2026年7月5日日曜日、PSP Socialが西調布Studio REIMEIにて自主企画『膨らみの中の分裂たち』を開催する。新メンバーに古山を加えた四人体制での初めてのライブで、現在制作中の新作アルバムの曲を全曲披露する予定。ゲストアクトはモールス水とnagako(pile of hex)の二組。予約定員は30人の予定。お早めに。



・PSP Social主催「膨らみの中の分裂たち」


出演

PSP Social

nagako(pile of hex)

モールス水


令和8年7月5日(日)

西調布 Studio REIMEI

入場料3000円(パンフレット+ドリンク込み)

開場17時30分

開演18時


フライヤーデザイン:アッティラ太郎



PSP Social:

東京の三人組のエクスペリメンタルロックバンド。エスパーキック主催。シンプルなスリーピースの編成ながら重厚なヘヴィーロックを提供する。主要な作品には「サラバ未来救世主」がある。また、近年は実験音楽のコンピレーションをキュレートしている。自主企画を定期的に開催し、野流が主催する即興イベント「IMPROVISATION SUMMIT TOKYO」にも出演経験がある。


モールス水:

2024年活動開始。当初は2人体制だったが、即脱退可能という文言を受けてベーシストが加入、以後3人体制で活動している。Sound Cloud上にて超低音質の作品を多数リリース。2025年春には1st single「瓦解」を発表。


nagako:

京都在住。2017年より、オルタナティブ・ロックバンドpile of hexのギター&ヴォーカルとして活動。2025年からセルフリミックス・プロジェクトとしてソロでの活動を始め、サンプラーやシンセサイザーを駆使したライブ演奏を展開。バンド活動と電子音楽制作を並行させながら、独自の音楽性を追求する。


予約・詳細:https://esperkick.com/20260705-2/

Photo: Pierre Anton

登録有形文化財・九段ハウスにて、アーティストとして活動するMartin Margiela(マルタン・マルジェラ)の日本初となる大規模個展「MARTIN MARGIELA AT KUDAN HOUSE」を開催いたします。

 

1927年竣工の歴史的な邸宅という空間に、現代美術作品を展示するというコントラストに、Margielaは強い関心を寄せています。本展では、九段ハウスの邸宅全体を舞台に、数多くの作品が儚くも一時的なインスタレーションとして展開されます。なお、本日会期の延長が発表されました。本展は4月11日より5月5日まで開催されます。アート好きの方は足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

ABOUT THE EXHIBITION

Kudan House Exterior


Martin Margielaは、再利用、分解、変容といったテーマへの探究を継続しており、その創作において人間の身体は今なお重要なインスピレーションの源であり続けています。

Margielaの作品は、日常の中にありながら見過ごされがちな物や状況への鋭い観察から生まれ、平凡なものが非凡なものへと転化していきます。

本展では、コラージュ、絵画、ドローイング、彫刻、アッサンブラージュ、映像作品など、多様な技法による作品を紹介します。

生活の痕跡が残る古い邸宅に作品を設えるという選択は、Margielaにとって大切な「私的な空気感」を反映するものです。

来場者は、邸宅全体に広がるさまざまな部屋を巡りながら、極めて親密な距離感の中で作品と向き合う体験へと招かれます。

なお、展示構成およびキュレーションは、すべてアーティスト自身によって手がけられています。

 

FROM THE ARTIST


「匿名性は、私の創造の自由にとって不可欠なプライバシーを守るために必要なものです。

ファッションの時代と同じ興味や強迫観念を、私は今も持ち続けていますが、人間の身体はもはや唯一の表現媒体ではありません。」

「私は常に観察者であり、日常的な物や状況から強いインスピレーションを受けています。今日ではさまざまな技術的サポートを用いることが当たり前になっていますが、私は可能な限り、手仕事のプロセスを見せることにこだわっています。それが、不完全さやパティナ、未完成の美に対する私の深い愛情につながっています。」「私は答えを示すよりも、問いを投げかけたいのです。」




ABOUT THE EXHIBITION VENUE



本展の会場となる九段ハウスは、1927年に竣工したスペイン様式の洋館を改修した、会員制ビジネス・イノベーション拠点です。旧山口萬吉邸として知られ、現在は登録有形文化財に指定されています。

本年4月、Martin Margielaはこの場所において、かつての家族邸宅が持つ私的で親密な空気感を蘇らせることを選びました。


九段ハウスを訪れたMargiela自身もその佇まいや空気感に強い共鳴を覚えています。


2000年、彼は東京・恵比寿の歴史ある邸宅に、世界初となる「Maison Martin Margiela(メゾン マルタン マルジェラ)」の店舗をオープンし、浴室やキッチンを含む邸宅全体にコレクションを展示しました。


そして四半世紀を経た2026年、再び東京へと戻り、同じく歴史的な邸宅である九段ハウスで作品を発表することを選びました。


「再び東京に戻り、1927年に建てられたこの家で作品を見せられることを嬉しく思います。2000年のときと同じように、来場者が各部屋の親密な空間の中で作品と出会い、驚きを感じてもらえることを願っています。」 -Martin Margiela 


EXHIBITION DETAILS

会期:2026年4月11日(土)- 2026年5月5日(火・祝)

開館時間:10:00〜19:00(最終入場18:00)

※2026年4月29日(水・祝)および5月5日(火・祝):最終入場16:00、閉館時間17:00

2026年4月30日(木):開館時間12:00〜19:00(最終入場18:00)

会場:九段ハウス

〒1020073 東京都千代田区九段北1-15-9

観覧料:一般 2,500円(税込)

チケット購入オンラインサイト:

https://artsticker.app/events/103820

 

*本展は日時指定制となっております。上記チケット購入オンラインサイトより4月15日(水)15:00よりお求めいただけます。


SELECTED WORKS





ABOUT THE ARTIST 

1957年 ベルギー・ルーヴェン生まれ

1980年 アントワープ王立芸術学院卒業

1984–1987年 Jean-Paul Gaultier(ジャン=ポール・ゴルチエ)(パリ)のアトリエでデザインアシスタントをスタート

1988年 Jenny Meiren(ジェニー・メレンズ)とともにパリで「Maison Martin Margiela(メゾン マルタン マルジェラ)」を設立、初のショーを発表

