Session Photo:  ブライアン・カルバートソンは右から二番目

スムース・ジャズ/フュージョン界を代表するイリノイ州出身のピアニスト、ブライアン・カルバートソン(Brian Culbertson)による新作アルバム『Day Trip』が完成しました。2026年3月27日に本作の日本盤がInpartmaint Inc.より発売されます。コンテンポラリージャズ、ファンク、フュージョン、そして深みのあるソウルフルなグルーヴが融合した躍動感あふれる音楽の旅。

 

コンピューターの打ち込みや近道をする事なく、楽器を使ってスタジオでライブレコーディングされた作品となっています。マーカス・ミラー、シーラ・E、ブランフォード・マルサリス、ランディ・ブレッカー、エリック・マリエンサル、アイザイア・シャーキー、カーク・ウェイラム、マイク・スターンなど世界最高峰のミュージシャンたちを迎えた至高の作品が完成しました。

 

リードシングル「On The Road」はデジタル配信が好評で、本作のエネルギーと革新性を感じられる一曲。海外でリリースされていた作品が遂に日本で登場します。スムースジャズの楽曲で、思わず旅に出たくなるようなロマン溢れるナンバーとなっています。ドライブのBGMにも最適でしょう。

 

カルバートソンはこのアルバムについてつぎのように語っています。「『Day Trip』では、自分を形作ったレコードがどんなふうに作られていたか、その原点に立ち返りたかった。コンピューターの打ち込みも近道もなく、スタジオで本物の楽器を使ってライブ録音する――そんな制作でした」


「世界最高峰のミュージシャンたちを迎え、これまでにない作品に仕上げました。作曲面でもサウンド面でも完全な冒険であり、それがタイトルの由来となりました」

 

また、長年のコラボレーターであるニコラス・コール(ブライアンと共作で9曲を制作)、ネイザン・イースト、リル・ジョン・ロバーツ、レニー・カストロ、ポール・ジャクソン Jr.、レイ・パーカー Jr.、マイケル・スティーヴァー、マイケル“パッチズ”スチュワートら一流ミュージシャンが、作品に豊かで重層的なサウンドを加えている。下記より先行シングルをご視聴下さい。

 

 

 



▪️Brian Culbertson (ブライアン・カルバートソン)  『Day Trip (デイ・トリップ) 』



アーティスト : Brian Culbertson (ブライアン・カルバートソン) 

タイトル : Day Trip (デイ・トリップ) 

レーベル : Inpartmaint Inc.

発売日 : 2026年3月27日 

フォーマット : 国内盤CD

品番 : IPM-8149

価格 : 2,970円(税込)/2,700円(税抜) 

バーコード : 4532813731490

*ライナーノーツ収録(杉田宏樹)


 

Brian Culbertson(ブライアン・カルバートソン): 

 

29枚のアルバムとBillboardチャートで40曲のNo.1シングルを誇る現代を代表する最も刺激的でジャンルを超越したインストゥルメンタリストの一人。キーボーディスト、ソングライター、プロデューサーとして活躍し、ジャズ/ファンク/R&B/ポップなどを自在に融合し、常に進化を続ける独自のサウンドを築いてきた。

 

2019年には10年ぶりの日本ツアーを行い華麗なパフォーマンスを披露した。ダイナミックなライブと壮大なプロダクションでも知られ、ナパ・ヴァレー、ニューオーリンズ、シカゴで行われる「ジャズ・ゲッタウェイ」シリーズの立役者でもある。


 

プロデューサー、アーティスト、ソングライターのフェリシア・ダグラスが、ネイチャーを共同制作者として招き、デヴィッド・ロングストレス、ダーティ・プロジェクターズ、室内楽グループ・スターゲイズによる2025年発表の絶賛アルバム『Song of The Earth』に収録された「Shifting Shalestones」を、優しく癒やされるアンビエント・リミックスに仕立て上げた。


本作はリリース当時「燃えゆく世界のための交響曲」(ニューヨーカー誌)、「自然界への逃避行」(Line of Best Fit)と称賛され、地球に降りかかる計り知れない破壊の中にあってもなお、自然の美しさを見出し喚起する作品として評価された。


フェリシア・ダグラスはさらに一歩踏み込み、自然の音を楽曲に組み込んだ。アース・パーセント/サウンズ・ライトとの提携でリリースされ、NATUREを公式アーティストとしてクレジット。ストリーミング収益が地球規模の自然保護活動に還元される仕組みだ。


私は常に『Shifting Shalestones』の環境要素を中心とした描写の簡潔さに惹かれてきたため、NATUREと共に重層的なサウンドスケープを創り出すというアイデアに心躍らせました。ボーカルの反復を駆使し、岩を踏みしめる感覚を映すように躍動的な音を織り交ぜました。地球への愛と慈しみを届ける一助となれることを光栄に思います。


『Song of The Earth』はPitchfork、The New Yorker、MOJO、UNCUT、Line of Best Fit、DIY、ArtForum、Consequence of Soundなどで絶賛された。2024年、ロサンゼルス・フィルハーモニック管弦楽団との共演でディズニー・ホールにて米国初演。本公演のチケットは完売となった。


 

 

▪️ 「Shifting Shalestones」 

 Listen: https://soundsright.lnk.to/ShiftingShalestones


▪️『Song of The Earth』 

Listen/Buy: https://dirtyprojectors.lnk.to/SongOfTheEarth

 


▪️EN 

Producer, artist & songwriter Felicia Douglass calls on NATURE as a collaborator to deliver a gentle, soothing ambient remix of 'Shifting Shalestones', originally featured on the acclaimed 2025 album Song of The Earth by David Longstreth, Dirty Projectors & chamber group stargaze.


Upon its release the album itself was heralded as a "symphony for a burning world"  (New Yorker) and an "escapist jaunt into the natural world" (Line of Best Fit), still finding & evoking a sense of natural beauty within the context of the untold destruction inflicted upon our planet.


Felicia Douglass takes this one step further by incorporating the sound of nature into the piece. Released in partnership with Earth Percent / Sounds Right, the release credits NATURE as an official artist, allowing streams to generate royalties for global conservation.


I was always drawn to Shifting Shalestones for its descriptive simplicity centered around environmental elements, so I loved the idea of creating a layered soundscape with NATURE. I played with the repetition of vocals and weaved in exuberant sounds to mirror the sense of stepping on rocks. It’s an honor to play a small part in giving love and care for the planet.


Acclaim for Song of The Earth in Pitchfork, The New Yorker, MOJO, UNCUT, Line of Best Fit, DIY, ArtForum, Consequence of Sound & more. Premiered in the US in 2024 with a sold-out performance at Disney Hall in Los Angeles with the LA Philharmonic.

