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©︎David Racchuglia

 

米国のアーティスト、美術教育者、ミュージシャン、Lonnie Holley(ロニー・ホリー)がニューアルバム『Oh Me Oh My』のリリースを発表しました。

 

3月10日にJagjaguwarからリリースされるこのアルバムは、Jacknife Leeがプロデュースし、R.E.M.のMichael Stipe、Moor Mother、Bon Iver、Sharon Van Etten、Jeff Parker、Rokia Honéがゲスト参加しています。(各種ストリーミングはこちらから)


「私のアートと音楽は常に私の周りで起こっていることと密接に結びついていて、ここ数年は考えさせられることがたくさんありました」と、ホリーはプレスリリースでアルバムについて述べています。


「これらの曲を聴き返すと、私たちが生きていた時代を感じることができます。曲を形にするのを助けてくれて、自分の中を深く掘り下げるように仕向けてくれたコラボレーター、特にジャックナイフに深く感謝している」


 



Lonnie Holley 『Oh Me Oh My』

 


Label: jagujaguwar


Release Date: 2023年3月10日


Tracklist:


1. Testing

2. I Am A Part Of The Wonder [feat. Moor Mother]

3. Oh Me, Oh My [feat. Michael Stipe]

4. Earth Will Be There [with Moor Mother]

5. Mount Meigs

6. Better Get That Crop In Soon

7. Kindness Will Follow Your Tears [feat. Bon Iver]

8. None Of Us Have But A Little While [feat. Sharon Van Etten]

9. If We Get Lost They Will Find Us [feat. Rokia Koné]

10. I Can’t Hush

11. Future Children


Pre-order:

https://lonnieholley.ffm.to/oh-me-oh-my

Drew Wesely 「Blank Bldy」 

 

 

Label: Infrequent Seams

 

Release: 2022年11月18日


Genre: Experimental Music/Noise Avant-garde



Listen/Buy



Review 

 

レビューのご依頼を頂いたので、ニューヨークの実験音楽家、Drew Weselyの最新作「Blank Bldy」の批評を以下に掲載します。

 

ニューヨークには、パーカッション奏者、Eli Keszlerをはじめ、秀逸な実験音楽家が数多く活躍してします。そのアバンギャルド・ミュージックの聖地とも言える場所から登場したのが、Drew Weselyで、革新的な音楽家の一人に挙げられるでしょう。プリペイド・ピアノを発明したことで有名なジョン・ケージは、ピアノの弦に金属片を施し、ピアノの音の発生の意義を覆しましたが、つまりDrew Weselyは、そのプリペイドの手法をギターで試みようというのです。

 

プレスリリースによると、「Blank Body」 は、Drew Weselyによるインターメディア・オーディオビジュアル作品で、プリペイド・ギターを通じての即興演奏が行われています。つまり、音楽を1つの表現性から開放し、音楽の持つ可能性を拡張した作品であり、オーディオとビジュアルの融合という効果を意図したアルバムのようです。実際、アートブックには、半透明のページから構成され、映画の個別ビジュアルのような視覚効果を有しています。例えば、フランスで活動する池田亮司は、音楽とインスタレーションの融合というテーマを掲げていますが、Drew Wesleyも同じく、音楽をより広い表現へと解放するという手法をこの作品で探究しています。実際の音楽と合わせて、これらのアートブックを眺めると、驚くような効果があるかもしれません。

 

実際の音楽についても言及しておくと、「Blank Bldy」の収録楽曲は、アヴァンギャルド・ミュージックの領域にあり、また、偶然に生み出された音をピエール・シェフェールの考案したミュージック・コンクレートの技法を取り入れることにより、断続的な音楽として組み上げています。つまり、デビュー・アルバム「Blank Bldy」の重点は、チャンス・オペレーションとミュージック・コンクレートの融合にあるといえるでしょう。ついで、Drew Weselyは、ギターという楽器をパーカッションとして解釈しているように見受けられる。ギターの弦を調整し、パーカッションに近い特異な音の響きを生み出し、そして、その不可思議な音響に加え、チベット・ボウルのようなパーカッションを導入する場合もある。これらの近代の実験音楽のアプローチを駆使することにより、ノイズ・ミュージックに近い手法を生み出しています。これらの音響学としての興味の反映については、贔屓目に見ても聞きやすい形式とは言い難いですが、他方、ジョン・ケージの最初期のチャンス・オペレーションのように先鋭的な手法が取り入れられており、音響学としての面白さを見出すことも出来るはずです。

 

「Blank Bldy」の音楽には、チャンス・オペレーションを通じて解釈されるカール・シュトックハウゼンのセリー主義の影響も見受けられ、それは12音技法の音符の配置とはまた異なる形式、「1つもまったく同じ音が発生しない」という概念によって支えられているように思える。つまり、このデビュー・アルバムを聴くことは、同じプリペイド・ギターの音が空間中に発生したように見えたとしても、その中に、1つたりとも、同じ形質の音は存在しないという事を発見することでもある。他にも、収録楽曲の中には、チベット・ボウルのようなパーカッションが導入され、これが、チベット密教のマントラのような異質な雰囲気に彩られています。実際のマントラの言葉はないものの、何かしら、東洋的なアンビエンスを至るところに見出す事もできるかもしれません。

 

また、これらのアヴァンギャルド・ミュージックは、未知なる音響との邂逅とも言える。実際のオーディオ・ビジュアル(アートブック)と合わせて聴いてみると、さらにストーリー性が加味され、製作者の意図することがより理解出来るようになるかもしれません。総じて、Drew Weselyのデビュー・アルバム「Blank Bldy」は、正直なところ、まだ作品という面ではいささか物足りなさを感じますが、プリペイド・ギターというこれまで存在しえなかった前衛的な技法を生み出したことに関しては素晴らしい。これらの音楽的な手法が後にどのような音楽形式として発展していくのか心待ちにしたいところです。また、実験音楽家、Drew Weselyは、まだ詳細についてはわからないものの、2023年に日本で公演を予定しているとのことで楽しみです。
 
 
下記に英語の翻訳文を掲載しておきます。細かな文法の間違い、スペルの誤りについてはご容赦下さい。

 


75/100

 

 

 

 

Translation In English

 

 In response to your request for a review, we are pleased to offer the following review of New York experimental musician Drew Wesely's latest work, "Blank Bldy".

 
New York City is home to many outstanding experimental musicians, including percussionist Eli Keszler. From the mecca of avant-garde music comes Drew Wesely, one of the most innovative musicians of all time. John Cage, famous for inventing the prepaid piano, overturned the significance of sound generation on the piano by inserting metal strips into the piano strings, and Drew Wesely is attempting that same prepaid technique on the guitar.

 
According to the press release, "Blank Body" is an intermedia audiovisual work by Drew Wesely, improvising through a prepaid guitar. In other words, the album seems to be an album intended to have the effect of merging audio and visuals, a work that opens music from one expressive form to another and expands the possibilities of music. In fact, the art book consists of translucent pages and has a visual effect similar to that of individual visuals in a movie. For example, Ryoji Ikeda's theme is the fusion of music and installation, and Drew Wesley similarly explores the technique of releasing music into a broader expression in this work. Viewing these art books in conjunction with the actual music may have a surprising effect.

 
To mention the actual music, the compositions in "Blank Bldy" are in the realm of avant-garde music, and by incorporating the technique of "music concrète", devised by Pierre Scheffert, the accidentally created sounds are assembled into intermittent The music is assembled as intermittent music by incorporating the technique of music concrète, a technique developed by Pierre Henri Marie Schaeffer In other words, the emphasis of the debut album "Blank Bldy" is on the fusion of chance operations and music concrete. Secondly, Drew Wesely appears to interpret the guitar as a percussion instrument. By rubbing the strings of the guitar together, he creates a peculiar percussion-like sound, and then, in some cases, introduces percussion such as Tibetan bowls to add to the mysterious acoustics of the instrument. These modern experimental music approaches are used to create a technique that is similar to noise music. Regarding the reflection of these interests as acoustics, it is difficult to say that the format is easy to listen to in a patronizing way, but on the other hand, it incorporates radical techniques such as John Cage's earliest chance operations, and it should be possible to find some interest in it as acoustics.

 
The music of "Blank Bldy" also shows the influence of Carl Stockhausen's "Selialism", interpreted through chance operations, which seems to be supported by a different form from the arrangement of notes in the 12-tone technique, the concept that "no two notes are exactly alike. It seems to be supported by a form different from the arrangement of notes in the twelve-tone technique, the concept that "no two notes are exactly alike. In other words, to listen to this debut album is to discover that even though the same prepaid guitar sounds seem to occur throughout the space, no two of them are identical. Other percussion, such as Tibetan bowls, are introduced in the recorded music, and this is colored by the alien atmosphere of a Tibetan esoteric mantra. Although there are no actual words of the mantra, one may find some kind of oriental ambience throughout.


