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Weekly Music Feature


 

 Marine Eyes

 

マリン・アイズ(シンシア・バーナード)は、アンビエント、シューゲイザー、ドローン、フィールド・レコーディング、ドリーム・ポップを融合させ、この瞬間に生まれながら、過去からの教訓を織り交ぜた物語を綴ります。


現在ロサンゼルス在住のバーナードは、北カリフォルニアで育ち、音楽がとても大切にされている家庭で育った。シンシアの祖母が脳卒中で倒れ、話すことはできても歌うことができなくなったとき、シンシアはセラピーとしての音楽に魅了されました。


何年もの間、彼女は音楽を自分自身と親しい友人や家族だけにとどめていたが、2014年に現在の夫ジェイムズ・バーナードと出会い、2人は一緒に音楽を書き始め、アンビエント・プロジェクトで目覚めた魂を分かち合うようになりました。2021年にStereoscenic Recordsからソロ・デビュー・アルバム「idyll」を、2022年にはPast Inside the Presentから「chamomile」をリリースしています。


現在、彼女は定期的にミニチュアの世界を構築し、自然の中で静寂を迎えながら、音の癒しの特質やセメントの大切な瞬間を探求しています。2024年にパスト・インサイド・ザ・プレゼントから3枚目のソロ・アルバムがリリースされます。


3枚目のソロアルバム『belong』を作り上げる感情や人間関係の脈動をパッケージ化する手段としてバーナードは幾つもの言葉を日記に残しました。直接的で喚起的な構文はイー・カミングス(アメリカの画家)を想起させ、彼女はこのコレクションで親しみやすい魂によって彩られた水たまりのような光景を、愛によるイメージで表現しています。


バーナードの瞑想的な手法により、「To Belong- 帰属」は本来あるべき生命の姿に近づいていきます。物理的な世界、時間の連続体、愛する人の腕の中にある居場所を表現するような、稀有で繊細な感覚に。トリートメントされたギター、ソフトなシンセ、輝く声のレイヤーを駆使し、全体的な抱擁の感覚を織り交ぜる。『To belong』には、フィールド・レコーディングや、彼女の大切な家族や友人の声も優しく彩られている。これらには、以前カモミールにインスピレーションを与えた、日記と記録への愛が貫かれています(『Past Inside the Present』2022年)。


オープニングのタイトル・トラックは、鳥の鳴き声とヴォーカルの言葉がゆるやかな波さながらに寄せては消え、綛(かせ)から取り出された毛糸のようなテクスチャーを紡いでゆく。「bridges」は、柔らかにかき鳴らされるギター、澄明な瞳のマントラが霧中から現れる。夕まぐれの浜辺で焚き火を囲みつつ、子供たちのために、この曲を演奏する彼女の姿を想像してみて下さい。


「cemented」は、亡き叔父が大切にしていたギターの弦がタペストリーさながらに絡み合い、お気に入りの公園を散歩したさいの足音が強調され、無限の空間を作り上げていきます。憂鬱と畏怖が共存する短いパッセージにより闘病中の妹の勇気を称え作曲された「of the west」、カリフォルニアの緑豊かな季節を淡いきらめきに織り交ぜ、牧歌的なテーマ(Stereoscenic, 2021)と呼応する「suddenly green」など、彼女の旅は続く。これらは疑いなしに深く個人的な作品であることはたしかなのですが、その慈愛と共感の魅力的な空気に圧倒されずにいられないのです。


「mended own」は、プリズム写真に傾倒するバーナードの内省的な研究と合わせて、フォーク・バラード・モードを再現しています。絶えず屈折したり、分解したり、融合したり、あるいは光線と戯れたりする彼女の音楽の性質は、アルバムのジャケット画像に象徴づけられるように、出来上がりつつある虹の中でそれぞれの要素が際立つようにアレンジと融合しています。「柔らかな手に握られたこの光は/重い石を/手放す」とバーナードは穏やかに歌い、オーバーダビングされたテープに残された亡霊さながらに、背景を横切って細部を際立たせる。


最後の「to belong」は、長年の血筋の影響(USCのリトル・チャペル・オブ・サイレンスを作った曾祖母のために書かれた "in the spaces")と親しい友人の無条件の愛("all you give (for ash)")を呼び起こし、感謝と無常への2部構成の頌歌で幕を閉じる。「night palms sway」は、街灯の下でひらひら舞う昆虫だけが目撃する、日の終わりに手をつないで歩く親しげな光景を想起させるでしょうし、「call and answer」は、聴けば歌ってくれるミューズへの賛歌となる。最後の曲については、束の間の別離を惜しむというよりも、再び会いたいという親しみが込められているのです。


マリン・アイズは、詳らかに省察を重ね、受容し、実存の偶然性に感謝し、彼女の音楽の世界を作り上げます。「個人的な歴史に巻き起こる出来事すべてになんらかの意味が込められている」バーナードは断言します。「あらゆる偶発的な出来事や、わたしたちを取り巻くあらゆるもののもろさやよわさを考えるとき、一への帰属意識こそがきわめて貴重なものになりえる」と。



--Past Inside The Present



『To Belong』




マリン・アイズのプロデューサー名を関して活動を行うLAのシンシア・バーナードは、夫であるジェームス・バーナードと夫婦で共同制作を行い、ソロアーティストとして別名義のリリースを続ける。アンビエントミュージシャンとして夫婦で活動を行う事例は珍しくなく、例えば、ベルギーのクリスティーナ・ヴァンゾー/ジョン・アルゾ・ベネット夫妻が挙げられます。ベルギーの夫妻はロンドンのバービカン・センター等でもライブ・イベントを行っている。クリスティーナ夫妻の場合は、シンセサイザーとフルートの組み合わせでライブを行うことが多い。

 

そして、二つのパートナーに共通するのは、コラボレーターとして共同制作も行い、そのかたわら、ソロ名義の作品もリリースするという点なのです。ふと思い出されるのは、昨年末、夫のジェームス・バーナードのアンビエントアルバム『Soft Octave』がリリースされたことです。年の瀬も迫ると、大手レーベルのリリースはほとんど途絶えますが、その合間を縫うようにし、インディペンデントなミュージシャンの快作がリリースされる場合がある。バーナードさんのアルバム”Soft Octave”は、妻のシンシアとは異なり、クールな印象を持つアンビエントで、音楽に耳を傾けていると、異次元に引っ張られていくような奇異な感覚に満ちていました。とくに「Cortege」という曲がミステリアスで、音楽以上の啓示に満ちていたような気がしたものでした。いや、考えてみると、理想的な音楽とはなんらかの啓示でもあるべきなのでしょうか??

 

夫であるジェームス・バーナードの音楽とは異なり、妻のマリン・アイズの音楽は自然味に溢れていて、言ってみれば、ロサンゼルスの自然からもたらされるイメージ、内的な瞑想、そして静寂を組みわせて、癒やしの質感を持つアンビエントを制作しています。祖母の病気をきっかけに音楽制作をはじめるようになったマリン・アイズは、ヒーリングのための音楽を制作しはじめ、当初それを公に発表することもためらっていましたが、しかし、彼女の音楽を家族や身内だけに留めておくのは惜しく、より多くの人の心を癒やす可能性を秘めています。シンシア・バーナードの現時点での最高傑作として、昨年、エクスパンデッド・バージョン「拡張版)として同レーベルからリリースされた「Idyll」が真っ先に思い浮かびます。この作品では、サウンドデザインの観点からアンビエントが制作され、その中にシンシア・バーナードのギターに彼女のボーカルが組み合わされ、”アンビエント・ポップ”ともいうべき新しい領域を切り開いたのです。もちろん、このことに関して、当のミュージシャンが必ずしも自覚しているとは限りません。新しい音楽とは、あらかじめ予期して生み出されるものではなく、いつのまにか、それが”新しいものである”とみなされる。音楽の蓋然性の裏側に必然性が潜んでいるのです。



シンシアの3作目のアルバム”To Belong"が、なんのために書かれたものであるのかは明確です。人間の存在が分離した存在なのではなく、一つに帰属すべきものであるという宇宙の摂理を思い出すために書かれているのです。人間の一生とは、分離に始まり、合一に戻っていく過程を意味する。そのことに何歳になってから気がつくものか、死ぬまでそのことがわからないのか。それぞれの差別意識、肌の色の違い、性別の違い、また、考えの違い、ラベリングの違い、ひいては、宗教、民族の違い、所属の違いへと種別意識が押し広げられていき、最終的には、政治、国家、実存の違いへと意識が拡大していく。そこで、人々は自分がスペシャルな存在であると考えて、自分と異なる存在を敵視し、ときに排斥することを繰り返すようになってしまう。ときに、それが存在するための意義となる。しかしながら、それらの差別意識は、根源的には生命の存在が合一であることを”思い出させる”ために存在すると考えてみたらどうなるでしょう?? それらの意味は覆されてしまい、個別的な存在がこの世にひとつも存在しないということになる。 

 

 

 

・1ー3

 

この音楽はミヒャエル・エンデの物語のように始まりもなければ終わりもありません。そしてミュージシャンが述べているように、これらのアンビエントは根源的な生命の偏在を示唆し、言い換えれば「どこにでもあり、どこにもない」ということになる。しかし、それは言辞を弄したいからそう言うのではなく、シンシア・バーナードの音楽のテクスチャーの連続性は、たしかに生命の本質を音楽というかたちで、のびのびと表現されているからなのです。シンセのシークエンス、バーナードさんがLAで実地に録音したフィールド・レコーディング、それからギターとボーカルという基本構造を基にし、アンビエントミュージックが構築されていきますが、 アルバムの導入部分でありタイトル曲でもある「To Belong」は、パンフルートの音色をかけあわせたシンセのシークエンスがどこまでも続き、音像の向こうに海のさざめきの音、鳥の声がサンプリングで挿入され、自然味のあるサウンド・デザインが少しずつ作り上げられる。このアルバムを聴くにつけ、よく考えるのは、アーティストが見たロサンゼルスの光景はどのようなものだったのかということなのです。もちろん、いうまでもなくそこまではわからないのですが、その答えはアルバムの中に暗示され、海の向こう側の無限へと続いているのかもしれません。これらの一面的を超越した多角的なサウンド・デザインは、実際に世界がミルフィールのような多重構造を持つ領域により構築されていることをありありと思い出させるのです。

 

マリン・アイズの音楽は、Four Tet、Floating Pointsのようなサウンドデザインの領域にとどまることはなく、Autechre、Aphex Twinの音楽に代表されるノンリズムで構成されるクラブ・ミュージックに触発されたダウンテンポに属するナンバーに変わることもある。そしてどうやらこの試みは新しいものであるらしく、マリン・アイズの音楽の未知の側面を表しているようなのです。例えば、#2「husted」は(モジュラー)シンセによってミクロコスモスから始まった音像空間が極大に近づき、マクロコスモスへと押し広げられる。この作風は、リチャード・ジェイムスが90年代のテクノブームを牽引する以前に、「Ambient Works」で実験的に示したものでもあったのですが、シンシア・バーナードは旧来のダウンテンポの要素にモダンな印象を添えようとしています。単なるワンフレーズの連続性は、ミニマリストとしてのバーナードの音楽性の一端が示されているように思えるかもしれませんが、実は、そのかぎりではなく、トーンやピッチの微細な変容を及ぼすことにより、轟音の中に安らぎをもたらすのです。これはジョン・アダムスが言っていたように”反復は変化の一形態である”ということでもあるのです。

 

 

マリン・アイズはフィールドレコーディングで生じたエラー、つまり、ヒスノイズをうまく活用し、グリッチノイズのような形でアンビエント・ミュージックに活用しています。シンシア・バーナードはカルフォルニアの自然の中に分け入り、リボン・バイクを雑草地に向け 、偶然性の音楽を捉えようとしています。#3「Timeshifting」には風の音、海の音、そのほかにも草むらに生息する無数の生き物の声を内包させていると言えるのです。私自身はやったことがないのですが、フィールドレコーディングというのは、そのフィールドに共鳴する人間の聴覚では拾いきれない微細なノイズを拾ってしまうことがよくあるそうなのですが、しかし、これらのアクシデンタルな出来事はむしろ、実際の音楽に対してその空間にしか存在しえない独特なアトモスフェールを録音という形で収めることに成功しています。そして、これが奇妙なことに現実以上のリアリティーを刻印し、現実の中に表れた偶然のユートピアを作り出す。アンビエントのテクスチャーの中に、マリン・アイズは自身のボーカルをサンプルし、現実に生じた正しい時の流れを作り出す。ボーカルテクスチャはミューズさながらに美しく、神々しい輝きを放つかのような聴覚的な錯覚をおぼえさせる場合がある。この曲はまたボーカルアートにおけるニュースタンダードが生み出されつつある瞬間を捉えることも出来ます。

 


#3「timeshifting」



・4−10

 

現代の女性のアンビエントプロデューサーの中には、ドリーム・ポップ風の音楽とアンビエントやレクトロニックをかけあわせて個性的な作風を生み出すミュージシャンが少なくありません。例えば、ポートランドから西海岸に映ったGrouperことリズ・ハリス、他にもヨーロッパでのライブの共演をきっかけに彼女の音楽から薫陶を受けたトルコのエキン・フィルが挙げられます。そして、シンシア・バーナードもまたアコースティックギターの演奏を基本にして、癒やしの雰囲気のあるアンビエントを制作しています。このドリーム・ポップとアンビエントの融合というのは、実は、ハロルド・バッドがロビン・ガスリーとよく共同制作を行っていたことを考えれれば、自然な流れといえます。つまり、ドリーム・ポップはアンビエント的な気質を持ち、反面、アンビエントはドリーム・ポップ風の気質を持つ場合がある。このことはジャンルの出発である[アンビエントシリーズ]を聴くとよりわかりやすいかもしれません。

