アルバムはシンセの壮大なインスト曲「Intro」で始まり、ソングライターとしての成長を印象付ける「I Just Do」が続く。心地よい8ビートにインディーロックのラフなバッキング・ギター、そしてベッカ・ハーヴェイの内省的なボーカルが徐々にドライブ感を帯び、サビの箇所で轟音性を増す。そしてそれはセンチメンタルな雰囲気がありながらも、若い年代のシンガーらしい純粋な感覚を表現していて、聴いていて何か爽快感やカタルシスをもたらす瞬間がある。このアルバムでは痛快な轟音のインディーロックが強い印象をはなつ。レーベルの契約と合わせて発表された「Champ」はベタであることを恐れず、ロックソングの本来の輝きを放つ。シューゲイズの響きとグランジの重さがこの曲のロック的な魅力を強調している。使い古されたと思えるようなロックの手法もベッカ・ハーヴェイの手にかかると、新鮮な音楽に生まれ変わる。「Champ」はギターソロが力強い印象を放ち、雄大なイメージを呼び覚ます瞬間がある。
従来のインディーポップ風の曲も収録されている。「In My Eyes」はドリーム・ポップ風の曲であるが、ハーヴェイのボーカルはこの曲に切ないエバーグリーンな感覚を添えている。過去の数年間を振り返るようなポップソングで憂いや悲しみをアンニュイなポップソングとして昇華している。その後、このアルバムの音楽はやや夢想的になっていき、同レーベルのデュオ、Widowspeakにも似たセンチメンタルなインディーロックソングへと傾倒していく。そしてセンチメンタルであることを恐れないという点にソングライターとしての力強さが宿っている。「Windows」、「Since April」はそれほどオルタナティヴロックファンにも詳しくないリスナーにも琴線に触れるものがあるに違いない。それはソングライターとして感覚的なもの、一般的には見えにくいエモーションを歌で表現することにガールパピーは長けているからである。
本作の音楽はゆっくりと歩きだしかと思うと、徐々に走りが軽快になっていき、クライマックスでそれらが軽妙な感覚に変わる瞬間がある。それらは過去の傷ついた心を癒やすような優しさに満ちている。人間としての成長が断片的に描かれ、それらがスナップショットのように音楽に収められている。シンガーとしてはそれらの過去を振り返りつつも、別れを爽やかに告げるという瞬間が織り交ぜられている。それはまた過去に浸らず、次の未来へとあるき出したということだろう。終盤の収録曲に聞かせる部分が多い。「Beaches」はアメリカーナやカントリー/フォークをポップの側面から解釈し、聴きやすく、つかみやすい曲である。特にシンパシーを超えたエンパシーという感覚が体現されるのが「I Was Her Too」だ。サッカー・マミー、MOMMAといったトレンドのロックシンガーの音楽をわずかに彷彿とさせる。その一方で、エモに近い雰囲気が立ち込め、それらがドラムやシンセストリングスの演奏により、ドラマティックな空気感を帯びる。そして、なかなか表しがたい内在的な感情性をロックソングに体現させている。この曲はガールパピーの象徴的な一曲が生み出されたと見ても違和感がないように思える。
ガールパピーは、TilTokなどのカルチャーの波に乗り、それらをベッドルームポップの系譜にある軽快なロックソングに落とし込んでいる。しかし、その中には個性的な雰囲気が漂い、それが『Sweetness』の潜在的な魅力となっている。それほど肩ひじを張らず気楽に楽しめると思いますが、一方でポストパンクからの影響も読み解ける。例えば、「For You Two」は象徴的な一曲で、ドライブ感というパンクの要素が聴きやすく甘いポップセンスと融合している。これらはパワーポップとまではいかないものの、 それに似た甘く切ない雰囲気に満ちている。言葉で具象化することの難しい感覚を表すのがロックソングの醍醐味であるとすれば、『Sweetness』はその一端を味わえる。そして実際なんらかのカタルシスをもたらすはず。クローズ「I Think Did」はアコースティックギターをメインにした開放的なフォークポップ。ロックソングの音楽性が瞬間的なものであるがゆえか、アルバムを聴いた後に切ない余韻を残す。
2023年、LeviはあるコンサートでプロデューサーのYoel Kreisler、通称'FRAYMES'と出会い、セレンディピティな瞬間を経験した。 すぐにクリエイティブなつながりと友情が生まれ、ふたりはスタジオに入った。 私たちは音楽と影響を交換し始め、この新しい音楽をレコーディングするための新しい方法を構想し始めた。 この新しいコラボレーションの結果であり、最初の試みがシングル "Whole As A Broken Heart "である。
彼の新しいシングル "Healing Is Coming "は、「あらゆる障害に立ち向かい、人生の計り知れない真実に立ち向かい、暗闇に立ち向かい、私たちのユニークな魂の光をもたらし、蛇の目を見据える、降伏と勇気の歌です」とリーヴァイは語っている。
「Healing Is Coming "では、ぶつかり合うギターに乗せて、リーヴァイの紛れもないヴォーカルがフィーチャーされている。 魂を揺さぶる繊細なハーモニーが曲に華を添え、美しさとほろ苦さが同居するフォーク・ポップに仕上がっている。
Levi Robin's journey of exploration and curiosity has taken him down many roads. The soul-baring folk artist’s distinctive musical style combines deeply personal and transformative lyrics with emotive stirring vocals, creating a sound that is filled with meaning and connection.