1997–2003年 「Hermès(エルメス)」(パリ)ウィメンズ クリエイティブ・ディレクター

2008年 20周年ショーを機にファッション界を離れ、ビジュアルアートに専念

2019年 Bielefeld Kunsthalle(ビーレフェルト美術館)にて初のグループ展

2021年 パリのLafayette Anticipations(ラファイエット・アンティシパシオン)にて初の個展

2022年 同展が北京・MWoods(エムウッズ)に巡回

2023年 同展がソウル・Lotte Museum of Art(ロッテ美術館)に巡回

2023年 アムステルダム・Eenwerk Galleryにて個展

2024年 ブリュッセルおよびアテネのBernier / Eliades Galleryにて個展



【クレジット】

主催:原田 崇人(rin art association)

共催:kudan house

協力:Bernier / Eliades Gallery

 Gallery NAO MASAKI

Taka Ishii Gallery

協賛:株式会社ジンズホールディングス

制作:黒瀧 紀代士

Kornieieva Varvara

黒瀧 保士

   

制作協力:

株式会社 エム・ジー・エス

株式会社 原人社

ハイロックデザインオフィス

粕谷 健三

Artifact株式会社

 

ウェブデザイン・制作:

Thought. / SA . NA


【WEBSITE】

http://martinmargielaatkudanhouse.jp/

【INSTAGRAM】

https://www.instagram.com/martin_margiela_at_kudan_house/


Le Makeup、2年ぶりのアルバム「The Crying Xpress」が4月29日にリリース。アルバムより、柴田聡子が参加した「傷 feat. 柴田聡子」が先行配信+MVが公開されました。


トラウマと現実。何を受け入れて、何を拒絶して自分になっていくかという過程をテーマにした「傷」には、柴田聡子が参加している。また、柴田聡子の楽曲のメロディを引用もしている。


本楽曲は、3月28日にLIQUIDROOMで行われた柴田聡子 presents「ありがとう」で初披露された。また、映像作家の斎藤玲児が監督を務めたMVも公開となっている。ぜひ下記よりご覧ください。


Le Makeup - 傷 feat. 柴田聡子 kizu featuring Satoko Shibata (Official Music Video)

https://youtu.be/ni929VWL7SA ]



Le Makeup「傷 feat. 柴田聡子」



Digital | PURE014 | 2026.04.15 Release

Released by AWDR/LR2

[ https://ssm.lnk.to/kizu_ft_shibata ]


作詞・作曲・編曲:Le Makeup, 柴田聡子

編曲:Le Makeup

ヴォーカル、ギター、シンセサイザー、プログラミング、ミックス:Le Makeup

ヴォーカル:柴田聡子

マスタリング:木村健太郎 (Kimken Studio)

アートワーク:Le Makeup

アーティスト写真:佐藤麻優子


Director : Reiji Saito

Cast : Le Makeup, Satoko Shibata

Hair & Makeup : Shikie Murakami

Assistant Hair & Makeup : Nanako Yamamoto

Special Thanks : Yohei Watanabe



「The Crying Xpress」感情の特急。弱さの表現。SNSで呟くみたいに、誰に話すまでもないけど聞いてほしい自分の話。ミニマルなシンセ、エモーショナルなヴォーカル、クリーントーンのギター、オルタナティヴ・アンビエント・ポップ、独自の世界を構築するシンガーソングライター 【Le Makeup】のニューアルバム。


Le Makeup「The Crying Xpress」


ルメイクアップ「ザ クライング エクスプレス」Le Makeup「The Crying Xpress」

Digital (UPC : 4580789762970) | PURE015 | 2026.04.29 Release | Released by AWDR/LR2

[ https://ssm.lnk.to/TheCryingXpress ]


Single Releases


Le Makeup「この夜が終わるまで」Digital | 2026.03.25  Release [ https://ssm.lnk.to/until_this_night_ends ] [ https://youtu.be/Xc5VqsASMFs ]

Le Makeup「block party」Digital | 2026.02.25 Release [ https://ssm.lnk.to/blockparty ] [ https://youtu.be/2SFrxmphbGQ ]

Le Makeup「はじまり」Digital | 2026.02.06 Release [ https://ssm.lnk.to/hajimari ]



Le Makeup


シンガー/プロデューサー。

関西学院大学在学中に作曲へと本格的に取り組みはじめ、以降国内外の様々なレーベルから作品を発表する。2020年にアルバム「微熱」をリリース。

中国・韓国・オランダ・デンマーク・ドイツでもパフォーマンスを行う。

2023年2月にDove、gummyboy、JUMADIBA、Tohji、環Royが参加したアルバム「Odorata」をリリース。Pitchforkで取り上げられるなど話題となった。

2024年5月にオノ セイゲンがマスタリング・エンジニアとして参加したアルバム「予感」をリリース。東京・大阪で初のワンマン公演「予感」を行った。

2026年にニューアルバム「The Crying Xpress」を4月29日にリリース。


Singer/Producer.

Began seriously pursuing composition while attending Kwansei Gakuin University, subsequently releasing works on various domestic and international labels. Released the album “Binetsu” in 2020.

Has performed in China, South Korea, the Netherlands, Denmark, and Germany.

In February 2023, released the album ‘Odorata’ featuring contributions from Dove, gummyboy, JUMADIBA, Tohji, and Tamaki Roy. It garnered attention, including coverage by Pitchfork.

In May 2024, released the album ‘Premonition’ with Seigen Ono participating as mastering engineer. Held his first solo concerts, titled ‘Premonition’, in Tokyo and Osaka.

New album “The Crying Xpress” will be released on April 29, 2026.