 

#4「Bridges」はジャック・ジャクソンを思わせる開けたサーフミュージックをドリーム・ポップ風の音楽として昇華させていますが、 むしろこの曲に関しては、マリン・アイズのポピュラーなボーカリストとしての性質が色濃く反映されているようです。そしてシンプルで分かりやすい音の運びは彼女の音楽に親しみを覚えさせてくれます。一方でインディーフォークをベースにしたアコースティックの弾き語りのスタイルは、日常生活に余白や休息を設けることの大切さを歌っているように思えます。また、トラックの背後に重ねられるガットギターの硬質な響きが、バーナードの繊細な歌声とマッチし、やはりこのミュージシャンの音楽の特徴であるドリーミーな空気感を生み出す。続く#5「cemented」ではモダンクラシカルとアンビエントの中間にあるような音楽で、シカゴの作曲家/ピアニスト、Gia Margaretを彷彿とさせるアーティスティックな響きを内包させています。もしくはリスニングの仕方によっては、坂本龍一とコラボレーションした経験があるJuliana Berwick(ジュリアナ・バーウィック)のアンビエントとボーカルアートの融合のような意図を見出す方もいるかもしれません、少なくとも、この2曲では従来のシンシア・バーナードの音楽の重要なテーマである癒やしを体験することが出来ます。


上記の2曲はむしろ日常生活にポイントを置いたアンビエントフォークという形で楽しめるはずですが、次に収録されている#6「Of The West」では再び抽象的で純粋なアンビエントへと舞い戻る。そしてモジュラーシンセのテクスチャーが立ち上がると、霊妙な感覚が呼び覚まされるような気がするのです。バーナードの作り出すテクスチャーは、ボーカルと融合すると、ジュリアナ・バーウィックやカナダのSea Oleenaの制作と同じように、その音の輪郭がだんだんとぼやけてきて、ほとんど純粋なハーモニーの性質が乏しくなり、アンビバレントな音像空間が作り出される。こういったぼやけた音楽に関しては、好き嫌いがあるかもしれませんが、少なくともバーナードの制作するアンビエントはどうやら、日常生活の延長線上にある心地よい音が端的に表現されているようです。それは空気感とも呼ぶべき感覚で、かつて日本の現代音楽家の武満徹が”その場所に普遍的に満ちているすでに存在する音”と表現しています。

 

同じように、エレクトリックギターとシンセテクスチャーを重ねた#7「Suddenly Green」はGrpuper、Sea Oleena、Ekin Fill、Hollie Kenniffといった、このドリームアンビエントともいうべきジャンルの象徴的なアーティストの系譜にあり、まさに女性的な感性が表現されています。 バーナードは自身のギターの断片的な演奏をもとに、反復構造を作り出し、ひたすら自然味のある癒やしの音楽を作り上げていきます。これらは緊張した音楽や、忙しない音楽に疲れてしまった人々の心に休息と癒しを与えるいわばヒーリングの力があるのです。音楽を怖いものと考えるようになった人は、こういった音楽に耳を澄ましてみるのもひとつの手段となるでしょう。また、テープディレイを掛けてプロデュース面での工夫が凝らされた#8「mended own」はこのアルバムの中盤のハイライト曲になりそうです。この曲は、ポピュラー・ボーカリストの性質が強く、エンヤのようなヒーリング音楽として楽しめるはずです。バーナードさんが自身の歌声によって表現しようとするカルフォルニアの風景の美しさがこの曲には顕著に表れています。アウトロにかけての亡霊的なボーカルディレイはある意味では、アーティストがこのアルバムを通して表現しようとする魂の在り方を示し、それが根源的なものへ帰されてゆく瞬間が捉えられているように感じられます。少なくとも、アウトロには鳥肌が立つような感覚がある。もしかすると、それは人間の存在が魂であるということを思い出させるからなのかもしれません。

 

アウトロのかけて魂が根源的な本質に返っていく瞬間が暗示的に示された後、#9「all you give(for ash)」ではボーカルテクスチャーをもとに、アブストラクトなアンビエントへと移行していきます。ここでは波の音をモジュラーシンセでサウンド・デザインのように表現し、それに合わせて魂が海に戻っていくという神秘的なサウンドスケープを綿密に作り上げています。ときおり、導入されるガラスの音は海に流れ着いた漂流物が暗示され、それが潮の流れとともに海際にある事物が風によって吹き上げられていくような神秘的な光景が描かれています。パンフルートを使用したシンセテクスチャーの作り込みは情感たっぷりで、アウトロではカモメやウミネコのような海辺に生息する鳥類の声が同じようにシンセによって表現されています。

 

これらの神秘的な雰囲気は#10「bluest」にも受け継がれており、デジタルディレイをリズムの観点から解釈しながら、繊細なギターをその中に散りばめています。短いミニマリズムの曲ではあるものの、この曲にはボーカリストやプロデューサーとは異なるギタリストとしてのセンスを見て取ることが出来る。二つのギターの重なりがディレイ処理と重なり合い、切ない感覚を呼び起こすことがある。このあたりに、アルバムの完成度よりも情感を重んじるマリン・アイズの音楽の醍醐味が宿っています。この曲を聞くかぎり、もしかすると、完璧であるよりも、少しだけ粗や欠点があったほうが、音楽はより魅力的なものになる可能性が秘められているように思える。 

 

 

「bluest」

 

 

 

・11-14

 

プレスリリースでは二部構成と説明されているにも関わらず、三部構成の形でアルバムのアナライズを行ってまいりましたが、「To Belong」では制作者の考えが明確に示されています。それは例えば、人間の生命的な根源が海に非常に近いものであるということなのです。例えば、この概念と呼ぶべきものは、アンビエントテクスチャーとボーカルテクスチャー、そしてギターの演奏の融合という形で大きなオーラを持つ曲になる場合がある。「Night Palms Sway」では西海岸の海辺の風景をエレクトロニックから描出するとともに、エレクトリックギターのアルペジオを三味線の響きになぞられ、ジャポニズムへのロマンを表してくれているようです。それほどギターの演奏が卓越したものではないにも関わらず、そのシンプルな演奏が完成度の高い音楽よりも傑出したものであるように思わせることがあるのは不思議と言えるでしょう。


アルバムの最終盤でもマリン・アイズの音楽性は一つの直線を引いたように繋がっています。つまり、アイディアの豊富さはもちろん大きな利点ではあるのですが、それがまとまりきらないと、散逸したアルバムとなってしまう場合があるのです。少なくとも、幸運にも、マリン・アイズはジェームスさんと協力することでその難を逃れられたのかもしれません。「In The Space」では至福感溢れるアンビエントを作り出し、人間の意識が通常のものとは別の超絶意識を持つこと、つまりスポーツ選手が体験する”フローの状態”が存在することを示唆しています。そして優れた音楽家や演奏家は、いつもこの変性意識に入りやすい性質を持っているのです。一曲目の再構成である「To Belong(Reprise)」では、やはりワンネスへの帰属意識が表現されています。本作の収録曲は、ふしぎなことに、別の場所にいる話したことも会ったこともない見ず知らずのミュージシャンたちの魂がどこかで根源的に繋がっており、また、その音楽的な知識を共有しているような神秘性があるため、きわめて興味深いものがあります。音楽はいつも、表面的なアウトプットばかりが重要視されることが多いのですが、このアルバムを聴くかぎりでは、どこから何をどのように汲み取るのか、というのを大切にするべきなのかもしれませんね。

 

 

アルバムの最後を飾る「call and answer」はアコースティックギター、シンセ、ボーカルのテクスチャーというシンプルな構成ですが、現代のどの音楽よりも驚きと癒やしに満ちあふれています。ディレイ処理は付加物に過ぎず、音楽の本質を歪曲するようなことはなく、伝わりやすさがある。このアルバムを聴くと、音楽のほんとうの素晴らしさに気づくはず。良い音楽の本質とは?ーーそれはこわいものでもなんでもなく、すごくシンプルで分かりやすいものなのです。

 

 

 

 

 

90/100

 

 

 

*Bandcampバージョンには上記の14曲に、ボーナス・トラックが2曲追加で発売されています。アルバムのご購入はこちらから。



ニューヨークのアンビエント・プロデューサー、Rafael Anton Irissari(ラファエル・イリサリ)がセルビア在住の音楽家、Abul Mogardとのコラボレーション作品を発表した。アブル・モガードの経歴はほとんど知られておらず、ベルグラードの工場を2012年に退職した後、音楽活動を行うようになった。 

 

アブール・モガードとラファエル・イリサリのパートナーシップは、2023年にマドリードの文化センター、コンデドゥケで開催されたサウンドセット・シリーズのソールドアウトのオープニングでセレンディピティに展開した。その晩、スペインのラジオ3で録音されたこのデュオのアンコールは、聴衆の心に深く響いた。


彼らのコラボ制作の中心には、抑制と革新の微妙なバランスがある。それはライブ・コンサート曲の "Waking Up Dizzy on a Bastion "に表れている。

 

彼らの音楽的感性にインスパイアされたこの曲は、彼らが共有するビジョンと相互尊重の証となっている。パラレル・コード進行を用いたこの曲は、シンセで生演奏されるシンプルなメロディ・モチーフから始まり、モガードのシンセ・ラインとイリサリの弓弾きギター・ループのコール・アンド・レスポンスに変化し、ミュージシャン同士の対話のような相互作用を生み出す。


ライブのエネルギーを基に、モガードとイリサリは、モガードのファルフィサ・オルガンとモジュラー・シンセサイザーとイリサリのシンセサイザーを組み合わせた「Place of Forever」を制作した。


現在、Bandcamp限定で、40分近い2曲のシングルがストリーミング未公開で発売されている。(限定10枚。購入はこちら)他のストリーミングでは、一曲目に収録されている「Place of Forever」のエディットバージョンが配信されている。

 


「Place of Forever」ーAM Radio Edit


Rafael Anton Irissariの音楽は「ノイズ音やドローンがモルタルのように深く塗りたくられるテクスチャー」、「美しくも荒涼とした」、「変幻自在の暗闇に包まれる」というよう表現される。


最初期には悲哀に充ちたピアノとシンセテクスチャーを組み合わせた作風で知られていたが、『Peripeteia』などに代表されるように、ノイズ/ドローンの果てなき音楽世界ののめり込んでいった。最近では、『Midnight Colours』をはじめ、コンセプチュアルな作風にも取り組んでおり、制作者としてのイデアをエレクトロニックに取り入れるようになっている。


ドイツのソフトウェア会社、KONTAKT等を使いこなすイリサリにとってのアンビエントは、ブライアン・イーノの『Ambient』(1978)に出発点があり、ブライアン・イーノによる「アンビエント・ミュージックは面白く聞き流せるものではなければいかない」という言葉を大切にしているという。


ラファエル・イリサリにとって、アンビエントの価値は、普遍的なクオリティーの高さに求められるという。イーノはもちろん、ハロルド・バッド、クラスターなどの音楽はいまでも聴く度に新鮮な面白さがあるという。また、Native Instrumentsのインタビューで彼は次のように話している。


「それらの作品はすべて何らかのストーリーを伝えようとしていたんだ。完璧な音質であったとしても、作品が何も語りかけてこなければそこに意味があるのだろうか? 私のお気に入りの作品のなかには、技術的には完璧ではないとしても、美学を持っているものがある。究極的に言えば、私にとっての良い音とは別の人にとって恐ろしい音に聞こえる場合もあるかもしれない」


 


アンビエント/ドローンは数あるうちの音楽でも最も機械的な音楽である。しかし、それを手作りのハンドクラフトのように緻密に作り上げ、そこにその制作者にしか作り出せないようなスペシャリティーが宿る。現代の文明が全てオートメーション化される中で、”人間”であることは愚かなようにも思えるかもしれない。


しかし、そんな風潮のなかで、どのようにして人間的な感性を示せるのだろうか。人間として生きることとは? 人類としての未来が示せるのか。AIや機械は、人間の文明を凌駕しつつあり、ロボットが人間に取って代わられる日は、もうまもなく近い将来にやってくる。そこで、人間として出来ることは何なのだろう? 


