Water From Your Eyes Photo: Adam Powell

ニューヨークのエクスペリメンタルポップ/アートロックデュオ、Water From Your Eyes(通称WFYE)の新作『It's A Beautiful Place』は8月22日にマタドールからリリースされる。無重力インストゥルメンタル「ワン・スモール・ステップ」で幕を開ける。 


このアルバムは、きらびやかなメガロポリスである。時代と音楽形式の衛星写真であり、2000年代のソングブックの再構築である。 


「結局、時間、恐竜、宇宙をテーマにした作品になりました」とネイト・エイモスは言う。 「すべてがほんの一瞬の出来事であることを認めるような形で、幅広いスタイルを提示したかったんだ」


アルバムのファースト・シングル「Life Signs」は、バンドのもう一人のメンバー、レイチェル・ブラウンが監督したミュージックビデオと同時にリリースされた。 同曲は、ニューメタル・バックビートとリズミカルなヴォーカルで始まり、WFYEの特徴であるカスケードするような天空のコーラスに激しく変化する。 ビデオでは、デュオがテレビの登場人物に扮しており、また、生涯を通じてスクリーンで繰り広げられるすべてを見守る自分たちの姿も映し出されている。


 「テレビは、常に私の最大の情熱であり、このビデオは、ジャンルの主題を試してみたいという願望から生まれた。 しかし、このメディアは、リビングルームに置ける小さな箱に無限の宇宙を収めるというアイデアにも適していると思う。 ビデオは、曲と同じくらい多くの世界を包み込み、短い数分の中で一生を表現したかった」


Water From Your Eyesは、『It's A Beautiful Place』を引っ提げ、北米とヨーロッパで大規模なヘッドライン・ツアーを行う。 前者は9月22日にフィラデルフィアでスタートし、ニューヨークのバワリー・ボールルーム、ロサンゼルスのロッジ・ルーム、シカゴのスリーピング・ヴィレッジを含む11月2日のデンバーまで続く。 後者は11月13日にロンドンのヴィレッジ・アンダーグラウンドでスタートし、12月7日にリスボンのミュージックボックスで終了する。



「Life Signs」

 

 

 

Water From Your Eyes 『It's A Beautiful Place』 


Label: Matador

Release: 2025年8月22日

 

Tracklist:

 

1.One Small Step

2.Life Signs

3.Nights in Armor

4.Born 2

5.You Don't Believe in God?

6.Spaceship

7.Playing Classics

8.It's a Beautiful Place

9.Blood on the Dollar

10.For Mankind


Pre-save: https://wfye.mat-r.co/itsabeautifulplace

 



2024年に続いて、ロンドンの注目のシンガーソングライター/ギタリストが不敵なキラーチューンを飛ばす。Nilüfer Yanya(ニルファー・ヤーニャ)が7月2日にニューEP「Dancing Shoes」をリリースする。

 

ロンドンのアーティストであるニルファー・ヤーニャは、2024年にリリースしたアルバ『My Method Actor』が圧倒的な賞賛を受け、長期のツアーで人気が沸騰中だ。(レビューを読む)

 

ライブツアーを終え、英国に戻ったニルファー・ヤーニャは、長年のクリエイティブ・パートナーでありプロデューサーのウィルマ・アーチャーを訪ね、2人は多くのアイデアを出し合った。


7月2日にリリースされるEPは、先行リリースされた「Cold Heart」、及び、昨日公開されたニューシングル「Where To Look」が収録される。 ニルファーのコメントは以下の通り。 

 

「この曲はアルバムのために書き始めたの。 でも、ツアーから戻ってきたとき、突然ピンときたんだ。 メロディ的には今までで一番気に入っている。 この曲に必要な時間と空間を与えることができたことをとても嬉しく思っています」

 

「Where To Look」のミュージックビデオが昨日公開された。逆光の影のシルエットの中、ニルファー・ヤーニャはバラの花を手に、ロマンティックなムードを演出。フルアルバムの音楽性の延長線上にあるといえ、ネオソウル風のボーカルに極大のディストーションギターが炸裂する。 

 


「Where To Look」



Nilfur Yanya 『Dancing Shoes』 EP



Label: Ninja Tune
 
Release: 2025年7月2日
 
 

Tracklist:


1. Kneel

2.Where To Look

3.Cold Heart

4.Treason

5.Play All

 

 

Pre-save: https://niluferyanya.lnk.to/dancing-shoesYo 

 Caroline 『Caroline 2』

Label: Rough Trade

Release: 2025年5月30日 

 

Listen/Stream 

 

Review

 

当初は、即興演奏を中心に息の続くかぎり演奏を続けるプロジェクトとして始まったロンドンの8人組、キャロライン。『Caroline 2』は、ミニマルミュージック、クラシック、ロック、フォーク、エモというように、きわめて多角的な音楽を盛り込んでおり、先の読めない意外性に富んだアルバムとなっている。


『1』が純粋なミニマリズムに根ざしたロックアルバムと仮定付けるなら、『2』はミニマリズムに飽きたミニマリストという呼称がぴったりかもしれない。バンドは意図的に反復性に陥ることを避け、曲の中で変則的かつ重層的な構成を試したりしている。

 

『2』は音楽的な系譜で見れば、メジャーとインディーズの双方の空気感を吸い込んだ独特なアルバムである。こういったアルバムは、”アメリカのインディーズ”そのものを意味していたが、最近こういったニッチな感じのアルトロックは米国からあまり出てこなくなった。その要因として、音楽の持つ地域性が失われ、すべてがグローバリズムの中に取り込まれてしまったからなのか。


今や、どのような辺境の地で音楽を制作していたとしても、"世界のリスナー"という、いるのかいないのかわからないポルターガイストを、なんとなく頭の隅で意識してしまうものである。そういった意味では評定は差し引いたとしても、こういった正真正銘のインディーズアルバムが出てきたことは喜ばしくもある。ラフ・トレードは、マタドール、4ADと並んで、ベガーズグループの傘下にあり、メジャーの傘下くらいしかこういったアルバムは出せない。昔であれば、クリエーションくらいしかこういったアルバムはつくらなかっただろう。

 

