Yumi Zouma


ニュージーランドのポップグループ、Yumi Zouma(ユミ・ゾウマ)は2026年1月30日にニューアルバム『No Love Lost To Kindness』をリリースする。ツアーの合間にメキシコシティで時間を過ごし、可能な限り楽曲制作に取り組んだ。その結果、新アルバムに収録された楽曲はメンバーの関心事と、各ミュージシャンが経験した個人的な成長を反映している。


ギタリストのジョシュ・バージェスとチャーリー・ライダーがプロデュースした『No Love Lost to Kindness』はメキシコシティで録音された。


バンドはこのアルバムについて次のように説明している。「5枚目のアルバム制作は、バンド結成以来最も摩擦に満ちた創造期だった。年間を通してスタジオを予約し、集まり、散り、ミックスし、繰り返した。スタジオでは愛せる楽曲が生まれたが、合間の時間は緊張に満ちていた——互いを不安げに避け合い、大胆な土壇場の変更、不可能なタイムゾーン。このアルバムにはその全てが込められている。 


 柔らかなギターやベッドルームポップの質感から離れ、境界線を打ち破り、コンクリートや砂利を加えた。どの曲にも強烈さが宿っている——時に轟音で、時に静寂で、しかし常に生々しい。歌詞においては、これまでで圧倒的に最も正直な作品だ。感情、物語、真実の感情のスペクトルが広がっている。恋に落ちること、愛を失うこと、喜び、恐怖、不安、苛立ち、別れ——それは混沌としているが、真実なのだ。」


6月30日発売の『No Love Lost To Kindness』は、バンドの中核をなす二面性をさらに拡大させると同時に、メンバーの青春時代を彩った90年代のトーンを融合させている。バンドはこう語る。


「曲は泥沼でゆっくりと回転している感覚から、最高潮でアンセム的なコーラスを叫び上げるようなものにしたかった。1998年版『スマッシュ・ヒッツ』誌のフックを、架空のクロスオーバー作品『ロボコップ』と『フィフス・エレメント』の前日譚サウンドトラックからサンプリングしたインダストリアル・シンセのアルペジオで覆い尽くした。出演アーティストはシルバーチェア、シャイハード、ガーベッジ、ステラー*、エヴァネッセンス、プラセボだ」


新曲『Drag』は、フロントウーマンのクリスティ・シンプソンから届いた極めて個人的なメッセージだ。 


クリスティ・シンプソンは次のように説明する。「数ヶ月間、私は悲しみ、喜び、苛立ち、受容、安堵、葛藤に押しつぶされそうだった。診断後も必ずしも楽になったわけではなく、むしろ今もなお困難な時が多い。この曲は私の内なる子供へのメッセージであり、受容の表れだ。『重荷の中』で長く生きてきた人生への別れを告げるもの。葛藤から自分を解放すること――手放すことについての歌だ」


さらにこの映像のコンセプトは以下のような内容である。 


「物語は、トレンチコートをまとったスパイエージェントとしてクリスティ・コマンド・コントロール・センターに潜入するバンドメンバーのジョシュ・バージェスを追う。CCCCではクリスティがデジタルメインフレームに閉じ込められたディストピアの支配者として君臨している。劇的なトンネル内車両事故、復活、ハッキングによる再会を経て、二人はシステムを内側から破壊する。 エンドタイトルが表示される直前、画面全体がグリッチ状態に陥り、観客は映画『DRAG』の公式主題歌ミュージックビデオを観たかのような感覚に陥る」


「Drag」

 


Yumi Zouma 『No Love Lost To Kindness』


Label:Nettwerk

Release: 2026年1月30日


Tracklist:


1. 95

2. Bashville on the Sugar

3. Blister

4. Chicago 2AM

5. Cowboy Without a Clue

6. Cross My Heart and Hope to Die

7. Did You See Her?

8. Drag

9. Every False Embrace

10. Judgement Day

11. Phoebe’s Song

12. Waiting For the Cards to Fall


ニューイングランドを拠点とするシンガーソングライター、Halley Neil(ハリー・ニール)がニューアルバム『Letter For a Friend』を9月12日にリリースしました。アルバムのタイトル曲のリリックビデオが公開されていますので、アルバムのストリーミングと合わせて確認してみてください。

 

彼女を形成し、影響を与え、インスピレーションを与えてくれた人々への個人的な手紙の集大成として書かれたアルバムは、ナッシュビルで録音され、彼女のこれまでで最も親密で物語性豊かな作品となっています。


彼女は次のように語っています。「深く個人的な内容でありながら、このアルバムは普遍的な人間性を帯びています。つながりが与える側と受け取る側の両方を変容させることを思い出させてくれるのです」 『Letter For a Friend』は、手を差し伸べ、私たちを変えた人々を称え、心の内を伝えるのに完璧な瞬間を待つ必要はない——今、ただ伝えるべきだという招待状なのです」

 

 「Letter For a Friend」


ハリー・ニールは、温かさ、前向きさ、そして平和を放つ音楽で知られる受賞歴のあるフォークシンガー兼ソングライターです。ナッシュビルを経てボストンを拠点とするハリーは、叙情的で心温まる楽曲と、高らかな歌声、そして活気に満ちたブルーグラス風の楽器演奏を融合させています。アップライトベースとフィドルのトリオを伴って演奏することが多く、彼女のライブは親密で高揚感あふれる体験であり、率直な歌詞と自然に表現力豊かな歌声が際立っています。


アメリカーナとフォークシーンで存在感を増すハレーは、全米ツアーを行い、全国のリスニングルームやフォーク会場で演奏してきた。カービル・フォーク・フェスティバル、ロッキーマウンテン・フォークス・フェスティバル、テルライド・ブルーグラス・フェスティバルなど主要なフェスティバルのステージにも立った。 キャリアのハイライトとして、グラミー賞受賞アーティスト、サラ・バレイルズのオープニングアクトを務め、デュエットパフォーマンスで共演した経験は、彼女の才能と現代フォーク界における認知度の上昇を如実に物語っている。


