UK/ロンドンを拠点に活動するDJ、プロデューサー、マルチ・インストゥルメンタリストのLawrence Hart(ローレンス・ハート)が、待望のデビューアルバム『Come In Out of the Rain』を4月4日にリリースする。テックハウスやディープ・ハウスを得意とするプロデューサーだ。 

 

アルバムの発表と合わせて、リードシングル「Love U Bring」が公開された。爽快感のあるEDMのナンバー、オートチューンをかけたヴォーカルトラックで、今夏のダンスフロアを揺るがす。

 

”Love U Bring"は、ハートの使命に忠実で、神経質なエネルギーに満ちたアップビートなトラックで、スキットでブレイクなビートと、チョップされピッチシフトされたヴォーカルサンプルが、伸びやかなベースと落ち着いたメロディックなシンセ・コードによって重みを増している。テックの魔術師であるハートは、幼少期にクラシック音楽の訓練を受けた。 

 

15歳でニューヨークの名門音楽学校のオーディションを受け、SUNYパーチェイスでジャズ・トランペットを学び、ボブ・ムーヴァー(チャーリー・ミンガスやチェット・ベイカーのコラボレーターだった)のような偉大なミュージシャンとともにニューヨークで最も尊敬されるジャズ・クラブで演奏した。

 

やがてハートはエレクトロニック・ミュージックとクラブに出会い、インスピレーションを得る。ダブル・シックス/ドミノ・アーティストのジョージ・フィッツジェラルド(George FitzGerald)とは長年の親交がある。

 

また、Hotflush、Attack Decay Sweet Release、LG105、そして自身のレーベルSSEMからソロ・シングル、EP、リミックスをリリースしている。このアルバムのリリースを記念して、ローレンス・ハートは4月23日にロンドンのコルシカ・スタジオで、まだ発表されていない友人やタレントと共にライブを行う。

 

「Love U Bring」 

 




Lawrence Hart 『Come In Out of the Rain』



Label: Domino Recordings

Release: 2025年4月4日


Tracklist: 


1Lotus Bloom

2NoMoreLuv4u

3Closer To You

4Out Of The Rain

5Just Belong

6Still But Still Moving

7Love U Bring

8Hear Ur Heartbeat

9The Wind Cry

10Fucking Mega

11Daydreamers

12The Wave Cry


 



世界的に有名なDJ兼プロデューサーのAvalon Emerson(アヴァロン・エマーソン)が、インディアナ州のレーベル、Dead Oceansとの契約を発表した。

 

さらに新プロジェクト「『Perpetual Emotion Machine』と、その第1弾リリースであるオッペンハイマー・アナリシスのカルトクラシック「Don't Be Seen With Me」のカバーを発表した。


『Perpetual Emotion Machine』は、ダンスフロアで人と人とがつながるための生きた進化するプロジェクトであり、エマーソンが様々な年代の様々なジャンルから曲を選び、ダンスミュージックの過去と未来のモザイクに手を伸ばして、私たちが今、互いにつながる手助けをする。アヴァロン・エマーソンはリリースについて以下のように語っている。


「これらの曲は、私のDJセットのために作られた。完全なオリジナルであれ、昔のお気に入りを再文脈化するためのエディットであれ、インストゥルメンタルであれ、私が歌っているものであれ、それらはすべて私の永久エモーション・マシーンの一部である。そして、マシンは走り続ける」


『パーペチュアル・エモーション・マシーン』は、2023年のドリーム・ポップ・アルバム『アヴァロン・エマーソン&ザ・チャーム』に続く、エマーソンのダンス・ミュージックへの復帰作となる。


「Don't Be Seen With Me」

 

 ▪️REVIEW: AVALON EMERSON(アヴァロン・エマーソン)  「& THE CHARM」  ヨーロッパのクラブカルチャーを反映したダンス・ポップ



Tour Dates:

Feb 21 – Avalon Emerson presents 9000 Dreams – Catch One, Los Angeles, CA

Feb 28 – Avalon Emerson presents 9000 Dreams – Panorama Bar, Berlin, DE

Mar 02 – Avalon Emerson presents 9000 Dreams – La Gaîté Lyrique, Paris, FR

Mar 07 – Avalon Emerson presents 9000 Dreams – Club Raum, Amsterdam, NL

Mar 08-09 – Avalon Emerson presents 9000 Dreams – Horst Club, Brussels, BE

Mar 21 – Vent – Tokyo, JP

Mar 22 – Circus Osaka – Osaka, JP

Mar 28 – Avalon Emerson presents 9000 Dreams – LuxFrágil, Lisbon, PT

Mar 29 – Avalon Emerson presents 9000 Dreams – HERE at Outernet, London, UK

Apr 17 – Paraiso Party @ Onium – Santiago, CL

Apr 18 – Rave3000 @ Club de Pescadores – Buenos Aires, AR

Apr 20 – Gop Tun Festival – São Paulo, BR

May 03 – Avalon Emerson presents 9000 Dreams – Knockdown Center, New York, NY

May 16 – Avalon Emerson presents 9000 Dreams – Concord Music Hall, Chicago, IL

May 17 – Avalon Emerson presents 9000 Dreams – Gingerbread Warehouse, San Francisco, CA

May 24 – Gala Festival – London, UK

May 25 – Movement Music Festival – Detroit, MI

Jun 08 – We Love Green Festival – Paris, FR

Jul 19 – Soundit Festival – Barcelona, ES

Aug 01 – 0 Days Festival – Copenhagen, DK

Aug 03 – Dekmantel Festival – Amstelveen, NL

Aug 09 – Flow Festival – Helsinki, FI

 


テキサス出身のソングライター、Will Johnson(ウィル・ジョンソン)が10枚目のソロ・アルバム『Diamond City』を発表した。本作は同地の独立レーベル、Keeled Scalesから4月4日に発売予定。この発表に合わせて、ジョンソンはリードシングル 「Floodway Fall」を公開した。

 

セントロマティックのフロントマンであり、現在はジェイソン・イズベルのバンド、ザ・400・ユニットのメンバーでもあるウィル・ジョンソンは、新作について次のように説明している。

 

"Floodway Fall"のアイデアは、スコット・ダンボムとの2022年の夏のリハーサルの前に浮かんだんだ。私たちはまだセッティング中で、音やレベルを調整していた。彼は窓の外を眺めながら、フィドルでゆるく演奏していたのを覚えている。私はすぐにそのことを忘れてしまったが、数ヵ月後に偶然この曲を見つけ、最後まで聴くことにした。大部分は、緊張、旅、そして最終的には永遠の愛についての小さな町の記録だ。

 


このアルバムのリードトラックは、ジョンソン独特のシネマティックなサウンドで展開され、長年のコラボレーターであるブリットン・ベイゼンハーズのプロデュースによって強化されている。


ウィル・ジョンソンは昨年、ガイデッド・バイ・ヴォイス、アレハンドロ・エスコヴェド、リトル・マザーン、ルネ・リードらとステージを共にしている。3月12日(水)にはテキサス州オースティンのC-Boy'sで彼のフルバンド、ウィル・ジョンソン&ワイヤー・マウンテンのSoCo Stomp公演が予定されている。 

 

 

 「Floodway Fall」

 

 

 

 Will Johnson 『Diamond City』



Label: Keeled Scales

Release: 2025年4月4日

 

Tracklist:

 

1 Floodway Fall 

2 Unfamiliar Ghost 

3 Diamond City 

4 All Dragged Out 

5 Clem Witkins

6 Cairo 

7 Sylvarena 

8 Rabbit Run 

9 Requiem High / Road Plume 

 



アメリカ生まれでロンドンを拠点に活動するソングライター、Joni(ジョニ)は、デビューアルバム『Things I Left Behind』を発表した。北米ではKeeled Scalesから、イギリス/ヨーロッパではHand In Hiveから4月11日にリリースすることを発表した。 


このニュースとともに、彼女はアルバムの魅力的なタイトル・トラックを紹介する。この曲は、成長することの多くがいかに人や場所やものを失うことに集中しているか、私たちが前進する際にいかに絶えず自分自身の一部を置き去りにしているかを語る魅惑的な曲だ。 

 

シャッフルするようなドラム・ビートに支えられ、曲は永遠に前進を続け、ジョニの歌声は、微妙に渦巻くギターと様々な音色の変化に対して適切に魅力的に感じられ、トラックに妖艶なエッジを与えている。 この曲はジャクソン・ファーリク(B. マイルズ、グレート・バリアー)がプロデュースした。


先行シングル「Things I Left Behind」について、「私たちは皆、失って置き去りにしてきたものからできている。 人。 場所。 経験。 歌詞を書いているとき、自分の過去からの鮮明なイメージが、まるでトンネルを走っているときのライトのように押し寄せてきた。 小さなことから大きなことまで。 子供の頃に膝を擦りむいたこと。 初めての恋。 失恋。 キノコを取って幼なじみの親友に電話したこと。 夜の芝生に寝そべること。 これらのものを物理的に持ち続けることができないことに気づくのは辛いことだが、それらがある種自分自身となり、何らかの形でそれらを持ち続けていることを知るのは、最終的には慰めになる」とジョニは述べている。

 

 

 「Things I Left Behind」




Joni 『Things I Left Behind』



Label: Keeled Scale/Hand In Hive

Release: 2024年4月11日

 

Tracklist

 

1 Your Girl 

2 Strawberry Lane 

3 Avalanches 

4 Things I Left Behind 

5 Castles

6 Birthday

7 Bucket List

8 The Tide 

9 Still Young

10 PS

Horsegirl 『Phonetics On and On』

 

Label: Matador

Release: 2025年2月14日

 

Review

 

シカゴの三人組ロックバンド、ホースガールは正真正銘のハイスクールバンドとして始まり、同時にシカゴのDIYコミュニティから台頭したバンドである。

 

ファーストアルバムで彼女たちは予想以上に大きな成功を掴み、そしてコーチェラなどの大規模なフェスティバルにも出演した。現時点ではバンドは大成功を収めたと言えるが、問題は、そういった大きなイベントに出演しても当初のローファイなギターロックサウンドを維持出来るのかがポイントであった。それはなぜかと言えば、他のバンドやアーティストの音楽に目移りしてしまい、ホースガールらしさのようなものが失われるのではないかという一抹の懸念があったのである。大きなフェスティバルに出演した後でもホースガールは自分たちの音楽に自負を維持出来るのか。まだ若いので色々やってみたくなることはありえる。しかし、結果的には、周囲に全く揺さぶられることがなかった。ホースガールは、周りに影響されるのではなく、自分たちのリアルな経験や手応えを信じた。ファースト・アルバムほどの鮮烈さはないかもしれないが、本作の全編にはホースガールらしさが満載となっている。荒削りなサウンド、温和なコーラス、ラモーンズからヨ・ラ・テンゴまで新旧のパンク/オルタナ性を吸収し、的確なサウンドが生み出された。そして、今回はシカゴ的な気鋭の雰囲気だけではなく、西海岸のバーバンク、ウェスト・コーストやヨットロックを通過した渋さのある2ndアルバムが誕生した。

