Fabiano do Nascimento & Vittor Santos e Orquestra 『Vila』


 

Label: Far Out Recordings

Release: 2026年2月27日

 

Review

 

ファビアーノ・ド・ナシメントはブラジル出身のギタリスト/作曲家/プロデューサーで、広がりのある独自のサウンドを確立している。

 

幼い頃にクラシックピアノを学び、リオデジャネイロで10歳からギターを始めた。最終的に、ナシメントは故郷ブラジルを離れ、ロサンゼルスにわたり、時々、東京を往復しながら、音楽制作を続けている。これまでに、ナシメントは、サム・ゲンデル、カロス・ニーノ、笹久保伸と共同制作を行っている。彼の主な作風は、ブラジルの伝統的な音楽、ショーロ(Choro)、サンバ、ジャズ、エレクトロニックなどを呼応させる、新鮮味あふれるスタイルを特徴としている。

 

先週末発売された『Vila』はファビアーノ・ド・ナシメントのギター音楽を中心に(時々ピアノやエレクトリック・ピアノも入る)、トロンボーン奏者のヴィットー・サントスが率いるオーケストラとの豪華な共演作品である。『Vila』の舞台となったのは、リオのカテテ地区にある鋳鉄製の門の裏にある小さな路地。この終点には、バイロ・サアペドラがあり、ネオコロニアル様式の建物が並ぶ。ナシメントは彼が子供時代に過ごした地区にちなむ音楽作品を作り上げた。

 

『Vila』の全体的な音楽は、形骸化したシーンに一石を投じるような驚きに満ちている。ブラジル音楽の伝統であるショーロを中心に、流麗なオーケストレーションが繰り広げられる。インストゥルメンタル曲が主体となっているが、一曲目に収録されている「O Tempo」だけはボーカルが後半に登場し、ブラジル音楽のスタイリッシュでおしゃれな感覚、情熱的な雰囲気を体感できる。

 

ファビアーノ・ナシメントは、現代のギタリストとして最高峰にあるといっても過言ではない。南米音楽の転調の多い和声進行、矢継ぎ早に変化する和声など、スリリングさと落ち着きを兼ね備えた素晴らしい演奏を聴ける。作曲としては、転調の巧みさも卓越しているが、変拍子によって驚くようなシークエンスを登場させることもある。ボサノバやサンバを吸収したリズミカルなサウンドは、他地域の音楽には見つからず、南米音楽の高水準の音楽性を象徴している。また、オーケストラのなめらかなストリングスがアコースティックギターの周りを取り巻き、開放感のある音楽を形成している。そこにジャズの響きが加わり、ワールドミュージックとしても、モダンジャズとしても、クラシックとしても存分に楽しめる作品に仕上がっている。

 

全般的には、『Vila』はブラジル音楽のおしゃれさを堪能するのに最適な一枚と言える。しかし、このアルバムの魅力は表面性な印象だけにとどまらない。広やかで開放的な感覚を持つVitter Santos Orchestraの演奏は、アルバムの舞台であるカテテ地区の路地裏の風景を想起させ、石畳の街路、石造りの住居から差し込む陽の光、また、アルバムのアートワークに表されるような子どもたちの歓声が音楽の向こうから立ち上ってきそうだ。ナシメントは、この音楽を通じて、自分の幼少期に、この路地裏で遊んだ経験を回想し、そこに淡い抒情性を卒なく添える。


「Spring Theme」のようなボサノバの音楽性を活かしたオーケストラ音楽は、この土地の安らいだ雰囲気や陽だまりのような穏やかさと温かさを持ち、どことなくセンチメンタルな気風に縁取られている。ド・ナシメントのギターは生きているかのように空間を揺れ動き、粒子を振動させる。その背後には美麗なストリングスが配され、スムーズなレガートからトレモロに至るまで微細な空気感を作り上げている。また、コンガのような打楽器が後から加わり、心地よいリズムを作り上げる。アンサンブル全体が水の流れや春の風のよう雰囲気を見事に呼び覚ます。

 

「Teme Em Harmonics」は音のハーモニーの美しさやギター音楽の素晴らしさを体験できる。ショーロやサンバのアグレッシヴなリズムを活用しながら、 そしてトロンボーンの華やかな音色を引き立てるかのように、リズムギターでハーモニクスの演奏を巧みに表現し、バリエーションに富んだ色彩的な音楽性を発露させている。この曲ではジャズ風の遊び心のある即興性がリズムの中に組み込まれ、それらが最初のモチーフを中心として面白いように転がっていく。

 

全体的に、南米音楽らしい陽気な音楽が中心となっているが、ハッと目が覚めるような曲もある。「Uirapuru」は印象的なアコースティックギターのイントロから、モダンジャズの演奏へと移行していく。曲の後半では見事なアンサンブルが構築され、サンバのような音楽性へと繋がる。その中で登場するヴィットー・サントスのトロンボーンの味のあるソロにも注目しておきたい。

 

イントロの主題はスペインの作曲家、フェデリコ・モンポウのような淡い叙情性があり、ナシメントのギターはモンポウのピアノ曲集『Impresiones』の収録曲「La Barca」のような哀愁溢れる空気感を生み、高音部にピアノの即興的な遊び心のある演奏が加わり、ドラムのスネアやハイハット、シンバルを中心に、モダンジャズのしなやかな演奏が華麗な印象を携えて続いていく。 

 

中盤では、オーケストラストリングスのレガートが際立っているが、アンサンブルとしても豪華で、フルート、エレクトリック・ピアノ(ローズ・ピアノ)など多角的な器楽を交えて重層的な音楽が構築される。このアルバムは、単なる回想やリオの風景の描写にとどまらず、ポストコロニアル様式の建築を想起させる、堅牢かつ優美な音楽のイメージが生かされている。中盤でのアコースティックギターに対して、コールアンドレスポンスのように、ストリングスやピアノが見事に呼応するカノンの形式は、『Vila』の音楽的なハイライトとなるかもしれない。また、ジャズアンサンブルの枠組みを超越して、ビックバンドのような華やかな演奏が終盤に登場する。ここでは、色彩的な和音や対旋律の組み合わせが広大な音楽世界を作り上げている。制作者が子供の頃体験したブラジルの風景はこれほどまでに壮大であったのかと頷かせる。

 

 

「Valsa」は感動的である。ここでは、 ベースのような重低音を活かしたエレクトリックの弦楽器を使用し、ピチカート/ハーモニクスを中心にモード奏法が展開される。そのサウンドの風味は伝説的なジャズベーシスト、ジャコ・パストリアスにも似た感覚がある。従来のジャズアンサンブルのモード奏法では、トランペット、コントラバスがそれに呼応する形だったが、「Valsa」では、 オーケストラストリングスが中心的な役割を担う。背後にはブラシを用いたドラム、コントラバスが心地よく鳴り響き、芳醇な室内楽の音楽が醸成される。ここでは、昼下がりのゆったりとした安らぎのひとときや癒やされるような瞬間がジャズとして縁取られている。この曲では他曲よりも映画音楽のような雰囲気があり、映像的な印象を捉える事もできる。 

 

「Floresta Dos Sonhos」ではブラジル音楽の「ソン」のようなスタイルを感じさせるが、ギターの作法としてはスペイン音楽やフラメンコのような情熱的な哀愁をどこかに留めている。曲は落ち着いた印象のあるアルペジオを中心に組み立てられ、ストリングスのアーティキュレーションを通してダイナミックな変遷を辿っていく。南米的な情熱は落ち着きのあるどっしりとした街路にある塑像のようなイメージをなし、このアルバムの音楽的なストーリーの中核を担う。


アルバムの始めは、散歩やスキップのように緩やかな速度を形成していた音楽がにわかに走り始め、全般的なストーリーの核心とも言えるシークエンスを作り上げる。この曲では、インストゥルメンタル曲としてのストーリテリングやブラジルの街の歴史を感じさせる。少し大げさにいうなら、そこには開拓の歴史や人類史におけるロマンチシズムが反映されているのである。

 

音楽というのは、一連の長大な文化史でもある。アルバム『Vila』を聴けば、ヴィラ・ロボスのような象徴的な作曲家を中心に発展してきたブラジル音楽が、クラシックの影響を多大に受けており、なおかつまた、ジャズの要素を吸収してきたことを確認できるのではないか。もちろん、それは、ブラジルのサンバのリズミカルな要素や哀愁の気風と共に、南米の重要な文化性を担ってきた。ようするに、本作は見方を変えれば、南米音楽の文化史の発現のようなものではないか。本作の終盤も優れた曲が多いので聴き逃さないで頂きたい。「Plateau」、「Vittor e Fabi」のような曲は、ファビアーノ・ド・ナシメントの新しいスタンダード曲が誕生した瞬間だろう。この曲集を聞くと、実際にブラジルの街を歩いたような優雅な気分に浸ることができる。

 

 

90/100

 

 