2022年に批評家から絶賛されたアルバム『Beautiful and Blue』の成功を受け、ハレーの最新フルアルバムはこれまでで最もパーソナルな作品となった。彼女を形成し、影響を与え、インスピレーションを与えてくれた人々への個人的な手紙の集大成として書かれた『Letter for a Friend』はナッシュビルで録音され、彼女の最も親密で物語性豊かな作品となっている。


本作はコンセプトアルバムとして制作され、『Letter For a Friend』と題されている。「アルバムの全曲は、私の人生に深い影響を与えた人々への手紙として書かれました。非常に個人的で意図的な楽曲集であり、世界と共有できることを心から楽しみにしています」と彼女は語る。 


さらにハリーは次のように打ち明けています。「言えなかった言葉——送らなかったメッセージ、書き残せなかった手紙——について考えたことはあるでしょうか?『Letter For a Friend』はこの問いと、最古の友人エミリーが私の人生に与えた影響を綴った曲から生まれました」 アルバムの各トラックは手紙だ——友人へ、愛する人へ、見知らぬ人へ、そして自分自身へ。感謝や記憶、大切な言葉を口にする勇気を捉えている。奥深く個人的でありながら、このアルバムは普遍的な人間性を帯びている。繋がりが与える側と受け取る側の両方を変容させるという事実を思い出させてくれるのです。 『Letter For a Friend』は、手を差し伸べ、私たちを変えた人々を称え、心に秘めた言葉を伝えるのに完璧な瞬間を待たず——今、ただ伝えるための招待状なのです」

 

 


「Basin Street Blues」ーールイ・アームストロングが歌うジャズの不朽の名曲はこのジャンルの重要地であるミシシッピ川近郊の歴史ある同名のストリートから生み出された。


後のピアニスト兼作曲家のスペンサー・ウィリアムズは、この曲を幼少期に叔母と暮らしたストリートの名前に因んで名付けた。彼が住んでいた家は普通の家ではなかった。マホガニー・ホール、ストーリーで有名な売春宿「マホガニー・ホール」であった。さらにスペンサーの叔母は、悪名高い女将ルル・ホワイトであった。

 

ウィリアムズがこの曲を作曲したのは1928年だった。ストーリーヴィルが閉鎖されてから11年後のこと。ストーリーヴィルの「実験」の痕跡を消し去ろうとした市当局によってベイスン・ストリートがノース・サラトガ・ストリートに改名されてから7年後だ。皮肉なことに、1946年にこの通りは元の名前に戻された。その要因は、間違いなくウィリアムズのこの曲にあったのだ。


多くのジャズスタンダードと同様に、トランペット奏者でありボーカリスト、ルイ・アームストロングのバージョンが最高傑作といわれる。彼の6人編成のグループには、彼の完璧な音楽的相棒である偉大なピアニスト、アール・ハインズが参加していた。アームストロングはレコードで歌っていますが、それはバンドの他のメンバーをバックにしたスキャットボーカルです。アームストロングのバージョンには、12小節のブルースであるオリジナルの詩も含まれている。




この曲を演奏したのは、トロンボーン奏者兼ボーカリスト、ジャック・ティーガーデンであった。彼は、1929年にルイジアナ・リズム・キングス(ルイジアナ出身のミュージシャンは 1 人もいないレコーディングバンド)とこの曲を録音したが、「ベイスン・ストリート・ブルース」が本当に大きな影響を与えたのは、1931年2月に別のレコーディングバンド、チャールストン・チェイサーズとともに録音したセッションであった。


一般的に歌詞はスペンサー・ウィリアムズが書いたと言われている。しかし、ジャック・ティーガーデンの回想によれば、彼とグレン・ミラーが新しいヴァースの音楽と歌詞、そしてコーラスの歌詞を担当したという。ビル・クロウの『ジャズ・アネクトーズ』に記された次の記述が真実を伝えている。


「『ベイスン・ストリート・ブルース』のレコーディング前日、私はニューヨークの自宅にいた。するとグレンがジャクソンハイツのアパートから電話をかけてきた。『ジャック、歌詞をまとめて君に歌ってもらえれば、もっと良い作品ができると思う。一緒に考えてみないかい?」…結局、作業が終わったのは早朝。翌日、レコードを録音した。俺が手掛けた中で最も人気を博した曲だ。歌詞は後に楽譜に収録されたが、我々の名前は一切クレジットされなかったよ」


同年、有名なルイ・アームストロングがこの曲を録音し、1931年にリリース。その後、エラ・フィッツジェラルドが曲の再録音を行った。それぞれに異なるテイストが滲み出ている。アームストロングのバージョンは田舎的な雰囲気があり、一方のエラ・フィッツジェラルドのバージョンは、どことなく都会的な香りに満ちている。というのも、フィッツジェラルドのバージョンはディキシーランドから離れ、ビックバンドやスイングジャズの要素を多分に含んでいる。


本当は、グレン・ミラーとティーガーデンの歌詞が描くベイスン・ストリートの姿は、実在するわけではない。ある意味、ウィリアム・フォークナー的な理想が描かれている。ヨクナパトーファ・サーガのニューオリンズ版とも言えようか。「その素晴らしさも、真の意味も、決して知ることはできないだろう」という歌詞の一節は、多数の観光客を「歓迎が自由で、大切な場所」へと導いてきた。ミシシッピ川の蒸気船を降りれば、楽園のような通りに足を踏み入れられるごとき印象を与える。このストリートは川から北西に8ブロック離れた場所に位置する。 


「地上の楽園」あるいは「夢の土地」という点では、1895年から1917年にかけて、このストリートは歓楽街の中心地だった。 しかし、ストーリーヴィル閉鎖後、このストリートの周辺のほとんどの建物は取り壊されたり空き家になったりし、1940年代には残存建物の大半がデパート倉庫と政府住宅プロジェクトのために撤去されることになった。長年の街の再生計画は存在したものの、大型食料品店だけが増加した。近年、フレンチクォーター方面へ一本入ったノースランパート通りでは、優れた音楽クラブが誕生し、復興の前兆を示した。ジャズの名曲を生んだ名物的なストリート「Basin Street」は文化的な遺産として保存及び保護されるべきだろう。



 世界中の音楽ファンを魅了する音楽家・青葉市子。 来年1月、石垣島にて単独公演「Luminescent Creatures World Tour in ISHIGAKI」開催決定!


