著名なアーティスト、瞑想ガイドのRina Rain(リナ・レイン)による新マントラ楽曲&ビデオ「Om Tare Tuttare Ture Soha(オーム・ターレ・トゥッテ・トゥレ・ソーハ)」は苦しみからの解放と恐怖からの保護を祈る。サンスクリット語の仏教マントラは、行動する慈悲の化身である女性的な緑のターラを呼び起こします。内なる恐怖、外なる恐怖からの保護と自由への道を求めるときに実践するのに適しています。


リナ・レインは、音楽を通じて、平和、献身、癒しを伝えるガイドです。魂のこもった歌声と古代のマントラ、現代的なサウンドスケープを融合させ、内なる静寂と繋がりを促す楽曲を創り出します。彼女の声は静寂の本質を運び、それぞれの詠唱は柔らかな祈りのように広がり、今この瞬間に戻ることを導きます。本トラックはアルバム『雨のささやき』からの第二弾試聴曲です。 ヒーリングミュージックがお好きな方におすすめ。


リナ・レインはベイエリアを拠点とする瞑想トレーナーであり、マインドフルネス、キャリア開発、自己啓発の分野で20年以上の経験を持つ。また、マントラアーティスト(Rina Rain)として、音楽を通じて、平和、献身、癒しを伝える瞑想ガイドでもある。


魂のこもった歌声と古代のマントラ、現代的なサウンドスケープを融合させ、内なる静寂と繋がりを促す楽曲を創り出す。彼女の声は静寂の本質を運び、それぞれの詠唱は柔らかな祈りのように広がり、今この瞬間に戻る道となる。


 神聖な反復と音と音の間の沈黙に根ざしたリナの歌声は、聴く者をゆっくりと歩み、呼吸し、自分自身へと帰るよう誘います。シンプルで広々とした音と導きを通して、彼女は平和、記憶、静かな変容の周波数を伝えます。彼女の音は、単なるパフォーマンスではなく、それらの境界線といえます。


デビュー曲「Lokah Samastah Sukhino Bhavantu(ロカ・サマスタ・スッキーノ・バヴァントゥ)」は、瞑想と深い平安のために創られたアルバム『Wispers of Rain(雨のささやき)』の第一弾となる。彼女は語る。


「『ロカ・サマスタ・スッキーノ・バヴァントゥ』は私の声と心を開いたマントラです。この曲は、私たちの心と魂の苦しみを和らげ、あらゆる時、あらゆる場所の全ての存在のために捧げる私の祈りです。 このマントラが、重く感じるものを和らげ、聴くすべての人に深い帰属意識を目覚めさせることを願ってます。私たちは皆つながっており、この旅路を独りで歩んでいる者はいないことを、どうか思い出せますように」


最新曲「Om Tare Tuttare Ture Soha(オーム・ターレ・トゥッテ・トゥレ・ソーハ)」は、苦しみからの解放と恐怖からの守護を祈るマントラ。サンスクリット語の仏教マントラは、行動する慈悲の化身である女神グリーンターラを呼び起こす。内なる恐怖、外なる恐怖からの守護と、自由への道を求める際に実践すると良いでしょう。 


リナは次のように語っています。「『オーム・タレ・トゥッタレ・トゥレ・ソーハ』は、私たち全員の内なる優しい本質へと呼び戻す招待状です。録音中、私は慈悲の柔らかな波に抱かれているような感覚に包まれました——マントラの反復によって支えられ、癒され、開かれていくのです。自分の中に眠っていた柔らかさが目覚めたのです」


「この詠唱は速いリズムで進みますが、その目的は深い癒しにあります。恐怖や幻想、内なる葛藤を切り裂き、内なる自由への静かな道を明らかにするためです。この音を聴くとき、その響きがあなたの心と精神の奥深くへと導き、今この瞬間に最も必要な場所に光を照らすことを願ってます。安らぎのひとときをもたらし、感謝と愛と思いやりをもって自分自身と向き合う手助けとなりますように」


20年以上にわたり、リナはマインドフルネス、コーチング、創造的表現を通じて癒しの場を提供してきました。彼女の音楽は瞑想そのものです。それはペースを落とし、呼吸を整え、心へと戻るための招待状になりえる。

 

「Om Tare Tuttare Ture Soha」

 

 

▪️EN

Rina Rain is a Bay Area-based meditation trainer with over twenty years of experience in mindfulness, career and personal development. She is also a mantra artist (Rina Rain) and meditation guide sharing peace, devotion, and healing through music. 


Blending soulful vocals and ancient mantras and modern soundscapes, she creates songs that inspire inner stillness and connection. 


Her voice carries the essence of tranquility, each chant unfolding like a soft prayer, a return to presence. Rooted in sacred repetition and silence between the notes, Rina’s voice invites listeners to slow down, breathe, and come home to themselves. Through simple, spacious sound and guidance, she channels frequencies of peace, remembrance, and quiet transformation. Her sound is not performance, it is a threshold.


Her debut track “Lokah Samastah Sukhino Bhavantu” serves as the first glimpse of her forthcoming album Whispers of Rain, an album created for contemplation and deep peace. 


She shares, “‘Lokah Samastah Sukhino Bhavantu’ was the mantra that opened my voice and my heart. This track is my prayer to help ease suffering in our minds, in our hearts, and for all beings everywhere, at all times. My wish is for this mantra to soften what feels heavy and awaken a deeper sense of belonging in everyone who listens. May we remember that we are all connected, and none of us are walking this journey alone.”


Her latest track "Om Tare Tuttare Ture Soha" is a prayer for liberation from suffering and protection from fear. The Buddhist Mantra in Sanskrit invokes feminine Green Tara, the embodiment of compassion in action. Good to practice when seeking  protection from fears, inner or outer, and a path toward freedom. Rina shares, "'Om Tare Tuttare Ture Soha' is an invitation to return to the gentle nature within all of us. As I recorded it, I felt as though I were being carried by soft waves of compassion - held, soothed, and opened by the repetition of the mantra.  


It awakened a softness in me I didn’t know I was holding. Though the chant moves with a quicker rhythm, its purpose is deeply healing: to cut through fear, illusion, and inner struggle, and reveal the quiet path to freedom within.My hope is that, as you listen, the sound carries you to the far corners of your heart and mind, shining light where it’s needed most in the moment. May it offer a moment of ease and guide you to meet yourself with gratitude, love, and compassion.”


For over two decades, Rina has held space for healing through mindfulness, coaching, and creative expression. Her music is a meditation. It’s an invitation to slow down, breathe, and return to the heart.




ausは、東京出身の作曲家/プロデューサー。10代の頃から実験映像作品の音楽を手がける。身近に存在する音を再発見し、再構築を繰り返すことによって見出されるausの音楽は「自然に変化を加えることによって新しい自然を生み出す」と自身が語るように、テレビやラジオから零れ落ちた音、映画などのビジュアル、言葉、長く忘れ去られた記憶、内的な感情などからインスピレーションを受け、世界の細かな瞬間瞬間をイラストレートする。これまでにヨーロッパを中心に世界35都市でライブを行い、Faderなど国際的にも注目されるレコード・レーベル、FLAUを主宰している。また、自身のオリジナル作品の他、リミックスを手掛けることもある。


昨年のアルバム『Fluctor』に続く作品『Eau(オー)』は、依然としてエレクトロニックサウンドを維持しつつも、日本の楽器の中で最も特徴的な弦楽器のひとつである箏の音世界を軸に展開する、アウスの魅力的な方向転換といえるアルバムです。繊細でありながら豊かな数々の箏のフレーズと音色は、非常に才能豊かな演奏家、奥野楽(おくの・えでん)が担当。アウスは作品解説の中で、このプロジェクトにおける奥野の演奏とその芸術の重要性を称賛しています。


『Eau』の収録楽曲は、箏の微妙に変化するアタック、揺らめく響きの音色と、他の楽器の音色のバランスをとるようにデザインされています。箏の繊細なディケイ(減衰)と韻律の柔軟性は、持続的なシンセサイザーの音色と対位法的に構築されたピアノの旋律に包まれ、引き込まれるような底流と、物憂げで流動的な質感を伴う、流れるようなアンビエンスを生み出しています。


