ブラック・サバスは、イギリスの労働者階級都市バーミンガムから生まれた。ギタリストのトニー・アイオミとドラマーのビル・ウォードは、もともと幼なじみで学校の同級生であり、ザ・レストというバンドで一緒に演奏し、後にマイソロジーというコンボで共演した。ヴォーカルのジョン・オジー・オズボーンは他のメンバーと同じ地域で育ったが、別の学校に通っていた。

 

やがて彼はベーシストのテリー・ギーザー・バトラーと意気投合し、レア・ブリードというバンドのメンバーとして、アイオミやワードと同じクラブ・サーキットでバンド対決を繰り広げた。以後、アイオミがジェスロ・タルに短期間在籍した後、バーミンガムの若者4人が力を合わせ、1968年にアースとして登場した。

 

グループ名の変更を余儀なくされたとき、彼らはちょうど作ったばかりの曲のタイトル、ブラック・サバスに因むことにした。ブラック・サバスは、悪魔崇拝の弊害を警告する不吉なメタル・ドローンだった。以降、バロウズのヘヴィメタルという概念と並んで、この曲がメタルの元祖となった。 現在ではメタルの代名詞とも言えるブラック・サバスだが、ミステリアスなヴェールの向こう側にあったのは、意外な音楽であった。

 

「俺たちは当初、ジャズ・ブルースのバンドだった」とギタリストのアイオミは1984年のインタビューで回想している。ご存知の通り、半音下げチューニングの生みの親は自分のサウンドに対してある意味では無自覚であったことが伺える。

 

「自分たちのサウンドは、基本的に大きな音でチューニングすることから生まれたんだ。当時は、自分たちのサウンドをなんと呼べばいいかまったく分からなかった」とバトラーはいう。このことは当時、彼らにラウド・ロックという点で先んじていたレッド・ツェッペリンよりもサバスのライブが轟音であることを宣伝広告として打ち出していたことが証し立てている。デビュー当時のブラック・サバスのバイオグラフィーは以下のような内容であった。ーーこのグループは、ゴシック的な威厳と悪魔的な恐怖を帯びた火炎と硫黄のようなサウンドを形成しているーーと、まあ、かなり大げさで笑ってしまうようなシニカルさだ。少なくとも、ブラック・サバスはアヴァンギャルドでニッチなバンドとして国内のシーンに登場した経緯があった。

 



ブラック・サバスは、1970年2月、セルフ・タイトルのデビューアルバム『Black Sabbath』をリリースし、国際的な音楽シーンに登場した。当時、ディープ・パープル、レッド・ツェッペリン、ハンブル・パイといったブルースをベースとしたヘヴィ・ロック・グループが国際的な賞賛を浴び、レコード・セールスを急上昇させていた。一般的には、ハイテンポなロックソングが目立つ中、ブラック・サバスのようなスロウテンポのおどろおどろしい音楽は異端的であったということが分かる。ブラック・サバスは、ハードロックの進化における次の論理的なステップであるように見えた。

 

ギターのリフは、これまで聴いたことがないほど悲痛で、不吉で、大音量であり、バトラーとウォードの叩きつけるようなリズムは、最も耐久性のあるバッテリーを提供した。その上、オズボーンの苦悶の叫びは特許を取得し、それ以来、決して誰にも模倣されないオリジナルのボーカルスタイルとなった。

 

「Black Sabbath」 

 

 

それでも、挑発的な題材に照らして、サバスのナンバーは大ヒットした。アメリカのFMラジオは、サバスの曲をオンエアし、グループのダウンチューニングされた陰鬱なサウンドを受け入れた。特に、「War Pigs」、「Iron Man」、そしてオズボーンのソロ曲としても絶大な人気を誇る「Paranoid」が、この年度のアメリカのラジオの定番曲となった。ブラック・サバスの歌詞は1970年の当世の若者のありふれた題材を歌っていた。セックス、ドラッグ、ロックンロールなど。もちろん、西海岸のヒッピーのような高揚した調子ではなかったが。

 

ブラック・サバスは、もっと世の中に対して率直で、懐疑的な視線を投げかけていた。さらにサバスは、ベトナム戦争に抗議し、スピリチュアリティのダークサイドを探求し、あらゆる種類の権威に疑問を投げかけ、「邪悪な世界」の内なる意識に飛び込むことを決して恐れなかった。

 

バーミンガムの殺伐とした地帯から生まれた彼らの世界観には、そうした非形成的な感情が渦巻いていた。バンドによれば、最大の成功のいくつかは、ほとんど起こりえない純粋な偶然から始まった。ギーザー・バトラーによれば、「''Paranoid''という曲は、世に出た時、ほとんど書きかけに過ぎなかったんだ。私たちは、"War Pigs"のレコーディングを終えたばかりで、このアルバムは『War Pigs』というタイトルになるはずだった」とバトラーは言う。 「アルバムにはあと3分の長さのトラックを入れなければならなかったし、しかもスタジオでのレコーディング時間はあと1時間しか残っていなかった。レコードの時代には、片面につき最低は20分くらい必要だったんだ。だから、両方を使うことにしたんだ。"Paranoid"は20分くらいで書き上げました。この曲はとても良いものになったので、アルバム名を『War Pigs』から『Paranoid』に変えた」

 



後のブラック・サバスのライブのアンセム曲ともなった「War Pigs」は、バンドがチューリッヒのクラブに滞在し、毎晩45分のセットを7回演奏したことから始まった。この間、バンドは延々とジャムを続け、彼らが抱くようになったダークなサウンドを無感覚な客を相手に試していた。「War Pigs」は、ベトナム戦争時代のプロテスト・ソングの最終形ともいえる。スイスのパブで何日も練習を重ね、新しいアレンジを施した。しかし、名曲になるはずだった曲を2、3日かけて練り上げた後、パブのオーナーは”もうたくさん”と言って、バンドを解散させた。しかしながら、このセレンディピティと実験から、サバスの偉大な名曲のひとつが生まれ、今日に至るまでハードロックのベンチマークのひとつとなっている。

  

彼らの代名詞的な名曲「Black Sabbath」は、このバンドの秘儀的な悪魔主義への接近と取られがちなのだが、真実はまったく異なると明言しておかなければならない。むしろ、その意味はまったく逆だった。ギーザー・バトラーは、この曲について次のように明かしている。「ベースのリフから書かれ、オジーが歌詞を書いた。''悪魔崇拝に近づかないように''という警告の曲だった。実は、それがこの曲の原点なんだ。もちろん、それは完全に誤解されちゃったんだけどね」これらのライヴ録音が行われた重要な時期については、サバスの遺産の中でも最良の時期であるように見えるが、実際にはオリジナル・ラインナップにとっては終わりの始まりでもあった。

 