Growing up in Orange County, California, as a teenager Levi became deeply dissatisfied with what he and many describe as “the conveyor belt trajectory of the school system.” With nothing but a shirt on his back and guitar in hand, he took a chance on a different path - a musical one. Levi confides, “From being a runaway to encountering eastern spirituality, from psychedelia to unearthing my own ancient Judaic roots, songwriting has been a uniquely integrating constant.” Songwriting became a powerful way to translate his deepest feelings into melody and verse. Taking inspiration from an eclectic array of artists including Bach, Stravinski, Mingus, Hendrix, Dylan, Beck, Gaye, D'Angelo and Radiohead, and more, Levi Robin creates his own mindful and genre-defying musical releases.
The artist first attracted attention in 2014, with the release of his debut self-titled EP as well as his subsequent tour with Matisyahu. Since then, he has shared a series of singles and albums, racking up over a million streams, garnering him a fanbase worldwide. In 2023, Levi experienced a serendipitous moment when he met producer Yoel Kreisler, aka 'FRAYMES', at one of his concerts. Sparking up an instant and immediate creative connection and friendship, the duo entered the studio. He shares, “We started trading music and influences, and began conceptualizing new ways of approaching recording this new music.” The result and first taste of this new collaboration is the single “Whole As A Broken Heart”.
His new single "Healing Is Coming", "is a song of surrender and courage, to face all obstacles, to face the ineffable truth of life, to face the darkness, to bring forth the light of our unique souls and look the serpent in the eyes," shares Levi. "Healing Is Coming" features Levi's unmistakable vocal hues over colliding guitars. Soul-baring delicate harmonies add to the song, creating a folk pop track that is equal parts beautiful and bittersweet.
ザ・ニュー・ポルノグラファーズがニューシングル「Ballad of the Last Payphone」をリリースした。 (楽曲のストリーミングはこちら)インディーロックをベースにした渋いトラックだが、コーラスワークや開放的な雰囲気を持つホーンセクションが異彩を放ち、この音楽を魅惑的にしている。
このシングルは、バンドが先月A.C.ニューマンのレーベル、Substackからリリースした限定7インチのA面で、レコードのみのB面「Ego Death for Beginners」も収録されている。 試聴は以下から。
