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ロサンゼルスを拠点とするピアニスト、エミー賞受賞者であり複数回のBMI賞受賞歴を持つ作曲家ピーター・マニング・ロビンソンによる新作クラシックシングル「Pure Hearbreak(ピュア・ハートブレイク)」と、リリースに伴うシネマティックなミュージックビデオが公開された。


「ピュア・ハートブレイク」は、別れ後の普遍的な喪失の痛みを、生々しく胸を締めつけるような瞑想として描いた作品です。音楽的には、別れに伴う感情の起伏を、美しくも憂いを帯びた鍵盤の音色で表現。揺るぎない誠実さで解き明かされるメロディが、生々しい音楽的瞑想を紡ぎ出しています。 付随するミュージックビデオは、クラウス・ホッホがカリフォルニアの砂漠を背景に、別れる二人の恋人の物語を印象的なナラティブで紡ぐ、映画的な短編作品となっている。 


ピーター・マニング・ロビンソンはロサンゼルスを拠点とするピアニストであり、エミー賞受賞者かつ複数回のBMI賞受賞作曲家、リフラクター・ピアノ™の発明者、そして熟練のヴィーガンシェフである。彼の音楽は革新性と映画的なスケールを、深く心に響く情感の深みで結ぶ。 


シカゴ生まれ、バンクーバーとロサンゼルスで育ったロビンソンは3歳でピアノを始め、12歳までにプロとして演奏活動を始めた。クラシックの構造とジャズ即興に根ざした音楽的基盤は、南カリフォルニア大学(USC)とバークリー音楽大学での正式な学習、そしてアーニー・ワッツ、フィル・ウッズ、フレディ・ハバードといったジャズ界の巨匠たちとの共演を通じて磨かれた。


ロビンソンのキャリアは映画、テレビ、オーケストラ、ライブパフォーマンスに及ぶ。彼の作曲作品はエミー賞(KABC『Above and Below』)と5度のBMIミュージックアワード(『Without a Trace』)を受賞し、オーケストラ作品はロンドン・フィルハーモニック、ロサンゼルス室内管弦楽団、ムジカ・ノヴァのメンバーによって録音されている。 20代前半、重度の腱炎を発症し「二度と生演奏はできない」と宣告された後、コンコルディア大学レオナルド・プロジェクトのフィル・コーエン指導のもと、画期的な身体的・芸術的再訓練プロセスを経験。従来のピアノ技術を「脱却」し、全く新しい身体言語と音楽言語を確立した。


この旅は最終的に「リフレクター・ピアノ™」の発明へと至った。これは根本的に再考されたアコースティックピアノであり、ロビンソンが「屈折した音楽」と呼ぶものを生み出すことを可能にする。事前録音トラック、MIDI楽器、外部音源を一切使用しない、完全な生演奏によるパフォーマンスである。 2016年にサンタモニカのベルガモット・ステーションでリフラクター・ピアノ™を初披露して以来、ロビンソンはヴォルテックス・ドームやロサンゼルス近代美術館(MoMA DTLA)など数々の会場で絶賛される演奏を披露。2021年には長年の芸術的協力者であり映像ディレクターのクラウス・ホッホと共に、革新的なアーティストフレンドリーな音楽レーベル「オウル・ウォーク・レコーズ」を設立した。 


近年の作品の大半がRefractor Piano™を中心に展開される中、近々リリース予定のネオクラシックアルバム『Excursions』は、ソロアコースティックピアノへの力強い回帰を告げる。3年をかけて制作された本作は、悲嘆、失恋、回復力、そして輝く希望を紡ぐ極めて個人的な楽曲群で構成される。アルバムは儚い光の瞬間で満ちており、聴く者に愛と創造性をもたらす。 


世界的な激動と個人的な喪失に彩られた時期に書かれたこのアルバムは、絶望と断絶から苦闘、再生、そして喜びへと至る感情の軌跡をたどる。 「これらの楽曲は私の発散の場となった」とロビンソンは説明する。「悲しみや哀しみを処理する手段として、自然とアコースティックピアノに頼り続けた。やがて気づいたのは、私自身や多くの人々が経験していることを反映した音楽の系譜を創り出していたということだ」。数百に及ぶ録音スケッチから、ピーター・マニング・ロビンソンとクラウス・ホッホは入念に選別し、最終作品を視覚と音楽が一体となった没入型の感情のタペストリーへと昇華させた。 


アルバムタイトルは本質を映す:エクスカージョンとは短い旅路であり、予想外の道への逸脱であり、各楽曲が独自の感情の航海である。先行シングル「ピュア・ハートブレイク」は、別れ後の普遍的な喪失の痛みを、生々しく胸を締めつける瞑想として描く。 音楽的には、華麗で憂いを帯びた鍵盤が別れの浮き沈みを映し出す。揺るぎない誠実さで解き明かされるメロディは、生々しい音楽的瞑想だ。伴うミュージックビデオは映画的な短編で、クラウス・ホッホがカリフォルニア砂漠を背景に、別れる二人の恋人の物語を印象的な叙事詩として紡ぐ。 


映画的で冒険的、情感豊かで深く人間的な『Excursions』は、感じるために存在する音楽だ。衝撃的な展開、ロマンチックな憂愁、内省的な希望を織り交ぜた本作は、インストゥルメンタル音楽が言語を超えたイメージと感情を喚起できるというピーター・マニング・ロビンソンの信念を確かなものとする。彼自身の言葉によれば「これは私が最も誇りに思う作品だ」


「Pure Hearbreak」

 

 

▪️EN

 

Peter Manning Robinson is a Los Angeles- based pianist, Emmy Award–winning and multi–BMI Award–winning composer, inventor of the Refractor Piano™, and accomplished vegan chef whose music bridges innovation and cinematic scope with a deeply touching emotional depth. 


Born in Chicago and raised between Vancouver and Los Angeles, Robinson began playing piano at age three and was performing professionally by twelve. His musical foundations, rooted in classical structure and jazz improvisation, were refined through formal studies at USC and Berklee College of Music, and through performances with jazz luminaries including Ernie Watts, Phil Woods, and Freddie Hubbard.


Robinson’s career spans film, television, orchestral, and live performance. His scores have earned an Emmy Award (KABC’s Above and Below) and five BMI Music Awards (Without a Trace), with orchestral works recorded by members of the London Philharmonic, the Los Angeles Chamber Orchestra, and Musica Nova. In his early twenties, after developing severe tendonitis and being told he would never perform live again, he underwent a radical physical and artistic retraining process under Phil Cohen of Concordia University’s Leonardo Project, “unlearning” traditional piano technique and emerging with an entirely new physical and musical language.


That journey ultimately led to the invention of the Refractor Piano™, a radically reimagined acoustic piano that allows Robinson to create what he calls “Refracted Music”, live, fully acoustic performances with no pre-recorded tracks, MIDI instruments, or external sounds. Since debuting the Refractor Piano™ in 2016 at Bergamot Station in Santa Monica, Robinson has presented acclaimed performances at venues including the Vortex Dome and the Museum of Modern Art DTLA. In 2021, he and longtime artistic collaborator and video director Klaus Hoch founded Owl Walk Records, an innovative artist-friendly musical label. 


While much of Robinson’s recent work has centered on the Refractor Piano™, his upcoming neo-classical album Excursions marks a powerful return to solo acoustic piano. Compiled over a three-year period, Excursions is a deeply personal collection of compositions that navigate grief, heartbreak, resilience, and luminous hope. The album is filled with moments of fragile light, leaving listeners filled with love and creativity. 


Written during a time shaped by global upheaval and personal loss, the album traces an emotional arc, from despair and fracture through struggle, renewal, and joy. “These pieces became my outlet,” Robinson explains. “I kept defaulting to the acoustic piano as a way to process grief and sadness. Over time, I realized I was creating a family of music that reflected what I—and many others—were going through.” Drawing from hundreds of recorded sketches, Peter Manning Robinson and Klaus Hoch carefully curated and refined the final works into a cohesive visual and musical journey, an immersive emotional tapestry. 


The album’s title reflects its essence: excursions are brief journeys, departures from the expected path, and each piece is its own emotional voyage. Leading single “Pure Heartbreak” is a raw, heart-wrenching meditation on the universal pain of loss after a breakup. Musically, “Pure Heartbreak” reflects the ups and downs of a separation through gorgeous and melancholic-laced keys.  It is a raw musical meditation with a melody unraveling with unflinching honesty. The accompanying music video is a cinematic mini film with Klaus Hoch telling the story of two lovers who part ways in a striking narrative against the backdrop of the California desert. 


Cinematic, adventurous, emotive, and deeply human, Excursions is music meant to be felt. With striking twists and turns, romantic melancholy, and reflective hope, the album affirms Peter Manning Robinson’s belief that instrumental music can evoke images and emotions beyond language. As he puts it, “This is the work I am most proud of.”




オランダのピアニスト/作曲家、Joep Beving(ユップ・ベヴィン)が新作アルバム『Liminal』のリリースを発表した。ベヴィンはニルス・フラームのレーベル、Leiterからもリリース経験があるが、今回はドイツグラモフォンからの発売となる。


ギヨーム・ロジェの著書『ワイルド・ルネサンス』に触発された本作『リミナル』は、人間の活動と自然界のより緊密で共生的なつながりを求める声に応える。全15曲は一体となり、不確実性の領域へと広がっていく。  


「アルバム全体を通して、制御と直感の絶え間ない対話があります」とベヴィンは語る。「それは中間領域、つまり意味がまだ形成されつつある境界領域を反映しています」


待望のニューアルバム『Liminal』は2026年3月20日、エコ・ヴァイナル版(2枚組LP)を含む全フォーマットでリリースされる。先行曲「We are here but to make music and dance with all the obtaining forces」は2025年12月5日よりデジタルで配信済み。


また、『Wild Renaissance』は1月23日にビデオ付きでリリースされ、『When humans do algorythms』は2月20日に、『Ida』(こちらもビデオ付き)はアルバムと同日にリリースされる。ヨープ・ベビングは2026年5月にヨーロッパツアーで『Liminal』をライブ演奏する予定だ。


フランスの学者ギヨーム・ロジェは芸術と生態学の関連性を専門とする。 2025年に英語で出版された彼の著書『ワイルド・ルネサンス』は、オランダ人アーティスト、アイリス・ヴァン・ヘルペンによってベヴィンに推薦された。人間が自然を支配すべき対象ではなく、創造のパートナーとして捉え、アーティストやデザイナーが重要な役割を担う世界像は、ピアニスト兼作曲家の心に響き、21世紀のルネサンス運動の一部となり得る新作アルバムの創作へと駆り立てた。


「この音楽で」とベヴィンは説明する。「人間中心の思考から離れ、自然から切り離されるのではなく『自然と共に』創造する道へと歩みを進めながら、大いなる全体像における私たちの小さくも意味ある位置を探求したかった」 こうして『アルカディア』や『ヘテロトピア』といった楽曲が丹念に練り上げられる一方、他の楽曲は「自然の導きのように――移ろい、消え、沈黙へと戻る」形でベヴィンのもとに訪れた。 


この二つの流れの間に、アルバムの核心となる『人間がアルゴリズムを行うとき』が位置する。ここでは反復的なパルスが軽やかに彩られ、「人間とコンピューターが一種のダンスで出会う」様子が描かれる。意外にも、テクノロジーさえもが私たちを自然と再接続させる手助けとなり得るという示唆が込められている。


ミュージシャンによれば、『Liminal』は「対立を超えた世界を体験する招待状」である。人間と自然、人と機械、論理と神秘。音は出会いの場となり、秩序と野性、構造と自由、形と消滅の間の境界線となる。


