ロックの殿堂は、2023年の受賞者を明らかにしました。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、ウィリー・ネルソン、ミッシー・エリオット、ケイト・ブッシュ、ジョージ・マイケル、シェリル・クロウ、ザ・スピナーズが11月3日にブルックリンで開催される式典で殿堂入りを果たすことになります。


また、チャカ・カーン、アル・クーパー、バーニー・トーピンは、ロックの殿堂のミュージカル・エクセレンス・アワードを受賞する予定です。一方、DJ Kool HercとLink Wrayは、Musical Influence Awardを受賞する予定です。ソウルトレインの生みの親で司会者の故ドン・コーネリアスは、非実演産業の専門家を称えるアーメット・エルテガン賞の今年の受賞者である。


殿堂入りは、1,000人以上のアーティスト、歴史家、音楽業界のメンバーからなる国際的な投票機関によって決定されました。 ノミネートの対象となるためには、ノミネートの最初のレコーディングが少なくとも25年前にリリースされていなければなりません。


レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンは、ブッシュの4回より1回多い5回目のノミネートで、ついに殿堂入りを果たしました。ネルソン、エリオット、マイケル、クロウは、いずれも初選出で殿堂入りを果たします。



2024年まで再チャンスを待たなければならない今年の最終候補者には、サウンドガーデン、ホワイト・ストライプス、シンディ・ローパー、ジョイ・ディヴィジョン/ニュー・オーダー、ア・トライブ・コールド・クエスト、アイアン・メイデン、ウォーレン・ゼヴォンが含まれます。


2023年のロックの殿堂入り式典は、11月3日にニューヨークのブルックリンにあるバークレイズ・センターで開催される予定です。

 

 


ユニークな音楽性が魅力のロンドンのシンガーソングライター、Oscar Lang(オスカー・ラング)がDirty Hitからリリースされる次作アルバム『Look Now』から2ndシングル「One Foot First」を公開しました。

 

ニューシングル「One Foot First」はアルバムの発表と併せて公開された「A Song About Me」に続く作品です。同時に公開されたリリックビデオは下記よりご覧下さい。


Oscar Lang(オスカー・ラング)の新作アルバム『Look Now』はDirty Hitから7月21日に発売されます。

 

 

「One Foot First」


ノルウェーのシンガーソングライター、Anna of the Northは、「Ridin」のミュージックビデオを公開しました。

 

「Ridin」は、現在発売中の彼女の3枚目のアルバム「Crazy Life」のデラックス・エディションの収録曲で、6月30日に到着する予定です。


「Crazy Life」は、2019年の「Dream Girl」と2017年の「Lovers」に続いて2022年11月にリリースされた。デラックス・バージョンには最近のシングル「Swirl」と「Try My Best」も収録されています。


『Crazy Life』の拡張版について、アンナは次のように語っている。 「このアルバムは、すべて、何もない、そしてその間のすべてについてです。私たちが必ずしも口にしないような小さなこと、例えば家から出られずにソファで横になっているような日々について書かれているんだ。多くの曲は、行き詰まっていることや、自分のパターンから抜け出すことがいかに難しいかを歌っている」

 

 「Ridin」

 




ニューヨークとフィラデルフィアの4人組オルタナティヴ・ロックバンド、Strange Rangerがニューアルバムを発表しました。『Pure Music』は7月21日にFire Talkから発売されます。

 

本日の発表は、3月の「Rain So Hard」に続くニューシングル「She's on Fire」のリリースと同時に行われました。このシングルのビデオと新作のカバーアートとトラックリストは、下記より。


この新曲のインスピレーションについて、バンドのアイザック・アイガーはプレスリリースで次のように説明しています。

 

若い頃は、人生において弧を描くような時期があり、将来的にはすべての経験が集約され、この混乱の霧が晴れ、自分があるべき場所に到着したような気がします。しかし、それは間違いなく錯誤であり、音楽は、私が意味を探すときに頼りにする安定した手段のひとつ。音楽は、人生の多くに欠けていると感じられる精神主義を与えてくれるもので、私はその感覚にできるかぎり近づいていきたいと考えています。


新譜は、ストレンジレンジャーの2021年のミックステープ『No Light in Heaven』に続く作品です。

 

「音楽は、世界から疎外されている、あるいは世界に囚われているという感覚を超越させてくれるんだ」と、ボーカル兼シンセ奏者のフィオナ・ウッドマンは語っている。「ピュア・ミュージックを聴くという体験が、多幸感に満ちたものになるようにしたい」



「She's on Fire」


 

Stranger Ranger 『Pure Music』 

 

 

Label: Fire Talk

Release: 2023/7/21


Tracklist: 


1. Rain So Hard

2. She’s on Fire

3. Dream

4. Way Out

5. Blue Shade

6. Blush

7. Wide Awake

8. Ask Me About My Love Life

9. Fantasy

10. Dazed in the Shallows

©︎Siam  Coy


ロンドン出身で現在はギリシャ在住のアーティスト、Westerman(ウェスターマン)が、5月5日にPartisan Records/PIASからリリースされる2ndアルバム『An Inbuilt Fault』の最新シングル「An Inbuilt False」 を公開しました。ミュージックビデオは下記よりご覧ください。


このニューシングルは、 「CSI: Petralona」「Idol; RE-run」「Take」に続く作品となる。

 

「An Inbuilt False」

©︎Aubery  Trinmaman


LA拠点のミュージシャン、Meg Duffy によるプロジェクトHand Habitsは、近日発売予定のミニアルバム『Sugar the Bruise』のニューシングルを公開しました。前作「Something Wrong」に続く「Private Life」は、Otiumが監督したビデオと一緒に公開されました。以下、チェックしてみてください。


『Sugar the Bruise』は、Hand Habitsの2021年のアルバム『Fun House』に続く作品で、Luke Templeと共同プロデュースを務めた。『Fun House』のリリースと同年、Hand HabitsはSchool of Songで1ヶ月間のソングライティング・クラスを担当し、それが次のアルバムの材料となった。


「”Sugar the Bruise”では、心を無にして、遊び心に傾ける以外には何も考えていなかった」と、Hand HabitsのMeg Duffyはこのプロジェクトについての声明に書いている。「少し笑うこと、明るくすること、自分自身の経験から少し焦点をずらすことを目的としている」

 

『Sugar the Bruise』はFat Possumから6月16日にリリースされます。ハンド・ハビッツの最新作『Fun House』は2021年に発売された。

 

 

「Hand Habits」



遂にあの伝説の五人組が帰ってくる。スウェーデンのガレージロックバンド、ザ・ハイヴスは、『The Death of Randy Fitzsimmons』 のリリースを発表した。2000年に発表した「Veni Vidi Vicious」とそのヒットシングル「Hate To Say I Told You So」には及ばないかもしれないが、彼らがハードなロック音楽の作り方に関する数十年にわたるジョークを貫いてきたことは評価に値する。


