ヘイリー・デイヴィスは、ローレル・キャニオンのソングライティング全盛期を彷彿とさせる数々のアーティスト――アレックス・アーメン、ドラッグディーラー、シルヴィー、サム・バートンなど――が活躍する、ロサンゼルスの魅力的なシーンに属しており、彼女自身も彼らのプロジェクトに数多く参加している。サイケデリック・フォーク・ポップや70年代のコズミック・アメリカーナのルーツに立ち返りつつ、ヘイリーのサウンドは、キャッチーなフックと壮大なコーラスをふんだんに盛り込んだ、現代のポップミュージックに対する中毒性のある独自の解釈だ。彼女はまさに、Z世代以降の世代のためのカーリー・サイモンと言えるだろう。その高揚感あふれる歌声の幅は、ジョーン・バエズ、キャロル・キング、エミルー・ハリスの間にある。


デイヴィスの成長物語であるこのデビュー作は、迂回されたインターチェンジの脇にある人けのないダイナーを舞台にしたタウンズ・ヴァン・ザントの物語のように展開する――親密で、映画的で、静かな大胆さを秘めている。


ヘイリー・デイヴィスは、キャロル・キングやジョニ・ミッチェルがソングライティングの概念を再定義した1970年代初頭の精神を受け継いでいる。そのタイムトラベル的な感性は、アルバムのタイトルトラックである「Wandering Star」で称えられている。ピアノが主導するこの曲は、切なさに満ちた瞑想的な楽曲であり、カレン・カーペンターの不気味な影を帯びつつ、輝かしくも切ないサブメロディーに支えられている。

 

「私は夢を追うために、家と慣れ親しんだすべてを後にしました。それは私がこれまでにした中で最も困難なことでしたが、最も重要なことでした」


デイヴィスは、サム・バートンやドラッグディーラー、アレックス・アメンらと共に、活気あふれる西海岸のシーンの中で居場所を見出しました。デイヴィスはこう語ります。


「誰もが心の奥底でささやく、天からの呼び声を持っていると信じています。その声に耳を傾ける決断は、不可能な選択のように感じられるかもしれません。少なくとも私にとってはそうでした。『放浪の星』であるには、大きな勇気も必要です。道に迷いながらも、前に進む意志を見出すことは、非常に困難なことなのです」


音楽コミュニティについて、デイヴィスは次のように語っている。「私たちは似たような音楽への深い愛を共有していますが、それぞれが独自の方法で創作に取り組んでいます。これまで私を信じてくれた人々に心から感謝しています。彼らがいなければ、これは実現しなかったでしょう。このアルバムは、苦労の末に生まれたグループの共同作業の結晶です。サム・バートンとバンドの皆に感謝します。彼ら一人ひとりが、今の私というアーティストになるまでの物語に、深く織り込まれているのです」


『Wandering Star』は、ヘイリーの人生、勝利、敗北、出会ったすべての人々、訪れた場所、そしてこれまでの道のりの集大成である。


『ローリング・ストーン』誌は、デイヴィスの過去の作品を「柔らかな色合いのローレル・キャニオン・フォーク・ポップ」と称賛してきたが、『Wandering Star』では、その音楽的視野はさらに広がっている。成熟した世界観と独特な歌声は、時にラナ・デル・レイやウェイズ・ブラッドを彷彿とさせ、グラム・パーソンズへのオマージュを紡ぎ出す。そのハイブリッドな要素は、自己省察に満ちた情熱的な楽曲「I Was Wrong」において、存分に発揮されている。


現代のポップスに対する新鮮なアプローチである『Wandering Star』は、耳に残るフック、高揚感あふれるコーラス、そして心に響くストーリーラインに満ち溢れ、聴く者を魅了する。ヘイリー・デイヴィスは、ポストZ世代のためのカーリー・サイモンとして登場した――その感覚は時代を超越しつつも、紛れもなく今を生きている。


デイヴィスはこう締めくくる。「何かの一部であると感じていても、私は自分のやり方で物事を進めている。友達もできたし、敵もできた。幸運に恵まれたこともあれば、失敗したこともある。アルゴリズムやフォロワーに振り回されないために、自分が誰なのかを忘れないことが大切だ……曲を書くことは、この世界で私にとって意味を成す数少ないことの一つ。それは、私が迷いながら歩む時の北極星のような存在だった」


ヘイリー・デイヴィスは、サンフランシスコから北へ約1時間のところにある、カリフォルニア州北部の小さな農業の町出身だ。幼少期、カントリー音楽のラジオ局「Froggy 92.9」に合わせて歌う母親の歌声が耳に響き、それがデイヴィスに歌うきっかけを与えた。両親は共にブルーカラー労働者だったため、ヘイリーは芸術を単なる趣味以上のものとは考えず、一生懸命働き、必死に努力するよう教えられてきた。


19歳で学校を中退し夢を追うようになったデイヴィスは、その大半をレストランでの仕事やダイブバーでのライブ演奏に費やし、できる限りいつでもどこでもレコーディングを行い、試行錯誤しながら学んでいった。LAの音楽シーンで仲間を得た後、デイヴィスは楽曲制作とレコーディングに取り組み、ついにデビュー・フルアルバム『Wandering Star』の楽曲をまとめ上げた。この作品は、愛、失恋、模索、発見、苦難、そして勝利の集大成となっている。


至福のバラード「Horns of Time」は、エミルー・ハリスを彷彿とさせる哀愁を帯びたコズミック・カントリーの色彩を紡ぎ出す。続く『Give Me a Rainbow』は、クレイロを彷彿とさせるローファイなフォークの夢想曲であり、まるで裏庭のポーチに腰掛け、自らのルーツに畏敬の念を抱く、目を輝かせたドリー・パートンをフィルターにかけたかのようだ。『ローリング・ストーン』誌は、デイヴィスの過去の作品を「柔らかな色合いのローレル・キャニオン・フォーク・ポップ」と称賛してきたが、『Wandering Star』において、彼女の音楽的視野はさらに広がっている。成熟した世界観と独特な歌声は、時にラナ・デル・レイやウェイ・ブラッドを彷彿とさせ、グラム・パーソンズへの賛歌を紡ぎ出している。このハイブリッドな要素は、自己省察に満ちた情熱が込められた『I Was Wrong』において、余すところなく発揮されている。


現代ポップへの斬新なアプローチである『Wandering Star』は、中毒性が高く、キャッチーなフック、高揚感あふれるコーラス、そして聴く者の心を揺さぶるストーリーラインに満ち溢れている。

 

 

Haylie Davis 『Wandering Star』- Fire Records 


 

ローリング・ストーン誌が名付けた「キャニオン・フォークポップ」という呼称は言い得て妙だ。ロサンゼルスのソングライター、ヘイリー・デイヴィスの音楽は、グランドキャニオンのような雄大な渓谷の風景を思いこさせる。その雄壮な音楽的な舞台を通じて、人生や感情、そして時間が流れていく。ゆったりとしているが、核心があり、もちろん何度も聴きたくなるような魅力に満ち溢れている。デイヴィスは歌の持つ本当の力を巧みに引き出す類まれなシンガーだ。

 

2026年度のリリースはフォークミュージックがすこぶる堅調な印象だ。『Wandering Star』は「第?次フォークブームの到来」を印象づける。ジョニ・ミッチェルからキャロル・キング、そして現代的なラナ・デル・レイからウェイズ・ブラッドにいたるまで、新旧の女性主導のフォークポップを吸収し聴き応えのある作品に仕上がっている。特に、ヘイリー・デイヴィスはハイトーンの伸びやかなビブラートのボーカルが傑出し、その歌声には、ほれぼれとしてしまうものがある、少なくとも、作品全体にはロマンティックで陶酔感のある雰囲気に満ちている。

 

