ラベル Post Rock の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル Post Rock の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

 


今週金曜日に、Water From Your Eyesが『It’s a Beautiful Place』をリリースします。このアルバムは、デュオの鮮やかなクローム調の傑作で、ローリング・ストーン誌はこれを「彼らの最も喜びに満ちた、大胆不敵な作品」と称賛しています。

 

本日、アルバムの明るく広がりのある3rdシングル「Nights in Armor」を聴き、ジョ・シャファー監督によるミュージックビデオをご覧ください。


「Nights In Armorは、当初『Grill』という奇妙なLoreleiの曲として始まりました」とWFYEのNate Amosは説明します。

 

「リフが曲よりもクールだと感じていたので、新しいトラックに再利用し、ギターパートを根本的に異なる文脈に置くために、他の楽器を追加しました。これにより、ギターがどのような感情的な役割を果たせるか試したのです。「ボーカルのフックを書くのに苦労したのを覚えています。ある部分で逆再生し、逆再生したメロディを中心にベースラインを構築したと思います」  


 バンドは現在、ステージ上でアル・ナルド(ギター)とベイリー・ウォロウィッツ(ドラムス)を加えた4人編成となり、『It's A Beautiful Place』をプロモーションするため、北米とヨーロッパでの大規模なヘッドラインツアーを実施します。

 

前者(北米ツアー)は9月22日にフィラデルフィアでスタートし、11月2日のデンバーまで続き、ニューヨークのBowery Ballroom、ロサンゼルスのLodge Room、シカゴのSleeping Villageなどでの公演を含む。後者(ヨーロッパツアー)は11月13日にロンドンのVillage Undergroundで始まり、12月7日にリスボンのMusicboxで終了する。


 2023年の『Everyone's Crushed』(マタドール・レコードからのデビュー作で批評家から高い評価を受けた作品)以来、レイチェル・ブラウン(they/them)とネイサン・アモス(he/him)は、都市のオルタナティブ音楽シーンの柱となり、最も尊敬されるアンダーグラウンドバンドとなりました。

 

彼らはインターポールのツアーでサポートアクトとして巨大なステージで演奏し、メキシコシティで16万人のファンを前にパフォーマンスしました。


地元では、イースト・リバーでDIYボートショーのフランチャイズを設立し、都市の音楽の最前線にある友人たち——YHWH Nailgun、Model/Actriz、Frost Children、Kassie Krut——をホストしてきました。ブラウンは「thanks for coming」名義で新しいEPをリリースし、アモスはソロプロジェクト「This Is Lorelei」で高い評価を受けたフルアルバムをリリースしました。  


デュオは昨年夏に『It’s a Beautiful Place』を完成させました。これはWFYEの他のリリース同様、アモスの寝室で、モーク&ミンディ時代の破れたロビン・ウィリアムズのポスターの下で制作されました。「要するに」とアモスは冗談を交えて言う。「ロビンはウォーター・フロム・ユア・アイズの無言のメンバーみたいなものさ」


しかし、最初のシングル「ライフ・サインズ」は、本格的なライブバンドのダイナミクスを基に形作られました。「バンドと演奏する時は、そのバンドを念頭に置いて曲を書くものだけど、これはWFYEのために、地下室よりも大きな場所で演奏するのを想像して書いた初めての曲だ」と彼は指摘します。


 「Nights In Armor」は、フリスチャンテのストラトキャスターの至福の渦で始まる。『Born 2』は世界観を構築するギターのアタックで、ブラウンの声が上空を滑るように響く歌詞は、SF文学と政治理論への執着を反映している。

 

「世界はそれほど普通で / 別の何かに生まれ変わるために存在する。私は『The Dispossessed』(ウルスラ・K・ル・グインの1974年のアナキスト的ユートピア小説)と『There Is No Unhappy Revolution』(マルチェロ・タリの2017年のノンフィクション)をバックパックに入れて、1年以上持ち歩いている」とブラウンは語る。

 

「これらの本は4つの異なる大陸とほぼすべての州境を旅してきました。アルバムの歌詞を書く際、両方の本を徹底的に読み返しました」


『It’s A Beautiful Place』全体に、バンドが曲球をホームランに磨き上げた明確な感覚が漂う。迫りくるような悲しさと、驚愕と恐怖が交錯する。それは『ブレードランナー』に『WALL-E』の要素を添えたような、キューブリックとアシモフにジェイとサイレント・ボブの影を宿した世界だ。これらの曲は外の世界を見つめ、私たちの小ささを自覚し、宇宙における私たちの位置を問いながら、周囲の美しさを称賛する。


「Nights in Armor」


ルイビルのアートロック・トリオ、Womboが今週金曜日に4枚目のアルバム『Danger in Fives』をリリースする。 このプロジェクトは、2023年に4曲入りの『Slab EP』をリリースして以来、バンドにとって初めてのリリースとなる。アルバム発売前にぜひチェックしてもらいたい。


ウォンボは、最後の先行シングル「S.T. Tilted」をリリースし、バンドのキャメロン・ロウ(ギター)が監督を務めたミュージック・ビデオを発表する。

 

 「S.T.Tilted」は、ロウのオフキルターなギター、シドニー・チャドウィックの魅惑的なヴォーカルとベース、ジョエル・テイラーの骨格のあるパーカッションなど、Womboの最も純粋なエッセンスを抽出し、彼らの特異な映像レンズを通してフィルターにかけたものだ。 S.T.ティルテッド」では、熱狂的なリフの上でメロディーが高らかにハミングし、リンプ・ビズキットからエリック・B&ラキムまで、さまざまな音楽が引用されている。


「 S.T.Tileted」のミュージック・ビデオは、ロウとチャドウィックがチャドウィックのガレージで手作りした待合室のセットで構成され、デンジャー・イン・ファイヴスの規範となる、熟練したセルフプロデュースビデオである。


この3分半のカットもまた、型破りなパーカッション、不吉なギター、不可解な歌詞(この場合は「そして傾いた頭で、バランスを取り戻そうとする/時々スイッチを入れて、静かに開く」というマントラが繰り返される)の間で驚くべきバランスを保っている。 ギタリストのキャメロン・ロウが言うように、この曲はバンドが『Slab』以降に書いた最初の曲で、『Fives』のために最終的にカットされた。 


「うまくいくとは思っていなかったが、対照的なパートがすべてクールな仕上がりになった。 「Womboの曲の中で、この曲のようにギターが最初に書かれ、ベースとドラムのパートがその後に地下室でジャム・アウトされるのは珍しいことだ。 奇抜なギター・パートは最後にできたんだ」



「S.T. Tilted」



イギリスの実験的なポストパンク5人組バンド、Squid(スクイッド)がWarpからニューアルバム『Cowards』をリリースした。(レビューを読む)


今回、彼らは新曲 「The Hearth and Circle Round Fire」 をリリースした。最新アルバムのようにマスロック風のテイストであるが、一方で、パンキッシュなエネルギーに満ちあふれている。いわば彼らのパワフルな音楽性がにじみ出た一曲である。


ボーカル兼ドラマーのオリー・ジャッジは、プレスリリースでこの曲について次のように語っています。


「”The Hearth and Circle Round Fire "はパンキッシュな曲で、とても簡単にできたんだけど、その簡単さに不満を感じていた。最初は、15分のジャムとしてレコーディングし、その後、音源をバラバラにしてテープで貼り合わせることに決めた。この曲は実は、レイ・ブラッドベリの『華氏451』やケイ・ディックの『They』に出てくるディストピアの世界にインスパイアされたんだ」
 
 
 
 
 「The Hearth and Circle Round Fire」

イタリアのフィエスタ・アルバ    ポリリズム、ポスト・マスロック、そして世界中の声を通したグローバルな音の旅


謎めいたイタリアの実験的なロックバンド、Fiesta Alba(フィエスタ・アルバ)は、エレクトロニック、ヒップホップ、アフロビート、プログレ、オートチューンのボーカル、アヴァンキャルド・ジャズマスロックを組み合わせて、独創的な音楽スタイルをヨーロッパのシーンにもたらそうとしている。 Battles、C'mon Tigre、Squidなど、実験的なロックがお好きな方は聴いてみてほしい。


彼らはメキシコのレスリングのルチャ・マスクを特徴とし、異形としての印象が強い。不気味だが、そのサウンドはさらにワイアードだ。覆面のバンドという面ではイギリスのGOATを彷彿とさせる。しかし、そのサウンドはミステリアスでエレクトロニックのキャラクターが強い。今回、バンドのPRエージェンシーから、バンドメンバーによるトラックバイトラックが到着した。


