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Drahla & George Brown

 

英/リーズを拠点に活動するアートロック・グループ、Drahla(ドラーラ)はセカンドアルバム『angeltape』の最新シングル「Grief In Phantasia」を発表した。この曲は最新作のフィナーレを飾る。エクスペリメンタルでクリエイティブなアプローチと激動のエッセンスを反映している。


バンドによれば 「この曲は、アルバムに収録されている他の曲や過去に書いた曲から影響を受けている。この曲を書いた時、混沌と静けさを要約したエンディング・トラックのように感じたんだ」


シンガーのルシエル・ブラウンは言う。「このアルバムのプロセスとインスピレーションは、外部からの音楽的な引用よりも、実験的で偏狭なものだったと思う」


 

「Grief In Phantasia」

 

 

 2019年の『Useless Coordinates』に続く『angeltape』は、4月5日にCaptured Tracksからリリースされる。

 

 

 


台湾/高雄を象徴するポストロックバンド、Elephant Gym(エレファント・ジム)は、今年、デビューEP発表から10周年を記念して、ニューアルバム『New World』のリリースを11月はじめに発表した。今回、バンドはこのニューアルバムから先行シングル2曲をデジタルで公開した。

 

今回、リリースされたのは「Happy Prince (feat. YILE LIN)」「Ocean in the Night (feat. 洪申豪 & KCWO) [Orchestra Ver.]」。前者は初期のエレファント・ジムの楽曲のエバーグリーンな雰囲気を思わせ、後者はポスト・ロックバンドらしいミニマリズムに根ざしたロックソングとなっている。


アジア各国や欧米でのツアーも重ね、全世界的に高い評価を得ている台湾出身のスリーピース・バンド、Elephant Gym。昨年、フジロックフェスティバル'22での演奏が話題となり、その後のツアーも大盛況となった。今や最も影響力のあるアジアのインディーバンドとなっている。


1st EP「BALANCE」をリリースして10周年を迎えるに当たり、世界を股にかけて活動するバンドらしく、その名も「WORLD」と冠したフルレングスのアルバムをリリースする。Elephant Gymはこの10年で、スリーピースのバンドサウンドから徐々に進化を遂げ、幅広い音楽性を体現してきた。「WORLD」というタイトルは、バンドが世界的に活動するということのみならず、様々なジャンルや境界線を越えていこうとしていることも示している。国境、人種、国籍、性別、音楽的ジャンルなどの境界線や限界を越えようとする想いが込められている。


 このシングルリリース「Happy Prince」は、そのアルバムから2曲を先行して配信する。



 1. 「Happy Prince (feat. YILE LIN)」

 

初期のElephant Gymに見受けられたような、軽やかでキャッチーなスリーピースバンドサウンドとなっている。同時に、この10年の成長を感じさせる安定感のある力強いロックを鳴らしている。台湾インディーシーンを代表するシンガーソングライター・YILE LIN(林以樂)がボーカルで参加している。インディーポップバンド「Freckles(雀斑)」やシュゲイザーバンド「BOYZ&GIRL」で作曲やボーカルを務めてきた、台湾インディーシーンを代表するアーティストだ。


 2. 「Ocean In The Night (feat. Hom ShenHao, KCWO)」

 

フジロック・フェスティバル’22でも披露し、大きな反響を巻き起こしたホーンセクションを交えている。日本でも名の知られている「透明雑誌」のフロントマン、Hom ShenHao(洪申豪)をボーカルに迎えたElephant Gymの代表曲を新録。Elephant Gymの出身地でもある台湾高雄市のブラスバンド、Kaohsiung City WindOrchestraを従え、10周年のリリースらしい代表曲のホーンアレンジ。 



Elephant Gymはフジロック・フェスティバル 2023の出演に続いて、2024年1月下旬に開催される来日ツアーの詳細も発表している。本公演は、1月25日に大阪 BIGCAT、27日に名古屋 The Bottom Line、 28日に渋谷 Spotify O-Eastで開催される。


後日、掲載されたアルバムレビューはこちらからお読み下さい。



Elephant Gym 「Happy Prince」 New Single

WORDS Recordings

配信開始日:2023-11-28

 

収録曲:

1: Happy Prince (feat. YILE LIN)
Elephant Gym
2: Ocean in the Night (feat. 洪申豪 & KCWO) [Orchestra Ver.]


配信リンク:

https://linkco.re/DPv5tH7a

 


Elephant Gym 『New World』 New Album


Worldwide(Digital):2023.12.14 ON SALE
Japan(CD+DVD):2023.12.20 ON SALE
WDSR-006/¥2,970(税込) ※CD+DVD
[WORDS Recordings]

 

収録曲:
 
1. Jhalleyaa Feat. Shashaa Tirupati
2. Feather Feat. ?te (壞特)
3. Adventure
4. Flowers
5. Name Feat. Seiji Kameda (亀田誠治)
6. Galaxy (Orchestra ver.) Feat. KCWO(高雄市管樂團)
7. Light (Orchestra ver.) Feat. KCWO(高雄市管樂團)
8. Ocean In The Night (Orchestra ver.) Feat. Hom Shen Hao (洪申豪), KCWO(高雄市管樂團)
9. Happy Prince Feat. YILE LIN (林以樂)
10. Feather Feat. TENDRE


 
[ライヴDVD付] ※数量限定、日本流通のみ
1. Spring Rain
2. Go Through The Night
3. Dreamlike
4. D
5. Ocean In The Night


  

ツアー情報:

 
[Elephant Gym The "WORLD" Tour]
2024年
1月25日(木)大阪 BIGCAT
1月27日(土)名古屋 THE BOTTOM LINE
1月28日(日)渋谷 Spotify O-EAST
ゲスト:象眠舎
[チケット]
ぴあ|ローチケ|イープラス

 


テキサス出身のインストゥルメンタル・ポストロックの重鎮、エクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイが待望のニューアルバム『End』を今週金曜日(9月15日)にリリースする。アルバムからは先行シングル「Ten Billion People」「Moving On」が公開されている。

 

『End』はラスト・アルバムにはならないとバンドは明言している。その代わり、アルバム全体が死の謎について書かれた作品になっている。すでに初期のトラック「Ten Billion People」と 「Moving On」を掲載したが、バンドはアルバム到着前にもうひとつモノリスを作ってくれた。

 

「Loved Ones」は7分も続き、彼ららしいシネマティックな壮大な展開が見られる。しかし、その長大さにも関わらず、一貫性を保ちながら、瞑想的な感情を清涼感のあるポスト・ロックとして表現している。このトラックには、映画音楽のサントラも手掛けてきたバンドの威信がにじみ出ている。死を主題に据えたアルバムに収録された「Loved Ones」という最終プレビュー。そこには破滅的な美しさと勇ましさがあるが、エクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイはそれを誰にも真似できないような激しい結末へと導いている。以下からチェックしてほしい。

 


「Loved One」

 



米国/テキサスのポストロックバンド、エクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイ(Explosions In The Sky)が、『End』の2ndシングル「Moving On」を公開した。リード・カット「Ten Billion People」に続く作品。バンドが自主撮影し、カイル・スナイダーが編集したミュージック・ビデオを以下でチェックしてみてください。


『End』は、Temporary Residence/Bella Unionから9月15日にリリースされる。「僕らの出発点は、死や友情、関係の終わりといったエンディングのコンセプトだった」とバンドは説明する。

 

「すべての曲は、私たちの誰かが持っていた物語やアイデアから生まれたもので、私たちはそれを発展させ、独自の世界を作り上げた。ある物事や時間の終わりは、停止を意味することもあるが、始まりを意味することもある。ある物事が終わった後に起こることは、その次に起こることに比べれば、淡いものかもしれない」

 

「Moving On」

 


 

ポストロック・バンド、Explosions In The Sky(エクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイ)が7年ぶりのアルバム『End』を発表した。

 

このアルバムは、9月15日にTemporary Residenceからリリースされる。Explosions In The Skyは2000年以降のポスト・ロックシーンを牽引し、その後、映画のサントラの提供により、着実に人気を獲得したテキサスの音響系のバンドだ。



 

バンドは、ニューアルバムの最初のテースターであり、オープニング・トラックでもある 「Ten Billion People」を公開した。バンドはまた、秋にアメリカとヨーロッパ・ツアーに出る予定だ。


『End』は暗闇にインスパイアされた作品だが、生と死についての荒々しい反芻に仕上がっている。このアルバムについて、バンドはプレスリリースでこう語っている。

 

「すべての曲は、僕らの誰かが持っていた物語やアイデアから生まれたもので、僕ら全員がそれを発展させ、独自の世界を作り上げたんだ。ある物事や時間の終わりは、停止を意味することもあるが、始まりを意味することもある。ある物事が終わった後に起こることは、その次に起こることに比べれば、淡いものかもしれない」





 

 

Explosions In The Sky 『End』


Label: Temporary Residence

Release: 2023/9/15


Tracklist: 



1. Ten Billion People


2. Moving On


3. Loved Ones


4. Peace or Quiet


5. All Mountains


6. The Fight


7. It’s Never Going To Stop


Weekly Music Feature

 

bdrmm



世界が社会的に距離を置くようになった2020年、ハル出身のポスト・シューゲイザー、ドリーム・ポップ、ヘヴィ・ギター・エフェクト・カルテット、bdrmmは、若いバンドなら誰もが夢見るようなデビュー・アルバムで衝撃を与えた。その年の7月に小さなレーベル、ソニック・カセドラルからリリースされた『Bedroom』は、CLASH誌に「先鋭的なシューゲイザーの蒸留」と称された。


