Peter Gabriel


プログレッシヴロックバンド、Genesisの初代ボーカリストとして知られるピーター・ガブリエルは、アーケイド・ファイアの新作にゲスト参加してはいるものの、この20年間、公式にはソロアルバムをリリースしていない。ところが、その停滞した状況も間もなく変わりそうな気配が出てきた。

 

ピーター・ガブリエルのバンドの長年のドラマーを務めるマニュ・カッチェによると、いよいよ2002年の『Up』に続く、待望のニューアルバムが、2022年内に登場するかもしれないということであり、カッチェは、6月のL'Illustréのインタビューにおいて、「僕らは、ニューアルバムを完成させている途中であり、2023年には、ワールドツアーが予定されている」と述べています。

 

マニュ・カチェは、3月にも、フランスの新聞『ouest France(ウエスト・フランス)』の取材に応じた際、ニューアルバムについて言及し、年内にリリースする予定であると述べている。「I/O」は、現在のところ、ワーキング・タイトル(暫定タイトル)となっている。他にも、昨年末の2021年10月、ピーター・ガブリエルは、イタリアの雑誌『SPECCHIO(スペッキオ)』に、最近バンドと一緒に、10日間スタジオに入り、全17曲を制作したことを明かにしている。ガブリエルはまた、彼自身に加え、マニュ・カッチェ、ベーシストのトニー・レヴィン、ギタリストのデヴィッド・ローズが、リアル・ワールド・スタジオで作業している写真を共有している。


2020年、ピーター・ガブリエルは、英国のUNCUT MAGAZINEに「今、調理されているものに興奮しているんだ。ロックダウンでペースダウンしてしまって、エンジニアのディッキーをここに呼べなかったのをすごく残念に思うけど、自分が誇りに思うレコードを作るためにふさわしい曲は用意されているよ」と語っている。「ということは、もうまもなく、新しいアルバムの発表を期待できるということか?」というUNCUT側の質問に対し、ガブリエルは「それは、あなたが”もうすぐ”をどのように定義するかによるけれど、答えは「イエス」だよ!!」と答えている。


Talk Show

ロンドンを拠点にするポスト・パンクバンド、Talk Showは、2020年3月にデビューを果たしている新鋭のグループである。

 

Talk Showは、シングルデビューを果たしてから一年も経たないうちに、Black Country,New Road,Fontaines D.C、Squid、The Murder Capital,Fat White Familyといった今、現在最も勢いのある手強いバンドと共演を重ねながら、英国内のシーンで快進撃を続けている。ポスト・パンクに加えて、オーディエンスをダンスグルーヴの渦に引き入れるような力強さを持ち合わせているのが特徴である。

 

バンドは、新作EP「Touch The Ground」を、9月23日にリリースすると発表。「Touch The Ground」は、Hot ChipのJoe Goddard、Al Doyleがプロデュースを手がけた。また告知に合わせてリードトラック「Cold House」も公開されている。フロントマンを務めるHarrison Swann(ハリソン・スワン)は、このニューシングル「Cold House」について以下のように語っている。

 

「僕は、何か大きな、それでもあまり暗くない、ニューヨークからやってきた90年代のバンドに焦点を当てたものを書きたかったんだ」

 

「彼らは本当に楽しそうだった。正直、これを観客の前で演奏するのが待ちきれないよ」

 

 

 Talk Show 「Touch The Ground」EP

 

 




Tracklist


Track 1

Underworld

Cold House

Dirt in The Keyboard

Leather

6

 

Muse


Museが、近日発売予定の四年ぶり通算九作目となるフルアルバムのタイトル曲を公開しました。'Will of the People'は8月26日に発売されるフルアルバムで、この曲は'Compliance'、'Won't Stand Down'に続く3番目のナンバーとして発表されました。


「Will of the People」は近未来の世界観が描き出されている独特な楽曲であり、また付属するMVについてもSFのモチーフが取り入れられていることに注目です。「架空のデータセンターが運営する架空の銀行が架空の通貨を発行し、架空の人口が架空のアパートを含む架空の都市を支配する、架空のアルゴリズムによる架空の権威主義国家が支配する架空の惑星にある架空のメタバースを舞台にした架空の物語で、架空の男がある日目覚めて「もうだめだ」と思った場所だ」と、マット・ベラミーは語っている。彼は、ロックを介してSFの世界観を見事に描写してみせている。


新たに公開された「Will Of People」のミュージックビデオは、Tom Tellerが監督しています。

 

 



Muse  

9th Album 「Will Of People」


 

Label:  Warner Music/Sony Music

Release Date: 2022年8月26日

Tracklist:


1. Will Of The People 
2.Compliance 
3.Liberation 
4. Won't Stand Down 
5. Ghosts (How Can I Move On) 
6. You Make Me Feel Like It's Halloween 
7. Kill Or Be Killed 
8. Verona 
9. Euphoria
10. We Are Fucking Fucke


David Byrne
 

トーキング・ヘッズのDavid Byrneは、自身の名を冠したラジオ局で、60年代のサイケデリックミュージックを集めた新しいプレイリストを公開した。
 

「ここに、60年代後半から始まるサイケデリックなプレイリストを皆さんに提供致します。当然のことではありますが、 ーーサイケデリアが登場した後、現代まで数十年を経て」「ザ・ビートルズ、ジミ・ヘンドリックスといった素晴らしいアーティストがミュージック・シーンに姿を現した..しかしながら、他の多くのーーそして、世界の他の部分から多種多様なサイケデリアと呼ばれる概念があります。その後もそれらは途絶えることなく、ハミングし続け、従来の認識や理解に対する解毒剤ーAntidotesーとなっている」と、デイヴィッド・バーンはプレイリストの参加者へのメールを通じて以上のようなメッセージを共有している。


現在は、イギリスからニューヨークにアーティスト活動の拠点を移しているデイヴィッド・バーンが定義するサイケデリック・ミュージックというのは、このジャンルとして捉えられているような曲の一般的な定義とは若干異なることは、お気づきになられると思う。Spiritualized、Pink Floyd、Can、Procol Harumなどのプログレッシブ・ロック、クラウト・ロックの象徴的なアーティストが含まれているほか、さらに、バーンらしい意外な曲の選出もこのプレイリスト中に見受けられる。

 