1970年代半ばには、バンドはマネージメントから何年も金をむしり取られてきたという現実に目覚め、すでに嫉妬、不安、パラノイア、薬物中毒の渦に落ち始めていた。1970年代半ばまでに、このため、アイオミ、バトラー、ウォードは1979年にオズボーンを過剰な薬物乱用で解雇し、オリジナル・ラインナップは最終的に崩壊した。

 

「初期は最高の日々だった。俺たちは毎日出世し、どんどん成功していった」とオズボーンはデビュー時について回想したことがある。「まるで、はしごを毎日のように昇っていくかのようで、どんどん成功が舞い込んできた。もちろん、それにつれ、車を買ったり、そして女を手に入れたりもした。それから最も楽しい生活、グルーピーに囲まれたパーティーに明け暮れるような暮らしが始まった。しかし、ドラッグが蔓延したことで、それらの楽しい暮らしがすべて崩壊していった。つまり、バンドの運命をドラッグが左右してしまったんだ。しかし、それでも当時としては、それなしには生き残ることは非常に難しかったと思っている。私たちは中毒者だった。ドラッグやアルコールはすべての苦痛を取り払うためのものだった。一日の終わりに、褒美を与えなければならなかった......。そして、私はバンドから離れざるを得なくなったんだ」

 

1992年、オジーとのお別れギグをカリフォルニアで行った後、オリジナル・サバスは再結成した。1998年から1999年にかけて再結成ワールドツアーを行い、大成功を収めた。バンドは今でも特別なイベントのために再結成を果たした。「私たちは自分たちのスタイルをあまり変えたことがない」とアイオミは認め、ファンがブラック・サバスを決して見捨てない理由を説明した。「私たちは流行を意識したことはなく、常に自分たちが楽しめるタイプの音楽を演奏し、それにこだわってきた。今はみんなとてもいい友達だ」とオズボーンは言う。「森を見つけるには木々の障害を抜けなければならない」 その後もサバスはメンバーチェンジをくりかえしながら、オズボーンをラインナップに復帰させ、2000年以降も散発的なライブを行い活動を継続してきた、2025年、正真正銘のラストツアー「Back To The Beginning」が開催される。この夏、多くのロックファンは伝説的なバーミンガムのバンドの最後の勇姿を見届けることになる。

 

「Back To The Beginning Trailer」 

Weekly Music Feature- GoGo Penguin

 


GoGo Peguinはイギリス、マンチェスター出身のインストゥルメンタル・トリオ。クリス・イリングワース(ピアノ)、ロブ・ターナー(ドラムス)、ニック・ブラッカ(ベース)という夢のようなラインナップに落ち着いたのは2013年のことだった。

 

それ以来、インスピレーションやオリジナリティの豊富さに対してことごとく称賛と絶賛を浴びてきた。 ジャズ、クラシック、エレクトロニックなどの影響と革新への渇望を融合させた彼らは、マーキュリー・プライズ・アルバム・オブ・ザ・イヤー(2014年)を受賞し、レコード、ライブでも成功を収めている。


ゴーゴー・ペンギンの音楽はカテゴライズを拒んできた。 彼らのサウンドには、スウェーデンのエスビョルン・スヴェンソン・トリオ(通称 EST)や、スティーヴ・ライヒ、ジョン・アダムス、さらにはエリック・サティのような、ミニマル・クラシックの作曲家のような、ジャズにおける昨日の発展の痕跡が見て取れるだろう。 エイフェックス・ツインやカール・クレイグのインナーゾーン・オーケストラといった希薄なテクノから、ヨーロッパ・ハウスのエモーショナルなメロディとクレッシェンド、そしてジャズを取り入れたドラムンベースを網羅している。 


2014年のアルバム『v2.0』で栄誉あるマーキュリー賞にノミネートされた後、クリス、ニック、ロブの3人は、多忙なツアーと両立させながら作曲とレコーディングを進めた2枚のアルバムで音楽的な絆を固め、懸命に働いた。 4枚目のアルバム『GoGo Penguin』(『Man Made Object』、『A Humdrum Star』に続き、伝説のレーベル、ブルーノートからリリースされた3枚目)では、ジェットコースターから飛び降り、2019年の活動時間の大半を自分たちの音楽の限界に挑戦した。


クリス・イリングワースはピアニスト、作曲家であり、マンチェスターのアコースティック・エレクトロニカ・バンド、ゴーゴー・ペンギンの創設メンバー。 ロイヤル・ノーザン・カレッジ・オブ・ミュージックで学び、2007年にBMus(優等学位)とPostgraduate Diploma in Performanceを取得。 幼い頃からクラシックからインダストリアルまで幅広い音楽を愛し、特にエレクトロニカとエスビョルン・スヴェンソン・トリオのジャンルを超えたユニークな音楽に惹かれてきた。 


12歳で初めてピアノ/ベース/ドラムのトリオを結成し、同時期にエレクトロニック・ミュージックの実験を始め、アコースティックピアノと並行してアタリSTとローランドMC307で作曲を行った。 長年、クラシック・ピアニストとして活動してきたが、他のミュージシャンとのコラボレーションやバンドでの演奏において本領を遺憾なく発揮している。クリスは、GoGo Penguinでは5枚のアルバム、1枚のスタジオEP、2枚のライブEPに参加している。 2019年、クリスはロビン・リチャーズ(Dutch Uncles)と映画「The Earth Asleep」のスコアで共演した。


ニック・ブラッカはベーシスト兼作曲家でリーズ音楽大学で学び、ジャズ研究の優等学士号を取得している。GoGo Penguinに参加する以前、ニックはマンチェスターのシーンで需要の多いベーシストとして、イギリスとヨーロッパで定期的に演奏して、エレクトロニック・プロデューサーでDJのAimのライブ・ベーシストとして活躍。 "クロスオーバー "ベーシストとしての評価を得てきた彼は、パワフルでグルーヴを重視したスタイルのコントラバス演奏で知られ、楽器の限界を押し広げている。 GoGo Penguinでは、4枚のアルバム、1枚のEP、2枚のライブEPに参加している。


バンドのセカンド・アルバム『v2.0』は2014年のマーキュリー・ミュージック・プライズの最終候補に残った。 2015年、バンドはゴッドフリー・レジオ監督のカルト・クラシック映画「Koyaanisqatsi」のオルタナティブ・スコアを作曲し、ヨーロッパと北米で映画とともにライブを行った。 2021年、ゴーゴー・ペンギンはフランスのインディペンデント映画「メメント・モリ」のサウンドトラックを作曲した。


ニュー・アルバム『Necessary Fictions』はモジュラー・シンセ、ムーグ・グランドマザー、エレクトリック・ベースをこれまで以上にサウンドに取り入れ、アコースティック楽器からドラムを前面に押し出したエレクトロニカへと華麗に滑空する。内部探索に関するアルバムであり、「現時点で私たちが考える私たちの不可欠な本物の資質」を見つけるために深く掘り下げていると説明する。