このグループの楽曲は、ランディ・フィッツシモンズという謎のスヴェンガリによって書かれたと長い間言われてきたが、都合よく一度も一般人の目に触れることはなかったのである。そして、最近になって、そのフィッツシモンズが "死んだ "らしく、ハイブスは彼の墓を探し回っていたところ、偶然にもデモ音源を発見し、『ランディ・フィッツシモンズの死』というタイトルにふさわしいアルバムに仕上げた(と言う設定となっている)。Patrik Bergerがプロデュースした12曲入りのこのアルバムは、2012年の『Lex Hives』以来となる11年ぶりのフルアルバムで、8月11日にリリースされます。


ファースト・シングル「Bogus Operandi」は、最初期のハイヴズの痛快なガレージロック性はもとより、スウェーデンロックの系譜にあるバックヤード・ベイビーズやヘラコプターズの直情的なロック性を現在に呼び覚ます。


下記のミュージックビデオは、アルバムのインスピレーションの源であるグールな物語を押し広げている。監督は、ハリー・スタイルズの "Music for a Sushi Restaurant "やメーガン・ゼー・スタリオンの "Thot Shit "のクリップを手がけたことで知られるAube Perrieが担当した。


「成熟したロックンロールなんて、誰が望む?」とハイブスのフロントマン、ハウリン・ペレ・アルムクヴィストは問いかける。


それはいつも、人々が間違っているところだと思う。ロックンロールだけど大人っぽいだなんて、誰もそんなこと望んじゃいない! 

 

そう、それは文字通り、ロックンロールの良さを消してしまうことなのだ。ロックンロールは、いつまでたっても大人になれない。ロックンロールは永遠にティーンエイジャーのままなんだ。このアルバムはまさにそのような感じであり、それはすべて僕らの興奮によって出来上がったものなんだ。


ロックンロールの伝道師であるThe Hivesは、5月9日にロサンゼルス、5月11日にカリフォルニア州ポモナ、5月16日にニューヨークで行われる3つの小さな会場でのライブで、アルバムの新曲を披露し、その後、アークティック・モンキーズのライブのオープニングアクトを務めるため、夏のヨーロッパ・ツアーが予定されている。


「Bogus Operandi」




『The Death of Randy Fitzsimmons』




Tracklist:


1. Bogus Operandi

2. Trapdoor Solution

3. Countdown To Shutdown

4. Rigor Mortis Radio

5. Stick Up

6. Smoke & Mirrors

7. Crash Into The Weekend

8. Two Kinds Of Trouble

9. The Way The Story Goes

10. The Bomb

11. What Did I Ever Do To You?

12. Step Out Of The Way



ガレージ・ロックについてよく知りたい方はぜひ以下の名盤ガイドも参考にしてみてください:.


ガレージ・ロックの名盤  ザ・ソニックスからヴェルヴェット・アンダーグラウンドまでの系譜

 


Yeah Yeah Yeahsは、デビューアルバム「Fever to Tell」の発売から20周年を記念して、ドキュメンタリー・フィルムを公開した。


「There Is No Modern Romance」と題されたフィルムはもともと2017年のデラックス再発盤の限定特典だったが、今回、バンドの公式YouTubeチャンネルで一般公開されることになった。以下よりご覧ください。


アルバムは2003年4月にインタースコープ・レコードからリリースされ、TV on the RadioのDavid Andrew Sitekがプロデュースした。シングル「Maps」、「Date with the Night」、「Pin」、「Y Control」が収録された。


「There Is No Modern Romance」は、Patrick Daughtersが監督し、バンドのレコーディング、リハーサル、ツアーのスタジオ内映像で主に構成されている。


ニューヨークのバンドの最新アルバムは、2022年9月にシークレットリー・カナディアンからリリースされた5枚目のスタジオ作品「Cool It Down」である。

 

 

米国のシンガーソングライター、Alex Gの初来日が決定しました。11月27日に東京公演 (O-East)、翌28日に大阪公演 (梅田シャングリラ)が開催される。スマッシュジャパンに主催する来日公演の詳細については下記を参考のこと。

 

Alex Gは、デビュー前から数多くの楽曲をBandcamp上で公開し、口コミを きっかけにして高い評価を受けるようになり、さらにフランク・オーシャンのアルバム『Endless』と『Blonde』に参加したことで一気に注目を集めた。「ここ10年の間、インディーロックのあり方を定義してきたアーティストのひとり」(ワシントン・ポスト紙)、「アメリカで最も偉大な現役ソングライター」(The Fader)、「最もエキサイティングで革新的なソングライターのひとり」(GQ)と賞賛されるなど、今や現代の最高峰のシンガーソングライターとして高い評価と人気を集める。

 

またALEX Gは、昨年、自身の宗教観に基づいた最新アルバム『God Saves The Animals』をリリースし、海外のメディアを中心に好意的に受け入れられた。アーティストはまた、The Tonight Show Starring Jimmy FallonThe Late Show with Stephan ColbertNPRのTiny Desk Concertにも出演、今年にはCoachellaに出演最新アルバムの収録曲をステージで披露している。

 


主催者先行予約

 

受付期間:5/2(火)17:00〜5/8(月)23:59
受付URL:https://eplus.jp/alex-g/

 

東京


2023/11/27 (Mon) Spotify O-EAST 


 

東京都渋谷区道玄坂2-14-8 
»


・OPEN 18:30 START 19:30
スタンディング 前売り:¥6,800



・ドリンク代別 


・お問い合わせ
SMASH 03-3444-6751 


大阪


・2023/11/28 (Tue) Shangri-La 
大阪府大阪市北区大淀南1-1-14

 ・OPEN 19:00 START 19:30
スタンディング 前売り:¥6,800



・ドリンク代別 


・お問い合わせ
SMASH WEST 06-6535-5569

 

 

 

Label: Houndstooth

Release: 2023/4/28




Review


レイキャビクのシンガーソンライター、ヨフリヅル・アウカドッティルはかのビョークもその実力を認め、これまでにソロ名義で四作のアルバムを発表しているほか、同国のオーラヴル・アーノルズの『some kind of peace』にもゲスト参加している。今作のアートワークについては、ヨフリヅル・アウカドッティル自身が衣装デザインを務め、ギリシア風の長衣を身にまとっている。

 