These avant-garde music pieces can also be described as encounters with unknown acoustics. Listening to them together with the actual audio visuals (art book) may add even more storytelling and help us better understand what the producers intended. All in all, Drew Wesely's debut album "Blank Bldy" is, to be honest, still somewhat underwhelming in terms of production, but it is great for its creation of prepaid guitar, an avant-garde technique that could not have existed before. I look forward to seeing how these musical techniques will develop into musical forms in the future. We are also looking forward to seeing experimental musician Drew Wesely, who is planning to perform in Japan in 2023, although details are not yet available.Thank you so much,Drew Wesely!!

 

Kali Malone


    本日、デジタルストリーミングのみで公開された「Does Spring Hide Its Joy v2.3」は、同名の映像作品のために提供された。アメリカ人実験音楽作曲家、Kali Malone(カリ・マローン)による没入型オーディオ体験で、スティーブン・オマリーとルーシー・レイルトンがミュージシャンとして参加しています。

 

4日間にわたるマルチチャンネル・サウンド・インスタレーションで、バーケンヘッド・ドックにある水圧塔とエンジンハウスで、深いリスニング環境が提供される。

 

『Does Spring Hide Its Joy』は、2020年春のロックダウンの期間中に、空のベルリン・ファンクハウス&モノムで制作・録音された。音楽は、7進数のジャスト・イントネーションとビートの干渉パターンに焦点を当てた、長尺の非線形デュレーション作曲の研究である。その長さは22分にも及び、これまでのこのアーティストと同様、ドローンの音響の可能性を追求している。 

 


    この映像作品に登場する1868年にエンジニアのジェシー・ハートリーによって設計された中央水力塔とエンジンハウスは、イタリアのフィレンツェにあるルネッサンス期の洞窟、パラッツォ・ヴェッキオを基にしている。

 

 

 

第二次世界大戦中に爆撃され、19世紀の象徴的なグレードII指定建造物は、何十年も使用されないまま放置されてきました。この産業エネルギーの空っぽの部屋で、マローンのデュレイショナル・コンポジションは、多孔質のレンガの壁を通して呼吸し、蛇行し、ドックランドの水面に向かって反響しています。

 

映像監督のコメントは以下の通り。


  「私は、この作品に付随するフィルムを監督しました。バーケンヘッド・ドックの水圧塔とエンジンハウスの廃墟を撮影し、自然が静かにその権利を取り戻したこの工業地帯の震えるような肖像画を作りました。
私は、カメラの熱っぽい動きと彷徨によって、この荒涼とした空間に人間の存在を導入しようとした。建物を巨大な空の骨格として撮影するだけではなく、建物や崩壊した屋根、穴、床に散らばる苔や瓦礫、焼けた木片、そしてこの廃墟を彼らの王国としたすべての生き物たちと一緒に撮影しようとしたのである」


    この映像作品『Does Spring Hide Its Joy』は、Abandon Normal Devicesの依頼を受け、アーツカウンシル・イングランドの資金援助を得て、オイスター・フィルムズが配給している。助監督はスウェットマザーが担当。

 

映像作品の公開は未定となっている。


また、Kali Maloneは新作アルバム『Does Spring Hide Its Joy』のリリースを発表しました。この新作は来年の1月20日にリリースされる。

 

Ideologic Organは、Kali Maloneの新しいアルバムDoes Spring Hide Its Joyを、2時間のLP盤、3時間のCD盤、そして全てのデジタルフォーマットでお届けすることを嬉しく思います。


『Does Spring Hide Its Joy』は、作曲家Kali Maloneによる没入型の作品で、Stephen O'Malley(エレキギター)、Lucy Railton(チェロ)、そしてM Malone自身が調律したサイン波オシレーターを使用しています。この音楽は、ハーモニクスと非線形作曲の研究であり、イントネーションとビートの干渉パターンに焦点を当てたものです。パイプオルガンの調律、和声理論、長時間の作曲の経験が、この作品の出発点となっています。彼女のニュアンスに富んだミニマリズムは、驚くべき焦点の深さを展開し、リスナーの注意の中に瞑想的な空間を切り開くのです。

 
『Does Spring Hide Its Joy』は、マローンの絶賛されたレコード『The Sacrificial Code [Ideal Recordings, 2019] & Living Torch [Portraits GRM, 2022]』に続く作品である。彼女のコラボレーション・アプローチは前作から拡大し、ミュージシャンのスティーヴン・オマリー&ルーシー・レイルトンを作品の制作と発展に密接に巻き込んでいる。音楽はマローンのサウンドパレットでありながら、彼女はオマリー&レイルトンのユニークなスタイルとテクニックのために特別に作曲し、音楽全体に主観的解釈と非階層的な動きのためのフレームワークを提示します。


Does Spring Hide Its Joyは、チェロ、サイン波、エレクトリックギターの間でゆっくりと進化するハーモニーと音色を追った、長さを変えられる持続的な体験です。リスナーとしては、これらの分岐点の間の移行を特定することは困難である。エレキギターの飽和した音色とチェロの豊かな周期性が混ざり合い、正確なサイン波に対して倍音のフィードバックが干渉パターンを描き、楽器編成や演奏者のアイデンティティは不明瞭でありながら統一されている。エレキギターの飽和するような音色とチェロの豊かな周期性が混ざり合い、正確なサイン波に対して倍音のフィードバックが干渉し合い、緩やかながらも常に起こり続けるハーモニーの変化は、聴き手の静と動の感覚を挑発する。音楽を把握した瞬間、わずかな視点の変化により、新たなハーモニーの体験へと注意が導かれる。


『Does Spring Hide Its Joy』は、2020年の3月から5月にかけて制作されました。パンデミックのこの不穏な時期に、マローンはベルリンで、新しい作曲方法を考えるための多くの時間と概念的空間を手に入れた。

 

現地に残っていた数名のインターン生とともに、MaloneはBerlin Funkhaus & MONOMに招かれ、誰もいないコンサートホール内で新しい音楽を開発し、レコーディングすることになりました。この機会に、彼女は親しい友人であり、コラボレーターでもあるルーシー・レイルトン、スティーブン・オマリーとともに小さなアンサンブルを結成し、それらの様々な音響空間の中で、これらの新しい構造的なアイデアを探求することにしました。そして、Does Spring Hide Its Joyの基礎が築かれたのです。



カリ自身の言葉を借りれば 「世界中のほとんどの人と同じように、私の時間に対する認識は、2020年の春の大流行の閉塞感の中で、大きな変容を遂げました。慣れ親しんだ人生の節目もなく、日や月が流れ、本能的に混ざり合い、終わりが見えなかった。時間が止まっているのは、環境の微妙な変化により、時間が経過したことが示唆されるときである。記憶は不連続に曖昧になり、現実の布は劣化し、予期せぬ親族関係が生まれては消え、その間、季節は移り変わり、失ったものはないまま進んでいく。この音楽を何時間もかけて演奏することは、数え切れないほどの人生の転機を消化し、一緒に時間を過ごすための深い方法だった」



『Does Spring Hide Its Joy』は、その後、ヨーロッパの多くの舞台で60分と90分のライブ演奏が行われた。チューリッヒのSchauspielhaus、ブリュッセルのBozar、ミュンヘンのHaus Der Kunst、オスロのMunch Museumなど、ヨーロッパの多くの舞台で60分と90分のライブ公演が行われました。

 

今後、クラクフのUnsound Festival、バルセロナのMira Festival、ヴェネツィア・ビエンナーレ、ロンドンのサウスバンク・センターのパーセルルームなどでのコンサートが予定されている。



ライブコンサートだけでなく、Funkhausで録音された『Does Spring Hide Its Joy』は、サイトスペシフィックなサウンドインスタレーションとして並行して展開されている。さらにマローンは、ビデオアーティストのニカ・ミラノを招き、楽譜を解釈し、第4の奏者として伴奏するアナログビデオ作品をカスタム制作し、作曲の音響原理からインスピレーションを得た視覚的雰囲気を作り上げました。ミラノの作品から8つの連続したビデオスチールがアルバムアートワークに採用されています。

 

 

Kali Malone 『Does Spring Hide Its Joy』

 

 

Label: Ideologic Organ

Release: 2023年1月20日

 

 

 Tracklist:

 