70年代の「コズミック・アメリカーナ」は、The Byrdsのグラム・パーソンズが最初に提唱したもので、ルーツミュージックから、サイケデリック、フォーク、ブルース、R&Bなどアメリカ独自の音楽を抽出したジャンルだ。この年代のアメリカのUSポップ/ロックを聞くと、いかにもアメリカな匂いがあるが、これらはルーツ音楽を活かし、大衆的なロック/ポップソングに昇華させようという試みでもあった。もちろん、それは憶測に過ぎないのだが、音楽の背景が最も重要であり、『Wandering Star』に出てくるようなアメリカンカルチャーの生活様式、西海岸のヒッピー思想、それからファッションスタイルなど、さまざまな文化的な背景を織り込んでいたことはおそらく事実なのだろう。また、ローリング・ストーン誌の指摘に加え、カーリー・サイモンの系譜に属する心温まるフォークポップがヘイリー・デイヴィスの実質的なデビューアルバムに共通している。というか、『Wandering Star』はベテランミュージシャンが作るような渋い作品で、三作目か五作目ではないか、とさえ錯覚させる。 ようするに音楽が完成されていて、ボーカルにしても、すでに多数の作品を歌ってきたような貫禄が感じられるわけだ。これはまた、ハイリー・デイヴィスという人物がすでに完成された人格を持つことを印象づける。

 

現代的な人々は、ITを始めとする現代的なテクノロジー社会の中で生きているが、このアルバムで感じさせるのは、本質的な生き方や考えというのは、50年くらい経ってもあんまり変わらない、ということである。むしろ現代的な人々は、数十年前の人よりも、はるかに利便性の高い社会で生きている。しかしながら、人間の本質的な考えや苦悩は、その時代からほとんど変わらない。ハイリー・デイヴィスは、デジタル・デバイスに生きる現代人が見落としがちな視点を探り、それらを雄大でロマンあふれる形のフォークポップ集に昇華させている。これはまた、見方を変えれば、現代的なテクノロジーに翻弄される現代人の悲しみを歌ってもいるのだ。アルバムには、古典的なテーマも内在しているが、それは古びたわけではない。いや、時代を超越するような概念を盛り込んでいるからこそ、その歌やメロディーが共鳴するのである。

 

一曲目の収録される「Country Boy」は故郷の少年を歌った郷愁的な内容の楽曲である。イントロから、ヘイリー・デイヴィスの伸びやかな歌声がただならぬ存在感を放つ。歌い方が自然で、声の使い方に無理がない。アコースティックギター、ドラムを伴奏に今や遠く離れた人への慕情を歌い上げる。さらりとしているが淡白な感じはない。それどころか、琴線に触れるようなフレーズを通じて、このアルバムの核心となる哀愁に満ちたフォークポップが繰り広げられる。どことなく無味乾燥で淡白になりがちな現代的な歌手の中で、ハイリー・デイヴィスは驚くほど叙情的で、ときにラウンドスケープすら感じさせる雄大なフォークバラードを歌い上げる。ボーカル自体は繊細であるが、同時に力強さもある。己の力で人生を切り拓いてきたというようなデビューアルバムらしくない、パワフルな自負心のような感覚が宿っているのだ。あるいは、その後に続く、ペダルスティールというより、スティールギターのように聞こえるエレクトリックギターが、円熟味を感じさせるような深みや奥行きを呼び起こす。音楽そのものが、新しいとか古いとか、そういった指針だけでは語り尽くせぬものがあることを証明する。ハイリー・デイヴィスの音楽には確かに、時代を超えるような広やかな感覚に溢れている。

 

 

 「Country Boy」

 

 

 

一方で、「Golden Age」はThe Byrdsの系譜に属し、フォーク・ロックとポップの中間に位置する。現代的なフォークシンガーは、ブルースやR&Bといった音楽の影響を薄めてしまったが、ヘイリー・デイヴィスはミッチェルやキング、ジョップリンのようなシンガーと同様に、R&Bやブルースの影響を保持している。まあ、こういった音楽は現代の音楽ファンにとっては、どうしても博物誌的な聴き方になってしまうかもしれないが、実際的には、それは音楽というより啓示的な内容なのである。デイヴィスは、アメリカのルーツ音楽へと接近しながら、 カントリー、フォーク、R&B、ポピュラーといった、際限のない多彩なジャンルを踏襲しながら、メンフィスのような地域のR&Bのリズムを巧みに駆使し、オーティス・レディングのようなサウンドを現代的な質感を持つカントリーポップへと置き換えている。音楽のテーマは、古典的なのだが、 モダンな印象を持つさらりと歌うデイヴィスのボーカルが涼し気な雰囲気を呼び起こす。

 

「I Was Wong」のような曲は、周りに惑わされず、自分軸で生きようというヘイリー・デイヴィスの考えが滲み出ている。R&B/ゴスペル/ブルースの影響をもとに、メロウな雰囲気を呼び起こすギター、そしてボーカルなどを混在させながら、シンガーは過去の記憶を捉えつつ、抒情的に歌い上げる。そして解き明かし難い感情を、内面を吐露するような告白的な歌詞によって紡いでゆく。この曲は基本的にマイナー調の曲だが、ときに内的な感情を暗示するかのように、暗くなったり、明るくなったり、変遷を描きながら、癒やされるような音楽性を引き出していく。

 

そして、このアルバムの歌で共通する「No No No」という自らの考えを遠ざけるような歌詞を織り交ぜながら、音楽的にもあるいは詩的にも奥行きのある独自の世界を展開させるのである。

 

「Born to Be Blue」は、ポピュラー音楽の基本要素を構成する起承転結を強く意識した楽曲で、渋いながら名曲である。R&Bの印象が強く、アレサ・フランクリンやジャニス・ジョップリンのような、往年の名シンガーの名曲を彷彿とさせる。お決まりのピアノとドラムのイントロから、ゆったりとしたテンポを通じて、タイトルにあるようなブルージーな音楽を作り上げる。ある一つの歌詞やフレーズが繋がっていき、物語のように転がっていく非常に面白い楽曲である。間奏のギターソロもかっこいいが、特にサビの終わりの素晴らしいボーカルに注目したい。

 

 

「Born to Be Blue」 

 

 

 

 ヘイリー・デイヴィスの曲は、まるで人生の流れを象徴するかのように、その音楽の背景に、実際的な出来事や人生観を映し出していく、まるでそれは音楽による映画のようなもので、時々、ふっと映像的な印象を帯びることもある。しかし、同時に映画的な音楽を作ろうとすると、たぶんこういった音楽にはならない。つまり、デイヴィスはみずからの人生を映画のように見立て、それらを的確な歌詞や音楽によって丹念に作り上げていくだけなのである。音楽は流れていき、「Lily of The Valley」のような曲では、コズミック・カントリーと称されるような壮大な趣を持つカントリー・ポップを聴くことができる。今やほとんどのロックやポップで使用されるペダルスティールですら、それは借り物の音楽ではなく、ましてや、博物誌的な表現でもなく、農場や田舎の小道のような音楽的な風景の印象と相まって、生きた有機物のようにリアルに機能している。音楽自体が生きているようにはつらつとしていて、メロディ、リズム、テンポ、さらにハーモニーの要素にいたるまで、楽しげで広大な印象性に縁取られている。そして、同時にそれは、アーティストにとって、原体験の意味を持つ子供の頃のラジオでカントリー音楽を聴いていた時代へと誘い、共鳴的な感覚を呼び起こすのである。それは同時カタルシスを呼び起こし、聴き手の忘れ去られた過去の不明瞭な記憶をぼんやり呼び起こすのだ。

 

