▪世界的な評価も高めている東京拠点の孤高のエクスペリメンタル・フォーク・シンガー、SatomimagaeがRVNG Intl.からニューアルバム『Taba』を4月25日にリリース


 

©︎Norio

東京を中心に活動しているミュージシャン、ソングライター、そして内なる世界と外なる世界を旅するSatomimagaeの2021年の傑作『Hanazono』に続くニューアルバムが四年ぶりに完成した。

 

本作は今週末(4/25)にRVNG(日本ではPlanchaからリリースされる。RVNGは、実験音楽に特化した名物的なレーベルで、アメリカ版のWARPといっても過言ではない。カタログの中には、NYでオノ・ヨーコと交流があったドローン音楽のイノベーター、Tashi Wadaのアルバムが含まれている。

 

サトミ・マガエは、日本国内の大学で研究的な分野に携わった後、ソロシンガーソングライターの道のりを歩んできた。実験的なポピュラー、フォークを日本的な感性と組み合わせ、比類なき音楽の境地を探る。音楽的な原点は、彼女が幼い頃に住んでいたアメリカでの生活にあった。

 

日本の著名なエレクトリック・プロデューサー、畠山地平にその才能を見出された後、White Paddy Mountainに所属したあと、ニューヨークのRVNGからリリースを行うようになった。以降、ソロアルバムの制作、Duennとのコラボレーションアルバムなどに取り組んできた。また、シンガーは、音楽的な活動にとどまらず、アーティストとしての広汎な分野に興味を見出している。

 

待望の四年ぶりとなるフルアルバム『Taba』は、想像力豊かな考察を集め、広大な観念を辿り、つつましい瞬間に静かな余韻を残す。個人と集団、構築的なものと宇宙的なもの、明瞭なものと感じられるものの間を鮮やかにつなぐ。本作は個人的なことと普遍的なこと、目に見えることと見えないことの両方を記録した一連のヴィネットとして展開する。自宅スタジオの外に流れる人生のつかの間のシーンやサウンドを観察し吸収しながら、彼女は自分自身を超え、現在と記憶の奇妙な流動の両方の魂とシステムの軌道の中で歌い、直線的なソングライティングではなく、トーンやテクスチャーが拡大し、広がりのあり 深みのあるストーリーが展開される。 


『Taba』のリード・シングル「Many」は、疎外された時代のフォーク・ミュージックであり、より有機的な曲作りと、Satomiを 取り巻く世界の自然な響きを強調し、取り入れるアレンジへの微妙だが意図的なシフトを示している。

 

気づかれなかった人生や集合的な記憶についての考察に導かれ、個人やグループを結びつけたり解いたりする結合組織を繊細になぞる「Many」は、不明瞭なエコーや漠然とした音のジェスチャーが織り成すエーテルに対して、ループやスパイラルの中でSatomiが考えを巡らせている。 


このアルバムは、「Taba- 束(たば)」(異なるものを束ねたもの、束ねたもの、ひとまとめにしたものを意味する日本語)の論理に従い、緩やかな短編小説集として組み立てられている。詩人のような語り手へと変貌を遂げたSatomiは、疎外されつつある現代を定義するありふれた出来事や、やりとりから形成される不可解な形に作家の目を投げかけている。


前作『Hanazono』 (2021年)が、私的な内面という青々としたフィールドから花開いたのに対して、『Taba』の鳥瞰図は、アーティストをより広く、よりワイルドな世界のどこかに位置づけようとしている。 

 


「グループとしての人間、そしてグループの中の個人をどう見るかについて考えていました」とサトミ・マガエiは言う。

 

グループはどの ようにつながっているのか、また、どのように境界線が存在するのか。

 

私たちは集団(束)の中の一要素に過ぎないのに、一人ひと りの目に見えない経験や記憶がどこかに残っていて、気づかないうちに私たちや社会に影響を与えているという意識……。つまり、私たちは塊の中の小さな点なのだ。


 

『Taba』の最初のざわめきは、Satomiの曲「Dots」で聴くことができる。この曲は、RVNG Intl.からリリースされた2021年のコンピ『Salutations』の星座にマッピングされた多くのきらめく点のひとつ。パンデミック初期、SatomiがiPhoneに録音していた素材の奥から引き出された「Dots」は、彼女を影のようでありながら誘う道を案内する、言葉のない内なるガイドだった。 

 

興味をそそられ、インスピレーションを受けたサトミは、この感覚を大切にし、新しい創造的な環境の中で新しいコード、リズム、テンポを試した。しかし、Tabaの精神を呼び起こしたのは、サウンドアーティスト、duennとのコラボレーションアルバム『Kyokai(境界)』 でのやりとりであった。 


“俳句以上、音楽未満”というテーマを掲げた『Kyokai』は感覚を言葉にし、Satomiが記録している音の断片が単なる未完成のスケッチではなく、強力な造形物であることを明示した。伝統的なフォーク・ソング的アプローチを脇に置き、デモの質感を取り払ったSatomiのソングライティングは、パズルやパッチワークに近い内容に進化し、音楽の礎となるアコースティック・ギターとヴォーカルが『Taba』全体で聴かれるイマジネーション豊かなアレンジへとピースを繋ぐ。

 

 
Satomiの世界観に近い他のアーティストやミュージシャンとのコラボレーションが、アルバムのサウンドに一層彩りを添えている。写真と映像でアルバムのビジュアル・アイデンティティを決定づけた、Norioのシンセサイザーラインは、優しいバラード 「Kodama」を盛り上げている。

 

「Dottsu」は、鈴のようなローズ・ピアノがSatomiのギターの周りで鳴り響き 、2021年の『Colloid EP』のジャケット・アートを手がけたAkhira Sanoが演奏している。

 

「Spells」を完成させるパズルのピースとなったYuya Shitoのクラリネットは、有機的なテクスチャーとエレガントなエッジの擦り切れを聴き取りながらTabaをミックスし、Satomiのこれまで の表現とは明らかに異なるエネルギーを発散させた。 


これらの曲の土台となっている音色とリズムの遊びは、メロディーのジェスチャー、ノイズのような共鳴、Satomiの手元の レコーダーが捉えた尖った瞬間など、カラフルなパレットにも活気を与えている。

 

『Taba』は、これまでのSatomiの音楽を特徴づけてきた生来の親密さにまだ貫かれているが、これらの曲は、彼女の新しく広々とした、探究心旺盛なソングライティング・アプローチに沿ったものである。そしてそのプロセスで珍らかなレイヤーが解明されている。サウンド・デザインの思索的な詩学に包まれた曲もあ れば、ベッドルーム・ポップの窓からのぞく曲もある。 


想像力豊かな考察を集め、広大な観念を辿り、つましい瞬間に静かな余韻を残す『Taba』は音楽的な意義を越え、個人と集団、構築的、宇宙的、明瞭的と感覚的な概念の狭間を鮮やかにつなぎ合わせる。


Satomiの音の物語は、会話の中に存在するという単純な事実によって雄弁な一貫性を獲得し、動き回る人生のもつれた回路がうなるようなパーツのハーモニーを奏でる。 洋楽として聞いても、そして邦楽として聞いても新鮮さがある。サトミマガエの象徴的なアルバムといえそうだ。

 

 

「Many」

 

 

▪️過去のインタビュー:  SATOMIMAGAE(サトミマガエ)   デビューアルバム「AWA」から最新作「境界」までを語る           

 


【新譜情報】 Satomimagae 『Taba』 




トラックリスト:

01. Ishi
02. Many
03. Tonbo
04. Horo Horo
05. Mushi Dance
06. Spells
07. Nami
08. Wakaranai
09. Dottsu
10. Kodama
11. Tent
12. Metallic Gold
13. Omajinai
14. Ghost
15. Kabi (Bonus Track)

 

 

【Satomimagae】

 

東京を中心に活動しているアーティスト。暖かさと冷たさの間を行き来する変化に富んだフォークを創造している。

 

畠山地平が手掛ける''White Paddy Mountain''より2作のアルバムをリリース後、2021年にNYのRVNG Intl.へ移籍。4枚目のアルバム『Hanazono』を幾何学模様のメンバーが主催するGuruguru Brainと共同リリース。 

 

2012年にセルフリリースしていたデビューアルバム『Awa』のリマスター拡張版『Awa (Expanded)』を2023年にRVNG Intl. よりリリースした。


今年のコーチェラ・フェスティバルに出演したWispがニューシングル「Get back to me」をInterscopeからリリースした。

 

昨年、ウィスプはタヌキチャンの新作EP『Circles』にも参加している。次世代のロックアーティストのニューシングルは、彼女の新しい中世的ファンタジーと深い夢の世界を広げている。 生々しい感情と精密に操作されたニューメタルが混ざり合った、ほとんど聖なる曲だ。 


"Get back to me "は、リードシングル "Sword "に続く新曲。残酷なまでに絶妙で、氷のように繊細に、壮大な割合で吹き荒れる内的な大渦を描写している。

 

ウィスプは、すでにコーチェラで1週末プレイしており、ボナルー、キルビー・ブロック・パーティー、そしてシステム・オブ・ア・ダウンの大規模なスタジアム・ツアーに参加し、SOAD、コーン、デフトーンズ、アヴェンジド・セヴンフォールドらとステージを共にする予定だ。


このシングルについてウィスプは、「『Get Back To Me』は、自分を犠牲にしてでも混沌を求める欲を表している。 この曲は、自分にとって良くないと分かっている場所に留まり、絶望、無謀さ、そして淫らな気持ちを描いている」と語っている。



「Get Back To Me」




【Wisp】


ウィスプは、WhirrやSlowdive(2024年に夢の共演を果たした)にインスパイアされ、ロックの可能性を広げようとする個性的で洗練されたサウンドを作り上げた。

 

 Pigeons & Planesは、「ウィスプがGen-Zのエーテルフィックスになるのは時間の問題だ」と的確に予測し、Notionは、「彼女はシューゲイザーを復活させる」と宣言した。  


ウィスプは、Apple MusicのNew Music Dailyの世界的な表紙を飾り、全てのプラットフォームで数億ストリーミングを達成し、NYLON、Pigeons & Planes、Spotify Lorem Artist To Watch、Amazon Breakthrough Artists、Consequence Artist of the Monthの注目すべきアーティストに選出された。

 

また、ニューヨーク・タイムズ紙とLAタイムズ紙で特集され、Alt Pressの最新冬号の表紙を飾ったほか、Rolling Stone、Stereogum、PAPER、Brooklyn Veganなど、ウェブ上でも多数取り上げられている。


