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©︎Duglas Pulman

Carolineは、ロンドンのエクスペリメンタルロックバンドで、セルフタイトルのデビューアルバム『Caroline』を、今年の2月25日にRogh Tradeからリリースしました。

 

キャロラインは、このレーベルの主宰者ジェフ・トラヴィスが絶賛したという八人組の大所帯のバンド。そして、初の北米ツアーを間近に控えているバンドは、『A Softer Focus』に収録されているClaire Rousay(クレア・ラウジー)の「Peak Chroma」のカヴァーを公開しました。

 

クレア・ラウジーは、テキサス州アントニオ出身のドラム演奏を中心とした実験音楽家です。これまで、米国のミッドウェスト・エモからの影響を公言しているキャロラインのもう一つの音楽性の源泉を伺わせるカヴァーとなっています。近年、米国のマニアックなインディーロックや実験音楽から強い触発を受けるUKのミュージシャンが増えてきているのがかなり面白いですね。


「Claire Rousayの作品は、過去2年間、私たちのインスピレーションの源でした」とバンドは声明で共有し、次のように続けました。

 

「この”peak chroma”のバージョンをレコーディングすることは、偶発的で即興的なものに対する私たちの共通のこだわりを探求する方法となったのです。

 

前半は、私たちのスタジオで演奏された即興演奏のコラージュ(サックスは、友人のネイサン・ピゴットが演奏している)で、後半は、8月にサセックスにあるキャスパーの祖父の家に滞在した際、非常に暑い3日間を通じて録音された。祖父はその直前に亡くなったので、家は空っぽで寂しかった。その家は、海のすぐそばにあり、私たちはその海で毎朝のように泳いでいた」

 

 

Blue Bendy


サウスロンドンから彗星の如く現れたセクステットのインディー・ロックバンド、Blue Bendyが4曲収録のデビューEP「Motorbike」に続き、EPカット「Clean is Core」のPVを公開しました。下記よりご覧下さい。

 

ブルー・ベンディは、フォーク/トラッドからクラウト・ロック、ポストロック、エレクトロを吸収したいかにもサウスロンドンのバンドらしい雑食性を持つ。ヴォーカルのメロディーやムードは、ポストパンクのテイストと同じ部類に入りつつも、サウンドは更に愉快さと奇妙さが入り混じったアートロックを演出する。BCNRやCarolineに近い実験的なロックバンドといえよう。


デビューEPからのシングル・カット「Clean is core」は、純粋さについて書かれた曲だという。「クリーンで、信念に忠実であるという考え ・・・それがもう本当に存在するのならね。これは何度も言われてきたことだけど、パンチラインのあるリリックには楽しいトピックだね」


3日前に公開されたMVについて、ギタリストのハリソンは、「ブルーベンディがCGがはびこる風景/ナインティーズレイヴを飛びまわりながらカラオケを披露している...お楽しみに」と語っている。

 

デビューEP「Motorbike」は今年2月11日にリリースされています。ご視聴はこちらからどうぞ。


 

Black Midi Alba Jefferson


今年、来日公演を控えているロンドンのポストロックバンド、black midiが、次作『Hellfire』からのセカンドシングル「Eat Men Eat」を公開した。この曲には、ファンが投稿した50以上の録音と、Demi García Sabatのパーカッションがレイヤー化されています。Maxim Kellyが監督したこの曲のビデオは、以下からチェックできます。


「Eat Men Eat」は、2021年にリリースされたアルバム『Cavalcade』のトラック「Diamond Stuff」で初めて登場したThe Red River Mining Companyにちなんだものです。バンドのキャメロン・ピクトンは、ストーリーコンセプトに基づいて制作された新曲について以下のように説明しています。


この物語は、砂漠で、行方不明の友人を必死に探す2人の男から始まる。彼らの探求は、その地域の天然資源が乏しいにもかかわらず、さらに奇妙なホストが彼らを歓迎するためにその扉を開く奇妙な鉱山施設に彼らを導く。


その夜、仲間の姿が見えない中、鉱山の気難しい船長によって大規模な宴会が開かれ、家族の元へ帰る前の最後の夜だからと、皆を喜ばせる長い演説が行われる。主人公たちは、疑惑の念を抱きつつも、大食いのフリをして、可能な限り食事をとらない。しかし、残念なことに、それさえも十分ではないことに気づく。夜になって、彼らは隠れ、労働者たちが昏睡状態になると、船長に監督された監視員たちは、彼らの毒入りの胃袋を汲み上げる準備をする。この鉱山の目的は、この地方で愛飲されている血のように赤いワインを作るために必要な人間の胃酸を採取することであった。


陰謀が明らかになり、仲間もいないことを知ったパートナーたちは、この施設を破壊することを決意する。しかし、一人の男が毒の軽い影響を受け、胃酸が大量に分泌されるようになったため、作業が中断された。胸が泡立つと、彼はパートナーに最後の別れを告げ、もう一人の男が一人で力仕事をすることになる。


彼は成功し、二人が腕を組んで逃げ出すと、燃えさかる炎の中から悪魔のキャプテンが現れ、二人に酸欠地獄の呪いをかける。しかし、二人は心配する必要はない。なぜなら、二人は必ずや英雄として故郷に帰ってくるからだ。


Black Midiの次のアルバム『Hellfire』は、Rough Tradeから7月15日にリリースされる。「Eat Men Eat」は、リードシングル「Welcome to Hell」に続く作品となります。


 

Ganser

 

2018年にデビューアルバム「Odd Talk」をリリースした、シカゴのポスト・パンクバンド、Ganserは、10月5日に新しいEP「Nothing You Do Matters」のリリースを発表しました。



バンドは、2020年の「Just Look At That Sky」でMia Clarkeとコラボレートした後、LiarsのAngus Andrewと共に、この新作EPのレコーディングに取り掛かっています。

 

EPのオープニングトラックとして収録されるのは、「People Watching」です。この先行シングルのリリースと同時に到着したビデオは、ゲインズとキーボード奏者/ボーカリストのナディア・ガンファロが監督を務め、「Star Wars」の実写ドラマシリーズのマンダロリアンで導入されたLED背景ディスプレイのシステムが取り入れられています。

 

 

 

 

今週末、Ganserはシカゴで公演を控え、5月30日、31日にEmpty Bottleでのライブを行います。 

 

 

「People Watching」

 

Listen/Stream On bandcamp



Caroline



キャロラインは、ロンドンを拠点に活動する八人組のロックバンド。ブラック・ミディに続いて、ラフ・トレードが満を持してデビューへと導いた”超ド級”の新鋭ロックバンドの登場である。


デビューアルバムのリリースこそ2022年となったものの、バンドとしての歴史は意外にも古く、2017年のはじめ、Jasoer Llewellyn,Mike 0’Malley,Casper Hughesを中心に結成された。当初、毎週のように即興演奏を行っていたが、後になって、バンドとして活動を開始した。

 

キャロラインは、1990年代のアメリカン・フットボールをはじめとするミッドウェスト・エモ、ガスター・デル・ソルのようなシカゴ音響派、アパラチア・フォーク、ミニマリストのクラシック音楽、ダンスミュージック、実に多種多様な音楽から影響を受けている。ミニマリストに対する傾倒を見せるあたりは、Black Country,New Roadと通じるものがある。イギリスの音楽メディアは、このバンドの音楽の説明を行う上で、アメリカ・シカゴのスリント、あるいはスコットランドのモグワイを比較対象に出している。


結成当初、明確なプロジェクト名を冠さず、一年間、謂わば、即興演奏を行っていた。小さなフレーズの演奏の反復を何度も繰り返すことにより、楽曲を、分解、再構築し、幾度も楽曲を洗練させて、音楽性の精度を高めていった。その後、ステージメンバーを徐々に増加させていき、2018年になって、初めて、バンドとしてデビューライブを行った。キャロラインは2022年までに、シングル作品を五作リリースしている。ブラック・ミディに続いて、名門ラフ・トレードがただならぬ期待を込めてミュージック・シーンに送り込む新進気鋭のロックバンドである。





「Caroline」 Rough Trade



 

caroline [国内流通仕様盤CD / 解説書封入] (RT0150CDJP)



Tracklisting


1.Dark Blue

2.Good Morning (Red)

3.desperately

4.IWR

5.messen #7

6.Engine(Eavesdropping)

7.hurtle

8.Skydiving onto the library roof

9.zlich

10.Natural death



さて、今週の一枚として紹介させていただくのは、ラフ・トレードからの大型新人、Carolineの2月25日にリリースされたデビューアルバム「Dark Blue」です。

 

なぜ、キャロラインがデビュー前からイギリスのメディアを中心に大きな話題を呼んでいたのかについては、ラフ・トレードの創設者であるジェフ・トラヴィスがこのロックバンドのサウンドに惚れ込んでいたからです。

 

今回のデビュー作「Dark Blue」において、キャロラインは、ジェフ・トラビスの期待をはるかに上回る音楽を提示しています。ブラック・ミディ、ランカムの作品を手掛けたジョン・スパッド・マーフィーをエンジニアに招き、納屋、メンバーの寝室、リビングルーム、プール、と、様々な場所で録音を行ない、アパラチア・フォーク、エモ、実験音楽、電子音楽、ロック、様々なアプローチを介して、音響ーアンビエンスという側面から音楽という概念を捉え直しています。

