な感覚は、実際的に聞き手をイギリスの中世的な世界の奥底へと優しく誘う。


 曲そのものから立ち上るイメージもあり、サウンドスケープを呼び覚ますが、これらは弦楽器が入ると、最終的にThe Smithのモリッシーが80年代後半に描き出したような孤独感やクラシカルなロック性へと結び付けられる。曲の後半では、ギターソロが入り、白熱した空気感を帯びる。巧みなベースラインを挟み、この曲は大掛かりでシアトリカルな音楽へと変遷していく。曲の後半部には70年代のUKのハードロックや、The Doorsのようなサイケロックの要素も含まれている。いわばロックの教科書を徹底的に読み込んだ上で、それらをライヴサウンドとして映えるような形で昇華させている。ロックオペラの次世代に位置づけられる革新的な一曲。

 


 The Waeveの音楽はロンドンのカルチャーを反映させるかのように多彩で、一定の音楽の中に収まることはない。それは、二人がどれだけ音楽を愛しているかを表し、同時に深い信頼関係で結ばれていることを表すかのようである。音楽的なバリエーションやイマジネーションは、その後の収録曲でも衰えることはなく、少しずつ広がりを増していくような感覚がある。「8-Druantia」では再び、ニューウェイブサウンドに回帰し、ユニークなサクソフォンの演奏を取り入れて、フュージョン・ジャズとポスト・パンクの中間にあるダンサンブルなサウンドを生み出す。かと思えば、続く「9-Girl Of The Endless Night」では、Lankumのようなダブリナーズのアイルランド民謡をベースに、現代的なイギリスのフォーク・ミュージックの理想的な形を示す。

 

 アルバムのクライマックスを飾る「10-Sunrise」では、60,70年代のポップスをベースに、グラハム・コクソンのソングライターとしての才覚が見事な形で花開く。トム・ウェイツやM.Wardのような渋さのあるボーカル、そして、サクソフォンのジャズをテイストを加え、サビでは、相方のローズ・ドーガルのメインボーカルを受け渡す。これはデュオという形でしか実現しえない新しいデュエットの形式を示したにとどまらず、古典的なポピュラー音楽を踏まえ、それらをどのように現代のスタイルに繋げるのか。両者の飽くなき探究心がもたらした最大の成果でもある。


 チェンバー・ポップ、AOR、それ以降のアーバン・コンテンポラリー、ABBAのような北欧のポップスといった良質な音楽を隈なく吸収し、フローレンス・ウェルチの系譜にある演劇的なポップスへと昇華させる。この曲の最後では、それまで長らく抑えていた感覚が暴発するかのように一挙に溢れ出てくる。シアトリカルな音楽的な表現が見事なオーケストラストリングスの駆け上がり、及び、掛け下がりと結びつき、オリジナリティ溢れるポピュラー音楽が構築される。それは表題にも表されているように、日の出の瞬間を体現させるかのようである。最後の曲のクライマックスは圧巻というよりほかなく、音楽の持つ素晴らしさに触れることができる。

 

 

「Song For Eliza May」

 

 

86/100

 

 

*The WAEVEのセカンドアルバム 『City Lights」はTransgressiveから今週末(9月20日)に発売されます。 



【先行情報】


 THE WAEVE、セカンドアルバム『CITY LIGHTS』を正式に発表 9月20日にTRANSGRESSIVEよりリリース


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【REVIEW〛 THE WAEVE 「THE WAEVE」 グラハム・コクソンによる新プロジェクトのデビュー作






Second album by Graham Coxon and Rose Elinor Dougal. The depth of London's musical culture.



In fact, even before Blur was relaunched, Graham Coxon had launched a new project, The Weave. It largely coincided with the release of Blur drummer Dave Rowntree's solo album The Waeve began as a duo between Graham Coxsone and his wife Rose Dougal.


Graham Coxon's remarkable success on the British music scene needs no brief description. As for Rose Dougal, she was active in a girl group called Rose Pippet. The chemistry of different talents, the musicality of The WAEVE, a unit of two men and two women with similar qualities, is intended to follow the popular music of the late 70s new wave, the 80s and 90s, and then bring in the nuances and context of contemporary popular music.


As you can tell from listening to the first album, The WAEVE, the unit is not just a side project for fun. The WAEVE takes the art-rock side of Blur, so to speak, and then, from the nuances of new wave and no wave, absorbs the chamber pop of the Beatles era, the Brit-pop of Oasis in the 90s and the experimental pop of the 2010s and beyond, and sublimates them into a contemporary popular music. The aim is to sublimate them as contemporary popular music. 