「作曲とは支配することではなく調和すること、野生の声を我々を通して語らせることである」-Joep Beving



Joep Beving 『Liminal』


Label: Deutsche Grammophon

Release: 2026年3月20日



作曲家兼ピアニスト、ユップ・ベヴィンが新作アルバム『リミナル』を発表した。本作では、より広範な人間を超えた生態系における人類の役割を探求し、自然との分離ではなく結びつきを模索している。  


本作はギヨーム・ロジェ著『ワイルド・ルネサンス』に着想を得ており、増大する不確実性と旧体制の崩壊への応答として制作された。


 15曲のソロピアノ作品と電子音の一部が絡み合うこのプロジェクトは、境界領域に存在し、聴衆を現代的な作曲と内省的なサウンド・ポエトリーの間を漂う雰囲気ある旅へと誘う。二項対立を超えた世界を体験し、新たな共鳴を発見するよう促す。精密で意図的な作曲の瞬間と、音が有機的に進化するセクションが交互に現れ、制御と直感の境界線を曖昧にする。  


「このアルバムは二つの側面を行き来する。時に、私は音を最も純粋な形へと形作り磨き上げる。また、ある時は、音楽が自然の導きのように自ら流れ、移り変わり、消え、沈黙へと戻っていく。構造よりも繋がり、共鳴、変化が重要であり、建築よりも生態学に近い」とベヴィンは語る。 

Interview: Helena Silva デビューアルバム『Celste』の制作/ Netflixシリーズ「 The Empress」のサントラへの参加を語る


 

 Helena Silva(ヘレナ・シルヴァ)は、ポルトガル/バルセロス出身のヴァイオリニスト兼作曲家。現在はリスボンを拠点に活動。クラシック音楽の専門的な訓練を受け、スコットランド王立音楽院で演奏の修士号を取得。以来、クラシックと実験音楽の世界を橋渡しするキャリアを築いています。

 

 国内外のオーケストラやアンサンブルと定期的に共演し、Cícero、St. James Park、Grutera、The Partisan Seedなどのアーティストのアルバムに参加。演劇の分野では、指揮者のマルティン・ソウザ・タヴァレスや演出家のリカルド・ネヴェス・ネヴェスらと仕事をしてきました。


 映画では、Netflixシリーズ『皇后陛下』のサウンドトラック制作に貢献し、また、"シネ・アマドーラ 2025"よりシュルレアリスム映画『貝殻と僧侶』の作曲を依頼されている。


 2023年3月には初のEP『Manta』をリリース。収録曲「Tropico」はBBCラジオで紹介されました。続いて、先月リリースされたデビューアルバム『Celeste』は、バリ島での芸術家滞在中にリサ・モーゲンシュテルン、ルービン・ポロックらと共に芸術家滞在プログラムに参加した際に構想が練られました。

 

 ヘレナは現在、新作アルバムの発表と新たな創造的プロジェクトの模索に注力しています。特に映画と新たなコラボレーションに注力しつつ、新作アルバムの発表と新たな創造的プロジェクトの模索を続けています。

 

 今回、デビューアルバム『Celeste』の制作について、作曲家にいくつかの質問を投げかけてみました。また、弦楽器奏者としてのアピールポイントや映像音楽を作る時のコツなどを伺うことができました。下記よりエピソードを読み下さい。

  

ーー『Celeste』の制作は、2023年に、バリ島で行われたレジデンシー期間中に始まりました。このアーティスト・レジデンシーの経験は新しい作品にどのような影響を与えたのでしょうか?


Helena Silva:  振り返ってみると、場所が私の音楽に与える影響の多様さが明らかになりました。時に現実の場所であり、時に想像上の場所、あるいは特定の場所の概念そのものでさえ影響を与えます。

 

 例えば、前作『Manta』EP収録の「Bairut '65」は、私が実際に訪れたことのない場所(ましてや60年代の)ですが、ある時『LIFE』誌に掲載された写真に出会い、強く惹きつけられました。それらの写真は、私が知らなかったレバノンの全く新しい側面を示し、それが何らかの形でこの楽曲の起源となったのです。


 しかし、バリとセレステに焦点を当てると、このレジデンシーが新たな創作を始める時間と空間を与えてくれたことに加え、現地到着直後の時差ぼけから回復しつつあった時期に見た日の出が、このアルバムの中心的存在となったと言えます。

 

 意図したわけではありませんが、完成した今、光と闇が全編にわたり共存し、互いに競い合っていることに気づく。最初の4曲はこの薄明かりの雰囲気を表していると言えるでしょう。一方『Alva』と『Celeste』が最も輝きを放ち、『A Conversation Overheard』と『Figurado』が夜の一面を表現しています。


 そして『Figurado』で使用されたガムランのフィールド・レコーディングは、バリと私の故郷を結ぶ架け橋として機能しました。異教的な像が文化に根付く土地(興味があれば「フィグラード・デ・バルセロス」を検索してほしい)出身の私にとって、それらを融合させることは極めて自然な選択でした。

 

 ーーアルバムのいくつかの楽曲では、トレモロやドローン奏法など特徴的な弦楽器の技法が用いられています。弦楽器奏者として、この作品を通じてどのような探求と表現を目指したのでしょうか?


Silva: クラシックの訓練と並行して、私は活気あるインディペンデント・ミュージック・シーンに囲まれて育ちました。友人たちの多くはバンドで演奏したり、DIYスタイルでライブを企画したりしていました。


 そこで演奏され消費されていた音楽のほとんどはギター中心で、おそらくそれが、効果として音をモデル化したり歪ませたりできるという考えを、クラシック訓練を受けた私でも早い段階で受け入れさせたのでしょう。


 こうしたバンドや環境が教えてくれたのは、技巧以上に「意図」と「質感」が自己表現の強力な手段だということでした。例えば、クラシック音楽では、長い音符を用いビブラートなどの技法で感情を伝える印象派やロマン派の作曲に惹かれました。その後にドローンやアンビエント音楽に出会い、その魅力に夢中になりました。

 

 羊毛の糸を引くように展開されるアイデアの穏やかな流れ。そこには非常にリラックスでき、居心地の良さを感じさせる何かがあります。


 その結果、『Celeste』で描かれた音楽は、こうした経験の全てが混ざり合ったものとなった。ヴァイオリンの純粋な音色と荒々しいテクスチャーの並置、そして保守的なクラシック音楽の世界がより進歩的なアプローチによって挑戦される構図がそこにあるはずです。

 


ーー作曲に関して、フィリップ・グラスの影響を感じました。あなたの音楽に影響を与えた作曲家やアーティストを挙げるとしたら、誰になりますか?


Silva:真っ先に思い浮かぶのは、ティム・ヘッカー、フェネズ、カリ・マローン、ブライアン・イーノです。彼らは皆、それぞれ独自の方法でアンビエントやドローンを探求しています。ティム・ヘッカーがピアノや合唱を録音し、それをほぼ破壊するまで加工する手法には驚かされます。

 

 特に、ブライアン・イーノはアンビエント音楽の紛れもない巨匠であり、芸術全般に関する驚くべき思想家でもあるため、私にとって非常に大きな影響を与えています。クラシックピアノとエレクトロニクスを橋渡しし探求するニルス・フラームと坂本龍一も、特筆すべきインスピレーション源です。

 


ーー「Celeste」を聴くと、様々なタイプの音楽に出会います。厳かな音楽、苦悩を表現する音楽、喚起力のある音楽。さらに「Alva」からは、音楽がより天界的な性質を帯びていきます。これらの音楽的要素は経験から生まれたのでしょう? それとも内面の感覚の表現だったのでしょうか?


Silva: 「Alva」は間違いなくアルバムで最も天界的で旋律的な作品であり、ある意味では私が以前探求していた作品に近い。私にとって『セレステ』は、その幽玄で旋律的な側面と、アルバムの残りを構成するよりアンビエントな楽曲との融合点、接点のように感じられます。個人的なレベルでは、私はノスタルジックな人間と言えるでしょう。離れた場所や、しばらく会っていない人々を懐かしんだりすることがあり、それが私の作品を通して表れているんだと思います。

 

 
ーーアルバムの最後になぜガムランを取り入れたのでしょうか? この楽曲で表現しようとしたことは何でしょう?

 

 Silva:  レジデンシーのプロモーターは、私たちに十分な自由と遊びの余地を与えてくれた一方で、現地の文化を体験してほしいとも思っていました。そうでなければ意味がありませんからね。私たちは、バリ舞踊のクラスやバリ料理のワークショップ、その他の文化活動に参加しました。今でも時々、バリ料理を再現しようと試みています。とても美味しいんですよ。


 また、ある夜、地元のコミュニティによる公演を観に行きました。ガムランを奏で、伝統的な仮面と衣装をまとって踊る姿に、その場で「この雰囲気を音楽に取り入れたい」と強く思いました。

 

 先ほども話したように、私の故郷ポルトガルでは異教文化が色濃く残っています。表現様式は大きく異なりますが、両者の間に繋がりを感じました。人間の経験には、''どこへ行っても共通の基盤がある''のです。そこに意図的な意味はありませんでした。ただ、遠く離れた世界をつなぎ、知らず知らずのうちに私たちを閉じ込める境界線をなくす、という考えに惹かれたのだと思います。

 


ーー映画やNetflix作品への楽曲提供もなさっていると伺っています。映像のための音楽制作において、特に重視される要素を教えてください。

 

Silva: Netflixの『The Empress(邦題: 皇后陛下)』については、実際にサウンドトラックを作曲したリサ・モーゲンシュテルンから、あるトラックのヴァイオリンの録音に参加するよう招待されました。リサがトラックや特定のシーンに思い描いた音を探求し、共に創作できたのは素晴らしい経験でした。

 

 最近は演劇にも定期的に携わっており、即興演奏やエフェクトペダルを多用しています。これは私のソロ音楽での演奏とも何らかの形で繋がっています。短編映画の音楽制作も準備中ですが、まだ進行中です。

 

 さらに、近頃、1928年の実験映画『The Seashell and the Clergyman(邦題: 貝殻と僧侶)』の上映中に、即興演奏と作曲を行う、という挑戦を受けました。実際に、ヴァイオリンを手に取る前に、この映画を何度も観ました。感覚を正確に捉えたい、感情を表現したい。それが私の主眼でした。

 

 この場面で主人公は何を経験しているのだろう?  舞踏会のシーン全体の雰囲気はどうだろう? そんなふうに自らに問いかけつづけた。各シーンの解釈にようやく確信が持てた時、初めてヴァイオリンを手に取った。その後、即興性を重視し、映像が導く直感に従うことを心がけました。



 

 


▪EN

 

 Helena Silva is a violinist and composer from Barcelos, currently based in Lisbon, Portugal. Having received professional training in classical music, she obtained a Master's degree in performance from the Royal Conservatoire of Scotland. Since then, she has built a career bridging the worlds of classical and experimental music.
 
 She regularly performs with orchestras and ensembles both nationally and internationally, and has contributed to albums by artists such as Cícero, St. James Park, Grutera, and The Partisan Seed. In theatre, she has worked with conductor Martin Sousa Tavares and director Ricardo Neves Neves. In film, she contributed to the soundtrack for the Netflix series “The Empress” and was invited  by Cine Amadora 2025 to compose  music for the surrealist film “La Conquille et le Clergyman”.

 Helena Silva is a violinist and composer from Barcelos, currently based in Lisbon, Portugal. Having received professional training in classical music, she obtained a Master's degree in performance from the Royal Conservatoire of Scotland. Since then, she has built a career bridging the worlds of classical and experimental music.