 

そして、キャロラインの「Dark Blue」がどう画期的なのかについては、レコーディングで、リバーヴやディレイといったエフェクトを使用せず、上記のような、様々な場所の空間のアンビエンスを活用しながら、ナチュラルな音の質感、そして、音が消え去った瞬間を、楽曲の中で上手く生かしていることに尽きるでしょう。これはきっと、現代のマスタリングにおける演出過剰な音楽が氾濫する中、自然な音が何であるのかを忘れてしまった私達に、新たな発見をもたらしてくれるはずです。

 

この作品では、デビューアルバムらしからぬ落ち着き、バンドとしての深い瞑想性が感じられ、八人という大編成のバンドアンサンブルらしい、緻密な構成をなす楽曲が生み出されています。ギター、ベース、パーカッション、チェロ、バイオリン、複数の楽器が縦横無尽に実験的な音を紡ぎ出し、和音だけではなく、不協和音の領域に踏み入れる場合もあり、謂わば、演奏としてのスリリングさを絶妙なコンビネーションによって生み出しています。


また、キャロラインのバンドアンサンブルのアプローチは、ロック・バンドというよりかは、オーケストラの室内楽に近いものです。

 

彼らは、歪んだディストーションではなく、クリーントーンのギターの柔らかな音色を活かし、新鮮な感覚を音楽性にもたらし、さながら豊かな緑溢れる風景に間近に相対するようなおだやかな情感を提示してくれています。


このあたりの抒情性については、アメリカン・フットボールを筆頭に、アメリカのミッドウェストエモの影響を色濃く受け継いでいます。さらに、キャロラインは、「間」という概念に重点を置き、音が減退する過程すら演奏上で楽しんでいるようにすら思えます。またこれは、レコーディングのプロセスにおいて、作品をつくる過程で音を純粋に出すという行為が、本来、ミュージシャンにとって何より大きな喜びであるのを、彼らは今作のレコーディング作業を通し、改めて再確認しているようにも思えます。

 

彼らキャロラインが今作で提示しているものは、音楽の持つ多様性、その概念そのものの素晴らしさ。そして、ここには、ロックの未来の可能性だけでなく、現代音楽の未来の可能性も内包されています。かつて、ジョン・ケージ、アルフレド・シュニトケが追求した不協和音の音楽の可能性は、次世代に引き継がれていき、八人編成のバンドアンサンブル、キャロラインによって、ロック音楽として、ひとつの進化型が生み出されたとも言えるかもしれません。

 

「Dark Blue」は、デビュー作ではありながら、長い時間をかけて生み出されたダイナミックな労作です。およそ、2017年から5年間にわたり、このバンドアンサンブルは途方も無い数のセッションを重ねていき、どういった音を生み出すべきなのか、まったく功を急ぐことをせず、メンバー間で深いコミュニケーションを取りあいながら、数多くの音を介しての思索を続けてきました。

 

今回、そのバンドアンサンブルとしての真摯な思索の成果が、このデビュー・アルバム「Dark Blue」には、はっきりと顕れているように感じられます。新世代のポストロックシーンを代表する傑作の誕生と言えそうです。

 

 

 

95/100

 

 

Featured Track 「Dark Blue」Official Audio








rough trade official







Album of the year 2021  

 

ーPost Punk/Post Rockー




 

・Idles  

 

「Crawler」 Patisan Records 

 



Crawler 

 

英ブリストル出身のポスト・パンクバンド、アイドルズはデビュー時から凄まじいポストパンク旋風を巻き起こし、快進撃を続けてきた。昨年リリースされた「Ultra Mono」ではUKチャート初登場3位、最終的には首位を奪取してみせ、英国に未だポスト・パンクは健在であるという事実を世界のミュージックシーンに勇ましく示し、2021年の最高のアルバムと呼び声高い作品を生み出した。


もちろん、今年、2021年もまた、アイドルズ旋風はとどまるところを知らなかったといえよう。このロック史に燦然と輝く「Crawler」の凄まじい嵐のようなポスト・パンクチューン・ハードコア・パンクの激烈なエナジーを見よ。ケニー・ビーツ(Vince Staples、Freddie Gibbs)を招き、アイドルズのギタリスト、Mark Bowenが共同プロデューサーとして名を連ねる11月十二日にリリースされた作品「Crawler」は、Idlesの新代名詞というべき痛快な作品である。


このアルバムは、パンデミックの流行に際し、世界中の人たちの精神、肉体的な健康状態が限界に達したことを受け、反省と癒やしのために制作された。


「トラウマや失恋、喪失感を経験した人たちに、自分たちは一人ではないと感じてもらいたい、そうした経験から喜びを取り戻すことが可能であることを知ってもらいたい」


Idlesのフロントマン、ジョー・タルボットは、この作品について上記のように語る。彼の言葉に違わず、アイドルズの「Crawler」は、パンデミックの流行により、失望や喪失を味わった弱い人々に強いエナジーを与え、前進する活力を取り戻させる迫力に満ちた重低音のパワーが、アイドルズの凄まじい演奏のテンションと共に刻印されている。特に#2の「The Wheel」は聞き逃してはならない。この豪放磊落な楽曲はあなた方の疲弊した精神に生命力を呼び戻してくれるだろう。


 

 

 


 

 

 

 


 ・Black Midi

 

  「Cavalcade」 Rough Trade 

 

 Black Midi  「Cavalcade」

 

 

ワインハウスやアデルを輩出したご存知ブリット・スクールから、ミュージックシーンを揺るがすべく登場したブラック・ミディ。フロントマンのGeordie Greepをはじめ、メンバーの四人全員が19歳という若さであり、近年、ラフ・トレード・レコードが最大の期待を持って送り出した大型新人である。


ブラック・ミディは、既に、日本に来日しているアヴァンギャルド・ロックバンドであるが、彼ら四人がリリースした「Calvalcade」もまた上記したアイドルズの「Crawaler」と共に今年一番の傑作に挙げられる。


この作品「Calvalcade」の制作は、デビューアルバム「Schlangenheim」2019の発表後それほど時を経ずに開始された。 


フロントマンのGeordie Greepは、このアルバムの制作の契機について、「Schlangenheimの発表後、多くの人達がこのデビュー作品を素晴らしいと評価してくれたこと自体はとても嬉しかった。でも、僕たちはこのアルバムに飽きが来てしまって。そこで、もっと素晴らしいアルバムを作ろうじゃないかと他のメンバーたちと話し合って、次作「Calvalcade」の制作に取り掛かることに決めたんだ」と語っている。


アルバム制作時までに、ギタリストのMatt Kwazsniewski-Kevinが一時的にメンタルヘルスの問題を抱え、休養を余儀なくされたが、彼はこのアルバムのソングライティング、レコーディングに参加している。


前作までに、ドイツのCanに影響を受けたインダストリアル・ロック、ヒップホップ、ポストロック、フリージャズ、前衛的な音楽のすべてを経験したブラック・ミディは今作においてさらに強いアヴァンギャルドの領域に入り込んでいる。


サックス奏者としてKaidi Akinnnibi、キーボード奏者としてSeth Evansがゲスト参加した「Calvalcade」は、2020年の夏の間にアイルランドのダブリン、モントピリアヒルのリハーサルスタジオでレコーディングされた作品であり、窓の外を飛び交っていたヘリコプターの音が録音中に偶然に入り込んでいることに注目である。


前作では、ジャムセッションを頼りにソングライティングをしていたブラックミディの面々は、今作で、よりインプロバイゼーション、即興演奏を繰り返しながら、アルバムを完成へと近づけていった。


その過程で、ラフ・トレードの主催するライブで、何度も実際に演奏を重ねながら無数の試行錯誤を重ねながら、より完成度の高い作品へつなげていこうとする彼らの音楽にたいする真摯な姿勢が、作品全体に宿っている。それがこの作品を飽きのこない、長く聴くに足る作品となっている理由なのだ。


そして、この作品は、ロック作品でありながら、偶然にもマイクロフォンが拾ってしまったヘリコプターの音のエピソードをはじめ、自分たちが演奏している空間の外側に起きている現象すら、一種の「即興演奏」のように捉えた、実験性の強い作品である。


実際、ブラック・ミディは、CANのダモ鈴木と共演、その強い影響も公言しているが、今作において衝撃的に繰り広げられる新時代のクラウトロック/インダストリアル・ロック、ポストロックというのは、前時代の音楽をなぞらえたものではなく、SF的な雰囲気すら感じられる未来のロック音楽の模範だ。


個々の楽曲の凄さについて七面倒な説明を差し挟むのは礼に失したことだ。ただ「John L」、ポストロックの一つの完成形「Chondromalacia Patella」の格好良さに酔いしれてもらえれば、音楽としては十分だ。

また、独特なバラード「Asending Forth」というブラック・ミディの進化を表す落ち着いた楽曲に、このロックバンドの行く先にほの見える、明るい希望に満ち溢れた未来像が明瞭に伺えるように思える。 

 

 

 

 


 

 



・Black Country,New Road 

 

「For The First Time」 Ninja Tune 

 

Black Country,New Road 「For The First Time」  



For the First Time 

 