1.Does Spring Hide Its Joy v1.1

2.Does Spring Hide Its Joy v1.2

3.Does Spring Hide Its Joy v1.3

4.Does Spring Hide Its Joy v2.1

5.Does Spring Hide Its Joy v2.2

6.Does Spring Hide Its Joy v2.3

7.Does Spring Hide Its Joy v1

8.Does Spring Hide Its Joy v2

9.Does Spring Hide Its Joy v3

 


 Pre-order:

 

https://kalimalone.bandcamp.com/album/does-spring-hide-its-joy 

 

The Coutesy Of Artist


NYの声楽家/パフォーマー/演出家として世界的に活躍する、Meredit Monk(メレディス・モンク)が、本日、11月11日、ドイツのECMから13枚組のボックスセットをリリースした。このリイシューはこれまでのキャリアを総括する作品となり、アーティストの80歳の誕生日を記念して発売される。



作品紹介


モンクは、芸術の歴史において決して存在しなかった世界を描き出した。内臓と幽玄、生と歓喜が同居する彼女の作品は、都市生活の偽りの複雑さを追い払い、地下文明の一種を明らかにする。"時代を超えた力を歌い、踊り、瞑想する。

 

アレックス・ロス、『ニューヨーカー』誌


『ザ・レコーディングス』は、メレディス・モンクの80歳の誕生日に、これまでのECMニューシリーズの全ディスクをまとめたボックスセット・エディションである。ベルリンの壁崩壊以前のドイツで録音された1981年の『ドルメン・ミュージック』で、メレディスはECMの録音で初めて女性ボーカルのフロント・パーソンとなった。

 

本作に収録されているのは、「ドルメン・ミュージック」「タートル・ドリームス」「ドゥ・ユー・ビー」「ブック・オブ・デイズ」「フェイシング・ノース」「ATLAS」「ボルケーノ・ソングス」「慈悲、無常、ソングス・オブ・アセンション」「ピアノ・ソングス」「オン・ビハーフ・オブ・ネイチャー」といった名作アルバムである。どの作品も深い啓示に満ちています。

 

この美しいデザインのボックスセットには、オリジナルのライナーノーツに加え、新しいテキストやインタビューが300ページに及ぶブックレットとして収録されています。さらに、フランク・J・オテリによる紹介エッセイ「メレディス・モンクの世界」、メレディスの自伝的文章「魂の使者」、マンフレッド・アイヒャーによる序文が併録されています。


 



Meredith Monk 『The Recordings』




Label: ECM

Release: 2022年11月11日



 Official-order:


https://ecm.lnk.to/MeredithMonkTheRecordingsID




Meredith Monk  -Biography-



 作曲家であり歌手でもあるメレディス・モンクの作品は、常にカテゴライズされることを拒んできた。


 1964年に始まったプロとしてのキャリアを通じて、彼女は音楽やダンスだけでなく、映画、インスタレーション、サイトスペシフィック作品など、さまざまな分野で実験を行うだけでなく、頻繁に新しい道を切り開いてきた。特に、現在では学際的なパフォーマンスや拡張された声楽技法のパイオニアであり、「声の魔術師」と賞賛されている。

 

 メレディス・モンクは1942年にニューヨークで生まれ、サラ・ローレンス大学で学んだ。1960年代初頭、彼女は多面的な楽器としての声の探求を始め、ドローンを作り出し、モードを探求し、言葉を使わない発声をする能力を身につけた。その後、無伴奏の声や声とキーボードのためのソロ作品を数多く作曲し、演奏している。1968年、モンクは学際的なパフォーマンスを目的としたカンパニー、ザ・ハウスを設立し、その10年後、彼女の音楽のテクスチャーとフォームの幅をさらに広げるためにメレディス・モンク&ボーカル・アンサンブルを設立しました。

 

 『ドルメン・ミュージック』(1981年)以来、モンクはECMのニューシリーズで12枚以上の録音を行い、2008年のグラミー賞にノミネートされた『impermanence』や、モンクの初期の作品には珍しく声と楽器を組み合わせた高い評価を得た『Songs of Ascension』(2011年)などがあります。『ブック・オブ・デイズ』(1990)はECMのプロデューサー、マンフレッド・アイヒャーによって「耳のための映画」と評され、同名の映画に起源を持つ。『ピアノ・ソングス』(2014)は、ニューミュージックの最も優れた解釈者であるアメリカのピアニスト、ウルスラ・オペンスとブルース・ブルーベイカーの2人が演奏し、彼女の楽器による作品の、同時に直接的、特殊、想像的であまり知られていない側面に光を当てるものである。

 

 トム・サービスは、モンクの「並外れた叫び声や呪文のような言葉なきアクロバット」を賞賛し、彼女の偉大な功績はそれらを「完全に、自然で、中心的で、本質的な」ものにすることだと付け加えている。ワシントン・ポスト紙の言葉を借りれば 「独創性、範囲、深さにおいて、彼女に匹敵する者はほとんどいない。メレディス・モンクは、1995年のマッカーサー財団「ジーニアス」賞をはじめ、数多くの国際的な賞を受賞している。2015年にはホワイトハウスでオバマ大統領から米国の国家芸術勲章を授与された。


ECM 公式サイトより抜粋

 日本の電子音楽家/プロデューサー、蓮沼執太は、既に三作の 不定期シングルリリースプロジェクトの一貫として、11月4日にニューシングル「Irie」を発表している。

 

本楽曲は、蓮沼が制作したベーシックな電子音やギター演奏に、ジェフ・パーカーが自由に音をオーバーダブしていく過程で制作が行われた。タイトルの「Irie」は 日本語でいう「入り江」の意味する。陸地と海の境目を水がゆっくりと行き来するようなサウンド・スケープに仕上がったという。

 

 

蓮沼執太




 

 波打ち際を眺めながら、波音を聴いていて、「こんな音楽が作りたい」と思って、”Irie"の原型が出来たのですが、どうもしっくりきませんでした。そこで、僕が尊敬しているギタリスト、Jeff Parkerにギターで自由に音を入れて欲しいとお願いをしました。彼から届いた二種のレイヤーに分かれたギターの音色は、音楽の水面に波動を与えて、本当の「入り江」のようになって、楽曲に命を吹き込んでくれました。

 

 

Jeff Parker

 



 僕の友達から「Irie」でギターを弾いてくれないかと聞かれたときは、「一体、どんな音楽なんだろう? アンビエント、和声的、メロディアス、それともリズミカルな感じかな?」と興味が湧きました。「どんな音が聴き取れるんだろう?」なんてことも考えたり。Shutaの音楽がこれらすべての要素を含んでいることを知ったときにはとても驚きました。そして、今は彼の作り出す音楽的世界観の中で自分も演奏出来ることに感動しています。



蓮沼執太は、以前に、「Weather」「Pierrepont」「Hypha」と3つのシングルをリリースしている。新曲「Irie」はシングルリリースプロジェクトの4作目となる。

 

 

蓮沼執太(Hasunuma Syuta) 「Irie」   New Single


 

Label: Shuta Hasunuma

Release: 2022年11月4日


Tracklist:

1. Irie



 楽曲のご試聴/ダウンロード:

 

https://virginmusic.lnk.to/Irie


Kathryn Mohr 『Holy』 


 

 Label:  The Flenser

 Release: 2022年10月21日

 

Official-order


 

Review

 

 キャサリン・モーアは、この作品のレコーディングをニューメキシコの田舎で行い、アンビエントドローン、ローファイ、フィールドレコーディング、エクスペリメンタルミュージックと、多角的な音楽のアプローチを追求している。

 

アルバム制作の契機となったのは、サンフランシスコ海岸に打ち上げられた不可思議な浮遊物、その誰のものともつかない、どこから来たものとも解せないミステリアスなテーマを介して、この音の世界をひとつらなりの物語のように丹念に紡いでいきます。その中に、このアーティストなりの内的に収まりがつかないいくつかの抽象的な概念、人間という存在の儚さ、記憶の歪み、そしてトラウマがこの世界の体験をどのように変化するのかを追い求める音楽となっている。


 一曲目の「___(a)」という不可解な題名からして、グロッケンシュピールのような音色を交えたシンセサイザーのフレーズが展開され、それは際限のない抽象的な空間の中へとリスナーをいざなう。ミステリアスでもあり、なにか次のトラックの呼び水となり、さらにはEP全体のオープニングのようでもある。それを受けて展開されていくのは、意外にも暗鬱なスロウコアを彷彿とさせるローファイの世界。粗いギターの音色、そして同じようなコードを反復しながら、キャサリン・モーアはローファイ感のあるボーカルトラックを紡ぎ出している。それは、歌声を介して、これらの内的な不可思議な世界や、作品のテーマであるサンフランシスコの海岸に流れ着いたミステリアスな浮遊物の存在をおもむろに解き明かしていくかのようでもある。その雰囲気は、アンビエントとフォークの融合を試みている、ポートランドのGrouperのアプローチに比するものがありますが、キャサリン・モーアはコーラスの多重録音により、この楽曲に親しみやすさを与えている。

