コロラドを拠点に活動するシンガーソングライター、Sarah Banker(サラ・バンカー)がシングル「FRIENDS」をリリースした。インディーフォークとヨットロックを結びつけ、自己受容を表現している。ミュージックビデオが公開されていますので、お茶のお供に下記よりこの映像をご覧ください。


 「FRIENDS」でサラは、生涯を共にする人を見つけるという親近感のわく物語を、楽しく、軽快で、時代を超えた歌に仕上げている。 この曲は、コミュニケーションの重要性や試行錯誤についても触れている。 繊細でありながら力強い歌声で、サラは正直でありのままの弱さを表現している。 プロダクションは親しみやすく控えめで、歌詞と彼女のソウルフルな表現が主役となる。


 この曲は、彼女がリリースを予定しているEP『Into the Heart』からの最新曲である。 プロデューサー/ミュージシャンのジェフ・フランカ(Thievery Corporation)と彼女の新曲のためにチームを組んだ。 彼女はTedXのスピーカーとして成功を収め、その魅惑的なサウンドとソングライティングで、分かち合うべき愛というユニークな贈り物を解き放つ鍵として、自己を慈しみ、受け入れるという感動的なメッセージを紡ぎ出した。 

 

 「FRIENDS」

  



Colorado-based singer/songwriter Sarah Bunker has released her single "FRIENDS". It expresses self-acceptance by combining indie folk and yacht rock. The music video has been released and can be viewed below.


 With the single "FRIENDS," Sarah creates a fun, flirty, and timeless song about the relatable narrative of finding someone to spend a lifetime with. The song also touches on the importance of communication and trial and error. With her delicate yet powerful voice, Sarah conjures an honest, unfiltered sense of vulnerability that resonates throughout. The production is intimate and understated, allowing the lyrics and her soulful delivery to take center stage.


 The song is the latest off of her upcoming EP Into the Heart, a collection of authentic and transformative songs centered around resilience. The artist teamed up with producer/musician Jeff Franca (Thievery Corporation) for her new music. She has found success as a speaker on TedX where she weaved her captivating sound and songwriting with her inspirational message of self-compassion and acceptance as the key to unlocking our unique gifts of love to share. 

 

 

 サラ・バンカーはコロラドの山奥を拠点に活動するハートフルなシンガー・ソングライター。 幼少期に演劇作品に出演した経験からインスピレーションを得たサラは、文化人類学の学位取得後、ギターを学び、ソングライティングを通して自分の本当の声を見つけた。 

 

 ギターを始めてわずか3ヶ月で、初めてのギター・パフォーマンスを経験した。 すぐに夢中になった彼女は、18ヵ月後、持ち物のほとんどを売り払い、バックパックとギターだけを持って旅に出た。 探検と好奇心の旅は、ハワイのジャングルから太平洋岸北西部の森、ユタ州南部の砂漠、コロラド州の山頂へと彼女を連れて行った。


 今度のEP『Into the Heart』は、レジリエンス(回復力)を中心とした、本物で変容的な曲のコレクションである。 生き生きとした4曲入りのフォーク・ポップEPは、コロラド州インディアンピークス荒野の標高9,000フィート(約3,000メートル)にあるジェフ・フランカ(Thievery Corporation)のスタジオでレコーディングされ、プロデュースされた。 その結果、感動的で、音に遊び心があり、有機的な音楽の旅が生まれた。


 シングル「FRIENDS」でサラは、生涯を共に過ごす相手を見つけるという親近感のわく物語を、楽しく、軽快で、時代を超えた歌に仕上げた。 この曲は、コミュニケーションの重要性や試行錯誤についても触れている。 繊細でありながら力強い歌声で、サラは正直でありのままの弱さを表現している。 プロダクションは親しみやすく控えめで、歌詞と彼女のソウルフルな表現が主役となる。


 サラ・バンカーの能力は、シンプルでありながら表現力豊かな歌詞で複雑な感情をとらえることで、彼女の音楽全体に一貫した強みを生み出している。 彼女の曲は普遍的でありながら、深く個人的なものであるように感じられ、リスナーを内省させ、癒し、これから起こることを受け入れるように誘う。


 最終的に彼女の音楽的な意図は、音を通して光と愛の源となることだ。 彼女はまた、自分の音楽が、他の人たちが自分自身のベスト・バージョンになるよう鼓舞することを願っている。 ーーあなたは自分の人生を切り開くために必要なものをすべて自分の中に持っているのですーー

 




Sarah Banker is a heartfelt singer/songwriter based in the mountains of Colorado. Drawing inspiration from her childhood experiences performing in theatrical productions, Sarah found her true voice through songwriting after learning guitar, following her degree in Cultural Anthropology. 

 

 After only three months of playing, she had her first guitar performance. Instantly hooked, 18 months later, she sold most of her belongings and set out on the road with just a backpack and her guitar. Her journey of exploration and curiosity has taken her from the jungles of Hawaii to the forests of the Pacific Northwest, down to the deserts of southern Utah, and up to the peaks of Colorado—each place influencing her musical releases and touching others along the way.


 Her upcoming EP, Into the Heart, is a collection of authentic and transformative songs centered around resilience. The vibrant four-song folk-pop EP was recorded and produced by Jeff Franca (Thievery Corporation) in his studio, at 9,000' feet elevation in the Indian Peaks Wilderness in Colorado. The result is a musical journey that is touching, sonically playful, and organic.


 With the single “FRIENDS,” Sarah creates a fun, flirty, and timeless song about the relatable narrative of finding someone to spend a lifetime with. The song also touches on the importance of communication and trial and error. With her delicate yet powerful voice, Sarah conjures an honest, unfiltered sense of vulnerability that resonates throughout. The production is intimate and understated, allowing the lyrics and her soulful delivery to take center stage.


 Sarah Banker's ability to capture the complexity of emotions in simple yet expressive lyrics is a consistent strength across her music. Her songs feel both universal and deeply personal, inviting listeners to reflect, heal, and embrace what’s to come.


 Ultimately, her musical intention is to be a source of light and love through sound. She also hopes her music inspires others to be the best version of themselves, sharing, "You are the ONE, the one who has the potential to make the changes that lead to a fulfilling life experience. You have everything you need within you to take charge of your life."

 



サンタクルーズのニュースクール・ハードコアバンド、Scowl。この五人組はターンスタイルに続く、今最もホットなパンクアウトフィットとして名乗りを上げている。すでに北米の大規模なパンクフェスにも出演済みであるが、知名度という側面で懸念があった。しかし、彼等は名門レーベル、デッド・オーシャンズとの契約を経て、世界規模のバンドへと成長しつつある。

 

先月、Scowlはニューアルバム『Are We All Angels』を発表したのに続いて、本日、最新曲 「Tonight (I'm Afraid) 」を配信した。ボーカリストのモスのボーカルとスクリームが混在した次世代のハードコアナンバー。彼等の音楽的なアプローチには90年代のミクスチャーロックやヘヴィーロックも含まれているが、現代的なハードコア/メタルの要素がそれらにアンセミックな要素をもたらしている。この先行シングルは従来の中で最も重力を持ったトラックである。

 

「Tonight (I'm Afraid) "は、アンセミックなコーラスとパンチの効いたベースライン、そしてキャット・モスの直感的なスクリームによってドライブされる、スカウルの最も繊細な一面を垣間見ることができる。この曲は、AdultSwim.comのクリエイティブ・ディレクターであるアダム・フックスがイラストを手掛けたフリップブックのMVと同時に到着した。この曲は、これまでのシングル 「B.A.B.E」、「Not Heaven, Not Hell」、「Special」 に続いて配信された。


最新プロジェクト『Psychic Dance Routine EP』を手掛けたウィル・イップ(Turnstile、Title Fight、Mannequin Pussyなど現代のUSパンクハードコアの錚々たるバンド)がプロデュースした『Are We All Angels』は、毒舌で拮抗的なバンドが、自分たちの攻撃性をより拡大した形で表現している。

 

アルバムのミックスはリッチ・コスティ(フィオナ・アップル、マイ・ケミカル・ロマンス、ヴァンパイア・ウィークエンドなど)が担当。 このアルバムは、疎外感、悲嘆、そしてコントロールの喪失が特徴的で、その多くは、過去数年間バンドを受け入れ、彼らを避雷針のような存在にしたコミュニティであるハードコア・シーンにおける彼らの新たな居場所と格闘している。


Are We All Angels』では、バンドはあらゆる場面で野心的な新しい方向性を模索し、ジャンルの常識を曲げている。モスの進化が最も顕著に表れているのは、バンドの前作にあった唸らせるようなサウンドをやめ、より質感のある、時には繊細なアプローチに変えていることだ。彼女は、熱心なスカウルファンをも驚かせるハーモニーとメロディックな感性を発揮している。