▪︎南米音楽の記事:


・CHORO(ショーロ) ~リオのカーニバルの核心を担うブラジル音楽の原点~

ロサンゼルスのオルタナティヴロックバンド、Goonが昨年のフルアルバム『Dream 3』に続いて、ニューシングル「Atrium」を早くもリリースした。

 

本作には、GOONの絶賛された『Dream 3』からB面2曲が収録される。7インチ・ヴァイナルで初リリースとなる。アコースティックギターをメインにしたメロディアスなロックソングだが、ヘヴィーな質感が滲む。そこにはポスト・ハードコア的なニュアンスがわだかまっている。


『アトリウム』という曲は『ドリーム3』のレコーディング中に生まれた。スタジオにクレアと僕だけが残った日のことだった」

 

「録音を始めるまで全くリハーサルはしていなかった。 私が持っていたのは、ロブ・クロウ(Pinbackに在籍)の『ヘヴィ・ベジタブル』や『シングイ』のスタイルに触発された、ドロップDチューニングのメインギターリフだけだった」

 

「歌詞はすぐに浮かび、ほとんど編集されなかった。そこには、恨み、失恋の感情、そして他人を心から愛する前に、まず自分自身に対する確固たる愛が必要だという考えが込められていた」

 

Goonは今後、イギリスのを中心にツアーを開催予定。ブライトン、ノーウィッチ、マンチェスターでのステージをこなす予定だ。



フィラデルフィアのシンガーソングライター、グレッグ・メンデスがDead Oceansから初のフルアルバム『Beauty Land』を5月29日にリリースすることを明らかにした。本作の大部分は自宅スタジオで直接テープに録音された。


アルバムのオープニングトラックとなる「I Wanna Feel Pretty」が公開された。この曲は、オーケストレーションが加わる前は、彼の『ファースト・タイム/アローン』の素朴な楽曲とよく似た始まり方をしている。

 

ライアン・スカラボジオがミュージックビデオを監督し、メンデスはこう語っている。「私は幼少期の大半を郊外で過ごし、アメリカン・ドリームに囲まれて育った。壮大で孤独な、ストリップモールと住宅開発地。消費主義と大衆文化の再構築の聖堂。 店は町のために建てられたのではなく、町は店のために建てられた。誰も本当の意味で属していない。夢は匂い立つほど近くにあるが、手を伸ばせばすぐ通り抜けてしまう——約束のホログラム。この映像にそんな感覚を込めたかった」と語っている。


「I Wanna Feel Pretty」

 

 

Greg Mendez  『Beauty  Land』

Label: Dead Oceans

Release:  2026年5月29日

 

Tracklist:

1. I Wanna Feel Pretty

2. Looking Out Your Window

3. Mary / Dreaming

4. Everybody Wants To Be Your Friend (Except Me)

5. Gentle Love

6. Frog

7. It Breaks My Heart

8. Sunsick

9. No Evil

10. Geranium

11. Interlude in D Minor

12. Serving Drinks

13. So Mean

14. Concussion

 

▪Pre-order: https://greg-mendez.lnk.to/i-wanna-feel-pretty

 


daisuke tanabe(ダイスケ タナベ)は、2026年2月25日(水)より3月10日(火)まで、阪急メンズ大阪5階 GARAGE D.EDITにてポップアップイベントを開催する。本イベントは伊勢丹新宿に続く開催となる。大阪は京都と並び、新しい関西のファッションの中心地として認知されつつある。



本イベントでは、最新コレクション season 03 "x" のほぼ全てのアイテムを関西エリアで初めてフルラインナップで展開する。高級感のある黒を基調とするレザージャケット、ヴィンテージデニムなどを中心に展開され、当ブランドのコンセプトが遺憾なく発揮されている。


ダイスケ・タナベは、今シーズンは「二面性」と「対称性」をベースに、高度な素材開発と構造的な実験を試みた。シルバー染色を施したゴートレザーと最軽量のVentile®コットンを組み合わせたリバーシブルアウターや、ヴィンテージデニムの経年変化を織り組織によって再構築したジャカードテキスタイルなど、独自の哲学を投影したワードローブを構築している。西陣織を学んだデザイナー、ダイスケ・タナベは日本と西洋のファッションの伝統を見事に掛け合わせた。


新作コレクションの全容を、直接ご覧いただける機会となります。皆様のご来場を心よりお待ちしております。


 
▪︎daisuke tanabe season 03 pop-up at Hankyu Men’s Osaka


会期:2026年2月14日(水)〜 3月10日(火)
会場:阪急メンズ大阪5階 GARAGE D.EDIT
住所:〒530-0017 大阪府大阪市北区角田町7-10



▪︎about daisuke tanabe:


daisuke tanabeは2024年に設立されたウィメンズ・メンズウェアブランド。
映画や小説、写真を元に創作したフィクションをベースに、世界各地の伝統的な職人技術と、前衛的なテクノロジーをミックスしたコレクションを展開する。実験的なクリエイションはファッションという概念の軽やかさと、ものづくりの厳かさの両面性を表現し、ハイエンドな素材と独創的なパターンを織り交ぜて体現する。


about designer:

田邉大祐(Daisuke Tanabe)
2021年に京都大学経済学部を卒業後、株式会社細尾に入社。
2023年に独立し、ファッションブランド「daisuke tanabe」を立ち上げる。
2024年2月にファーストコレクションを発表し、国内外での展開を始める

▪︎柴田聡子が待望のバンドセットでのツアー開催決定!柴田聡子が2026年6月よりバンドセットで巡る全国ツアー「柴田聡子TOUR“夏’26”」を開催



柴田聡子が2026年6月よりバンドセットで巡る全国ツアー「柴田聡子TOUR“夏’26”」の開催を発表した。ツアーは6月03日(水)東京・EX THEATER ROPPONGIを皮切りにスタートします。


全国9都市を巡り、ツアーファイナルは7月12日(日)自身最大キャパシティとなる昭和女子大学 人見記念講堂にて開催される。


柴田聡子は今夏開催の「FUJI ROCK FESTIVAL '26」への出演も決定しており、本ツアーは現在の柴田聡子の充実した活動を体現する内容となりそうだ。なおツアーのチケット、オフィシャル先行受付を3月29日(日)まで実施中。


▪︎LIVE INFORMATION 柴田聡子TOUR"夏’26"


・2026年6月03日(水)

東京都・六本木 EX THEATER ROPPONGI open 18:00/start 19:00

問い合わせ DISK GARAGE [ https://info.diskgarage.com ]


・2026年6月05日(金)

愛知県・名古屋 BOTTOM LINE open 18:00/start 19:00

問い合わせ ジェイルハウス [ 052-936-6041 ]


・2026年6月13日(土)

広島県・広島 LIVE VANQUISH open 16:00/start 17:00

問い合わせ YUMEBANCHI (広島) [ 082-249-3571 ]


・2026年6月14日(日)

福岡県・福岡 UnitedLAB open 16:00/start 17:00

問い合わせ BEA [ 092-712-4221 ]


・2026年6月19日(金)

宮城県・仙台 darwin open 18:30/start 19:00

問い合わせ GIP [ 022-222-9999 ]


・2026年6月20日(土)

新潟県・新潟 GOLDEN PIGS RED open 16:30/start 17:00

問い合わせ FOB新潟 [ 025-229-5000 ]


・2026年6月28日(日)

北海道・札幌 近松 open 16:30/start 17:00

問い合わせ WESS [ info@wess.co.jp ]


・2026年7月04日(土)

石川県・金沢 AZ open 16:30/start 17:00

問い合わせ FOB金沢 [ 076-232-2424 ]


・2026年7月07日(火)

大阪府・大阪 BIG CAT open 18:15/start 19:00

問い合わせ 清水音泉 [ 06-6357-3666 ]


・2026年7月12日(日)

東京都 昭和女子大学 人見記念講堂 open 16:00/start 17:00

問い合わせ DISK GARAGE [ https://info.diskgarage.com ]



出演:柴田聡子(BAND SET)


▪︎TICKET INFORMATION


<前売り価格>

・EX THEATER ROPPONGI公演 アリーナスタンディング6,000円(D代別)/スタンド指定席 6,000円(D代別)

・昭和女子大学 人見記念講堂公演 全席指定 6,000円

・福岡UnitedLAB公演 全自由 6,000円(D代別)

・その他公演 オールスタンディング 6,000円(D代別)


<オフィシャルサイト先行>

受付日時:2026年3月02日(月)21:00~3月29日(日)23:59

受付URL:[ https://l-tike.com/shibatasatoko ]



柴田 聡子 SATOKO SHIBATA:


シンガー・ソングライター/詩人。北海道札幌市出身。武蔵野美術大学卒業、東京藝術大学大学院修了。2010年、大学時代の恩師の一言をきっかけに音楽活動を始める。


2012年、1stアルバム『しばたさとこ島』でデビュー。以来、演劇の祭典「フェスティバル/トーキョー13」では1時間に及ぶ独白のような作品『たのもしいむすめ』を発表するなど、歌うことを中心に活動の幅を広げ、現在までに7枚のオリジナル・アルバムを発表。2024年リリースのアルバム『Your Favorite Things』がCDショップ大賞2025<赤>大賞を受賞。


2016年、第一詩集『さばーく』を上梓。同年、第5回エルスール財団新人賞<現代詩部門>を受賞。2023年、エッセイ集『きれぎれのダイアリー』を上梓。2024年に上梓した第二詩集『ダイブ・イン・シアター』が第31回中原中也賞最終選考作品に選出。寄稿も多数で、「しずおか連詩の会」への参加など、詩人・文筆家としても注目を集めている。


2025年、シングル『Passing』、『ときめき探偵』をリリース。文を手がけた初の絵本『きょうはやまに』(絵・ハダタカヒト)の単行本を上梓。客演や曲提供なども多数で、その創作・表現はとどまるところを知らない。


弾き語りとバンド編成により縦横無尽のライブ活動を展開。RISING SUN ROCK FESTIVAL 2025 in EZO や ASAGIRI JAM’25、FUJI ROCK FESTIVAL’26 など、大型フェスへの出演も果たしている。


イゴール・ストラヴィンスキーの肖像


イゴール・ストラヴィンスキーのバレエ曲『春の祭典-The Rite of Spring(仏: Le Sacre du printemps)』について触れるのは、もうすぐ春が来るからという単純な理由に過ぎない。今なお世界的な楽団や指揮者、バレエの演出家がその再現に手を焼く、難解なオーケストラの名曲だ。ストラヴィンスキーはロシアからアメリカに亡命した作曲家である。スターリン政権下で芸術が国家に対する捧げ物となり、表現における自由を求め、新天地アメリカでの活躍を夢見た。

 

フランスでバレエ文化が花開き、ルイ14世の御代の国家的な芸術として確立後、 20世紀の初頭になり、パリでバレエ音楽が再興した。新しい命を吹き込んだのがストラヴィンスキーだった。彼はそもそも、それ以前のロシア学派の音楽スタイルとは明確に異なるスタンスを選んだ。

 

チャイコフスキー、リムスキー・コルサコフ、ショスターコーヴィッチといったロシアの代表的な作曲家の多くは国民楽派の流れを汲んでいると言えるが、ストラヴィンスキーだけは「新古典派」に位置づけられ、異端的とみなされることが多い。その理由は、アマデウス・モーツァルトの前古典派の様式、および、JSバッハのバロック様式を明確に継承しているからである。

 

ストラヴィンスキーがグスタフ・マーラーなどを始めとする作曲家と明確に異なるのは、ロココ様式やギャラント様式のように全体的な音の構成を均一化したり簡略化するからで、なおかつ、主題や主旋律を驚くほどクリアに際立たせる中世の宮廷音楽に近いスタンスを選んでいるからである。また、ストラヴィンスキーはロココ/ギャラント様式に新しい芸術形式を付け加えた。

 

それが、ピカソなどに象徴される原始主義ーーフォービズム/プリミティズムーーである。フォービスムは絵画芸術の用語であり、1905年にパリで開催された展覧会「サロン・ドートンヌ」に出品された原色をふんだんに使用した強烈な色彩とタッチを持つ絵画の作品群を示唆していた。


マティス、ルオー、ゴーギャンなどがこの作風に該当し、現地の批評家ルイ・ヴォークセルが「まるで野獣(Fauve)の檻の中にいるかのようだ」と評したことに因む。ストラヴィンスキーの音楽がフォービスム派の絵画の印象と近似しているのは、音そのものが目の覚めるような色彩を擁するからである。それはまた音楽としての線やフォルムを際立たせるという作曲の技法を意味する。また、それがストラヴィンスキーの音楽をスタイリッシュにしている要因でもあろう。

 

ポール・ゴーギャン作 「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」(1897)

20世紀は、多くの音楽家にとって「再生の時代」でもあった。音楽が何のために存在するか、その意義を書き換えねばならなかった。原始主義が絵画の芸術形式として確立される中、1913年5月29日、まだこけら落としが済んでまもない、パリのシャンゼリゼ劇場にどよめきが起こった。ストラヴィンスキーが「バレエ・リュス」のために書き下ろした『春の祭典ーーThe Rite of Spring』がスキャンダラスな観客の反応を巻き起こし、音楽の歴史の一大革命となったのである。

 

シャンゼリゼ劇場で『春の祭典』が初演されたとき、ストラヴィンスキーはそれほど有名ではなかった。興行主のディアギレフが彼を起用した理由は、それ以前の数年間で制作された『The Firebird(火の鳥)』、『Petrushuka(ペトリューシカ)』でスラブ民族の共鳴と深い信頼関係が培われていたからだった。新作バレエに取り組むに際して、ストラヴィンスキーは、考古学的な研究に触発され、''春の初めに処女が犠牲になる''という着想をもとにして、これらをバレエ音楽として完成させようと試みた。実際に、ストラヴィンスキーは、考古学者、画家、衣装デザイナーのニコラス・ロエリッヒに助力を仰ぎ、スラブの伝統や儀式をバレエ音楽に盛り込もうとした。

 

ディアギレフも作品を完成に導くため、総合演出プロデューサーとして尽力した。ディアギレフは、ワーグナーが『オペラ・ウント・ドラマ(Opera Unt Drama)』という著書で記した「Gesamtkunstwerk(総合芸術)」に独自の解釈を施そうとした。ディアギレフは、ストラヴィンスキーと考えを共有しようと試みた。つまり、それは19世紀に西洋社会全体を支配していた芸術全般を道徳観や習慣の枠組みから開放するという思惑であった。実は、この芸術概念はフロイトがみずからの著書で紹介し、1913年頃にヨーロッパに浸透していた。彼らはパブロ・ピカソのように、現代社会への暴力的な芸術の再生が新しい生命力を呼び起こすと信じてやまなかった。 


左(男性)からディアギレフ、ニジンスキー、ストラヴィンスキー、ロシアの人々と


推測するに、ディアギレフが目指していたバレエの形式は、リヒャルト・ワーグナーが言う「総合芸術」の進化版だったのだろう。絵画に組み込まれているフォービスムの表現がキャンバスの枠組みを離れ、三次元の映像力により、最終的に鮮やかな生命を得るというものである。


『春の祭典』のバレエの動きに、コミカルなトーキー映画のような表現力が見いだせるのはこのためだろう。初演では、旧来の形式に則った優雅な動きは存在せず、ぎこちない、かくかくとした動きが特徴であった。不協和音の嵐、アフリカ発祥のポリリズムを模した複合的なリズムなどは、当時の一般的な観客にとってはあまりに前衛的で、ほとんど理解しがたいものだった。


会場の沈静化のための警官が動員され、聴衆のヤジが飛び交うといった好ましくない結果を招く。しかし、その中で、多くの観客は自分たちが歴史的な事件を目撃していることを理解していた。初演の状況について、フランスのアーティスト、ヴァレンタイ・グロス=ユゴーはこのように表現した。「劇場はほとんど地震が起こったようだった。会場全体が揺れているように思えた」

 

パリとロンドンでの公演後、ニジンスキーの振り付けの原版が長らく失われた。1913年9月、ニジンスキーは南米で興行を行った後、結婚をした。その後、ディアギレフは、ニジンスキーを解雇する。その七年後になり、ディアギレフは『春の祭典』を再演しようとしたが、振り付けを誰も覚えていなかった。しかし、これが後のバレエの再構成を活発化させる要因にもなった。

 

ご存知の通り、ニジンスキーの精神状態はその後悪化し、晩年を病院で過ごすことに。しかし、バレエ作品としての意義が薄れる中、『春の祭典』がようやく世に認められることになる。1914年、ロシア/サンクト・ペテルブルグで開かれたコンサートは、多くの批評家の賛同を獲得した。このときの演奏について、音楽史家のドナルド・ジェイ・グラウトは、こう評した。「20世紀で最も有名な作曲作品である。だが、それらが二度と以前のように再現できなくなった」

 

長らくの間、ニジンスキーの振り付けは忘れられていた。1971年、ジョフリー・バレエ団の創設者ロバート・ジョフリーが大学院生のミリセント・ホドソンと短い会話を交わした。彼らは、ニジンスキーの最初の振り付けを蘇らせられないものかと思案していた。ホドソンはおよそ16年をかけて、原版の手がかりを探し求めた。やがて、彼女は美術史家の夫とともに、古い写真、スケッチ、批評、衣装デザインなどを蒐集しはじめた。当時の初演を目撃したと思われる、あらゆる人々に聞き取り調査を行った。ホドソンはやがて、ニジンスキーの同僚マリー・ラムバートに出会い、実際に会って、インタビューを行ったが、そのときは手がかりらしきものは見つからなかった。しかし、ラムバートが死去した後、彼女のクローゼットの中にピアノ譜が見つかる。そこには、ピアノ譜の隅に、ニジンスキーの振り付けのメモ書きが残されていた。