Photo: Julia Griswold


ニューヨークを拠点とするシンガーソングライター兼ミュージシャン、ROREYの新曲「Temporary Tragedy」は力強く、生々しく、心に響くベッドルームポップの楽曲です。


ROREYは生々しい告白を癒しと不安を同時に呼び起こす芸術へと昇華させる。セカンドEP『Dysphoria』は、精神疾患の矛盾に恐れを知らず飛び込む作品。心に刻まれるメロディと幽玄なボーカルが、催眠的な渦巻くインストゥルメンタルと融合する。

 

長年の共同制作者であるスコット・エフマンと2021年に共同制作したこのプロジェクトは、躁状態の中で意味を求めてもがく若きアーティストの混沌、美しさ、そして方向感覚の喪失を捉えている。


新曲「Temporary Tragedy」について、彼女は「この曲は、親密さを握りしめた時に自己放棄がもたらす代償と、自分自身を選ぶことの意味について歌っている」と打ち明ける。この楽曲は、関係が崩壊した後に生じる内省と絶え間ない螺旋を描いた映画的なミュージックビデオと共に公開されている。


「このビデオは私の初めてのクィアな関係に根ざしている。そのメッセージは普遍的なんだ。時に愛は、相手がそこに到達できない時、希望と現実の間の隔たりを埋めるには十分ではない」 ROREYの音楽は単に共鳴するだけでなく、口に出すのを恐れる真実を名指しし、その感情を抱くのは自分だけではないと気づかせてくれる。

 


「Temporary Tragedy」



ROREYの楽曲はZane Lowe(Apple Music)、LADYGUNN、Atwood Magazineから称賛を受けたほか、Spotifyのプレイリスト「Fresh Finds」「Fresh Finds Indie」「New Music Daily」「New in Pop」で紹介された。 今後注目すべきベッドルーム界のニューライザーの一人だ。
 
 

▪️EN


New York–based singer-songwriter and musician ROREY transforms raw confession into art that unsettles as much as it heals.
Her sophomore EP, Dysphoria, is a fearless plunge into the contradictions of mental illness, where haunting melodies and ethereal vocals merge with hypnotic, swirling instrumentals.

Co-written and produced in 2021 with longtime collaborator Scott Effman, the project captures the chaos, beauty, and disorientation of a young artist clawing her way toward meaning in the midst of a manic episode.

Her new single "Temporary Tragedy" is powerful, raw and poignant.  She confides, "The song is about the cost of self abandonment when you grip intimacy and what it means to choose yourself."

The track is shared alongside a cinematic music video which chronicles the rumination and constant spiraling that can occur after a relationship falls apart. "The video is rooted in my first queer relationship, its message is universal: sometimes love isn’t enough to bridge the gap between hope and reality, when the other person can't meet you there."

ROREY’s music doesn’t just resonate, it names the truths you’re afraid to speak and reminds you that you’re not alone in feeling them.
 
 
 

年明け、福岡の音楽フェスティバルCIRCLE ’26の開催が発表されました。本日、続いて追加出演者、日割りが公表されました。


昨年のNHK紅白歌合戦に出演し、アコースティックセットで抜群の安定感のあるパフォーマンスを披露したユニット、ハンバート ハンバート、J-POPシーンで幅広い世代に根強い人気を誇る、KIRINJI、そして日本のポストロック/マスロックの代表格、toeの追加出演が決定しました。

 

本日、1/30(金)19:00〜早割2次チケットの先行受付(抽選)が開始となりました。テントタープエリアの指定区画、専用駐車場をセットにしたチケットの販売も行います。こちらの詳細も合わせて下記よりご確認下さい。また、イベント主催による Spotify公式プレイリストも公開されています。


CIRCLE '26は2026年5月16日から土日の二日間にわたって福岡・海の中道海浜公園 野外劇場にて開催されます。


ハンバート ハンバート

KIRINJI

toe


公演タイトル:CIRCLE '26

日程:2026年5月16日(土), 5月17日(日)

会場:福岡・海の中道海浜公園 野外劇場

開園9:30/開場9:30/開演11:00

 

■出演者(アイウエオ順)

5/16(土) Day1

Andr

思い出野郎Aチーム

ZAZEN BOYS

Ginger Root (Solo Set)

D.A.N.

toe <NEW>

ハンバート ハンバート<NEW>

フルカワミキ÷ユザーン×ナカコー

 

5/17(日) Day2

EGO-WRAPPIN’ (Acoustic Set)

小山田壮平BAND

KIRINJI <NEW>

柴田聡子 (BAND SET)

SPECIAL OTHERS

Small Circle of Friends

高野寛 MVF trio with ゴンドウトモヒコ & ITOKEN

 

他、全18組出演予定。

 

■チケット先行受付(早割2次)

①早割2次[2日通し券]¥20,000→¥19,000

②早割2次[2日通し券]駐車券付 ¥31,000

③早割2次 4枚[2日通し券(整理番号付)]・テントタープエリア指定 ¥86,000

④早割2次 4枚[2日通し券(整理番号付)]・テントタープエリア指定/駐車券付 ¥98,000

⑤早割2次[1日券]¥11,000→¥10,000

⑥早割2次[1日券]駐車券付 ¥16,000

 

受付URL:https://eplus.jp/circle-fukuoka/

受付期間:1/30(金)19:00~2/11(水祝)23:59 ※抽選・おひとり4枚制限

 

■チケット

[2日通し券]¥20,000 《学割》¥15,000

[1日券]¥11,000 《学割》¥8,000

※全自由 ※料金は税込、入園料込。※中学生以下チケット不要

《学割》対象:大学生・専門学校生・高校生。当日、学生証をご提示ください。

ご提示がない場合は当日差額をお支払いいただきます。

 

■CIRCLE ’26 Spotify公式プレイリスト

https://open.spotify.com/playlist/37i9dQZF1DXebjPzM8sHrq

 

■クレジット

主催・企画・制作: TONE / BEA

後援:FM FUKUOKA / CROSS FM / LOVE FM

 

お問い合わせ:BEA【http://www.bea-net.com/info@bea-net.com

 

■オフィシャルサイト http://circle.fukuoka.jp


時代の評価軸を静かにすり抜けながら、現在進行形で更新を続ける孤高の電子音楽家【Shinichi Atobe】。セルフ・レーベルPlastic & Soundsから初となるアルバム「Silent Way」が3月27日リリース。「Silent Way」より、「Rain 1」が本日リリース。


The solitary electronic musician Shinichi Atobe, quietly evading the era's evaluative axes while continuously updating his work in real time. His new album, Silent Way, is released on 27th March via his self-run label Plastic & Sounds.From “Silent Way”, “Rain 1” is released today.



▪️Shinichi Atobe「Silent Way」



COLORED VINYL 2LP (5,900Yen+Tax Incl.) | 2026.03.27 Release | DDJB-91267 (P&S003) | JAN 4543034054114

Released by Plastic & Sounds | AWDR/LR2

[ https://ssm.lnk.to/SilentWay ] PRE-ADD/PRE-SAVE

LP Version


▪️Shinichi Atobe「Rain 1」- Lead Single

Digital | 2026.01.30 Release | DDJB-91267_1

Released by Plastic & Sounds | AWDR/LR2

[ https://ssm.lnk.to/Rain1 ]


Sounds:Shinichi Atobe

Mastering & Cutting:Rashad Becker

Photo:Yusuke Yamatani

Design:Satoshi Suzuki


作品詳細:

本年7月突如始動させたセルフ・レーベル【Plastic & Sounds】より、二枚の12インチ・シングルを経て、現時点での集大成となる全10曲を収録したアルバム「Silent Way」がCOLORED VINYL 2LP(Gatefold Sleeve/33RPM/Limited Press)レコードとデジタルで3月27日にリリース。


マスタリング/レコード・カッティングは、ベルリンのRashad Becker。アートワークは、写真家、山谷佑介の作品を核に、P&Sの全作品を手がける鈴木聖がその世界観を構築。

昨年、10月、Resident Advisorの人気シリーズ「RA Podcast」に登場し2023年4月に行われた世界初ライブの音源が公開、渋谷WWWにて、Plastic & Soundsローンチ公演「"Plastic & Sounds" label launch party」を開催。2026年1月には、同会場のニューイヤーパーティーで名盤「Haet」のライブセットを披露。


また、前作「Discipline」がPitchforkの「The 30 Best Electronic Albums of 2025」に、そして代表曲のひとつである「Butterfly Effect」がRA(Resident Advisor)の「The Best Electronic Tracks of 2000-25」に選出されるなど国内外で注目の高まる中のリリースとなる。


Following two 12-inch singles released via the self-run label Plastic & Sounds, which launched unexpectedly this past July, the culmination of their work to date—the album Silent Way, comprising ten tracks—will be released on 27th March as a coloured vinyl 2LP (gatefold sleeve/33RPM/limited press) and digitally.