 

特に、コーラスの側面ではデビュー当時よりも磨きがかけられており、これらはホースガールのチームワークの良さを伺わせるもので、同時に現在のバンドとしての大きなストロングポイントとなっていると思われる。それらがノンエフェクトなギターサウンドと合致し、 心地良いサウンドを生み出す。ローファイなロックサウンドはマタドールが得意とするところで、Yo La Tengoの最新作と地続きにある。しかし、同じようなロックスタイルを選んだとしても、実際のサウンドはまったく異なるものになる。もっと言えば、ホースガールの主要なサウンドは、ヨ・ラ・テンゴやダイナソー・Jr.の90年代のサウンドに近いテイストを放つ。カレッジロックやグランジ的なサウンドを通過した後のカラリとした乾いたギターロックで、簡素であるがゆえに胸に迫るものがある。そして、適度に力の抜けたサウンドというのは作り出すのが意外に難しいけれど、それを難なくやっているのも素晴らしい。「Where'd You Go?」はラモーンズの系譜にあるガレージロック性を踏襲し、ラモーンズの重要な音楽性を形成しているビーチ・ボーイズ的なコーラスを交え、ホースガールらしいバンドサウンドが組み上がる。特にドラムの細かいスネアの刻みがつづくと、サーフロックのようなサウンドに近づくこともある。これは例えば、ニューヨークのBeach Fossilsのデビュー当時のサウンドと呼応するものがある。

 

最近では、インディーポップ界隈でもアナログの録音の質感を押し出したサウンドが流行っていることは再三再四述べているが、ホースガールもこの流れに上手く乗っている。厳密に言えば、アナログ風のデジタルサウンドということになるが、そういった現代のアナログ・リヴァイヴァルの運動を象徴付けるのが続く「Rock City」である。イントロを聴けば分かると思うが、ざらざらとして乾いた質感を持つカッティングギターの音色を強調させ、ピックアップのコイルが直に録音用のマイクに繋がるようなサウンドを作り上げている。これが結果的には、ブライアン・イーノがプロデュースしたTalking Heads(トーキング・ヘッズ)の『Remain In Light』のオープニングトラック「Born Under The Punches」のようなコアでマニアックなサウンドを構築する要因となった。しかし、ホースガールの場合は、基本的には、ほとんどリバーブやディレイを使わない。拡張するサウンドではなく、収束するサウンドを強調し、これらが、聴いていて心地よいギターのカッティングの録音を作り出している。いわば、ガレージロックやそのリバイバルの系譜にあるストレートなロックソングとしてアウトプットされている。そしてトーキング・ヘッズと同様にベースラインをギターの反復的なサウンドに呼応させ、さらにコーラスワークを交えながら、音楽的な世界を徐々に押し広げていく。まさしく彼女たちがデビュー当時から志向していたDIYのロックサウンドの進化系を捉えられることが出来る。 


「In Twos」では、デビュー当時から培われた神秘的なメロディーセンスが依然として効力を失っていないことを印象付ける。ゆったりとしたリズムで繰り広げられるサウンドは、温和なメロディーとニューヨークパンクの原点であるパティ・スミスのようなフォークサウンドと絡み合い、個性的なサウンドが生み出される。この曲でも、トラック全体の印象を華やかにしたり、もしくは脚色を設けず、原始的なガレージロック風のサウンドが、それらの温和な雰囲気と絡み合い、独特なテイストを放つ。

 

弦楽器のスタッカートやピチカートのようなサウンドをアンサンブルの中に組み込もうとも、やはりそれはヴェルヴェッツやテレヴィジョンの最初期のニューヨークパンクの系譜に位置づけられるサウンドが維持され、Reed & Nicoのボーカルのようなアートロックの範疇に留まっている。これらは結局、パッケージ化されたサウンドに陥らず、商品としての音楽という現代の業界のテーゼに対して、演奏の欠点をそのまま活かしたリアリスティックなロックサウンドで反抗しているのである。言い換えれば、それは上手さとか巧みさ洗練性というものに対する拙さにおけるカウンターでもある。これは結局、実際のサウンドとしては「Marquee Moon(マーキー・ムーン)」のポエティックな表現下にあるアートロックという形に上手く収まる。改めて、商業的なロックとそうでないロックの相違点を確かめるのに最適な楽曲となっている。

 

「2468」も同様に、フィドルのようなフォークソングの楽器を取り入れて、アメリカーナの要素を強調しているが、依然としてハイスクールバンドらしさが失われることはない。この曲には、学生らしさ、そして何かレクリエーションのような楽しさと気やすさに満ちている。 これらのサウンドは超越性ではなく、親しみやすさ、リスナーとの目線が同じ位置にあるからこそなしえる業である。ホースガールのサウンドは、これなら出来るかもしれない、やってみようという思いを抱かせる。それは、パティ・スミス、テレヴィジョン、ラモーンズも同じであろう。

 

続く「Well I Know You're Shy」は、ポエティックなスポークンワードと原始的なロックの融合性がこの曲の持ち味となっている。アルバムの序盤の複数の収録曲と同様に、ニューヨークの原始的なパンクやロックのサウンドに依拠しており、それはヴェルヴェットの後期やルー・リードのソロ作のような古典的なロックサウンドの抽象的なイメージに縁取られている。意外とではあるが、自分が生きていない時代への興味を抱くのは、むしろ若い世代の場合が多い。それらは、同時に過去の人々に向けた憧憬や親しみのような感覚を通じて、音楽そのものにふいに現れ出ることがある。この曲までは、基本的にはデビューアルバムの延長線上にある内容だが、ホースガールの新しい音楽的な試みのようなものが垣間見えることもある。「Julie」は、その象徴となるハイライトで、外側に向けた若さの発露とは対象的に内省的な憂鬱を巧みに捉え、それらをアンニュイな感覚を持つギターロックに昇華させている。比較的音の数の多いガレージロックタイプの曲とは異なり、休符や間隔にポイントを当てたサウンドは、ホースガールの音楽的なストラクチャーや絵画に対する興味の表れでもある。ベースの演奏のほかは、ほとんどギターの演奏はまるでアクション・ペインティングのようでもあり、絵の具を全体的なサウンドというキャンバスに塗るというような表現性に似ている。これらはまた、ホースガールのアーティスティックな表現に対する興味を浮き彫りにしたようなトラックとして楽しめる。

 

ニューヨークの原始的なロックの向こうには、マタドールのレーベルメイトのヨ・ラ・テンゴがいるが、最もカプラン節のようなものが炸裂する瞬間が続く「Switch Over」である。ミニマルなギターの反復というのはまさしくヨ・ラ・テンゴの系譜にあり、ホースガールがポスト世代にあることを印象付ける。 同時にコーラスやボーカルも一貫して言葉遊びのような方法論を活かし、心地よいロックサウンドが組み上がる。ホースガールのメンバーは基本的に、歌詞そのものを言語的にするのではなく、音楽的な響きとして解釈する。結果、ボーカルの声は器楽的な音響に近づき、英語に馴染みのない人にも調和的な響きを形成するのである。そしてミニマリズムの構成を通じて、モチーフの演奏を続け、曲の終盤にはより多角的なサウンドや複合的なサウンドを作り上げる。これらは毛織物の編み込みのように手作りなサウンドの印象に縁取られ、聴いていて楽しい印象を抱くに違いない。最初は糸に過ぎなかったものが、ホースガールの手にかかると、最終的にはカラフルでおしゃれなセーターが作り上げられるという次第だ。

 

基本的にはこのアルバムはニューヨークの印象とシカゴのDIYの趣向性に縁取られている。しかし、稀に西海岸のサウンドが登場する。これらのサウンドは現代の北米のミュージックシーンの流れに沿ったもので、基本的にはホースガールは流行に敏感なのである。そして、それらはまだ完成したとは言えないが、次のバンドの音楽の暗示ともなっているように感じられる。「Information Sound」、「Frontrunner」はイギリスのフォークムーブメントと呼応するような形で発生したバーバンクサウンドや最初期のウェスト・コーストサウンドの系譜にあるノスタルジックなフォークサウンドである。これらは70年代初頭のカルフォルニアのファン・ダイク・パークスといったこのムーブメントの先駆的なミュージシャンと同じように、 フォークとロックの一体化というイディオムを通して、アメリカ的なロックの源流を辿ろうとしている。

 

アルバムの最後には、ホースガールらしいサウンドに回帰する。これらはニューヨーク、シカゴ、西海岸という複数の地域をまたいで行われる音楽の旅行のようで興味をひかれる部分がある。「Sports Meets Sound」では、ローファイなロックとコーラスワークの妙が光る。しかし、それはやはりハイスクールバンドの文化祭の演奏のようにロック本来の衝動的な魅力にあふれている。そして最もソングライティングの側面で真価が表れたのが、続く「I Can't Stand to See You」であり、サーフロックの系譜にあるサウンドを展開させ、海岸の向こうに昇る夕日のようなエンディングを演出する。本作を聴いた後に爽やかな余韻に浸ることが出来るはずである。

 

 

80/100 

 

 

「Julie」



ニューキャッスル出身のシンガーソングライターSam Fender(サム・フェンダー)は、リリース予定のピープル・ウォッチング』から4曲目のシングル、最後の曲として「Remember My Name」を発表した。発売日を前にチェックしてもらいたい。


"リメンバー・マイ・ネーム "は、亡き祖父母に捧げたラブソングだ。祖父母はいつも私たち家族をとても誇りに思ってくれていたから、祖父母に敬意を表し、認知症を患っていた祖母の世話をしていた祖父の視点から曲を書いたんだ。 このビデオは僕にとって本当に特別なもので、関係者の皆さんに感謝したい。


I, Daniel Blake』のスター、デイヴ・ジョンズがビデオの主役を演じ、愛、交友関係、そして最終的な喪失の押しつぶされそうな必然性を描いている。

 

 このビデオには、イングランド北東部出身のイージントン・コリアリー・バンドも出演しており、トラック自体にもフィーチャーされている。 デイヴ・ジョンズは、俳優のフィリッパ・ブリッグスとリードを分かち合っている。 ビデオの監督はヘクター・ドックリルが務めた。


ポリドール・レコードは、サム・フェンダーの代理として、認知症ケアに音楽を不可欠なものにするために、音楽が認知症患者にもたらす人生を変える効果に基づき、アトリー財団に寄付を行った。


サム・フェンダーのニューアルバム「People Watching』は2025年2月21日にポリドール・レコードよりリリースされる。

 

 

「Remember My Name」

 



ボン・イヴェールは、先日発表されたアルバム『SABLE, fABLE』から、昨年の『SABLE, EP』に収録された新曲を公開した。

 