あれから3年、バンドのニュー・アルバム『I Don't Know』は、冒険を別の場所に連れて行く。ある意味コンテンポラリー・シューゲイザーだが、それ以上のものをバンドは追求している。プロデューサーに、バンドの五人目のメンバーであるアレックス・グリーヴス(ワーキング・メンズ・クラブ、ボー・ニンゲン)を迎え、リーズのザ・ネイヴ・スタジオで再びレコーディングされた。本作では、バンドのトレードマークであるエフェクトを多用したギターとモーターリックなNeu!を彷彿とさせるグルーヴに、ピアノ、ストリングス、エレクトロニカ、サンプリング、そして時折ダンス・ビートまでが加わっている。


レディオヘッド、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、キュア、ブライアン・イーノ、おそらくはエリック・サティのようなミニマリズム・クラシックからの影響や参照点は多岐にわたる。結果的に何が生み出されたにせよ、このセカンドアルバムは、自分たちのやっていることを確信し、そのすべてを愛してやまない4人の若者による、より大きく、よりチューニングされた、実にファンタスティックなセカンド・ステートメントとなる。


彼らは”Rock Action Records"と契約したことについて、「ロック・アクションと契約できたことにとても興奮している」と付け加えている。「モグワイとツアーを行い、彼らと親密な関係を築いた後、彼らや彼らのチームと一緒に仕事をするように誘われたことに、私たちは恵まれていると感じています。Arab Strapと同じレーベルになるなんて。つまり、これ以上言うことはない」



『I Don't Know』は2020年のデビュー・アルバム『Bedroom』に続く作品となり、再びリーズのThe NaveスタジオでプロデューサーのAlex Greavesとともに録音された。シンガー兼ギタリストのライアン・スミスは説明している。「全てはおそらくまだ自分に起こったことがベースになっているけれど、他の人がどんな状況にあっても理解できるように、より曖昧な書き方をしている。最初のレコードは一人の人間の関係のように感じられるといつも思うんだけど、今回はもっと広くて、いろいろな解釈ができるんだ」


「このセカンドアルバムは間違いなくバンドとしての私たちを凝縮したものだと思います。私たちのすべての痕跡がそこにあります」とライアンは認めます。


「一方、最初のレコードは『シューゲイザーに恋をした』だったような気がする。それから私たちは、シューゲイザーのアルバムを書いてレコーディングすることになりましたが、それは素晴らしい経験でしたし、私は今でもシューゲイザーを心の中に持ち続けています。でも、それは間違いなく、『私が曲を書き、そしてバンドがいる』ということが多かったです。このことは、他の人に不利益をもたらすものではありません。しかし、このレコードではジョーダンが曲を書きました。ジョーがビットを持ってやって来た。それは私たち全員であり、とてもいい気分です。常にすべてを書き続けなければならないというプレッシャーは少しありましたが、私は常にそれが全員であることを望んでいました。今はそうなんです」



 
 
 
『I Don’t Know』 Rock Action / Tugboat
 


アルバムのアートワークは、ロシアのモダンアート画家、ワシリー・カンディンスキーの抽象主義へのオマージュとなっているという。

 

カンディンスキー、ドイツのバウハウスの教官として勤務した後、ナチス・ドイツ占領下のフランスで絵画を制作しつづけた。彼はイゴール・ストラヴィンスキーのように米国に亡命をしなかったのだ。現在のように、アートをやるのがそれほど安全ではなかった時代、カンディンスキーのような大胆なフォルムを取り入れることは、すなわち現実の悲劇的な瞬間への強烈な反駁で、またそれは魂の生きる術でもあった。カンディンスキーは線形や幾何学模様等、象徴的なフォルムを取り入れ、アートシーンにデザインの要素を取り入れたのが、このカンディンスキーである。



 

そして、時代はまったく変わるが、bdrmmというカルテットを語る上でも、音のデザインという要素は、彼らの代名詞となるドリームポップ/シューゲイズの要素と分かちがたくむすびついているように思える。それはときに、ドイツの実験音楽集団NEU!を始めとするエレクトロニック、あるいはブライアン・イーノのようなアンビエント、ボーズ・オブ・カナダのモダンなエレクトロニック、それから彼らのサウンドを発掘したポストロックの伝説、モグワイの音響派のサウンドが立体的に複雑に絡み合い、上記のような平面の中に立体が存在するようないわばポストモダニズムやキュビズムの世界が形成されるに至った。何を彼らが音楽の中に込めようとしているのか、考えれば考えるほどミステリアスな領域へと入り込んでいく。かつてのカンディンスキーの絵画のように。



 

特に、イギリスのロンドンを中心に、いくつかのポストパンクバンドに感じられることではあるが、bdrmmは、それほど高尚な考えに裏打ちされたものではないにせよ、少なからず商業主義に対する疑いを持っているようである。よく「反商業主義」とレビューでも書くのだが、誤解がないように念のために断っておきたいのは、反商業主義は商業性を完全に否定することではない。音楽産業を潤すものがなければ、そもそも音楽産業は存在しえない。とすれば、音楽は一部のニッチな好事家のための虚偽的な慰みの範疇を出なくなるのである。それだけは避けなければならぬのは事実としても、反面、そういった商業主義の音楽に一定の許容を与えた上で、それとは対極にある音楽の存在も許容せねばならない。



ある程度の見識が備わるようになれば、音楽を例えば単なる宣伝材料のように見立て、それを需要者を騙し、売りつけることに対する疑念を持つようになることは当然なのだ。こういった搾取は、実は、ピラミッドの頂点の金融社会でも普通に横行している。今日の世界は金融により牛耳られているが、それとは別の指標のようなものがこの世に存在しえないものか。昨今、富の分配といういささか疑わしい近代資本主義の限界が見受けられる中、また、それがあちこちで破綻しかけている中、これはシティという金融街を持つロンドンに生きる人々、また、ロンドンの文化に少なからず触れてきた人々にとっては度外視できぬことなのかもしれない。もちろん、それは若い人であればあるほど、さらに自分の感覚に正直であればあるほど、貨幣社会以外の価値をどこかに見出すことはできないだろうか。そのことを切実に模索したくなることが一度くらいはあるはずだ。おそらく、それが今日のアートというものであり、そして、表現主義というものの正体なのかもしれない。少なくとも昨晩聴いた『I Don’t Know』という彼らの2ndアルバムはそういった意味を持つ作品であるように感じられる。



 

 

デビューアルバムは、軒並み高評価だった。そして複数の現地のメディアは、この二作目をデビュー作とは別の方向性を探ったものであると位置付けている。 アルバムのオープナーを飾る「Alps」は、彼らを見初めたモグワイとのツアー中に書かれたといい、事実、スイスのアルプスで書かれた楽曲である。イントロは、Board Of Canadaのようなエレクトロニックを下地にして、ドイツのNEU!のような電子的なパーカッシヴの要素を加えている。以降は、グラスやライヒのようなミニマリズムに根ざした展開へと引き継がれる。曲の構成自体はミニマルビートの性質が強く、旧来のケミカル・ブラザーズに近いものが感じられる。bdrmmの音楽はロックサウンドとクラブビートの中間点にあり、ある意味では、Squidのようにバンドの音楽という観点とは別のエレクトロニックの要素を追求した楽曲で、シューゲイズやドリーム・ポップという先入観を抱え、このアルバムに触れるリスナーに意外性を与えるようなオープニングとなっている。



 

2ndアルバムはデビュー・アルバムと同じように、一曲目からギア全開とはならず、徐々にゆっくりと、アルバムの序盤から中盤にかけて綿密な音の世界観を構築されていく。二曲目の「Be Careful」も一曲目のNEU!へのオマージュと同様、ドイツ音楽へのリスペクトが感じられる。2017年に亡くなったベーシスト、Holger Czukay(ホルガー・シューカイ)のような反復的なダビーなリズムは、ダモ鈴木の在籍時代のCANとの親和性も感じさせ、心地よさをもたらすはずだ。

 

この二曲目からbdrmmは、カルテットとしての本領を発揮しはじめる。しかし、それは徐々にギアをアップしていくといった感じで、ライブのセッションを通じてアルバムのテーマとなる核心へと徐々に近づいていく試みであるようにも感じられる。ボーカリストのライアン・スミスのボーカルは一見すると、シューゲイズ/ドリーム・ポップという前情報を念頭に入れて聴くと、チャプター・ハウス、スロウ・ダイヴ、ライドといった系譜にあるように感じられるが、実際は、キュアーやストーン・ローゼズ、あるいはその後の90年代のブリット・ポップ勢にも近いものである。中空に彷徨うかのような拠り所のないスミスのボーカルは、これらの年代のUKミュージック・シーンの面白みを知るリスナーに、程よい陶酔感を与え、幻惑へと誘い込む。

 

 「It's Just a Bit of Blood」



 

 