『2』はアメリカン・フットボールやペイヴメントのような1990年代のインディー性を吸収し、エモの空気感を吸い込んでいる。例えば、アメリカンフットボールの『LP 1』は大学卒業直前の学生のモラトリアムを表現し、シカゴの独立したシーンを記録するために録音を行った。他方、『2』は人生全般のモラトリアムを感じさせる。瞬間的な感情を反映した音の連なりがたえず明滅しながら消えたり現れたりする。それは人間の実存の証明ではあるまいか。


『2』は、ライブセッションを通じて繰り広げられる8人組のメッセージであり、それはシンプルであるように思える。やりたいことがあれば迷わずやろうということ。そして、それは後腐れない人生を送るためにはぜひ必要だろう。音楽やアートの持つ意味は考えても際限がないが、それが楽しみとあらばやってみるしかない。人生の持つ根源的な意味と直結している。現代のような高度な資本主義社会において、意味/無意味という二つのアートの狭間でキャロラインのメンバーを揺れ動き、実験的なロック/フォークミュージックを作り上げる。これは"資本主義に対する抵抗"ともいえ、大きな価値のある行為なのではないか。

 

 

ファースト・アルバムでの空間性を意識した録音手法と同じように、録音の側面において、複数の前衛主義が貫かれている。二つの別の部屋で演奏し、異なるアンビエンスを作り出す録音方式の他、「Total euphoria」を中心に相当な数のギターを重ね取りし、ボーカルも複数の録音が入っている。ボーイ・ジーニアスと同じようなボーカルの手法だが、キャロラインの場合、スタンダードな曲を書くことあまりない。以前に比べ、レディオヘッド(トム・ヨーク)風の繊細なボーカルスタイルを捉えることも出来、全般的なポストモダニズム建築のような脱構築派の音楽性が際立っている。


キャロラインのロック/フォークソングは、ブルータリズム建築のようにごつごつしているが、その中には賛美歌のような趣を持つ優雅で甘美なクワイアが入り、独唱を中心に組み立てられていく。ブルックリンのシンガー、ポラチェクをフィーチャーした「Tell Me I Never Knew That」は、『OK Computer』のソングライティングを踏襲し、それらをフォーク・ミュージックに置き換え、さらに賛美歌のような精妙なクワイアを追加している。聴き方によれば、UKロックであり、クラシックでもあり、さらに民謡でもある。イギリスの音楽の様々な側面を多面体のように映し出す。聞き手は各々の価値感により、別の音楽の側面を聴いたり体感することになるだろう。

 

前作と同じように、コーラスワークの美しさ、そしてフィドル(ヴァイオリン)やチェロのような弦楽器の使用、ケルト民謡からの影響等、キャロラインらしさが満載である。しかし、こういった中で、なぜかエモの影響を織り交ぜた楽曲が印象に残る。「Song 2」はアメリカン・フットボールをより前衛的にした感じだ。「When I Get Home」ですら、エモとして聴いてみると、アメリカン・フットボールの『LP1』のデモトラックのように聞こえて来る。もし、相違点があるとすれば、キャロラインの音楽は遅れてやってきた人生の青春期の感覚に浸されている。90年代のエモのオリジネーターと共鳴する点があるとすれば、音が感覚派であること、8人組それぞれのエモーションが、それぞれの楽器を介して緩やかに流れていくという感触である。

 

また、音量的なラウドとサイレンスを巧みに行き来し、「U R UR ONLY  ACHING」ではコレクティブのセッションとして盛り上がる瞬間を捉えられる。ボーカルにオートチューンをかけたり、突然音がフェードアウトしたりと、実験的な要素が満載だが、この曲はキャロラインの本来の魅力が出てきたかどうかはわからない。セッションがスパークする直前で踵を返すような感じがあり、前衛的な領域には足を踏み入れていない。そのため、曲全般がどっちつかずな印象を与える場合もある。 他方、アルバムの発売直前にリリースされたツインのリードボーカルを擁する「Coldplay Cover」はキャロラインらしい美麗なボーカルを楽しむことが出来るはずだ。アルバムの終盤でも、実験的な気風は衰えず、様々な音楽的なマテリアルが混在している。

 

 

ポストロック風のアプローチも登場する。「Two Riders From Down」ではマスロックに傾倒している。アルバムは以降、フォークミュージックに近づき、クライマックスを飾る「Beautiful Ending」では、ノイズ、フォーク、ロックをシームレスに行き来している。ただ、問題点は、楽曲の流れが淡々としていて、アルバムの最後に至っても、クライマックスが来たという実感がわかないことだろう。全般的にはデビューアルバムのような、鮮烈で感動的で壮大な感覚、そして器楽的な精密な構成力は薄れている。また、インプロヴァイゼーションは、次に何が起こるか分からず、驚くべき化学反応が起こる点に面白さがある。しかし、『Caroline 2』は、大所帯のグループとしての驚くようなケミストリーが発生するまでには至らず、全般的には、音楽が枠組みの中に収まりきり、心なしか予定調和の印象が目立った。これはプロデュース的な側面に重点を置いたのが主な理由かもしれない。キャロラインは現在、商業音楽と前衛音楽の間で迷い、揺れ動いているという気がした。個人的にはキャロラインのニューアルバムにはひとかたならぬ期待を込めていたが、この点だけが少し残念だった。


*キャロラインは来日公演が決定している。ぜひ伝説的なモーメントを目撃してほしい。

 

 

 

78/100 

 

 

 「Tell Me I Never Knew That」

 

Photo: Stevie Gibbs

グレッグ・フリーマン(Greg Freeman)のニューシングル「Curtain」を聴いてみよう。8月22日にTransgressive Records/Canvasback Musicから発売予定の『Burnover』の2曲目の先行曲だ。今月初めのザ・グレート・エスケープでのフリーマンの満員御礼のライブセットに続いてリリースされた。

 

この曲には、カール・エルセッサーが監督したミュージックビデオが付属し、彼の短編映画の映像が再利用されている。 下記よりミュージック・ビデオをチェックしてみてほしい。

 

フリーマンは、この曲を''ある種のラブソング''と明かし、その自然発生的なフィーリングについて触れ、ヴォーカルは、自由で洗練されていないクオリティを保つため、最初のテイクが使用されたと語る。 この曲は、納屋の動物の鳴き声のような繊細なタッチが特徴で、フリーマンは、"曲を本当に作った "要素として、カムとサムのソプラノ・サックスとピアノの演奏を挙げている。