唯一無二の音楽世界で国内外から高い評価を集める青葉市子が、八重山諸島の中心都市・石垣島にて単独公演を行います。青葉は2020年以降、日本最南端の有人島・波照間島を定期的に訪れ、自然と共にある暮らしに触れる中で、音楽だけでなく価値観そのものに大きな影響を受けてきました。


今年初めに発売された待望の最新アルバム『Luminescent Creatures』には、波照間島の灯台の座標を冠し、島の民謡を取り入れた「24° 3′ 27.0″ N 123° 47′ 7.5″ E」、波照間島の方言で「魔物」「妖怪」を意味する「mazamun」など、島での体験が色濃く刻まれています。

 

今回の石垣公演は、ストリングス編成による特別なステージ。チケット先行受付は本日9/12(金)18:00より開始、海外在住者向け受付も同時に実施します。さらに地域の方々に向けて【八重山諸島住民割】も設定しました。

 

先月には総勢10名編成による特別公演<Reflections of Luminescent Creatures>全5公演を成功させ、来週からは国内9都市を巡る弾き語りツアー<Luminescent Creatures World Tour>がスタートします。さらに年末には南米公演も予定されており、その活動はますます広がりを見せています。

 

■青葉市子によるコメント


念願の八重山でのコンサートが決まりました。2020年以降のアルバム『アダンの風』と『Luminescent Creatures』は、八重山の地にとても多くのインスピレーションを頂いて完成した作品です。作品の里帰りと感謝の気持ちを込めて、信頼おけるバンドメンバーと共に演奏したいと思います。


会場は石垣市民会館・大ホール、民謡のコンクールなど行われる由緒ある場所で演奏させて頂けることを大変嬉しく思っています。石垣在住の皆さま、離島の皆さま、沖縄本島の皆さま、遠方の皆さまもぜひ、作品のルーツに触れに来てください。お待ちしています。

 

きっと、楽曲たちの嬉しそうな深呼吸がホールに響くのだと思います。 --青葉市子

 

 

■Luminescent Creatures World Tour in ISHIGAKI

 


日程:2026年1月17日(土)

会場:沖縄・石垣市民会館 大ホール

開場16:30 / 開演17:30

 

出演:青葉市子

梅林太郎(Piano), 町田匡(Violin), 荒井優利奈(Violin),

古屋聡見(Viola), 小畠幸法(Cello), 丸地郁海(Contrabass)

 

□チケット

全席自由 一般¥6,800 / U22割¥4,800 / 小・中学生¥500

【八重山諸島住民割】一般¥5,800 / U22割¥3,800

※⼩学⽣以上有料(小学生は要保護者同伴)/ 未就学児童⼊場不可

※U22割:高校生〜22歳以下対象。

※小・中・高校生〜22歳以下:公演当⽇、⼊場⼝におきまして身分証明書(学生証など)を確認させていただきます

※八重山諸島住民割:公演当⽇、⼊場⼝におきまして現住所が確認できる身分証明書をご提示ください

 

□チケット先行受付

受付期間:9/12(金)18:00〜9/21(日)23:59

受付URL:

https://eplus.jp/ichiko-yaeyama/(国内)

https://eplus.tickets/ichiko-yaeyama/(海外居住者向け)

 

チケット一般発売:10/18(土)10:00〜各プレイガイドにて。

 

お問い合わせ:ピーエムエージェンシー  TEL:098-898-1331(平日11:00-15:00)​

https://www.pmnet.co.jp

 

 

■Luminescent Creatures World Tour(国内)

 

日程:2025年9月17日(水)

会場:福岡・福岡市民ホール 中ホール

開場18:00 / 開演18:30

お問い合わせ:BEA 092-712-4221(平日12:00〜16:00)

http://www.bea-net.com

 

日程:2025年9月19日(金)

会場:広島・広島JMSアステールプラザ 中ホール

開場18:00 / 開演18:30

お問い合わせ:キャンディープロモーション広島082-249-8334(平日11:00~17:00)

https://www.candy-p.com

 

日程:2025年9月23日(火祝)

会場:愛知・アマノ芸術創造センター名古屋

開場17:00 / 開演17:30

お問い合わせ:JAILHOUSE 052-936-6041

http://www.jailhouse.jp

 

日程:2025年9月26日(金)

会場:愛媛・松山市民会館 中ホール

開場18:00 / 開演18:30

お問い合わせ:DUKE松山 089-947-3535

https://www.duke.co.jp

 

日程:2025年10月10日(金)

会場:北海道・札幌コンサートホール Kitara 小ホール

開場18:00 / 開演18:30

お問い合わせ:WESS / info@wess.co.jp

http://wess.jp

 

日程:2025年10月18日(土)

会場:岩手・盛岡市民文化ホール 小ホール

開場17:30 / 開演18:00


お問い合わせ:GIP / https://www.gip-web.co.jp/t/info

https://www.gip-web.co.jp

 

日程:2025年10月19日(日)

会場:宮城・日立システムズホール仙台 シアターホール

開場17:00 / 開演17:30


お問い合わせ:GIP / https://www.gip-web.co.jp/t/info

https://www.gip-web.co.jp

 

日程:2025年11月1日(土)

会場:石川・北國新聞赤羽ホール

開場16:30 / 開演17:00

お問い合わせ:FOB金沢 076-232-2424

http://www.fobkikaku.co.jp

 

日程:2025年11月7日(金)

会場:新潟・りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 能楽堂

開場18:00 / 開演18:30

お問い合わせ:FOB新潟 025-229-5000

http://www.fobkikaku.co.jp

 