デビュー・フル・アルバム『Pyrotechnic Babel』が2025年3月21日(金)にリリースされた。 ここ数週間、シングル「No Gods No Masters」(feat.カタリーナ・ポクレポヴィッチ)が先行発売されている。 このアルバムは、neontoaster multimedia dept./ Bloody Soundレーベルからデジタル・フォーマットとCD(スタンダード・バージョンと限定デラックス・バージョン)で発売済み。



『Pyrotechnic Babel』は、フィエスタ・アルバによる初の公式アルバムであり、2023年のセルフタイトルEPに続く2枚目のリリース。 40分以上に及ぶこのアルバムは、複雑で多面的な音楽を提供し、彼らの高い評価を得たデビュー作で紹介された言語やテーマを洗練させ、発展させている。


タイトルの『Pyrotechnic Babel』は、音のマニフェストである。数学ロックに根ざしながら、ジャンル、音色、言語を変幻自在にブレンドしている。 アフリカン・ポリリズム、ダブ、20世紀のアメリカ人作曲家の洗練されたミニマリズム、ループトロニカ、プログレッシブ・ロック、現代ブリティッシュ・ジャズ、ドラムンベースが豊かなサウンドスケープに融合している。 その結果、色彩とエネルギーがダイナミックに爆発し、まさに花火のようなバベルとなった。


初リリースでイタリア、アメリカ、アフリカの声を取り入れたフィエスタ・アルバは、その幅をさらに広げた。 


このアルバムでは、日本、中央ヨーロッパ、アフリカ、イタリアのシンガーやラッパーが、ラディカルな思想家、哲学者、現代の語り部たちがフィーチャーされている。 バンドの複雑な音楽的テクスチャーに支えられたこれらの声は、現代世界の矛盾や複雑さを生き生きと表現している。


周縁部出身でありながら、紛れもなく国際的なビジョンを持つフィエスタ・アルバは、音と文化の探求を続けている。 『Pyrotechnic Babel』は、野心的な第二のステップであり、全世界からの声、音、アイデア、闘争に満ちたレコードである。



 

 

【Track  By Track】フィエスタ・アルバによる楽曲解説


1. No Gods No Masters (feat. Katarina Poklepovic)


シンセティックなサウンドのギター、アフロなベースライン、デジタルビートを模倣したドラムの中、カタリーナ・ポクレポヴィッチ(ソー・ビースト)の声が、神も主人も必要ない感覚の帝国を語りかける。

 

2. Technofeudalism (feat. Gianis Varoufakis)


ループするギターとプログレッシブ・ミュージックのエコーが、ディストピア的な現在を宣告された惑星のサウンドトラックとして容赦ないリズムを打ち鳴らす中、現代の預言者が新しい資本主義のアイデンティティを概説する。


3. Je Suis le Wango (feat. Sister LB)


ミニマルなギターと断片的なベースラインが密に織りなす上に、セネガル出身のシスターLBの歌声が音楽的、地理的な境界を超えた架け橋を築く。 彼女は目に見えない障壁を燃え上がらせる花火のようなバベルを歌う。


4. Collective Hypnosis


息もつかせぬエレクトロニクスが、ループするギターとともに縦横無尽に回転する。 アルバム初のインストゥルメンタル・トラックでは、タイトなリズムと万華鏡のようなシンセとギターのレイヤーが、私たち全員が陥ってしまった集団催眠を物語る。


5. Waku Waku (feat. Judicious Brosky)


バトルズとヘラの中間のような、インストゥルメンタル・マス・ロックが織り成す濃密なテクスチャーと非常にタイトなリズムの上で、日本人ラッパーの武骨な歌い回しが際立つ。 高速列車を舞台にした極東の小さなラブストーリー。


6.Post Math


インストゥルメンタルのポリリズムが幾重にも重なり、多面的なハイパーキューブを形成する。 エレクトロニック・ブラス、ベース・ライン、歪んだギター・リフ、ミニマルなシンセ、切迫したドラム・マシーンの中で、奇妙なメトリックス、トニック・シフト、不協和音が見事に調和している。 タイトルが示すように、この曲はほとんどマニフェストだ。


7. Learn to Ride Hurricanes (feat. Alessandra Plini)


ディストピア社会で生きることの葛藤についての生々しい寓話が、宣言的でありながら夢のような声で歌われている。 ストリングスが幽玄なギターに寄り添い、アルバムの中で最もロック色の強いエピソードとなっている。


8. Doromocrasy


ギターとシンセが交差し、追いかけっこをしながら、四角く容赦のないリズムを刻む。 スピードのパワーの神話を物語る、カラフルで花火のようなインストゥルメンタル曲。


9. Safoura (feat. Pape Kanoute)|


アフリカのグリオの賢者が、マスロックのポリリズムとエシェリアのアラベスクの上に座り、世界最古の物語を語る。


10. Mark Fisher Was Right (feat.Mark Fisher)


加速度論者の故マーク・フィッシャーは、オンユー・サウンドの威厳に響くポリリズミックなダブ・トラックに先見の明を感じさせる歌声を乗せ、アルバムを最高の形で締めくくる。


【Biography】


フィエスタ・アルバの音楽は、オルタナティヴ・ロックの進化を通して、提案、影響、実験がダイナミックに混ざり合い、本物のルートを描いている。


 アングロサクソン的な数学ロックの独特な解釈から始まったバンドは、アフリカン・ポリリズム、ループトロニカ、ダブ、ヒップホップ、プログレッシブ、ドラムンベースとの過激なハイブリッドによって、ジャンルの限界を越えようとしている。 インストゥルメンタルに重点を置きながら、フィエスタ・アルバは世界中の声をサウンドに加える。 


各トラックはユニークな個性を持ち、パンク、ラップ、アフロビートの要素で汚染されている。 その結果、ハイパー・キネティックで洗練された万華鏡のようなサウンドが生まれ、観客や批評家を魅了し、彼らのデビューEP(s/t, neontoaster multimedia dept.)が熱狂的に歓迎されたことが証明している。 


この研究は、このファースト・アルバム『Pyrotechnic Babel』において増幅され、バンドは新たな音楽的領域を探求し、慣習に挑戦し続けている。 実験と不適合に満ちた彼らのアプローチは、ジャンルやアルゴリズムに縛られる音楽シーンに対抗するものだ。


バトルズからキング・クリムゾン、アイ・ヘイト・マイ・ヴィレッジ、カエ・テンペスト、エイドリアン・シャーウッド、サンズ・オブ・ケメットを経て、ブライアン・イーノ、スティーヴ・ライヒ、フェラ・クティといった巨人にまで影響を受けたと宣言している。 彼らの音楽の流動的な進化を反映した、モザイクのような影響。

 Squid  『Cowards』

 

Label: Warp

Release: 2025年2月7日

 

 

Review

 

最もレビューに手こずった覚えがあるのが、Oneohtrix Point Never(ダニエル・ロパティン)の『Again』だったが、ブリストルのポストパンクバンド、Squidの『Cowards』もまた難物だ。いずれも、Warpからの発売というのも面白い共通点だろう。


そして、いずれのアルバムも成果主義に支配された現代的な観念からの脱却を意味している。スクイッドは無気力と悪魔的な考えがこのアルバムに通底するとバンドキャンプの特集で語った。また、サマーソニックの来日時の日本でのプロモーション撮影など、日本に纏わる追憶も織り交ぜられており、日本の映像監督が先行曲のMVを制作している。従来、スクイッドは、一般的なロンドンのポストパンクシーンと呼応するような形で登場。同時に、ポストパンクの衝動性というのがテーマであったが、ボーカルのシャウトの側面は前作『O Monolith』から少し封印されつつある。それとは別のマスロックの進化系となる複雑なロックソングを中心に制作している。さて、今回のイカの作品は音楽ファンにどのような印象をもって迎え入れられるのだろう。

 

 

近年、複雑な音楽を忌避するリスナーは多い。スクイッドも、時々、日本国内のリスナーの間でやり玉に挙げられることもあり、評論家筋の評価ばかり高いという意見を持つ人もいるらしい。少なくとも、最新の商業音楽の傾向としては、年々、楽曲そのものが単純化されるか、省略化されることが多いというデータもあるらしい。また、それはTikTokのような短いスニペットで音楽が聞かれる場合が増加傾向にあることを推察しえる。ただ、音楽全体の聞き方自体が多様化しているという印象も受ける。以前、日本のTVに出演したマティ・ヒーリーは短いスニペットのような音楽のみが本質ではないと述べていた。結局、音楽の楽しみ方というのは多彩化しており、簡潔な音楽を好む人もいれば、それとは反対に、70年代のプログレッシヴロックのような音楽の複雑さや深みのような感覚を好き好むと人もいるため、人それぞれであろう。ちゃちゃっとアンセミックなサビを聞きたいという人もいれば、レコードで休日にじっくりと愛聴盤を聞き耽りたいという人もいるわけで、それぞれの価値観を押し付けることは出来ない。