 


先行リリースされたシングル「Point and Shoot」はUncut、The Line of Best Fit、Stereogum、Paste、Brooklyn Vegan、Consequenceに賞賛され、今夏のアルバム・リリースへの期待度が高まっている。


グレッグ・フリーマンにとって、先月は忙しい日々だった。 ハミルトン・ライタウザー(ザ・ウォークメン)とのアメリカ・ツアーに始まり、グレート・エスケープ、ドット・トゥ・ドット・フェスティバルへの出演を含むヨーロッパでのヘッドライナー・ツアーを終えたばかり。 


フリーマンは、7月19日にニューヨークのノックダウン・センターでThis Is Loreleiと共演し、その後8月からEUでヘッドライナー・ツアーを行い、10月には、Grandaddyをサポートする全米ツアーで締めくくる。

 

2022年にデビューアルバム『I Looked Out』をひっそりとリリースした時は、PRキャンペーンもレーベルも音楽業界のプロモも行われなかったが、著名な批評家から賞賛を集めた。UPROXXのスティーヴン・ハイデンは''2023年に発見した2022年のお気に入りアルバム''と評した。Paste Magazineは「2020年代のベスト・デビュー・アルバム25選」にこの作品を選んだ。 このリリースの口コミでの成功により、フリーマンは容赦ないツアースケジュールをこなすようになった。

 

『Burnover』に収録された10曲は、エネルギッシュなインディー・ロックとアンブリング・ツワングが融合した、爆発的で、不穏で、紛れもない作品だ。 


「Curtain」を聞けばわかる通り、フリーマンがリメイク/編曲を行ったため、このアルバムは本来の輝きを増すに至った。元々、蛇行するギタージャムのデモが作られたが、ピアニストのサム・アタラーがスタジオでタック・ピアノのテイクを録音し、楽曲全体が新しく生まれ変わったのだ。


生き生きとしたリードボーカルが曲を活性化させる。特にフリーマンが "My thoughts die out slowly on the blood swept plains where I see you every night / And to the lonely hours, it's like burning the furniture to keep the house bright at night "と歌っている。("僕の思いは、毎晩君を見かける血に塗れた平原でゆっくりと死に絶え/ 孤独な時間には、夜、家を明るく保つために家具を燃やすようなものだ'')


「サムがピアノを置いたとたん、私たちはこの曲を自然体で聴くことができたし、そして生き生きとした内容になった」とフリーマンは言う。 『Burnover』はフリーマンの最も冒険的でパーソナルな作品であり、さらにソングライティングの特異な才能を確固たるものにしている。

 


「Curtain」

 

 



Gred Freeman    『BURNOVER』 (New Album)



TRACKLIST:

Point and Shoot

Salesman

Rome, New York

Gallic Shrug

Burnover

Gulch

Curtain

Gone (Can Mean A Lot of Things)

Sawmill

Wolf Pine


Pre-save: https://transgressive.lnk.to/burnover

 

 

GREG FREEMAN Tour Date:

 

AUGUST

28th - 31st End of the Road Festival, DORSET

 

SEPTEMBER

1st    The Albert, BRIGHTON

2nd    The Lexington, LONDON

5th    Brudenell Social Club, LEEDS

6th    The Hug and Pint, GLASGOW

7th    The Workmans Club, DUBLIN

9th    YES, MANCHESTER

10th   Clwb Ifor Bach, CARDIFF

11th   Hare and Hounds, BIRMINGHAM

13th   Ekko, UTRECHT

14th   Blue Shell, COLOGNE

15th   Molotow, HAMBURG

17th   Bar Brooklyn, STOCKHOLM

18th   Vega, COPENHAGEN

19th   Lark, BERLIN



‘Curtain’ is the new single from Greg Freeman and the second to be revealed from his forthcoming album ‘Burnover’, set for release on 22nd August via Transgressive Records/Canvasback Music. The single arrives following Freeman’s packed out set at The Great Escape earlier this month.

 

The song is accompanied by a music video directed by Carl Elsaesser and uses repurposed footage from one of Carl’s short films. Describing the track as “a love song of sorts,” Freeman noted its spontaneous feel, sharing that the vocals were likely a first take to preserve a free-flowing, unpolished quality. The song features subtle touches like barnyard animal sounds, but Freeman credits Cam and Sam’s performances on soprano saxophone and piano as the elements that “really made the song."

 

‘Curtain’ follows the previously released single ‘Point and Shoot’ which received acclaim from outlets like Uncut, The Line of Best Fit, Stereogum, Paste, Brooklyn Vegan, and Consequence, building anticipation for the album’s release later this summer.

 

The last month has been busy for the rising singer songwriter. He started off the month on tour in the US with Hamilton Leithauser (The Walkmen) and just wrapped up a headlining tour in Europe, including festival appearances at The Great Escape & Dot to Dot Festival. Looking ahead, Freeman will be playing with This Is Lorelei at NYC's Knockdown Center on July 19th, followed by another headlining EU tour starting in August, and then will be capping it off with an October U.S. tour supporting Grandaddy.

 

When Freeman quietly released his debut LP I Looked Out in 2022, it had no PR campaign, label, or music industry promo, but still garnered praise from notable critics, with Steven Hyden of UPROXX calling it “my favorite album of 2022 that I discovered in 2023,” and Paste Magazine naming it among the 25 Best Debut Albums of the 2020s. The word-of-mouth success of that release had Freeman on a relentless tour schedule.

 

Explosive, unsettling, and undeniable, the 10 tracks presented on Burnover meld energetic indie rock with an ambling twang. The album truly shines when Freeman tweaks the formula, like on today's release, ‘Curtain’. Originally demoed as a meandering guitar jam, the track came to life when pianist Sam Atallah tracked a tack-piano take at the studio. His lively leads invigorate the song, especially as Freeman sings lines like, “My thoughts die out slowly on the blood swept plains where I see you every night / And to the lonely hours, it’s like burning the furniture to keep the house bright at night.” Freeman says, “As soon as Sam laid down the piano, we heard the song for what it was and it came alive.” Burnover is Freeman’s most adventurous and personal yet, cementing him as a singular songwriting talent.