サーフ・サウンドの象徴であるビーチ・ボーイズの「Cabin Essence」は、1965年のアルバム『20/20』、2011年のボックスセット『The Smile Sessions』にも収録されている曲である。そこから、フォーク・ロックの巨人、ボブ・ディランの「Series of Dreams」やグラム・ロックの旗手、デヴィッド・ボウイ「Outside」「Hallo Spaceboy」からグランジ・ロックのサウンドガーデン(「Black Hole Sun」)、実父にセルジュ・ゲンスブールを持つシャンソンの流れを汲む女優のシャーロット・ゲンズブール(「Greenwich Mean Time」)、さらに、カントリー・シンガーのスタージル・シンプソン(「Turtles All the Way Down」)、オールディーズのテンプテーションズのトラックに至るまで、バーンはあらゆるジャンルの曲に踏み込み、サイケデリアの概念を見出そうとする。いかに、ジャンルという概念があやふやであり主観的な定義にすぎないか、それぞれ異なるジャンルを見出すことも可能であると肯定的に教えてくれるのだ。

 

最近、70歳を過ぎてから、デイヴィッド・バーンは、若い時代よりも生き生きとした姿を見せている。

 

彼は、音楽界だけではなく、映画界にも活躍の幅を広げ、ハリウッドで活躍するミシェル・ヨー監督のSFスリラー『Everything Everywhere All At Once』の公式スコアで、デイヴィッド・バーンはコラボレーションを行っている。また、このサウンドトラックのファーストシングルであるデュエット曲「This Is a Life」では、日系アメリカ人シンガーソングライター、Mitkiと共演を果たしている。

 

さらに、デイヴィッド・バーンは、2022年初めに発売されたオノ・ヨーコのカバー・コンピレーションアルバム「Ocean Child」では、ニューヨークの象徴的なインディー・ロックバンド、Yo La Tengoとのコラボレーションソング「Who Has Seen The Wind?」を提供している。そのほか、最近では、ニューヨークのバックストリートにあるバワリー・ボールルームで行われたウクライナの慈善コンサートでクロージングの夜にゲスト出演し、ジョン・レノンとプラスティック・オノ・バンドの「Give Peace a Chance」をカバーしている。ニューウェイヴの申し子として登場したバーンは過去を懐かしむミュージシャンではなく、常に現在の音楽シーンの最新鋭のミュージシャンである。これからも、バーンの活動には目が離すことが出来ない。

 

 

Divid Byrne Presents [Phychedelic Lives]

 



ポスト・パンクは、現在も英国のロンドン、リーズ、ブライトン等を中心に根強い人気を誇るジャンルの一つです。

 

これらの先駆者たちは、1970年代に英国、ロンドンを中心に、セックス・ピストルズ、ダムド、ザ・クラッシュといった偉大なロンドンパンクのあとを引き継いで登場したため、この一連のムーブメントのこと「Post-Punk(次世代のパンク)」と呼ぶようになった。最初のロンドンパンク勢が、EMIを始めとするメジャーレーベルと次々と契約し、最初のパンクバンドとしての勢いを失っていく中で、この次の世代に登場したポストパンクバンドGOFを始めとするバンドは、ハードコアムーブメントと連動しながら、旧態依然としたパンクに一石を投じていました。

 

このポスト・パンクムーブメントは、やがて、ロンドン、英国全体に波及し、海を越えてアメリカ、日本にも及んでいく。これらのポスト・パンク勢は、ロック、そのものの要素に加え、ダンスミュージック、SFの要素、また、その他にも様々なジャンルを取り入れ、新鮮なロックンロールを提示した。その影響は、ワシントンDCのハードコアシーン、オーバーグラウンドでは、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、また、ルイビル、シカゴのポストロックシーンにとどまらず、2020年代のの英国のポストパンク勢が力強い存在感を放つ世代に引き継がれている。

 

今回の久しぶりの特集は、英国をはじめとする魅力的なオリジナル世代のポストパンクバンドの名盤を以下にご紹介します。

 

 

 

 NEU 「NEU ’75」

 


 

NEU!は、クラフトワークから枝分かれした、旧西ドイツの実験音楽集団です。いわゆる最初期のロンドンパンクは、このバンドがいなければ存在しなかったかもしれない。それくらいパンクカルチャーを語る上で欠かせないバンドです。音楽的にはパンクの祖でもあり、またポストパンクバンドに近い音楽性を併せ持つ。ジョン・ライドンのシニカルな歌唱法は、このアルバムの「Heros」のドイツ語的な固い響きに依拠しており、また、ファースト・アルバムの「NEU」では、アナログのテープの逆回転を通して前衛的な電子音楽を生み出したりもしています。

 

ノイ!の通算三作目のアルバム「’75」は、これらの前衛性とポピュラー性が絶妙に合致した傑作です。テクノ・ムーブメントの幕開けを告げる前衛的な手法を世界に提示した「ISI」、イーノのアンビエントの手法に近い、海のさざ波のSEを取り入れた美しい「Seeland」。ロンドンパンクの誕生を予感させる「Hero」が収録。このアルバム「’75」が、以後の世代のアーティストに与えた影響ははかりしれない。トム・ヨークの音楽観に強い影響を与えただけでなく、ピクシーズと共に1990年代の「オルタナティヴロック」の根幹をなす重要な要素を形作った。パンク、オルタナ、ノイズ、アバンギャルドという概念を語る上で欠かすことが出来ないグループです。  

 

 

 

 

 

Gang Of Four「Entertainment!」 1979

 

 

 

例えばの話、レッド・ホット・チリペッパーズのフリーのスラップ奏法が好きなリスナーがいたとして、その人が、この中国の文化大革命に因んで名付けられた英国のバンド、Gang Of Fourの「entertainment」を聴いたことがないとしたらとても惜しいことです。なぜなら、フリーのベースの奏法、また、最初期のレッチリの音楽性に強い影響を及ぼしたのがGang Of Fourだからです。

 

もちろん、Gang Of Fourの魅力は、ロック音楽に最初に強いジェイムス・ブラウンのファンクの要素を取り入れたという功績だけにはとどまりません。アンディ・ギルのソリッドなジャキジャキとした鋭さのあるギタープレイは、ソニック・ユースに代表されるオルタナティヴを予見したものである。ボーカルは、ファンクだけではなく、ヒップホップ的な役割を演奏の中で果たしている。デビュー作「Entertainment!」は、きわめて痛烈なインパクトを英国内外のシーンにもたらしたニューウェイヴ/ポストパンクの音楽性を象徴づける伝説的な名盤に挙げられる。 

 

 

 

 Public Image Limited 「Public Image」 1978

 

 

 

ジョニー・ロットンがピストルズの解散のあとに結成したPILは、パンク的でありながら、アヴァンギャルドの色合いを持ち合わせています。

 

以前の活動とは裏腹に、ジョニー・ロットンの意外な本来の芸術家、あるいは思想家としての表情が垣間見えるバンド。デビューアルバム「Public Image」は、セックス・ピストルズの音楽性を引き継いだ上、そこに、ドラムのビートマシンを導入したり、「Religion」では以前にはなかったジョニー・ロットンのインテリジェンスが表されている。その他にも、ルー・リードの英国版ともいうべきスポークンワードに近い語り口にも挑戦し、英国スタイルのヒップホップがここにクールに誕生している。表題曲「Public Image」はピストルズから引き継がれたポピュラー性が込められていて、歌い方については、ジョニー・ロットンらしさが引き出された一枚です。 