「Everything Is Peaceful Love」は、HBOの「How to with John Wilson」のジョン・ウィルソンが監督したミュージック・ビデオと共に公開された。このビデオはEPのどの曲よりも生き生きとしており、暖かさと純粋な喜びを表現している。以下からチェックしてほしい。


ジャスティン・ヴァーノンは声明の中で次のように述べている。

 

『Everything Is Peaceful Love』を作った日から、どんなレコードを作りたいかは分かっていた。僕はいつも、それが最初に共有したいフィーリングになると思っていた。ビデオは、ただ人々が抑えきれずに微笑んでいるようなものにしたかったんだ。幸運なことに、エリック・ティモシー・カールソンが『How To with John Wilson』のジョン・ウィルソンと連絡を取ることを提案してくれた。


テレビ界で最も痛快で陽気な番組だ。ジョンがこのアイデアを気に入ってくれたのは非常に幸運だった。彼が出かけて行って、楽しいものをたくさん撮影し、それをすべて曲に合わせて編集してくれた。私がこのアルバムに求めているものを、1本のビデオにまとめてくれた。幸せと喜びは最高の形であり、生き残るための真の浮力であり、自分自身をあまり深刻に考えないことでさえ世界を癒すことができるという考えだ。


「Everything Is Peaceful Love」

Photo Credit: Kalpesh Lathigra


ザ・ウェイヴ(グラハム・コクソンとローズ・エリナー・ドーガル)は、2025年3月14日にトランスグレッシヴからリリースされる3曲入りEP「Eternal」を発表した。試聴はこちら、ビデオはこちらから。このアルバムは昨年の『City Lights』に続く作品です。

 

プロデュースはジェームス・フォード(フォンテーヌD.C)。推進力のあるファースト・シングル「Love Is  All Pain(ラヴ・イズ・オール・ペイン)」は、ローズとグラハムのハーモニックなデュエットのヴォーカルに加え、エレクトロ・シンセのどよめきと抗いがたいトップ・ラインをフィーチャーしている。

 

サイモン・リーダーの監督による「Love Is All Pain」のビデオは、1980年代後半のポスト・パンク・シンセ時代の美学にちなんで、全編モノクロの8ミリフィルムで撮影され、先月、ロンドン南東部の象徴的なブルータリズムの地、テムズミードにあるサウスミア湖周辺でロケを行ったバンドの姿が収められている。

 

この発表は来月3月16日にグラスゴーでスタートするバンドのUKヘッドライン・ツアーに先駆けて行われました。


バンドはマンチェスター(3月18日)、シェフィールド(3月19日)、ブリストル(3月21日)を訪れ、3月20日にはカムデンの象徴的な会場''KOKO''でヘッドライン・ライヴを行う。全日程のリストは下記より。チケットと情報はこちら




「Love Is  All Pain」



The WAEVE (Graham Coxon and Rose Elinor Dougall) have announced the release of a new 3-track EP titled 'Eternal', set for release via Transgressive on 14th March 2025, with first single 'Love Is All Pain' out now.

Produced by James Ford (Fontaines D.C., Arctic Monkeys, The Last Dinner Dinner Dinner Produced by James Ford (Fontaines D.C., Arctic Monkeys, The Last Dinner Party, blur), the three new tracks on 'Eternal' mark the follow up to the band's acclaimed two albums, The WAEVE (2023) and City Lights (2024).The propulsive first single 'Love Is All Pain' features the ever-harmonic duet of Rose and Graham on vocals, plus throbbing electro synths and irresistible top lines which come as a warning sign to hopeless romantics everywhere this Valentine's Day.

Directed by Simon Leeder, the video for 'Love Is All Pain' was shot entirely on black & white 8mm film in a nod to the post-punk synth-era aesthetic of the late 1980s, and captures the band on location around Southmere Lake at Thamesmead, South East London's iconic Brutalist estate, last month.

The announcement comes ahead of the band's upcoming UK headline tour which kicks off next month on 16th March in Glasgow and will see the band visit Manchester (18th March), Sheffield (19th March) and Bristol (21st March), as well as a headline show at the iconic Camden venue KOKO on 20th March 2025. Full list of dates below.


 

『Eternal』EP



Label: Transgressive

Release: 2025年3月14日


Tracklist


1.Love Is All Pain

2.It’s The Hope That Kills You

3.Eternal 


「Eternal」EPの予約はこちら


先月、バンドは「Live from the City Lights Sessions」と題した新しいライヴ・アルバムをリリースし、Transgressive Recordsからデジタル配信された。 試聴はこちらから。 


このアルバムには、グラハムとローズが、ロンドンのクラウチ・エンド・スタジオで、高い評価を得たセカンド・スタジオ・アルバム「City Lights」の全10曲を演奏するフル・ライヴ・バンドが参加している。 このライヴ・アルバムのリリースは、アルバムの全曲を芸術的に捉えたナタリア・ページ監督によるパフォーマンス・フィルム・シリーズ『City Lights Sessions』に続くものである。


Last month, the band released a new live album titled ‘Live from the City Lights Sessions’, available digitally on Transgressive Records. 


The record features Graham and Rose joined by a full live band as they perform all 10 tracks from their acclaimed second studio album ‘City Lights’ in London’s Crouch End Studios, a special opportunity for fans to experience the songs in a whole new dimension. The live album release follows the performance film series, City Lights Sessions, directed by Natàlia Pages, which artfully captured every song on the album.


The WAEVE - UK Tour:


The WAEVE - UK Tour dates:
16th March - St. Luke’s, Glasgow
18th March - Academy 2, Manchester
19th March - The Leadmill, Sheffield
20th March - KOKO, London
21st March - Trinity, Bristol
22nd August - Colchester Castle Summer Series (w/ JAMES)
24th August - Victorious Festival, Portsmouth



【The WAEVE(ザ・ウェイヴ)】


2人のミュージシャンが一緒に活動することで、新たな唯一無二のサウンド・アイデンティティを形成した。 シネマティック・ブリティッシュ・フォーク・ロック、ポスト・パンク、オーガニックなソングライティング、フリーフォール・ジャムのパワフルなエリクサー。 


忘却と降伏のテーマは、希望と光の暗示と並置されている。 迫り来る終末と絶望という残酷な世界的背景の中で、グレアム・コクソンとローズ・エリナー・ドーガルは、音楽を作るという反抗的な楽観主義を通して、自分たちを解放しようと努力している。


2023年2月にリリースされた同名のデビューアルバムで、ザ・ウェイヴは注目すべきソングライティングパートナーとしての地位を確立した。 -UNCUT


 "シネマティックな広がりを持ち、しばしば甘美なアレンジが施された、唯一無二の逸品"。 -DIY


1年間のツアーとスタジオ・セッションを経て、The WAEVEはCity Lightsを発表する。この新曲は、まもなく発表されるニュースタジオアルバムから抜粋されたもので、彼らの共同作業による音楽性の進化を表しており、この音楽的精神の出会いが、個々の創造性の限界をさらに押し広げることを可能にしている。



The coming together of two musicians who, through working together have formed a new, singular, sonic identity. A powerful elixir of cinematic British folk-rock, post-punk, organic song-writing and freefall jamming. Themes of oblivion and surrender are juxtaposed with suggestions of hopefulness and light. Against a brutal global backdrop of impending apocalypse and despair, Graham Coxon and Rose Elinor Dougall strive to free themselves through the defiant optimism of making music.

 With the release of their acclaimed eponymous debut album in February 2023, The WAEVE established themselves as a songwriting partnership to watch, with a body of work that was "...ambitiously structured, lovingly arranged...unhurriedly crafted songs full of bona fide thrills, unexpected twists, and an elegant but never gratuitous grandeur." (UNCUT); a collection of tracks... "Cinematic in scope, often luscious in its arrangements, it's a singular gem." (DIY).

Now, after a year of touring and studio sessions, The WAEVE is back with City Lights, a brand new track taken from their forthcoming soon-to-be announced new studio album that illustrates the evolution of their collaborative musicianship, allowing this meeting of musical minds to further push the boundaries of their individual creativity.

 

 

日本のインディペンデントレーベル、”造園計画”が今年4月2日に『For Damage』のリリース、及び、不定形セッショングループ、”野流”の旧譜『梵楽』のリイシューを行うことを明らかにした。野流の佐々木さん、プレスリリースを送ってくれてありがとうございます。

 

『For Damage』には日本の注目のインディーズアーティスト、及び、バンドが参加した意欲作であり、岡田拓郎、池田若菜、Acid Mothers Templeの河端一、PSP Socialなど。さらに、二作目の『梵楽』は野流による旧譜の再発で、Larajiなどの影響下にあるスピリチュアルな実験音楽となっています。上記二作の詳細につきましては以下のプレスリリースを参照していただきたい。

 

 

■For Damage(Tape)・岡田拓郎、AMT河端が参加する野流2ndがカセットテープ化、フィジカルの国内初流通開始。

 

作家名:野流(ヤリュウ)
作品名:For Damage(フォー・ダメージ)
フォーマット:TAPE
発売日:4月2日(水)
情報解禁日:2月19日(水)20時
販売価格:2,000(税込)
レーベル:造園計画
型番:Zouenkeikaku-044



ストリーミング配信の予約: 

https://yaryucf.bandcamp.com/album/for-damage



<作品紹介>

 

固定メンバーを最小限に抑え、音源制作やライブ演奏のたびに参加者を入れ替え、自由奔放に即興演奏を続ける音楽集団、野流(Yaryu)の2nd Albumのカセットテープ版が造園計画よりリリース。

日本を代表するギターリスト、岡田拓郎、"んoon"で活動するボーカリストJ.C、トリプルファイヤーの新譜にも参加しているフルート奏者、池田若菜、サイケデリック・レジェンド、Acid Mothers Templeの河端一をはじめ、Dhidalah、シベールの日曜日、PSP Social、Kumagusuなど、数々のバンドからの客演を迎えながらも、スピリチュアルジャズの即興性、サイケデリックロックの熱気、純邦楽の精神性、それら全てが透明感あるアンビエントのテクスチャーを纏いながら形をなしている。『For Damage』はアンビエントであり、ジャズであり、ロックであり、ニューエイジであり、同時にそのどれでもない領域に踏み込む。



またカセットテープ版限定で、未発表音源集『記号の森の動物たち』のDLコードが付属する。本作は、USのCentripetal Force, UKのCardinal Fuzz, オーストラリアのRamble Records、3カ国共同でLP、CDがリリースさていたものの、日本での流通はほぼ存在せず、本作のフィジカル版が国内流通するのはこのカセットテープ版が初となる。


 

■梵楽(Re-Press)・レコードの日にレコード化された1st『梵楽』が新装版ジャケットでテープ再発。



 