柴田聡子 SATOKO SHIBATA


シンガー・ソングライター/詩人。

北海道札幌市出身。武蔵野美術大学卒業、東京藝術大学大学院修了。2010年、大学時代の恩師の一言をきっかけに音楽活動を始める。


2012年、1stアルバム『しばたさとこ島』でデビュー。以来、演劇の祭典「フェスティバル/トーキョー13」では1時間に及ぶ独白のような作品『たのもしいむすめ』を発表するなど、歌うことを中心に活動の幅を広げ、現在までに7枚のオリジナル・アルバムを発表。2024年リリースのアルバム『Your Favorite Things』がCDショップ大賞2025<赤>大賞を受賞。


2016年、第一詩集『さばーく』を上梓。同年、第5回エルスール財団新人賞<現代詩部門>を受賞。2023年、エッセイ集『きれぎれのダイアリー』を上梓。2024年に上梓した第二詩集『ダイブ・イン・シアター』が第31回中原中也賞最終選考作品に選出。寄稿も多数で、「しずおか連詩の会」への参加など、詩人・文筆家としても注目を集めている。


2025年、シングル『Passing』、『ときめき探偵』をリリース。文を手がけた初の絵本『きょうはやまに』(絵・ハダタカヒト)の単行本を上梓。客演や曲提供なども多数で、その創作・表現はとどまるところを知らない。


弾き語りとバンド編成により縦横無尽のライブ活動を展開。RISING SUN ROCK FESTIVAL 2025 in EZO や ASAGIRI JAM’25、FUJI ROCK FESTIVAL’26 など、大型フェスへの出演も果たしている。

   My New Band Believe 『My New Band Believe』

Label: Rough Trade 

Release: 2026年4月10日

 

Review

 

My New Band Believeは、Black Midiの元ベーシスト、キャメロン・ピクトンにより結成されたバンド。ある時、中国のホテルで急に錯乱状態に陥り、突発的に様々なイメージが思い浮かんできた。その中から奇妙なフレーズ、My New Band Believeが浮かんだ。それをプロジェクト名にした。前身のバンドの後、曲を書いていたものの、じっくりとアイディアを温めてきた。ようやく昨年からシングルを発表し、ライブで実際に試していた曲がアルバムの形になった。

 

才能というのは、過剰さともいうべきもので、キャメロン・ピクトンに相応しい言葉である。それはむしろ、反動とも呼ぶべきもので、何かを抑えつけようとしたときに、才覚が奔出する。このデビューアルバムには、少なくとも、抑えがたい創造性のようなものが満載となっている。難しいアルバムと取るか、また、聞きやすいアルバムと取るかは、聞き手次第となりそうだ。

 

ラウドなサウンドは抑え気味で、ミュージックコンクレートを通過した後のアヴァンフォークやロックオペラを目指したような作品である。そして意外にもフォークポップサウンドを思わせることもある。「Target Practice」は、Queenのロックオペラの影響を色濃く感じさせる。それらがフォークミュージックを中心に繰り広げられる。既視感はあるが、強弱を強調するアクセント、そして、曲の表情付けにストリングスも用いられ、思いの外、ゴージャスなサウンドに移行していく。

 

このオープニング曲では、クイーンのようなポピュラーソングに軸足を置き、縦横無尽に駆け巡る音楽的なイメージをプロデュース的な楽曲としてまとめ上げる。「Bohemian Rapsody」時代のクイーンのサウンドが満載であり、それらが変拍子を交えたセクションを織り交ぜながら、音楽の印象そのものが次々に移り変わっていく。一見すると、まとまりがつかないような曲に思えるかもしれない。しかし後半では、ビートルズの中期以降のサウンドに依拠したチェンバロを用いたバロックポップの美しいメロディーがボーカルと登場し、曲がぱっと華やかになる。曲の後半では、UKロックの系譜を踏まえ、チェンバロを生かしたレトロなポップソングに変わる。コーラスも見事で、フレイディ・マーキュリー風の迫力のあるバックコーラスが聴ける。

 

特に、キャメロン・ピクトン率いるバンドは、 70年代のUKフォークサウンドを踏襲して、それらをミニマル・ミュージック、ミュージック・コンクレートを織り交ぜて、独創的なサウンドに仕上げる。

 

二曲目では、 Queenのサウンドをポストロック/マスロック風にアレンジしたり、ビートルズのチェンバーポップの楽曲で使用されるドローンのストリングスなどを用いて、エポックメイキングな箇所を作り上げる。しかし、その後、静かな印象を持つフォークサウンドに切り替わったり、ビートルズの「Yellow Submarine」を彷彿とさせるホーンのトレモロが入ったりと、カオスになっていく。また、その後にフィドルが出てきて、カントリーやウェスタンの古風なフォークミュージックに切り替わる。このバンドの中心人物の音楽的な知識量と再現力には圧倒されるばかりだ。そのほとんどがすでに前に出てきた内容だとしても、これらはヒップホップのサンプリングの次を行く前衛的なサウンドが登場したと言える。これは、画面の映像が一瞬で切り替わるような、トランジションの音楽バージョンともいうべきサウンドである。

 

今回のアルバムは、ロック的な要素を抑えて、イギリスの70年代のフォークサウンドを中心とするアヴァンギャルドなサウンドに仕上げている。三曲目「Heart of Darkness」では、やはりジェットコースターのように曲のフレーズが切り替わり、Led Zeppelinのフォーク的な要素を受け継ぎ、それらをミュージックコンクレートの手法で縁取っている。この曲が面白いのは、一方から音が出てきたかと思えば、全く別の方向から音が出てくる、それらが重層的な音の連なりを作り出し、曲の全般的なセクションを作り上げる。まるで音楽そのものがアトラクションのようだ。そして、ギターそのものもジプシー風のフォークサウンドが出てくる。これらは、例えば、Led Zeppelinのカシミール地方のエキゾチックなフォークサウンドを受け継いだ数少ない事例とも言える。かと思えば、キャメロン・ピクトンのボーカルは依然としてQueenのフレイディ・マーキュリーを彷彿とさせる。単なる寄せ集めなのか、それともそれ以上の何かがあるのか、そういったことはほとんどどうでも良くなるような楽しさに溢れている。

 

これらが単なる無謀な試みではないことは次の曲を聴くとわかる。「Love Story」では、古典的なバラードソングを選び、このバンドのメロディ的な才覚が明らかになる。この曲のイントロでは、ピアノとホーンを用いたロンドンジャズの影響を込め、しっとりとしたバラードが聴ける。その後、Jaga Jazzistの系譜にあるエレクトロジャズソングへと移行していく。 ノルウェージャズを筆頭に、北欧のジャズグループからの影響も含まれているかもしれない。しかし、依然として、ボーカルは、UKポップ/ロックの伝統的な歌い方に根ざしている。ちょっとした言葉の節回しや、メロディーの繋ぎ方など、焼き刃ではなしえない様式美のようなものが存在する。そして最後には、爽やかなフォークサウンドをもとに、舞い上がるような印象を持つ曲に変わる。音楽的にはブロックのように要素を重ねていき、最後にサビの箇所が来るという異例の手法である。これはまた、DTMのようなプログラミングによるサウンドの象徴的な制作法でもある。ここでは、このバンドの英国的な矜持のような心意気が宿っているような気がした。

