リーズのロックトリオ、Alt-J(アルト・ジェイ)が、BBC Radio 6 Musicのスタジオで録音されたMetronomyが2011年に発表した「Everything Goes My Way」のカバーを公開しました。


プレスリリースでは、バンドは次のように述べている。「The DreamとAn Awesome Waveの10周年記念のプロモーションはとても素晴らしかったので、このパーティーを2023年まで延長することにしました。3月にアメリカでAAWアニバーサリー・ライヴを開催し、アメリカで初めてアルバムをフルで演奏することを発表出来ることを嬉しく思っています。ぜひご参加ください」


Alt-Jの最新アルバム『The Dream』はCanvasback/Infectious Musicから今年初めに発売された。

Low Lying Sun © Nicola Rushen

 

イギリス/エセックス出身のインディー・ロック・バンド、Low Lying Sunは、次のブレイクが予想される注目のグループです。

 

2022年初めにデビューEP『Hymn To Say Goodbye』で登場し、大西洋の両岸のインディー・ロックの要素を多分に織り込んだ、生命力と切実さを感じさせるサウンドを完成させた。このデビューEP発表の後、Low Lying Sunは、イギリス国内でのライブ・サーキットに乗り出した。そして、先日、彼らはニューシングル「Heaven Knows」でカムバックを果たしている。


この曲は、アンセム的なフックと大きなエモーションに溢れたトラックで、バンドは高い目標を掲げている。明るいギター、パーカッション、高鳴るメロディーが、この曲のエモーショナルな高音を彩り、陰鬱で瞑想的なヴァースと完璧に対比している。結果、多幸感や勝利の喜びを感じさせ、同時に、十分な質感と反射的なエッジを重ね、このトラックを暗い色調で包み込んでいる。付属のビデオは、詩の閉所恐怖症のトーンを反映し、その暗い側面を探っているようだ。


バンドはこのビジュアルについて、「私達は、ビデオの全体にわたって同じ空間に閉じ込め、被写体を孤立させ、不明瞭にすることによって、曲のテーマを反映しようとした」と語っています」と述べている。


「Heaven Knows」のミュージック・ビデオは以下よりご覧下さい。

 


2022年初めにリリースした「Doja」が大ヒットを記録したロンドンのシェパーズブッシュ出身のラッパー兼ソングライター、Central Cee(セントラル・シー)が、Passengerのサンプリング・シングル「Let Go」をリリースした。この曲は、12月15日にシングルとしてリリースされたばかり。24歳の若手ラッパーは自身の失恋をテーマにしている。先月のソールドアウト・ショーの前に、ロンドンのアレクサンドラ・パレスで撮影されたビデオも公開されています。


Central Ceeは、自身の流動的なアイデンティティについて、常にプライドを持ち、リリックとして表している。2020年に「Day In The Life」でシングルデビューを飾った。昨年、ミックステープ『Wild West』を発表し、UKアルバムチャート2位にランクイン、ブレイクを果たし、ファンベースを拡大しつつある。ロンドンのラップシーンでも注目のアーティストのひとり。

 

今年に入り、セントラル・シーは、2月のミックステープ「23」に続き、最新EP「No More Leaks」をリリースしている。


「Let Go」のMVは以下よりご視聴下さい。

 

 

先週、最新アルバム『No Thank You』をリリースしたばかりのLittle Simzが、アルバムに収録されている10曲のうち5曲を収録したショートフィルムを公開しました。


この「No Thank You」ショートフィルムは、先週サプライズでリリースされたアルバムに続くもので、彼女は4枚目のアルバム『Sometimes, I Might Be Introvert』で2022年度マーキュリー賞を受賞しています。


この11分間の映像は、高評価を得ている写真家・映像作家のGabriel Moses(ガブリエル・モーゼス)が監督を務め、パリのシャトー・ドゥ・ミレモンの屋外で撮影された。収録曲は、「Heart on Fire」、「X」、「Silhouette」、「Sideways」、「Broken」となっている。


今回の映像におけるコラボレーションについて、ガブリエル・モーゼスは次のように述べています。

 