 

モスは、ビリー・アイリッシュからレディオヘッド、カー・シート・ヘッドレストからジュリアン・ベイカーまで、ハードロック以外の幅広い影響を受けている。「このバンドが始まったとき、私たちの大半は本当にミュージシャンとして熟練していなかった」と彼女は認めている。

 

赤ちゃんの最初のハードコアバンドのようなものだった。でも今は、自分たちが何をやっているのかまだわからないけれど、自分たちが何をしたいのかよくわかるようになった。

 

ツアー経験を経て、演奏面でも洗練され、原石がダイヤモンドになりつつある。インストゥルメンタルの面では、Negative Approach、Bad Brains、Hole、Mudhoney Garbage、Ramones、Pixies、Sonic Youth、Rocket From The Cryptなどからの影響を挙げている。ベーシストのベイリー・ルポは、「新譜の曲作りは、これまでのスカウルの歴史の中で最も協力的だった。

 

みんながたくさんのアイデアを持ち寄ってくれて、それをじっくり分析することができた。私たちは皆、折衷的な嗜好、影響、個性を持っていて、このアルバムの隅々までそれを感じることができるはずだ。


「Tonight(I'm Afraind)」

 


yeuleは、5月30日にNinja Tuneからリリースされるニューアルバム『Evangelic Girl is a Gun」を発表した。 この発表と同時に、ニュー・シングル「Skullcrusher」を発表した。このシングルは、yeule、クラムス・カジノ、フィットネスの共同プロデュースによるものだ。


このニュー・アルバムは、ポスト・モダンの中で自己破壊的なアイデンティティをテーマにした、これまでで最も感情的で直接的な作品である。 このプロジェクトには、A.G.クック、クリス・グレートティ、ムラ・マサ、クラムス・カジノ、フィットネス、キン・レオンが参加しており、後者は2023年の「softscars」に続いて共同エグゼクティブ・プロデューサーを務めている。


「このアルバムで、自分の画家としての人生にオマージュを捧げたかった」とユールは説明する。 「私にとって、ベクシンスキーは、彼のディストピア的で静謐な風景の中を這い回る存在を、細心の注意を払って美しく描いている。 絵画というメディアの性質は、暴力的でもあり穏やかでもある私の感情の反映でもある。 私の人生における一瞬の時間を絵の具で転写し、時間の中に閉じ込める。


「Skullcrusher」




yeule  「Evangelic Girl is a Gun」

Label: Ninja Tune
Release : 2025年5月30日


Tracklist:

1. Tequila Coma
2. The Girl Who Sold Her Face
3. Eko
4. 1967
5. VV
6. Dudu
7. What3vr
8. Saiko
9. Evangelic Girl is a Gun
10. Skullcrusher



YEULE: 2025 TOUR DATES
7/1 – Manchester, UK @ Academy 2
7/2 – London, UK @ O2 Forum Kentish Town
7/5 – Roskilde, Denmark @ Roskilde Festival
7/7 – Berlin, Germany @ Columbia Theatre
7/9 – Amsterdam, Netherlands @ Melkweg
7/11 – Paris, France @ Le Trabendo
7/10 – 12 – Slovakia @ Pohoda Festival

 

©Eddie Whelan

今年初め、BC,NR(ブラックカントリー、ニューロード)は3作目のアルバム『Forever Howlong』をアナウンスした。続いて、彼らは最初のリードシングル「Besties」に直接インスパイアされたという「Happy Birthday」を配信した。「『Happy Birthday』を書いた時、頭の中にはジョージアの曲『Besties』があったんだ。だから、この曲の構成はその曲の影響を強く受けているんだ」

 

この曲は、レスリー=アン・ローズが監督したストップモーションのビデオと同時公開された。発表されたばかりのUKでのライブを含む、バンドの今後のツアー日程とともに、以下でチェックしてほしい。


ブラックカントリー、ニューロードのニューアルバム『Forever Howlong』は4月4日にNinja Tuneからリリースされる。

 

「Happy Birthday」





Black Country, New Road 2025 Tour Dates:


Mon 7 Apr – Plaza – Stockport, UK
Tue 8 Apr – Queens Hall – Edinburgh, UK
Wed 9 Apr – Leeds Project House – Leeds, UK
Fri 11 Apr – Town Hall – Birmingham, UK
Sat 12 Apr – Engine Rooms – Southampton, UK
Sun 13 Apr – Epic Studios – Norwich, UK
Sat 3 May – Pitchfork Music Festival CDMX – Ciudad De México, MX
Tue 13 May – Salt Shed – Chicago, IL, US ☼ ☆
Wed 14 May – Slowdown – Omaha, NE, US ☼
Fri 16 May – Mission Ballroom – Denver, CO, US ♢
Sat 17 May – Kilby Block Party – Salt Lake City, UT, US
Mon 19 May – The Observatory – Santa Ana, CA, US ☆
Tue 20 May – The Wiltern – Los Angeles, CA, US ☆
Thu 22 May – The Warfield – San Francisco, CA, US ☆
Fri 23 May – Roseland Theater – Portland, OR, US ☆
Sat 24 May – Moore Theater – Seattle, WA, US ☆
Fri 23 May – Roseland Theater – Portland, OR, US
Sat 24 May – Moore Theater – Seattle, WA, US
Sat 7 Jun – Primavera Sound Festival – Barcelona, ES
Wed 13-Sat 16 Aug – Paredes de Coura Festival – Porto, PT
Thu 28 Aug – End of the Road 2025 – Dorset, UK
Thu 11 Sep – Rock City – Nottingham, UK
Fri 12 Sep – Albert Hall – Manchester, UK
Sat 13 Sep – Albert Hall – Manchester, UK
Mon 15 Sep – Olympia – Dublin, IE
Tue 16 Sep – Olympia – Dublin, IE
Thu 18 Sep – Barrowlands – Glasgow, UK
Sat 20 Sep – Sage – Gateshead, UK
Mon 22 Sep – Beacon – Bristol, UK
Wed 24 Sep – Corn Exchange – Cambridge, UK
Thu 9 Oct – Casino de Paris – Paris, FR
Fri 10 Oct – Stereolux – Nantes, FR
Sun 12 Oct – Paradiso – Amsterdam, NL
Mon 13 Oct – Paradiso – Amsterdam, NL
Tue 14 Oct – Gloria – Cologne, DE
Wed 15 Oct – Astra – Berlin, DE
Fri 17 Oct – Vega – Copenhagen, DK
Sat 18 Oct – Fallan – Stockholm, SE
Sun 19 Oct – Sentrum Scene – Oslo, NO
Tue 21 Oct – Mojo – Hamburg, DE
Wed 22 Oct – Roxy – Prague, CZ
Thu 23 Oct – Les Docks – Lausanne, CH
Sat 25 Oct – Magazzini Generali – Milan, IT
Sun 26 Oct – Epicerie Moderne – Lyon, FR
Tue 28 Oct – AB – Brussels, BE
Thu 30 Oct – The Dome – Brighton, UK
Fri 31 Oct – O2 Academy Brixton – London, UK

☼ support from Friko
☆ support from Nora Brown with Stephanie Coleman
♢ supporting St. Vincent

  brdmm 『Microtonic』

Label: Rock Action

Release: 2025年2月28日

 

 

Review

 

 

ハルのロックバンド、bdrmm(ベッドルーム)はその名の通り、 ベッドルームレコーディングを行うグループとして出発したが、ライブツアーでMOGWAIにその才覚を認められ、バンドの独立レーベル、Rock Actionの看板バンドになった。2ndアルバム『I Don’t Know』のリリースをきっかけにメキメキと力をつけ、英国内にとどまらず、世界的な知名度を持つようになった。以前はシューゲイズバンドと紹介されることもあったbdrmmではあるが、まさかこの3作目を聴いて彼等のことをそうのように呼ぶ人はいないものと思われる。90年代のモグワイやNew Orderの血筋を受け継ぎながら、それらを奥深いロックソングに昇華している。このアルバムは、即効性というよりも、聴いていくうちにその音楽の真価が徐々に浸透してくるような作品である。

 

このアルバムは単なる音源という意味以上のものが込められている。bdrmmは医療/科学分野の巨大ハイテク企業、マイクロテック社と提携し、実際的にこの企業の施設内でこのアルバムをレコーディングしている。KeepItLiveによると、全容こそ明かされていないものの、このアルバムの音楽は最新のテクノロジーを反映させ、マイクロテック社の最新製品「Microtonic」にも関連がある。 AIテクノロジーの最新鋭の技術を活用している。デジタル/フィジカルの側面にマイクロテックが組み込まれ、周波数を放ち、リスナーの五感を刺激するという最新鋭の技術が組み込まれているという。