ロンドンを拠点に活動する七人組のBCNRは、ブラック・ミディと同じように、十代の若者を中心に結成された。


既存のロックバンドのスタイルに新たな気風を注ぎ込み、バンドメンバーとして、サックス,ヴァイオリンといったオーケストラやジャズの影響を色濃く反映させた新時代のポスト・ロックバンド。彼らの音楽の中には、ロック、ジャズ、その他にも東欧ユダヤ人の伝統音楽、クレズマーからの影響が入り込んでいることも、このバンドの音楽性を独立独歩たらしめている要因である。


このデビュー作「For The Fiest Time」のリリース前から、先行シングル「Track X」がドロップされるなり、ロックファンの間では少なからず話題を呼んでいたが、実際にアルバムがリリースされると、その話題性はインスタントなものでなく、つまり、BCNRの実力であることが多くの人に知らしめられた。 


特に「Track X」に代表されるように、このアルバムは、閉塞した・ミュージックシーン(ミュージックシーンというのは、我々の日頃接している社会を暗示的に反映させた空間でもある)に新鮮味を与えてくれる作品だったし、言い換えてみれば、既存のロックに飽きてきた人にも、ロックって、実はこんなに面白いものだったんだという、ロック音楽の新たな魅力を再発見する重要な契機を与えてくれた作品でもあった。


これまでスティーヴ・ライヒ的なミニマル構造をロック音楽の構造中に取り入れること、あるいはテクノのような電子音楽の構造中に取り入れることを避けてきた風潮があり、それはこれまでのミュージシャンが、自分たちの領域とは畑違いの純性音楽の音楽家に対して気後れを感じていたからでもあるが、しかし、BCNRは、前の時代の音楽家たちの前に立ち塞がっていた壁を見事にぶち破ってみせた。


ブラック・カントリー、ニューロードの七人は若い世代であるがゆえ、そういった歴史的な音楽における垣根を取り払うことに遠慮会釈がない。また、そのことがこの作品を若々しく、みずみずしく、安らぎに近い感慨溢れる雰囲気を付与している要因といえるのである。


つまり、これまで人類史の中で争いを生んだ原因、分離、分断、排除、そして、差別といった概念は既に前の時代に過ぎ去った迷妄のようものであることを、ブラック・カントリー、ニューロードは「音楽」により提示している。そのような時代遅れの考えが彼らを前にしてなんの意味があろうか。


このロンドンの七人組ブラックカントリー、ニューロードの新しい未来の音楽は、それらとは対極にある概念、融合、合一、結束、そういった人間が文明化において忘却した概念を、再び我々に呼び覚ましてくれる。それがスタイリッシュに、時に、管弦楽器などのアレンジメントを介して、きわめて痛快に繰り広げられるとするなら、ロックファンは、彼らのこのNinja Tuneから発表されたデビュー作を、この上なく歓迎し、好意的に迎えいれるよりほかなくなるはずだ。


 

 

 


 

 Mogwai

 

モグワイは、スチュアート・ブライスウェイト(Gu,Vo)、ドミニク・エイチソン(Gu)、マーティン・ブロック(Dr)によって、1995年に結成されたスコットランド、グラスゴーのポストロックバンド。

 

1997年LP「Young Team」でデビューを飾り、同年、「バンドワゴネスク」でおなじみの同郷のティーンエイジ・ファンクラブのブレンダン・オヘアが加入したものの、翌98年にバンドを去っています。

 

これまでモグワイは、アイスランドのシガー・ロスと共にヨーロッパのポスト・ロックシーンの確立した最重要のロックバンド。今やヨーロッパでは重鎮といっても過言ではないかもしれません。

 

重厚な轟音ギターロックサウンドを表向きの特徴にし、SEを取り入れた静と動の織りなすモグワイの劇的な曲展開は宇宙的な壮大さを生み出し、その中に、美麗で恍惚としたメロディーの反復、そのミニマルな単位の楽節を徐々に轟音性によって増幅させていくのがモグワイの音楽性の主な特徴です。

 

反復されるフレーズがアシッド的な効果を生み出すという点においては、ロックバンドではありながら、EDM(レイヴやゴアトランス)の雰囲気も併せ持ち、クラブ音楽の影響も少なからず感じさせる。ライブパフォーマンスでも音楽と同期した視覚的な演出を試み、プログレッシヴ・ロックのような物語性を持つという点で、ディスクレビューにおいてカナダ・トロントのGod Speed You Black Emperror(GY!BE)と頻繁に引き合いに出されるロックバンドであります。

 

モグワイは、これまでの24年という長いキャリアにおいて、「Come On Die Young」1999 、「The Halk Is Howling」2008、とポスト・ロックにとどまらず、ロックの数々の名盤を生み出しています。

 

初期からは轟音性の強いロックサウンドを特徴にしていましたが、徐々に静謐性に重点を置いた楽曲にも取り組むようになり、近年、特に、2021年2月にリリースされたモグワイの最新作「As The Love Continue」では、轟音性溢れるエネルギッシュな作風に原点回帰を果たし、そこに、スコットランドのネオアコ/ギター・ポップ、日本では、一般的に「アノラック」と称されるポップエッセンスを付け加え、また、そこに、英国の80ー90年代周辺のエレクトロの空気感を絶妙に溶かし込んだ独特な作風を生み出して、ミュージックシーンで話題を呼んでいます。

 

2022年の1月27日から、イタリア公演をかわきりにして、翌月からは、オランダ、ベルギー、フランス、ドイツ、英国、アメリカ、カナダ、スペイン、と大規模な世界ツアーを控えているモグワイ。どのような名演を世界の人々の記憶に残してくれるのか非常に楽しみにしたいところです。

 

 

 

 

 「Take Sides」EP  2021

 

 
Quote bandcamp.com

 

TrackListing

 

1.Ritchie Sacrament-Other Remix

2.Midnight Flit IDLES Midday Still At It Remix

3.Fuck Off Money Alessandro Cortini Rework

 

 

 BandCamp

 https://mogwai.bandcamp.com/album/take-sides-2

 

 

 

2021年2月のスタジオ・アルバム「As The Love Continue」に続いて、Bandcamp上で10月1日に発表されたEP「Take Sides」は「As The Love Continue」に収録されている3つの楽曲のリミックス作品。特に、共同制作者が豪華なメンツが参加しています。

 

一曲目の「Ritchie Sacrament」には、英クラブ・ミュージックシーンの重要な立役者、New Orderのメンバーの二人、Stephan Morris,Gillan Gilbertが参加。

 

80、90年代のロンドンエレクトロの雰囲気を漂わせたノスタルジックな味わいのあるエレクトロニック・ミュージックに仕上がり、オリジナルよりもダンス音楽の要素が加えられ、独特なディスコ風サウンドが提示されています。

 

もちろん、スタジオ・アルバムに収録されているオリジナル曲「Ritchie Sacrament」もインスト曲を中心とするモグワイとしては珍しいヴォーカル曲ですが、ここでは、New Orderの名トラックメイカーの二人の手により、さらに爽快な空気感を持つリミックス作品に仕上がっています。 

 

 

二曲目の「Midnight Flit」は、英ポスト・パンクバンドIDLESがリミックスに参加、テクノイズとも称するべきアレンジメント。

 

これまでのモグワイには余りなかった印象を受けるクリック・ノイズ要素の全面的に打ち出した実験性溢れるリミックス。ゴアトランスの領域に入り込んでいるようにも思え、ノイズの印象が強いですが、その中にもモグワイらしい美しく淡麗なギターフレーズがリミックスの中に取り入れられている。モグワイのラウド性を電子音楽側から改めて再確認しなおした作風となっています。

 

 

さらに、特に、三曲目の「Fuck Off Money」は、NINの重要なツアーメンバー、トレント・レズナーと深いかかわりを持つアレクサンドロ・コルティーニがリミックスに参加しているのが見どころ。

 

ここでは、モグワイの「The Halk Is Howling」時代の懐かしいマーチングのリズム性に立ち返り、そこにさらに、アレクサンドロ・コルティーニらしいインダストリアルな雰囲気が漂う素晴らしいリミックス。

 

特に、中盤部から最終盤部にかけての独特な中低音域を押し出すようなリズム性、アンビエントドローン寄りのアレンジを交え、往年のモグワイ節というべきリズム性が随所に引き出されたリミックスとなっています。

 

ここには、モグワイのオリジナルアルバムより、EDMの要素に重点が置かれており、これまでのモグワイとは一味違う音楽性を体感出来る作品として注目です。ポスト・ロックファンのみならず、クラブミュージックファンもチェックしておきたい、名リミックス作品となっております。



Black Midi

 

 

Black Midiは、2019年、イギリスの歴史ある名門インディペンデント・レーベル、Rough Tradeから華々しくデビューを飾っている。

 

2021年までの二、三年間で、9枚のシングル、2枚のアルバムリリースを経てきている。創作意欲が活発な、新鮮味のあるバンドで、これまでEP、スタジオ・アルバム作品の殆どがラフ・トレードからのリリースとなっている。

 

 

どうやら、ラフ・トレード大期待のバンドであるらしく、2019年のデビュー・シングル「Crow's Perch」、それから同年リリースの二作目のEP「Talking Heads」では、およそ新人アーティストらしからぬ、十代のアーティストらしからぬ通好みのアプローチを見せている。それでいて、若手らしい勢い、フレッシュさもしっかり持ち合わせているのが、ブラックミディの最大の魅力といえるだろう。そして、この二、三年の活動期間で驚くべき急成長を遂げているバンドであり、すでに世界的なライブ活動を行っており、話題沸騰中のポストロックバンドである。             