The style of the songs is wide-ranging, as if to reflect the depth of the duo's musical insight. The austerity of Graham Coxon's vocals and the contrasting nature of Rose Dougal's voice, which is mainly characterised by clear, clean, high tones, produce popular songs that are highly enjoyable to listen to. There is a defiance in them that modern punk bands are losing. However, Graham Coxon has chosen this form of new wave output, perhaps because the genre still has untapped potential, and because it is the most dreamy music of all.



The WAEVE's music encompasses a considerably more profound cultural nature than what it sounds like on the surface. It's as if we, as modern-day people, have a bird's eye view of 50 years of UK music from the 1970s to the ‘20s, as evidenced by the recent Rough Trade playlist that chronicles decades of music in London on a grand scale. The London punk genre, which became a huge movement around the 1970s, produced three major bands and countless sub-genres and followers, but on the other hand, the first wave rapidly began to decline from the time John Lydon's band signed to a major label. 

 

This was largely due to the fact that, simply put, punk bands signed to major labels one after the other. This was due to the fact that as punk bands became more and more commercially successful, the musicality itself lost its spirituality.



However, as this first London punk wave was on the wane, another genre emerged in tandem with New York. This was the wave now known as ‘Post Punk’, which gave rise to movements including Crass, The Fall, 1/2 Japanese and Public Image LTD.. Its final form was Manchester's Joy Division, led by Ian Curtis, who at the time was both a civil servant and a indipendent musician, and whose new wave sound was distinctive, combining European experimental electronic music such as Kraftwerk and NEU, popular music and the punk rock that had preceded it. The idea is to link the three contexts. Even more precisely, it contained an ‘art-rock’ musicality.


This took its first form in the club culture of Manchester's "Hacienda" (the birthplace of catalogue-style release numbers) from the late 1980s onwards, and The Stone Roses and The Smith, who emerged as the inheritors of Northern Soul in the USA, and subsequently, in the early 1990s, as the sum total of these The Brit-pop boom was booming. 

 

It was the bands of the 1990s that brought the genealogy of British music, both mainstream and underground, to fruition, and it also mirrored the chamber pop aspect of the The Beatles and The Rolling Stones of the 1960s. However, it should be pointed out again that the wave also contained a promotional aspect, as the music industry was at its most prolific. Since then, a number of new music acts have emerged, but they have inevitably had to deal with the perennial problem of not being able to escape the category of ‘music for publicity’. This is also a problem facing the music industry today. This is because of the aspect of corporate profitability that it is forced to focus on.
 

In a sense, British music has updated itself by absorbing or crossovering into some other genre, rather than looking back and nostalgically remembering the past. This is symbolic of the typically British disposition to create new forms of expression, rather than affirming the past in its entirety, but half-negating it. In this respect, there was a tendency to link up with the "No Wave" movement in New York, produced and led by Brian Eno. This simply means that there were a certain number of musicians who thought that falling into anachronism was a matter of good name as a modern man. 

 

The WAEVE is a unit that belongs to these groups, half-denying the past and creating a new form of expression. Of course, while following and paying homage to the music of yesteryear, there is something in it that refuses to bury itself in the past. This is, perhaps, what Graham Coxon wants to show, and it reveals something of the real image of another musician, ostensibly different from that of a guitarist in a popular band.

 

On ‘1-City Light’, which opens the second album, dissonant sounds from the New Wave or New York no-wave lineage shimmer over a contemporary post-punk sound. It seems to rise to the noisy side of electric guitar, or avant-garde like saxophonist John Zorn, who replaces the guitar solo in the middle part of the song.


On the contrary, ‘2-You Saw’, in which Coxson's wife Rose Dougal takes the main vocals, is a track that is completely opposite to the first one. Dougal's plaintive vocals, and musicality, bring a joyful musical flair that can be associated with the girl groups of the 80s. 

 

These progress around the multiple musical forms of the X-Rey Specs of the 70s, the glitz and glamour of the American disco sound of later years, and art rock. Overall, the song is in a major key, but like the first track on the album, it weaves together partially monotonous melodic progressions and dissonances, drawing on a variety of scales and chord progressions. It seems to wander through abstract spaces that arise in reality, and it can be said to contain a surrealistic musicality.