ロックソングを聴いていて、ぶっ飛ぶような経験をすることは稀有である。しかし、UKのポストパンクバンド、Shameはそういった貴重な経験をさせてくれる数少ないバンドだ。彼らはオアシスからペイブメントまで限りないロックを鉱脈を探り、驚きのある音楽的な体験を授けてくれる。

 

Shameの待望の4枚目のアルバム『Cutthroat』を発表した。9月5日にDead Oceansからリリースされる リードシングルでオープニングトラックの「Cutthroat」を以下で聴くことができる。


『Cutthroat』は、Shameの2023年のアルバム『Food for Worms』に続く作品で、世界的に有名なプロデューサー、ジョン・コングルトンがプロデュースし、12曲の新曲が収録されている。 

 

このアルバムについて、フロントマンのチャーリー・スティーンは次のように語っている。 「現実を直視しようぜ、なんて、今、周りにはそんな奴らが大勢いるんだよ」


バンドは長い共同声明でその態度を拡大し、レコードの表面下にある落ち着きのない衝動をほのめかしている。 「それはハングリー精神によるものだ。 より良いものへの渇望ともいえる。 それは原始的なものだ。 原始的だ。 生々しく、 無愛想。 招かれざる客としてパーティに現れる。 押し倒されたら、もう上がるしかない。 何も持っていないとき、失うものは何もないんだ」


リード・シングルの「Cutthroat」は、サイケデリックな色合いを帯びたドライヴ感のあるアレンジを中心に構成されており、アルバムの傲慢さと不安感の混同を紹介している。

 

オスカー・ワイルドの戯曲をたくさん読んでいた。そこではすべてが逆説的な意味が込められていた。『 Cutthroat』では、『Lady Windermere's Fan(ウィンダミア夫人の扇風機)』に出てくる、"真剣に考えるには人生はあまりにも重要すぎる "という考え方が全面に出ているんだ」


そのために、スティーンはこのアルバムをバンドのライブ・パフォーマンスになぞらえた。 「これは、僕らが何者であるかということなんだ。 私たちのライブはパフォーマンス・アートではなく、直接的で、対立的で、生々しい。 それが僕らの根源だ。 私たちはクレイジーな時代に生きている。 でも、それは『かわいそう』ってことじゃない。 『ファック』ってことなんだよ」

 

こういった生意気な自己認識も重要となるかもしれない。Shameは、威勢やエゴの泡を吹き飛ばし、鏡を見て、「最初の石を投げる者は...」と自問自答するよう促したいのと同様に、その根底には、人生はしばしば滑稽なものだということも理解している。結果、このアルバムは、人生の特異性を楽しみ、眉をひそめ、時折機転を利かせてはぐらかされるような醜い疑問を投げかけている。

 

しかし、『Cutthroat』から導出される答えは、「今、恥はかつてないほどいい音をしている」ということだ。

 

 

「Cutthroat」

 

 

 

 

Shame 『Cutthroat』 


Label: Dead Oceans

Release: 2025年9月5日

 

Tracklist:


1.Cutthroat 
2.Cowards Around
3.Quiet Life
4.Nothing Better
5.Plaster
6.Spartak
7.To and Fro
8.Lampião
9.After Party
10.Screwdriver
11.Packshot
12.Axis of Evil 

 

Pre-save: https://shame.lnk.to/cutthroat-LP  


テネシーのシンガーソングライター、Marissa Nadler(マリッサ・ナドラー)が10枚目のフルアルバム『New Radiations』をSacred Bonesからリリースする。 今年、Spelllingの新作をリリースし勢いに乗るレーベルの待望の新作は女性シンガーソングライターのアルトフォークとなる。


最初の一音から、ナドラーのみずみずしい歌声と複雑なフィンガーピッキングが前面に出ている。 ファズがかったディストーション、ハモンド・オルガン、不吉なシンセサイザーなど、夢のようで寂しげなサウンドスケープにエヴァリー・ブラザーズ・スタイルのハーモニーを重ねる。 各トラックは、まるで生きてきた人生のヴィネットのように展開し、静かな激しさをもって響く感情の重みを伝える。


このアルバムはリードシングルに見いだせるようなフォークを基調としたポップソングを中心に構成されているが、その荒唐無稽とも呼ぶべきイマジネーションがアルバムの核心には存在する。空飛ぶセスナ機、宇宙船、逃走用の車、そして異次元の世界.......。 甘くキャッチーなメロディーとダークで直感的な歌詞のコントラスト。 一人称の物語から歌おうが、他の人々とチャネリングしようが、このアルバムは愛と喪失の普遍性を重厚さと共感をもって表現している。


『New Radiations』はナドラー自身がプロデュースし、ランダル・ダン(Earth、Sunn O)))がミックスした。長年のコラボレーターであるミルキー・バージェスによる繊細なアレンジが特徴で、ウージーなスライド・ギター、催眠術のようなシンセサイザー、硬質なリフが印象的だ。 

 

ジャンルにとらわれない彼女らしいこのアルバムは、世界のノイズを一瞬の美しさと荘厳さで凍りつかせる。 マリッサ・ナドラーの唯一無二のビジョンと芸術性の証であり、キャリアのハイライトである。

 

アルバムの発表と合わせて公開されたリードシングルはタイトル曲である。アコースティックギター/ボーカルを中心に構成されるこの曲はシンガーソングライターの悲しみを体現させている。

 

 「New Radiations」 

 

 

 

Marissa Nadler 『New Radiations』  




Label: Sacred Bones

Release: 2025年8月15日


Tracklist:

 

1. It Hits Harder

2. Bad Dreams Summertime

3. You Called Her Camelia

4. Smoke Screen Selene

5. New Radiations

6. If It's An Illusion

7. Hatchet Man

8. Light Years

9. Weightless Above The Water

10. To Be The Moon King

11. Sad Satellite

 

 

Pre-save :https://bfan.link/new-radiations 

 


ニュージーランドのシンガーソングライター、Bret Mckenzie(ブレット・マッケンジー)がニューアルバム「Freak Out City」を8月15日にリリースする。正式に言えば、「家族の日」という祝日があるという話を聞いたことはないが、もし存在するならこのアルバムが最適だろう。

 