 

音楽的にはロックソングのポップネス、そして、エレクトロニクスの近未来的な感覚、さらにはマニック・ストリート・プリーチャーズの最初のブリット・ポップはもちろん、ヴァーヴのようなブリットポップのポスト世代の音楽の系譜を受け継ぎ、抽象的で催眠的なロックソングを特徴としている。90年代から00年代初頭のマンチェスターのFacrotyからの雰囲気を受け継いだダンスロックソング「John on the Ceiling」、そして、ザ・スミスからオアシス、そして、ザ・ヴェーヴへと受け継がれるブリット・ポップの系譜を継承した「Infinite Peaking」を筆頭に、UKロック・バンドらしいダンスとロックの中間にある霧がかったサウンドワークが光る。特に、中盤の注目曲「Snare」はクラブ・ハシエンダを中心とする80年代後半のダンスムーブメント魅力をかたどり、Warpの最初期の7インチレコードなどを彷彿とさせるものがある。

 

 

そういった中で、モグワイが音響派やポストロックのオリジネーターとして活躍したように、ロック・バンドとして先鋭的な試みがなされている。アグレッシヴでアンセミックな趣を持つアルバムの序盤の収録曲とはきわめて対象的に、「In The Electric Field」、そしてタイトル曲「Microtonic」といった曲はロックバンドとしてアンビエントとサイレンスを探求した記念的な瞬間である。そして上記の要素はアルバム全体のサウンドに抑揚とメリハリをもたらしている。また、それは従来よりも音楽のディープな領域に達したともいえ、bdrmmの成長を感じさせる。またタイトルからも分かるように、Clarkの90年代、00年代のレイブやアシッド・ハウスを受け継いだ「Clarkycat」もロックバンドとしてはかなり新鮮な試みが取り入れられている。 従来のフランツ・フェルディナンド、ブロック・パーティ、キラーズなどのダンスロックというジャンルが取りざたされた時代の音楽をモダンにかっこよく鳴らすことを重視している。これらは少し陳腐化しつつあるこのジャンルに新しい風を呼び入れようという試みでもある。

 

このアルバムは従来のシューゲイズというニッチの領域から脱却し、エレクトロニックロックの新鋭へと突き進んでいこうとするbdrmmの旅の過程をかたどったアルバムである。またロックバンドでありながら、IDMの作曲のセンスがあり、「Sat In The Heat」を聴けば、そのことが分かると思う。Yard Actが呼び込んだポストパンクの流れを受け継ぎ、そこに彼等の持ち味であるドリーム・ポップやアートポップの要素を付け加え、魅力的なサウンドを作り上げている。この曲では、従来にはなかった近未来的な要素とSFの雰囲気が上手く融合している。アルバムの終盤の収録曲も聴き逃がせない。「Lake Disappointment」ではアシッドハウスとロックの融合という形式によって、ポストパンクの新しい音楽の流れを呼び込もうとしている。 こういった曲はもしかすると、何度も繰り返し聴きたくなるような中毒性があるかもしれない。

 

アルバムのクローズを飾る「Noose」は次の作品への期待を感じさせる、ひとつの枠組みの収まらない、壮大な趣を持ったトラックである。Underworldの系譜にあるUKロックサウンドをどのように調理するのかの実験の過程である。もちろん、Mogwaiの音響派へのオマージュがアンビエントのようなチルウェイブの要素と重なり合い、 清涼感のあるエンディングを形成している。

 

 

 

80/100

 

 

「John On The Ceiling」

・XLの舞台は東京へ

 

ロンドンのダンスミュージック専門のインディペンデントレーベルとして発足したXL Recordingsは設立当初の80年代こそクラブ系アーティストのリリースに特化していたが、90年代にレディオヘッドなどを輩出し、イギリスのインディーズロックの代表的なレーベルとして大きな貢献を果たしてきた。特に昨年度のカタログは非常に力が入っており、Smile,Peggy Gou、そしてブリット賞を受賞したFountains D.C.の新譜など注目の作品が目白押しだった。

 

2025年に入り、ロンドンのレーベルは原点回帰を果たし、クラブ系のイベントを東京/渋谷で開催することを発表した。小規模のアンダーグラウンドのイベントで、サーカストウキョウのスペースは収容人数も少なめとなっている。出演者の多くは無名のDJ/プロデューサーで占められている。

 

しかし、80年代以降、Warp,Ninja Tuneとともに代名詞的なレコードを多数輩出してきたレーベルのイベントということで、クラバーとしては注目のイベントとなるだろう。無名ながら実力派のプロデューサーを自力で探すというおもしろい企画となっている。



【XL play takes a trip to Tokyo】



LINE UP:

B1  curated by XL

1F curated by pon pon


Special Guest

anu

Bryce’s Brother

E wata

DJ Healthy


Nina.Offline

seiyade+

Lil C

Chiki Chiki Rambo

5harpy

凸凹。

Hibi Bliss


OPEN 22:00

ADV: ¥2,000


 イベントの詳細はCircus Tokyoの公式ページをご覧ください。

シカゴのバンド、ケイシー・ゴメス・ウォーカー率いるCase Oatsがマージ・レコードとの契約を発表した。

 

ゴメス・ウォーカー(リード・ヴォーカル、アコースティック・ギター)、スペンサー・トゥイーディー(ドラムス)、マックス・スバー(ギター、ペダル・スティール)、スコット・ダニエル(フィドル)、ジェイソン・アシュワース(ベース)のバンドは、デビューアルバムの仕上げに取り掛かっている。本日、ロバート・サラザール監督による「Seventeen」のビデオを公開した。素朴な感覚に満ちた心がほんわかするようなインディーロックソングとなっている。

 

ケース・オーツは7年前、作家/詩人のゴメス・ウォーカーが、ベテラン・ドラマーのトゥイーディーと出会ったことから始まった。結成以来、Case Oatsは、ゴメス・ウォーカーの辛辣で告白的な歌詞を完璧に引き立てる、生活感のあるサウンドを追求してきた。

 

「Seventeen」はバンドからの完璧な 「こんにちは」の挨拶代わり。陰鬱で遊び心があり、カントリーロックの揺りかごの左側に位置する。ケイシー・ゴメスはこの曲について次のように説明する。

 

17歳になると、自分も含めてすべてが世界で一番大切なことのように感じられる。小さな町(ミズーリ州ユーリカ)で育つと、地平線の向こうが見えにくくなる。すべての感情が大きく感じられる。この曲は、そんな気持ちを乗り越えていこうという歌なんだ。

 



「Seventeen」

 


異分野のリベラルアーツの融合。ロンドン/テルアビブの実験音楽グループ、Staraya derevnya(スタラヤ・デレヴニャ)は1994年からスタジオ・プロジェクトとして、2017年からはミュージシャンと画家の大規模なアートグループとして活動を行っている。 

 

2025年のラインナップは、Gosha Hnlu(ボーカル、カズー、パーカッション)、Maya Pik(フルート、シンセ、フルート)、Ran Nahmias(サイレント・チェロ、サントゥール、ウード、ボーカル)、Grundik Kasyansky(フィードバックシンセサイザー)、Miguel Perez(ギター)、Yoni Silver(バスクラリネット)、Andrea Serafino(ドラム)となっている。

 

Staraya derevnyaというグループ名はサンクト・ペテルブルグの地名に因む。このプロジェクトは、暗闇の中でパフォーマンスを行い、詩と音楽と映像を同期させ、独特なアート活動を行うことで知られている。音楽的には、ボーカルアート、エレクトロニクスと東欧やアラビアの民族楽器、オーケストラ楽器などを鋭く融合させ、前衛音楽の新たな道筋を切り開こうとしている。

 

新作アルバム『Garden Window Escape』は2022年8月から制作が始まり、ロンドンのBonaflide Studio、2023-2024年には、イスラエル、ロンドン、メキシコ、ブルガリアの4つの拠点で録音された。このアルバムは、プリペイドする楽器という現代音楽の形式を踏襲し、それらを詩を含めたドローン音楽の系譜にあるアヴァンギャルドに昇華させている。異文化が渦巻く、ロンドンやイスラエルの気風を吸収させたこの世で最も奇妙なレコードの一つ。

 

Staraya derevnyaの音楽には多数の民族から構成される混合の歴史とグロテスクな音楽が偏在している。改造または自作の楽器を使って録音され、本物と作り物の言語の両方で歌われる。 グループはレコードはRambleRecordsとAuris Mediaの共同リリースとして5月2日に発売される。




Staraya derevnya『Garden Window Escape』


Tracklist:

 

A

Tight-lipped thief

What I keep in my closet

Half-deceased uncle

B

Cork flight operation

Virtue of standing still

Onwards, through the garden window

Myshhh

3月1日(日)夜に開催されたBRITアワードで、Charli XCX(チャーリーXCX)がアーティスト・オブ・ザ・イヤー、ブラットのアルバム・オブ・ザ・イヤー、ビリー・エイリッシュとのコラボレーションによるソング・オブ・ザ・イヤー、ダンス・アクト・オブ・ザ・イヤー、そして名誉あるソングライター・オブ・ザ・イヤーの4冠を達成した。 イギリスのグラミー賞に相当する英国音楽シーンの最大の栄誉である本賞は今年のミュージックスターにチャーリーを選んだ。


昨年度の最大の話題作「Brat」のエグゼクティブ・プロデューサーを務めたA.G.クックもプロデューサー・オブ・ザ・イヤーを同時受賞した。 「イギリスの音楽業界では、いつもアウトサイダーのように感じていたので、このアルバムで評価されるのは嬉しい」と胸中を明かしている。


2025年のブリット・アワードはロンドンのO2アリーナで開催され、コメディアンのジャック・ホワイトホールが司会を務めたこのイベントでは、故ワン・ダイレクションのボーカル、リアム・ペインへの感動的なトリビュートも行われた。


 「私たちはここBRITSでリアムとの素晴らしい思い出をたくさん持っています。だから今夜、私たちは彼の遺産を祝い、素晴らしいリアム・ペインを振り返り、思い出します」とホワイトホールは、ペインのワン・ダイレクションの "リトル・シングス "の優しいパフォーマンスに合わせて、彼のキャリアを通してのビデオクリップ、サウンドバイト、写真をフィーチャーしたビデオモンタージュを紹介し、リアムを称えた。 


BRITSはまた、チャペル・ローンをインターナショナル・アーティスト・オブ・ザ・イヤーに選出し、彼女のヒット・シングル "Good Luck, Babe!"がインターナショナル・ソング・オブ・ザ・イヤーを受賞した。


 エズラ・コレクティヴがグループ・オブ・ザ・イヤー、ラスト・ディナー・パーティーが最優秀新人賞、レイがR&Bアクト・オブ・ザ・イヤー、ジェイドがポップ・アクト・オブ・ザ・イヤー、ストームジーが最優秀ヒップホップ・アクト、サム・フェンダーがオルタナティヴ/ロック・アクト・オブ・ザ・イヤー、フォンテーヌD.C.がインターナショナル・グループ・オブ・ザ・イヤー、マイルス・スミスがBRITSライジング・スター、そして「エスプレッソ」と「ベッド・ケム」の2曲メドレーでオープニングを飾ったサブリナ・カーペンターが名誉グローバル・サクセス賞を受賞した。 


その他、テディ・スウィムス、エズラ・コレクティヴ、フェンダー、ラスト・ディナー・パーティー、ジェイド、ローラ・ヤングがライブパフォーマンスを披露した。 チャーリーの受賞の瞬間の映像は下記より。



 Mdou Moctor 『Tears of Injustice』

 


 

Label: Matador

Release: 2025年2月28日

 

 

Review  祖国ニジェールへの賛歌

 

 

『Tears of Injustice(不正義の涙)』は、Mdou Moctorが2024年に発表した『Funeral For Justice』のアコースティックバージョンによる再構成となっている。ハードロックを中心とする前作アルバムよりも音楽の旋律の叙情性とリズムの面白さが前面に押し出された作品である。このアルバムを聞くと、Mdou Moctorの音楽の旋律的な良さ、そして叙情的な側面がより明らかになるに違いない。『Funeral For Justice』の発売日前には本作の制作が決定していたというが、結局、彼等の故郷であるニジェールの国内の動乱ーー政権移行により、アルバムの制作は彼等にとってより大きな意義を持たせた。なぜなら、国境封鎖によりエムドゥー・モクターのメンバーは祖国ニジェールに帰国できなくなり、音楽によって望郷の歌を紡ぐ必要性に駆られたからである。

 

本作はブルックリンで録音されたが、遠ざかった故郷への郷愁、そして祖国への慈しみの感情が複数の民族音楽の中に渦巻いている。プロデューサー的な役割を持つコルトン、そして、ジミ・ヘンドリックスの再来とも称されるギタリストのモクターの他、四人組のメンバーの胸中はおだやかならぬものがあったはずだが、結果的に、彼等にとって象徴的なカタログが誕生したと見ても違和感がない。


ニジェールは西アフリカの砂漠地帯にある地域で、独特な民族衣装ーー古代ギリシアのチュニックのようなーー白い装束、ターバンのような帽子を着用するのが一般的である。しかし、最近では白い衣装だけではなく、他の色の衣装を身にまとうこともある。同時に、私達にとって彼等の衣装は奇異な印象を抱かせることがあるが、それはとりもなおさず、彼等の故郷の文化や風俗に対するリスペクトやスピリットを表し、それらを次世代に繋ごうという意味がある。例えば、「Takoba」を始めとする先行シングルのミュージックビデオでは原始的な情景をトヨタの車を運転して疾駆するという印象的な映像が出てくる。

 

こういったシーンを見ると、アフリカの原初的な光景を思い浮かべざるを得ないが、実際的な事実としては、ニジェール近辺の地域は2000年代以降、近代化が進み、デジタルデバイスが一般市民に普及し、市中をバスがふつうに走ったりしている。そして、エムドゥー・モクターというギタリストは、デジタルデバイスの一般的な普及を受けて登場したギタリストなのである。これらは、90年代以降の東アジアやドバイのような急速な発展を遂げた国家を彷彿とさせる。つまり、砂漠地帯というイメージだけでこの国家を語り尽くすことは難しい。それだけではなく、例えば、前作では、長らく植民地化されてきた西アフリカの代弁者として歯に衣着せぬ意見も滲んでいた。


それは領主国であったフランス(西側諸国)に対する辛辣な批評精神の表れでもあった。これらは、結局、アフリカ大陸や当該地域の国家の殆どが西側諸国に金融市場を牛耳られてきたこと、コートジボワールのような海岸地帯で象牙を過剰に乱獲したりと、生態系を破壊させる行為が行われてきたこと等、西側諸国の搾取の歴史を断片的に反映させた。無論、これはアフリカという地域がヨーロッパによって近代国家的な性質を付与されたことは相違ないが、同時に経済的な側面での搾取や文化破壊というあるまじき行為を助長させたのだった。(最近では、アフリカ諸国のBRICSへの参加により、世界情勢の均衡に変化が生じ、現在の世界は多極化している最中だという。つまり、覇権主義的な一国体制は過去の幻影へと変化しつつあるようだ)

 

結局のところ、それらがこのバンドの主要な音楽性であるエレクトリックを中心とする古典的な70年代のハードロックのアプローチによってストレートに展開されたのである。しかし、続く再構成バージョンは音楽的にも、全体に通底する文化的なメッセージにおいても、まったくその意を異にしている。これらの西アフリカの民族音楽の一つであり、アメリカのブルースやゴスペルのルーツとなった”グリオ”という祭礼で演奏される儀式音楽の要素が凝縮されている。これは、単独のメインシンガーを取り巻くようにし、複数の歌い手がコーラスの合いの手を入れる音楽形式である。日本の民謡等にもこの合唱の形式は発見することが出来る。例えば、ゴスペルは、アフリカの儀式音楽が海を越えて伝えられ、旋律的に洗練されていったものである。これらの正真正銘の伝統音楽は、アフリカの悠久の歴史を映し出すにとどまらず、大陸の国家や人々の様々な生き方や人生の一面をリアリスティックに描写する。このことにより、音楽的なエキゾチズム性はもちろんであるが、歴史や伝統性を反映させた作品に昇華された。もちろん、マタドールの現代性に重点を置いた録音技術も称賛に値するものとなっている。

 

しかし、長い時代、植民地化されてきたアフリカ、宗主国に翻弄されてきた国家、そういった複雑な歴史の流れを汲みながらも、Mdou Moctorは批判性だけに焦点を絞らず、それとは対照的にアフリカの伝統性の美しさと人類が進むべき建設的な未来に目を向ける。このアルバムは、前作では歴史の暗部に断片的に言及することのあったエムドゥー・モクターが原曲の再構成を通じて、祖国への郷愁という叙情的な感覚を基にし、世界の平和、国家の正常化、そしてまた、明るい未来への賛歌を歌うというコンセプトへと変容している。こういった音楽は、もし政権の転覆がなければ制作しえなかった。ハードロックソングが反体制的な意義を擁するとすれば、このアルバムはそれとは裏腹に保守的な表情をのぞかせる知られざるモクターの姿を映し出す。