 

 「Pearls」は、ロックオペラの次世代の音楽が出てきた瞬間である。この曲は、やはりミニマムのレベルでは、フォークミュージックが基礎になっているが、クラシック音楽からの影響が色濃く感じられる。アヴァンフォークに属する不協和音を用いたドローン音も登場したり、遊び心もあるが、全体的な曲の構成は崩れていない。曲そのものがラウドに傾いた時、その後、ストンとサイレンスに移行する。前身バンドの経験に根ざし、聴覚的な限界を踏まえ、絶妙な均衡を保っている。この曲では、アヴァンフォークの間に木管楽器の演奏が登場し、風景的な描写、つまり音によるイメージやサウンドスケープを作り上げている。不協和音も多いが、聴いていてそれほど嫌な感じはない。音の持つ可能性を音響的に拡張しているのがさすがである。さらに「Opossite Teacher」では、最も聞きやすいインディーフォーク・ソングで、驚くほど静かな印象、そして牧歌的な印象を持つ平らかな音楽を制作している。これは間違いなく、少しラウドなロックや前衛的なポストロックなどに飽きた音楽家が作る玄人好みの一曲である。

 

また、Queenだけではなく、Pink Floydのフォークミュージックの要素を受け継いだ曲もある。一番近いと思うのが、「Actess」である。 ここでは曲の後半でやはりサビとなる箇所が出てくる。ここではビールやパブ文化を象徴するようなにぎやかで陽気な印象を持つサウンドが楽しめる。曲の後半では、アイルランドのフォークミュージック、そしてエレクトロニックが結びつき、独創的な音楽へと切り替わる。曲のイントロではスタンダードなUKロックの内容に根ざしていながら、その後は現代的なサウンドへ移行するというユニークな発想がてんこ盛り。

 

一度だけ聴いて終わりというアルバムではなく、聴く度に新鮮な発見がありそうだ。個人的に推薦したいのは、最後に収録されている「One Night」である。コラージュ的なサウンドで、強烈なノイズというブラック・ミディにも通じるような内容となっているが、飽くまで全般的に、明るく陽気な音楽を提供しようという意図が通じている。キャメロン・ピクトンのささやくようなボーカルはユニークさがあり、救われるような瞬間もある。音楽全体をあまりシリアスにしすぎず、遊びの箇所を設けておくという制作者の狙いも感じられる。この曲では、エレクトロニックの文脈におけるドローンも登場することも。それはまた、彼らが2020年代に生きている証でもある。このアルバムが単なる懐古主義だけではなく、未来志向のサウンドに縁取られていることが有意義ではないか。次世代の新しい音楽への突破口となるかもしれない。

 

 

84/100

 

 

 

「One Night」- Best Track


ニューヨークのデュオ、ウィドウズピーク(Widowspeak)が、近々リリース予定のアルバムから最新シングル「No Driver」を公開した。

 

Widowspeakは、ボーカルのモリー・ハミルトンとロバート・アール・トーマスで結成され、『All Yours』、『Plum』、『The Jacket』など秀逸な作品を発表してきた。インディーロック/フォークとドリームポップの中間にあるサウンドで、ブルックリンのミュージックシーンに活気をもたらしてきた。デュオは6月5日にニューアルバム『Roses』のリリースを間近に控えている。

 

先月リリースされた「If You Change」に続くセカンドシングル「No Driver」について、ボーカルのモリー・ハミルトンは次のように説明している。「少なくともしばらくの間は、オートパイロット状態でいることで生き生きとしているように見える人々を知り、愛することについて歌った曲です」「また、この曲は、支えようという視点から書かれたもので、その状況にいると一種の魔法のような感覚になることも分かっているんだけれど、同時に、彼らが破壊的な行動から抜け出す準備が整うのを、ただ辛抱強く待っているという気持ちも込められています」


彼女は続けてこう語る。「この曲は、ある意味、若い頃の自分に向けて書いたようなものなんです。荒れた時代からは1000%抜け出している(7年近く前に飲酒をやめ、今は赤ちゃんもいる)けれど、長い間、本当に目的を見失っていた。今は物事や人を大切に思うし、何か理由を持つこと……、それがすべてです」


ミュージックビデオについて、ハミルトンはこう付け加える。「このビデオは『Jesus Take the Wheel』をモチーフにしているの。ダーク・ティーの友人ゲイリー・カニノが、世界の重荷を感じているようなドライバーを演じ、イエス(ジョナサン・クリエスト)が彼の夜の行程を引き継ぎ、謎のビジネスウーマン(モイラ・スパヒッチ)を降ろした後、他の乗客を何人か乗せていくんです。寄せ集めのような人々のグループをイエスが家まで送り届けるという感じです」

 

 「No Driver」

 


ニューヨークのエレクトロポップバンド、Nation of Language(ネイション・オブ・ランゲージ)が、ブルース・スプリングスティーンの楽曲「Tougher Than the Rest」のカバーをリリースした。この曲は、スプリングスティーンのミュージシャンとしての絶頂期にリリースされた代表作『Born In USA』に続く、1987年アルバム『Tunnel of Love』の収録曲である。

 

「Tougher Than the Rest」はリリース時、むしろ米国以外で人気を博した。一部の国ではシングルとしてリリースされたが、米国ではシングルとして発売されなかった。スイスで最高3位を記録し、イギリス、オランダ、オーストリアでもトップ20入りを果たした。イギリスでは高い売上を記録。ヨーロッパではスプリングスティーンの最も愛されている曲の一つとなっている。

 

この曲について、ボーカルのイアン・リチャード・デヴァニーは次のように語っている。

 

「ニュージャージー州に住む多くの若者たちと同じように、私もスプリングスティーンを聴いて育ったが、この曲はなぜか、その形成期には見過ごしてしまっていた。実際に耳にしたのはここ数年のことで、それ以来ずっと頭から離れない。

 

昨年のツアーの終盤、ある場所で特に感情的なライブを終えた時、サウンドエンジニアのスキニーが退場曲としてこの曲を流し始めたのを覚えている。あまりにも強く心を揺さぶられて、ステージのすぐ脇に留まり、会場をうろつく人々のざわめきと混ざり合う大音量の曲の残りを聴き入っていたんだ」


制作過程について、デヴァニーは次のように付け加える。

 