デビュー・シングル "Your Face "はビルボード・ホット・ハード・ロック・ソングスで10位を記録。 「Your face」は現在、Spotifyだけで1億1000万回以上のストリーミングを記録し、クロスプラットフォームでの総ストリーム数は2億5000万回を超えている。


2024年5月、彼女はロサンゼルスでデビュー・ライヴを行い、自作のグッズを身につけた熱狂的なファンで2回ソールドアウトした。 

 

そのわずか3ヵ月後には、ロラパルーザ、レビテーション、キャンプ・フログ・ノウ、コロナ・キャピタルで初のメジャー・フェスティバルに出演した。 彼女は、3つの異なる大陸でソールドアウトしたショーのヘッドライナーを務めたこともある: 北米、ヨーロッパ、アジア。


ウィスプは、これまでの経験に謙虚になりながらも、次のステップに進む決意を固めた。 ウィスプのサガは、彼女のデビュー作に向けて続いていく。


アイルランド出身のドリームゲイザー・ミュージシャン、Maria Somerville(マリア・サマーヴィル)は、4ADからのデビュー・プロジェクトであるセカンド・アルバム『Luster』を今週金曜日4月25日にリリースする。最終シングル「Spring」が公開された。この曲はシューゲイズ/ドリームポップだけではなく、オートチューンを含めたダンスミュージックの要素が色濃い。4ADサウンドの新機軸が示されたと言えるだろう。アルバム発売前にチェックしておこう。

 

「Spring」は、歪んだアコースティックの打ち込み、幽霊のようなサイレンの鳴き声、頭を揺らすパーカッション、オートチューンのアウトロで構成された、フルでありながら儚い、渦巻くような雰囲気のドリームゲイザー・トラックだ。


ここ数ヶ月の間に、サマーヴィルは他の3枚のシングルで、ラスターの心を揺さぶる静けさと瑞々しいサウンドの背景をさらに紹介してきた。

 

 "Stonefly"(ダニエル・スワン監督による雰囲気のあるミュージック・ビデオを伴う、スリンキーなアンビエント・ワルツ)、"Garden"(スザンヌ・クラフトことディエゴ・エレーラがプロデュースした、高鳴るフィードバック、風通しの良いパーカッション、ノスタルジックなギター・コードの融合)、"Projections"(ファズアウトしたベースとかき鳴らされたギターによる、切なくロマンチックなシューゲイザー・トラック)。これらのトラックは共に、彼女の生まれ故郷であるアイルランド、コネマラのコリブ河岸での経験を反映し、This Mortal Coilのようなノスタルジックな4ADアーティストが織り成す音のタペストリーにオマージュを捧げている。

 

 

「Spring」

イタリアのフィエスタ・アルバ    ポリリズム、ポスト・マスロック、そして世界中の声を通したグローバルな音の旅


謎めいたイタリアの実験的なロックバンド、Fiesta Alba(フィエスタ・アルバ)は、エレクトロニック、ヒップホップ、アフロビート、プログレ、オートチューンのボーカル、アヴァンキャルド・ジャズマスロックを組み合わせて、独創的な音楽スタイルをヨーロッパのシーンにもたらそうとしている。 Battles、C'mon Tigre、Squidなど、実験的なロックがお好きな方は聴いてみてほしい。


彼らはメキシコのレスリングのルチャ・マスクを特徴とし、異形としての印象が強い。不気味だが、そのサウンドはさらにワイアードだ。覆面のバンドという面ではイギリスのGOATを彷彿とさせる。しかし、そのサウンドはミステリアスでエレクトロニックのキャラクターが強い。今回、バンドのPRエージェンシーから、バンドメンバーによるトラックバイトラックが到着した。


デビュー・フル・アルバム『Pyrotechnic Babel』が2025年3月21日(金)にリリースされた。 ここ数週間、シングル「No Gods No Masters」(feat.カタリーナ・ポクレポヴィッチ)が先行発売されている。 このアルバムは、neontoaster multimedia dept./ Bloody Soundレーベルからデジタル・フォーマットとCD(スタンダード・バージョンと限定デラックス・バージョン)で発売済み。



『Pyrotechnic Babel』は、フィエスタ・アルバによる初の公式アルバムであり、2023年のセルフタイトルEPに続く2枚目のリリース。 40分以上に及ぶこのアルバムは、複雑で多面的な音楽を提供し、彼らの高い評価を得たデビュー作で紹介された言語やテーマを洗練させ、発展させている。


タイトルの『Pyrotechnic Babel』は、音のマニフェストである。数学ロックに根ざしながら、ジャンル、音色、言語を変幻自在にブレンドしている。 アフリカン・ポリリズム、ダブ、20世紀のアメリカ人作曲家の洗練されたミニマリズム、ループトロニカ、プログレッシブ・ロック、現代ブリティッシュ・ジャズ、ドラムンベースが豊かなサウンドスケープに融合している。 その結果、色彩とエネルギーがダイナミックに爆発し、まさに花火のようなバベルとなった。


初リリースでイタリア、アメリカ、アフリカの声を取り入れたフィエスタ・アルバは、その幅をさらに広げた。 


このアルバムでは、日本、中央ヨーロッパ、アフリカ、イタリアのシンガーやラッパーが、ラディカルな思想家、哲学者、現代の語り部たちがフィーチャーされている。 バンドの複雑な音楽的テクスチャーに支えられたこれらの声は、現代世界の矛盾や複雑さを生き生きと表現している。


周縁部出身でありながら、紛れもなく国際的なビジョンを持つフィエスタ・アルバは、音と文化の探求を続けている。 『Pyrotechnic Babel』は、野心的な第二のステップであり、全世界からの声、音、アイデア、闘争に満ちたレコードである。



 

 

【Track  By Track】フィエスタ・アルバによる楽曲解説


1. No Gods No Masters (feat. Katarina Poklepovic)


シンセティックなサウンドのギター、アフロなベースライン、デジタルビートを模倣したドラムの中、カタリーナ・ポクレポヴィッチ(ソー・ビースト)の声が、神も主人も必要ない感覚の帝国を語りかける。

 

2. Technofeudalism (feat. Gianis Varoufakis)


ループするギターとプログレッシブ・ミュージックのエコーが、ディストピア的な現在を宣告された惑星のサウンドトラックとして容赦ないリズムを打ち鳴らす中、現代の預言者が新しい資本主義のアイデンティティを概説する。


3. Je Suis le Wango (feat. Sister LB)


ミニマルなギターと断片的なベースラインが密に織りなす上に、セネガル出身のシスターLBの歌声が音楽的、地理的な境界を超えた架け橋を築く。 彼女は目に見えない障壁を燃え上がらせる花火のようなバベルを歌う。


4. Collective Hypnosis


息もつかせぬエレクトロニクスが、ループするギターとともに縦横無尽に回転する。 アルバム初のインストゥルメンタル・トラックでは、タイトなリズムと万華鏡のようなシンセとギターのレイヤーが、私たち全員が陥ってしまった集団催眠を物語る。


5. Waku Waku (feat. Judicious Brosky)


バトルズとヘラの中間のような、インストゥルメンタル・マス・ロックが織り成す濃密なテクスチャーと非常にタイトなリズムの上で、日本人ラッパーの武骨な歌い回しが際立つ。 高速列車を舞台にした極東の小さなラブストーリー。


6.Post Math


インストゥルメンタルのポリリズムが幾重にも重なり、多面的なハイパーキューブを形成する。 エレクトロニック・ブラス、ベース・ライン、歪んだギター・リフ、ミニマルなシンセ、切迫したドラム・マシーンの中で、奇妙なメトリックス、トニック・シフト、不協和音が見事に調和している。 タイトルが示すように、この曲はほとんどマニフェストだ。


7. Learn to Ride Hurricanes (feat. Alessandra Plini)


ディストピア社会で生きることの葛藤についての生々しい寓話が、宣言的でありながら夢のような声で歌われている。 ストリングスが幽玄なギターに寄り添い、アルバムの中で最もロック色の強いエピソードとなっている。


8. Doromocrasy


ギターとシンセが交差し、追いかけっこをしながら、四角く容赦のないリズムを刻む。 スピードのパワーの神話を物語る、カラフルで花火のようなインストゥルメンタル曲。


9. Safoura (feat. Pape Kanoute)|


アフリカのグリオの賢者が、マスロックのポリリズムとエシェリアのアラベスクの上に座り、世界最古の物語を語る。


10. Mark Fisher Was Right (feat.Mark Fisher)


加速度論者の故マーク・フィッシャーは、オンユー・サウンドの威厳に響くポリリズミックなダブ・トラックに先見の明を感じさせる歌声を乗せ、アルバムを最高の形で締めくくる。


【Biography】


フィエスタ・アルバの音楽は、オルタナティヴ・ロックの進化を通して、提案、影響、実験がダイナミックに混ざり合い、本物のルートを描いている。


 アングロサクソン的な数学ロックの独特な解釈から始まったバンドは、アフリカン・ポリリズム、ループトロニカ、ダブ、ヒップホップ、プログレッシブ、ドラムンベースとの過激なハイブリッドによって、ジャンルの限界を越えようとしている。 インストゥルメンタルに重点を置きながら、フィエスタ・アルバは世界中の声をサウンドに加える。 


各トラックはユニークな個性を持ち、パンク、ラップ、アフロビートの要素で汚染されている。 その結果、ハイパー・キネティックで洗練された万華鏡のようなサウンドが生まれ、観客や批評家を魅了し、彼らのデビューEP(s/t, neontoaster multimedia dept.)が熱狂的に歓迎されたことが証明している。 


この研究は、このファースト・アルバム『Pyrotechnic Babel』において増幅され、バンドは新たな音楽的領域を探求し、慣習に挑戦し続けている。 実験と不適合に満ちた彼らのアプローチは、ジャンルやアルゴリズムに縛られる音楽シーンに対抗するものだ。


バトルズからキング・クリムゾン、アイ・ヘイト・マイ・ヴィレッジ、カエ・テンペスト、エイドリアン・シャーウッド、サンズ・オブ・ケメットを経て、ブライアン・イーノ、スティーヴ・ライヒ、フェラ・クティといった巨人にまで影響を受けたと宣言している。 彼らの音楽の流動的な進化を反映した、モザイクのような影響。


ケンドリック・ラマー、テイラー・スウィフト、リアーナ、トラヴィス・ケルシー、シモーヌ・バイルズらが、最高のインターネット・コンテンツとクリエイターを表彰するウェビー賞で栄誉に輝いた。