今回のアルバムはダイナミックに和楽器の魅力を伝える内容となっている。楽器としての主役は、箏が担っている。箏の現代史を俯瞰したさいに、日本のコンテンポラリー音楽の愛好者は『Eau』を聴いて、沢井忠夫がリアライズした吉村弘作曲作「アルマの雲」(1979年)、あるいは、箏の演奏グループ、Koto Vortex(コト・ヴォルテックス)が同じく吉村弘の作品を取り上げたアルバム『Koto Vortex I: Works by Hiroshi Yoshimura』(1993年)を思い出すかもしれません。しかし、いずれも箏を伝統から引き剥がし、アンビエント~テクノの文脈に配置しようとした先駆的作品で、『Eau』にも影響を及ぼしている。また、諸井誠の『和楽器による空間音楽』といった70年代日本の現代音楽作品も『Eau』の重要な影響の源となっている。



aus  『eau』- FLAU/EM Records


 

これまで、エレクトロニックと和風の旋法や音楽的なテイストを交えて電子音楽を制作してきたaus。 昨年発表された前作では、サム・シェパードこと、Floating Pointの系譜にある西洋的なテクノとポストクラシカルを融合させた。本日、FLAUから発売された『Eau』では、ドラスティックな転換を図った。和楽器と独自のテクノのセンスを結びつけた一作で、日本のテクノシーンの見過ごされてきた音楽性と、ポストクラシカルの要素を織り交ぜ、新鮮な作風に転じた。

 

アルバムでは、日本の伝統芸能である能のような形式を図り、箏が主役の「シテ」を担い、aus自身は脇役の「ワキ」を演ずることがある。もっとも、サウンドデザインの才覚に恵まれたausは、舞台装置のように音楽を演出し、アトモスフェリックなシンセサイザーでアンビエント風のテクスチャーを生成したり、また、伴奏としてピアノを演奏することもある。しかし、興味を惹かれるのは、それらの役割は必ずしも一定ではなく、シテがワキになり、ワキがシテになったりして、流動的な音楽を作り出されることである。アルバムを聴いていると、音楽的にはその限りではないものの、ジャズの流動的なソロパートのやり取りや受け継ぎを感じさせる。背景にある楽器パートは、前面に出ることもあり、前面の音楽が背景に変わることもある。

 

ausの新作を楽しむ上で、箏という楽器の特性を把握しておくことが必要不可欠となるだろう。 箏は、ヨーロッパのツィターとか、ペルシアのダルシマーに似た楽器で、専用の爪で演奏する。制作に参加した奥野楽は、地歌/箏曲の専門的な演奏家であり、その演奏は一聴に値する。一般的な考えとしては、「こと」として、一括りにされる場合も多いが、琴と箏は厳密に言えば、同根にある器楽といえども異なる楽器である。柱(じ)と呼ばれる、西洋楽器でいうブリッジが備わっているのが箏の特質である。いわば、これは全般的なフレットのような働きをなす。

 

奥野楽の演奏は、和音階のスケールを作り出し、律音階の旋法的な連なりを生み出す。和音階には、民謡音階、律音階、都節音階、琉球音階の4種が存在するが、今回のいくつかの曲では、明治以降、西洋音階を踏襲した上で普及した「ヨナ抜き音階」、それ以前の「ニロ抜き音階」が中心となる。全般的に、平安の宮廷音楽である、律音階の雅やかさを現代的に明瞭に伝えるとともに、八橋検校(生八ツ橋のルーツ!)に代表される江戸時代の世襲的な箏曲文化を反映している。

 

本作には、和風の音楽観が各所に敷き詰められているが、魅力はそれだけにとどまらない。いわば伝統的な解釈の再構築が全般的な作曲の中心を占め、テクノやアンビエント/ポストクラシカルなど制作者が得意とする音楽性が凝縮されている。 ”和モダン”な作風が作り出され、新旧混合の音楽が、オスティナートを用いたミニマル音楽の形式によって繰り広げられやかと思えば、カウンターポイントを意識した西洋音楽の系譜にある二声/三声の新しい伝統音楽が展開されることも。和音階には、西洋音楽のようなハーモニーがないと言われるが、このアルバムに関してはその限りではあるまい。オスティナートの音の連続、シンセのシークエンスや雅楽の系譜にあるドローンの持続音が、音楽的な背景を担い、時折、倍音の基底からハーモニーが生じる。

 

今回のアルバムでは、全般的な制作者の着想と、実際的にアウトプットされる音楽が上手く合致している。それほど長い構成ではないものの、 時間以上の密度の濃さを感じさせ、また、同時に、これらのクラシックとモダンを兼ね備えた音楽の中には、aus自身の美学やセンスが織り交ぜられている。前作『Fluctor』に続き、水のイメージが受け継がれ、エレクトロニック、クラシック、日本の古典的なフォークミュージックなど形式を問わない音楽が、バランスよく展開される。当サイトに連絡を取ってくれた時期から、ausはエレクトロニックやポストクラシカルの方式を基に、日本的な感性を探求していたように思えるが、ようやく1つの形になったとも言える。個人的には、このアルバムを聴いて深い安堵を覚えた。それは音楽的にも同様である。

 

 「Tsuyu」は、雅楽をエレクトロニックから解釈しており、箏がリードの役割を担う。単旋律だけではなく、複数旋律が同時に演奏されることもある。奈良/平安文化を感じさせるような雅やかなイントロダクションだ。奥野楽の箏は、律音階を作り出し、その背景では、ausの笙のような音響効果を持つシンセサイザーのテクスチャーが敷き詰められている。落ち着いた感覚は、このアルバム全体に、吉村弘のような環境音楽の要素をもたらしている。全体的には2つの楽器が融合し、倍音の性質が美しいハーモニーを生み出している。特に、奥野楽の演奏の特質は、同音反復を続け、余韻のある残響効果を生み出す。曲の後半では、導入部の余韻に浸らせる。


「Tsuyu」

 


序盤部では、和音楽と同時に西洋音楽の形式が強まる瞬間もある。「Uki」はその好例となり、ミニマル・ミュージックの手法を中心としている。全般的な律音階の分散和音を繰り返し、万華鏡のようなカラフルな音響世界を作り出している。ライヒやグラス、アダムスのような現代音楽のミニマル・ミュージックというよりも、ポストロックや音響派の手法の影響を感じさせる。そして複数の分散和音を辛抱強く重ねる中で、どことなく雅やかな音の響きを作り出していく。後半部では、構造的な音の流れが途切れ、水のようなシンセサイザーが現れ、静寂を作り出す。今回のアルバムでは全般的に、静寂をどう作るのかが、一つの作曲的な核心を占めている。それは同時に日本的な感性で繰り広げられ、水の波紋がポツリと出来るような瞬間がある。

 

三曲目と五曲目に収録されている変奏曲「Variation Ⅰ」「Variation Ⅱ」では、ドイツのピアニスト/作曲家、Henning Schmiedtなどのリリースを手掛けるレーベルオーナーとしての表情も垣間見える。「Ⅰ」では、ausが主体となり、アコースティックピアノで清涼感のあるフレーズを生み出す。遊び心のあるピアノのパッセージの中で、箏が落ち着いた和風のテイストを生み出す。神社仏閣の庭園に見いだせるような落ち着いた静寂を、見事な楽器パートにより作り出す。また、ピアノのほか、曲の後半では、シンセサイザーも加わり、室内楽のようなサウンドが楽しめる。一方、「Ⅱ」では箏を演奏する奥野楽がメインリードを担い、同じように律音階を使用しながら、優雅な音の流れを作り出す。その一方、ausはシンセサイザーで背景となるアンビエンスを作る。二つの変奏曲は、主役と脇役が入れ替わるという内容で、音楽的な面白さがある。

 

その間に導入される「Orientation」は、これらの二つの変奏曲を繋ぐ役割を持ち、また、独立したポストクラシカルの曲として成立している。ausによる卓越したエレクトロニックのサウンドデザインの能力が遺憾なく発揮され、きらきらした光、澄んだ水のような印象が、シュトックハウゼンのトーン・クラスター(群衆音階)で作り出される。また、アルバムの現代的な音楽性を決定づけるかのように、ボーカルのコラージュが中盤に登場する。ここには、aus独自の美学やセンスが明瞭に反映されていることに驚きをおぼえる。音をデザインするという意識は、従来の作品にはなかったもので、ausの電子音楽が新しい段階に差し掛かった瞬間を捉えられる。