 

一方、スクイッドの場合は、間違いなく、長い時間をかけて音楽を聞きたいというヘヴィーなリスナー向けの作品をリリースしている。また、『Cowards』の場合は、前作よりも拍車がかかっており、まさしくダニエル・ロパティのエレクトロニクスによる長大な叙事詩『Again』のポストロックバージョンである。スクイッドは、このアルバムの冒頭でチップチューンを絡めたマスロックを展開させ、数学的な譜割りをもとに、ミニマリズムの極致を構築しようとしている。

 

スクイッドはアンサンブルの力量のみで、エキサイティングなスパークを発生させようと試みる。バンドが語るアパシーという感覚は、間違いなくボーカルの側面に感じ取られるが、バンドのセッションを通じてアウトロに至ると、そのイメージが覆されるような瞬間もある。それは観念というものを打ち破るために実践を行うというスクイッドの重要な主題があるわけだ。激動ともいえるこの数年の大きな流れからしてみれば、小市民は何をやっても無駄ではないのかという、音楽から見た世界というメタの視点から、無気力に対して挑もうとする。これが「Crispy Skin」という日常的な出来事から始まり、大きな視点へと向かっていくという主題が、ミニマリズムを強調した数学的な構成を持つマスロック、そしてそれとは対象的な物憂げな雰囲気を放つボーカルやニューウェイヴ調の進行を通じて展開されていく。この音楽は結果論ではなく、「過程を楽しむ」という現代人が忘れかけた価値観を思い出させてくれるのではないか。

 

以前、ピーター・ガブリエルのリアル・ワールド・スタジオ(実際はその近くの防空壕のようなスタジオ)で録音したとき、スクイッドは成果主義という多くのミュージシャンの慣例に倣い実践していたものと思われる。だが、このアルバムでは彼等は一貫して成果主義に囚われず、結果を求めない。それがゆえ、非常にマニアックでニッチ(言葉は悪いが)なアルバムが誕生したと言える。その一方で、音楽ファンに新しい指針を示唆してくれていることも事実だろう。

 

そして「プロセスを重視する」という指針は、「Building 500」、「Blood On The Boulders」に色濃く反映されている。ベースラインとギターラインのバランスを図ったサウンドは、従来のスクイッドの楽曲よりも研ぎ澄まされた印象もあり、尚且つ、即興演奏の側面が強調されたという印象もある。いずれにしても、ジャジーな印象を放つロックソングは、彼等がジャズとロックの融合という新しい節目に差し掛かったことを意味している、というように私自身は考えた。


続く「Blood On The Boulders」では、ダークな音楽性を通して、アヴァンギャルドなアートロックへと転じている。ハープシコードの音色を彷彿とさせるシンセのトリルの進行の中で、従来から培われたポストパンクというジャンルのコアの部分を洗い出す。この曲の中では、女性ボーカルのゲスト参加や、サッドコアやスロウコアのオルタネイトな性質を突き出して、そしてまるで感情の上がり下がりを的確に表現するかのように、静と動という二つのダイナミクスの変遷を通じて、スクイッドのオリジナルのサウンドを構築するべく奮闘している。まるでそれは、バンド全体に通底する”内的な奮闘の様子”を収めたかのようで、独特な緊張感を放つ。また、いっとき封印したかと思えたジャッジのシャウトも断片的に登場することもあり、これまで禁則的な法則を重視していたバンドは、もはやタブーのような局面を設けなくなっている。これが実際的な曲の印象とは裏腹に、何か心がスッとするような快感をもたらすこともある。

 

 

同じように、連曲の構成を持つ「Fieldworks Ⅰ、Ⅱ」では、ハープシコードの音色を用い、ジャズ、クラシックとロックが共存する余地があるのかを試している。もっとも、こういった試みが出来るというのがスクイッドの音楽的な観念が円熟期に達しつつある証拠で、アンサンブルとしての演奏技術の高いから、技巧的な試みも実践出来る。しかし、必ずしも彼等が技巧派やスノビズムにかぶれているというわけではない。


例えば、「Ⅰ」では、ボーカルそのものはスポークワンドに近く、一見すると、回りくどい表現のように思えるが、ハープシコードの対旋律的な音の配置を行い、その中でポピュラーソングやフォーク・ソングを組み立てるというチャレンジが行われている。そして「Ⅰ」の後半部では、シンセによるストリングスと音楽的な抑揚が同調するようにして、フィル・スペクターの「ウォール・オブ・サウンド」のオーケストラストリングを用いて、息を飲むような美しい瞬間がたちあらわれる。この曲では必ずしも自己満足的なサウンドに陥っていないことがわかる。ある意味では、音楽のエンターテインメント性を強調づけるムーブメントがたちあらわれる。

 

また、「Ⅱ」の方では、バンドによるリズムの実験が行われる。クリック音(メトロノーム)をベースにして、リズムから音楽全体を組み上げていくという手法である。また、その中にはジャズ的なスケール進行から音楽的な細部を抽出するというスタイルも含まれている。一つの枠組みのようなものを決めておいて、そのなかでバンドメンバーがそれぞれ自由な音楽的表現を実践するという形式をスクイッドは強調している。それらがグラスやライヒのミニマリズムと融合したという形である。それが最終的にはロックという視点からどのように構築されるかを試み、終盤に音量的なダイナミクスを設け、プログレやロック・オペラの次世代にあるUKミュージックを構築しようというのである。試みはすべてが上手くいったかはわからないけれども、こういったチャレンジ精神を失えば、音楽表現そのものがやせほそる要因ともなりえる。

 

以後、楽曲自体は、聞きやすい曲と手強い曲が交互に収録されている。「Co-Magnon Man」ではロックバンドとしてのセリエリズムに挑戦し、その中でゲストボーカルとのデュエットというポピュラーなポイントを設けている。シュトックハウゼンのような原始的な電子音楽の醍醐味に加えて、明確に言えば、調性を避けた十二音技法の範疇にある技法が取り入れられるが、一方で、後半では珍しくポップパンクに依拠したようなサビの箇所が登場する。明確にはセリエリズムといえるのか微妙なところで、オリヴィエ・メシアンのような「調性の中で展開される無調」(反復的な楽節の連続を通して「調性転回」の技法を用いるクラシック音楽の作曲方法で ''Sequence''と言う)というのが、スクイッドの包括的なサウンドの核心にあるのだろう。これらの実験音楽の中にあるポップネスというのが、今後のバンドのテーマになりそうな予感だ。また、ギターロックとして聞かせる曲もあり、タイトル曲「Cowards」はそれに該当する。ここでは、本作のなかで唯一、ホーンセクション(金管楽器)が登場し、バンドサウンドの中で鳴り響く。アメリカン・フットボールの系譜にあるエモソングとしても楽しめるかもしれない。

 

どうやら、アルバムの中には、UKの近年のポストロックやポストパンクシーンをリアルタイムに見てきた彼等にしか制作しえない楽曲も存在する。「Showtime!」は、最初期のBlack Midiのポスト・インダストリアルのサウンドを彷彿とさせ、イントロの簡潔な決めとブレイクの後、ドラムを中心としたスムーズな曲が繰り広げられる。そして、アルバムの序盤から聴いていくと、観念から離れ、現在にあることを楽しむという深い主題も見いだせる。そのとき、スクイッドのメンバーは、おそれや不安、緊張から離れ、本来の素晴らしい感覚に戻り、そして心から音楽を楽しもうという、おそらく彼等が最初にバンドを始めた頃の年代の立ち位置に戻る。


アルバムの最後では、彼等のジャンルの括りを離れて、音楽の本質や核心に迫っていく。ある意味では、積み上げていったものや蓄積されたものが、ある時期に沸点のような瞬間を迎え、それが瓦解し、最終的には理想的な音楽に立ち返る。その瞬間、彼等はアートロックバンドではなくなり、もちろんポストパンクバンドでもなくなる。しかし、それは同時に、心から音楽をやるということを楽しむようになる瞬間だ。「Cowards」は、音楽的に苦しみに苦しみ抜いた結果にもたらされた清々しい感覚、そして、次なるジャイアント・ステップへの布石なのである。

 

 

 

 

 82/100

 

 

Best Track 「Blood On The Boulders」

 

 

イギリス/ブリストルのエクスペリメンタル・ポストパンク5人組、Squidが今週金曜日にWarpからアルバム『Cowards』をリリースする。 3枚目のシングル「Cro-Magnon Man」がリリースされた。 この曲は、ギタリストのルイス・ボルレーズのヴォーカルと、ゲスト・ヴォーカリストのクラリッサ・コネリー、トニー・ンジョク、ローザ・ブルックをフィーチャーしている。