 

彼等、ブラック・ミディは、ポストロック/マスロックに属する音楽性を表向きの表情としている。例えば、シカゴ音響派の前衛性を主な特徴とし、CANを始めとするクラウトロック、そして、イギリスのKing Crimsonのようなプログレッシブ・ロック、そして、往年のニューウェイブ、Gang Of Four、Killing Joke、Devoあたりの、ハードコア・パンク、ダンス・ロックの礎を築き上げたバンド、それから、Vaselines、Pastelsといった往年のスコットランド周辺のギター・ポップの影響も感じられる。



また、ブラック・ミディは、バンドサウンドとしての「限界の先にある限界」に果敢に挑んでいるような気配がある。

 

 

このバンドのフロントマン、ギター・ヴォーカルのジョーディ・グループのどことなく、Swansを意識したようなダンディな声、そして、かなり入念に作り込んだギターの音色、バンドサウンドとしても、ピアノ、サックスを何本か重ねたフリージャズ系のアプローチを図り、無調のフレージング、ギリギリのところでぶつかり合う複雑怪奇なリズムが、このバンドの最大の魅力だ。

 

 

レコーディング時のサウンドのすさまじい緊迫感は、このバンドの最初期からの重要な持ち味であり、ごく単純に、商品としてパッケージされた音だけでも、十分その魅力が伝わって来るだろうと思う。もっというならば、ブリットスクール仕込の「音楽のエリート」と賞賛すべきなのか、また、そういった音楽的な素養を度外視した上でも、十分な魅力を感じていただけると思う。

 

 

変拍子にとどまらず、一曲中で、テンポすら変幻自在にくるくると転じてみせるあたりは、一体、これはどうやって録音しているのか?、という純粋な疑問すら浮かんでくる。トラック分けで録音していると思われるが、一発録りのような生々しいライブ感がブラック・ミディの音楽には宿っている。

 

 

彼等の作品には、通じて、四人のバンド・メンバーの才覚の火花をバチバチと散らし、それを「ヘヴィロック」として、炸裂させている雰囲気がある。それは、今や、完全に失われたかのように思える、往年のウッドストック時代のロック・バンドのようなセッションに対する情熱も込められている。しかも、恐れ入るのは、あろうことか、彼等は現代のミュージックシーンでその再現を試みようとしている。

 

 

もちろん、先にも述べたとおり、バンドとしては、Devo、The Residents、Taking Headsのような、新奇性を全面に押し出している一方、往年のR&Bのような音楽もたっぷり聴き込んで、自分の音楽性として昇華している。

 

 

ブラック・ミディのデビュー・アルバム「Schlagenheim」2019は、いかにもラフ・トレードのバンドらしい荒削りなサウンド面での特徴を持っている。

 

 

そして、音楽シーンの登竜門を叩くアーティストとして不可欠なバンドとしての止めどない勢い、そして、新奇性、斬新性という面で、他の追随を許さないほどの強いアクのあるサウンドが奏でられる。まるで、ガレージ・ロックやグランジの時代を彷彿とさせる痛快な轟音性にとどまらず、それと対比的な妙な渋い落ち着きがあるのも、若手の新人バンドらしからぬ貫禄と呼べるはずだ。

 

 

誇張なしに、この四人組、ブラックミディは、これまでの年代で、十年に一度あるかないかのニュー・スターの登場を予感させる。

 

 

一体、これから、彼等は何をやってくれるのだろうと、漠然とした期待をロックファンとして持たざるをえない。そして、その不思議な期待感、高揚感というのは、決まって、時代の流れを一人の力で変えてしまうロック・バンド、ミュージック・シーンが華々しく台頭する瞬間である。  

 

 

 

 「Cavalcade」2021

 


 

 

 

1.John L

2.Marlene Dietrich

3.Chondromalacia Patella

4.Slow

5.Diamond Stuff

6.Dethroned

7.Hogwash and Balderdash

8. Ascending Forth





Listen on Apple Music  


 

 

そして、2021年リリースの彼等の現時点での最高傑作と呼べる、二作目のスタジオ・アルバム「Cavalcade」の壮絶としかいいようがないアバンギャルド性には、全面降伏し、驚愕するよりほかなくなっている。

 

 

そもそも、二作目というのは、サウンドとして落ちつきを見せるのが普通のはずなのに、頼もしいことに、彼等の念頭には、売れようとか、バンドとしてより人気を博そうなんて打算的概念はない、純粋に”音楽”を楽しんでいる。だからこそ、最新作「Cavalcade」で繰りひろげられるのは、さらに先の、また、その先の時代を行くプログレッシヴ・ロックである。

 

 

彼等は、この最新作において、フリージャズとロックの合体系を生み出してしまった。これは、最早、ポストロック界のカリスマ、ザ・バトルス。いや、いや、それどころではない、キング・クリムゾンのデビュー作以来の衝撃というしかなし。聞き手の目ン玉をひん剥かせるようなアバンギャルド性だ。

 

 

「John L」で見せる異様な緊迫感のあるサウンドも新たな魅力である。そして、「Accending Forth」は、往年のソウル、ゴスペルからの影響も感じさせる聴き応えある楽曲、麗しい甘美なエピローグを飾っている。

 

 

この「Cavalcade」に見受けられる奇妙な音楽性の間口の広さというのは、およそ十代の若者のものでないといえる。一体、これから、どうなってしまうのか?、と末恐ろしい雰囲気さえ感じられる。

 

 

もちろん、ひとつ良い添えておきたいのは、彼等のサウンドは、全然、懐古主義でないということである。ブラック・ミディの音楽性には、近未来を行く新鮮味あるサウンドが清々しく展開されている。この音楽は単純に新しい、つまり、未来のロックミュージックを彼等はこのアルバムの中で体現してみせている。

 

 

そして、ブラック・ミディが、これから、間違いなく、現在から近未来にかけてのミュージックシーンに向けて華々しく提示していく事実は、バンド・サウンドとしてのロックミュージックの王権復古、一大革命なのである。


大象體操 Elephant Gym

 

 

 

近年、アジアで生きの良いバンドがインディーズ・シーンで続々と台頭してきています。近年、来日を果たしているタイのシューゲイザーバンド、Inspirativeも目のくらむほどのオーラを持つ見過ごすことのできないバンドであるんだけれども、今回、中国、台湾のシーンにちょっとだけ目を向けてみましょう。


 

大象體操 別名、Elephant Gymは、張凱翔(テル・チャン)を中心に結成された台湾、高雄出身スリーピースのポストロック/マスロックバンドで、近年、アジアのミュージック・シーンの中でも際立って高評価を受けている本格派ロックバンドです。

 

 

この三人組が高評価を受けるのも当然といえます。エレファント・ジムの楽曲は軒並み洗練されていて、なおかつ、ポップ性、メロディーセンス、意外性、バンドメンバーのキャラクターという面でのバランスの良さ、華やいだ個性、成功するバンドの兼ね備えるべき特長を網羅しているのがエレファント・ジムなのです。


 

日本のポスト・ロックシーンとの関係も深く、これまで、LITEとの共演、また、今年のToeとの共催イベントを開催して来ています。

 

 

それはひとつの手応えを彼等に与え、音楽の面でも、またバンドとしての形態でも、さらなる進化を見せつつあるように思えます。つまり、その実像がより大きくなっているといえ、近年、日本、ひいては、世界レベルでの知名度もグングン上昇しまくっているのも頷ける話です。

 

 

このエレファント・ジムというバンドの特長は、なんといっても、三人組の中の紅一点、K.T.チャンという存在の華やかさ、キュートさ、その可愛らしいルックスからは想像できない超絶的なベーステクニックにあるでしょう。

 

 

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K.T.チャンの弾く、跳ねるようなパンチの効いたベースラインは、流麗であり、繊細さもあり、また、リスナーを驚かせるに足る意外性に満ちあふれている。まさしく、これは、彼女の才覚の抑えきれない表出です。


 

バンドの全体的なキャラクターの印象として、表向きには、日本の”Base Ball Bear”を彷彿とさせる形態ではあるものの、彼等とは少し異なる魅力を持ったアーティスト。このスリーピース・バンド、エレファント・ジムは、実際の演奏テクニックは、三人編成と思えないほどの音の厚みをなし、そして、中心人物、テル・チャンの変拍子を多用した作曲能力はお世辞抜きにずば抜けている。


 

さらに、バンド・サウンドという特長においても、K.T.チャンの弾くベースラインは、スタイリッシュさ、バンド名由来である”象”のような力強さを備えている。そして、彼女のさわやかさ、淡いせつなさを感じさせる中国語ボーカルも良い。日本の現代のロックバンドとは異なる蠱惑的な雰囲気がほんのり漂っている。また、K.T.チャンのステージ上の軽やかでアクティブな姿も魅力といえるはず。  


 

 

Elephant Gymの代表作

 

エレファント・ジムは、そのバンド名に象徴されるように、これまでの歩みの中で独特な進化を遂げてきました。

1stアルバム「角度 Angle」2015においては、日本のバンド、LITEを彷彿とさせるスタンダードなポストロック/マスロックを展開してきたが、徐々に叙情性、バンドサウンドの間口の広さを見せるようになっています。