「最終的に自分たちなりのバージョンを試してみようということになった時、幸運にもヤマハのCS-80が手元にあった。これは87年の『Tunnel of Love』セッションで多用されたのと同じシンセサイザーだ。オリジナルと同じような音色を使えることが分かっていたおかげで、ブルースの曲をカバーするということに少しは気後れしなくて済んだ」

 

今回のカバーは意外性に溢れ、ヤマハのシンセサイザーがクラフトワークのようなテクノサウンドを作り上げている。しかし、原曲に対する敬意もあり、ボーカルはアメリカ的なロマンが感じられる。ネイション・オブ・ランゲージらしい静けさと壮大さを兼ね備えたカバーである。


さらに、このカバー曲に加え、Nation of Languageは8月18日から20日にかけてロンドンのヴィレッジ・アンダーグラウンドで3夜連続のレジデンシー公演を行うことも発表した。これに続き、夏のEUフェスティバルへの出演やヘッドライン公演を行うほか、ディープ・シー・ダイバーやデス・キャブ・フォー・キューティーの北米ツアーにサポートアクトとして参加する予定だ。


Nation of Languageの最新アルバム『Dance Called Memory』はサブポップ移籍後第一作となり、この作品でネイション・オブ・ランゲージは現代的なシンセ・ポップバンドの地位を不動のものとしている。 ブライアン・イーノなどのサウンドに触発された聴き応えのある作品である。

 

 「Tougher Than the Rest」


電子音楽の名産地であるドイツから個性的なダンスミュージックを制作するアーティストが出てきた。インダストリアル、ゴシック、EDMを結びつけるのがウィリアム・ブリークである。果たして彼のゴシック風のイメージはどこまでが真実なのか。


ブリークはドイツ建築のゴシックとクラウトロックやインダストリアルロック、そしてダンスビートを織り交ぜ、それをエンターテイメントに昇華させる。ブラックメタルさながらのビジュアル。そう、間違いなく、人を選ぶカルト的なアーティストである。しかし、メタルそのものがそうであったように、異端的であることは時に新しいジャンルを切り開くきっかけを作る。


新たにリリースされたベルリンを拠点とするアーティスト、ウィリアム・ブリークによるニューシングル「Black and Blue」は、そういった表面的なイメージを払拭し、意外にもニューウェイブ/ダークウェイブ風で聞きやすい。悲しみを捨て去り、奔放な喜びへと向かい、迷いこそあれ、失われた魂とは言えない、他の放浪者たちと共有したベルリンの果てしない夜を描き出している。


「Black and Blue」はブリークのサウンドの進化形である。死の影の中で生きる喜びを見出し、近々リリースされるアルバムの最後を、孤立と苦痛という果てしない絶望からの脱出路となる、色彩豊かな未来への希望のひとしずくで締めくくっている。


墓地や薄暗い路地で過ごした終わりのない夏の夜の数々、そこで分かち合った現実逃避と官能的な放蕩から生まれた「Black and Blue」は、混沌の中に喜びを見出し、他者の瞳に新たな視点を見出し、終わりのないかのような没落の後に再び生き返ることを証明する、衝撃的な楽曲となっている。


ウィリアム・ブリークは、She Past Away、Clan of Xymox、Traitrsといったアーティストたちと共演し、メキシコ、アメリカ、イギリス、そしてヨーロッパ各地でライブを行ってきた、ゴシック・アグレッションの果てしない十字軍を率いてきた。

 

現在は反逆的なアンダーグラウンド・レーベル、Breathing Recordsと契約、レーベルデビューとなるLPのリリースを控えている。それは、インダストリアル、EBM、そしてゴシック的な絶望を駆け抜ける、灼熱で本能的な旅路となるだろう。


自らの「同族」を見つけたいという執拗な想いを原動力に、ウィリアム・ブリークは暴力的なエレクトロニック・リズムと轟音のような生楽器を融合させた音楽を創り出している。


ベルリンを拠点とするこのソロ・プロジェクトは、ゴシック・アグレッションの果てしない十字軍を率い、She Past Away、Clan of Xymox、Traitrsといったアーティストたちと共演し、メキシコ、アメリカ、イギリス、そしてヨーロッパ各地でライブを行ってきた。


現在はアンダーグラウンドの異端レーベル「Breathing Records」と契約し、ウィリアム・ブリークはレーベルデビューとなるアルバムのリリースを控えている。この作品は、インダストリアル、EBM、そしてゴシック的な絶望を駆け抜ける、灼熱で本能的な旅路となるだろう。


「Black and Blue」において、ウィリアム・ブリークは悲嘆を捨て去り、奔放な情熱へと舵を切る。迷いこそあれ、彷徨う魂たちと共有したベルリンの果てしない夜を描き出すこの曲は、ブリーク・サウンドの進化形として立ち現れる。死の渦中で生命への渇望を見出し、孤立と苦痛による果てしない絶望からの脱出路として、色彩豊かな未来への一筋の希望を纏い、今作のアルバムを締めくくる。


「Black and Blue」は、混沌の中に喜びを見出し、他者の瞳の中に新たな視点を見出し、終わりのないように見えた堕落の後に再び生き返ることを証明する、刺激的な楽曲だ。彼はこう語る。「この曲は、夜の温かい抱擁の中で再び生き返る人々に捧げるものだ」 

 

「Black and Blue」 




▪EN

From Germany, a hotbed of electronic music, has emerged an artist creating distinctive dance music. William Breck is the one bridging industrial, gothic, and EDM. Just how much of his gothic-style image is actually true?

Breek blends German Gothic architecture with krautrock, industrial rock, and dance beats, transforming them into entertainment. His visuals are reminiscent of black metal. Yes, he is undoubtedly a cult artist who appeals to a niche audience. However, just as with metal itself, being unconventional can sometimes serve as the catalyst for breaking new ground in a genre.


Born from an unrelenting desire to find his tribe, William Bleak creates music fusing violent electronic rhythm with thunderous live instrumentation. The Berlin based solo project has led an unending crusade of gothic aggression, playing with the likes of She Past Away, Clan of Xymox and Traitrs - and playing shows in Mexico, the US, UK and all across Europe. Now signed to renegade underground label Breathing Records, William Bleak is gearing up to release his label debut LP; a scorching, visceral journey through industrial, EBM and gothic desperation.