「Simzの音楽はとても好きだし、彼女は謙虚な人だから、成功に値すると思う。”No Thank You"のような誠実なプロジェクトで彼女とコラボレーションできることを幸せに思います。この作品に関わった全ての人に愛を込めて、彼らなしでは成り立たないのだから」


ショートフィルムは以下よりご覧いただけます。

 


Gretel Hänlynが新曲「Today (Can't Help But Cry)」を公開しました。この曲は、10月のシングル「Drive」、5月のデビューEP「Slugeye」に続く作品です。この曲は下記よりご覧いただけます。


この曲について、Hänlynは声明の中でこう説明しています。


「時々、誰かとうまくいかなくなることがあります。この物語の主人公が住んでいる場所のすぐ近くのスタジオにいたので、リフとコードを書き始めたとき、当然彼のことが頭にありました。


 最終的には、もし一度でも物事が進展したらどんな感じだろうということを書き、まるで自分がこの曲を通して、完全に空想の関係を生きているような感じでした。いろんな意味でハッピーエンドを自分で作れたというか。


自分の感情に正直に、かつ自分の欲望に甘えるように表現するのは簡単ではありませんが、この曲ではそれができたので、自分の現実(拒絶反応)と折り合いをつけることができました。今、この曲を再生すると、そんな前向きで恋しい感情の美しさと、若い彷徨える心の力によってもたらされる痛みが聞こえてきます」

 

Green Day 1991


ご存知のように、カルフォルニアのパンクバンド、グリーン・デイは、1994年に『Dookie』で世界的なブレイクを果たし、大きな成功を手にした。このアルバムは世界で天文学的な売上を記録した。その後のオレンジ・カウンティを中心とするメロディック・パンクのムーブメントは2000年以降まで続き、彼らのフォロワーが数多く出現する。New Found Glory、Blink-182、Bowling For Soup、Sugarcult等は、その2ndジェネレーションの代表格と言える。

 

グリーン・デイの最初の成功作としては『Dookie』が有名だが、それ以前に彼らは素晴らしいパンク・アルバムをリリースしていることはマニアなら知っているはず。そして2ndでグリーン・デイはヨーロッパツアーを敢行している。既に『Dookie』以前にブレイクの予兆はあった。

 

1991年12月17日、グリーン・デイはセカンド・アルバム『Kerplunk』のレコード盤を手にした。


この寒い冬の夜、グリーン・デイは、イギリス/サウサンプトンの”Joiners Arms”というライブハウスに出演していた。このイベントはすぐに即席のアルバム・リリース・パーティーとなり、三人のミュージシャンたちは、最初のヨーロッパツアーで溜め込んだ服とウィッグをすべて着用し、ビリー・ジョー・アームストロングがステージから落下し、興奮は最高潮に達するという事態になった。


この1991年の時代、グリーン・デイは、ヨーロッパに2ヶ月近く滞在し、とんでもない目にあったという。一説では、バンドは、4人が入場料を払って雪に覆われたライブに向かう途中、火がついたバンで移動したといい、ある晩、彼らは物置でホルムアルデヒドの瓶に入った人間の頭と一緒に寝た。また、コペンハーゲンの会場では、カップルがステージ上で騒がしくセックスしていたという。他にも、ドイツでは、剣呑にも、銃を突きつけられもした。イギリスのウィガンでは、イースター・バニーとサンタクロースを登場させ、トレ・クールが赤ん坊のイエスを演じたキリスト降誕劇を上演した。数日後、3人のメンバーは、クリスマスの日をバースのスクワットでマジック・マッシュルームを摂取し、熱したナイフに乗せたマリファナの煙を吸って過ごした。これらのエピソードはどこまでが本当かわからない話ではあるものの、このバンドの破天荒なエピソードの数々は、ロックスターとしてブレイクする予兆だったと言える。


ヨーロッパ・ツアーが終わる頃には、ビリー・ジョー・アームストロングはドイツに長く滞在していたため、話すスピードが遅くなり、カリフォルニア訛りもほとんどなくなっていた。あまりにツアー自体が劣悪な環境だったため、フロントマンのビリーは全身シラミに感染し、体毛をすべて剃ることを要求されたという話もある。