 She regularly performs with orchestras and ensembles both nationally and internationally, and has contributed to albums by artists such as Cícero, St. James Park, Grutera, and The Partisan Seed. In theatre, she has worked with conductor Martin Sousa Tavares and director Ricardo Neves Neves. In film, he contributed to the soundtrack for the Netflix series “The Empress” and was invited  by Cine Amadora 2025 to compose  music for the surrealist film “La Conquille et le Clergyman”.



 In March 2023, he released his debut EP “Manta”. The track “Tropico” was featured on BBC Radio. Following this, her debut album “Celeste”, released last month, was conceived during an artist residency programme in Bali, where she participated alongside artists such as Lisa Morgenstern and Rubin Pollock. 

 Helena is currently focused on releasing her new album and exploring fresh creative projects. She continues to release her new album and pursue new creative endeavours, with a particular focus on film and new collaborations. 

 This time, we posed several questions to the composer regarding the creation of his new album, “Celeste”. We also had the opportunity to ask about his appeal as a string instrumentalist and his tips for creating visual music. 

 

 

ーーThe creation of 'Celeste' began during your 2023 residency in Bali. How did the experience of this artistic residency influence the work?


Helena Silva: Looking backwards it has become clear to me how different places influence my music. Sometimes real, sometimes imagined or even the idea of a certain place. 

 

Taking Beirut ’65 (from the previous Manta EP) as an example, I have never been there - let alone in the 60s - but at some point I came across some photos published by LIFE magazine and became obsessed about them. These photos showed me a whole new side of Lebanon that I was unaware of and that somehow gave origin to this piece.


But focusing on Bali and Celeste, and besides the time and space this residency gave me to begin working on something new, I would say that sunrises during the first days there, while I was still recovering from jet lag, ended up taking a center seat on this album. It was not premeditated, but now that it is done, I realise how light and darkness coexist and contend one another all over it. 

 

The first four pieces refer to this low light ambiences, I would say, while Alva and Celeste are the most luminous ones, and with A Conversation Overheard and Figurado being the nocturnal side of it.


Then there is the gamelan field-recording used in Figurado which was used as a bridge between Bali and my hometown. Coming from somewhere where pagan figures are embedded in our culture - search “figurado de Barcelos” if you are curious about it - , it made total sense to mash these two worlds, so far apart and yet so alike in their essence, together.


In Outra Terra there is also a field-recording captured at sunrise looking over endless rice fields. Its title refers to a distant and unknown land, once again playing around with geography as a source of inspiration.

 


--Several tracks on this album feature distinctive string techniques, including tremolo and drone playing. As a string player, what did you want to explore and convey through this work?


Silva: Parallel to classical training I grew up surrounded by a lively independent music scene. A major part of my friends were playing in bands or promoting gigs in a diy fashion. Most of the music played and consumed there was guitar centered and I guess that made me accept quite early that sounds can be modeled and distorted as an effect, which my classical trained self would not dare to think of.


What this bands and context also showed me was that intention and texture were powerful tools to express yourself, more so than virtuosity.


As for classical music, I grew fond of impressionism and romantic compositions, which feature long notes and rely heavily on techniques like vibrato to convey emotion.


Later on I discovered drone and ambient music and fell in love with it. The gentle flow of an idea being developed like pulling a wool thread. There is something so relaxing and homey about it.


As a result, the music portrayed in Celeste became the mixing pot of all these experiences. The juxtaposition of the pure sound of the violin and the abrasive textures, as well as the more conservative world of classical music being challenged by a more progressive approach.

 


--Regarding composition, I could sense an influence from Philip Glass. If you were to name composers or artists who have influenced your music, who would they be?


The first ones to pop into my mind are Tim Hecker, Fennesz, Kali Malone and Brian Eno. All of them explore ambient and drones in their own way. The way Tim Hecker composes and records pianos and choirs to then almost destroy them awes me. 

 

Especially, Brian Eno being the undisputed master of ambient music and such an amazing thinker regarding art in general, also comes as a huge influence to me.
Nils Frahm and Ryuichi Sakamoto, bridging and exploring classical piano and electronics are also inspirations worth noting.

 

--Listening to "Celeste" one encounters various types of music: solemn music, music expressing anguish, and music that is highly evocative. Furthermore, starting with "Alva," the music takes on a more celestial quality. Did these musical elements emerge from experience? Or were they expressions of internal sensations?


Silva:  "Alva" is definitely the most celestial and melodic piece on the album, and in some ways, closer to the kind of work I was exploring before. Celeste, for me, feels like a meeting point - a mix and a connection between that ethereal and melodic side, and the more ambient pieces that make the rest of the album.


On a more personal level, I would say I am quite a nostalgic person. I am constantly longing for places I have left or people I have not seen in a while, and I believe that comes forth through my music. I do not know what comes next but Celeste and Manta are both quite spontaneous works. There were not many ideas settled beforehand, resulting in a quite honest album, rooted on past experiences and inner sensations.

 

--The final track on the album features Indonesian gamelan percussion instruments. It feels like quite an adventurous piece. Why did you incorporate gamelan? What did you aim to express with this track?  

 

Silva: The residency promoters gave us enough space to breathe and play but they also wanted us to experience the local culture. It would not make sense otherwise. We attended balinese dance classes, balinese cuisine workshops and other cultural activities. I still try to recreate some balinese dishes once in a while. It is delicious.


One night we went to a show by the local community in which they were playing the gamelan and dancing in traditional masks and costumes. Right away I new I wanted to incorporate all that atmosphere in my music. As I was saying before, pagan culture is quite present where I come from in Portugal, and although depicted in quite a different fashion, I could sense a connection between both ways. Human experiences have a communal ground to them wherever you go.


There was not a premeditated meaning behind it. I guess I just love this idea of bringing distant worlds together, abolishing boarders that so many times unknowingly trap us.


--I understand you also compose music for films and Netflix. When creating music for visuals, could you tell us what aspects you prioritize?


Silva: As for The Empress on Netflix, I was invited by Lisa Morgenstern, who actually composed the soundtrack, to record some violins on one track. It was an amazing experience to collaborate and explore with Lisa the kind of sounds she envisioned for the track and that specific scene.


Lately, I’ve also been working regularly with theater, often improvising and using effect pedals, which connects in some ways to what I play on my solo music.
I’ve been preparing music for a short film as well, thought that is still in process.
Recently I was challenged to compose and play live during the screening of The Seashell and the Clergyman, a 1928 experimental film. I watched the movie a few times before even picking up the violin. I wanted to make sure I got the sensations right. I wanted to capture emotions. That was my focus.

”What is the main character going through this scene? What’s the whole atmosphere during the ball scene?” Those were the questions I was posing myself.


When I got comfortable with my interpretation of each scene, that was when I picked up the violin. Then I wanted to be spontaneous and let the images guide my intuition.



台湾の室内楽アンサンブルグループ、Cicadaがしばらくの活動休止を経て、待望のニューアルバムで復帰を果たす。『Gazing the Shades of White』は2026年1月22日にリリース予定。本作は『(SEEKING THE SOURCES OF STREAMS)』に続く待望のアルバムとなります。


アルバムのタイトル曲のリリックビデオがこの発表と合わせて公開されました。アコースティックピアノの演奏をフィーチャーしたオーガニックな風合いの楽曲です。下記よりご覧ください。


台湾で絶大な人気を集め、中国・ロシア・日本での単独ツアーも盛況と、海外でもその支持が広がっている台湾の室内楽アンサンブルCicada。10年以上にわたり、彼らは台湾の山々や海、風景を音へと織り込んできた。

 

『Gazing the Shades of White』は、島から島へと渡る旅のはじまりであり、氷河の痕跡を追って北半球から南半球へ~アイスランド、グリーンランド、そしてニュージーランドを経て、再び台湾へ~と戻り、太古の氷河が残した記憶をたどる新作である。


Cicadaは山のハイキングなどから着想を得る場合が多いが、今回はヨーロッパに足を伸ばし、北欧の氷河がモチーフとなっているようだ。


今回の制作の舞台となったグリーンランド・イルリサットの峡湾では、巨大な氷塊が漂い、アイスランドの高地トレイルでは氷河が溶岩の跡と出会う。バトナ氷河とヨークルスアゥルロゥン湖のあいだでは、無数の氷片が静かに時のなかへと溶けていく。台湾の雪山には、古い針葉樹のそばに氷河湖が眠り、ニュージーランドのアオラキ山の麓で、旅人は山と呼応するような静寂に出会う。


旅の途中で拾い集めた繊細な音を通して、Cicadaは「永遠」だったはずの風景の消失を、音楽と聴き手のあいだに生まれる親密な対話へと変えていく。

 

 

「Gazing the Shades of White」




■ Cicada - Gazing the Shades of White



タイトル:Gazing the Shades of White

アーティスト:Cicada

フォーマット:CD/LP/DIGITAL 

CD発売日:2026年1月22日

DIGITAL発売日:2025年10月30日


Tracklist:

1 Gazing the Shades of White

2 Journey of Drifting Ice

3 Where the Glacier Once Passed

4 Junipers by the Glacier Lake

5 Awaiting for the Path to Appear

6 Embraced by Aoraki

7 Water Etched Landscape

8 Once Covered in Ice


・リリースの詳細(FLAU):  https://flau.jp/releases/gazing-the-shades-of-white/


Cicada:



作曲とピアノを担当するJesy Chiangを中心に結成された4人編成の台湾の室内楽アンサンブル。2010年にÓlafur Arnaldsのライヴのオープニング・アクトとしてデビュー、ファーストアルバムが台湾で大ヒットを記録し、2015年に「Ocean」でFLAUよりワールドワイド・デビュー。

 

翌年にはグループの初期作をまとめたコンピレーション「Farewell」をリリースし、初来日ツアーも成功を収めた。2回目となる来日ツアーを挟み、2019年に結成10周年を記念したアルバム「Hiking in the Mist」を発表。台湾のグラミー賞ともいわれる金曲獎 Golden Melody AwardsのBEST ALBUM PRODUCER賞にノミネートされる。

 

2022年には妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝らが出演した映画「ある男」(監督:石川慶、原作:平野啓一郎)の音楽を務め、日本アカデミー賞優秀音楽賞に選出。久々の来日公演も実現。今年開催された大阪万博ではTECH WORLD館(台湾)の音楽を担当した。

 


東京の作曲家/プロデューサー、フクゾノヤスヒコのソロプロジェクト、ausのニューアルバム『Eau』。奥野楽の演奏する「箏」を全面的にフィーチャーし創作した、ausの魅力的な方向転換といえる美しい作品。


思慮深く展開する繊細な技巧、展覧会や実験映画のための魅力的なサウンドデザインで、国内外から篤い支持を受けるアウスは、これまでキーボードやエレクトロニックサウンド作品を主に手がけてきました。


本作『Eau(オー)』は、依然としてエレクトロニックサウンドを維持しつつも、日本の楽器の中で最も特徴的な弦楽器のひとつである箏の音世界を軸に展開する、アウスの魅力的な方向転換といえるアルバムです。繊細でありながら豊かな数々の箏のフレーズと音色は、非常に才能豊かな演奏家、奥野楽(おくの・えでん)が担当。アウスは作品解説の中で、このプロジェクトにおける奥野の演奏とその芸術の重要性を称賛しています。