ブレット・マッケンジーは俳優として世界的に活躍し、ロード・オブ・ザ・リングにも出演経験がある。俳優からミュージシャンへ転向した『Songs Without Jokes』では、実力派シンガーソングライターの片鱗を見せた。

 

ブレット・マッケンジーはグラミー賞とアカデミー賞を受賞したアーティストで、自身のバンド「フライト・オブ・ザ・コンコーズ」とその名を冠したテレビ番組で最もよく知られている。

 

マッケンジーは、主に映画やテレビのために、面白く、奇妙で、ユニークな曲を歌ったり、脚本の執筆などで国際的に知られている。

 

ブレットの曲は、カーミット・ザ・フロッグ、セリーヌ・ディオン、リゾ、ベネディクト・カンバーバッチ、ブリタニー・ハワード、ホーマー&リサ・シンプソン、フレッド・アーミサン、ミス・ピギー、エイミー・アダムス、ジェイソン・シーガル、リッキー・ジャーヴェイス、ベニー、イザベラ・マーセド、スポンジ・ボブ、トニー・ベネット、ミッキー・ルーニーなどが歌っている。


若い頃、ブレット・マッケンジーは、ウェリントンの音楽シーンで活躍し、複数のジャンルのバンドで演奏していた。レゲエ・ファンクの人気バンド、ザ・ブラック・シーズの創立メンバーであり、その後、複数のゴールド・アルバムを制作し、世界中で大規模なツアーを行った。

 

また、ウェリントン・インターナショナル・ウクレレ・オーケストラを結成し、10人編成のウクレレ・グループとして驚異的な人気を博し、実験的なエレクトロニカ・アンサンブル、ダブ・コネクションで演奏し、ビデオ・キッドという別名でインディー・ポップ・エレクトロのレコードを制作し、ミニチュア楽器を演奏するバンド、ザ・シュリンクスから企業向けのカルテット、ザ・カナペスまで、さまざまなジャズ・グループで演奏した。

 

同時に、ブレットは地元の演劇シーンにも深く関わり、数え切れないほどの創作コメディー演劇作品に定期的に出演し、長年のコラボレーターであるジェメイン・クレメンをはじめとする演劇アーティストの大きなコミュニティと親交を深めた。

 

ニュージーランドのソングライターであるブレット・マッケンジーは、コメディ・デュオ、フライト・オブ・ザ・コンコーズの一員として一躍有名になった。しかし、その一方で、ランディ・ニューマンやハリー・ニルソンに影響を受けた、心の奥底から湧き出るような曲も書いている。

 

2022年発表のアルバム『Songs Without Jokes』はデビュー作であり、リセット作でもあった。『Freak Out City』は彼の次のステップであり、8人編成のバンド、ザ・ステイト・ハイウェイ・ワンダーズとともにニュージーランドとアメリカ全土でライブを行いながら制作された。

 

8月15日にリリースされるこのアルバムは、ロサンゼルスとニュージーランドの両方でレコーディングされ、ブレットと長年のコラボレーターであるミッキー・ペトラリアが共同プロデュースした。ニュー・シングル「All I Need」は、ビートルズ/ストーンズライクのロックンロール、ソウルファンクとブルースを融合した人生の円熟味を漂わせる楽曲だ。エレクトリックピアノ、ゴスペル風のコーラス、そしてマッケンジーのブルージーな歌声が音楽の合間を変幻自在に戯れる。この曲の温かいエモーションは、妻への愛情やファミリアーを表したものだという。

 

「これは妻のハンナへのラブソングなんだ。 僕たちは長い間一緒にやってきたし。 僕たちはいつも愛し合っているけれど、正直に言うと、もっと愛し合っている日もある。 この曲は、そんな中でも特に愛し合っていた日の曲なんだ」とマッケンジーは説明する。

 

 

 「All I Need」

 

 

  

2000年、ロード・オブ・ザ・リング第1作『指輪の仲間』にエキストラとして出演した彼は、思いがけず背景のエルフとして一躍有名になり、トールキン・ファンの異常な注目を集めた。彼は 「Frodo is great, who is that? 」の頭文字をとってFigwitと呼ばれた。


同じ頃、この多産なウェリントンの芸術コミュニティから『フライト・オブ・ザ・コンチョーズ』が生まれ、ブレットはバンド仲間のジェメインとともにオーストラリア、カナダ、イギリスのコメディ・フェスティバルを数年間回った。BBCのラジオ番組に続き、HBOのテレビ番組もカルト的な人気を博し、ふたりは国際的な名声を獲得した。サブ・ポップ・レコードからEP1枚とアルバム3枚をリリースし、2008年にはグラミー賞最優秀コメディ・アルバム賞を受賞した。

 

フライト・オブ・ザ・コンチョーズでの活動により、ブレットはコメディと音楽の両エンターテインメントの世界で確固たる地位を築き、アメリカ映画界への扉を開いた。それ以来、彼は一貫して映画やテレビのプロジェクトに携わっている。2012年にはディズニー映画『ザ・マペッツ』のバラード「Man or Muppet」でアカデミー賞オリジナル楽曲賞を受賞。

 

この間、ブレットと妻ハンナ・クラークには3人の子供が生まれ、ブレットは家族と一緒にニュージーランドの自宅で過ごせるプロジェクトに集中し始めた。2022年、ブレットはソロアルバム『Songs Without Jokes』をリリースし、パンチラインのない曲作りを探求した。FarOut』誌は、この曲を「カート・ヴォネガットの小説のミュージカル版のようだ」と評した。


 

Bret Mckenzie 『Freak Out City』 



Label: Sub Pop

Release:  2025年8月15日

 

Tracklist:

 

1.Bethnal Green Blues
2.Freak Out City
3.The Only Dream I Know
4.All the Time
5.That's the Way That the World Goes 'Round
6.All I Need
7. Eyes on the Sun
8.Too Young
9. Highs and Lows
10.Shouldna Come Here Tonight

 

Photo: Bobby Doherty

ニューヨークのフォークプロジェクト、Big Thiefがニューアルバムをアナウンスした。『Double Infinity』はグラミー賞にノミネートされた2022年のアルバム『Dragon New Warm Mountain I Believe In You』に続く作品で、昨年の冬にニューヨークのパワー・ステーションでレコーディングされた。 