『Cowards』はスクイッドのサード・アルバムで、2023年の『O Monolith』(レビューを読む)と2001年のデビュー・アルバム『Bright Green Field』に続く作品である。 Squidは、Louis Borlase、Ollie Judge、Arthur Leadbetter、Laurie Nankivell、Anton Pearsonが参加している。


『Cowards』は、ロンドンのクラウチ・エンドにあるチャーチ・スタジオで、マーキュリー賞受賞プロデューサーのマルタ・サローニとグレース・バンクスと共にレコーディング。 バンドの最初の2枚のアルバムを録音した長年のコラボレーター、ダン・キャリーがプロデュースを担当した。 ジョン・マッケンタイア(トータス)がミキシングを、ヘバ・カドリーがマスタリングを担当した。


新しいアルバムについて、ボーレイズは以前のプレスリリースでこう語っている。 「素晴らしい曲作りのアルバムを考えていた。 濃密で複雑だった『O Monolith』とは全く異なる方法で共鳴するシンプルなアイデア」ジャッジは、「ツアーは、当初は気づかなかった方法でこのアルバムに反映された。 ニューヨーク、東京、東欧など、5人全員が一緒に訪れた場所だった」と回想する。


「Cro-Magnon Man」




 


 

伝説的なポストロックバンド、MONOの旅は、島根から始まり、東京に移り、そして最終的にアメリカへと繋がっていった。弦楽器を含めるインストを中心としたギターロックの美麗な楽曲は、日本のポストロックシーンのシンボルにもなり、このジャンルの一般的な普及に大きな貢献を果たした。近年、彼らの唯一無二の音楽観は、ライブステージで大きく花開きつつある。


昨年、MONOは、伝説的なエンジニアで、ロパート:プラントのソロアルバム、ニルヴァーナの『In Utero』を手掛け、Big Black、Shellacとしても活動したスティーヴ・アルビニのプロデュースによるアルバム『Oath』を発表した。本作は、スティーブ・アルビニのお膝元のエレクトリカル・オーディオで制作されている。アルビニが最後に手掛けたアルバムの一つでもあった。

 

『You Are There』(2006)を中心にポストロック/音響派として象徴的なカタログを持つ彼らの魅力はレコーディングだけにとどまらない。年間150本のステージをこなす、タフなライブ・バンドとしても熱狂を巻き起こしてきた。

 

MONOは、大規模なワールドツアーを発表し、ライブを続けている。パリ、ロンドン、ブエノスアイレス、ベルリン、シカゴ、ブルックリン、上海など、文字通り世界の主要都市でコンサートを続けている。その日程の中にはアジアツアーも含まれており、東京、大阪での公演を行った。

 

今回、2024年11月、Spotify O-East(東京)で開催されたライブパフォーマンスの模様が配信された。ライブのハイライト「Everlasting Light」 では、トレモロにより生み出されるドローンのギターを中心にダイナミックなアンサンブルが構築されている。MOGWAI、Explosions In The Skyに匹敵する迫力を映像として収録。重厚でありながら叙情性を失わない正真正銘の音響派のサウンドを聴くと、およそ結成25年目にしてMONOの最盛期がやってきたことを痛感させる。

 

2025年もワールドツアーは進行中だ。2月19日のボストン公演に始まり、フィラデルフィア、アトランタ、ヒューストン、シアトル、デンバーと北米を中心に公演を開催する予定である。現時点では3月の公演日程が公表されている。公式ホームページにてバンドの日程を確認出来る。

 

 

 「Everlasting Light」

 

©Harrison Fishman


Squidは、2月7日にワープ・レコードからリリースされる次作『Cowards』を発表した。2023年の『O Monolith』に続くこのアルバムの発表とともに、リードシングル「Crispy Skin」の伊藤高志監督によるミュージックビデオが同時公開された。以下からチェックしてほしい。


「Crispy Skinは、カニバリズムが社会の規範となり、人間が製造され、スーパーマーケットで売られるという筋書きのディストピア小説「Tender Is The Flesh」を読んで、歌詞のインスピレーションを得たんだ」


「このような本を読むと、たいていの人は自分がこのような物語の中で道徳的に優位に立つような人間だと思い描くと思う。この曲は、このような絶望と恐怖の物語の中で道徳心を持つことがいかに難しいかということについて書かれたんだ」


ジャッジは、「もし私が実際にその世界にいたら、おそらくこの例では臆病者になっていただろう」と付け加えた。


このミュージックビデオは、1995年に受賞した伊藤高志の実験的短編映画『Zone』の映画化である。伊藤は次のように説明している。

 

「顔のない男の映画。手足をロープで縛られ、白い部屋の中で微動だにしない男。荒唐無稽な妄想に包まれたこの男は、私自身の再構築だ。この部屋での一連の異常な光景は、私の内面にあるものを表現している。私は、記憶、悪夢、暴力的なイメージの間につながりを作ろうとした」

 


『Cowards』には、デンマークの実験的なソングライター、クラリッサ・コネリー、作曲家、ピアニストのヴォルフガングが参加している。

 


「Crispy Skin」


Squid 『Cowards』

Label: Warp

Release: 2025年2月7日


Tracklist:


1. Crispy Skin

2. Building 650

3. Blood on the Boulders

4. Fieldworks I

5. Fieldworks II

6. Cro-Magnon Man

7. Cowards

8. Showtime!

9. Well Met (Fingers Through The Fence)

Kassie Krut

フィリーのエクスペリメンタル・ユニットKassie Krut(PalmのKasra KurtとEve Alpert、Mothers, Body MeatのMatt Andereggによるトリオ)は先日、Fire Talkと契約を結んだばかり。彼らはセルフタイトルのデビューEPを発表した。Fire Talk Recordsから12月6日にリリースされる。

 

先行リリースされた「Reckless」に加え、ニューシングル「Racing Man」が収録されている。この曲のビデオは以下から。メタリックなハイハットを基に緻密にバンドアンサンブルが組み上げられていく。コーラスやボーカル、ヒップホップのリズム、ドラムンベース風のサンプラー等、遊び心満載のシングルとなっている。

 

「Racing Man」



Kassie Krut 『Kassie Krut』EP

 

Label: Fire Talk

Release: 2024年12月6日


Tracklist:

1.Reckless

2.Racing Man

3.United

4.Espresso

5.Hooh Beat

6.Blood

 

Pre-order: https://found.ee/kassiekrut

 

Mogwai


スコットランドのポストロックバンドMOGWAIは11枚目のスタジオ・アルバム『The Bad Fire』を発表した。2021年の『As The Love Continues』に続くこのアルバムは、1月24日にロック・アクション/テンポラリー・レジデンスからリリースされる。


アルバムの冒頭を飾るシングル「God Gets You Back」と新曲「Lion Rumpus」が収録されている。長年のコラボレーターであるアントニー・クルックが監督を務めたこの曲のビデオを以下でチェックしてみよう。


モグワイはラナークシャーでプロデューサーのジョン・コングルトンとニュー・アルバムをレコーディングした。『As The Love Continues』をリリースした高揚感の後、その後の数年間は個人的に辛いものだった。とくにバリーの場合は、彼の娘の深刻な家族の病気があった。このアルバムを書き、レコーディングするために再び集まったことは、避難所のように感じられたし、ジョン・コングルトンと一緒に特別なものを作れたと感じています。僕らの音楽が人生の辛い時期を乗り越えるのに役立ったという声をよく聞くが、今回ばかりは僕らにも当てはまると思う」



「Lion  Rumpus」


◾️ポストロックの代表的なアーティストと名盤をピックアップ


MOGWAI 『The Bad Fire』



 Label: Rock Action/Temporary Residence

Release:2025年1月24日


1. God Gets You Back


2. Hi Chaos


3. What Kind of Mix is This?


4. Fanzine Made Of Flesh


5. Pale Vegan Hip Pain


6. If You Find This World Bad, You Should See Some Of The Others


7. 18 Volcanoes


8. Hammer Room


9. Lion Rumpus


10. Fact Boy



Mogwai:


モグワイは1995年にスコットランドのグラスグローで結成された実験的ロックバンド。それ以来20年間、彼らは過去四半世紀で最も重要かつ影響力のあるアンダーグラウンド・アーティストの一組としての地位を確立してきた。


数多くのスタジオ・アルバムの批評的・商業的成功に加え、モグワイの音楽は何十本もの象徴的な映画に登場し、バンドはいくつかの話題作-特にフランスの超自然ドラマ『Les Revenants(帰ってきた)』-の音楽を担当している。モグワイは、パンク・ロックの精神と誠実さを、忍耐強く、映画のような大げさな演出にシームレスに注ぎ込む稀有なバンドである。