However, if these musicalities are somewhat manic, Dougal's vocals, like Graham Coxon's songs, give them a populist quality. Even if dissonance and strange transpositions are introduced, the song can still be enjoyed as a catchy pop song on the whole. Then, around the 3:06 minute mark, the tone suddenly changes and elements of chamber pop/baroque pop appear. The atmosphere of the song changes drastically when Graham Coxon's gentlemanly vocals enter the song.


The intro to ‘You Saw’ leads one to believe that the music is based on new wave or disco sounds of the same era, but in the second half of the song, it transitions into a contemporary pop song of epic proportions. Then the main vocals are smoothly taken over by Graham Coxon, with Dougal's dreamy chorus work in the background, and the music turns into abstract music crossed with New York proto-punk represented by Televison and Talking Heads, and eventually Dougal's vocals form the impression of a contemporary pop song. It is a wonderful piece of music, as if one were to water a seed and watch the seedling slowly grow and blossom into a beautiful flower.
 

The nature of the band as a post-punk unit is momentarily demonstrated on ‘3-Moth To The Flame’. Over a lumbering, overdriven bassline, Graham Coxon drives the song along with augmented vocal effects and a swaggering vocal delivery that is a ‘statement replacement’. The song has a centripetal force and would be quite exciting live. However, Coxson's vocals, sung against a root-progressed bass, are surprisingly quite powerful and detailed. It is, so to speak, a punk sound that demonstrates that Coxson is a modern musician/vocalist.


Above all, the smooth legato of the saxophone, which, like the first track on the album, reflects free jazz and fusion influences, adds a dancelike impression and a joyful air to the song.The synthesiser homophonic progression, which is essential in unravelling the new wave genre, cleverly enhances the energy of the song.


Coxson's vocals are also very powerful, and it's surprising that the words don't go over the top or end up in catchphrases. This is a sign that The WAEVE's musical expression is pointed, and in no small part a rebellion against the ideas and temperaments of the establishment. This is not a superficial rebellion, but an inward reflection of the inexhaustible thoughts and feelings that have been cultivated over the years.



In addition to these punk qualities, the songs also include orchestral and electronic music in the form of popular songs. ‘4-I Belong To’ brings something from the dreamy days of the 1970s back to the present day and updates it anew. And it shows a multifaceted take on hard rock, progressive, electronic and even Brit-pop music, accurately absorbing the mod-rock of The Who and The Jam, and even the rock opera epitomised by ‘Tommy’. 


It is true that they are entering deep musical territory, but what is most important is that the unit has accurately captured the musicality at the heart of rock opera. What is missing from this music is a form of vocalism that is now losing its contemporary Britishness, its gentlemanliness, its near-spoken-word form of gentry versification, so to speak. It is discernible that at the heart of rock opera, it was not incendiary, but the gentlemanly expression symbolised by classical theatre.

 

In particular, the two following tracks are the finest on the album. ‘5-Simple Days’ combines dreamy and restful sensations, wrapping bossa nova-like South American world music and fusion jazz with a nostalgic 80s popular sensibility. The acoustic/electric guitar playing is excellent, but it is Rose Dougal's vocals and the pleasant textures of the synthesizers that aptly capture the heavenly atmosphere of the song. The abstract slide-guitar-led guitar and Ennio Morricone's whistling macaroni western motifs embody the open splendour and celebratory feel of the music.

 
It is framed by a magical beauty, like coming on a brief holiday to a tropical country and catching the afterglow of the sun setting behind palm trees and the sea out of the corner of your eye. These aesthetic sensations culminate in the outro guitar arpeggio. This song can be seen as Coxson and Dougal's paean to the beauty of this world. It is also, and perhaps more importantly, a compassionate look at the wonders of nature and the landscape that led to the creation of these heavenly atmospheric songs. 


The following track, ‘6-Broken Boys’, was praised by ”UNCUT magazine” and reflects the post-punk side of the unit. These transitions from heavenly music to songs that frame the realistic aspect with some thought may surprise the listener with their targeted impression and have a significant impact. Practically, Dougal's vocals, sung against the caustic image of guitar and bass, show that the singer brings a girl-group quality to The Waeve's sound. Their coolest side rises to the surface and it oozes with the feeling of wind whipping across an urban city on your shoulders.