作家名:野流/ヤリュウ
作品名:梵楽 (Re-Press)/ボンガクリプレス
フォーマット:TAPE
発売日:4月2日(水)
情報解禁日:2月19日(水)20時
販売価格:2,000(税込)
レーベル:造園計画
型番:Zouenkeikaku-045



ストリーミング配信の予約:

https://yaryu.bandcamp.com/album/bongaku


<作品紹介>

Laraajiを思わせるオートハープの音色と、山本邦山的な雅さ。サイケデリック直系のスピリチュアリティとアジア人の身体性が出会う。循環を繰り返す川のようにメンバーが入れ替わる、不定形の音楽家集団、”野流”の1stアルバム『梵楽』のカセットテープが、新装版ジャケットでリプレス。

グリッドを押し流していくオートハープの音色は、瑞々しさと野生味を兼ね備えていた70年代の電子音楽に回帰しながら、日本の住宅環境に相応しい柔らかい調度で、庭に生い茂る草木や虫と共に感光していく。

リプレス版には、『梵楽』の制作中に野流が録音していたトラックをまとめた未発表音源集『けもの道』のDLコードが付属する。『けもの道』のなかで聴くことができる、粗野であり、ピュアでもある初々しい演奏は、『梵楽』の心地よさとは別の「道」で、野流というグループのコアにつながっている。

PIULSNUG: レーベルからのご提供

 

日本の作詞/作曲/編曲家、マルチインストゥルメンタリスト、安川流司によるソロ音楽ユニット、PULSNUGが新作アルバム「Fa Forewarn Free Fall(ファ・フォーワーン・フリーフォール)を発表した。本作はアーティストが主宰するCheap Tripから2月25日にデジタルで発売される。

 

PULSNUGは、ネオ・アコースティック、シューゲイズ、エレクトロニクスをクロスオーバーしたサウンドは近未来的な印象を持つ。彼の旧譜は、USシューゲイズ界のレジェンド、サクラメントのインディーポップユニット、Rocketship(Dusty Reske)が高く評価しているという。

 

本作「Fa Forewarn Free Fall(ファ・フォーワーン・フリーフォール)は2021年12月02日に発売されたPULSNUGのアルバム「Fanfare For Farewell」の全15曲を新進気鋭のミュージシャンがリミックスしたフルリミックスアルバム。

 

2/5にbandcampにて先行配信され、同サイトで全曲を2トラックにまとめたノン・ストップ版「Fa Forewarn Free Fall~Nein Stopp!~」も投げ銭で公開。サブスクリプションも同日に2枚組として解禁される。



元となるアルバムはどちらから読んでも20211202のリリースだった為、今作はそれに準え20250225の発売でタイトルの「Fa Forewarn Free Fall」は元となるアルバムFanfare For Farewellのアナグラムになっている。



リミキサー陣はインディ・シーンで絶大なる支持を得るドリームポップバンド”Yucca”から榎本勇作と品田文子、90’Sジャパニーズ・ギターポップを牽引したmarble gitar caseのバブ、
lol、AMEFURASSHIに作家として楽曲提供しているSSWのяieko等、バラエティに富んだ人選になっている。

 

 

*下記の音源はオリジナル・バージョンのものを掲載。

 

 

 

 


 

*さらなる詳細についてはレーベルの特設サイトをご確認ください。 


 

PULSNUG 『Fa Forewarn Free Fall』




DATE: 2025/02/25
PRICE: ¥2,025(on bandcamp)
FORMAT: Digital
LABEL: CHEAP TRIP RECORDS
CATALOG NO.: CTLP-0003


【Track List】


1. PULSE-SE+SNUG=... ~theme from PULSNUG~ remix by Sister Summer Club
2. Heaven Stars~electro jumble up~ remix by sato boreal
3. Squash! the Pulsar remix by Fun+Tic
4. Marble Superballl remix by Yusaku Enomoto(Yucca)
5. Slow Starter~Slow Looper~ remix by JOHNNIE THE BULGARIA
6. Turn off remix by ayako Shinada(Yucca)
7. continue? ~GAME OVER~ remix by Яieko
8. Vanilla Sky remix by dodopop
9. Blue Screen/Blues Clean~in summer time~ remix by Taruho
10. Think It (too) Low remix by Tomoyuki Tsunoda(mig)
11. Teenage Funk LaB~Oh! papai yeah!~ remix by SHOW TEN GUYS
12. Ocean Colour Scene remix by Pulsar Squash
13. Bye-Bye!! Bicycle~chakapoko~ remix by TIYOKOMEITO
14. LooP PooL~inside my head~ remix by babu(marble guitar case)
15. Fanfare for Farewell remix by momomachine(mig)


Mastered by Ryuji Yasukawa
at Monauralab Studio(MONOLaB)


同時発売ノンストップ版:


Fa Forewarn Free Fall~Nein Stopp!~ / PULSNUG
DATE: 2025/02/25
PRICE: Social Tipping(on bandcamp)
FORMAT: Digital
LABEL: CHEAP TRIP RECORDS
CATALOG NO.: CTLP-0004


サブスクリプション版:


Fa Forewarn Free Fall(side F) / PULSNUG
DATE: 2025/02/25
FORMAT: Streaming
LABEL: CHEAP TRIP RECORDS



Fa Forewarn Free Fall(side P) / PULSNUG
DATE: 2025/02/25
FORMAT: Streaming
LABEL: CHEAP TRIP RECORDS

 

 

ストリーミング配信の予約:

Side F:https://linkcloud.mu/1c37d9cc

 

Side P: https://linkcloud.mu/76b17123

 


 

PULSNUG(パルスナッグ)

 

作詞・作曲・編曲家、マルチインストゥルメンタリスト安川流司によるソロ音楽ユニット
ネオアコースティック、ギターポップ、シューゲイザーを基調した音楽性をノイ!アコースティック(ノイアコ)と自称。

 

その他、リミキサー、ミックス&マスタリングエンジニア、ショートフィルムの劇伴、アニメ主題歌の楽曲提供、DJなど多岐にわたり活動。2021年、自身が主催するレーベル(cheap trip records)より1stアルバムリリース。

 


リチャード・ドーソン(Richard Dawson)はニューカッスル/アポンタイン出身のフォークミュージシャン。 アートビジュアルの作品も発表しています。2014年のアルバム『Nothing Important』はWeird Worldからリリースされ、批評家から絶賛された。 2017年のアルバム『Peasant』も同様の評価を受け、『The Quietus』誌のアルバム・オブ・ザ・イヤーに選ばれました。


ドーソンは長年にわたって地元ニューカッスルで多くの人々に愛されてきました。稀に見る激しさと特異なスタイルで歌い、ギターを弾く、歪んだトルバドールである。 まさしく現代に蘇った吟遊詩人と言えるかもしれません。

 

ドーソンのボロボロのアコースティック・ギターは、リチャード・ビショップやキャプテン・ビーフハートを彷彿とさせるような、つまずきから崇高さへと変化する。リチャード・ドーソンは、北東部のエレメンタル・アーケタイプの渦から長い草稿を引き出してきた。 大胆不敵なまでのリサーチとインスピレーションへの意欲で、ドーソンは古代の神話と現代の恐怖に彩られた印象的な音楽と語りのカタログを作り上げました。 


リチャード・ドーソンの多くのレコードには、病、トラウマ、無言の必然性の霧のような感覚が立ち込めており、それはしばしば、ドーソンの手が、持ち主と同じように傷つき、個性的で、不屈の楽器である、長年苦悩してきたギターから音を生み出す大混乱の中で表現されています。


リチャード・ドーソンのニューアルバム『End of the Middle』のタイトルは、実に微妙な矛盾をはらんでいる。中年? 中流階級? ドーソンのキャリアの中間点? レコードの中心? 一般的な中道主義? 二極化? 何かについてバランスの取れた議論をする可能性? あなたと真ん中? イングランドの真ん中? 中途半端な曲作り? 『エンド・オブ・ザ・ミドル』は、家族(同じ家族の何世代か)の営みを覗き見るような奇妙な美しい作品です。


「このアルバムは、小規模で非常に家庭的なものにしたかった」とドーソンは説明し、「そして、歌詞とメロディーが、曲の中で彼ら自身と人々を語れるようにしたかった」と付け加えている。物事を徹底的に削ぎ落とすことで、驚くほど冷静で、奇妙なほどエレガントで美しい音楽が完成した。

 

 

Richard Dawson 『End of the Middle』 -Domino Recording

 

果たして、この世に普遍な存在などあるのでしょうか。これは非常に難しい問題だと思います。多くの人々は何かが変わることを恐れますが、変わらないことは何ひとつもない。外側からは変わっていないように見えますが、その内側は、明らかな変化が生じているのです。こと、音楽に関していうならば、女性シンガーの年齢ととも人生におけるテーマの変化があるのと同様に、男性シンガーもまた年齢とともにテーマ(主題)が変わっていくのは当然のことでしょう。


結局のところ、自分が最も輝かしい時代だった頃と同じ主題を歌いたいという気持ちを持つことは分かるのですが、十年後に同じことを伝えることはむつかしい。なぜなら、十年後のその人物の人格は以前とは内側からも外側からも変わっているからです。その点では、ニューキャッスルのリチャード・ドーソンは、その年齢しかわからないことを音楽でストレートに伝えてくれます。


ドーソンの音楽には、その年齢の人々が知るべき何かが彫刻のように刻まれています。例えば、二十歳のミュージシャンと、四、五十代のミュージシャンでは伝えたい内容が全く異なるはずです。二十歳の人物が五十歳の表情をして音を奏でるのは妥当といえないでしょう。なぜなら、異なる年代に対して、その年代しか伝えられないことを伝えられるかがいちばん重要なのだから。

 

さらに、リチャードは、ニューキャッスルという街の風をリスナーのもとに届けてくれます。音楽というのは、制作者が感じたもの、そして生活の基底から引き出された感慨を伝えるためにある。そして、また、制作者のいる地域の特性を伝える。その中には、優雅なものもあれば、それとは対極的に素朴なものも存在する。どのような地域に住んでいようと、他の国や都市とは異なる特性が存在するはずで、それは同じ内容になりえないのである。そして、伝える人によって音楽の本質は異なる。なぜなら神様は、人間や生物に異なるキャラクターを付与することによって、おのおのの役割を分散させることにしたのです。結局のところ、なぜ音楽を創るのか、それから何を伝えたいか、これを明確にしないかぎり、本質に近づくことなどできないでしょう。

 

聞き手側としては、音楽の制作者の考えやそのひとがいる地域の特性に触れたとき、もしくはその本質に突き当たったとたんに、見ず知らずの人物の音楽が切実な意味を帯びはじめる。ドーソンの歌は、他の地域に住む人には作ることができず、ニューキャッスルの土地柄を的確に反映させている。

 