イリングワースは、彼らはすでに将来について考えており、次に何を作るかについて自信と興奮を持っていると説明している。それはこのアルバムを聞けば火を見るより明らかだ。「スタジオで作っている間、たくさん笑っていたことに気づいていました。そして今、それについて考えるだけで笑っています。そういった明るいエネルギーが人々に伝わることを願っています」



 『Necessary Fictions」 - XXIM/Sony Music


 

ジャズの大まかな歴史は、そのまま”音楽における冒険と革新”に求められるのではないだろうか。ニューヨークのジョージ・ガーシュウィン、アメリカ南部のビッグ・バンドに始まり、ビバップ、モード、フリージャズ、エレクトロ・ジャズ、さらにはエスニック・ジャズ、スピリチュアル・ジャズ/アンビエント・ジャズ等、例を挙げればきりがないが、常に先人のジャズプレイヤーは、各々のタレントをいかんなく発揮することで、音楽の未知なる境地を切り拓いてきた。 


そのクロスオーバーは、近年ではジャズに留まることなく、ヒップホップ/ネオソウルにまで及ぶ。そもそもジャズという音楽形態は、他のジャンルとの融合によって進化しつづけてきたとも言えよう。ジャズの萌芽は、明らかに、フランスの印象主義の作曲家、ラヴェル、ドビュッシー、ストラヴィンスキー、そして彼らをアカデミズムの側面で導いたガブリエル・フォーレに、ジャズの和声法の原点が見いだせる。また、ジャズのコールアンドレスポンスやモードなどのcompositionに見受けられるように、ポリフォニックな音の構成がジャズの基礎になってきた。

 

結局、音楽の始まりが、教会旋法やグレゴリオ聖歌に見いだせるポリフォニーのストラクチャーから誕生したように、和声法の基礎である縦方向の音の構成ではなく、横や斜め方向の音の構成が複数の楽器や多声部旋律により成立したという経緯がある。最初の集大成は、JSバッハとモーツァルトであり、現代のジャズのポリフォニックな響きの原点は、二人の大家の器楽曲に見いだせるはずだ。


そもそも、横の音の流れ、専門的に言えば、和声の分散和音を繋げる役割を司る経過音が滑らかに流れていかなければ、音楽的な優美さが希薄になるのは明白である。より一般的に言えば、もし、ヘヴィメタルに美しく陶酔させるようなギターソロがなければ無味乾燥に陥ってしまうのと同じなのだ。作曲や楽曲構成の基本として言えば、跳躍する音階は非常に例外的で、歌にしても、器楽的な効果にしても、ここぞというときにとっておかないとあまり効果がない。

 

ゴーゴー・ペンギンはペンギン・カフェ・オーケストラを連想させるプロジェクト名であるが、実際的にはアート志向の音楽という共通点は求められるにせよ、クロスオーバージャズを旗印に活動する三人組である。


トリオの演奏力はきわめて高く、どのような音楽を演奏で実現するのか明確に見定め、各々が他者の意図を見事に汲み取り、上記のポリフォニックな音の構成により、イマジネーション豊かな音楽が構築される。鍵盤奏者、ウッドベース(コントラバス)、ドラムという必要最低限のアンサンブルであるが、室内楽アンサンブルのような洗練された質の高い演奏力を誇る。しかも、クリス、ロブ、ニックの三者の演奏者は、器楽的な特性を十分に把握した上で、 それぞれの個性的な音を強調させたり、また、それとは対象的に弱めたりしながら、聞き応えのあるアンサンブルを築き上げる。

 

『Necessary Fictions』は、まるで彼らのライブレコーディングを垣間見るかのようにリアルに聞こえ、そして、現代的なレコーディングの主流であるツギハギだらけのパッチワーク作品とは異なる。録音のシークエンスは断続的で、48分という分厚い構成であるが、一気呵成に聞かせてくれる頼もしい作品だ。このアルバムは、テクノ、ジャズ、ロック、どのようなジャンルのファンですら唸らせるものがある。そして、シンセ(ピアノ)、ベース、ドラムが全編で心地良い響きをもたらしている。ゴーゴー・ペンギンは、客観的あるいは批評的な視点を持っていて、それが余計な音を徹底的に削ぎ落とすというミニマリズムの本質へと繋がっている。ミニマリズムの本質とは、音の飽和にあるのではなく、音の簡素化や省略化にもとめられるというワケなのだ。

 

アルバムのもう一つのトレードマークになっているのが、マンチェスターの実在の構造物をあしらったアートワークである。無機質であるが、機能的、デザインとしてもきわめて洗練されたアルバムジャケットは、ゴーゴー・ペンギンのジャズ、あるいは、テクノのイディオムと共鳴するような働きをなしている。また、そこにはドイツ/ドゥッセルドルフのような電子音楽の重要拠点と同じように、工業都市であるマンチェスターの現在と未来を暗示しているのである。


また、マンチェスター国際フェスティバルの開催を見ても分かるとおり、この由緒ある赤レンガの目立つ素晴らしい港湾都市は、新たなアート形態の発信地になっている。音と映像を融合させたイベントも開催され、リベラルアーツを手厚く支援する土壌が整備されている。例えば、Gondwanaのマシュー・ハルソールは、当該都市の象徴的なミュージシャンである。この動きを中心として、近年になく、マンチェスターはジャズが賑わいを見せているという印象である。

 

 

『Necessary Fictions』は、シンプルにいうと、テクノ、ハウス、ジャズ、ロック、クラシックをクロスオーバーしている。ただ、本作の聴きどころは、ジャンルの確認にあるわけではなく、クロスオーバー・ジャズの一般化にあるわけでもない。伝統的なジャズ・トリオにより生み出される複合的なリズム、ポリフォニックな音の構成の巧緻さ、それから次に何が起こるか全く予測できないスリリングな響きにある。そしてそれは、精細感のあるリアルな音のうねりーーアシッド的なグルーヴーーを生成するのである。アルバムの冒頭からそういった個性が溢れ出す。

 

「1-Umbra」は、ミニマル・テクノを下地にし、シンセベース/シンセリード、ウッドベース、ドラムという三つの楽器がそれぞれ異なる拍子のリズムを刻み、複合的な変拍子を作り出している。


アルバムの序盤では、スティーヴ・ライヒのリズムの革新性やアダムスの旋律的な実験性を受け継いだミニマル・ジャズが繰り広げられる。この曲では、ウッドベースが同じ分散和音を演奏し、そのベース音に対し、パルス音やアルペジエーターのようなシンセの演奏を組み合わせることにより、音の調和や印象が少しずつ変化していく。これらは、Four Tet、Ketttelが好んで使用するようなピアノとシンセの中間にある音色が活用され、それらがシーケンサーのようなリズムのクラスターを作り上げることにより、緻密で入り組んだストラクチャーが生み出される。