 

The musical nature of the album changes from track to track, with a smooth and gradual transition: on ‘7-Song For Eliza May’, a legacy of UK 70s folk music, Rose Dougal once again takes the main vocals, accompanied by Coxson's deft banjo playing. Building on the 6/8 waltz form, the banjo, guitar and piano create a dancelike musical effect, while Dougal's vocals foster the elegance, openness and pastoral atmospheres of Celtic folk music. The individual acoustic instruments are played and recorded extremely exquisitely, so that even when the singing is relatively free, the overall structure of the song is not disrupted. In conjunction with these outstanding musicianship and recording techniques, the dreamy sense of the vocals in practical terms gently takes the listener deep into the medieval world of England.


There are also images rising from the song itself, evoking soundscapes, but these are ultimately linked to the kind of solitude and classical rockiness that The Smith's Morrissey portrayed in the late 80s, once the strings enter. The second half of the song takes on a white-hot air with a guitar solo. Interrupted by a clever bass line, the song transitions into big, theatrical music. 

 

The second half of the song also contains elements of 70s British hard rock and LA's psychedelic rock such as The Doors(Jim Morrison). The band has thoroughly read the rock textbooks, so to speak, and sublimated them in such a way that they sound great live. An innovative piece of music that places them in the next generation of rock opera.

 


The WAEVE's music is as diverse as it is reflective of London's culture, and it never fits within a certain musical category. It is an expression of how much they love music, but also of their deep trust in each other. 

 

The musical variations and imagination do not diminish in the subsequent recordings, and there is a sense of gradual expansion. ‘8-Druantia’ once again returns to the new wave sound, incorporating unique saxophone playing to create a danceable sound somewhere between fusion jazz and post-punk. On the other hand, the following ‘9-Girl Of The Endless Night’ demonstrates the ideal form of contemporary British folk music, based on Dubliners' Irish folk songs such as Lankum.


The album's climax, ‘10-Sunrise’, is based on the pop songs of the 60s and 70s, where Graham Coxon's talent as a songwriter flourishes in a spectacular way. He adds an austere vocal, akin to Tom Waits or M.Ward, and a touch of saxophone jazz, before handing over the main vocal to his partner Rose Dougal in the chorus. This not only demonstrated a new duet form that could only be achieved in the form of a duo, but also how to connect them to a contemporary style, taking into account classical popular music. This is the greatest result of the insatiable inquisitiveness of both musicians.

 

The band absorbs all the good music - chamber pop, AOR, later urban contemporary, Scandinavian pop like ABBA - and sublimates it into theatrical pop music in the vein of Florence Welch. 

 

At the end of this song, the sensations that had been suppressed for so long come pouring out, as if in an outburst. Theatrical musical expression is combined with a magnificent orchestral string run up and down to create a popular music full of originality. As the title suggests, it seems to embody the moment of "sunrise". The climax of the final piece is nothing short of spectacular, and allows the listener to experience "the splendour of the music". It's great!!

 


* The Waeve's second album, City Lights, is out this weekend (20 September) on Transgressive. 


 

 

■ The WAEVE(ザ・ウェイヴ)

©︎Kalpesh Lathigra


The coming together of two musicians who, through working together have formed a new, singular, sonic identity. A powerful elixir of cinematic British folk-rock, post-punk, organic song-writing and freefall jamming. Themes of oblivion and surrender are juxtaposed with suggestions of hopefulness and light. Against a brutal global backdrop of impending apocalypse and despair, Graham Coxon and Rose Elinor Dougall strive to free themselves through the defiant optimism of making music.
 
With the release of their acclaimed eponymous debut album in February 2023, The WAEVE established themselves as a songwriting partnership to watch, with a body of work that was “...ambitiously structured, lovingly arranged… unhurriedly crafted songs full of bona fide thrills, unexpected twists, and an elegant but never gratuitous grandeur.” (UNCUT); a collection of tracks… ”Cinematic in scope, often luscious in its arrangements, it’s a singular gem.” (DIY).
 
Now, after a year of touring and studio sessions, The WAEVE are back with their sophomore studio album City Lights, 10 brand new tracks that illustrate the evolution of their collaborative musicianship, allowing this meeting of musical minds to further push the boundaries of their individual creativity.