1.CPR 2.liquidize 3.catch these fists 4.davina mccall 5.jennifer's body 6.mangetout 7.pond song 8.pokemon 9.pillow talk 10.don’t speak 11.11:21 12.u and me at home
10年後、ノルウェーのアーティスト、AURORAが彼女の楽曲「Through the Eyes of a Child」を再リリースした。デビュー・アルバム『All My Demons Greeting Me as a Friend』に収録されていたこの曲は、2016年のオリジナル・リリースから10年近くを経て、新たな命を得た。この曲のすばらしさを聴くと、のちのサクセスもうなずけるような内容である。
AURORAが「Through the Eyes of a Child」を書いたのは、主人公と同じ13歳のときだった。 『アドレセンス』のフィリップ・バランティーニ監督はソーシャルメディア上でこう語っている。「この曲を最後に使わなければならないことは、かなり早い段階からわかっていました! とても心にしみるし、力強いんだ」
BOY JR.はアリエル・アレン=ラブマン(they/them)のソングライティング&プロデュース・プロジェクトで、エレクトロニック、ポップ、インディー、パンクを融合させ、感染力のあるソングライティングとシャープなプロダクションで表現するクリエイティヴ・パワーハウスだ。
最新アルバム『I Love Getting Dumped! (2024年10月)は、傷心、ユーモア、自分探しのハイエナジーな探求である。 Galoreはこのアルバムを「魅惑的」と評し、「メインストリームとアンダーグラウンドの両方の音楽を愛するすべてのファンにとって必聴の一枚」と名付け、Earmilkはこの音楽を「衝撃的」と絶賛した。
DIYの大御所であるBoy Jr.は、全米の草の根ツアーのヘッドライナーを務め、The Living Tombstone、Lovejoy、KOPPS、Jhariah、Vial、Jerらとステージを共にしてきた。アリエルは音楽を超えて、若いクィアピープルの希望と抵抗の重要な代弁者となり、文化的・政治的な反発の中で自己表現を支持するために彼らのプラットフォームを利用している。
フレンチーのデビューアルバムは、そういった「自由貿易の時代の産物」である。「Can I Lean On You」ではUKソウルを下地にして、メロウなエレクトリック・ピアノがストリングスやリズムの輪郭を際立たせるドラム、そしてフレンチーのボーカル、そして同じように美麗なコーラスが溶け合い、重厚なソウルミュージックが作り上げられる。近年、米国のソウルはディープになりがちだが、フレンチーの音楽はどこまでも軽快でソフト。しかし、ニュートラルな音楽には陥らない。そして、それは何より、メロディーやリズムのセンスの良さだけではなく、ファンクの要素がポピュラーソングと上手く干渉し、ハイセンスなソウルミュージックが作り上げられていく。この曲はガール・レイのようなイギリスのバンド形式のソウルの録音の影響が含まれ、ソロシンガーとしての性質を保ちながら、バンドの音楽にもなっているのである。
結局、バリエーションという要素が曲の中で生きてくるのは、根幹となる音楽性がしっかりと定まっている場合に限定される。その点においてフレンチーは、バンドとともに本格派としてのソウルを構築している。アルバムの後半には遊び心のある曲が多い。「Shower Argument」はアコースティックギターを用いたボサを聴くことができ、小野リサのようなブラジル音楽を彷彿とさせる。かと思えば、音楽そのものは軽くなりすぎることはない。「It' Not Funny」ではしっとりしたピアノバラードを慎ましく歌い上げている。この点は、例えば、ブルーノートに所属するSSW、ノラ・ジョーンズのようなシンガーにも何か共鳴するものがあるのではないかと思う。
音楽が移り気になろうとも、全体の水準が下がらない。これはおそらく歌手としての卓越した才覚をさりげなく示唆しているのではないだろうか。「Que Je T'aime」はボサノヴァをワールドミュージックとして再考している。この曲ではゲンスブールのようなフランスの音楽を受け継いでいる。クローズもフレンチポップの気配が濃い。しかし、現代的なUKソウルの要素が音楽自体を前の時代に埋没させることがない。音楽が明るく、スタイリッシュな感覚に満ちている。
「何も起こっていないときでさえ、私は圧倒され目を覚まします。私は一日の残りを規制しようとする過ごしかた、たとえばそれは家で一人で自分の考えで行うのが好きです。しかし、なぜ? それらはほとんど悪いです。それらはまた、何十年も本当に変わっていません。私はこれらの孤立したループの1つに閉じ込められたまま「It's a Mirror」を書きました。何か違う、そしておそらく美しいものがそこにあるのを見ましたが、冒険する方法がよくわからなかった。ドアを閉めておく練習がもっとたくさんあります」