 

 

 

 




また、スタジオ・アルバム最新作「Underwater」2018を聴いて貰えば、エレファントジムが完全にオリジナルのバンドであり、より大きなロックバンドとして堂々たる歩みを初めたのが理解できるはず。

 

 

結成当初からの前衛的なポストロック性を引き継ぎながら、キーボードの存在感を楽曲の中で引き出した現代エレクトロニカ風のサウンドも見られる。

特に、このアルバム「Underwater」収録の「Half」においては、エレファント・ジムの進化が顕著に伺えます。近年、北欧や英国圏で見られる音楽の流れ、ポストロックの先に見えるSci-fi性を追究しているかのような雰囲気もあるようです。 

 


 

 

 

 

もちろん、彼等の重要な性質である楽曲の複雑さという面での特長、メロディーの叙情性というのは失わず、一歩先へと、二歩先へと劇的な進化を遂げつつあるようです。  

ここには何かさらに、大掛かりな舞台的な装置、仕掛けのようなものが込められているように感じられます。また、このアルバムでは、台湾の民謡的なバックグラウンド、自国の文化に対する深い矜持も伺えます。

 

そして、日本のシンガーソングライター、”YeYe”を、ゲスト・ボーカルに迎えたラストトラックの「Moonset」で見られる日本語歌詞ソングというのは、いわば、日本と台湾の双方の文化に対する敬意を交えたハイブリッドの魅力を持った、非の打ちどころのない楽曲といっても誇張にならないはず。

 

エレファント・ジムの作品の中でお勧めしておきたいのは、「Elephant Gym Audiotree Live」での超絶的なテクニックの凄さも捨てがたいものの、やはり、EPとしてリリースの「工作」です。 



 

 

 

このシングルの二曲目に収録されている「中途」というトラックは、エレファント・ジムの際立ったポップ・センスが発揮されています。


ここには、往年のシティ・ポップのようなオシャレさ、爽やかさからの影響もそれとなく滲んでいるようです。また、中国語の響きというのも、既に、ポストロックに飽きてしまった耳の肥えた愛好家に、爽やかで、清々しい印象を与える素晴らしい楽曲として推薦しておきたいところです。

 

日本のポスト・ロックシーンの始まり

 

日本のポストロックシーンの最初のムーブメントが始まったのは、その瞬間を見届けたわけでも、産声を実際に聴いたわけでもないけれども、おそらく2000年代に入ってからだろうと思われます。

2001年、ポストロックシーンの形成に深く関わってきた「Catune」。2004年になると、「残響レコード」というインディペンデント・レーベルがte'のメンバーにより続々と発足していった。そして、この年代辺りから、ポスト・ロックシーンが日本の東京を中心とし、活発になっていった印象があります。

二千年代に入って、日本の東京の小さなライブハウスでも、90年代、アメリカのシカゴで奏でられていた音楽性を引き継いだロックバンドが00年代に入って、徐々に出てくるようになりました。

Slint,Gaster Del Sol、Don Cabarello、Tortoise、Sea and Cakeを始めとするシカゴ音響派と呼ばれる前衛的で、変拍子を多用した複雑な展開を持つロックミュージックに影響を色濃く受けたロックバンドが徐々に出てくるようになる。そして、ポスト・ロックの音を奏でる若いバンドは漸次的に、10年代半ばごろから急激に増えていき、今日のメジャーシーンでも同じく、ポストロック/マスロックの音楽性を打ち出したバンドが数多く見受けられるようになった。

今回は、日本の現代ポストロックシーン形成の源流をなすバンドを、普通の音楽誌ではあまり扱わないアーティストを中心にセレクトしていきたいと思う。



3nd

 

日本で最も早くポスト・ロックとしての音楽を全面的にに打ち出しのは、「Natumen」というバンドだったかと思います。

普通のギター、ドラム、ベース、という編成に加え、キーボード、サックス等のホーンセクションを取り入れたバンド。別に早ければいいというわけもないし、あまり確信めいたことを言いたくないけれども、ノイズ、アバンギャルド界隈をのぞいて、ポスト・ロックという音楽を初めに日本に導入したシーンバンドといって差し支えないかもしれません。5つくらい年上の人から話を聞いたかぎりでは、当時の東京のインディーズシーンではかなり伝説的な存在だったようです。

このバンドのライブは、多分、Parfect Piano Lessonと対バンしている時に、一度観たことがあって、素人目には何をしているのかよくわからず、驚愕するようなものすごい演奏力を誇っていた。変拍子を多用し、ドラムをはじめバンドとしての音の分厚さも半端でなく、何かこれまで普通のオーバーグラウンドのアーティストのライブしか見てこなかった自分にはすごく衝撃的でした。

彼等の音楽性としては、アメリカのドン・キャバレロの音楽性を、ディレイ・エフェクトをさほど使用せずにやってのけてしまったというアバンギャルド性。

他のバンドが挙ってエモ系の音楽に夢中になっていたかたわらで、この3ndというバンドだけは、全く他と異なる音楽を追求していて、純粋に滅茶苦茶感動したもので。一時期、全く名前を聞かなかったが数年前に再浮上してきて驚いたものだった。

 

 

 

彼等の現行のリリースでは、残響レコードのPerfect Piano lessonとのスピリットEP 「Black and Orange」を入門編として個人的におすすめしておきたいです。また彼等の代表的作品「World tour」では日本のポストロックらしい音、そして、Bandwagon、Band apartといった当時のシーンを代表するような音の方向性、ロックバンドとしてバカテクの雰囲気を体感できると思います。

アメリカのポスト・ロックをいち早く音楽性の中に取り入れて、現在の日本のポスト・ロックシーンの下地を作ったバンドというふうに言っても良いかもしれない。現在、Spotifyの音源配信でも何作かアルバム、EP盤が聴くことが出来るが、コレ以前にも、何作か自主制作盤も出ていた?と思う。

 

Malegoat

 

メールゴートは八王子シーン出身のエモコア/ポストロックバンド。

八王子は、以前から、西東京のインディーミュージックの重要拠点のひとつであり、他の地域とは異なる個性的なバンドが数多く活躍している。と、ここまでいうと、ちょっと大げさかもしれないが、ホルモン、Winnersといったスターを輩出しているのは事実。

八王子駅周辺にある、RIPS,Matchvoxを始めとするライブハウスが二千年辺りから地元シーンを盛り上げてきており、良いロックバンドが多い。一時期、不思議に思ったのは、新宿や渋谷、下北あたりのバンドが演奏する音楽とは全然違うということ。なんというか、八王子には流行の逆を行くような音楽が多くてとても面白い。吉祥寺、下北、渋谷界隈のAkutagawaのようなオシャレな感じを受けるバンドとは全然違って、なんとなく独特なシーンを形成している気配がある。

とりわけ、このメールゴートは、THE WELL WELLSと共に、八王子のシーンを盛り上げて来た代名詞的バンドで、言い換えれば、地域密着型・ポストロックバンドということも出来るはず。しかし、地元での活躍にとどまらず、ワールドワイドな活躍をインディーズシーンで見せていて、アメリカのエモ・シーンとも密接な関わりを持つバンドで、Empire! Empire!とのスピリットのリリースだけでなく、Algernon Cadwallderと共にアメリカで現地ツアーを敢行しています。

彼等の音楽性としては、シカゴの伝説的なエモコアの元祖、Cap n' Jazzを現代に蘇らせたといっていいかもしれない。そして、さらにそこに激しい疾走感、初期衝動の色を強めたのがメールゴートの音楽である。そこにはどことなく痛快さすらあって、青春的な切ない爽やかさが感じられるのも独特な特徴です。

センスあふれるギターの高速アルペジオも色彩的な響きがあり、絶叫ボーカルを基本的な特徴としながら、叙情性が滲み出ているあたりも、他のポスト・ロック勢の音楽と一線を画している。  

 

 

 

彼等のオススメの作品としては、「Plan Infiltraition」一択ですが、現在は廃盤となっていて、入手困難と思われるので、中古CDショップで気長に探すか、もしくは、比較的手に入りやすいEPスピリット盤「Duck Little Brother,Duck!&Malegoat Split」。「Empire! Empire!(I was Lonely Estate)/Malegoat」をオススメしておきます。特に、一枚目はメールゴートらしい疾走感のあるポスト・ロックが体感できるはず。そして、二枚目の方はEmpire! Enpire!というアメリカのシーンでもかなり有名なバンドとのSpilitもまたオススメの作品といえるでしょう。



As Meias

 

日本のエモシーンの始原ともいえるBluebeardが解散後、(元、There Is a Light That Never Goes Out)のメンバー魚頭とBluebeardの高橋が結成した伝説的なエモコア/ポストロック・バンド。「Catune」から全作品をリリースしています。

フロントマンの高橋さんは、かなり音楽の求道者的な性質を持ち、アス・メイアスは彼の宅録でのデモを頼りにバンドサウンドを生み出していった珍しいタイプのバンドです。音の完全性、ストイックさを徹底的に探求していったバンドといえる

アス・メイアスは、東京のシーンにおいて、最重要なバンドといえ、2002年の当時のミュージシャンとしては、Natumenとともに、東京で一番早くにポスト・ロックの音を取り入れたのではないかと思われます。一時期インディーシーンのバンドマンはこのアス・メイアスを聴き込んで影響を受けていました。それくらい影響力のあるバンドです。