□チケット

全席指定 ¥6,800

全席指定<学割> ¥4,800

※⼩学⽣以上有料 / 未就学児童⼊場不可

※学割:公演当日、入場口におきまして学生証を確認させていただきます (小、中、高校生、大学生、専門学校生 対象)。

https://ichikoaoba.com/live-dates/

 

 

■今後の国内公演

10/4(土) small circle ’25 @大分・別府 北浜公園

10/12(日) 京都音楽博覧会2025 in梅小路公園@京都・京都梅小路公園 芝生広場

10/22(土) 大貫妙子 コンサート 2025 【Celebrating 50 Years】@東京・昭和女子大学 人見記念講堂

 

 

■今後の海外公演

2025

South America

Tue. Nov 25 - São Paulo BR @ Teatro Liberdade

Thu. Nov 27 - Buenos Aires, AR @ Teatro El Nacional

Sat. Nov 29 - Santiago, CL @ Teatro Teleton

Tue. Dec 02 - São Paulo BR @ Teatro Bradesco

 

2026

Tue, March 31, 2026 – London, UK @ Royal Albert Hall

Fri, April 24, 2026 - Los Angeles, CA @ Walt Disney Concert Hall


Details:

https://ichikoaoba.com/live-dates/



本日、オークランドのソウル・エレクトロニック・コレクティブ、LEISUREが新作スタジオアルバム『Welcome To The Mood』をリリースします。ジャンルを超越する6人組は、5作目となる本作で、魂のこもったスローバーニングな精神を磨き上げ、輝かしい新たな章を切り開く。それは結束、創造的自由、そして真の目的を持って進化するバンドの実体験に根ざしたものである。 


本作ではより有機的なライブ録音の手法も採用しました。「前作ツアーで過去最多の公演を経験し、制作過程にもライブの要素を積極的に取り入れたいと考えました。そのため、ドラムブレイクやループの使用を控え、ライブ録音でトラックを構築したのです」とメンバーは語る。


このアルバムの制作では、 弦楽セクション、ブラス、ピアノ、バックボーカルといったプロフェッショナルなミュージシャンを招き、個々の技術を超えた音響的な可能性を追求することで、サウンドの幅をさらに広げた。しかし核心は深く個人的な領域にある。人里離れた隠れ家で書かれた楽曲は、逃避の静けさを帯びつつ、感情の脆弱性に対する新たな自信を捉えています。


テーマ的に『Welcome To The Mood』は、真実性・人間性・創造的な祝祭の糸で織りなされた豊かな音響のタペストリー。歌詞は普遍的体験——愛、喪失、繋がり、希望、目的——を探求し、日常から引き出されながらもLEISURE特有の豊かな音色とゆったりとしたグルーヴで表現されている。 


各楽曲はリアリティを基盤としつつ、ノスタルジックでありながら未来的な音響風景によって昇華されている。これはフランク・ロイド・ライトの精神を反映したもので、アルバムのビジュアル制作過程において、彼の建築物「タリアセン・ウェスト」が文字通りかつ象徴的なインスピレーションの源となった。


先行公開された新曲「Missing You」のライブ映像は、この建築的ランドマークで撮影された。タリアシン・ウェストを背景に選ぶことで、LEISUREはライトの建築的天才に敬意を表すると同時に、建築であれ音であれ、芸術が日常生活を豊かにする上で重要な役割を果たすという自らのビジョンをさらに確立している。 


ロイドの建築はこのアルバム全体のテーマにもなっている。バンドはこう付け加える。「1937年にフランク・ロイド・ライトが建てた空間が、2025年になってもなお未来的でノスタルジックに感じられるのは驚くべきことです。これは私たちの音楽が目指すところでもあります。創造性と繋がりのための空間を築くという彼のインスピレーションも、私たちと共有するものです」


即効性や一夜にしての成功に囚われる現代社会において、LEISUREはあえて遠回りの道を選んできた。6人のメンバー(そして仲間)は2015年、ニュージーランドの荒々しい西海岸を旅する即興の旅で出会った。その時点で、彼らはそれぞれ何年も音楽業界の厳しい現実と向き合ってきました。 


5人はそれぞれ受賞歴のあるソングライター、プロデューサー、クリエイターである。彼らは結束し、新たな音楽的パラダイムを切り拓くことを決意した——無駄を省き、旅を楽しむこと。そして何よりも、LEISUREらしさを貫くこと。


今作は、ソウルフルでスロウバーニングな彼らの美学をさらに研ぎ澄ましつつ、「共にあること」「創造の自由」、そして「バンドとして本質的に進化するという生きた実感」を軸に、よりオーガニックでライブ感のある録音手法を取り入れて制作された。


「前作のツアーでは過去最多のライブを行い、よりライブ感を制作に反映させたくなったんです。だから今回は、これまでのようにドラムブレイクやループを多用せず、ライブ録音を中心に進めました」


さらに彼らは弦楽器やブラス、ピアノ、バックボーカルといった器楽のスペシャリストたちを迎え入れ、各メンバーのスキルを超えた音の可能性を追求していった。テーマ的として"本物らしさ"、"人間味"、そして"創造を祝う喜び"といった要素を織り込んだ、豊かな音のタペストリー。歌詞では、愛や喪失、つながり、希望、そして人生の目的といった普遍的なテーマを取り上げつつ、それをLEISUREならではのリッチな音色とゆったりとしたグルーヴで描いている。


『Welcome To The Mood』は、BBC、ローリング・ストーン、KCRWなどから称賛を受けた2023年の傑作アルバム『Leisurevision』に続く作品です。


5億3000万回以上のストリーミング再生、ロラパルーザ、M3F、そして今後のACL出演といった大型フェスティバルへの出演、さらにニュージーランド、オーストラリア、イギリス、ヨーロッパ、アメリカでのソールドアウト・ヘッドライン公演を経て、彼らは確かな手応えを掴んでいる。



Leisure 『Welcome To The Mood』- Nettwerk  (92/100)



『Welcome To The Mood』はNettwerkからのリリース。2025年は特にポップバンドの活躍が際立っているという印象です。2025年の世界の音楽のトレンドは間違いなく、''ソフィスティ・ポップ''であると指摘します。