『オー』の収録楽曲は、箏の微妙に変化するアタック、揺らめく響きの音色と、他の楽器の音色のバランスをとるようにデザインされています。箏の繊細なディケイ(減衰)と韻律の柔軟性は、持続的なシンセサイザーの音色と対位法的に構築されたピアノの旋律に包まれ、引き込まれるような底流と、物憂げで流動的な質感を伴う、流れるようなアンビエンスを生み出しています。


箏の現代史を俯瞰したとき、日本のコンテンポラリー音楽の愛好者は『オー』を聴いて、沢井忠夫がリアライズした吉村弘作曲作「アルマの雲」(1979年)、箏の演奏グループKoto Vortex(コト・ヴォルテックス)が同じく吉村弘の作品を取り上げたアルバム『Koto Vortex I: Works by Hiroshi Yoshimura』(1993年)を思い出すかもしれません。どちらも箏を伝統から引き剥がし、アンビエント~テクノの文脈に配置しようとした先駆的作品で、それらは『オー』にも影響を及ぼしています。また、諸井誠の『和楽器による空間音楽』といった70年代日本の現代音楽作品も『オー』の重要な影響源となっています。


フィジカル版にはアウスによる日本語・英語解説付き。ジャケットデザインは橋本麦、マスタリングは大城真が担当。CD/LP/カセット/デジタルで発売し、CD・デジタル版とLP版はジャケット違いとなります。本作はレーベル《FLAU》とエム・レコードの初のコラボレーション・リリースとなります。アルバムから先行シングルの2曲のミュージックビデオが公開されています。日本の伝統楽器である箏、ピアノ、ボーカルを生かした雅やかなシングルとなっています。



「Orientation」
 



「Tsuyu」


■ aus  『Eau』-New Album



タイトル:Eau

アーティスト:aus

レーベル:FLAU/Em Records

発売日:2025年12月12日


Tracklist:

1. tsuyu

2. uki        

3. variation I 

4. orientation

5. variation II

6. tsuzure

7. shite

8. minawa

9. soko

10. strand



■ ストリーミング/ダウンロード

https://aus.lnk.to/Eau


■ リリース詳細

https://emrecords.shop-pro.jp/?pid=188331291

https://emrecords.bandcamp.com/album/eau


aus:


東京出身。10代の頃から実験映像作品の音楽を手がける。身近に存在する音を再発見し、再構築を繰り返すことによって見出される彼の音楽は「自然に変化を加えることによって新しい自然を生み出す」と自身が語るように、テレビやラジオから零れ落ちた音、映画などのビジュアル、言葉、長く忘れ去られた記憶、内的な感情などからインスピレーションを受け、世界の細かな瞬間瞬間をイラストレートする。これまでにヨーロッパを中心に世界35都市でライブを行い、国際的にも注目されるレコード・レーベルFLAUを主宰する。


長らく自身の音楽活動は休止していたが、2023年 Seb Wildblood主宰All My Thoughtsより久々となるシングル「Until Then」のリリース、4月にはイギリスの老舗レーベルLo Recordingsより15年ぶりのニューアルバム「Everis」を発表。同作のリミックス・アルバムにはJohn Beltran、Ocean Moonらが参加した。


最新作は、より室内楽へのアプローチを深めた「Fluctor」。Ulla、Hinako Omori、Li Yilei らとのインスタレーションや、Matthew Herbert、Craig Armstrong、Seahawksへのリミックス提供など、復帰後は精力的に活動している。今年箏を中心に据えた新しいプロジェクト/アルバム「Eau」をEM RECORDS/FLAUより発表予定。

 

過去数年にわたりコラボレーションを重ねてきたアンビエント実験音楽の作曲家/プロデューサー、ジュリアナ・バーウィック、モダンクラシカルの作曲家/ハープ奏者として名高いメアリー・ラティモアが、来年初頭に発売予定のニューアルバムの制作で再び共同制作に取り組んだ。両者は、2026年には北米ツアーを実施、カナダのトロントとモントリオールで公演を行う。


『Tragic Magic』は1月16日、InFiné Musicよりリリースされる。これは両アーティストの近年のソロ作品——ジュリアナ・バーウィックの『Healing Is a Miracle』(2020年)、メアリー・ラティモアの『Goodbye, Hotel Arkada』(2023年)——に続く作品であり、デュオはパリ・フィルハーモニー管弦楽団付属音楽博物館の楽器コレクションを使用する機会を得た。


ラティモアは「この体験にアクセスできたのは本当に幸運でした。温かさと熱意にあふれた人々と共に、文字通り博物館の棚から取り出した楽器を現代の文脈で扱う作業には、深い敬意が込められていました」と語る。バーウィックは「過去を尊重しつつ、私たち自身の真の表現であると感じる音楽を作りたかった」と付け加えた。

 

先行公開されたシングル「Melted Moon」は、ラティモアのハープの演奏をフィーチャーしている。アルペジオが重層的に折り重なり、癒やしに満ちたアトモスフェリックなサウンドを醸成する。

 


「Melted Moon」




Julianna Barwick& Mary Lattimore 『Tragic Magic』

Label: InFiné Music

Release: 2026年1月16日

 

Tracklist:

1. Perpetual Adoration

2. The Four Sleeping Princesses

3. Temple of the Winds

4. Haze with No Haze

5. Rachel's Song

6. Stardust

7. Melted Moon


Pre-Save: https://idol-io.ffm.to/tragicmagic


カナダを拠点に活動するコンポーザーが早くも今年二作目のアルバムをリリース。カラ・リス・カバーデイルが11月21日に新作アルバム『Changes In The Air』をリリース予定。新作『Changes In The Air』は今年3作目のアルバムとなり、Smalltown Supersoundより11月21日にリリースされる。


『Changes in Air』は、Smalltown Supersoundから11月21日にリリース予定。先月発表された『A Series of Actions in a Sphere of Forever』に続く作品です。 オスロのスカルヴェン浮遊サウナでのインスタレーション用に書かれた作品を基にして、電気オルガン、モジュラーシンセ、ピアノによる5部構成のこの作品は、木・水・太陽・ガラス・金属という5つの「素材」から着想を得ている。カバーデイルは2019年にマニトバ州マーケットで本作を単独録音。今年ついに完成に至った。


本日公開された先行トラック「Curve Traces of Held Space」はアルバム最終曲。約8分に及ぶこの楽曲は、穏やかな空気感で始まり、次第に不気味さを感じさせる領域へと広がりつつも、その境界を保ちながら変容を続ける。リードシングルは下記より試聴可能です。



「Curve Traces of Held Space」


Review:

▪️NEW ALBUM REVIEW: KARA-LIS COVERDALE 『A SERIES OF ACTIONS IN A SPHERE OF FOREVER』


Kara-Lis Coverdale 『Changes In The Air』


Label:  Smalltown Supersound

Release: 2025年11月21日


Tracklist:


1. Strait of Phase

2. Labyrinth I

3. Boundlessness

4. Oriri

5. Curve Traces of Held Space


Pre-order: https://lnk.to/sts453-changesinair


愛される作曲家でありエチオピアの修道女でもあるエマホイ・ツェゲゲ・マリアム・ゲーブル(Emahoy Tsege  Mariam Gebru)によるピアノ、オルガン、ハルモニウムを通じて奏でられるスピリチュアル・ミュージック。


今作は彼女が1972年に自主制作したアルバムに未発表のピアノ録音2曲を収録した「エチオピア教会音楽」へのアプロー チを探求した作品。


「Ave Maria」は彼女が録音した作品の中でも特に印象的な一曲であり、澄んだピアノの音色が古い石造りの壁に反響しています。


「Spring Ode - Meskerem」では彼女の親しみ深い旋律がハルモニウムを通じて新たな響きを表現。その他に彼女のヨーロッパ古典音楽の訓練と長年にわたるエチオピア宗教音楽の研究が融合した、壮大なオルガン演奏2曲も収録。


なかでも「Essay on Mahlet」では、エチオピア正教の典礼における自由詩の精神を一音一音ピアノで 表現し、独自の感性との融合が最も際立った楽曲。


どちらも1963年に自主制作したアルバム『Der Sang Des Meeres』 からの作品。ジャケットには、メタリックシルバーの箔押しが施され、学者でピアニストのトーマス・フェンによるライナーノーツを掲載した12ページのブックレットを収録。彼女の102年目の誕生日に合わせてリリースされます。 




Emahoy Tsege  Mariam Gebru  『Church of Kidane Mehret』



アーティスト : Emahoy Tsege Mariam Gebru (エマフォイ・ツェゲ・マリアム・ゲブル)

タイトル : Church of Kidane Mehret (チャーチ・オブ・キダネ・メレット)

レーベル : Mississippi Records

発売日 : 2025年5月23日


<国内流通盤CD>

品番 : AMIP-0377

価格 : 2,750円(税込)/2,500円(税抜)

バーコード : 4532813343778


<国内流通盤LP>

品番 : AMIP-0378LP

価格 : 5,940円(税込)/5,400円(税抜)

バーコード : 4532813343785

*限定Clear Vinyl



【Emahoy Tsege Mariam Gebru】


エチオピアの修道女であり作曲家/ピアニスト。エチオピアのアディスアベバの裕福な家庭に生まれる。


6歳のとき、姉とともにスイスの寄宿学校に入学し、そこでヴァイオリンを学んだ。帰国後は戦 争や国の情勢に振り回され音楽活動は出来なくなり、19歳の時エチオピア・ウォロ州のギッシェン・ マリアム修道院に逃げ込み21歳で修道女となる。


1960年代には、かつてエチオピア王国の首都が あったゴンダール県に住みそこでエチオピア正教会の聖楽を創始したとされる6世紀の聖ヤレドの 宗教音楽を学ぶ。その頃から母国の孤児院に資金を供給する為に楽曲制作を始める。


1984年、母の死後に彼女は共産主義のデルク政権を逃れエルサレムのエチオピア修道院に移り住む。彼女のレコードの収益は孤児院を支援するために使われています。2023年3月に惜しまれつつこの世を去りました。

 


「Bank On」は、David Longstreth(デイヴィッド・ロングストレス)、Dirty Projectors(ダーティー・プロジェクターズ)、s t a r g a z eによるコ『Song of The Earth(ソング・オブ・ジ・アース)』の3rdシングルである。この曲には(皮肉な)メッセージが込められている。 視聴はこちら


6分半にわたって、ロングストレスは丁寧なインディーロックとして聴き取れるような音楽を作るという見栄を捨て、その結果、力作が生まれた。

 

ダーティ・プロジェクターズのフェリシア・ダグラスのゴージャスなソロ、ハープシコードを使った『Songs In The Key of Life』(スティーヴィー・ワンダーによる1976年の傑作)のようなロングストレスのヴァース、ダーティ・プロジェクターズの特徴である女性ハーモニーのコーラス、グスタフ・マーラーのようなブラスのファンファーレ。 

 

”Bank On"は、地球の大規模な破壊を前に、資本主義と製造された自己満足との間の歪んだ関係に立ち向かっている。


デヴィッド・ロングストレスのコメント:

 

この曲のタイトルは、『Fast Times At Ridgemont High』のショーン・ペン演じるスピッコリの声で想像できる。 このタイトルは、歌詞の中のフレーズ、"bank on apocalypse(黙示録の銀行)"の略だ。


ショック・ドクトリン的な発想である。 コーラスは、未来からの逆反転の祈りの呼びかけであり、地球の管理に失敗したことへの恐怖と後悔を呼び起こす。 「Bank On」の中心的なイメージは、侵食されつつある砂の上に建てられた、大きな花崗岩のブロック、ドーリア式の柱のような、永続的な組織の象徴である。

 