Green Dayとファン 崩壊後のベルリンの壁を背に

「ヨーロッパに着いたとき、俺たちは何も知らなかったんだ」と、フロントマンのビリー・ジョーは後に語っている。「でも、いざ行ってみると、急に不安になったんだ。いくつかのショウは滅茶苦茶怖かった。ツアー中のバンドが正気を失い、再び人生を意味あるものにするために互いを見つけなければならないような状況だった。だから、みんな辞めちゃうんだよ、おかしくなっちゃうから。狭い車内でピエロの集団になったような気分だったよ。ある意味では最高だったよ」

 

グリーン・デイがサウサンプトンで手にした新作レコードは、ラリー・リバモアが持ってきてくれたものだ。ヒースロー空港で、Look Out! Recordの主宰者は、税関の係官に、「イギリスに持ち込むアルバムはプレゼント用だ」と説得するため、話を聞く人が生きる気力を失うまで話す、というテクニックを駆使したという。もちろん、空港を出るとき、グリーン・デイは自分たちが運んでいる音楽が、そのレーベルで録音する最後の作品になるとは思ってもいなかったという。

 

その2年後、彼らはパンクロックの金字塔『Dookie』をRepriseからリリース、ポップパンク旋風を巻き起こした。今なお輝かしい「Basket Case」を始めとするパンク・アンセムは、彼ら三人を押しも押されぬ世界的なスーパースターへ引き上げることになった。2ndアルバム「Kerplunk」は、以後のブレイク作品に比べると、荒削りなアルバムだが、『Dookie』に見られる淡い青春の雰囲気に満ちたパンク・アンセムの原型は、ほぼ完成に近づいていることがわかる。

 

 


Metallicaは、新作アルバムのリリースを先日発表したばかり。彼らは、12月16日(金)の夜、第3回目のHelping Handsチャリティ・コンサートとオークションを開催し、いくつかのサプライズを用意していました。


ロサンゼルスのマイクロソフト・シアターで行われたこの夜の14曲のセットリストは、代表曲「Blackened」、「The Unforgiven」、Thin Lizzyの「Whiskey In The Jar」をアレンジしたアコースティック・バージョン5曲に始まり、Thin Lizzyの「Borderline」、UFOの「It's Killing Me」等のアンプラグド・カバーが含まれていた、とSetlist.fmは述べている。


この夜、メタリカは、11月28日にリリースしたニュー・シングル「Lux Æterna」もライブで初披露しました 。これは、バンドが4月14日にリリースするアルバム『72 Seasons』の最初のテイストであり、2016年の『Hardwired ... To Self-Destruct』以来のアルバムとなります。


また、メタリカは、ヘルピング・ハンズのコンサートにサプライズ・ゲストを迎えた。バンドは 「Nothing Else Matters」でギターとボーカルのアシストをするため、St.Vincent(セント・ヴィンセント)をステージに呼んで演奏した。さらに、サンフランシスコのマルチ・インストゥルメンタリスト、アヴィ・ヴィノカーも 「All Within My Hands」でゲスト参加している。

 

Paramount+で配信された先週金曜日のナイト・ショーでは、”Jimmy Kimmel Live!”でお馴染みの司会者、ジミー・キンメルがMCを務め、Greta Van Fleetがオープニング・セットで登場しました。


このチャリティー・コンサートとオークションは、メタリカの基金「All Within My Hands」のために行われる。2017年に設立され、食糧難との戦い、災害救済、労働力とコミュニティ・カレッジ・プログラムによる持続可能なコミュニティ作りのために、1200万ドルを拠出している。オークションはこちらで12月20日まで開催されています。


4月27日から、メタリカは2023年と2024年を通じて、パンテラの新しいイテレーション、マンモスWVH、ファイブ・フィンガー・デス・パンチ、アーキテクツ、アイスナイン・キルズからのサポートとともに、世界の複数の都市を回るM72ワールド・ツアーを敢行する予定である。

 

Kendrick Lamar

米国、コンプトン出身のラッパー、ケンドリック・ラマーは、高い評価を得ているアルバム『Mr.Moral & the Big Steppers』から、独創的なミュージック・ビデオを新たに発表しました。