 


 

 

Stranglers  「Black and White」 1978


 

 

当時の人気とは反比例して、時を経るごとに徐々に一般的な知名度がなくなりつつある感のあるザ・ストラングラーズ。このバンドの魅力はパンク・ロックというよりパブロックに近い渋みのあるロックサウンド、それにシンセサイザーを加えたプログレッシブ・ロックに近いアプローチにあった。1970年代としてはこのサウンドは相当奇抜なものに聴こえたように思えます。

 

他のパンクロック、ポスト・パンクバンド勢のようなガツンとしたスパイスこそないように思えるが、ザ・ストラングラーズの代表作「Black And White」は、シンセサイザーとパンクが見事な融合を果たした当時としては前衛的な作品で、YMOに近いサウンドを導入した面白さのある楽曲も幾つか収録されている。本作は、ポスト・パンクという音楽が何かを説明する上で理解しやすい一枚であることに疑いはありません。1978年の「No mOre Heros」も佳作としておすすめです。実は、ザ・ストラングラーズは2022年現在も活動中のロックバンドです。 

 

 

 

 

Wire 「Pink Flag」 1977


 

 

オリジナル世代のポスト・パンクシーンの中でも屈指の名盤に挙げられるのが「Pink Wire」です。Wireは、後にメジャーレーベルと契約を結んだバンドであり、およそパンクバンドというのが惜しいくらいで、王道のロックバンドとして見なしても良いかもしれません。ミドルテンポのゆったりした迫力あるアートロックソングから、性急なパンクビートに至るまで、すべてパンクという側面をほとんどスリーコードだけでこの代表的な名盤において追求しつくしているのが驚きです。

 

特に、アルバムの最後に収録されている「12xu」は、ワシントンDCのマイナー・スレットにもカバーされたのは有名、その後のUSハードコアの源流がこのアルバム「Pink Wire」に求められます。

 

 

 

 

Killing Joke 「Killing Joke」1980

 

 

キリング・ジョークは、1978年にロンドンのノッティング・ヒルで結成されたポストパンクバンド。

 

パンクの色合いに加え、メタル、インダストリアル系に近い質感を持った独特なロックバンドで、後の1990年代のUSオルタナティヴ、HelmetやNine Inch Nailsの源流をなす元祖ミクスチャーサウンドといっても良いのではないでしょうか。Killing Jokeの記念すべきデビュー作は、1980年代のUKハードコアを予見するようなアルバムアートワークの印象に加え、どことなく金属的(メタリック)な響きを持つスタンダードなロックナンバーがずらりと並んでいる。「Change」では、時代に先んじてロックサウンドにダブの実験性を取り入れているのにも注目したい。よくハードコア、オルタナティヴ、インダストリアルバンドとしても紹介されるが、このデビュー作「Killing Joke」はスタンダードなロックンロールとしても十分に楽しめるはずです。

 


 

 

X Ray Spex 「Germ From Adolescents」1978

 

 

 

The Slitsとほぼ同年代に登場したX Ray Spexは、女性ヴォーカリストを擁するロンドンのパンクバンド。

 

ソリッドなロックンロールに加え、サックスフォンのきらびやかな響きが融合を果たし、独特なキャラクター性を持つ。五枚のシングルに加え、上記のアルバムのリリースだけで解散してしまったのが悔やまれる。Kim Gordon,Yeah Yeah Yeahsを始めとするライオットガールの先駆的なポスト・パンクバンド。「Germ From Adolescents」は、ジョン・ライドンに近いヴォーカル、そしてスムーズで華やかな雰囲気を持つ魅力的なロックナンバーが多数収録されています。

 

 

 


The Boys 「The Boys」 1977

 

 

 

ニューウェイヴ・ポスト・パンクのオルタナティヴなバンドが目立つ中で、ド直球の痛快なガレージロック/ロックンロールをぶちかましているのが、ザ・ボーイズです。エッジの効いた通好みのギターリフに、程よいスピードチューンが満載のアルバム。まるで、オープンクラシックカーに乗り、街中を走り回るような爽快さ。ニューヨークのデッド・ボーイズや日本のギターウルフにも近い豪快なロックバンドで、UKポップス、アイルランドのUndertonesのような青春の雰囲気が漂っている。2003年に人気絶頂のさなか惜しくも解散した日本の伝説的なガレージ・ロックバンド、Thee Michelle Gun Elephantの音楽性に影響を与えた。日本の伝説的なギタープレイヤー、故アベ・フトシのセンス抜群のギターブレイの源流がこのアルバムの随所に見いだせる。

 

 

 

Crass「The Feeling Of The 5000」1978

 

 


クラスの最初期のアルバム「The Feeling Of The 5000」は、1977年から1984年にかけて活躍したニューウェイブ/ポスト・パンクの流れを汲んで登場したアート・ロッグ・ループの初期作品です。

 

クラスの最初期の名盤として、「The Station Of Crass」「Penis Envy」と併せて取り上げられる印象があるこのアルバムは、アバギャルド、Oi-Punk、スポークンワード、その他にも、Dischargeにも比する無骨なハードコアの源流をなすヴァリエーションに富んだ楽曲が収録されています。以後のアルバムに比べると、パンキッシュな味わいが感じられる作品です。また、グループは、ラブ・アンド・ピースの概念をはじめとするコンセプトを掲げて活動を行っていた。 


 

 

 

Chrome 「Half Machine Lip Moves」1979


 

1970年代のポスト・パンク/ニューウェイブシーンに欠かすことが出来ないクローム。1976年にロサンゼルスで結成されたバンド。

 

アメリカ西海岸のヒッピー/サイケデリックムーブメントのさなか、ザ・レジデンツとほぼ同時期に登場している。ジャンク、ローファイ、インダストリアル、ガレージ、ハードコア、ノイズ、ほかにもヒップホップなどを飲み込んだUSオルタナティヴの原型を作った最重要バンドです。

 

彼らの最初期のアルバム「Half Machine Lip Moves」は、シカゴのタッチ・アンド・ゴーからオリジナル盤がリリースされている。改めて聴くと、黒板を爪でひっかくような不快なノイズ性、パプロックに近い渋さのあるロックンロール、さらに、ニルヴァーナのサブ・ポップ時代のようなグランジ性も滲んでいる。おそらしいことに、この異質なアルバムは、ソニック・ユースもグランジもオルタナティヴ、そんな概念が全く存在しなかった1979年に生み出されたことです。

 

 

 

 

This Heat 「This Heat」1978

 

 