ウェピー賞はインターネット界のアカデミー賞とも称される。これまでIT分野において目覚ましい貢献を果たした団体やプラットフォームに贈与されている。過去の受賞サイト/プラットフォームは、Amazon、iTunes、eBay、Yahoo!、Google、Wikipediaなど。


一般的にはウェブメディアが表彰されることが多いが、今年は有名ミュージシャン、及びミュージシャンが運営するWEBプラットフォームも選出された。


国際デジタルアート&サイエンス・アカデミーは、火曜日に様々な部門の受賞者を発表した。 第29回授賞式は、5月12日にニューヨークのシプリアーニ・ウォール・ストリートで開催される。


ウェブビー・アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー賞はスヌープ・ドッグに贈られた。 ウォルトン・ゴギンズは、"The White Lotus"、"The Righteous Gemstones"、"Fallout "などのストリーミング・プロジェクトでの演技が評価され、最優秀男優賞を受賞した。


Snoop Dog

授賞式はコメディアン俳優のイラーナ・グレイザーが司会を務め、ナイキ、ネットフリックス、レターボックス、アップルなどの主要ブランドやプラットフォームを表彰する。 フェイフェイ・リー博士は、人工知能への貢献と人間中心のAIを推進するリーダーシップに対して生涯功労賞を受賞する。


ウェブビー・メディア・グループのジェシー・ファイスター執行役員は次のように述べた、「今年の受賞者たちは、創造性と革新性のマスタークラスです。 彼らはインターネットの力を活用し、変化を促し、会話を弾ませ、新しい方法で私たちをつなげてきました。 新カテゴリーの導入により、これらのクリエーターはデジタル世界の未来を形成していることが評価されています」


この賞は1996年にウェブサイトを表彰することから始まった。 アプリやソフトウェア、ソーシャルメディアやゲームなど、新しいテクノロジーを取り込むまでに成長した。


グーグルは初のブランド・オブ・ザ・イヤーを受賞したほか、 NBCユニバーサルは最優秀メディア企業賞を受賞した。特別功労賞には、アメリア・ディモールデンバーグ、ジャスミン・クロケット下院議員、ジュールズ・レブロン、マルチェロ・エルナンデス、メイダス・タッチ・ポッドキャスト、ノーマン・ティーグが選ばれた。


その他の受賞者には、レディー・ガガのウェブサイト、マライア・キャリーとKAY Jewelersのパートナーシップ "It's Time"、ルポールの "Drag Race: The Pit Stop"、ラマーの "Not Like Us "ミュージックビデオ、ブライアン・コックスの "Brian Cox Goes to College "などがある。


また、エルトン・ジョン・エイズ基金、全米移民法センター、ホイットニー美術館など、使命感にあふれた団体も受賞した。今年は、活況を呈するクリエイター・エコノミーとクリエイターの影響力の拡大にスポットライトを当てる新しいカテゴリーが設けられた。 受賞者には、ザック・キング、ケイレブ・シンプソン、ジェイミス・ウィンストンなどがいる。

 


台湾期待のインディー・ポップ・バンド、緩緩 Huan Huan(ホァンホァン)が4月上旬にリリースされたシングル「心內話講袂出喙(Words Unsaid)」に続くニューシングル「害伯(Afraid)」をリリースした。


Huan Huanは、同じく台湾のエレファント・ジム(大象体操)の次世代を担うポップ/ギターロックバンドとして注目すべし。 

 

ニューシングル「Afraid」は、アジア圏での根強いインディーポップの人気を裏付ける。Coco Hsiaoによる、心温まるようなボーカルを中心とする、親しみやすいポップソングである。マイルズ・チャンの叙情的なギターソロが印象的だ。アウトロは、ココ・シャオによる夢想的なボーカルが、鳥の声のサンプリングと融和するかのように、心地よくフェードアウトしていく。



この曲は、5拍子と6拍子が絡み合うリズムを通して、人生の浮き沈みや本当の恐怖に直面する葛藤を描き、素直に自分を告白するという、緩緩-Huan Huanの民族性を示している。

 

アレンジでは、初めてメンバー全員で歌うことに挑戦し、ゴスペル調のオルガンやハーモニーを取り入れ、ギタリストのMyles Changの華麗なソロをさりげなく引き立て、間奏の核となり、この曲のハイライトへとつながっている。



ヴォーカルのCocoは、この曲は幼少期に買ったアイドル、孫燕姿 (Sun Yan-Zi )の「我要的幸福 (My Desired Happiness)」へのトリビュートだと語る。


彼女が子供の頃に初めて買ったアルバムで、この曲を書く過程で、「我要的幸福 (My Desired Happiness)」が5拍子混じりの6拍子の先駆けであることを知り、その偶然に驚き、痛く感動したという。

 

「害伯(Afraid)」

 

 

 

【ニューシングル情報】


 


アーティスト:緩緩 Huan Huan (ホァンホァン)
タイトル:害怕 (Afraid)
リリース日:2025年4月22日
フォーマット:デジタル・ダウンロード/ストリーミング
レーベル:Lirico

 

ストリーミング: https://lirico.lnk.to/DDIP-3110 



<プロフィール>


台北出身のインディー・ポップ・バンド。ヴォーカル/ギターでソングライターのココ・シャオを中心としたスリーピース。2017年にEP『緩緩』でデビュー。


2020年、1stフル・アルバム『水可以去任何地方 Water Can Go Anywhere』をリリースした。2022年、EP『Blue Room Orange Man』をリリース。


2023年10月、待望の2ndアルバム『When The Wind Came Across(瀏海被風吹得整個飛起來)』をリリース。

 

 
Coco Hsiao(蕭戎雯):Vocals, Guitar
Myles Chang (張天偉) : Guitar
Stone Shih(石哲安) : Bass
Yi Jen Peng(彭一珍): Drums


 
ボストンを拠点に活動する変幻自在のシンガーソングライター、Stacie Gruber(ステイシー・グルーバー)がニューシングルとミュージックビデオ「No One Is Alone」を公開した。ステイシー・グルーバーはハーバード大学で現代医学の専門的な研究を行い、現地の病院で最先端の医療に携わる才媛である。

 

米国の最高の学術機関で医学研究を行う専門的な研究者が音楽を通じて伝えたいことはなんなのだろうか? ER(Emergency Room)のようなドキュメント? これは非常に意外なことかもしれないが、それは人間の本質的な生き方なのかもしれない。投薬治療では治癒しえないもの、それを音楽という形で彼女は提供している。

 

ニューシングル「No One Is Alone(誰もひとりではない)」はその象徴のような意味がある。さらにそのメッセージの中には、現代社会に対するジャーナリスティックな精神が通底している。

 

今回、リリースされた「No One Is Alone」は、彼女が科学的な仕事と私生活の両方で、日々遭遇する人間的な体験を心に響く形で反映している。現在の世界で多くの人々が感じている孤独や孤立にインスパイアされたこの曲は、つながりや一体感の重要性を訴えるメッセージとなっている。



ステイシーは、多作な作曲家・編曲家マイケル・オーランド(アメリカン・アイドル)とプロデューサーのアヴリ・アヴリアフ(バックストリート・ボーイズ、NSYNC、レイJ)とチームを組み、喚起的で高揚感のあるポップ・ロック・アンセムに仕上げた。

 


ステイシー・グルーバーは、ボストンを拠点に活動する変幻自在のアーティストで、その類まれな音楽的才能、ストーリー性のあるソングライティング、感情的な深みは、リスナーの心に深く響く。彼女の作品は、個人的な体験と他者の感情的な物語をシームレスに絡め、孤独、寂しさ、希望といったテーマを探求する深い音楽的つながりを生み出そうとしている。


音楽は幼い頃からステイシーの人生の本質的な部分であった。内気で内向的な情熱から始まり、クローゼットの中で個人的に歌っていた音楽は、小学校で初めてソロ曲「クリスマスの12日間」を披露したとき、力強い歌声へと急速に開花した。その時、ステイシーは自分の本当の声を発見し、それ以来一度も振り返ったことはなかった。


幼少期を通じて、ステイシーは、フレンチ・ウッズ・フェスティバル・オブ・ザ・パフォーミング・アーツで多くの夏を過ごした。タフツ大学とニューイングランド音楽院の先駆的な5年間のデュアル・ディグリー・プログラムで、クラシック声楽科からジャズ研究科に移行した最初の人物となったとき、ステイシーの旅はユニークで野心的な方向へと進んだ。

 

この独特な教育的背景は、彼女の多面的な芸術性を形成し、演奏家としても作詞家としても多才な才能を洗練させた。アン・マレーからバーブラ・ストライサンド、カレン・カーペンター、KDラング、ビリー・エイリッシュ、ピンク・ナンシー・ウィルソン、ジョン・コルトレーンなど、彼女の影響を受けた音楽は多岐にわたる。多彩なジャンルが彼女独自の音楽的な背景に揺曳している。

 

 

 「No One Is Alone

 

 

その結果、彼女は様々な音楽スタイルやテイストを演奏するGBの人気バンドのリード・ヴォーカルとなった。


 
ボーカリストとして音楽的キャリアを花開かせる一方で、ステイシーはハーバード大学医学部の有名な教授として、またマクリーン病院の先駆的な神経科学者として、まったく別の分野でも卓越した業績を残した。

 

大麻に関する画期的な研究において、彼女は幅広い症状におけるカンナビノイドの長期的影響の理解に焦点を当てている。ステイシーの研究は、臨床試験に影響を与え、さまざまな病状に対する大麻の潜在的な利益について重要な洞察を提供する実データを生み出し、ゲームチェンジャーとなっている。


 
ステイシー・グルーバーのシングル 「No One Is Alone 」は、彼女が科学的な仕事と私生活の両方で日々遭遇している人間的な経験を心に響く形で反映したものだ。この曲は、現在の世界で多くの人々が感じている孤独や孤立にインスパイアされたもので、つながりや一体感の重要性を訴えるメッセージとなっている。ステイシーは次のように語っている。

 

「私は毎日、断絶された、あるいは取り残されたような経験の中で、絶対的に孤独だと感じている人々に出会っています。『No One Is Alone』は、たとえ最も孤独な瞬間であろうとも、私たちは互いの中に、場所の中に、ペットの中に、あるいはどんな形の仲間の中にでも慰めを見出すことができるということを思い出させてくれます。私たちはそれぞれ、特に苦難の時に貢献できる価値あるものを持っていることを忘れないでほしいという呼びかけでもあるんです」

 

彼女のパワフルなデビュー曲のために、ステイシーは、多作なライター兼アレンジャーのマイケル・オーランド(アメリカン・アイドル)とプロデューサーのアヴリ・アヴリアヴ(バックストリート・ボーイズ、NSYNC、レイJ)とチームを組み、喚起的で高揚感のあるポップ・ロック・アンセムに仕上げた。

 

「No One Is Alone "は、ソウルフルなヴォーカル、鮮やかなテクスチャー、カタルシス溢れるメロディーが、爽やかで屈託のないリズムに乗った印象的なサウンド・タペストリーを特徴としている。この曲は、生の弱さを深い感動へと導くステイシーの非凡な才能を示すもので、心も魂も揺さぶる一曲となっている。


ステイシーは、ダン・エイクロイドとブルース・ブラザーズとの共演、ビリー・ジーン・キングのためのアンセムの作詞、マイケル・オーランドとの大規模なイベントでのパフォーマンスなどで成功を収めている。

 

全般的な音楽と研究を通して、ステイシー・グルーバーは、音楽の変容力であれ、医学的解決法の科学的探求であれ、つながりの持つ力を体現している。「音楽は、人々が感じるべきことを感じる手助けになるのかもしれない......。私はいつも、音楽によって人々が他の誰かの視点を理解できるようになることを願っている」 彼女のシングル 「No One Is Alone 」は現在リリース中。

 


 

Staci Gruber is a transformative Boston-based artist whose exceptional musical talents, storied songwriting, and emotional depth resonate deeply with her listeners. Her work seamlessly intertwines personal experiences with the emotional stories of others, creating a profound musical connection that explores themes of isolation, loneliness, and hope.