12月16日(金)、ケンドリック・ラマーは、ファン待望のカット「Count Me Out」のビジュアルを公開し、伝説の女優Helen Mirren(ヘレン・ミレン)が出演している。ヘレン・ミレンは、イギリスの女優、『クィーン』でアカデミー主演女優賞を受賞。その他、エミー賞を4度、トニー賞を2015年に受賞し演劇の三冠王を達成。 2003年12月に大英帝国勲章を受勲している。

 

ケンドリック・ラマーは、最新作『Mr.Moral & the Big Steppers』をpgLangから今年5月にリリースし、The Guardian、The Times,NME、Evening Standard、The Independentを始め、各メディアから満点評価を受け、大きな称賛を獲得している。彼は、今年、多方面で活躍し、パリでルイヴィトンのショーケースにゲスト登場してラップを披露したほか、この新作アルバムの宣伝のためのヨーロッパ・ツアーも敢行している。また、この期間中、ケンドリック・ラマーは、パリ・サンジェルマンの本拠地に立ち寄り、サッカーの試合を鑑賞していた。

 

 

Måneskin © Tomasso Ottomano

 

イタリアのロックバンド、Måneskin(マネスキン)がニューシングル「LA FINE」をリリースしました。(各種ストリーミングはこちら)この曲は、2023年1月20日に発売される彼らのアルバム「RUSH!」に収録される。


Rage Against The MachineのTom Morello(トム・モレロ)とのコラボ曲「GOSSIP」は、アルバムの前の週、2023年1月13日にシングルとしてリリースされる。


Måneskinは来年5月に長期のヨーロッパ・ツアーの一環として英国を訪れ、ロンドンのO2でヘッドライン・ライヴを行う予定だ。


「LA FINE」の試聴は以下。

Weekly Recommendation For Tracy Hyde  『Hotel Insomnia』

 

 

 

 

Label: P-Vine

Release: 2022年12月14日


 

 

Review

 

2016年にファースト・アルバム『First Bleu』をリリースし、デビューを飾ったオルタナティヴ・ロックバンド、For Tracy Hyde(フォー・トレーシー・ハイド)は東京のシーンの中で要注目のシューゲイザー・トリオ、今後、国内にとどまらず、海外での活躍が予想される。宇宙ネコ子とのコラボレーター”ラブリーサマーちゃん”が在籍していたことでも知られ、辻村深月の原作の演劇『かがみの孤城」への楽曲提供等、他ジャンルの媒体と豊富なコラボ経験を持つグループです。

 

通算5作目となるフルレングス『Hotel Insomnia』は、13曲収録というボリューミーな内容となっています。本作は、シューゲイズサウンドを基調とし、ニューゲイズ、モダンなインディーロック、渋谷系、ネオアコースティックと、幅広いライブサウンドが展開され、このバンドのバックグランドがどのようなタイプの音楽で構成されているのかを知る手立てになると思われます。

 

My Bloody Valentine、RIDE直系の轟音のディストーション・ギター、ダンサンブルなビートはこのジャンルに属するバンドとしては王道を行くもので、加えて、日本のバンド、Passepied(パスピエ)の大胡田なつき、平成ポップ・チャートを席巻したJudy and MaryのYukiに象徴されるファンシーなボーカルに通じるものがあり、彼らの織りなすタイトなアンサンブルーードリーミーなサウンドとJ-POPサウンドの劇的な融合ーーが心ゆくまで楽しめる内容となっています。

 

オープニングを飾る「Undule」は、ギター・トラックの多重録音による重厚なディストーションサウンドを体感できますが、あくまでそれらのバックトラックと対象的に、幻想的なボーカルがが乗せられ、同時にスタイリッシュな雰囲気を漂わせています。MBVの音楽の最大の特徴はエレクトロを基調としたダンサンブルなビートとスコットランドのキャッチーなネオ・アコースティックの融合にありましたが、このバンドはそれを十分再現する作曲能力と演奏力を兼ね備えています。二曲目の「The First Time」では、オリジナルのシューゲイズ・サウンドとは対象的なニューゲイズ・サウンドが展開されており、甘美でノスタルジア満載のインディーロック、渋谷系に代表される多幸感のあるメロディーやコードに裏打ちされた楽曲が一曲目とは対象的な趣を持つ。