そもそも、アイスランドのシンガーソングライターの中では、この国の最初のモダンクラシカルシーンを切り開いたヨハン・ヨハンソンの音楽性、または世界的なポピュラーシンガーとして名を馳せたBjorkの音楽性に影響を受けていないミュージシャンを探すほうが難しい。それは、 アイスランド国内で五人に一人が知っているとも称される国民的な歌手であるAsgeir(アウスゲイル)、そして、この度、ご紹介するJFDRの名を冠するヨフリヅル・アウカドッティルもまた同様である。

 

このアルバムで、 JFDRことヨフリヅル・アウカドゥッティルは、ビョークの最初期のアートポップ、そして、ヨハン・ヨハンソンやオーラブル・アーノルズのモダンクラシカル/ポスト・クラシカル、さらに、2000年代に最も新しい音楽と称されたmumのフォークトロニカの影響を織り交ぜ、幻想的で聴き応えのあるポピュラーミュージックのワールドを開拓してみせている。


さらに、このアルバムは、Lana Del Ley(ラナ・デル・レイ)の最新作『Did you know the tunnel under the ocean blvd?』に近い方向性を持つとともに、更にレイキャビクの美麗な風景を想起させる。基本的にはポピュラー・ミュージックに属しているが、実際に織りなされる楽曲については、エレクトロニカ/フォークトロニカ、インディーフォーク、ポスト・クラシカル、インディーロックというように、ヨフリヅル・アウカドゥッティルの広範な音楽的背景が伺えるものとなっている。


      

 


オープニングトラック「The Orchid」は、2000年代のmumのフォークトロニカの影響を込めたファンタジックなバックトラックに穏やかなJFDRのボーカルが特徴的な一曲である。まるでアルバムのオープニングは、果てなき幻想の物語へとリスナーをいざなうかのようだ。


二曲目の「Life Man」は手拍子をバックビートとして処理した一曲目とは対象的な軽快なトラックとなっている。


しかし、それは単なるクラブミュージックにとどまらず、やはりアイスランドやノルウェーのエレクトロニカ/フォークトロニカ勢の内省的なIDMの範疇に留められている。そして曲の後半では、これらの絡み合う複雑なリズムが連続する手拍子のビートに後押しされるかのように、独特な高揚感へと様変わりし、その最後になると迫力味すら帯びてくるようになる。


聞き手はこれらの幻想的とも現実的とも判別がつかない不思議な音響空間の中に手探りで踏み入れていかなければならないが、その後に続く三曲目の「Spectator」ではオルトフォークやインディーフォークの影響を内包した内省的なバラードソングへと転ずる。


まるでこの曲は、アイスランドの冬の光景、雪深くなり、街全体が白銀の世界に閉ざされるような清涼かつ神秘的な音楽がアコースティックギターにより紡がれていく。JFDRによる淑やかなボーカルは、イントロではきわめて内省的ではあるが、中盤から終盤にかけてアンビエントのような壮大なシンセのフレーズや、それとは対比的なエレクトロニカのフレーズと分かちがたく絡み合い、単一のフォーク・ミュージックを離れ、壮大で視覚的な音響性が生み出されている。


例えば、ビョークのファンであれば、ここに、かのアーティストと同じくアートポップの洗練された雰囲気を見出すはずである。曲の最後になると、アンビエント風のシンセのフレーズは、ボーカルそのものを凌駕するかのように迫力を増していき、アイルランドの風景を想起させる圧巻の瞬間に変わる。

 

中盤においてもJFDRは、一定のジャンルにとどまらず、自身の幅広い音楽的な背景を曲のなかに込めようとしている。


四曲目の「An Unfolding」では、Olafur Arnorlds、Eydis Evensenのような瞑想的なピアノの演奏にヨフリヅル・アウカドゥッティルのふんわりしたボーカルが加わり、アコースティックの弾き語りのような形で展開されていく。アヴァン・ポップやアートポップの影響を受けたモダンな雰囲気のボーカルを、バイオリンの微細なレガートが、このトラックをよりドラマティックでロマンティックに仕立てている。JFDRの内向的とも外交的とも言いがたい複雑な感覚を擁するボーカルはリスナーを陶然とさせ、この楽曲が持つ幻想的な雰囲気の中に呼び込むことを促すのである。

 

三曲目の『Spectator」と同じようにアンビエント風のシークエンスが中盤から終盤にかけて存在感を増していくことで、このトラック自体にラナ・デル・レイの最新作に比する祝福されたような雰囲気を生み出している。楽曲自体のテンションは高くはないのにも関わらず聞き方によってはある種の高揚感すら呼び覚ます。これはJFDRのボーカルの持つ魔力とも呼ぶべきだ。そして、この曲で、アルバムのカバーアートのイメージと実際の音楽がぴたりと合致するのである。

 

その後もJFDRは、音楽の持つ可能性とそれに纏わる情感の豊かさ、さらに音楽の持つ多彩性を複雑に展開させる。アイスランドのフォークトロニカの源流を形成するmumへの細やかなオマージュを込めた電子音楽で始まる「Flower Bridge」は、JFDRの音楽が持つ現実的な一面とは対象的な幻想性を呼び覚ましている。そしてこのシンプルなIDM(エレクトロニカ)の要素は「An Unfolding」と同じように、モダンクラシカル/ポスト・クラシカル風の存在感のあるピアノのフレーズが綿密に折り重なることで、インスト曲ではありながら芳醇な音響空間を生み出している。

 

続いて、これらの音楽性は、よりミクロ的な範疇において広がりを増していく。「Valentine」は製作者の人生と自分を支えてくれた人々への感謝が捧げられるが、基本的なバラードソングの表向きの表情とは裏腹に、JFDRはギターロックやインディー・ロックの要素を薄く加味させている。これらのマニアック性は、音楽を安売りすることなく、楽曲の持つ芸術性を高めている。


そしてJFDRは、アルバムの収録曲の中で、最も情感たっぷりにこの曲を歌い、自らの人生を色濃く反映させる。複雑に織りなされるボーカルの綾とも称すべき感覚は、この歌手特有の繊細さと温かみを兼ね備えている。ボーカルの音程には、分かりやすい形の山場をあえて設けていないが、中音域を往来するJFDRのボーカルは迫力満点で、そしてアウトロにかけてさりげなく導入される淑やかなピアノは、楽曲の持つ情感を引き立て、ドラマ性をもたらしている。

 

アルバムの終盤に差し掛かっても、これらの電子音楽を交えたロマンチシズムやクラシカルへの興味は薄まることがない。


7曲目の「Sideway Moon」は、ビョークのアートポップとmumのエレクトロニカを融合させたトラックであり、ある意味では、アイスランドのポピュラーミュージックや、その後の時代のエレクトロニカが台頭した時代に対するヨフリヅル・アウカドゥッティルの憧憬の眼差しが注がれている。

 