音楽というのは、離れた地域にあるリアリズムを伝える能力があるのをひしひしと感じることがあります。たとえば、リチャード・ドーソンのギター、そして歌は、吟遊詩人のような響きが込められています。しかし、彼の歌は、特権階級のためのものではありません。労働者階級のためのものでもあり、キャプテンビーフハートが志したブルースとロックの融合のように、胸にずしりとのしかかり、長い余韻を残す。ドーソンの歌はまったく重くなく、ブルースの要素はほとんどなく、それ以前の鉄道夫が歌ったレイルロード・ソングのペーソスに近い。でも、なぜか、それは現代の労働歌のような誠実な響きがあり、現実的な質感を持って私たちの心を捉えることがあります。

 

『End Of The Middle』は、切実なニュアンスを帯びています。アッパーとロウワーという二つの階級に現代社会が完全に分かたれていることを暗示する。そして多くの人は、その社会問題を矮小化したり、責任転嫁したり、もっと酷い場合には、まったく無きものとして無視したりすることもあるわけです。また、これらの二つの階級は、両者を敵視することも稀にあるでしょう。しかし、リチャード・ドーソンは、社会の基底にぽっかりと開いた空白のなかに位置取り、空想と現実がないまぜとなったフォークミュージックを説き聞かせるように優しく奏でます。それは現代社会に対する内向きな風刺のようでもあり、また、リリシズムの観点から見たアートの領域に属する。

 

リチャード・ドーソンのアコースティックギターは、ジム・オルークや彼のプロジェクトの出発であるGastr Del Solに近い。しかし、単なるアヴァンフォークなのかといえばそうとも言いがたい。彼の音楽にはセリエリズムは登場せず、しかも、明確な構成と和音の進行をもとに作られる。しかし、彼の演奏に前衛的な響きを感じるのはなぜなのか。ドーソンの音楽はカウンターに属し、ニューヨークパンクの源流に近く、The Fugsのようなアート志向のフォーク音楽の原点に近い。それは、以降のパティ・スミスのような詩的な感覚と現実感に満ちている。 彼の作品にひとたび触れれば、音楽という媒体が単なる絵空事とは言えないことが何となく理解してもらえるでしょう。

 

ドーソンの音楽は、米国の作家、ジャック・ケルアックの『On The Road』で有名な”ビートニク”の文化のヒッピー思想の系譜にある。ビートニクは西海岸から発生した文化と捉えられがちですが、ニューヨークのマンハッタンにもよく似たムーブメントがありました。例えば、アヴァンフォークの祖であるThe Fugsです。1965年の当時、マンハッタンのイースト/ウェストヴィレッジの路上で雑誌や詩集を販売していたトゥリ、そして、雑誌の編集長を務めていたエド・サンダースが「詩を読むだけでは不十分。曲を作って歌えるようにバンドをやろう」と結成したのが”The Fugs”だったのです。

 

一般的にはThe Velvet Undergroundがパンクの先駆者であるような紹介をされる場合が多いですが、以降のCBGBやノーウェイブの流れを呼び込んだのは、このフォークグループだったはずです。この最初のニューヨークのアヴァンギャルドミュージックの流れは、アリストテレスのギリシャ思想、ダダイズム、ジャズ、ポエトリー、ジョン・ケイジの前衛音楽、チャック・ベリーのR&R、それから賛美歌までを網羅し、どの音楽にも似ておらず、唯一無二のアヴァン・フォークの形態を確立させたのでした。まさしく様々な文化の折衝地であるマンハッタンの音楽。彼等は、現代社会の無気力や鋭い風刺を織り交ぜて、「月曜にはなにもないし、火曜にもないにもない!」と歌った。これはウディ・ガスリーやボブ・ディランのフォークよりも尖っていました。

 

リチャード・ドーソンのフォークミュージックは、フランク・ザッパ、キャプテン・ビーフハート/マジックバンドに象徴される''鬼才''ともいうべき特性によってつむがれ、ちょっと近寄りがたい印象もある。それは聞き手側がアーティストの個性的な雰囲気に物怖じしたり、たじろいだり、腰が引けるからです。でももし、純粋な感覚があれば、心に響く何かがあるはずです。賛美歌、ビートルズの『ラバーソウル』以降のアートロックの要素、パブロックのような渋さ、リバプール発祥のマージービート、それから60年代のフォークミュージック、そして、おそらくニューキャッスルの街角で聞かれるであろうストリートの演奏が混在し、ワイアードな形態が構築される。アルバムには、ほとんどエレクトリックの要素は稀にしか登場せず、音楽自体はアコースティックの素朴な印象に縁取られている。それにもかかわらず電撃的なのです。

 

アコースティックギターのガット弦の硬い響き、奥行きのあるドラムテイクの録音がこのアルバムの美点です。「Bolt」は、さながらシカゴのアヴァン・フォークの巨人であるジム・オルークを彷彿とさせる抽象的なサウンドで始まり、哀愁溢れるドーソンのヴォーカルが音楽的な世界をゆっくりと押し広げていきます。そして、アコースティックギターに合わせ、フランク・ザッパ的なボーカルが乗せられます。さらに、コード進行による弾き語り、それからもう一つの楽曲における対句のような構成を持つボーカルとのユニゾンなどを通して、対比的な音楽の構造を生み出し、そしてほとんど途切れることのないアヴァンフォークの音楽観を構築していく。


そしてそれは、日曜の休日のために歌われる賛美歌、安息日のための歌のような響きが強調されます。しかし、それは教会音楽のようなきらびやかな宗教歌ではなく、日曜の食卓で歌われるような質朴で控えめな歌/労働者のためのささやかな賛美歌です。かつてハンガリーにルーツを持つクラシックの音楽家が、「農民カンタータ」のような音楽を書いたように、一般的な市民のつましい暮らしを賛美するための素朴なフォークソングを、ドーソンはさらりと華麗に歌い上げます。これは、''誰に向けて歌われるのか''という意義を失いつつある現在の音楽に一石を投じる内容です。彼の音楽は、哀愁や暗さに満ちていますが、そこには共感性と癒やしが存在するわけです。

 

冒頭部は、夕暮れの切なさを思わせますが、続く「Gondola」は、意外なほど軽妙な印象を放つ。まるで故郷を飛び出し、ヴェネチアへ小さな旅行に出かけるように、陽気な気分を表現しています。しかし、商業的な音楽のように見え透いた明るさにはならない。それはまた一般的な人間の性質にある多極性、明るさのなかにある暗さ、あるいは、暗さのなかにある明るさ、というような正常な感覚をストレートに吐露しているからでしょう。この曲では、音楽制作者のペシミスティックな心情を鏡のように現実に反映させるかのように、和声進行は単調と長調の間をせわしなく行き来しています。音楽自体は、ちょっと陽気になったかと思えば、それと対象的に、悲しみに溢れる音楽の表情があらわになる。アコースティックギターの演奏はリズミカルで軽快なのに、ドーソンの歌のヴァーズはペシミスティックな感覚がある。これがトラックの背景となるメロトロンのぼんやりした響きと混在し、ビートルズのデモソングのような雰囲気を持ったラフなアートロック/アートポップソングが出来上がっていくのです。

 

 

 「Bullies」は、ロック風の曲をアコースティックで演奏しています。そして、表面的にはビートルズのルーツであるマージービートの系譜をうかがわせる。もしかすると、60年代以前には、リバプール、マンチェ、そういった主要な港町で船乗りが歌う「舟歌」のような音楽が存在しただろうと思われます。この曲は、そういった英国の「労働歌」を彷彿とさせる。最近、英国的な音楽というのが薄れつつある印象ですが、この曲は、海外の人間から見ると、奇妙なほど”英国的”である。それは王室の話題とは無縁な市井の人々のための音楽なのです。


そして、リズムも独特で面白いですが、この曲はなぜか心を奮い立たせる何かが存在します。おそらく、そういった民謡や労働歌のようなものに合わせて、ドーソンは自らの心情を織り交ぜたエモーショナルな歌を紡いでいる。この曲は、中盤以降、ポピュラーソングに接近したかと思えば、ジョン・ゾーンのようなサクソフォンの特殊奏法を通して、前衛音楽と商業音楽の間を変幻自在に行来し、印象を著しく変化させます。そして、曲は一貫して難解になりすぎず、叙情的なアルペジオのアコースティックギターの間奏を織り交ぜ、落ち着いていて聞きやすいフォークソングを展開させていく。

 

基本的には、リチャード・ドーソンのソングライティングは終止形を設けず、一つのフレーズの後、移調などの技法を用いて、曲の持つイメージを変化させ、そのまま息をきらさず、次の曲の進行へと繋げていく。これはどちらかといえば、クラシックの作曲法で、基音と次の転調の導入音を繋げて次の調性に転回していくのです。ドーソンの音楽は、ものすごく独創的であるため、一見すると、ポストモダニズムのように思えますが、必ずしもそうとは言いがたい。全体的に聴きこんでみると、楽節の枠組みを用意した上で、それを順繰りに繋げている。つまり、ガスター・デル・ソルやジム・オルークの音楽が脱構造の印象を持つのとは対象的であり、ドーソンの音楽はどこまでも構造性を重視しています。しかし、こういった一定の決まりがありながらも、自由闊達な気風を感じさせる。変幻自在なギターの演奏が繰り広げられ、一つの枠組みを通して音楽的な奥行きを広げていく。考え方によっては、そこにあると思っていたものがスッと消えてなくなり、ないと思っていたものがふと出現したりします。つまり、音楽的な驚きが満載なのです。

 

ドーソンのヴォーカルの魅力的な側面がひときわ際立つ瞬間もある。「The question」 では、いわゆる''ヘタウマ''のボーカルが登場し、気安く穏和な雰囲気のあるギターの音色と重なり合う。まさしく、ここでは冒頭で述べたように年齢を重ねたがゆえの深さ、包み込むような温かい感情があらわとなる。それがこのアルバムでは最も牧歌的な印象を持つ音楽とまざりあう。


曲の途中では、即興的な演奏が登場し、これが間奏の役割を担う。それが最終的にはサーカスの音楽のようなリズムと重なり合い、音楽的なエンターテインメント性を創り出す。そして、ドーソンはくるくると調性を移調させながら、面白いようにシークエンスを変化させる。すると、聞き手は、その感覚に釣り込まれるように、楽しみに充ちた感覚を享受する。さらに、わざとピッチ(音階)をずらしたファルセットを通じてコメディー的な音楽の要素を強める。これが少しシリアス過ぎる音楽が多い昨今の中で、ほのかな安らぎの要素をもたらすのです。音楽というのはときどき、固定観念から開放させる働きをなすこともあり、また、それが知られざる魅力でもある。サーカスのようなコメディーにもよく似た音楽は、旧来のビートルズやストーンズの直系にある。いや、もしかすると、見方によれば、フランク・ザッパ的であるのかもしれません。

 

「Boxing Day Sale」はタイトルが秀逸で、小説や映画のタイトルのようです。祝日の讃歌なのか。”ボクシング・デー”とは12月26日の休日で、いわゆる主人と召使いの関係を象徴付ける休日であるという。しかし、この曲には、バックストーリーのようなものが込められているような気がします。