英国カンタベリー系のクワイエットサンのドラマーチャールズ・ヘイワードが、76年に結成したトリオ、The Heatの痛烈なデビュー作は、以前、以後のどのバンドの音楽にも似ていない。喩えるなら孤絶した突然変異的なアルバムです。メロディーのようなものがあるのかはもほとんど判別できない。何か、精神的な発露を音楽として刻印したように思え、アバンギャルド、ノイズ、アート、これらの3つの領域を絶え間なくさまよう、聞いていると不安になる音楽です。

 

The Fugsの詩的なフォーク、ガスター・デル・ソルのアバンギャルド・フォーク、「No New York」のようなアート・ロックにも聴こえ、ジョン・ゾーンのアバギャルド・ジャズにも聴こえ、クラウト・ロックやインダストリアル・ロックにも聴こえなくもない。しかし、ミッシング・ファンデーションのように悪趣味を衒うわけでもない、どのジャンルにも属さない特異なアルバムです。 

 

 

 

Talking Heads 「Remain In Light」



今や、ニューヨークインディーロックの象徴的な存在ともいえるデイヴィッド・バーン擁するトーキング・ヘッズはニューウェイブの代表格である。77年のデビューアルバム「Talking Heafs '77」も欠かせないが、傑作としては「Remain In Light」の方に軍配が上がるか。このアルバムだけ80年発表ではあるが、ポストパンクの大名盤であるため、例外として皆様にはお許し願いたい。ブライアン・イーノをエンジニアに招き、ポスト・パンクのアプローチに加え、テクノ、ミニマル、ダブ的な前衛性を取り入れた画期的な作風である。「Born Under Punches(The Heat Goes On)「Once in  a Lifetime」を中心にポスト・パンクの代名詞的なトラックが目白押しとなっている。

 

Rolling Stoneが選ぶ「オールタイム・グレイテスト・ヒットアルバム500」の39位にランクインを果たしているが、2022年の現在聴いてもなお色褪せない斬新さが見受けられるアルバムです。 

 

 

 

 

Devo 「Q Are You Not Men? A:We Are Devo!」1978

 

 

 

 

一般的に、テクノなのか、ポストパンクなのか意見が分かれるバンドが、オハイオの四人組DEVOです。

 

ザ・ローリング・ストーンズのカバー「satisfaction」のテクノ寄りのカバーも最高なのは言うまでもないことで、オープニングトラックを飾る「uncontrollable Urge」は、ポスト・パンクシーンきっての名曲です。その他にも、エキセントリックでスペーシーな楽曲「Space Junk」といったディーヴォの代名詞的なトラックが多数収録。ネバタ州のハードコアバンド、7Secondsが、DEVOのファンであったのは偶然ではありません。ディーヴォは正真正銘のパンクロックバンドだった。「Q Are You Not Men? A:We Are Devo!」の奇妙でエキセントリックな概念は、ピッツバーグのドン・キャバレロの実験性に引き継がれていったのかもしれません。 

 

 

 

 

 

Suicide 「Suicide」 1977

 

 

アラン・ヴェガ擁するNYのアンダーグラウンドシーンの象徴的かつ伝説的なデュオ、Sucide。

 

狂気とヒステリーを象徴したようなサウンドは、ほとんどアナログシンセサイザーとドラムマシンのみで生み出されている。デビュー・アルバム「Suicide」は、明らかにイギー・ポップの狂気性を引き継いでおり、Siver Applesの電子音楽の品の良いアバンギャルド性を取り入れている。冷徹な4つ打ちのシンプルなマシンビートに加え、アラン・ヴェガの鋭さのあるヴォーカルが魅力。その他にも奇妙な癒やしを感じさせる「Cheree」が収録されている。ノーウェイヴを代表するSwansの傑作群とともに、ニューヨークのアンダーグラウンドシーンを象徴する伝説的傑作で、また、ギター、ベースがなくても、ロックンロールは出来ることを世界に証明してみせた歴史的なアルバム。また、スイサイドのヴォーカル、アラン・ヴェガは、2016年の6月23日に死去している。この訃報の際には多くの著名ミュージシャンによってヴェガの死が悼まれました。 

 

 



INU 「メシ喰うな! (Meshi- Kuuna!)」1981 

 


 

東京のパンクシーン「東京ロッカーズ」と同時期に生まれたのが「関西ノーウェイヴ」という魅力的なシーンでした。

 

その最深部、正真正銘のアンダーグラウンドシーンから台頭したのが、町田町蔵擁するINU。現在、日本国内で著名な作家として知られる町田氏の鋭さを持った現代詩の感覚を十二分に堪能出来るデビュー・アルバムです。

 

1981年にリリースされた「メシ喰うな!」は、フリクション、GAUZEの最初期の傑作と並んで、日本の初期パンクロック/ハードコアシーンの大名盤。北田昌宏の鋭いUKポストパンクの流れを汲んだアーティスティックなギタープレイに加え、西川成子のシンプルなベースライン、ジョン・ライドン、イギー・ポップに比するユニークさのある町田町蔵のヴォーカルがバンドサウンドとして見事な合致を果たしている。「メシ喰うな!」「つるつるの壺」、NO NEW YORKのアバンギャルドノイズに迫った「ダムダム弾」等、世界水準のパンク・ロックソングが多数収録されている。 

 

 

 

 

The Saints「Eternally Yours」1978

 

 


ザ・セインツは、Radio Birdmanと並んで、オーストラリアの初期のパンクロックシーンを牽引した伝説的なロックバンドであり、1973年にブリズベンで結成された。パンクロックという概念が誕生する以前に、ガレージロックを下地にしたパンキッシュな音楽を奏でていた特異な六人組である。

 

ザ・セインツの音楽が特異なのは、荒削りでカラフルなロックンロールの性質に加え、サックスフォーンをあろうことか1973年にバンドサウンドに時代に先んじて取り入れていたことである。その他、彼らの代表作「Eternally Yours」には、Johnny Thundersにも近いラフなロックンロールナンバーが多数収録されている。

 

彼らの最高の楽曲は「Know Your Product」に尽きるか。既に1970年初頭に、英国のニューウェイブ/ポスト・パンクに近い音楽を演奏していた、驚愕すべきバンドの決定版として、ベスト盤の「Know Your Product」と一緒におすすめしておきたい。また、追記として、Rolling Stoneが報じた通り、ヴォーカルのChris Bailey(クリス・ベイリー)は、今年の4月11日に死去している。ナルシスティックでありながら世界で最もクールなヴォーカリストだった。



 

 

 

 

・ニューウェイブシーンに台頭したBauhausのアルバムは今回扱いませんでしたが、また日を改めて、ゴシックのカテゴリーで取り上げる予定です。

Jeff Tweedy

 