 Photo: Marcus Maddox

デイヴィッド・ロングストレスのオーケストラと声楽のための歌曲集『Song Of The Earth(ソング・オブ・ジ・アース)』は2025年4月4日にリリースされる。 


ロングストレスと彼のバンド、ダーティ・プロジェクターズ(フェリシア・ダグラス、マイア・フリードマン、オルガ・ベル)、そして、ベルリンを拠点に活動する室内管弦楽団”s t a r g a z e”(アンドレ・ド・ライダー指揮)が共演するこのアルバムには、フィル・エルヴァーラム(マウント・イーリー)、スティーヴ・レイシー、パトリック・シロイシ、アナスタシア・クープ、ティム・ベルナルデス、アヨニ、ポートレイト・オブ・トレイシーが参加し、ジャーナリストのデイヴィッド・ウォレス=ウェルズが言葉を寄せている。

 

ダーティ・プロジェクターズの『Lives Above』が、そのベースとなったブラック・フラッグの『Dameged(ダメージド)』とは似ても似つかないように、『Song Of The Earth(ソング・オブ・ジ・アース)』もその名の由来とは似ても似つかない。グスタフ・マーラーの1908年の歌曲『大地の歌(Das Lied Von Der Erde)』とは似ても似つかない。 しかし、ロングストレスは "マーラーの作品のテーマ、感情、そして矛盾を解消する精神が飽和状態にある "と指摘している。

 

ロングストレスは、s t a r g a z eの依頼で『大地の歌』の初稿を6週間かけて "躁状態 "で書き上げた。

 

パンデミックの混乱、新しい父親としての "ラディカル・サイケデリア"、大編成のアンサンブルのための作曲という斬新さなど、自分が置かれた状況に混乱しながらも、活力を感じていた。 その後3年間、オランダ、ロサンゼルス、ニューヨークのスタジオや自宅で、改訂、書き直し、編曲、レコーディングを行った。

 

『ソング・オブ・ジ・アース』は、ロングストレスがコンサート音楽の分野に進出した最大の作品である。 

 

この曲は、2024年3月にロサンゼルスのディズニー・ホールでLAフィルハーモニー管弦楽団と共演し、完売のうちにアメリカ初演された。 また、2022年から2024年にかけて、ロンドンのバービカン、ハンブルクのエルプフィルハーモニー、アムステルダムのムジークヘボウでもワークインプログレス公演が行われた。

 

ロングストレスは、「この音楽の必要性は、Tが娘を妊娠していた2020年秋の数日間に生まれた。 今年もそうだったが、カリフォルニアの大火は異常だった。 私たちはジュノー行きの空の便に乗った。 パンデミックの真っ最中で、誰も飛行機に乗っていなかった。 炭素を多く燃やすことで火災から逃れるという皮肉だ」。 アラスカの美しさと涼しさ。 サケの遡上後の腐った死骸に囲まれた沿岸の沼地の頁岩石の堤防に、泥だらけの白頭ワシが座っていた」と述べている。

 

ロングストレスは、『ソング・オブ・ジ・アース』は "気候変動オペラ "ではないが、"悲しみを超えた何かを見つけたかった "と言う。「希望、皮肉、ユーモア、怒りが散りばめられた認識」である。中東にせよ、東欧にせよ、現在の一筋縄ではいかない世界情勢を如実に反映するような音楽である。

 


 

 

 

 

David Longstreth/ Dirty Projectors/ stargaze 『Song of the Earth』


Label: Transgressive/ Nonsuch

Release: 2025年4月4日

 

Tracklist

 

1. Summer Light

2. Gimme Bread

3. At Home

4. Circled in Purple

5. Our Green Garden

6. Walk the Edge (with Anastasia Coope)

7. Opposable Thumb

8. More Mania

9. Spiderweb at Water’s Edge (with Patrick Shiroishi)

10. Mallet Hocket

11. So Blue the Lake

12. Dancing on our Eyelids

13. Same River Twice

14. Armfuls of Flowers (feat. Steve Lacy)

15. Twin Aspens (feat. Mount Eerie & Patrick Shiroishi)

16. Uninhabitable Earth, Paragraph One

17. Kyrie/About My Day

18. Shifting Shalestones

19. Appetite (with Tim Bernardes)

20. Bank On (with Portraits Of Tracy)

21. Paper Birches, Whole Scroll

22. Raven Ascends (with Patrick Shiroishi)

23. Blue of Dreaming (with Ayoni)

24. Raised Brow



デヴィッド・ロングストレスはグラミー賞にノミネートされたシンガー、ソングライター、プロデューサー。 ダーティ・プロジェクターズというバンドを立ち上げ、ソランジュ、ビョーク、リアーナなどとのコラボレーションで知られる。 ここ2年間は映画音楽を担当。インディペンデント長編映画『Love Me』(2025年)とA24の『The Legend of Ochi』(2025年2月28日全国劇場公開予定)。

 

レッドホットのコンピレーション『TRANSA』(2024年11月リリース)では、カーラ・ジャクソン、アイハ・シモンと「My Name」を共作・プロデュースしたほか、ケイト・ボリンジャー、ブレイク・ミルズ、ヴァンス・ジョイとの曲も手がけている。 

 

彼は、TBA-d/loシリーズの進行中の音源を携えて、選択的に全米ツアーを行っている。 ダーティ・プロジェクターズの最新作は、バンドのメンバーを紹介する連動EPシリーズ『5 EPs』(2020年)。 ダーティ・プロジェクターズは、フェリシア・ダグラス、マイア・フリードマン、オルガ・ベル、デヴィッド・ロングストレスの4人。

 

s t a r g a z eは、現代音楽家によるヨーロッパのオーケストラ集団で、現代的な作曲とオルタナティブな姿勢やサウンドを融合させ、著名なアーティストや場所との無数のコラボレーションを行いながら、クラシック音楽とポピュラー音楽の間にある冗長な溝を絶えず埋めながら、進化し続けるプロジェクトである。s t a r g a z eは、テリー・ライリー、ジョン・ケイル、ジュリア・ホルター、リー・ラナルド、ケイトリン・オーレリア・スミス等と過去に共演している。

 

アンドレ・デ・ライダーは、バロックから現代音楽まで、その多才なスタイルにより、多くの需要がある指揮者である。 2013年にs t a r g a z eを設立し、マックス・リヒター、ブライス・デスナー、ジョニー・グリーンウッドなどの作品を録音している。 デ・リダーは、アルバム『Africa Express Presents』に収録されたテリー・ライリーの『In C』のレコーディングを主導した。マリのミュージシャン、デーモン・アルバーン、ブライアン・イーノと共演している。




Goldmundがニューアルバム『Layers of  Afternoon』を発表した。本作はウエスタン・ビニールから6月13日に発売され、国内盤も同時に発売予定です。キース・ケニフは、叙情的なピアノ作品を音楽的な特徴としている。『Sometimes』では、坂本龍一とコラボレーションをしたこともある。ニルス・フラーム、オーラヴル・アーノルズ、小瀬村晶のファンは必聴のアーティスト。

 
ピアノ/ストリングスをフィーチャーしたインストゥルメンタル「Darnly」が公開された。この曲はどちらかと言えば、ヨーロッパ的な響きが込められている。従来はミニマリズムの範疇にある作曲性を重視していたが、今作は音楽の展開の要素が内包される。フレーズが次のフレーズをなめらかに呼び起こし、一曲の中で時間の緩やかな起伏のようなものが感じられる。曲のクライマックスでは、エレクトロニクスのアンビエントが登場し、オーガニックな余韻を残す。
 
 
最近、ゴールドムンドはパートナーで音楽的な盟友でもあるホリー・ケニフの楽曲のプロデュースも手掛けているが、2024年のアルバム『For Forever』と連動する作品になりそうな予感がする。
 
 
 





Goldmund -  『Layers of Afternoon』


アーティスト : Goldmund (ゴールドムンド)

タイトル : Layers of Afternoon (レイヤーズ・オブ・アフタヌーン)

レーベル : Western Vinyl

発売日 : 2025年6月13日


<国内流通盤CD>

品番 : AMIP-0379

価格 : 2,750円(税込)/2,500円(税抜)

バーコード : 4532813343792

*日本独占流通


<輸入盤CD>

品番 : WV283

卸値 : 1,540円(税抜)

バーコード : 843563182710

*日本独占流通


<輸入盤LP>

品番 : WV283LP

卸値 : 3,040円(税抜)

バーコード : 843563182703

 

 

【作品の紹介】


今作は、ある種の時間の経験を反映することを意図している―それは具体的でありながら曖昧で、感じ取ることはできても簡単には言葉にできないものだ。

 

こうした瞬間は時に短く、時に長く続くが、常に私たちの内面に影響を与えるパターンとして現れる。私たちはそれらの特別さを認識しつつも、無意識のうちにそのパターンを見つけて浸ることを求めるのかもしれない。Keith Kennif(Goldmund)にとって、言葉はこうした経験を伝えるには不十分であり、芸術や音楽こそがその特別さを 捉える最も近い手段だと考えている。

 

キース・ケニフは次のようにこのアルバムについて語る。「『Layers of Afternoon』はその“狭間”の場所を見つけ、そこから作曲することを目指しました。目標や音楽的な訓練、複雑な感情から解放された理想的な世界としての私の経験を表現したかった。この空間を訪れ、創作の中で自由に”瞬間”が浮遊するようにしたかった。」

 

ヴァイオリニストのScott Mooreと共に彼はノスタルジアと儚い存在の間を漂う音の風景を生み出し、聴く者を記憶のぼやけた境界線へと誘う。

 

 

【Goldmund】

 

米国ペンシルバニア出身で現在はメイン州在住のアーティスト。 Goldmund、Heliosの他にもKeith Kenniff、Mint Julepとしても作品を 発表し、それぞれの名義にて様々な才能を発揮している。

 

本名(キース・ケニフ)名義ではアップル、フェイスブック、グーグルなどのCM音楽も幅広く手掛ける人気音楽家。


Goldmundとして『Corduroy Road』(2005年)『、the malady of elegance』(2008)、『Famous Places』(2010)、『All Will Prosper』 (2011)、『Sometimes』(2015)『、Occasus』(2018)、『The Time It Takes』(2020)をリリース。

 

モダンとクラシカルが融合した独特のピアノ・ サウンドはモートン・フェルドマンとブライアン・イーノが出会ったようなサ ウンドで、シンプルながら深みのある響きを伝えてくれます。2019年にはピアノの祭典『PIANO ERA』で10年ぶりに来日を果たした。



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ロンドンのボーカリスト、Hatis Noit(ハチスノイト)の”オーラ・ワークス・シリーズ”は、アメリカ/バルティモアの作曲家Alex Somer(アレックス・ソマーズ)と、彼女の作品「Angelus Novus」の心を揺さぶる再創造を提供する。今回、2年前にリリースされた原曲のリワークが配信された。

 

リワークバージョンはボーカルコラージュやサンプリングを基にした神秘的なテイストを持ち、音楽は生と死の境界を彷徨うかのよう。シンセによるアレンジは賛美歌やレクイエムのような厳かさをトラック全体に及ぼしている。同楽曲はErased Tapesから発売中。ストリーミングはこちら



父が亡くなったとき、私は北海道の雪景色を旅し、父の遺体を確認し、彼の人生の痕跡を探した...それは、私が人生でほとんど知らなかった人の本質を明らかにする孤独な旅だった。

 

その旅の間、ヨンシとアレックスが創り出した『Riceboy Sleeps』の音楽は、単純な悲しみや手に入れられる愛への憧れを超えて、まるで目の前の荒れ狂うホワイトアウトの風景に音楽が呼応するかのように、私を未知の記憶の穏やかな風景へと導いてくれた。