 

新たに再生するニジンスキーの振り付け


その後、20世紀全般は、『春の祭典』のオーケストラの演奏やバレエの再構成の時代となった。音楽的にも、この音楽が真に理解されるのには、およそ一世紀を要したといえるだろう。

 

ニジンスキーの振り付けを再現し、それらに新しい解釈を付け加えながら、数々のパフォーマーが春の祭典の再構成に取り組んできた。レオニード・マシーンが1920年に古典性を確立すると、30年には、マーサー・グラハムが米国での公演を成功させる。モーリス・ベジャールは1959年に、自身の20世紀バレエ団においてニュースタンダードを確立した。ケネス・マクミランは、1962年にロイヤル・バレエ団向けに作品を作り、50年もの間、定番のプログラムとなった。

 

『春の祭典』に革新的なイメージをもたらしたのが、ピナ・バウシュで、今まで失われていた女性的な視点を付け加えた。彼女がウッパータル劇場のために用意した振り付けは、多くの人にとってセンセーショナルな印象を及ぼした。パウシュは、生贄となる少女の考えにも言及し、「生贄になるのがわかっていたらどのように踊るのか」という新しい解釈を施した。また、マーサ・グラハムは、90歳でこの作品に復帰し、自由で開放的な動きを披露した。ニューヨーク・タイムズは、「根源的で、部族の儀式のように基本的な感情を表現した」と評した。こういった数々のダンサーやパフォーマーによって、一世紀をかけて新しい解釈がなされてきた。

 

イーゴリ・ストラヴィンスキーが盟友ディアギレフと示そうとした概念は、芸術の動きを開放し、音楽に根源的な生命力を吹き込むというものであった。ストラヴィンスキーの音楽には、人生を生きる上での教訓が散りばめられているように思える。少なくとも、21世紀の私たちが『春の祭典』のコンサートを見たり聴く時、そこに音楽の偉大なパワーを感じ、生命力を感じる。それは枠組みに収まらず、生命力を奔流させるという、人間のあるべき姿が込められているように思えてならない。


現在も多くの世界的な楽団によって演奏されるバレエ音楽『春の祭典』。初演から100年余りを経ても、作品の再解釈は一向に終わる気配がない。今後のダンサーやパフォーマー、そして、指揮者や楽団の一つの命題とも言える、今なお進化し続ける奇妙なオーケストラの大作なのである。

 




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LAのサックス&ベースのデュオ、Dolphin Hyperspace(ドルフィン・ハイパースペース)がニューアルバム『Echolocation』を発表した。超絶的なベースのプレイを味わえるエキセントリックなエレクトリックジャズアルバム。


エレクトリックジャズの触れ込みではありながら、同地のビートシーンを象徴するドラマー、ルイス・コール、グラミー賞にノミネート経験を持つピアニスト、ジェラルド・クレイトンが参加した話題作である。本来は輸入盤のみの発売予定だったものの、リスナー間で話題沸騰となり、日本盤の発売が決定。現在、発売元のP-Vineのオフィシャルショップ、タワーレコードで予約受付中。


先行曲「The Life of Bee」はテックハウスにジャズのサックスの演奏が絡んだナンバー。オフィシャルビデオが先行公開されている。ぜひライブ映像と合わせて確認してみよう。新譜の詳細は下記の通りとなっている。


LA ビートシーンを切り裂くブっ飛びエレクトリック・ジャズ! ニコール・マッケイブ(Sax) とローガン・ケイン(Bass)によるバカテクデュオに超絶ドラマー、ルイス・コールも参加した摩訶不思議かつ奇天烈なダンスビートとエレクトリック・ジャズの融合!


現代ジャズの先進性と電子音楽の拡張性を取り入れたジャズの複雑なハーモニーや即興 的なアプローチとシンセサイザーやビートシーンから生み出されたエレクトロニックな要素をクロスオーヴァーしたサウンドは必聴!


同じく、LA 拠点に活動する超絶ドラマー、ルイス・コール、ジャスティン・ブラウンに加えて、グラミー賞ノミネートのピアニスト、ジェラルド・クレイトンもゲスト参加した現在進行形のLA ジャズ/ビートシーンを体現する1枚!


・Lead Single「The Life of A Bee」


▪︎Caterpillar Dance feat. Louis Cole // Dolphin Hyperspace // Live at The Echo 2025



【リリース情報】

アーティスト:DOLPHIN HYPERSPACE / ドルフィン・ハイパースペース

タイトル:ECHOLOCATION / エコロケーション

フォーマット:CD/LP/DIGITAL

発売日:2026.5.1

定価:CD ¥2,750(税込) /  LP ¥5,060(税込)

品番:CD PCD-25524 / LP  PLP-8334CP

レーベル:P-VIINE


【Track List】

01.Vacation

02.BIG FISHY feat. Louis Cole 

03.The Life of a Bee feat. Louis Cole

04.Kyoto feat. Louis Cole & Bad Snacks

05.Dolphins are Cute feat. Jon Hatamiya & Justin Brown

06.Biological Sonar

07.Dolphin Samba feat. Aaron Serfaty

08.Green Chimneys feat. Gerald Clayton

09.The One Evil Dolphin (About Which We Can Make No Conclusions)

10.Cool Star feat. Justin Brown

11.Sardine Jam Session feat. Louis Cole

12.Dolphin Mode feat. Bad Snacks & Justin Brown

13.Never Give Up on Cephalopods

14.My Big Break feat. Louis Cole

15.Memories of the Deep Blue Sea feat. Justin Brown

LP SIDE A:M1-M7 / SIDE B:M8-M15


 ▪︎Pre-order: http://p-vine.lnk.to/kaBy6J



【DOLPHIN HYPERSPACE (ドルフィン・ハイパースペース)】


USロスアンゼルスを拠点に活動するエレクトロ・ジャズ・デュオ。サックス奏者のニコラ・マッケイブとベーシスト/プロデューサーのローガン・ケインの2人により結成され、現代ジャズの先進性と電子音楽の拡張性を取り入れ、ジャズの複雑なハーモニーや即興的なアプローチとシンセサイザーやビートシーンから生み出されたエレクトロニックな要素をクロスオーヴァーしたスタイルが特徴的なアーティストである。


2020年に1st EP『Dolphin Hyperspace』、翌2021年に1stアルバム『Mini Giraffe』を発表するとともにLAビートシーンで頭角を現していくと、2024年に発表した2ndアルバム『What is my Propoise?』ではルイス・コールやジャスティン・ブラウンといった同じくLAを拠点とし世界的にも高い評価を得ているドラマーをゲストに迎え、そのサウンドの先進性と奇妙奇天烈なグルーヴから生み出させる絶妙なポップネス、そしてイルカのイラストをカヴァーに採用した独特なアートワークで日本国内でも話題となり世界的にリスナーを獲得している。


2026年5月にリリースされる『ECHOLOCATION』には前作から活動を共にしているルイス・コール、ジャスティン・ブラウンに加えて、同じくLAを拠点に活動するグラミー賞ノミネートのピアニスト、ジェラルド・クレイトンも参加するなど現在進行形のLAジャズ/ビートシーンを体現する作品へと仕上がっている。

Photo:川島小鳥


神戸を拠点に活動する作曲家/ギタリスト、眞名子 新は現在の日本でも数少ない本格的なフォーク/カントリーを担う次世代のミュージシャン。 この度、4月07日(火)に代々木公園にてフリーライブ「眞名子新 フリーライブ "公園公演" at 代々木公園野外音楽堂」の開催を発表!

 

また、昨年5月にリリースされたファースト・アルバム「野原では海の話を」以来となる新曲「薔薇を飾るなら」のリリースが3月11日に決定。現在、PRE-ADD/PRE-SAVEが実施中となっている。ぜひストリーミングのご予約を!!