 
Music has been an intrinsic part of Staci’s life from an early age. What began as a shy, introspective passion—singing privately in her closet—quickly blossomed into a powerful voice when she performed her first solo, "12 Days of Christmas," in elementary school. It was then that Staci discovered her true voice and has never looked back. 


 
Throughout her childhood, Staci spent summers at the French Woods Festival of the Performing Arts, which further solidified her deep love for music. Staci’s journey took a unique and ambitious turn when she became the first person to transition from the classical voice program to the jazz studies department in a pioneering five-year dual-degree program at Tufts University and the New England Conservatory of Music. 

 

This distinctive educational background has shaped her multifaceted artistry and honed her versatility as both a performer and a songwriter. 

 

Her diverse musical influences range from Anne Murray to Barbra Streisand, Karen Carpenter, KD Lang, Billie Eilish, Pink Nancy Wilson, John Coltrane and more, seeping various genres into her own unique musical melting pot. This led to her becoming a lead vocalist in a popular GB band that performed an eclectic range of musical styles and tastes. 


 
While her musical career flourished as a vocalist, Staci also achieved distinction in a completely separate field as a renowned Harvard Medical School professor and pioneering neuroscientist at McLean Hospital. 

 

In her groundbreaking work on cannabis, she focuses on understanding the long term impact of cannabinoids across a wide range of conditions. Staci’s research has been a game-changer, generating real-world data that has influenced clinical trials and provided critical insights into the potential benefits of cannabis for various medical conditions.


 
Staci Gruber’s single, "No One Is Alone", is a heartfelt reflection of the human experiences she encounters daily, both in her scientific work and personal life. 

 

Inspired by the isolation and loneliness that so many people feel in our current world, the song delivers a unifying message of the importance of connection and togetherness. Staci shares, “Every day, I meet people who feel absolutely alone in their experiences—disconnected or left behind. No One Is Alone is a reminder that even in our most solitary moments, we can find solace in one another, in places, in pets, or in any form of companionship. 

 

It’s a call to remember that we each have something valuable to contribute, especially in times of distress.” For her powerful debut, Staci teamed up with prolific writer and arranger Michael Orland (American Idol) and producer Avli Avliav (Backstreet Boys, NSYNC, Ray J), resulting in an evocative and uplifting pop-rock anthem. “No One Is Alone” features a striking sonic tapestry filled with soulful vocals, vibrant textures, and cathartic melodies over breezy, carefree rhythms. The song showcases Staci’s extraordinary ability to channel raw vulnerability into something profoundly moving, delivering a song that stirs both hearts and souls alike.


 
Staci has found success performing with Dan Aykroyd and the Blues Brothers, writing an anthem for Billie Jean King, and performing at several large events with collaborator Michael Orland. Through her music and her research, Staci Gruber exemplifies the power of connection – whether through the transformative power of music or the scientific exploration of medical solutions—and reminds us all that no matter where we are, we are never truly alone. 

 

She shares, “Maybe music really can help people feel things they need to feel… I always hope that music allows people to understand someone else’s perspective – empathy in its truest sense.” Her single “No One Is Alone” is out now.  

New Album Review:     Susanne Darre   『Travel Back』EP  

 

Label: Fluttery Records

Release: 2025年5月16日

 

Review

 

ピアノ曲の小品を主要な作風とするモダン・クラシックの一派は、これまでアイスランドのレイキャビクやイギリス/ドイツのアーティストを中心に作り上げられてきた。スザンヌ・ダールはこの次の世代の音楽家であり、メロディーの良さに重点を置いた感傷的なピアノの良曲を書いている。

 

5月16日にリリース予定のEP『Travel Back』は、ノルウェーのミュージシャン、Susanne Darre(スザンネ・ダール)による2024年のアルバム『Fragile』に続く作品となる。サンフランシスコのレーベル、Flutteryからのリリース。


スザンネ・ダールのピアノ音楽は、聴きやすく、琴線に触れる切ない旋律が特徴となっている。例えば、アイスランドのオーラヴル・アルナルズ、アイディス・イーヴェンセン、日本の高木正勝、坂本龍一、小瀬村晶、アメリカのキース・ケニフ(Goldmund)の音楽性を彷彿とさせる。あるいは、イージーなリスニングを意識した、静かでささやかなピアノの小品集としても楽しめる。カフェやレストランなど商業的な店舗のBGMとしてもオススメしたい。

 

近年のピアノ曲は、従来より音楽自体がポピュラー化している。ときに、それは旋律を口ずさめるという要素も込められているかもしれない。そして和声や楽曲の構造も簡素化に拍車がかかっている。これは近代以降、ミュージックセリエルなどの無調音楽が優勢になったことへの「反動」のようなものである。

 

結局のところ、ストラヴィンスキーやラヴェルなどの無調音楽に近い和声を多用した音楽家、そして、以降のジョン・アダムスですら調性を完全には放棄していない。彼らは、「調性の中の無調」というJSバッハの平均律の要素を異なる形で追求していた。いよいよ現代音楽そのものが形骸化しつつあり、内輪向けのものに変わりつつある中で、「無調の音楽をやる意味は何なのか?」という迷宮のような問いに対して、あっけないほど簡潔な答えを出したのが、2010年前後のドイツ/ベルリンのニルス・フラームであった。ロマン派の影響を交えたピアノ音楽は、ある意味では、それまでの現代音楽の作曲家とは別軸の答えを出したのだった。それは、結局のところ、ミニマリズムの範疇にある「音楽の簡潔化」という趣旨であった。クラシックは、つまり、ポピュラー、そしてイージーリスニングやアンビエントの範疇にあるBGMのような音楽の要素と結びついて、2010年代以降、以前とはまた別の形で蘇ったのである。だから、アンビエントプロデューサーの主催するレーベルから、このような音楽がリリースされるというのもうなずける話だ。それは別の形で音楽が繰り広げられるに過ぎないのかもしれない。

 

 

アートワークに象徴されるように、スカンジナビアの美しい風景を想起させるピアノ曲が中心となっている。それは、無限の時間と個人的な追憶という、2つの概念を原動力にして、伴奏と主旋律というシンプルな構成のピアノのパッセージが緩やかに流れていく。性急さとは無縁の落ち着き、静けさ、それは例えば、忙しい時間の中に生じる休息、そして、思い出の感傷的なエレジーのような雰囲気を持つに至る。「1-Nostalgia」はその象徴的な楽曲で、繊細でセンチメンタルな感覚を呼び覚ましてくれる。音の追憶の底に揺らめく安らぎ、時の流れが持つ美しさを感じ取ることも難しくはない。

 

「2-Picture」では、ニルス・フラームの最初期のようなイージーリスニングとモダンクラシックの中間にあるミステリアスな音楽を提供している。しかし、幾つかの下地やヒントがあるとはいえ、北欧のスカンジナビアの冬の雪の光景を思わせるような幻想的なサウンドスケープが施され、シンプルなピアノ音楽の中に神秘的な雰囲気と北欧神話のような幻想性を付け加えている。北欧的な神話の幻想性というのは、このノルウェーの作曲家の独創性の一つであり、最大の美点である。ぼんやり聴き始めると、いつの間にか終わってしまう。BGMのような性質を持つ、客観的な音楽である。

 

「3-Travel Back」は、ささやかであるが、センチメンタルで感傷的なピアノ曲である。イントロはドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」を彷彿とさせる、閃きのある単旋律を導入音として引き伸ばし、その後、淡々と短調を中心とするピアノのパッセージが続いている。この曲は、EPの楽曲構成の中で最も感傷的なイメージを持つ。 ピアノに深いリバーヴを施し、独特なアンビエンスを形成するという側面では、近年のモダンクラシックの流れに依拠している。


そして、同時に、何らかのサウンドスケープを呼び覚ます力があり、アルバムの全体的なイメージである、冬のスカンジナビアの海岸の光景や、その幻想性を想起させる。また、マスタリングのサウンド処理で、あえて高音部にエフェクトを施し、アンティークのピアノのような音色を作り出す。このあたりの残響を生かしたアトモスフェリックなサウンドは、アイスランドのオーラヴル・アルナルズに近い感覚がある。追憶の底にある懐かしさのような瞬間が演奏で表現される。聞き手は、その追憶という名の果てなき迷宮に迷いこまざるを得ない。

 

 

クローズを飾る「Hap」 EPの中で最も力が込められているように感じる。実際的に素晴らしい一曲である。この曲はミュージシャンが住むノルウェーの冬、雪深い風景という映像的なモチーフが、ピアノの麗しいパッセージによって、最も荘厳な美麗さを帯びる。アトモスフェリックなシークエンスを背景に繰り広げられる、アルバムに通底するマイナー調のピアノ曲は、冬の寒さ、儚さ、生命の気配に乏しい感覚を呼び起こすが、しかし、そこにしっかり息づく生命の神秘的な力を感じさせる。このピアノ曲は、クライマックスにかけて、幻想性が強まり、アートワークにリンクするかのように、神妙なエンディングを迎える。そこには、厳しさと慈しみを併せ持つ自然の崇高性に相対する時の人間の姿が、印象派の絵画のように、ものの見事に活写される。