アルバムの3曲目でこのバンドの目指す音楽性の断片的なものがわずかながら見えてくるようになる。実際に、トム・ヨークのボーカルを意識したという「It's Just a Bit of Blood」では、「Hail To Thief」時代のレディオ・ヘッドのようなサウンドが貫かれている。そしてようやくディストーションとリバーヴをかけ合わせたシューゲイズ/ドリームポップらしいサウンドが全開となる。ギターサウンドやその雰囲気を盛り上げるドラムは、スローダイヴに近いものがあるが、サビにかけてはモダンな雰囲気を帯びるようになり、Deerhunter、Beach Fossils、Wild Nothingに象徴される米国のポストシューゲイズを織り込んでいる。



ライアン・スミスのボーカルは、中性的であり、ほのかに切なさと叙情性が漂わせているが、それは、彼らの出身地であるHullの寒々しい空気感や情景を脳裏に呼び覚まさせる。イントロのタムの連打によって溜めを作り、その後の轟音とは対極にある静謐な曲展開へと繋げるドラムは、ほどよい緊迫感があり、迫力ある。また、サビの部分でのボーカルは、アンセミックな雰囲気を帯びており、この曲がライブでどのように演奏されるのかと期待させるものがある。正直なところ、この曲は、それほど新しい試みとは言えないだろうし、カナダのBodywashほど先鋭的でもないけれども、英国的なポスト・シューゲイズサウンドをどうにか確立していこうという意図も見受けられる。

 

「We Fall Apart」は、bdrmmが必ずしもシューゲイズ/ドリーム・ポップに執着していないことを示しており、ポスト・パンクやオルトロックに近い前衛性も取り入れようとしている様子が伺える。ローファイやプロトパンクの影響を残すこの曲では、Sonic Youthの最初期のアヴァンギャルドなアプローチを再現し、『Daydream Nation』の収録曲「Teen Age Riot」に近いUSインディーのハードコアな世界を探求する。これらの瞑想的なギターの反復性は、ソニック・ユースがこの後の時代に商業的な成功を収めるうち、サーストン・ムーアが急進的に失っていった要素だった。この時代の前には、サーストン・ムーアは変則チューニングを始め、ギターの演奏に革新性をもたらしたが、それらの前衛的な手法を、bdrmmはイギリスのバンドとして受け継ごうというのである。それは冒頭にも述べたように、商業主義に対する疑念の発露がこういったアート・ロックのサウンドの中にイデアとして織り込まれていると見るのが妥当なのだろう。

 

また現代のイギリスのポスト・パンク、ハードコアバンドやその他の多少マニアックなバンドと同じように、既にロックミュージックのなかにアンビエントを取り入れることは珍しくもなく、そして今日のトレンドともなっている。


「Advertise One」では、Mogwaiの音楽が、特に日本で「音響系」と呼ばれるに至った原初的なポスト・ロック・ソングを提示している。確かに、アンビエントとロックの混淆という側面では、既に古典的になりつつあることは疑いないが、bdrmmはドローンに近い音楽性を取り入れ、また、ドゥームの要素を付け加えている。ドゥームに関してはメタルが発祥であると思うが、それらの90年代から00年代にかけてのミクスチャーの極北をこの曲に捉えることが出来る。もちろん、途中に挿入されるピアノのフレーズはロックを他ジャンルに開放させてみせた、アイスランドのSigur Rosの音楽性の影響を見出すリスナーも少なからずいるのではないだろうか。



 

アルバムの中で最もスリリングな曲が続く「Hidden Cinema」である。多少、展開がもたつく場合があるが、このバンドのシューゲイズとポスト・パンクの融合性の真骨頂を、この楽曲に見出すことが出来る。ボーカルとバンドアンサンブルは、Deerhunter、Beach Fosiilsに近いものがあるが、何と言っても、この曲では、他のパートに対する複合的なポリリズムを交えたベースラインが際立っている。このビートを撹乱するようなベースラインは見事で、立体的な構造性を楽曲に及ぼし、スリリングさをもたらしている。また、そこには、ロンドンのSquidに比するポスト・パンクバンドらしいひねりや、シニカルな主張性も少なからず含まれていることも理解出来るはずである。一曲の全体的な構造として、溜めを作るフレーズとその溜めを開放させるためのフレーズが並列されることにより、ジャズのコールアンドレスポンスやハードコアのストップ・アンド・ゴーのような前衛的な効果が生み出されている。ただ一つだけ難点を挙げるとするなら、構成力は凄く巧みに感じられるものの、フレーズの移行の際に多少もたつくような瞬間があり、これがスムースな流れを妨げている場合もあることを指摘しておきたい。これがよりバンドの演奏として熟練したものになると、今までになかった何かが生み出される可能性がある。



続く、「Pulling Stitches」では、彼らのシューゲイズ/ドリームポップサウンドの一つの完成形が示されている。ポンゴのような民族楽器のシンセ・パーカッションの挿入、及び、モダンなインディーポップの要素は、捉え方によっては、彼らの新しい音楽性が確かな形になりつつある瞬間と言えるかもしれない。ライアン・スミスのボーカルは、他の主要な曲と同様に、夢遊の雰囲気を帯び、轟音のシューゲイズサウンドにちょっとした華を添えている。他のインディーポップバンドと同じように、現代の寄る辺なき人々の感覚を上手く捉えた瞬間とも言える。

 

「Pulling Stitches」

 

 

アルバムの最後に収録されている「A Final Moment」は、 作品全体で提示してきたロックミュージックへの新たな挑戦のひとつの区切りを意味するのだろうか。バンドが影響を指摘するボーズ・オブ・カナダのようなワープ・レコーズの主要なエレクトロニカサウンドを下地にし、大掛かりなシネマティックなサウンドを彼らは生み出している。アルバムを聞き終えようとする瞬間、何かこのアルバムが次なる希望に溢れた瞬間に続いている気がした。それは単なるイメージに過ぎなかったのだが、何か一筋の狭い道が続いた後、その道がある瞬間にぱっと大きく開けていき、理想的な領域へと続くのが思い浮かんできたような気がした。



 

勿論、これは私見であり、個人の単なる感想に過ぎないが、アルバムの最後の曲を聞くかぎりでは、bdrmmは他のロンドンの有望視されるポストパンクのバンドにも比する期待値を持ったカルテットであると感じられた。bdrmmの才覚はその片鱗をみせたに過ぎず、完全には花開いていないのかもしれない。これから、どんな未来のサウンドが生み出されるのか楽しみにしたい。 


 

 84/100

 

 

 bdrmmのニューアルバム『I Don't Know』は、Rock Action/Tugboatから本日より発売中です。

 



Swans 『The Beggar』

Label: Young God/ Mute Aartists

Release: 2023/6/23


Review


マイケル・ジラ擁するNYのアンダーグランドの伝説的なバンド、SWANSは、米国のインダストリアルロックの先駆的な存在で、よく考えると、トレント・レズナ−擁するNINよりも以前の84年に結成された。最初期の代表作『Cops』では、インダストリアルとパンクを融合したスローチューンの嵐で聞き手を圧倒し、その後の時代において、熱烈な信者を増やし続けてきた。このバンドを00年代の頃、初めて聴いた印象としては、”重い、低い、遅い”という感覚に尽きた。当時、レコードショップでは入手困難であったので、もちろん、サブスクリプションもない時代、私はやむなく、あまり褒められない方法で『Cops』を聴いたのだった。それはマイケル・ジラの重力を感じさせる、地の底に引きずり込まれるようなドゥームの雰囲気を擁する重苦しいボーカル、メタリックなノイズギター、そして、やかましいドラムは、”アヴァンギャル”という概念が何かを私に教唆し、そして、その精髄が何たるかを掴ませることになった。スワンズの音楽は反商業主義の極致であり、ニューヨーク・アヴァンギャルドの系譜とはかくなるものなのか・・・という印象を抱かせる。彼らは、ノーウェイヴ、テレヴィジョン、パティ・スミス、ファグス、ルー・リード、そういったアウトサイダーのDNAを受け継ぐバンドであることは疑いを入れる余地はない。しかし、それはニューヨークで起こったことだから説得力がある。


2000年代には「Filth/Body To Body、Job To Job」というインダストリアルロックの佳作を発表した。この00年代には、ドイツのインダストリアルバンドに近い不気味なアヴァンギャルド性を追求していた。そして、それは金属的なパーカッション、メタリックなギター、そしてやはり、マイケル・ジラの重苦しい低いボーカル、スローチューンの楽曲、こういった彼らの代名詞となるパンクロックソングで国内にとどまらず、海外にもそのファンを増やしていったのだ。

 

SWANSの音楽は基本的にパンクに属することに疑いを入れる余地はない。メタルに近いインダストリアル性によってカルト的なバンドとして君臨しつづけてきたことも。しかし、この四年ぶりのニューアルバム『Beggars』 はかなり久しぶりのSWANSの音楽にふれる機会を設けてくれたが、多少なりとも、マイケル・ジラとバンドのイメージが変化することになった。以前ほどにはトゲトゲしさはなくなり、むしろそれとは逆の懐深い大人のロックへと変貌したというのが率直な感想である。そして瞑想的なオルタナティヴロックというのが相応しい見方かもしれない。70年代には「ALT」という言葉もなかったが、ジム・モリソンが志したロックにも近い。

 