イリサリはまた、音楽が制作者の強固な美学を反映させる鏡のようなものであるとした上で、次のように情感と思考を大切にすべきと述べている。


「私にとってのアンビエントサウンドとは、特定のツールや技術、プロセスではなく、その音が呼び起こす感覚や、特定の音で何を創造的に実現しえるのか、音楽作品でどのように使うのか、またライブパフォーマンスにどのような形で組み込むのか、ということの方がは重要だと思う」


また、イリサリにとって、アンビエントを制作することは、彫刻や造形芸術に近い意味があるという。彼はウィリアム・バシンスキーが『The Disintegration Loops』の中で、アーティストが古いリールを誤って破壊したときに生じたアクシデントを引き合いに出し、特定の瞬間に起きた数値化できぬ決定的な要素が重要だとしている。これは”チャンス・オペレーション”が制作段階で偶発的に発生したもので、それらは音の破壊やマニュピレーションとしての音の減退や増幅なのである。その手法がAMの電波やアナログ信号のように、人間の手で完全には制御しきれきないものであるがゆえ、イリサリはアンビエントが最も面白いと考えているのかもしれない。



イリサリの制作は、自作の音源のループを重ねる場合もあり、なんらかの音源をサンプリングのように使用するケースもあるという。アーティストにとっては、周囲の環境からなんらかのインスピレーションを得る場合もあり、またイリサリは十代の頃からギターを演奏していたため、楽器の演奏から楽曲のヒントを得る場合も。例えば、ギターを録音した上で、原型がなくなるまで複雑なエフェクト加工を施すこともある。そしてイリサリにとって、最も大切なことは、それがフィールドレコーディングであれ、シンセサイザーの音源であれ、ユニークなものを追い求め、”そして自分がどのような人間であるかを示す”ということなのだ。イリサリは述べている。


「自分にとっては音で何かユニークなものを作り、音でどのような人間で、どういった人間になろうとしているかを示すことがとても大切なんだ。音が換気する感情や感性は、制作プロセスを通じて重大であり、それらがなんであるかを認識することが欠かせない。言うまでもなく、”汝、自身を知れ”という古い格言があるけれども、まさにその通りだと思う。”汝の音を知れ”。つまり、自分なりの道を見つけるということなんだ」



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ロンドンを拠点に活動するダニエル・カニンガムによるプロジェクト、Actress(アクトレス)が昨年の『LXXXVIII』に続く作品を発表した。タイトルは『Statik』で、Smalltown Supersoundから6月7日に発売される。

 

本日、シングル「Dolphin Spray」、「Static」が先行公開された。前者はモジュラーシンセを駆使したミニマル・テクノ/アシッド・ハウスで、後者は、抽象的なアンビエント/ドローンである。

 

アルバムについての声明で、カニンガムは次のように書いている。これはアーティストによる現代詩としても読めなくもない。

 


暗い森の中、血に染まった松の向こうに、静かなプール(ポータル)が煌めく。

見つめて。目を凝らして。心の目をグリッチする。

煙に包まれた空に静止した新月を見る。

不気味だ。あなたはここに映っていない。

(あなたはここにはいない)。

水が渦を巻いても目をそらさないで。

より深く見つめ、より近づき、その流れに身を委ねるんだ。

落ちる。

(落ちる)

落ちる...

地獄でも楽園でもない

銀のモノクロームの壮大な幻影が明滅する。

オリハルカムの鉢の中で炎が踊り、大理石の広間には反射池が並ぶ。

この廃墟のような寺院には、いまだに驚かされる。静まれ。

静まれ。聞け。ここには恐怖はない。

聞け。生きてきた瞬間のスペクトラルな響きに耳を澄ますんだ:

メロディー、モチーフ、リフレインが滴り、飛び散り、流れ落ちる。

ポセイドンの壁にアズド・レインが降り注ぎ、輝く玉座の前に薪がそびえ立つ。

儀式(レクイエム)が始まる。

絹のような音と水色の靄に包まれ、青黒い炎の上に浮かび上がる。

上へ下へ、下へ上へ。上へ下へ、無限の海へ。

波の下の鳩グレーの空では、突き刺すような月の光の中でイルカがおしゃべりし、水しぶきを上げる。

木々や森や土や血の下で、この鳩のようにまろやかな場所こそ、あなたがいる(映し出される)場所だ。

今も、これからも

 

 

「Dolphin Spray」

 

 

カニンガムの最新アルバムは、自由と静寂の感覚に満ちている。構想から制作、リリースに至るまで、「スタティック」は不自然なほどのシンプルさがある。アルバムの大半をフロー状態で書き上げたアクトレスにとって、この天空のように広大なプロジェクトは芸術的解放の証なのだ。



昨年の『LXXXVIII』(ニンジャ・チューンからリリース)に続く、繊細かつ荘厳な『Statik』は、アクトレスにとってSmalltown Supersoundからリリースする初のフルアルバムとなる。

 
カニンガムとオスロを拠点とする高音質サウンドを提供する尊敬すべきアーティストとのコラボレーションに注目。アクトレスがカルメン・ヴィラン(北欧のダブ・ステップの急峰。きわめて前衛的な作風で知られる)のカットを”Only Love From Now On LP”の12インチ用にリミックスした。


「Statik」



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ACTRESS 『Statik』


Label: Smalltown Supersound

Release: 2024/06/07

 

Tracklist:


1. Hell

2. Static

3. My Ways

4. Rainlines

5. Ray

6. Six

7. Cafe Del Mars

8. Dolphin Spray

9. System Verse

10. Doves Over Atlantis

11. Mello Checx

Interview - Celestial Trails Up-and-coming ambient producer from San Francisco


 

This process opens the gateway to surrealism, the unknown, and beyond what we can see.

- Celestial Trails


Notice:  This article is published in English&Japanese. Read the both language article below.


お知らせ: 本記事は英語と日本語で掲載されています。両言語の記事は下記よりお読みいただけます。



Episode in English


Celestial Trails, the San Francisco, California-based solo ambient music project of Fluttery Records founder Taner Torun, makes its debut on ''Lunar Beachcomber''.


Celestial Trails paints sonic tapestries layer by layer, seamlessly blending the warmth of organic textures from piano, analog synths, electric and bass guitars with the precision of virtual electronic instruments. Organic recordings are enriched using electroacoustic techniques such as reverb, delay, harmonizing, tape manipulation, and sonic deconstruction. Additionally, tape-manipulated field recordings captured during nature hikes and city walks are seamlessly integrated as another layer.


From seed to final form, Lunar Beachcomber’s recording process unfolded between June 2023 and January 2024. The first recording was in Pittsburgh, PA on a sleepless hot summer night, while the last one took place in San Francisco, CA. All recordings for the album were captured exclusively in these two cities.

 

For this issue, Music Tribune was able to discuss with an up-and-coming ambient producer from San Francisco.

 


Music Tribune:

 

First of all, can you tell us about your biography as an artist? When did you start
making ambient music? How did you connect it to your current form of music?

 

Celestial Trails(Taner Torun):


My musical journey began in punk and post-punk bands, where we cut our teeth with demos during my late teenage years. In my early twenties, I found myself drawn to the dreamy vibes of post-rock and modern classical music.

As a music enthusiast, I'd always dabbled in ambient music, but it wasn't until 2006 that I truly fell in love with the genre. That year, The Belong's album "October Language" struck a chord within me and I fell in love with ambient music. From there, I went on a quest to uncover more ambient gems, discovering the likes of William Basinski, Tim Hecker, and Rafael Anton Irisarri.

Eager to dive deeper, I set out to get my hands on the gear and software needed to bring my own ambient visions to life. Those early experiments were just the beginning of a thrilling ride into music production, both for myself and alongside fellow artists. 



Music Tribune:

 

Were you involved in any form of music production before you started your ambient
project?

 

 

Celestial Trails:

Back in the summer of 2006, a group of us kindred spirits started messing around with some experimental music. We recorded five tracks together, then finished the album by digitally passing files back and forth. When it felt complete, we uploaded it on Last.fm this was back when it was a massive hub for music discovery. It caught the attention of a significant audience. Our music found its way onto various experimental channels, earning us our first taste of international recognition. Under the moniker "A Journey Down the Well," I've collaborated with like-minded musicians on three albums.

In 2008, I started Fluttery Records, which became a home for post-rock, ambient, and modern classical talents. Beyond my own releases, I wear multiple hats at the label, mastering recordings and crafting album artwork for both our roster and a select few artists outside the label.

 



Music Tribune:

 

We then want to talk to you about your new album. We hear that a few years ago you went hiking in Mount Rainier and other nature-rich places. In what ways did this real-life experience influence your actual music-making?

 

 

Celestial Trails:



I have an undying love for nature in all its forms—birds, trees, plants, animals, you name it. Once upon a time, I used to be plagued by incessant overthinking and a cacophony of noisy thoughts rattling around in my head. But now, I've found solace in the tranquility of a quieter mind, and it's brought a newfound sense of joy and creativity into my life.

For me, hiking amidst the wonders of nature is akin to a meditative journey. It's a chance to fully immerse myself in the present moment, to listen intently to the whispers of my creative inner voice. Sure, like everyone else on this planet, I still grapple with thoughts that no longer serve me. But each time they surface, I've learned to acknowledge them and gently usher them away. In this phase of my life, I've made a conscious decision to embrace productivity, creativity, and joy with open arms.

Ambient music, much like nature itself, is all about the ebb and flow. You can find echoes of nature's rhythms in every note—a flowing river, the wind weaving through rocky landscapes, the gentle sway of tree branches adorned with leaves, the rhythmic crash of ocean waves against the shore, the soothing patter of rain, and the harmonious symphony of a meadow teeming with life. It's a mesmerizing tapestry of sound that mirrors the beauty and serenity of the natural world.



Music Tribune:

 

When I listened to the soundtrack of Lunar Beachcomber, the music as Celestial
Trails seemed to be more in the nature of an electric producer. It's quite elaborately
crafted, including glitchy noises. Are there any musicians that you yourself feel a
kinship with?

 

 

Celestial Trails:

 
Thank you so much for your kind words.

It's truly heartening to witness the growing presence of labels in the ambient music scene, providing a platform for numerous passionate producers to shine. There's an extensive list of labels and artists that I hold dear, and while it's hard to pick just a few, here are some noteworthy mentions. Azure Vista Records, for instance, boasts an impressive roster including the likes of Billow Observatory. Then there's 12K, hailing from New York state, founded by the seasoned ambient music veteran Taylor Deupree. And let's not forget Lontano Series from Italy, which consistently delivers stellar ambient tunes from talented underground artists.

On a somber note, I'd like to express my deepest condolences to the fans of Ryuichi Sakamoto. His untimely departure was a profound loss to the music world. However, he has left behind a priceless legacy, not only through his own musical creations but also through his collaborations with fellow artists—a treasure that will continue to inspire generations to come.

 



Music Tribune:

 

On this album, you will not only hear pleasant ambient, but also industrial style noise. Why do you incorporate this type of noise?

 

 

Celestial Trails:

 
Actually, I wouldn't call it industrial noise - I prefer to refer to them as "waves of flow." Most of these sounds are sourced from field recordings I made while hiking in nature.

I enjoy using nature's own sounds as an instrument, and I process them with techniques like tape manipulations and other electro-acoustic methods. I also apply these processing techniques to recordings of traditional instruments like guitar or organ, as well as virtual electronic instruments.

This process opens the gateway to surrealism, the unknown, and beyond what we can see. My goal is to create music where each track and album has its own unique universe. I'm drawn to the edginess of noise in genres like Noise and Industrial Music, but my music is not quite similar to that. I think most listeners will find these "waves" to be a captivating musical experience that they can swim in, whether they're exploring their adventurous side or traveling to other galaxies.

 



Music Tribune:

 

We would like to know your opinion on ambient production in general. There are many different elements to this genre, such as depicting soundscapes and healing. What would you say are the essential aspects of ambient production for you?



Celestial Trails:


When it comes to ambient music, I can only speak from my own experience. I believe each artist should find their own path and what works best for them. However, it's crucial not to confine oneself to common perceptions.

There's a tendency to pigeonhole ambient music into certain environments like airports, spas, or elevators, which can be amusingly restrictive. But in the early 2000s, artists like William Basinski challenged these notions, showcasing how ambient music can beautifully reflect an artist's unique individuality. While ambient music often evokes feelings of peace and calm, it's not limited to those emotions alone.

In my album "Lunar Beachcomber," I explore a variety of moods, emotions, and sonic landscapes. Take, for instance, the track "Spell Machine and Manufacturing," which I consider to be a rebellious ambient composition. In any genre of music, my priority is seeking out uniqueness. Although some may not immediately appreciate something different, novel, and original, I believe it's vital in music production to unearth your own creative spark and infuse it into your art.




Music Tribune:

 

You currently run Fluttery Records. What kind of music does the label deal with? Are there any artists you would recommend belonging to the label?

 


Celestial Trails:


Fluttery Records is a label that releases captivating music in the genres of post-rock, ambient, and modern classical. I encourage your readers to visit our website and explore the incredible artists we have the pleasure of working with.

Over the past 15 years, Fluttery Records has had the honor of releasing remarkable post-rock, modern classical, and ambient music from talented artists hailing from all corners of the world.

As I'm speaking with the Japanese press today, I'd like to highlight one of our exceptional artists from Japan. The band is called Gargle, and one of the members is my dear friend, Jun Minowa. Gargle has collaborated with the Spanish artist Bosques De Mi Mente on an album called Absence, which features mesmerizing and beautifully crafted modern classical compositions. This collaborative effort is a true testament to the label's dedication to showcasing the most compelling and boundary-pushing music from around the globe.

From the expansive and emotive post-rock soundscapes to the serene and introspective ambient pieces, and the deeply moving modern classical compositions, there is something for every music lover to discover on Fluttery Records.



Music Tribune:

 

What are your future plans for the label?

 


Celestial Trails:

 
We would like to keep doing what we are doing right now. We'll continue to champion our existing roster of artists while also welcoming new talents into the fold, providing them with a platform for international recognition and growth of their fan base. Our commitment remains unwavering: to keep our doors open to talented instrumentalists from every corner of the globe who are dedicated to creating exceptional music. Together, we'll continue to nurture a vibrant community of musicians and enthusiasts, united by their passion for instrumental music.

 

 

Music Tribune:

 

Thank you so much, Taner. I look forward to your future career as an artist and management of the label.



''Lunar Beachcomber" is released today on Fluttery Records.For more information, click here.