 

アルバムの序盤の収録曲のように、哀愁溢れるメロディーと高らかなボーカルが特徴的です。しかし、一貫してドーソンの曲には奇妙な癒やしが感じられる。それは、暗さの向こうにある明るさともいうべきもので、ボーカルの真心にほっと安堵させられる。


この曲が、貧しき人々に捧げられたチャールズ・ディケンズの小説のような慈しみの音楽であっても驚くには当たりません。彼の歌声は純粋な響きがあり、それがゆえ琴線に触れる何かが込められています。ときどき、ほろりとさせるような人情を感じさせます。下町の風情といった感じでしょうか。

 

 

 「Boxing Day Sale」

 

 

 

いつの時代もポピュラーミュージックの醍醐味というのは、歌手や制作者の真心を表し、それが一般的ではないほど共感を誘う。''なぜそんなことを歌ったのか''という曲ほど、共鳴する部分があったりします。本意を明らかにせず、上辺の感情で別の思いを塗りたくるのは最善とはいいづらい。それはつまらないコマーシャル音楽に堕してしまい、聞き手を絶望のどん底に突き落とし、救われるところがほとんどないのです。暗さや悲しみに共鳴する曲がいつの時代から途絶えてしまい、それがいつ、偽りの音楽に塗り替えられたのでしょうか。そして誰がそれらを称賛しているのでしょうか。


「Knot」は、そういった奇妙な風潮に対抗するカウンターに位置づけられる音楽です。ここでは、ビートニクの範疇にある自由な考え、フリースタイルのフォークソングに縁取られている。こういった曲に共感を覚えるのは、どのような明るい人も暗い感情を内に抱えることがあるからなのでしょう。

 

アルバムの音楽を聞き進めていると、リチャード・ドーソンという人物が教会の聖職者のように思えてきます。しかし、彼の音楽やそれにまつわる思いは、一方方向ではなく、円環状の感覚に充ちています。みんなで輪を広げていこうというオープンな感覚で、そして、それは単一の考えを押し付けるものではなく、答えを見つけるための暗示に過ぎません。本作の音楽は、結局、明確な答えを示すためのものではなく、手がかりだけを示した上で、この音楽に接した人々がそれぞれの答えを見出すという趣旨なのです。多くの人々は、なんらかの明確な答えを求めたがり、ときに自分の理想とする人にそれをあてがってもらったりします。それでもたぶん、答えというのは、最終的には、それぞれが違ったものであるのだから、一つの正解は存在しません。それをおのおのが見つけていくべきなのでしょう。

 

『End Of The Middle』の素晴らしさは、世界からミドルが消えかけているという悲観論だけで終わらず、旧態依然とした世界から前に進むという建設的な考えがほのめかされている点にある。このアルバムの出発点はペシミズムにまみれていますが、アルバムの音楽の世界を歩き終わったあと、別の世界に繋がっていることに気づく。そのための道筋が以降の三曲に示唆されている。「Polytunnel」は、賛美歌をフォークミュージックでかたどったもので、何か清らかな感覚に充ちている。このアルバムの中では、最も気品に充ちた一曲かもしれません。

 

「Removals Van」はビートルズを彷彿とさせるフォークミュージックで、とてもさわやか。厳格に言えば、ジョージ・ハリスンやリンゴ・スターが歌いそうなユニークな一曲である。しかし、ドーソンらしい音楽性があり、感情の起伏という形であらわれる。実際的には、明るく軽快な曲調と哀愁のある曲調という対比によって導かれる。サックスかファゴットのアバンギャルドな響きを絡め、軽快さと前衛の間を巧みに揺れ動いている。ジャズなのか、フォークなのか、クラシックなのか、ロックなのか、それともポップスなのか?? いずれとも言えないですが、ここには、基本的には音楽を楽しむという最大の魅力が宿っている。そしてそれはジャンルを超えている。だからこそ聴いていて心地よいのでしょう。

 

クローズ曲だけは作風がかなり異なります。「More Than Real」ではモジュラーシンセが登場し、悠々たる雰囲気でドーソンはバラードソングを歌い上げています。 これまで一貫してギミック的な音楽を避けて、質朴な音楽を提示してきたソングライターの真骨頂のような瞬間を味わえます。まるでこの曲だけは、舞台やオペラの主人公になったかのように、ドーソンは明るく開けた感覚のボーカルを披露しています。聴いていると、同調して、なぜか開放的な気分になり、前向きで明るい気分になれるはずです。また、そこに、失望に打ちひしがれた人の心を癒やす何かがあると思います。

 

ゲストボーカルをあまり起用してきませんでしたが、クローズでは、女性ボーカルのソロが最後の最後で登場します。唐突にギリシア神話の女神が登場したかのような神々しさが充ち広がっていきます。最終的には、男女のデュエットという、真善美の瞬間が立ちあらわれる。次いで、この曲は、シンセサイザーやサックスの前衛的なパッセージに導かれ、エンディングを迎えます。アウトロの音の波形のうねりのフェードアウトは、ワープから去年発売されたロンドンのアーティストのEPのサウンドによく似ています。空の中の泳ぎ方の模倣。実にうまくやったなあという感じですね。

 

 

 

92/100

 

 

 

「Gondola」

 

 

 

■ Richard Dawson(リチャード・ドーソン)のニューアルバム『End of the Middle」は本日(2/14)、Domino Recordsingから発売済み。各種ストリーミングはこちらから。

 


ロサンゼルスを拠点に活動するインディーロックデュオ、Fake Dad(フェイクダッド)がニューシングル「Machinery」を(2/6)に配信した。


クランチなギターとシンセを織り交ぜた痛快なロックソング。ロサンゼルスの雄大な砂漠地帯を思わせるような素晴らしい楽曲となっている。

 

「Machinary」はFather Figure Musicから3月14日に発売されるFake DadのEP『Holly Wholesome and the Slut Machine』に収録予定。EPの詳細を下記よりチェックしてみよう。


このシングルは、"音楽界で活躍する女性たちが、相手にされるために自分たちを消費可能な、ファック可能な商品としてパッケージしなければならないというプレッシャーについて、そしてそれがいかに彼女たちを互いに、自分自身と対立させるかについて "歌ったものだ。 この怒りに満ちた、歯ぎしりするようなロック/ポップトラックは、業界のショーケースの直後に書かれた。


そこでは、出演する女の子全員がまったく同じスパイクのついたブラジャーをつけていた。 彼女たちがお互いを嫌悪と執着に近い目で見ているとき、私は隅のほうに立っていて、誰もつながろうとしていないことを本当に悲しく感じた。

 

「この曲は、ナルシストでビリオネアの白人男性に支配された私たちの病んだ悲しい社会が真犯人であるにもかかわらず、このような女同士(あるいはもっと一般的にはアーティスト同士)の憎しみがこのような空間を蔓延させていることへの反応として書かれた。 結局のところ、私たちが呼びかけている本当の犯人はこの男なのだ。 私たちが彼らの手のひらで飯を食っている間に、彼らが欲しいものを手に入れるのを見るのはうんざりだ」とアンドレアは語る。 


Fake Dadは、Spotifyの公式プレイリストに1ダース以上もランクインする成功を収めている。FADER、LADYGUNN、DIY、Live Nation Ones to Watchなどから高い評価を受けている。  バンドはこの春と夏にツアーを行う予定だ。SXSW、Treefort Music Festivalに出演する。 



「Machinery」

   



Los Angeles-based indie rock duo Fake Dad delivered their new single “Machinery” on (2/6). The song is a poignant rock song with crunchy guitars and synths. The song is a great reminder of the majestic desert areas of Los Angeles. It is sure to be an excellent choice for those looking for American indie rock.


stood in the corner feeling really sad that nobody was trying to connect, which is what we were all supposedly there to do. This song was written as a response to the way this kind of woman on woman (or more generally, artist on artist) hate perpetuates these spaces while the real culprits—our sick, sad society governed by narcissistic, billionaire white men—totally fly under the radar. In the end, the man is the real one we're calling out. The one that we're sick and tired of watching get what they want, while we sit back eating from their palm," shares Andrea. 


Fake Dad has seen success landing over a dozen official Spotify playlists and has received acclaim from the likes of FADER, LADYGUNN, DIY, and Live Nation Ones to Watch.  The band is set to tour this spring and summer and will perform at SXSW as well as Treefort Music Festival.



アンドレア・デ・ヴァローナ(彼女/彼)とジョシュ・フォード(彼/彼女)、通称フェイク・ダッドは、ロサンゼルスを拠点とし、ニューヨーク育ちのインディー・ロック・ミーツ・ドリーム・ポップ・デュオだ。 2020年に結成された2人は、イースト・ヴィレッジの大学のパーティーで出会い、それ以来、切っても切れない関係にある。 


独自のアーティスティックなヴィジョンを融合させ、共有されたサウンドを構築するフェイク・ダッドは、ポップでキャッチーなフック、90年代にインスパイアされたクランチーなギター、グルーヴするベースライン、そして浮遊感溢れるシンセサイザーを駆使し、酔わせるようなカラフルな音楽的フュージョンを生み出している。 


独特のプロダクション・サウンドと特徴的なヴォーカルを持つ2人は、自分たちのアパートで作曲とレコーディングを行っている。 アンドレアとジョシュはそれぞれ異なる音楽的背景を持つが、共通の目標は「自分を理解してくれる音楽を創る」ことだ。 


この1年、フェイク・ダッドは "ポーザー "にこだわってきた。 特にロック・ミュージックのポーザーには、自分を偽っているアーティストの音楽が持つ魅力がある。 特にロックの様々なサブジャンルにおいて、"フェイク "は汚い言葉かもしれない。 しかし、アンドレアとジョシュが彼らの時代以前から好きなアーティストを掘り下げていくうちに、キャラクターを演じることはロック音楽の遺産とかなり深く関わっていることが明らかになった。 


PJ・ハーヴェイは痩せていて、身長150cmの女性だった。 スティーヴィー・ニックスは、ロックンロールのジェンダーの境界線を突破するために、私にちょっかいを出すな、さもないと魔法をかけるぞ、という魔女のようなペルソナを身にまとった。

 

ティナ・ターナーは、バックシンガーから手の届かないスーパースターに転身し、何十年にもわたる苦闘の末に自分を改革した。 LCDサウンドシステムは、内向的でパーティの中心的存在であるふりをし、デヴィッド・ボウイは宇宙人であるふりをした。 

 

しかし、そこには一種の願望充足がある。彼らは芸術の中に創造的な表現以上のものを見出したのだ。 偽りのイメージの中に、自分自身の真の姿を見出すことができたのだ。 2024年の始まり以来、フェイク・ダッドも同様に、キャラクターというレンズを通して音楽を書くという自由なプロセスを受け入れることで、自分たちの好きなロック、パンク、ニューウェーブの伝説的なサウンドを探求し、自分たち自身をよりよく理解することができるようになった。