 

その後も、ミステリアスな世界はジャンルレスに続いていく。エレクトロニカ/フォークトロニカに近い「Red」では内向的な電子音楽の領域を探求する。ミニマルとグリッチとノイズの中間にあるこの三曲目でさらに、キャサリン・モーアは内側の世界へ、さらなる奥深い世界へと静かにその階段を降りていく。それはまるで、はてない内的な空間を切り開いていくかのようである。


そうかと思えば、次のタイトルトラックでは、Girl In Redのようなベッドルームポップ/ローファイの質感を持った親しみやすいボーカルトラックが提示されている。しかし、それらはやはりスロウコア/サッドコアのようにきわめて内省的なサウンドが繰り広げられ、淡々と同じコードが続き、また同じコーラスワークが続いていく。曲は単調ではあるのだが、不思議と飽きさせないような奥行きがあるように感じられる。

 

その後の一曲目と同系にある「___(b)」では、フィールドレコーディングで録音したと思われる大気の摩擦するような音だけが延々と再生される。これは、もしかすると、ニューメキシコの砂漠がちな大地で録音された音と考えられるが、わずか一分半の短いトラックは、この土地のワイルドな雰囲気を思わせるのみならず、際限のない空間がそれとは対極にあるコンパクトなサンプリングとして取り入れられている。これは、アンビエントともドローンともいえない、音楽の連想的な作用を生じされる特異なエクスペリメンタルミュージックである。


続く「Glare Valley」で、キャサリン・モーアは、モダンな雰囲気を持つ、ローファイ/インディーロックを展開させていく。ノイズを過度に施したエフェクト処理は、最近のハイパーポップへの傾倒も伺わせるが、おそらくキャサリ・モーアが追い求めるのは、この音楽に代表されるような脚色や華美さなのではなく、きわめて質朴で純粋な感覚である。キャサリン・モーアは、ただ、ひたすら、自分自身に静かに何度も何度も問いかけるように、内側の世界へとエレクトリックギターの弾き語りを通じ、抽象的な表現性の核心にこの音楽を通じて向かっていく。きわめて内省的で危うげな世界へ、このアーティストはおそれしらずに踏み入れ、内面を丹念に検めていくのだ。


EPのクローズとなる「Nin Jiom」では、再び、エレクトロニカの世界へと舞い戻る。これも「Red」のように、そつないミニマルミュージックではあるが、この中にもローファイなコーラスワークが取り入れられている。それは内面の感情をコーラスとして置換したかのように亡霊的な響きを持ち、聞き手をさらなるミステリアスな世界へ引き込んでいく。そして、それらの断続的な世界は、ふと、作品のクライマックスの語りのサンプリングにより途絶えてしまう。得難いことに、それまであった空間が、このサブリミナル効果のあるサンプリングにより一気に遮断されるのだ。きわめて部分的であり、瞬間的であり、感覚的であり、断片的でもある。そもそも、連続性という概念を、この作品全体の中で完膚なきまでに拒絶しているようにも見受けられるが、してみれば、それこそがこのアーティストが表現したかったなにかなのかもしれない。

 

総じて、この新作EP『Holly』は、ニューメキシコの砂漠地方の乾いた雄大な風景を思わせるとともに、内的な感覚を繊細かつ綿密に表現し、アーティストの心の中にわだかまる聖なるものと邪なるものの間で、たえず揺れ動くかのような作風となっている。しかしながら、作者は、常に、この形而下の狭間に落ち着かなく身を置きつつも、たしかに、聖なるもののほうへ魅力を感じており、そちらがわに引きずられようとしている。それが、本作のタイトルが『Holly』となった所以なのかもしれない。

 

これらの多次元的で分離的な作風が、より大がかりな形式のフルアルバムとなった時、どのような作品になるのだろうかと、「Holly」は大いに期待させてくれるものがある。今作は、耳の肥えた実験音楽のファンにとどまらず、ローファイのファンにとっても見逃せないリリースとなっている。



78/100




 


 フランスのミュージシャン、アーティスト、詩人として活動する、Merle Bardenoir(メル・バルドゥノワール)のプロジェクト、Glamourieがデビュー・アルバム『Imaginal Stage』をKalamine Recordsから9月24日にリリースしました。是非、下記よりチェックしてみて下さい。

 

Glamourieの音楽は、ほとんどがインストゥルメンタルで、プロジェクトを構成する幻想的なテーマの展開は、タイトルだけでなく、ビジュアルを通じても展開される。また、メル・バルドゥノワールは、画家/イラストレーターとしても活動しており、美しく幻想的なアートワークを幾つか製作しています。(アートワークの作品の詳細については、アーティストの公式ホームページを御覧下さい)

 

『Imaginal Stage』は、オーガニック・アンビエント、サイケデリック・フォーク、ポスト・ミニマリズムを融合した画期的な作風であり、どことなくエキゾチックな雰囲気を漂わせている。

 

この電子音響作品のタイトルは、昆虫の最終段階である”イマーゴ”に因んでいるという。この作品では、妖精のような雰囲気が、プログレッシブなレイヤーとヒプノティックなループを通して、音のさなぎから姿を現す。このアルバムには、ハンマーダルシマー、アルトフルート、幽玄な声、レゾナンスボックス、伝統的なパーカッションが含まれ、様々な電子効果が変換されている。

 

各トラックは、Merle Bardenoirによるオリジナルアートワークで描かれています。アルバムの楽曲はBandcampにてご視聴/ご購入することが出来ます。 アートワークとともに下記より御覧下さい。

 

 

 

 

 

『Imaginal Stage』 Artwork

 

 


 

グアテマラ出身、現在、メキシコシティで活動を行うチェロ奏者、Mabe Fratti(メイべ・フラッティ)は、10月14日に”Unheard of Hope”からリリースされるニューアルバム『Se Ve Desde Aquí』を発表しました。

 

そのファーストシングル「Cada músculo」が、Nika Milano監督によるビデオとともに本日リリースされました。以下でお楽しみください。


「Cada músculo」は、Mabe Frattiが世界がどのように形作られるかというメタファーを探求している。

 

あなたの人生、空間、私たちの周囲のあらゆる部分が自動的にあなたの一部となり、あなたが世界を経験し、感じ、それに伴い、あなたがどう変化するのかを表しています。ビデオでは、マイクロフォンをシンボルとして(空に見える)空間に声が与えられており、「すべての筋肉には声がある」という歌詞の中で言及しています。


フラッティは、このアルバムのサウンドを「あまり規則が守られていない」「生の美学、そして "汚さ "を通して知らされる」と表現している。

 

「レイヤリングはしたけれど、それはもっと特定の瞬間のもの。できるだけ生っぽくしたかったし、同じ楽器をオーバーダビングするのはできるかぎり避け、その過程で自分自身のルールを破るスペースを残したかった」

 


 

『Se Ve Desde Aquí』は、Frattiの2021年発表の2nd LP『Será que ahora podremos entendernos?』に続く作品となる。

 

 

 

Mabe Fratti      『Se Ve Desde Aquí』

 


 

Tracklist:

1. Con Esfuerzo
2. Desde el cielo
3. No se ve desde acá
4. Esta Vez
5. Cuestión de tiempo
6. Algo grandioso
7. Cada Músculo
8. Deja de empujar
9. Siempre tocas algo


 


日本のアンダーグラウンドミュージックの大御所ー灰野敬二、そして、カナダのヘヴィロックバンドーSUMACが、新たなコラボレーション・アルバム『Into This Juvenile Apocalypse Our Golden Blood to Pour Let Us Never』でタッグを組んでいる。


6つのエクスパンテッドバージョンとしてリリースされるこのアルバムは、2019年5月、バンクーバーのアストリア・ホテルで、前者の北米ツアー中に灰野敬二とSUMACが一度限りのパフォーマンスで集った際にレコーディングが行われた。この公演の前に "楽曲の方向性に関わる事前の話し合いや企画等は一切行われなかった "という。

 

『Into This Juvenile Apocalypse Our Golden Blood to Pour Let Us Never』は、2018年の『American Dollar Bill - Keep Facing Sideways, You're Too Hideous To Look At Face On』、そして、2019年の『Even For Just The Briefest Moment Keep Charging This "Expiation" / Plug In To Make It Slightly Better』に続く作品。灰野敬二とSUMACの共同フルアルバムとしては通算三作目となる。