Mastering and record cutting by Rashad Becker in Berlin. The artwork centres on photographer Yusuke Yamatani's work, with Satoshi Suzuki—who handles all P&S releases—constructing the overall aesthetic.

Last October, they appeared on Resident Advisor's popular series “RA Podcast”, with audio from their world premiere live performance in April 2023 released. They held the “Plastic & Sounds” label launch party at Shibuya WWW. In January 2026, they performed a live set of their acclaimed album “Haet” at the venue's New Year's party.

This release comes amidst growing international acclaim, with their previous album ‘Discipline’ featured in Pitchfork's ‘The 30 Best Electronic Albums of 2025’, and one of their signature tracks, ‘Butterfly Effect’, selected for RA (Resident Advisor)'s ‘The Best Electronic Tracks of 2000-25’.


Tracklist:

A1. intro 6.1

A2. Phase 2

A3. TRNS


B1. Blurred

B2. Aquarius

B3. Durability


C1. Rain 1 [ https://youtu.be/SBMw7CD9ZS4?si=q1CX453hqaNhbL-P ]

C2. Syndrome


D1. Fractal

D2. Defect



▪️Biography : Shinichi Atobe


Electronic artists based in Saitama, Japan. He made his debut with the 12-inch “Ship-Scope” (2001) released on Chain Reaction, a sub label of Basic Channel, a 90s cult label leading to dub techno and then the “minimal” trend of the 00s. A decade later, in early 2010s, he released his first full-length album, “Butterfly Effect” (2014) on DDS label by lobbying of Manchester duo Demdike Stare.

Since then, he has consistently released “World” (2016), “From The Heart, It's a Start, a Work of Art” (2017), “Heat” (2018), “Yes” (2020), “Love of Plastic” (2022),  “Discipline” and the EP ‘Ongaku 1’ (2024). He has garnered a large number of music listeners as well as club audiences and has received acclaim from various music media.


Although his debut on the legendary Chain Reaction and his releases on DDS have brought him to the attention of the world, he has remained an enigmatic and rare entity.

In 2025, he established his own private label, "Plastic & Sounds" . On 27 March 2026, the album ‘Silent Way’ is scheduled for release via Plastic & Sounds.


埼玉を拠点に活動する電子音楽家。ダブ・テクノ、その後の00年代の一大潮流"ミニマル"にまで至る90年代のカルト・レーベルBasic Channel傘下のChain Reactionからリリースされた12インチ「Ship-Scope」(2001年)でデビューを果たす。その10年後となる2010年代初頭、マンチェスターのデュオDemdike Stareの働きかけによりレーベルDDSから初のフル・アルバム「Butterfly Effect」(2014年)をリリース。 


それ以来同レーベルからコンスタントに「World」(2016年)、「From The Heart, It's A Start, A Work of Art」(2017年)、「Heat」(2018年)、「Yes」(2020年)、「Love of Plastic」(2022年)、「Discipline」、EP「Ongaku 1」(2024年)をリリース。クラブオーディエンスだけでなく多くの音楽リスナーを獲得し、多様な音楽媒体からも定評を受けている。


伝説化されたChain Reactionからのデビュー、DDSからのリリースをきっかけに世界に知れ渡ることになるものの、謎めいた稀有な存在として注目をされ続けている。

2025年には自身のプライベート・レーベル【Plastic & Sounds】を設立。2026年3月27日、Plastic & Soundsよりアルバム「Silent Way」をリリース予定。


[ https://plasticandsounds.bandcamp.com ]

Weekly Music Feature: Whitelands  ロンドンのオルタナティブロックバンドのステップアップ

 


ホワイトランズは、同名の大学のキャンパスで結成された。バンドはシューゲイズに特化したインディーズレーベル、ソニック・カテドラルと契約を交わし、イギリスのシューゲイズシーンで知名度を獲得した。以降、ピッチフォークフェスティバル(ロンドン)に出演したことは記憶に新しい。ギター/ボーカルのエティエンヌは一昨年、ピッチフォークフェスティバルの前にMUSIC TRIBUNEの質問に答えてくれ、日本のアニメが大好きだと教えてくれた。また、武道館公演の秘めた野望を明らかにした。バンドは前作のミュージックビデオ撮影のため、渋谷を訪れている。


本日、ソニックカテドラルから発売されたホワイトランズのセカンドアルバム『サンライト・エコーズ』は、スローダイヴからデイヴィッド・ジョンソンまで幅広いファンを獲得した原初的なデビュー作を基盤としつつ、シューゲイザーの影から抜け出し、より大きく、より良く、明るい場所へと導く広がりのあるサウンドを構築した。 長年の協力者、イアン・フリンがプロデュース、2度のグラミー賞受賞者エドゥアルド・デ・ラ・パス(ニュー・オーダー、ザ・ホラーズ、ザ・シャーラタンズ、The KVB、ドラッグ・ストア・ロミオズ)がミキシングを担当した。 


「私たちは成熟し、リアルになって戻ってきた」ボーカル兼ギタリストのエティエンヌ・クアルティ・パパフィオはステップアップについて語っています。「それは、私たちの音楽がどれほど感情的になったかに表れています。成熟とともに新しく自信も生まれた」 見事なメロディーが随所に散りばめられているだけでなく、エティエンヌのボーカルが全編を通して前面に出ている。


「チャペル・ローン、レイチェル・チヌリリ、サブリナ・カーペンター… 。彼女たちが今の私の歌のスタイルを形作った」とエティエンヌは言う。「私は取り残されたくなかった。Reddit ではシューゲイザーのシンガーたちの現状について不満の声が上がっていますが、そこがまさにWhitelandsの真価を発揮する場だと思う。自分にもっとできることはないか試してみたかった」 


「エティエンヌが限界を打ち破っていく姿を見るのは、本当に素晴らしいことです」 ある意味ではバンドの見守り役のベーシストのヴァネッサ・ゴヴィンデンは付け加えます。「このアルバムで私たちが取った方向性がかなり好きです。 リスクを冒している。半分半分かな」 彼女の言う通り、アルバム前半はブリットポップを思わせる軽やかさがあり、曲の背景にある深刻なテーマを覆い隠している。一方後半はあらゆる意味で重みを増し、荒々しさと重厚さが加わる。