In his latest single "Black and Blue", William Bleak abandons grief in favour of exuberance, tracing endless nights in Berlin shared with other wandering if not lost souls. "Black and Blue" stands as an evolution to the Bleak sound, gaining a lust for life amidst the dead and ending the upcoming album with a dash of hope towards a multicoloured future, a way out of the endless despair of isolation and pain. Born from a series of unending summer nights spent in graveyards and shadowy streets indulging in shared escapism and sensual excess, "Black and Blue" electrifies as a testament to finding joy in chaos, to finding a new perspective in the eyes of someone else, to coming back to life after a seemingly unending downfall. He shares, "This song is dedicated to those who come back to life in the warm embrace of night.


・三十年戦争から生み出された新しいバロック音楽  カンタータとカノン


17世紀のドイツでは、アウグスブルクの和議の後、キリスト教新旧両派の諸侯の対立が激しく、ベーメンで生じた新教徒の反乱をきっかけに、全ドイツに広がり、西ヨーロッパの新教国、旧教国が介入し、三十年戦争が勃発した。この結果、ドイツは三分の二の人口を失った。このことは音楽の世界にも強い影響を及ぼした。


当時のドイツには、聖歌隊、市町村が雇う楽器奏者、町の楽師といった組合組織が存在したが、この戦争でいずれも縮小化を余儀なくされ、小規模の室内楽の形式が尊重されるに至った。音楽の出版も停滞し、手書きの楽譜に依存するよりほかなくなった。 ドイツの音楽は、各地域ごとに分立したが、これは地域ごとに独自の音楽が生み出される契機ともなったのである。

 

同時に、諸外国が三十年戦争に介入したことで、ドイツは外国文化の強い影響を受けることを余儀なくされた。これが音楽分野にも新しい活力を与え、イタリアやフランスの音楽が流入するようになった。 最初の音楽的な流入は、イタリアのオペラであり、これがドイツ語による歌劇シングシュピールを生み出す契機になった。


以降、およそ一世紀にわたって、ドイツは宗教音楽や世俗音楽を中心とする独自の音楽形式を構築しながら、イタリア音楽の影を追い続けた。それは当時のドイツが神聖ローマ帝国に属し、宗教的な関係と切り離せなかったことが要因にある。ドイツにとって、プロイセンのような独立国家が登場するまで、ローマが宗主国とも言える関係にあった。17世紀以降のほとんどの著名な作曲家は、ドイツの領内にある神聖ローマ帝国から出てきている。これは単なる偶然とは言いがたいものがある。

 

一般的に、ドイツ的な概念というものが存在し、それは、マイスター制度のように、職業的な分化が社会の枠組みに組み込まれ、そして、明確に社会における規律を尊重することである。おそらく、ドイツのクラシック音楽を聴く上で、規律や規則という要素を度外視することは難しいように思える。それはまた、ドイツ音楽が宗教音楽に端を発し、神なるものに仕える表現として音楽を位置づけていたことに拠る。これが規則的な音楽ーーダンスミュージックーーのようなイディオムに引き継がれていったのは自然な成り行きだったのである。そして、ドイツ・バロックの時代は、イタリアのオペラやフランスのマドリガーレのような優雅な音楽の影響こそあれ、ドイツ的な概念を醸成するための期間でもあった。それはまた、プロイセン以降の独立国家としての道筋を辿るドイツ国家の文化的な礎を組み上げるための時期でもあったのだ。

 

ドイツ音楽の父 ハインリヒ・シュッツ


最初にドイツ音楽として登場したのが、ハインリヒ・シュッツという作曲家である。この作曲家は、ドイツのバロック音楽が明確に宗教音楽に根ざし、グレゴリオ聖歌のような原初的な性質を受け継ぎ、歌詞をラテン語からドイツ語に組み替えた。グレゴリオ聖歌に依拠した曲が多く、独創性に乏しい部分もあるが、深遠な趣のある宗教曲を特徴とする。また、 他文化で発生した芸術形式を自国の内容に置き換えるというのは、どの国家の音楽も辿ってきた道筋であった。


ハインリヒ・シュッツは、イタリアの音楽を最初にドイツ国内に持ち込んだ人物でもある。二度にわたり、イタリアに留学し、モノディーや通奏低音の形式を、ドイツ音楽に組み込むことに成功した。さらに彼は、ドイツの教会音楽に協奏形式を追加した。これは協奏曲の先駆けでもある。シュッツには、「クリスマス・オラトリオ」、「ダヴィデ詩篇」などの代表作がある。

 

ドイツもフランスと同じ流れを辿り、イタリアのオペラを独自の形式に再構築する必要に駆られた。しかし、17世紀のドイツでは、ルター派がオペラのような華美な音楽を忌避したため、それに遠慮するような形で、宗教音楽をベースにした歌曲が隆盛をきわめる。ドイツのバロック音楽全般に通じる、厳格で荘厳なイメージは、結局のところ、音楽が神に仕える媒体としての機能を果たしたことによる。いくらか堅苦しいイメージは、やむを得ない側面もあったのだろう。

 

しかし、表面的な音楽が制限されたことに対して、その水面下にある音楽表現は驚くほど多彩になり、ドイツ音楽の新しい道筋を切り拓くことになった。 最初にドイツ音楽として出てきたのは「カンタータ」である。これらは宗教、及び、世俗に根ざした音楽とされ、オーケストラの演奏を交えて、歌曲が展開される。''宗教音楽的なオペラ''とも呼ぶべきものである。その後一世紀にわたり、JSバッハのような人物がその形式を発展させた。バッハは、ライプツィヒの教会音楽教師の時代からドレスデンの宮廷音楽家の時代まで、220曲ものカンタータを制作した。宗教的な性質を持つ曲から、農民やコーヒーを主題にした曲まで、幅広いカンタータを制作した。

 

カンタータは、以前の時代の宗教音楽のコラールの流れを汲み、プロテスタント音楽の賛美歌として発生したコラールを基本として、独唱や輪唱(カノン)形式を組み込んだアリア、そして、イタリア/オペラのモノローグのような形式を昇華したレスタティーヴォを交えた、構成的な音楽形式が出来上がった。これが最初のドイツ・バロック音楽の基礎を形成したと言えるだろう。

 

 

・オルガン音楽の隆盛

シュテファン大聖堂のパイプオルガン

宗教改革後のドイツのルター派の礼拝音楽は、礼拝のセクションごとの区切りや祈りの性質を高めるための演出音楽として機能した。そして、このことがオルガン音楽をドイツ国内に定着させる。