 




Episode In Japanese:


このプロセスは、超現実主義や未知のもの、目に見えるものを超越した何かへの扉を開く-Celestial Trails



カリフォルニア州サンフランシスコを拠点とするFluttery Recordsの創設者Tanel Torunのソロ・アンビエント・プロジェクト、Celestial Trailsがデビューアルバム『Lunar Beachcomber』をリリースする。


セレスティアル・トレイルズは、ピアノ、アナログ・シンセ、エレクトリック・ギター、ベース・ギターの有機的なテクスチャーの暖かさと、ヴァーチャルな電子楽器の精密さをシームレスに融合させながら、音のタペストリーを幾重にも描いていく。

 

オーガニックなレコーディングは、リバーブ、ディレイ、ハーモナイジング、テープ・マニピュレーション、サウンド・デコンストラクションといったエレクトロ・アコースティックなテクニックを駆使し、より豊かなものとなっている。さらに、自然散策や街歩きの際に録音されたテープ操作のフィールド・レコーディングが、もうひとつのレイヤーとしてシームレスに統合されている。


始まりから最終形まで、『ルナ・ビーチコマー』のレコーディング・プロセスは2023年6月から2024年1月にかけて展開された。最初のレコーディングは、ペンシルベニア州ピッツバーグで眠れない暑い夏の夜に行われ、最後のレコーディングはカリフォルニア州サンフランシスコで行われた。アルバムのレコーディングはすべて、この2都市のみで行われた。

 

今回、Music Tribuneは、サンフランシスコ出身の新進気鋭のアンビエント・プロデューサーに話を聞くことができた。

 


Music Tribune:

まず、あなたのアーティストとしての経歴を教えてください。アンビエント・ミュージックを作り始めたのはいつですか?また、それが現在の音楽活動にどのように結びついたのでしょうか?

 

Celestial Trails(Taner Torun):



私の音楽の旅はパンクやポストパンクのバンドから始まりました。20代前半になると、ポストロックやモダン・クラシックのドリーミーな雰囲気に惹かれるようになりました。



音楽愛好家として、私はいつもアンビエント・ミュージックに手を出していたんですが、このジャンルを本当に好きになったのは、2006年のことでした。その年、The Belongのアルバム『October Language』が私の琴線に触れ、アンビエント・ミュージックが好きになった。そこから私は、より多くのアンビエント・ミュージックの逸品を探し求めるようになり、ウィリアム・バシンスキー、ティム・ヘッカー、ラファエル・アントン・イリサリなどを発見しました。



もっと深く潜りたいと思った私は、自分のアンビエント・ビジョンを実現するために必要な機材やソフトウェアを手に入れようとしました。この初期の実験は、私自身にとっても、また仲間のアーティストたちにとっても、音楽制作へのスリリングな道のりの始まりに過ぎませんでした。




Music Tribune:

アンビエント・プロジェクトを始める前に、何か音楽制作に携わっていましたか?




Celestial Trails:


2006年の夏に、気の合う仲間で実験的な音楽を作り始めました。一緒に5曲レコーディングをして、デジタルでファイルをやり取りしながらアルバムを完成させました。アルバムが完成すると、Last.fmに楽曲をアップロードするようになりました。



Music Tribune:

 

続いて、新しいアルバムについてお話を伺いたいと思います。


数年前、マウント・レーニアをはじめとする自然豊かな場所にハイキングに行かれたそうですね。この実体験は、実際の音楽制作にどのような影響を与えたのでしょうか?


 
Celestial Trails:


私は、鳥、木、植物、動物など、あらゆる形の自然を愛してやみません。むかしは、ひっきりなしに考えこみすぎたり、頭の中で雑音のような思考に悩まされたりしていました。それでも、今は、より静かな心の静けさに安らぎを見出し、それが私の人生に新たな喜びと創造性をもたらしています。



私にとって、自然の驚異の中でのハイキングは瞑想の旅によく似ています。今この瞬間に完全に没頭し、創造的な内なる声のささやきに耳を澄ますチャンスでもある。確かに、この地球上の誰もがそうであるように、私はまだ、もはや自分のためにならない考えと闘っています。しかし、それらが浮上するたびに、私はそれを認め、そっと遠ざけることを学びました。私の人生のこの段階では、生産性、創造性、そして喜びを諸手を広げて受け入れることを意識的に決めたんです。



アンビエント・ミュージックについては、自然そのものと同じように、満ち引きを大切にしています。川の流れ、岩だらけの風景を縫う風、葉で飾られた木の枝の穏やかな揺らぎ、岸辺に打ち付ける海の波のリズミカルな音、心地よい雨音、そして、草原にあふれる調和のとれたシンフォニー……。

 


Music Tribune:


『ルナ・ビーチコマー』のサウンドトラックを聴いたとき、『セレスティアル・トレイルズ』の名義としての音楽はエレクトリック・プロデューサーの性質が強いように感じました。グリッチノイズなど、かなり精巧に作られていますね。あなた自身が親しみを感じているミュージシャンはいますか?

 

 

Celestial Trails:

 
ありがたいお言葉をありがとうございます。



アンビエント・ミュージック・シーンにおいてレーベルの存在感が増しているのを目の当たりにし、多くの情熱的なプロデューサーたちが輝ける場を提供していることを、本当に心強く思っています。

 

私が大切にしているレーベルやアーティストのリストは数多くあり、その中からいくつかを選ぶのは難しいのですが、特筆すべきものをいくつかご紹介しましょう。

 

例えば、アズール・ヴィスタ・レコーズは、ビロウ・オブザーバトリーを含む印象的なロスターを誇っています。そして、経験豊富なアンビエント・ミュージックのベテラン、テイラー・デュプリーが設立したニューヨーク州出身の12Kも素晴らしいです。

 

そして、才能あるアンダーグラウンド・アーティストによる素晴らしいアンビエント・チューンをコンスタントに提供しているイタリアのロンターノ・シリーズも忘れてはならないでしょう。



次いで、坂本龍一のファンにも哀悼の意を表しておきたいです。彼の早すぎる旅立ちは、音楽界にとって大きな損失でした。しかしながら、彼自身の音楽的創造のみならず、仲間たちとのコラボレーションを通して、彼はかけがえのない遺産を残しました。

 


Music Tribune:

 

このアルバムでは、心地よいアンビエントだけでなく、インダストリアル・スタイルのようなノイズも聴くことができます。なぜ、このようなノイズを取り入れたのでしょう?


 

Celestial Trails:


実は、産業ノイズとは呼んでいません。私は、"流れの波 "と呼んでいます。これらの音のほとんどは、自然の中をハイキングしているときに録音したフィールドレコーディングから得ています。



自然の音を楽器として使うのが好きで、テープ・マニピュレーションなどの電気音響的な手法で加工しています。また、これらの加工技術をギターやオルガンなどの伝統的な楽器やバーチャルな電子楽器の録音にも応用しています。



このプロセスは、超現実主義や未知のもの、目に見えるものを超えたものへの入り口を開く。私の目標は、それぞれのトラックやアルバムが独自の世界を持つような音楽を作ることです。私はノイズやインダストリアル・ミュージックといったジャンルのノイズのエッジネスに惹かれるが、私の音楽は、それとは似ても似つかないでしょう。ほとんどのリスナーは、冒険的な一面を探検しているときでも、他の銀河系を旅しているときでも、この「波」を泳いでいるような魅惑的な音楽体験だと感じると思う。



 

Music Tribune: 

 

アンビエント制作全般についてのご意見をお聞かせください。このジャンルには、サウンドスケープの描写や癒しなど、さまざまな要素があります。あなたにとってアンビエント制作の本質的な部分は何だと思いますか?



Celestial Trails:


アンビエント・ミュージックに関しては、私は自分の経験からしか語ることができませんね。それぞれのアーティストが自分の道を見つけ、自分にとって何が一番効果的かを見つけるべきだと思います。しかし、一般的な認識にとらわれないことが重要です。



アンビエント・ミュージックは、空港、スパ、エレベーターなど、特定の環境に限定される傾向があり、それは面白いほど制限的なのです。しかし、2000年代初頭、ウィリアム・バシンスキーのようなアーティストがこうした概念に挑戦し、アンビエント・ミュージックがアーティストのユニークな個性を見事に反映できることを示しました。アンビエント・ミュージックはしばしば平和で穏やかな感情を呼び起こすのですが、そのような感情だけに限定されるものではないでしょう。



私のアルバム『Lunar Beachcomber』では、様々なムード、感情、音の風景を探求しています。例えば、"Spell Machine and Manufacturing "という曲は、反抗的なアンビエント曲だと思っています。どんなジャンルの音楽でも、私が優先するのは独自性を追求すること。人とは違うもの、斬新なもの、独創的なものを、すぐに評価しない人もいるかもしれませんが、自分自身の創造的な輝きを発掘し、それを作品に吹き込むことが音楽制作には不可欠だと信じています。




Music Tribune:

 

あなたは現在、Fluttery Recordsを運営なさっています。このレーベルはどのような音楽を扱っていますか? また、このレーベルに所属のお勧めのアーティストはいますか?

 



Celestial Trails:


Fluttery Recordsは、ポストロック、アンビエント、モダン・クラシックのジャンルで魅力的な音楽をリリースするレーベルです。読者の皆さんには、ぜひ私たちのウェブサイトを訪れて、私たちが一緒に仕事をする喜びを感じている素晴らしいアーティストたちを探求していただきたいと思います。



過去15年にわたり、Fluttery Recordsは世界中の才能あるアーティストからポストロック、モダン・クラシック、アンビエント音楽をリリースしてきました。



今日、日本のプレスとお話をさせていただくにあたり、日本からの優れたアーティストの一人にスポットを当てたいと思います。

 

Gargleというバンドで、メンバーの一人は私の親愛なる友人である箕輪純です。Gargleはスペインのアーティスト、Bosques De Mi Menteとコラボレートしたアルバム『Absence』を発表しました。このコラボレーションは、世界中から最も魅力的で境界を押し広げる音楽を紹介するというレーベルの献身性を証明するものです。



広がりのあるエモーショナルなポストロックのサウンドスケープから、静謐で内省的なアンビエント作品、そして、深く心を揺さぶるモダン・クラシックの楽曲に至るまで、Fluttery Recordsにはすべての音楽愛好家が発見できる何かがあるはずです。



Music Tribune:

 

レーベルの今後の事業計画はありますか?

 


Celestial Trails:

 
今やっていることを続けていきたいと思っています。既存のアーティストを支持し続ける一方で、新たな才能を迎え入れ、彼らに国際的な認知とファン層の拡大のためのプラットフォームを提供します。

 

私たちのコミットメントは揺るぎません。卓越した音楽を創造することに専心する世界中の才能あるインストゥルメンタリストに門戸を開き続けることです。私たちは、インストゥルメンタル・ミュージックへの情熱で結ばれたミュージシャンと愛好家の活気あるコミュニティを、共に育てていきます。

 
 

Music Tribune:


Tanerさん、本当にありがとうございました。今後のアーティストとしての活躍、レーベルの運営にも期待しています。


 


カリフォルニア州サンフランシスコを拠点とするFluttery Recordsの創設者Taner Torunのアンビエントプロジェクト、Celestial Trailsがデビュー作『Lunar Beachcomber』を4月12日にリリースする。


セレスティアル・トレイルズは、ピアノ、アナログ・シンセ、エレクトリック・ギター、ベース・ギターによるオーガニックなテクスチャーの暖かさと、バーチャルな電子楽器の精密さをシームレスに融合させながら、音のタペストリーを幾重にも描いていく。オーガニックなレコーディングは、リバーブ、ディレイ、ハーモナイジング、テープ・マニピュレーション、サウンド・デコンストラクションといったエレクトロ・アコースティックのテクニックを駆使し、より豊かなものとなっている。さらに、自然散策や街歩きの際に録音されたテープ操作のフィールド・レコーディングが、もうひとつのレイヤーとしてシームレスに統合されている。


種から最終形まで、ルナ・ビーチコマーのレコーディング・プロセスは2023年6月から2024年1月にかけて展開された。最初のレコーディングはペンシルベニア州ピッツバーグで眠れない暑い夏の夜に行われ、最後のレコーディングはカリフォルニア州サンフランシスコで行われた。アルバムのレコーディングはすべて、この2都市のみで行われた。


自然の限りない美しさ、都市の風景、宇宙の魅惑的な謎にインスパイアされた『Lunar Beachcomber』は、静かな草原、賑やかな街並み、そして広大な宇宙空間を思わせるみずみずしいサウンドスケープで、あなたを未知の音の領域へと誘う。


オープニング・トラックの 「A Pair of New Wings」は、自然や生命との深い個人的なつながりをオーディオで表現している。


「過去5年間、私はニューヨーク州北部のフィンガー・レイク周辺のトレイルを発見したり、ラッカワナ川沿いを散策したりと、アメリカ全土で素晴らしいハイキングに出かけてきた。秋にはレーニア山の鮮やかな色を目の当たりにし、カリフォルニアの冬にはタマルパイス山の静謐な美しさを体験した。カウアイ島でマッドスキッパーと同じ泥地を共有したことは、忘れがたい瞬間のひとつに過ぎない。どの旅も深く、私の癒しの旅に欠かせないものであり、私に慰めやインスピレーション、そして新たな自由の感覚を与えてくれた」


入念な処理によって、エレキギターは慣れ親しんだ皮を脱ぎ捨てる。Time Collapse on the Threshing Floor」と「The Crudest Luminescence」の洗礼されたエレクトリック・ギターは、雰囲気のあるアンビエント・サウンドスケープにシームレスに溶け込んでいる。しかし、ストリングス以外にも驚きがある。


「このアルバムのすべての謎を明かしたくはないが、耳を澄ませば「Spell Machine Manufacturing」で鳥の群れを聴くことができる。それらの謎は、一連のフィルターとテープ操作によってうまく隠されている」


その抽象的な性質にもかかわらず、このアルバムには識別可能なメロディーが残されている。SFやシュールレアリズムの要素を取り入れた "Lunar Beachcomber "は、豊かで質感のあるアンビエント体験を提示しながらも、そのルーツは地球にしっかりと根付いている。


「私たちはしばしば、この惑星が砂浜の砂粒よりも小さいことを忘れてしまう。人生は贈り物であり、この惑星での時間は限られている。私たちは、この経験をお互いに簡単で楽しいものにするよう努力しなければならない」


Celestial Trailsは、地上のささやき声と宇宙のハミングが交錯する、音の風景への誘いを広げている。リスナーはこの聴覚の旅に出るとき、この宇宙のビーチコーミングの聖域での、はかなくも魅力的な体験を思い起こすことだろう。

 

 

 




Celestial Trails, the San Francisco, California-based solo ambient music project of Fluttery Records founder Taner Torun, makes its debut on Lunar Beachcomber.