 

その後も、オルタナティヴ・ロックとネオ・アコースティック、J-POPの本質を見事に捉えた個性的なサウンドが続いていきますが、その中に微妙な楽曲のメリハリや緩急があり、聞き手の集中力をほとんど途切れさせることはない。特に、ノイズ・アヴァンギャルドやアート・ロックを意識したディストーション・ギターは、ソニック・ユースの最初期のような感性の尖さと抽象性の高いサウンドとして昇華され、中盤に収録されている楽曲は、純粋なギターロック/ネオ・アコースティックとしても聴いてみても楽しめるはずです。また、アルバムの中盤に収録されている「Friends」では、繊細な感覚と青春時代の切なさ兼ね備えたJ-POPの本質的な魅力の未知の可能性を追究しています。もちろん、彼らは、この曲に象徴されるように、J-POPのメロとサビの対比、サビのキャッチーさとシンガロング性を踏まえつつ、それらを最新鋭のオルタナティヴ・ロックとして再構築している。以上の特性は、彼らが、単なるPassepied(パスピエ)のフォロワーでなく、その未来系を行く新鮮なサウンドを提示している証ともなっています。

 

終盤になっても、バンドの音楽におけるチャレンジ精神は旺盛で、奥深いインソムニアの世界が果てしなく広がりをましていき、ローファイ・サウンドやチルウェイブを一緒くたにした彼らの構想するモダンなオルタナティヴの理想郷は破られることがない。序盤でキャッチーな表情をみせながら、中盤から終盤にかけてマニアックなサウンドに様変わりする瞬間は圧巻ともいえ、それらはアルバムの全体像にカオティックな印象を形作っている。このバリエーションに富んだオルタナティヴ・サウンドがこのアルバムそのものの価値を高め、一方ならぬ聴き応えをもたらしている要因でもある。これらの新旧のオルタナティヴ・ロックサウンドを自在に去来する伸びやかなライブ・セッション、そして、手強さのある骨太サウンドは、22年の東京に新たな音楽が到来した瞬間を告げている。この清新なサウンドが持つ妙味は、今後、連続したウェイヴのような形で魅力的なバンドが次々に台頭することを予兆的に示しているように思える。

 

現在も、無数のバンドがひしめく東京のミュージック・シーンにあって、For Tracy Hydeのサウンドは、力強い存在感を放っている。ある意味で、自由奔放と称せる伸びやかな表現性は、ロンドンの2022年のインディー・シーンに相通じる要素があり、今後、アンダーグランド・レベルで、世界的人気を獲得する可能性も少なくないように思えます。彼らが今作において日本のポップの要素を核心に置き、洋楽の感性に近い音楽を確立し、それが意外な形で反響を呼んだことは、最新アルバム『Hotel Insomnia』が発売後、タイニー・デスクで名高い米メディア、NPRのレビューとして率先して特集されたのを見てもわかる。For Tracy Hydeは、既に5作をリリースしている経験のあるロックバンドですが、作品リリースやツアーを介し、今後どのような形でブレイクを果たすのかに注目していきたい。オルタナ・ファンとしては、東京のミュージック・シーンに個性的な実力派バンドが登場したことを心から祝福しておきたいところです。



87/100



Weekend Featured Track 「Friends」

 

 



Daily Show(米国の専門チャンネル”コメディ・セントラル”で月曜から木曜夜まで放映中の政治風刺ニュース)の司会でお馴染みのTrevor Noah(トレバー・ノア)が、2023年2月のグラミー賞の司会に決定した。トレバー・ノアがグラミーのホスト役を務めるのはこれで三期連続となる。


米・ビルボードのインタビューに応じたトレバー・ノアは、「今回はさらに伝統的な式典になることを楽しみにしている」と語った。

 

「1回目は(COVID-19の時)、ショーの作り方が全く違った。その次は、ロサンゼルスの制約からラスベガスで行われ、また異なるタイプのショーになりました。今回は、LAに戻って最初のイベントになるから、とてもエキサイティングな気分だ。このことは、ただ普遍的な意味があるだけでなく、正当な理由のために今までとはひと味違うショーになれば良いと思っている」