 

本作の副次的なテーマは続く「Tsuzure」で明らかにされる。 曲を聞くごとに、平安時代の御簾のような帳、あるいは床の間の障子がゆっくりと開き、それぞれ別の風景が広がるような感じがある。雅楽の笙の音を模したシンセサイザーがドローンの音響効果を担う中、情景的な音楽が繰り広げられる。そこには、枯山水の庭のように洗練されたデザイン、そしてその中から、モダンな空気感が汲み出される。これらは、現代日本建築のような印象をもたらし、制作者が明かすように、伝統音楽を組み換え、再構成(リプロダクト)するーー 伝統から引き剥がし、アンビエント~テクノの文脈に配置するーーという制作者の意図が反映されているように感じる。


しかし、この曲は、単なる雰囲気だけの音楽だけではなく、ハッと目の覚めるような瞬間がある。一分前後に登場する箏の律音階の音色は、背景となる雅楽のテクスチャーを重なり、うっとりするような瞬間を作り出す。日本音楽を感覚的に捉えるという手法がこの曲の核心を担う。また、ドローン的な音の流れがアンビエントのような性質を強める。特に、そのなかから、箏の演奏は、都節音楽のような半音階(♭)を用いたスケールが日本風の優雅さを醸成する。

 

 「Shite」は、和風のミニマルミュージックとしても十分楽しめるが、同時に、ファラオ・サンダースとフローティングポインツのコラボ作「Promises」に触発された一曲としても聴かせる。箏とグロッケンシュピールのような音色を用いたシンセの融合がどのような化学反応をもたらすのかぜひ確認してみていただきたい。また、続く「Minawa」のイントロでは、再びトーン・クラスターが登場し、続いて、サウンド・デザインのような印象を持つ電子音楽が展開される。アトモスフェリックなピアノ、リサンプリング的な手法を用いたアンビエントのシークエンスが音楽的な背景を形作る中、ausが得意とするポストクラシカルのピアノが単旋律を中心に、静かに鳴り響く。この曲では、アンビエントピアノと和音楽の形式が見事に合致している。

 

「Soko」は前曲の音楽的な気風を受け継ぎ、同じようにサウンド・デザイン的な手法を選び、水の泡のようなサウンドを作り出している。全般的なプロデュースを見てもかなり面白く、Gavin Brayersのような遠くで鳴り響く抽象的なアンビエンスを強く意識している。そんな中で、''ししおどし''のように響くピアノの音色が心地よいアンビエンスを作り出す。ここ数年のausの音楽制作の中で、最も癒やしの雰囲気に満ちたサウンドで、 それは例えば、制作者自身の気負いのようなものが抜け落ち、あるがままの音楽性が生み出された瞬間を捉えられる。先にも述べたように、ジャズのインプロバイゼーションのソロパートなどで見受けられるサウンドは、箏のリードという形で置き換えられている。何より、このアルバム全般で、制作者が意図している雅やかな律音階が自由な音楽の流れを作り、同時にくつろいだ感覚をもたらしている。同時に、和音楽では不可欠な''間''の要素もある。これらの音楽的な工夫をバランスよく配置し、このアルバムのハイライトとも呼ぶべき瞬間が、この曲では体感することが出来るはずだ。

 

しかしながら、同時に『Eau』の終盤では、無類のポストクラシカル好きのレーベルオーナーとしての色あいが強まる。そして、その個性が発揮される瞬間、本作の最大の醍醐味を感じることがある。「Strand」は、このアルバムの音楽的な主題となる''和と洋の融合''が繰りひろげられるが、ピアノと箏の室内楽的な合奏には、凛とした響きがこもる。音の持続を十分に引き伸ばしながら、音の間を作り、このアルバムに登場するトーン・クラスターとの対比を描いている。


このところ、制作者は、ライヴの開催などで忙しい日々を過ごしていたと思うが、気忙しい日常から解放されるための、安らかで優しげな響きのある理想郷を見事に作り出してみせた。この作品には、日本のミュージシャンとしての強い自負が感じられる。それはまた、制作者自身が、アイスランドのOlafur Arnold、イギリス/アメリカのアーティストとの交流を通じて、西洋文化にも親近感を感じているからなのかもしれない。近年では、日本文化という概念がますます希薄になる中、強固なアイデンティティを感じさせてくれる、素晴らしいアルバムが登場した。

 

 

 

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■ ストリーミング/ダウンロード

https://aus.lnk.to/Eau


■ リリース詳細

https://emrecords.shop-pro.jp/?pid=188331291

 


ロンドンの四人組、Dry Cleaning(ドライ・クリーニング)が「Let Me Grow and You’ll See The Fruit」をリリースした。


「Let Me Grow and You’ll See The Fruit」には、BULLYACHE が振り付けを担当した別のダンスビデオが付属しており、今回はシカゴを拠点とする実験的なジャズおよびメタルミュージシャン、ブルース・ラモントが主役を務めています。ラモントのサックスは「Let Me Grow…」の大部分で聴くことができます。


Secret Love は、フロントマンのフローレンス・ショー、ギタリストのトム・ダウズ、ドラマーのニック・バクストン、ベーシストのルイス・メイナードの深い友情をこれまでで最もよく表現した作品です。


ロンドン南部の 4 人組は、ロックの前衛的な地位を確立し、80 年代初頭のアメリカのパンクやハードコアに見られたレーガノミクス的なパラノイアを、キース・リチャーズの乾いたストゥート、ストーナー・ロック、 ディストピア的な退廃、遊び心のあるノーウェーブ、牧歌的なフィンガーピッキングを融合させた。


一方、フローレンスの歌は、バンドメイトたちのサウンドスケープに細心の注意を払って調整されており、ローリー・アンダーソンからライフ・ウィズアウト・ビルディングズのスー・トンプキンスに至る、スポークンワードアーティストの系譜に彼女を位置づけている。


「Let Me Grow and You’ll See The Fruit」は、先行リリース曲「Cruise Ship Designer」と「Hit My Head All Day」に続く、次期アルバム『Secret Love』からの3rdシングル。ボーカル兼作詞家のフローレンス・ショーは「この曲は過度の集中と孤独について。日記のような告白的で、意識の流れのスタイルで書かれた作品です」と語っている。


「Let Me Grow and You’ll See The Fruit」


新曲発表と同時に、ドライ・クリーニングが北米ツアー日程を来年へ延期せざるを得ないことが明らかになった。バンドはこの決定について声明を発表した。


「本日『Let Me Grow…』を皆様と共有できる喜びとは別に、重い心で重要な知らせをお伝えしなければなりません。2026年1月/2月の米国ツアーを5月に延期するという苦渋の決断を下さざるを得ませんでした。これは複数の要因によるもので、特に現代のツアーを支配するますます厳しい経済的要因が大きな理由です」


「幸いにも、当初の公演の大半は日程調整が可能となり、ご希望の方には全チケットを有効とさせていただきます。ご希望でない場合は払い戻しにも対応いたします。残念ながら、旅程短縮の影響で全日程の調整が叶わなかった公演もございます。払い戻しは購入場所にて承ります。私たちは可能な限り早く皆様の前で演奏できるよう全力を尽くします。皆様のご理解と変わらぬご支援に心より感謝申し上げます。愛を込めて、D.C」


今年6月にnaïveレーベル移籍後第1弾となる初のソロ・ピアノ・アルバム『ソロ:ミニチュアズ&テイルス』を発表したばかりのシャイ・マエストロ。リリース・タイミングには4都市、全5公演に及ぶジャパン・ツアーを開催したことも記憶に新しい。そんな彼が、早くも来年3月に更なる新作『ザ・ゲストハウス』をリリースする。この度、アルバムからのサードシングル「Moon of Knives」が配信スタートした。


・『Moon of Knives』配信中!

