Weekly Music Feature: Marissa Nadler


 

ナッシュヴィルのシンガーソングライター、Marissa Nadlerは、アメリカの首都、ワシントンD.C出身である。マリッサ・ナドラーは、これまで9作のアルバムを発表してきましたが、ほとんどのアートワークは白と黒の色調でデザインされ、モノトーンで統一され、ゴシックの世界観を打ち出して活動してきたといえる。同時に、ナドラーは歌手の他にも学生時代から絵画を専攻し、画家として活動を行っている。アーティストの公式サイトで絵画を購入することが出来る。

 

本日、マリッサ・ナドラーは、記念すべき10作目のアルバム『New Radiations』をリリースします。『New Radiations』を通じて、ナドラーは11曲の異世界的な楽曲からなる粗くも親密で息を飲むようなコレクションを提供しています。最初の一つの音から、ナドラーの豊かなボーカルと複雑なフィンガーピッキングが全面的に押し出されている。彼女は、エバリー・ブラザーズ風のハーモニーを夢のような孤独なサウンドスケープ——ファズのかかった歪んだディストーション、ハモンド・オルガン、そしてシンセサイザー——に重ねあわせて、その温かい脆弱性をテクスチャーと雰囲気により高めようとする。各トラックは、人生の一場面のようなエピソードとして展開され、カーテンが引き上げられたことで「強く響く」感情の重みを届けようとする。


『New Radiations』を通じて、甘いキャッチーなメロディと暗く生々しい歌詞の対比が深く刻にこまれている。「Light Years」において彼女は回想する。「昔は、あなたが流行の頂点だった。彼女を催眠術にかけることができた頃…、あなたは彼女の中に何光年を見ることができた。あなたは彼女と共にいたのだった」「You Called Her Camellia」では、語り手が嘆く。「これが取引ではなかった!(彼女の消えゆく姿)」と嘆いたかと思えば、『Smoke Screen Selene』では「私のように彼女に破壊されないように」と警告する。宇宙的な殺人バラード『Hatchet Man』では、寒気を感じさせるホテルシーンが描かれる。「天使が彼にそうさせた。そして彼は、私に見せた——彼は誰も彼女が消えたことに気づかないと思っていた」語り手は夜へと逃れていく。


このアルバムは、ナッシュビルのHaptown Studiosで友人のロジャー・ムートノットの協力を得て、彼女の自宅スタジオでレコーディングされた。ミキシングは、ランドール・ダン(アース、サン・オー)が手掛け、長年のコラボレーターであるミルキー・バーグスの繊細で没入感のあるアレンジが主な特徴となっている。うっとりするようなスライドギター、催眠的なシンセサイザー、荒々しいリフが折り重なり、音楽全体が海洋的な強度で波打つがごとく展開される。

 

マリッサ・ナドラーの過去2作のゲストアーティストを多く起用した作品とは対照的に、『New Radiations』は内省的で個人的なビジョンを提示している。ポップ、フォークをはじめとするジャンルを超越しつつも、彼女独自のスタイルを体現し、世界の騒音を美しさと荘厳さの瞬間に聞き手をとどまらせる。『New Radiations』は、単なるアルバムではないかもしれない——それはキャリアのハイライトであり、マリッサ・ナドラーの唯一無二のビジョンと芸術性の証でもある。

 

アルバムには奇想天外な着想もある。ロケット工学の父、ロバート・ゴダードに因む曲も収録されている。ナドラーはアルバムについて次のように明かしている。「作風は前のアルバムとは明らかに異なり、内省的で生々しく、個人的な作品である」という。「他の人々について歌った曲であろうと、他人と自身の生活に共通点を見出すような内容になっていると思います」といい、さらに「シンプルなアルバムである」と語る。また、このアルバムのサウンドは基本的にボーカルとギターが中心となっている。「前のアルバムには自分の演奏は使われず、他の人が演奏していました。そのために楽器とのつながりを取り戻したいと考えていました。ピアノは弾けるけれど、あまり上手ではないんです。単にそれは表現方法のひとつにすぎません」  

 

また、マリッサ・ナドラーは、実際のフォークミュージック中心の音楽性からは想像できないが、若い時代にはパンクやグランジに夢中になっていたという。それを止めたのが、彼女の母親だった。ナドラーは次のように話している。「10代の頃、グランジやライオット・ガール、パンクに夢中になっていた。しかし、私の母親はそれにうんざりしていました。高校三年生のころ、ジョニ・ミッチェル、キャロル・キング、レナード・コーエンを紹介してくれた」という。

 

作曲の過程について、ナドラーは次のように説明している。「特に、歌詞に一生懸命に取り組みました。何事にも全力で取り組むので、おそらくそれが原因で、夏の真っ只中に体調を崩しているのかもしれない。これらの歌詞には、いくつかの着眼点が存在しましたが、最初のテーマとは別の内容になりました。最初の曲では物語的な手法を曲の入り口として用い、後からその曲のテーマを決めるようにしています。例えば、”世界中を飛ぶ人について書く”と決めてから書くのではなく、それはアルバムのテーマについて物語るための道筋のようなものでした」 また、ナドラーは、アルバムの一番のお気に入り曲として「To Be The Moon King」を挙げている。

 

「この曲は、現代ロケット工学の父、ロバート・ゴダードから着想を得ています。彼に関する記事を読みましたが、彼は生涯をロケットを空に飛ばしたことに費やした」また、ナドラーは続ける。「これらの曲の中には、特定の人物について歌ったものもあれば、普遍的なテーマについて歌ったものもあるということです。アルバムの最初の曲は、最初に世界一周旅行を単独で行おうとした女性(注: ジャーナリストのネリー・ブライのこと。1889年に新聞社の企画で世界一周を成功させた)からインスピレーションを得ています。しかし、実際には、ある人を忘れたい、という気持ちについて歌っています。アルバムの最初の行は、”あなたを忘れるために私は世界一周旅行をする”という内容です。アルバムの最後の曲も誰かとの別れについて歌っています」

 

このアルバムについて、マリッサ・ナドラーは総括する。「もし、このアルバムを聴く時間を費やしてくれたら、テーマはそれほど難しくないことがわかってもらえると思う。同時に、多くの人々が本を読む時にそうするように、キャラクターを自分で想像してみたり、曲の意味を自分なりに解釈する余地をどこかに残しています。想像する余地があること、それこそが私の世代が幸福であった理由なのです」ナドラーは言う。「私は、アナログな子供時代を過ごしていた。私は本当に、CDやカセットテープのブックレットの媒体以外ではミュージシャンのことをよく知りませんでした。もちろん曲についても。しかし、現在はネットでインタビューを読んで、それらのことを簡単に知ることができますね。今では状況は大きく変化してしまいました」

 

 

 

『New Radiations』 - Sacred Bones/ Bella Union

 

  