先週の金曜日、Angel Olsenが素晴らしいニューアルバム「Big Time」をリリースしました。Wilcoのニューアルバム「Cruel Country」も先月リリースされたばかりで、Jeff TweedyがOlsenのタイトル曲をカバーしているのは、素晴らしいクロスプロモーションと言えるでしょう。


Wilcoのシンガーソングライターとして知られるジェフ・トゥイーディは、自身のサブスタックへの投稿を通じて、「今日、発売されたエンジェル・オルセンの新譜から覚えた曲だ!」と、カヴァーを紹介している。彼は、また、数年前にオルセンが彼を訪れた際に、一緒に撮った写真もアップロードしている。「いつもは、曲を有料ウォールの後ろに置くんだけど、このアルバムは、真新しくて素敵だから、耳の肥えたリスナーに是非聴いてもらいたい」と綴っている。

 

一方のエンジェル・オルセンは、ジェフ・ツイーディーのツイートを見るや、感謝の気持ちを伝え、「ジェフ!!!! 「Big Time」をカヴァー! 借りができたよ」とツイートを行っている。トゥイーディ、オルセンの間のシカゴ・コネクションの力強さを伺わせるハートウォーミングなやりとりである。

 

 

 

 

NIki 

 

米国に活動拠点を置くインドネシア出身のシンガーソングライター、NIKIは、セカンド・アルバム『Nicole』のリリースの発表に続いて、2022年第1弾シングル「Before」の配信を開始しました。新曲「Before」は、11月の88risingのアルバム『Head In The Clouds 3』収録曲「Split」に続くベッドルームポップで、Isaac Ravishankaraが監督したビデオも同時に公開されています。


NIKIは2020年のデビュー・アルバム『Moonchild』に続くセカンド・アルバム『Nicole』を8月にリリースする予定となっている。


今週初めにインスタグラムで、NIKIは、今度のレコードについて、「このプロジェクトは間違いなく、私がアーティストとして作った中で最も好きなアルバムです。若い私と今の私が出会ってつるみ、一緒に爆発する場所となった。このプロジェクトを取り巻く全ての環境に対して、私がどれだけ誇りに思っているかは、どんな言葉でも十分に伝えることはできません。(詳しくは後ほど...)そして、NIKIらしく、その結末からお話しさせてください。ネタバレ: めでたしめでたしではありません。 

 

 


NIKIのシングル "Before "は現在発売中です。アルバムのコンセプトについては、さり気なくネタバレがされていますが、彼女はまだ、Nicoleのアルバムの具体的なリリース日を共有していません。



 

ビースティ・ボーイズが30周年記念アルバム『Check Your Head』を今年6月24日にUMeからリイシューする。

 

『Check Your Head』は、1992年リリースのビースティーのサードアルバム。前作『Paul’s Boutique』でのサンプリング中心のプロダクションから一転、本作では、前作でエンジニアを務めたマリオ・カルダート・ジュニアをプロデューサーに迎え、カバー写真からもうかがえるようにハードコアバンド出身のビースティ・ボーイズがふたたび楽器を手に取り、ヘヴィでファンキーなバンドアンサンブルとやんちゃなラップで押し切る仕上がりになった。さらに、その後長くビースティ・ボーイズ第4のメンバーとして名を馳せる鬼才キーボーディスト、マニー・マークも参加、唯一無二のラップロック/パンクラップアルバムとなった。音響的な仕掛けも随所に散りばめられている。音楽的振り幅の広さは、当時隆盛を極めるオルタナティブロックとは一線を画する。3人の揺るぎないフリーキーな魂をありありと浮かび上がらせたハードボイルドな一作だ。


1992年にリリースされたオリジナル盤の『Check Your Head』には、「Jimmy James」、「So What'cha Want」、「Professor Booty」といった人気楽曲が収録されている。新たに再編集される4xLP版には、以上のフルアルバムのオリジナル曲に加えて、リミックス、ライブテイク、B面のトラックも追加収録されている。


また、今回の豪華4枚組LPは、2021年に発売された再発EP『Aglio E Olio』のリイシューに続く作品となる。 

 

 

 

 

リイシューの6月24日のリリースに先立ち、Check Your Headの予約はこちらからどうぞ。ボックス・セットとトラックリストの詳細は以下で御確認下さい。




Beastie Boys 

Check Your Head in 30th anniversary edition




Tracklist:

Side A

1. Jimmy James
2. Funky Boss
3. Pass The Mic
4. Gratitude
5. Lighten Up

Side B

1. Finger Licking’ Good
2. So What’ Cha Want
3. The Biz Vs The Nuge (featuring Biz Markie)
4. Time For Livin’
5. Something’s Got to Give

Side C

1. The Blue Nun
2. Stand Together
3. Pow
4. The Maestro
5. Groove Holmes

Side D

1. Live at P.J.’s
2. Mark On The Bus
3. Professor Booty
4. In 3’s
5. Namaste

Side E

1. Dub The Mic (Instrumental)
2. Pass The Mic (PT. 2, Skills To Pay The Bills)
3. Drunken Praying Mantis Style
4. Netty’s Girl

Side F

1. The Skills To Pay The Bills (Original Version)
2. So What’ Chat Want (Soul Assassin Remix Version) – DJ Muggs
3. So What’ Cha Want (Butt Naked Version)
4. Groove Holmes (Live VS The Biz) Featuring Biz Markie

Side G

1. Stand Together (Live At French’s Tavern, Sydney Australia)
2. Finger Licking’ Good (Government Cheese Remix)
3. Gratitude (Live At Budokan)
4. Honky Rink

Side H

1. Jimmy James (Original Original Version)
2. Boomin’ Grammy
3. Drinkin’ Wine
4. So What’ Cha Want (All The Way Live Freestyle Version)


 

The Linda Lindas

LAのティーンネイジャーパンクロックバンド、サマーソニック2022で来日公演が決定しているThe Linda Lindasは、、Bikini KillのErica Dawn LyleとVice Coolerとコラボした曲「Lost In Thought」をリリース。このトラックは、6月3日発売の「Land Trust」のチャリティアルバムに収録されています。


 "Lost In Thought "は、Bikini Killのメンバーとして知られるKathi Wilcox(カティ・ウィルコックス)もギターで参加している。この新曲について、The Linda Lindasは以下のように語っています。


この素晴らしいプロジェクトに、たくさんの素晴らしい友人や未来の友人と一緒に参加できるなんて、本当に素晴らしい! エリックからトラックを受け取ったのも嬉しかった。Erica、Vice、Kathiからトラックを受け取って、Viceと一緒に歌詞を書いたり、ボーカルを録音したり、ビデオを作ったりするのはとても楽しい経験だった。


 