以降の「Give Me A  Rainbow」にしても、「Young Man」にしても、ヘイリー・デイヴィスが、ルーツミュージックを志していることに変わりはない。しかし、それはアメリカ的な黄金期を表すゴールデン・エイジやオールド・タイムのような概念というよりも、現代的な風景の中に残る古き良き時代を思わせる。 The Byrdsのようなロック、ブルース、フォークの中間にある渋いリズムの中、へイリー・デイヴィスは、カレン・カーペンターを彷彿とさせる純真なボーカルを紡ぎ出す。その中で、サビを通じ、牧歌的な良心とも呼ぶべき善良な感覚を引き出す。それらは結局、協力してくれた人々への感謝、たゆまぬ愛情といった感覚を表現するためのものであろう。それらは曲の最後で登場するような夢想的なスキャットの部分で高らかな感覚に行き着く。一方、「Young Man」 はカントリーを基調としたポップソングで、南部的な空気感を持ち合わせている。ヘイリー・デイヴィスは映画のワンカットで流れる印象的なボーカル曲を歌う上げるように、物語性をにじませながら、カントリーポップの雄大な音楽世界を跋渉していく。

 

ジョニ・ミッチェルやキャロル・キングを彷彿とさせる繊細なフォークポップソングが『Wandering Star』の重要な流れを形作る。「Horns Of Time」はその象徴であり、懐かしく、少し憂いに満ちた切なさが、心地よい大きめのサウンドホールを持つアコースティックギター、そして大気や雲のように渦巻くスティールギター、温かみを持つデイヴィスのボーカルと巧みな形で融合している。こういった曲を聴くかぎり、ルーツミュージックのような文化的な歴史を持つ音楽は長い時間をかけて熟成されていくもので、一日や二日で完成されるものではない。

 

ローマは三日でならず、という慣用句が象徴するように、こういったルーツ音楽というのは、付け焼き刃や模倣ではないしえないのである。ヘイリー・デイヴィスは自国の文化を尊重し、愛しているから、こういった音楽が制作できるのだろうか。また、一文化の持つ時間の流れや重さを弁別してもいるといえるかもしれない。実際的に、この曲はアメリカのインスタントな体験などではなく、奥深い思想的な領域や、生活様式や考えといった表向きには得られない概念のような核心を把捉できる。バンジョーのような民俗的な弦楽器の音色も、不思議な安らぎと癒やしを感じさせてくれる。こういった曲は多忙な現代人の心にほどよい空白を作ってくれる。

 

他の曲に埋もれがちだが、意外と聴きのがせないのが「Lonely Too」である。ギルバート・オサリバンの「Alone Again」のような効果的なポップソングのリズムを通じて、デイヴィスはやや天真爛漫な印象を持つボーカルを披露する。しかし、オサリバンの曲とは対象的に、この曲はモータウンのソウルの音楽性を踏襲し、かなり渋い領域にまで踏み込んでいる。特にピアノの同音反復のベース的な効果を活かしながら、アルバムでは最もカラフルな印象を持つポップソングへと昇華させている。先にも述べたように、デビュー作らしからぬ傑出したポップセンスで、こういったジャンル(ポップソング)の基本的な形が凝縮されているのではないかと思う。この曲を聴くと分かる通り、現代の歌手ではボーカルが傑出していて、またセンスも抜群。

 

こういった中で、全体の「起承転結」のクライマックスの部分が出てくる。アルバムを聴くときの密かな楽しみは、ロックにせよ、ポップにせよ、様々な音楽が混在しながら、そのコアのような部分が出てくる瞬間である。そしてその時、見ず知らずのアーティストやシンガーの存在に近づけたかもしれない、という気がする。そういった意味では、一貫して、レビューというのは、アーティストやバンドに近い場所にいると出来ないという慣例になっているかもしれない。

 

さて、終盤で登場するタイトル曲「Wandering Star」は本作全体の結尾の箇所である。現代的に言うと、ウェイズ・ブラッドのような西海岸のクラシカルなポップ運動に列する。しかし、デイヴィスの場合は、R&Bの影響が色濃い。70年代のソウルを中心に音楽が機能している。その中には、愛、失恋、模索、発見、苦難、そして、勝利といった、一連のテーマが暗示されている。アルバムでは、最もドラマティックな印象を帯び、単なる音楽以上の概念が示されている。

 

曲のアウトロでは、特殊なミックスとマスタリングが施され、R&Bの古典的なソウルが徐々にサイケデリック風の「デチューン」の印象を帯びる。アナログ・レコードの回転数が少しずつ変化していくような摩訶不思議なイメージを形作る。その時、リスナーはまるで過去の時代に迷い込んだように、ノスタルジックな、あるいはアナクロティスティックな気分に陥るのである。

 

「Mouring Dove」は、デモソングのようにささやかなフォークポップソングである。言ってみれば、フォークミュージックのコーダの部分で、作者の言い残したことを、ちょっと付け加える内容となっている。このクローズ曲は、たとえば、英国の歌手、ローラ・マーリング(Laura Marling)のような現代的なフォークバラードの名手の音楽を彷彿とさせる。この曲が収録されているおかげなのか、作品全体は、爽やかなエンディングを形作り、心地よい後味を残してくれる。そういう意味では、先週のグレッグ・メンデスのフォークソングとは対照的な印象を帯びる。この曲はやはり、現代的な生活で忘れられがちな純真なエモーションが織り交ぜられている。

 

日々、生きていると様々な問題に翻弄されることがある。それでもヘイリー・デイヴィスの音楽は確かにそういった苦悩を忘れさせてくれる力がある。時を忘れ聞き入ってしまう類まれな傑作だ。

 

 

 

94/100 

 

 

 

「Wandering Star」 




▪︎Listen/Order(US):   Haylie Davis 『Wanderins Star』


この度、株式会社パルコ(本社:東京都渋谷区、以下「パルコ」)は、2026年6月12日(金)~6月28日(日)の期間、物を長く使い続けることで紡がれる物語や、その過程で生まれる経年変化の美しさに気づきを与える企画「TIME」を心斎橋PARCOにて開催します。

 

本展では、経年とともに風合いを深めるレザーグッズや、既存のアイテムに新たな価値を吹き込むアップサイクルプロジェクト、環境に配慮した素材で再構築された定番アイテムなど、これからも愛用し続けたくなるアイテムを通じて、各ブランドがそれぞれの視点からサステナブルな価値観を提案します。


本企画のクリエイティブでは、大阪・福島でアンティークや古道具を扱うセレクトショップ「Essential Store」のオーナー、田上拓哉氏とタッグを組み、長い年月を経て生まれる価値に焦点を当てます。


また、6月12日(金)には、タイムレスなデザインと長く愛用できるものづくりを重視し、リサイクル素材の採用など持続可能性を意識したものづくりを行うノルウェー発のジュエリーブランド TOM WOOD(トムウッド)が、心斎橋PARCO 2Fにオープンします。


オープンを記念し、パリでも開催されたTOM WOODのブランド哲学や、過去から現在に至るまでの製品製作を体感できる展覧会「A Journey in Craft」、クリエイティブディレクターのMona Jensen(モナ・ヤンセン)氏とWWD JAPANサステナビリティ・ディレクターの向千鶴氏によるトークイベントも開催予定です。


その他、期間中は産学アップサイクル作品の展示や、規格外の野菜のシェア、廃材を利用したワークショップイベントなど、多彩なコンテンツを展開いたします。詳細はTIMEの特設ページをご覧下さいませ。


●キャンペーン概要



「TIME」

会期:6月12日(金)~ 6月28日(日) 