最近は、国内外を問わず、マイナー・スケール(単調)の音楽というのが倦厭されつつある傾向にあるように思える。暗い印象を与える音楽は、いわば音楽に明るいイメージを求める聞き手にとっては面食らうものがあるのかもしれない。しかし、どのような物事も陰陽の性質から成立していて、つまり、光と影を持ち、明るさを感じる光というのも、それを何らかの対象物に映し出す影から生じる。音楽もまた、明るい印象を持つだけで真善美に到達出来ない。ダークな曲を恬淡に書き上げ、ブライトな曲と併置させるのが本物のシンガーソングライターである。例えば、ケネディ暗殺の時代にS&Gの名曲「Sound Of Silence」が支持されたのは、暗黒的な時代に、大学の友人を気遣うような二人のシンガーの作風がこの上なく合致したからである。

 

さて、ナッシュビルを拠点に活動を行うマリッサ・ナドラーは古き良きフォークシンガーの系譜に属する。彼女は、レナード・コーエン、ジョニ・ミッチェルのような普遍的な音楽を発表してきたミュージシャンに影響を受けてきた。暗い感情をそのまま吐露するかのように、淡々と歌を紡ぐナドラー。歌手は、物悲しいバラッドを最も得意としていて、それらの曲を涼しげにさらりと歌う。全般的には、このミュージシャンの表向きにイメージであるモノトーンのゴシック調の雰囲気に彩られている。ただ、そのフォークバラッドに内在するのは、暗さだけではない。その暗さの向こうから静かに、そしてゆっくりと癒やされるようなカタルシスが生じることがある。ナドラーのキャリアハイの象徴的なアルバム『New Radiations』は光と影のコントラストから生じている。学生時代から絵画を専門に専攻し、絵をサイドワークに据えてきた人物らしい抜群のコントラストーー色彩感覚がこのアルバムのハイライトになっているのである。

 

音楽という分野は紀元前から存在しており、それほど浅いものではない。年を経るにつれて、様々な見えなかった事実や印象が明らかになってきて、理解できなかったことがなんとなく分かるようになる。そのとき、ぼんやりと音楽という存在の正体が掴めてくる。それは理論的に解釈するというよりかは、ようやく腑に落ちたという感覚である。そして、それらの音楽に対する深遠な理解を、実際の作品に反映させてこそ、本当の音楽になりえる。多くの時代を超えた音楽家たちは、断片的であるにせよ、自分たちの理解を作品に真摯に込めてきた。 『New Radiations』は、時代を超えた魅力を持つアルバムで、ミッチェルの『Blue』に比するフォークバラッドの傑作である。一度聴いただけで、すべてが理解出来るアルバムは、多くの場合、大したものであったことは多くない。時間が経つと徐々に形骸化していってしまう。その点で、アートワークのイメージと合致するように、このアルバムにはミステリアスな謎が残されている。


ただアーティストが言うように難解な音楽ではなく、一度聴いただけでその魅力は伝わってくる。しかし、アルバムに込められたメッセージを掴むためには、音楽を待っているだけでは不十分で、聞き手が音楽や制作者の方に近寄っていかないといけない。「インスピレーションは待っているだけではやってこない。棍棒を持って追いかける」と言ったのは、船乗りの作家、ジャック・ロンドンであったが、本当に優れた音楽を本当に楽しむためには、時折、名画を鑑賞するときのように、作品の方に自分から背伸びをして近づかないといけないのかもしれない。

 

今作には単調の曲がきわめて多く、その合間を縫うように長調の曲が点在する。ぼんやり聴いていると、ナドラーの歌声が永遠にどこかに続いている気がする。アルバムの入り口から出口までを聞き手は歩いていくことになるが、その出口を出た後も、音楽的な情景がどこかにやきついているような気がする。アルバムを聞き終わってもまだ、聴覚の奥には、ボーカルがわだかまっている。そして、音の余韻に浸らせるというよりかは、外側の感覚が抜け落ちたような奇異な脱力感を覚えさせる。音楽そのものがだんだんと途絶えていき、最後には何も残らない、というとても珍らかな手法である。本で喩えれば、読後の独特なエモーションが残るという点で、きわめて文学的なアルバムと言えるかもしれない。残念ながら、ここでは、歌詞について注釈を設けて詳述するのは出来ないが、音楽的な方向から、アルバムのミステリアスなベールの向こう側に迫っていければと思っている。まず、マリッサ・ナドラーの音楽的なストリーテリングの手法とは、”すべてを明らかにせず、含みをもたせる”ことにある。アーティストの言葉を借りれば、”聞き手側に想像する余地をもたせる”ということになろう。例えば、何らかのプロパガンダ的な音楽は、これとは全く対照的である。聞き手側の想像を拒絶するのである。

 

 

「It Hits Harder」は他の収録曲の指針や基礎となる楽曲である。いってみれば、このアルバム全体の音楽性を決定づけ、紹介するようなイントロダクションである。イントロはアコースティックギターのフィンガーピッキングを中心とした優しい歌声のフォークバラッドで始まる。精妙な感じで始まるが、背景にシンセサイザーのシーケンスが敷き詰められ、フォークミュージックの背後にはアンビエント的な空気感が優勢になり、ドラマティックな質感を増していく。その音楽的なストラクチャーを強化するのが他でもない、ナドラーの歌声である。この曲の場合は、ボーカルを重ねることで、その声の印象はコラール風のチャントへと変わり、賛美歌のような印象を持つようになる。ボーカルの2つの録音を対比し、十分な空間的な奥行きのあるリバーブ/ディレイを用い、音楽の印象を広やかにし、音像全体を少しずつ拡大させていく。そして、その間には、ファジーなロックギターがアレンジで取り入れられ、フレーズの節目の調性や和音の縁取りを行っている。静けさと騒がしさが混在する奇異な音楽が、アルバムの最初のイメージを形成している。そして音楽的には、この曲は単調で始まるが、細かなセクションの中で、長調に変わったり、単調に戻ったりというように、幅広い和声感覚が発現している。基本的な音楽は、単調だけで終わることもなければ、長調だけで終わることがない。いわば音楽やポピュラーソングの基本的なルーツに回帰したような素晴らしいオープナーだ。

  

日本には、かつて”ムード歌謡”というジャンルがあった。戦後、アメリカの文化が日本に紹介される中で、映画音楽と演歌のスタイルをかけ合わせるというものだ。シティポップなどの音楽には明確にムード歌謡の影響がどこかに残っている。このアルバムには、いくつかそういった類の音楽が見いだせる。二曲目「Bad Dream Summertime」は、映画音楽とポピュラーの融合体で、ムードたっぷりの曲である。 どちらかと言えば、大瀧詠一や細野晴臣のような音楽性を微かに彷彿とさせる。この曲は、ハワイアン音楽のようなリゾートの雰囲気に包まれ、スライド・ギターがムードたっぷりに鳴り響き、その枠組みの中で、ナドラーらしい音楽が繰り広げられる。アコースティックギター、ボーカル、スライド・ギターを重ね、それらの音楽的な枠組みとして、幻想的なボーカルを披露し、バカンスやトロピカルなムードを強調している。ヴァース→コーラスというシンプルな構成だが、コーラスの箇所では曲の夢想的な感覚があらわとなる。その中で、心地よさと悪夢が混在する微妙な感覚が感情を込めて歌い上げられている。

 