 

ノルウェーの音楽家、スザンネ・ダールの描く音楽の世界は、追憶を元にした感傷的なエレジーのようだ。しかし、同時に、その最後には、感嘆すべきことに、神秘的な生命の力強さを得るに至る。『Travel Back』は、ミュージシャンの人生を見つめる力、そして、その端的な審美眼が作り出した、モダン・クラシックの美しき結晶である。

 

 

 

  

 

 

  

 Susanne Darre  :

 


ノルウェー出身の作曲家でピアニストのスザンネ・ダールは、ノルウェー北部の自宅でモダン・クラシック音楽を創作している。


ピアノへの生涯の情熱が彼女の創造性を刺激し、独自のメロディーを作曲、演奏している。音楽一家に育ったスザンネは、音楽とギター、そして膨大なレコード・コレクションを愛する父親の影響を深く受けた。


スザンヌは一人で音楽の制作、レコーディング、ミキシングをこなす。ヴィンテージ・ピアノのアコースティックな響きが好きで、歴史的建造物の中で音楽を創作するのが好きなスザンヌは、過去と現在の楽しいコントラストを生み出し、彼女の作曲に深みと個性を加えている。さらに、アンビエントなサウンドスケープや電子音とモダン・クラシック・ピアノ音楽の融合を探求し、伝統的な作曲の限界を押し広げている。


さらに、彼女の芸術的ビジョンは音楽だけにとどまらず、自然の風景の息をのむような美しさをとらえた写真にも及んでいる。スザンネ・ダールは、北ノルウェーの素晴らしさの真髄をとらえ、その静謐な風景と情感豊かなメロディーの感覚的探求へと誘う。



 聞いてほしい、とエリザベス・ウィットモアはジュリアン・ベイカーとトーレスの新作を紹介する際にアメリカの現状を訴えかけている。


 私たちの何人かにとって、あるいはほとんどの人にとっても、今年は大変な年だった。 この原稿を書いている11月中旬のシカゴは、記録的な暖秋で、悪いニュースが続いている。 


 南部の田舎では家族や動物、家が流されてしまった。 山火事の季節は終わらない。 ある場所では水が多すぎるし、ある場所では水が足りない。 私の故郷のテキサス州では、幼少期を終えたばかりの妊娠中の人々が、医療を受けられず命を落としている。 そして、あなたやあなたの愛する人が不法移民であったり、トランス、クィア、貧困、黒人などということは数え上げればきりがない。


  時々、呪われた世界全体が、きっぱりと自滅する決意を固めたように感じることがある。 だから私は、ジュリアン・ベイカーが歌う、「これ以上悪くなることはない」という言葉を骨の髄まで自分のことのように感じる。 もしかしたらあなたもそれを感じているかもしれないし、絶賛されたアーティスト、ジュリアン・ベイカー&トレス(別名マッケンジー・スコット)によるこの待望のカントリー・アルバムの良い仲間を利用できるかもしれない。


 「Send A Prayer My Way」は何年も前から制作されていた。このアルバムは楽屋での意気投合から始まった。 2人の若いミュージシャンが、ここシカゴで愛されているリンカーン・ホールで初めて一緒にライヴをするところを想像してみてほしい。 2016年1月15日、外は底冷えするほど寒く、特に南部に住む2人組にとってはなおさら。 ライヴが終わり、クソみたいなことを言い合っているとき、一人のシンガーがもう一人に言った。"私たちはカントリー・アルバムを作るべきだよ"。 


 これはカントリー・ミュージックの世界では伝説的な原点であり、余裕のあるエレガントな歌詞と、彼らの音楽を愛する人々と苦悩を分かち合う勇気ですでに賞賛されている2人のアーティストのコラボレーションの始まりでもある。 


 それは不朽のカントリー・アルバムのように、歌い手と聴き手の双方を支え、鼓舞し、この世で孤独な人間など一人もいないこと、音楽は安定した伴侶であることを思い起こさせる作品作りの始まりでもある。'' なぜ泣いているの? '' 「No Desert Flower」で彼らは歌う。 ''少しくらいの雨なら平気さ/辛いことがあってもへこたれない/過ぎゆく歳月が僕を洗い流すことはない''。


 「Send A Prayer My Way」は、アウトローの伝統に則って書かれ、そして歌われた、とても素晴らしいカントリー・アルバムだ。 (最高のアウトロー・カントリーでは、法律も男も味方ではない。トレスとベイカーの音楽では、宗教の吹き溜まりも、娘のセクシュアリティを我慢できない母親もそうだ)。 これらの曲は、長い勤務を終え、疲れて家路につくとき、マリファナと静かな場所で足を休めたいと願う歌であり、ワゴン車から(またもや)落ちてしまい、今度こそ、車輪の下に引きずり込まれるのではないかと思う歌であり、間違った決断をすることだけが自分の知っている決断なのだと思う歌である。 ベイカーは、冒頭の「Dirt」でこう歌い、その数行後にはこんな美しさがある。''きれいになるために一生を費やす/ただ汚れの中で終わるために''

 

 

 Julien Baker & TORRES 『Send A Prayer My Way』 - Matador



 

 ジュリアン・ベイカー、トーレスはともにアメリカ国内では著名な歌手である。双方ともに、歌手としてだけではなく、ギタリストとしても活動している。近年、ベイカーは、ボーイ・ジーニアスのメンバーとして活動し、様々なイベントにも出演してきた。一方のトーレスは昨年、ソロ・アルバム『What an enormous room』を発表し、ポピュラーシンガーとして成功を収めた。この度、二人が挑戦したのは純正のカントリー・アルバム。聞けば分かる通り、ポピュラーに薄められたカントリーではなく、戦前の時代、つまり、20世紀中葉の本格的なカントリーソングの系譜にある曲も含まれている。ベイカー/トーレスは、ふたりとも若い年代のシンガーであるが、こういった古典的な作風に挑戦したのに大きな驚きを覚える。なぜなら、このアルバムの音楽の中には、両者がまだ生まれていない時代のものも含まれているからである。

 

 カントリー/フォークというのは、一般的な日本の音楽ファンは同じようなものと考えることが多いのではないかと思われる。 カントリーは田舎の音楽であって、フォークは民謡.......。いずれも、世俗的な音楽である。2つの音楽の共通点は、どちらもその土地の風土を音楽として織り込んでいる。ただ、この2つの音楽を漠然と一括りにするのは妥当ではないのかもしれない。とくに、カントリーを語る上では、この音楽がゴスペルやブルースと密接な関係を保ちながら発展してきたことを考えると、キリスト教の霊歌としての教会音楽と切り離すことが出来ない。

 

 元々、教会音楽と対象的な構造を持つものとして、世俗音楽というのがヨーロッパ社会には厳存してきた。そして、これこそが現代のフォークやカントリーのルーツであろう。結局、教会の祭礼で歌われる霊歌やカンタータを共同体の外に持ち出し、それを民衆化し大衆化した瞬間、ポピュラーの歴史が始まった。それ以降、ジャズやポピュラーという形で発展してきたのが、アメリカの音楽の系譜である。それからは、ポピュラーは徐々に均一化していった。そして、アメリカの音楽というのはキリスト教の概念を元に発展してきていることは忘れてはいけない。

 

 おそらく、この点が、単にアメリカの音楽をなぞらえただけでは同じものにならない理由なのだろう。仮に、一般的には、汎神論や一神論を否定する、つまり得難い存在の実在を完全に否定するとしても、概念のどこかに神が存在すること、これは完璧には否定出来ない。例えば、神様なんかいないぜ、と現代の人々の多くは考えるかもしれないが、神様という言葉が概念のどこかに出てきたとき、それはすでにその存在を認めているも同然なのである。もちろん、我が日本では、往古より、汎神論的な考えが優勢であり、山や空にも神様がいると考えてきた。

 

 今回、若いシンガー二人が取り組んだ「カントリー」というのは、日本の音楽ファンにとっては単なる符牒や意気投合のための共通点だったと考えるかもしれない。このアルバムを聴く人々の多くはそのように捉えるに違いない。しかし、そう考えるのは、あまりにも浅薄であり、理解に乏しい。少なくとも、驚きを覚えたのは、このアルバムを聴くとわかるように、ジュリアン・ベイカーにせよ、トーレスにせよ、カントリーを単なるツールのように考えていないらしいということである。つまり、カントリーという音楽を通して、二人のミュージシャンは、人生を考えたり、悩みを共有したり、ときには、喜びや安らぎを共有している。ようするに、個人的な感覚を別の人間が共有したその瞬間、ソロという役割が変化し、本当の意味での”コラボレーション”が実現するのである。ジュリアンとトーレスには、カントリーをツールにするような考えは微塵もかんじられない。しかも、カントリー音楽に神聖な感覚を見出そうとさえしている。ジュリアン・ベイカーに関しては、そういうイメージがなかったが、音楽に対して敬虔な気持ちすら読み取ることも出来る。そして、ぼんやりと目に浮かんできたのは、帽子を深く被って録音マイクの前に立つ歌手の姿……。良い音楽を作るためには、こういった厳粛で慎ましい感情を、自分の作り出す音楽に対して抱くことも、時には必要なのではないか。

 

 カントリーという音楽は、アメリカ国内では、WW2の戦前、戦後にかけて最盛期を迎えた。ハンク・ウィリアムズ、ジョン・デンバー、レッド・フォーリー、ジョニー・キャッシュなど、偉大な歌手を輩出した。これらの音楽は、共同体の中の文化を外に持ち出し、霊歌を一般化したり、世俗化するような意味があった。もうひとつは、音楽の持つ意義の変化が要因ではなかったか。戦争の前後の時代の国威発揚のような意味をもたらし、外地から望郷の念などをワイルドに歌うことが多かった。兵士に向けて歌われることもあり、また、従軍キャンプのようなパーティーでも演奏される機会が多かったはずである。そこでは、当然、離れていた恋人が一緒に踊りながら、カントリーに合わせて歌うこともあったはず。欧州では、ポルカやジーグ、メヌエットという、三拍子を中心とする舞踏音楽の形式があるが、これらの20世紀バージョンがアメリカの南部を中心に発展していった。これが、カントリーの正体だろう。アコースティックギターで軽快なリズムを刻み、ときに、ジャズのリズムの影響を受けてスイングする(拍を後ろにずらすシンコペーションの一種)のは、この音楽が本来は舞踏的だからなのだろう。

 