Listen: https://shaimaestro.bfan.link/moonofknives


同楽曲についてシャイはこう語る。「この楽曲のタイトルは、スペインの詩人フェデリコ・ガルシア・ロルカの世界へのオマージュなんだ。彼の描く月のイメージは、長年僕を魅了し続けてきた。彼の作品において月は決して受動的ではない。鋭く、象徴的で、知性すら感じさせる。月は真実を明かすこともあれば脅威となり、照らすこともあれば傷つけることもある。その二面性が、この音楽にぴったりだと感じたんだ」


『Moon of Knives』は古きと新しきをつなぐ架け橋となる1曲。スペインに移住後間もないころに作曲したんだけど、作り出すというより受け継がれたかのようなメロディから生まれたんだ。僕のフラメンコへの長年の愛と敬意から、パルマス(このジャンルを駆動する打楽器的な手拍子)が序奏部のリズムの核となった。ハーモニー的には中東の色彩を取り入れており、以前のより広がりのある作品とは一線を画している。


「パリでのレコーディング時、カルテットは皆ヘッドホンから流れるパルマスの音を聴きながら演奏したんだ。これが推進力となり、グルーヴを研ぎ澄まし、メンバー間の相互作用を引き締めた。その結果、ゆっくりと流れる心地よいメロディと、その背後にある落ち着きのない鋭いリズムとの間に、一種の緊張感が生まれたんだ」


早速『Moon of Knives』のオーディオ・ビデオが公開されているので、是非チェックしてほしい。


『Moon of Knives』



Youtubeでのご視聴:

https://www.youtube.com/watch?v=b5XIx06s_-M



5歳でクラシックピアノを始めたシャイ・マエストロは、8歳の時にキース・ジャレットやオスカー・ピーターソンの音楽を通じてジャズに出会う。19歳でベーシストのアヴィシャイ・コーエンのトリオに参加し、名盤『Gently Disturbed』の共作や世界中での演奏を経験した。2011年には自身のトリオを結成し、これまでに6枚のアルバムを発表。現代ジャズにおける唯一無二の存在としての評価を確立した。


来年3月発売のニュー・アルバム『ザ・ゲストハウス』には、現代の音楽シーンを牽引する超注目アーティストが多数参加している。


アメリカの歌手で今年のグラミー賞2部門にノミネートを果たした「最先端ジャズ・ヴォーカリスト」とも称されるマイケル・マヨをはじめ、22歳の若さで名門ブルーノートからデビューし、ファースト・アルバム『Omega』がニューヨーク・タイムズ誌の「2020年No.1ジャズ・アルバム」に選出された新世代を代表するサックス奏者、イマニュエル・ウィルキンス。


ジェイコブ・コリアーのツアー・バンドに参加、ジャンルを超越した音楽性でクインシー・ジョーンズらに認められる最注目シンガー・ソングライターにしてマルチ・ミュージシャンの''MARO''ことマリアナ・セッカ。そしてさらに、アロン・ロトリンガーは、古き良きR&Bとフォークからアート・ロック、アンビエントなどからの影響を見事に融合した音楽スタイルが魅力の歌手、ソングライター、マルチ器楽奏者にしてプロデューサーだ。


アルバムからはすでに収録曲の「The Time Bender 」/「Nature Boy - ft. Immanuel Wilkins」も公開されている。



【アルバム情報】



アーティスト名:Shai Maestro(シャイ・マエストロ)

タイトル名:The Guesthouse(ザ・ゲストハウス)

発売日:2026年3月6日(金)

品番:BLV9177F (CD) / BLV9178F (LP)

レーベル:naïve records


<トラックリスト> 

1. The Time Bender 

2. The Guesthouse 

3. Nature Boy - ft. Immanuel Wilkins

4. Gloria - ft. MARO 

5. Moon of Knives 

6. Strange Magic ft. Michael Mayo 

7. Refuge 

8. GGiʼs Metamorphosis 

9. Sleepwalking Roses 

10. A Little Thank You Note 

11. The Lion And Me ft. Alon Lotringer

12. The Guesthouse’s Old Piano



・アルバム配信予約受付中!

https://shaimaestro.bfan.link/theguesthouse


・最新シングル「Moon of Knives」配信中!

https://shaimaestro.bfan.link/moonofknives


・セカンド・シングル「Nature Boy - ft. Immanuel Wilkins」配信中!

https://shaimaestro.bfan.link/natureboy


・ファースト・シングル「The Time Bender」配信中!

https://shaimaestro.bfan.link/thetimebender



【バイオグラフィー】

1987年、イスラエル生まれのジャズ・ピアニスト。5歳からクラシック・ピアノ、8歳からジャズの演奏をスタートさせ、テルマ・イェリン国立芸術高等学校でジャズとクラシックを学び、その後ボストンのバークリー音楽大学へ入学。2006年からはイスラエル・ジャズ・シーン確立の立役者の一人であるベーシストのアヴィシャイ・コーエン(b)のグループに参加し注目を浴びる。2017年には自身のバンドで東京JAZZのメイン・ステージで演奏した他、これまでに度々来日公演を行なっている。2026年3月には最新アルバム『ザ・ゲストハウス』をリリース予定。



千葉県出身のシンガーソングライター、カジヒデキさんの2025年最後に贈る新曲「みんなでサンタにキスをした!」は、ちょっぴりジャジーでハートウォーミングなクリスマス・ソング。アーティストからのグレートなクリスマスプレゼントです。年末にかけてじっくりと浸りたい楽曲です。


同楽曲は、クリスマス・イヴのパーティーが終わった後、サンタさんからのクリスマス・プレゼントにまつわるほっこりしたストーリーの楽曲です。ピアノに堀江博久、フルートにNARI、ドラムに柿澤龍介、ヴァイブラフォンに上田修平が参加しました。ミュージックビデオも同時に公開されています。下記よりご視聴ください。


▪️カジヒデキ「みんなでサンタにキスをした!」(HIDEKI KAJI「WE ALL KISSED SANTA CLAUS」)



Digital | BBC021 | 2025.12.10 Release | Released by BLUE BOYS CLUB | AWDR/LR2


配信リンク:

[ https://ssm.lnk.to/WeAllKissedSantaClaus ]



▪️カジヒデキ HIDEKI KAJI - みんなでサンタにキスをした! WE ALL KISSED SANTA CLAUS (Official Audio)



Youtubeでのご視聴:

[ https://youtu.be/ruVakUotFm4 ]


作詞、作曲| カジヒデキ

プロデュース| カジヒデキ、堀江博久


カジヒデキー |Vocal, Acoustic Bass, Acoustic Guitar, Chorus

堀江博久ー |Piano

NARI |Flute

柿澤龍介 |Drums

上田修平 |Vibraphone


レコーディング| 上田修平、猪爪東風

ミックス、マスタリング| 上田修平



カジヒデキ:


千葉県富津市出身の作曲家/シンガーソングライター。富津市観光大使を務める。1997年1月に発表した1stアルバム「MINI SKIRT」では、世界的なブームになる直前のスウェディッシュ・ポップの要素を取り入れ、30万枚を超える大ヒットを記録するなど、90年代の渋谷系を牽引した。


その後もトーレ・ヨハンソン、エッグストーン、パステルズ、ベルトラン・ブルガラらと制作した作品を発表するなど自身のルーツとなるネオ・アコースティックをベースに音楽的な領域を拡げている。


今年7月には4曲入りEP「START A SUMMER」をリリース。最新アルバムは昨年4月にリリースした「BEING PURE AT HEART~ありのままでいいんじゃない」


▪️ REVIEW:   カジヒデキ - 『BEING PURE AT HEART』  最も純粋なポップスの響き

▪️シャンソンとシャノワール フランスの大衆音楽の始まり 

現代のシャ・ノワール 

フランスの歌謡形式であるシャンソン、そして演劇の形式であるレビューは、フランスで始まり、日本にも伝わり、戦前から戦後にかけての日本音楽に重要な影響を与えた。レビューは宝塚歌劇で昭和初期に取り上げられ、軽演劇の重要な系譜を担うことになった。また、シャンソンの方も、日本歌謡にごく普通に組み込まれ、戦後には、シャンソン喫茶などがオープンし、空前のブームとなった。今回は、フランスの大衆音楽であるシャンソンの歴史について考察する。

 