それは優しく、慈しみに溢れており、いくらか謙遜した姿勢も感じられる。そして不思議なことに、自己という存在を前面に出そうとしているわけでもないにも関わらず、アルバムの中では、このシンガーソングライターの圧倒的な存在感がはっきりと感じとられる。とりわけ、JFDRの感極まったような微細なファルセットは、美しいというよりほかない。曲の終わりになると、これらの静的な要素を持つ曲の印象は、ダンサンブルなアヴァン・ポップに変化し、強いバックビートとストリングスの美麗さにその背を支えられながら、力強い印象を持つ楽曲へと成長するのである。まさに一曲の中で、アイディアが土から芽を出し、それが健やかに成長していくような驚くべき変容の様子が、この5分にも満たない曲の中に集約されていることに注目したい。

 

それ以前のバリエーション豊かな展開の後を次いで、JFDRは、アルバムのクライマックスを細やかな二曲で締めくくっている。


初春が到来する以前の叙情的な雰囲気をアイルランド民謡の影響を交え、その前の年のクリスマスへの回想を織り交ぜ、切ない楽曲として昇華した「Feburary」、さらにフォークミュージックの温和さを内包させた「Underneath The Sun」は、『Museum』に華を添え、ほのかな癒やしをもたらしている。このアルバムは音楽をしっかり聴いたという実感をもたらすことは請け合いであるが、特にレコードの全体を聴きおえた後に、まるで一つか二つの季節を通り越ぎたかのような不可思議な感覚に包まれることに対し、純粋な驚きをおぼえざるを得ない。


 

86/100



「Spector」

Jessie Ware 『That! Feels Good!』

 


Label: EMI

Release: 2023/4/28



Review


このアルバムは、2020年にリリースされたジェシー・ウェア(ワイヤーとも)の4枚目のスタジオアルバム『What's Your Pleasure?"』のリリースから3年後の2023年4月28日にリリースされることが予め決定していた。


前作は、その「ディスコ風」サウンドで広く批評家の賞賛を受けた。Pitchforkはニューアルバムを「2023年の最も期待される34のアルバム」のリストに入れ、Marc Hoganは、2022年7月19日にリリースされたシングル「Free Yourself」をアルバムへのテイスターとしてリリースした後、ウェアは、「その『セックスとダンス』のスイートスポットにうまくとどまった」と述べている。


ウェアは、この10年の初めに、ソウルフルで告白的なラブソングの制作から、きらびやかなパーティー・ミュージックへと焦点を変えて以来、ダンスミュージックの名手となった。


彼女の4枚目のアルバム『What's Your Pleasure? (2020)』は、デュア・リパや彼女のヒーローであるカイリー・ミノーグやロイシン・マーフィーと並んで、初期のパンデミック・ディスコ・リバイバルの作品であり、夜遊びの幸福感と官能性を伝える1枚となっている。その結果、全英チャートで最高位を記録し、BRIT賞で初めてアルバム・オブ・ザ・イヤーにノミネートされ、ハリー・スタイルズの前座としてツアーに参加するなど、彼女のキャリア史上、最大の成功を収めたのだった。


最新作となる『That!Feels Good!』のために、ウェアは同じ類のアルバムを2度作ることを要求されなかったという。しかし彼女は付け加えている。「私はバカじゃない。何がうまくいくかはわかっている」と。問題は、どうすればその道を踏み外すことなく正しいルートを辿れるか。ウェアは、プレジャーのエンディング曲 "Remember Where You Are "にその答えを見いだした。この曲は、夜明けの太陽の光のようなストリングスとクワイアの入った、揺れ動くミッドテンポのアンセムである。


ジェシー・ウェアはプリンス、トーキング・ヘッズ、フェラ・クティからインスピレーションを受け、『プレジャー』の洗練されたエレクトロニック・スタジオの輝きを捨て、ステージ用の新しいダンス・ソングを構想した。彼女はマドンナ、ミノーグ、ペット・ショップ・ボーイズと仕事をしてきたダンスミュージックの王者スチュアート・プライスを共同プロデュースに迎えている。


ジェシー・ウェアはこのアルバムの構想の中で、リスナーに難しく考えずに踊ることを促している。そのコンセプチュアルな概念はマイケル・ジャクソンやプリンスといったディスコサウンドの気風を受けたタイトル曲にわかりやすい形で反映されている。80年代以前のファンクサウンドのコアなグルーブを交えたディスコサウンドは楽しげで、リスナーの心に爽快な気持ちをもたらす。その他にも、ウェアのR&Bサウンドの影響はきわめて幅広い。同じく先行シングルとして公開された「Pearls」では、懐かしのアース・ウィンド・アンド・ファイアーのディスコサウンドを反映し、ユニークなループサウンドを確立している。そして跳ねるような強拍の上に乗せられるジェシー・ウェアの歌声は、近年になく迫力に充ちたものとなっていることに驚く。

 

もちろん、これらのディスコサウンドは必ずしもアナクロリズムに陥っているわけではない。ジェシー・ウェアの音楽性は、昨今のトレンドであるネオ・ソウルと結び付けられ、「Beautiful People」において華やかなサウンドとして昇華されている。アンセミックなフレーズと、それと対象的なそっと語りかけるようなウェアのボーカルは、外交的なサウンドを表向きのイメージの魅力にとどまらず、静かに聴き入らせる説得力を彼女が持ち合わせていることの証立てともなっているのではないか。

 

これらのディープなディスコファンクを中心とするサウンドは、ナイジェリアの伝説的な歌手フェラ・クティに代表されるアフロ・フューチャーリズムの神秘性と結びつき、多彩で新鮮味のあるR&Bサウンドとして提示されている。また、アルバムの終盤に収録されている「Freak Me Now」では、70年代のディスコファンク、MTVの80年代の華やかなサウンドを抽出している。


さらにネオ・ソウルの新境地を開拓した「Lightinig」、及び、アルバム全体にクールダウンの効果をもたらす「These Lips」は、歌手としての進歩を証しづけている。そしてやはり、このクローズ曲でも、ジェシー・ウェアは、アース・ウィンド・アンド・ファイアーやファンカデリックの往年のディスコサウンドやファンクに対するリスペクトを欠かすことはないのである。


80/100


 


AIが音楽に与える影響を断罪するアーティストやレコード会社がある一方で、より楽観的な見方をするアーティストもいるなど、「音楽におけるAI」論争は続いています。しかし、ストリーミング・サービスにとってはどうなのか。この疑問は、先日行われたSpotifyのカンファレンスコールとポッドキャストで取り上げられ、同社のCEOであるDaniel Ekは、おおむね肯定的な見解を示しました。


Billboardによると、EkはHeart On My Sleeve(ドレイクとザ・ウィークエンドが演奏したように聞こえる曲名で、最近ストリーミング・サービスから削除された)のようなケースで著作権侵害の可能性を認めたが、AIは実際に、より多くの人々が音楽を作り始め、芸術的目標を達成できるようになると信じているという。