一分台からドラムのフィルが入り、アンサンブルやインプロバイゼーションの性質が強まる。しかし、一番面白いのは、強拍や弱拍がドラムの演奏の強弱によって変化するように感じられることだろう。そして、再生時間ごとに異なる和声を作り上げ、レディオヘッドのエジプト音楽のようなエキゾチックなスケールを描きながら、曲の後半に向かっていく。音のアグレッシブな動きや構成の積み重ねは、アイスランドのKiasmosに近い趣向である。これらの音のブロックを建築物のように、ゴーゴー・ペンギンは強固なアンサンブルによって、辛抱強く組み立てていく。



「Umbra」

 

 


「2-Followfield Loops」もまたミニマル・テクノをベースに構築されている。ヨーロッパのダンスミュージックに触発され、全般的に見ると、Kiasmosのタイプの曲を選択し、エモーショナルなテクノを制作している。シンセでミニマルなフレーズを反復させるという点では、一曲目と同様であるが、この曲では、ウッドベースが和声的な構成を補佐している。流れるようにスムーズなシンセピアノの演奏に対して、カラフルな表情付けをしているのがコントラバスである。 


そして、ピアノの音色を途中からアコースティックに変えたりというように、楽曲のストラクチャーの中で、器楽的な効果を変化させながら、音楽の印象を少しずつ変化させていく。驚くべきことに、これらはコンピューター・グラフィックにおける色彩的なグラデーションの変化のような印象を及ぼす。同時に、音楽としては、理数的な構成であるため、涼し気な音響効果をもたらす。これらは感情と理知のバランスが整っているからこそ生じうる冷却効果なのである。


スケールという観点から見ると、エイフェックス・ツインが頻繁に使用するスケールが利用されている。これらは、ロック的な音楽を電子音楽からどのように再構築するかの一つの過程でもあった。そして、ゴーゴー・ペンギンの場合、生のドラムとコントラバスの演奏を通じて、プログレッシヴロック/ポストロックの性質を強める。ドラムやコンバスの演奏により、曲の持つ強度が強まったり、弱められたりと、音楽的なグラデーションが多彩に散りばめられている。

 

 

「3-Forgive The Damages(Feat. Daudi Matsiko) 」はインスト曲だけでは寂しいという方におすすめ。ウガンダ出身のフォークアーティストをゲストボーカルに招聘している。フォーク、ネオソウル風のバラードソングは、Samphaの楽曲に近い素晴らしさがある。この曲のダウディのボーカルは心に染みるものがある。無論、曲の後半で登場するコーラスも美麗なハーモニーを形成していて、胸を打ち、痛ましい魂を治癒するような効果をもつ。ボーカルがウッドベースやシンセピアノの演奏と呼応するような形で、ロックの印象を擁する曲へ徐々に変化していく。ロック的な効果を担うのがドラムの演奏で、曲全体にダイナミズムを付与している。リリック的には、"何もしない時間を大切に"という重要なリリックが織り交ぜられているようだ。これらの鋭い客観的な批評精神は、ゴーゴー・ペンギンの音楽に緩やかさと奥行きをもたらしている。


 

 「Forgive The Damages(Feat. Daudi Matsiko) 」

 

 

さらに、アルバムの中盤以降はモジュラー・シンセの演奏を上手く活用した楽曲が多くなる。これらはイギリス/EUのダンスミュージックの集大成のような意味合いが込められている。また、ジャズとダンス・ミュージックの融合の可能性を探求している。


「4-What We Are And What We Are Mean To Be」は、ディープ・ハウスの打ち込みの重厚感のあるキック音で始まり、ジャズトリオの伝統を活かし、多彩な音楽的な変遷を描く。ウッドベースがソロの立場を担い、次にピアノ、さらにドラムへと、ソロの受け渡しが行われる。ニックのベースの演奏は背景となるアンビエントのシークエンスと重なり、エレクトロジャズの先鋒とも言える曲が作り上げられる。Kiasmos、Jaga Jazzist、Tychoを彷彿とさせる、見事な音の運びにより、圧巻の演奏が繰り広げられる。 曲の中盤以降は、オランダのKettelの系統にあるプリズムのように澄んだシンセピアノの音色を中心に、プログレッシヴ・ジャズのアンサンブルが綿密に構築される。物語の基本である起承転結のように、音楽そのものが次のシークエンスへとスムーズに転回していく効果については、このジャズトリオの演奏力の賜物と言えるかもしれない。

 

「5- Background Hiss Reminds Me of Rain」は短いムーブメントで、電子音楽に拠る間奏曲である。エイフェックス・ツインの『Ambient Works』の系譜にあるトラックである。この曲では、改めてモジュラーシンセの流動的な音のうねりを活かし、それらを雨音を模したサンプリングーーホワイトノイズーーとリンクさせている。クールダウンのための休止を挟んだ後、滑らかなシンセピアノのパッセージが華麗に始まる。「6-The Turn With」は前曲のオマージュを受け継ぎ、エイフェックス・ツインの電子音楽をモダンジャズの側面から再構築しようという意図である。


この曲ではジャズのスケールが頻繁に使用される。ポリフォニックな動きを見せるウッドベースに対し、モノフォニックという側面で良い効果を与えている。特に鍵盤奏者のクリスは色彩的な和声を構築し、音楽に清涼感をもたらす。ドラムの裏拍を重視した演奏も旋律的な曲にグルーヴを与えている。ダンサンブルな曲としてはもちろんだが、メロディアスな曲としても楽しめる。その点では、IDM/EDMの中間に位置づけられ、その境界を曖昧にする一曲。インドアでも、アウトドアでもシチュエーションを選ばずに楽しめる楽曲となっている。


前曲で予兆的に登場したアシッドハウス/ディープハウス、ドラムンベースやダブステップの要素を、ジャズの生演奏から再構築するという視点は、本作の終盤の曲を聞く際に見過ごせない。それは音楽のどの箇所を捉えるのかという側面で大きな変化が生じ、聴き方すら変わってくるからである。


例えば、「7-Living Bricks In Dead Morter」は、スネア/タムのディレイ等のダブ的な効果をドラムの生演奏で再現し、ダイナミズムを作り出す。この曲のドラムは、チューニングや叩き方の細かなニュアンスにより、音の印象が著しく変化することを改めて意識付ける。また、アンビエントや実験音楽の祖であるエリック・サティの『ジムノペティ』のような近代のフランス楽派のセンス溢れる和声法(主音【トニック】に対する11、13、15度以降の音階を重ねる和声法、ジャズ和声の基礎となった)を用い、クラシックとジャズ、ミニマル・テクノの中間点を作り、同心円を描くような多彩なニュアンスを持つ音楽が繰り広げられる。この曲は、次の曲「Naga Ghost」と並んで、エレクトロニックの歴代の名曲と見ても、それほど違和感がないかもしれない。