アス・メイアスの音楽性は、東京のインディ・シーンを牽引してきたBluebeadからの透明感のあるメロディセンス、そして、清らかな内省的な叙情性を引き継いで、それにバンドサウンドとしてのストイックさを特徴としています。

めくるめくような変拍子のリズム、メシュガーをはじめとするニュースクール・メタルの轟音サウンドをスパイシーな味付けとして加えている。これは、狙ってのことかそうではないのかは定かではないけれど、ミニマル・ミュージックをロック・ミュージックとして大々的に取り入れた一番最初のバンドといっても差し支えないかもしれません。 

鮮烈的デビューアルバム「AS MEAIS」は、Blubeard時代からの透明感のあるメロディー、内側に向かって突き抜けていく強固なベクトル性を極限まで追求した楽曲が多く見られます。そこに、ミニマル・ミュージックをロックとして先鋭的に取り入れた名作。これぞまさに清らかな精神性の外側への表出ともいえる名曲「Kitten」。そして、日本のロックシーンでいち早くミニマル・ミュージックの要素を取り入れ、ニューメタル的なヘヴィさを加味した「Flux」が収録されています。 

 

 

 

2ndアルバム「AS MEIASⅡ」では、バンド・サウンドとしての高度な洗練性を追求していき、またメンバーチェンジを経、よりヘヴィ・ロックバンドとしてのはてなき荒野をアスメイアスは探求していった。変拍子を交えたポスト・ロック色を強めていった名作と称することが出来る。「Instant」「Arouse」はエモコアにとどまらず、日本のポストロック/マスロックの歴史に燦然と輝く金字塔といえる。

バンドとしての最後のリリースとなったのは、シングル盤の「AS MEIAS Ⅲ」で、これは彼等の曲で珍しく日本語歌詞でうたわれており、英詞とは異なる切ない叙情性がにじみ出ていて素晴らしい。

この一曲のEPリリースで、バンド自体は解散となったのが少々悔やまれるところです。が、その後、aie、the chef cooks meのメンバーにより結成された「Rena」というバンドの今後の活動に期待したいところです。

 

 

a picture of her

 

a picture of herは、2002年にから活動しているエモコア/ポストロックバンドで、下積みの長い良い意味でしぶとく今日まで活動を続けて来ています。

それまで、あまりスポットを浴びてこなかったように思えますが、2013年の1stスタジオ・アルバム「C」が一部のロックファンの間で話題を呼び、音楽誌などでも取り上げられる様になったバンドです。

つまり、バンドを結成してから、実に十一年後になって自主レーベル「friend of mine」から「C」をリリースするに至る。途中にメンバーチェンジはしながらも、相当な辛抱強さをもって今日まで活動を続け、また2019年には新作アルバム「Unavailable」を同レーベルからリリースしました。彼等のライブ活動というのもそれほど大規模な箱ではあまり行われないという印象を受けます。

a picture of herの音楽性というのは、そこまで他のポストロックバンドのような派手さはないものの、長年活動を続けてきたからこそ、にじみ出る高い演奏力、そして、インテリジェンス性の感じられる音、そして、また静と動を交えながら展開していくのが彼等のサウンドの特徴といえるでしょう。

バンドとしての音の分厚さも魅力のひとつでしょう。ドラムのダイナミックなヌケの良さというのも爽快感があり、また、ギターについては、クリーントーンをメインとしながら、時にそれとは対比的なディストーションのサウンドが展開される。インストバンドながら、息のとれた、そして、ひとつひとつ噛みしめるように紡がれていくバンドサウンドには、深い激情性すら滲んでいる。

 

 

 

ギターロック風のアプローチというべきか、Slintのメンバーが後に組んだArielを彷彿とさせる玄人好みのサウンドで、なんとなく音風景を浮かび上がらせるような、淡い叙情性を持った楽曲が多い印象です。

本格派のじっくり聴かせる音でありながら、特に、この静から動、轟音に転じる激烈なサウンドというのは重みもあり、またそれとは対極にある切なさのようなものが感じられる良質なポスト・ロックバンドです。彼等の入門編としては上掲した名作「C」をまずオススメしておきます。

 

 

Toe

 

数年前から、アメリカでの人気が高まっているToe。しかし、その音楽性が本当の意味で正当な評価を受けるまで下積み期間の長かったバンドといえるのかもしれません。十数年前にこのバンドを友人を介して初めて知ったときから、これほど力強く成長したバンドというのは他に知りません。もちろん、長いキャリアがゆえ、彼等四人のバンドサウンドとしての結束力はより一層強まりつづけているように思えます。

彼等のバンドサウンドとしては、典型的なポスト・ロックといえるでしょうが、そこに、エモーショナルな深い痛切な精神性が宿らせている。彼等、Toeが今日まで苦心惨憺して紡ぎ出してきているもの、それは悲哀からにじみ出る深い、そしてなおかつ淡い詩的感情と日本人としての精神性なのかもしれません。

ステージの前方で、エレアコを持ち、椅子の上に座り込んで、淡々と歌いこむ。彼等のステージの逆光の中にほの見えるのは音楽の求道者としての強い精神性。しかし、そのストイックな姿勢こそが多くのファンの心の琴線に触れ、今日までファンの裾野を広げつづけている要因といえるでしょう。フロントマン山嵜さんの背後で、気骨あふれるロックサウンドが目まぐるしく展開される彼等Toeのライブスタイルというのも、長いキャリアを持つバンドとしての強みといえるはず。

このバンドの音を極めて強くしているのは、世界を見渡してもその技術性において、数本の指に挙げられるであろうドラム柏倉さんの激烈なテクニックといえる。彼のタム回しの熱狂性というのは、かつてのボンゾを彷彿を思い起こさせるような風圧、凄みがある。そこに、シンプルなベースライン、そして、もう一本のギタリスト美濃さんの美麗なアルペジオががっちりとバンドサウンドとして合わさり、ヴァリエーション豊かな分厚いサウンドを持つ。アメリカのインディーズミュージックシーンでも熱狂的に受け入れられているというのも当然だといえるでしょう。

 

   

 

彼等の名盤は、彼等のライブレパートリーの主要曲「グッド・バイ」が収録されている、2009年の「For long tomorrow」。まずは、この一枚を必聴盤としてオススメしておきたいところです。

そして、 Toeこそ、これからアメリカだけではなく、世界的に有名になってもらいたい、ポストロックシーンを率いる代表格といえます。これからも、日本のポストロックシーン最前線を走り抜けてもらいたいロックバンドです。

MONO 「You Are There」


あらためていうと、ロック・ミュージックを語る上で、ポストロック、また音響系と呼ばれるジャンルがあり、そこには、シガー・ロス、MOGWAI、GYBE、といったバンドが各国にとっての代表的存在としてミュージック・シーンに鎮座しています。

これらのバンドの音楽性というのは、切れ目のないギター奏法を特徴とし、ドラマティック性を生み出し、長い尺の楽曲中、静寂と轟音の対比によって、空間的に奥行きのある音楽効果を演出するというコンセプトにおいて共通項があります。

そして、日本から米国に、はるばるサムライのごとく渡った四人衆MONOも、二〇〇〇年代から現在にいたるまで、ポスト・ロック、音響系の花形として世界的に活躍してくれているというのは、同じ日本人として頼もしいかぎりであり、もっと彼等の名が一般にも知られてほしいと思っています。

彼等は活動初期から、アメリカに拠点を移し、現在まで息の長い活動を続けています。まだそれほど、ポスト・ロックというジャンルが日本において全然認知されていなかった時代、このバンドの中心人物、Takkakira "Taka" Gotoは、最初のアメリカのライブで多くのファンが自分達の演奏を歓迎してくれた。その出来事をしっかりと受け入れ、のちの活動にとどまらず、異国アメリカで生きていく上での重要な動機に変えていったろうことは想像に難くないでしょう。

彼等のライブスタイルというのも独特で、God Speed You Black Emperror!と同様に、ギタリストが椅子に座り、オーケストラの弦楽器の奏者のように奏でるという独自の特徴があります。それがロックという音のグルーブを体感するというよりかは、ロックという囁き、はたまた、叙情的な唸りに、全く強制的でないにしても、静かに傾聴させるというスタイルを推奨している趣きがあります。

つまり、ロックを体で味わうのではなく、音がもたらす印象に対して、徐々に聞き手が接近をはかっていくという独特なスタイルといえます。

これは演者と聞き手の間で、はじめは分離していた2つの異なる世界の融合をはかるという要素もあるでしょう。

それはこのバンドの中心的な存在であるGotoが、椅子の上に座し、黒髪の長髪を振り乱しながら、淡々と、繊細でいながら激情的なギターフレーズの叙情性を紡ぐ、このスタイルは、視覚的にもクールとしかいいようがない。

サウンド面でも、目の前にある音響世界を拡張していき、曲の終わりにおいて、ミニマルな単位で構成された別世界を聞き手に提示する。聞き手は、曲の最初とまったく異なる世界に入り込むことができるでしょう。

また、それらの演奏中、彼は、椅子の上からほとんど動くことのない、音は動くのに、演奏者が微動にだにしない、このスタイリッシュとしか形容しようのないGotoの様子に、モノの素晴らしさが凝縮されています。