ソフィスティポップは、かつてAORとかソフト・ロックと呼ばれ、その後、このジャンルはブラックミュージックと連動するようにして発展し、クインシー、マーヴィン、ワンダーなどアメリカの音楽界を担う千両役者が出てきました。また、このジャンルはディスコソウルとも無関係ではなく、ダンサンブルな音楽を含む場合が多い。

 

ひとえにポップバンドとは言っても、最近のこのジャンルは混合化が著しく進み、単一のジャンルで把捉しきれないものがある。また、その混在する多彩な音楽が最大の魅力であり、大きな可能性をはらんでいる。

 

今週ご紹介するのは、NZ/オークランドの6人組グループ、Leisure。TOPSのようなヨットロックから、80年代初頭のStylistics、Commodoresのような、マーヴィン・ゲイやスティーリー・ダン、クインシー・ジョーンズらが登場する前夜のソウルミュージックを織り交ぜ、トロピカルな雰囲気に満ちたポップソングを制作している。新作『Welcome To The Mood』は相当練り上げられたかなり完成度の高い作品である。もちろん、ミックスやマスターで磨き上げられ、現代的なデジタルレコーディングの精華である”艶のあるクリアな音質”が特徴で、聴きやすい作品です。ただ、音質が良いからといえ、このアルバムはプロデュースに依存しすぎているわけではありません。

 

今、私の手元には、幸いにも、日本の販売元から提供されたWIPバージョンのDisco音源があり、それを聴くと、デモバージョンでも十分に魅力的な音源となっていると思います。むしろ、アウトテイクで出したら面白いのではと思うほど......。デモらしいラフな音質ではあるものの、かっこ良い。そして制作段階で、テンポなどを調整しながら、最終のマスター音源を作り上げている。特に、Work In Progressのバージョンを聴くと、その制作過程がよりわかりやすい。

 

ドラムの演奏が際立ち、レジャーの楽曲全体を司令塔のようにコントロールしている。ドラムが冗長なくらい反復的なリズムを刻むなか、6人組というコレクティブに近い分厚い構成による多角的なアンサンブルが繰り広げられ、音楽そのもののバリエーションが増していく。スピーカーから少し離れた場所で聴いてみると、他の楽器のパートが消えてしまい、ドラムテイクのリズムセクションしか聞こえないこともある。これは間違いなく、ドラムがファンクのリズムを刻み、その後にベース、ギター、ボーカルといった楽器を重ねていったジャムの様子がうかがえる。本作は、レコーディングセッションの要素が強く、ファンク/ソウル/フュージョンジャズの性質が色濃い。

 

レジャーの音楽は、表面的には、ポップネスの要素が強い反面、その内実はファンクソウル/ディスコソウルを濾過したポップソングである。ジェイムス・ブラウンの系統にあるファンクのビートが礎になり、軽快で清涼感のあるポップソングが形作られる。ロイド・ライトに因んでいいますと、音の建築の礎が強固だから、その上に何を積み重ねても、音楽がガタガタと崩れません。レジャーの曲に多彩な要素をもたらしているのは、ギターとシンセですが、それと同時に、彼らの曲はドラムとベースだけでも成立しえる。作曲において意外と軽視できないのが低音部やベース音の存在であり、主旋律が一番生きてくるのは、低音部の旋律やリズムが盤石な場合のみ。高音域の美しい旋律とは、低音部の旋律やリズムとのコントラストによって生じる。この点では、ニュージーランドのレジャーの音楽は、低音部のリズムやメロディから始まり、最後にボーカルやギター、シンセが存在する。一般的なソウルミュージックの制作方法と同じなのではないかと推測出来る。 

 

また、レジャーの音楽は、The 1975と同じく、ポップをベースにしているが、ロックの性質を帯びる場合がある。ただ、レジャーはどちらかと言えば、The Doobie Brothers、Earth Wind & Fireのような白人と黒人の融合したロックソングの性質を受け継いでいる。彼らのソウルのイディオムはかならずしも、ブルー・アイド・ソウルに根ざしたものとはかぎらず、サザンソウルやサザンロックなど、米国南部のロックやR&Bの要素をうまく取り込んで、それらを日本とシティポップや米国西海岸のソフィスティポップと撚り合わせて、安定感に満ちた聴き応えのある音楽を提供しています。


TOPSと同じように軽やかな音楽な印象があるものの、バンドアンサンブルの内実は結構ディープ。 音源を作り込みに作り込んだ上で、最後に残った濾過されたサウンドの結果がこのアルバムです。だから、最終のマスター音源は、氷山の一角が現れたに過ぎず、それだけ参考にしても同じ内容にはならないでしょう。ビートルズやストゥージズと同じように、気の遠くなるような回数のテイクを重ねたと推測される。なおかつ聴いていて心地良いポイントを探り、その鉱脈を掘り下げる。『Welcome To The Mood』は、最初から結果を求めるサウンドではなく、過程を重んじる制作となっている。つまり、積み重ねた結果がこうなったという帰納法のサウンド。面倒くさくて遠回りにも思えますが、テイクを重ねるのは良い録音を生むための近道なのです。

 

良いアルバムというのは、おおよそ2つのパターンがあって、作品自体がマクロコスモスのような極大の世界を内包しているか、もしくは、ラフなロックバンドのアルバムのように、瞬間的な美しさや楽しさを詰め込んだ生々しい録音が淡々と続くか、そのいずれかに該当します。これが理想的な曲だけを組み合わせても、名作が成立しない理由なのです。そして、制作段階において、どんな印象をもたらす作品にするのかを決定しないで制作に取り組むのは、目的地を決めずに船を出す行為と同じである。そういった無謀な制作過程からも、名作が出てくる場合もありますが、例外的な事例と言えるのではないでしょうか。それは結局のところ、そういったサウンド・ディレクションの元で制作された”実験的なコンセプトアルバム”に過ぎないのです。また、瞬間を逃さない野生的な勘も必要です。