コンピレーションアルバム「Land Trust」には、Kim Gordon、Kathleen Hanna、The Raincoats、Kelley Deal、Alice Bag、Rachel Aggsも参加しています。アルバムの収益金は、NEFOC(Northeast Farmers Of Color Landtrust)のために寄付される予定です。


”NEFOC”は、先住民族とPOCが主導する草の根組織であり、POC(概念実証)を行う農家と土地を結びつけ、人々のコミュニティのために、健康食品と医薬品を育てることを目指す団体。土地を獲得して先住民族国家に返し、先住民族の主権を中心にして尊重しながら、ブラック、アジア、ラテン系などのPOC農家、土地管理者と、その土地を結びつけることを目的としている。

 


The Linda Lindasは、スペイン・バルセロナで開催中のライブフェスティヴァル”Primavera Sound”に出演したばかりで、近々、北米ツアーに参加する予定。2回目のニューヨークでのヘッドライナー公演を追加し、7月22日に、Music Hall of Williamsburgの公演を行う。(7月19日のBowery Ballroom公演はソールドアウト)さらに、The Linda Lindasは、今秋に、ニューヨークとロサンゼルスでYeah Yeah Yeahsのライブのオープニングアクトを務める予定です。

 

 

 Angel Olsen 「Big Time」

 

 



Label:  jagujaguwar


Release Date: 2022年6月3日

 

 

中国の古い四字熟語に、「温故知新」という言葉があります。これは、日本語でいうと、ふるきをたずね、あたらしきをしる、という意味が込められた「論語」の中に登場する言葉です。その意味は、古い時代の出来事の深い理解を交えることにより、新しい時代の意味を再発見するというもの。なぜ、このような前置きをしたのかといえば、特に、アメリカのソロアーティストの中に、温故知新の精神を追い求めるミュージシャンが数多く見受けられ、エンジェル・オルセンの新作アルバム「Big Time」にも、この古い故事がぴったり当てはまるような感があるからです。

 

私は、アメリカ文化の専門家でもないため、詳しいことまでは言及できませんが、特に、最近、ファーザー・ジョン・ミスティ、ロード・ヒューロンをはじめ、米国のアーティストの間で、20世紀の初頭や中葉の音楽や文化に脚光を浴びせようと試みるムーブメントが巻き起こっているように思えます。これは「Nostalgia-Pop」ムーブメントの密かな到来と言えるかもしれません。


シカゴを拠点に活動するシンガーソングライターのエンジェル・オルセンさんは、この最新作「Big Time」において、テネシー・ワルツを中心として、カントリー、フォーク、アメリカの音楽文化の源流に迫ろうと試みており、失われたアメリカのロマンチシズム、ノスタルジアを映画のサウンドトラックのような趣のあるバラードにより探求していきます。アルバムの世界観は、徹底して物語調であり、最初から最後までそのコンセプトが崩れることはなく一貫した表現性が通っています。複数の先行シングルとして公開されたMV,「Big Time」のショートフィルムは、この音源としてのレコードを補足し、そのストーリーを強化するような役割を果たしている。

 

これまで、シンセポップ、オルタナポップ、またパンキッシュな雰囲気のあるポップス、作品ごとにそのキャラクター性を変化させてきたオルセンは、近年、アメリカの古いカントリー、フォーク、アメリカーナといった音楽に真摯に向きあい、去年には、シャロン・ヴァン・エッテンと共同制作でシングル「Like I Used to」を制作し、対外的な環境に関わらず、音楽性をひそかに磨きをかけ続けてきた。

 

そして、それらの表面的な音楽とは別に、精神的な研鑽をまったく怠らなかったことがこの作品には表れ出ています。ポピュラー音楽の内在する複数のテーマ、若い時代の思い出、家族、そして、愛情などなど、様々な文学的な表現を掲げ、それを良質な音楽としてアルバムに刻印しようと努めている。アコースティックギター、ペダルスティール、といったアメリカンカントリーを象徴するような楽器で表現しようとしており、それらが見事な形で花開いたのが、オープニングトラック「All The Good Time」、タイトルトラック「Big Time」であり、また、トム・ウェイツの最初期の作品「Closing Time」のロマンチシズムを彷彿とさせるような「Ghost Town」といった秀逸なアンセムソングです。これらはミズーリ州出身のオルセンとしてのアメリカ南部の美麗なロマンチシズムに対する憧憬のようなものが余韻として表れ出ています。

 

特に、オルセンは、この南部のカウボーイ映画のようなワイルドさの漂うアルバムの中、これまで様々な方向性を模索してきたシンガーとしての才質を余さず駆使し、複数の歌い方、正統派のシンガー、おどけたような歌い方、コケティッシュな歌い方、ウイスパーボイスと、複数のシンガーが曲ごとに歌い分けているように、作品で、ころころと自分のキャラクター性を変化させており、その辺りがエンジェル・オルセンというシンガーらしさが引き継がれていると言うべきか、正統派の歌手の大きな成長とともに、歌手としての大きな真価が伺え、特に、この七変化する歌唱法を聴くために、この作品を聴いたとしても大きな感動がもたらされるでしょう。

 

エンジェル・オルセンは、このアルバムが発表される直前のタイトルトラック「Big Time」のリリースにおいて、「この曲を母親に聞かせたかった。もし、母親がこの曲を聴いてくれたら素晴らしいといってくれただろうに・・・」というコメントを添えていたのを覚えています。この言葉はアルバムの確かな手応えを象徴していたと思いますが、間違いなく、もし、彼女の母親が生きていたら多分そのように言ったはずです。

 

そして、以上のコメントは、このアメリカ国内でも、シャロン・ヴァン・エッテンに比する実力を持つシンガーソングライターのこの作品に込められた万感の思いで、この作品がオルセンさんにとって、どれほど大切なものであるかを示しています。この作品は、これまでのエンジェル・オルセンのキャリアの中で記念碑的なアルバムでありながら、このシンガーソングライターの音楽の物語の序章ーオープニングに過ぎない。それは、ジャズを下地に独特なポピュラー音楽として昇華された名曲「Chasing The Sunー陽を追う」の劇的でドラマティック、さらに、オーケストラ・ストリングスのアレンジが、ゆるやかに、深い情感を伴いながら、徐々にフェイド・アウトしていくとき、言い換えれば、作品そのものの持つ世界が閉じていくまさにその瞬間、多くの聞き手は「この音楽の物語はまだまだ終わりではなく、これからも続いていく・・・」という、このシンガーからの素敵で勇敢なメッセージの残映を捉えるはずなのです。

 

Critical Rating:

96/100 



Weekend Featured Track 「Big Time」

 

 



・Amazon Link


 