会場:心斎橋PARCO

住所 :〒542-0085 大阪市中央区心斎橋筋1-8-3

特設ページ:https://shinsaibashi.parco.jp/feature/detail/?id=2782

●タイムレスなデザインと責任あるモノづくりを提案するブランド「TOM WOOD」がNEW OPEN


タイムレスなデザインと長く愛用できるモノづくりを重視するノルウェー発のジュエリーブランド「TOM WOOD」が、心斎橋PARCO 2FにNEW OPEN。


西日本初出店となるTOM WOODは、流行に左右されないタイムレスなデザインを通じて、「長く使い続ける価値」を提案するとともに、リサイクル素材の採用や責任ある調達、製造背景の透明性向上など、持続可能性を意識したものづくりにも積極的に取り組んでいます。


心斎橋PARCO 2Fでのオープンを記念し、TOM WOODは「City Exclusives」の新作を発表します。店舗オープンと同時に発売されるカプセルコレクションは、大阪の象徴でもある桜からインスピレーションを得たデザインを採用。シルバーとゴールドの桜タグチャームに加え、スターリングシルバーと9Kゴールドのトップを組み合わせた新作「Osaka City Ring」も登場します。

 

※8月中は、「Osaka City Exclusives」が、オスロ・東京・大阪の各TOM WOOD店舗にて、クローバーやイチョウのエディションと共に販売されます。





●「TOM WOOD」のオープンを記念し、展覧会および創設者兼クリエイティブディレクターのMona Jensenによるトークイベントを開催




オープンを記念し、TOM WOODのモノづくりの背景に焦点を当てたコンテンツ「A Journey in Craft」を心斎橋PARCO 9Fにて開催します。素材の調達から制作工程、品質管理に至るまで、ブランドが重視するクラフトマンシップや透明性、長く使い続けるための思想をご紹介します。


▪︎展覧会概要

「A Journey in Craft」

会期:2026年6月12日(金)~ 6月28日(日)

会場:心斎橋PARCO 9F・EVENT SPACE

住所:〒542-0085 大阪市中央区心斎橋筋1-8-3 9F

入場料:無料


▪︎CREATIVE

 


大阪・福島のアンティークや古道具が並ぶセレクトショップ「Essential Store」とタッグを組み、長い年月を経ることで生まれる価値を表現するコンセプトメッセージとビジュアルを展開します。

Francis of Delirium 『Run, Run Pure Beauty』 


Label:  Delliance

Release: 2026年5月29日

 

 

Review

 

ベルギー/ルクセンブルグで活動を行うFrancis of Deliriumは注目すべきバンドです。 フランシス・オブ・デリリウムは、ジャナ(ギター&ボーカル)、ジェフ・ヘニコ(ベース)、デニス・シューマッハー(ドラム)で構成されている。過去5年間、彼らはヨーロッパと北米をツアーし、ヘッドライン公演やフェスティバルに出演し、Blondshell、Briston Maroney、The Districts、Horsegirl、Soccer Mommyといったアーティストとのツアーもこなしてきた。また、The 1975、アラニス・モリセット、DIIV、Wolf Aliceのサポートアクトも務めている。

 

昨年の夏は、TikTokで楽曲『Duvet』が大ヒットし再注目された90年代のバンド、Bóaとの記憶に残るUKツアーが行われた。各会場の開場数時間前から若者の列が会場の外に蛇行するほど、これらの公演には真の興奮が漂っており、ジャナが活力を得るようなエネルギーが溢れていた。

 

最新アルバム『Run, Run Pure Beauty』は彼らのそういった前評判に負けないようなロックソング集である。完成させる原動力となったリスナーとより深いレベルでつながろうとするアーティストである彼女にとって、新作アルバム『Run, Run Pure Beauty』の中心テーマに「希望」と「内なる強さ」を据えたことは、当然といえるかもしれない。ジャナは、タイトル曲について、「人間とテクノロジーによって破壊された後の世界を想像した曲だ。人間が残したものと激しく対峙する中で、最終的には自然の純粋な美しさが勝利を収める」と語っています。自身の旅路と、私たちが直面している激動の時代からインスピレーションを得て、このアルバムでは異なる視点を楽曲制作に取り入れたいと考えた彼女は、サウンド面でも進化を遂げている。

 

アルバムのオープニングを飾る「Aliens」はクラシック風のファンファーレで始まり、その後、 甘酸っぱい雰囲気のあるインディーロックソングが続いている。しかし、従来のインディーロックソングとしては、誇張抜きにスケールの大きな内容となっている。いや、ドラマチックとも言えるでしょう。ストリングスなどをアレンジメントに施したオルタナティヴロック、ジャナのほろ苦い感じに満ちたボーカルなど、このジャンルのファンにはうってつけの内容といえるかもしれない。さらにボーカルには、オペラのような歌唱の影響が感じられ、これらがバッキングギターやそれとは対象的なシューゲイズ的な轟音性を持つディストーションギターと融合する。「Out Tonight」は現今流行りのタイプのインディーロックソングで、Soccer Mommy、Momma周辺の甘酸っぱい感じの一曲である。しかし、一貫してジャナのボーカルは、ロックシンガーっぽくなく、どちらかといえば、賛美歌のようなさらりとした印象に満ちている。全体的には、音楽全体がさっぱりとしたクリアなイメージに満たされるというわけです。

 

80年代風のロックやヘヴィーメタルからの影響もありそう。「Higher」はどちらかと言えばギターヒーローからの影響を感じさせる。この曲に満ちるEUROPEのようなバンドの情熱的なボーカルは、今や女性ボーカルのイメージで縁取られることになった。 また、この年代のシンセ・ポップやエレクトロ・ポップ、ニューロマンティックのようなバンドからの音楽的な影響が受け継がれている。そういったメロディアスなロックソングがFrancis of Deliriumの魅力であり、ヨーロッパのロックバンドらしさでもある。「Damned」は助走を付けながらジャンプアップするような軽快な印象に満ちたロックソングである。曲の終盤では、不思議な高揚感がある。

 

インディーロックバンドとしての矜持が現れた「Little Black Dress」は、アルバムの注目曲の1つ。サビでは爽快感があり、カタルシスもあり、ライブなどでは映えそうなナンバーとなっている。この曲では「希望」と「内なる強さ」というテーマが明瞭な形であらわれているのではないかと思う。「Sucker Punch」でも清涼感に満ちたサウンドが、少しセンチメンタルな感覚のあるボーカルと組み合わされている。一方で、USオルタナティヴロックからの影響も感じさせる。「Open Up To Your Mouth To Love」はフォークやアメリカーナとロックソングの融合という流行りのスタイルを継承している。楽曲としては終盤に驚くべき曲調の変化がある。このバンドあるいはソングライターの感覚的な流れを音楽として見事な形で縁取っている。

 

アルバムの終盤では、センチメンタルで湿っぽい曲が多くなってくる。「Requiem For A Dying Day」では、80年代のポップやフォーク・ソングからの影響をにじませ、オペラティックな音楽とロックを融合させている。これはEURO圏から登場した新しいロック・オペラである。

 

一方、ほっとさせるようなカントリーとロックの融合を示した「Modern Madonna」も良曲であり、聞き逃すことができない。この曲では、数々の名バンドやアーティストとの共演を重ねてきたバンドとしての地力が現れた形となった。しかし、本作の究極のハイライトは間違いなく最終曲「It's A Beatutiful Life」となる。ミュージックビデオは、少しシュールで、このバンドやジャナの美学のようなものが表れ出ている。負け続けるバスケ選手。しかし、最後は見事シュートを決めるという、トホホな内容である。(ゲームに勝っていない)笑ってよいのか、それとも........。いずれにせよ、このロックソングは、基本的に聞き逃すことができないでしょう。

 

 

80/100 

 

 

 「It's A Beatutiful Life」- Best Track

 

 

▪Listen to 『It's a Beautiful Life』:【https://found.ee/6cAYfn


 