ハドレアスはエキセントリックなイメージを押し出すことが多かったが、今回のアルバムに関しては、ポピュラーミュージックの普遍的な側面を探求しているように感じられる。「No Front Teeth」のような曲は、パフューム・ジーニアスのインディーフォークソングのセンスが光る。奥行きのあるサウンド・ディレクションはもとより、70年代のカルフォルニアのバーバンクを吸収し、それらを現代的な作風に置き換えている。タンバリンのパーカションがシンセサイザーのストリングスと合致し、マイク・ハドレアスの甘い歌声と上手く溶け合っている。特に、NZのアルドゥス・ハーディングの参加も同様だが、ボーカル録音に特に力が注がれている。それらが重厚なバーバンクサウンドを思わせるバンドアンサンブルの中で精彩味を持つ瞬間がある。
本日、待望の4thアルバム『Portrait of My Heart』が発売される。パーソナルな意味を持つ『Portrait of My Heart』は、SPELLLINGの親密さとの関係を探求、エネルギッシュなアレンジとエモーショナルな生々しさを唯一無二の歌声と融合させ、画期的なかソングライターとしての地位を確固たるものにするラブソングを届けている。
クリスティア・カブラルがSPELLLINGとしてリリースした4枚目のアルバムで、ベイエリアのアーティストは、高評価を得ている彼女のアヴァン・ポップ・プロジェクトを鏡のように変化させた。 カブラルが『Portrait of My Heart』で綴った歌詞は、愛、親密さ、不安、疎外感に取り組んでいる。従来の作品の多くに見られた寓話的なアプローチから、人間の心情を指し示すリアリスティックな内容に変化しています。 このアルバムのテーマに対する率直さはアレンジにも反映され、SPELLLINGのアルバムの中で最も鋭く直接的な作品となっている。
初期のダーク・ミニマリズムから、2021年の『The Turning Wheel』の豪華なオーケストレーションが施されたプログレ・ポップ、それから新しい創造的精神の活力的な表現にいたるまで、カブラルはSPELLLINGが彼女が必要とするものなら何にでもなれることを幾度も証明してきた。推進力のあるドラム・グルーヴと "I don't belong here "のアンセミックなコーラスが印象的なタイトル・トラックは、このアルバムがエモーショナルな直球勝負に転じたことを強烈に体現しています。 メインのメロディが生まれた後、カブラルはこの曲をパフォーマーとしての不安を処理するツールとして使い、タイトでロック志向の構成を選びました。 この変化は、ワイアット・オーヴァーソン(ギター)、パトリック・シェリー(ドラムス)、ジュリオ・ザビエル・チェット(ベース)のコア・バンドによる、エネルギーと即時性を持つ幅広いシフトを反映させ、さらに彼らのコラボレーションがSPELLLINGサウンドの新たな輪郭を明らかにしている。
クリスティア・カブラルは現在でも単独で作曲やデモを行なっているが、『Portrait of My Heart』の曲をバンドメンバーに披露することで、最終的に生き生きとした有機的な形を発見した。それは彼女の音楽の共有をもとに、一般的なロックソングを制作するという今作のコンセプトに表れ出た。 『The Turning Wheel』のミキシング・エンジニアを務めたドリュー・ヴァンデンバーグ、SZAのコラボレーターとして知られるロブ・バイゼル、イヴ・トゥモアの作品を手掛けたサイムンという3人のプロデューサーとの共同作業に象徴されるように。
主要なゲストの参加は、音楽性をより一層洗練させた。 チャズ・ベア(Toro y Moi)は「Mount Analogue」でSPELLLING名義で初のデュエットを披露、ターンスタイルのギタリスト、パット・マクローリーは「Alibi」のためにカブラルが書いたオリジナルのピアノ・デモを、レコードに収録されているクランチーでリフが効いたバージョンに変え、ズールのブラクストン・マーセラスは「Drain」にドロドロした重厚さを与えた。 各パートはアルバムにシームレスに組み込まれているにとどまらず、アルバムの世界の不可欠な一部のようになった。
多数の貢献者がいたことは事実ですが、結局、『Portrait of My Heart』はカブラル以外の誰のものでもありません。 「アウトサイダーとしての感情、過剰なまでの警戒心、親密な関係に無鉄砲に身を投じても、すぐに冷めてしまう性格など、これまでSPELLLINGとしては決して書きえなかった自分自身の内面について、大胆不敵に解き明そうとした」とカブランは説明している。
SPELLLING 『Portrait of My Heart』- Sacred Bones
『Portrait Of My Heart』はジャズアルバムのタイトルのようですが、実際は、クリスティア・カブラルのハードロックやメタル、グランジ、プログレッシヴロックなど多彩な音楽趣味を反映させた痛快な作品です。ギター、ベース、ドラムという基本的なバンド編成で彼女は制作に臨んでいますが、レコーディングのボーカルにはアーティスト自身のロックやメタルへの熱狂が内在し、それがロックを始めた頃の十代半ばのミュージシャンのようなパッションを放っている。