 

それから10年以上が経ち、アレックスに人生の葛藤と癒しの両方を反映した「Angelus Novus」をリワークしてもらったことは、私にとって深い運命的なものを感じる。- ハティスノイト





ボーカルというのは、私たちが持っている楽器の中で最も即効性のあるものだ。 ハティス・ノイトの『Angelus Novus』を初めて聴いたとき、霧のように幾重にも垂れ込める声をフィーチャーしたアウトロに惹かれた。 その世界に住んで、その出発点から新しい曲を作りたいと思った。 

  

原曲のその動きをループさせた後、私はヴォーカルのレイヤーを新しい音の破片に分断する方法を聴き始めた。

 

ボーカルのテクスチャーをすべてコラージュして、再サンプリングし、そこに新しいハーモニーを加え始めた。 やがてヴォーカルのコラージュの下にコードが聴こえるようになったので、環境全体を支える低音域のサブベース・コードのパッセージをゆっくりと書いて録音した。

 

最後に、曲全体を3半音遅くした。 私はヴァリスピードが大好きで、聴き慣れたものから聴き慣れないものへと何かを変化させるお気に入りの方法なんだ。 聴いてくれてありがとう! アレックス・ソマーズ

 

 

 「Angelus Novus」(Alex Somers Rework)

 Interview:  Midori Hirano

 

Midori Hirano & Bruder Selke ©Sylvia_Steinhäuser
 

 

互いの異質さや存在感をぶつけ合うのではなく、逆に互いの最大公約数を見出し、そこにフォーカスする- Midori Hirano

 

 

ベルリンを拠点に活動するピアニスト、シンセ奏者、作曲家として世界的に活躍するMidori Hiranoは、2025年に入り、ポツダムの兄弟デュオ、Bruder Selke(ブルーダー・ゼルケ)とのコラボレーションアルバム『Spilit Scale(スピリット・スケール)』をThrill Jockeyから1月末に発表しました。エレクトロニック、チェロ、ピアノを組み合わせたアルバムで、スケールの配置をテーマに制作された。

 

らせん階段のように、GからAのスケールが配置され、旧来のバロック音楽、現代的なエレクトロニックのメチエを組み合わせ、変奏曲、連曲、組曲ともつかない、珍らかな構成を持つモダンクラシカル、エレクトロニック作品に仕上がった。Yoshimi O、灰野敬二、Boredoms、石橋英子をはじめとする、日本のアンダーグランドの象徴的な実験音楽家を輩出するスリル・ジョッキーからのリリースは、ミュージシャンにとって象徴的なレコードの誕生を意味するでしょう。


今年は続いて、ロシア出身でスウェーデンを拠点に活動するミュージシャン、CoH(Ivan Pavlov)とのアルバム『Sudden Fruit』がフランスのレーベル”ici,d'alleurs”から4月に発売予定。エレクトロニックとピアノの融合した、オランダのKettelを彷彿とさせるアルバム。また、アーティストは今年4月に日本でライブを行う予定です。こちらの詳細についてもご確認下さい。

 

今回、平野さんはご旅行中でしたが、『Spilt Sacale』の制作全般について、最近のベルリンの暮らしや政治情勢について教えていただくことが出来ました。お忙しい中、お答えいただき、本当にありがとうございました。今後の活躍にも期待しています。以下よりインタビューをお読みください。

 

 

ーー1月24日にコラボレーションアルバム『Spilit Scale』がThrill Jockeyから発売されました。この作品の大まかな構想についてあらためて教えて下さい。



平野みどり: このアルバムの構想は最初にゼルケ兄弟から提案されたのですが、一曲ごとのキーを西洋音階のピアノでいうところの白鍵にあたるAからGまでに設定して作るというとてもシンプルなものでした。ですので、一曲目がA-Minorで始まって、最後にまたA-Minorで終わる形になっています。マイナーキーにするかメジャーキーにするかまでは決めてなかったのですが、互いの音楽の内省的な傾向が影響したのか、自然にFとG以外は全部マイナーキーになりました。



このアルバムは、全てファイル交換のみで制作したのですが、段取りを明確にする為に、A, C, E, Gは私発信で、それ以外のB, D, F, AAはゼルケ発信で始める事にしました。


アイデアとしてはとてもシンプルだし、新鮮さは特にありませんが、私は自分の作品を作るときはこんなに分かりやすいルールを決めてから始めるという事はあまりなかったです。私に取っては決められたルールの中で、彼らの作る音も尊重しながら、どれだけ自由に表現を広げられるかという点では、とても新鮮な試みでしたね。



ーーゼルケ兄弟との親交は、いつ頃から始まったのでしょうか? 実際に一緒に制作を行ってみていかがでしたか。



平野: 最初にゼルケ兄弟と知り合ったのは、彼らの拠点でもあるポツダムで主催している「Q3Ambientfest」というフェスティバルに呼んでくれたのがきっかけでした。2017年の春で、その年が彼らにとっても第一回目のフェス開催でした。その当時は彼らは”CEEYS”というユニット名で活動していましたが、数年前からブルーダー・ゼルケと名乗るようになっていました。


その後にも何度か同じフェスだけでなく、別の主催イベントにも対バンで何度も呼んでくれるようになって、それを通じて次第に仲良くなっていったという感じです。

 

それから2021年に彼らの”Musikhaus”というリミックスアルバムの為に、一曲リミックスを依頼されて制作したのですが、そのリミックスを気に入ってくれたみたいで、その後に割とすぐコラボレーションをしないかと誘われたのが、このアルバムを作る事になったきっかけですね。

 

最初に調性などのルールは決めたものの、それ以外は自分の直感に従い、自由に音を重ねていったように思います。ゼルケ兄弟の2人は本当に人が良くて平等精神に溢れた人達ですので、お互いに尊重するべきポイントもとても把握しやすく、最後まで気持ち良く作る事が出来ました。




ーー最新作ではピアノ、チェロ、シンセサイザーを中心にモダンクラシカル/アンビエントミュージックが展開されます。作曲から録音に至るまで、どのようなプロセスを経て完成したのでしょうか。



平野: 彼らが住んでいるポツダムから私の住むベルリンまでは電車で1時間弱と近いので、一緒にスタジオに入って録音する事も物理的には可能ではありましたが、3人のスケジュールを合わせるのはなかなか大変ですし、それぞれ自分のペースでゆっくり考えながら制作したいという思いもありましたので、先に話したように、全てファイル交換のみで仕上げました。途中、何ヶ月か中断しながらでしたが、2年ほどかけて丁寧に作りました。

 

録音したファイルは、毎回、4曲ずつをまとめてお互いに送り合って進めましたが、ファイルが往復した回数は2年の間で合計3回ぐらいだったと思います。

 

最終的な仕上げとミックスは私に任せるとゼルケ兄弟が言ってくれたので、最後の調整は私が1人で数ヶ月かけてやりました。最後の段階では曲によって10分以上あるものも多く、ちょっと長すぎるかなと思ったところを私の判断でいくつか切って短くしたり、さらに私が追加でピアノとパッド系のシンセを入れた曲も結構あります。



最終調整作業は、なかなか大変でしたが、結果的には満足のいくものに仕上がったと思っています。私は自分のソロでは結構実験的なアプローチで作っていたり、ピアノがメインの曲でもピアノの音自体を大きく加工して作ることも多いので、こんなに直球なモダンクラシカル的な作品をアルバム単位で作ったのは、私にとっては実は初めてかもしれませんね。




ーー今回のアルバムでは、ピアノ/シンセサイザー奏者が二人いるわけですが、それぞれの演奏パートをどのように割り振ったのか教えていただけますか? また、ゼルケさんと平野さんの演奏者としての性質の違いのようなものはあるのでしょうか?



平野: 3人の中でチェロを演奏するのはセバスチャンだけなので、ここの割り振りは初めからはっきりしていました。ピアノに関してはダニエルと私で特別最初に申し合わせをした訳ではないのですが、ダニエルがピアノを弾いているのは「Scale C」と「E」だけで、それ以外の曲のピアノはほぼ全て私が担当しました。


最初に彼らから送られてきた曲のファイルにあまりピアノが入っていなかったので、あえて私の為に入るスペースを残してくれていたのかなとも思いました。逆に、私も自分発信の4曲の中の「Scale C」と「E」には、ダニエルがもしかしたらピアノを弾くかもしれないと思い、シンセしか使いませんでした。


段取りについては最初に明確にルールを決めたものの、楽器の割り振りについては毎回録音する度にお互いに探り合いをしながら、慎重に選んでいったように思います。最終ミックスの段階で、初めて何か足りないと思ったところを、私がシンセやピアノで一気に追加したような感じですね。



ピアノとパッド系のシンセや「Scale C」のイントロに出てくるようなデジタル感の強い音は主に私で、ダニエルはエレクトロニックパイプで控えめなノイズっぽい音と、時折シンセベースを出したりしています。


あと、「Scale AA」でのシンセのアルペジオもダニエルが演奏しています。アナログ機器とチェロの音がメインのゼルケ兄弟の音と、ピアノ以外ではデジタルシンセを多く使っている私の音をミックスするのはなかなか難しかったですが、その割には意外とうまくまとまったなと思っています。



ーー『Split Scale』は、インプロヴァイゼーション(即興演奏)の性質が強いように感じられました。トリオでの制作において、共通するイメージやコンセプトのようなものはありましたか。そして、そのイメージが通じる瞬間はありましたか?



平野: ゼルケ兄弟も私も最初の録音の際には即興に近いスタイルで演奏したと思いますが、あとはお互いの音を聞きながら録音を重ねていっているのと、後から編集も結構加えているので、厳密に言えば、即興と作曲の中間のようなものです。



それでも、3人ともクラシック音楽のバックグラウンドがあるからなのか、ハーモニー構成の癖が似ている部分もあるかもしれません。ステージで一緒に演奏する時でもほぼ全部即興であるにもかかわらず、横も縦もはまりやすい。即興演奏として、それが面白いかどうかというと、人それぞれの意見があるとは思いますが......。でも、お互いの異質さや存在感をぶつけ合うのではなく、逆に互いの最大公約数を見出し、そこにフォーカスするような控えめな「即興演奏」を、私達はこの作品で繰り広げたのだと思ってますし、そこから生まれる美しさもあると思います。

 

 

Photo:Sylvia Steinhäuser

 



 

ーー最近のベルリンの生活はいかがでしょう? 現在の現地のミュージックシーンがどうなっているのかについてお聞きしたいです。



平野: ベルリンに住んでもう16年が経ちますので、最初に引っ越してきた頃に感じていたような新鮮さは薄れかけていますが、私個人の印象では日本と比べると、風通しの良い人間関係を築きやすい気がします。そして、女性が自信を持って生きやすい場所だとも思えるところは変わらないです。ベルリンというのは、いろいろな人達が移住してきてはまた去っていく都市ですので、長く住んでいる身としては、たまに”部活の先生”みたいな気持ちになる事があります。



音楽シーンは変わらず活発です。地元のアーティストもそうですが、世界各地から頻繁にさまざまなミュージシャンがベルリンにツアーのために訪れますし、毎日のように、いつもどこかで大小様々なライブイベントが開かれています。運営側からすると、客取り合戦みたいになりがちです。それでも、この活発さがベルリンの特色だと思っています。例えば、エクスペリメンタル・ミュージックのような、ニッチなジャンルのイベントでも、日本の数倍規模の集客がある場合が多いです。そこはベルリンの文化助成が支えて育ててきた部分も大きい気がしますね。



とはいえ、2024年の暮れから、ベルリンの文化助成予算が大幅に削減される事になりましたので、少しずつ運営が難しくなるライブハウスやイベントも出てきているようです。当然、この政治的な変化に対する反対運動も大きく、今後どうなっていくのかなとは思っています。色々な意味で、今後、アーティストとして、どう生きていくかが問われてきているように思います。



ーー女性が自信を持って生きやすいということですが、日本や他のヨーロッパの国々と何か異なる文化的な背景や慣例があるのでしょうか?
 