アメリカのミュージシャン、Mykki Blanco(ミッキー・ブランコ)がニューアルバム『CAFE PARADISO』を発表した。ブランコは2010年代後半ごろに、トランスジェンダーのラッパーとして紹介され、カニエ・ウェストの2018年のアルバム『K.T.S.E』に参加している。


最新作において、ブランコは完全に生まれ変わった姿を見せている。これまでの作品に見られたキャラクター重視の演劇的な演出を捨て、より内面的で官能的、そして緻密な表現へと転換している。

 

本作は、ニューヨークのランチカウンターやイースト・ヴィレッジのダイブバーから、パリのカフェやタンジールのカフェに至るまで、移り住む生活からインスピレーションを得た。ブランコが「芸術志向の若者たちのためのレコード」と呼ぶ作品であり、「都会的な美意識を持つ人々がカフェで一人きりになり、夢の人生を紡ぐために、あるいは単にその意味を見出すために」聴くサウンドトラックとなっている。


 『CAFE PARDISO』はニューヨークでレコーディングされ、長年のクリエイティブ・パートナー、プロデューサーのDrew “FaltyDL” Lustmanとのコラボによって形作られた。本作は、Ian Isiah(イアン・イザイア)、Breakawayをフィーチャーしたリードシングル「Little Feet」と共に発表された。「Little Feet」は、このアルバムが「気まぐれな都会人」のためのサウンドトラックであることを示す基調を打ち出している。

 

官能的でノスタルジックなグルーヴに乗せて、Mykki Blanco、Isiah、Breakawayの三者は、深夜の彷徨、儚い出会い、街灯の下でのダンスといった情景を漂いながら、親密で映画的、そして、少しだけ非現実的なナイトライフの世界を紡ぎ出す。アルヴァロ・クレイデンが監督を務めたミュージックビデオは、この楽曲が持つ夜の世界の魅力をさらに退廃的なものへと昇華させ、『CAFE PARADISO』の核心にある落ち着きのないロマンスと儚い繋がりを捉えている。


このビデオは広大なヨーロッパ風の大邸宅を舞台にし、ブランコの描く都会のボン・ヴィヴァン像を鮮明に浮き彫りにする。快楽主義、実験精神、芸術的表現に等しく惹かれる人物像であり、そこでは「スピン・ザ・ボトム」というゲームが、オイルを塗ったような官能的な即興の振り付けへと溶け込んでいく。


「僕に一つだけできることがあるとすれば、それは人生を最大限に楽しむ方法を知っているということだ」とブランコは語る。

 

「失敗もするし、間違いも犯す。でも、うまくいけば、失敗する以上に多くのことを成し遂げているはずだ。全体として言えば、人生を最大限に搾り取るという点では、自分はうまくやっていると思う」


ブランコの作品群は長らく絶え間ない変革によって特徴づけられてきたが、『CAFE PARADISO』は新たな明快さを体現している。

 

2022年の『Stay Close to Music』、2023年のEP『Postcards from Italia』を経て、ブランコはレコーディングから距離を置き、スイスで美術学修士号の取得に専念。多分野にわたるビジュアルアートの実践を深めた後、新たな集中力を携えてソングライティングへと戻ってきた。


「音楽を作ることは大好きなんだけど、一芸しかできない人間になるのはずっと嫌だったな」とブランコは説明する。「『人生でやりたいことリスト』からいくつか項目を消していきたいと思っている」


『CAFE PARADISO』は、スタイルやシーンの間を流動的に行き来し、ダンスミュージック、アート・ポップ、アンダーグラウンドなクラブ・カルチャー、そしてジャンルを融合させた実験的な要素の断片を、ミッキー・ブランコが「三幕構成の演劇」あるいは「フェスティバル・アルバム」と表現する作品へとまとめ上げている。その参照元として、サン・エティエンヌ、ザ・シルバー・アップルズ、トーワ・テイといった多岐にわたるアーティストが挙げられている。


しかしながら、その核心において、『CAFE PARADISO』は静寂、観察、そして公の場で一人きりであることの静かな強烈さについてのアルバムだ。「これはA地点からB地点へと進むようなレコードでも、何かを始めるための準備のようなレコードでもない」とブランコは言う。「これは、自分自身と過ごす時間を楽しむためのアルバムなんだ」

 

シングル「Little Feet」は、ブランコのラップというこれまでのイメージを完全に払拭し、意外な音楽性ーー新感覚のR&Bーーを引き出すことに成功した。この曲は、クインシー・ジョーンズのように、1つのジャンルや枠組みにとらわれない、新進的な気風を思わせる音楽である。暗示的な映像は奇妙なナイトライフのワンシーンを生々しく描き、きわどいシーンも出てくる。

 

 

 「Little Feet」

 


 

Mykki Blanco 『CAFE PARADISO』



Label: Transgressive

Release: 2026年9月4日 

 

Tracklisting:

1. Little Feet

2. NYC Dogs

3. Butt Sex

4. Easy Does It

5. Wasted in Soho

6. FOXES

7. F**k as Friends

8. Hey Dopeman

9. Tough Guy

10. Cut Me Open

11. Spread For Me

12. God Is Alive

 

▪Pre-order: https://transgressive.lnk.to/cafeparadiso 

 

Chali xcxの7枚目のアルバム『Music, Fashion, Film』が2026年7月24日にリリースされることが発表された。英国人アーティストは、アルバムカバーアートも公開しており、そこには何の変哲もないキッチンで3人の業界の巨頭が写ったモノクロのスチール写真が収められている。

 

ジョン・ケイル(音楽)、マーク・ジェイコブス(ファッション)、マーティン・スコセッシ(映画)――エンターテインメント界の重鎮たちを起用したこの大胆なアートワークに驚かされる。まさに「マウント・ラシュモア」級の豪華な顔ぶれが、エイダン・ザミリが撮影したこのカバーアートに登場している。

 

エイダン・ザミリは、今年初めにサンダンス映画祭で初公開されたxcxのモキュメンタリー映画『The Moment』の監督も務めた。本作には、既にリリースされている「SS26」や、会場を沸かせた「Rock Music」が収録される予定。おそらく、未発表の3枚目のシングルが、タイトルが示すパターンに則り、映画をテーマにした楽曲としてアルバムを締めくくることになるだろう。


このシンガー兼プロデューサーは、ブリット・アワードやグラミー賞を複数回受賞しており、近年は映画界への進出を加速させている。三池崇史、グレッグ・アラキ、キャシー・ヤンといった監督たちとのプロジェクトで、演技、脚本、プロデュース、音楽制作を手掛けている。『Music, Fashion, Film』は、音楽業界から絶賛を受けた2024年の『Brat』以来となる彼女の初のフルアルバムとなる。現時点では、トラックリストや詳細な情報は明らかにされていない。

 

最新の新曲「SS26」は、チャーリーの楽曲としてはかなり意外性を感じさせる。完全なダンス・ミュージックからは距離を置き、インディーポップやアルトポップの路線に突き進んでいる。

 

「SS26」


 

 

Billboard(Canada)によると、チャーリーはInstagramでこのニュースを認め、アルバムには「11曲」が収録され、再生時間は「30分5秒」になると記した。アルバムのタイトルは「SS26」に由来し、曲の中で英国人アーティストは「私たちは地獄へとまっすぐ続くランウェイを歩いている/音楽も、ファッションも、映画も、何も私たちを救ってはくれない」と歌っている。


『Music, Fashion, Film』は、チャーリーをメインストリームのアイコンへと押し上げた2024年の『brat』以来となる初のソロ・スタジオ・アルバムとなる。同アルバムは、英国のオフィシャル・アルバム・チャートで1位、ビルボード200で3位を記録した。


英『Vogue』のインタビューで、チャーリーは「Rock Music」に表れているようなアルバムの新たな方向性が、リスナーの賛否を分ける可能性があると語った。「私にとっては、形式を覆すのが楽しいの」と彼女は語った。「それを気に病む人もいるだろうけど、それでいいのよ」