また、その中には、ソングライターのグランジに対する愛情が漂うことにお気づきになられるかも知れません、Soundgardenのクリス・コーネルの「Black Hole Sun」を想起させる懐かしく渋いタイプのロックバラードも収録されている。音楽そのものはアンダーグランドの領域に近づく場合もあり、ノイズコアやグランドコアのようなマニアックな要素も織り交ぜられています。しかし、全般的には、ポピュラー/ロックミュージックのディレクションの印象が色濃い。四作目のアルバム『Portrait of My Heart』で、SPELLINGはロックソングの音楽に限界がないことを示し、そして未知なる魅力が残されていることを明らかにします。
アルバムはポスト世代のグランジに加えて、シューゲイズ/ドリーム・ポップのようなソングライティングと合致したタイトル曲「Portrait of My Heart」で始まります。曲はさほど真新しさはありませんが、宇宙的なサウンド処理がギターロックとボーカルの中に入ると、SF的な雰囲気を持つ近未来のプログレ風のポピュラーソングに昇華されます。また、例えば、ヒップホップで見受けられるドラムのフィルター処理や従来の作品で培ってきたストリングスのアレンジメントを交えて、ミニマルな構成でありながらアグレッシヴで躍動感を持つ素晴らしいロックソングを制作しています。
二曲目「Keep It Alive」は、詳しい年代は不明ですが、80年代のMTV時代のポピュラーソングやロックソングを踏襲し、オーケストラのアレンジを通して普遍的な音楽とは何かを探ります。 歌手としての多彩なキャラクターも大きな魅力と言えるでしょう。この曲のイントロでは10代のロックシンガーのような純粋な感覚があったかと思えば、曲の途中からは大人なソウルシンガーの歌唱に変貌していく。曲のセクションごとにボーカリストとしてのキャラクターを変え、曲自体の雰囲気を変化させるというのはシンガーとしての才質に恵まれたといえるでしょう。
「Waterfall」は、ホイットニー・ヒューストンの系譜にある古き良きポピュラーソングに傾倒している。簡素なギターロックソングとしても存分に楽しめますが、特にボーカルの音域の広さが凄まじく、コーラスの箇所では3オクターブ程度の音域を披露します。そして、少し古典的に思えるロックソングも、Indigo De Souzaのようなコーラスワーク、それから圧倒的な歌唱力を部分的に披露することで、曲全体に適度なアクセントを付与している。ストレートなロックソングを中心にこのアルバムの音楽は繰り広げられますが、他方、ソウルやポピュラーシンガーとしての資質が傑出しています。ボーカルを一気呵成にレコーディングしている感じなので、これが曲の流れを妨げず、スムーズにしている。つまり、録音が不自然にならない理由なのでしょう。また、曲自体がそれほど傑出していないにもかかわらず、聞きいらせる何かが存在するのです。
感情的には暗いものから明るいものまで多面的な心情を交えながら、 アルバムは核心となる部分に近づいていく。「Love Ray Eyes」は現代的なロックソングとして見ると、古典的な領域に属しているため、新しい物好きにとっては古いように思えるかもしれません。しかし、不思議と聴きのがせない部分がある。ギターのミュートのバッキングにせよ、シンプルなリズムを刻むドラムにせよ、ボーカリストとの意思疎通がしっかりと取れている気がします。そしてバンドアンサンブルとしてはインスタントであるにしても、穏和な空気感が漂っているのが微笑ましい。ストレートであることを恐れない。この点に、『Portrait of My Heart』の面白さが感じられるかもしれません。また、それは同時に、クリスティア・カブラルの声明代わりでもあるのでしょう。
「Land Of The Tyrants」はダークなシンセから始まり、アップテンポなダンサンブルなヒップホップナンバーへと変化していく。極限までBPMを早めた「The Victory Lap」でグライムコアの新境地に達する。シンプルな4つ打ちのハウスにリズム的な工夫を凝らし、新時代のEDMを作るべく苦心している。これは彼らがKilling Jokeのようなリズム的な革新性を追求していることの表れでもある。さらにこのアルバムはデビュー時のノイズコアのヘヴィーなイメージを突き出した「Lies And Fear」で最高潮を迎える。この曲はグラストンベリーのライブでも披露された。
最後は、ジャズ・バラードのような要素がオルガンの演奏と組み合わされて、「Burnt Out Family Home」という楽曲が確立している。この曲ではボーカルが少しメロディアスになりつつある。これから非音楽的な領域を抜け出して、新しいベネフィッツに生まれ変わるという事もありえる。今回のアルバム『Constant Noise』は、曲を寄せ集めたアンソロジーのような雰囲気になったのが少し惜しかった。それでも、相変わらず才気煥発なセンスがほとばしる。そしてまだキングズレイの言葉には力がある。もし、アルビニがまだ生きていて、ベネフィッツの2ndアルバムを聴いたら、なんと感想を漏らすだろう。''それほど悪くはないね''と言うような気がする。