例えば、教会のパイプオルガンのような演奏を聴いて、私たちが壮大な感覚や厳粛なイメージを抱くのは、楽器自体が宗教音楽のために制作されたという深遠なルーツに思いを馳せるからである。オルガンは、絢爛な建築に組み込まれていて、教会組織の権威性を象徴付ける楽器でもある。こうした宗教音楽の流行の中で、多くの器楽演奏者や作曲家がドイツ国内に登場した。


そして、オランダ人のオルガニスト教育者であるスーヴェリンクの指導のもと、シャイトが活躍した。彼はイギリスのヴァージナル奏法を受け継ぎ、ドイツのオルガン音楽の基礎を築いた。以降、その流れを汲み、ブクステフーデは、教会で「夕べの音楽」というコンサートを開いた。これはドイツ国内の最初の公開コンサートと言われている。さらに、音楽的な形式としても以降のロマン派の出発点と言える趣旨でもある。これらの作曲家や演奏家らは、宗教音楽という厳格な作曲形式を踏襲しながらも、それぞれ異なる形のクリエイティビティを発揮していた。

 

ひとえにオルガン音楽とは言っても、北部と南部では異なる音楽が普及した。北ドイツでは、スーヴェリンクの教えをもとにした音楽、一方、南ドイツでは、イタリアのフレスコバルディの形式がフローベルガーを通じてもたらされた。これは以降の一世紀にも共通し、例えば、W・A・モーツァルトを中心とするドイツ南西部のマンハイム楽派は、イタリア的な優雅な響きがある。同国内でも、北部と南部では性質が異なり、別の雰囲気を持った音楽が流行したというのは非常に興味深い点ではないだろうか。これはひとえに、ドイツ国内の三十年戦争がもたらした一時的な地域の分立と、以後のプロイセン独立に向けた呼び水ともなっていたのである。私たちがドイツ・バロックに抱く、いかめしいイメージは、そのほんの一部分に過ぎないようだ。

 

 

・パッヘルベルのカノン  正典としてのクラシック音楽

パッヘルベル

南ドイツのオルガン学派を支えたパッヘルベルによる「カノン」は、クラシックに詳しくない人であっても、一度くらいは耳にしたことがあるのではないだろうか。正典とも言われるこの曲は、シンプルな構成で親しみやすい内容でありながら、以降のクラシック音楽の基本的な要素が凝縮されている。 


グラウンドベース、オスティナート、カノン(輪唱)という、最初の旋律の流れを別の楽器が追いかける追走形式は、フーガの前身となるドイツ独自の最初の音楽が登場した瞬間とも言えるだろう。同じフレーズが繰り返されるグラウンドベースという枠組みの中で、異なる旋律の流れが始まり、それらの旋律を別の楽器が追うようにして曲が流れていく。この曲に感じられる規律的な響き、それに劣らぬ優雅な響きは、今なお多くのファンに親しまれる要因でもある。

 

この楽曲にまつわる話はいくつかあり、当初、パッヘルベルは、JSバッハの長兄であるヨハン・クリストフ・バッハのために曲を書いたといわれ、彼の結婚式で演奏されたと指摘する学者もいる。正確な年代こそ不明であるが、1680年頃から1690年頃に制作されたと言われている。1700年頃に、パリの音楽出版社Le Clercが出版し、それ以前にも原稿のコピーが現存している。 

 

しかし、20世紀に入るまで、パッヘルベルのカノンはバッハの楽曲のように時代に埋もれていた。最初に再発見したのがドイツの音楽学者マックス・シーファートだ。1929年に、彼は楽譜をカノンとジーグの双方で出版した。また、1938年になると、パッヘルベルのカノンは、バイオリニストのヘルマン・ディーナーと彼の所属する音楽院によって最初のレコーディングがなされた。


その後、20世紀後半にかけて、カノンそのものの再評価の機運が高まった。1970年代以降、アメリカやドイツの楽団を中心に、カノンを取り上げる楽団が増加した。特に、フランス人指揮者のジャン=フランソワ・バイヤール氏が、カノンを率先して紹介した。彼は日本でも積極的に公演を行い、カノンをアジアに普及させた。1990年代の日本のポップ/ロックソングにも影響を及ぼし、カノン形式が組み込まれることがあった。パッヘルベルの楽曲は、驚くべきことに、最初に制作されてから300年を経て、文字通り”クラシック”となったのである。 

 

©Nicole Ngai

ローザ・ウォルトン(Rosa Walton)は新曲及び、ミュージックビデオ「Halfway Round The World」をリリースした。2026年6月5日にTransgressive Recordsより発売されるデビューソロアルバム『Tell Me It’s A Dream』の2曲目のシングルである。(アルバムのプレセーブはこちら)リードシングルに続いて、甘酸っぱいインディーポップソングとなっている。


純真で心温まる「Halfway Round The World」は、芽生えつつある関係性を「地面すれすれを縫う光のようなもの」として描いています。「光が大きなテーマです。私はこれらの曲を、高台にある平原の上にあるものだと捉えています」とウォルトンは続けます。「私の現実の多くは、頭の中が雲の上にあるような状態で過ごしていることなので、私にとってはそれが普通なんです。」


「Halfway Round The World」は、彼女のブレイク作となったソロシングル「Sorry Anyway」に続く楽曲。この明るくキャッチーなアンセムは、徹底的な自己受容と恐れを知らない個性をテーマにしており、BBC Radio 6 Musicのヒュー・スティーブンスによって初公開された。


『ガーディアン』紙もこの曲をF&Mプレイリストに選出し、「テガン&サラの最もパンチの効いた側面を血肉に宿した、混沌とした愛へのパワーポップの賛歌」と評した。一方、『クラッシュ』誌は「過激な自己受容と恐れを知らない個性をテーマにした、鮮やかな色彩とキャッチーなメロディーが際立つアンセム」と絶賛した。


『Tell Me It’s A Dream』の原型は、サム・E・ヤマハとのロックダウン中のセッションで初めて形作られ、その後ウォルトンは自身の歌声とソングライティングの進化に合わせて楽曲を見直し、再構築していった。アルバムは、ローザとデヴィッド・レンチ(フランク・オーシャン、ジェイミー・XX、FKAツイッグス)が共同プロデュースを手掛け、信頼できるクリエイティブなパートナーシップを継続している。  