 

さらに言えば、「国家」という共通概念を離れた場所から歌っていた前作のアルバムとはきわめて対象的に(地理的な録音場所はその限りではないにせよ)、ニジェールという国家に近い場所で音楽が鳴り響いているように思える。 いわば、近代以降、アフリカの諸国は国家として独立の歩みを続けてきたが、独立的な国家としての文化的な役割を探り、最終的に世界情勢に関して建設的な役割を持つ文化圏として歩むという、いかなる現代国家も通らざるを得ない役割を踏まえ、それらを代表者として演奏し、歌を紡ぎ、その伝統性を未来へと繋げる橋渡しの役割を司る。それがゆえ、このアルバムのモクターを中心とする歌声にはただならぬ覇気がこもっている。そしてアフリカの歴史に関心のない聞き手を引き付けるものが内在するのである。

 

 

無論、音楽的にも原曲とは主な印象を異にしている。70年代の古典的なハードロックをベースにしていた前作と比較すると、アコースティックギター、タブラ、ベースなどを中心に生の録音を活かし、アナログ性を最初の録音段階で重視した後、最終的には、現代的な要素であるデジタルレコーディングのプロセスを経て良質な録音作品に仕上がった。これらは伝統性と未来性という二つの文化的な精華の重なりを意味し、単なる音楽的なハイブリッドやクロスオーバーというテーマを乗り越え、本来はすべてが一つであるという神秘的な瞬間を体現している。

 

そして、それらが従来に培ってきたアフリカの民族音楽という形式を通じて、心地よくリズミカルな興趣に富んだ音楽が繰り広げられる。これらのニジェールの伝統音楽は、たしかに、西洋音楽の音階や旋法に慣れ親しんだ人々にとっては珍しい響きに聞こえる。リズム的にも変拍子が含まれ、多角的な旋律が縦横無尽に流れていく。これらは古典的な音楽の手法を通じて制作されているにもかかわらず、驚くべきことに、カウンターポイントとして非常に洗練されている。そして、本作の中には無数のアフリカの人々の営み、国家としての歴史の断片的な流れがまるで走馬灯のように流れ、一定のリズムやリフレインの多いアンセミックな響きを持つフレーズと合致し、音楽的な感覚、民俗的な感覚という二つの側面から見ても、極めて高い水準にある音楽として体現されている。そして、西アフリカに対する郷愁の感覚が複数のアコースティック楽器や歌声とぴたりと重なり合う瞬間、稀に見る美しい音楽がエキゾチズムという表向きの幕間の向こう側にたちあらわれ、本作のタイトルの冒頭に付与されている涙ーー人類全体に対する慈しみの思いーーが音楽の向こうにかすかに浮かび上がることに気づく。それは、音楽の表向きの魅力を示すにとどまらず、その向こう側にある芸術の本質的なコアの部分に肉薄したとも言えるかもしれない。彼等の音楽は一般的な評価軸から距離を置き、上や下、右や左、敵や味方、正と邪、そういった二元論における偏見的な概念を乗り越え、優れた音楽に欠かせぬ根源的な精神性を遺憾なく発揮している。だから聴いていて気持ちが癒される瞬間が込められているのかもしれない。

 

『Tears of Injustice』には、「Takoba」、「Imajighen」、前作のタイトル曲「Funeral For Justice」といった魅力的な曲が多い。そして編曲という観点から見ても、全く別の雰囲気を持つ曲に変身している。あらためてエムドゥーの魅力に触れる恰好の機会となるはずである。本作はエムドゥー・モクターというプロジェクトの編曲能力の高さを証明づけたにとどまらず、彼等が音楽的な核心を把握していることを印象付ける。本作ではエキゾチックであった音楽の印象が普遍的な感覚に変化する瞬間がある。要するに、遠くに鳴り響いていた彼等の音楽が身近に感じられる瞬間を体験することができる。そして、その音楽に耳を澄ました時、ないしは彼らの言葉を心から傾聴した時、まったく縁もゆかりもないはずのアフリカ、ニジェールという私達にとって縁遠い地域のことがなんとなく分かり、そして、人間の本質的な部分やその一端に触れることが出来るようになるのだ。

 

私達は日頃生きていて、画一的な価値観や思想に左右されることを避けられない。そういった固定概念をしばし離れて、音楽の持つ神秘性の一端に接することは、いわば未知なる扉を開くようなものである。しかし、未知の扉の先にある何かーーそれは実は、私達が物心付かない頃に持っていたのに、いつしか価値のないものとしてどこかに葬り去られてしまっただけなのかもしれない。

 

 

 

85/100 

 

 

「Takoba」

 




ボストンのフォークシンガー、Sam Robbins(サム・ロビンス)が心に染みる名曲「Piles Of Sand」をリリースした。エルトン・ジョンやジャクソン・ブラウンを彷彿とさせる繊細なフォークバラードとなっている。

 

"Piles of Sand "と題されたこの曲は、内省的できらびやか。アルバムのオープニング・トラックである 「Piles of Sand」のサウンドは、一人の男とギターのシンプルなサウンドを中心に構成されており、アルバムの幕開けにふさわしい完璧なサウンドである。

 

ジェームス・テイラーのライヴ・アルバム『One Man Band』にインスパイアされたこの曲は、曲全体を通してまばらなピアノの瞬間だけが盛り込まれ、ロビンスの見事なギターワークとフレッシュで明瞭なソングライティング・ヴォイスを披露するアルバムの舞台となっている。

 

この曲は、近日発売予定のアルバム『So Much I Still Don't See』のセカンドシングル。「過去4年間のツアー、年間45,000マイルのドライブ、ニューハンプシャー出身の20代の私とは異なる背景や考え方を持つ多くの人々との出会いを主題にしている」とアーティストは宣言している。

 

 

 「Piles Of Sand」

 

 

 


Boston folk singer Sam Robbins has released the haunting classic “Piles Of Sand”. The delicate folk ballad is reminiscent of Elton John and Jackson Browne. 

Called "Piles of Sand", the song is sparkling and introspective, written in a moment of reflection. As the opening track to the album, the sounds of “Piles of Sand” are built around the stark simplicity of a man and his guitar, the perfect sound to kick off the album. Inspired by the James Taylor live album One Man Band, only sparse piano moments are included throughout the song, setting the stage for an album that showcases Robbins’ stunning guitar work and fresh, clear songwriting voice.

The song is the second single off of the album So Much I Still Don’t See which "is based around my touring over the past four years – driving 45,000 miles per year, meeting so many people from so many different backgrounds and perspectives than me, a guy in his 20’s from New Hampshire," proclaims the artist. 


 

▪Sam Robbins 『So Much I Still Don't See』


サム・ロビンスのサード・アルバム『So Much I Still Don't See』は、シンガー・ソングライターとしての20代、年間45,000マイルに及ぶツアーとトルバドールとしてのキャリアの始まりという形成期の旅の証である。そして何よりも、ハードな旅と大冒険を通して集めた実体験の集大成を意味する。

 

リスナーにとって、これらの大冒険は、ソロのアコースティック・ギターとヴォーカルを中心に、生演奏と同じようにトラックされたサウンドを惜しみなく使用した、ソフトで内省的なサウンドスケープを通して聴くことができる。

 

マサチューセッツ州スプリングフィールドの古い教会でレコーディングされた『So Much I Still Don't See』のサウンドの中心は、旅をして自分よりはるかに大きな世界を経験することで得られる謙虚さである。アップライトベース、キーボード、オルガン、エレキギターのタッチで歌われるストーリーテリングだが、アルバムの核となるのはひとりの男、それから、数年前にナッシュビルに引っ越して1週間後に新調したばかりの使い古されたマーティン・ギターだ。



『So Much I Still Don't See』のサウンドは、ジェイムス・テイラー、ジム・クローチェ、ハリー・チャピンといったシンガーソングライターのレコーディングにインスパイアされている。ニューハンプシャーで育ったロビンズは、週末になると父親と白い山へハイキングに出かけ、古いトラックには70年代のシンガーソングライターのCDボックスセットが積まれていた。この音楽はロビンズの魂に染み込み、その結果、ロビンズの音楽家としての才能が開花したのである。

 

2018年にNBCの『The Voice』に短期間出演した後、ロビンスは2019年にバークリー音楽大学を卒業し、すぐにナッシュビルに拠点を移した。ミュージック・シティでの波乱万丈の5年間を経て、2024年初めにボストン地域に戻った後に制作された最初のレコーディングが『So Much I Still Don't See』である。週に5日、カントリーソングの共作に挑戦した後、ロビンズはツアーに活路を見出し、今では全米のリスニング・ルームやフェスティバルで年間200回以上の公演を行った。