シャンソンの歴史は思ったより古い。最初の舞台となったのが、パリ北部のモンマルトルの一角にある芸術キャバレーである。ここには、貴族から庶民まで幅広い階級が足繁く通い、音楽や食事を心から楽しんだ。また、ここには、風刺的、嘲笑的な文化が存在した。サロン文化を引き継いだこのキャバレーには、作家、詩人、音楽家、画家、漫画家などが訪問し、文化の礎を作った。


詩を愛してやまないワイン商人、ルドルフ・サリスが、84番街ロシュシュアールに最初の店をオープンする。サリスが、放棄された土地を訪れたとき、街灯のすぐ近くにいた痩せた黒猫を見かける。黒猫はまるで、かれのことを歓迎しているように見えた。そこで、エドガー・アラン・ポーの物語にちなんで、彼は、店の名前を思いついた。その名もル・シャノワール(黒猫)。

  

シャ・ノワールは、オープン当初から大変な盛況ぶりであった。著名人も詰めかけた。シャルル・クロス、アルフォンス・アレ・シュタインレン、ロートレック、そして、シャンソンの代表的な歌手、アリステュード・ブリュアン、そしてカフェ・コンセール、スカラで商業的に大成功を収めるイヴェット・ギルベールなどがいた。ギルベールは回想する。「店で見つかった一匹の老いた黒猫が、キャバレーに彼の名をつけた。店ではこの猫はマスコットのようなものだった」 

 

▪風刺的な文化と週刊誌の刊行

Le Chant Noir : 1886年9月1日の発行(コピー) 


このキャバレー「黒猫」の名声を高めることになったのが、文学や風刺を中心とする同名の週刊誌である。「Le Chat Noir」は店が開店した翌年の1882年から発行された。

 

雑誌とキャバレー''黒猫''からは、「ベル・エポック」、「アール・ヌーヴォ」など、重要な芸術運動が台頭した。ここでは、階級を問わず、一般的な市民が、テーブルで飲んだり、話したり、音楽を聴き、新たな文化や着想が生まれる拠点になった。この雑誌にも、有名な作家が協力、参加していた。アルフォンス・アレ、ガイ・ド・モーパッサン、ヴィクトール・ユゴー、エドモンド・ド・ゴンクール(後に、フランス作家の登竜門「ゴンクール賞」が設立される)、そして著名な作曲家も参加している。シャルル・グノー、ジュール・マセネなどがいた。

 

シャ・ノワールは商業的に成功を収めた。ルドルフ・サリスはほどなく、シャノワールをモルマントルのラヴァル通りに移転させた。現在のヴィクトル・マッセ通りにある三階の建物への移転。それは、建築的にも、黒猫の威光を象徴していた。ピザンチンの柱、二匹の猫の装飾、そして煙突、黒猫がガチョウを怖がらせる建築的なモチーフ。その建築的な装飾やデザインの各所には、モルマントルの精神であるブルジョワに対するウィットに富んだユーモアが効いていた。店が移転した後も、アマチュアの芸術家や作家が続々と集う。シャンソンを始めとする諧謔味のある音楽を歌手が歌ったほか、画家や作家も毎晩のようにキャバレーに集った。モーリス・ドニ、エドモンド・ハラウクール、ジャン・リュシュパン、ジョルジュ・クールリーヌなど。

 

▪最初の人気歌手 アリスティード・ブリュアン(Aristide Bruant)と現実主義のシャンソン


ル・シャ・ノワールから登場した歌手の中で、シャンソンというジャンルの普及に貢献したのが、アリスティード・ブリュアン(Aristide Braunt)という人物である。彼は、音楽家としてだけではなく、キャバレーのオーナーを務めたという点で、実業家としての才能にも恵まれた。彼のソングライティングの形式は、労働者階級と社会的な異端者の苦難をスラングとして描くという趣旨であった。ブリュアンはまた、プロレタリアの表現と商業的なエンターテインメントを融合させて、フランスのポピュラー音楽やキャバレーの進化に重要な影響を及ぼした。上記のロートレックが描いたイラストの絵画は、この歌手の象徴的なイメージを形作ったと言える。

 

ブリュアンは、カフェ・コンサートで研鑽を積んだ後、1883年にル・シャ・ノワールに拠点を移して、労働者階級の観衆のために歌を歌った。シャ・ノワールでは、パリの下層階級での実体験から、都市の貧困や疎外、厳しい現実を描き、現実主義のシャンソンへと転換を図った。これは以前の彼自身の生活からもたらされたもの。普仏戦争。兵役。パリに戻った後も、雇用の不安やブロレタリア階級の厳しい生活に直面した。パリの下層での見習いと社会に対する観察の時代は、彼を郊外の生の方言と生存競争へと駆り立てた。また、労働者階級の窮状を疎外された人々のリアルな声として表現するという、彼自身の音楽的な中核を形成することになった。

 

ブリュアンは、生々しいスラングを積極的に使用し、ストリートミュージックのような音楽を生み出した。歌手としてのデビューは良い評判を呼び、ル・シャ・ノワールの名物的な歌手の地位を獲得。恩返しとばかりに、この店の名にあやかる曲も作った。ほどなくして、ブリュアンは「A La Mie Du Chat Noir(黒猫の周辺)」を作曲し、この店の公式アンセムとなる。しかし、歌手は、そういった宣伝的な音楽のほか、鋭い社会風刺も展開させた。貧しい人々や追放された人々のいきいきとした暮らしを歌い、社会的な分裂を痛烈に批判し、身近な貧困問題について我が身のことのように歌った。他にも、彼は、ゾラの自然主義文学に触発され、娼婦、やくざ者、誤ったフランス語などを使い、独自のリアリズムの音楽形式を確立させた。ブリュアンの文化形態は、それ以降のピカレスク文学やフィルム・ノワールへの影響も指摘出来る。

 

ル・シャ・ノワールが1885年により大きな建物に移転した時、ブリュアンは、創業者のルドルフ・サリスと袂を分かつ。同年、アリスティードは、黒猫の跡地となる土地を所得し、1000フランを借受け、新しいキャバレー、「ル・ミルリトン」をオープン。そして、パトロン文化を批判し、古典的な芸術形式を嘲笑するポピュリストとしての態度を押し出した。ル・ミルリトンはすぐさま、シャ・ノワールの後発的なコミューンとして認知されるようになり、パリのアンダーグラウンドのカルチャーを形成していくことになった。彼は、黒猫の反骨精神を強め、店を訪れた貴族や小市民、外国からの観光客を強烈に罵倒する。これは抽象主義の画家の活動に象徴されるインディペンデントの活動形式にも何らかの影響を及ぼしたことが推測される。ブリュアンは、オリジナルの黒猫との差別を図るため、独自の週刊誌を立ち上げ、印刷メディアの展開や、店でのライブパフォーマンスを通じて新しいビジネススタイルを作り上げた。

 

▪イヴェット・ギルベール(Yvette Guilbert)とシャンソンの普及  


20世紀を目前にして、パリでは続々と新しい音楽文化が花開き、映画文化の造出への足がかりを作った。 1892年に入ると、同じく、モルマントルでは、歌が聞けるカフェ・コンセールが人気を博す。

ここからイヴェット・ギルベール(Yvette Guilbert)という人気歌手が登場する。まさしくギルベールは時代に要請されて出てきた音楽家で、レビューと呼ばれる歌と芝居を融合した芸術形態を国内に普及させた。ギルベールのコンサートは、スカラで連日満員となり、大反響を呼んだ。シャンソンを小さな芝居として表現した「生娘たち」の歌詞が検閲により削除してされると、彼女はその最初の歌詞を歌う以上にエロティックなイメージで縁取ってみせた。その後のシャンソンやレビューのこのイメージは、ギルベールによるところが大きい。上記の写真は原初的なイベントフライヤーである。

 