結局のところ、「Welcome To The Mood』が聴きごたえがあって聴きやすい理由は、一貫性があって、最初から最後まで一つのレコーディングセッションが続いている感覚があるから。そして彼らの見事なライブセッションが永続してほしいと思わせる感覚もある。そういった意味では瞬間的な音源に永遠が内包されているといえるでしょう。


「Welcome To The Mood」は、このすべての項目をクリアしていて、聞き手の注目をしっかりと惹きつける。そして、この曲のイントロのトロピカルなカッティング・ギターは、ヨットロックのトロピカルな心地よさを感じさせるだけではなく、アルバムの全体のサウンドを要約し、その世界を拡大させるためのひとつの入り口となっている。


なぜ、こういった音やリズムが最初に鳴りひびくのかと考えはじめたとたん、がぜんこのアルバムの虜になってしまう。そしてアレンジとなるグロッケンシュピール、ドラムのリムショット(縁を叩く)を駆使した規則的なビート、それらの器楽的な演奏が一つの曲を作り上げるために機能している。


レジャーは6人組という多人数の編成であろうとも、一つの目的のために向かっている。そのためには、誰かが主役となり、同じ人が脇役となるというように、多彩な役割を担う必要性がある。そして、レジャーの6人はそれをしっかりこなしています。タイトル曲は、ほとんど序章のような意味を持ち、聞き手を優しく手ほどきし、ボーカリストがタイトルを歌いながら、その内的な音楽のマクロコスモスを拡大させていく。

 

 

 「Sundown」は一曲目の音楽的な世界を補足したり、拡張させるための役割を担うっています。そしてそのための機能を話すのが、ドゥービー・ブラザーズの「Long Train Running」を彷彿とさせるノリの良いファンクロックのドラムとベース、カッティング気味のギターである。この曲はイントロの時点でインストゥルメンタルの楽曲としても明確に成立していますが、その上にボーカルが入るのだから非常に贅沢です。


ギター/ボーカルは、ネオソウルの範疇にあるポップスを絡めた、軽やかでソフトな歌声により、この曲をぐんぐんリードしていく。バックバンドとしての音楽と呼応しながら、十分なフロントマンとしての仕事を完璧にこなしている。そして、もったいぶらずにヴァースからコーラスの聞かせどころにすんなり移行するあたりもスタイリッシュでしょう。ファンクの要素が強いダンサンブルな裏拍のビートを活かし、ギターのフレーズを組み替えたり、トランペットのアレンジメントを取り入れたりして、ソウル・ジャズのサウンドへと敷衍させていく。

 

 

 「Sundown」

 

 

 

「Diamonds」はディスコソウルを反映していて、ミラーボールの華やかで景気の良いディスコサウンドを想起させるが、依然としてファンクの性質が強い。彼らのファンクのイディオムは聞き手にリズム感を与え、そして楽しく踊らせるための機能を果たす。


同じように、同年代のEarth Wind & Fireに触発されたファンクをベースにしたギター、それから強固なベースが強拍のポイントを形成し、 反復的な曲の構成の中で、徐々に渦巻くようなグルーヴ感覚を作り出す。


''グルーヴ''とは、音のうねるような迫力のことをいい、それらがハウス/テクノ等では旋律的な側面とは対照的に単一の独立したエネルギーを持ち、曲の全体的な印象を決定づける。この曲でもまた、連結部分となるセクションは作られず、ヴァースを数回繰り返しただけでコーラスへとスムーズに移行してゆく。そしてコーラスの部分では、アンセミックなフレーズが意図的に使用されて、他者に口ずさませるための余白の部分を残している。良い音楽を作る際に、主体性を重んじた結果、聞き手への配慮という点を忘れがちですが、レジャーはそのこともよく考えているようです。二曲目と同様に、ベースの演奏がとくに傑出していて、ボーカルの主旋律と見事な対旋律を形成している。 最終的に、この曲はタイトルと呼応するかのように、ダイアモンドのようなまばゆいほどの輝きを放っている。

 

中盤のハイライト曲は続く「The Colour of The Sound」で訪れる。 アンビエント風の抽象的なシンセサイザーで始まり、十分な余韻を保った上で、曲が本格的に始まります。デモバージョンは、シンプルなスタジオセッションがパッケージされ、ファンカデリックのようなサウンドでしたが、最終の音源では、いっそう艷やかな音質になり、ポップソングの要素が強調されている。ラフなデモバージョンよりも音の粒が精細になり、ドラムを中心とするダブのエフェクトの意図も明瞭になっている。他の曲では器楽的なリードを譲る場合が多いものの、この曲ではカッティングギターが主役となり、ドラムのリムショットを背景に全般的なアンサンブルをリードしている。特にバスドラムの小気味よいヒット、旋律の跳躍があるベースが曲全体を補佐している。

 

 

 「The Colour of The Sound」

 

 

 

この曲のボーカルは、すこしだけもったいぶったような感じで始まり、次の構成に向けた期待感を盛り上げる。ボーカルについては、ネオソウルやソフィスティポップの影響を交え、未来的で都会的なサウンドを作り出す。コーラスでは、ネオソウルの雰囲気が強まり、まったりした甘口のR&Bの雰囲気を押し出す。ボーカルとシンセのアトモスフェリックなサウンドが優勢になる中で、存在感を増していき、じっくりと陶酔感のあるポップサウンドを作り上げていく。


サビのあとの間奏で演奏されるトランペットはそのモダンでアーバンな雰囲気を盛り上げている。全体的なソフィスティポップの枠組みの中で、フュージョンジャズの要素を並立させる。これらの音の多彩性を作り上げているのは、多角的なサウンドや器楽の効果であることは疑いがありません。その後、音楽はさらにドラマティックになり、弦楽器やエレクトリックピアノ(ローズピアノ)の演奏を通して多彩性を増す。音楽全体が可能性に満ちあふれ、その裾野を徐々に広げていく様は圧巻と言える。構成的な側面でも、再びイントロやヴァースのフレーズに回帰し、均衡が図られている。

 