オープナー曲は「The Parasite」は、Pink Floydのシド・バレット在籍時のようなサイケ・フォークの系譜を受け継いでいるように思える。何か現実とはことなるアストラルの領域へと踏み込んでいくようなミステリアスなトラックである。しかし、そこにはいかにも、SWANSらしい瞑想的な雰囲気と歌詞の詩情が含まれている。英会話がそれほど得意ではない私にとっては、マイケル・ジラの器楽的なボーカルの歌詞の意味を明確に掴むことは難しいが、一方で、ウィリアム・バロウズが指摘していたように、音楽も詩も、結局、徹底的に磨き上げられ、極限まで研ぎ澄まされた時、言葉の持つ本義から遠ざかり、”有機物的、あるいは、無機物的な何か”とならざるを得ない。それが重力の重みをおびれば、鉱物(Metal)となり、より軽くなれば、存在そのものが希薄になって、雰囲気(Ambient)になる。ボーカルや言葉、歌詞というのは、結局、どちらの方に重点をおいて進んでいくのか、その方法論の相違によるものでしかないのである。

 

しかし、このアルバム『The Beggar』の全体的な印象を見ると、以前のSWANSにはなかった要素が突き出されているが、やはり、このバンドらしさも作品全体に通底している。「Paradise Mine」は、Slintを彷彿とさせるポスト・ロックであるが、それはやはり彼らの代名詞的なスローチューンによって構成されている。以前のインダストリアルの要素を極限まで削ぎ落とし、それをスタンダードなロック、あるいはコアなロックとして昇華している。続く「Los Angels: City Of Death」は、これまでのSWANSの印象を払拭する、いささか軽快なナンバーとも言える。ただ、それはさっぱりとした明るさではない、奇妙なシニカルや暗喩もさりげなく込められているように思える。また、マイケル・ジラのボーカルは、コーラスが加わったとたん、ジム・モリソンのような瞑想性を帯びる場合もある。スタンダードなロックナンバーと思わせておいて、その中にもアヴァンギャルドらしさ、パンク的な何かを忍ばせているのが重要なのだ。

 

その後、アルバムの世界は続く「Michael Is Done」でさらに瞑想的な領域へと進んでいくが、マイケル・ジラが駆使するのは、ラップやヒップホップとは異なるリリックやスポークンワードの新たなスタイルでもある。それがいくらか聞きやすさのあるロックソングという形で展開されていく。続く「Unforming」は神秘的なイントロから、優しげなフォーク・ミュージックへと直結している。それ以前の曲と同様に、ジム・モリソンのような瞑想性を帯びているが、それは温和なフォーク・ミュージックとして昇華され、シンセのシークエンス、ラップスティール、グロッケンシュピールのような音色により、かつてのルー・リードの曲のようにロマンチズムを帯びるようになる。謂わば、ここにニューヨーク・アヴァンギャルドの継承者としてのマイケル・ジラの姿が伺える。これまでになくメロディーそのものの良さを追求したこの曲は続いて、ピアノの音色によって美麗な雰囲気に彩られ始める。そして、その上をほのかに漂うラップスティールはカントリーに近い温和さをもたらし、マイケル・ジラの低いヴォーカルと見事なコントラストを描くようになる。ここには、以前のSWANSの煉獄的な音作りとは異なる、天上的な何かが表現されている。もちろんこの要素はデビュー当時にはありえなかったものである。

 

以後も、マイケル・ジラの低く重いボーカルは続いていく。しかし、前曲と同様に、続くタイトル曲「The Begger」でも、SWANSの音楽性の手法ががらりと変化しているのに気づく。既にかつての重苦しさもなければ、鈍さもなくなっている。この曲は明らかにシド・バレットの「The Mad Laughs-帽子が笑う 不気味に」や、日本の70年代の歌謡曲の流行の合間にアンダーグランドで隆盛をきわめたサイケ・フォークを志向したトラックであると思われるが、SWANSの名刺代わりとなるスローテンポの楽曲は、むしろ聞き手の感覚に癒やしを与え、穏やかな感情を与えもする。これはバンドそのものの方法論を大きく変えたわけでもないのに、バンド制作者の心情が変化したことにより、こういった曲が生み出されるようになったのかもしれない。 

 

その他、アンビエント風の楽曲もアルバム全体の主要なイメージを形成している。「No More Of This」は、近年のブライアン・イーノが模索するアンビエント・ロックとの共通項を見出せる。続く「Ebbing」は、フォークとアンビエントの融合に取り組んでいる。「Why Can't〜」では、アメリカーナをサイケフォークという観点から捉え直しており、「The Beggar Lover」では、女性の声のモノローグを取り入れて、シネマティックなアヴァンギャルド・ミュージックに繋がっていく。このアルバムの中では唯一インダストリアルの要素を加味しているが、これは、SWANSがデビュー当時の前衛性や反商業主義を片時も忘れたことがないことを表している。

 

アルバムの最後では、渋さのあるスタンダードなロックソング「The Memorious」で終了するが、ここにはやはりリチャード・ヘルのようなアウトサイダーとしてのニューヨーク・アヴァンギャルドの系譜にあるコアな音楽性が通底している。40年を経てもなお、SWANSはSWANSであり続ける。彼らがこれまでパンクでなかったことは一度もなく、それは今作も同様なのである。

 

 

82/100

 



Featured Track 「Unforming」

 Sigur Ros 『ATTA』

Label: Von Dur Limited / BMG

Release: 2023/6/16

 


Review

 

ヨンシー率いるアイスランドのポストロックの英雄、シガー・ロスがついに帰還を果たした。アンビエントとロックを融合した音響系のポストロックバンドとして名高いシガー・ロスは、これまでの多くのバックカタログを通じて、ロックの未知の可能性を示してきた。 2000年代にはレディオヘッドの『OK Computer』の音楽性とも近いものもあってか、耳の肥えたロックマニアに留まらず、世界的にファンベースを獲得してきた。近年、以前のような大作が少ない印象もあるものの、最新作『ATTA』では、彼らの最盛期の奥行きのあるサウンドに迫るとともに、近年の中でも珠玉の傑作とも呼べる作品となるだろう。ヨンシーの繊細なボーカルは今作でも健在であり、その上にレイヤーとして重ねられるアンビエント風のパッド/シークエンスも健在だ。


これまで宇宙的な世界観を築き上げてきたアイスランドのロックバンドは、今作でもその壮大なオーケストラのようなロックサウンドを継承している。比較的に低いトーンで歌われるボーカルとそれとは対比的にファルセットを駆使して美しいボーカルを披露するヨンシーの歌唱力にまったく陰りは見られない。どころか、その感覚的な美麗さは今作でより強調されている。オープニング「Glóð」に始まり、二曲目「Blóðberg」にかけての壮大なスペクトルロックサウンドは、アイスランド国土そのものの美しさを象徴するような導入部となっている。旧来のシガー・ロスファンにとどまらず、新規のファンをも魅了するであろうサウンドのコスモ的な広がりは旧作のアルバムよりも奥行きを増している。この音楽の中には神秘的な瞬間さえ見出すことが出来る。それは旧来と同様、あっと息を飲むような圧巻の迫力のあるサウンドに下支えされている。

 

壮大なスペクトルサウンドは三曲目「Skel」以降は、シネマティックなストーリー性を交えゔ展開される。悲哀に満ち溢れたアイスランドの民謡の影響を取り込みながら、ヨンシーは、トム・ヨークのような繊細な歌声を壮大なロック・オペラ的なサウンドへと引き上げていく。宇宙的なシンセサウンドはより迫力味を増し、奇妙な緊張感すら帯び始める。これまでMumを始めとするエレクトロニカの発祥地であったアイスランドの音楽の集大成をこの曲に見出すことが出来るはずだ。

 

続く「Klettur」を見るかぎりでは、彼らの静と動の効果を生かしたシガー・ロス・サウンドは今も健在である。瞑想的で暗鬱な雰囲気を帯びたアンビエント・サウンドのイントロから、中盤にかけての神秘的な壮大さを持つ劇的な曲展開への移行は、彼らの創造性が今も現代社会に阻害されていないことを証左するものとなっている。


イントロから一貫して導入されるティンパニー風のドラムのビートはシガー・ロスの繊細なサウンドの石礎をしっかりと支え、徐々にモグワイのようなマーチングのようなパーカッシブな影響を曲に及ぼし、やがてアンセミックな効果を与えるようになる。ヨンシーのボーカルは切ない雰囲気も感じられ、シンセ風のシンセサイザーのシークエンスによって、そのエモーションの効果は極限まで引き上げられる。曲の終わりにかけてクラブ・ミュージックに近い多幸感を帯びはじめ、やがて神々しさすら感じられるようになる。モグワイのようにミニマルなサウンドを志向しながらも、微妙な曲の変化やバリエーションによって、彼らの代名詞となる壮大な音響系サウンドの真骨頂にたどりつくのである。

 

ロック・オペラを彷彿とさせるサウンドはより次曲になると、顕著になってくる。「Mór」でも前曲と同じように、モグワイを彷彿とさせる静かな瞑想的なイントロからシネマティックなポストロックサウンドへと徐々に移行していく様子を捉えることが出来るが、それは地上から天にかけて舞い上がるように、ドラマティックなヨンシーのボーカルを通じて、じっくりと丹念に天を衝くようなポストロックサウンドが、抽象性の高いアンビエントサウンドにより組み上げられていく。陶酔的であり、また、内省的なヨンシーのボーカルは天上の響きのような高らかなものも感じとることが出来る。特に、この曲では、轟音性から突如、静謐な展開へと沈み込み、そして人智では計り知れないような霊的かつ神々しさのある中道のサウンドへと歩みを進める。このアルバムの中盤では、必ずしもエネルギーのベクトルは一方方向に向かわず、上下を絶えず行ったり来たりしながら、慎重に曲の落とし所を探っていくような感じがあって面白い。