EP『Holly Wholesome and the Slut Machine』で、Fake Dadは、怒り狂ったハンバーガーを平らげるピエロ、星条旗を掲げた騎士、仮面をかぶった睡眠麻痺の悪魔など、彼らの世界に住むキャラクターを作り上げた。 その過程を通して、アンドレアとジョシュは、自分たちの生活体験の非常に現実的な側面(ストレート・パスな関係の恋愛パートナーとしてのアイデンティティやセクシュアリティなど)を、フィクションを使って解き明かしていることに気づいた。


ユニークな音楽的視点と、リスナーとの比類なき共同体的絆を持つFake Dadは、すでに12以上のSpotify公式プレイリストを獲得し、地元ニューヨークと新天地ロサンゼルスのライヴを完売させるなど、大きな注目を集めている。

 

デュオの次のプロジェクト『ホリー・ホールサム・アンド・ザ・スラット・マシーン』は、彼らのアーティストとしての進化における新たな時代を明らかにするもので、リスナーは2025年以降にやってくるであろう作品の広がりと特異性に備えることができるはずだ。 


 "Machinery "は、3月14日にリリースされるFake DadのEP『Holly Wholesome and the Slut Machine』(編集部イチオシの "So Simple!"と "ON/OFF "を収録)からの最終シングルである。


このリリースの後、Fake Dadは北欧のインディーロックバンド、Pom Poko(ポンポコ)と共に初のフルバンドでUSツアーを行う予定。



Andrea de Varona (she/her) and Josh Ford (he/him) aka Fake Dad are a Los Angeles based, NYC bred indie rock meets dream pop duo. Formed in 2020, the two met at a college party in the East Village and have been inseparable ever since. 


Melting their own unique artistic visions to build a shared sonic shorthand, Fake Dad create an intoxicating and colorful musical fusion complete with catchy pop-laden hooks, crunchy, 90s inspired guitars, grooving bass lines, and buoyant synths. With a distinctive production sound and a signature vocal delivery, the two write and record expansive musical moments from their apartment. Although Andrea and Josh come from different musical backgrounds, they share a common goal: to create music that understands you. 


In the past year, Fake Dad have been fixated on posers. Specifically, rock music posers—there’s just something fascinating about music made by an artist who’s pretending to be someone they’re not. In the different subgenres of rock especially, “fake” can be a dirty word. But as Andrea and Josh dug into some of their favorite artists from before their time, it became clear that playing a character is pretty deeply entwined with the legacy of rock music. 


PJ Harvey was a skinny, 5’4 woman who bellowed about being 50 feet tall and “man-sized.” Stevie Nicks wore her don’t mess with me or I’ll put a spell on you, witchy persona to break through the gender boundaries of rock and roll. Tina Turner was a background singer turned untouchable superstar who reinvented herself through decades of hard fought battles. LCD Soundsystem was an introvert pretending to be the life of the party, and David Bowie was pretending to be a space alien. And yet, there’s a kind of wish fulfillment there: these are people who found more than just creative expression in their art—they found reinvention. 


Within the false image, they were able to find something true about themselves. Since the beginning of 2024, this is what Fake Dad has been able to do as well, embracing the freeing process of writing music through the lens of a character, which has allowed them to explore the sonic trappings of their favorite rock, punk, and new wave legends, as well as better understand themselves.


In their upcoming EP, Holly Wholesome and the Slut Machine, Fake Dad have created characters that live in their made up world of angry, burger-flipping clowns, star-crossed knights, and masked sleep paralysis demons. Throughout the process, Andrea and Josh realized that they were using the fiction to unpack very real aspects of their lived experiences—including their identities and sexualities as romantic partners in a straight-passing relationship.


The latest offering off the project, “Machinery” is about the pressure for women in music to package themselves as consumable, f*ckable products just to be taken seriously—and how that pits them against each other and themselves. Andrea confides, "This angry, teeth-grinding rock/pop track was written right after an industry showcase where every girl performing wore the exact same spike-studded bra—too concerned with sizing each other up to actually have a good time. 


As they eyed each other with loathing and borderline obsession, I stood in the corner feeling really sad that nobody was trying to connect, which is what we were all supposedly there to do. This song was written as a response to the way this kind of woman on woman (or more generally, artist on artist) hate perpetuates these spaces while the real culprits—our sick, sad society governed by narcissistic, billionaire white men—totally fly under the radar. In the end, the man is the real one we're calling out. The one that we're sick and tired of watching get what they want, while we sit back eating from their palm."


With a unique musical perspective, and an unparalleled communal bond with their listeners, Fake Dad have already garnered much deserved attention, landing over a dozen official Spotify playlists and selling out shows in their hometown of NYC as well as their new home of Los Angeles. 


The duo’s upcoming project, Holly Wholesome and The Slut Machine reveals a new era in their evolution as artists—preparing listeners for the expansiveness and singularity of what’s to come in 2025 and beyond.  "Machinery" is the final single off Fake Dad's upcoming EP, Holly Wholesome and the Slut Machine out March 14th (featuring editorial picks "So Simple!" and "ON/OFF").  


The single "Machinery" is "about the pressure for women in music to package themselves as consumable, f*ckable products just to be taken seriously—and how that pits them against each other and themselves. This angry, teeth-grinding rock/pop track was written right after an industry showcase where every girl performing wore the exact same spike-studded bra—too concerned with sizing each other up to actually have a good time. 


As they eyed each other with loathing and borderline obsession, I stood in the corner feeling really sad that nobody was trying to connect, which is what we were all supposedly there to do. This song was written as a response to the way this kind of woman on woman (or more generally, artist on artist) hate perpetuates these spaces while the real culprits—our sick, sad society governed by narcissistic, billionaire white men—totally fly under the radar. In the end, the man is the real one we're calling out. The one that we're sick and tired of watching get what they want, while we sit back eating from their palm," shares Andrea. 


The release will be followed by FD's first full band US tour with Pom Poko—including official festival plays at SXSW, Treefort, and more to be announced. 


カナダのパンクバンド、PUPが5thアルバム『Who Will Look After The Dogs?』のリリースを発表した。

 

PUPは、ステファン・バブコック、ネスター・チュマック、ザック・マイクラ、スティーヴ・スラドコウスキーからなる。彼らは、『The Unraveling Of PUPTHEBAND』に続く作品を5月2日にLittle Dipper / Rise Recordsからリリースする。

 

彼らはまたニューシングル『Hallways』のプレビューを行い、ステファン・バブコックがその裏話を語っている。

 

偶然にも『The Unraveling Of PUPTHEBAND』というタイトルの前作を発表した数日後、私の人生は予期せず崩壊した。

 

『Hallways』の歌詞を書いたのは、そんなことが起こっている最中だった。 奇妙な1週間だった。 『Who Will Look After The Dogs? 』というタイトルは破壊的だと思うけど、”なんてこった、これは大げさなんだ!”という感じだ。 少なくとも、その前の行の文脈から見ればね。 それが僕らにとっては面白いんだ。

 

私たちが暗いときに言う大げさな言葉も、少し冷静になれば滑稽なものになる。 それを面白ろがる人がいるかどうかはわからないんだけど、時には自分自身を笑うことも必要なんだよ。 それが奈落の底から抜け出す唯一の方法なんだ。 信じてほしい。

 

「Hallways」



PUP 『Who Will Look After The Dogs?』


Label:Little Dipper / Rise Records

Release: 2025年5月2日

1. No Hope

2. Olive Garden

3. Concrete

4. Get Dumber

5. Hunger For Death

6. Needed To Hear It

7. Paranoid

8. Falling Outta Love

9. Hallways

10. Cruel

11. Best Revenge

12. Shut 

 

 

最も冒険的でマキシマムなフルアルバム、2022年の『The Unraveling of PUPTHEBAND』のリリース後、バンドの生活は大きく変化した。ギタリストのスティーヴ・スラドコフスキーは結婚し、ベーシストのネスター・チュマックは父親としての生活に落ち着き、ドラマーのザック・マイクラはトロントの新しい場所に引っ越し、自宅スタジオを拡張することができた。他のメンバーたちが大きな決断を下し、行動を共にする中、バブコックは孤独を感じていた。彼は10年来の交際に終止符を打ち、バンドメンバーとも距離を置いたばかりだった。

 

「レコードを作っているときは仲が悪いから、引きこもりがちになるんだ」とバブコックは言う。「以前は別の人に安らぎを見出したものだが、今回は一人だった。退屈で寂しかったから、ただひたすら曲を書き始めたんだ」。以前のアルバムでは、12曲を完成させるのに2〜3年かかったが、『Who Will Look After The Dogs?』では一年で30曲をスピーディーに書き上げた。

 

作曲中、バブコックには内省する時間があり、もしかしたら成長したかもしれない。「初期の曲の多くは、自分がいかにダメな人間であるかを歌っていた。「それは今でも変わらないけど、若い頃ほど自分を嫌いになることはなかったし、周りの人たちもありのままの自分を受け入れてくれた。PUPの前作がバブコックの人生の6ヵ月を覗く窓のような役割を果たしたのに対し、このアルバムでは彼の恋愛関係、交友関係、そして若い頃から現在に至るまでの自分自身への接し方を全体的に捉えている。ある意味、このアルバムを書くことは、彼の心の成長を映し出す鏡のような役割を果たした。それは大変で、時には最悪だったが、最終的にはそれだけの価値があった。
 

彼らはアルバム全体を3週間でレコーディングした。『The Unraveling of PUPTHEBAND』を作るのにかかった時間の半分以下だ。「このアルバムのために歌詞を書き始めたとき、すべてが本当に重く感じられた」とバブコックは言う。

 

「レコーディングする頃には、暗い曲でさえ軽くて楽しいものに感じられた。このアルバムを作っている間は、喧嘩もしなかった。すべてがクソ素晴らしい感じだった」

 

 

【PUP — 2025 Tour Dates】

 
05/07/25 – Birmingham, UK @ XOYO Birmingham*&
05/08/25 – Leeds, UK @ Project House*&
05/10/25 – Manchester, UK @ O2 Ritz*&
05/11/25 – Glasgow, UK @ SWG3 (TV Studio)*&
05/12/25 – Newcastle, UK @ Newcastle University*&
05/13/25 – Bristol, UK @ Marble Factory*&
05/15/25 – Southampton, UK @ Engine Rooms*&
05/16/25 – London, UK @ O2 Forum Kentish Town*&
05/18/25 – Amsterdam, NL @ Melkweg*
05/20/25 – Cologne, DE @ Club Volta*
05/21/25 – Hamburg, DE @ Logo*
05/22/25 – Berlin, DE @ Hole44*
05/23/25 – Munich, DE @ Strom*
05/25/25 – Paris, FR @ Bellevilloise*
05/27/25 – Madrid, ES @ Sala Mon
05/28/25 – Barcelona, ES @ Upload
05/29/25 – València, ES @ Loco Club
05/30/25 – San Sebastian, ES @ Dabadaba