このツアーとソングライティングの著しい成長により、ロビンスはいくつかの賞を受賞し、フェスティバルに出演するようになり、2021年にはカーヴィル・フォーク・フェスティバルのニュー・フォーク・コンテストの優勝者となり、2022年にはファルコン・リッジ・フォーク・フェスティバルの 「Most Wanted to Return」アーティストに選ばれた。その後2023年と2024年には各フェスティバルのソロ・メインステージに出演した。

 

その後、サム・ロビンズは精力的にライブツアーを行った。ミシガン州のウィートランド・フェスティバル、フォックス・バレー・フォーク・ミュージック・アンド・ストーリーテリング・フェスティバルなど、全米のフェスティバルにツアーを広げ、「同世代で最も有望な新人ソングライターのひとり」(マイク・デイヴィス、Fateau Magazine誌{イギリス})の称号を得た。 


2023年初頭、ロビンスはマルクス・アウレリウスの『瞑想録』を贈られた。ストイシズムの概念を中心としたこの書籍からのアイデアは、『So Much I Still Don't See』の楽曲に浸透している。アルバムの多くは、この1年間の旅を通してこの本を読んで発見した、ストイックな哲学によって見出された内なる平和を反映している。

 

『So Much I Still Don't See』の曲作りにもうひとつ影響を与えたのは、ロビンズが音楽療法リトリートというグループで活動していることだ。この団体は、ソングライターと退役軍人のペアを組み、彼らがあまり耳慣れない感動的なストーリーを歌にする手助けをする。この人生を変え、人生を肯定する体験は、ロビンス自身の作曲と音楽に、さらに深い感情と深い物語を引き出し、幸運にも一緒に仕事をすることになった退役軍人の開かれた心と物語に触発された。



アルバムからの最初のシングル 「What a Little Love Can Do」は、あるショッキングな瞬間を捉えた曲だ。ナッシュビルで起きた銃乱射事件のニュースを聞いた後、ロビンズは一人ギターを抱えて座り、ギターを無心にかき鳴らした。ニューイングランドの故郷から遠く離れた赤い州の中心部に住んでいたロビンスは、その日の出来事によって、今まで見たこともないような亀裂がくっきりと浮かび上がった。その瞬間に現れた歌詞が、この曲の最初のヴィネットである。

 

 

 「What a Little Love Can Do」

 

 

 

「It's gonna be a long road when we look at where we started, one nation broken hearted, always running from ourselves

 

(長い道のりになりそうだ......われわれがどこから出発したかを考えるとき、ひとつの国は傷つき、いつも自分自身から逃げていた)

 

 

その歌詞から導かれたのは、フロー状態にある作曲プロセスだった。ロビンズがツアーで全米を旅し、2年間で10万マイルを超える距離を走り、何百ものショーをこなし、まったく異なる背景を持つ何千人もの人々と出会ったことから築かれた学びとつながりの物語.......。バーミンガムからデトロイト、ニューオリンズからロサンゼルス、ボストンからデンバーまで、この曲は知らず知らずのうち、これらの冒険から学んだ教訓の集大成として書かれた。互いに物理的に一緒にいるとき、話したり笑ったり、本当にお互いを見ることができるときに見出されるつながりの深さが、『What a Little Love Can Do』の核心であり、アルバム全体の主題でもある。



『So Much I Still Don't See』からのセカンド・シングルでオープニングトラックである、きらびやかで内省的な「Piles of Sand」は、このアルバムのために書かれた最初の曲だ。この曲はナッシュビルで書かれ、アルバムの多くと同様、シンプルで観察的なところから書かれている。ナッシュビルの川沿いの小道を歩いていて、刑務所の有刺鉄線のすぐ横で、向かいの高層マンションのために砂利がぶちまけられるのを見たり感じたりしたのは、とても感動的な瞬間だった。

 

さらに彼はすこし歩き、通りの向こうに高くそびえ立つ巨大な砂利の山を見た後、最初のコーラスの歌詞がすぐに書き留められて、そして今の曲になった。 「山だと思ったけど、高くそびえ立つ単なる砂の山だった。このセリフとリズムが、この曲の残りの部分の土台となったんだ」



 

   

 

Sam Robbins’ third album, So Much I Still Don’t See is a testament to a singer songwriter’s journey through his 20’s, through his formative years of 45,000 miles per year touring and the beginning of a troubadour’s career. Most of all, it is the culmination of firsthand experiences gathered through hard travel and big adventures.

For the listener, these big adventures are heard through a soft, introspective soundscape, with sounds built sparingly around solo acoustic guitar and vocals, tracked live, just as they are performed live. Recorded in an old church in Springfield, MA, the sounds of So Much I Still Don’t See center around the humility that comes with traveling and experiencing a world much larger than yourself – looking inward and reveling in the quiet of the inner mind while facing an expansive landscape of life on the road. The storytelling in the songs is draped with touches of upright bass, keyboards, organ, and electric guitar, but the core of the album is one man and his worn out Martin guitar, bought new just a few years ago a week after moving to Nashville.

The sonic landscape of So Much I Still Don’t See was largely inspired by the recordings of James Taylor, Jim Croce, Harry Chapin and singer songwriters of the like. Growing up in New Hampshire, Robbins would frequently drive up to the white mountains for weekend hiking trips with his father, accompanied in the old truck by a 70’s singer songwriter CD box set. This music seeped into Robbins’ soul, and coupled with experiencing the mountain landscape of his childhood, this “old soul singer songwriter” was shaped by these recordings and the direct, soft and exacting songwriting voices that they exemplified. The storytelling in So Much I Still Don’t See is built through small moments.

After a brief stint on NBC’s The Voice in 2018, Robbins graduated from Berklee College of Music in 2019 and quickly made his move down to Nashville. After a tumultuous five years in Music City, So Much I Still Don’t See is the first recording made after moving back to the Boston area in early 2024. After trying his hand at co-writing country songs five days a week, Robbins found his way to a home on the road, now performing over 200 shows per year in listening rooms and festivals across the country.

This touring and subsequent songwriting growth has led to several awards and festival performances, making Robbins a 2021 Kerrville Folk Festival New Folk contest winner, a 2022 Falcon Ridge Folk Festival “Most Wanted to Return” artist, and later a solo mainstage performer at each festival in 2023 and 2024. Robbins has expanded his touring to festivals nationwide, including the Wheatland Festival in Michigan, the Fox Valley Folk Music and Storytelling Festival, and has earned a title as “One of the most promising new songwriters of his generation” — Mike Davies, Fateau Magazine, UK

In early 2023, Robbins was gifted Marcus Aurelius’s “Meditations”, a collection of the Roman Emperor’s diaries in the early 100’s AD. The ideas from this book, centered around the concepts of stoicism, seeped into the songs of So Much I Still Don’t See. Much of the album reflects on the inner peace found through stoic philosophy that was discovered in reading this book throughout the past year on the road.

Another influence on the songwriting of So Much I Still Don’t See is Robbins’ work with the group Music Therapy Retreats. This is the first recording made after starting his work with the organization, which pairs songwriters with veterans to help write their often unheard and inspiring stories into songs. This life changing and life-affirming experience has drawn out deeper emotions and deeper stories in Robbins’ own writing and music, inspired by the open hearts and stories of the veterans he is lucky to work with.

The first single off the album, “What a Little Love Can Do” is a song that captured a moment. Sitting in Nashville after hearing the news of a shooting in the city, Robbins sat alone with his guitar and strummed. Living in the heart of a red state, far away from his New England home, the events of the day made the cracks appear clearer than he’d ever seen them. The first lyrics that appeared in that moment are the first lyrics in the song – “It’s gonna be a long road when we look at where we started, one nation broken hearted, always running from ourselves”. The heaviness of the news of the day, and the news of every day since, has not subsided since this song was written in 2023.

What led from that lyric was a flow-state writing process. A story of the learning and connections built from Robbins’ travels across the US on tour, driving over 100,000 miles in two years, playing hundreds of shows and meeting thousands of people from very different backgrounds. From Birmingham to Detroit, New Orleans to Los Angeles, Boston to Denver, this song was unknowingly written as the culmination of the lessons learned from these adventures. The depth of connection found when we are physically with one another, when we can talk and laugh and truly see each other, is at the heart of “What a Little Love Can Do”, and the album as a whole.