本作にはギタリストのジョン・ヴィクター、ベーシストのカム・カーン、ドラマーのエレナ・コスタが参加しており、ハイライト曲「Prettier Things」にはジェニー・ホリングワースがゲストとして登場している。

 

ウェールズのStudiOwzでの創造性に満ちた滞在中にレコーディングされたこのアルバムは、温かさ、つながり、そして楽観的な雰囲気を捉えている。ウォルトンの人生において複雑な時期に生まれた作品ではあるが、このアルバムは最終的に愛、友情、そして創造的な自由を称賛するものだ。

 

輝かしく、情感豊かな楽曲の数々において、ウォルトンは光、色彩、そして広大な空といったイメージを多用している。「Heart To Heartbreak」の陶酔感と煌めくような悲しみから、「Halfway Round The World」のロマンチックな輝きに至るまで、このアルバムはウォルトンの直感的で視覚的なソングライティング・スタイルを反映している。


ウォルトンは13歳の時にホリングワースと共に「レッツ・イート・グランマ」を結成して頭角を現し、17歳でデビュー作『I, Gemini』をリリース。その後、アイヴァー・ノヴェロ賞にノミネートされたブレイクスルー作『I’m All Ears』(SOPHIEとWrenchが共同プロデュース)、2022年に高評価を得た『Two Ribbons』を発表した。バンド活動以外でも、ウォルトンはソロとして成功を収めている。


特に注目すべきは、アニメシリーズおよびビデオゲーム『サイバーパンク2077』のために2023年に書き下ろした楽曲「I Really Want To Stay At Your House」で、これは4億回以上のストリーミング再生回数を記録した。また、画期的な自然保護イニシアチブの一環として、昨年NATUREとコラボレーションし「This Isn’t It」をリリースした。


「『Tell Me It’s A Dream』は、野心を抱き、世界の中にある美しさをより深く見出すことについての作品です」とウォルトンはアルバムについて語る。「究極の自由を求めて奮闘することについての作品です。これらの曲に込められた姿勢の多くは、自分の夢を追いかけることについてであり、まさにそれが私の目指すところです」

 


「Halfway Round The World」

Photo:Olive Jolly

ニューヨークを拠点とするシンガーソングライター兼ミュージシャンのROREYは、ありのままの告白を、癒やしをもたらすと同時に聴く者の心を揺さぶるアートへと昇華させる。


2025年8月にリリースされた2作目のEP『Dysphoria』は、精神の矛盾へと果敢に飛び込んだ作品であり、心に響くメロディーと幽玄なボーカルが、催眠的な渦巻くインストゥルメンタルと融合している。長年のコラボレーターであるスコット・エフマンと共に2021年に共同制作・プロデュースされた本作は、躁状態の最中に意味を見出そうともがく若きアーティストの混沌、美しさ、そして方向感覚の喪失を捉えている。


ROREYの2026年リリースシングル「Temporary Tragedy」は、力強く、生々しく、そして心に響く作品だ。彼女はこう打ち明ける。「この曲は、親密さを求めすぎた時に自らを犠牲にする代償と、自分自身を選ぶことの意味について歌ったものです。」  


この楽曲には、関係の終焉後に生じうる内省と悪循環を描いた、映画のようなミュージックビデオが制作された。「このビデオは私の初めてのクィアな関係に基づいているけど、そのメッセージは普遍的なものよ。相手がそこにいてくれない時、希望と現実の間の溝を埋めるには、愛だけでは足りないこともあるの」と彼女は語る。


彼女の最新シングル「Dying Fire」は、ほろ苦いメロディーと豊かなアレンジが特徴の、カタルシス的なドリームポップだ。ROREYはこう説明する。


「『Dying Fire』は、愛と不可能性の狭間に位置する曲です。この曲は非難も弁解もせず、かつてあったものは二度と戻らないという事実を、徹底的な受容をもってただ述べています。『Temporary Tragedy』と同様に、片方が一人で愛を背負い続ける限り、愛には限界があるのです」 


両シングルは待望のニューアルバム『Temporary Tragedy』からの先行リリースだ。アーティストはこう打ち明ける。「このアルバムは、本質的に、互いにどれほど愛し合っていたとしても、望むものと必要とするものが相反していたために、関係を続けられなかった二人の物語です。結局、二人は、完全には実現しなかった愛という現実の前に、傷ついてしまいました。このアルバムは、まるで共有された痛みのように、二人の経験のすべてを受け止める空間となっています」


ROREYの音楽は単に心に響くだけでなく、口に出すのを恐れていた真実を言葉にし、その感情を抱えているのは自分だけではないと気づかせてくれる。



「Dying Fire」




▪︎EN

New York–based singer-songwriter and musician ROREY transforms raw confession into art that unsettles as much as it heals.

Her sophomore EP, Dysphoria, released August 15th, 2025 is a fearless plunge into the contradictions of mental illness, where haunting melodies and ethereal vocals merge with hypnotic, swirling instrumentals. Co-written and produced in 2021 with longtime collaborator Scott Effman, the project captures the chaos, beauty, and disorientation of a young artist clawing her way toward meaning in the midst of a manic episode. 

ROREY's 2026 single release "Temporary Tragedy" is powerful, raw and poignant.  She confides, "The song is about the cost of self abandonment when you grip intimacy and what it means to choose yourself."  The track was accompanied by a cinematic music video chronicling the rumination and spiraling that can follow the end of a relationship. "The video is rooted in my first queer relationship, its message is universal: sometimes love isn’t enough to bridge the gap between hope and reality, when the other person can't meet you there," she shares. 

Her latest single "Dying Fire" is cathartic dream pop with bittersweet melodies and lush arrangements. ROREY explains, " 'Dying Fire' sits in this space between love and impossibility. The song doesn't blame or excuse it simply states with radical acceptance that what once was can never be again. Similar to 'Temporary Tragedy' love can only go so far when one person is left carrying it alone" 

Both singles are off of her highly anticipated forthcoming album Temporary Tragedy.  The artist confides, "The album is essentially about two people who couldn't make it work no matter how much they loved each other because what they wanted and they needed were at odds. In the end they both got hurt in the face of love never fully realized. It holds space for both peoples' experience, almost as a shared ache."
ROREY’s music doesn’t just resonate, it names the truths you’re afraid to speak and reminds you that you’re not alone in feeling them.