Mogwai
©︎Steve Gullick


ポスト・ロックの大御所モグワイがニューシングルを引っ提げて帰ってきた。今春の北米公演を含む2025年の大規模ツアーも計画中。3月には来日公演も予定している。全日程は以下の通り。


ジョン・コングルトンのプロデュースによる 『God Gets You Back』は、典型的なモグワイの曲のようにゆっくりとした雰囲気で始まり、豊かなハーモニーとともにドリームポップ/ロックの領域へと突入する。


この曲には意外なコラボレーターもいる。バリー・バーンズはこの曲について、「メロディーかボーカルが必要だと思ったが、歌詞が思いつかなかったので、7歳の娘に歌詞を作ってくれるように頼んだ。「Hand Held Cine Club 」(Justin and James Lockey)によるビデオは以下から。


2021年の『アズ・ザ・ラヴ・コンティニューズ』以来となるニュー・アルバムについての詳細な情報はない。

 


「God Gets You Back」





Mogwai – 2025 Tour Dates

Feb 04 – Amsterdam, Netherlands – Paradiso

Feb 06 – Hamburg, Germany – Große Freiheit 36

Feb 07 – Copenhagen, Denmark – Vega

Feb 08 – Stockholm, Sweden – Fållan

Feb 09 – Oslo, Norway – Rockefeller

Feb 11 – Berlin, Germany – Admiralspalast

Feb 12 – Leipzig, Germany – Taubchenthal

Feb 14 – Maastricht, Netherlands – Muziekgieterij

Feb 15 – Groningen, Netherlands – De Oosterpoort

Feb 17 – Brussels, Belgium – Ancienne Belgique

Feb 18 – Antwerp, Belgium – De Roma

Feb 19 – Paris, France – Casino De Paris

Feb 20 – London, England – O2 Academy Brixton

Feb 22 – Leeds, England – O2 Academy

Feb 23 – Edinburgh, Scotland – Usher Hall

Mar 08 – Bangkok, Thailand – Voice Space

Mar 11 – Osaka, Japan – Gorilla Hall

Mar 12 – Tokyo, Japan – Zepp Shinjuku

Mar 14 – Tapai, Taiwan – Zepp New Taipei

Apr 7 – Washington, D.C., USA – 9:30 Club

Apr 08 – Philadelphia, PA, USA – Theatre Of Living Arts

Apr 10 – Brooklyn, New York City, USA – Brooklyn Steel

Apr 11 – Boston, MA, USA – Paradise Rock Club

Apr 13 – Montreal, Canada – Beanfield Theatre

Apr 14 – Toronto, Canada – Danforth Music Hall

Apr 16 – Detroit, MI, USA – Saint Andrew’s Hall

Apr 17 – Chicago, IL, USA – The Metro

Apr 18 – Minneapolis, MN, USA – Varsity Theatre

Apr 20 – Denver, CO, USA – Ogden Theatre

Apr 22 – Salt Lake City, UT, USA – Commonwealth Room

Apr 24 – Vancouver, Canada – The Commodore Ballroom

Apr 25 – Seattle, WA, USA – The Showbox

Apr 26 – Portland, OR, USA – Roseland Theatre

Apr 28 – San Francisco, CA, USA – The Regency Ballroom

Apr 29 – Los Angeles, CA, USA – The Bellwether

Apr 30 – Phoenix, AZ, USA – Van Buren

May 03 – Austin, TX, USA – Emo’s

May 04 – Dallas, TX, USA – The Echo Lounge

ロンドンを拠点とするエクスペリメンタルロックバンド、Man/Woman/Chainsawがファットポッサムと契約

 

ロンドンを拠点とするバンド、Man/Woman/Chainsawが、ファット・ポッサム・レコードとの契約を発表した。ビリー・ワード(ヴォーカル、ギター)、エミー=メイ・エイブリー(ヴォーカル、キー/シンセ)、ヴェラ・レッパネン(ヴォーカル、ベース)、クリオ・スターウッド(ヴァイオリン)、ローラ・チェリー(ドラムス)を擁する実験的な5人組ロックバンド。

 

M/W/Cはノイズやパンクを通過し、ストリングスを含めるオーケストラからの影響を活かしている。シンセやキーボードを使用し、冒険心に富み、静と動を生かした精彩感溢れる音楽のストーリーを描く。


ライブでも人気の「Ode To Clio」は、ペースを変え、予想外のものを生み出す彼らの能力を表現している。ストリングスを活かした静かで美しいミニマルミュージックの立ち上がりから、プログレ的な展開を描き、この曲はパンクやメタル性を活かしながら驚くべき着地点を見出す。

 

「この曲を書くのに1年かかったんだ。その間に出会った人々や人間関係を無意味にコラージュしたもので、穏やかなものから波乱に満ちたものまで、クリオの包括的なヴァイオリンのメロディがすべてを支えているんだ」とバンドは説明する。


16歳でデビューし、3枚のシングルを自主制作して以来、Man/Woman/Chainsawはロンドンで最もエキサイティングで予測不可能な若手アーティストのひとりとして、喜びと混沌を等しく融合させながら、その地位を確立してきた。


昨年の「What Lucy Found There」でブレイクした彼らは、先日100回目のギグを迎え、今年11月8日にデビューEPをリリースする。

 

イーストボーンのエコー・ズー・スタジオでギラ・バンドのダニエル・フォックスと録音したこのEPは、シネマティックなアレンジの中に不協和音が散りばめられている。ビリー・ウォードは、彼らのソングライティングのプロセスについて次のように語っている。「僕たちは、きれいな音と騒々しい音の間の細い線で生きていて、しばしばこの2つの間を飛び越えようと試みる」

 

 

「Ode To Clio」



Man/Woman/Chainsaw 『Eazy Peazy』

Label: Fat Possum

Relase: 2024年11月8日

 

Tracklist:​​​​​​


1. The Boss

2. Sports Day

3. Maegan

4. Ode To Clio

5. Grow A Tongue In Time

6. EZPZ

Public Service Broadcasting announces new album "The Last Flight"

©Alex Lake
 

ロンドンのPublic Service Broadcastingが新作アルバム『The Last Flight』を発表した。グループの5枚目のアルバムで、2021年の『Bright Magic』以来となるこの作品は、彼らの新しいレーベル、SO Recordingsから10月4日にリリースされる。

 

 Public Service Broadcastingはシンセポップに影響を受けたポスト・ロックバンドという感じで、ミニマルミュージックを様々な観点から捉え、変拍子を交えながら、新鮮味のあるロックを探求している。アルバムのテーマには歴史的な興味が交えられている。概要は以下の通り。


『ザ・ラスト・フライト』は、大西洋と太平洋を単独で横断した初の女性飛行士である、アメリカの先駆的な女性 "飛行士 "アメリア・イアハートの最後の航海を中心に展開する。1937年、彼女はロッキード・モデル”10-Eエレクトラ”で女性初の地球一周飛行に挑んだ。彼女はアメリカ大陸、アフリカ、中東、アジアを横断したが、中部太平洋のハウランド島付近で消息を絶った。


「というのも、私たちがアクセスできるアーカイブのほとんどは、圧倒的に男性が多いからです。当初は彼女の成功よりも、最後の戦いに引き込まれましたが、読めば読むほど彼女に魅了されました。彼女の勇気と航空技術は並外れたものでしたが、彼女の哲学と品格は......傑出した人物でした」

 


「最後の飛行は旅の背骨である。物語はさまざまな地点から飛び出し、彼女の人格のさまざまな側面、彼女の人間関係、そして彼女の人生について考察する」



「Electra」



 

 

Public Service Broadcasting 『The Last Flight』

Label: SO Recordings

Release: 2024年10月4日 


Tracklist:

 

1. I Was Always Dreaming

2. Towards The Dawn

3. The Fun Of It [feat. Andreya Casablanca]

4. The South Atlantic [feat. This Is The Kit]

5. Electra

6. Arabian Flight

7. Monsoons

8. A Different Kind Of Love [feat. EERA]

9. Howland


4月27日、東京のオルタナティヴロックバンド"PSP Social"が4作目のフルアルバム『Second Communication』をリリースする。バンドは新宿にある''Hill Valley Studio''(東京のアンダーグラウンドパンク/ハードコアの象徴的なライブスポット、Antiknockの親会社が運営)での自主企画を定期的に打ちながら、東京のコアなベースメントシーンでじわじわと存在感を示し始めている。 

 

『Second Communication』はbloodthirsty butchersやダイナソーJr.を彷彿とさせる爽快感溢れるギターサウンド、ピンクフロイドに触発されたプログレッシブな音楽性及び物語性を兼ね備えている。先行公開された「エンジェル・ハイロウ」、及び、15分を超える大曲「Communication Breakdown vol.2」も収録。日本語ロックとスロウコアが絶妙にマッチした「土」も要チェックです。