 

平野: 私は、日本以外ではベルリンにしか住んだことがないので、あくまでも個人的な体感に過ぎませんが、ドイツのみならずヨーロッパは全体的に、社会における女性の存在感が大きいように思います。勿論、もっと厳密に分析すれば、北欧、東欧、西欧と南欧では、文化的背景がそれぞれ異なってくるため、一概には定義できませんが、自由と平等、人権の扱い方や平和構築など、いわゆる大義としての西洋の理念みたいなものは欧州全体で共有されているという実感はあります。
 

女性に限らず、男性同士でもおそらくそうだと思うのですが、日本に比べると年齢によって作られるヒエラルキーをあまり感じなくて済むし、何歳になったからと言って、こうであるべきだ、みたいな固定観念も無くはないんですけど、日本よりはその意識がかなり薄いという気がします。
 

また、メルケル元首相が、2005年にドイツで女性として初めての首相に就任し、その後16年も政権を築いてきたことも、ドイツにおける女性の地位向上を目指す気運をさらに高めたと思います。
 
 
それでも、3年ほど前にメルケルさんが引退してからショルツ首相に変わり、この数年の間に国際情勢も大きく変わってしまった。ドイツ政治崩壊の危機と言われてしまうぐらいに状況も変わってしまいましたが……。先に挙げた文化助成予算の削減もその一つの影響でしょう。今月下旬にドイツで総選挙が行われますが、移民排除を掲げた右派政党も台頭してきています。今まで”正義”とされてきた西洋の理念がドイツでも少しづつ揺らいできているように思います。
 

イタリアのメローニ首相もイタリア初の女性首相なのは喜ばしいことですが、相当の保守派で、ドイツの右翼政党AfDの共同党首も女性です。アリス・ヴァイデルという人物なのですが、この間、ヒトラーを擁護するような発言をし、ドイツのメディアがひっくり返るような大騒ぎでした。
 
 
ですので、女性が地位さえ持てば、かならずしも良い結果に繋がるとは私も思っていませんが、ジェンダーバイアスにとらわれず、一人一人の思想や資質が可視化されるような時代になってきているのだと思いますし、それはそれで社会としての一つの進歩に繋がっていると思います。
 
 

CoH&Midori Hirano Photo: Markus Wambsganss



ーー今年4月には、グリッチサウンドを得意とするロシア出身のエレクトロニック・プロデューサー、CoH(Ivan Pavlov)とのアルバムがフランスのレーベル”Ici d’ailleurs”からリリースされます。

 

さらに、同月に日本でのCoHとのライブも決定していますが、新作とライブについて簡単に教えていただければと思います。また、セットリストは決まっていますか。楽しみにしていることはありますか?



平野: CoHのイヴァンとのアルバム「Sudden Fruit」は、ゼルケ兄弟とのアルバムと同じように途中中断しながらも、2022年から2年近くかけて、ファイル交換だけで完成させました。

 

私が仕上げをした「Split Scale」とは違って、次のアルバムでは、私が先にピアノとシンセだけで録音した全曲のファイルを一曲ずつイヴァンに送り、その後の仕上げは全てイヴァンにお任せでした。一曲だけ私の方でピアノを追加録音したものがあるくらいで、他の曲はファイルが往復する事なく、彼が私が最初に送ったピアノの全録音を再構築する形で出来上がっています。


 

ピアノの録音時に、各曲それぞれ、高音域、中音域、低音域と、いくつかのレイヤーに分割して録音したものを送っているので、イヴァンの方で、低音だけベースラインらしく人工的な音に作り変えたり、さらに、そこにビートが加えられたりしながらも、元のメロディラインやハーモニーは、最初の構想がそのまま生かされている場合が多いです。ですので、録音の時点では、BPMなどが明瞭ではなかったピアノの曲が、CoHの手を通して明確なBPMとグルーブが付与されたような感じになり、結果的にはとても上品でかっこいい作品になったと思いますね。

 


4月の日本でのイヴァンとのライブは私達にとって初めての経験となります。今頑張って準備中です。セットリストはライブ用にアレンジし直していますが、基本的にアルバムの曲を再現するような形でやろうと思っています。

 

イヴァンがラップトップ(PC)、MIDIコントローラー、私がピアノを担当するという、シンプルなセットアップですが、シンプルなので、原曲のハーモニー感とリズミックなパートが実際のステージで映えて聴こえると理想的であると考えています。おそらく、2月中には、ツアーの詳細を発表できる予定です。また、京都の公演では、ロームシアターのノースホールでマルチチャンネルシステムを使用してのライブになりますので、とてもスペシャルな体験になりそうです。

 

ちなみに、ゼルケ兄弟とも、そのうち日本でライブが出来ればと考えています。こちらのセットは使用する楽器の数が多くなりそうです。CoHとのセットのように、フットワークを軽くとはいかないかもしれませんが、ロジスティック(輸送)の問題さえクリアできるならいつか実現したいですね。

 


 

【アルバム情報】Brueder Selke & Midori Hirano 『Split Scale』:  Thrill Jockeyから1月24日に発売

 




 

Tracklist:

1.Scale A
2.Scale B
3.Scale C
4.Scale D
5.Scale E
6.Scale F
7.Scale G
8.Scale AA 

 


「Scale A」

 

 

 


 

Midori Hirano & CoH 『Sudden Fruit』   マインド・トラベルズ・コレクション、Ici d'Ailleurs レーベル  2025年4月発売予定




陰で熟した果実のように、『Sudden Fruit(突然の果実)』は2人のアーティストのユニークな錬金術を表現している。


日本人ピアニストで作曲家の平野みどりと、CoHとして知られるサウンド・アーキテクトのイヴァン・パブロフ。 この2人のコラボレーションは、アコースティックとデジタルの間に宙吊りにされた作品を生み出し、自然と人工物が融合する繊細な瞬間をとらえ、まるで時間そのものが開花と消滅の間で逡巡しているかのようだ。


京都に生まれ、現在はベルリンを拠点に活動する平野みどりは、アコースティック・ピアノとエレクトロニック・テクスチャーがシームレスに融合した、ミニマルで幽玄な音楽を創作している。 坂本龍一の後期の作品(『Async』、『12』)に倣い、平野はクラシック音楽の伝統的な枠組みを探求、解体、再発明し、ピアノの一音一音を内省的で没入感のある旅へと変える。 彼女はまた、MimiCofという別名義で、よりエレクトロニックでアンビエントなテクノ/IDM志向の作品も制作している。 そのため、ミドリがイヴァン・パブロフと交わるのは、ほぼ必然的なことだった。


現在フランス在住のこのロシア人アーティストは、過去30年にわたるエクスペリメンタル・エレクトロニック・ミュージックの重要人物である。 数学と音響学のバックグラウンドを持つ元科学者のCoHは、外科的な鋭さを持つ自由な精神を持っている。 1990年代後半、前衛的で精密なポスト・テクノで頭角を現した後、グリッチに傾倒し、後に音響やアンビエント・サウンドを音の彫刻に取り入れた。 


ピーター・クリストファーソン(COIL)、コージー・ファンニ・トゥッティ、アブール・モガード(COH Meets Abul Mogard)とのコラボレーションや、ラスター・ノトーン、エディションズ・メゴといった高名なレーベルからのリリースは、アヴァンギャルドなエレクトロニック表現への彼の影響力と、コラボレーションにおける彼の卓越した能力の両方を裏付けている。


『Sudden Fruit』で、CoHと平野みどりは没入感のあるキメラ的な作品を発表した。 1曲目の「Wave to Wave」から、オーガニックとデジタルの微妙なバランス、自然の流動性、そして平野のピアノが体現する詩情と、イワン・パブロフの機械の低周波の重厚さが並置されているのが感じられる。 


アルバム3曲目の "Mirages, Memories "は、平野が奏でる一音一音が、ゆっくりとこの新しい空間に没入するよう誘う。 タイトル曲「Sudden Fruit」のように、アンビエントというよりインテリジェント・ダンス・ミュージック寄りの曲もあり、アルバムが進むにつれて、パブロフの音のテクスチャーは驚くべき物語性を発揮し、作品に思いがけない深みを与えている。


『Sudden Fruit』は、『Mind Travels』コレクションの理念と完璧に合致しており、ジャンルの枠を超え、分類にとらわれない。 調和のとれた共生の中で、平野みどりとCoHは、唯一無二でありながら普遍的なハイブリッド作品を作り上げた。 『Sudden Fruit』は大胆な音の探求であり、その領域に踏み込む勇気を持つ人々に深く共鳴することを約束する未知の領域である。

 

 

 


Midori Hirano:

 

京都出身の音楽家。ピアニスト、作曲家、シンセ奏者、そしてプロデューサーとして世界的に活躍する。現在はベルリンを拠点に活動している。”MimiCof”という別名義で作品を発表することもある。音楽的な蓄積を活かし、ドイツの電子音楽の系譜を踏まえたエレクトロニック、ポストクラシカルの系譜にある静謐なピアノ作品まで広汎な音楽を制作し発表しつづけている。 


平野みどりは、現代のデジタルサウンドをベースにし、モジュラーシンセを中心とする電子音楽、フィールドレコーディングを用いた実験的な作風で知られている。ピアノ作品としては、『Mirrors In Mirrors』(2019)、『Invisible Island』(2020)がある。ハロルド・バッドの音楽にも通じる澄んだ響きを持つ作品集。

 

2006年にデビューアルバム『LushRush』を発表。2008年、セカンドアルバム『klo:yuri』を発表し、TIME、BBC Radio、FACT Magazine(The Vinyl Factory)から称賛を受けた。2000年代後半からベルリンに拠点を移し、ドイツのシーンに関わってきた。ベルリンのレーベル、Sonic Piecesから二作のアルバム『Minor Planet』、『Invisible Island』 を発表している。


平野みどりは、ソロ名義と別名義の作品を発表する中で、音楽という枠組みにとらわれない多角的な活動を行う。ドキュメンタリー音楽や映画音楽のスコアを制作し、著名なアートレジデンスに音楽作品を提供している。


ベルリン国際映画祭、クラクフ映画祭、SXSW映画祭で上映されたダンス・パフォーマンス、ビデオ・インスタレーション、映画音楽を担当した。2024年には、第40回ワルシャワ国際映画祭で初演された長編ドキュメンタリー映画「Tokito」のスコアを手掛けたほか、プレミアリーグのドキュメンタリーのサントラも制作している。Amazonで配信されたフットボールのドイツ代表に密着したドキュメンタリーの音楽も手掛けおり、ドイツ国内では著名な音楽家と言える。

 

さらに、リミックス作品も数多く手掛けている。Rival Consoles(Erased Tapes)、Robert Koch,Foam And Sand、Liarsなどのリミックス制作し、プロデュースの手腕も高い評価を受けている。

Elliot Galvin


先日、ニューシングル「From Beneath」を発表したエリオット・ガルビンが、来年2月にニューアルバム『The Ruin(ザ・ルイン)』をリリースすることがわかった。この発表と合わせて新曲「A House, A City」が配信された。