 

「8-Naga Ghost」は、ダブステップやドラムンベース、フューチャーベースのカリブ音楽に根ざした裏拍のリズムを活かし、未来志向のエレクトロニックを構築している。ドラムは、リムショットのような演奏をもとに、跳ねるようなリズムを生み出し、それらがミニマル・テクノの範疇にあるシンセピアノと呼応する形で続いている。こういった曲は、ノルウェージャズのようなエレクトロニックとジャズのクロスオーバーと共鳴している。また、その一方、ジャズの持つ本質的な意義が、時代とともに変容しつつあるのではないかと思わせる。つまり、古典的なジャズというのは、今やポピュラーの領域に入りつつあり、ジャズそのものが、ヒップホップと同じように、別の形態の音楽に変わりつつあるのを感じるのである。もちろん、伝統的なジャズを伝えるミュージシャンもなくてはならない存在であることを確認した上で。

 

 

クロスオーバーの総仕上げとなるのがクラシック音楽である。「9-Luminous Giants」において、コラボレーター、マンチェスターコレクティヴ、そしてバイオリニスト、Rakhi Singh(ラヒ・シン)が音楽にドラマティックな息吹を吹き込む。ロック調の楽曲にストリングスを加えるというのは、テクノやジャズを軽々と越え、ポストロックとしても親しまれているのは周知の通りだ。


こういった曲を聞くかぎり、どのような単体のジャンルの音楽も完全に独立したものとはなり得ず、音楽の中心に傾倒し、音楽における一体化という概念に吸収されつつあるというのが実情である。「音楽のクラウド化」という表現が相応しい。この曲の場合、ダンスミュージックの楽曲に、バイオリンのレガートが伸びやかさという側面で華麗な印象を添えている。また、これは、ポスト・クラシカル/モダン・クラシカルの動向とも連動して制作された楽曲であろう。 

 

先にも述べたように、ジャズという音楽形態は、いつも冒険と革新と隣り合わせであり、前例のないものとの邂逅でもある。また、翻って言えば、それらの性質なくしてジャズは成立しえない。模倣に終始するのではなく、先人の知恵を活かして、次に何を生み出すというのか。間違いなく、これは現代のミュージシャンや音楽の分野における至上命題となるだろう。このアルバムの場合でも、''新しいものへの飽くなき挑戦''というテーマが掲げられている。それはアルバムの終盤においても変わらず、主軸を定めることなく、ゴーゴー・ペンギンの音楽のバリエーションを象徴付けるかのように、音楽そのものが幅広くなり、そして広汎になり、大きく素早く転回していく。

 

 

「10-Float」では、2000年以降のグリッチ/ミニマル・テクノの音楽性を踏まえ、Max/Abletonで生成したようなサウンド・デザインの要素が強調付けられる。''その音楽が、どこでどのように聞かれるのか?''という重要な命題に対するチャレンジである。そしてその飽くなき冒険心は、このアルバムの最後の最後まで貫かれ、さらにその中枢を形成するコアを作り上げる。


「11-State Of Fruit」では、ジャズ・アンサンブルとしての真骨頂を、音源という形で収めている。この曲では、Killing Jokeの時代から受け継がれる、英国の音楽の重要な主題である"リズムの革新性"をアンサンブルの観点から探求していく。シンセピアノの色彩的なアルペジオ、対旋律としての役割を持つウッドベース、それらに力学的な効果を与えるドラム。全てが完璧な構成である。


こういった一貫して聴き応えのある曲を集中性を維持して提供した上で、音楽の核心を示すのが、ゴーゴー・ペンギンの卓越性である。


「12-Silence Speaks」は、1990年代-2000年代初頭のエレクトロニックと同じように、 未来への期待や希望をほのかに感じさせる。この曲を聴いていて漠然とおぼえる謂れのないワクワク感。これこそエレクトロニックの醍醐味である。そして曲の中盤からは、ジャズ・アンサンブルの性質が再度強まり、映画的でドラマティックなエンディングが続く。これはトリオの中にシネマミュージックに精通した作曲家がいるからこそ成しうる試みなのだろう。(『メメント・モリ』のサウンドトラックを参照しよう)


この曲を聴いていてつくづく思うのは、音楽家のテクノロジーへの憧憬が未来への漠然とした明るい希望を示唆している。そこには、「人類とテクノロジーの共存」という次世代のテーマが明確に内包されていると推測する。それは主従関係で築き上げられるのではなく、人類とテクノロジーが、自然との調和のごとく、私達の世界に併立しているということである。アルバムのクローズ「Silence Speaks」は、本当に賞賛すべき曲で、シンセサイザーにとどまらず、ギター、ピアノ、ベース、ドラム、そういったすべての楽器を最初に触った瞬間のような輝かしい感動に満ちあふれている。


驚異的なことを、さも当たり前のようにこなすのがプロフェッショナリティであるとするなら、それはゴーゴー・ペンギンのためにある定義だろう。彼らの音楽は卓越したスポーツのプレーのようで、また、高度な知性に裏打ちされたアート形態のようでもある。本作は、音楽の持つ奥深さを体感するのにうってつけの作品となっている。音楽というリベラルアーツの一形態そのものが、本来は高度な知性主義によって成立していることをご理解していただけると思う。

 

 

  

94/100 

 

 

 

「Silence Speaks」

 

 

▪GoGo Penguinのニューアルバム『Necessary Fictions』はXXIM/Sony Musicから本日発売。アルバムのストリーミングはこちら


Credit : Bahno Jung


ジャンルの枠にとらわれない韓国のバンド SE SO NEON が、ニューアルバム『NOW』を8/15(金)にリリースする。


プロデューサー/マルチプレイヤー/シンガーであるソユン率いるバンドは、ブルース、サイケデリック・ロック、ニューウェーブ、シンセポップなど多様な音楽性を融合させたローファイかつヴィンテージなサウンドが特徴。


「みんな私のエネルギーと魂を感じてくれるはず」とソユンが語るように、最新作『NOW』も韓国語を主としながらも、現代的であり自然とも深く結びついており、言語の壁を越えて共感を呼ぶ作品となっている。


『NOW』の発表と同時に、収録曲の中から新曲「Remember!」の韓国語・英語バージョンも公開。


本楽曲はソユンと、Jon Nellen(Nick Hakimとの共作でも知られるアーティスト)が共同プロデュースし、Nathan Boddy(Pink Pantheress、Geordie Greep を担当するエンジニア)がミックスを担当。感情の起伏が大きく内省的な静けさと力強いピークを行き来する構成が、ノスタルジックなテーマと同時にハートフルな雰囲気を伝えている。