 

"コミュニケーション”を中心に関係や疎外とそれに対するオルタナティブや超越をテーマとしていて精神的な内容だが、ロック音楽としての快感、JROCK的サブカリズムを軸に作られた令和プログレとオルタナティブの共感が40分にわたって溶け混ざりあうコンセプト作品となっている。


レコーディングは前作に引き続き、元例のKのヤミニが担当した。アルバムジャケットはDJで美術家の"rench kee"が担当している。

 

今作は前作『宇宙から来た人』のフォローアップとなり、彼らの自主レーベル”エスパーキック”からのリリース。6月よりレーベル企画「エスパー教室」も再開予定です。こちらもお楽しみに。



「Tuchi-土」



『Second Communication』/PSP Social



2024年4/27リリース

フォーマット:デジタル配信

レーベル:エスパーキック

価格:¥2,000(税抜)


【Track List】

01.Theme

02.エンジェル・ハイロゥ

03.撃滅サンダーボルトⅡ

04.Communication Breakdown vol.2

05.壁

06.土

07.mood


配信URL:https://ultravybe.lnk.to/ssc


mix&mastering:ヤミニ&エスパーキック

illustration:rench kee

 

Drahla & George Brown

 

英/リーズを拠点に活動するアートロック・グループ、Drahla(ドラーラ)はセカンドアルバム『angeltape』の最新シングル「Grief In Phantasia」を発表した。この曲は最新作のフィナーレを飾る。エクスペリメンタルでクリエイティブなアプローチと激動のエッセンスを反映している。


バンドによれば 「この曲は、アルバムに収録されている他の曲や過去に書いた曲から影響を受けている。この曲を書いた時、混沌と静けさを要約したエンディング・トラックのように感じたんだ」


シンガーのルシエル・ブラウンは言う。「このアルバムのプロセスとインスピレーションは、外部からの音楽的な引用よりも、実験的で偏狭なものだったと思う」


 

「Grief In Phantasia」

 

 

 2019年の『Useless Coordinates』に続く『angeltape』は、4月5日にCaptured Tracksからリリースされる。

 

 

 


台湾/高雄を象徴するポストロックバンド、Elephant Gym(エレファント・ジム)は、今年、デビューEP発表から10周年を記念して、ニューアルバム『New World』のリリースを11月はじめに発表した。今回、バンドはこのニューアルバムから先行シングル2曲をデジタルで公開した。

 

今回、リリースされたのは「Happy Prince (feat. YILE LIN)」「Ocean in the Night (feat. 洪申豪 & KCWO) [Orchestra Ver.]」。前者は初期のエレファント・ジムの楽曲のエバーグリーンな雰囲気を思わせ、後者はポスト・ロックバンドらしいミニマリズムに根ざしたロックソングとなっている。


アジア各国や欧米でのツアーも重ね、全世界的に高い評価を得ている台湾出身のスリーピース・バンド、Elephant Gym。昨年、フジロックフェスティバル'22での演奏が話題となり、その後のツアーも大盛況となった。今や最も影響力のあるアジアのインディーバンドとなっている。


1st EP「BALANCE」をリリースして10周年を迎えるに当たり、世界を股にかけて活動するバンドらしく、その名も「WORLD」と冠したフルレングスのアルバムをリリースする。Elephant Gymはこの10年で、スリーピースのバンドサウンドから徐々に進化を遂げ、幅広い音楽性を体現してきた。「WORLD」というタイトルは、バンドが世界的に活動するということのみならず、様々なジャンルや境界線を越えていこうとしていることも示している。国境、人種、国籍、性別、音楽的ジャンルなどの境界線や限界を越えようとする想いが込められている。


 このシングルリリース「Happy Prince」は、そのアルバムから2曲を先行して配信する。



 1. 「Happy Prince (feat. YILE LIN)」

 

初期のElephant Gymに見受けられたような、軽やかでキャッチーなスリーピースバンドサウンドとなっている。同時に、この10年の成長を感じさせる安定感のある力強いロックを鳴らしている。台湾インディーシーンを代表するシンガーソングライター・YILE LIN(林以樂)がボーカルで参加している。インディーポップバンド「Freckles(雀斑)」やシュゲイザーバンド「BOYZ&GIRL」で作曲やボーカルを務めてきた、台湾インディーシーンを代表するアーティストだ。


 2. 「Ocean In The Night (feat. Hom ShenHao, KCWO)」

 

フジロック・フェスティバル’22でも披露し、大きな反響を巻き起こしたホーンセクションを交えている。日本でも名の知られている「透明雑誌」のフロントマン、Hom ShenHao(洪申豪)をボーカルに迎えたElephant Gymの代表曲を新録。Elephant Gymの出身地でもある台湾高雄市のブラスバンド、Kaohsiung City WindOrchestraを従え、10周年のリリースらしい代表曲のホーンアレンジ。 



Elephant Gymはフジロック・フェスティバル 2023の出演に続いて、2024年1月下旬に開催される来日ツアーの詳細も発表している。本公演は、1月25日に大阪 BIGCAT、27日に名古屋 The Bottom Line、 28日に渋谷 Spotify O-Eastで開催される。


後日、掲載されたアルバムレビューはこちらからお読み下さい。



Elephant Gym 「Happy Prince」 New Single

WORDS Recordings

配信開始日:2023-11-28

 

収録曲:

1: Happy Prince (feat. YILE LIN)
Elephant Gym
2: Ocean in the Night (feat. 洪申豪 & KCWO) [Orchestra Ver.]


配信リンク:

https://linkco.re/DPv5tH7a

 


Elephant Gym 『New World』 New Album


Worldwide(Digital):2023.12.14 ON SALE
Japan(CD+DVD):2023.12.20 ON SALE
WDSR-006/¥2,970(税込) ※CD+DVD
[WORDS Recordings]

 

収録曲:
 
1. Jhalleyaa Feat. Shashaa Tirupati
2. Feather Feat. ?te (壞特)
3. Adventure
4. Flowers
5. Name Feat. Seiji Kameda (亀田誠治)
6. Galaxy (Orchestra ver.) Feat. KCWO(高雄市管樂團)
7. Light (Orchestra ver.) Feat. KCWO(高雄市管樂團)
8. Ocean In The Night (Orchestra ver.) Feat. Hom Shen Hao (洪申豪), KCWO(高雄市管樂團)
9. Happy Prince Feat. YILE LIN (林以樂)
10. Feather Feat. TENDRE


 
[ライヴDVD付] ※数量限定、日本流通のみ
1. Spring Rain
2. Go Through The Night
3. Dreamlike
4. D
5. Ocean In The Night


  

ツアー情報:

 
[Elephant Gym The "WORLD" Tour]
2024年
1月25日(木)大阪 BIGCAT
1月27日(土)名古屋 THE BOTTOM LINE
1月28日(日)渋谷 Spotify O-EAST
ゲスト:象眠舎
[チケット]
ぴあ|ローチケ|イープラス

 


テキサス出身のインストゥルメンタル・ポストロックの重鎮、エクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイが待望のニューアルバム『End』を今週金曜日(9月15日)にリリースする。アルバムからは先行シングル「Ten Billion People」「Moving On」が公開されている。

 

『End』はラスト・アルバムにはならないとバンドは明言している。その代わり、アルバム全体が死の謎について書かれた作品になっている。すでに初期のトラック「Ten Billion People」と 「Moving On」を掲載したが、バンドはアルバム到着前にもうひとつモノリスを作ってくれた。

 

「Loved Ones」は7分も続き、彼ららしいシネマティックな壮大な展開が見られる。しかし、その長大さにも関わらず、一貫性を保ちながら、瞑想的な感情を清涼感のあるポスト・ロックとして表現している。このトラックには、映画音楽のサントラも手掛けてきたバンドの威信がにじみ出ている。死を主題に据えたアルバムに収録された「Loved Ones」という最終プレビュー。そこには破滅的な美しさと勇ましさがあるが、エクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイはそれを誰にも真似できないような激しい結末へと導いている。以下からチェックしてほしい。

 


「Loved One」

 



米国/テキサスのポストロックバンド、エクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイ(Explosions In The Sky)が、『End』の2ndシングル「Moving On」を公開した。リード・カット「Ten Billion People」に続く作品。バンドが自主撮影し、カイル・スナイダーが編集したミュージック・ビデオを以下でチェックしてみてください。


『End』は、Temporary Residence/Bella Unionから9月15日にリリースされる。「僕らの出発点は、死や友情、関係の終わりといったエンディングのコンセプトだった」とバンドは説明する。

 

「すべての曲は、私たちの誰かが持っていた物語やアイデアから生まれたもので、私たちはそれを発展させ、独自の世界を作り上げた。ある物事や時間の終わりは、停止を意味することもあるが、始まりを意味することもある。ある物事が終わった後に起こることは、その次に起こることに比べれば、淡いものかもしれない」