Nils Frahm

 「Tripping With Nils Frahm」は、元々、ブラッド・ピットのPlan Bとニルス・フラームによって映像化した2018年の伝説的ライブで、映像に収録された音源がErased TapesよりCD/LP化されて2020年に発売されました。今回、ドイツのLeiterは、 「Tripping With Nils Frahm」を鮮明な映像によって提供するべく、Blu-ray盤として再発すると発表しています。

 

「Tripping With Nils Frahm」は、2018年から2019年のニルス・フラームのワールド・ツアー「All Melody」ツアーの瞬間を映像として捉えた作品で、ファンクハウスベルリンの伝説的なSeal1でのパフォーマンスを映像記録として収めています。 コンサートフィルムは、Plan B Entertainmentと共同で、ニルス・フラームが主宰するLEITERによって制作が行われた。また、この映画は、2020年に初公開され、視聴者投票により、MUBIで最も視聴された映画のトップ25にランクインし、さらに最も高い映画としてランク付けが行われています。 

 

 

 


また、複数のメディアは以下のように「Tripping With Nils Frahm」について説明しています。


「この映画は、親しみやすいものであり、なおかつ、壮大でもある。カメラの躍動するクローズアップが、ニルス・フラームのパフォーマンスの繊細な瞬間を捉えているのが見事だ」 

 

ーDJ Mag


「ニルス・フラームが素晴らしいライブパフォーマンスをしている瞬間、さらに、観客がそれに反応を示すのを映像を通して鑑賞すること、それはまさに世界的なトップアスリートの人並み外れた競技を見るのと変わりないことだ」

 

ーLA TIMES

 

 

ニルス・フラームは、現在、ライブツアーを開催している。今後、シドニーのオペラハウスに出演し、「Music Four」という名の新たなツアーのワールドパフォーマンスを行う。また、9月から、彼はヨーロッパツアーを予定しており、実験的、アンビエント、エレクトロニカを行き来する新たな音楽を観客の目の前で披露する。「Tripping With Nils Frahm」のBlu−Rayバージョンの予約、ライブの日程、チケット等につきましては、Leiterの公式サイトにてご確認下さい。

 

Liter-Verlag:  https://store.leiter-verlag.com/products/tripping-with-nils-frahm


joan Shelly photo:Mickey Winters
 

米国・ケンタッキー出身のフォークミュージシャン、ジョーン・シェリーは、数週間後にニューアルバム「The Spur」のリリースを控えています。新作アルバム「The Spur」は、ジェイムズ・エルキントンがプロデュースし、メグ・ベアードや小説家マックス・ポーターといった人々が参加している。Joan Shelleyは3枚目の先行シングルとなるタイトルトラックを先日発表しました。


この曲「The Spur」は、彼女のパートナーであり、これまで頻繁にコラボレーションを行っているアコースティックギタリスト、Nathan Salsburgの協力のもと、家庭生活の喜びを讃える牧歌的な雰囲気を擁する曲となっています。Salsburgのシンプルでメロディックなギターと、Shelleyの表情豊かで自信に満ちた麗しい歌声が見事に調和し、穏やかで寛いだ雰囲気が漂っています。 

 


 

 

 

Joan Shelly 「The Spur」



Label: No Quarter


Release Date: 2022年6月24日


Tracklist

 

1.Forever Blues

2.The Spur

3.Home

4.Amberlit Morning

5.Like The Thunder

6.When The Light is Dying

7.Breath For The Boy

8.Fawn

9.Why Not Live Here

10.Boit

11.Between Rock &Sky

12.Completely

 

 

 

音楽は、常に、芸術的な優雅さが欠かせないのと同じく、常に、物理学、数学的思考がなければならない。

 

そして、この考えに非常に近い考えを持っていたのが、世に傑出した相対性理論を証明したかのアルベルト・アインシュタイン氏です。アインシュタインは、これまで歴史上多くのパイオニアにインスピレーションを与えてきましたが、彼自身の概念的思考の発展において、音楽というのは、非常に特別な役割を果たしていました。その生涯において、ヴァイオリン、ピアノ、更に、晩年、エレキギターを演奏していたともいわれるアインシュタインの音楽へのたゆまざる愛情は、単なる物好きなどでなくて、彼の世界観や宇宙観を形成する永続的な情熱だったのです。


幼い頃から音楽に親しんでいたアルベルト・アインシュタインは、「もし、科学に人生を捧げていなかったら、音楽家になりたかった」と後に語っています。「もし、物理学者でなかったら、おそらく音楽家になっていただろう。私は、よく音楽の中で考える。白昼夢も音楽で見ている。私は自分の人生を音楽の観点から見ています...私は人生のほとんどの喜びを音楽から得ているのです」


アルベルトの母親パウリーネ・コッホは、音楽家であり、幼い時代の彼に音楽の勉強をするように促しましたが、5歳の時、将来のノーベル賞受賞者は動じなかったそうです。13歳の時、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタに出会い、独学でヴァイオリンを弾くようになり、音楽に目覚めたのでした。


アルベルト・アインシュタインは生前、モーツァルトへの深い愛着を持ち続けていたが、ベートーベンの曲は演奏が得意だったにもかかわらず、それほど感動することはなかったという。高校時代、アインシュタインは、実際にベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタを演奏し、試験官から「この少年は音楽に対する情熱が素晴らしく、その演奏に洞察力がある」と称賛された。


アインシュタインは、モーツァルトに加え、バッハの熱狂的な大ファンとして知られていて、「2つのヴァイオリンのための協奏曲」をよく演奏していました。アルベルト・アインシュタインがヴァイオリンの才能に恵まれていたことをご存じの方は多いはずですが、2番目の妻エルザは、物理学者と恋に落ちたのは、彼の弾くモーツァルトの演奏が崇高だったからだと明かしています。


また、アルベルト・アインシュタインは、モーツァルト、バッハの他に、ヴィヴァルディ、シューベルト、スカルラッティ、アルカンジェロ・コレッリなどをはじめとするドイツ、オーストリア、イタリアの古典派やロマン派の作曲家を好んで演奏していた。

 

しかし、彼は、リヒャルト・ワーグナーを倦厭しており、以下のような有名な言葉を遺している。「言うまでもなく、リヒャルト・ワーグナーの創意工夫には感心しますが、彼の建築的構造の欠如はほとんど退廃的としか思えません。さらに、「私にとって、ワーグナーの音楽的性格は、何とも言えず不快なものであり、ほとんどの場合、嫌悪感を持ってしか聴くことができません」と述べています。しかし、これらの問題には、ドイツ生まれのユダヤ人としてのアインシュタインの民族性における音楽的志向、つまり、ワーグナーとナチの密接な関係が少なからず潜んでいるように思えます。


相対性理論、重力波といった難解な理論的テーマ、それを解き明かすためのアルベルトの長期間にわたる物理学的構想は、彼の音楽的構造への深い理解に左右されているとさえ主張する専門学者も中にはいます。たとえ、そのような主張が突飛なものであったと仮定するにしても、彼が仕事のプロセスに音楽を取り入れ、しばしば音楽を通して障害を乗り越えていたことは間違いありません。