換言すれば、音という表現形態により、抒情詩を、静かに、そのさかしまに、情熱的に詠じているかのような印象も見受けられます。

 

さて、モノというバンドは、他のポストロック界隈のアーティストと異なり、哀愁のある音楽性を特徴とし、そして、モグワイのような、音楽的なストーリー性、もしくは静寂からドラマティックな轟音への移行という要素を持ち、その中にも、日本人的な独特ともいえる要素を持ちあわせているのが特徴。それは、彼等のその後の方向性をはっきり決定することとなった代名詞的アルバム、「You Are There」において、もっとも端的に表されているといえるでしょう。  

 

 

 

一曲目の「The Flames Byond the Cold Mountain」からして、いわゆる「モノ節」は炸裂しまくっており、繊細で叙情性の強い物悲しいギターのフレーズが最初はかぼそく感じられたものが、だんだん一大音響の世界を形作っていきます。それらは曲のクライマックスで轟音という形で胸にグッと迫ってきます。

「The remains of the Day」では、シンセサイザーの奥行きのあるパッドのフレーズに、ピアノの旋律がフューチャーされた美しい情景が思い浮かぶような楽曲。その間に、歪んだリバーブの効いたギターが陶酔した雰囲気を形作っています。

 そして、最後に収録されているトラック、「Moolight」は、モノのライブにおける重要なレパートリーであり、彼等の代名詞的な楽曲。

エレクトリック・ピアノのイントロとギターの繊細なトレモロ奏法が掛け合うような形で哀感ある大きな音響世界を作り上げていきます。その雰囲気は全く弱くはなく、日本の轟音ハードコアバンドEnvyにも比する力強いパワーを持っています。そして、この甘美な深みのある旋律は、ヴァイオリンにより、さらにドラマティック性がつけくわえられます。

しかし、これはドラムのタムの迫力のある連打によって、まだ序章、つまりイントロ似すぎない事がわかります。

その後、丹念に、ギターの哀感のあるフレーズがつむがれていきます。ここでの旋律というのは本当に鳥肌もの、モノ節そのものといえ、他のポストロックバンドにはない、淡く切ない独特な雰囲気が醸し出されています。

中盤にかけては、ドラムのクールなリズムの刻みによって、曲の抑揚が徐々に、徐々に高められていき、およそモグワイとも、GY!BEともつかない、独特なモノだけがつむぐことのできる音響世界が堅固に構築されて反復されていく。

そして、楽曲のクライマックスにかけては、ギターにディストーションのうねりがくわえられて、グルーブ感を伴って進んでいき、その最後には、ほとんどシューゲイザーともいえる甘美な陶酔した世界が完成を迎える。

この轟音のうねりのような世界には、賞賛、感嘆を通り越して、ほとんど惚れ惚れとモノの美しい音響空間の中に惹きつけられていき、アウトロにかけての美しいギターのフレーズの余韻とあいまって、音楽がすっかり鳴り止んでも、その独特な魅力にしばらく浸りきるよりほかなくなることでしょう。

日本からはるばる異国に渡った四人の侍、MONOは、アメリカという土地において、日本人にしかつむぎえない甘美な世界観を、「ポストロック」という形で見事に完成させたパイオニア的な存在と言えるでしょう。

その音楽性、他のアメリカのバンドの持ちえない独特な純和風の「MONO節」という、どことなくものがなしい哀感によって、異国の地の多くのファンの心をしっかりと掴んだ。そして、彼等の魅力というのは、アメリカ国内にどどまらず、世界中のロック愛好家の多くの人々まで評判はひろがりを見せ、いまだ多くの心を惹きつけてやまないようです。




Gaster Del Sol 「upgrade & afterlife」


ガスター・デル・ソルは、シカゴ音響派の最も有名なアーティストのひとつで、ポスト・ロックの原型を発明したバンドでもあります。

 

前「Bastro」のメンバー、デビッド・グラブスとジョン・マッケンタイアが中心となって結成され、94年から、ジム・オルークが加入したことにより、さらに個性的で鮮烈な音楽性に磨きがかかりました。

 

彼等の三作目となるこの「Apgrade & Afterlife」は、ジャケットのアートワークの驚きもさることながら、実際の音楽性についても驚きが満載で、通をうならせること間違い無しの、時代に先んじた前衛的な音を奏でています。 

 

 

 

 

 

 

 

プログレのような前衛的な音楽も時代が経ると、古びて聞こえたりしますけれど、このアルバムの新鮮なイメージはいまだ続いています。

 

個人的には、若い頃には聴いて、その魅力が理解しがたかったんですけれども、最近ようやく少しずつでありますが、彼等の意図が分かるようになってきました。デル・ソルの音楽というのは、音の情報量がきわめて多く、フレーズの最後の方で和音をジャズのようにわざと崩したりするので、少しばかり不可思議な印象を受ける部分もあります。

 

例えば、Barre Phillipsのフリージャズを最初に聴いて面食らい、とんでもない音楽がこの世にはあるものだと驚愕するのと同じように、このガスター・デル・ソルというバンドのトラックを聴くと、いよいよロック・ミュージックも来るとこまで来たなという感慨をおぼえざるをえません。

 

ハウス・ミュージック発祥の地、シカゴの土地柄らしいクラブミュージックのエッセンスあり、またJOJO広重のようなノイズミュージックも炸裂しています。しかし、全体を支配している雰囲気というのは、アシッド・フォーク的な落ち着きで、Pink Floydのオリジナル・メンバー、シド・バレットの奏でるようなサイケデリックな風味もあります。そんな中、どことなく、ジャズのスイング的なリズムも見られ、それらの複雑に絡み合った要素が楽曲に渋い風味を添えています。実に飽きのこない渋い魅力を持ったアルバムでしょう。また、ミニマル・ミュージック的な要素もあるので、「Don Cabarello」にも比する先鋭性を持っているとも言えます。

 

特に、ポスト・ロックという音のニュアンスがよくわからない方などには、五曲目の「Hello Spiral」という楽曲を聞いてもらえば十分でしょう。

 

おそらく、彼等は、世界で最初に、ポスト・ロックの原型をこのトラックで作ったといえます。この後に、日本でもToe、LITEといったクールなポストロックバンドが、二〇〇〇年代に入って出てくるようになりますが、特に日本のポスト・ロックバンドの音楽性を決定づけたのは、ドンキャバレロと、そして、この「Hello Spiral」という楽曲ではないかと睨んでいます。

 

ミニマル的なギターフレーズが展開され、そこに変拍子をはじめとする自由性の高いリズムを、過剰なほど付加していって、曲の面白みを引き出していく。そういったスタイルを、世界で一番最初に試みたのは、ドン・キャバレロではなくて、ガスター・デル・ソルであったように思われます。年代的にみると、こちらのほうがに三年早くて、もしかすると、ドン・キャバレロは、このアルバムを聴いて、大いに触発され、ポストロックへと方向性を変更したのかもしれません。


 只、それでも、「Apgrade & Afterlife」には人好きのしない要素もありながら、穏やかな美しいフォーク、あるいはカントリー音楽、そして、ジャズ風の落ち着いたピアノ音楽をはじめ、多くのエッセンスが加えられていて、およそロックというジャンルにおさまりきらないほどの広範な音楽性の影響が感じられ、それを非常にクールな形で表現していて、長く聞くに耐えうるようなパワーを擁しています。

 

普通のロックが神経を高ぶらせることが多いのに対して、このアルバムは一貫して落ち着いたテンションを保ち、そして、その中に、実験性の風味を交えつつ、もちろんノイズという尖った要素がありながら、全体的には気持ちを鎮めてくれる渋みのある音楽に仕上がっています。

 

ロックだと思って聴くと、あまりのゆったり感に肩透かしを喰らうかもしれません。アルバム全体に感じられるのは、アコースティック楽器の生み出す本来の旨味であり、品の良い料理のように、素材の良さというのを最大限に活かしています。ここで一貫して奏でられているのは、ノイズや打ち込みなどの要素に隠れて本質が見えづらいですが、大人向けの渋くてスタイリッシュで落ち着いた、ブルースの風味すら感じられる上質な「ポスト・フォーク」音楽といえましょう。

 

 

そして、実は、このアルバム「Apgrade & Afterlife」には、まだまだ新しい音楽を作るための隠された萌芽があるように思え、いまだに音楽を作る上での重要なヒントになるマテリアルもありそうです。

 

概して、ガスター・デルソル・というのは、非常に短期間しか活動しなかった線香花火のようなバンドではありますけれど、反面では、異様なほど濃密な音楽を生み出したアーティストであったといえるでしょう。

 

そして、ひとつ惜しむらくは、リリースから二十年以上、未だに似たようなポストロックバンドは数多く活躍してながら、本家ガスター・デル・ソルのアバンギャルド性を超越するような際立った存在はというのは、なかなかでてきていないと思われます。 



God Speed You Black Emperror!「Lift Your Skinny Fists Anttenas to Heaven


はじめに、GY!BEの音楽性を説明する上で、絶対に避けては通れないジャンル分けがあって、それはいわゆる”ポストロック”と呼ばれるジャンルです。

実にこれは、専門家でも意見が分かれてしまうような複雑なシーンが形成されているため、認識違いもあると思いますが、一応、それを断った上、このポスト・ロックというジャンルについて大まかに説明しておきましょう。
 