「このアルバムは『耐え抜くこと』がテーマだ」とエティエンヌは語る。 「家族が亡くなり、私は金欠で、ADHDの薬も不足していた…。苦しんでいたのは自分だけじゃなく、周りのみんなもそうだった」ヴァネッサは締めくくる。「この2年間は本当に厳しかった。宇宙が本当に俺たちを弄んだのかも知れなかった。だからこそ喪失、断絶、分裂、渇望といったテーマが込められている。でも、その向こうには結束と希望もある」『Sunlight Echoes』は、この圧倒的なバンドによる詩的でメロディアスな宣言だ。ホワイトランズは逆境に立ち向かい、勝利を収める。

 


Whitelands 『Sunlight Echoes』-  Sonic Cathedral



今週は、激戦のリリース週間といえるが、ベストアルバムとして上がってきたのは、最も意外なバンドの作品であった。前作アルバム『Night-bound Eyes Are Blind To The Day』からホワイトランズは明らかな成長を遂げている。前作を聴いて、私はこのバンドをよく分かった気でいたけれども、それは大きな誤りであったと言わざるを得ない。彼等にはぜんぜん知らない一面がたくさん残されていた。そして、まだまだ彼等には知られざる魅力があったのである。レビューを行う上でも全てを明らかにせず、知り得ない点を残しておくことは悪くないと思う。


前作では、飽くまでシューゲイズやドリーム・ポップという範疇にとどまっていたWhitelandsのサウンドであるが、最新作では必ずしもインディーズミュージックにこだわっているわけではないと思う。どころか、ザ・シャーラタンズなどの90年代のブリットポップのサウンドを踏襲した音楽性で、幅広い層のリスナーを取り込もうとしている。ギター、ドラム、そしてベースなどのアンサンブルとしての音の作り込みは緻密である。と同時に、エティエンヌのボーカルはバンドの音楽性にポップネスを付与し、全体的にキャッチーで掴みやすい音楽性が押し出されている。全体的には、Sport Teamのような明るさとはつらつとしたイメージが加わっている。

 

しかし、上記のプレスリリースを見てもわかる通り、  『Sunlight Echoes』は90年代のブリットポップの主軸に据え、ホワイトランズらしいインディーズロックのサウンドを追求しているが、同時に、明るさと暗さの二面性を映し出す作品である。まるでアルバムの前半部と後半部では、まったく別のバンドの作品であるかのように、ホワイトランズの光と影の側面を鏡のように映し出す。本作の冒頭では青春時代の謳歌を感じさせる純粋な明るさがあるが、後半部では作風が一転し、オルタナティヴロックバンドとしての影の部分が顕わになってくる。後半部では、ソングライターの内面へと鋭く沈潜し、切実なテーマが明瞭になってくる。まるでそれは外側の光を内側の影に当て、本質を浮かび上がらせるという芸術的な技法である。この二面性が、この最新作のハイライトとなり、またフルアルバムとしての完成度の高さを証明付けている。

 

表向きではポップではあるが、裏側では相当すごいことをやっている。特に、ギターの音色の作り込みが凄く、実際的に、このアルバムのサウンドを構築するために、バンドメンバーはアナログのテープのリールを前に、相当数の試行錯誤を重ねている。シューゲイズの代名詞的なギターワークも登場するが、今作で意図されているのは、旧来のシューゲイズサウンドの解体と再生である。 そしてアナログのエフェクトを主体に、それらを最終的にデジタルで出力するという面倒な作業を完成させたのが、イアン・フリンとグラミー賞プロデューサーのエドゥアルド・デ・ラ・パスだ。この三位一体のタッグによって、洗練された作品が出来上がった。このアルバムはブリットポップとシューゲイズが合体した画期的な作品で、''Brit-Gaze(ブリット・ゲイズ)''も呼ぶべきサウンドの誕生を予感させる。(ネーミングセンスはあまり良くないが)

 

全体には、バンドメンバーの人生の足跡をたどるかのように長い時間が流れている。冒頭を飾る「Heat of Summer」は昨年、単独のシングルとして公開されたが、このバンドを古くから知るファンにとっては驚きの変貌ぶりだろう。サウンドの下地は、依然としてドリーム・ポップやシューゲイズであることに変わりないが、ボーカルの印象ははつらつとしていて、ほとんど鬱屈したような感情とは無縁である。まるでロンドンの空の霧が晴れたかのようにボーカルの印象は明るく、爽快なイメージすら与える。80年代のダンスポップやディスコポップを反映させ、コクトー・ツインズのようなサウンドを押し出し、それにダンサンブルなリズムを付与している。そしてそのサウンドは、Wild Nothingの最初期のようなスタイリッシュな響きをもたらす。特に、今作ではボーカルのメロディーラインの親しみやすさに焦点が置かれ、それらは先にも述べたように、90年代のブリット・ポップの一般的なイメージを再提示する。この曲には、ポップになることを恐れないソングライターの意図を読み解くことができる。実際的に、ホワイトランズの曲の中では、最も聞きやすく、取っつきやすいナンバーとなっている。

 

今回は特に、広い層に支持されるポップソングを書くということに抵抗がなくなった印象を覚える。そして、その試みはかなり成功したのではないかと思う。それはシャーラタンズの系譜にあるポップソング「Songbird(Forever)」に目に見えるような形で現れている。レコード産業全盛期を思わせるバブリーな雰囲気、また、ある意味では英国の音楽産業が著しい存在感を放っていた独特な多幸感のある空気感が、この曲には乗り移っている。だが、依然としてホワイトランズらしさが健在で、ドリームポップやシューゲイズ風の切ないメロディーラインが耳を捉える。特に、この曲のサビ(コーラス)は、ヒットソングの定型をよく研究していて、それらを忠実に再現している。また、全体的なプロデュース/ミキシングの側面でも、ブリットポップらしさが加わり、弦楽器のアレンジがボーカルの録音と絶妙に溶け込み、美しい音響効果を作り出す。そして何より、旋律的な効果にとどまらず、Nation of Languageのようなダンサンブルなポップソングの効果が、Pet Shop Boysのようなリズミカルな乗りやすさを生み出している。ここにも、軽く聞きやすい音楽を書くことを恐れぬ姿勢が如実に反映されていると言える。この曲に見受けられるような青春の淡い味わいがアルバムの序盤のハイライトである。

 

 

「Songbird」

 

 

インタリュードのような感じで導入される「Shibuya Crossing」は渋谷交差点をテーマに選んだポストロック/音響系を基調にした一曲だ。ホワイトランズの内省的な一面を反映させた上で、渋谷で感じた近未来的な空気感を、ギターミュージックとボーカルを介して表現している。プロデュースとしては、ディレイによりプログレロック風の音響効果が加えられることも。言ってみれば、Pink Floydの最初期の傑作『Echoes』の現代版とも言える実験的なサウンド。曲の最後には、電車の発着時のアナウンスのサンプリング的なSEが登場する。この音楽により、ホワイトランズは見事に時間と空間を飛び越え、遠く離れた場所の音楽性を生み出している。

 