ソユンは本作について「私は他人の死を通して、自分自身を理解することがある」と語り、親交のあった坂本龍一との別れから深いインスピレーションを得たことを明かしている。



【Comment by Soyoon】


「悲しいことに、私は他人の死を通して自分自身を理解することがあります。たぶん、私自身が死というものを多く経験していないからこそ、その影響がとても大きいのだと思います。友人であり、メンターであり、尊敬する音楽家でもあった坂本龍一さんが亡くなったとき、私が感じた感情を忘れたくないと思いました。彼の死を通して、“自分が誰なのか”を忘れないこと、そして彼の支えの中で、時間と音楽に完全に身を委ねようとする決意が芽生えました。そして彼を記憶するということは、この気持ちを持ち続けることなのです。」



【What kind of band is SE SO NEON?】


これまでに全世界で1億4500万回以上のストリーミング再生を記録し、Japanese BreakfastやBTSのRMとのコラボレーションでも既に高い注目を集めているSE SO NEON。日本でも坂本龍一トリビュートライブへの出演や、細野晴臣のカヴァー、KIRINJIとのフィーチャリングでその音楽性を存分に発揮。


Soyoon個人としてもLevi’s、Adidas、Metaのブランドモデルや、UGGのグローバルアンバサダーを務めており、その活躍の場は韓国・アジアから世界へと広げている。今秋にはニューヨークのBrooklyn Steel、ロサンゼルスのThe Wilternなど、全米の主要都市を巡るヘッドライナーツアーも開催。世界へ羽ばたくSE SO NEON の活躍を見逃すな!





■ アーティスト名:SE SO NEON (セソニョン)

■ 曲名:Remember! (リメンバー )

■ レーベル:ASTERI ENTERTAINMENT

■ 形態:ストリーミング&ダウンロード

■ URL:https://asteri.lnk.to/SESONEON_Remember


 

日本のヴィブラフォン奏者、マリンバ奏者、作曲家である藤田正嘉(Masayoshi Fujita)が、韓国系アメリカ人映画監督ソ・ヨンシェリーのデビュー作『Smoking Tigers』のオリジナル・スコアを発表した。 フルスコアの音源は6月19日にErased Tapes Musicからリリースされる。映画はGold House/東映が配給し、8/16から劇場公開。ムービーの予告編はこちらからご覧になることが出来ます。


本日のデジタル・リリースに合わせ、藤田は「Model Home Magic Moment」で静謐な一瞥を提供している。

 

 「エモーショナルなダイナミクスがあり、また俳優の動きのあらゆるタイミングに音楽を合わせる必要があったため、このシーンの作曲は最も難しかったかもしれません」と彼は付け加えた。

  

この映画は、2000年代初頭のロサンゼルスを舞台に、孤独な韓国系アメリカ人のティーンエイジャー、ハヨンが、エリート養成所で出会った裕福な3人の生徒たちに引き入れられる姿を描いている。 

 

彼らの世界に入り込むにつれ、ハヨンは問題のある家族と低所得者層という背景に対する不安を隠そうと努力するが、彼女の人生を永遠に形作ることになる、大人になってからのほろ苦い痛みを知ることになる。


「郊外、核家族、白いフェンスとプールのある2階建ての家。しかし、私たちの生活がこのような絵に描いたようなポータルを反映していないとき、それは私たちにどのような影響を与えるのだろうか? このような理想的な家族形態やライフスタイルは、私たちの心をどのように蝕み、そうでなければしない選択を私たちに迫るのでしょうか」とソー・ヤング・シェリー監督は説明する。


伝統的なスタイルやテクニック、作曲理論にとらわれることなく、藤田は打楽器の新たな可能性を追求し続け、彼独自の音の風景を作り上げている。 藤田はビーズや箔などで小節を整え、歪みのような新たな響きを生み出すことで、ヴィブラフォンという楽器の本質的な特徴を損なうことなく、あるいは完全に放棄することなく、そのスペクトルを広げている。 このスコアには、「Mama's Piano」でピアノを演奏している村上浩子が参加している。

 

 

 


インタビュー: Masayoshi Fujita(藤田正嘉) - Erased Tapesとの出会い、最新アルバム『Migratory』について -



ロンドンのシューゲイズ/ドリーム・ポップバンド、Whitelands(ホワイトランズ)が、多幸感溢れる曲 「Heat Of The Summer」を携えて帰ってきた。 
 
 
昨年『Night-bound Eyes Are Blind To The Day』をリリースし、そのサウンドの重苦しさとは裏腹に、その背景には変化への欲求がある。 シンガーのエティエンヌ・クアルテイ=パパフィオはこう説明する。


「この曲は、暴君を打倒するために、それが都市であれ、町であれ、国家であれ、人々が団結するコミュニティについて歌っているんだ」


「昨年の夏、この作品を書き始めたとき、私はトランプ大統領に憤慨していました。その後、ルイジ・マンジョーネがあのCEOを倒したことが、この作品を完成させる励みになりました。 スパイク・リーの映画『ドゥ・ザ・ライト・シング』も私にインスピレーションを与えてくれた」


このメッセージは、キャメロン・ペリーが監督したストレートなミュージック・ビデオによってより強調されている。
 
 
2024年、ホワイトランズは、スローダイブのツアーのオープニングを飾ったほか、ピッチフォーク・ミュージック・フェスティバル(ロンドン)、ライブ・アット・リーズなどに出演し、勢いに乗っている。また、ホワイトランズは、Rideのギタリスト、アンディ・ベルにも称賛を受けている。シューゲイザーを専門とする英国のインディペンデント・レーベル、ソニック・カテドラルの注目のバンドである。最新のホワイトランズのインタビューはこちらからお読み下さい。
 
 

 

「Heat Of The Summer」

 

Wednesdayはニューアルバム『Bleeds』を発表し、セカンドシングル "Wound Up Here (By Holdin On) "のビデオを公開した。『Bleeds』は9月19日にDead Oceansからリリースされる。

 

"Wound Up Here (By Holdin On) "は、アルバムのファースト・シングル "Elderberry Wine "に続く作品で、彼らはTVデビューとなる "The Late Show with Stephen Colbert "で披露した。


ノースカロライナを拠点とするバンドは、ザンディ・チェルミス(ラップ・スティール、ペダル・スティール)、アラン・ミラー(ドラムス)、イーサン・ベヒトールド(ベース、ピアノ)、ジェイク "MJ "レンダーマン(ギター)、そしてフロントウーマンのカーリー・ハーツマンで構成されている。