 


▪︎眞名子 新「眞名子新 フリーライブ "公園公演" at 代々木公園野外音楽堂」



Free Live | 2026.04.07 [Tue] | Start 17:30


4月7日火曜日、代々木公園野外音楽堂でフリーライブを行います。タイトルは『公園公演』公園で公演、いい響きですよね。

J-WAVE presents INSPIRE TOKYOで2年ほど前に一度歌わせていただいたとき以来になります。またもう一度あそこで歌えることが嬉しいです。

フリーライブは初めての試みですが、お花見の気分でお酒片手に、珈琲片手に立ち寄ってくれたら嬉しいです。

お待ちしております! ーー眞名子 新



▪眞名子 新「薔薇を飾るなら」 



Digital | 2026.03.11 Release

Released by SPACE SHOWER MUSIC

PRE-ADD/PRE-SAVE[ https://ssm.lnk.to/DecoratewithRoses


▪眞名子新(マナコ アラタ): Arata Manako


1997年神戸生まれ、神戸育ち。ルーツであるフォークやカントリーをベースに、ギターと声というシンプルなスタイルでのフォーキーな楽曲が魅力。

癒されるような清廉さのある一方で、感情に訴えかけるような情感溢れる歌声と心に寄り添った歌が特徴的である。

2022年に開催されたJ-WAVE TOKYO GUITER JAMBOREE 2022「SONAR MUSIC Road to RYOGOKU suported by REALLIVE360」にてグランプリを受賞。

2023年4月26日に初の全国流通盤となるEP「もしかして世間」をリリースし、収録楽曲はSpotify「Best of Japanese SSW 2023」「Best of Edge! 2023」にも選出された。

2024年5月にEP「カントリーサイドじゃ普通のこと」をリリース。7月には「FUJI ROCK FESTIVAL 2024」、8月に「SWEET LOVE SHOWER 2024」にも出演。

2025年に5月に1st Albumとなる「野原では海の話を」をリリース。同作品は「APPLE VINEAGR -Music Award- 2026」にノミネートされている。

1st Albumリリース後に全12箇所に及ぶ、全国ツアーを行いファイナルの渋谷・CLUB QUATTROをソールドアウトさせた。2026年には、新曲のリリースやライブを予定しており、更なる飛躍が期待されている。


▪EN

Born in Kobe in 1997, raised in Kobe. Rooted in folk and country, the appeal lies in the simple style of guitar and vocals delivering folksy songs.

While possessing a soothing purity, he singing is characterized by an emotionally resonant voice overflowing with feeling and songs that speak directly to the heart.

Won the Grand Prix at the J-WAVE TOKYO GUITER JAMBOREE 2022 “SONAR MUSIC Road to RYOGOKU supported by REALLIVE360” held in 2022.

On April 26, 2023, they released their first nationwide distribution EP, “Maybe the World,” with its tracks selected for Spotify's “Best of Japanese SSW 2023” and “Best of Edge! 2023.”

Released the EP “Countryside's Just Normal” in May 2024. Performed at FUJI ROCK FESTIVAL 2024 in July and SWEET LOVE SHOWER 2024 in August.

In May 2025, they released their first album, “Talking About the Sea in the Fields.” The album was nominated for the “APPLE VINEGAR -Music Award- 2026.”

Following the release of their 1st Album, they embarked on a nationwide tour spanning 12 locations, culminating in a sold-out final show at Shibuya CLUB QUATTRO. In 2026, they plan to release new music and hold live performances, with expectations for further growth.


福岡・海の中道海浜公園 野外劇場にて5月16日から二日間にわたって開催される音楽祭、CIRCLE ’26。追加出演者の最終発表です!! くるり、Ovall、kanekoayanoの出演が決定しました。


DJステージにはお馴染みの常盤響、角張渉、EDANI、DJ GODBIRD の4名が出演します。本日2/27(金)19:00〜チケットの先着先行受付(学割含む)および海外居住者向けチケットの販売を開始します。


くるり(Quruli)

Ovall


カネコアヤノ(kanekoayano)

 

CIRCLE '26



日程:2026年5月16日(土), 5月17日(日)

会場:福岡・海の中道海浜公園 野外劇場

開園9:30/開場9:30/開演11:00

 

■出演者(アイウエオ順)

 

5/16(土) Day1

Andr

思い出野郎Aチーム

kanekoayano <NEW>

ZAZEN BOYS

Ginger Root (Solo Set)

D.A.N.

toe

ハンバート ハンバート

フルカワミキ÷ユザーン×ナカコー

 

5/17(日) Day2

EGO-WRAPPIN’ (Acoustic Set)

Ovall <NEW>

小山田壮平BAND

KIRINJI

くるり<NEW>

柴田聡子 (BAND SET)

SPECIAL OTHERS

Small Circle of Friends

高野寛 MVF trio with ゴンドウトモヒコ & ITOKEN

 

DJ:常盤響, 角張渉 (KAKUBARHYTHM),

EDANI (trouville), DJ GODBIRD (STEREO RECORDS)

 

 

■チケット先着先行受付

①[2日通し券]¥20,000

②[2日通し券]駐車券付 ¥32,000

③[2日通し券(整理番号付)]4枚・テントタープエリア指定 ¥90,000

④[2日通し券(整理番号付)]4枚・テントタープエリア指定/駐車券付 ¥102,000

⑤[2日通し券]《学割》 ¥15,000

⑥[1日券]¥11,000

⑦[1日券]駐車券付 ¥17,000

⑧[1日券]《学割》 ¥8,000

受付URL:https://eplus.jp/circle-fukuoka/

受付期間:2/27(金)19:00~3/26(木)23:59  ※先着・おひとり4枚制限

 

 

■チケット(海外居住者向け)

[2 Day Ticket]¥20,000 <Student discount>¥15,000

[1 Day Ticket]¥11,000 <Student discount>¥8,000

海外居住者向けチケット販売サイト:https://eplus.tickets/circle26/

受付期間:2/27(金)19:00〜各公演前日23:00まで ※先着

 

 

■チケット

[2日通し券]¥20,000 《学割》¥15,000

[1日券]¥11,000 《学割》¥8,000

 

※全自由 ※料金は税込、入園料込。※中学生以下チケット不要

《学割》対象:大学生・専門学校生・高校生。当日、学生証をご提示ください。

ご提示がない場合は当日差額をお支払いいただきます。

 

 

■CIRCLE ’26 Spotify公式プレイリスト

https://open.spotify.com/playlist/37i9dQZF1DXebjPzM8sHrq

 

■クレジット

主催・企画・制作: TONE / BEA

後援:FM FUKUOKA / CROSS FM / LOVE FM

 

お問い合わせ:BEA【http://www.bea-net.com/info@bea-net.com

 

■オフィシャルサイト http://circle.fukuoka.jp

Photo: 小林光大

 

青葉市子の最新オリジナル・アルバム『Luminescent Creatures』の発売1周年を記念して、2024年10月26日に開催された<“Luminescent Creatures” World Premiere>東京公演のライブ映像を、2/28(土)18:00よりアンコール配信します。


二部構成となったステージは、第一部で前作『アダンの風』の楽曲を中心に、2020年以降にリリースされたシングル曲を織り交ぜたセットを披露。第二部では『Luminescent Creatures』全収録曲を曲順通りに再現しました。総勢10名のミュージシャンによる精緻で緊張感あふれるアンサンブルが織りなす唯一無二の音楽体験を、臨場感そのままにお届けします。

 

そして、2026年9月12日(土)には、ロームシアター京都にて弾き語りによる単独公演「長月の珠に憑りし瑠璃の聲」が開催決定!本日18:00よりチケット先行受付を開始します。

 

先週からアジア、ヨーロッパ、北米を巡る<Across the Oceans Tour>全26公演がスタート。ツアー初日のタイ・バンコク公演、バンド編成によるシンガポール公演は大盛況のうちに幕を閉じました。3月中旬からはフィンランド・ヘルシンキを皮切りにEUツアーを開始します。Royal Albert Hall、Walt Disney Concert Hallといった歴史ある名ホールでの公演も予定されるなど、その活動は一層大きな広がりを見せています。

 

 

■ICHIKO AOBA “Luminescent Creatures” World Premiere(オンデマンド配信)

※2024年10月26日@東京・昭和女子大学 人見記念講堂にて収録。

 

出演:青葉市子

梅林太郎, 水谷浩章(Contrabass), 梶谷裕子(Violin), 銘苅麻野(Violin), 坂口昂平(Viola), 平山織絵(Cello),

多久潤一朗(Flute), 朝川朋之(Harp), 角銅真実(Percussion)

 

配信URL(国内):https://eplus.jp/ichikoaoba-lcwp/

配信期間:2026/2/28(土)18:00〜2026/3/15(日)23:59

視聴チケット:¥1,500(税込)

視聴チケット販売期間:2026/2/27(金)18:00〜2026/3/15(日)19:00

 

・Luciférine (from “Luminescent Creatures” World Premiere)

https://youtu.be/fgKJ63rcbgE

 

 

■公演名:長月の珠に憑りし瑠璃の聲



日程:2026年9月12日(土)

会場:京都・ロームシアター京都 メインホール

開場17:15 / 開演18:00

 

チケット:SS席 ¥8,800 / S席 ¥7,800 / A席 ¥6,800 / B席 ¥4,800

※⼩学⽣以上有料 / 未就学児童⼊場不可

 

チケット先行受付:

受付期間:2026/2/27(金)18:00〜2026/3/8(日)23:59

受付URL:https://eplus.jp/ichikoaoba-2026/(国内)

https://eplus.tickets/ichiko-2026/ (海外居住者)

※抽選受付

 

お問い合わせ:清⽔⾳泉 06-6357-3666 (平⽇15:00〜18:00) / info@shimizuonsen.com https://www.shimizuonsen.com