"ポジティブな面では、これは潜在的に創造性にとって大きな意味を持つかもしれない "と、EkはSpotifyの第1四半期決算を説明する電話会議で述べた。


より多くの音楽(これは文化的に素晴らしいことだと考えています)につながるはずですし、Spotifyにもメリットがあります。" 私たちのサービスに多くのクリエイターがいればいるほど、それはより良いものになり、私たちはエンゲージメントと収益を伸ばす機会を得ることができます。


Spotifyは、ロイヤリティの支払いを節約するために「偽」のアーティストを作り、その音楽を人気のプレイリストに載せているという疑惑を常に否定してきた。しかし、AIは、誰が背後にいるかにかかわらず、(睡眠、集中などのための)「機能的」な音楽の作成を促進することは確かです。そして、Ekは人工知能を根本的に悪いものと切り捨てるのではなく、人工知能の潜在的なメリットに注目したいと考えているようです。


Spotifyのポッドキャスト「For the Record」で、さらに彼は次のように述べています。「フル・ジェネレイティブなもの、あるいは自分ではない誰かのふりをする、いわゆるディープ・フェイクのような怖い部分にはとても精通しています。私は、このグラスを半分空ではなく、半分満杯と見ることにしています。願わくば、これらのAIがほとんどすべての製品ラインに組み込まれ、世界中のより多くの人々がクリエイティブになれるようになればと思います。」

 Jan Jenelik  『SEASCAPE -polyptych』

 


Label: Fatiche

Release: 2023/4/28




Review


ドイツ/ベルリンを拠点に活動するJan Jenelik(ヤン・イェネリック)は、20年以上にもわたり、グリッチ/ノイズの製作者として活動して来た。オリジナルアルバムとして有名な作品は、『Loop-Finding-Jazz-Records』(2001年)がある。2000年代から一貫して、イェネリックはドイツのレーベル”Fatiche”からリリースを行っており、今回のアルバムも同レーベルからのリリースとなる。

 

さて、グリッチ/ノイズシーンでは、ベテラン・プロデューサーの域に達しつつあるヤン・イェネリックの最新作は、映画のためのサウンドトラックで、より正確に言えば、映画をもとに制作された実験音楽でもある。この度、ヤン・イェネリックは、1956年のジョン・ヒューストン監督の映画『白鯨』(原作はハーマン・メルヴィルの同名小説)のエイハブ船長の独白をモチーフにして、それを電子音楽として組み直そうという試みを行った。つまり、純粋な音楽作品というよりかは、二つの媒体を融合させたメディア・アートに属する作品と称せる。映像や作中人物の声のデータをグリッチ/ノイズ、アンビエントとして再現させるという内容である。

 

ヤン・イェネリクは『SEASCAPE -polyptych』を制作するに際して、ノイズという観点を通じて彼自身の持ちうる知識を最大限に活用している。ヒスノイズ、シンセのシークエンス、逆再生のループ、サンプリング等、微細な音のデータを活用し、それらをミニマル・ミュージックとして構築している。注目しておきたいのは、アルバムのタイトルからも見える通り、このアルバムは海の音をグリッチという観点から再現し、それをポリフォニーの音楽として組み立てているということ。つまり、ミクロな音の構成そのものはカウンターポイントのような形で成立している。

 

ただ、普通のポリフォニーは例えば、バロック以前のパレストリーナ様式の教会音楽やセバスチャン・バッハの平均律、及びインベンションを見ても分かる通り、器楽の複数の旋律の併置という形で現れるが、イェネリックの場合、それは必ずしも器楽の旋律という形で出現するとはかぎらない。それはシンセサイザーの抽象的なシークエンスかもしれないし、映画に登場するエイハブ船長の独白のサンプリングかもしれないし、ヒスノイズ/ホワイトノイズかもしれない。どちらかと言えば、声や手拍子を器楽の一部として解釈するスティーヴ・ライヒの作品や、イギリスのコントラバス奏者のギャヴィン・ブライヤーズのタイタニック・シリーズのような性格を持ち合わせていることが、このメディア・アートを通じて理解してもらえるはずなのだ。

 

ヤン・イェネリックは、2000年代のリリース作品を通じて、コンピューターのエラー信号を音楽として再構成するグリッチの基本形を確立し、それを高水準の電子音楽に引き上げた人物であるが、今回のメディア・アートに関しては、どちらかと言えば、ノイズだけに拘泥した作品ではないように思われる。ノイズやグリッチも入力される音形を極限まで連続させていくと、水が蒸発して沸点を迎え、気体に変化するのとおなじように、ドローンやアンビエントという形に変化する。イェネリックはそのことを踏まえ、グリッチのノイズを連続させ、それを背後のレイアウトにあるシークエンスと融合させ、既存の作品とは一風異なるIDMを生み出そうとしている。

 

もちろん、深堀りすると、この作品はコンセプト・アルバムとも、ストーリー性を擁する作品とも解釈出来るが、どうやら、ヤン・イェネリックの今作の制作における主眼は、そういった映画のサウンドトラックの付属的な音響効果にあるわけではないように思える。彼はこの作品を通じ、電子音楽の未知の可能性を探り、音楽を、音楽という枠組みからどれだけ自由に解放させることが出来るのかを、彼の得意とするグリッチ/ノイズという観点から究めようとしているわけである。


このメディア・アートの作品の魅力的な点をもうひとつ挙げるなら、それは、映画のサウンドトラックと同じように映像から連想される音楽をどれだけ映像の印象と合致させるのかということに尽きる。

 

これはこのテクノ・プロデューサーの高い技術により、音そのものから何かを連想させるという創造性の一面として現れている。具体的に言えば、緊張した雰囲気、水の中にいるような不思議な雰囲気、木の階段を登っていく雰囲気、水の中に何かが沈んでいくような雰囲気、と多様な形で映画のワンシーンが、テクノ・ミュージックとして立ち現れる。これらの音は、まるで何もない空間に突如、映画的なワンシーンを出現させるかのようでもあり、SFに比する魅力を持っている。

 

私たちが崇めたてている物理的な重量を持つデバイスは、すでに古びようとしている。そのうち、物理的な箱型のデバイスは消え、何もない空中にデジタルのディスプレイを出現させるような革新的なテクノロジーが生み出されていくと思われるが、ベルリンのプロデューサー、ヤン・イエネリックが志向するメディア・アートとは、まさにそういった感じなのかもしれない。