アルバム序盤の80年代のダンスポップ/エレクトロポップのサウンドを踏襲した音楽性は、一つの頂点を続く「Glance」で迎える。この曲は小説の一節にちなんだ前作『Night-bound Eyes Are Blind To The Day』の音楽性と地続きにあり、全般的にはドリームポップやシューゲイズの中間に属する。しかし、やはりボーカリスト、エティエンヌの印象が一変し、Sport Teamのような爽快味と甘酸っぱさを兼ね備えたボーカルが、楽曲の全体的なイメージを形成する。また、ボーカリストの情熱的で叙情的な一面ばかりに目を取られがちなのだが、バンドのアンサンブルにも刮目すべき箇所がある。ドラムの華麗なタムの演奏が、このメロディアスなポップロックソングに安定感をもたらしている。いわば、エティエンヌの人間的な成熟という表側のイメージの向こうには、全体的なバンドとしての実力の底上げの瞬間を見出すことができる。 また、ボーカルの録音でも、輪唱の形式をなぞられ、2つのボーカルを併置し、多彩なサウンドを作り上げている。しかし、同時に、それらの複雑さを帳消しにするキャッチーさがこの曲の一番の魅力である。思わず口ずさんでしまうような親しみやすさのあるボーカルのメロディー、これが商業的なポップソングを書く上では基本的には欠かせない要素になってくる。

 

中盤部を最後を飾る「Sparklebaby」はアルバムの前半部の明るさの集大成をなしている。この曲では、Beach Boysのブライアン・ウィルソンのソングライティングを継承し、それらを”モダンなドゥワップ”とも称すべき作風に置き換えている。この曲で感じられる天上的な多幸感、そして、その合間に感じられる青春のエバーグリーンな空気感が、見事なコーラスワークを通じて体現されている。前曲と同じように、複数のボーカルの録音が配され、素晴らしいハーモニーを形成している。とくに曲の終盤での声のハーモニーは息を飲むような美しさがある。こういった曲は、ゴスペルとかコラールを現代的な感性によって組み替えようというのである。

 

「Blankspace」は最もホワイトランズらしい一曲であって、 なぜか聴いているだけで元気が出てくるし、また、ふしぎと活力がみなぎってくる気がする。2000-2010年代のポスト世代のシューゲイズサウンドを彷彿とさせるところがある。Wild Nothing、DIIVといったアメリカのアルトロックシーンのバンドの音楽性を受け継ぎ、それらにブリットポップの色合いを添えている。そしてやはり、ギターは轟音でうねりまくるが、 ボーカルの聞きやすさは維持されている。

 

この曲以降がアルバムの後半部となる。明るさや爽快感、また時には多幸感のような感覚を中心としていたアルバムの前半部からの印象がガラリと変化していき、気鋭のオルタナティヴロックバンドとしての性質が顕わになる。手放しに称賛したい楽曲が3つほど収録されている。『Sunlight Echoes』の凄みは序盤にあるのではなく、後半部の畳み掛けるようなクオリティにある。 

 

「I Am Not God,An Effigy」はバンドのドリームポップの性質が色濃く反映されているが、 SlowdiveやRIDEといったイギリスのシューゲイズに、シャーラタンズのようなブリットポップの色合いを添えている。ヴァースやコーラスの箇所だけに配慮するのではなく、間奏の箇所でもしっかり聞かせどころが作られ、シンセの音色により弦楽器のような音色を作り出し、このバンドの持ち味である美的なセンスを体現させる。そしてボーカルはバンドアンサンブルの全体的な和声進行と連動するような形で、内的な苦悩を最も感情的に表現していくのである。そしてその瞬間、胸を打たれるというか、表向きの音楽の裏側にある本当の核心に突き当たる。また、そのとき、表面的なやりとりだけでは知り得ぬ本当のバンドの姿に触れたという気がする。曲の後半では、シンセ、ギターがユニゾンが描く中、主旋律としての低音部のベースが浮かび上がる。ギター、ボーカル、そしてドラムが表面的に活躍するが、ここではベースが主役になる。こういった曲を聴くと、バンドは改めてどのパートも軽視することが出来ないのである。

 

「Dark Horse」と「Mirrors」の流れは圧巻で、間違いなく後半部の最高の聞き所となる。久しぶりに聴いていて感嘆の言葉を漏らしたほどだった。2つの曲ともに、アルバムの序盤の収録曲とはまったくイメージが対照的で、いわば人生における苦悩の側面が暗示的に明らかになる。今作は立方体のようであり、一側面が見えたかと思うと、それとは別の側面が出てくる。しかしもし、その苦悩を単なる傍観者(他者)として見るのではなく、同じ立場にある追体験者(自分)として見るのであれば、その音楽には、なにかしら勇気づけられたり、鼓舞されるところがきっと見つかるはずである。音楽的な体験というのは、単なる享楽的な行為にとどまらず、まったく見知らぬ人、あるいは少しだけ知っている人との感情的な回路を作り、音楽的な側面でリンクするという行為である。えてして、彼らのサウンドに勇気づけられるものがある理由は、ホワイトランズの面々は、自らの人生に直面した際、それと闘うのである。これらの姿、あるいは勇姿ともいうべき姿勢が音楽に乗り移り、独特なカッコよさに繋がっている。いずれも楽曲も、ボーカリストとしての個性、アーティスティックな感性のあるギター、的確なリズム感を保つドラム、そして特に、存在感あるベースの化学反応により成立している。「Mirrors」はアルバムのベストトラックであり、休符を効果的に挟んだ素晴らしいアルトロックソング。ベースが凄く、絶妙な対旋律を形成する。ぜひ聞き逃さないようにしてほしい。

 

いつも私自身はアルバムは収録順に聴くため、最後の曲を重要視していて、クラシック音楽のコーダのような感じで聴くことが多い。その中で、最後の曲は、バンドが言う”結束や希望”という一つの結末を暗示している。そして後半の序盤の曲と同様に、ヴァネッサのベースが主役的な役目を担い、曲の土台や骨組みを形作っている。私は以前からバンド写真を見るとき、彼女こそバンドの司令塔のような存在であり、影のフロントパーソンではないかと思っているが、どうやらその直感は正しいのかもしれない。ホワイトランズの曲がどのように出来ていくのか、その過程を実際の演奏によって解き明かしている。この曲には、ブリットポップに対する愛情が垣間見える。それはエティエンヌの開けたような感覚のあるボーカルの歌い方や旋律に宿っている。

 

最後の曲を聴くと、彼らはおそらく、オアシス、ブラー、オーシャン・カラー・シーン、シャーラタンズ、スパイラル・カーペッツ、ハッピー・マンデーズ、ストーン・ローゼズ、ヴァーヴなど、英国音楽の全盛期をどこかで追体験したり通過してきたことを伺わせる。そして、イギリスのインディーズシーンを中心に鳴り響いていたホワイトランズの音楽が、すでに屋内の小さな会場には収まりきらず、大きな青空の下で鳴り響く時が到来しつつあることを予感させる。

 

  

88/100 

 

 

「Mirrors」

 

 

 

▪Whitelandsのニューアルバム『Sunlight Echoes』は本日、Sonic Cathedralから発売されました。ストリーミングはこちらから。 

Photo: Kenya Tei

オランダ系南アフリカ人のシンガーソングライター、Joya Mooiによるニューシングル「Lookalike」は、亡き兄の面影を、日常のふとした瞬間に見出してしまう体験から生まれた、深い感情を宿す楽曲。


見知らぬ誰かの歩き方、聞き覚えのある笑い声。一瞬の錯覚のような感覚が、彼がもうこの世にいないという現実と同時に訪れる。そのわずかな瞬間に宿るのは、慰めと痛みが共存する、複雑な感情だった。