 

 

■国内公演

文月の衣紋に綴る熱帯魚

2026年7月2日(木) 東京・NHKホール

開場18:00 / 開演19:00

チケット:SS席 ¥8,800 / S席 ¥7,800 / A席 ¥6,800 / B席 ¥4,800

※⼩学⽣以上有料 / 未就学児童⼊場不可

お問い合わせ:ホットスタッフ・プロモーション 050-5211-6077

http://www.red-hot.ne.jp

 

■海外公演

Across the Oceans Tour

19-Feb KBank Siam Pic-Ganesha, Bangkok, Thailand ※終了

22-Feb Esplanade Theatre, Singapore, Singapore ※終了

17-Mar Finlandia Hall, Helsinki, Finland

19-Mar Palladium, Warsaw, Poland

21-Mar Müpa, Budapest, Hungary

23-Mar Globe Wien, Vienna, Austria

25-Mar Théâtre de Beaulieu, Lausanne, Switzerland

27-Mar Salle Pleyel, Paris, France

31-Mar Royal Albert Hall, London UK (with 12 Ensemble & Taro Umebayashi)

5-Apr Ancienne Belgique (AB), Brussels, Belgium

7-Apr Het Concertgebouw, Amsterdam, Netherlands

10-Apr DR Koncerthuset, Copenhagen, Denmark

12-Apr Göta Lejon, Stockholm, Sweden

15-Apr Harpa Norðurljós, Reykjavik, Iceland

24-Apr Walt Disney Concert Hall, Los Angeles, CA, US (with 12 Ensemble & Taro Umebayashi)

25-Apr Balboa Theatre, San Diego, CA, US (with 12 Ensemble & Taro Umebayashi)

27-Apr Massey Hall, Toronto, ON, US

28-Apr Théâtre Maisonneuve, Montreal, QC, US

1-May Carolina Theatre, Durham, NC, US

3-May The Caverns, Grundy County, TN, US

4-May Atlanta Symphony Hall, Atlanta, GA, US

6-May Paramount Theatre, Austin, TX, US

7-May Texas Theatre, Dallas, TX, US

9-May Conjunto De Artes Escénicas, Guadalajara, Mexico

10-May Auditorio San Pedro, Monterrey, Mexico

18-May Orpheum Theatre, Vancouver, BC, Canada


Details:

https://ichikoaoba.com/live-dates/

 

 

■リリース情報

8thアルバム『Luminescent Creatures』

2025/2/28(金)全世界同時発売(配信/CD/Vinyl)

https://linktr.ee/luminescentcreatures

 

収録曲

01. COLORATURA

02. 24° 3' 27.0" N, 123° 47' 7.5” E

03. mazamun

04. tower

05. aurora

06. FLAG

07. Cochlea

08. Luciférine

09. pirsomnia

10. SONAR

11. 惑星の泪

 

・Music Video「SONAR」

https://ichiko.lnk.to/SONAR_YT

 

 

■ライブ・アルバム「15th Anniversary Concert」

2026/1/28(水) 全世界配信

https://ichiko.lnk.to/15thAnniversaryAl

 

収録曲:

01. ココロノセカイ

02. 不和リン

03. 少女と檻

04. 灰色の日

05. IMPERIAL SMOKE TOWN

06. Mars 2027

07. いきのこり●ぼくら

08. MC

09. おもいでカフェ

10. 模範的な黒〜絵筆(山田庵巳)

11. シリウス(山田庵巳)

12. あまつぶ(青葉市子・山田庵巳)

13. 月が僕らをみてる(青葉市子・山田庵巳)

14. 機械仕掛乃宇宙(青葉市子・山田庵巳)

15. 命の傍らに(青葉市子・山田庵巳)

16. みなしごの雨

17. うたのけはい

18. 月の丘

19. アンディーヴと眠って

20. 海底のエデン

21. Space Orphans

 

 

■書籍

ICHIKO AOBA 15th Anniversary Book

青葉市子のデビュー15周年公演「15th Anniversary Concert」の舞台裏、

ライブ・レポート、公演直後のインタビューまで取材した1冊。

コンサートレポート・インタビュー:橋本倫史

写真:野田祐一郎/装丁デザイン:佐藤裕吾(二ツ目)

B6サイズ/158ページ

発行日:2025年8月13日

発売元:阿檀書房


*青葉市子オフィシャルWEB SHOPで好評発売中!

https://ichikoaoba.theshop.jp/items/115038079

 

 

■青葉市子/ICHIKO AOBA

音楽家。自主レーベル〈hermine〉代表。

2010年のデビュー以来、8枚のオリジナル・アルバムをリリース。クラシックギターを中心とした繊細なサウンドと、夢幻的な歌声、詩的な世界観で国内外から高い評価を受けている。2021年から本格的に海外公演を開始し、数々の国際音楽フェスティバルにも出演。音楽活動を通じて森林・海洋保全を支援するプロジェクトにも参加している。2025年1月にはデビュー15周年を迎え、2月に新作『Luminescent Creatures』をリリース。 2月下旬からはキャリア最大規模となるワールドツアーを開催し、アジア、ヨーロッパ、北米、南米、オセアニアで計50公演以上を開催。FM京都 “FLAG RADIO” で奇数月水曜日のDJを務めるほか、文芸誌「群像」での連載執筆、TVナレーション、CM・映画音楽制作、芸術祭でのパフォーマンスなど、多方面で活動している。

https://ichikoaoba.com



トロントから彗星のごとく登場したCootie Catcherは次世代のAlvvays、Bethsと呼ぶべき、今後が楽しみなバンドだ。


彼らのサウンドは若気の至りを隠すことなく青さすら感じる。そのラフさこそがクーティーキャッチャーの現時点の魅力となっている。Carpark移籍後第一作『Something We All Got』は90年代のオルタナティヴシーンのようなDIYサウンドの妙味に包まれている。ロックからエモ、パンク、エレクトロポップ、バロックポップ、フォークまでを飲み込んだエバーグリーンなサウンドが特徴だ。


昨年、インディーズの名門カーパークと契約を結んだCootie Catcher。トロントの有望株の登場だ。トロントを拠点とするこの4人組は、脆さと奔放な興奮の両方を放ち、ツゥイーポップの心を開いた優しさに渦巻くシンセと浮き立つエレクトロニクスを融合させ、そのサウンドに超充電を施している。


誰もが生活賃金を得て、見たこともないほど清潔なバスが1分おきにやってくる現実の中で生きている。 彼らが示そうとするのはもうひとつのリアリティだ。その激しい歌は、リンゴ園で片思いの相手に愛を告白する内容であり、優しい感情と混沌としたエネルギーが切っても切れない親友同士である世界。これがクーティー・キャッチャーがまさに居場所を見出すタイムラインだ。


新作アルバム『Something We All Got』は、甘さ、緊張、期待に満ちた無防備な楽曲群が放つ、クーティー・キャッチャーのビジョンをこれまでで最も鮮明かつ鮮烈に表現した作品となっている。


主に地下室で制作された楽曲を発表してきた彼らにとって、『Something We All Got』はスタジオレコーディングへの初めての挑戦となった。しかし、最初の挑戦でありながらエッジは依然として鋭く、一部は昔ながらのローファイ手法で組み立てられ、楽しげな個人収集のサンプルがプロダクションに滲み込んでいる。 サウンドは爆発的でアップビート。陶酔的なギター、泡立つようなシンセライン、高速のライブ&プログラミングドラム、あらゆる音が絶えず衝突し合う。


cootie catcherは3人のソングライターを擁している——ソフィア・チャベス(ボーカル、シンセ)、 アニタ・ファウル(ボーカル、ベース)、ノーラン・ジャクポフスキー(ボーカル、ギター)——それぞれがボーカルとして特徴的な声質を持ちながらも、恋愛とプラトニックな関係の境界線、都市の社交シーン、バンド活動というミクロな体験と後期資本主義を生きるというマクロな課題といった共通の関心事において、楽曲制作の片々で重なり合うことに成功している。


『Something We All Got』のあらゆる面に音楽制作の喜びが滲んでいる。「Quarter Note Rock」はジャングリングするギターコード、スクラッチされたサンプル、ブレイクビートのループと宙返りする生ドラムの掛け合いが部屋中を跳ね回る。ヒーローに会う失望を歌いながらも、ポジティブな爆発。 


カーパークからのデビューシングル「Gingham  Dress」では、ほぼ実現しかけた恋から痛みを伴いながら離れねばならない心情を、微笑ましいエレクトロポップのインストが支える。この曲は家庭的なテーマを背景に、絶望的な献身の枯れゆく姿を逆説的に描く。『非対立的アンセム』と称される「Puzzle Pop」は、他者にもっと求める必要性を考察しながら流れ落ち、舞い上がり、サンプルの渦の中で結末を迎える。