グラミー賞の司会を務めるため、ノアは大規模なスタンドアップ・ツアー「オフ・ザ・レコード」を休止することを決定した。1月20日のアトランタを筆頭に、ボストン、ナッシュビル、ニューヨーク、シカゴを回り、11月30日から12月7日までサンフランシスコで1週間の公演を行う。先日、Daily Showのバックステージで、トレバー・ノアはバラク・オバマ氏と面会している。


レコード・アカデミーの主催する第65回グラミー賞は、先日、日程が公式にアナウンスされたばかりだが、従来どおり、2023年2月5日、ロサンゼルスのCrypto.com Arenaで開催され、CBSでこのイベントの模様が生放送される予定となっている。

 

 

スペイン/バルセロナの世界的な人気を誇るシンガー、Rosalía(ロザリア)がCardi Bと組んで「Despachá」の新しいリミックスを制作しました。 

 

ロザリアは、アーバン・フラメンコの歌姫の異名をとり、地元スペインの伝統音楽、フラメンコとエレクトロやR&Bなどの現代音楽を融合した音楽性が特徴。今年、新作『MOTOMAMI』をリリースして、世界的に大ブレイクを果たしている。今、最も注目すべきシンガーの一人である。


Apple MusicのZane Loweとのインタビューで、このコラボレーションについてロザリアはこう語っている。


「つまり、私は、ずっとCardi Bと一緒に仕事をしたいと思っていたんです。ずっと前から、彼女と一緒に音楽を作りたかったんだ。そして、彼女は私が彼女の音楽を愛していることを知っていて、いつも私を応援してくれている。だから、"この曲はマンボからインスピレーションを受けている、ドミニカ共和国の音楽からインスピレーションを受けている "と言ったんだ。

 

 彼女はドミニカ人だから、彼女以上にこの曲を理解してくれる人はいないでしょう?わかるかな?この曲はオメガにインスパイアされている、この曲はオメガにインスパイアされている......そういうことをすべて理解している、彼女の一部なんです。だから、これは完全に意味があることだと思ったんだ。そして、彼女はこの曲が大好きなんだ。

 

 だから、彼女がラップをするときの切迫した感じがとても好きなんだ。だから、彼女が歌うと、新鮮に聞こえるんだ。本当にクールなんだ。...彼女のエネルギーは最強だ。彼女のエネルギーは、超ピュアで強い。それは誰にでも感じられると思う。ステージを見たことがある人も、携帯電話で見ただけの人も関係なく、誰もがそれを感じることができる、それくらい彼女は特別な存在なのです」


PinkPantheress


UKのシンガーソングライター、PinkPantheressが今週金曜、新作EP『Take me home』の全貌を明らかにした。アルバムの全曲ストリーミングはこちらから。また、ピンクパンサレスは新作リリースに合わせてタイトルトラックのリリックビデオを公開していますので下記よりご覧下さい。

 

このUKのアーティストは、ソーシャルサイトで新作EPを予告していたが、その言葉通り、2022年を締めくくるにふさわしい作品となった。'22を代表するアーティストの一人であるPinkPantheressは、レイヴのテイストと彼女の完璧なポップ・タッチを絶妙に融合させている。

 

「Boy's a liar」は、この新しいEPの核となり、ソーシャル上で需要の多いトラックとなっている。前作のシングル「Do you miss me?」も、タイトル曲「Take me home」と並んで人気を博している。

 

ピンクパンサレスは、この新作『Take me home』について、「このEPは、以前から予告していた楽曲を収録したもので、ようやくファンの皆さんにお見せすることができます!アップビートな音楽を必要としている人へのクリスマス・ギフトにしたかったんです」 とコメントしている。このEPのリリース後、オーストラリアとニュージーランドでツアーを敢行し、今年もグローバルな旅で幕を閉じる。ポピュラー・ミュージック好きにとって願ってもないギフトとなるはずだ。


 

 Nakhane ©Alex De Mora

 