 74/100 

 Weekly Music Feature 


Indigo De Souza



Indigo De Souzaは3rdアルバム『All of This Will End』の制作について、「やっと自分を完全に信頼することができました」と語る。


全11曲から構成されるこのニューアルバムは、生々しく、そして根本的にポジティブな作品であり、死というもの、コミュニティがもたらす若返り、そして今自分を中心に据えることの重要性に取り組んでいる。

 

これらの曲は、幼少期の思い出……、パーキングロットでの自分探し……、友人とアパラチアの山や南部の沼地を歩き回った恍惚とした旅……、そして自分自身のために立ち上がらなければならなかった時など、彼女の人生の中で最も共鳴する瞬間から生まれています。「All of This Will Endは、私にとってこれまで以上に真実味を帯びた作品です」と彼女は言うのです。


インディゴは、最近のインスピレーションをコミュニティと安定性から得ています。「つい最近まで、私の人生は混沌としていた」と彼女は言う。

 

「今、その混沌の多くは私の背後にあります。今、私には素晴らしいコミュニティがあり、住んでいる場所が大好きで、深いつながりと喜びを追求する本当に素晴らしい人たちに囲まれています。私の音楽は、中心にある内省的な場所から生まれているように感じられます。オープニングの "Time Back "は、私が大切にしている必要な前進の勢いを扱っています」


心地よいシンセサイザーに乗せて、"自分を置き去りにしているような気がする/泣くのにも疲れた/だけど、もう一度立ち上がりたい "と歌っています。その後、このオープニングトラックは、見事なアレンジの上で彼女のボーカルが爆発的に広がりを見せる。「機能不全や悲しみに陥ったり、他人に傷つけられることを許したり、境界線を持たないこともある」と彼女は言います。「私の人生には、それが多かった時期があった。このトラックは、自分自身に、本当の自分に戻ることについて話す方法だと思った」 


1曲目に込められたすべてを包み込むような感情とともに、アルバムの最後をドラマティックに飾るのは、インディゴ自身がリードシングルとして選んだ、ハートフルでノスタルジックなクローザー曲「Younger and Dumber」。この曲は彼女がアルバムのために最初に書いた曲のひとつで、若い頃の自分に語りかけるように始まったのです。


自分の音楽が初めて形になり始めた頃について書いていたのですが、その頃は人生で最悪の時期でもあり、なおかつまた今までで一番不安定な時期でもありました。

 

この曲は、何も知らなかった若い頃の自分に敬意を表して書いたんです。私は人生の中で空回りし、何かを定着させようとし、この世に存在することに折り合いをつけようとしていたんです。


やさしく囁くように始まるこの曲は、彼女が "私が感じる愛はとてもリアルで、あなたをどこへだって連れていける "と歌うように、次第にカタルシスと爆発的な雰囲気へと展開していく。経験と癒しによってもたらされる明晰さで、インディゴは過去の自分を大切に扱っています。


この曲が彼女の中からすぐに溢れ出てきたことで、創造力を取り戻したインディゴと彼女のバンドは、Any Shape You Takeを手がけたプロデューサー兼エンジニアのアレックス・ファーラーと共にアッシュビルのDrop of Sun Studiosに向かいました。


「私たちはとても意気投合しました。有機的なエネルギーの流れを持っていて、お互いに本当にインスパイアされていると感じていた」と彼女は言う。


衝撃的な「Wasting Your Time」や骨太なシングル「You Can Be Mean」は、バンドが今もなお反抗的であり、ロックインしていることを強調しています。


後者では、「あなたは良い心を持った人だと思いたいけど、あなたのお父さんはただの嫌なやつだったの」というセリフがありますが、インディゴは「私を振り回した最後のひどい男の話」についてだと語っています。

 

ギタリストのデクスター・ウェブとドラマーのエイヴリー・サリヴァンを中心に、バンドにアレンジを任せていますが、これらの曲は彼女自身のビジョンから生まれています。


「今回は、より自分自身に忠実で、他人のアイデアで自分の曲を形作ることを拒否した」と彼女は述べています。「また、デクスターが彼のフリーキーなエイリアンのギターヴォイシングを完全に表現することができ、なおかつプロダクションでより大きな役割を果たすことができたので、本当に特別な感じがしています」


『All of This Will End』は、人間のあらゆる複雑な感情を歌のなかに込めています。痛みや悲しみがあるのは確かですが、全体を通して逞しさの勝利の精神が窺えます。例えば、シングル曲の「Smog」は陽気でダンサブルな曲で、日々の単調な生活から抜け出すことで得られる爽快感を歌っています。また、父親との関係を掘り下げた「Always」のように、きわめて内省的な曲もある。


しかし、シングル「The Water」では、親友を訪ねた幼少期の思い出を、成長すること、そして人間関係の脆さについての瞑想へと変貌させている。プログラムされたドラムビートに乗せて、インディゴは歌う。"I think about what it was like / That summer when we were young and you did it with that guy in his car." (その人とはもう子供の頃ほど親しくはないけれど、回想することには力がある)、と。


また、『All of This Will End』は、多くの意味で、インディゴの個人的なモットーになっています。「毎日、これが終わりかもしれないと思いながら、わたしは目を覚ます」と言う。「それを悲しいことと見ることもできるだろうし、本当に貴重なことと見ることもできる。今日、私は生きていて、いつかはもうこの体にはいない。でも今は、生きていることで多くのことができる」


全体を通して、受け入れることの安らぎがある。タイトル曲で彼女が歌っているように、「私はただ愛することだけを貫き、最善を尽くしている/時には、十分でないこともあるけれど、私はまだ本物だし、許すわ」


インディゴ・デ・ソウザはこの曲を書いた時の体験を「マジック」と表現しています。言葉やメロディに至るまで、そのすべてが時代を超えた無形のものと感じられ、それをひたすら書き留めていったのです。また、彼女の母親がアルバムのジャケットに描いた赤やオレンジの色合いのように、『All of This Will End』は、彼女にとってより暖かく、大胆な変革期を象徴づけています。


それは、過去から感謝に満ちた現在の時間へと恐れずに前進すること、一歩一歩すべてを感じつつ、愛に満ちた意識を体現することを選択することをシンガーソングライターはこのアルバムのなかで表明しているのです。



『All of This Will End』 Saddle Creek

 

 

これまでの二作のアルバムの中で、インディゴ・デ・ソウザは、内面的な人間関係における不安や葛藤、それに対する深い芸術的な眼差しを捧げてきました。


幼い頃、プスースパインという土地柄と反りが合わなかった母親は、程なく家族とともにその土地を後にしますが、アッシュビルに転居した頃、インディゴ・デ・ソウザは母親の勧めでソングライティングを始めました。当初は、ガレージで演奏を始め、それはやがて現在のインディーロックという音楽のスタイルの素地となる。そして、この頃のDIYの音楽スタイルは現在でもデ・ソウザの音楽の核心を形成しています。たとえ、バンドという形式に変化したとしても、そのスタイルは何ら変わりがないのです。