今作のリリース後、チャーリーはシカゴのロラパルーザ・フェスティバル(7月31日)およびイギリスのレディング&リーズ・フェスティバル(8月28日~29日)のヘッドライナーを務める予定だ。



Chali xcx 『Music, Fashion, Film』



Julia Jacklin(ジュリア・ジャクリン)が、4ADとの初のグローバル・レコード契約を結んだことを発表した。これを記念し、2026年秋に北米ツアーを皮切りに、翌年には英国およびヨーロッパを巡る大規模なツアーを行うことを明らかにした。


全23公演にわたる北米ツアーは、10月20日にカリフォルニア州サンディエゴの「オブザーバトリー・ノース・パーク」で幕を開ける。ロサンゼルス、シカゴ、ミネアポリス、ボストン、ニューヨークのブルックリンなど、各都市を巡る予定だ。ツアーは11月21日、ペンシルベニア州フィラデルフィアの「ユニオン・トランスファー」で幕を閉じる。


北米ツアーの発表に合わせ、ジャクリンは2027年2月13日にイングランド・バーミンガムのタウン・ホールで開幕する英国/欧州ツアーも明らかにした。ツアーの公演地にはロンドン、ブリュッセル、ベルリン、パリ、マドリードなどが含まれる。


このオーストラリア出身のインディー・シンガーソングライターは、2024年にフェイ・ウェストとのコラボレーション曲「Good Guy」をリリースしたばかりだ。彼女の最新アルバムは2022年の『Pre Pleasures』で、これは彼女のキャリアの中で最高のチャート順位を記録し、批評家からも絶賛を受けた。ジュリア・ジャックリンは、2022年以来公式のアルバムを発表していない。


ヘラド・ネグロ(Herado Negro)とレイナ・トロピカル(Reyna Tropical)は、初のコラボレーションアルバム『Helado Tropical』を発表した。両者は、ラテンのルーツを持ち、その共通項を活かして個性的な音楽を制作した。それはリードシングル「Tocando」にあらわれている。この二人がラテン音楽を奏でると、それは異国情緒あふれるものではなく、より身近な内容に感じられる。


リードシングル「Tocando」では、ヘラド・ネグロが監督し、ジョシュ・フィンクが編集を手掛けた公式ミュージックビデオが制作。「Tocando」は、本作の中で最も本能的な楽曲だ。セッション中にヘラド・ネグロが持ち込んだ既存のビートを基に、レイナ・トロピカルがギターを重ねていく中で発展、一晩以上眠らずに制作された。レイナは、歌詞が浮かぶのを待ちながら部屋を歩き回り、最終的にエッセイのような奔流のように歌詞を綴ったと振り返っている。最終的に生み出されたのは、緊張感と優しさを同時に内包する楽曲。それは、脆くも緊張感に満ち、親密でありながら警告の刃を帯びた、人間関係についての瞑想のような一曲である。


ロベルト・カルロス・ランゲ(別名:ヘラド・ネグロ)とファビ・レイナ(別名:レイナ・トロピカル)は、マイアミを拠点に音楽活動を行っている。2024年6月にノースカロライナ州で初めて出会った。共通の友人と、スタジオで時間を過ごそうという気軽な誘いがきっかけだった。

 

本来なら短時間のセッションに過ぎなかったかもしれないものが、会話と好奇心、そして創造的な冒険が等分に混ざり合った、3日間にわたる「お泊まり会」のようなものへと変化した。親密で長年のコラボレーションを主とするレイナ・トロピカルは、新たな人物に制作プロセスを開放することが何を意味するのか、不安を抱えて参加した。

 

ラテン音楽の音響的・感情的な表現の幅を広げてきたことで知られるヘラド・ネグロも、同様のオープンな姿勢で臨んだ。期待は持たず、ただ何が生まれるかを見届けるという意欲だけを抱いて。


そこから生まれたものは即座に形になった。徐々にコラボレーションに馴染んでいくのではなく、二人はその流れに突き動かされるように進んだ――リアルタイムで曲を構築し、互いの直感に過剰な説明を挟むことなく反応し合った。

 

役割の厳格な分担などなかった。一方がアイデアを投げかけ、もう一方がそれに応える。メロディーがリズムを暗示し、リズムが歌詞を再構築した。「行き詰まったと感じる瞬間は一度もなかった」とロベルトは振り返る。「『よし、次は?』という感じだった。曲の中ですら、小さな世界を創り出そうとしていて――その一瞬一瞬にワクワクしていたんだ」


その勢いは、『Helado Tropical』の基盤となった。この9曲からなる作品は、軽やかでありながら深く根ざした感覚を併せ持つ。ギター、ドラムマシン、シンセサイザーを基調としたこのアルバムは、明確なジャンル分類を拒む。アンビエントとリズム、親密さと広がりの間を漂うこの作品は、本質的に独自の音響言語であり、形式と同様に感情によっても形作られている。


もし共通の糸があるとすれば、それは「動き」だ。このアルバムはノースカロライナ、ポートランド、中西部といった複数の場所で制作され、両アーティストはセッションの合間にも曲を作り続け、遠距離の対話のようにアイデアをやり取りした。

 

そのプロセスは時に「郵便サービス」のようなやり取りを彷彿とさせ、各アーティストが孤独の中で層を重ねてから、再び集まって共に構築していくというものでした。その結果生まれた音楽には、単なる物理的な移動だけでなく、感情的、そして精神的な旅の感覚が宿っています。


レイナ・トロピカルにとって、その「動き」こそがプロジェクトの意義の核心となった。「自分がいる場所に没頭しすぎて、多くのことを処理し損ねてしまうことがある」とファビは言います。「でも、このアルバムは、私にとって『移動』が何を意味するのか、そして移動や旅、環境――太陽、風、水――が引き出す可能性を秘めた様々な側面を、しっかりと自覚させてくれたと思います」。楽曲はその二面性を反映している。漂い、膨らみ、変化しながらも、水面下にある確かな何かにしっかりとつながっているのだ。


Psychic Hotlineよりリリースされる『Helado Tropical』全体を通して、制約の欠如が顕著だ。それは音楽的な面だけでなく、コンセプトの面でも同様である。二人のアーティストは、ラテン音楽にしばしば課される期待――その音はどうあるべきか、どう感じられるべきか、どんな物語を語るべきか――に対して、長年にわたり抵抗してきた。個々の活動と同様に、このプロジェクトにおいても、二人はより流動的で個人的な何かのための空間を創り出している。下記よりリードシングルをチェックしてみよう。



「Tocando」

 

 

 

 Herado Tropical 『Helado Tropical』 

Label:Psychic Hotline

Release: 2026年7月17日

 

Tracklist:

1. Sensación
2. Tocando 
3. El Tiempo 
4. Soledad 
5. Luna 
6. Fluye 
7. Sol 
8. Déjate Caer 
9. Un Calor 


この度、NEWでは画家、水津 達大の個展「Khora」を、2026年6月5日(金)から6月16日(火)まで開催いたします。水津 達大は、風景を描くことをはじまりに、往古来今の芸術や文化、思想に触れながら「場」の探求を続けています。無数の線を引き重ねることであらわれた画面からは、筆法そのものにも深く向き合った痕跡が確かめられます。

 

今回は、水津が近年意欲的に取り組んでいる、墨とアルミニウムで描いた連作《Khora》より、150号の新作を中心にご覧いただきます。タイトルである《Khora(コーラ)》は、プラトンが宇宙開闢論『ティマイオス』で使用した言葉ですべての誕生のような場のことであり、主客未分の状態を示しています。わたしとわたし以外のあいだに分断がなく、主客が融け合った状態——水津は《Khora》を通して、全ての存在が風景に溶融し合う世界の描写へのアプローチを試みています。