Nakhaneは、BMGから来春発売予定の3枚目のスタジオ・アルバム『Bastard Jargon』のリリースを正式に発表しました。


昨日の発表は、南アフリカのアーティストの『Leading Lines EP』のリリースと同時に行われ、以前シェアされたシングル「Tell Me Your Politik」(Moonchild SanellyとNile Rodgersが参加)、「Do You Well」(Perfume Genius参加)、新曲「You've Got Me (Living Again)」が収録されています。Leading Linesに収録されている曲は全て収録される予定です。『Bastard Jargon』のカバーアートと全トラックリストは下記参照のこと。


Nakhaneは、プレス・ステートメントの中で、Bastard Jargonについて、「これは実存的なセックス・アルバムだ」と述べています。「このアルバムに収録されているほとんどの曲は、セックスに対して何かしらのウィンクをしている。必ずしも誘惑的な、ベッドルームにいるような目をしているようなセックスではなく、もっと詮索好きで心理的なセックスだ。You Will Not Die」を書いたときは、キリスト教との関係が終わったときで、「Bastard Jargon」を書いたときは、ロンドンに引っ越して、ただ気持ちよくなりたいという気持ちに身を投じたんだ」



Nakhane  『Bastard Jargon』

 



 Tracklist:

1. The Caring
2. Tell Me Your Politik [feat. Moonchild Sanelly & Nile Rodgers]
3. The Conjecture
4. Hold Me Down
5. Hear Me Moan
6. Do You Well [feat. Perfume Genius]
7. My Ma Was Good
8. You’ve Got Me (Living Again)
9. Standing in Our Way
10. If You Were to Complain

 

Weezer
 
Weezerが12月15日、米国のABCテレビで放映中のトーク番組「Jimmy Kimmel Live」に出演し、最近シングル「I Want a Dog」の演奏を披露しました。出演時のステージ背後の雪山を映し出したプロジェクターにも注目です。ライブ・パフォーマンスの模様は下記でお楽しみ下さい。
 

ウィーザーがステージに持ち込んだ「I Want a Dog」は、彼らが12月21日にリリースするEP『SZNZ: Winter』のシングル・カットとなる。3月の『Spring』、6月の『Summer』、9月の『Autumn』に続く、季節をテーマにしたEPシリーズの最終章となる。新作到着まであと四日!!


 Little Simz 『No Thank You』

 

 

Label: AWAL Recordings

Release: 2022年12月12日


Listen/Stream



Review

 

2022年度のマーキュリー賞受賞の熱狂の余韻も冷めやらぬ中、先日発表されたUKのラッパー、リトル・シムズの最新作は、ベスト・アルバムリストには間に合わなかったものの、それに匹敵する高いクオリティーを持つ。正直を言うと、この新作アルバムの凄さには本当に驚いた。


幼い時代からラップをしていたというナイジェリアからの移民の両親を持つリトル・シムズは、特にこのジャンルをゴスペルやネオ・ソウル、エレクトロと融合させ、これまでに存在しえなかった形式を打ち立ててみせている。

 

オープニングを飾る「Angel」は、特に、このアーティストのラップが独自性に支えられていることを示している。淡々と紡がれるライムは爽やかな雰囲気を擁しているが、背後のバックトラックには強固なブラックミュージックへの憧憬が滲んでおり、ゴスペルのコーラス、ブレイクビーツを交えたソウルが爽快でありながら陶然とした空気感を演出している。特に、このゴスペル的なコーラスは、リトル・シムズの音楽を敬虔あふれるものとしている。その後も、モータウンサウンドのイントロをモチーフとして展開される#2「Gorilla」では、アシッド・ハウスのコアなグルーブをいかしつつ、このアーティストらしい、さっぱりとしたライムが繰り広げられる。

 

その後も、アルバムの音楽は、1つのジャンルに規定するのを忌避し、#3「Siloulette」では、ソウル/ファンクのグルーヴ感を存分に活かしながら、ポップミュージックのダイナミクスとの融合を図っている。しかし、ミステリアスな雰囲気を擁するトラックには、やはりゴスペル・コーラスにより上質な音楽として昇華されている。曲のクライマックスでは、シネマ音楽のようにダイナミックなホーンとともにフェイド・アウトしていく。ここまでの音楽は、往年のソウルの大掛かりな舞台装置のような演出もあるが、その内郭には、リズムに対してどのような言葉を配置すればよいのか入念に注意が払われている。バックビートを活かしたリリックはリトル・シムズの特徴ではあるが、それは幼い時代から感覚的なものとして定着しているのだろう。