* support from Illuminati Hotties
& support from Goo

ミシェル・ザウナーのプロジェクト、Japanese Breakfast(ジャパニーズ・ブレックファスト)が、近日リリース予定のアルバム『For Melancholy Brunettes (& sad women)』からのセカンドシングルを公開した。 「Mega Circuit」のミュージックビデオは以下よりご覧ください。


ミュージックビデオはかなり手が込んでいます。ザウナーと長年のコラボレーター、アダム・コロドニーが共同監督したビデオは、この曲の地に足がついた自国のエネルギーを反映している。 ザウナーが "四輪バギーから泥を蹴り落とす "と歌いながら、ダートバイクが裏山を疾走するという内容です。


"Mega Circuit"は、不気味でギター主体のレコードを作ろうと思って最初に書いた曲のひとつです 。 この曲は、現代の男らしさについての考察のようなもので、肯定的なロールモデルがいないために暴力や偏見に逃げ場を見出している世代を受け入れたいという葛藤を探求している。

 

コラボレーターの貢献についてザウナーは次のように述べています。『These Days』から『Here You Come Again』、『Dream Weaver』まで、あらゆる曲でプレイしている伝説的なジム・ケルトナーに来てもらい、今まで聴いたことのない激しいシャッフルを演奏してもらった」

 


「Mega Circuit」



Helen Ganya 『Share Your Care』


Label: Bella Union

Relase: 2025年2月7日

 


Review



スコットランド在住で、タイにルーツを持つシンガー、ヘレン・ガーニャはベラ・ユニオンから発売された新作で摩訶不思議なポピュラーワールドを展開している。祖母の死をきっかけに書かれたアルバムで、タイとの繋がりが断ち切られるおそれを抱いたヘレン・ガーニャは、前作の発売前にこの新作に着手しはじめました。日記を手に入れ、タイでの思い出にまつわる子供の頃についての楽曲を書き始めた。結果的には、西洋側から見たアジアではなく、アジアそのものの奥深いルーツを辿ることになった。そのプロセスでシンガーは大切なことに気がつきました。家族や伝統的な概念に対する愛情、現代社会における過度な個人主義の歪みでした。

 

そういった社会的な問題は、家族愛やタイやシンガポールとの関係によって演繹され、温かく朗らかな愛情のひと雫に変化しています。それはとりもなさず、幼少期に彼女を育ててくれた祖母をはじめとする家族という概念がアルバムの音楽に通底しているからなのでしょうか。音楽としてはタイの民族楽器であるラナットエット、フルート、サックスが登場しますが、これらは西洋主義に慣らされた人々にとってはエキゾチックに聞こえるに違いありません。ときどき、それはタイのボクシングを観戦するときの「チャイヨ!」という掛け声にたちあらわれます。

 

本作は、音楽的にはシンセポップが中心となっており、ビョークの最初期やミツキの初期のアプローチに重なるものがある。しかし、同時に、それらのシンセポップは、タイの民族音楽や祭礼の音楽によって強められ、独自の音楽に変化しています。いわば、アジアの音楽に詳しくない方にとっては、これらの音楽は摩訶不思議に聞こえるでしょう。しかし、これらはアジア発祥の音楽がベースになっています。西洋主義が優勢になるにつれ、多くの人はアジア的な概念がなんであるのかを忘れてしまった。そんな中で、アジア出身の歌手が西洋びいきのポップスを制作する中で、ヘレン・ガーニャは西洋音楽と東洋音楽の融合に取り組んでいる。これが結果的に、心地よいサウンドとオリジナリティの高い音楽性を生み出すことになったのでした。 


アルバムは流行りのインタリュードの形式を各所に設け、物語性を付与し、起承転結のあるポピュラーソングが展開されます。これは例えば、YMOのようなアジアのサウンドがギターを中心としたモダンなポップスに生まれ変わり、タイやシンガポールのような地域の原初的な音楽と結びついたらどうなるのか、という空想でもあるのです。しかし、その空想は、タイの楽器演奏者、Artit Phoron、Chinnathip Poolapという現地の音楽をよく知るコラボレーターに恵まれたことで現実に近づいた。ヘレン・ガーニャの音楽的な構想には''ファンタジア''の要素が求められますが、実際的には現実性に富んだ音楽性が組み込まれている。まさしく、彼女がこれらの音楽の制作や歌唱を通じて、幼少期の思い出に近づいたとき、温かな感覚が蘇る。それは私たちが見る現実以上にリアルです。そして、その音楽という端緒を通じて、タイとのつながりを取り戻す。''無くしたと思っていたものが、実は身近にあったことに気がつく''という次第なのです。

 

アルバムのオープナーから軽快な印象です。「Share You Care」ではファジーなシンセポップにヘレン・ガーニャの華麗なボーカルが乗せられる。全体的な音楽の枠組みが西洋に依拠しているからと言えども、そのメロディーの節々にはアジアのテイストが漂う。聴く人にとっては少しエキゾチックにも聞こえるかもしれませんが、懐かしい感覚が蘇る。それらをスタイリッシュな感覚に充ちたポップスに落とし込むという点では、ニューヨークのインディーポップシーンに呼応するもので、セイント・ヴィンセントのデビューアルバムを彷彿とさせます。アジアのよな抜き音階を踏襲したシンセのベースライン、そしてボーカルが心地良いサウンドを生み出している。ダンス・ポップ、ないしはシンセ・ポップとして申し分のないナンバーでしょう。

 

ファンタジックな音楽性は「Mekong」に登場します。ギターのアルペジオを中心に組み上げられるポップソングはやがてビョークの系譜にあるアートポップの手法においてその壮大さを増していき、アーティストの持ちうる音楽的な世界が序盤から見事に花開いています。プレスリリースで紹介されている通り、これらのポップスはシネマティックであるばかりか、映像的な側面を持つ。実際的にリスナーは音楽の持つ換気力により何らかのイメージを膨らますことが出来ます。ベースラインの進行が秀逸であり、ボーカルの主旋律を上手く補佐し、なんらかの切ないイメージのような感覚を聞き手の脳裏に呼び覚ます。音楽の持つ想像性が発揮された瞬間です。この曲にはプロデューサーとシンガーのイメージが巧みに合致した瞬間を捉えられます。

 

「Intelude-1」を挟んで、 Zitherのような楽器の華麗なアルペジオが登場する「Fortune」はエキゾチックな民族音楽とポピュラーの融合を意味します。Zitherは、フォルテ・ピアノの原型とも言われ、日本の琴の音にも近似している。少なくとも、この曲では、タイの象徴的な仏教寺院などで聞かれる祭礼の音楽を、親しみやすく聞きやすいサウンドに編曲しています。エスニックなサウンドにビョークの系譜にあるアートポップの要素を結びつけて、新鮮味溢れる音楽性を作り上げている。これらのサウンドには、例えば、ニューヨークの伝説的な歌手、Murgo Garyanの象徴づけられるバロックポップからの影響がうかがえ、チェンバロのような背景のサウンドと上手くマッチしています。近年の米国のポップスの懐古的なサウンドを踏襲しつつ、それらにエキゾチズム(アジアのサウンド)を付与したことが、曲にささやかな楽しみをもたらす。


「Horizon」は、ピアノとヨットロックのようなギターを結びつけたナンバーです。ペシミスティックな雰囲気を持つバラードソングで、ここではおそらく亡き祖母との思い出、そしてタイという土地のつながりについて追憶します。つまり、全体的に見ると、オペレッタの作風が取り入れられ、セイント・ヴィンセントやビョークのアートポップの音楽性に直結しています。そして驚くべきことに、それは単なるエンターテインメント以上の意味を擁する。とりもなおさず、消えかけた記憶の糸をたぐりよせる……、それこそ歌手にとってのリアリティを意味するのでしょう。これらは聞き手を追体験のような瞬間に誘い、感情的な気分にさせることがある。

 

「Morlam Plearn」は、推察するに、タイの民族音楽ということになるでしょうが、例えば、アイルランドのLankumの音楽性と相通じるものがあります。あまり詳しくありませんが、タイの吹奏楽器や弦楽器が登場し、これらはスペインのアルフォンソ国王の御代の中世ヨーロッパの音楽を彷彿とさせる。アルフォンソは、トルコや北ヨーロッパとの交易を通じて原初的な民族音楽を確立しました。後にコーカサスの音楽と結びつき、例えば、ゲオルギイ・グルジェフのような音楽家/舞踏家が「アルメニアの民族音楽」として紹介しました。タイとの関連性は不明なのですが、少なくとも、この曲においてリズムミカルな舞踏音楽と結びつけ、祭礼的な意味合いの強い楽曲として昇華している。二つ目のインタリュード「Interlude-2」は、子供の頃の思い出を呼び覚ますためのもの、過去の声の日記(ボイスメモ)のような意味合いがあるのでしょうか?

 

分けても、アジアの音楽のテイストとシンセ・ポップやダンス・ポップと上手く結びつけたのが終盤の収録曲で、これらは単なる奇異の目をもってアジアの音楽を聴く以上の魅力が感じられる。「Bern Nork」ではタイで流行しているポピュラーソングがかくなるものではないかと想像させる。それが、実際、モダンでスタイリッシュな感覚を持つポップソングに昇華されている。そして、ヘレン・ガーニャの歌声には、ちょっとした可愛らしさと可笑しみが含まれていて、これもファンタジーに登場する妖精のようにファニーな雰囲気を持ち合わせている。特に、このアルバムで完成度が最も高い曲が続く「Hell Money」でしょう。この曲では、アルバムの全体的なシンセ・ポップという枠組みの中で、歌手のメロディーセンスが光る瞬間でもある。そして、この曲には開放的な感覚に充ちていますが、それはケルト民謡の要素が含まれており、この音楽の特徴である牧歌的な雰囲気がモダンなアートポップの中で個性的な魅力を放つ。

 

終盤にも素敵な曲が収録されています。タイのボクシング観戦の時に言うセリフ「チャイヨ!」という掛け声は、YMO、JAPANのようなニューロマンティックの系譜にあるサウンドと結びついて、懐かしくレトロな響きを生み出す。最後のインタリュード「Interlude 3」では、子供の遊び場のサウンドスケープが呼び覚まされる。続くアルバムのクローズを飾る「Myna」は、クライマックスを飾るに相応しいダイナミックなバラードソング。歌手としての存在感を示すにとどまらず、歌唱の表現力の豊かさを発揮しています。今後がとても楽しみなシンガーソングライターがスコットランドから登場しました。ヘレン・ガーニャの今後の活躍に注目です。

 

 

80/100

 

 

 

 

「Hell Money」