 

ついにこの場所が開かれたか、と呟きたくなる始原性とともに、その絵画はあらわれている。

― 平出 隆(詩人・多摩美術大学名誉教授)


ぜひ会場にて、水津 達大の描き出す「場」、〈Khora〉のひらく空間をご体感ください。



ARTIST PROFILE

水津 達大|Tatsuhiro Suizu

1987年生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻を修了後、日本に滞在。

「Void」を作品テーマとし、アルミニウムによる抽象画「Khora」、墨の作による大地のような世界観を持つ「余白の風景」などを発表するとともに80点の《Khora》を収めた大沢の作品集『VARIATION』刊行。

https://suizutatsuhiro.com

開催情報

Tatsuhiro Suizu Exhibition《Khora》

会期:2026年6月5日(金)- 6月16日(火)

時間:11:00–19:00 / 会期中無休

会場:NEW

〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-9-15 B1F


オープニングレセプション

日時:2026年6月5日(金) / 18:00–20:00

会場:NEW


作品集

本展にあわせて、水津達大の2025年7月に刊行された初の作品集VARIATIONも販売します。

墨とアルミニウムのみで描かれた連作絵画《Khora》より、80点の作品を原寸大で収録。

序文を平出隆、装丁を山口信博が手がけています。

会場では、通常版と造本家の都筑晶絵が仕立てる特装版付きのスペシャルエディションの2種類をご覧いただけます。





実験的な芸術を通じた「交換・交流」のためのアートプラットフォーム「MODE」は、2026年第一弾プログラムを今週末6月6日(土)、東京・恵比寿に位置するライブハウスLIQUIDROOMにて開催します。

 

本プログラムでは、Holy Tongue、Tomaga、Vanishing Twinなどの様々なプロジェクトで知られるロンドンを拠点に活動するドラマー/作曲家/マルチ奏者 Valentina Magaletti(ヴァレンティーナ・マガレッティ)と、エレクトロニック・デュオ Raime(ライム)で知られる Tom Halstead(トム・ハルステッド)、Joe Andrews(ジョー・アンドリュース)によるポストパンク/ポストハードコア・プロジェクト「Moin(モイン)」の日本初公演が実現します。


加えて、大阪拠点の音楽家・YPYこと日野浩志郎を中心に結成されたリズム・アンサンブル「goat」を迎え、ダブルビル公演として開催されます。

Moin(モイン)



*Photography by Amy Gwatkin

Moinは、Joe Andrews、Tom Halstead、Valentina Magalettiのロンドンを拠点とするトリオからなるプロジェクトです。グランジ、シューゲイズ、ポストロックといったギター音楽の系譜を再解釈しながら、これまでに3枚のアルバムを発表し、国際的な音楽フェスティバルやアートスペースなど、様々なベニューでライブ活動を展開しています。


AndrewsとHalsteadは、エレクトロニック・デュオRaimeとしても活動し、インダストリアル、ゴス、ダブの要素を取り込んだ重層的なエレクトロニクスによって、UKアンダーグラウンドの重要な位置を占めてきました。2016年以降はポストパンク、ミニマルな方向へと展開し、その延長としてMoinを始動。そこにMagalettiが加わることで、より身体性を伴ったバンド・フォーマットへと展開しています。


Magalettiは、MODE 2024での日本初ソロ公演も記憶に新しいアーティストです。Holy Tongue(ホーリー・トーン)、

Tomaga(トマガ)、Vanishing Twin(ヴァニッシング・ツイン)、V/Z(ヴィー/ズィー)などのプロジェクトで知られ、多様なアーティストとの協働を重ねてきました。昨年には、YPY(ワイピーワイ)こと、goatを率いる日野浩志郎との共作『Kansai Bruises』も発表しています。


Moinを構成する3名のアーティストによる横断的な実践、様々なアーティストとのコラボレーションは、同バンドの最新作『You Never End』にも強く反映されています。同作では、Olan Monk(オーラン・モンク)、James K(ジェームス・ケー)、Coby Sey(コビー・セイ)、Sophia Al-Maria(ソフィア・アル・マリア)といったアーティストを迎え、コラボレーションを通じてサウンドの拡張が試みられています。


※Holy Tongueのメンバーであり、個人名義でも注目を集めるAl Wootton(アル・ウートン)がライブメンバーとして参加しています。

 

Instagram / Bandcamp

goat(ゴート)



*Photography by Yoshikazu Inoue

goatは、作曲家・音楽家の日野浩志郎(Koshiro Hino)を中心とする大阪拠点の5人編成のリズムアンサンブルです。

ギター、サックス、ベースといった楽器を打楽器のように扱い、ノイズやミュート音を含む発音そのものを素材として、ミクロ単位の精度を持つポリリズムを構築します。各メンバーは人力のドラムマシンやシーケンサーのように機能し、執拗な反復から生まれるトランスと疲労、12音階を外したハーモニクス音が聴き手の肉体や精神に影響を与えます。


ヨーロッパ各地でも高い評価を受けるgoatは、オランダ・ハーグで開催されたRewire 2024や、フランス・ナントで開催されたFestival Variationsに出演し、SUNN O)))と共演。2025年には池田亮司(Ryoji Ikeda)の日本ツアー大阪公演にもゲスト出演し、国内外で高い評価を得ています。


2025年にリリースされた作品『Without References / Cindy Van Acker』は、スイスのダンサー/振付家であるCindy

Van Acker(シンディ・ヴァン・アッカー)からの委嘱により制作。Cindy Van Ackerの長年の協働者であった Mika Vainio(ミカ・ヴァイニオ)の死を契機に生まれた同振付家によるダンス作品に応答するかたちで構成されており、goatの演奏に備わる身体性を、さらに際立たせています。

 

Instagram / Bandcamp

【プログラム概要】

開催日時:2026年6月6日(土) OPEN 17:30 / START 18:30

会場:LIQUIDROOM(東京都渋谷区東3-16-6)

チケット料金 :スタンディング ¥8,000(税込・ドリンクチャージ別)[ZAIKOにて販売中]

出演者:Moin / goat

※公演の詳細は MODE公式Instagram をご確認ください。

 

チケット販売:https://mode.zaiko.io/e/6thjune-performance-moin-goat



またMODEは、6月29日(月)・30日(火)の二日間にわたり、東京・赤坂の草月ホールにて2つのパフォーマンスプログラムを開催します。

※キービジュアルに配置されるテキストはUK拠点の音楽ライターJennifer Lucy Allanによる公演ステートメント、

手書き文字はMODEの新アイデンティティを担当したアーティストSakura Kondoによるもの。

【6月29日開催のプログラムについて】

 

6月29日(月)に開催されるプログラムでは、日本を代表する前衛音楽家であり、2026年の「第70回ヴェネツィア国際現代音楽祭」にて生涯功労金獅子賞を受賞する灰野敬二(Keiji Haino)と、元YUCK(ヤック)のフロントマン、元Cajun Dance Party(ケイジャン・ダンス・パーティ)のリードボーカルであり、『The Brutalist』の劇伴でアカデミー賞を受賞したDaniel Blumberg(ダニエル・ブランバーグ)によるコラボレーション作品が世界初披露されます。


さらに、パイプオルガンやリードオルガンの持続音を用いたドローン作品で国際的に高く評価される作曲家Ellen Arkbro(エレン・アークブロ)が、リードオルガンと、雅楽において中心的な役割を担うダブルリード楽器である篳篥(ひちりき)のための最新作を世界初演として発表します。

Arkbroがリードオルガンを担当し、雅楽演奏グループ伶楽舎(Reigakusha Gagaku Ensemble)に所属する中村仁美(Hitomi Nakamura)、國本淑恵(Yoshie Kunimoto)、鈴木絵理(Rie Suzuki)、田渕勝彦(Katsuhiko Tabuchi)が篳篥を演奏します。