本日発売のニューアルバム『Something We All Got』全体を通して、cootie catcherは丘を転がり、炎の輪を飛び越えながらも、楽曲を駆り立てる生々しい感情を決して抑え込むことはない。 バンドの爽快なサウンドと、露わにされる生々しく時に不安定な感情の間には緊張感が存在し、それが彼らの独自性を形作る不可欠な要素となる。cootie catcherは隠れる代わりに、恐れ知らずの直球で挑み、あらゆる混乱と興奮へと全速力で突き進み、自らの置かれた現実を受け入れている。 


Cootie Catcher『Something We All Got』- Carpark



 

クーティー・キャッチャーの結成は、高校時代に遡り、パンデミック時代のレコーディング・プロジェクトとして始まった。四人組のサウンドは、ジャングルポップやトゥイーポップに位置づけられ、DAWを用いたデジタルレコーディングが特徴となっている。また、シンセやDJ風の遊び心満載のサンプリングを介してローファイなロックサウンドが構築されるという点では、音楽スタイルこそまったく違えど、Tortoise(トータス)のポスト世代のレコーディングスタイルを特徴としている。

 

しかし、同時に、クーティー・キャッチャーが中期以降のビートルズのように完全なレコーディングバンドと見なすのは早計となるかもしれない。実際的に、このアルバムには、彼らのライブの刺激的なシーンを想起させる瞬間ーー学生時代からの友人らしい息のぴったり取れたコーラス、ドラムやベース、ブレイクビーツが重なりあうことで生み出されるライブサウンド、そして半分ジョークとしか思えない冒険心と遊び心のある実験的なサウンドプロダクションーーを発見できるはず。また、それは従来の器楽編成にとらわれない自由なバンドサウンドのシンボライズでもある。Mac Demarco、Homeshake、Cindy Leeなどをはじめとする、ローファイなどが盛んなカナダ/トロントらしいインディーズロックのスタイルが、この最新作に濃縮されている。

 

近年、カナダのロックバンド/ポップバンドは、イギリスやアメリカ勢が示したスタンダードなスタイルを”一度解体して組み直す”という形で存在感を示すようになっている。


サウンドの再構築という点では、カナダとイギリスの中間にあるドイツの新旧の音楽が中継点となり、それらを繋ぐ橋渡しになる。ドイツのクラウトロック/ミニマルテクノといったエレクトロニクスのサウンドを、イギリスやアメリカのポップソングやロックソング、ダンスミュージックと融合させて、未知なる音楽を作りだす。これが現在のトロントのミュージックシーンの主眼である。彼らはこの流れに乗り、トロントにしか見つからないサウンドを構築していく。


バンドとしてまだまだ未完成な部分があることは否めない。ところが、その粗削りな部分、洗練されていないボーカル、バンドサウンドとして完璧主義を目指さないこと、内輪な雰囲気のある音楽性をふんだんに盛り込み、楽しさを追求すること……。これらはインディーズバンドにはなくてはならない資質でもある。ともすれば、完成されすぎたインディーズロックバンドの音楽というのは本来、”インディーズ”という枠組みには収まりきらないものなのかもしれない。これが多くの場合、メジャーレーベルに移籍すると物足りなくなる原因でもあるわけなのだ。

 

今後はどうなるかは分からないが、クーティー・キャッチャーは、トロントの現代のカレッジロックに属するタイプのバンドである。プロフェッショナリティ(専門性)を追求するのではなく、DIYでサークルバンドのようなサウンドのテイストをどこかに留めている。これはパッケージされた製品を作ろうとすると簡単には出来ない。American Footballの『LP1』のような感じで、大学の思い出づくりに、たまたまレーベルが協力して録音を行い、シーンを記録するという行為にもよく似ている。音楽作品が良く売れることが経済活動における理想であることは自明だが、音楽制作のもう一つの魅力は、経済活動とは異なる意味があるかを探究すること。いわば資本主義的な価値観とは異なるクリエイティブな意義がどこかにあるのではないかという。

 

年齢を重ねると、経済的な観念を頭から切り離すことが難しくなってくる。ただもし、資本主義とは異なる価値観を提示するニュータイプがいるとすれば、それは世間の一般的な価値観に染まらない若い人たちなのかもしれない。多くの場合、その努力はほとんど徒労に終わる。ところが、稀に理想的な何かが見つかる場合もある。 『Something We All Got」は、''クーティー・キャッチャーが高度資本主義社会の中で得た大きな成果''を意味している。効率的ではなく、コストパフォーマンスの良くないもの、彼らはその中に誰にも奪えない資金石を探し当ててみせた。

 

トロントの多彩性は、クーティー・キャッチャーのサウンドに如実に反映されている。彼らは表向きの標語に目をくらまされず、個々のオリジナリティを発揮している。そしてそれらは、カオティックなサウンドの中にあって、エバーグリーンともいうべき青春味すら感じさせる。


本作の冒頭を飾る「Loiter for the love it」に安らぎを感じるのは、クーティー・キャッチャーのサウンドが自然体だからなのだろう。ジャングリーなオルタナティヴロックソング、それはそのまま、 R.E.M、Sebadohのような内向きのエモーショナルなサウンドに転化されることもある。なおかつ、三人のソングライターを中心とするカラフルなボーカルは独特な雰囲気に満ちている。

 

DAWやDJのようなサンプリングを用いた打ち込み中心のエレクトロニクスがインディーロックソングと合体することから、クーティー・キャッチャーのサウンドは「ラップトップ・トゥイー」と称されることがあるという。


その代名詞となる「Lifestyle」はヒップホップのサンプリングを用いながら、ファンシーな雰囲気のあるギターポップを構築していく。デモ風なサウンドは、American Footballの最初期の雰囲気と通じ、シンプルなギターロックの中に安らぎを見出せる。その中で、ユニークな質感をもたらすのが、シンセやサンプリングで、これらが混在しながら、ファニーなサウンドを作り上げる。


「Straight Drop」ではThe Bethsのようなパンキッシュなサウンドが登場。ドライブ感のあるドラムを中心とするキャッチーなポップパンク風の一曲。しかし、バンドらしさは満載で、カラフルなバリエーションを持つシンセ/サンプルがバンドサウンドを取り巻き、独創的な音楽性を作り上げる。

 

4曲目「From here to Halifax」はオープナーと並んでハイライト。シンセが追加されたヨ・ラ・テンゴとも言うべき楽曲。ローファイやジャングルポップのファンにはたまらない一曲となりそうだ。この曲でも、サンプリングがビートやアレンジの役割を担い、韓国のシューゲイズプロジェクト、Parannoulのようなエバーグリーンなサウンドが特色となっている。特に、他の楽器のプレイに隠れがちなこともあるが、リズムギターが秀逸で、繊細なアルペジオやジャングリーな和音主体の演奏がこのバンドのサウンドの土台を担っている。ハチャメチャな音楽の構成のようにも思えるが、適度にブレイクを挟んだりしながら、効果的なボーカルのフレーズを作り上げ、さらに、全般的に分厚い器楽的な音の構成が折り重なり、独特な残響を生み出す。曲が終了した直後のレゾナンス(残響)の美しさは、本作全体に垣間見える一つの美学でもある。

 

  

中盤に収録されている三曲「Rhymes with rest」、「Quarter note rock」、「Take Me For Granted」はローファイの楽曲であり、トロントのインディーズシーンに触発された内容と言えるかもしれない。 その中には、フラワームーブメントを思わせるようなロックソングや、バーバンクサウンドのようなアメリカのヒッピー主義に触発された音楽性も発見することも出来る。また、現代的なバンドとしての試みもある。グリッチを用いたIDM、サンプラーを用いた重層的なサウンドを構築していく。三曲目だけは曲調が少しだけ異なり、アコースティックギターを主体としたフォークロックソング。彼らがAlvvaysのフォロワー的な存在であることを伺わせる。温和なメロディーセンスとジャングリーなロックを中心として、サンプラーが縦横無尽に駆け巡る。

 

「Quarter note rock」

 

 

上記ののローファイなサウンドはときおり、サイケデリックロックのような混沌とした雰囲気を生み出す。クリエイティヴィティを抑えず、才気を煥発させながら、持ち前のユニークなセンスを活かし、新規レーベルからのデビューシングル「Gingham Dress」、「Puzzle Pop」のような秀逸な楽曲を仕上げた。「Puzzle Pop」のコーラスワークの部分には一体感があり、聴き逃がせない。


これらは、デモソングのようなラフな質感を活かしつつ、リハーサルスタジオの熱狂的な空気感を楽曲に持ち込んでいる。まだ完成されていない荒削りな部分もあるし、音楽の構成としてもチグハグな箇所もあるかもしれない。しかしながら、そのズレのような箇所が武器である。これらは最初に言及したような完璧主義とは対極にある彼らの”DIYサウンドの真骨頂”でもある。

 