Celestial Trails paints sonic tapestries layer by layer, seamlessly blending the warmth of organic textures from piano, analog synths, electric and bass guitars with the precision of virtual electronic instruments. Organic recordings are enriched using electroacoustic techniques such as reverb, delay, harmonizing, tape manipulation, and sonic deconstruction. Additionally, tape-manipulated field recordings captured during nature hikes and city walks are seamlessly integrated as another layer.


From seed to final form, Lunar Beachcomber’s recording process unfolded between June 2023 and January 2024. The first recording was in Pittsburgh, PA on a sleepless hot summer night, while the last one took place in San Francisco, CA. All recordings for the album were captured exclusively in these two cities.


Inspired by the boundless beauty of nature, urban landscapes, and the alluring mysteries of the cosmos, Lunar Beachcomber invites you to explore uncharted sonic territories; lush soundscapes, evoke tranquil meadows, bustling cityscapes, and the vastness of outer space.


The opening track, “A Pair of New Wings,” serves as an audio representation of the profound personal connection to nature and life.


“Over the past five years, I’ve embarked on incredible hikes across the United States, from discovering the trails around Finger Lakes in upstate New York to wandering along the Lackawanna River. I’ve witnessed the vibrant colors of Mount Rainier in Autumn and experienced the serene beauty of Mount Tamalpais in California winter. Sharing the same muddy ground with mudskippers in Kauai was just one of many memorable moments. Each journey has been profound, integral to my healing journey, offering me solace, inspiration, and a newfound sense of freedom.”


Through careful processing, electric guitars shed their familiar skins. The washed electric guitars in “Time Collapse on the Threshing Floor” and “The Crudest Luminescence” are seamlessly integrated into the atmospheric ambient soundscape. However, there are more surprises beyond the strings.


“I don’t want to reveal all the mysteries of this album but if you listen carefully you can hear a flock of birds in “Spell Machine Manufacturing”. Those mysteries are well hidden with a series of filters and tape manipulations.”


Despite its abstract nature, the album retains discernible melodies. Infused with elements of science fiction and surrealism, “Lunar Beachcomber” presents a rich and textured ambient experience, yet its roots remain firmly planted on earth.


“We often forget that our planet is smaller than a grain of sand on a beach. Life is a gift, and our time on this planet is limited. We should strive to make this experience easy and pleasant for each other.”


Celestial Trails extends an invitation to traverse sonic landscapes, where earthly whispers intertwine with cosmic hums. As listeners embark on this auditory journey, they are reminded of the fleeting yet intriguing experience within this cosmic beachcomber’s sanctuary.



Celestial Trails『Lunar Beachcomber』




Label: Fluttery Recrods

Release: 2024/04/12


Tracklist:


01 – A Pair of New Wings

02 – Lunar Beachcomber

03 – Time Collapse on the Threshing Floor

04 – Lighthouse Behind the Glowing Tree

05 – Spell Machine Manufacturing

06 – Egg Hatching in the Violet River

07 – The Crudest Luminescence

08 – Touchdown on Interstellar Shores

 

Pre-order(bandcamp):

 

https://celestialtrails.bandcamp.com/album/lunar-beachcomber 

 


ベルギーのアンビエント・プロデューサー、Adam Wiltzie(アダム・ウィルツィー)が新作アルバム「Eleven Fugues For Sodium Pentothal」を発表しました。アルバムはシカゴのクランキーから4月5日にリリースされる。


アダム・ウイルツィーはStars of  The Lid、A Winged Victory For The Sullenのプロジェクトで知られている他、クリスティーナ・ヴァンゾーとのデュオ、Dead  Texanとしてもクランキーからアンビエントのリリースを行っている。アダム・ウィルツィーの作品はアンビエントの名盤でもご紹介しています。


Stars of  The Lidのもう一人のメンバーであり、傑出したプロデューサー、ブライアン・マクブライドは昨年、53歳の若さでこの世を去り、現在、プロジェクトの続行が困難となっている。今作はアダムの渾身の一作であり、亡き盟友へのレクイエムである。


作曲家(Stars Of The Lidの共同創設者でもある)アダム・ウィルツィーの最新組曲は、ベルギー/ブリュッセルから北へ移動し、フランダースの田園地帯で制作された。


このアルバムは、美と廃墟の間で永遠に解決されぬ悲鳴を上げながら、忘却の魅力をユニークに呼び起こし、現実性を適度に回避している。アダム・ウィルツィーは、タイトルにもなっているバルビツールをミューズであり、神聖な逃避先として挙げている。


「人生という日々の感情的な肉挽き機に正面を向いて座っているとき、私はいつも、ただ自動的に眠りに落ちることができるように、そして、その感覚がもうそこに存在しないかのように、もしくは、もう少しだけそこにあればいいのにと思っていたんだ」


ウィルジーの自宅スタジオで録音され、ブダペストの旧ハンガリー国営ラジオ施設(Magyar Radio)でストリングスを加えたトラックは、親密さと同時に無限の広がりを感じさせ、内的な空間で垣間見える景色を展開している。イギリスのドローン・ロック・アイコン、ループの名工、ロバート・ハンプソンがミックスを担当、音楽に映画に比する広がりと斜に構えたような催眠感を与える。これらは、文字通りのクラシック音楽的なフーガと同じように、不確かな記憶と空間的なズレにまみれたエピファニーが無意識から引き出され、宙に浮いているかのような不可思議な状態を生み出す。





アルバムの予約はこちら



Adam Wiltzie 「Eleven Fugues For Sodium Pentothal」



Label: kranky
Release: 2024/04/05

 Tracklist:

1.Buried At Westwood Memorial Park, In An Unmarked Grave, To The Left Of Walter Matthau

2.Tissue Of Lies 

3.Pelagic Swell

4.Stock Horror

5.Dim Hopes

6.As Above Perhaps So Below

7.Mexican Helium

8.We Were Vaporised

9.(Don't Go Back To) Boogerville

 

Elija Knutsen
 

オレゴン州ポートランドのアンビエント・プロデューサー、Elijah Knutsen(エリヤ・クヌッセン)が既発のアルバムの収録曲のリマスターに加え、B面曲とロストトラックを収録した37曲のアンビエント・コレクションを先週(2月6日)にリリースした。アルバムのストリーミング/ご購入はこちらから。

 

エリヤ・クヌッセンはポートランドでドッグトレーナー等の仕事を経た後、2020年のパンデミック中に自主レーベル”Memory Colour”を立ち上げ、インディペンデントなリリースを行っている。現在、アンビエントの新作を制作中だという。エリヤはレディオヘッドやザ・キュアーからの音楽的な影響を挙げている。


彼のアンビエントは日本特有の景物をテーマにすることが多い。エリヤが最初に私に紹介してくれたのは、青森の青函トンネルを題材に選んだアンビエントミュージックだったことを思い出す。

 

ーー「環境音楽」というサブジャンルについては、1980年代初頭の日本で、吉村弘、小久保隆、上原一夫、広瀬裕など、当時はまだあまり知られていなかったアーティストたちによって始められた。「環境音楽」の作品は、陽気でミニマル、そして何よりも環境的だった。トラックには、自然のフィールド・レコーディングが頻繁に挿入された。鳥のさえずり、静かな森の空き地、打ち寄せる海辺の音。フィールド・レコーディングは、これらのリリースの音の本質を邪魔したり濁したりするのではなく、常に存在するメロディーや音楽そのものの一部となった。



柔らかなシンセサイザーが、シンプルで甘美なキャンディ・メルト・メロディーを奏でる(吉村弘 - Flora 1989)。静かなギターとキーボードのチャイムが、穏やかな水音と鳥のさえずりのカーテンの向こうに落ちていく(小久保隆 - Oasis Of The Wind II)。メランコリックなピアノの和音が、小川のせせらぎとともに滴り、うねりながら流れていく(広瀬裕 - Nova)...。環境音楽の魅力は際立っている。2020年、このマイクロジャンルはYouTubeのアルゴリズムによって大々的な復活を遂げ、かつては隠されていた未知のジャンルを何百万人もの人々に紹介した。


当時アマチュアのアンビエント・プロデューサーであったエリヤ・クヌッセンは、泥臭いポストロック・プロジェクト "Blårød "のプロモーションに数年を費やしたが、ほとんど成功しなかった。井上哲やFAXレーベルのサイケデリック・アンビエント作品に触発された彼は、よりスパースで実験的なアプローチにシフトチェンジし、「Blue Sun Daydream」をレコーディングした。ーー



 

 

 

・Interview: Elijah Knutsen  -The Voices of Portland's Ambient Producer-


 --レディオヘッドとの出会いから近作「Music For Vending Machines」について語る--




Portland ambient producer Elijah Knutsen released a 37-track ambient collection last week that includes remastered tracks from previously released albums, plus B-sides and lost tracks. Stream/purchase the album here.

 
Elijah Knutsen worked as a dog trainer in Portland before starting his own independent label, Memory Colour, during the 2020 pandemic. He is currently working on a new ambient album. Elijah cites Radiohead and The Cure as musical influences.

The subgenre of "environmental music" was initiated in Japan in the early 1980s by then little-known artists such as Hiroshi Yoshimura, Takashi Kokubo, Kazuo Uehara, and Yutaka Hirose. The "environmental music" pieces were cheerful, minimalist, and above all, environmental. Tracks were frequently interspersed with field recordings of nature. Birds chirping, quiet forest clearing, lapping seashore sounds. The field recordings did not disturb or muddy the sonic essence of these releases, but became part of the ever-present melodies and music itself.

Soft synthesizers play a simple, sweet candy-melt melody (Hiroshi Yoshimura - Flora 1989). Quiet guitar and keyboard chimes fall behind a curtain of gentle water sounds and birdsong (Takashi Kokubo - Oasis Of The Wind II). Melancholic piano chords drip and swell and flow with the murmuring of the stream (Hiroshi Hirose - Nova).... The appeal of ambient music stands out: in 2020, this microgenre underwent a massive resurgence thanks to YouTube's algorithms, introducing millions of people to a once hidden and unknown genre.

Elijah Knutsen, then an amateur ambient producer, spent years promoting his muddy post-rock project "Blårød" with little success. Inspired by the psychedelic ambient work of Tetsu Inoue and the FAX label, he shifted to a sparser, more experimental approach and recorded "Blue Sun Daydream".

Rafael Anton Irisarri  『Midnight Colours』 (Remastered)

 

 

Label: Black Knoll Editions

Release: 2024/02/ 09


Review

 

ニューヨークの気鋭のプロデューサーが示す「終末時計」


 ニューヨークのエレクトロニック・プロデューサー、ラファエル・アントン・イリサリはアンビエントシーンの中心人物として知られ、その作風は幅広い。最初期はピアノを基調とするポスト・クラシカルや、活動中期に入ると、ノイズ・アンビエント/ドローンの音楽性を押し出すようになり、ときにそれは純粋なノイズ・ミュージックという形でアウトプットされる場合もある。


 アーティストはウィリアム・バシンスキーや坂本龍一など、最もニューヨーク的なアンビエントを制作することで知られる。イリサーリの音楽性の核心をなすのは、ゴシック/ドゥーム的とも言えるメタリックな要素であり、それらがノイズの形質をとって現れる。例えばGod Speed You ,Black Emperorのようなポスト・ロックのインストともかなり近いとうように解釈出来るわけである。もちろん、カナダのバンドのように、現実的な神話の要素を内包させていることも、それらの現実性を何らかの難解なメタファーにより構築しようというのも共通項に挙げられる。


 このアルバムは長らく廃盤になっていた幻の作品の再発である。以前の作品と同様に、難解なテーマが掲げられている。『Midnight Colours』は単なるアルバムをはるかに超えた、人類と時間との間の謎めいた関係の探求である。世界の存亡の危機を象徴する「終末時計」の音による解釈として構想されたイリサリの作品は、リスナーに私たちの存在の重さと、それを包む微妙なバランスについて考えるよう招来している。「夜の影の中に共存する不安と静謐な美しさの両方、時間と人間の関係の本質を捉えたかった」とイリサリは説明する。「ヴァイナル・フォーマットは、リスナーに音楽と物理的に関わるように誘い、体験に触覚的な次元を加える」

 

 いわば、純粋な音源というよりも、フロイドやイーノ、そして池田亮司のような音と空間性の融合に焦点が絞られている。そういった楽しみ方があるのを加味した上で、音楽性に関しても従来のイリサリの主要作品とは異なるスペシャリティーが求められる。ノイズ、ドローンの性質が強いのは他の作品と同様ではあるものの、イリサリの終末的なエレクトロニックの語法は、1つの音の流れや作曲構造を通じて、壮大なアプローチに直結する。音の流れの中に意図的な物語性を設け、それらをダニエル・ロパティンの最新作のように、エレクトロニックによる交響曲のように仕上げるという点は、今作にも共通している。それが最終的にバシンスキーのようなマクロコスモスを形成し、視覚的な宇宙として聞き手の脳裏に呼び覚ますことも十分ありうる。