三曲目の「You Called Her Camilla」は、レナード・コーエンの系譜にある、古き良きタイプのフォークソングである。アコースティックギターの分散和音が涼し気に鳴り響き、そして、ナドラーはメロディーを丁寧に歌い上げようとしている。その中には、ビートルズの主要曲のような王道のポピュラーの和声進行も含まているが、特にコーラスの箇所に琴線に触れるものがある。そのムードと呼応するように、スライドギターのような楽器が入ってくる。音楽がどのような感情性を呼び起こすのかを歌手は熟知しており、その感覚の発露に合わせて、使用する楽器も変わってくる。楽器が感情を表現するための媒体であるということを歌手は理解しているのである。また、この曲も同様に、イントロからヴァースにかけては長調が優勢であるが、徐々に曲風が変わり、コーラスの箇所では半音階進行の単調のスケールが顕著となり、和声の解決やカデンツアに向かい、切ない余韻を残しながら、ほんわかするような安堵感をもたらす。この曲を聴けば、ナドラーの人生観のようなものを読み解くことが出来るのではないだろうか。

 

四曲目「Smoke Screen Selene」は、20世紀のフランスの古典的なモノクロ映画のようでもあり、また、 「ゴッドファーザーのテーマ」のようなピカレスク・ロマンが反映されているように思える。ここでは、音楽そのものがよりミステリアスな雰囲気を帯び、映画音楽のオーケストラストリングスが模擬的に導入され、そして映画館の暗闇の中で古典的な映画を鑑賞するような雰囲気が出現する。その煙の向こうにあるスクリーンには何か見えるのか。アコースティックギターはミステリアスな音楽性を反映させ、そしてボーカルはそのアトモスフィアを助長させる。

 

特に中盤のハイライト曲として「New Radiations」を挙げておきたい。 ゴシック的な雰囲気もあるが、フォーク・バラッドの歴代の名曲と言っても良いかもしれない。ダークでミステリアスなイメージから一転して、空を覆っていた分厚い霧が晴れわたるようにアコースティックギターとボーカルがイントロから続く。その中で、曲は、明るさと暗さの間にあるミステリアスな領域をさまよい、そして、ナドラーのボーカルは浮遊するかのようにふわふわしたような印象を抱かせる。しかし、この曲はアルバムの中で最もシリアスな雰囲気をどこかにとどめている。この曲でも2つのボーカルを対比させて、明るさと暗さのコントラストをうまく描いている。


全般的なアルバムの作風の共通点として、「同じ人間が作っているので........」と断っているナドラーではあるが、一つの曲の中で、別の人物を登場させるような多義的なボーカルが傑出している。そして、歌手の記憶に向けて歌われるかのようなコーラスの部分は、過去の自分に向けたレクイエムのような悲しげな興趣を持つ。過去の自分へのささやかな別れを告げるような感覚は、このアルバムの最初の曲、そして最後の曲の共通のテーマである''惜別''という考えと合致する。そして、実際に、そのボーカルを聴いて確かめてもらいたいが、じっくり聴くと、迫真ともいうべきハイライトとして聞き手の脳裏に残りつづける。歌手としての迫力を感じさせる。そして、その歌声の後、間奏の箇所では、シンセサイザーのソロが深い物悲しさを漂わせる。

 

 

 「New Radiations」

 

 

 

アルバムは二部形式で構成される。5曲目までが第一部で、6曲目以降は、第二部として聴くことが出来るはず。一つの作品なので、大きく音楽性は変わるわけではない。しかしダークなイメージを持つが、その中に現れる心温まる感覚が後半では強調され、アルバムの終盤部に向かって繋がっていく。「It's An Illusion」も素晴らしい一曲で、牧歌的なフォークバラッドを通じて、悲しみや喜びを始めとする複雑な感情の機微を丹念に物語ろうとする。一貫して物悲しさも感じるが、ときに、ほろりとさせる琴線に触れるフレーズが登場することもある。さらにその感覚を引き立てるかのように、ファジーなギター、ロマンティックなハモンドオルガンのシンセ、スライドギターなどが、シンガーの歌をミューズのごとき印象で縁取る。最短距離でバンガーの曲を書こうとするのではなく、作品をじっくりと作り上げていったことが、こういった良質な楽曲を完成させる要因になったのかもしれない。このあたりのいくつかの曲はミュージシャンとしての完成ともいうべき瞬間なのではないか。驚くべき聴き応えのある曲である。 

 

「Hachest Man」は、ピカレスクロマンの曲である。「天使が彼にそうさせた。そして彼は、私に見せた——彼は誰も彼女が消えたことに気づかないと思っていた」という歌詞を織り交ぜ、ミステリー映画のような音楽を出現させる。それはまるでマリッサ・ナドラーという人物を中心に繰り広げられる一連のミステリアスな群像劇のようでもある。この曲もイントロはダークな雰囲気だが、コーラスの箇所「I was in over my head(どうしようもなかった)」という箇所では、長調に変わり、切ない雰囲気を帯びる。そして、単調と長調を巧みに織り交ぜつつ、曲はつづら折りのように続き、アウトロに向かっていく。その感情の発露がすごく簡素なものであるから、胸に響くものがある。アウトロではシンセサイザーのストリングスが入り、ふと涙ぐませるものがある。歴代のポピュラーソングと比べても遜色がない素晴らしい楽曲となっている。

 

アルバムの後半に向かうにつれて、このアルバムの音楽は荘厳な雰囲気に包まれ、天上的な音楽性が出現する。「Light Years」は文句なしのフォークミュージックの名曲である。ナドラーはこの曲において、ジョニ・ミッチェルの全盛期に匹敵する音楽性を作り上げた。牧歌的なフォークミュージックの系譜を受け継いだ上で、ロマンティックな雰囲気を添えている。ゆったりとしたアコースティックギターとボーカル、楽園的な趣を持つスライド・ギター、その全体的な音楽の枠組みを印象づけるシンセサイザー等、すべてが完璧に混在し融合している。ミックスなどの側面も傑出しているが、何より曲そのものが素晴らしく、非の打ち所がない。


ナドラーの全般的なソングライティングは、サイモン&ガーファンクルが「Sound Of Silence」を書き上げた時とほとんど同じように、個人的な出来事やパーソナリティから出発しているが、それが社会的な性質と直結していることに感動を覚える。「Weightless Above The Water」は、このアルバムの中で最もダークな曲である。サイモン&ガーファンクルのように茫洋的なロマンスに満ち溢れた良曲である。それは以前の男性的な視点から女性的な視点へと変化している。これは時代の変化とともに、フォーク・ミュージックがどのように変化したのかを知るためのまたとないチャンスである。

 

マリッサ・ナドラーが''一番重要な曲である''と指摘する「To Be The Moon King」は、先にも述べたように、ロケット工学の父にちなんだ一曲である。この曲は、アルバムの最後の曲「Sad Satellite」と連動するような機能を果たし、アルバムの最初の曲、そして最後の曲とも呼応しながら、悲劇的な側面を暗示している。同時に「バラッド」という音楽形態が、ヨーロッパの中世時代の一般階級の女性を中心とした「恋歌」から生じているのを考えると、これほど理にかなった音楽は存在しない。しかし、その中で、最も音楽を強固にしているのが、それらの歌詞が基本的には、''個人的な出来事から出発している''ということ。時にそういった個人的なことを歌った方が、社会的な意義を持つという先例はいくつも存在する。 こういった曲は、個人的な感覚に共感を誘うような意味もあり、広義における社会を俯瞰するためには不可欠な音楽と言える。仮に社会という形態が個人意識の集積体であることを考えれば。