新しいカルチャーは、好景気や経済的余裕や余剰の部分から登場する。20世紀のパリは幸運にも、その条件が揃っていた。イギリスに続いて、産業革命が本格化していく中、パリは好景気に湧き、街じゅうに歌や音楽が溢れた。その余剰の部分が溢れた時、20世紀のフランスの大衆文化が始まり、シャンソンが生み出された。カフェ文化のル・シャ・ノワール、アリスティード・ブリュアン、イヴェット・ギルベールも、そんな所から登場した。そして、そこには独特なユーモアと反骨精神があった。これが、フランスのエスプリ精神を形成したことは想像に難くない。その後、日本にもフランス文化が入ってきて、シャンソンが戦前から戦後にかけて歌謡に普通に取り入れられた。これは、J-POP、邦楽などというワードが出てくるはるか昔のはなしである。それ以降の日本人のヨーロッパへの漠然とした憧れは、フランス/パリの文化の流入に負うところが大きいように思える。


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2008年にリリースしたシングル「New Soul」がApple MacBook AirのCMに起用され、ビルボード・ソング・チャート9位をはじめ、世界的で大きなヒットを記録し、一躍スターとなったパリ在住のシンガー、ヤエル・ナイム。これまでのアコースティックなサウンドから一転、エレクトロニックでありながら「電子と感情」が共鳴するサウンドを追求した「La fille pas cool」をシングルリリースした。同楽曲は日本の発売元がイチオシのトラック。新作への期待感を盛り上げている。


「La fille pas cool=ダサい女の子(The uncool girl)」と題された本作は、ミニマルなエレクトロニック・ソウルを土台にしながら、途中で一気に広がりを見せるメロディックなバラード。ヤエルの内面で起きた変化、そしてこれまで以上にパーソナルで深い作品世界の新たな一面を映し出している。


フランス語で「私は何度も怖がっていた/運動も得意じゃない/戦いも向いていない/これが“できない私”/じゃあ私は何者なの?/私は“ダサい女の子(The uncool girl)”」と綴った歌詞は、自信の内面に向き合っているだけではない。周囲からのプレッシャーを拒み、「ありのままの自分でいること」を許すための、すべての女性への希望としなやかな強さのメッセージでもある。


2026年2月にリリース予定のアルバムには、2025年にリリースした新曲「Dream」「Multicolor」も収録される。ヤエルの進化し続ける多彩な表情を存分に堪能してほしい。



▪️ヤエル・ネイムによるコメント:


この曲のメロディは、まさに歩いていたときに突然降りてきたの。その瞬間ちょうど、私はSNSへの依存や、「もっと完璧に見せなきゃいけない」という常にかかるプレッシャーについて考えていたの。

私は自分の「影の部分」と向き合う必要があった。ずっと見ようとしなかった、自分の嫌な部分にね。

そして気づいたのは、自分の「光の部分」とも和解しなければならなかったということ。人々は私の明るい曲を愛してくれるけれど、その裏にある部分は見ようとしなかった。その違いこそが長い間私を閉じ込めていたの。


Yael Naim  「La fille pas cool」- New Single


■ アーティスト名:Yael Naim(ヤエル・ナイム)

■ 曲名:La fille pas cool (ラ・フィーユ・パ・クール)

■ レーベル:ASTERI ENTERTAINMENT

■ 形態:ストリーミング&ダウンロード

■ URL:https://asteri.lnk.to/yaelnaim_lafillepascool_jp  



Yael Naim:


フランス=イスラエル出身のシンガーソングライター/ディレクター。2001年にフランスでアルバム・デビュー。2008年に発表した「New Soul」がApple MacBook AirのCMに起用され、全米ビルボードHot 100でトップ10入り。世界各国でチャート1位を獲得し、国際的に注目を浴びる。


本国フランスでは、フランスのグラミー賞とも例えられる権威ある音楽賞 ”ヴィクトワール・ド・ラ・ミュージック” を3度受賞し、フランス芸術文化勲章オフィシエに叙任。ブラッド・メルドーやストロマエら多彩なアーティストと共演している。


また日本国内でもその活躍は広く知られており、2009年「PICNIC」が NISSAN cube のCMソングに起用。2012年にはTVドラマ「最後から二番目の恋」の劇中で「Go to the River」(アルバム『She was a boy』収録)が使用され、大きな話題となった。


音楽だけでなく映像や絵画でも活動し、自身のドキュメンタリー映画『A New Soul』や自伝『Une chambre à moi(私の部屋)』を通じて「女性」「自由」「平和」をテーマに表現を続けている。その存在は、音楽シーンにおいて25年以上にわたり“光”を放ち続ける、現代を代表するアーティストのひとりである。

Taylor Dupree ・ Zimoun 『Wind Dynamic Organ, Deviations』


 
Label: 12K
Release:2025年12月5日
 
 
 
Review
 
 
12kはニューヨークのインディペンデント・レーベルで、テイラー・デュプリーによって1997年に設立された。それ以降、世界的にも希少なアンビエントに特化した実験音楽レーベルとして名を馳せてきた。実験音楽やアンビエントに携わる者にとっては、羨望の的となるレーベルとも言えるでしょう。


スイスのアーティスト、Zimoun(ジモン)、そして、レーベル・オーナーによる共同アルバムは、Tim Hecker(ティム・ヘッカー)を彷彿とさせるアブストラクトなアンビエントを中心とした難解なアルバムとなっている。しかし、同時に、ある程度の聞きやすさが担保される作品ではないか。
 
 
全般的なアンビエントの制作のスタイルとしては、アナログ/デジタルに依らず、シンセサイザーを用いたり、ギターからテクスチャーを生成し、リサンプリングのような手法でノンビートとして抽出したり、フィールドレコーディングから組み立てたり、また、ボーカルアートのような形式を採るものなど、多岐にわたる。今作は、スイス/ベルン大聖堂に設置されているオルガンが録音に使用されたという。パイプオルガンのような楽器は、鍵盤楽器と吹奏楽器の両方の性質を兼ね備え、これらの奏法の性質を活用している。『Wind Dynamic Organ, Deviations』に関しては、吹奏楽器の性質を強調させて、オルガンの名にあるように、風のような効果を発生させている。


本作は、アンビエントを未来の前衛音楽として解釈させるにとどまらず、無限に拡大する音響を、録音としてどのポイントから収めるのか、その収めた音をどのように聴かせるかに焦点が置かれる。要するに、レコーディング/マスタリングにおける壮大な実験が行われたとも言えるかもしれない。
 
 
 
本作は、六つの変奏曲/組曲の形式により展開される。全般的には、アンビエントのシークエンスをトラックの背景に敷き詰め、その中で、メインの楽器となるオルガンのトーンや音のコントラストがどのように変化していくかの実験が試みられている。


『Ⅰ』は、Tim Hecker、畠山地平に類するドローンノイズが敷き詰められ、 オルガンがあるポイントから現れたり、また、しばしば消えたりというように、カウンターポイントのような複声部の形式が敷かれている。


その音響は、工業的な響きを形作り、無機質な音の連なりを生み出す。これは全体的に、現代的な建築を目の当たりにしたときのような、スタイリッシュな雰囲気を添える。こういった都会的な響きは、William Basinski(ウィリアム・バシンスキー)のドローンテクスチャーを彷彿とさせる。またトラック全体には、微細なノイズが敷き詰められ、クリアトーンとノイズが混在している。これらの本来であれば、相反する音を組み合わせ、混沌とした音の渦を作り出す。どうやって作るのかといいたくなるほど。
 
 
 
また、「Ⅱ」では、ドローン/ノイズの性質がさらに強調付けられる。ホワイトノイズやヒスノイズといった本来のデジタル録音であれば除去される音を強調させ、本来は醜悪とされる概念の向こうに美しさを投射する。


さながら、それは1つの考えの転換のようなもので、2つの対極に位置する考えが相似する概念であることを伺わせる。そして、本来であれば倦厭されるノイズの背景に、それとは対象的に、古典的なオルガンの音色を配置し、天上的な楽の音を登場させる。オルガンの演奏は、トーンの変調を交えながら、色彩的なコントラストを作り出す。この絶妙なコントラストは、作曲論や方法論に終始しがちな昨今のアンビエントに、新鮮なニュアンスをもたらしている。
 
 
「Ⅲ」では、同じ類いのノイズを用いながら、風や嵐のような鋭い音の効果を持つアンビエンスを強調させている。しかし、同じような音楽的な手法を用いようとも、全体的な印象は、きわめて対照的となっている。