 

これまでの二作と同様、ドクロのようなモンスターのイラストワークをかたどったアルバムのカバーアートの方向性は引き継がれています。 そして、どことなくシュールな感覚とユニークな感覚が掛け合わされたようなデザインもしかり。しかし、以前の二作のアルバムと比べると、音楽のアプローチはその延長線上にあるとはいえ、若干異なっています。以前よりも音楽のバリエーションは広がりを増し、わかりやすい曲と抽象的な曲がせめぎ合うようにして混在し、三作目のアルバムの奇妙で摩訶不可思議な世界を作り出しているのです。

 

オープニングトラックである「Time Back」は、ダイナミックなシンセポップを基調とする魅力的なナンバーであり、 この曲はまた2010年代のセイント・ヴィンセントの音楽性を想起させるものがあります。キャッチーなメロディーについては旧作と同様ですが、時に、アバンギャルドなダークアンビエントの要素を部分的に散りばめています。アンセミックなインディーポップではあるものの、時にアバンギャルドの性質を持ち合わせていることが分かる。これまでのデ・ソウザの音楽性の中であまり見られなかった試みのように思えます。


しかし、続く「You Can Be Mean」では、旧来のエグ味のあるオルタナティヴロック路線に回帰しています。ダイナソー・Jr.のJ Mascisのような骨太のファズギターは、旧来のアーティストのファンを安堵させることに繋がるでしょう。ギターロックとしてのアプローチはスネイル・メイル、サッカー・マミーの音楽性にも近く、現在の米国のオルタナティヴのトレンドとなるインディーロックを痛快に展開させていきます。

 

そして、これまでのシューゲイズ/インディーロックの要素の他に、今作はアルバムのカバーアートから見ても分かる通り、アメリカーナの影響が色濃く反映されているようです。


そのことをはっきりと印象づけるのが三曲目の「Losing」であり、インディゴ・デ・ソウザはオルト・ポップのトレンドをなぞらえつつも、フォーク/カントリー、アメリカーナの要素をセンスよく散りばめています。それが実際の音楽から匂いたつ何かがある理由でもある。この曲でシンガーソングライターは、ノリの良さを重視しながらも、ワイルドな雰囲気を漂わせることに成功しているのです。そしてデ・ソウザのボーカルは以前よりも温和で親しげになっています。これがアルバムの序盤で、リスナーにとっつきやすさをもたらす要因となるかもしれません。

 

ただし、どうやら旧二作の要であったシューゲイズの音楽性が完全に途絶えてしまったわけではないようです。


4曲目「Wasting Your Time」において、デ・ソウザは、相変わらず刺激的なシューゲイズ/オルタナティヴサウンドを提示し、旧来のギターロック性が鳴りを潜めることはありません。更に、インディゴ・デ・ソウザは、それらの苛烈なディストーションサウンドとインディーポップの爽快なサウンドを交互に配置し、らしさのあるサウンドを作り出しています。 パンチがありながら清涼感を失うことのない絶妙なサウンドを、このナンバーで十分体感することが出来るはずです。

 

序盤の4曲は簡潔性を重視しており、あえてダイナミックな波を設けず、短い曲として淡々と続いていきますが、続く5曲目の「Parking Lot」もまたその点については変わりありません。インディゴ・デ・ソウザは、スネイル・メイルやサッカー・マミーのデビュー当時の音楽性を彷彿とさせる、シンプルなオルタナティヴ・ロックでリスナーの興味を惹きつける。 


そして、ここではパーキングロットでの自分探しという、インディゴらしいシュールなテーマをそつなく織り交ぜ、米国南部の固有のジャンルであるアメリカーナへのロマンチシズムを交えた魅惑的なギターロックを緩やかに展開していきます。そして、時折、曲の中に導入されるバックバンドのシンセサイザーは音楽そのものへの親しみと淡いノスタルジアすら喚起させるのです。

 

続くタイトル曲では、まったりとした甘いインディーポップでロックサウンドの間を上手い具合に補っています。しかし、シンプルなバラードの質感に近いサウンドは、以前の作品の音楽性よりも深さと円熟味を感じさせる。

 

続く「Smog」は前曲の雰囲気を強化するトラックであり、同じような旋律やコード進行を踏まえ、オープニングトラックと同様に、ディスコサウンドを加味したシンセポップ でリスナーの気分を盛り上げてくれる。アルバムの中では最も捉えやすい一曲で、力強いバックビートがデ・ソウザの清涼感のあるボーカルを強く支え、聴き応え抜群のサウンドが生み出されています。ソングライティングの特性が押し出された楽曲ですが、バックバンドとの強い結束力がこのトラックをポップバンガーのような輝きをもたらしているようにも感じられます。 

  

さらに「The Water」は、アルバムの中でのハイライトであり、とりわけ、シンガーソングライターとしての大きな成長を感じさせます。インディゴ・デ・ソウザのほのかなギターヒーローへの憧憬とインディーポップへの親しみという2つの性質が合致を果たし、稀有な音楽性が生み出されています。 


 

「The Water」

 

 

ここでは、オルタナティブロックの基本形を踏まえつつ、エモなどでおなじみのホーンセクションとシンセサイザーのひねりの効いたメロディーを交えることにより、インディゴ・デ・ソウザの代名詞となるシュールなインディーロックサウンドが確立されています。

 

続く、「Always」は、グランジのように静と動を織り交ぜたトラックであり、内省的なサウンドと4曲目のような苛烈なディストーション/ファズサウンドを対比させています。ここには、デ・ソウザというアーティストの本質的な姿、つまりみずからがギターロックのヒーローであることを表明しているかのようです。この曲の後半では、アバンギャルドな領域へと踏み入れていき、メタルコアやノイズコア寄りの音楽性を取り入れつつ、刺激的かつ煌びやかなロックサウンドを探求しています。

 

これらの多彩なジャンルを踏まえたバリエーション豊かな複数の楽曲を提示したのち、残りの二曲では今作の重要なテーマとなるアメリカーナやカントリーの影響を織り交ぜた珍らかなインディーロックソングへとインディゴ・デ・ソウザは歩みを進めていきます。とりわけ、キュートなインディー・ポップのイントロから劇的なサイケデリックポップへと様変わりする「Not My Baby」は、クライマックスにかけて、独特な世界へと繋がっていく。モリコーネサウンドに象徴づけられるマカロニ・ウェスタンを思い起こさせる映画のサウンドトラックの影響を反映し、それを神秘的かつ瞑想的な世界へと繋げていきます。この曲は、以前のデ・ソウザのソングライティングの性質とは異なり、その歌自体についても、スピリチュアルな何かを帯びています。