 

アルバムの終曲「Sad Satellite」は悲歌の寂しいような感覚を単調のフォークミュージックで縁取っている。そしてやはり、アルバムの冒頭部のように賛美歌のようなボーカルワークが顕著である。思い出の中にある悲しみを浄められた感情で鎮めようとするためのある種の儀式。しかし、基本的には暗い感覚に満ちているが、その向こうには、それとは対象的な音楽の世界が満ち広がっている。このアルバムは''悲歌という形式の真髄''を意味するが、それと同時に、対照的な楽園的な世界を描出している。これは実は、画家ナドラーの絵画には見受けられない作風なのが面白いと思う。耳を澄ますと、美しく、どこまでも澄明な音楽の世界が無限に広がり、そして、それはときおり絵画的な領域に差し掛かることがある。アウトロのフェードアウトを聴いて、なにか脱力感があるのは、その音楽の持つ世界が息を飲むほど美しいからなのだろう。

 

 

 

95/100

 

 

 

 

 

「Light Years」

 

 

 

Marissa Nadlerのニューアルバム『New Radiations』は本日、Sacred Bones/Bella Unionから発売されました。ストリーミングはこちらから。



オーストラリア(パース)のポップシーンで注目を集めるジョーダン・アンソニーが新たな深夜のアンセム「Reckless」をリリースした。この実力派のシンガーは世界的な注目を浴びる可能性がある。ニューシングルを聞けば明らかである。


このシングルは、グラミー賞ノミネートのプロデューサー、エミール・ガンタウスと作詞家のサム・ズンドとのセッションから生まれました。「Reckless」は、R&Bの要素がたっぷりと詰まった深夜のポップアンセムで、誰かに一瞬で、そしてもしかしたら少しばかり激しく恋に落ちる興奮を捉えた曲です。


この歌手は、アメリカン・アイドルのトップ14に選出されたことで注目を集め、デビューシングル「Broken Love」(Spotifyの「Peaceful Pop」に収録)で60万回以上のストリーミングを記録する成功を収めています。  


脆弱さと高揚感の鼓動を宿す声で、ジョーダン・アンソニーはポップ音楽界で最も感情に響く新星として台頭しています。オーストラリア出身で現在ロサンゼルスを拠点とするジョーダンの音楽は、内面的な魂をさらけ出すソングライティングと、洗練されたアリーナ向けのポップを融合させたサウンド——彼自身が「心を動かすバラード」と表現するスタイルです。失恋を反映させたり、恋に落ちたりする瞬間を捉えたジョーダンの音楽は、リアルで生々しく、誰もが共感できるものとなっています。


ジョーダンの音楽への道は、命綱のような存在でした。7歳の時に、学校でのいじめに対処するために最初の曲を書き上げました。「ヒット曲ではなかったけど、曲だった」と彼は回想します。「それは、口に出せないことを表現する手助けになった」その瞬間から、彼は音楽が自分の全てだと悟った——単なる情熱ではなく、目的だ。「自分の物語を通じて人々とつながり、他人が孤独を感じないようにしたいと気づいた。それが今でも私の『なぜ』なんだ」


彼は両親が基盤を築いてくれたと感謝しています。5歳でピアノのレッスンに通い始めた(最初は渋々だった)ジョーダンは、10代前半でミュージシャンとソングライターとして自立しました。「彼らはいつも『後で感謝するだろう』と言っていた。彼らは正しかった」と。プランBなしで音楽に没頭し、世界が彼に気づくまで時間はかかりませんでした。


2019年、彼は『The Voice Australia』でトップ4に入賞し、その後オリジナル曲「We Will Rise」でオーストラリア代表としてジュニア・ユーロビジョン・ソング・コンテストに出場し、世界8位に入賞しました。同年、彼はパースのRACアリーナで開催された『One Big Voice』のヘッドライナーを務め、この快挙は2022年と2023年にも繰り返されました。2024年、ジョーダンは『アメリカン・アイドル』に選出され、トップ14のファイナリストに選出。迫力のある歌声と地に足の着いた本物らしさでアメリカ audiences を魅了しました。この機会をきっかけに、彼はキャリアをグローバルに展開するため、ロサンゼルスへの移住を決めました。


ジョーダンの最新シングル「Reckless」は、彼のサウンドの次なる進化を象徴する作品です。グラミー賞ノミネートのプロデューサー、エミール・ガンタウスと作詞家のサム・ズンドとのセッションで生まれたこの曲は、当初は別のアーティストのための提案曲として制作されました。

 

しかし、彼らが曲を聴いた瞬間、これは彼の曲でなければならないと確信しました。「それはまさに自分の心に響いた。誰かに深く恋に落ち、もしかしたら少し過剰に恋に落ち、あなたを少し狂わせても、それが最高の形で感じられるような感覚だ」とジョーダンは語る。「私たちは、歌いやすく、感情的で、でも楽しくて中毒性のある曲にしたかった。深夜のドライブで歌詞を叫ぶようなトラックだ」


「Reckless」は、ジョーダンの前作「Cherry」(アイドルの同窓生Ajiiとのコラボ)の勢いを継承し、ポップシーンにおける彼の独自のポジションをさらに確立しています:感情的に知性があり、メロディが感染力があり、ジャンル境界を恐れずに越える音楽。ポップ、R&B、そして懐かしさを感じさせる要素を融合させ、ジョーダンは考え深く、繰り返し聴きたくなる音楽を創造しています。


デビューシングル「Broken Love」(Spotifyの「Peaceful Pop」と「New Pop」プレイリストに収録)で60万回以上のストリーミングを記録し、故郷のパースで複数のヘッドライン公演を成功させ、国際的なファンベースを拡大する中、ジョーダンの物語はまだまだ始まったばかりです。これまでのコラボレーターには、MSquared(マイケル・デロレンツィスとマイケル・ペインター)、アンドロ・ポップ、ジェイク・クラーク、エミール・ガンタウス、ポン・ポン、グレッグ・ワッテンバーグ、ブレット・クーリック、テイラー・スパークスなど、ヒットメーカーの面々が名を連ね、彼のビジョンを支持している。


失恋、喜び、切望、愛など、あらゆる感情を表現するジョーダンのソングライティングは、実際の経験に根ざしている。「私は真実から書く——私が経験していることを」と彼は語る。「もし誰かが私の曲を聞いて、私がまさに彼らが感じていたことを捉えたと感じたら、私は目指していたことを成し遂げたことになる」  


スタジオの外では、ジョーダンはサッカー狂、ビーチ愛好家、プレイステーションの熱狂的ファンであり、誇り高い兄貴分だ。彼は最近、パースでTEDxトークを行い、自身の旅路と音楽を癒しのツールとして使う力の重要性について語りました——このミッションは、彼のキャリアを今も導き続けています。


ジョーダン・アンソニーは、単にカタログを築いているだけではありません——彼はつながりを築いています。そして、毎曲、毎歌詞、毎ライブパフォーマンスを通じて、彼は脆弱さが強さであり、ポップ音楽は巨大でありながら意味深いものになれることを証明しています。

 

 

「Reckless」





Jordan Anthony, who is attracting attention on the pop scene in Perth, Australia, has released a new late-night anthem, “Reckless.” This talented singer has the potential to gain worldwide attention. Listen to the new single and you'll see why.