 カントリーは、男性中心の音楽として栄えてきたようなイメージがある。私自身もつい数分前まではそうとばかり思っていた。しかし、ロレッタ・リンというデュエットの名手がいる。ロレッタ・リンは、2022年に死去しているが、特に、男性のカントリーシンガーとのデュエットで、素晴らしく甘い雰囲気を添えた。そして、コンウェイ・トゥッティ、アーネスト・タブなどのデュエット曲を通じてリンが表現したのは、切ない純粋な恋心であった。そして、これもまた、どちらかといえば、ジャズのクラシックをボーカル化したような音楽でもあった。


 重要なのは、カントリーは、離れたところにいる恋人への恋慕や望郷の念など、何らかの対象物に対して、慎ましい気持ちを表現するものだった。それは、時々、大きな社会情勢に個人の命運が翻弄されることがあったのに加えて、恋人という欠かさざる存在や故郷の姿が自己よりも大きいことの表れでもあった。それが戦後にかけて反戦歌などが作られるようになり、政治的な趣旨の色合いを増すこともあった。例えば、ジョニー・キャッシュはそのアイコンだろう。いわば、カントリーという音楽そのものが神棚に祭り上げられるようになってしまった。これには確かに弊害もあった。本来は、世俗的な音楽や一般的な市民の感情を歌うものであったはずなのに、それとは対象的にエルヴィスのようなカリスマの象徴になっていってしまった。キャッシュはあまりにもこの音楽を神格化しすぎていて、それを贖罪の対象としたのだった。本来はカントリーというのは、世俗的な音楽であり、誰でも楽しめるように設計されている。もちろん、音楽にまったく詳しくないような人でも気楽に歌えるようになっているのである。

 

 ジュリアン・ベイカーとトーレスは、アルバムの録音の価値と並行し、文化的な側面からこの音楽に取り組もうとしている。「カントリーの民衆化」という元来の音楽の意義を蘇らせ、それを現代的な感性で包み込んでいる。このアルバムは、アメリカの長いカントリーの歴史を網羅するものであるのと同時に、現代的な感性からそれを再解釈し、聴きやすい音楽として出力している。

 

 

 ジュリアン・ベイカーとトーレスの声質は似ているようでいて似ていない。逆に言えば、似ていないようで似ている。モダンなポップソングを、両者ともに軽やかに歌うが、ソロアルバムより覇気がこもっている。ただ、それは気負いとはならず、音楽のリスニングに際して、敬虔な気持ちを授けてくれる。


 この録音には、二人のシンガーが実在していること、そして音楽を作ってくれたことに深く感謝したくなるものが込められている。二人の歌声には、心を落ち着かせるものがあり、それがアルバム全体に共鳴する内容だ。Ⅰ、Ⅴ、Ⅳ、Ⅵを中心とする基本的な和声構成を中心に、エレクトリックとアコースティックのギターの両方を巧みにボーカルの録音の間に織り交ぜ、時には心を落ち着かせ、また時には、切なさを呼び起こす素敵なカントリーソングが紡がれていく。

 

 

 現代におけるカントリーの精神とはどのようなものだろう。それはボブ・ディランの中期のような、やるせないような感覚である。クイア、移民、そして、混乱する国内経済(日本にもその影響は波及している)は、多くの国民に苦境をもたらしている。それは、上記のライターの記述を見ると明らかである。一般的な歌手は問題から目をそむけがちだが、この二人の歌手はそうではない。自分の環境やミュージシャンとしての生き方、現代アメリカの社会問題などに関心を向け、それらを自分たちが出来る形で、カントリーソングに乗せて歌う。ふたりとも有名な歌手なので、そういったイメージはなかったが、「1−Dirt」では人生の悲哀が歌われることがある。そして、それはパーソナルとグローバルの問題を結びつけるような役割を担っている。

 

 シンプルで精細なイメージをもたらすアルバムの冒頭を飾るこの曲は、アメリカに生きる市民の実情について考え合わせたとき、驚くほど音楽の印象が変化する。牧歌的な感覚の中に満ち渡る望郷の念というカントリーの原義に加え、哀愁にも似た淡い感覚を呼び覚ますのである。スムースなアコースティックギターの演奏、甘い雰囲気をもたらす一番の歌詞を歌うジュリアンのボーカル、メロウな雰囲気を持つハモンド・オルガン、フィドルの音色を想起させるヴァイオリン、ブルースのように渋いエレクトリック・ギターのソロ、そして、二番の歌詞をリードするトーレス、続いて、デュエットで歌われる二人のボーカル……。こういった両者の人生の関わりや友情を感じさせる素晴らしいカントリーソングがアルバムの音楽の手ほどきをする。

 

 オールドタイプのカントリーソング「2−The Only Marble I've Got Left」は、ジョン・デンバーやハンク・ウィリアムズを彷彿とさせ、スティールギターの音色で始まる。その瞬間、雄大な感覚を呼び起こし、カントリーに対する讃歌へと変わる。古典的な二拍子のリズムを基にして、トーレスのボーカルで始まり、音楽のワイルドなイメージを敷衍させる。そして望郷の念や恋慕の気持ちなど、カントリーソングの基本的な作法を活かし、本格的で精度の高い洗練された音楽構造を作り上げていく。サビの箇所では、「Daydream Believer」を想起させる心地よいフレーズを二人で歌い上げる。

 

  ここでは、未来に対する漠然とした希望、もしくは希望への道筋が歌われる。デュエットとしての相性も抜群で、アルトの音域を担うトーレス、そして、ソプラノの音域を担うジュリアンというように、音域の棲み分けが出来ている。さらに、両者の声質もデュエットとしての最大の効果を発揮し、甘美な感覚を呼び起こす。音楽というのは、実際の音を通して、どのようなインスピレーションを呼び起すのかが一番大切と思われる。それは、AIのようなテクノロジーを駆使しようとも普遍のテーマである。この点を、二人の秀逸な歌手は知り尽くしており、明るく穏やかなイメージを彼女たちのボーカルを通して、丹念に体現させていくのである。いわば”悪しき時代の星”となるため、ジュリアンとトーレスは肩を組むように歌を快活にうたうのだ。

 

 

 カントリーソングの中には、世俗的な人生観を歌うというのが通例である。 「3-Sugar In The Tank」はその好例だ。アコースティックギターのラフなストロークから始まり、Ⅲ-Ⅳのスケールを行き来しながら、スティールギターの対旋律を楔にして歌が始まる。ジュリアン・ベイカーのリードボーカルは、彼女のポピュラー性という側面を強調させ、くつろいだ感覚を付与する。その後、ドラムの演奏が心地よいリズムを刻み、休符を途中にはさみながら、軽快なカントリーソングが紡がれる。そして、この曲では、日頃の生活から汲み出される感情を、つややかに歌い上げている。近年の均一化したポピュラーという内在的な音楽性を古典的なカントリーと組み合わせているのが秀逸だ。現在、この曲のストリーミング再生数は、アルバムの中では最も高くなっている。アルバムの中で、最も聴きやすく、そして親しみやすい一曲でもある。また、この曲ではバンジョーの演奏も登場する。これが曲全体に遊び心を付け加えている。

 

 「4-Bottom of the a Bottle」は、デヴィッド・ボウイの最初期のフォーク・ソングを想起させるイントロではじまり、フィドル(弦楽器)の演奏を配したアメリカーナの雰囲気を強調させる。 この曲ではトーレスがリードボーカルを担い、精神的に円熟した感覚を思わせる。ポピュラーソングの普遍的な音楽は、トーレスの安定感のある重厚なボーカル、そして、ジュリアンの甘い雰囲気のある高いボーカルを中心として、明るい曲調から憂いのある曲調へと変遷を辿る。

 

 ”ⅥーⅣーⅤ(ーⅡ)”という、基本的な和声構成をアコースティックギターで演奏しながら、ドミナントのドミナント(Ⅴ-Ⅴ 短三和音)を効果的に用い、憂いの感覚を表現し、雄大なスティールギター、ペダルスティールと組み合わせて、切ない印象が呼び覚まされる。このシークエンスは劇的だ。

 

 その後、タイトルの歌詞が端的に歌われ、弦楽器の演奏を介して音楽が面白いように次にロールしていく。意外とシンプルなようでいて、和声の構成がきわめて卓越している。そして、強進行の和音を導入し、その後に休符を入れているから、その後の音楽に弾みがついて、リズミカルになる。いわば曲の流れが出てくる。


それ以降、トニック(主音)に戻り、シンガロングを誘う瞬間が訪れる。曲の始まりは、不安定な印象であるが、中盤にかけて安定感を持つようになる。この曲では、基本的な和音構成が安定しているからこそ、ポピュラーソングとしての安定感や均衡感を持つ。

 

 

 「Bottom of the a Bottle」

 

 

 「5-Downhill Both Ways」は段階的に半音ずつ降りていくスケールが導入されている。前の曲が和声的だとすれば、この曲は、対旋律的である。イントロから続くアコースティックギターを中心とする通奏低音を担う演奏にはスティールギターの伸びやかな対旋律をもたらし、そして、その後、アルペジオ(分散和音)が奏でられるアコースティックギターがもう一本追加される。

 

 この時点で、曲の大まかな伴奏が組み上げられる。この全般的な伴奏は、パット・メセニー/ライル・メイズの最初期のフュージョン・ジャズの一貫として登場したカントリーとジャズのクロスオーバーのようにリラックスした感覚をもたらす。ボーカルははじめからデュエット形式で歌われる。

 

 ジュリアン・ベイカーがソプラノの音域を歌い、そして、トーレスがアルトを歌っていると思われる。これらは、カウンターポイントの基礎である3度(短3度の場合もある)の音程の組み合わせを中心に構成され、心地良い音楽性が作り上げられる。簡単に聞こえるが、高度な音楽形式が繰り広げられる。いわばアメリカのポピュラーが単なる感覚や感性だけに依拠せず、音楽理論の基礎が定着していることに驚きを覚える。

 

 その中で、ピッチやトーンの微細なズレを活かし、いわばブルースのような渋いボーカルのテイストを生み出している。もちろん、両者の歌の素晴らしさを引き出す録音の水準の高さは言うまでもない。南部のカントリーを意識した軽やかなポピュラーソングで、良い雰囲気が漂う。さらにバンジョーの演奏も二度登場する。一回目は一番の後のソロ、そしてアウトロのソロ。感覚的に曲を作っているように思えるかもしれないが、ソングライティングは構成的である。

 