アルバム『Into This Juvenile Apocalypse Our Golden Blood to Pour Let Us Never』、2022年10月7日にThrill Jockyからリリースされる。



Kali Maloneは、Portraits GRMから『Living Torch』と題された二曲収録の新しいアルバムを7月7日にリリースしました。

 

スウェーデン・ストックホルムを拠点に活動を行うカリ・マローンは、新世代のサウンド・アーティストであり、ポスト・ミニマル音楽の作曲家。 そして、西洋音楽を歴史を継承する現代音楽家で、2010年代のエクスペリメンタル・ミュージック・パフォーマーでもある。

 

2020年から2021年にかけて、フランス・パリのGRMスタジオで作曲された『Living Torch』は、トロンボーン、バスクラリネット、boîte à bourdon、Éliane RadigueのARP 2500シンセサイザーなどの電子音響アンサンブルが収録された作品で、2019年の『The Sacrificial Code』のフォローアップとなります。 

 

 





Kali Malone 「Living Tourch』




Tracklist:

1. Living Torch I
2. Living Torch II

坂本龍一とアルヴァ・ノトの2005年に発売されたコラボレーションアルバム「インセン」が、今年、7月下旬にNotonからリイシュー盤として再発される。

 

今回、発売が決定した「Insen」のリイシュー盤は、二人のコラボレーションアルバムの再発プロジェクト「V.I.R.U.S.」の第二弾となる。全ラインナップは、「Varioon」「Insen」「Revep」「Utp」「Summvs」。最初のリイシューとなる「Varicoon」は、5月下旬にリリースされており、「Insen」に後に、三作品の発売が年内に予定されています。また、各新装版はCD/LPとして再発され、オリジナル音源のリマスターバージョンに加え、未発表の音源も追加収録される。

 

今回、発売が公表された「Insen」のリイシューバージョンには、アルバムツアーのために作曲された未発表曲「Barco」が追加収録されている。世界的な音楽家のコラボによるグリッチテクノの普及の傑作の再発をお見逃しなく。 

 


 

7月29日のリリースに先立ち、Phonica Recordsにて予約注文が開始されています。

 

 


Ryuichi Sakamoto&Alva Noto 「Insen」 Reissue





Tracklist:

1. Aurora
2. Morning
3. Logic Moon
4. Moon
5. Berlin
6. Iano
7. Avaol
8. Barco


 Hatis Noit 「Aura」

 

 

 

 

Label:  Erased Tapes

 

Release Date:  2022年6月24日

 

 

ーロンドン、ミュンヘン、ネパール、フクシマーー異なる時間、異なる場所、それぞれに響く真摯な歌声ー

 

 

6月24日、Erased Tapesからリリースされたアルバム「Aura」は、現在ロンドンを拠点に活動するヴォーカルアーティスト、ハチス・ノイトの記念すべきデビュー作となります。

 

既に、ハチス・ノイトは、イタリアの新聞でアーティスト特集が組まれており、さらに、英国の隔月間マガジン、Loud&Quietの昨日付のレビューで、8/10の評価を獲得しています。さらに、現在、渋谷の街頭スクリーン9面にて、三年かけて制作されたMVがオンエアされている最中です。

 

不運にも、英国内の最大の音楽のお祭り「グラストンベリー・フェスティヴァル」とリリース日が重なってしまった事実は、それほど大きな問題とはならないはずです。「Aura」は、時間が経過したとしてもその良さが損なわれるような作品ではなく、時代の経過に耐えうるような普遍的な価値が込められている。ヴォーカルアートの美しさ、ライブに比する生彩感のある音楽性が貫かれた2022年最大の傑作のひとつに挙げられます。もちろん、タイトルは、20世紀のドイツの文芸評論家、哲学者としても活躍したヴォルター・ベンヤミンの名著「Aura」に依り、この著作に因むと、ハチス・ノイトのこのセンセーショナルな印象を持ったデビューアルバムには、複製品ではない、本物だけが持つ芸術作品のオーラが随所に込められている。少なくとも、聴けば聴くほど、この作品の持つ真価がより顕著になっていくだろうと思われます。

 

「Aura」は、非常に長い時間をかけて制作が行われた正真正銘の声楽による芸術作品です。制作には、コラボレーターとして、アイスランドのビョーク、M.I.A、さらにマルタ・サロニが招聘されていることにも注目です。

 

先行シングルとしてリリースされた「Aura」、「Angelus Novas」のように、クラシックのオペラ、日本の伝統舞踊、スイスのヨーデル、ネパール、インドの民族音楽を中心に、それらの伝統的な歌唱法を受け継いで、デビュー作ではありながら、前衛的な作風を完全に確立しているのに大きな驚きを覚える。一例を挙げると、アメリカ合衆国の偉大なボーカリスト、メレディス・モンクのヴォーカルアートを、さらに、民族音楽やワールドミュージックの観点から捉え直した作品と解することが出来る。また、「Aura」は、「声の芸術」の持つ、華やかさ、麗しさ、清々しさといった魅力を、ダブに近い多重録音により、壮大な物語性を持つ、いわば、ハチスノイト特有の文学的なサーガのような意味を持つヴォーカルアートとして完成させています。

 

2020年に世界的に蔓延したパンデミックの最初期をロンドンで体験したハチス・ノイトは、ロックダウンの閉塞感のある時間の中で、ライブにおける観客との空間をともにすることの重要性に気づき、さらに、人生の喜びと豊かさを見出している。この時代についてハチス・ノイトは、「パンデミックの間、私は、本当に苦労しました」と回想し、さらに「歌手として、私はコンピューターの作業があまり得意ではありません。私は、(インターネット配信ライブよりも)物理的な空間でライブを行うほうが好きで、人と一緒に居て、同空間を共有し、その瞬間のエネルギーを感じることが、毎回、豊かなインスピレーションを与えてくれる」と述べています。

 

その後、ハチス・ノイトは、Erased Tapesと共にアルバムの制作に取り掛かり、ドイツ・ミュンヘンのスタジオで行われた最初のレコーディングをわずか8時間で終了させる。その後、レコーディング場所を、英国のイーストロンドンに移し、ミックス作業を行った。最終段階のミキシング作業では、録音されたマスターテープをイーストロンドンの教会に持ち込み、プロデューサーと共に、建築が持つ反響音「リバーブ」を含めて再録音を行う「リアビング」という斬新な技法が導入しました。このことによって、デジタル形式で生み出しえないアナログ形式の温かく豊かな響きが生み出されている。ここには、まさしく生きたライブ音楽が生み出されています。

 

ハチス・ノイトは、このアルバムにおいて、ワールド・ミュージックの様々な歌唱法、複数の声楽の技法、能楽、オペラ、ウィスパー、その他、喉元を震わせる独特な歌唱法を取り入れ、そして、フィールドレコーディングにより、自身が深い思い入れのある時間、場所を真摯に探求していきます。

 

先行シングルの二曲「Aura」や「Angelus Novas」の声楽の表現に見いだされるように、彼女が最初に声楽を志したネバールの寺院に始まり、自身の生存について思いを馳せることになった北海道、知床の森のミステリアスな雰囲気、さらに、活動拠点を置くイースト・ロンドンの生きた音楽を訪ね求め、さらに、アルバムのクライマックスをなす最大の聞き所となる「Inori」で、ハチス・ノイトは、日本の福島の海岸を自らの声の多彩な表現により訪ね求めようとします。

 

実際、福島の原発から1キロの場所でフィールドレコーディングがおこなわれた「Inori」には、多重録音されたヴォーカルトラックの背後に、しずかで、あたたかく、美しい、福島の波の音を聞き取ることが出来る。それは、単なる音の良し悪しではなく、本当に重要な音の記録、音楽の持つ最大限の魅力でもある。つまり、ハチス・ノイトのデビュー・アルバム「Aura」は、ポピュラー音楽としても楽しめる一方、単なる消費音楽ではなく、声楽を通じて表現された「音の記録ーサウンド・ドキュメンタリー」でもあり、そこには、異なる時間、場所、それぞれの空間にある生きた音楽ーーライブサウンドーーを読み取ることが出来るわけです。

 