 

アルバムは後半に到ると、単にロックの様式に留まらず、多角的なサウンドが示されている。「Andrá」は、クラシカルの賛美歌やクワイアのような形式を取り、彼らが単純なポストロックバンドではなくなったことを示している。以前からフロントマンのヨンシーはオーケストラに対して深い関心を示しており、それはステージでのバイオリンの弓を使用したギターの演奏などに表れていた。その表層的なオーケストラへの思いはこの曲で結実を果たしたということになる。クワイアを基調としたトラックには、エレキギターの単旋律が重ねられ、特異なサウンドが生み出されている。ノイジーなポスト・ロックとは対極にあるカーム・ロックとも称するべき瞬間がここに表れており、旧来の北欧のメタルバンドやドゥーム・メタルバンドが見過ごしたクラシカルに対するロックミュージックの未知の可能性がここに示されている。ノイジーな側面を突き出すのではなく、落ち着いた静謐な側面を徹底的に押し出すという手法である。ロック・ミュージックとしての新たな形がこの曲を通じて示されたといっても過言ではあるまい。

 

単なるロックバンドではないという彼らの意思表明はその後にさらに強まっていく。「Gold」はフォークミュージックを基調にして、かつてビョークとのステージ共演などを通じて探索していたバンドのアイスランドへの文化への深い理解に下支えされたフォーク・ミュージックが生み出された瞬間である。それは中性的なヨンシーのボーカルや、アンビエント風の抽象的なさウンドに加え、やはりこのバンドの代名詞となるシネマティックサウンドにより組み上げられる。これは70年代のLed Zeppelinが示したフォークサウンドの到達点とは別のひとつの極点が見出された瞬間とも称すべきだろう。そして曲のクライマックスにかけてのヨンシーのボーカルは自然の中に隠れている壮大な神様を見る瞬間のような圧倒されるような美が内包されている。

 

アルバムの終盤には、音響系のポスト・ロックの源流にあるサウンドの真骨頂も「Ylur」で見いだせる。彼らは、北欧神話をロックという形で昇華しているが、実際のサウンドは、Explosion in the Skyのような2010年前後のポストロック・サウンドの理想形がここに体現されている。

 

さらに「Fall」では、ポストロック・バラードとも称するべき楽曲に彼らは取り組んでいることに驚かずにはいられない。この曲には、ポスト・クラシカル/モダンクラシカルの重要な発信地であるレイキャビクのオーケストラ音楽に対するシガー・ロスの深い愛着を感じ取ることが出来る。

 

アルバムの最後に収録されている「8」は、無限を象徴するが、そういったはてなき何かが、このオーケストラの影響を交えたロックソングの中に込められている。曲の中盤では、シガー・ロスの真骨頂である恍惚とした轟音の瞬間を経た後、静謐なアンビエントが曲の最後にかけて断続する。聞き手は、この安らかな境地に長く身を委ねていたいと思うだろうし、またこのロックバンドのファンで有り続けてきたことに安堵を覚えるであろうことはそれほど想像に難くない。

 

シガー・ロスは、ビョークとともに、アイスランドの音楽を2000年代から牽引しつづけてきたが、彼らは北欧の英雄であり、(Mogwaiと合わせて)ポストロックの唯一無二のスターとも言える。彼らは、U2とも、アークティックとも、フー・ファイターズとも、メタリカとも違うわけだが、そういった頼もしく勇敢な気概を持つことが、このバンドの最も素晴らしい点であると思う。

 


92/100


 

Featured Track 「Blóðberg」

 





ポストロックについてよりよく知りたい方はぜひ以下の名盤ガイドを参考にしてみてください:


ポストロックの代表的なアーティストと名盤をピックアップ

 


アイスランドのポスト・ロックの重鎮、Sigur Rós(シガー・ロス)が7年以上ぶりに新曲を携えて帰ってきました。「Blóðberg」は、壮大で、幽玄で、オーケストラ的で、プレスリリースによると、"バンドにとって10年ぶりのニューアルバムへの道しるべとなる可能性がある "ということです。かつては音響系とも称されることのあったシガー・ロスのアンビエントにも近いロックサウンドは以前よりも迫力と重厚感を増しています。繊細なヨンシーのボーカルも哀感を誘う。


この曲には、HBOのチェルノブイリ・ミニシリーズを監督したヨハン・レンクが監督したビデオが付属しています。レンクは、「未来について、これ以上ないほど虚無的な気分だ。自分たちの愚かさに対して無力なのだ。そのある側面が、『Blóðberg』のテーマに対する私の印象と融合した。音楽は、私自身の惨めな思いを楽譜にし、音楽ならではの美しさを与えている」と説明している。

 

『Blóðberg』

 

「Blóðberg」は、今週末のロンドン、アムステルダム、ハンブルグでのSigur Rósのライブを目前にして到着しました。彼らは8月にWordless Orchestraと共に北米を訪れ、8/16のBeacon Theatreと8/18のKings Theatreでのニューヨーク公演を予定しています。全日程は以下の通りです。

 

Sigur Rós 2023 Tour Dates:

 


6/16 London, UK — Royal Festival Hall


6/17 Amsterdam, Netherlands — Concertgebouw


6/18 Hamburg, Germany — Elbphilharmonie


7/3 Paris, France — Philharmonie Main Hall


8/14 Toronto, ON — Roy Thomson Hall


8/16 New York City, NY — Beacon Theatre


8/18 Brooklyn, NY — Kings Theatre


8/19 Boston, MA — Wang Theatre


8/21 Minneapolis, MN — State Theatre


8/24 Seattle, WA — The Paramount Theatre


8/26 Berkeley, CA — The Greek Theatre at UC Berkeley


8/27 Los Angeles, CA — The Greek Theatre

 



韓国ソウルのポストロック/シューゲイザーミュージシャン、Parannoulは、初のライブ・アルバムを先週末にリリースしました。このライブ音源には、ニューアルバム『After the Magic』をリリースする直前、1月14日にソウルの”KT&G Sangsang Madang Hongdae Live Hall”で開催されたフルコンサートが収録されています。



 

この日のライブは最初の5曲はソロ、残りのセットは生バンドで行われた。今回、Parannoulは9分の2022年シングル "Into the Endless Night" の46分バージョンを含む、フルバンド部分のライブアルバムをサプライズ公開した。


この日のライブのラインナップは、ボーカル/キーボードがParannoul、ベースは同じくソウルを拠点に活動する盟友的存在であるAsian Glow、ギターがYo、2ndギターがBrokenTeeth、ドラムが9SuK、トランペットがFin Fiorが担当して、「Into the Endless Night」を演奏した。

 

『After the Night』と名が冠されたこの作品は、アルバムと映像の両方でリリース。







 

 

 ポスト・ロックに関するレビューは断片的に記してきたものの、網羅的なディスクガイドについてはそれほど多くは取り上げてきませんでしたので、今回、改めてポスト・ロックの代表的なアーティストと決定盤を下記に取り上げていこうと思います。


選出に関しては現代的な音楽から見ても先鋭的なバンドの作品を中心にご紹介していきます。以前のタッチ・アンド・ゴー特集のレコメンド、日本のポストロック特集も是非合わせてご覧ください。

 

 では、ポスト・ロックというのは何なのか?? シンプルに説明しますと、その名の通り、ロックを先を行く音楽で、アバンギャルド・ロックとほぼ同意義といっても良いでしょう。ただ、これらは他のジャンルと同じく、マスロックをはじめ無数のサブジャンルに細分化されているため、相当なマニアでもなければ、その変遷を説明することは難しいので、ここでは割愛して大まかな概要のみを述べておきます。

 

 ポスト・ロックの音楽は大まかに3つに分けられます。一つは、轟音系と呼ばれるもので、MBVの轟音の次の時代に出てきた音楽です。これらは、オーケストラ音楽に近いダイナミックな編成がなされる場合もある。例えば、MOGWAI、シガー・ロス、MONOが該当する。2つ目はスティーヴ・ライヒやフィリップ・グラスの現代音楽のミニマリズムを継承したロックで、Don Cabarello、God Speed You Black Emperror!が該当する。もうひとつは、ジャズの影響を受けたライブセッションの延長線上にあり、Toroise、Sea And Cakeが当てはまる。

 

 90年代前後に彗星のごとく登場したポスト・ロックの音楽は、70年代のパンクムーブメントがそうであったように、形骸化した音楽に対して新鮮なムードをもたらそうというミュージシャンの意図が込められていました。 これは穿った見方かもしれませんが、同年代のLAの産業ロックに対する反抗心もあったかもしれません。

 

 80年代〜90年代当初、ポストロックは米国で盛んになった後、海外にも広がっていき、アジアやヨーロッパでもインディーシーンを中心に盛り上がった。日本では、ToeやLITE、そしてAs Meias、台湾の高雄でもElephant Gymが台頭しています。その後、現在はジャズが盛んなイギリスにそのシーンの拠点を移し、特にロンドンを中心に前衛的なロック・ミュージックを志向するバンドが徐々に増えている。