 

「Moving On」

 


 

ポストロック・バンド、Explosions In The Sky(エクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイ)が7年ぶりのアルバム『End』を発表した。

 

このアルバムは、9月15日にTemporary Residenceからリリースされる。Explosions In The Skyは2000年以降のポスト・ロックシーンを牽引し、その後、映画のサントラの提供により、着実に人気を獲得したテキサスの音響系のバンドだ。



 

バンドは、ニューアルバムの最初のテースターであり、オープニング・トラックでもある 「Ten Billion People」を公開した。バンドはまた、秋にアメリカとヨーロッパ・ツアーに出る予定だ。


『End』は暗闇にインスパイアされた作品だが、生と死についての荒々しい反芻に仕上がっている。このアルバムについて、バンドはプレスリリースでこう語っている。

 

「すべての曲は、僕らの誰かが持っていた物語やアイデアから生まれたもので、僕ら全員がそれを発展させ、独自の世界を作り上げたんだ。ある物事や時間の終わりは、停止を意味することもあるが、始まりを意味することもある。ある物事が終わった後に起こることは、その次に起こることに比べれば、淡いものかもしれない」





 

 

Explosions In The Sky 『End』


Label: Temporary Residence

Release: 2023/9/15


Tracklist: 



1. Ten Billion People


2. Moving On


3. Loved Ones


4. Peace or Quiet


5. All Mountains


6. The Fight


7. It’s Never Going To Stop


Weekly Music Feature

 

bdrmm



世界が社会的に距離を置くようになった2020年、ハル出身のポスト・シューゲイザー、ドリーム・ポップ、ヘヴィ・ギター・エフェクト・カルテット、bdrmmは、若いバンドなら誰もが夢見るようなデビュー・アルバムで衝撃を与えた。その年の7月に小さなレーベル、ソニック・カセドラルからリリースされた『Bedroom』は、CLASH誌に「先鋭的なシューゲイザーの蒸留」と称された。


あれから3年、バンドのニュー・アルバム『I Don't Know』は、冒険を別の場所に連れて行く。ある意味コンテンポラリー・シューゲイザーだが、それ以上のものをバンドは追求している。プロデューサーに、バンドの五人目のメンバーであるアレックス・グリーヴス(ワーキング・メンズ・クラブ、ボー・ニンゲン)を迎え、リーズのザ・ネイヴ・スタジオで再びレコーディングされた。本作では、バンドのトレードマークであるエフェクトを多用したギターとモーターリックなNeu!を彷彿とさせるグルーヴに、ピアノ、ストリングス、エレクトロニカ、サンプリング、そして時折ダンス・ビートまでが加わっている。


レディオヘッド、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、キュア、ブライアン・イーノ、おそらくはエリック・サティのようなミニマリズム・クラシックからの影響や参照点は多岐にわたる。結果的に何が生み出されたにせよ、このセカンドアルバムは、自分たちのやっていることを確信し、そのすべてを愛してやまない4人の若者による、より大きく、よりチューニングされた、実にファンタスティックなセカンド・ステートメントとなる。


彼らは”Rock Action Records"と契約したことについて、「ロック・アクションと契約できたことにとても興奮している」と付け加えている。「モグワイとツアーを行い、彼らと親密な関係を築いた後、彼らや彼らのチームと一緒に仕事をするように誘われたことに、私たちは恵まれていると感じています。Arab Strapと同じレーベルになるなんて。つまり、これ以上言うことはない」



『I Don't Know』は2020年のデビュー・アルバム『Bedroom』に続く作品となり、再びリーズのThe NaveスタジオでプロデューサーのAlex Greavesとともに録音された。シンガー兼ギタリストのライアン・スミスは説明している。「全てはおそらくまだ自分に起こったことがベースになっているけれど、他の人がどんな状況にあっても理解できるように、より曖昧な書き方をしている。最初のレコードは一人の人間の関係のように感じられるといつも思うんだけど、今回はもっと広くて、いろいろな解釈ができるんだ」


「このセカンドアルバムは間違いなくバンドとしての私たちを凝縮したものだと思います。私たちのすべての痕跡がそこにあります」とライアンは認めます。


「一方、最初のレコードは『シューゲイザーに恋をした』だったような気がする。それから私たちは、シューゲイザーのアルバムを書いてレコーディングすることになりましたが、それは素晴らしい経験でしたし、私は今でもシューゲイザーを心の中に持ち続けています。でも、それは間違いなく、『私が曲を書き、そしてバンドがいる』ということが多かったです。このことは、他の人に不利益をもたらすものではありません。しかし、このレコードではジョーダンが曲を書きました。ジョーがビットを持ってやって来た。それは私たち全員であり、とてもいい気分です。常にすべてを書き続けなければならないというプレッシャーは少しありましたが、私は常にそれが全員であることを望んでいました。今はそうなんです」



 
 
 
『I Don’t Know』 Rock Action / Tugboat
 


アルバムのアートワークは、ロシアのモダンアート画家、ワシリー・カンディンスキーの抽象主義へのオマージュとなっているという。

 

カンディンスキー、ドイツのバウハウスの教官として勤務した後、ナチス・ドイツ占領下のフランスで絵画を制作しつづけた。彼はイゴール・ストラヴィンスキーのように米国に亡命をしなかったのだ。現在のように、アートをやるのがそれほど安全ではなかった時代、カンディンスキーのような大胆なフォルムを取り入れることは、すなわち現実の悲劇的な瞬間への強烈な反駁で、またそれは魂の生きる術でもあった。カンディンスキーは線形や幾何学模様等、象徴的なフォルムを取り入れ、アートシーンにデザインの要素を取り入れたのが、このカンディンスキーである。



 

そして、時代はまったく変わるが、bdrmmというカルテットを語る上でも、音のデザインという要素は、彼らの代名詞となるドリームポップ/シューゲイズの要素と分かちがたくむすびついているように思える。それはときに、ドイツの実験音楽集団NEU!を始めとするエレクトロニック、あるいはブライアン・イーノのようなアンビエント、ボーズ・オブ・カナダのモダンなエレクトロニック、それから彼らのサウンドを発掘したポストロックの伝説、モグワイの音響派のサウンドが立体的に複雑に絡み合い、上記のような平面の中に立体が存在するようないわばポストモダニズムやキュビズムの世界が形成されるに至った。何を彼らが音楽の中に込めようとしているのか、考えれば考えるほどミステリアスな領域へと入り込んでいく。かつてのカンディンスキーの絵画のように。



 

特に、イギリスのロンドンを中心に、いくつかのポストパンクバンドに感じられることではあるが、bdrmmは、それほど高尚な考えに裏打ちされたものではないにせよ、少なからず商業主義に対する疑いを持っているようである。よく「反商業主義」とレビューでも書くのだが、誤解がないように念のために断っておきたいのは、反商業主義は商業性を完全に否定することではない。音楽産業を潤すものがなければ、そもそも音楽産業は存在しえない。とすれば、音楽は一部のニッチな好事家のための虚偽的な慰みの範疇を出なくなるのである。それだけは避けなければならぬのは事実としても、反面、そういった商業主義の音楽に一定の許容を与えた上で、それとは対極にある音楽の存在も許容せねばならない。



ある程度の見識が備わるようになれば、音楽を例えば単なる宣伝材料のように見立て、それを需要者を騙し、売りつけることに対する疑念を持つようになることは当然なのだ。こういった搾取は、実は、ピラミッドの頂点の金融社会でも普通に横行している。今日の世界は金融により牛耳られているが、それとは別の指標のようなものがこの世に存在しえないものか。昨今、富の分配といういささか疑わしい近代資本主義の限界が見受けられる中、また、それがあちこちで破綻しかけている中、これはシティという金融街を持つロンドンに生きる人々、また、ロンドンの文化に少なからず触れてきた人々にとっては度外視できぬことなのかもしれない。もちろん、それは若い人であればあるほど、さらに自分の感覚に正直であればあるほど、貨幣社会以外の価値をどこかに見出すことはできないだろうか。そのことを切実に模索したくなることが一度くらいはあるはずだ。おそらく、それが今日のアートというものであり、そして、表現主義というものの正体なのかもしれない。少なくとも昨晩聴いた『I Don’t Know』という彼らの2ndアルバムはそういった意味を持つ作品であるように感じられる。



 

 