福島の海の音の本当の素晴らしさが「音楽」として収録されていることは、このアルバムに普遍的な価値が込められていることを証明しています。日本には、いまだ帰宅が困難な福島の人々が数多く存在し、2011年の東日本大震災の出来事は解決がついていません、だからこそ、この作品「Aura」は、普遍的な意味を持つアルバムと断言出来る。こういった本当の意味で、他者に寄り添うような美しさの籠もった作品は他を探しても見出しがたい。また、それを、国際的なバックグランドを持ち、さらに、実際、帰宅困難区域が解除された時、福島の死者を追悼する祝典に出席した震災の当事者のハチス・ノイトが生み出すことに重要な価値が見いだされる。つまり、ハチスノイトはこの作品において、福島の全ての人たちの思いを一身に背負っているのです。

 

96/100

 

 

 

Weekend Featured Track「Inori」

 

 

 

 

 

 Erased Tapes official:

 

https://www.erasedtapes.com/release/eratp152-hatis-noit-aura 



bandcamp:

 

https://hatisnoit.bandcamp.com/album/aura 

 

 

Tizah Credit: Lillie Eiger
 

英国・ロンドンを拠点に活動するTizah(テルザ)は、ポピュラー、エレクトロニック、エクスペリメンタル、ジャズをクロスオーバーし、実験的なアプローチを取る注目するべきシンガーの一人です。

 

数ヶ月前、テルザは、ニューアルバム「Colourgrade」を発表し、未来に向けた創造性を発揮した最高のアーティストとなりました。

 

Tirzahは、前作「Colourgrade」をベースに新たなリミックスプロジェクトを立ち上げた。今回リリースされた「Highgrade」は、Arca、Loraine James、Lafawndah、Actressなどの複数のアーティストよるリミックスが行われており、それぞれの楽曲が新鮮な方向性を持っている。

 

9月23日にはフルヴァイナルバージョンがリリースされる。Tirzahのコメントは以下の通りです。

 

「作品は別の人生を歩むことができ、ハイブリッドのコレクションとして一緒になることができます。すべてのアーティストにとても感謝しています。音楽に感謝します"

 

ロンドンでのUKツアーを皮切りにして、Tirzahは、本日(6月21日)Bristol Fiddlersに出演し、22日にはグラスゴーのSWG3、23日にはマンチェスターのStoller Hallで公演する予定だ。




 

実験音楽について

 

 

 

今日、現代の実験音楽、いわゆるエクスペリメンタル・ミュージックと称されるジャンルは、きわめて多彩なアプローチを取るアーティストが多く見受けられる。


それは現代音楽としての系譜にあたる純性音楽としてのバックグラウンドを持つアーティストから、それとは一見対極にあるような電子音楽のバックグランドを持つアーティストまで、作曲者によって各々表現方法もさまざま。

 

もちろん、シュトックハウゼンの時代から、無調音楽としての電子音楽家は数多く存在した。それがいつしか、古典音楽家としての音楽の一派と、電子音楽家としての音楽の一派と、枝分かれしていくようになった。

 

しかし、かつて、武満徹が実験工房で、湯浅譲二らとテープ音楽を作成していたが、これこそつまり、その意図はないかもしれないが、クラブミュージック的な音楽を時代に先駆けて体現しようと試みていたように思える。

 

もちろん、オリヴィエ・メシアンのフランス和声を研究し、その音楽性に影響を受けつつも、現代のクラブミュージック、中でもIDMに通じるようなアプローチが世界のタケミツの音のアプローチには感じられる。


このあたりのエピソードから引き出される結論があるなら、現代音楽とクラブミュージックは、一見して相容れない水と油の関係のようでいて、源流を辿ってみると、実は、同じ場所にたどり着くような気がする、つまり、同じ祖先を持っているといえなくもないかもしれません。




現在のミュージックシーン

 



現在において、全く分離した古典音楽、そして、電子音楽あるいは、クラブ音楽を繋げるような役割を持つアーティストが2000年代あたりから出て来た。ドイツの気鋭アーティスト、ニルス・フラームを筆頭にして、アイスランドのオラブル・アーノルズらがその流れを形作っている。


他方、イギリスの音楽シーンでは、Clarkが、このヨーロッパを中心とする流れを汲み取ってのことか、それまでのテクノ界のカリスマというキャリアを手放し、イギリスからドイツに移住し、ドイツグラムフォンと契約、ポスト・クラシカル、現代音楽の系譜にある新しい音楽に方向性を転じ始めている。これは、この周辺のクラブシーンを知る人にとっては衝撃的な出来事だったはず。

 

いよいよ、2021年、ヨーロッパを中心として今、最もトレンドといえるポスト・クラシカル、現代音楽シーンは、ほとんど、各国の音楽家の群雄割拠ともいえる状況になっている様子が伺われる。


そして、このポスト・クラシカル勢の台頭にあたり、クラシック音楽界隈の人々は、彼等のことをどう考えていたのかまで明確に言及できないものの、少なくとも、最近では、彼等は、クラシック音楽に馴染みのない音楽リスナー層も取り込んで、古典音楽への橋渡しをしようとしている。

 

実際、アイスランド交響楽団、BBC交響楽団をはじめとする古典音楽を中心として活動する集団も、これらのポスト・クラシカル勢の活躍に対しては、協力的な姿勢を示しているように思われる。

 

もちろん、ポスト・クラシカルという音楽は、それほど、クラシック音楽に馴染みのない人にも、クラシックへの重要な入り口をもうけ、”古典音楽の雰囲気を持った聞きやすいポピュラー”音楽を提示し、その先にある古典音楽へのバトンを繋げるという文化的な役割を担っているようだ。

 


現在の実験、現代音楽としてのトレンドの傾向を伺うなら、やはり、アメリカ、イギリスのアンビエント寄りのアプローチを取るクラブミュージック勢、あるいは、古典音楽家、ロベルト・シューマンやフランツ・シューベルト、フレドリック・ショパンのピアノの小品集の雰囲気を受け継いだドイツロマン派の系譜にある、ヨーロッパの現代ポスト・クラシカル勢の二派に絞られるかと思う。そして、その中にも、多種多様なアプローチを図る気鋭の音楽家達が今日のミュージックシーンを活気づけており、俄然、この辺りのシーンからは目を離すことができない。


今回の新しい特集「Modern Experimenral Music」では、上記のようなポスト・クラシカルとはまた異なる雰囲気を持った生粋の世界の最新鋭の実験音楽を紹介していこうと思っています。

 




Eli Keszler

 

 

ニューヨーク在住、イーライ・ケスラーは、現在のエクスペリメンタル音楽シーンの中で今、最も注目すべきアーティストの一人。パーカッショニストとして、そして、ヴィジュアルアーティストとしても活躍中の芸術家。 

 

 

 

Eli Keszler 1.jpg CC BY 2.0, Link

 

 

元々は、ハードロックやハードコアに親しみ、十代の頃からすでに作曲に取り組んでいたという。ニューイングランド音楽院を卒業を機に、マンハッタンに移住、ニューヨークを拠点にして活動中のアーティストです。

  

イーライ・ケスラーは、楽器のマルチプレイヤーであり、パーカッションだけにとどまらず、ヴィブラフォンやギターも演奏している。

 

最初の作品「Cold Pan」をイギリスのエレクトロやダンスミュージックを取り扱うレーベル、Panからリリースしている。


最初期は、アバンギャルド性の強い、ピアノの弦を打楽器的なサウンド処理を施し、それにくわえ、彼自身の音楽の最も重要な特長、パーカッションの小刻みなサウンドプログラミング的な音色加工をほどこしている。元来、イーライの音楽の本質がどこにあるのかと言うと、一例を挙げると、ジョン・ケージのプリペイドピアノの技法をより打楽器としての解釈を試み、それをきわめて前衛的な手法で解釈した音楽といえ、しかも、そこには、UKのエレクトロ界隈の最もコアな音楽性を取り入れている。またそこに、ブレイクビーツ、ドラムンベース、その先にあるドリルンベースを、イーライ・ケスラー自身のパーカッションの演奏で試みようとしているように感じられる。


ときに、スネアドラムの縁の部分を叩く”リムショット”の技法が取り入れられ、スティック捌き、そして、実際のストライクは、凄まじい速度である。つまり、生演奏のスネアやリムの素早いストライクにより、生演奏ではありながら電子音楽のグリッチに近い領域に踏み込んでいる。これをさらに楽曲アナライズとして解釈するなら、パーカッションの演奏にトーン・クラスターの技法を取り入れ、そこにクラブミュージックの要素、アシッド・ハウス、ダブ的な要素を付加し、異質なグルーブ感を生み出している。そして、実際にケスラーのパーカッションの演奏を聴いてみると、AIが演奏しているのではと聴き間違うかのような自動演奏に近い印象を受ける。