「この曲は、私の友人がウェストヴァージニア州の小川から遺体を引き揚げなければならなかった時の話にインスパイアされています。誰かが溺死したんだけど、流れの関係で浮かび上がってくるまでに数日かかった。”I wound up here by holdin on"は、友人のエヴァン・グレイの詩集の一節だ:フェンスに覆われた潅木に囲まれた雑木林。彼は僕とジェイクに、ツアー中に読むようにとその詩集をくれたんだけど、その一節が純粋に天才的だと僕には突き刺さったんだ。


ハーツマンはニューアルバムについても語った。『Bleeds』は『Rat Saw God』の精神的後継者であり、"Wednesday Creek Rock "の真髄とも言えるアルバムだと思う。これこそ水曜日の歌のあるべき姿だ。僕たちは、これを解明するために人生の多くを捧げてきた。


Wednesdayはこの秋、9月下旬から『Bleeds』を引っ提げたツアーを行う。このツアーは、フレンドシップのサポートによる西海岸公演と、ダッフォのサポートによる東海岸公演に分かれる。



「Wound Up Here (By Holdin On)」

 

 

Wednesday 『Bleeds』




Label: Dead Oceans

Release: 2025年9月19日

 

 

Tracklist:


1. Reality TV Argument Bleeds

2. Townies

3. Wound Up Here (By Holdin On)

4. Elderberry Wine

5. Phish Pepsi

6. Candy Breath

7. The Way Love Goes

8. Pick Up That Knife

9. Wasp

10. Bitter Everyday

11. Carolina Murder Suicide

12. Gary’s II

 

アトランタのニュースクールハードコアバンド、Upchuck(アップチャック)が衝動的な若さに満ち溢れたニューシングル「Plastic」を発表した。ストレイトエッジ風のハードコアナンバーだ。同時にバンドはドミノとの契約を発表している。

  

バンドの煽情的なライヴ・ショーはすでに伝説化しつつあり、アップチャックはカオスの軌跡を残している。 激しくパンクな音楽性を持つ5人組は、今年、グリーンマン、ピッチフォーク・ロンドン、シンプルシングスのフェスティバルに出演する予定だ。

 

アップチャックは、2018年にアトランタの20代前半のスケーターからなるバンドとして誕生し、魅力的なパフォーマーKTを前面に押し出した。

 

2022年にはブルックリンのFamous Class Recordsからデビュー・フル・アルバム『Sense Yourself』をリリースし、その後すぐにタイ・セガールがプロデュースした2023年の『Bite The Hand That Feeds』がリリースされた。Freaky 「や 」Facecard "といった初期のシングルは、イギー・ポップやヘンリー・ロリンズから支持を受け、彼らのラジオ番組で演奏された。

 

急成長するアップチャックのライヴ・ショーの伝説は国際的に広がり続け、同じアトランタ出身のフェイ・ウェブスター(アップチャックをお気に入りのバンドと呼ぶ)は、アミル&ザ・スニファーズ、ソウル・グロー、OSEES、キング・ギザード&ザ・リザード・ウィザードのサポート・ツアーに参加し、コーチェラ2024では注目を集めた。

 

SXSWで彼らのライブを観たローリング・ストーン誌は、「すべてが爆発する。クラブは音の大砲と化し、最大限の破壊をもたらす。どの曲も、これでもかというほどヒットする」と評価している。

 

「Plastic」

 

 

普遍的なフォークロック・ミュージックを探求するCass Mccombs(キャス・マコームス)は年代を問わずおすすめしたいシンガーソングライター。


ニューアルバム『Interior Live Oak(インテリア・ライブ・オーク)が8月15日にドミノからリリースされる。 本日発表された新曲「Peace」は、切なくも覚悟を感じさせる。 「Peaceは、さよならを言うときに言う言葉だ」とマコームスは歌っている。同じくドミノレコーディングに所属するリアル・エステイトがお好きな方におすすめしたいシングルだ。 


『インテリア・ライブ・オーク』は、キャスにとってこれまでで最もパーソナルなアルバムであり、これまでのどのアルバムよりもキャスの作詞家、ミュージシャンとしての幅の広さを示しているという。このアルバムは、キャスが20年以上にわたって実験的に創作してきたものすべてを引き出し、さらに直接的で明快な光で切り開いている。全体を通して彼の態度は希望に満ちており、現代生活の極端な面を歌うことの多い人物にしては奇妙に聞こえるかもしれない。しかし、『インテリア・ライブ・オーク』は、そうした極限を生きてきた人間の決意なのだ。


『インテリア・ライブ・オーク』の制作にあたり、マコームスはドミノへの復帰と、昨年のリイシュー・キャンペーンやリープ・イヤーからのアーカイヴ盤『シード・ケーキ』での初期作品の再演に触発された。そのため彼は、ジェイソン・クエヴァー(ペーパーカッツ)やクリス・コーエンなど、ベイエリアでの初期のコラボレーターと仕事をすることになった。ニューヨークでの追加レコーディングでは、マット・スウィーニーやマイク・ボーンズなど、長年のコラボレーターが参加した。インテリア・ライヴ・オーク』は、キャスのヴィジョンを拡大している。


『Interior Live Oak』には、以前リリースされた曲「Priestess」も収録されている。 マコームスの最後のソロ・スタジオ・アルバムは2022年の『Heartmind』だが、2023年にはサンフランシスコの学校教師ミスター・グレッグと組んで『Mr Greg & Cass McCombs Sing and Play New Folk Songs for Children』を発表している。

 

 

「Peace」

 



Cass McCombs 『Interior Live Oak』

Label: Domino

Release: 2025年8月15日 

  

Tracklist:
 


1 .Priestess
2. Peace
3. Missionary Bell
4. Miss Mabee
5 .Home At Last
6. I'm Not Ashamed
7. Who Removed The Cellar Door?
8. A Girl Named Dogie
9. Asphodel
10. I Never Dream About Trains
11. Van Wyck Expressway
12. Lola Montez Danced The Spider Dance
13. Juvenile
14. Diamonds In The Mine
15. Strawberry Moon
16. Interior Live Oa

 


Guerilla Toss(ゲリラ・トス)がニューアルバム『You're Weird Now』を発表し、サイケデリックなアルトポップソング「Red Flag to Angry Bull」を公開した。『You're Weird Now』はSub Popより9月12日発売予定。

 

バンドにとって5枚目、サブ・ポップとしては2枚目となるこのアルバムは、クリエイティビティの喜びを表現した、非常に創造的で愉快な作品となっている。『You're Weird Now』によって、ゲリラ・トスは、何があろうとも自分のフリーク・フラッグを掲げ、芸術的ビジョンに忠実であり続けようとする勇敢な人たちのために、「奇妙な 」という言葉を取り戻した。


 
フロントウーマンのキャシー・カールソンは、バーモント州でニューフルアルバムのレコーディングをしている間、「パンク・ランチ」と呼ばれる共同食を用意していた。パンク・ランチの常連は、奇妙な音楽界のそれぞれのコーナーからやってきた2人のレジェンドだった。