 「The Clock」では、『インディペンデント・デイ』で描かれるような映画的な壮大なスペクタルを、エレクトロニック、アンビエント、ドローンという制作者の最も得意とする手法によって実現させていく。それはやはり、米国的なアンビエントといえる。Explosions In The Skyのようなポストロックバンドにも近似する作曲法によって重厚感のあるアンビエントが構築される。

 

 しかし、ウィリアム・バシンスキーの直近のアンビエントと近い宇宙的な響きが含まれていることを踏まえた上で、近年のイリサリの作品とは明らかに異なる作風が発見出来ることも事実である。まず、この曲にはドゥームの要素はほとんど見いだせず、アンビエントの純粋な美しさにスポットライトを当てようとしている。そして、「Oh Paris, We Are Fucked」ではより静謐なサイレンス性に重点を置いた上で、その中に徐々に内向きのエネルギーを発生させる。これは近年の作風とは明瞭に異なる。しかし、一貫してノイズに関してのこだわりがあるのは明確なようで、曲の中盤からは静謐な印象があった序盤とは正反対にノイズが強められる。そして雑音を発生させるのは、美麗な瞬間を呼び起こすためという美学が反映されていることがわかる。この点において、オーストリアのFennes(フェネス)と近い制作意図を感じることが出来る。



 そして、最近のウィリアム・バシンスキーの近未来的なアンビエントに近い雰囲気のある音楽性も続く「Circuits」に見いだせる。この曲では、アントン・イリサリとしては珍しく、感覚的な音楽を離れて、より理知的なイデアの領域へと近づいている。その中に内包される終末時計という概念は、よりこのアンビエントのイデアを高め、そしてそれらの考えを強化している。


 しかし、イリサリにとっての終末的な予感とはディストピア的なものに傾かず、より理想的で開けたような感覚を擁するアンビエントの形に繋がっている。これがつまり、恐ろしいものではなく、その先にある明るい理想郷へと聞き手を導くような役割をもたらす可能性を秘めている。

 

 さらにイリサリのアンビエントとは一風異なる音楽も収録されていることは心強い。「Every Scene Fade」はホワイトノイズを交えながら、ダブステップのようなダンスミュージックの要素を突き出した珍しい曲である。ここにはホーム・レコーディングの制作者ではなく、実際のフロアでの演奏者/DJとしてのアーティストの姿を伺える。しかし、それらのリズム的な要素は、抽象的なアンビエントをベースにしており、やはりオウテカのようなノンリズムによって昇華される。サウンドスケープの抽象性に重点が置かれ、カルメン・ヴィランのようなリズム的な要素が主体となることはほとんどないのである。そして、それらはやはり、ドローンを中心点として、パンフルートのような枯れた音色や、ストリングの音色を通じて、驚くほど明るい結末を迎える。近年では、暗鬱な音楽が中心となっている印象があったが、この曲ではそれとは対極にある神々しさが描かれる。それはイリサリの従来とは異なる魅力を知る契機となるに違いない。


 他にも意外性のある楽曲が収録されている。「Two and Half Minutes」ではダニエル・ロパティンのようなミニマル音楽のアプローチを取っているが、これはこれまでのイリサリのイメージを完全に払拭するものだ。これまでのダーク・アンビエントとは対象的に、祝福的なイメージを短いパルス状のシンセによって描き出そうとしている。これもまた鮮烈なイメージを与えるはずだ。従来と同様、ノイズ・アンビエントとしての究極系を形作るのが「Drifting」となる。旧来のゴシック/ドゥームの枠組みの中で、ギター演奏を取り入れ、抽象的なサウンドを構築していく。ドビュッシーの「雲」のように、それまで晴れ渡っていた空に唐突に暗雲が立ち込め、雲があたり全体を覆い尽くすようなサウンドスケープを呼び覚ます。アンビエントは手法論としての音楽とは別に、音楽そのものがどのようなイメージを聞き手に呼び覚ますのかが不可欠な要素であり、それをイリサリは自らの得意とする表現方法により構築していくのである。

 

 そして、イリサリはアンビエントを一つの手段とは考えていないことも非常に大切であると思う。上述した「Oh Paris, We Are Fucked」と同じように、制作者の考える「美しいものとは何か?」という答えらしきものが示されている。結局のところ、アンビエントは、制作手段が最も大切なのではなくて、何を表現したいのか、それを表現するための精神性が制作者にしっかりと備わっているのかどうかが、音楽性を論ずる際に見過ごすことの出来ぬ点である。それが次いで、聞き手のイメージをしっかりと呼び覚ます喚起力を兼ね備えているかというポイントに繋がってくる。これらの作曲性はリマスターによって荘厳で重厚感のある音楽へと昇華される。

 

 クローズ曲は、イリサリの最高傑作であると共に、「電子音楽の革命」と称せるかも知れない。本曲でのアンビエントは、「終末時計」という制作者の意図が明瞭に反映されている。それは映画に留まらず、オーケストラの弦楽に比する重厚な響きを形成するに至る。もしかすると、イリサリは今後、映画音楽やオーケストラとの共演等を行う機会が増えるかもしれない。もしそうなったとき、アンビエントの先にある、未来の音楽が作り出される可能性が高い。本作は音楽の過去ではなく、音楽の未来を示唆した稀有なエレクトリック・ミュージックなのだ。

 

 

 

86/100 

 

Selah Broderick & Peter Broderick





セラ・プロデリックの静謐なスポークンワード、ピーター・ブロデリックがもたらす真善美


 ある日、セラ・ブロデリックが、彼女の息子でミュージシャン兼作曲家のピーター・ブロデリックに、「詩を音楽にするのを手伝ってくれない?」と頼んだとき、ピーターは即座に「イエス」と答えた。ピーター・ブロデリックは、セラの美しく傷つきやすい言葉を聴くと、母のこのアルバムの制作を手伝うことに専念したのだ。


『Moon in the Monastery』を構成する8曲は、以後、2、3年かけてゆっくりと着実に作られた。ピーター・ブロデリックの膨大な楽器コレクションと、マルチ・インストゥルメンタリストとしての長年の経験(ヴァイオリン、ピアノ、パーカッションなど)を生かし、ブロデリック親子は試行錯誤のプロセスに着手し、それぞれの詩にふさわしい音楽の音色を辛抱強く探し求めた。


時には、ピーターが母親からフルートを吹いているところを録音してもらい、それをサンプリングの素材にすることもあった。例えば、オープニング曲『The Deer』は、オレゴンの田舎町の丘に日が沈むある晩、野生の鹿との神秘的な出会いを語る彼女の完璧な背景として、サンプリングされ、操作され、彫刻されたセラのフルートだけで構成されている。



ヒーリング・アートに30年以上携わってきたセラの詩は、彼女の職業生活の自然で個人的な延長線上にある。ヨガ、理学療法、マッサージ、ホスピスなど、さまざまな分野で経験を積んだセラは、自身の内面を癒す旅を続けながら、人々の癒しを助けることに人生の多くを捧げてきた。


彼女の文章は、極めて個人的なものから普遍的で親しみやすいものまで、時にはひとつのフレーズで表現される。彼女のペンは、感傷的というより探究心を感じさせる方法で、人間の経験の核心を掘り下げる。


アルバムの中盤、「Faith」という曲の中で彼女はこう言っている。「信仰...それは私の心をとらえ、刻み込み/そして溶けてなくなる/私がその瞬間ごとにそれを更新し続けることを求めそうになる/私がそれを手放し、再びそれを見つけたとき、おそらくそれは深まるのだろうか?」


7曲のスポークン・ワード・トラックの制作を終えたセラとピーターは、アルバムの最後を締めくくる瞑想的なサウンドスケープを作り上げた。


アルバムの8曲目、最後のトラックであるタイトル曲『Moon in the Monastery』は、セラの魅惑的なフルート演奏を再び際立たせ、前の7曲の内容を沈めるための穏やかで夢のような空間を提供している。



Selah Broderick & Peter Broderick 『Moon in the Monastery』/ Self Release




 オレゴン州の現代音楽家、ピーター・ブロデリックはこれまで、ロンドンの''Erased Tapes''から良質な音楽をリリースし続けて来た。ピアノによるささやかなポスト・クラシカルをはじめ、くつろいだボーカルトラック、フランスのオーケストラとのコラボレーションを行うなど、その作風は多岐に渡る。ブロデリックの作風は、アンビエント、コンテンポラリー・クラシカル、インディーフォーク、というように1つのジャンルに規定されることはほとんどない。

 

ニューアルバム『Moon in the Monasteryー修道院の月』は、40分ほどのコンパクトな作品にまとめ上げられている。その内訳は、7つのスポークンワードを基調とするバリエーションと、最後に収録されている20分の静謐で瞑想的な響きを持つ超大なエンディングで構成されている。


記憶に新しいのは、昨年、ピーター・ブロデリックはフランスのオーケストラ、"Ensemble O"と協力し、アーサー・ラッセルのスコアの再構成に取り組んでいる。本作の再構成の目論見というのは、米国のチェロ奏者/現代音楽の作曲家の隠れた魅力に脚光を当てることであったが、と同時に従来のブロデリックのリリースの中でも最も大掛かりな音楽的な試みとなった。

 

なおかつ、他のミュージシャンやバンドと同じように、1つの経験が別の作品の重要なインスピレーションになる場合がある。実際、このアルバムは、前作の『Give It To The Sky』と制作時期が重なっており、制作を併行して行ったことが、音楽そのものに何らかの働きかけをしたと推測できる。


とくに、ブロデリックは、2分、3分ほどのミニマル・ミュージックを制作してきたのだったが、この数年では、より映画のスコアのように壮大なスケールを持つ作曲も行っている。前作で「ヴァリエーション」の形式に挑戦したことに加え、「Tower Of Meaning X」では、15:31の楽曲制作に取り組んでいる。つまり、変奏曲と長いランタイムを持つ曲をどのようにして自らの持つイマジネーションを駆使して組み上げていくのか、そのヒントはすでに前作で示されていたのだった。

 

もうひとつ、ピーター・ブロデリックといえば、クラシックのポピュラー版ともいえるポスト・クラシカルというジャンルに新たな風を呼び込んだことで知られている。とくに、彼が以前発表した「Eyes Closed And Traveling」では、教会の尖塔などが持つ高い天井、及び、広い空間のアンビエンスを作風に取り入れ、Max Richterに代表されるピアノによるミニマル・ミュージックに前衛的な音楽性をもたらすことに成功した。これはまた、ロンドンのレーベル”Erased Tapes”の重要な音楽的なプロダクションとなり、ゴシック様式の教会等の建築構造が持つ特殊なアンビエンスを活用したプロダクションは実際、以降のロンドンのボーカルアートを得意とする日本人の音楽家、Hatis Noitの『Aura』(Reviewを読む)というアルバムで最終的な形となった。

 

『Moon in the Monastery』は、彼の母親との共作であり、瞑想的なセラのスポークンワード、フルートの演奏をもとにして、ピーター・ブロデリックがそれらの音楽的な表現と適合させるように、アンビエント風のシークエンスやパーカッション、ピアノ、バイオリンの演奏を巧みに織り交ぜている。アルバムのプロダクションの基幹をなすのは、セラ・ブロデリックの声とフルートの演奏である。ピーターは、それらを補佐するような形でアンビエント、ミニマル音楽、アフロ・ジャズ、ニュージャズ、エクゾチック・ジャズ、ニューエイジ、民族音楽というようにおどろくほど多種多様な音楽性を散りばめている。例えれば、それは舞台芸術のようでもあり、暗転した舞台に主役が登場し、その主役の語りとともに、その場を演出する音楽が流れていく。主役は一歩たりとも舞台中央から動くことはないが、しかし、まわりを取り巻く音楽によって、着実にその物語は変化し、そして流れていき、別の異なるシーンを呼び覚ます。

 

主役は、セラ・ブロデリックの声であり、そして彼女の紡ぐ物語にあることは疑いを入れる余地がないけれど、セラのナラティヴな試みは、飽くまで音楽の端緒にすぎず、ピーターはそれらの物語を発展させるプロデューサーのごとき役割を果たしている。


プレスリリースで説明されている通り、セラは、「オレゴンの田舎町の丘に日が沈むある晩、野生の鹿との神秘的な出会い」というシーンを、スポークンワードという形で紡ぐ。声のトーンは一定であり、昂じることもなければ、打ち沈むこともない。ある意味では、語られるものに対してきわめて従属的な役割を担いながら、言葉の持つ力によって、一連の物語を淡々と紡いでいくのだ。


シャーウッド・アンダソンの『ワインズバーグ・オハイオ』の米国の良き時代への懐古的なロマンチズムなのか、それとも、『ベルリン 天使の詩』で知られるペーター・ハントケの『反復』における旧ユーゴスラビア時代のスロヴェニアの感覚的な回想の手法に基づくスポークンワードなのか、はたまた、アーノルト・シェーンベルクの「グレの歌」の原始的なミュージカルにも似た前衛性なのか。いずれにしても、それは語られる対象物に関しての多大なる敬意が含まれ、それはまた、自己という得難い存在と相対する様々な現象に対する深い尊崇の念が抱かれていることに気がつく。

 

当初、セラ・ブロデリックは、オレゴンの、のどかな町並み、自然の景物が持つ神秘、動物との出会いといったものに意識を向けるが、それらの言葉の流れは、必ずしも、現象的な事物に即した詩にとどまることはない。日が、一日、そしてまた、一日と過ぎていくごとに、外的な現象に即しながら、内面の感覚が徐々に変化していく様子を「詩」という形で、克明にとどめている。


セラ・ブロデリックの内的な観察は真実である。それは、自然や事実に即しているともいうべきか、自分の感情に逆らわず、いつも忠実であるべく試みる。彼女は明るい正の感覚から、それとは正反対に、目をそむけたくなるような内面の負の感覚の微細な揺れ動きを、言葉としてアウトプットする。