 

With a voice that holds the weight of vulnerability and the pulse of euphoria, Jordan Anthony is emerging as one of pop music’s most emotionally resonant new voices. Born in Australia and now based in Los Angeles, Jordan’s music fuses intimate, soul-baring songwriting with slick, arena-ready pop — a sound he describes as “ballads that move.” Whether he’s reflecting on heartbreak or falling headfirst into a crush, Jordan’s music captures moments that feel real, raw, and wildly relatable.


Jordan’s journey into music began as a lifeline. He wrote his first song at age seven to cope with being bullied at school. “It wasn’t a hit, but it was a song,” he recalls. “It helped me say the things I couldn’t say out loud.” From that moment, he knew music would be his everything — not just a passion, but a purpose. “I realized I wanted to connect with people through my stories and make others feel less alone. That’s still my ‘why’ to this day.”


He credits his parents for laying the foundation early. Enrolled in piano lessons at age five (reluctantly at first), Jordan became self-sufficient as a musician and songwriter by his early teens. “They always told me I’d thank them later. They were right.” With no Plan B, he pursued music with tunnel vision, and it wasn’t long before the world started to notice.


In 2019, he placed in the Top 4 on The Voice Australia, then went on to represent Australia in the Junior Eurovision Song Contest with his original song “We Will Rise,”placing eighth globally. The same year, he headlined One Big Voice at Perth’s RAC Arena — a feat he repeated in 2022 and 2023. In 2024, Jordan was handpicked for American Idol, where he became a Top 14 finalist and won over U.S. audiences with his compelling vocals and grounded authenticity. The opportunity prompted his full-time move to Los Angeles to take his career global.


Jordan’s latest single “Reckless” represents the next evolution of his sound: groove-forward pop with emotional edge. Born in a session with Grammy-nominated producer Emile Ghantous and writer Sam Sznd, “Reckless” was originally crafted as a pitch for another artist. But when they heard it back, it was clear: this song hadto be his. “It just hit too close to home. That rush of falling hard, maybe even a little too hard, for someone who makes you feel a bit unhinged—in the best way,” Jordan says. “We wanted it to feel singable, emotional, but fun and addictive. That late-night-drive, scream-the-lyrics kind of track.”


“Reckless” builds on the momentum of Jordan’s previous release “Cherry” (with fellow Idol alum Ajii), further defining his unique lane in the pop landscape: emotionally intelligent, melodically infectious, and unafraid to blur genre lines. Blending pop, R&B, and a hint of nostalgic charm, Jordan is creating music that’s as thoughtful as it is replay-worthy.


With over 600,000 streams on his debut single “Broken Love” (featured on Spotify’s “Peaceful Pop” and “New Pop” playlists), multiple headline shows in his hometown of Perth, and a growing international fanbase, Jordan’s story is only beginning. His collaborators to date include MSquared (Michael DeLorenzis & Michael Paynter), Andro Pop, Jake Clark, Emile Ghantous, Pom Pom, Greg Wattenberg, Brett Koolik, and Taylor Sparks — a who’s-who of hitmakers who believe in his vision.


Whether exploring heartbreak, joy, longing, or love, Jordan’s songwriting is rooted in real experience. “I write from a place of truth—whatever I’m going through,” he says. “And if someone hears my song and feels like I captured exactly what they’ve been feeling, then I’ve done what I set out to do.”


Outside the studio, Jordan is a soccer fanatic, beach lover, PlayStation enthusiast, and proud big brother. He recently gave a TEDx Talk in Perth about his journey and the power of using music as a tool for healing — a mission that continues to guide his career.


Jordan Anthony is building more than just a catalog — he’s building connection. And with every track, every lyric, and every live performance, he’s proving that vulnerability is strength — and pop music can be both massive and meaningful.

 

 





So!YoON!の別名でも知られるフロントマンのソユン(Soyoon)を中心に結成されたSE SO NEONが、待望のデビューアルバム『NOW』をリリースしました。 アルバムは下記のストリーミングリンクより。


MUSIC TRIBUNEとしましては、アーバンなネオソウルの音楽性を選んだ「Remember!」を本作のベストトラックとして強く推薦します。ぜひ下記のミュージックビデオをチェックしてみてください。


『NOW』は、ブルース、サイケデリック・ロック、ニューウェーブ、シンセポップなど多様なジャンルを、ローファイかつヴィンテージな質感で独自に昇華し、現在(いま)と自然をテーマにしたサウンドスケープを描き出しています。


制作はニューヨークで行われ、1日10時間に及ぶスタジオ作業の中で「未来を心配せず、『今』を生きる」ことの大切さに気づいたというソユン。  「私は自然の一部です。『NOW』は自然についてのアルバム」と語るように、アルバム全体には生命力と希望が宿っている。主に韓国語で歌われながらも、その深い感情とメッセージは国境や言語の壁を超えてリスナーの心に響く。


SE SO NEONは本作を携え、9月から北米・欧州を巡るワールドツアーを開催します。11月には日本での単独公演も決定!今後の動向にぜひ注目して下さい。  



【Soyoonのコメント】  


「2023年に2作目のソロアルバム『Episode1: Love』をリリースした後、バンドとしての次のステップに不安を感じていました。気分を変えるべく、ニューヨークに渡ってSE SO NEONの新たな制作に取り組むことに。


1日10時間近くスタジオで過ごす日々の中で、自分が未来を過剰に心配していたことに気づき、『もっと“今”を生きよう』と思うようになりました。  


だからアルバムタイトルは『NOW』なんです。あの時は『もう音楽なんてやらない』って思ってた。でもニューヨークでの経験で、また希望を持てたんです。  


私は自然が大好き。空とか、太陽の光とか。『NOW』は自然についてのアルバム。だって私は“自然”の一部なのだから」  


「Remember!」-Best Track


 

 

【What kind of band is SE SO NEON?】


これまでに全世界で1億4500万回以上のストリーミング再生を記録し、Japanese BreakfastやBTSのRMとのコラボレーションでも注目を集めているSE SO NEON。日本でも坂本龍一のトリビュートライブへの出演や、細野晴臣のカヴァー、KIRINJIとのフィーチャリングでその音楽性を存分に発揮してきました。


個人としてもLevi’s、Adidas、Metaのブランドモデルや、UGGのグローバルアンバサダーを務めており、活躍の場を韓国・アジアから世界へと広げつつある。今秋にはニューヨークのBrooklyn Steel、ロサンゼルスのThe Wilternなど、全米の主要都市の会場を巡るヘッドライナーツアーも開催されます。世界へ羽ばたくアジアのポップロックスター、SE SO NEON の活躍をお見逃しなく!!