「Dominoes」もまたアンビエント風のシンセサイザーのシークエンスで始まり、よりアグレッシヴで快活なバンドサウンドへと受け継がれる。この曲ではボーカルにちょっとした遊び心を付け加え、レジャーの音楽形式の基本であるヴァースからコーラスという簡素な構成を通じて、アンセミックなポップソングを作り上げている。現代的なリスナーの多くは、TikTokのショート動画などで音楽のニュアンスを掴む場合が多いので、聞き所が最もわかり易い場所に配置され、なおかつ、コーラスが早くやってくるのに越したことはないでしょう。レジャーはそのあたりを把握していて、ほとんどもったぶったようなフレーズを挟まず、すんなりサビの部分をきかせてくれます。このあたりがこのアルバム全体をストレスなく聞き通せる理由なのかもしれません。

 

「Beach House」はアルバムの中では最もヨットロックの性質が強い。トロピカルな音楽性やジャック・ジョンソンのようなハワイのフォーク音楽の内在もまた、この曲の醍醐味となるはず。アコースティックギターとメロウなエレクトリック・ピアノが曲全体の枠組みを決め、そして同じく、それと呼応するようなネオソウル風のボーカルが、このアルバムの方向性を決定づける。


海辺、ヤシの木、ビーチパラソル、カクテル、沈む太陽.....、こういった印象的なトロピカル音楽が軽快なポップスに縁取られている。これはシティポップの音楽性にも通じるものがあるかもしれません。少なくとも、日本のポップスにも調和する音楽として楽しめること請け合いです。また、曲の後半のボーカルは聴き応えがあり、オーティス・レディングを始めとするモータウン風の歌唱が披露されている。こういった聞き所を用意してくれているが本当にたのもしい。

 

「Tenderness」はクールなボーカルではあるが、裏声のファルセットの歌唱は背景の音楽と絶妙に合致している。前の曲のムードを引き立てるように、リゾート的な感覚を押し上げる。いわば、レジャーは、音楽の中に安らぎを見出したいとか、休息を見つけたいと考える聞き手に相応しいポップソングを提供します。これぞプロフェッショナルといわずしてなんと言うべきか。なだらかなテンポの王道のディスコファンクのサウンドは、スタイリスティックスやコモドアーズのようなモータウンの系譜にあるソウルと絡み合い、絶妙なテイストをはなつ。

 

全体的なサウンドの趣向としては、テキサスのKhruangbin(クルアンビン)に近いです。ただ、Leisureが志向するのは、ソフィスティッポップに近く、さらにR&Bの要素はこちらの方が色濃いでしょう。レジャーが志す「ムード」とは何か。その答えはアルバムの最終盤になると、より鮮明になる。

 

ヨットロックやフュージョンの真髄を詰め込んだ「Desert On The Moon」は、かつてスティーリー・ダンだとか、スティービー・ワンダーのような名手たちがもたらしたAORやソフトロックというジャンルが2020年代中盤に差し掛かり、次世代のポップソングのコアとなったことを印象づける。

 

本作の音楽は、もしかすると、現代的な音楽にさほど詳しくない聞き手にも共鳴する感覚があるかもしれません。この曲では、インドのシタールのようなエキゾチックな弦楽器が登場したり、コンガのようなアフリカ民族音楽で使用される打楽器が組み合わされて、心楽しい響きを形成しています。


最終曲「One In A Milllion」は白眉の出来栄え。エルトン・ジョン、ビリー・ジョエルに匹敵する素晴らしいピアノバラードが憂愁の美を飾る。本作に触れてくださった音楽ファンの方はきっと聴いてよかったと思っていただけるはずです。ニュージーランドから音楽界のオールブラックスが登場‼︎

 


 

「One In A Milllion」

 

 

▪Leisureのニューアルバム『Welcome to the Mood』は本日(9月12日)、Nettwerkから発売されました。


日本盤のCDがInpartmentから発売中です。詳細についてはこちらをご覧ください。



アートフェアの意義を再定義する試みが今年の秋に開催される。「EASTEAST_TOKYO 2025」が11月8日(土)〜10日(月)にかけて開かれる。今年後半の注目のアートイベントとなりそうです。


2020年の「EASTEAST_TOKYO」第1回開催では、コロナ禍におけるアートやギャラリーの意義を問い直し、アートフェアの新たなあり方を実験的に提示しました。

 

2023年の第2回からは科学技術館(東京都千代田区)に会場を移し、約1万人を動員。東京の豊かなカルチャーシーンから生まれたアーティストやコミュニティ、アートプロジェクトを紹介するとともに、それらが連帯するための場をつくることを試みてきました。



 EASTEAST_TOKYO 2023 会場風景



今秋、2年ぶりの開催となる第3回では、初参加の国内ギャラリー/スペースに加え、海外からも注目のギャラリーも出展し、約25のスペースが登場。

 

アートや文化に携わる多様な立場の人々が集まり、現場の実践から見えてくる課題について意見を交わすフォーラムや、東京をはじめローカルに根付いたカルチャーシーンやコミュニティと直接つながるオフサイト企画など、表現のリアリティと可能性に価値を置いた多彩なプログラムを展開します。












・出展ギャラリー/スペース(2025年9月10日時点)


ANOMALY(東京、日本)AWASE Gallery(東京、日本)

COHJU(京都、日本)

CON_(東京、日本)

Cylinder(ソウル、韓国)

Gallery Common OMMON(東京、日本)

GASBON METABOLISM(山梨、日本)

Hi Bridge Books(東京、日本)

MATTER(ロンドン、UK)

NozzaOZZA ServiceERVICE(東京、日本)

PARCEL(東京、日本)

PingPaling(東京・山梨、日本)

P21(ソウル、韓国)

GALLERY SOAP(福岡、日本)

Gallery Trax(山梨、日本)

THE SHOPHOUSE(香港)

Void(兵庫、日本)

YOUTH UNITE By BIKO & KENNY

4649+18,Murata(東京、日本)

後光(東京、日本)

東葛西1-11-6 A倉庫(東京、日本)

見た目!(東京、日本)

※予告なく変更になる場合があります。

 

▪️EASTEAST_とは?