デビューアルバムは、軒並み高評価だった。そして複数の現地のメディアは、この二作目をデビュー作とは別の方向性を探ったものであると位置付けている。 アルバムのオープナーを飾る「Alps」は、彼らを見初めたモグワイとのツアー中に書かれたといい、事実、スイスのアルプスで書かれた楽曲である。イントロは、Board Of Canadaのようなエレクトロニックを下地にして、ドイツのNEU!のような電子的なパーカッシヴの要素を加えている。以降は、グラスやライヒのようなミニマリズムに根ざした展開へと引き継がれる。曲の構成自体はミニマルビートの性質が強く、旧来のケミカル・ブラザーズに近いものが感じられる。bdrmmの音楽はロックサウンドとクラブビートの中間点にあり、ある意味では、Squidのようにバンドの音楽という観点とは別のエレクトロニックの要素を追求した楽曲で、シューゲイズやドリーム・ポップという先入観を抱え、このアルバムに触れるリスナーに意外性を与えるようなオープニングとなっている。



 

2ndアルバムはデビュー・アルバムと同じように、一曲目からギア全開とはならず、徐々にゆっくりと、アルバムの序盤から中盤にかけて綿密な音の世界観を構築されていく。二曲目の「Be Careful」も一曲目のNEU!へのオマージュと同様、ドイツ音楽へのリスペクトが感じられる。2017年に亡くなったベーシスト、Holger Czukay(ホルガー・シューカイ)のような反復的なダビーなリズムは、ダモ鈴木の在籍時代のCANとの親和性も感じさせ、心地よさをもたらすはずだ。

 

この二曲目からbdrmmは、カルテットとしての本領を発揮しはじめる。しかし、それは徐々にギアをアップしていくといった感じで、ライブのセッションを通じてアルバムのテーマとなる核心へと徐々に近づいていく試みであるようにも感じられる。ボーカリストのライアン・スミスのボーカルは一見すると、シューゲイズ/ドリーム・ポップという前情報を念頭に入れて聴くと、チャプター・ハウス、スロウ・ダイヴ、ライドといった系譜にあるように感じられるが、実際は、キュアーやストーン・ローゼズ、あるいはその後の90年代のブリット・ポップ勢にも近いものである。中空に彷徨うかのような拠り所のないスミスのボーカルは、これらの年代のUKミュージック・シーンの面白みを知るリスナーに、程よい陶酔感を与え、幻惑へと誘い込む。

 

 「It's Just a Bit of Blood」



 

 

アルバムの3曲目でこのバンドの目指す音楽性の断片的なものがわずかながら見えてくるようになる。実際に、トム・ヨークのボーカルを意識したという「It's Just a Bit of Blood」では、「Hail To Thief」時代のレディオ・ヘッドのようなサウンドが貫かれている。そしてようやくディストーションとリバーヴをかけ合わせたシューゲイズ/ドリームポップらしいサウンドが全開となる。ギターサウンドやその雰囲気を盛り上げるドラムは、スローダイヴに近いものがあるが、サビにかけてはモダンな雰囲気を帯びるようになり、Deerhunter、Beach Fossils、Wild Nothingに象徴される米国のポストシューゲイズを織り込んでいる。



ライアン・スミスのボーカルは、中性的であり、ほのかに切なさと叙情性が漂わせているが、それは、彼らの出身地であるHullの寒々しい空気感や情景を脳裏に呼び覚まさせる。イントロのタムの連打によって溜めを作り、その後の轟音とは対極にある静謐な曲展開へと繋げるドラムは、ほどよい緊迫感があり、迫力ある。また、サビの部分でのボーカルは、アンセミックな雰囲気を帯びており、この曲がライブでどのように演奏されるのかと期待させるものがある。正直なところ、この曲は、それほど新しい試みとは言えないだろうし、カナダのBodywashほど先鋭的でもないけれども、英国的なポスト・シューゲイズサウンドをどうにか確立していこうという意図も見受けられる。

 

「We Fall Apart」は、bdrmmが必ずしもシューゲイズ/ドリーム・ポップに執着していないことを示しており、ポスト・パンクやオルトロックに近い前衛性も取り入れようとしている様子が伺える。ローファイやプロトパンクの影響を残すこの曲では、Sonic Youthの最初期のアヴァンギャルドなアプローチを再現し、『Daydream Nation』の収録曲「Teen Age Riot」に近いUSインディーのハードコアな世界を探求する。これらの瞑想的なギターの反復性は、ソニック・ユースがこの後の時代に商業的な成功を収めるうち、サーストン・ムーアが急進的に失っていった要素だった。この時代の前には、サーストン・ムーアは変則チューニングを始め、ギターの演奏に革新性をもたらしたが、それらの前衛的な手法を、bdrmmはイギリスのバンドとして受け継ごうというのである。それは冒頭にも述べたように、商業主義に対する疑念の発露がこういったアート・ロックのサウンドの中にイデアとして織り込まれていると見るのが妥当なのだろう。

 

また現代のイギリスのポスト・パンク、ハードコアバンドやその他の多少マニアックなバンドと同じように、既にロックミュージックのなかにアンビエントを取り入れることは珍しくもなく、そして今日のトレンドともなっている。


「Advertise One」では、Mogwaiの音楽が、特に日本で「音響系」と呼ばれるに至った原初的なポスト・ロック・ソングを提示している。確かに、アンビエントとロックの混淆という側面では、既に古典的になりつつあることは疑いないが、bdrmmはドローンに近い音楽性を取り入れ、また、ドゥームの要素を付け加えている。ドゥームに関してはメタルが発祥であると思うが、それらの90年代から00年代にかけてのミクスチャーの極北をこの曲に捉えることが出来る。もちろん、途中に挿入されるピアノのフレーズはロックを他ジャンルに開放させてみせた、アイスランドのSigur Rosの音楽性の影響を見出すリスナーも少なからずいるのではないだろうか。



 

アルバムの中で最もスリリングな曲が続く「Hidden Cinema」である。多少、展開がもたつく場合があるが、このバンドのシューゲイズとポスト・パンクの融合性の真骨頂を、この楽曲に見出すことが出来る。ボーカルとバンドアンサンブルは、Deerhunter、Beach Fosiilsに近いものがあるが、何と言っても、この曲では、他のパートに対する複合的なポリリズムを交えたベースラインが際立っている。このビートを撹乱するようなベースラインは見事で、立体的な構造性を楽曲に及ぼし、スリリングさをもたらしている。また、そこには、ロンドンのSquidに比するポスト・パンクバンドらしいひねりや、シニカルな主張性も少なからず含まれていることも理解出来るはずである。一曲の全体的な構造として、溜めを作るフレーズとその溜めを開放させるためのフレーズが並列されることにより、ジャズのコールアンドレスポンスやハードコアのストップ・アンド・ゴーのような前衛的な効果が生み出されている。ただ一つだけ難点を挙げるとするなら、構成力は凄く巧みに感じられるものの、フレーズの移行の際に多少もたつくような瞬間があり、これがスムースな流れを妨げている場合もあることを指摘しておきたい。これがよりバンドの演奏として熟練したものになると、今までになかった何かが生み出される可能性がある。



続く、「Pulling Stitches」では、彼らのシューゲイズ/ドリームポップサウンドの一つの完成形が示されている。ポンゴのような民族楽器のシンセ・パーカッションの挿入、及び、モダンなインディーポップの要素は、捉え方によっては、彼らの新しい音楽性が確かな形になりつつある瞬間と言えるかもしれない。ライアン・スミスのボーカルは、他の主要な曲と同様に、夢遊の雰囲気を帯び、轟音のシューゲイズサウンドにちょっとした華を添えている。他のインディーポップバンドと同じように、現代の寄る辺なき人々の感覚を上手く捉えた瞬間とも言える。

 

「Pulling Stitches」

 

 

アルバムの最後に収録されている「A Final Moment」は、 作品全体で提示してきたロックミュージックへの新たな挑戦のひとつの区切りを意味するのだろうか。バンドが影響を指摘するボーズ・オブ・カナダのようなワープ・レコーズの主要なエレクトロニカサウンドを下地にし、大掛かりなシネマティックなサウンドを彼らは生み出している。アルバムを聞き終えようとする瞬間、何かこのアルバムが次なる希望に溢れた瞬間に続いている気がした。それは単なるイメージに過ぎなかったのだが、何か一筋の狭い道が続いた後、その道がある瞬間にぱっと大きく開けていき、理想的な領域へと続くのが思い浮かんできたような気がした。



 

勿論、これは私見であり、個人の単なる感想に過ぎないが、アルバムの最後の曲を聞くかぎりでは、bdrmmは他のロンドンの有望視されるポストパンクのバンドにも比する期待値を持ったカルテットであると感じられた。bdrmmの才覚はその片鱗をみせたに過ぎず、完全には花開いていないのかもしれない。これから、どんな未来のサウンドが生み出されるのか楽しみにしたい。 


 

 84/100

 

 

 bdrmmのニューアルバム『I Don't Know』は、Rock Action/Tugboatから本日より発売中です。