アルベルト・アインシュタインは、相対性理論を証明した最初の科学者としても知られていますが、その点の功績を取り上げられると、彼は、生前、「誰よりも長く、一つの問題に集中して取り組んできただけである」と説明しています。しかしながら、その間には、様々な難問をくぐりぬけねばならなかったはずであり、彼はこの問題解決へのアプローチと独自の作業プロセスについて一家言もっており、生前、次のように語っています。「しかし、即興ーインプロヴァイゼーションで、何かを成し遂げようとしているとき、セバスティアン・バッハの明快な構成力が是非とも必要になるのです」以上のアルベルトの言葉は、セバスティアン・バッハのインヴェンション、平均律、イギリス、フランス組曲といったピアノ曲の構造性、マタイ受難曲を始めとする論理的な構造をなす、長大な宗教曲や交響曲が、いかに彼の物理的思考に強いインピレーションを与え、さらに、重力波や相対性理論といった人類の難問を解き明かすための大きな助力となっていたのか伺えるのです。


ご存知の通り、アルベルト・アインシュタインは、原子爆弾の開発に携わった人物ではあるものの、それ以外にも他の人物にはなしえない物理学、数学に大きなイノヴェーションもたらした偉人でもある。モーツアルトやバッハといった上記のような先見の明のある人たちの作品を通して、それらの構造的な音楽の内奥に長きにわたり接することにより、その物理学的な構造の中にある核心のようなものを捉え、さらには、未知の領域に踏み出すための適切なインスピレーションを得、まったく驚くべきことに、宇宙に関する我々の理論を180°変えてしまった。つまり、未来における物理の常識を覆してしまった。かれは、最も有名な「相対性理論」の中で、光の伝達する速度について、難解な数式を介して解き明かしてみせた偉大な人物でもありますが、しかしまた、音楽の関係性を通じて、科学と芸術の融合の想像を絶する進歩、前例のない創造的な発見をもたらすことを証明したわけです。もちろん、以上のエピソードから、もし、アルベルトが生涯にわたり、バッハやモーツアルトの音楽に深い親しみを覚えていなかったら、と最後につけくわえておかなければなりません。数々の偉大な物理学の証明もなければ、数々の発明品もこの世に生まれでることはなかったはずなのです。

Primavera Sound Barcelona '22 Photo Credit:Christian Bertrand
 昨日(6月2日)開幕したバルセロナのPrimavera Soundの主催者は、今年のイベントの開催をめぐる、ソーシャルメディア上の広範な苦情に対して謝罪の意を表明している。 

 

毎年恒例のParc del Fòrumで開催されている今年のPrimavera Soundは、COVID-19の流行により、2020年と2021年に連続してキャンセルされた後、2019年以来の開催となった。しかし、この24時間の間に、多くの参加者がTwitterなどのソーシャルメディアに、フェスティバル会場の一部で危険な過密状態やボトルネックが発生していることや、さらに、スペイン、バルセロナの暑さで水が手に入らないこと、バー・スペースに数時間の行列ができることなどを訴えている。


Primavera Soundは、ソーシャルメディアを通じ発表した声明の中で、次のように述べている。「今日でPrimavera Soundは、2日目を迎えました。昨日のバーサービスの問題については承知しており、お詫び申し上げます。私たちは、私たちにふさわしいこれからの日々を楽しむことができるように、それらを解決するためにたゆまぬ努力を続けています。それではまた午後に!!」


プリマヴェーラ・フェスティバル会場の入り口では、警備員が参加者から水の入ったボトルを取り上げており、昨日の初日には参加者が利用できる水のアクセスポイントは3カ所のみだった。その後、フェスティバルの主催者は、本日(6月3日)より給水ポイントを6か所に増やすと発表している。また、多くの人が2時間待ちと報告しているバーでの問題に対し、フェスティバルの運営チームは、より多くのスタッフを配置し、より多くの行列が報告されている場所に応じて、他のスタッフを会場内に配置する予定であると述べている。


今年のイベント参加者からの不満は、フェスティバル会場周辺のVIP専用エリアのチェックがますます厳しくなっていることに関連しており、会場の2箇所をつなぐ橋が、より高価なVIPチケットを購入した人しか利用できないようになっている。結果、一般チケットの参加者は、フェスティバルのもう一方のエリアに行くために、より長く、より混雑した会場を歩かなければならなくなったのです。


tQの投稿者であるDaniel Dylan Wrayさんは、今年の運営について「完全に馬鹿げている」と評し、Twitterでさらに次のように語っている。「10年以上、ほぼ毎年Primaveraに通っているが、昨晩は今までで一番ひどい運営方法だった。あらゆるものに非常識な行列ができ、過密状態で、いくつかのステージに行き、実際にバンドを見るのは難しく、水へのアクセスも最悪だった」これは十年このライブイベントに参加してきた実体験者にしか語り得ない意見である。


さらにまた、別の参加者であるDavid ThorpさんはTwitterで次のように語っています。「プリマヴェーラ・サウンドは安全とは言いがたい。売れ残り、水のアクセスポイントなし、いたるところで人波に押しつぶされるので、一つのステージから他のステージに移動するのはほぼ不可能に近い。明日までに何ができるかわからないけど、今までで一番最悪なフェスティバルだった」


Twitterで「Primavera」という言葉をさらに検索し、過去24時間のフェスティバル自身のツイートへの反応を見てみると、同様の内容の苦情が他にも多数寄せられていることがわかる。


今年のフェスティバルには、Pavement、Gorillaz、Charli XCX、The Nationalなどがヘッドラインとして出演します。今週末に同フェスティバルでヘッドラインを務める予定だったザ・ストロークスは、ツアー中のグループ内でCOVID-19を発症したため、今週初めにキャンセルを余儀なくされた。


 

Cafuné. Credit: Noah Falge




ニューヨークを拠点に活動するシンガーソングライターSedona Schatとライター・プロデューサーのNoah Yooによるデュオ、Cafunéが、新たにElektra Recordsと契約を結びました。Natia Sopromadzeがプロデュースし、Crux Animation StudioのFrederick Venetが監督した「Tek It」のアニメーション・ミュージックビデオが公開されました。下記よりご覧ください。


2019年にリリースされた「Tek It」は、カフネの2021年のデビュー・アルバム『Running』に収録されている。この曲は、最近、全世界で4500万回のストリーミングを記録し、ビルボードのBubbling Under Hot 100チャートでトップ5入りを果たし、バイラル盤として再発されている。また、Cafunéは、今後、CHVRCHESの北米ヘッドライン・ツアーでサポートを務めることも発表されています。