 舞楽的な音楽は「6-No Desert Flower」に見出だせる。歌だけを聴くと、四拍子に聞こえるが、ドラムは二拍を刻んでいくというように、変則的なリズムが取り入れられている。短調の曲の中で、哀愁を感じさせるボーカルをダブルで披露している。例えば、こういった曲は、ルー・リードがヴェルヴェットアンダーグラウンド時代に書いていたと思われるが、東欧の民謡を吸収した、新時代のカントリーとしての効力を持っていた。この曲では、バロック音楽のジーグ(Gigue)のような、古典音楽の要素がバラードタイプの音楽として新たに生まれ変わっている。同じように、スティールギターの演奏が組み合わされ、エキゾチックな雰囲気を醸し出す。

 

 一方、アルバムの中盤では70年代ごろのウェストコーストロックの色合いが強まる。ドゥービー・ブラザーズやイーグルスの最初期の西海岸のサウンドで、別名”バーバンク”とも呼ばれ、ハリウッドお抱えのロック音楽としてワーナーが押し出していた。

 

 そして、このアルバムの場合は、 「7-Tapes Runs Out」、「8-Off The Wagon」などの録音を通じて、アナログのコンソールを使用してクラシカルなフォーク・ソングを作り上げている。

 

 ジュリアンがリードボーカルを担うが、トーレスのコーラスが入ると、サザンロックの要素が強まる。ウェスト・コーストのロック音楽は、アメリカ南部のソウルやブルースの影響下にあるサウンドを織り交ぜていたのは周知の通りであるが、これらの南部と西海岸の中間にあるようなフォークロックに取り組んでいる。しかし、モダンな要素も同時に強調される。弦楽器の演奏はオーケストレーションのような壮大さを生み出す。

 

 ただ、ギミックの演出のような大仰な感じはほとんどない。曲の延長線上にあるアレンジメントである。一方の「Off The Wagon」ではライブツアーのワンシーンのような情景が映画さながらに切り取られる。前の曲と聴き比べると、続き物のような感じで楽しむことが出来る。後者の曲は、ジャクソン・ブラウンの『Running On Empty』の収録曲「The Road」をわずかに彷彿とさせる。このアルバムの中盤の2曲ではアメリカらしい雄大さと哀愁を味わうことが出来るはずだ。

 

 

 その後、アルバムはカントリーの古典性に回帰している。「9-Tuesday」は再び本格的なデュエットの形式が繰り広げられる。しかし、同じアルバムの収録曲のデュエットとして聴くと、両者の人間関係が少しずつ移ろい変わっているように感じられる。そして、制作者の人生の周囲を通り過ぎていく風景のように流れる。それは、実際のレコーディングにも反映され、収録曲の時系列としての並び方はさておき、アルバムを一緒に制作したことで、デュエットの歌がもたらす空気感や雰囲気にも一定の変化が生じている。つまり、このアルバムは、ジュリアンとトーレスという、二人のシンガーソングライターの人生が徐々に転変していく様子を捉えている。

 

 これは言ってみれば、音楽におけるドキュメンタリーのような意味合いが含まれているのではないか。そして、従来のジュリアン、トーレスという二人の歌手を知る人々にとっては、元来のイメージが先入観であったと気づくかもしれない。そこには誰よりも真摯な姿勢で録音や音楽に向き合おうとするふたりのミュージシャンの姿が、実際の音源を通して目にまざまざと浮かんでくるかのようである。それは音楽を聞いていても、クール、かっこいい、というイメージを抱かざるをえない。そして最後にはトーレスの得意とするスポークンワード風のボーカルが登場するのにも注目したい。

 

 「10-Showdown」はジュリアンがリードボーカルを担う。静かな雰囲気に満ちた美しいバラードソングで、そして内的な静けさという今までになかった気風が漂う。この数年、制作者が作ってきたポピュラーソングを改めて回顧するような内容になっている。しかし、例えば、2021年のソロアルバムと比べてみると、本格派のシンガーとしての威風堂々たる雰囲気を感じさせる。明言こそできないが、シンガーソングライターとしての進化の気配が伺えるのである。

 

 「11-Silvia」は異なる個性を持つシンガーソングライターの才能が見事に花開いた瞬間である。イントロは哀愁あふれるフレーズをトーレスが歌い、その後、デュエット形式に変わり、美麗なハーモニーを形成する。個人的な出来事をリリカルに歌う歌手は多いが、この曲のポイントは両者で共有される第三者への思い。そこには痛切な感覚が漂い、シンプルな「シルビア、私を忘れないで.......」というフレーズが深い慕情を持つに至る。きっと、トーレス、ジュリアンともに言葉の重さを痛感しているからこそ、こういった心に響く曲を書くことが出来た。カントリーと銘打たれた本格派のアルバムの中で、この曲はポピュラーソングとして異彩を放つ。ダークで気だるいような感覚からもたらされる最も美しい感情の結晶が生み出されたのである。

 

 

 聴き応え十分だし、マタドールのレコーディングの素晴らしさも美点で、惚れ惚れしてしまう。ジュリアン・ベイカーとトーレスの真摯な音楽に対する姿勢と、意外な一面を感じさせる素晴らしいアルバム。このアルバムが、アメリカの音楽市場に、どのような影響をもたらすのかは定かではない。しかし、良質なカントリーアルバムとして、後世にさりげなく語り継がれるでしょう。もちろん、少数派の人間としての意見やスターダムに押し上げられた歌手の気持ちをストレートに反映させているのも、ひとつの魅力となりえる。少しシリアスな内容に傾きかけたアルバムは、その後、穏やかで柔らかい雰囲気を持ってクライマックスを迎える。トーレスはジュリアンに語りかけ、ジュリアンがそれに答え、軽快なカントリーソングが展開される。 レコーディングや音楽として高水準にあるだけではなく、伝えたいことが明確なのである。

 



90/100

 

 

 

 

Best Track-「Sylvia」

 


▪Julien Baker & TORRESのニューアルバム『Send A Prayer My Way』はマタドールより本日発売。ストリーミング/購入はこちらより。日本国内では、beatink/ディスクユニオンで販売中。


高い評価を得ているソングライター、Emily Harber(エミリー・ハーバー)が新作EP『Nostalgia』をリリースした。本作のハイライト曲「Next Time」のミュージックビデオが公開されたので、新作の情報と合わせて下記よりご覧ください。


この5曲入りのインディー・ポップ・ミーツ・シンガー・ソングライター・コレクションは、グラミー賞を受賞したダニエル・ダヴィラがプロデュースした。 

 

エモーショナルなリリックと深遠なストーリーテリングで知られるエミリーの旅は、回復力、創造性、そして音楽への生涯の愛に満ちたものだ。 生まれつき両耳に重度の難聴を持つ彼女は、4歳から補聴器をつけていた。  彼女の新しい音楽は、母親を失った悲しみ、ノスタルジア、つながり、希望などをテーマにしている。 


エミリーのソングライティング・キャリアとコラボレーションは、アンディ・グラマー、ジョイ・オラドクン、グリフィン、アビー・アンダーソン、ミキ・ラツーラ、デヴォン・ガブリエラなど、幅広いアーティストに及んでいる。 

 

また、CNN、The Sex Lives of College Girls、The L Word、The Hills、Batwoman、Teen Momなど、テレビや映画にも彼女の作品が起用されている。


エミリー・ヘイバーは、受賞歴のあるファミリー・バンドで育った幼少期から、ロサンゼルスで人気のソングライターになるまで、音楽漬けの人生を送ってきた。 エモーショナルなリリックと深みのあるストーリーテリングで知られるエミリーの歩みは、回復力、創造性、そして音楽への生涯の愛に満ちている。


家族のためにキャリアを中断していた2人の音楽家の両親のもとに生まれたエミリーは、新たな章の幕開けとなった。 彼女が6歳のとき、両親はLaughing Pizzaという子供向けバンドを結成し、エミリーを前面に押し出した。 


ソニー/エピック・レコードと契約したラフィング・ピザは、PBSキッズや全米のステージで演奏し、10年間全米をツアーした。 7歳から17歳まで、エミリーはツアーに明け暮れ、生涯の思い出を作り、将来の音楽活動の基礎を築いた。


2015年、ステージ4の卵巣がんで母親を亡くしたが、この喪失は彼女の人生と芸術に大きな影響を与えた。 

 

この喪失は、彼女の人生と芸術に大きな影響を与えた。10年間、家族だけで活動してきた経験を持つエミリーは、この喪失をきっかけに、勝利と傷心の両方によって形作られたソロの音楽の旅を始めた。 


若い頃にプロとして活動していたエミリーは、ユニークな試練に直面した。 生まれつき両耳に重度の難聴を持つ彼女は、4歳から補聴器をつけていた。 


10年間、エミリーは本能と筋肉の記憶に頼って演奏してきた。 補聴器はしばしば演奏中に故障し、彼女はほぼ無音でライブをこなさなければならなかった。 13歳のときに補聴器技術が進歩するまで、エミリーは本当に自分の声を聞くことはできなかった。 エミリーはようやく、音楽に対する独自の感覚と、多くの人が音を理解する現実とを結びつけることができるようになった。 


19歳のとき、エミリーは自分の道を切り開こうと決意してナッシュビルに移った。 彼女はラフィング・ピザでの経歴を秘密にし、一からキャリアを築いていった。 彼女はベルモント大学に短期間通った後、この街の活気あるソングライティング・コミュニティに飛び込んだ。 エミリーは、象徴的なブルーバード・カフェで働き、たゆまぬ共同作業で技術を磨き、音楽に没頭した。 


グラミー賞受賞ソングライターのリズ・ローズとEddie's Atticで偶然出会ったことが重要なきっかけとなった。 リズはエミリーを自宅に招いて作曲をさせ、ナッシュビルの結束の固いソングライティング・サークルを紹介し、夢を追いかけるよう励ました。


2017年10月、エミリーはPrescription Songsと契約し、多作なプロのソングライティング・キャリアのスタートを切った。


 彼女のコラボレーションは、アンディ・グラマー、ジョイ・オラドクン、アンナ・クレンデニング、グリフィン、アビー・アンダーソン、carobae、ミキ・ラツーラ、デヴォン・ガブリエラ、エリカ・ジェインなど、幅広いアーティストに及ぶ。CNN、The Sex Lives of College Girls、The L Word、The Hills、Batwoman、Teen Momなど、テレビや映画でも活躍している。


2023年3月、エミリーは、USCのソングライティング・クラスのパネル・スピーチを依頼されたときに、共同プロデューサーのダニエル・ダヴィラと出会った。 そして一緒に彼女のデビューEP『Nostalgia』を制作した。 

 

エミリーは初めて、自分にしか語れない物語があると感じ、この作品集にはストーリーテラーとしての彼女のユニークな声が反映されている。 Nostalgia』は、エミリーの成長と芸術的ビジョンの証である。 


タイトル・トラックは、彼女が憧れながらも決して手に入れることのできなかった子供時代へのオマージュであり、切ない夢と成長の傷心をブレンドしている。 


ハートフルなシングル曲 "Next Time "は、電話や映画の夜、いなくなってもずっと残るさりげない存在など、日常の中で誰かを恋しく思うことの切ない素朴さを表現している。 この曲は、よりソフトな結末、何も急がず再会が可能な来世を想像している。 


この曲を書くことで、彼女は消えることのない悲しみと、決して消えることのない愛を処理することができた。 彼女のニューEP『Nostalgia』は、現在、全世界で発売中。 

 

 

「Next Time」

 

 

 

Emily Haber has spent her life immersed in music, from her earliest days growing up in an award-winning family band to becoming a sought-after songwriter in Los Angeles. Known for her evocative lyricism and profound storytelling, Emily’s journey is one of resilience, creativity, and a lifelong love for music.