また、イーライ・ケスラーの音楽をトラックメイクという別の切り口から解釈するなら、自身の生演奏を録音した後に、ダブ的な手法で、短いサンプリングをかけ合わせて、それを一つのリズムとして入念に繋げるという、いうなればサウンド・デザイナー的な手法が取り入れられる。そこにビブラフォン、メロトロン、シンセサイザーのテクスチャーが重層的に加えられていく。これがこのケスラーという現代音楽家の生み出す音を、立体的構造的な構造にしているというわけである。

 

現地のニューヨーク・タイムズ誌は、イーライ・ケスラーの音楽的な背景について、「パンク・ロック、アバンギャルド・ジャズにある」としている。つまり、このケスラーの前衛性というのは、偶然に生まれでたものではなく、ましてや破れかぶれにアヴァンギャルドの領域に踏み込んだわけでもなく、まえの時代のニューヨークの前衛音楽、とりわけ、サックス奏者、ジョン・ゾーンをはじめとするフリージャズ、あるいは、往年のニューヨークパンクス達を生んだニューヨークに育まれた前衛音楽、つまり、この2つの文化側面を受け継いだがゆえのモダンミュージックなのである。

 

たしかに、ニューヨーク・タイムズが、彼の音楽を評して言うことは非常に理にかなっているように思え、イーライの最初期の作品においては、アヴァンギャルド・ジャズに近い手法が積極的に取り入れられている。また、よくよく聴いてみると、彼のリムショット、スネアのストライクには、ニュースクール・ハードコアの極限までBPMを押し上げたスピードチューンからの影響もあるように思える。

 

最初期のイーライ・ケスラーの作品は、お世辞にも親しみやすいとはいいがたものの、ここ数年、秀逸なトラックメイカーとしての真価を発揮しつつあり、作曲家として覚醒しつつあるように思え、楽曲においても一般的なクラブ・ミュージック等に理解があるリスナーを惹きつけるに足る音楽性に近づいている。

 

また、電子音楽家としてのキャリアも順調に積み上げている。ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーのツアーにドラマーとしてのサポート参加、あるいは、イギリスのエレクトロ/ダブ・アーティスト、ローレル・ヘイローの作品制作への参加等の事例を見てもわかるとおり、元々は、現代音楽寄りのアプローチを選んでいたイーライ・ケスラーではあるものの、近年では、少しずつではあるが、電子音楽、クラブ・ミュージックに近い立ち位置を取るようになって来ている。





「Stadium」 2018

 

 

 

 

 

この「Studiam」は、ケスラーの七年目のキャリアで発表された作品であり、フランスの実験音楽を主に取り扱うインディペンデントレーベル「Shelter Press」からのリリースされている。  

 

 

 

アルバムのトラック全体には、どことなく清涼感のある雰囲気が漂っていて、そして、ヴィジュアルアーティストとしてのサウンドスケープが、電子音楽として見事に描きだされているように思える。  


2011年ー12頃のアヴァンギャルド色の強い作品に比べると、今作「Stadium」で、イーライ・ケスラーはより多くのリスナーに向けて、このトラックをかなり緻密に作り込んでいる様子が伺える。


実際、今作は、彼の作品としては非常に親しみやすい部類にあり、落ち着いた感じのあるIDM(intelligence Dance Music)として楽しむことができるはず。


全体的にどことなく涼し気な雰囲気が満ちているのは、Caribouやレイ・ハラカミに近い質感があり、その中にも、イーライ・ケスラーにしか生み出し得ないパーカショニストとしての進化がこの作品には見られる。


それまでの作品に比べ、全体的な都会的な質感に富んだ雰囲気に満ちている。数学的な計算が緻密にほどこされた打楽器の小さな単位が、緻密に重層的に積み上げられ、彼独特の現代最新鋭のクールなブレイクビーツが形成される。

 

この作品で、イーライ・ケスラーが取り組んでいるのは、簡潔に言えば、パーカショニストとしての新たな領域への挑戦、冒険といえる。打楽器の音ひとつの音響の単位を極限まで縮小し、それを、サンプリングとしてつなぎあわすことにより、独特のビート、特殊なリズム感を生み出している。しかし、最初から最後まで、自分自身の実際のパーカッション演奏のマテリアルを利用している。リズム自体は、徹頭徹尾オリジナルで、これは、ほとんど驚愕に値する技法である。

 

パーカッションの音は、トーン・クラスターに近いものがある。それをリマスタリング作業で、音域を自由自在に操り、ダブ的なサウンド加工を施すことにより、アシッド・ハウスの雰囲気に近い現代的なグルーブ感を生みだすことに成功している。


そして、それは、楽曲中において、リズム自体が極限までたどり着いて、リズム性としての行き詰まりを見せたとき、エイフェックス・ツイン、スクエアプッシャーのようなダイナミックなドリルンベースへと様変わりを果たす。これは、ほとんど驚愕すべき現代音楽のひとつといえるでしょう。


パーカッションの生演奏により、電子音楽の最新鋭に近づき、それを乗り越えた未来の音楽が今作では心ゆくまで味わえるはず。 

 

 

 

 Listen on Apple Music

 

 

 

 

「Icons」 2021 

 

 

 

 

 

 

イーライ・ケスラーは、今作「Icons」においてさらなる新境地へと進んだ、と、いえるかもしれない。レコーディング作業はニューヨークのロックダウン中に行われ、彼は人が途絶えた夜のマンハッタンをそぞろ歩き、実際のバイクや車のモーター音を丹念に記録し、今作「Icons」の楽曲のサンプリングとして取り入れている。もちろん、それ以前にフィールドレコーディングは、断続的に行われており、世界中の生きた音がここではサンプリングとして取り入れられている。

 

イーライ・ケスラーは、このロックダウン中において、文明の移り変わりの瞬間を肯定的な側面から物事を捉え、それを音楽として表現する。もちろん、サンプリングとして取り入れられているのは、何も現代の人々の生活音だけにとどまらない。中には、古い時代のフィルム・ノワールも存在する。そういった新旧の音楽が組み合わさることで、ひとつの強固な音響世界が形成される。

 

アルバム全体のアプローチとして、前作「Stadium」と聴き比べると、その違いが理解できるかと思う。ここでは、ローレル・ヘイローへの作品参加の影響もあってか、ダブ寄りのアプローチに進み、アシッド・ハウスに代表されるような音の質感に彩られる。そして、この独特の陶酔的な雰囲気は、間違いなく、ロックダウン中のニューヨークのマンハッタンでの夜の文明の新たな移り変わりの瞬間を、彼は、見事に音楽として描出することに成功している。それは、マンハッタンの夜の街の姿が見る影もなく変貌した瞬間を捉えたすさまじい作品であるとも言える。

 

今作「Icons」では、シンセサインザーの音源に加え、グロッケンシュピール、(チベットボウル)をはじめ、新しい楽器も数多く取り入れられているように伺え、それも、旋律楽器と打楽器的の中間点にある演出が施されている。この独特なイーライ独自のアンビエンス、環境音楽の雰囲気は、2021年にマンハッタンの夜の街角で彼自身が体感した大都会の静寂を”音”で表したといえる。そして、この作品には、どことなく、イギリスのダブ・ステップのアーティスト、アンディ・ストットに近い質感に彩られており、不思議なほど甘美な印象を聞き手にもたらすことだろう。

 

今作においての、イーライ・ケスラーの楽曲の中に感じられる静寂、その奇妙で得がたいサイレンスというのは一体、何によってもたらされたのか。ウイルスの蔓延なのか? また、あるいは、それとも、蔓延を押しとどめようとする圧力なのか? 

 

そこまで踏み込んで明言することは難しいかもしれない。しかし、少なくとも、この名作において、ケスラーは、真実を、真実よりもはるかに信憑性のある「音」により明確に浮かび上がらせている。ニューヨークの殆どの経済活動がロックダウンにより、たちどころにせき止められた瞬間、その向こうから不意をついて立ちのぼってきたマンハッタンの姿を、その夜の果てにほのみえる摩天楼の立ち並ぶ奇妙な世界を、気鋭の現代音楽家、イーライ・ケスラーは、最新作「icons」において、パーカッショニストとしての現代/実験音楽により、異質なほどの現実感をもって克明に描き出してみせている。 

 

 

 


Listen on Apple Music


 

 

 

 

参考サイト

 

 Wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/Eli_Keszler

 

 

BEATNIK.com https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11877

 20年代のクイア・アーティストの台頭

 

 


 

 

20年代のアーティストの生み出す音楽というのはかなり特徴的だ。まるで何十年も音楽をやってきたかのような風格があるのがこういったミュージシャン達の特質であり、素人臭さであったり、青臭さというのが彼等には全然感じられず、異質なほどのプロフェッショナル性によって裏打ちされた音楽がサブスクリプションの配信曲としてパッケージされ、一般のリスナーの元に届けられる。

 

 

なぜ、彼等彼女らは、こうもあっけなく完成度の高い音楽を、時にはティーンネイジャーの段階で、やすやすと作り上げてしまうのだろう?