トリオは3週間、ブルックリンとマンハッタンを結ぶ凍てついた道を自転車で走り、パワー・ステーションの温かみのあるウッドパネル張りの部屋に集合した。  


アレナ・スパンガー、ケイレブ・ミッシェル、ハンナ・コーエン、ジョン・ネレン、ジョシュア・クラムリー、ジューン・マクドゥーム、ララアジ、ミケル・パトリック・エイブリー、マイキー・ブイシャスといったミュージシャンとともに、彼らは1日9時間演奏し、同時にトラッキングを行い、即興でアレンジを作り、集団的な発見をした。 


アルバムは最小限のオーバーダビングでライヴ録音された。  プロデュース、エンジニアリング、ミックスは、長年ビッグ・シーフとコラボレートしてきたドム・モンクスが担当した。


"生きている美しさとは、真実以外の何ものでもないのだろうか?" リード・シングルの「Incomprehensible」で、エイドリアンヌは子供の頃の思い出の品々を未来に突きつけながら問いかける。  


彼女は、"これから見るものすべてが新しいものになる "と理解している。  肩の銀髪も新しい。 しかし、老いに対する恐れは、その証明によって打ち砕かれる。  


人生が生きることによって形作られるのであれば、"重力に彫刻を、風に髪を任せて"。  生まれること、そしてしばらくとどまることは、最大の謎のままである。  エイドリアンヌは自分の場所と時間を主張する。 "理解しがたい存在よ、私をそうさせて" 


リードシングル「Incomprehensible」はビックシーフのアルトフォークが新境地に到達したことを窺わせる。実験的な音楽性だが、そこにはやはりこのバンドらしい繊細な抒情性が漂っている。



「Incomprehensible」

 




Big Thief     『Double Infinity』




Label: 4AD
Release: 2025月9月5日


Tracklist:

1. Incomprehensible
2. Words
3. Los Angeles
4. All Night All Day
5. Double Infinity
6. No Fear
7. Grandmother
8. Happy With You
9. How Could I Have Known


Pre-order(日本国内はBeatinkで予約受付中): https://bigthief.ffm.to/doubleinfinity

Yeule  『Evangelist Is A Gun』 

 

Label: Ninja Tune

Release: 2025年5月30日

 

Listen/Stream

 

 

Review

 

Yeuleの存在が一般的に知られるところとなったのは2023年のアルバム『Softcars』だったが、Nat Cmielは2012年頃から活動している。前作アルバムはハイパーポップの性質が強かったが、今作ではメロディーメイカーとしての真価を発揮している。トリップ・ホップ、ダンス・ポップ、ハイパーポップ、J-POP/アジアのガチャポップを中心に多角的な音楽性を探っている。

 

邦楽に関しては影響のほどは定かではないにせよ、2000年代以降のポップソングの影響がボーカルのメロディーラインの節々に感じ取ることが出来る。もちろん、Yeuleのプロジェクト名は、FF(Final Fantasy)から来ているし、ゲーム音楽やアニメ、アングラ/サブカルチャーへの親和性も深い。そう、日本政府の主導した「クール・ジャパン政策」は確かに海外に普及していたのだ。

 

Yeuleは、UA,Charaといった平成時代のボーカリストのタイプに近い。印象論として、2010年代以降の日本のポップスは、その前の音楽的な完成度の高さや洗練度を、一部のアーティストを除いて、引き継ぐことが出来なかった。ある意味では、平成時代以降の音楽は、どこかで断絶しているような印象すらある。これは実をいうと、日本の音楽産業が下火になった時代と呼応するような形である。5年前の音楽は聴いたことがあるけれど、10年以上前の音楽は聞かない。結局のところ、一般的に音楽に大きく投資することが難しいのが現在の日本の台所事情である。Yeuleのような音楽的な体現力は、日本国内のシンガーには見出すことが難しく、あったとしても散発的に止まってしまう場合が多い。これは日本のミュージシャンが日本国内の音楽的な系譜や流れを見落としているのではないかと指摘したい。これは、腰を据えて音楽にじっくり取り組もうという土壌がなかなか作られないという側面があることを付言しておきたい。

 

 

 『Evengelist Is a Gun」はかなり毒々しいアルバムになるのでは、と予測していたが、意外とそうでもなかった。そして前作よりもソングライティングとして磨きがかけられ、音楽的な幅広さもましている。その中で、Yeuleらしさというべきか、少し毒々しいイメージのあるボーカルを音楽的なキャンバスに塗り上げる。これらの棘ともいうべきテイストは、前作から引き継がれたものである。アルバムを聴いて分かる通り、2000年前後の日本には結構あった音楽もある。ただ、それらを高いレベルで再現する力量、そしてチャーリーCXCのようなSSWからうまくヒントを掴んで、ポップスのセンスやトラック制作の技術に活かしたりと、新旧の音楽を巧みに織り交ぜる。アルバムの音楽は、アーティストの音楽的な好きを活かし、幅広い世界観を作り上げる。ただ、この音楽的な洗練度は、短期間ではどうにもならず、10年以上熱心に取り組んでいないと、完成されないだろう。Yeuleのやっている音楽は、簡単なようでいて、かなりハイレベルである。

 

 

「Tequila Coma」では、トリップホップを中心に、レーベルの得意とするヒップホップ的なビートの要素をふんだんにまぶし、アンニュイだが心地よいポップスを作り上げていく。ところどころに、マスタリング的な実験が行われ、ボーカルのフレーズの最後の波形を抽出し、それらにディレイ系のエフェクトをかけたり、また、ドラムにダビーな効果を加えたりと、短いシークエンスの中で様々な試みが行われている。しかし、全般的には、ヴォーカルのメロディーの音感的な良さは一貫して維持されている。曲を聴いたときの印象を大切にしているのだろう。1分55秒には、ギターのリサンプリングを用い、Portisheadの『Dummy』のトリップホップサウンドを蘇らせる。ターンテーブルのレコードを回すときのチョップの技法を再現させている。

 

「The Girl Who Sold Her Face」は大胆にも、デヴィッド・ボウイの名曲のオマージュとなっているが、音楽的にはアジアのポストポップに近いスタイルである。その中で、少し毒々しい感覚を交えながら、チャーチズのようなダンサンブルなポップスを展開させている。ただ、明確にサビの構成を作り、バンガー的な響きを作り上げる点については、アジアのポップスに近似する。というように、音楽的には相当、カオスでクロスオーバーが進んでいることがわかる。