【アルバム概要】



■ アーティスト名:SE SO NEON (セソニョン)

■ アルバム名:NOW (ナウ)

■ レーベル:ASTERI ENTERTAINMENT

■ 形態:ストリーミング&ダウンロード

■ URL:https://asteri.lnk.to/SESONEON_NOW 

 

 

■ Track List:

1. Twit Winter 

2. Remember! 

3. New Romantic 

4. NOW 

5. Secret Police

6. Small Heart

7. Eden

8. Jayu

9. Kidd

10. 3 Revolution

11. p and q

12. O



来日公演: 

 

・11/14(金) at. 東京・恵比寿 THE GARDEN HALL



ニューアルバム『NOW』のリリース直後、さらに全米の主要都市を巡るヘッドライナーツアーを経て開催される単独公演。世界へ羽ばたくSE SO NEON の活躍を見逃すな!


時間:Open18:00 / Start 19:00

料金:スタンディング ¥8,800+1Drink

チケット購入・詳細:https://www.livenation.co.jp/se-so-neon-tickets-adp1599718




・11/15(土) 「Setouchi Contemporary 2025 -MUSIC FESTIVAL」- at. 岡山・UNO SEASIDE PARK

 


"衣・食・住・遊" の複合型イベントに、SIRUP、水曜日のカンパネラ、YONA YONA WEEKENDERS らと共に出演決定!


詳細:https://setouchicontemporary.com/





「Asian Pop Festival 2025- " New Romantic"」

 

 

 

SE SO NEON:


2016年にシンガーソングライター/ギタリストであるソユンによって結成。メンバー構成の変遷を経つつも、変わらぬ存在感を放ち続け、デビュー年度には韓国の大衆音楽賞「新人賞」、および「ベスト・ロックソング賞」を受賞した。一躍、韓国インディーシーンを代表する存在に。


2020年リリースのEP『Nonadaptation』は、Pitchfork誌による「2020年のベスト・ロックアルバム35選」、Paste誌による「2020年のベスト・ロックアルバム40選」にも選出された。その他、Fender「Next Artists 2020」、YouTube Music Foundryのグローバルアーティスト開発プログラムに韓国から唯一選出されるなど、国内外で注目を集めています。

 



Neko Caseは9月26日にANTI-からニューアルバム「Neon Grey Midnight Green」をリリースする。


彼女はタイトル曲「Winchester Mansion of Sound」を共有した。 この曲は、ケースの亡き友人で協力者でもあるバンドFlat Duo JetsのDexter Romweberに触発されています。彼女はまた、ケースが「史上最も悲しい歌」と呼んだロビー・バショの「孤児の嘆き」からインスピレーションを得ている。 


「Neon Grey Midnight Green」は、2018年のヘル・オン以来、ケースの7年ぶりのアルバム。 ジェンダーは流動的だが、彼女/彼女の代名詞を使用しているケースは、アルバムを制作し、フルバンドとスタジオでライブで録音した。 


「女性、ノンバイナリー、トランスジェンダーのプロデューサーはごくわずかです」と彼女はプレスリリースで述べている。「人々は私たちを選択肢として考えてかいません。このレコードを制作したことを誇りに思います。それは私のビジョンです。それは私の拒否権です。それは私の好みです」


「Winchester Mansion of Sound」





©Shelvin Lainz


David Byrne(デヴィッド・バーン)がニューシングル「The Avant Garde」を公開した。次回作『Who Is The Sky』の収録曲だ。この曲ではバーン・ワールドが炸裂している。独創性に満ちた摩訶不思議なフレーズとキャッチーなフレーズのコントラストを楽しむことができるはず。


グラミー賞受賞者のキッド・ハープーンがプロデュースし、ニューヨークを拠点とする室内アンサンブル、ゴースト・トレイン・オーケストラが編曲を担当したこの曲は、芸術のために芸術を創造するべきかどうかという考えをテーマにしており、次のような歌詞がある。「それは情熱的な人生であり、時代の先端を行くものである/それは欺瞞に満ちた重みのあるものであり、深遠な不条理である/まあ、似合うものなら何でもいい/それはアヴァンギャルドなのだ。


この曲を聴いて、"デヴィッドは自分の友人たちにデタラメを言っている "と言う人もいるかもしれないね。 しかし、私を知っている人なら誰でも、私が前衛的とか実験的と分類されるようなショーにたくさん行っていることを知っているはずだ。 エッジの効いた伝統にとらわれない作品は、私にとって大きな刺激となるんだ。


とはいえ、実績のない、根本的に新しいことに挑戦するのはリスクが高い。 リスクを伴うものは何でもそうだが、時には的を射ないことも。 しかし、それが達成されれば、感動的で知的な報酬を得ることができる。 それが、新しいもの、型破りなものを作るときに冒すリスクなんだ。

 

だから、意味がないこともあるけれど、完全にオリジナルなものが生まれることもある。 ゴースト・トレインのみんなとキッド・ハープーンは、私が書いた(少なくとも音楽的には)ありきたりな曲を、レッド・ツェッペリンとダーティー・プロジェクターズの出会いのようなサウンドに仕上げてくれた。

 


「The Avant Garde」






ブルックリンを拠点に活動するアーティスト、ミカエラ・ストラウスのプロジェクト、キング・プリンセスが三作目のアルバム『Girl Violence』の最新プレビューとしてニューシングル「Girls」を発表した。

 

前作 "RIP KP "と "Cry Cry Cry "に続くこの三作目のシングルは、有害な関係に翻弄されるキング・プリンセスの姿を描いている。 この曲はGirl Violenceのダークサイドを体現しており、キング・プリンセスは交友関係や快楽への渇望を鎮めるために、カオスと自己破壊を楽しんでいる。

 

「Girls」





Skullcrusherが、近日発売予定のニューアルバム『And Your Song is Like a Circle』からのセカンド・シングルでオープニングトラックとなる「March」を公開した。シンガーソングライターがピアノの弾き語りに挑んだ王道のバラードソングである。

 

「”March”はある意味では告白のようなものなんだ」とヘレン・バレンタインは語る。「失ったもの、理解できないもの、人生と責任に立ち向かうことに身を委ねるような気分だった。 私が物事を振り返る間、見慣れた状況はさまざまな形をとる。 自分の歌を聴かせて友人を泣かせたり、傷つくことを言って友人を泣かせたり。 未知の世界には美しさと恐怖があります」


レコーディング中、バレンティンは喉にコンタクトマイクを付けて歌うなど、自分の声をとらえる新しい方法を試してみたという。新しいレコードの制作段階を通して、人間と機械の境界線は曖昧になっている。 「ボーカルは、誰もが持っているものだから、私のお気に入りの楽器なの。 泣いたり、叫んだり、笑ったり。 そして儚い。 いずれは死んでしまうものなのだから」


「March」



 

Militarie Gunは10月17日にロマ・ヴィスタからニューアルバム『God Save The Gun』を発表した。 『Life Under The Gun』(レビューを読む)の続編となるこのアルバムには、バンドリーダーのイアン・シェルトンが監督したミュージック・ビデオが収録されている。 