 

さらに「No Merci」からはおそらく近年のハウス・ミュージックに呼応した現代的なサウンドで聞き手の心を捉えてみせる。表面上は、メインストリームの音楽を志向してはいると思われrうが、そこにはリトル・シムズらしい叙情性と繊細性もこの曲には感じ取る事もできる。この曲はアルバムの中でバンガーとして機能しているが、やはりクライマックスにかけては、ダイナミックなソウルへと発展し、ストリングスとホーンのアレンジが深みと迫力をもたらし、続くエレクトロへの意外な展開への呼び水となっている。これらの曲の展開力というのは目を瞠るものがある。

 

続いて、アルバムの音楽はより多彩さとバリエーションを増していき、「X」ではアフリカン・ミュージックのリズムを取り入れつつ、特異なリズム性に根ざしたラップ・ミュージックにブレイクビーツの要素を重ね合わせて楽曲を展開していく。何かひりつくようなシムズのリリックとライムは刺激的であり、前衛的なものであり熱狂性を帯びている。そして、それはやはり、このアーティストの音楽性の核心にあるゴスペルの要素と合致し、イントロからは想像しがたいトリッピーな展開の仕方をする。このあたりに、シムズの才覚が表れ出ているように思える。アウトロのメロウな雰囲気は、往年のソウル・レジェンドに全く引けを取らないものがある。

 

「Heart on Fire」ではメロウなソウルとエレクトロを融合し、淡々とライムを紡ぎ出していく。バックトラックに導入されるエレクトリック・ピアノの響きは、既にソウルミュージックの要素としては不可欠だが、この曲もまたシンプルなビートから一転、クライマックスではドラマティックな展開が待ち受けている。それはリトル・シムズの簡素なライムを中心としてストリングス・アレンジとゴスペル・コーラスが、このアーティストの核心にある叙情性を華やかに演出するかのようにも感じられる。さらに、ゴスペル風のイントロをモチーフにしたソウルのバックトラックに対して、センスよくリリックを紡ぎ出すリトル・シムズのスタイルはその後の「Broken」そして「Sideways」に引き継がれていく。しかし、それはあくまでブレイクビーツの最新鋭のスタイルに根ざし、原型の形を破壊し、それを再構築しようというアーティストの意図も見受けられる。こういった新奇なチャレンジは、むしろ、往年のソウル/ゴスペルの音楽の特性を知悉しているからこそ出来ることだ。リトル・シムズは、それらの音楽にある核のような何かをサンプリングとして抽出し、それを軽快なラップ・ミュージックとして昇華されているのである。

 

もはや終盤の段階に来て、このアルバムの良盤としての評価を疑うリスナーは少ないと思われる。その後に続く「Who Even Cares」は、アルバムの中盤にかけての良質な音楽の魅力をより引き立てる働きをしている。

 

リラックス感のあるチルウェイブに近いこの楽曲は、いわばそれらの中盤までの聴き応えのある楽曲のクールダウンのような役割を果たしている。さらにラスト・トラックで、リトル・シムズはジャズ・ピアノのアレンジを交え、クールなライムを展開させる。このゴージャスな雰囲気を要するラスト・トラックこそ、マーキュリー賞の授賞が名ばかりではなかったと証立てるものとなっている。

 

総じて、リトル・シムズの「No Thank You」は、始めから終わりまで一貫した音楽性を掲げ、それを中心とし、ゴスペル、ファンク、ソウル、ジャズという多彩な側面をみせつつ、タイトなラップ・ミュージックとして仕上げられている。本作はキャッチーではありながら深みもある。知りうる限りでは女性のラップ・アーティストとしては、2022年度の最高傑作の1つに挙げられる(と思われる)。ラップ・ファンにとどまらず、ソウルファンもチェックしてみてほしい。

 

 

97/100

 

 

Featured Track「Control」