 一例では、ロンドンのブラック・ミディやBC,NR、また、ドライ・クリーニングやキャロラインも明らかにポスト・ロックの範疇にある音楽に取り組んでいます。これは、ロンドン近辺の若者が普通に米国のアメリカーナやエモ、ポスト・ロックに親しんでいることの証明ともなっている。

 

 そして、当初のシカゴやルイヴィルのシーンを見るとわかるように、これらのロックの次の時代を象徴する新しい音楽というのは、必ずしもオーバーグラウンドのシーンから出発したとはかぎりません。

 

 当初は、アンダーグラウンドに属する小さなライブスペースから発生し、音楽ファンの間でその名が徐々に知られるようになった。例えば、Minor Threat〜Fugaziと同じように、それらのバンドはDIYのスタイルを図り、少人数規模のスタジオ・ライブを行うこともあったのです。

 

 もちろん、後のポストロックが有名になっても必ずしも先駆者のバンドが世界的な知名度を得るとは限らなかった。モグワイやシガー・ロスのような一般的な存在が出てくるのは最初の出発点から見ると、だいぶ後のこと。つまり、90年代のグランジも同様ですが、新しい音楽がアンダーグランドからオーバーグラウンドに引き上げられるのには、それ相応の時間を要するわけです。

 


 

God Speed You!  Black Emperor(Canada)

 



GY!BE(God Speed You! Black Emperor)は、カナダのポストロックシーンを象徴する偉大なバンドである。現在もメンバーを入れ替え、さらにストリングス奏者を増やして活動中。


バンド名は日本の暴走族の映画のタイトルに拠る。一般にいうポスト・ロックというジャンルの大まかな印象は、このバンドの音楽を通じて掴めるといっても過言ではない。ライヒのミニマリズムに根ざした曲の構成、チェロやヴァイオリンの導入、リバーブとディレイをかけた音響系のギターの音作り、映画のような会話やアンビエンスのサンプリングを導入し、物語調の音楽を紡ぎ出す。

 

GY!BEの楽曲は、ほとんどが10分を越えで、20分以上に及ぶ場合もある。大掛かりな曲がほとんどであるが、一曲の中に複数の小曲が収録され、それらの音のタペストリーが映写機のように連続していく。ライブではギタリストが椅子に座って演奏し、フィードバックを最大限に活用する。これまでのライブでは、ステージの背後にプロジェクターを設置し、映像と音楽を同期させるインスタレーション風のパフォーマンスを行っている。

 

米シカゴのクランキー・レコードから2000年発売された伝説的名盤『Lift Your Skinny Fists Like Antennas To Heaven』の発売当初は、海外メディアからレッド・ツェッペリンの音楽と比較される場合もあったという話。


「Storm」のミニマリズムも魅力ではあるが、実際のところ、このアルバムに収録されている「Static」、「Sleep」は『Led Zeppelin Ⅳ』に匹敵する凄さを体感出来る。1999年のJohn Peel  Sessionの伝説のライブはこちら



『Lift Your Skinny Fists Like Antennas To Heaven』 2000  Kranky

 


 

Mogwai (Scotland)

 


最近では、映画のサウンドトラックのリリースや、再発、回顧録などが中心となってしまい、ライブバンドとして第一線を退いてしまった感もあるモグワイであるが、以前、ディスクユニオンのスタッフのレビューではポスト・ロックというジャンルを紹介する上で必ず出てきた。それが上記のGY!BEとスコットランドのインディーロックシーンの象徴的な存在モグワイである。

 

97年の「Young Team」がNMEの年間ベストアルバムの七位に選出され、ニューライザーとして一躍注目を浴びだ後、2000年代を通して、世界的なロックバンドとして成長していった。日本の音楽シーンとも関わりがあり、ある作品にはENVYのボーカルが参加していることでも知られる。

 

モグワイの音楽がなぜポスト・ロックないしは新しいロックといわれたのかについては、アイルランドのMBVの轟音性をアンビエント的に解釈し、反復のディストーションギターのフレーズとリズムを通じて確信的に組み立てた功績が大きいといえるだろうか。また、よく言われる叙情性溢れる轟音ロックや、静と動を通じて繰り広げられる楽曲展開については、特にグラストンベリーやフジロックのような大型のロックフェスのコンサートとも親和性が高く、2000年代以降の音楽シーンの象徴的な存在となったのは何も不思議な話ではなかった。

 

反復フレーズを中心とするシンプルな轟音のギターロックは、初見のリスナーでも音楽の持つ世界に簡単に入り込むことが出来る。


今はなき日本の富士銀行をアートワークにあしらった「Young Team」、「Come On Die Young」を薦める方も少なくないと思われるが、ここでは、美麗なメロディーと轟音性が生かされた「The Hawk In Howling」を入門編として推薦したい。このアルバムに収録されている「I'm Jim Morrison,I’m Dead」、「Thank You Space Expert」は音響系のポスト・ロックの金字塔とも称するべき名曲である。なお、モグワイのスチュアート・ブレイスウェイトは現在、Silver Mossとして活動を行っている。

 

 

『The Hawk In Howling』 2008 Wall Of Sound Ltd.

 


 

Sigur Ros(Island)



現在来日公演中のビョークとともにアイスランドの象徴的な存在であり、またモグワイとともにポストロックの象徴的な存在であるヨンシー率いるシガー・ロス。1994年に結成、現在も活動中、昨年、『Art Of Mediation』をリリースしている。後の時代には、ステージでビョークと共演を果たしている。ライブではボーカルとともにヨンシーがバイオリンの弓を使用する場合もある。

 

シガー・ロスは、音響系と呼ばれるポスト・ロックのサブジャンルに属するバンドである。アンビエントや環境音楽とモグワイと同じように轟音性の強いロックを融合させ、90年代以降のロックシーンに革新性を与えた。それに加えて、フロントマン、ヨンシーのアイスランド語のボーカルを交えた音楽性は後の米国のExplosion In The Skyのようなバンドのお手本に。加えて、アイスランドの国土の気風の影響を受けた美麗なロックミュージックはそれ以前のU2の後の時代のロックミュージックとして多くのファンから受け入れられることになった。

 

その後、アイスランドにはヨハン・ヨハンソン、オーラブル・アーノルズとポスト・クラシカル/モダンクラシカルに属するミュージシャンが数多く出てきて、そして世界的な活躍をするようになった。そういった意味では、以前の記事でも書いたことなのだが、ビョーク、及びシガー・ロスはこれらの後続のミュージシャンの活躍への架け橋ともなった重要なアーティストなのである。音響系のポストロックとしてシガー・ロスは良盤に事欠かないが、お薦めとして、『agaetis byrjun』を挙げておく。この作品では、俗に言う音響系と呼ばれるアンビエントとロックの融合という革新的な音楽性の核心に迫ることが出来るはずである。

 

 

『Agaetis Byrjun』 1999 KRUNK

 

 




 

 

Rachel's (US)

 


ケンタッキー/ルイヴィルシーンでSlintとともにポスト・ロック/マスロックシーンの先駆的なグループ、Rachel's。現在はピアノ奏者としてモダンクラシカルシーンで活躍するレイチェル・グリムを中心に、Rodanのギタリスト、ジェイソン・ノーブルを擁する室内楽に近い編成のアート集団である。弦楽器とピアノを交えたバンドとして、91年からジェイソン・ノーブルが死去した2012年まで活動した。図書館のようなスペースでDIYの活動を行っていた。

 

それほど多作なアート集団ではないが、二十年間の活動の間にリリースされた作品はマニア向けではありながら、実験音楽として軒並み高いクオリティーを維持していた。活動開始から四年後に発表された95年のデビュー作『Handwrinting』は、カナダのGY!BEにも強い影響を及ぼしたと思われる。オーケストラにおけるミニマリズムとロックの融合の原型が「M.Dagurre」に見出せる。芸術家、エゴン・シーレを題材にした「Music For Egon Shiele』もオーケストラの室内楽として高いクオリティーを誇る。

 

彼らレイチェルズの入門編としては、2003年の最後の作品『System/Layers』をおすすめしたい。レイチェル・グリムスのピアノの演奏を中心に、ミニマリズムに触発された音楽性とジブリ音楽のような情感豊かな弦楽器のパッセージが劇的な融合を果たした傑作。全キャリアを通じて唯一のボーカルトラック「Last Things Last」を収録している。必ずしも、ロックの範疇にはないグループではありながら、後続のポストロックシーンに与えた影響は計り知れない。

 


『System/Layers』2003 Quartersticks  



 

Tortoise(US) 

 

 


いわゆるシカゴ音響派のくくりで語られることも多いトータス。現在のインディーズシーンで象徴的なミュージシャン、元Bastroのメンバー、ジョン・マッケンタイア、後に同地のジャズシーンの象徴的な存在になるジェフ・パーカーを中心に結成された。

 