 

「悲嘆とは、行き場を失った愛そのもの」。Jamie Andersonの言葉を重ねるように、Joya Mooiは“悲嘆は愛が形を変えたもの”だと捉える。「Lookalike」には、喪失への怒りややり場のない感情、そして消えることのない絆が、静かな熱量をもって刻み込まれている。存在は失われても、愛はなお燃え続ける。その事実を真正面から描いた一曲となっている。


本作は、妊娠がわかった直後という人生の転機に書かれた前作「Pay Day」に続くリリース。「Pay Day」では、不安と希望、責任が交錯する心情を、南アフリカにおいて象徴的な“給与サイクル”のリズムになぞらえて描き出した。同曲はSpotifyのR&B WeeklyやNew Music Friday(オランダ、日本、南アフリカ、ベルギー)、Apple MusicのNew Music Daily、New in R&Bなど、各国の主要プレイリストに選出され、国際的な評価を獲得している。


2025年9月には東京で初のライブを成功させ、ソウル、R&B、ヒップホップを横断するクロスコンチネンタルなサウンドを披露。しなやかな強さ、親密さ、そして変化といったテーマを軸に、表現の幅をさらに広げている。2025年から2026年にかけても新作のリリースが予定されており、「Lookalike」は、人生のもっとも困難な移行期に意味と美しさを見出す、Joya Mooiの恐れを知らないストーリーテラーとしての姿を鮮明に示す楽曲となっている。


Joya Mooi   「Lookalike」- New Single



[作品情報]

アーティスト:Joya Mooi

タイトル:Lookalike

ジャンル:R&B/Soul

発売元・レーベル:SWEET SOUL RECORDS 


ストリーミング: https://lnk.to/Joya_Mooi_Lookalike

The Vernon Spring


UKブライトンのピアニスト/アーティストThe Vernon Spring。日本国内でも彼の人気は日に日に高まりつつある。ヒップホップ、エレクトロニック、クラシカル、ソウルなどを横断し、サンプリング/ミュージックコンクレート的な再構築のサウンドを特徴としている。ヴァーノン・スプリングの音楽は単なる目新しいものであるにとどまらす、当地の多彩な文化観を盛り込んでいる。


昨年11月にリリースされたRosie Loweのリワークに続き、新たなリワーク作品が配信開始された。アルバム『Under a Familiar Sun』のコンセプトの中核を成していた「The Breadline」をアルバムの共同プロデューサー、Iko Nicheが再構築し、さらにサウスロンドンのラッパー、Confucius MCをフィーチャーしている。これまでリミックス、フィーチャリングなどによりさまざまなケミストリーを起こしてきたプロデューサーであるが、今後の動向からも目が離せない。


Confucius MC

Iko Niche


The BL II - feat. Max Porter & Confucius MC (The Breadline - Iko Niche Rework)



▪️The Vernon Spring (ザ・ヴァーノン・スプリング) The BL II (The Breadline)(Iko Niche Rework)




アーティスト:The Vernon Spring (ザ・ヴァーノン・スプリング)

タイトル: The BL II (The Breadline)(Iko Niche Rework)

発売日:2026年1月28日(水)

フォーマット:デジタルダウンロード/ストリーミング

ジャンル: ポスト・クラシカル / ジャズ / アンビエント

レーベル:p*dis


1.⁠ ⁠The BL II - feat. Max Porter & Confucius MC (The Breadline - Iko Niche Rework)

2.⁠ ⁠Esrever Ni Rehtaf (Rosie Lowe Rework)

3.⁠ ⁠Say Her Name (Requiem for Reem - Loa Rework)



ストリーミングリンク:

https://opia.lnk.to/TheBLII



作品の詳細:

The Vernon Springのアルバム『Under a Familiar Sun』の共同プロデューサーIko Nicheが「The Breadline」を再構築し、中毒性のあるオルタナティブ・ヒップホップ/R&Bの方向へと再解釈。天上のピアノ、Max Porterの詩の断片、そしてThe Vernon Springとadenのオリジナルヴォーカルが織りなす濃厚なシチューは、フィーチャーされたサウス・ロンドンのラッパーConfucius MCのヴァースを通じて、意図的に耳に残るメロディーとして刻み込まれる。予想外のひねりと展開を溶け込ませながら、このトラックは道徳的原則のベールが打ち砕かれた世界で、社会的意識を呼び起こす。

 


ロサンゼルスを拠点とするピアニスト、エミー賞受賞者であり複数回のBMI賞受賞歴を持つ作曲家ピーター・マニング・ロビンソンによる新作クラシックシングル「Pure Hearbreak(ピュア・ハートブレイク)」と、リリースに伴うシネマティックなミュージックビデオが公開された。


「ピュア・ハートブレイク」は、別れ後の普遍的な喪失の痛みを、生々しく胸を締めつけるような瞑想として描いた作品です。音楽的には、別れに伴う感情の起伏を、美しくも憂いを帯びた鍵盤の音色で表現。揺るぎない誠実さで解き明かされるメロディが、生々しい音楽的瞑想を紡ぎ出しています。 付随するミュージックビデオは、クラウス・ホッホがカリフォルニアの砂漠を背景に、別れる二人の恋人の物語を印象的なナラティブで紡ぐ、映画的な短編作品となっている。 


ピーター・マニング・ロビンソンはロサンゼルスを拠点とするピアニストであり、エミー賞受賞者かつ複数回のBMI賞受賞作曲家、リフラクター・ピアノ™の発明者、そして熟練のヴィーガンシェフである。彼の音楽は革新性と映画的なスケールを、深く心に響く情感の深みで結ぶ。 


シカゴ生まれ、バンクーバーとロサンゼルスで育ったロビンソンは3歳でピアノを始め、12歳までにプロとして演奏活動を始めた。クラシックの構造とジャズ即興に根ざした音楽的基盤は、南カリフォルニア大学(USC)とバークリー音楽大学での正式な学習、そしてアーニー・ワッツ、フィル・ウッズ、フレディ・ハバードといったジャズ界の巨匠たちとの共演を通じて磨かれた。


ロビンソンのキャリアは映画、テレビ、オーケストラ、ライブパフォーマンスに及ぶ。彼の作曲作品はエミー賞(KABC『Above and Below』)と5度のBMIミュージックアワード(『Without a Trace』)を受賞し、オーケストラ作品はロンドン・フィルハーモニック、ロサンゼルス室内管弦楽団、ムジカ・ノヴァのメンバーによって録音されている。 20代前半、重度の腱炎を発症し「二度と生演奏はできない」と宣告された後、コンコルディア大学レオナルド・プロジェクトのフィル・コーエン指導のもと、画期的な身体的・芸術的再訓練プロセスを経験。従来のピアノ技術を「脱却」し、全く新しい身体言語と音楽言語を確立した。


この旅は最終的に「リフレクター・ピアノ™」の発明へと至った。これは根本的に再考されたアコースティックピアノであり、ロビンソンが「屈折した音楽」と呼ぶものを生み出すことを可能にする。事前録音トラック、MIDI楽器、外部音源を一切使用しない、完全な生演奏によるパフォーマンスである。 2016年にサンタモニカのベルガモット・ステーションでリフラクター・ピアノ™を初披露して以来、ロビンソンはヴォルテックス・ドームやロサンゼルス近代美術館(MoMA DTLA)など数々の会場で絶賛される演奏を披露。2021年には長年の芸術的協力者であり映像ディレクターのクラウス・ホッホと共に、革新的なアーティストフレンドリーな音楽レーベル「オウル・ウォーク・レコーズ」を設立した。 