その感覚は驚くほど明晰であり、感情を言葉にした記録のようであり、それとともに、現代詩やラップのような意味を帯びる瞬間もある。内的な感情が、刻一刻と変遷していく様子がスポークンワードから如実に伝わってくる。そして、それらの言葉、物語、感情の記録を引き立て芸術的な高みに引き上げているのが、他でもない、彼女の息子のピーター・ブロデリックである。彼は、アンビエントを基調とするシンセのシークエンスを母の声の背後に配置し、それらの枠組みを念入りに作り上げた上で、巧みなフルートの演奏を変幻自在に散りばめている。サンプリングの手法が取り入れられているのか、それとも、リアルタイムのレコーディングがおこなわれているのかまでは定かではないが、言葉と音楽は驚くほどスムーズに、緩やかに過ぎ去っていく。

 

ピーター・ブロデリックの作風としてはきわめて珍しいことであるが、アルバムの序盤の収録曲「I Am」では、民族音楽の影響が反映されている。


一例としては、''Gondwana Records''を主催するマンチェスターのトランペット奏者、Matthew Halsall(マシュー・ハルソール)が最新アルバム『An Ever Changing View』において示した、民族音楽とジャズの融合を、最終的にIDM(エレクトロニック)と結びつけた試みに近いものがある。


アフリカのカリンバの打楽器の色彩的な音階を散りばめることにより、当初、オレゴンの丘で始まったと思われる舞台がすぐさま立ち消えて、それとは全然別の見知らぬ土地に移ろい変わったような錯覚を覚える。


そして、カリンバの打楽器的な音響効果を与えることにより、セラ・ブロデリックのスポークンワードは、力強さと説得力を帯びる。それは、ニューエイジやヒーリングの範疇にある音楽手法とも取れるだろうし、ニュージャズやエキゾチック・ジャズの延長線上にある新しい試みであるとも解せる。 

 

 

 

少なくとも、ジャンルの中に収めるという考えはおろか、クロスオーバーという考えすら制作者の念頭にないように思えるが、それこそが本作の音楽を面白くしている要因でもある。その他にも旧来のブロデリックが得意とするアンビエントの手法は、序盤の収録曲で、コンテンポラリー・クラシック/ポスト・クラシカルという制作者のもうひとつの主要な音楽性と合致している。


ピーター・ブロデリックは、バイオリンのサンプリング/プリセットを元にして、縦方向でもなく、横方向でもない、斜めの方向の音符を重層的に散りばめながら、イタリアのバロックや中世ヨーロッパの宗教音楽をはじめとする「祈りの音楽」に頻々に見受けられる「敬虔な響き」を探求しようとしている。上記のヨーロッパの教会音楽は、押し並べて、演奏者の上に「崇高な神を置く」という考えに基づいているが、不思議なことに、「Mother」において、セラ・ブロデリックの語りの上を行くように、ヴァイオリンの響きがカウンターポイントの流れを緻密に構築しているのである。


同じように、Matthew Halsall(マシュー・ハルソール)が最新作で示したようなアフロジャズとオーガニックな響きを持つIDMの融合は、続く「Faith」にも見出すことができる。ここではセラのトランペットのような芳醇な響きを持つフルートの演奏、ジャズ的な音楽の影響を与えるスポークンワード、シンセのプリセットによるバイオリンのレガート、さらに、奥行きを感じさせるくつろいだアンビエントのシークエンスという、複合的な要素が綿密に折り重なることで、モダン・ラップのようなスタイリッシュな響きを持ち合わせることもある。


シンセのシークエンスが徐々にフルートの演奏を引き立てるかのように、雰囲気や空気感を巧みに演出し、次いで、最終的にはセラ・ブロデリックの伸びやかなフルートの演奏が音像の向こうに、ぼうっと浮かび上がてくる。アフロ・ジャズを基調とした彼女の演奏が神妙でミステリアスな響きを持つことは言うまでもないが、どころか、アウトロにかけて現実的な空間とは異なる何かしら神秘的な領域がその向こうからおぼろげに立ち上ってくるような感覚すらある。

 

アルバムの序盤は温和な響きを持つ音楽が主要な作風となっているが、中盤ではそれとは対象的に、Jan Garbarek(ヤン・ガルバレク)の名曲「Rites」を思わせるような独特なテンションを持つ音楽が展開される。

 

続く「Cut」では、映画音楽のオリジナルスコアの手法を用い、緊張感のある独特なアンビエンスを呼び覚ます。イントロのセンテンスが放たれるやいなや、空間の雰囲気はダークな緊迫感を帯びる。それは形而上の内的な痛みをひとつの起点にし、スポークンワードが流れていくごとに、自らの得がたい心の痛みの源泉へと迫ろうという、フロイト、ユング的な心理学上の試みとも解せる。それらはピーターによるノイズ、ドローン的なアルバムの序盤の収録曲とは全く対蹠的に、内的な歪みや亀裂、軋轢を表したかのような鋭いシークエンスによって強調される。 

 

Tim Hecker(ティム・ヘッカー)が『No Highs』(Reviewを読む)で示した「ダーク・ドローン」とも称すべき音楽の流れの上をセラ・ブロデリックの声が宙を舞い、その着地点を見失うかのように、どこかに跡形もなく消え果てる。そして、それらのドローンによる持続音が最も緊張感を帯びた瞬間、突如そのノイズは立ち消えてしまい、無音の空白の空間が出現する。そして、急転直下の曲展開は、続く「静寂」の導入部分、イントロダクション代わりとなっている。


「Silence」では、対象的に、神秘的なサウンドスケープが立ち上る。アンビエントの範疇にある曲であるが、セラの声は、旧来のアンビエントの最も前衛的な側面を表し、なおかつこの音楽の源泉に迫ろうとしている。2つの方向からのアプローチによる音楽がそのもの以上の崇高さがあり、心に潤いや癒やしをもたらす瞬間すらあるのは、セラ・ブロデリックの詩が自然に対する敬意に充ちていて、また、その中には感謝の念が余すところなく示されているからである。


続く「True Voice」では、精妙な感覚が立ち上り、声の表現を介して、その感覚がしばらく維持される。ピーター・ブロデリックの旧来のミニマリズムに根ざしたピアノの倍音を生かした演奏が曲の表情や印象を美麗にしている。これは『Das Bach Der Klange』において、現代音楽家のHerbert Henck(ヘルベルト・ヘンク)がもたらしたミニマル・ピアノの影響下にある演奏法ーー短い楽節の反復による倍音の強化ーーの範疇にある音楽手法と言えるかもしれない。


20分以上に及ぶ、アルバムのクローズ曲「Moon in the Monasteryー修道院の月」は、ニューエイジ/アンビエントの延長線上にある音楽的な手法が用いられている。一見すると、この曲は、さほど前衛的な試みではないように思える。しかし、ブロデリックは、パーカションの倍音の響きの前衛性を追求することで、終曲を単なる贋造物ではない、唯一無二の作風たらしめている。


その内側に、チベット、中近東の祈りが込められていることは、チベット・ボウル等の特殊な打楽器が取り入れられることを見れば瞭然である。なおかつ、クローズ曲は、ドローン・アンビエントの範疇にある、現代音楽/実験音楽としての最新の試みがなされていると推察される。しかし、その響きの中には真心があり、豊かな感情性が含まれている。取りも直さずそれは、音楽に対する畏敬なのであり、自然や文化全般、自らを取り巻く万物に対する敬意にほかならない。これらの他の事物に対する畏れの念は、最終的には、感謝や愛という、人間が持ちうる最高の美へと転化される。

 

音楽とは、そもそも内的な感情の表出にほかならないが、驚くべきことに、これらは先週紹介したPACKSとほとんど同じように、「平均的な空間以上の場所」に聞き手を導く力を具えている。抽象的なアンビエント、フルート、スポークンワード、鳥の声、ベル/パーカッションの倍音、微分音が重層的に連なる中、タイトルが示す通り、幻想的な情景がどこからともなく立ち上がってくる。その幻惑の先には、音楽そのものが持つ、最も神秘的で崇高な瞬間がもたらされる。それは一貫して、教会のミサの賛美歌のパイプ・オルガンのような響きを持つ、20分に及ぶ通奏低音と持続音の神聖な響きにより導かれる。極限まで引き伸ばされる重厚な持続音は、最終的に、単なる幻想や幻惑の領域を超越し、やがて「真善美」と呼ばれる宇宙の調和に到達する。

 

 



95/100






Selah Broderick & Peter Broderick 『Moon in the Monastery』は自主制作盤として発売中です。アルバムのご購入はこちら




先週のWeekly Music Featureは以下よりお読みください:
 




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EXPERIMENTAL MUSIC : 2023: 今年の実験音楽の注目作 BEST 10

 


ノア・ワイマンによるプロジェクトーーRunnerは、基本的にはAlex Gのように現代的なアプローチを想起させるオルトロック/ローファイに根ざした音楽を制作することで知られている。昨年を振り返ってみると、前作『Like Dying Stars, We're Reaching Out』は、アーティストのローファイなロックに対する愛着が余すところなく表現されたアルバムだった。(Reviewを読む)

 

しかし、今回、ワイマンは、インディーロック・ミュージックから離れ、アンビエントを中心としたアルバム『Starsdust』の制作を発表した。本作は、2月2日にRun for Coverからリリースされる。

 

2023年の『Like Dying Stars, We're Reaching Out』の続編となるこのアルバムは、先行シングル「ten」と「eleven」を含む全12曲が収録される。レーベルのプレスリリースによると、本作は既存の楽曲の再構成が中心となっていて、カットアップ・コラージュの手法を用いて制作されたという。

 

特に、「ten」は、電子音楽のプロデューサーとして見事な手腕が発揮されている。プロのエレクトロニック・ミュージシャンが聴いたら、「彼は本当にロックミュージシャンなのか!?」と驚くに違いない。

 

『スターダスト』は、ノア・ワインマンの創造的な落ち着きのなさに根ざしている。曲のスケッチは、ツアー中の移動時間を退屈させないための方法として始まったが、アキレス腱に大怪我を負った後、ワインマンは家に閉じこもりがちになり、新しいプロジェクトのアドヴェンチャーに飛び込んで行った。『ダイイング・スターズ』同様、『ウィ・アー・リーチング・アウト』も新譜制作のための素材となり、美しくも家庭的なインディー・フォークと、より構築的なソングライティングは、『スターダスト』の夢のような雰囲気に大きく変化をもたらした。

 

「このアルバムの制作中、私は自分自身にひとつのルールを課した。アルバムに収録されているすべてのサウンドは、『Like Dying Stars,We're Reaching Out』から再利用した。ピッチを変えたり、反転させたり、伸ばしたり、カットアップすることは許されたが、すべては前作ですでに録音されたものから始めなければならなかった。その結果、魅力的で親しみやすく、かつRunnerがこれまでにリリースしたものとは違う、没入感のある楽曲群が生まれたんだ」


2023年の春、アキレス腱の断裂とその後の手術の療養のため、ノア・ワイマンはほとんど寝たきりの状態で残りのアルバムを作った。それらの制約にぴったり合ったプロジェクトだったようだ。


「これらの曲を作る最初のプロセスは、自分自身を既存のやり方から少し引き離す試みだった。ある曲のベース、別の曲のドラム、3つ目の曲のバンジョーやピアノのループなど、曲のステムを(ある意味)ランダムに選び、それらを組み合わせていく。最初はたいてい混沌としたものになったが、アルバムの楽しみは、最初の不協和音をふるいにかけ、曲の核心を見つけ、それを追求し続けることだった。多くの試みが頓挫したけれど、ここに紹介する12曲は、私にとって最も実りある試みだったと思うんだ」


「このアルバムで、自分の枠を飛び出すことはエキサイティングで、恐ろしく、やりがいのあることだった。アルバムの最後の仕上げを手伝ってくれたマット・エモンソンに感謝したい。マックス・ミューラーには、彼の洞察力に感謝している。イーサン、トム、アンドリュー、そしれから、ジェフ。そして、『Like Dying Stars, We're Reaching Out』に参加してくれたすべてのプレイヤーたち(サム、エヴァン、ジョーダン、ベン・M、ベン・W、マディ)にも感謝したい」

 

 



 





Runner  『Stardust』


Label: Run For Cover

Release: 2024/02/02

 

Pre-order:

 

https://runforcoverrecords.com/products/runnner-stardust 


 James Bernard & anthéne  「Soft Octaves」


 

Label: Past Inside the Present

Release: 2023/12/31

 

 

 

Review


 

James Bernard(ジェイムズ・バーナード)は、カナダ/トロントを拠点に活動するアンビエントアーティストで、多数のバック・カタログを擁している。 今作でコラボレーターとして参加したanthéne(Brad Deschamps)は、トロントのレーベル、Polar Seasの主宰者である。


ジェイムズ・バーナードによると、『Soft Octaves』の主なインスピレーションは、私たちの「不確実性と希望の時代」にあるという。ヘッドホンをつければ、別世界へと誘われ、カラフルで想像力豊かな地平線を発見することができる。ジェームズ・バーナードはそれを以下のように表現している。


窓のシェードの向こうの燐光が最初にまぶたを乱す、その限界の瞬間を特定するのは難しい。

 

あるときは、千尋の夢の最後の数瞬間の、長い尾を引く部分的な記憶であり、またあるときは、不安であれ熱望であれ、その後に続くものを予期するときの抑えがたい下降するため息である。あなたの無意識の不在の間に何世紀もの時間が流れている。