 

 

考えるにその理由というのは、サブスク配信の申し子である彼等彼女らがたとえ実際の音楽遍歴が十年くらいだとしても、その情報量、蓄積量の多さが何十年もの音楽フリークにも比するものがあるからかもしれない。つまり、極めて早い速度での音楽体験をこういったアーティストは日々、当たり前にしているため、音楽の洗練、醸成に以前ほどの時間を要さなくなって来ている印象を受ける。

 

 

これらのアーティストの中で有名な一ジャンルは、”ベッドルームポップ”といわれ、必ずしもバンド形態をとらず、アーティストひとりでその完成品をマスタリング作業までやり、完成品としてパッケージしてしまうという器用さ。いわゆる宅録として展開されるロック、ポップスともいうべきその代表格ともいえるのが、ノルウェーの”Girls in Red”で、今一番シーンで勢いが感じられるアーティストだ。

 

 

そして、最も世界的に有名なビリー・アイリッシュも同じで、これらの00年代を境に出生したアーティストというのは、全時代の人間に比べて「性の種別」という概念が薄く、その音楽性というのも、どことなく中性的である。女性アーティストなのに男らしさを感じさせたり、男性アーティストなのに女らしさがあるように、古い世代から見ると、実に風変わりな印象を受けるはず。

 

 

これらのアーティストとしての魅せ方、引いては、そのアーティストの内奥にふつふつと湧き上がる精神、概念というのは、往年のマドンナであったり、マライアの時代から見ると信じがたいくらいかけ離れたものといえるだろう。むろん、デヴィッド・ボウイやマーク・ボラン、ニューヨーク・ドールズ周辺の、往年のグラムロックアーティストを知る人から見れば、彼等彼女らの概念というのそれほど珍奇に感じられないだろうし、ごく自然なものと飲み込んでもらえるだろうかと思います。只、ここで付言すべきは、そういった中性的なキャラクターを舞台俳優のように演じでいるわけではなく、それを自らの生き方に取り入れ、アイデンティティを誇らしく掲げているのが、これらのアーティストの以前のグラムロックアーティストとは異なる点だろう。


 

 

クィアー・ミュージックの新星 Ana Roxanne

 

 

 

今回、ご紹介するAna RoxanneというLA在住のアーティストも、近年流行中の、クイアというムーブメントから出てきた個性的で、面白い音楽家のひとりだ。

 

 

一般には、ニューエイジをはじめ様々な呼称が彼女の音楽に与えられている。一応、与えられてはいるものの、他方では、アンナ・ロクサーヌの作品を扱っているセールス側に大きな困惑を与えているのは確かだろう。なぜなら、単純にこの音楽は新しいから、以前の耳では咀嚼できない。”耳”を数年先まで推し進める必要性があるのだ。その辺りに市場側も、このアーティストに単色のイメージをラベリングすることに躊躇を感じているようにも思える。ゆえに、他のアーティストよりもはるかに難物な雰囲気すら滲んでいる。

 

 

もちろん、作品を実際に聴いてみればそのことがよく理解できるはずだ。ビリー・アイリッシュ、ガールズ・イン・レッドのような分かりやさ、キャッチーさは、ロクサーヌの音楽にはのぞむべくもない。これは海のものとも山のものともつかない風変わりな音楽なのかもしれない——。しかし、それはこれまでになかった新しい音楽の台頭を感じさせる。

 

 

ここ二、三年の数少ないリリース作品を聴くかぎりで、そういったジャンル、音楽上の種別というのは、アンナ・ロクサーヌを前にしては、何の意味もなさないと理解できる。そもそも、アンナ・ロクサーヌという音楽のジャンルは、他者からの識別、ラベリング、ジャンル分けを強烈に拒絶し、そして、それを”音の芸術表現”という強烈な個性で描き出そうと努めている様子が感じられる。

 

 

アンナ・ロクサーヌの音楽性の中に見出すべきなのはリスナーに対する媚や安っぽいおためごかしなどではない。そこに感じられるのは、強い、異質なほど内的なクールなストイックさなのだ。いや、そのためにむしろ、Ana Roxanneの音楽は、他にはないほどの強烈な個性と輝きを放っている。

 

 

 

「Because of a Flower」2020

 

 


 

 

Ana Roxanneを知るための手がかりというのはまだ非常に少ないのが少しだけ残念だ。それはほとんど雲をつかむような話でもある。

 

 

デビューして間もない音楽家でありアルバムリリースというのはこれまで一作。だから、その数少ない音の情報を頼りにし、このアーティストの良さについて静かに熱狂を抑え、非常に慎重に語るよりほかない。

 

 

最新作「 because of flower」は前作のEP「ーーー」の方向性を引き継いで、”アンナ・ロクサーヌという音楽性を明瞭に決定づけた作品”というふうに呼べるかもしれない。1stトラック「Untitled」から、会話式の語りが挿入され、これが非常に、舞台的、もしくは、映像的な音の効果を与えている。

 

 

そして、この語りというのが、古典音楽のモチーフのようについて回り、作品のどこかで再登場するというのは、少なくとも、付け焼き刃の思いつきなどでは出来ない音楽に対する高度な見識を伺わせる。

 

 

2ndトラック「A study in Vastness」では、米国で有名な声楽家、メレディス・モンクのような声としての前衛芸術、ミニマリスムを思わせるテクスチャを形成することにあっけなく成功している。自身の声を多重録音することにより、それをアンビエンスとして解釈し、奥行きのある音響世界を構築していく。

 

 

そして、このあたりに漂っている奇妙で異質さのある雰囲気、これこそ「クィア」という概念そのものの体現であり、ドローン、アンビエントともつかない、異質なエスニック風味すら思わせる独特でエキゾチックなシークエンスというのは、このアンナ・ロクサーヌという芸術家にしか描き得ない、内的な心象風景の音の現れだろう。

 

 

また、こんなふうにいうと、少しばかり、このアーティストが崇高な感じもうけるかもしれない。だけれども、このアルバム全体のイメージに関して言えばそのかぎりではない、その中に近寄りやすさというのもある。

 

 

「Suite Pour L'invisible」では、ドイツの前衛電子音楽家、NEU!のファーストアルバムに収録されている「Seeland」を彷彿とさせる静かでアンビエント風の電子音楽に取り組んでおり、さらに、ロクサーヌの伸びやかな美声が心ゆくまで堪能できる。これは、ナチュラリストとしての彼女の精神の姿を映し出した透徹した鏡のような楽曲であり、ヒーリング効果のある音楽としての聴き方もできるかもしれない。

 

 

前年にEPという形でリリースされていた楽曲をアルバムに再収録した「ーーー」も、往年の古いタイプの電子音楽を踏襲した楽曲であり、これまた全曲のように心やすらぐような雰囲気を味わえる。アナログシンセをマレットシンセのような使用法をすることにより、連続的な音を積み上げていき、立体的なテクスチャのもたらす快感性を生み出すことに難なく成功している。流石だ。

 

 

さらに、また、このアーティストが只のヒーリング音楽家ではないことを明かし立てているのが次曲「Camillie」といえ、ここでは、ごくごくシンプルなマシンビートを、曲の主な表情づけとし、そこにアシッド・ハウス的なアダルティな風味をそっと添え、夜の都会のアンニュイさを感じさせる雰囲気も滲み出ている。楽曲の連結部として、対旋律風に導入されるフランス語の会話のサンプリングというのも一方ならぬ知性を感じさせる。

 

 

ラストトラック「Take The Thorn,Leave the Rose」では、フュージョンジャズ的なギターが特徴のこのアルバムでは異色の楽曲といえ、アウトロにはバッハの平均律の前奏曲の旋律がヒスノイズを交えて流れてくるあたりも唸らせる。この辺りに、古典音楽にたいしての親和性、音楽フリークとしての矜持が窺え、非常に興味深い。

 

 

音楽的なバックグラウンドの広さ、そして、クイアという概念を強固な音の表現性により、ひとつの芸術として完成させているのが今作の特徴といえるかもしれない。その内面からの強い性格がヒーリング的な寛いだ印象とあいまって、これまで存在しえなかった新しい二十年代の最新鋭の音楽のニュアンスを生み出すことに成功している。個人的に、かなり期待したい有望なアーティストの一人だ。