近年の作品の大半がRefractor Piano™を中心に展開される中、近々リリース予定のネオクラシックアルバム『Excursions』は、ソロアコースティックピアノへの力強い回帰を告げる。3年をかけて制作された本作は、悲嘆、失恋、回復力、そして輝く希望を紡ぐ極めて個人的な楽曲群で構成される。アルバムは儚い光の瞬間で満ちており、聴く者に愛と創造性をもたらす。 


世界的な激動と個人的な喪失に彩られた時期に書かれたこのアルバムは、絶望と断絶から苦闘、再生、そして喜びへと至る感情の軌跡をたどる。 「これらの楽曲は私の発散の場となった」とロビンソンは説明する。「悲しみや哀しみを処理する手段として、自然とアコースティックピアノに頼り続けた。やがて気づいたのは、私自身や多くの人々が経験していることを反映した音楽の系譜を創り出していたということだ」。数百に及ぶ録音スケッチから、ピーター・マニング・ロビンソンとクラウス・ホッホは入念に選別し、最終作品を視覚と音楽が一体となった没入型の感情のタペストリーへと昇華させた。 


アルバムタイトルは本質を映す:エクスカージョンとは短い旅路であり、予想外の道への逸脱であり、各楽曲が独自の感情の航海である。先行シングル「ピュア・ハートブレイク」は、別れ後の普遍的な喪失の痛みを、生々しく胸を締めつける瞑想として描く。 音楽的には、華麗で憂いを帯びた鍵盤が別れの浮き沈みを映し出す。揺るぎない誠実さで解き明かされるメロディは、生々しい音楽的瞑想だ。伴うミュージックビデオは映画的な短編で、クラウス・ホッホがカリフォルニア砂漠を背景に、別れる二人の恋人の物語を印象的な叙事詩として紡ぐ。 


映画的で冒険的、情感豊かで深く人間的な『Excursions』は、感じるために存在する音楽だ。衝撃的な展開、ロマンチックな憂愁、内省的な希望を織り交ぜた本作は、インストゥルメンタル音楽が言語を超えたイメージと感情を喚起できるというピーター・マニング・ロビンソンの信念を確かなものとする。彼自身の言葉によれば「これは私が最も誇りに思う作品だ」


「Pure Hearbreak」

 

 

▪️EN

 

Peter Manning Robinson is a Los Angeles- based pianist, Emmy Award–winning and multi–BMI Award–winning composer, inventor of the Refractor Piano™, and accomplished vegan chef whose music bridges innovation and cinematic scope with a deeply touching emotional depth. 


Born in Chicago and raised between Vancouver and Los Angeles, Robinson began playing piano at age three and was performing professionally by twelve. His musical foundations, rooted in classical structure and jazz improvisation, were refined through formal studies at USC and Berklee College of Music, and through performances with jazz luminaries including Ernie Watts, Phil Woods, and Freddie Hubbard.


Robinson’s career spans film, television, orchestral, and live performance. His scores have earned an Emmy Award (KABC’s Above and Below) and five BMI Music Awards (Without a Trace), with orchestral works recorded by members of the London Philharmonic, the Los Angeles Chamber Orchestra, and Musica Nova. In his early twenties, after developing severe tendonitis and being told he would never perform live again, he underwent a radical physical and artistic retraining process under Phil Cohen of Concordia University’s Leonardo Project, “unlearning” traditional piano technique and emerging with an entirely new physical and musical language.


That journey ultimately led to the invention of the Refractor Piano™, a radically reimagined acoustic piano that allows Robinson to create what he calls “Refracted Music”, live, fully acoustic performances with no pre-recorded tracks, MIDI instruments, or external sounds. Since debuting the Refractor Piano™ in 2016 at Bergamot Station in Santa Monica, Robinson has presented acclaimed performances at venues including the Vortex Dome and the Museum of Modern Art DTLA. In 2021, he and longtime artistic collaborator and video director Klaus Hoch founded Owl Walk Records, an innovative artist-friendly musical label. 


While much of Robinson’s recent work has centered on the Refractor Piano™, his upcoming neo-classical album Excursions marks a powerful return to solo acoustic piano. Compiled over a three-year period, Excursions is a deeply personal collection of compositions that navigate grief, heartbreak, resilience, and luminous hope. The album is filled with moments of fragile light, leaving listeners filled with love and creativity. 


Written during a time shaped by global upheaval and personal loss, the album traces an emotional arc, from despair and fracture through struggle, renewal, and joy. “These pieces became my outlet,” Robinson explains. “I kept defaulting to the acoustic piano as a way to process grief and sadness. Over time, I realized I was creating a family of music that reflected what I—and many others—were going through.” Drawing from hundreds of recorded sketches, Peter Manning Robinson and Klaus Hoch carefully curated and refined the final works into a cohesive visual and musical journey, an immersive emotional tapestry. 


The album’s title reflects its essence: excursions are brief journeys, departures from the expected path, and each piece is its own emotional voyage. Leading single “Pure Heartbreak” is a raw, heart-wrenching meditation on the universal pain of loss after a breakup. Musically, “Pure Heartbreak” reflects the ups and downs of a separation through gorgeous and melancholic-laced keys.  It is a raw musical meditation with a melody unraveling with unflinching honesty. The accompanying music video is a cinematic mini film with Klaus Hoch telling the story of two lovers who part ways in a striking narrative against the backdrop of the California desert. 


Cinematic, adventurous, emotive, and deeply human, Excursions is music meant to be felt. With striking twists and turns, romantic melancholy, and reflective hope, the album affirms Peter Manning Robinson’s belief that instrumental music can evoke images and emotions beyond language. As he puts it, “This is the work I am most proud of.”





20世紀初頭は、レコード産業が大きく発展した時代であり、1903年にはイタリアで初のミリオンセラーが登場した。エンリコ・カルーゾのピアノ伴奏つきの歌曲「ヴィステラ・ラ・ジウバ」は100万枚以上の売上を記録した。最初のミリオンレコードともいわれている。

 

また、エジソンによる円筒型のレコード蓄音機が1877年に発明されて以降、世界各地のレコード会社はレコードを流通させようと尽力した。そんな頃、グラモフォン、RCA、オデオン、ポリドールなど大手レコード会社が登場する。20世紀初頭というのは、音楽がライブ/コンサートから録音へと移り変わっていった時期であった。そんな中、多くのレコード会社は、それまであまり陽の目を見なかった地域へと目を向けた。アルゼンチンのタンゴもまたその一貫として台頭した。この音楽はアメリカのジャズやミュージカルと連動するようにして発展した。

 

 

▪オーケストラ・ティピカの成立 


 