ジャズを始め、様々な音楽が盛んなシカゴの気風を反映したアバンギャルドロックバンドである。 タイトルを冠したデビューアルバムではジャズを反映させた実験的なロックバンドとして台頭したが、続く96年の『Million Will Never Die』でシカゴ音響派と呼ばれるジャンルを確立。97年の「TNT」では時代に先んじてレコーディングにラップトップを導入し、ハードディスクレコーディング(Pro Tools)を採用し、 ユニークなサウンドを打ち出して成功を収めた。それまでバンドは演奏をテープに録音し、その後にデジタル・リマスターを施していた。

 

『TNT』はポストロックの先駆的なアルバムである。 ロックとコンピューターレコーディングの融合というのは現代的な録音技術としては一般的に親しまれる手法となったが、最初にこの音楽性にたどり着いたのは、RadioheadとTortoiseであった。現在も定期的にライブを開催しており、実際のライブセッションにおけるアンサンブルの超絶技法は、その場に居合わせたオーディエンスを圧倒する。レコーディングバンドとしてもライブバンドとしても超一流のグループである。PitchforkのMidwinter 2019での『TNT』のフルセットはトータスのキャリアにおいて伝説的なライブに数えられる。

 

 

『TNT』1998 Thrill Jockey

 


 

 

Battles(US)

 

 

ニューヨークのダンスロックバンド、Battlesは、Helmetのドラマー、ジョン・ステニアー、Don Caballeroのイアン・ウィリアムズを中心に結成。現在は脱退してしまったが、タイヨンダイ・ブラクストンが10年まで参加していた。またバンドは、7年、11年、16年にフジロックフェスティバルで来日公演を行っている。英国のダンスミュージックの名門、ワープ・レコーズと契約し、実験的なダンサンブルなポストロックバンドとしては当時、最大の成功を収めた。

 

知るかぎりにおいて、これだけシンバルの位置を高くするドラマーをいまだかつて見たことはない。シンバル(金物)の音の抜けを意識していると思われるが、実際のライブや映像を見ると、本当にびっくりする。


バトルズのポストロックバンドとしての最大の特徴は、変拍子を交えたテクニカルな構成力もさることながら、イアン・ウィリアムズが持ち込んだドン・キャバレロ時代のギターロックの革新性をダンサンブルなロックとして受け継いだことにある。デビューアルバム『Battles』はポストロックというジャンルにとどまらず、ロック・ミュージックの名盤に上げてもおかしくないような傑作である。

 

しかし、こういった以前には存在しなかった前衛的なサウンドが完成するまでに実に20年もの月日を費やしている。それ以前にメインメンバーの二人が90年代のUSアンダーグラウンドシーン、ドン・キャバレロやヘルメットのメンバーとして十分な実験を重ねた末に生み出されたものであり、この音は決して、一年や二年で考案されたものではない。特に、ドン・キャバレロのミニマリズムに根ざしたマスロックの要素がクラブミュージックのキャッチーさと組み合わさることで唯一無二の音楽が生み出されたのである。

 

 

『Mirrored』2007 Warp

 


 

toe(Japan)

 


海外でポストロックというジャンルが隆盛をきわめるにしたがい、2000年代の日本でもこのシーンに属するバンドが登場する。

 

日本の新宿を中心とするポスト・ハードコアのコンテクストから言うと、既にENVYがポストロックに近い作風を2003年の『Dead Sinking Story』で確立していたが、その後のジェネレーションがいよいよ登場するようになった。これらのシーンにあって、最初は3ndなるホーンセクションと変拍子を交えたアバンギャルドロックバンドが台頭、その後、パンク/ハードコアシーンで活躍していたBluebeard/There Is A Light That Never Goes Outのメンバーを中心に結成されたAs Meias,LITE、そしてtoeが 00年代のシーンを担う。最近、ロックダウン時に毎日新聞のインタビューに登場し、アーティストとしての提言を行っている。

 

toeの音楽に関して言えば、ミニマルの影響を交えたテクニカルで複雑な構成力を持つロック、いわゆるマス・ロックの典型例である。しかし、一方で、これらのマニア向けのコアな音楽性の中にも、エモーショナルな雰囲気と日本語のポップスの影響を交えたわかりやすい音楽性がtoeの最大の魅力。2000年代に国内のシーンで頭角を現したtoeは、その後、日本の全国区のロックバンドとなり、以後、LAでのライブを成功させ、その名を現地のシーンにとどめた。

 

オリジナル・アルバムとしては、2015年の『Hear You』を境にリリースが途絶えているtoeではあるものの、彼らの入門編としては代表曲「グッド・バイ」(シンガーソングライター、土岐麻子が参加したバージョンもあり)を収録した2009年の『For Long Tomorrow』がまず先に思い浮かぶ。

 

このアルバムに見られる変拍子に象徴されるテクニカルな構成力、及び、ポリリズムを交えた立体的なフレーズの組み上げ方は、日本のシーンに実験的なロックがもたらされた瞬間を刻印したと言えよう。また、LITEと同じく、邦楽ロックという観点から洋楽をどのように解釈するのかという点でも、バンドはこの作品にたどり着くまでかなりの試行錯誤を重ねた形跡もある。ライブバンドとしてのダイナミックな迫力と内省的なエモーションを兼ね備えた決定盤である。下記の「グッド・バイ」の映像はLAでのライブを収録。現地の観客の日本語の熱いシンガロングにも注目したい。

 

『For Long Tomorrow』 2009 Machupicchu Industries




Elepahnt Gymー大象體操 (Taiwan)



アジアのシーンにも波及したポスト・ロックのウェイブは、日本のみならず、台湾にも新しい風を吹き込むことになり、海に近い高雄からエレファント・ジム(大象體操)という象徴的な存在を輩出する。2012年結成と比較的新しい歴史を持つエレファント・ジムは、兄弟のKTChangとTellChang、ドラマーのChia-ChinTuにより構成されている。昨年、二年ぶりとなるフルレングス『Dreams』のリリース記念を兼ねてフジロックで来日公演を行っている。

 

近作で、エレファント・ジムはSF的な世界観を交えた近未来を思わせる実験的なロックに取り組んでいるが、当初、バンドは先行のポスト・ロックバンドと同様、ミニマル・ミュージックの影響を絡めたマス・ロックのバンドとしてミュージックシーンに登場している。実際のライブやライブを収録したAudio Treeシリーズのバージョンでは、KT Chanのタッピングをはじめとするテクニカルなベースの演奏を楽しむことが出来る。しかし、現時点での決定盤としては以前紹介しているとおり、2016年のEP『工作』が入門編として最適。マス・ロックの象徴的なミニマルのフレーズと、シティ・ポップに近い雰囲気を持つ中国語の柔らかいフレーズを交えたKT Chanのボーカルが合わさり、バランスの取れたポストロックサウンドが生み出されている。

 

また、バンドは、日本語歌詞でも歌い、来日時のライブではMCを日本語で行うこともあるのだとか。日本での活躍にも期待したい。

 

 

Elepant Gym 『Work (工作)』 2016 EP

 


 


Black Midi(UK)



以後の時代になると、ロンドンにもポスト・ロックのウェイブが押し寄せることに。昨年、最新作『Hellfire』を発売し、来日公演も行ったロンドンのアバンギャルドロック・バンド、ブラック・ミディはイギリスのアバンギャルドロック・バンドの中で強い存在感を放つ魅力的なグループである。デビュー当初はドイツのCANを始めとするクラウト・ロックの影響を絡めた前衛性の高い作風でロンドンのシーンに名乗りを上げる。最初の作品のリリース後、マーキュリー賞にもノミネートされ、受賞こそ叶わなかったがパフォーマンスを行っている。

 

現在は、サックス奏者を交えた四人組として活動しているが、キング・クリムゾンのプログレッシヴロックの要素とミュージカルのようなシアトリカルな要素が劇的に合致し、唯一無二の作風を昨年のサードアルバム『Hellfire」で打ち立てることになった。

 

ファースト、2nd、3rdと毎回、若干の音楽性の変更を交えた作品としてどれも違った魅力があることは明白であるが、このバンドの醍醐味を味わう上では現時点でバランスの取れた3rdアルバム『Hellfire』を入門編としておすすめしておきたい。前作の「John L」から引き継がれた音楽性は、このバンドの持つ超絶的な演奏技術により、無類の領域へと突入しつつあるようだ。このフリージャズの要素は、プログレッシヴ・ロックとスラッシュメタルの方向性へと突き進んでいき、3作目の「Welcome To Hell」で結実を果たす。また、二作目から受け継がれたミュージカル風の音楽やバラードもまたブラック・ミディの音楽の醍醐味のひとつ、つまり代名詞のような存在となっている。今後、これらの作風はどのように変化するのか今から楽しみで仕方がない。


 

 

「Hellfire」2022 Rough Trade





Black Country,New Road(UK)

 



こちらもロンドンのポストロックシーンを代表するブラック・カントリー、ニュー・ロード。メンバーのサイドプロジェクトには、Jockstrapがある。昨年、アイザック・ウッド参加の最後の作品となった 2ndアルバム『Ants From Up Here』をリリースし、またフジロックでも来日公演を行っている。

 

現在、バンドはフロントマンの脱退後、新編成でライブを開催しつつ、新曲を試奏しながら練り上げている。今後、どのような新作が登場するか、心待ちにしたい。ライブ盤としては先週末に発売された『Live at The Bush Hall』がファンの間で話題となり、バンドの代名詞的なリリースとなっている。

 