The second single and opening track from So Much I Still Don’t See, the sparkling and introspective “Piles of Sand”, was the first song written for the album. The song was written in Nashville and is, like much of the album, written from a place of simplicity and observation. He shares, "Walking down a riverside path in Nashville, next to the barbed wire of a prison, watching and feeling gravel being blasted for a high flying condo building across the street was a very inspiring moment. After walking further and seeing a huge pile of gravel soaring high across the street, the first chorus lyric was immediately written down as it appears in the song now: “I thought it was a mountain but it was just a pile of sand towering so high, a nine to five creation”. This line and rhythm was springboard for the rest of the song, steeped in Stoicism, written that afternoon."

As the opening track to the album, the sounds of “Piles of Sand” are built around the stark simplicity of a man and his guitar, the perfect sound to kick off the album. Inspired by the James Taylor live album One Man Band, only sparse piano moments are included throughout the song, setting the stage for an album that showcases Robbins’ stunning guitar work and fresh, clear songwriting voice.

 



 

今週紹介するのはロサンゼルスのシンガーソングライターのミヤ・フォリックです。シンガーは2015年の『Strange Darling』と2017年の『Give It To Me EP』という2枚のEPで初めて称賛を集めた。

 

ミヤ・フォリックの2018年テリブル・レコーズ/インタースコープから発売されたデビューアルバム『Premonitions』は、NPR、GQ、Pitchfork、The FADERなど多くの批評家から称賛を浴びたほか、NPRのタイニー・デスク・コンサートに出演し、ヘッドライン・ライヴを完売させ、以降、ミヤは世界中のフェスティバルに出演した。


 『Erotica Veronica(エロティカ・ヴェロニカ)』のアルバム・ジャケットは、ミヤ・フォリックがアンジェルス国有林の高いところにある泥の穴の縁に腰を下ろし、大地と原始の中間に化石化した熱病の夢のように手足を悠々と広げている姿をとらえている。 それは適切な肖像画とも言えるでしょう。ミヤは本能に突き動かされ、その複雑さに行き詰まるのではなく、成長の泥沼に引き込まれていく。 この図太い精神が、彼女に最新フル・アルバム『Erotica Veronica』(近日発売、Nettwerk Music Group)をセルフ・プロデュースさせたのだった。キャッチーな歌詞のセンス、鋭敏な音楽的職人技、そして彼女の特徴である跳躍するようなアクロバティックな歌声が飽和状態となっている。


『Erotica Velonica』の前身であるデビュー作『Premonitions』と2ndアルバム『Roach』は、いずれも青春狂想曲として各メディアから高評価を得ている。 『エロティカ・ヴェロニカ』についても同じようなことを言いたくなる。

 

結局のところ、この新しいアルバムは、快楽主義と恐怖の青春の淵で揺れ動きながら、性の探求に真っ向から突っ走る女性の姿を示している。 しかし、若者の野生の自由とは異なり、これらの放浪の精神は、生きた経験によってのみ得られる特別な知恵と深みに下支えされている。おそらく、『Premonitions』の魔女のような謎解きと、ローチが持っている苛烈なまでの正直さが、彼女を官能の世界へ深く飛び込む準備をさせた。


ミツキ、フェイ・ウェブスター、ジャパニーズ・ハウスとツアーし、長編映画『Cora Bora』の音楽を担当したこの数年の集大成であるこのアルバムは、ミヤのプライベートな世界への回帰である。 ハチミツのように甘くて、そして心の痛みのよう苦々しい、それぞれの薬効を交互に聴かせてくれる。 ミヤのパワーは、好奇心の輪郭の下に湧き上がり、このシンガーソングライターを大胆であると同時に心に染みる深遠な存在にしている。 『エロチカ・ベロニカ』は、彼女のサイコセクシュアル、サイコセンシュアルの傑作であり、自己実現と統合の万華鏡のような肖像画である。


このアルバムは、残酷で燃え尽きそうな多忙なツアーの後、1ヵ月半の間に書き上げられました。 ストレートなインディ・ロックのレコードを作ろうと決意したミヤは、アルバムの大半をギターで書き上げた。


共同プロデューサー兼ドラマーとしてサム・KS(ユース・ラグーン、エンジェル・オルセン)を迎え、ギターにはメグ・ダフィー(ハンド・ハビッツ、パフューム・ジーニアス)、ウェイロン・レクター(ドミニク・ファイク、チャーリ・XCX)、グレッグ・ウールマン(パフューム・ジーニアス、SML)、ベースにはパット・ケリー(パフューム・ジーニアス、リーヴァイ・ターナー)といった、頻繁にコラボレートしているミュージシャンを起用した。 


これらのミュージシャンの個人的なスタイルとスキルに寄り添いながら、フォリックはリアルなライブ・サウンドを捉えることを意図してスタジオに入った。 透明感のある音像は、このアルバムのテーマである猫のゆりかごにふさわしい。 リリックでは、相反する気分や感情が交差し、まるでミヤが自分自身の内側の迷路を通って活力を取り戻す道をたどっているかのようだ。


タイトル曲『エロチカ』は、ミヤが息を弾ませながらロマンチックに歌っている。 "白昼の街角で女の子といちゃつきたいんだ/太陽に焼かれた彼女のひび割れた唇が見えるようだ。僕にちょっと寄り添っているように"。 この曲は、うららかな春の光に照らされたシダのように展開し、きらめくピアノの旋律が私たちを幻想へと誘う。 


しかし、多幸感あふれる春の空気の下で、私たちはこのレコードにつきまとうジレンマの匂いを嗅ぎ取らざるをえない。この告白の受け手には相手がいる。この曲とアルバムは、自分の欲望が文化が許す狭いチャンネルよりも複雑な場合、どうするのが正しいのだろうか、と問いかけているようだ。 


このアルバムのテーマは、自分自身と社会を巧みに結びつけている。最近のアメリカ国内のクイアに対するファシスト的な弾圧、そしてその迫害に関する痛みや慟哭を聞いたとしてもそれは偶然ではない。「このアルバムは、ヘテロ規範的な人間関係の構造の中で、あるいはそういった社会の中で、クィアであることについて歌っている」とミヤは説明する。 「私たちはお互いに、自由に探求し、自分自身の正しい道を見つけるための十分な余地を与えていないと思う」


Miya Folick 『Erotica Veronica』- Nettwerk Music Group 




ミヤ・フォリックは、このアルバムにおいて、自身の精神的な危機を赤裸々に歌っており、それは奇異なことに、現代アメリカのファシズムに対するアンチテーゼの代用のような強烈な風刺やメッセージともなっている。アルバムの五曲目に収録されている「Fist」という曲を聞くと、見過ごせない歌詞が登場する。これは個人の実存が脅かされた時に発せられる内的な慟哭のような叫び、そして聞くだけで胸が痛くなるような叫びだ。これらは内在的に現代アメリカの社会問題を暗示させ、私達の心を捉えて離さない。時期的には新政権の時代に書かれた曲とは限らないのに、結果的には、偶然にも、現代アメリカの社会情勢と重なってしまったのである。
 
 
現在、Deerhoofなど米国の有志のミュージシャンが、これらのマイノリティに対する、ある意味では圧政とも呼ぶべき悪法や動向に関して声を上げている。そして、ロサンゼルスのフォリックのアルバムも同様に、表側には噴出しないアメリカの内在的な問題が繊細に織り込まれている。しかし、それが例えば、クラシックなタイプのロックソングと融合したとき、このシンガーのダイナミックな実像が浮かび上がってくる。結局、そういった音楽には圧倒されるものがあるというか、何かしら頭を下げざるえない。つまり、深い敬意を表するしかなくなるのだ。
 
 
本作が意義深いと思う理由は、ミヤ・フォリックの他に参加したスタジオ・ミュージシャンのほとんどがメインストリームのバックミュージシャンとして活躍する人々であるということ。このアルバムは、確かにソロ作ではあるのだけれど、複数の秀逸なスタジオ・ミュージシャンがいなくては完成されなかったものではないかと思う。特に、 メグ・フィーのギターは圧巻の瞬間を生み出し、全般的なポピュラー・ソングにロックの側面から強い影響を及ぼす。
 
 
 序盤は、旧来から培ってきたインディーポップのセンスが生かされ、聴きやすく軽やかなナンバーが並んでいる。アルバムの冒頭を飾る「Erotica」白昼の街角で女の子といちゃつきたいんだ/太陽に焼かれた彼女のひび割れた唇が見えるようだ。僕にちょっと寄り添っているように"。 この曲は、うららかな春の光に照らされたシダのように展開し、きらめくピアノの旋律が私たちを幻想へと誘う。 映画のサウンドトラックのような神秘的なイントロに続いて、軽快なインディーポップソングが続いていく。全体的なイメージとは正反対に軽快な滑り出しである。
 