アルゼンチン・タンゴの普及に貢献したのが、現地の演奏集団である。これらは「オーケストラ・ティピカ(Orquesta Tipica)」と言われている。 彼らの存在なくして、ピアソラは存在しなかっただろう。ゴースト・オーケストラの異名をとるこの演奏集団は、ほとんどが表側に出ることなく、また、ライブも行うこともない、レコーディングの専門集団として活躍した。タンゴは19世紀に始まり、単体のギターで演奏されることが多かった。いわば、タンゴの始まりは、どちらかと言えば、ブルースやフォークミュージックのような形で発生した。しかしもちろん、それだけでは終わらず、ニューオリンズのジャズやブラジルのショーロと連動するようにして、ビッグバンドの形式が主流となり、楽器の編成自体も大掛かりになっていった。以降は、室内楽団やそれよりも大きな編成のオーケストラ集団を中心にタンゴは発展していった。

 

当初、アルゼンチンのタンゴはアコースティックギター単体で演奏されることが多かったが、その後、トリオ編成に変わり、バイオリンとフルートが加わり、小編成の室内楽となった。そして、20世紀以降は、トリオ編成にバンドネオン(アコーディオン)が追加された。タンゴは、ブラジル音楽のように口頭で伝達される音楽ではなく、クラシックのように楽譜を通じて継承された音楽である。そのことを考えると、クラシックやビッグバンドに近い発展の道筋を辿ったというのも頷ける話だろう。

 

どのような音楽の分野も傑出した人物が現れなければ、目覚ましい発展を遂げることは困難である。と考えると、タンゴが大きな節目を迎えた瞬間が1899年であった。バンドネオン奏者/作曲家/指揮者のフアン・パチョ・マグリオという人物が登場する。彼は実際の演奏ではバンドネオンを担当し、ギタリスト、バイオリンというジャズトリオのような編成を形作った。

 

バンドネオンの最初のレコーディングは1912年に行われた。マグリオがタンゴ「ラ・ソナムブラ」を演奏した際に録音が行われた。以降、この音楽は徐々に楽器編成を増やしていく。

 

1917年、ロベルト・フィルポがピアノを導入。同年、フランシスコ・カナロがコントラバスを導入した。こうして、ピアノ、バイオリン、バンドネオン、ベースといったカルテットの編成が確立された、さらにその数年後には、チェロが導入され、さらに本格的な室内楽の編成になった。

 

・タンゴの最初期の巨匠 ビセンテ・グレコ 

 

1911年、タンゴの最初の巨匠ビセンテ・グレコが登場した。彼は自身の楽団を「オーケストラ・ティピカ・リオージャ」と名付けた。この名称を省略して、オーケストラ・ティピカの名が一般的に定着した。この楽団は、アルゼンチンでも名物的な存在となり、1960年代以降、ビートルズのようなポピュラー音楽が国内で主流になるまで隆盛をきわめた。オーケストラ・ティピカの楽器編成は、1920年代から30年代になると、六重奏楽団へと進化した。ロサリオのカーニバルなどでは、こうしたアンサンブルが大編成オーケストラとして活躍した。

 

面白いことに、オーケストラ・ティピカは、''典型的な楽団''という意味である。それは演奏者が変わっても、同じような演奏ができる”組織的な集団”とも言える。 しかし、問題は、著名な演奏家やスターが登場しなかった時期が多く、唯一、作曲家だけが名を残している。もしかすると、これが、20世紀中期にかけて、音楽としての成長が鈍化した原因なのではないだろうか。しかし、1940年代にかけて、アルゼンチンではタンゴが街の隅々まで入り込み、文化の中心となったのは事実のようである。当時、100以上ものオーケストラが活動し、ラジオ劇場、カフェ、スポーツクラブ、社交クラブで演奏を行った。首都ブエノスアイレス、郊外にはこの音楽が氾濫し、ビクターやオデオンがアルゼンチ・ンタンゴの録音を続々と世に送り出した。

 

オーケストラ・ティピカを率いた著名なアーティストには、エドゥアルド・アローラス(Eduardo Arolas)、ロベルト・フィルポ(Robert Firpo)、、Adolfo Carabelli(アドルフォ・カラベリ)、フランシスコ・カナロ(Francisco Canaro)らがいる。彼らはタンゴの歴史の中でも度外視することのできない巨匠たちである。 録音も残されている場合もあるので参考にしてみて下さい。

 

・アストル・ピアソラとオーケストラ・ティピカ


 

さて、そんな中、アストル・ピアソラのような傑出した作曲家が出てきたのは自然な成り行きだった。元々、ピアソラはバンドネオン奏者として活躍していたが、フランスのパリに留学して以降はこの音楽をクラシック界に持ち込み、ガーシュウィンに比肩する偉大な作曲家になった。


なんでも、ピアソラの曲は、どのように演奏してもピアソラらしくなり、典型的なタンゴの曲になるという。演奏者やオーケストラに左右されないというのだ。しかし、その典型的なタンゴの印象ですら、20世紀以降に始まったオーケストラ・ティピカ(典型的な楽団)の流れを汲んでいると見ればどうか。ピアソラのタンゴの文脈には相応の狙いが存在し、海の向こうにいる聴衆に対し、わかりやすいタンゴの”典型的なイメージ”を活かそうとしたとも考えられる。しかし同時に、一般的に言われるように、ピアソラは文化の伝承者であるとともに革新者でもあった。

 

ピアソラは、オーケストラ・ティピカに大きな変革をもたらし、五重奏や六重奏の形式を確立させる。そして彼はまた、タンゴを娯楽のための踊りから演奏を中心とする芸術の領域へと近づけた。生前のピアソラは言った。『タンゴは踊るためだけではなく、聴くためにある』というように。これこそ音楽的に優れた側面が存在すると、ピアソラ自身が考えていた証でもあろう。

 

アストル・ピアソラの音楽は世界的に演奏される機会が多いが、彼はむしろ生前よりも死後になって、真価が認められた人物である。特に、ピアソラの死後、タンゴは舞踏と音楽の芸術的な側面で急速に再評価され、世界で興行を行うバレエ団のレパートリーには、ピアソラの曲が組み込まれていた。それ以降、タンゴは主流地域のポピュラーやロックに押されるようにして行き場を失い、四半世紀に及ぶ暗黒期を迎えた。しかし、そのような不遇時代にあろうとも、いくつかの楽団が辛抱強く活動を続け、70年代や80年代まではオーケストラが活動を継続していた。しかし同時に、アルゼンチンの若者の海外の音楽へと移り変わっていかざるを得なかった。

 

以後、オーケストア・ティピカが衰退期を迎えたのは様々な要因がある。例えば、若い聴衆の好みの変化、ダンスへの熱意の喪失、中心街のカフェがコンフィテリア(喫茶店)へと変わっていったことなど。これらの町並みの変化や趣味趣向の変遷の中で、オーケストラ・ティピカは演奏する機会を失うようになったのは致し方のないことである。そして、60年代に入ると、リバプールから最大の文化が流入した。アルゼンチンの聴衆は、海外の音楽に夢中になり、ビートルズをはじめとするロック、バラード、それからボレロが主流派になっていった。こうした海外のポピュラー文化を広めるために、「エル・クラブ・デル・クラン」が登場した。

 

しかし、タンゴが再興したのは存外にも海外からの興味からであった。パリはタンゴに注目し、これらをダンスの方面から再編しようと試みた。すると、1980年代に入り、ブエノスアイレスに、キャバレー「トロトワール」が開場し、また、歴史的なダンス、歌、舞台、アートを上映する「タンゴ・アルヘンティーノ」が登場した。以降、タンゴは根強い人気を海外でも維持している。日本でも意外なことに、オーケストラ・ティピカが現在も活動している。