前時代のポストロックシーンの音楽性を踏襲し、ジャズの影響をセンスよく織り交ぜ、弦楽器を交えてライヒのミニマリズムを継承したロックサウンドは、ロンドンのシーンを活性化させた。ファーストアルバムのアートワークについても、インターネットの無料画像を活用し、それを印象的なアートワークとならしめた点についても、現代のティーネイジャー文化の気風をセンス良く反映させたといえる。BC,NRもブラック・ミディと同様に、最初のアルバムがマーキュリー賞にノミネートされ、一躍国内の大型新人として注目を浴びるに至った。

 

『Live at Bush Hall』 2023  Ninja Tune



 


ロンドンのポスト・ロックバンド、Black Country,New Road(ブラック・カントリー、ニュー・ロード)は、アイザック・ウッド脱退後、新しいセットリストをクンでライブツアーを開催しています。これらの未発表の新曲は、12月にロンドンのブッシュ・ホールで行われた3回の公演を撮影した「Live At Bush Hall」という新しいパフォーマンス・フィルムとして発表される。


「スタジオ・アルバムを作りたくなかったんだ」とピアニストのメイ・カーショウはプレスリリースで語っている。"新しい曲は特にライブで演奏するために書いたから、パフォーマンスを出すのはいいアイデアかもしれないと思ったんだ"。

 

『Live At Bush Hall』は、Greg Barnesが監督し、John Parishがミキシングを担当した。「過去に見たり、やったりしたライブ・セッションから懸念していたことがあった」とギタリストのルーク・マークは語っている。

 

複数の演奏が視覚的に明らかにまとまっているため、演奏から引き離されてしまい、人工的でライブとは思えないような印象を与えてしまう。そこで私たちは、3つの夜が互いに異なるビジュアルに見えるようにするアイデアを思いついたんです。変装するという発想がないように。私たちは、とても正直で、私たちがちゃんと3回に分けて演奏したことを人々に知ってもらいたかったのです。これは、ただノンストップで全部のセットリストを演奏しているのではないんだ。

 

 

 

『Live At Bush Hall』は3月24日より発売。

©Zev Schmitz

 

アルバム・リーフことカナダのエレクトロニック・アーティスト、ジミー・ラヴァルが、7年ぶりの新作LPを発表した。2016年の『Between Waves』に続く『Future Falling』は、5月5日にNettwerkから到着する。



 

最初の発表では、Bat for LashesのNatasha Khanとコラボしたニューシングル「Near」が公開されています。アルバムのアートワークとトラックリストは以下の通りです。


LaValleは「Near」について、「私はNatashaに私が作っている曲を送って、彼女がコラボしてくれるかどうか確認したんだ」とLaValle(ラヴァル)は語っている。

 

私たちは午後、私のスタジオで過ごし、彼女はその曲の上でいくつかのアイデアを歌った。私はそれらのアイデアを取り入れ、彼女のボーカルに触発されて新しいものを作りました。彼女が描く夢のような物語をサポートするようなものを作りたかったんだ。全てはとても自然なことでした。


カーンは、「私たちは有機的に仕事をし、私はジミーの音楽の上でボーカルを作り、メロディーと言葉で遊びました...そして彼はそれを取り上げて、『Near』になるように彫刻したのです。暗い森の奥深くへ入っていくようなイメージで、何か貴重で秘密めいた小さな安全が垣間見える。アンビエントなおとぎ話のようなものです。とても自発的で、即興で作るのが楽しかった」




新作『Future Falling』の背後にあるプロセスについて、LaValle(ラヴァル)はこう説明した。


パンデミックの間、私はほとんど毎日新しい音楽を作りました。私は、自分が関係あると感じる膨大な量の新しい素材を蓄積しており、それはほとんど障害物のように作用していました。アナログ・シンセサイザーへの愛に忠実でありながら、新しい技を学び、多くのオーディオ・マニピュレーションを実験しました。

最終的に1曲のコレクションに落ち着き、すべてを再検討した後、複数の友人や協力者に連絡を取り、楽曲を提供してもらいました。これらの貢献により、私が常にインスピレーションを受けているコラボレーション・スピリットを保ち、一人で発見し、創造の時間を表現するレコードを作ることができたのです。


 



 

 

Album Leaf 『Future Falling』 

 

 

 

Label: Nettwerk Music Group


Release: 2023/5/5

 

 

Tracklist:


1. Prologue

2. Dust Collects

3. Afterglow [feat. Kimbra]

4. Breathe

5. Future Falling

6. Cycles

7. Give in

8. Stride

9. Near [feat. Bat for Lashes]

10. Epilogue




Silver Moth(Via Bella Union)
 

スコットランドのポスト・ロックバンド、Mogwai(モグワイ)のStuart Braithwaite(スチュアート・ブレイスウェイト)を中心とする7人組の新プロジェクト、Silver Moth(シルバー・モス)が遂に始動します。

 

バンドは、デビュー・アルバム『Black Bay』を発表、最初のシングル "Mother Tongue "を公開しました。『Black Bay』は、Bella Unionから4月21日にリリースされる予定です。アルバムのトラックリストとカバーアートと合わせて、「Mother Tongue」を以下でチェックしてみてください。


Silver Mothは、Braithwaiteのほか、Elisabeth Elektra、Evi Vine、Steven Hill、Abrasive Treesのギタリスト/ソングライター、Matthew Rochford、Nick Hudson、ドラマー、Ash Babb、チェリスト、Ben Robertsが参加しています。Twitterでのやりとりをきっかけに、Zoomでミーティングを重ね、最終的にスコットランドのルイス島にあるBlack Bay Studiosで、プロデューサーのPete Fletcherとレコーディングを行ったのが、このプロジェクトの始まりでした。


「Black Bayに行くまではお互いのことを知らなかったから、スタジオに着いた途端、すごくクリエイティブなモードになった」と、Elisabeth Elektra(エリザベス・エレクトラ)は述べている。「私たちはバブルの中にいて、集団的な悲しみが続いてたから圧力釜のようなものだった。でも、そこから真の美しさが生まれたんだと思う」


Evi Vine(エヴィ・ヴァイン)は、「私たちは一度も会ったことがないのに、パワフルで美しく、天を衝くようなものを作ることができると、心の中ではわかっていました」と言います。「私たちは、確かなものに囲まれて、繰り返しの中で人生を過ごしています。理解したと思っていることを脇に押しやることも時には重要です。予期せぬ時に変化が訪れ、私たちは迷うのですからね。」

 

「Mother Tongue」




Silver Moss 『Black Bay』



Label: Bella Union

Release: 2023/4/21
 

Tracklist:


1. Henry
2. The Eternal
3. Mother Tongue
4. Gaelic Psalms
5. Hello Doom 
6. Sedna

 



デトロイトのポスト・ロックバンド、Fireworksが9年ぶりのアルバム『Higher Lonely Power』を元旦にリリースしました。本作は、自主レーベル、Funeral Plant Collectiveからの発売されている。


「私たちは一緒に創作する機会に感謝し、バンド名や販売店に関係なく、活動休止中も創作を続けていました」ギタリストのChris Mojanはこう語っています。「Higher Lonely Powerは、バンドで演奏することから来るプレッシャーや期待なしに、自分勝手で自己表現する機会を与えてくれた。俺たちは、まず、良くも悪くも、個人的なことをやり遂げる必要があったのです」

 

『Higher Lonely Power』には2019年のカムバック・シングル「Demitasse」は収録されていないが、ニューシングルが示唆していたように、このアルバムはFireworksの最初期の音楽性から大きく飛躍している。

 

エレクトロニクスを取り入れたアート・ロックからメタリックなポスト・ハードコア、ストリングを多用した、スウィープなクライマックス、アトモスフェリックなドリーム・ポップ、ブレイクビーツ、Fireworksの初期のパンキー・エモ・ポップのドライブ・エネルギー、その他、いくつかのジャンルや形容詞では容易に説明できないものに至るまで、常に変化する旅であると言える。

 

 

piget ©︎Holly  Whitaker


 アイルランド出身のソングライター兼プロデューサー、Charlie Loaneのプロジェクトpigletが、7曲入りのニューEP『Seven Songs』を、11月25日にBlue Flowersよりリリースすると発表しました。本日、pigletは、リード・シングル「to you tonight」を、映像作家Harv Frostによるミュージック・ビデオとともに公開しました。そのPVは以下よりご覧いただけます。


「to you tonight」について、Charlie Loaneは声明の中で次のように語っている。"私の意図は、私のパートナーと私たちの関係によって私の人生に加えられた愛と喜びを反映し、祝福する曲を書くことでした。" "一方で、私が考えるに、ラブソングが陥りがちな落とし穴を避けるために最善を尽くしました。"


"多くの場合、愛は所有者の感情によって曲の中で表現される "と彼は続けた。「永遠への執着、ジェンダーの固定観念、不健康な献身への非現実的な期待など、私たちには必要ないものだと思います。成功したとは言わない-それは聴いた人がどう思うか次第だけど-でも、それがアイデアだったんだ"。


「to you tonight」は、「mill」、「dans note」、「oan」などのpigletのソロシングルに続く作品となる。UKのインディーロックバンド、Porridge Radioとの2曲のコラボ曲も発表されている。

 

   

 

 

pigelet  『Seven Songs』 EP 

 


 

Label:  Blue Flower

Release:  2022年11月25日