さらに続いて、クローズ曲を飾るアルバムの制作の出発点ともなった「Younger & Dumber」でも、インディゴ・デ・ソウザは変化を恐れることはありません。ここではスティール・ギターをセンスよく取り入れたカントリーの影響を取り入れたバラードソングを披露しています。それはもちろん、このシンガーソングライターの幅広い音域を持つ歌により、楽曲のドラマティック性が最大限に引き上げられることになるのです。また、こういったセンチメンタルな歌をうたい、本当の姿を曝け出すことをまったく恐れないことが、アーティストとしてのささやかな成長にも繋がっているわけです。

 


86/100

 


 Weekend Featured Track「Younger & Dumber」


 

 

 

Indigo De Souzaのニューアルバム『All Of This Will End』はSaddle Creekより発売中です。

 The National 『First Two Page of Frankenstein』

 


Label: 4AD

Release: 2023/4/28                                            

 

Review


アートワークに関しては、2013年のアルバムに近いニュアンスが見出すことが出来る『First Two Page of Frankenstein』は、ザ・ナショナルのマット・バーニンガーがライターズブロックの壁にぶつかった時にその原点が求められる。

 

ザ・ナショナルは、ニューヨークのインディーロックバンドとしてベテランの境地にさしかかっているが、どうやらインスピレーションが枯渇し、曲が思いつかなくなるというのは、その人物の才能如何に関わるわけではなく、突如としてアーティストに訪れるのかもしれない。それはバーニンガーのように、真摯に音楽の制作に携わる人物であれば尚更なのだろう。おそらくその当時、ソングライターにとってライターズブロックは怪物のように思えたかもしれない。

 

結果的に、マット・バーニンガーは、メアリー・シェリーの古典小説『フランケンシュタインの怪物』の書籍を紐解き、小説のある一節に突き当たった時、このアルバムのインスピレーションの端緒としたのである。そして、この小説は、内的な孤独、悪魔という主題を置いた内容である。もしかすると、ライターズブロックに突き当たり、憔悴しきっていたマット・バーニンガーにとっては、いささかこの怪物に親しみや共鳴する何かが求められたかもしれない。

 

イギリスの小説家、メアリー・シェリーはこのフランケンシュタインという物語の中で次のように書いている。

 

「どうすれば、お前の心を動かせるのだろう/お前に作られたものが、お前に親切と憐れみを乞い求めているというのに、どう願っても、お前は好意の目を向けることが出来ないというのか?/ 信じてほしい、フランケンシュタイン、俺は善意の人間だったのだ。俺の魂は、愛と人情とに燃えている。だが、俺は孤独じゃないだろうか? 惨めなほど孤独ではないだろうか? 俺の作り主であるお前ですら、俺を毛嫌いしているではないか?ーー以下略」

 

このことについて、イタリアの文学者、ボローニャ大学で教鞭をとったウンベルト・エーコは、人間の関心と個性の発達によって、また、世界の中世から現代にかけての文化的な発展の過程において、この小説を通じて、メアリー・シェリーは人間の中に強固な自意識が芽生えることの不幸を鋭く描きだし、更に、ここに人間の持つ醜さが描出されていると指摘し、この戯画的な小説をロマン主義の最大の傑作として紹介したのである。そして、以上の有名な一節を照らし合わせると、このアルバムには音楽の神様であるミューズに対するソングライターの悲願のような感慨が込められているとも言えなくもない。創作の神様はいつも気まぐれで時に冷酷だ。製作者のことを温かく見守ってくれているとは限らないのである。

 

音楽に関しては、以前のアルバムよりも、深みのあるバラード曲が増えたという気がする。確かに2013年までは、ポスト・パンクと称してもおかしくないような勢いのある楽曲も収録されていて、それがまたナショナルの代名詞ともなっていたと思うが、今回、マット・バーニンガーは徹底して渋いバラードを書き、それを親しみやすいロックという形に織り込もうとしているのかもしれない。


もちろん、それは表向きには歌われていないことと思われるが、ここにはミュージシャンあるいはバンドとして長い年月を過ごしていくうちに、以前は見えていなかったものが見えるようになってしまったという不幸のような悲嘆が音楽的に、そして文学的に織り交ぜられているように思える。ただし、それは見方を変えれば、単なるインディーロックバンドであることに見切りをつけて、いくらかU2のような世界的なロックバンドへと歩みを進めることを決意したとも取れる。そのことを象徴づけるのが、すでにストリーミングで高い再生数を記録している「Eucalyput」である。ここで、マット・バーニンガーは自分の感情の中にある悲観的な思いを織り交ぜ、それを比較的朗らかな形で昇華しようとしているように見受けられる。そしてそれは以前のザ・ナショナルの音楽性とは少し違った形でリスナーの心を捉えるのである。

 

これらの主要な渋いロックソングの中にあって、それとは異なる華やかさを添えているのが、二人の米国の現代のミュージックシーンを象徴づける女性歌手であろうか。「The Alcott」において、テイラー・スウィフトは、マット・バーニンガーの書く渋さのある現代的なバラードに、自らの得意とするミステリアスな雰囲気を付け加えている。


もうひとりのコラボレーターであるフィービー・ブリジャーズは「This Isn't Helping」において、同じようなバラード曲の内省的な雰囲気を外側に解放させる力を加えている。米国を代表する歌手の参加は少なくとも、ザ・ナショナルの楽曲により深みと奥行きを与えていると言えそうである。 




75/100


 

 


イスラエルのミュージシャン、Dudu TassaとRadiohead/The Smileのギタリスト、Jonny Greenwoodが、新曲「Ya Mughir al-Ghazala」のライブパフォーマンスビデオを公開しました。

 

この曲は、ニューアルバム『Jarak Qaribak』に収録されており、イラク人シンガーのKarrar Alsaadiがゲストボーカルとして参加しています。以下、チェックしてみてください。

 

「この曲は、私の父の出身国であるイエメンから発信され、キリ(Karrar)は私の母の故郷であるバグダッド出身です」と Tassaは声明で説明しています。

 

「ウィーンでキリに会ったとき、私たちが違いや国境、制限を強調することに忙殺されている間に、どれだけの美や文化、人間性を見逃しているのかということばかりを考えていました。そうして、Jonnyと一緒に、国境を越え、違いではなくつながりを探すという概念を通して、このアルバム全体のアイデアが形になり始めたんだ」

『Jarak Qaribak』は6月9日にWorld Circuitから発売される予定です。レバノンの歌手Rashid Al Najjarのボーカルをフィーチャーしたシングル「Ashufak Shay」が先行発売されました。

 

 「Ya Mughir al-Ghazala」