 
2人のミュージシャンが一緒に活動することで、新たな唯一無二のサウンド・アイデンティティを形成した。シネマティック・ブリティッシュ・フォーク・ロック、ポスト・パンク、オーガニックなソングライティング、フリーフォール・ジャムのパワフルなエリクサー。忘却と降伏のテーマは、希望と光の暗示と並置されている。迫り来る終末と絶望という残酷な世界的背景の中で、グレアム・コクソンとローズ・エリナー・ドーガルは、音楽を作るという反抗的な楽観主義を通して、自分たちを解放しようと努力している。


 
「2023年2月にリリースされた同名のデビュー・アルバムで、ザ・ウェイヴは注目すべきソングライティング・パートナーとしての地位を確立」(UNCUT) 「シネマティックな広がりを持ち、しばしば甘美なアレンジが施された、唯一無二の逸品」(DIY)


 
1年間のツアーとスタジオ・セッションを経て、The WAEVEは2枚目のスタジオ・アルバム『City Lights』をリリースする。このアルバムには、彼らの共同作業による音楽性の進化を示す10曲の新曲が収録されており、音楽的精神の出会いが、個々の創造性の限界をさらに押し広げた。

 

 

■『City Lights」


Respectively, Graham Coxon and Rose Elinor Dougall are titans of UK rock music.
Coxon made a name for himself as a founding member of Blur, while Dougall came up playing in alternative girl group The Pipettes. In recent years, the duo have teamed up in the project The WAEVE. This Friday, September 20th, 2024, they'll release their second album, City Lights, via Transgressive Records. 


To celebrate the release of City Lights, The WAEVE will play four very special live performances at Rough Trade, as follows: Rough Trade Liverpool on 20th September;Rough Trade Nottingham (SOLD OUT); Rough Trade Bristol (SOLD OUT), and Rough Trade East, London. The band will return to London later this year for a sold out performance - and their largest headline show to date - at the Village Underground in late October.


The Rough Trade shows follow an extensive summer tour which has seen The WAEVE play to 100,000 plus fans across a run of festival and show dates including a headline slot atLatitude's Sunrise Arena, Green Man Festival; eight dates with Elbow including a performance at Audley End; plus a high profile show at Warwick Castle with Noel Gallagher.


A year on from their acclaimed eponymous debut album, The WAEVE is back with City Lights, a collection of 10 songs that illustrate the evolution of their collaborative musicianship and sees the band’s sound solidified into something bolder, more expansive and self-assured. Written by Graham Coxon and Rose Elinor Dougall, and produced once again by James Ford, the album features Graham and Rose on vocals, as well as keyboards, guitar, bass guitar, drums and saxophone.


 

グレアム・コクソンとローズ・エリナー・ドーガルは、それぞれUKロック界の巨匠である。コクソンはブラーの創設メンバーとして名を馳せ、ドーガルはオルタナティブ・ガールズ・グループ、ザ・ピペッツで活躍した。近年、このデュオはThe WAEVEというプロジェクトでチームを組んでいる。

 

今週金曜日、2024年9月20日、彼らはセカンド・アルバム『City Lights』をTransgressive Recordsからリリースする。


シティ・ライツ』のリリースを記念して、ザ・ウェイヴはラフ・トレードで以下の4つのスペシャル・ライヴを行う: ラフ・トレード・リバプール(9月20日)、ラフ・トレード・ノッティンガム(SOLD OUT)、ラフ・トレード・ブリストル(SOLD OUT)、ラフ・トレード・イースト(ロンドン)。バンドは今年後半にロンドンに戻り、10月下旬にヴィレッジ・アンダーグラウンドでソールドアウト公演を行う。


ラフ・トレードでの公演は、夏の大規模なツアーに続くもので、ザ・ウェイヴは、ラティテュードのサンライズ・アリーナでのヘッドライン・スロット、グリーン・マン・フェスティバル、オードリー・エンドでの公演を含むエルボーとの8日間、ノエル・ギャラガーとのウォリック城での公演など、フェスティバルやショーで10万人以上のファンを動員した。


高い評価を得た同名のデビューアルバムから1年、ザ・ウェイヴは『City Lights』をリリースする。この10曲のコレクションは、彼らの共同作業による音楽性の進化を物語っており、バンドのサウンドが、より大胆で、より広がりと自信に満ちたものへと固まったことを物語っている。グレアム・コクソンとローズ・エリナー・ドーガルが作詞作曲を手がけ、プロデュースを手掛けている。

 



■Live Dates

 
20/09 - Liverpool, UK @ Rough Trade
21/09 - Nottingham, UK @Rough Trade - SOLD OUT
23/09- Bristol, UK @ Rough Trade - SOLD OUT
24/09 - London, UK @ Rough Trade East
29/10 – London, UK @ Village Underground - SOLD OUT