この曲では、ゴシック・メタルのようなダークな雰囲気、まるで空を雲が覆い、情景が少しずつ移り変わっていくような時間の経過が含まれる。「Ⅰ」に見い出せるカウンターポイントが生じ、オルガンの持続音が向こうに現れたかと思えば、また立ち消え、別の方向から異なる持続音が出現する。
 
 
 「Ⅳ」のイントロでは、シネマティックな音楽がイントロに配置される。抽象度としては、前の三曲よりもはるかにこちらの方が高い。まるで印象派のような絵画的な音のコントラストは、全般的にはモノトーンにより表出されるが、その中で微細な音の変調を織り交ぜ、水墨画のような音の玄妙な世界を作り出す。アブストラクト・アンビエントの真骨頂のようなトラックである。現代音楽や実験音楽の極北とも呼べる手法により、アヴァンギャルドの最前線を行く。


しかし、ドローン/アンビエントの手法は、必ずしも恣意的な内容ではなく、計算され尽くしている。全体的な音のパレットの中で、印象音楽のような音のマテリアルが配置され、茫漠とした荒野のような情景の中に豆粒のような何かが動き回るように、副次的な音楽が展開される。それは一つの音の世界の扉を開くと、また、もう一つ神秘的な世界が現れ、どこまでも果てしなく、その世界が続いていくかのような奇妙な感覚をおぼえる。こういった無限を感じさせる音楽はアンビエントならではのもの。
 
 
 「Ⅴ」では、こもった音像を駆使し、外側に放射される音響ではなく、それとは対象的に内側に向かう音響を強調し、内省的なサウンドが繰り広げられる。フィルターのような装置を用いながら、全体的な音像をわざと曇らせ、ある意味では、バシンスキーの系譜にあるような、音響を解体するような試みが行われる。これは「ミュージック・コンクレート」の一貫とも解釈出来る。


しかし、他の曲と同様に、全般的なハーモニー、調和、そして均衡は維持されている。ぼんやりとしたシークエンスの中でも、なにかしら二人の製作者の美学のようなものが揺らめき、せめぎ合いながら、この曲の全体的なバックグラウンドを支えている。こういった曲は、ノイズ/ドローンの名手、ニューヨークのプロデューサー、ラファエル・イリサーリの手法に準じている。また、曲の後半では、オルガンの持続音が徹底して強調され、このアルバムの核心のようなポイントが現れる。美しさとも醜さともつかない、一般的な価値観を超越したイデアを提示する。二項対立の音楽だ。
 
 
作曲的な側面としては、クローズを飾る「Ⅵ」が傑出している。この曲では、ミニマリズムの音形を反復させ、アシッドハウスのようなエレクトロニックに手法を駆使し、その中で、オーボエのような木管楽器の音色を登場させる。一般的には、ジャズとアンビエントをクロスオーバーさせた曲で、依然としてアンビエントのウェイトが強い。全般的なトラックのマスタリングも秀逸で、微細なディレイや波形の反復を用いつつ、特異な音響を得ることに成功している。
 
 
『Wind Dynamic Organ, Deviations』は、12kらしいアルバムで、生の録音とプロデュース的な手法が見事に合致し、世にも稀な実験音楽が登場したと称せる。アンビエント/ドローンの音楽は、あらかじめ計画された構想や反復的なストラクチャーから、予期せぬ”偶然の要素”が出てくる瞬間が一番楽しい。実のところ、本筋や本道からそれた時、予想外の風景に出会い、未知の魅惑的なサウンドスケープが出てくる。合理主義とは対極にある本物のアヴァンギャルド精神が貫かれる。偶発的な音の発生を散りばめたチャンスオペレーションの要素が、本作の六つの変奏曲を通じて、ひっきりなしに出てくる。アンビエント/ドローンの面白さを改めて体感するには、うってつけの作品と言えるのではないでしょうか。
 
 
 
86/100 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
Details:
 

 
スイスのアーティスト、Zimoun(ジモン)は、スイス/ベルンに設置されたユニークな楽器「ウィンド・ダイナミック・オルガン(プロトタイプIII)」と共に過ごす光栄と喜びを得た。過去数年にわたり、彼はこの楽器を探求し録音する機会を与えられたのだった。 結果、2枚のアルバムが生まれた。ソロ作品『Wind Dynamic Organ, One & Two』(12k2061)と、 Taylor Dupree(テイラー・デュプリー)とのコラボレーションによる本作『Wind Dynamic Organ, Deviations』である。


ジモンはこの体験を語る。

「ダニエル・グラウスとそのチームが開発した真に傑出した驚異的な楽器『ウィンド・ダイナミック・オルガン プロトタイプIII』と、長期にわたり定期的に関わる素晴らしい機会に恵まれました」


「従来のオルガンとは異なり、各パイプへの風圧と空気量を能動的・継続的・動的に形成できるため、音色は単にオンオフされるだけでなく、発音中に変調されます。 これにより、ダイナミックな音の進化を操作したり、実際の音色の境界領域で音を生成したり、純粋な空気ノイズやきらめくさざめきを統合することが可能になる」


「鍵盤のストロークは音の立ち上がり(アタック)を変え、ストップを変更せずに、明瞭にアクセントの効いた音形から溶け合った音の帯へとシームレスに移行させる。こうして、現在の風圧に反応する、空気感あふれるノイズ・トーンのテクスチャーや、ちらつきながら振動する倍音の雲が生まれた」


『Deviations」は二人のアーティストがオルガンを出発点として、楽器の音の特性を掘り下げ、テクスチャーを強調/変容させ、新しさを作り出すための変奏を展開。オルガンはスイス・ベルン大聖堂に設置。スイス国立科学財団の支援を受け、オルガニスト兼作曲家ダニエル・グラウスの指導のもと、ベルン芸術大学(HKB)の研究プロジェクトの一環として開発・製作された。 


オランダのピアニスト/作曲家、Joep Beving(ユップ・ベヴィン)が新作アルバム『Liminal』のリリースを発表した。ベヴィンはニルス・フラームのレーベル、Leiterからもリリース経験があるが、今回はドイツグラモフォンからの発売となる。


ギヨーム・ロジェの著書『ワイルド・ルネサンス』に触発された本作『リミナル』は、人間の活動と自然界のより緊密で共生的なつながりを求める声に応える。全15曲は一体となり、不確実性の領域へと広がっていく。  


「アルバム全体を通して、制御と直感の絶え間ない対話があります」とベヴィンは語る。「それは中間領域、つまり意味がまだ形成されつつある境界領域を反映しています」


待望のニューアルバム『Liminal』は2026年3月20日、エコ・ヴァイナル版(2枚組LP)を含む全フォーマットでリリースされる。先行曲「We are here but to make music and dance with all the obtaining forces」は2025年12月5日よりデジタルで配信済み。


また、『Wild Renaissance』は1月23日にビデオ付きでリリースされ、『When humans do algorythms』は2月20日に、『Ida』(こちらもビデオ付き)はアルバムと同日にリリースされる。ヨープ・ベビングは2026年5月にヨーロッパツアーで『Liminal』をライブ演奏する予定だ。


フランスの学者ギヨーム・ロジェは芸術と生態学の関連性を専門とする。 2025年に英語で出版された彼の著書『ワイルド・ルネサンス』は、オランダ人アーティスト、アイリス・ヴァン・ヘルペンによってベヴィンに推薦された。人間が自然を支配すべき対象ではなく、創造のパートナーとして捉え、アーティストやデザイナーが重要な役割を担う世界像は、ピアニスト兼作曲家の心に響き、21世紀のルネサンス運動の一部となり得る新作アルバムの創作へと駆り立てた。


「この音楽で」とベヴィンは説明する。「人間中心の思考から離れ、自然から切り離されるのではなく『自然と共に』創造する道へと歩みを進めながら、大いなる全体像における私たちの小さくも意味ある位置を探求したかった」 こうして『アルカディア』や『ヘテロトピア』といった楽曲が丹念に練り上げられる一方、他の楽曲は「自然の導きのように――移ろい、消え、沈黙へと戻る」形でベヴィンのもとに訪れた。 


この二つの流れの間に、アルバムの核心となる『人間がアルゴリズムを行うとき』が位置する。ここでは反復的なパルスが軽やかに彩られ、「人間とコンピューターが一種のダンスで出会う」様子が描かれる。意外にも、テクノロジーさえもが私たちを自然と再接続させる手助けとなり得るという示唆が込められている。