このアルバムには、パンフルートのような音色を用いたアブストラクト・アンビエントを主体とする楽曲が際立つ。その始まりとなる「Point Of Departure」は、超大な、あるいは部分的な夢幻への入り口を垣間見るかのようでもある。しかし、アンビエントの手法としては、それほど新奇ではないけれども、アナログシンセにより描出されるサウンドスケープには、ほのかな温かみがある。そしてその上に薄くギターを被せることにより、心地よい空間性を提供している。

 

「Flow State」でも温和な音像が続く。(アナログ)ディレイを用いたシンセの反復的なパッセージの上にアンビエント・パッドが重ねられる。 それらの重層的な音の横向きの流れは、やはりオープニングと同様に、夢想的なアトモスフィアを漂わせている。夢想性と論理性を併せ持つ奇妙な曲のコンセプトは、聞き手に対して幻想と現実の狭間に居ることを促そうとする。その上にギターラインが薄く重ねられるが、これが微妙に波の上に揺られるような感覚をもたらす。

 

 「Saudade」ではオープニングと同様に、パンフルートをもとにしたアンビエントの音像にノイズを付け加えている。アルバムの冒頭の三曲に比べると、ダーク・アンビエントの雰囲気がある。しかしギターラインが加わると、その印象性が面白いように変化していき、神妙な音像空間が出現する。それらの空気感は徐々に精妙なウェイブを形作り、聞き手の心に平安をもたらす。

 

「Trembling House」はリバーブ・ギターで始まり、その後、ロサンゼルスのアンビエント・プロデューサー、marine eyesのボーカルが加わる。マリン・アイズは、今年発表した「idyll (Extented Version)」の中で、カルフォルニアの太陽や海岸を思わせるオーガニックなアンビエントを制作していて、この曲でも、自然味溢れるボーカルを披露している。器楽的なアイズのボーカルはディレイ・エフェクトの効果の中にあって、安らぎと癒やしの感覚をもたらしている。

 

「Overcast」は叙情的なアンビエントで、イントロの精妙な雰囲気からノイズ/ドローンに近い前衛的な作風へと変化していく。しかし、この曲は上記の形式の主要な作風を踏襲してはいるが、かすかな感情性を読み取ることが出来る。途中に散りばめられる金属的なパーカッションの響きは、制作者が述べるように、夢幻の断片性、あるいは、それとは逆の意識の中にある無限性を示しているのだろうか。当初は極小のフレーズで始まるが、以後、極大のなにかへと繋がっている。サウンドスケープを想起することも不可能ではないが、それは現実的な光景というよりも内的な宇宙、もしくは、意識下や潜在意識下にある宇宙が表現されているように思える。


続く「Soft Octave」もオーガニックな質感を持つアンビエント。その中には雨の音を思わせるかすかなノイズ、そして大気の穏やかな流れのようなものがシンセで表現されている。聞き手は小さな枠組みから離れ、それとは対極にある無限の領域へと近寄る手立てを得る。かすかなグリッチノイズは、金管楽器のような音響性を持つシンセのフレーズにより膨らんでいき、聞き手のイメージに訴えかけようとする。核心に向かうのではなく、核心から次第に離れていこうとする。音像空間は広がりを増していき、ややノイジーなものとなるが、最後には静寂が訪れる。

 

「Cortage」は、Tim  Heckerが表現していたようなアブストラクトなアンビエントの範疇にある。しかし、それは不可視の無限の中を揺らめくかのようである。暗いとも明るいともつかないイントロからシンセのパッドが拡大したり、それとは正反対に縮小していったりする。フランス語では、「Cortage」というのは「葬列」とか「行進」という意味があるらしい。ぼんやりとした霧の中を彷徨い、その先にかすかに見える人々の影を捉えるような不可思議な感覚に満ちている。シネマティックなアンビエントともいえるが、傑出した映画のサウンドトラックと同じように、独立した音楽であり、イメージを喚起する誘引力を兼ね備えていることが分かる。

 

「Renascene」は、Chihei Hatakeyamaが得意とするアブストラクトアンビエントを想起させる。精妙な音の粒子やその流れがどのようなウェイブを形成していくのか、そのプロセスをはっきり捉えることが出来るはずである。その心地よい空間性は、現代的なアンビエントの範疇にある。しかし、曲の最後では、グリッチ/ノイズの技法を用い、その中にカオスをもたらそうとしている。表向きには静謐な印象のあるアンビエントミュージックがそれとは逆の雑音という要素と掛け合わされることで、今までになかったタイプの前衛音楽の潮流ができつつあるようだ。

 

『Soft Octaves』のクライマックスを飾る「Summation」では、James Bernard、anthéneの特異な表現性を再確認出来る。


アルバムのオープニングと同じように、夢想的、あるいは無限的な概念性を込めた抽象的なアンビエントは、ニューヨークのRafael Anton Irissari(ラファエル・アントン・イリサーリ)の主要作品に見受けられる「ダーク・アンビエント」とも称されるゴシック調の荘厳な雰囲気があり、表向きの癒やしの感覚とは別の側面を示している。この曲は、威厳や迫力に満ちあふれている。


ジェームズ・バーナードが語るように、本作は、シュールレアリスティックな形而上の無限性が刻印され、クローズ曲が鳴り止んだのちも、アルバムそのものが閉じていかないで、不確実で規定し得ない世界がその先に続いているように思えてくる。希望……。それは次にやって来るものではなく、私たちが見落としていた、すでにそこに存在していた何かなのかもしれない。


 

 

90/100

 

 

 

 



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カルフォルニアのエレクトロニックプロデューサー、Marina Eyesがニューシングルをリリースしました。前作アルバムでは西海岸の海岸の風景をモチーフにした安らいだアンビエントを制作しています。


今回のニューシングル「Half Dreaming」は現実の光景にある幻想性に焦点を絞ったとプレスリリースには書かれている。「私は先月、カリフォルニア南部に大雨が降ったときに『半分夢を見ている』と書いた。この一度きりのシングルは、私の声の小さなうねり、オスモーズ・シンセ、フィールド・レコーディングだけを使った、私にとってちょっと新しい静かな方向性の曲だ」


「そして、この曲を彼の最近のディープ・ブレックファスト・ミックスでシェアしてくれた夫のジェイムズにも感謝します。そして、今後数ヶ月のうちに、さらに多くの音楽がリリースされる予定です(Marine Eyes #3を含む)! 愛を込めて、シンシア」






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Chirsrtina Vanzou/ John Also Benett / Κ​λ​ί​μ​α (Klima)




Label: Editions Basilic

Release: 2023/ 9/29

 

 

Review

 

CVとJABによる『Κ​λ​ί​μ​α (Klima)』は、「Christina Vanzou,Michael Harrison,and John Also Benett」『No.5』に続くフルアルバム。全2作のインドのラーガ音楽、さらにフィールド・レコーディングを交えた実験音楽の延長線上にある作風となっている。先日、デュオは、英国で初めてジブリ作品を上映したことで知られるロンドンのバービガン・センターでライブを開催した。

 

デュオとしてのライブでは、ハードウェア・シンセやフルートの演奏を取り入れて、実験音楽とジャズ、エレクトロニックの融合をライブ空間で披露しているようだ。また、JABは、ニューヨークのRVNGからアルバムを発表しているSatomimagaeさんの友人でもあるとのことである。

 

昨年、2作のフルレングスを発表しているCVではあるが、最新作については、それ以前に制作が開始されたという。2021年、ポルトガルのブラガにある、ユネスコの世界遺産、”ボン・ジェスス・ド・モンテ”での公演に招かれたことをきっかけに、『Κλίμα』の音楽は、以後の2年間、ライブ実験、周期的なスタジオ・セッション、テネリフェ島のアンビエンスへの旅を通じて、作品の完成度を高めていった。アルバムの核心をなす物語が生まれたのは、火山島でのこと。風景を彩る極端に異なる微気候の中で、1ヵ月にわたってレコーディングが行われた。砂漠から熱帯雨林へと移り変わるCV & JABの創造性の閃きは、10曲にわたって、作品に浸透する外界と内界の抽象的なオーディオ・ガイドとして呼び起こされる、とプレスリリースでは説明されている。

 

このアルバムの実際の音楽の印象については、ブライアン・イーノのコラボレーターであり、アンビエント音楽の定義に一役買った、LAの現代音楽家、Harold Budd(ハロルド・バッド)に近いものである。


ピアノ・アンビエントや、フィールド・レコーディングを交えた実験的なコラージュ、そして、 アフロ・ジャズ/スピリチュアル・ジャズを想起させるフルートの伸びやかな演奏、さらには、「Christina Vanzou,Michael Harrison,and John Also Benett」で見受けられたインドのラーガ音楽の微分音を取り入れたアプローチ、それに加え、構造学的な音作りやCVのアンビエントの主な性質を形成するアートへの傾倒という観点も見過ごすことは出来ない。デュオは、これまでの豊富な制作経験を通して培ってきた音楽的な美学を組み合わせて、構造的でありながら感覚的でもある、具象芸術とも抽象芸術ともつかない、アンビバレントな音像空間を造出している。

 

#1「Κ​λ​ί​μ​α (Klima)」#4「Lands of Permanent Mist」の2曲は、これまでのCVの主要な音楽性の一端を担ってきたピアノ・アンビエントの形でアウトプットされている。

 

前者は、アルペジオを中心としたアイディア性と閃きに満ちた短い前奏曲であり、後者は、テネリフェ島の空気感をハードウェア・シンセサイザーのシークエンスとピアノで表現し、抽象的なアンビエントを作り出す。


「Lands of Permanent Mist」は、ピアノの弦をディレイてリバーブで空間的に処理し、音像をプリペイド・ピアノのように変化させる。さらに、デチューンを掛け、ピアノの倍音の音響性の可能性を広げる。上記2曲に関しては、CVの作曲性の中に組み込まれる癒やしの質感を擁し、リスナーの五感に訴えかけようとする。まるでそれは音楽が外側に置かれたものとして見做すのではなく、人間の聴覚と直にリンクさせる試みのようでもある。

 

同様の手法を用いながらも、こういった従来の安らいだピアノ・アンビエントと対極に位置するのが、#3「Messengers of The Rains」となる。この曲ではCVの作風としては珍しくゴシック的な気風が取り入れられ、ミニマル・ミュージックと結びつけられる。その中に、ボーカルのコラージュを取りいれ、『Biohazard』に登場するゾンビのようなボイスを作り出すことで、ホラー映画や、フランシス・ベーコンの中後期の絵画に見られる、近寄りがたく、不気味な印象性を生み出す。


一見したところ、#1、#4におけるアンビエントの癒やしの感覚が、アルバム全体の主要な印象を形成しているように思えるが、こういったワイアードな感性を持つ楽曲がその合間に組み込まれると、デュオのもう一つの特徴である前衛性の気風が表向きの印象を押しのけて矢面に押し出され、美的な感覚と醜悪な感覚が絶えず、せめぎ合うかのようなシュールな感覚を覚えさせる時がある。これらのコントラストという西洋美術史の基礎を形成する感覚は、アルバムの中で動きを持った音楽、及び構造的な音楽という印象をもたらす。

 

ボーカルのサンプリングのコラージュの手法は、#5「Jetsteam」にも見いだせる。ラスコーの壁画を思わせる原始的な芸術への傾倒や、実際に洞窟の中で響き渡るようなボーカルの音響性は、前作アルバム『No.5』で示された作風であるが、それらの感覚を原始性の中に留めておくのではなく、モダンな印象を持つシンセのシークエンスやピアノの断片的な演奏を掛け合わせ、オリジナリティ溢れる音楽性を確立している。


ここにも、CVとJABの美的な感覚が抽象的に示されている。曲の終盤においては、ディレイや逆再生の手法の前衛性の中に突如、坂本龍一が用いたような和風の旋法を用いたピアノのフレーズが浮かび上がる。従来のデュオのコンポジションと同様、立体的な音作りを意識した音楽であり、「空間芸術としてのアンビエント」という新鮮な手法が示されている。やがて、タイトルにもある「ジェット・ストリーム」をシンセサイザーで具象的に表現したシークエンスが織り交ぜられ、アンビエントの重要な構成要素であるサウンドスケープを呼び起こしている。

 

このアルバムをより良く楽しむためには、CVのピアノやシンセの音楽的な技法を熟知しておく必要があるかもしれないが、もうひとつ、本作の主要なイメージを形成しているのが、JABのフルートである。#6「Fields Of Aloe Vera」では、海辺の風景を思わせる情景へと音楽の舞台は移ろっていく。


そこに、ニューエイジ/スピリチュアル・ジャズを多分に意識したJABのフルートのソロの演奏が加わるや否や、アルバムの表向きのイメージは開けたジャングルへと変遷を辿ってゆく。しかし、JABの演奏は、Jon Hassel、Arve Henriksenさながらに神妙で、アンビエントに近い癒やしの質感に溢れている。トリルのような技巧を凝らした前衛的な演奏は見られないが、JABのフルートの演奏、及び、オーバーダビングは、水音のサンプリングと不思議と合致しており、広々とした安らぎや癒しを感じさせる。

 

そういった不可思議なスピリチュアルな感覚に根ざした実験音楽の片鱗は、他にも、フィールド・レコーディングの前衛性を徹底して打ち出した#8「Take The Hot Route」、JABのジャズに触発されたアンビエントとの融合体である「Pottery Fragments」で分かりやすく示されている。


CV、JABの作曲技法や音楽的なインスピレーションを余すところなく凝縮した『Κ​λ​ί​μ​α (Klima)』。これは、文明社会が見落として来た、音楽を通じて繰り広げられる原初的な人間の感覚への親和、あるいは、その感覚への回帰であり、また言うなれば、五感の旅を介しての魂の里帰りなのである。

 

 

 

85/100

 




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