 


前作ではトランスヒューマニズムのような近未来的なセンスを生かしたが、今回は対象的に、原点回帰をした印象がある。そしてより人間的な何かを感じさせる。前作から引き継がれた心地よく軽快なベッドルームポップソングを続く「Eko」で楽しむことが出来る。この曲はガチャポップなどでもよくあるトラックだが、ピッチがよれて音程がずれてもそのままにしている。ピッチシフターを使用するのは限定的であり、音楽的な狙いや意図がある場合に限る。欠点を削ぎ落とすと、長所も消えるので、それほど不自然なエフェクトはかかっていない。

 

 

グランジロックからの影響を交え、それらをオルタナティヴなポップソングに組み替えた曲もある。「1967」 は、Yeuleらしいダウナーな感覚を活かして、Alex Gの系譜にあるループサウンドやカットアップ(ミュージック・コンクレート)のインディーロックのソングライティングを交え、中毒性の高い曲を完成させている。音楽好きの"リピートしてしまう"という謎の現象を制作者側から体現させた風変わりなポップソングだ。メロディーメイカーとしての才覚が遺憾なく発揮されている。アルトポップ・ファンにはたまらない一曲となるだろう。

 

 

一転して、「VV」はイェールらしからぬ一曲である。アーティストの凝り性の一面を巧みに捉えている。しばし毒々しくダウナーな感覚から離れて、それとは対極にある高い領域を表現しようとしている。この曲では、beabadoobbeの系譜にあるポップセンスをベースに、フォーク/エレクトリックの融合であるフォークトロニカを付け加える。エレクトロニカをダンサンブルにアレンジして、そこにイェールらしい個性をさりげなく添えている。 土台となる音楽に対して、必ず画家の署名のようなものを書き添えるのが、Yeuleのソングライティングのスタイルである。それと同時に、アコースティックギターとヴォーカルの組み合わせは、さわやかな感覚を呼び起こす。

 

というように、テクノロジーの進化が目覚ましい現代社会において人間としてどのように生きていくのかというテーマがこのアルバムの重要なポイントを成している。それは、ディアスポラをポピュラー・ソングから追求したサワヤマの系譜を受け継いでいる側面もある。 その中で、より大掛かりな背景を持つポップソングも提示される。

 

「Dudu」はヨーロッパのダンスミュージックの影響を活かして、軽妙な雰囲気を持つポップソングに仕上げている。現在のアーティストの制作の中でダンスミュージックの割合や重要度が高いことを伺わせる。アルバムの事前のイメージは完全に払拭され、ファンシーなポップソングが続いている。

 

「What3vr」ではヒップホップのビートを下地にして、エレクトロ・ポップをアップデートしている。この曲でも叙情的なメロディーという側面は維持され、そしてそれらがエクスペリメンタルポップやハイパーポップとうまく結び付けられている。ポップソングのトラック制作の見本のような一曲。

 

「Saiko」は、Dora Jaのような最新のエクスペリメンタルポップのサウンドと肩を並べるべく、アルトポップの高みに上り詰めようとしている。意外性のある展開に富み、従来のグリッチを多用したビート、転調や移調を繰り返すボーカル、ミュージックコンクレートの形で導入されるアコースティックギターというように、断片的な音楽のサンプリングの解釈を交えたとしても、音楽のストラクチャーは崩れない。これは全般的な構成力が極めて高いからである。しかし、かなりハイレベルなことをやっていても、表向きに現れるのは、モダンな印象を持つキャッチーなポップソングである。この曲でも、自身の音楽がどのように聴かれるのかをかなり入念にチェックしているという印象がある。そして実際的に、表向きのイメージを裏切るような形で持ち前のファンシーな世界観を完成させる。

 

アルバムの後半ではエクスペリメンタル/ハイパーポップの性質が強くなる。 これらの多角的な音楽性を作るための"保護色の性質"は、現時点のイェールの強みといえよう。タイトル曲ではロボットボイスをヒップホップ的に解釈し、エレクトロ・ポップに昇華している。これは専門のミュージシャンではないからこそ出来る試みだろう。「Skullcrusher」はホラームービー的で、ダークなアンビエントポップ、もしくはメタリックなハイパーポップともいうべき一曲である。ホラー映画「I Saw the TV Glow」のサウンドトラックを聴いた人であれば、ピンと来るのではないだろうか。これらのホラー要素は現在のアーティストのユーモアセンスの肩代わりとなっている。

 

 

 

 

84/100 

 

 

 

「1967」

 


Superchunkは、13枚目のスタジオ・アルバム『Songs in the Key of Yikes』を発表した。 Mergeから8月22日にリリースされるこのアルバムには、先にリリースされたロザリとのコラボ曲「Bruised Lung」に加え、新たに公開されたオープニング・トラック「Is It Making You Feel Something」が収録されている。 アルバムのジャケット・アートワークとトラックリストは以下より。


『Songs in the Key of Yikes』は、2022年の『Wild Loneliness』に続くアルバム。長年のドラマーであったジョン・ワースターが翌年にバンドを脱退して以来のアルバムとなる。 ローラ・キングがツアー・ドラマーとして2年間活動した後、現在はパーマネント・メンバーとなっており、アルバムにはクイヴァーズのベラ・クインランとホリー・トーマス、ツアー・ベーシストのベッツィー・ライトも参加している。 

 

エンジニアはポール・ヴォラン(ザ・メンジンガーズ、リフ・ラフ万歳)とイーライ・ウェブ、ミックスはマイク・モンゴメリー(ザ・ブリーダーズ、プロトマーティア)が担当した。


「バンドのマック・マコーガンはプレスリリースの中で、"誰もが自分では気づかないような何かを経験しているものだ。 「これは現在、かつてないほど真実であるが、同時に、私たち全員が一緒に何かを経験しているということでもある。 そのような状況の中で、芸術は何の役に立ち、幸せはどこにあるのだろうか? (私は知らない)」