 
1990年代終わりから、それまでのロックの雛形をぶち壊し、新たに解釈しなおすような動きがちらほら出てきます。
これはおそらく、ロックという形が行き詰まってしまった結果で、またコンピューターレコーディングを始めとするテクノロジーが二十一世紀にかけて発展していく中、旧態依然としたロックンロールを奏でる意味というのをミュージシャンが見出しづらくなってきたのかもしれません。
ところが、その予兆はかなり以前からあって、ドイツではノイ!がサンプリングを駆使して、クラウト・ロックをやっていたり、パブリック・イメージ・リミテッドが実験的な音楽性を追求していたり、ザ・フーが、「Baba o' Riley」において、アナログシンセでミニマル的な手法を実験として取り入れていたりしていましたが、いよいよ、そういったクラブミュージック界隈で使われるはずの最新鋭の手法を、ロックアーティストたちも我勝ちに導入していくようになります。
そういう意味では、パーソナルコンピュータが一般家庭にも普及していったというのがひとつあり、DAWが音楽制作に新しい息吹を吹き込んだことも一因としてあったでしょう。又、テクノロジーを代表とする時代の要請にこたえるような形で、ミュージシャンたちがこぞってコンピュター技術を駆使し、ソフトウェア音源の打ち込みだとか、サンプリングの音を、曲中に積極的に取り入れていくようになって、現在ではごく自然となったダンスミュージック的な手法を押し出すようになったのは、時代の側面から見てみれば、きわめて理にかなったことだったでしょう。
 
 
この2000年前後あたりから、それまでの音楽とは一風異なる新しいロックの形を追求していくアーティストが数多く出てきます。
 
その流れを象徴するのが、イギリスでは、Radioheadの「OK Computer」のリリース、アイスランドのSigur Ros、スコットランドのMOGWAIの登場であったかと思います。一方、もうひとつの巨大な音楽の市場規模を要するアメリカにおいては、もちろん、それ以前、スリントやガスター・デル・ソルをはじめとするバンドがポスト・ロックとも呼べる実験的な音楽を人知れず追求していたものの、メインストリーム界隈ではヨーロッパほど際立ったバンドは出てきませんでした。
しかし、それ以後も、依然としてアンダーグランドシーンでは活発な動きが続いており、それはまた、”カレッジロック”というアメリカの独特の音楽文化の後押しもあったか、Tortoise、Don Caballero、(後にザ・バトルスを結成、本格的ダンスミュージックを展開、ワープレコードと契約し、オーバーグラウンドで人気を博す)、といったアーティストが実験性の高いロック音楽を追求していきました。
(日本から、はるばる流浪の武士のごとくアメリカに出ていった、”MONO”という素晴らしいロックバンドもその一派に加えられましょう)
 
 
ともあれ、この一連の動きムーヴメントは、後になると、大まかに”ポスト・ロック”という括りで呼ばれるに至ります。総じて、こういったアーティストは、周辺のシーンにいるバンドに刺激を受け、それなりに互いに影響を与え合いながら、自分たち独自のスタイルを確立していくようになる。
そしてまた、このカナダの、God Speed You Black Emperor!という、ちょっと長い名のアーティストも、ジャズが盛んであるモントリオールというシーンで、周囲の音楽から独特の影響を受けて出てきたバンドのひとつ。

 
このGod Speed You Black Emperor!は、セールス的にはシガーロス、モグワイという他の有名な2つのバンドほど成功しなかったですけれども、ロック史的には画期的な音をもたらした重要な存在であるのには相違ありません。
彼らの音楽性の肝というのは、いつもコンセプト・アルバムのような手法をとっていること。たとえば、ピンク・フロイド、ビートルズ、ローリング・ストーンズなどもキャリアの中で一度くらい挑戦してみせたように、アルバム全体が明確な意図を持って作られているのが、コンセプト・アルバムと呼ばれる作品です。
 
God Speed You Black Emperor!は、ロック史の中でも、前例のないほど前衛的で過激な手法をとり、音楽という枠組みをどれだけ敷衍していけるのかを追求していきます。シネマティックなSEを長々と導入し、たとえば、老人、子供、女性の、悲しみのある語りであるとか、また、浜辺のような場所で遊んでいる効果音が使われたりしていて、ナラティブ、つまり、物語的な雰囲気が音楽中に貫かれています。
その映画的な雰囲気、アンビエンスを背景にし、ミニマル的な手法、同じギターフレーズの反復を繰り返すことによって、曲の序盤は、どことなく頼りなさげなギターフレーズではじまるのに、曲の中盤からは、その愚直さがむしろ凄みをましていって、ドラム、金管楽器、弦楽器が、ギターフレーズを優美に飾り立て、楽曲の終盤になると、ほとんど、「圧巻!」としか言えないほど、見事に壮大な音響の世界を形成し、聞き手にすさまじい迫力と説得力を帯びて訴えかけてきます。
 
このアルバムに収録されているのは、たったの四曲だけですが、すべての曲が、おのおの20分近くで構成されていて、ライナーノーツで尺の長さを確認しただけでギョッギョッと立ちすくみそうになってしまいます。
ところが、いざ、聴いてみると、その長い曲自体も、マスタリングの際にトラックに分けられていないだけで、実は、一曲自体がいくつかの短い小曲に分かたれていることがわかります。その曲と曲とを繋ぐ古典音楽のソナタ形式でいうところの連結部の役目として、長いシネマティックな効果音が挿入されています。
 
しかし、そういった長い時間のアンビエンスは必ずしも、ただたんに曲を引き伸ばすために使われているわけではなく、それ相応の意図が込められている事に気づきます。つまり、例えば、ゲオルグ・リゲティーの「アトモスフェール」のように、何らかの楽曲の雰囲気を定着させていくために使われていて、そして、その一種異様な雰囲気が極限まで行き着いたとき、エフリム・メナックのギターの叙情性あるフレーズが、まるで抒情詩を吟じるかのように奏でられて、曲をさらに複雑に展開させていく。そして、ミニマルミュージック的な旋律の音型が何度もくるくると変奏されていくことによって、曲の終盤においては、作り手もおそらく当初は全然予想しなかったような荘厳な展開に包まれていく。
 
目をつぶって聞いているだけでも、想像力を駆り立てられて、さながら映画館でドキュメンタリーフィルムを眺めているような奇異な錯覚をおぼえてしまいます。
 
 
このアルバムには、トランペットが印象的に曲を展開していく「Storm」をはじめ、彼らの二作目となるアルバムは粒ぞろいの名曲が揃っています。
ほとんど実際ほどの長さを感じさせない圧縮された緊迫感があり、そこに惹きつけられるものがあります。
 
「Static」においての後半部分のロックテイストには、Led Zepの「天国への階段」のクライマックスに比するような力強さ、狂気性があり、このバンドのもつ本当の凄さのようなものが感じられ、さらに、ドラムの怒濤の響きろギターの凄まじいディストーションの唸りが連れ立って嵐のように通り抜けていく。そして、曲の最後には、ギターの歪みが途切れ、轟音の果てにある冷ややかな静寂が訪れたときのなんともいえない痛快感。これは何にも喩えようがありません。
 
「Sleep」の十四分前後からのメナックの紡ぎ出す内省的で甘い旋律は、他のアルバムには見られない美麗な瞬間をもたらしています。
ここには、シューゲイザー的な手法も沢山盛り込まれていて、小刻みにためをしっかり作って刻まれるドラムが曲全体を後押ししている。
最後には、歪んだギターのフレーズ上に、美しいバイオリンの旋律の彩りが手のひらで包み込むように添えられることにより、曲の甘美さは、いよいよ最高潮を迎える。クライマックスにかけてのドラマティックさはやはり圧巻としかいいようがなく、曲を閉じていくにつれ、ギターの歪みはより一層鋭くをましていき、美しい旋律の上に不均衡なニュアンスをもたらす。ここには、普通ならば相容れない両極端の要素が音として共存していることに驚愕せずにいられない。
そして、何かしら、そこにこの音楽に病みつきになる要素があり、すべての音という音が消え去ったとき、なぜなのかしれないけれども、長い印象的な映画を見終えた瞬間のようなじんわりした深い余韻を与えてくれます。
 
最後の表題曲「Lift Your Skinny Fists Like Anttenas to Heaven」のクライマックスにいたっては、アンビエント・ドローンといってもほとんど差し支えない、広漠でいて異質な世界がいちめんにひろがっている。
ここまで来てようやく、聞き手は、このアルバムが何を表現していたのかを知ることになるでしょう。およそ一時間半以上の長い音楽の旅の終わりが来たことに安堵し、深い満悦にひたらざるにはいられなくなる。正直言うと、この音楽を聞き終えたことに大きな達成感すらおぼえてしまうようなところもあります。
 
彼らは、このアルバムでロックとしての音の広がりというのを、ノイズによって追求していって、それまでロックミュージックが、自分たちとは関係のないことと無視してきた領域、もしくは、これまでロックというジャンルが入り込むことがかなわなかった未知の領域へと恐れを知らずに踏み込んでいった。
 
この「Lift Your Skinny Fists Like Anttenas to Heaven」は、ロックの新しい境地を開拓した記念碑的な作品といえましょう。