 

【6月30日開催のプログラムについて】

 

6月30日(火)に開催するプログラムでは、約14年ぶりの来日となるCharlemagne Palestine(シャルルマーニュ・パレスタイン)が出演します。Charlemagne Palestineは、反復、持続、倍音、空間の響きを用いた独自の実践を築いてきた音楽家であり、ニューヨーク・アンダーグラウンドを起点に半世紀以上にわたり活動を続けてきました。La Monte Young(ラ・モンテ・ヤング)、Terry Riley(テリー・ライリー)、Steve Reich(スティーブ・ライヒ)らと並び語られてきた巨匠の一人です。ぬいぐるみを用いたマルチメディア彫刻や空間作品を手がける現代美術作家としても活動し、ドクメンタ8への参加をはじめ、現在も世界各地の美術館やギャラリーで音響作品やインスタレーションを発表し続けています。


客演には、Jim O’Rourke(ジム・オルーク)と 石橋英子(Eiko Ishibashi)のデュオが出演します。Jim O’Rourkeは、シカゴの即興音楽シーンを支えてきた重要人物であり、実験音楽、映画音楽、プロデュースワークを横断しながら独自の活動を続けてきました。Gastr del Sol(ガスター・デル・ソル)での活動や、Sonic Youth(ソニック・ユース)の元メンバーとしても知られるほか、小杉武久(Takehisa Kosugi)とともにMerce Cunningham(マース・カニンガム)舞踏団の音楽を手がけ、Tony Conrad(トニー・コンラッド)、Arnold Dreyblatt(アーノルド・ドレイブラット)、Christian Wolff(クリスチャン・ウォルフ)らとなどの仕事を通じて、現代音楽とポストロックのあいだを横断してきた存在でもあります。石橋英子は、『ドライブ・マイ・カー』(2021年)や『悪は存在しない』(2023年)などの映画音楽も手がけ、2025年には最新アルバム『Antigone』を発表しています。両者はデュオとして、2025年に5作目となるアルバム『Pareidolia』をリリースしています。

 

【プログラム概要】

Performance - Keiji Haino & Daniel Blumberg / Ellen Arkbro & Reigakusha Gagaku Ensemble

開催日時:2026年6月29日(月)Doors 18:15 / Start 19:00

会場:草月ホール(東京都港区赤坂7-2-21 / MAP

チケット料金 :自由席 ¥8,000(税込)

プレイガイド:イープラスZAIKO

出演者:Keiji Haino & Daniel Blumberg / Ellen Arkbro & Reigakusha Gagaku Ensemble

協力:ゲーテ・インスティトゥート 東京


Performance - Charlemagne Palestine / Jim O’Rourke & Eiko Ishibashi

開催日時:2026年6月30日(火)Doors 18:15 / Start 19:00

会場:草月ホール(東京都港区赤坂7-2-21 / MAP

チケット料金 :自由席 ¥8,000(税込)

プレイガイド:イープラスZAIKO

出演者:Charlemagne Palestine / Jim O’Rourke & Eiko Ishibashi 

【About MODE】

MODEは、ロンドンと東京を拠点に、実験的な芸術を通じた「交換・交流」のためのアートプラットフォーム。坂本龍一がキュレーターを務めた2018年の初開催以降、「音」を軸とした国際的な文化交流の場として展開している。都市の余白や歴史的な音楽芸術ベニューを舞台に、空間の建築的特性や場所がもつストーリーに呼応する多様なプログラムを実施。アーティストとオーディエンスが音楽や芸術文化、その歴史的背景を分かち合い、インスピレーションを交わすことで、新たな体験や実験的表現が生まれる場を創出している。



地図製作者や米国の多国籍テクノロジー企業は、この広大で美しい青い惑星の大部分をすでに地図に描き終えたと思っているかもしれない。しかし、どこを見ればよいかを知っていれば、発見すべきものは常にまだ残されている。


フランス生まれでロンドンを拠点とする作曲家兼ミュージシャン、パスカル・ビドーは、この考えを新たなアルバムの核心的な前提として掲げ、かつてない場所にいるという感覚を楽しませてくれる大胆な音の探求を繰り広げている。『Terra Incognita』は、グローバル・ジャズやスピリチュアル・ジャズと生命を讃えるミニマリズムを融合させ、催眠的でポリリズムに満ちたオデッセイへと誘う、7つの遥か彼方の音の世界へと私たちを招き入れる。


今回のアルバムのサウンド・パレットは、より鮮やかで、土臭く、豊かであり、アフロビート、ハイライフ、エレクトロニック・アフロポップに聴かれる溢れるような楽観主義と高エネルギーな源泉からインスピレーションを得て、より緩やかで自由な響きを持ち、何よりも生の感覚に重点を置いている。これは、高い評価を得たデビュー作『Fleeting Future』(2022年)や『Lines』 (2023年)の精密なオスティナートやガムランのパターンとは対極をなしている。


『Terra Incognita』は、伝統音楽と現代のエレクトロニクスを融合させたハイブリッドな作品であり、未知の世界への旅路として、自由に歩き回り、反復を楽しみ、決して立ち止まることのない作品だ。ビドーは、この未踏の領域が、幻想の世界であると同時に、内なる自己へと誘う没入型の旅でもあると示唆している。


「それはおそらく、私が人生で最も愛している感覚だ」とパスカルは熱く語る。「それはあなたを驚嘆と無邪気さの状態へと押しやり、子供の頃に感じたあらゆる感覚へと連れ戻してくれる」


彼が語っているのは「デペイズマン(dépaysement)」というフランス語で、文字通り「非国化」と訳されるが、英語に相当する言葉はない。「それは、かつて訪れたことのない場所を訪れた時に感じる感覚だ。そこでは何も意味をなさないし、すべてを一から学ばなければならない。文化的参照点も、親しみも存在せず、ただ新しい色や匂い、社会的・道徳的規範が絶えず流れ込んでくるだけだ」


国民国家という概念や、それを守らなければならないという考えが政治的議論を支配するようになったこの時代に、『Terra Incognita』は国境なき冒険を受け入れ、タイトルが示す未踏の領域を探求し、息をのむような景色を眺め、無限のパノラマを捉えるためにくるりと回転する。


冒頭を飾る、きらめくような蛍光色の『A Waking Dream』は、スピリチュアル・ジャズの巨匠たち、特にアリス・コルトレーンとファラオ・サンダースへのオマージュだ。続く『Anima』ではテンポが上がり、長く重層的でトランスを誘うグルーヴへと移行する。音楽からは伝染するような高揚感が漂い、繰り返し登場するダンス可能なテーマが、サン・ラーを彷彿とさせる未来志向の精神と共に、アルバム全体に自由に浸透していく。


ビドーだけが『Terra Incognita』のミュージシャンではない。インド生まれのタブラの巨匠サラティ・コルワーが『Rain Dance』にドラムンベースを思わせる躍動感を加え、セネガルの名手ドゥドゥ・クアテは、多彩なパーカッション、ンゴニ、フルートを随所に散りばめ、さらに力強い多オクターブのボーカルで『Dawning Dusk』においてアルバムのクライマックスを飾る。


打楽器の響きが際立つ『Drongo’s Flute』は、ピグミー・フルートと鳥のさえずりから構築された、互いに絡み合う複雑なリズム・パターンを段階的に高めていき、やがて宇宙へと昇華していく。レヴィテーション・オーケストラのマリーシャ・オスとルイス・ドメネク・プラナがそれぞれハープとフルートを奏でる一方、長年のコラボレーターであるダニエル・ブラントが『Anima』で脈打つようなエレクトロニクスを提供している。