この曲は、言葉や音楽を書くという非常に二の足を踏みやすいプロセスにおいて、自分自身を二の足を踏まないことについて歌っている。 この曲は、"誰がこれを必要としているのか、何の役に立つのか "という正当な疑問について歌っている。 何かを感じさせてくれるか? それがスタート地点なんだ」



「Is It Making You Feel Something」






Superchunk 『Songs in the Key of Yikes』


Label: Merge

Release: 2025年8月22日


Tracklist:


1. Is It Making You Feel Something

2. Bruised Lung

3. No Hope

4. Care Less

5. Climb the Walls

6. Cue

7. Everybody Dies

8. Stuck in a Dream

9. Train on Fire

10. Some Green


 

オリヴィア・ディーンがニューシングル『Nice To Each Other』をリリースした。複数のBRIT賞とマーキュリー賞にノミネートされたアーティストのソウルフルなヴォーカルを、爽やかなギターに乗せたこの曲は、リアン・ラ・ハヴァスやピンク・パンテレスなどのアーティストとの仕事で知られるマット・ヘイルズとザック・ナホームと共にレコーディングされ、ジェイク・アーランドが監督したワンテイクショット・ビデオは以下の通り。 ディーンはこう語っています。


"Nice To Each Other "は、デートにおける自分の自立を探ることの押しと引きについて歌った曲だ。 この曲は、今現在の誰かを楽しむこと、そしてそれが軽快で有意義なものになることを歌っているんだ。 この曲とビデオは、私の中の遊び心を表していると思う。


「Nice To Each Other」は、キャピトル・レコードから9月26日にリリースされるディーンのセカンド・アルバム『The Art of Loving』に収録されます。 


ディーンはこの夏、ロンドン、ニューカッスル、マンチェスター、エディンバラで開催されるサム・フェンダーのUK公演をサポートし、6月11日にはロンドンのO2シェパーズ・ブッシュ・エンパイアで故郷を祝う新たなギグを行なう。 チケットは6月9日(月)午前10時より一般発売開始。 また、7月6日にはロンドンのBSTハイド・パークでサブリナ・カーペンターをサポートする。 その後、彼女は夏のAcross The Atlantic北米ツアーに出発する。


「Nice To Each Other」



『The Art of Loving』は、2023年のデビュー作『Messy』に続く作品となる。 デビュー・アルバムはイギリスのオフィシャル・アルバム・チャートで4位を記録し、同年のマーキュリー・プライズにノミネートされたが、最終的にエズラ・コレクティヴの『Where I'm Meant to Be』に敗れた。 


今年初め、ディーンは『ブリジット・ジョーンズ』でフィーチャーされた「It Isn't Perfect But It Might Be」をリリース。 マッド・アバウト・ザ・ボーイ』でフィーチャーされ、オフィシャルシングルチャート36位にランクインしました。 この曲が今度のアルバムに収録されるかは未定です。


Olivia Dean  『The Art of Living』


Label: Capital

Release: 2025年9月26日


*収録曲は未公開



 チャート上位のミュージシャン、委嘱作曲家、作家、受賞歴のある教師、講演者、スタジオ・オーナーであるコーリー・カリナンが、ミュージシャンでシンガーソングライターのライリー・マックスをフィーチャーした新しいアヴァンギャルドで実験的な音楽と映像の体験「2025 Alive」をお送りします。  ハイテクの即興音楽は、「2025年に生きているために起こっているすべてのクレイジーなこと」に影響されているとコーリーは宣言している。 


このショート・ミュージカル・フィルムは、グラミー賞受賞者などを起用したミュージックビデオの監督、作曲家・編集者として環境ドキュメンタリーの制作、米国グリーン商工会議所のソーシャルメディア・デザイン、世界最大の環境非営利団体(ネイチャー・コンサーバンシー)史上最大のエンゲージメントを確保したキャンペーンやソーシャルメディア・コンテンツの制作など、高い評価を得ているクリエイター、シドニー・カリナンが監督・制作した。


コーリー・カリナンは、チャート上位のミュージシャン、委嘱作曲家、作家、受賞歴のある教師、講演者、スタジオ・オーナーである。 彼の新作は、『2025 Alive』と題されたカタルシスをもたらす多世代マルチメディア・コラボレーションだ。 ストリーミング・サウンドトラックは、彼と彼の娘でシンガーソングライターとして高く評価されているライリー・マックスによるハイテク即興演奏で、映画は彼の娘シドニー・カリナンによる映画的ファンタジアである。 これらの作品は、この型破りな文化の年に私たちが抱いた無数の思いや感情を表現している。 新しいアイデアのテスト。 現代世界における古い考えのテスト。 スタミナ。 意志の力。 知力。 共感。 愛国心。


彼はさらに、「2025 Aliveは全編を通してヴォーカルが入っているが、歌詞は1つだけだ」と打ち明ける。「 "テスト"。 この言葉は、現代世界の多くのことと同じように、すぐに解体され、バラバラになる。 現在の出来事が、あなたが愛していた文化の中であなたの決意を試しているのか、あるいは、私たちが規範をどこまで壊せるか、あるいは改革できるかを試している人々を支持しているのかにかかわらず、この前提は、あなたが2025年に経験していることに当てはまります。 私たちは、この驚くべき、そして圧倒されるような年に、あなたが私たちの仕事を有意義なものだと感じてくださることを願っています」



 Cory Cullinan is a chart-topping musician, commissioned composer, author, award-winning teacher, speaker, and studio owner. His new release is a cathartic multigenerational multimedia collaboration entitled 2025 Alive. The streaming soundtrack is a high-tech improvisation by himself and his daughter acclaimed singer-songwriter Riley Max, and the film is a cinematic fantasia by his daughter Sidney Cullinan. He shares, "They express the myriad of thoughts and feelings we’ve had during this unconventional cultural year that, regardless of where you stand… feels like a test of some sort. A test of new ideas. Of old ideas in a modern world. Of stamina. Willpower. Intellect. Empathy. Patriotism."


He further confides, "2025 Alive has vocals throughout but only one lyric: “Test.” This word is immediately deconstructed and splintered into pieces, like so much in our modern world. Whether current events are testing your resolve in a culture you loved, or you support those who are testing just how far we can break or reform our norms, this premise is apropos of what you are experiencing in 2025. We hope you find our work meaningful in this amazing and overwhelming year to be alive."