 
 続く「La Da Da」も同様に爽やかな雰囲気を持つフォーク・ソングとなっている。心に染みるような切ない歌声をベースとしたメロの部分とは対象的に曲のタイトルを軽やかに歌う時、ロック的な性質が強調され、珠玉のポップソングが生み出される。それらの旋律をなぞるピアノもまたそれらの楽しい気分やイメージを上手く増長させる。まるでこの曲は草原のような開けた場所で歌うシンガーソングライターの姿を音楽として幻想的に体現させたかのようである。
 
 
 この数年、ミヤ・フォリックは旧譜においてインディーポップやオルトポップの作曲に磨きをかけてきたが、それらが見事に花開いた瞬間が先行シングルとして公開された「Alaska」である。「あなたを失うかもしれない "というセリフは二重表現になっています。カバー・アートのために日本語に訳したとき、「I am able to 」という動詞と、「It is possible [to lose you]」という動詞を使いましたとミヤ・フォリックは説明する。
 
 
「この曲は、自分との関係が自分にとってどれだけ大切なものなのかについて。そして自分との関係をどれだけ大切にしているのか、折り合いをつけるための曲でもある。私の人生でこの人を失ったら悲しいけれど、私自身を失ったら同じように悲しい」 
 
 
曲のベースとなるシンセのピアノの演奏とフォリックのボーカルは、人間関係を失うことへのおそれを歌っている。ギター、ドラム、シンセを中心とした曲は、2分40秒ごろから軽快な雰囲気に変化して、未来に向けて歩みだすような明るさがある。
 
 
「Felicity」は打ち込みのサウンドとポピュラーソングが結びつき、良曲に昇華されている。LAのインディーポップソングの系譜をこの曲に見出すことが出来るはずである。この曲は、(多くの曲とは異なり)もともとアコースティック・ギターで書かれた曲ではなかった。その代わりにジャレッド・ソロモン(レミ・ウルフ、ドラ・ジャー、ローラ・ヤング)と共同でこの曲を書き、シンセと木管楽器を重ねた。ジル・ライアンのフルートは、ミヤのボーカルの軽快さの下で陽気に揺れ、祝福の感覚を与える。 「この曲は、あまり知られていないフェリシティという言葉の定義を指し示している。"自分の考えに適切な表現を見つけること"であり、ミヤは、"このアルバムの礎石である”と定義づける。 フェリシティが示唆するように、適切な表現は、私たちを愛する人たち、そして私たち自身とのより親密なつながりをもたらしてくれる。 


「Fist」はセンチメンタルな雰囲気を持ち、胸を打つような素晴らしいポップソングとなっている。アルバムのハイライト曲の一つとなりそう。アコースティックの弾き語りで始まり、そして抑揚をつけながら、劇的なロックソングへと移行していく。この曲の冒頭では、切ない感覚を織り交ぜながら続く展開へと繋げていく。日常的な暮らしをテーマにしながら、ミヤ・フォリックは自分自身の存在する理由のようなものを探る。その中には自虐的を越え、かなりシリアスな表現も垣間見ることが出来るが、この時、感動的な瞬間が訪れる。曲の後半ではディストーションギターが轟音性を増すが、それらの轟音は途絶え、曲の最初のメロがアウトロで帰ってきて感動的な余韻を残す。まるで数年のアーティストの人生をかたどったかのようである。
 
 
 
 
「Fist」 
 
 
 
 
 
 
 「This Time Around」はタイムマシーンのように過去へ舞い戻る曲だという。 アコースティックギターをベースにしたポップソングで、気持ちを揺り動かす何かがある。この曲は、ミヤがタイムトラベルして、遠い昔の恋愛に耽溺していた自分の姿に戻るところから始まる。 ダルセットなボーカルが、諦念と虚弱さを描いた衝撃的な歌詞と厳しいコントラストを描いている。 この曲は過去の自分への子守唄のように感じられる。 ''携帯で読んだ手紙には、あなたをイかせるために、なぜ私が首を絞められなければならなかったのか教えてくれた''と歌うように、現在のミヤが、パズルのピースをするように、自分の苦しみを現在のジグソーパズルにどうはめ込むかを考えているのが聞こえてくる。このトラックにおいて過去の自分との折り合いをつける。アルバムの中で最も異色とも言えるのが続く「Prism Of Light」。80,90年代のニューウェイブやシンセポップの系譜を踏襲しているが、サビがアンセミックな響きを醸し出す。


 「ライブ録音を意識して作られた」という本作であるが、その影響が色濃く出た瞬間もある。「Hate Me」はグランジ的な主題であるが、実際の曲は暗さと明るさという対極の感情が表現されている。明確に言及するのは難しいものの、インディーロックという制作前の着想が上手く昇華された楽曲である。そこには、過去の戸惑いや苦悩、逡巡といった感情に別れを告げるような感覚が漂い、聞き手にカタルシスのような心地良い爽快感をもたらす。それはロックソングとして少数派であるがゆえ、強固な説得力を持つ。特に、ここでもバンドの盤石な演奏と同時にギタリストのメグ・ダフィが活躍し、絶妙なコード進行でボーカルの旋律の輪郭づけをしている。そして、曲自体は、なだらかな曲線を描くようにして上昇していき、高音域のボーカルが最後になって登場する。そして、この瞬間、何か上空を覆っていた雲間から光が差し込むような神々しさが立ちあらわれる。最後のヴァーズまで高い音域のボーカルを温存し、対極的なフレーズを作り出す。実際的に、バンガーを意識した見事なポップソングとして楽しめるはず。

 

 

真を穿った作曲性(ソングライティング)とも言うべきか、ミヤ・フォリックの音楽は非常にリアリティがあるような気がする。しかし、アルバムの休憩ともいうべき箇所があり、これが良い味を出している。アーティストの真面目な性格とは異なるフレンドリーな表情を見出すことも出来る。「Hypergiant」はヨットロックやチルアウト風の曲で、まさしく西海岸の音楽シーンに呼応した内容となっている。細野晴臣の「Honemoon」のような歌謡と洋楽の融合の雰囲気を感じることも出来る。シリアルな作風の中にあるオアシスのような存在である。しかし、その蜃気楼のような幻影は、まるで夏の陽炎のように遠ざかり、再びリアリティのある楽曲が立ち上がる。

 

 

しっとりしたバラードのように始まる「Love Wants Me Dead」も素晴らしい曲であり、アルバムの最後に深い余韻を残す。静かな立ち上がりから、徐々に胸を打つ感動的な音へと変化していくが、これらの一曲の中で何か内側に芽吹いた茎のようなものがすくすくと成長し、そしてこの曲は大輪の花を咲かせる。もしくはさなぎであった歌手が蝶になり大空に羽ばたいていく瞬間を見事に録音として把捉している。それはまた、失望や絶望のような感情から汲み出されるほんの束の間の人生の鮮やかな息吹の奔流のようでもある。そしてそのパワフルなエネルギーを感じ取った時、ポピュラーソングの本物の魅力が表側にあらわれる。この曲は、序盤のハイライト曲「Fist」と同じように、ダイナミックな変遷をたどり、そして劇的な瞬間を曲の最後で迎える。再三再四、言及しているが、このアルバムを傑作に近い内容にした理由は、ソングライターが何を制作したいのか明確にしていたこと、そして、それを手助けする秀逸なバックミュージシャンがいたからである。表向きの功績としてはミヤ・フォリックのものであるが、おそらく歌手はこのアルバムに参加した多くのミュージシャンに感謝しているに違いない。そしてその瞬間、まったくこの曲の意味が反転し、愛に溢れたものに変わるということなのである。

 
 
 本作の最後は、まるでその余韻に浸るかのように静かな印象を持つインディーフォーク・ソングで締めくくっている。最後の曲だけはデモソングのような音質を強調しているが、ボーカルは非常に美しい。そして、その美麗なボーカルの質感を上手く引き出すために、木管楽器が活躍する。アルバムの冒頭でほのめかされたシネマティックなサウンドにクローズで回帰するという円環構造である。これらの11曲は殆どむらがなく、そして続けて聞かせる集中性を保っている。そして大切なのは、音楽を制作する個人だけではなく、正確に言えば録音に携わった人々の思いが凝縮されていることである。一方ならぬ思い入れが入り込んでいるため、胸を打つ。聴いたかぎりでは、作品の構成が完璧であり、録音の水準も極めて高い。そして何より、人の手で何かひとつずつ丹念に音楽を作り上げているような気がして素晴らしいと思った。今年上半期の最高のポピュラーアルバム。個人的にも何度も聞き返したいと思っています。
 
 
 
 
 
96/100
 
 
 
 
「Love Wants Me Dead」
 
 
 
 
*Miya Folickのニューアルバム『Erotica Veronica」はNettwerk Music Groupから本日発売。 アルバムのストリーミングはこちらから。