 

スティーヴン・マルクマス(ペイヴメント、ザ・ジックス)とトレイ・アナスタシオ(フィッシュのギタリストで、ゲリラ・トスが『You're Weird Now』を制作したレコーディング・スタジオ、ザ・バーンのオーナー)。エンジニアは、『Crooked Rain』以来マルクマスと仕事をしているブライス・ゴギン、そしてザ・バーンで長年フィッシュのエンジニアを務めているベン・コレット。


 
フィッシュのボーカルとペイヴメントのボーカルがゲリラ・トスと一緒にスタジオの冷蔵庫の奥底から掘り出した適当な食材でサンドイッチを和気藹々と作るというアイデアは馬鹿げているように見えるかもしれないが、まったく理にかなっている。

 

というのも、あなたよりもずっと前にペイヴメントを観たスラッカー・パンク、あなたよりも何度もフィッシュを観たことのあるワイルド・アイズ・ウック、そしてGTの元ツアーメイトであるプリムスの後を追う90年代のエキセントリックな人たちの間の自然な架け橋となるバンドがあるとすれば、それはゲリラ・トスだからだ。

 

想像力豊かで、自分たちらしさを惜しみなく発揮するバンドである彼らは、基本的に、あらゆる音楽的アイディアが表現に値し、誰もが歓迎されるユートピア的なポスト俗物世界の現実の姿なのだ。


 
今日、バンドはニューシングル「Red Flag to Angry Bull」のアニメーションビデオを公開した。この曲は、アナスタシオのおしゃべりでクラシカルなフィッシュ・ソロ(本当にこれ以上の言葉はない)に乗せて、マルクマスとカールソンがデュエットする、キャンプファイヤーのシンガロングにふさわしいアウトロへと展開する。

 

バンドによれば、謙虚なアナスタシオは、この曲への参加を依頼されたとき、ショックを受けると同時に光栄に思ったという。結果として生まれた声の不協和音は、勝利と喜びに満ち、表現とつながりの手段としての音楽の力、つまり最も純粋で自由なコミュニケーションであることを強調している。


「Red Flag to Angry Bull」




You’re Weird Now Tracklist:


Label: Sub Pop

Release:  2025年9月12日

 

Tracklist:

1. Krystal Ball

2. Psychosis Is Just a Number

3. CEO of Personal & Pleasure

4. LIfe’s a Zoo

5. Red Flag to Angry Bull

6. Panglossian Mannequin

7. Deep Sight

8. When Dogs Bark

9. Crocodile Cloud

10. Favorite Sun


2025年7月5日、イギリスのバーミンガムで行われるオジー・オズボーンとブラック・サバスのファイナル・ライヴ「Back To the Beginning」のストリーミングが有料のチケットで販売される。


6月18日、オズボーンのソーシャル・サイトに投稿されたビデオには、「Back to the Beginning」のライブストリーミングを求めるファンからのコメントでスクリーンが埋め尽くされる中、大勢の観衆がメタル・アイコンと一緒にOiと叫んでいる様子が映し出されている。


76歳のオジーは最近、オリジナル・バンド・メンバーであるギタリストのトニー・アイオミ、ベーシストのギーザー・ブルター、ドラマーのビル・ウォードと共に、地元バーミンガムで行われるサバスの最終公演に何が何でも間に合わせると語った。 一連の手術と健康上の挫折を経て、2018年以来のフル・コンサートに向けてトレーニングに励むオジーはSiriusXM番組で、"何としてでも "ヴィラ・パークのステージに立つと語った。


サバスの最終公演には、メタリカ、マストドン、アンスラックス、パンテラ、アリス・イン・チェインズ、ゴジラ、スレイヤー、そしてガンズ・アンド・ローゼズ、スマッシング・パンプキンズ、リンプ・ビズキット、ジューダス・プリースト、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのメンバーらによるスーパーグループが参加する。ストリーミングチケットは4300円で販売。


オズボーンの妻でありマネージャーであるシャロン・オズボーンは最近、無名のグループのマネージャーと揉めた結果、あるバンドをバック・トゥ・ザ・ビギニングのラインナップから外したと語った。 「ここ数年で最悪の気分だったわ。 その人が私について何を言おうが、どう考えようが関係ない。 そして彼は今、バンドを出演から外したからとでたらめな嘘をついて回っているんだ」




カナダのシンガーソングライター、JayWood(ジェイウッド)は、9月5日にリリースされるアルバム『Leo Negro』を発表した。 アーティストは2022年に『Slingshot』でレーベルからデビューしている。彼はヒップホップ/R&Bをフォークミュージックと結びつける次世代のミュージシャンだ。


ジェイウッドは、ヒップホップ、ソウル、フォークまでをこなす万能なアーティストである。リードシングル "ASSUMPTIONS "は近年になくヒップホップに系統したシングルである。

 

最近リリースされたジャンルを超えたシングル "BIG TINGS" feat. Tune-Yards "や "UNTITLED (Swirl) "に見られるように、ジェイウッドは枠にはまることができないが、ニューシングル "ASSUMPTIONS "も例外ではない。 


ヒップホップ・プロダクションに、サイケデリックな華やかさと、Tyler, the Creator、Stereolab、同じケベック出身のインディーズ・ミュージシャン、Men I Trustのようなネオ・ソウルの誇らしげなエネルギーが散りばめられている。


「ASSUMPTIONS」




JayWood 『Leo Negro』


Label: Captured Tracks

Release: 2025年9月5日

 

Tracklist:

 

1.WOOZY 

2 PISTACHIOS 

3 BIG TINGS 

4 J.O.Y. 

5 ASSUMPTIONS 

6 GRATITUDE 

7 ASK 4 HELP 

8 PALMA WISE 

9 DSNTRLYMTTR 

10 UNTITLED (Swirl) 

11 SUN BABY 



 

ダンドークの5人組、Just Mustard(ジャスト・マスタード)が3年ぶりとなる新曲「POLLYANNA」を携えて戻ってきた。

 

この曲は、"毒のある幸福感 "からインスパイアされたもので、タイトルのPollyannaは、過度にポジティブで楽観的な人を意味する。 この曲は、ヴォーカリストのケイティ・ボールによって監督された、魅惑的なCCTVスタイルのビデオとセットになっている。 「このビデオは、私たちの故郷ダンドーク近辺で、CCTVやVHSカメラを使って、できるだけ楽しく撮影した」


"POLLYANNA "は、ジャスト・マスタードのオリジナル曲としては、2022年の高い評価を得たアルバム『Heart Under』以来となる。 バンドは、ロンドンのHoxton Hall、ベルリンのPrivatclub、パリのPoint Empemereなど、親しみやすい会場での厳選された公演も発表している。

 


「POLLYANNA」