Born to two musical parents who had paused their careers to focus on their family, Emily’s arrival marked the beginning of a new chapter. When she was six, her parents started a children’s band called Laughing Pizza, bringing Emily front and center. Signed to Sony/Epic Records, 

 

Laughing Pizza toured the United States for ten years, performing on PBS Kids and on stages nationwide. From age 7 to 17, Emily lived on the road, creating lifelong memories and building the foundation for her future in music.



In 2015, she lost her mother to stage 4 ovarian cancer—a loss that profoundly influenced her life and art. With a decade of experience working solely with her family, Emily’s loss began her solo music journey, shaped by both triumph and heartbreak. 



Working professionally in her younger years, Emily faced unique challenges. Born with severe hearing loss in both ears, she wore hearing aids from the age of four. For a decade, Emily performed by relying on instinct and muscle memory. 

 

Her hearing aids frequently failed mid-performance, leaving her to navigate live shows in near silence. It wasn’t until advancements in hearing aid technology at 13 that Emily truly heard her own voice, and by 17, she experienced intricate layers of music for the first time thanks to the Starkey Foundation. 

 

Emily finally was able to combine her unique feel for music with the reality of how most people understand sound - giving her a 6th sense that is palpable when listening to her recordings. 



At 19, Emily moved to Nashville, determined to carve her own path. She kept her history with Laughing Pizza private, building her career from the ground up. She briefly attended Belmont University before diving headfirst into the city’s vibrant songwriting community. 

 

Emily worked at the iconic Bluebird Cafe and co-wrote tirelessly, honing her craft and immersing herself in music. A chance meeting with Grammy-winning songwriter Liz Rose at Eddie’s Attic proved pivotal. Liz invited Emily to her house to write, introduced her to Nashville’s tight-knit songwriting circle, and encouraged her to pursue her dreams.



In October 2017, Emily signed with Prescription Songs, marking the start of a prolific professional songwriting career. Her collaborations span a wide range of artists, including Andy Grammer, Joy Oladokun, Anna Clendening, Gryffin, Abby Anderson, carobae, Miki Ratsula, Devon Gabriella, and Erika Jayne. Her work has also resonated across television and film, with placements on CNN, The Sex Lives of College Girls, The L Word, The Hills, Batwoman, and Teen Mom.



In March 2023, Emily met her co-producer, Daniel Dávila, when they were both asked to speak on a panel for a songwriting class at USC. Together, they created her debut EP, Nostalgia. For the first time, Emily felt there were stories only she could tell, and this collection reflects her unique voice as a storyteller. Nostalgia is a testament to Emily's growth and artistic vision. 

 

The title track is a tribute to the childhood she longed for but never truly had, blending wistful dreams with the heartbreak of growing up. 

 

The heartfelt single "Next Time" captures the aching simplicity of missing someone in the everyday — the phone calls, the movie nights, the casual presence that lingers long after they’re gone. 

 

The song imagines a softer ending, a next life where nothing is rushed and reunion is possible. Writing it helped her process the kind of grief that doesn’t go away, but also the kind of love that never does either. Her new EP 『Nostalgia 』is out now worldwide.


 

コロラドを拠点に活動するシンガーソングライター、Sarah Banker(サラ・バンカー)が新作EP『Into the Heart』をリリースした。くつろいだ感じのポップスで、邦楽がお好きな方にもおすすめです。下記よりEPの収録曲「COCKADOODLEDOO」のミュージックビデオをご覧ください。

 

本作はレジリエンス(回復力)を中心とする変容的な歌のコレクション。生き生きとした4曲入りのフォーク・ポップEPは、コロラド州インディアンピークス荒野の標高9,000フィートの歌手のスタジオで、ジェフ・フランカ(Thievery Corporation)がレコーディングとプロデュースを手がけた。その結果、感動的で、音に遊び心があり、オーガニックな音楽の旅が生まれた。

 

サラ・バンカーは、コロラドの山奥を拠点に活動するハートフルなシンガー・ソングライターである。幼少期に演劇作品に出演した経験からさまざまなインスピレーションを得たサラは、文化人類学の学位取得後、ギターを学び、ソングライティングを通して自分の本当の声を見出した。

 

ギターを始めてわずか3ヶ月で、初めてのギター・パフォーマンスを経験。すぐに夢中になった彼女は、1年半後、持ち物のほとんどを売り払い、バックパックとギターだけを持って旅に出かけた。探検と好奇心の旅は、ハワイのジャングルから太平洋岸北西部の森、ユタ州南部の砂漠、コロラド州の山頂まで及んだ。



サラ・バンカーの能力は、シンプルでありながら表現力豊かな歌詞で複雑な感情を捉えることで、彼女の音楽全体に一貫した強みを生み出している。彼女の曲は普遍的であると同時に、深く個人的な感情を感じさせ、リスナーを内省させ、癒し、これから起こることを受け入れるよう誘う。

 

最終的に彼女の音楽的意図は、音を通して光と愛の源となること。彼女はまた、自分の音楽が、他の人たちが自分自身のベスト・バージョンになるよう鼓舞することを願っている。

 

「あなたは一つ、自分の人生を切り開くために必要なものをすべて自分の中に持っているのだから」とサラは言う。

 



「COCKADOODLEDOO」- EP『Into The Heart』に収録

 

 

 

Sarah Banker is a heartfelt singer/songwriter based in the mountains of Colorado. Drawing inspiration from her childhood experiences performing in theatrical productions, Sarah found her true voice through songwriting after learning guitar, following her degree in Cultural Anthropology. 

 

After only three months of playing, she had her first guitar performance. Instantly hooked, 18 months later, she sold most of her belongings and set out on the road with just a backpack and her guitar. 

 

Her journey of exploration and curiosity has taken her from the jungles of Hawaii to the forests of the Pacific Northwest, down to the deserts of southern Utah, and up to the peaks of Colorado—each place influencing her musical releases and touching others along the way.



Her new EP, Into the Heart, is a collection of authentic and transformative songs centered around resilience. The vibrant four-song folk-pop EP was recorded and produced by Jeff Franca (Thievery Corporation) in his studio, at 9,000' feet elevation in the Indian Peaks Wilderness in Colorado. The result is a musical journey that is touching, sonically playful, and organic.



Sarah Banker's ability to capture the complexity of emotions in simple yet expressive lyrics is a consistent strength across her music. Her songs feel both universal and deeply personal, inviting listeners to reflect, heal, and embrace what’s to come.



Ultimately, her musical intention is to be a source of light and love through sound. She also hopes her music inspires others to be the best version of themselves, sharing, "You are the ONE, the one who has the potential to make the changes that lead to a fulfilling life experience. You have everything you need within you to take charge of your life."

 

 

 


ジャスティン・ヴァーノンはアップル・ミュージックのゼイン・ロウとの対話の中で、新作アルバム『The SABLE, fABLE』の制作時にスウィフトと仕事をすることになった経緯について胸中を明らかにした。


ロウがヴァーノンにテイラー・スウィフトと仕事をするのはどんな感じだったかと尋ねると、彼は彼女のCOVID時代のアルバム『Folklore』でコラボレーションするため、ザ・ナショナルのアーロン・デスナーに手を差し伸べた「勇気」を賞賛した。 

 

ロックダウンの危機に瀕していたヴァーノンは、ギターの代役としてデスナーを起用したとき、隔離の1ヶ月前にボン・イヴァーとヨーロッパ・ツアーに出ようとしていたと語った。計画では、デスナーがDJを務め、ボン・イヴェールのアリーナ・セットの前に、ヴァーノンと長年コラボレートしている彼のサイド・プロジェクト、ビッグ・レッド・マシーンの曲のデモを流す予定だった。 

 

COVID-19の流行により、ツアーはキャンセルされたため、当時多くのミュージシャンがそうであったように、デスナーはインスタグラム・ライブでファンのために未発表曲をオンエアした。


「すべての栄光は、ソングライターとして、彼女が作りたい音楽を聴いたテイラーにある。 しかし、これらの曲の核心はビッグ・レッド・マシーンのデモで、アーロン・デスナー(The National)という天才と協力し、彼女がかつて手にしたことのない最強の歌詞とソングライティングを作り上げた」


ジャスティン・ヴァーノンは、この世界的なポップ・アイコンが 「我々の全宇宙に入り込んでくるのを目の当たりにして魅了された」と語った。 ヴァーノンは、スウィフトと彼らの控えめなインディーズ・サイド・プロジェクトとのコラボレーションが完璧に理にかなっていることに気づき、まばたきが止まらないような感覚を覚えたと語った。


「アーロンがこの何年もの間、私に示してくれた愛とコミュニティ...。テイラーはまさにそこに足を踏み入れて、完璧にそれを受け止めていた」とヴァーノンは語り、「その過程でアーロン・デスナーが電話をかけてきて、スウィフトが彼に歌って欲しいトラックがあるかと言った」と付け加えた。 『テイラーだって?』ヴァーノンは、スウィフトがビッグ・レッド・マシーンの曲を聴いて作曲しているとデスナーが説明すると、驚きのあまり聞き返したという。


スウィフト、デスナー、スウィフトの元恋人で俳優のジョー・アルウィン(ウィリアム・バウリーというペンネームで)と共に、この曲で共作クレジットを持つことになった経緯について、ヴァーノンはこう語っている。 「この曲は、僕の小さな間に合わせのスタジオで、SM7を使って歌った。 この曲は、本当に特別な曲で、人気のある曲なんだ。でも、とても自然に感じられたし、このような素晴らしいアーティストと仕事ができたことに心から感謝をしているよ」