"私は、悪徳を讃えるビデオを作りたかった。決して真に反省することなく、過ちを犯した瞬間を振り返っている自分の新しいイテレーションを作りたかった。 "これは、私たちがこれまでに行った中で最も技術的に困難なビデオであり、"悪い考え "という言葉を綴った歌にしか合わないものだった"


ミリタリーガンは、プロデューサー/エンジニアのライリー・マッキンタイア(アーロ・パークス、ザ・キルズ)と共に14曲入りの作品に取り組んだ。 God Save the Gun』には、フィリップ・オドム、デイジーのジェイムズ・グッドソン、MSPAINTのニック・パネラも参加している。


「このように傷つきやすいことで、私の個人的なトラウマがこのアルバムのマーケティングのフックになることは十分承知している」とシェルトンは付け加えた。 「でも、それを刺激しないまでも、私はそれでいいと思っている。 ここ数年、依存症の影響を受けている人の視点から依存症について話すうちに、自分が依存症に苦しんでいる人になってしまったんだ。 ある状況に入り、その結果を十分に理解した上で、とにかくやってみるというのは茶番的な論理なのだ」

 

 

『BAD IDEA』 





Militarie Gun 『God Save the Gun』



Label:Loma Vista

Release:2025年10月17日

Tracklist:


1. Pt II

2. B A D I D E A

3. Fill Me With Paint

4. Throw Me Away

5. God Owes Me Money

6. Daydream

7. Maybe I’ll Burn My Life Down

8. Kick

9. Laugh At Me

10. Wake Up And Smile

11. I Won’t Murder Your Friend

12. Isaac’s Song

13. Thought You Were Waving

14. God Save The 


Pre-save:  https://fm.militariegun.com/GSTG

 Wombo  『Danger In Fives』


 

Label: Fire Talk

Release: 2025年8月8日

 

Listen/Stream 

 

  

Review


Womboは2016年頃から活動しているケンタッキー州ルイヴィルのロックバンド。先週末にニューアルバム『Danger In Five』をリリースしたウォンボ。トリオ編成で、アルトロックバンドとして真を穿ったサウンドを誇る。表向きにはパンクの音楽性は希薄ですが、ポストハードコアのようなサウンドを通過したロックソングを提供します。これはまさしく、ルイヴィルが80~90年代を通して、アートロックやプログレッシヴロックの名産地で有り続けてきたことを印象づける。

 

基本的には、『Danger In Fives』はマスロックのような数学的な変拍子を基調としたアルバムです。マスロックとは、二つ以上の異なるリズムを織り交ぜたポリリズムのロックのことを意味します。広義においては、転調や変拍子を強調するロックサウンドのことを言う場合もある。


しかしながら、今作はスノビズムをひけらかすような内容ではありません。Womboの音楽に、ポップネスをもたらしているのが、ベース/ボーカルのシドニー・チャッドウィックのアンニュイなボーカルですが、最近流行するシューゲイズやドリームポップのアウトプットとは明確に異なる。2000年代のレディオヘッドのトム・ヨーク、Portisheadのベス・ギボンズ、Cocteau Twinsのエリザベス・フレイザーをかけ合わせたような特異なボーカルであり、現実空間と幻想的な空間の間を揺らめくようなニュアンスをもたらす。また、上記のボーカリストがそうであるように、器楽的な音階を強調するボーカルであり、器楽的なニュアンスをアンサンブルに及ぼす。

 

『Danger In Fives』は入念に作り込んだサウンドが特色です。それらはミニマル音楽を通過したロックソングという点では、ニューヨークのFrankie Cosmosのソングライティングに近い印象を抱く。しかし、同時に、ボーカルとギターがユニゾンしたり、ポリリズムがリズムの中に取り入れられたり、全体的なアンサンブルの中でベースの演奏が優位になり、90年代初頭の最初期のグランジやメタルのような音楽が重点を占めるとき、Womboのオリジナリティの高い魅惑的なサウンドが表側に出てきます。それらは、全般的には、Radiohead『Kid A』のエレクトリックサウンドとロックの融合を基底にして、Portishead、Trickyのトリップホップを織り交ぜて、最終的にそれらをルイヴィルのアートロック/マスロックで濾過したような特異なサウンドになる。


複雑なサウンドを想像するかもしれませんが、実際の音楽はそこまで難解ではありません。楽曲の作りがシンプルで、盛り上がってきたところでスパッと切り上げる。それが全11曲、30分後半という簡潔な構成に表れています。Womboの曲はまったく演出がかっていないのが良い。グリム童話やアンデルセンの童話からの影響があり、幻想的な興趣を添えているが、実際的にそれは彼らのいる現実とどこかで繋がっています。基本的には、リアリズムの音楽でもあるのです。

 

Womboは、曲の中で、強い主張性を織り交ぜることはほとんどありません。本作の場合、シドニー・チャッドウィックのボーカルはスキャットやハミングのように明確な言葉を持たぬ場合が多い。しかし、それがたとえ、2000年代のトム・ヨークのように、器楽的な音響効果を強調するものであるとしても、音楽そのものからメッセージが立ち上がって来ないわけではありません。(例えば、意外にもインストの方がボーカルよりも多くのメッセージが伝わる場合があり、無言の方が多言より説得力を持つことがあるのと同じ)ようするに、彼らのサウンドには、アメリカの現実的な側面が反映され、それは寂れた工業地帯や閑散とした農村風景など、一般的な報道では表沙汰にならない現実的な側面をしたたかに織り込んでいるのです。その音楽は、時々、不安を掻き立てることもあるが、奇妙な癒やされるような感覚が内在しています。

 

その中で、Womboが重視するのはホームという概念です。それは実際的な自宅という考えだけではなく、いつでも帰ってこれるような共同体のようなものを意味するのかもしれません。これらの不安の多い世界情勢の中で、こういったホームの広義の解釈によって、Womboのサウンドは独特な安らぎや癒しの印象を受け手に与えることがあります。それはもっといえば、現代社会において、必ずしも物理的な空間を示唆するとはかぎらず、仮想的な空間のようなものも含まれるのかもしれません。これらが、このアルバムの曲に概念として反映されるとき、Womboのサウンドは聞き入らせるだけでなく、かなり説得力のある水準まで達することがあるのです。

  

こういった点を踏まえた上で、注目すべき曲が幾つかあります。オープナーを飾る「Danger In Five」はアルバムの方向性を理解する上で不可欠な楽曲です。グランジ風のベース進行の中でドリームポップ風のアンニュイなボーカルが本作をリードしている。この曲は、ボーカルの性別こそ異なるものの、Interpolのような独特な哀愁を作風の基底に添えている。また、ルイヴィルのバンドらしい不協和音やクロマティックスケールが登場します。「S.T. Titled」は、Joan of Ark、Rodan、Helmetの不協和音を強調したパンクのエッセンスを吸収し、独特な楽曲に仕上げている。この曲ではドラムやベースの生み出すリズムと呼応しつつ、ギターが即興演奏のようにプレイされる。ロックソングの不協和音という要素を押し出した、面白いトラックとなっています。