以降の二曲はどちらかといえば、レコーディングソングというより、現時点のバンドのライブサウンドの記録である。


後半の最大のハイライト曲「Stick Figure」ではブレイクビーツのようなテクニカルな手法を用いる場合もあるが、全般的にはジャングルポップに基軸を置いている。こういった曲でも、Beths、Alvvaysの系譜にあるキャッチーなボーカルメロディを中心に聞きやすい音楽が展開される。


「Going Places」も現行のアルトロックバンドの音楽性に沿った内容であるが、ボーカルのコーラスワークに重点が置かれ、アンセミックなフレーズが作り出される。全般的には口ずさめる旋律を活かし、適度に脱力感のあるロックソングが練り上げられていく。彼らのスタンスにはやはり、完璧主義を目指さず、余白や空白をどこかに残しておくという考えが通底している。

 

フルレングスを制作する際には、あらかじめ大きな枠組みやコンセプトを決めておき、それに沿って制作を進めるという手段もあるが、クーティー・キャッチャーの場合は、多くが瞬発性に根ざしている。ただ、言うまでもなく、その無計画性は曲の洗練度やアンサンブルとしての精度を除いてのはなし。また、そういった自由な感覚が全体に反映されているのが素晴らしい。実際、その時に楽しいと思うことをやり切るのは容易なことではない。このアルバムの音楽は、他の作品に比べて、劇的であるとも卓越しているとも言いきれない。けれども、そのほどよくぬる〜い感じが良く、聞いているときに癒やしや安らぎをもたらす。欠点は長所でもある。

 

冒頭にも述べたように、分刻みのスケジュールのような都会的なあくせくした雰囲気はほとんどない。リハーサルスタジオで彼らが理想とする音楽概念の構築に思い切り時間をかけているためか、時間が緩やかに流れているような感じがある。これがこそが『Something We All Got』の醍醐味となっている。また、このアルバムは一般的な成果主義を目指さず、瞬間瞬間を楽しんでいるような感じで、素晴らしかった。明確な理由はないものの、何度も聞きたくなり、癖になってしまう。また、その正体が、クーティー・キャッチャーが数年をかけて構築してきた彼らなりの強固な''フレンドシップ”であるとすれば、それもまた納得できるというものだろう。

 

 

 

85/100 

 


「Puzzle Pop」



▪︎Cootie Catcher 『Something We All Got』

Lisen/ Stream: https://found.ee/cc_swag

時代の評価軸を静かにすり抜けながら、現在進行形で更新を続ける孤高の電子音楽家【Shinichi Atobe】。セルフレーベル、Plastic & Soundsから初となるアルバム「Silent Way」が3月27日リリース。「Silent Way」より、「Rain 1」に続き、「Fractal」が本日リリース。


▪EN 

The solitary electronic musician Shinichi Atobe, quietly evading the era's evaluative axes while continuously updating his work in real time.

His new album, Silent Way, is released on 27th March via his self-run label Plastic & Sounds.

Following “Rain 1” from “Silent Way,” the new track “Fractal” is released today.


▪Shinichi Atobe「Fractal」



Digital | 2026.02.27 Release | DDJB-91267_2

Released by Plastic & Sounds | AWDR/LR2

ストリーミングURL:[ ssm.lnk.to/Fractal ]


・Shinichi Atobe - Fractal (Short)

[ https://youtube.com/shorts/FFS4VFMP8a0 ]



▪Shinichi Atobe「Silent Way」- LP Version



COLORED VINYL 2LP (5,900Yen+Tax Incl.) | 2026.03.27 Release | DDJB-91267 (P&S003) | JAN 4543034054114

Released by Plastic & Sounds | AWDR/LR2

PRE-ADD/PRE-SAVE[ https://ssm.lnk.to/SilentWay


Sounds:Shinichi Atobe

Mastering & Cutting:Rashad Becker

Photo:Yusuke Yamatani

Design:Satoshi Suzuki


▪ABOUT

本年7月突如始動させたセルフ・レーベル【Plastic & Sounds】より、二枚の12インチ・シングルを経て、現時点での集大成となる全10曲を収録したアルバム「Silent Way」がCOLORED VINYL 2LP(Gatefold Sleeve/33RPM/Limited Press)レコードとデジタルで3月27日にリリース。

マスタリング/レコード・カッティングは、ベルリンのRashad Becker。アートワークは、写真家、山谷佑介の作品を核に、P&Sの全作品を手がける鈴木聖がその世界観を構築。

昨年、10月、Resident Advisorの人気シリーズ「RA Podcast」に登場し2023年4月に行われた世界初ライブの音源が公開、渋谷WWWにて、Plastic & Soundsローンチ公演「"Plastic & Sounds" label launch party」を開催。2026年1月には、同会場のニューイヤーパーティーで名盤「Haet」のライブセットを披露。

また、前作「Discipline」がPitchforkの「The 30 Best Electronic Albums of 2025」に、そして代表曲のひとつである「Butterfly Effect」がRA(Resident Advisor)の「The Best Electronic Tracks of 2000-25」に選出されるなど国内外で注目の高まる中のリリースとなる。


▪EN

Following two 12-inch singles released via the self-run label Plastic & Sounds, which launched unexpectedly this past July, the culmination of their work to date—the album Silent Way, comprising ten tracks—will be released on 27th March as a coloured vinyl 2LP (gatefold sleeve/33RPM/limited press) and digitally.

Mastering and record cutting by Rashad Becker in Berlin. The artwork centres on photographer Yusuke Yamatani's work, with Satoshi Suzuki—who handles all P&S releases—constructing the overall aesthetic.

Last October, they appeared on Resident Advisor's popular series “RA Podcast”, with audio from their world premiere live performance in April 2023 released. They held the “Plastic & Sounds” label launch party at Shibuya WWW. In January 2026, they performed a live set of their acclaimed album “Haet” at the venue's New Year's party.

This release comes amidst growing international acclaim, with their previous album ‘Discipline’ featured in Pitchfork's ‘The 30 Best Electronic Albums of 2025’, and one of their signature tracks, ‘Butterfly Effect’, selected for RA (Resident Advisor)'s ‘The Best Electronic Tracks of 2000-25’.


A1. intro 6.1

A2. Phase 2

A3. TRNS


B1. Blurred

B2. Aquarius

B3. Durability


C1. Rain 1 [ https://youtu.be/SBMw7CD9ZS4?si=q1CX453hqaNhbL-P ]

C2. Syndrome


D1. Fractal

D2. Defect



Shinichi Atobe「Rain 1」

Digital | 2026.01.30 Release | DDJB-91267_1

Released by Plastic & Sounds | AWDR/LR2

ストリーミングURL:[ https://ssm.lnk.to/Rain1 ]



Shinichi Atobe: 

埼玉を拠点に活動する電子音楽家。

ダブ・テクノ、その後の00年代の一大潮流"ミニマル"にまで至る90年代のカルト・レーベルBasic Channel傘下のChain Reactionからリリースされた12インチ「Ship-Scope」(2001年)でデビューを果たす。その10年後となる2010年代初頭、マンチェスターのデュオDemdike Stareの働きかけによりレーベルDDSから初のフル・アルバム「Butterfly Effect」(2014年)をリリース。

それ以来同レーベルからコンスタントに「World」(2016年)、「From The Heart, It's A Start, A Work of Art」(2017年)、「Heat」(2018年)、「Yes」(2020年)、「Love of Plastic」(2022年)、「Discipline」、EP「Ongaku 1」(2024年)をリリース。クラブオーディエンスだけでなく多くの音楽リスナーを獲得し、多様な音楽媒体からも定評を受けている。


伝説化されたChain Reactionからのデビュー、DDSからのリリースをきっかけに世界に知れ渡ることになるものの、謎めいた稀有な存在として注目をされ続けている。

2025年には自身のプライベート・レーベル【Plastic & Sounds】を設立。2026年3月27日、Plastic & Soundsよりアルバム「Silent Way」をリリース予定。


▪EN

Electronic artists based in Saitama, Japan.

He made his debut with the 12-inch “Ship-Scope” (2001) released on Chain Reaction, a sub label of Basic Channel, a 90s cult label leading to dub techno and then the “minimal” trend of the 00s. A decade later, in early 2010s, he released his first full-length album, “Butterfly Effect” (2014) on DDS label by lobbying of Manchester duo Demdike Stare.

Since then, he has consistently released “World” (2016), “From The Heart, It's a Start, a Work of Art” (2017), “Heat” (2018), “Yes” (2020), “Love of Plastic” (2022),  “Discipline” and the EP ‘Ongaku 1’ (2024). He has garnered a large number of music listeners as well as club audiences and has received acclaim from various music media.

Although his debut on the legendary Chain Reaction and his releases on DDS have brought him to the attention of the world, he has remained an enigmatic and rare entity.

In 2025, he established his own private label, "Plastic & Sounds" . On 27 March 2026, the album ‘Silent Way’ is scheduled for release via Plastic & Sounds.


・Sound Details:[ https://plasticandsounds.bandcamp.com ]