ミュージシャンによれば、『Liminal』は「対立を超えた世界を体験する招待状」である。人間と自然、人と機械、論理と神秘。音は出会いの場となり、秩序と野性、構造と自由、形と消滅の間の境界線となる。


「作曲とは支配することではなく調和すること、野生の声を我々を通して語らせることである」-Joep Beving



Joep Beving 『Liminal』


Label: Deutsche Grammophon

Release: 2026年3月20日



作曲家兼ピアニスト、ユップ・ベヴィンが新作アルバム『リミナル』を発表した。本作では、より広範な人間を超えた生態系における人類の役割を探求し、自然との分離ではなく結びつきを模索している。  


本作はギヨーム・ロジェ著『ワイルド・ルネサンス』に着想を得ており、増大する不確実性と旧体制の崩壊への応答として制作された。


 15曲のソロピアノ作品と電子音の一部が絡み合うこのプロジェクトは、境界領域に存在し、聴衆を現代的な作曲と内省的なサウンド・ポエトリーの間を漂う雰囲気ある旅へと誘う。二項対立を超えた世界を体験し、新たな共鳴を発見するよう促す。精密で意図的な作曲の瞬間と、音が有機的に進化するセクションが交互に現れ、制御と直感の境界線を曖昧にする。  


「このアルバムは二つの側面を行き来する。時に、私は音を最も純粋な形へと形作り磨き上げる。また、ある時は、音楽が自然の導きのように自ら流れ、移り変わり、消え、沈黙へと戻っていく。構造よりも繋がり、共鳴、変化が重要であり、建築よりも生態学に近い」とベヴィンは語る。 



アジアのヒップホップ/ポップアーティスト、Star2がニューアルバム『Lessons』をリリースした。これは若き日の自分への個人的な手紙として綴られた力強い新作プロジェクトだ。 タイ難民でありカレン族音楽コミュニティの牽引役である彼の楽曲群は、国際的な鼓動を響かせる。Eh La、Lil BK、heartbreaka、Shadow、RayRay、Lian2xら豪華なコラボレーターが参加。滑らかなメロディからストリートの荒々しさ、文化的な深みまで、各アーティストの声が新たな感情の層を加え、このプロジェクトを深く個人的でありながら世界的に共鳴する作品に仕上げている。


『Lessons』は、10代の混沌、失恋、誘惑を成長・集中・自己愛への青写真へと昇華させる物語だ。全編にわたり、彼は過去の過ちをありのままの正直さと苦労して得た自信で直視し、聴き手を「気晴らしから目的へ」「一時の高揚から長期的なビジョンへ」という旅へと誘う。 特に際立つフォーカス・トラック「Ohhhh!」では、Lil BKをフィーチャーし、催眠的なプロダクションと映画的なビジュアルを、見せかけの成功を貫くメッセージと結びつける。真の愛と、本当にそばにいてくれる人々なしでは、成功や贅沢は何の意味も持たないのだ。Star2はこう打ち明ける。


「年を重ねるにつれ、集中し、優先順位をつけ、犠牲を払うことを学ぶ。まず自分を愛し、愛を追いかけたり、自分にふさわしくない人を追いかけたりするのをやめることを学ぶんだ」 若い頃の自分に言いたいのは『夢を諦めるな。愛も人も、手っ取り早い金も追い求めるな。代わりに夢と最高の人生を追いかけろ』ということだ。結局、愛はプロセスなんだ。時には前に進まねばならない。愛は後から訪れることもある。人生は我々に忍耐を教える。それがおそらく最大の教訓だろう」



スター2の物語は、生き残り、勝利を掴んだ物語だ。彼と祖母はサンディエゴに渡り、極貧の中での再出発に直面した。 音楽は彼の支えとなり、悲しみを目的へと昇華させる手段となった。今日、その不屈の精神はソウルジャ・ボーイ、$tupid Young、モジー、MBNel、ルー・ケル、リル・ポッパ、フッドトロフィー・ビーノ、YSNフロー、マーマー・オソらとのコラボレーション、そしてTikTokで1500万回以上の再生回数へとつながっている。

 

▪️EN 


Asian hip-hop / pop artist Star2 just dropped his new album Lessons, a powerful new project written as a personal letter to his younger self. A Thai refugee and a driving force in the Ka-ren music community, this collection of tracks rings with an international heartbeat. The album features a dynamic lineup of collaborators including Eh La, Lil BK, heartbreaka, Shadow, RayRay, Lian2x, and more. Each voice brings a new emotional layer - from smooth melodies to street grit to culturally rich textures - making the project both deeply personal and globally resonant.


Lessons is about transforming the chaos, heartbreak, and temptations of his teenage years into a blueprint for growth, focus, and self-love. Across the project, he confronts past mistakes with raw honesty and hard-earned confidence, inviting listeners into a journey from distraction to purpose, from instant highs to long-term vision. The standout focus track, “Ohhhh!” with Lil BK, pairs hypnotic production and cinematic visuals with a message that shines through the flex: success and luxury mean nothing without real love and the people who truly stay by your side. 


Star2 confides, “As you get older you learn to focus and prioritize and to sacrifice. You learn to love yourself first and stop chasing love and stop chasing people who are not for you. I would tell my younger self, ‘Never give up on your dreams. Stop chasing: love, people, quick money. Instead, chase your dreams and your best life.’ Finally, love is a process. Sometimes we have to move on. Sometimes love comes later. Life teaches us to be patient. Which is possibly the biggest lesson of all.”


Star2’s story is one of survival and triumph. After the Burmese Army destroyed his village, he and his grandmother came to San Diego through a lottery, confronting extreme poverty while starting over. Music became his anchor, a way to channel grief into purpose. Today, that resilience has led to collaborations with Soulja Boy, $tupid Young, Mozzy, MBNel, Luh Kel, Lil Poppa, HoodTrophy Bino, YSN Flow, and MarMar Oso, and more than 15 million views on TikTok.



▪️Ohhhh!" ft. Lil BK

 


▪️Listen On Spotify:




 Star 2:


スター2はタイの難民キャンプで人生を始めた。ミャンマーのビルマ軍によるジェノサイドから逃れるため、村を焼き払われた彼はキャンプに身を寄せざるを得なかった。 キャンプでの抽選により、祖母とその4人の子供たちと共にサンディエゴへ移住し、新たな人生を歩み始めた。


著名なプロデューサー、チコ・ベネットの指導のもと、ソウルジャ・ボーイ、$tupid Young、モジー、MBNel、ルー・ケル、リル・ポッパ、フッドトロフィー・ビーノ、YSNフロー、マーマー・オソなど、数々の著名ラッパーとのコラボレーションを実現している。


 ツアーの合間には、YouTubeの人気シリーズ『Adventures of Star2』で自身の軌跡を記録している。アジア系アメリカン音楽界の重要人物として、Star2は心揺さぶる物語と魅惑的な映像を織り交ぜ、不屈の精神と上昇志向の物語を綴る。ハーパーズ・バザー・ベトナム、GQ、HotNewHipHop、Ones to Watch、BET、Lyrical Lemonadeなど、数々の著名メディアが彼の功績を称えている。


▪️EN

 

Star2 began his life in a Thai refugee camp where he was forced to flee genocide from the Burmese army in Myanmar who burned his village to the ground. A lottery in the camp brought him to San Diego with his grandmother and her four children, where he began a new life. 


Under the mentorship of esteemed producer Chico Bennett, his collaborations with acclaimed rappers include Soulja Boy, $tupid Young, Mozzy, MBNel, Luh Kel, Lil Poppa, HoodTrophy Bino, YSN Flow, and MarMar Oso to name a few. 


While not on tour, he documents his journey in the popular 'Adventures of Star2' series on YouTube. As an influential figure in Asian-American music, Star2 entwines heartfelt stories with captivating visuals, chronicling a tale of resilience and ascent. Esteemed platforms like Harper’s Bazaar Vietnam, GQ, HotNewHipHop, Ones to Watch, BET, and Lyrical Lemonade, among others, have celebrated his contributions.