このアルバムの場合は、それらの不協和音の中で、調和的な旋律を描くボーカルが魅力的に聞こえます。それらは、トリップホップのようなUK/ブリストルのサウンドを彷彿とさせる。「A Dog Says」などを聞けば、このバンドの特異なサウンドを掴むことができるのではないでしょうか。

 

古典的な童話をモチーフにした幻想的な音楽性は、短いインタリュード「Really melancholy and There Are No Words」で聴くことができます。また、続く「Spyhopping」においても、彼らの織りなす独特なワンダーワールドを垣間見られます。さらに、終盤のハイライト曲「Common Things」は素晴らしく、ピクシーズの「Trompe le Monde」の時期のアルトロックソングをわずかに思い起こさせます。ギターソロについては、Weezerのリバース・クオモのプレイを彷彿とさせる。そして、Womboの手にかかると、この曲は独特なメランコリアを放ち、癒やしの雰囲気のあるオルタナティヴロックのスタイルに変貌します。アルバムのクローズ「Garden Spies」はマスロックのテクニカルな音楽性を吸収し、雰囲気を満ちたエンディングを形成しています。アートロックという側面で少しマニアックな作風ですが、聞き逃し厳禁のアルバムでもあるでしょう。

 

 

 

84/100 

 

 

「Common Things」 

 


シカゴの作曲家/ヴォーカリスト/ギタリスト/詩人、Hannah Frances(ハンナ・フランシス)がニューアルバム『Nested in Tangles』を発表した。ニューアルバムは10月10日にFire Talkからリリースされる。


ハンナ・フランシスは、この個性的な作品群によって、個人の真実と自己実現にコミットした、反乱的で感情的な明晰さを持つアーティストとしての地位を確固たるものにした。『 Nested in Tangles』は、プログレッシブ・ロック、アヴァン・フォーク、ジャズの領域にまたがっているが、フランシスの特徴であるヴォーカルの跳躍とパーカッシブでポリリズムなフィンガーピッキングによって、全編を支えている。


フランシスは絶賛されたアルバム『Keeper of the Shepherd』の完成直後、2023年から2024年にかけて『Nested in Tangles』を書き上げた。 『Nested in Tangles』でフランシスは、家族の疎遠、感情的なトラウマ、彼女自身の信頼感の深まりといった複雑な物語を、複雑で目まぐるしくスケールの大きな楽曲群を通して語っている。 


長年のコラボレーターであるケヴィン・コープランドとともに、フランシスはグリズリー・ベアのダニエル・ロッセンをプロデュースと2曲のアレンジに迎え、友人たちにホーン、管楽器、弦楽器のアレンジを依頼した。 現代のアヴァンギャルド・クラシック作曲家や70年代のプログレッシブ・ロックなど、幅広い音楽的影響から生まれた『Nested in Tangles』は、そのダイナミクスと作曲上の回り道で驚きを与えてくれる。


ハンナ・フランシスはこの秋、『Nested in Tangles』を引っ提げ、ブルックリン、フィラデルフィア、ワシントンDCを含む全米ヘッドライナー・ツアーを行う。 


フランシスのヘッドライナー公演は、今週日曜日のGreen Man Festivalを皮切りに、ロンドン、マンチェスター、グラスゴーなどで行われる。 その後、フランシスはフローリストと共にベルリン、パリ、そしてその他の都市で公演を行なう。 この冬の終わりには、ロサンゼルス、サンフランシスコなど西海岸でフォックスウォーレンのサポートを務める。


「Surviving You」





Hannah Frances   『Nested in Tangles』


Label: Fire Talk
Release: 2025年10月10日


Tracklist:
1.Nested in Tangles
2.Life's Work
3.Falling From and Further 
4.Beholden To
5.Steady in the Hand
6.A Body, A Map
7.Surviving You 05:34
8.The Space Between Ft. Daniel Rossen
9.Heavy Light

 

 

アイルランドのロックバンド、Just Mustardが3rdアルバム『WE WERE JUST HERE』のリリースを発表した。同作は10月24日にPartisan Recordsより発売されます。



アルバムはギタリストのデビッド・ノーマンとバンドがプロデュースを手がけ、ミキシングはデビッド・レンチ(フランク・オーシャン、FKAツイッグス)が担当しました。 
 
 
「ボーカルの構造が最も重要な要素でした」とノーマンは、このアルバムのアプローチについて語ります。彼らはこのアルバムが過去の作品よりもメロディックだと述べている。「コーラスはメロディと明るさで溢れ、ケイティ・ボールのボーカルはアルバム全体でミックスの中でより際立っている。彼女の歌詞は、矛盾した毒のあるポジティブさの追求として受け取られるか、至福へのカタルシスの突破口として解釈されるかもしれません」
 
 
 
『WE WERE JUST HERE』には最近の「POLYANNA」も収録されており、タイトルトラックも公開された。


ケイティ・ボールは「より曲を楽観的に書こうとしていたが、時々、詐欺師のように感じていた、物理的な喜びの場所に自分を置こうと試み、その陶酔感を捉えようとした」と語っています。
 
 
このアルバムにはジャスト・マスタードのシグネチャーであるシューゲイザーとエレクトロニクスの融合が感じられるが、ここには少しの太陽の光も含まれている。ミュージックビデオには新宿周辺の映像がサブリミナル的にオーバーレイされている。
 
 
 
「WE WERE JUST HERE」



Just Mustard  『WE WERE JUST HERE』




Label: Partisan
Release: 2025年10月24日


Tracklist:

1. POLLYANNA
2. ENDLESS DEATH
3. SILVER
4. DREAMER
5. WE WERE JUST HERE
6. SOMEWHERE
7. DANDELION
8. THAT I MIGHT NOT SEE
9. THE STEPS
10. OUT OF HEAVEN
 
 


11月7日にDominoからリリースされるニュー・アルバム『COSPLAY』で復活を遂げるSorry。 この発表に合わせて、彼らは新曲「Echoes」を発表し、2025年の北米ツアーを計画している。


『COSPLAY』は、ソーリーにとって3作目のスタジオ作品であり、2022年の『Anywhere But Here』以来のフルアルバムとなる。 このプロジェクトは、"彼らのキャリアの中で最もスリリングでハートフルなアルバムに凝縮されたアイデア、偽装、裏技のめまぐるしい渦 "と説明されている。


「Echoes」はCOSPLAYの "重要な瞬間 "であり、"返事を待っているトンネルに向かってエコーを叫ぶ少年の物語を題材にした詩にインスパイアされた "という。 この新曲について、バンドメンバーのアーシャ・ローレンツはシンプルにこう語っている。 「蝶の聖域で会いましょう。 エコー"。 FLASHA Prodによるシュールなミュージック・ビデオは以下からご覧ください。

 

「Echoes」




Sorry 『COSPLAY』

Label: Domino

Release: 2025年11月7日

 

Tracklist:

1. Echoes

2. Jetplane

3. Love Posture

4. Antelope

5. Candle

6. Today Might Be the Hit

7. Life in This Body

8. Waxwing

9. Magic

10. Into the Dark

11. Jive