受賞歴もある作曲家で、シャバカ・ハッチングスのピアニストとしても知られる即興演奏家のエリオット・ガルビンは、英国ジャズ界のスーパーグループ、ダイナソーのメンバーで、マーキュリー賞にもノミネート経験をもつ。


グラミー賞、マーキュリー賞、MOBOにノミネートされたレコーディング&ミキシング・エンジニア、ソニー・ジョンズ(トニー・アレン、アリ・ファルカ・トゥーレ、ローラ・ジャード)との3回のセッションでレコーディングされた今作『ザ・ルイン』は、エリオットの新たな出発点となる作品だ。「このアルバムは、ジャンルや位置づけを気にすることなく、僕に影響を与えたすべての音楽を組み合わせた、これまでで最もパーソナルな作品だ。自分という人間を最もピュアに表現したアルバムだと思う」とエリオットは話している。


アルバムには、著名なベーシスト兼ヴォーカリストのルース・ゴラー、ポーラー・ベアのドラマーでパティ・スミス/デーモン・アルバーンのコラボレーターでもあるセバスチャン・ロックフォード、そして長年のコラボレーターであるリゲティ弦楽四重奏団といったUK音楽シーンの錚々たるミュージシャンたちが参加している。


すでにファースト・シングル「From Beneath」が公開となっているが、本日新たな新曲「A House, A City」が配信された。同楽曲は、エリオットにとっての最初のピアノで弾いた最後の即興演奏をiPhoneで録音したものから始まり、その後、彼の家と成長期の思い出にインスパイアされた個人的で繊細なソロ曲へと発展していく。


そしてこの度、エリオットと映像作家のアレポとジェイムス・ホルコムが古いアップライトピアノに火をつけるというドラマティックなミュージック・ビデオも公開された。ビデオはアナログのボレックスカメラで撮影され、出来上がったフィルムは化学的に劣化させられ、ピアノの火がフィルムそのものを燃やしているように見える。このコンセプトは、アルバム全体に流れる廃墟と記憶の劣化(ruin)というテーマと結びついており、エリオットが新しい何かを求めて、これまでやってきたことをすべて解体するということを表している。


今回のシングル「A Horse, A City」とミュージック・ビデオについて、エリオットは次のように話している。


「子供の頃に使っていたピアノを売る直前に、座って即興演奏を録音したんだ。このピアノは祖父が亡くなった後に彼のお金で買ったもので、すごく特別な意味を持つ。アルバムの核になるとわかっていた即興曲があったんだけど、それを作るまでに5年くらいかかった。レコーディングしていたスタジオにボロボロになった古いピアノがあって、それでこの曲を録音するのが相応しいと感じたんだ。人生を生きてきたピアノには、壊れやすくて美しいものがある。音の不完全さには、この音楽の核心となる人間味がある」

 

 

 「A House, A City」



 

Elliot Galvin 『The Ruin』


【アルバム情報】

アーティスト名:Elliot Galvin(エリオット·ガルビン)

タイトル名:The Ruin(ザ・ルイン)

品番:GB4005CD (CD) / GB4005 (LP)

発売日:2025年2月発売予定

レーベル:Gearbox Records


<トラックリスト>

Side-A


1. A House, A City

2. From Beneath

3. Still Under Storms

4. Gold Bright

5. Stone Houses

Side-B


1. High And Wide

2. In Concentric Circles

3. As If By Weapons

4. Giants Corrupted

5. Fell Broadly

6. These Walls



アルバム『The Ruin』のご予約:  https://bfan.link/the-ruin

Credits:

Elliot Galvin – Piano, Synthesizers and Electronics

All Tracks

 

Ruth Goller – Bass and Voice

Tracks 2, 3, 4, 5, 7, 10

 

Sebastian Rochford – Drums

Tracks 2, 3, 4, 5, 7, 8

 

Ligeti Quartet

Freya Goldmark – Violin I

Patrick Dawkins – Violin II

Richard Jones – Viola

Val Welbanks – Cello

Tracks 3, 4, 5, 7, 9

 

Recorded at Giant Wafer Studios, Powys 

Recorded, Mixed and Co-produced by Sonny Johns

Mastered by Caspar Sutton-Jones

Co-produced by Sebastian Rochford

Produced by Elliot Galvin

 

All Music Composed by Elliot Galvin

All Music Published by Gearbox Music Publishing



Elliot Galvin:

 

受賞歴のある作曲家、ピアニスト、即興演奏家。作品は主に、即興演奏の取り入れと、様々な環境と文脈における音の折衷的な並置の使用で知られている。Downbeat誌とJazzwise誌の両方で2018年の年間最優秀アルバムに選ばれ、2014年には栄誉ある"ヨーロピアン・ヤング・ミュージシャン・オブ・ザ・イヤー"を受賞した。

 

これまでシャバカ・ハッチングス、ノーマ・ウィンストン、マリウス・ネセット、マーク・ロックハート、エマ・ジーン・サックレイ、マーキュリー賞ノミネート・バンドのダイナソーなどとのレコーディングや国際的なツアーを数多くこなしてきた。

 

即興演奏家としては、マーク・サンダース、ビンカー・ゴールディングとのアルバムや、パリのルイ・ヴュイトン財団でのコンサートで録音された全曲即興のソロ・ピアノ・アルバムをリリースしており、Guardian誌の"アルバム・オブ・ザ・マンス"やBBCミュージック誌の"アルバム・オブ・ザ・イヤー"に選ばれている。

 

作曲家としては、ロンドン・シンフォニエッタ、リゲティ弦楽四重奏団、アルデバーグ・フェスティバル、ジョンズ・スミス・スクエア、ロンドン・ジャズ・フェスティバルなど、一流のアンサンブルやフェスティバルから委嘱を受けている。また、オーディオ・アーティストとしても活動し、ターナー・コンテンポラリー・ギャラリーや、最近ではオックスフォード・アイデア・フェスティバル等でインスタレーションを展示している。2024年10月、Gearbox Recordsからの初リリースとなるシングル「From Beneath」を発表。2025年2月にはアルバム『ザ・ルイン』が発売決定。


本日、米国のシンガーソングライター/作曲家、Peter Broderick(ピーター・ブロデリック)が、新作EP『Mimi』をErased Tapesからリリースしました。ミュージシャンの亡き祖母ミミ・パーカーへのトリビュート「Mimi」、Lowの「Lazer Beam」のカヴァーソングが収録されている。(ストリーミングはこちら

 

この二曲は追悼曲として制作され、ピーター・プロデリックがヴァイオリンを奏でている。先日のアルバムではケルト民謡に根ざしたフォーク音楽をモダンクラシックの観点から追求していた。新作『Mimi』でもこの作風は維持されている。フィドルにも聴こえるヴァイオリン、そしてオルガンの演奏に合わせてコラール風のボーカルが加わっている。一方のカバーソングについては、伝説的なスロウコアバンド”Low”の楽曲をインディーフォークの観点から編曲している。いずれも哀感がありながらも、魂を開放させるような精妙な感覚に充ちた素晴らしい楽曲です。


「祖母ミミの追悼式で”ヴァイオリンを弾いてほしい"と家族に頼まれた。この曲は、私たち家族の最愛の家長のために書いた。驚くべきことに、従兄弟のジョン・ドーランが追悼式でこの曲を聴いて、オルガンの伴奏を書く気になった。一方、同じ頃、もう一人の偉大なミミが亡くなった。Lowのエンジェル・ボイス、ミミ・パーカー。私は彼らの曲「Laser Beam」を学び、妹のヘザー・ウッズ・ブロデリックが親切にもハーモニーを歌ってくれた。この2曲で、私はこの世で失われた偉大なミミに敬意を表したいと思う"- Peter Broderick(ピーター・ブロデリック)


ピーター・ブロデリックは、モダンクラシカルからフォーク・ミュージックまで幅広い作風で知られている。最近はジャズ・シーンで活躍するベーシスト、Yosef Gutmanと共同制作を行い、ピアノ、バイオリン、コントラバスを融合させた『River Of Eden』をSoul Song Recordsからリリースした。このアルバムも素晴らしいので、ぜひチェックしてみていただきたい。

 


「Mimi」

Brueder Selke & Midori Hirano

ポツダムを拠点に活動する兄弟デュオ、Brueder Selke(ブリューダー・ゼルケ)、ドイツ/ベルリンを拠点に活動する作曲家、Midori Hirano(ヒラノ・ミドリ)がコラボ・アルバム『Split Scale』のリリースを発表した。Thrill Jockeyから2025年1月24日に発売される。最初の先行シングル「Scale F」が10月末に公開されているが、本日、続いて「Scale A」が配信された。


ブリューダー・ゼルケ&平野翠のデビューアルバムは、比類なき技巧と深い表現力を共有する2人のアーティストを結びつけた。ベルリンのミュージックコミュニティの柱で、世界的に賞賛される作曲家である彼らは、それぞれクラシックの伝統を背景に持ち、現代音楽の最先端で活動している。


セバスチャン、ダニエル・ゼルケ兄弟は、オープンマインドで、批評家からも高く評価されている器楽奏者で作曲家である。国際的なプロダクションのカタログを所有している。ブルーザー・セルケ、通称”CEEYS”として知られるポリインストゥルメンタル・デュオは、ジャンルを超えた音楽への情熱を、ローラ・カネル、マベ・フラッティ、レシーナ、ジュール・レイディ、グランド・リバー、ヤイル・エラザール・グロットマン、そして今回の制作のコラボレーター、平野みどりといったアーティストと”Q3Ambientfest”のステージを共にしたこともあるという。


平野みどりは、卓越したサウンド・スカルプティングにより、映画やテレビの作曲家として著名なミュージシャンで、最近では『All or Nothing』、『Tokito』、プレミア・リーグのドキュメンタリーのサウンドトラックを手がけたほか、アンチ・ポップ・コンソーシアムのHprizm、パンソニックのIlpo Väisänenといったアーティストとコラボレーションも行っている。

 

平野は自身の作曲に加え、Robot KochやRival Consolesなどのリミックスも手がけている。グループ初のアルバム『Split Scale』は、一連のライブ・コラボレーションに続くものだ。アーティストたちは、西洋の音階を最初から最後までたどるというシンプルなコンセプトを選び、そこから崇高で共感覚的なサウンドスケープとシネマティックな動きの組曲を作り上げた。音と色彩の鮮やかなタペストリーは、光り輝き、感情を揺さぶる。


本作は、多くの西洋音楽家が音に関する基礎とした経験、とくに平均律音階をテーマにしている。ゼルク兄弟は制作に関して次のように回想している。

 

「私たちの音色の選択は比較的シンプルで、直感的で、ほとんど子供の遊びのようでした。私たちは、みどりとのこのまたとない機会に、ゼロからスタートし、一緒にやってみたかったのです」

 

『スプリット・スケール』は、楽器演奏とアレンジの経験と熟練が結集して生まれたアルバムであり、まるで初めて楽器を演奏し、本当に耳を傾けているかのような、まばゆいばかりの不思議な感覚を伝えることに成功している。アルバムの収録曲は、西洋音階のAからGまでのスケールが厳密に割り当てられているが、最後の曲だけは特殊なAAというスケールが銘打たれている。

 

 


Brueder Selke・Midori Hirano 『Split Scale』



Label: Thrill Jockey

Release: 2025年1月24日


Tracklist:

 

1.Scale A

2.Scale B

3.Scale C

4.Scale D

5.Scale E

6.Scale F

7.Scale G

8.Scale AA


Scale A