 

EASTEAST_は、東京を拠点に、アートやファッション、建築、デザイン、音楽など異なる周辺領域で活動する文化従事者たちによって設立された、独立性と連帯の精神をもつアートフェアです。

 

現場で日々実践を重ねる運営メンバーが、それぞれの経験から生まれる課題や問いを持ち寄り、柔軟で批評的な視点をもって企画・運営を行なっています。


参加するギャラリーやコレクティヴ(スペース)は、国際的な展開を積極的に行うものから、地域や特定のコミュニティに深く根ざして活動するものまで様々です。それぞれが置かれた環境やリズムのなかで表現を探求しており、どの実践も現代の表現の重要な一部として位置づけられています。


EASTEAST_は、未来の文化を形づくるであろう若手アーティストや、独自の方法で文化を育む担い手たちを継続的に支援します。また、グローバルな視野をもちながら、制度化されすぎない多様なローカルの実践を紹介し、評価のタイミングではなく、表現のリアリティと可能性に価値を置く視点から、この都市の現在を世界と共有します。


EASTEAST_はアートフェアであると同時に、アジアを起点とする新たな文化的エコシステムを探る実験的なプラットフォームです。商業性と文化的実践が共存し、新たな関係や視点が生まれるための交流の場となることを目指します。



【開催概要】


名称:EASTEAST_TOKYO 2025

会場:科学技術館(東京・北の丸公園内 | 〒102-0091 東京都千代田区北の丸公園2番1号)

   ※ほか都内各所で関連イベントを開催。詳細は後日発表。


会期:2025年11月8日(土)- 10日(月)


開催時間:11月8日(土)12:00–19:00

     11月9日(日)12:00–19:00

     11月10日(月)12:00–17:00

                  ※最終入場は閉場の1時間前まで


チケット:[1日券]一般 2,000円/23歳以下 1,000円

     [3日通し券]一般 5,000円/23歳以下 2,500円

     ArtStickerにて9月12日(金)10:00〜販売開始

詳細: 

  https://artsticker.app/events/93326


助成:令和7年度 文化庁 我が国アートのグローバル展開推進事業

主催:EASTEAST_実行委員会




英国とインドネシアの血を引くSSW、Nadia KadekがデビュープロジェクトとなるEP『Green Car』を10月17日にトランスグレッシブ・レコードよりリリースすることを発表した。


この発表を記念し、22歳の新鋭アーティストは新曲「Always Almost Losing You」を初公開した。 透き通るような歌声と巧みなメロディックなフレーズで、カデックは抑制されたプロダクションの上にインディー・フォークの質感を重ね、高まる感情の重みでリスナーを深く引き込む楽曲を創り上げた。


ナディア・過デックは本曲について「この曲を書く時は感情が爆発しそうでした。友人への悲しみを覆い隠すような苛立ちと怒りが入り混じっていました。誰かを深く愛すればするほど、その人を心配してしまうという心情を歌っています。プロダクションでは、私のサウンドパレットのより暗い側面を探求し、複雑で苛立った感情に寄り添うことができました」と語ります。


オックスフォードシャーの田園地帯(フック・スタジオ)とスタジオ13で、プロデューサーのリカルド・ダミアン(Sampha、Jorja Smith、Yebba)とジェイミー・バイレス(Isaac Gracie、Hohnen Ford、Asha Banks)と共に録音されたシングル『フィーリング・イット・オール』と『レモネード』を含む全5曲を収録した『グリーン・カー』は、カデックが追求する「有機的なライブサウンド」と「大気的で美しいノイズ」が融合した作品だ。 

 

その結果生まれた音の世界は、彼女の蜜のように甘い歌声の周りをくるくると跳ね回り、まるで再生ボタンを押すたびに目の前でパフォーマンスが繰り広げられているかのようだ。晩夏のほろ苦い輝きに包まれたこの作品は、ノスタルジア、傷ついた家族関係、儚い恋愛、そして許しという静かな強靭さを巡る。


「息づいている感覚、聴いている時に誰かが同じ部屋にいるような感覚が必要だった」と彼女は説明する。「アコースティック・デモの親密さを保ちつつ、ライブ・サウンドと少し奇妙で歪んだ雰囲気を組み合わせることで、それらに命を吹き込みたかった」


これは、アーティストがSNSでの拡散を追い求めるプレッシャーが増す時代にあって、彼女の清々しい型破りな姿勢を物語っている。 ここ数年、ナディアは新たな常識を避け、代わりにライブ演奏を通じて熱心な聴衆を徐々に築いてきた。絹のような告白的なバラードで観客を魅了する一方で、その楽曲自体が聴き手との対話のようなものになったと彼女は語る。彼女の魅惑的なライブパフォーマンスは、やがてトランスグレッシブ・レコードの注目を集めた。この著名なレーベルは、現代で最も尊敬され、境界を押し広げるアーティストたちを擁護することで知られている。


ノーフォークの静かな田舎で育ったナディアは自らを「フェス育ち」と表現する。幼い頃の音楽的記憶は、フローレンス・アンド・ザ・マシーンやジェフ・バックリーらをBGMにキャンプ場へ向かう長い車旅で形作られた。 

 

フェスティバル参加者の肩の上から憧れのアーティストを見上げていた少女時代から、同レーベルの新人発掘コンテストで準優勝を果たし2024年グラストンベリー・フェスティバルに出演するまで、彼女の歩みはすでに「巡り巡る瞬間」と静かな非凡な決意に満ちた物語となっている。


ライブ実績には既にグラストンベリー、BSTハイドパーク、ラティチュード、ザ・グレート・エスケープへの2度の出演、パリ・パロマ、エッタ・マーカス、コーデリアのサポートアクトが含まれる。 今後の予定としては、ジョニー&リリー・フリンのサポートとしてリージェンツ・パーク野外劇場での特別公演に出演後、ザ・クレーン・ワイブズとのツアー、さらにミューテーションズ、ピッチフォーク・フェスティバル、ユーロソニックなどへの出演が控えている。

 

 

「Always Almost Losing You」


Nadia Kadek『Green Car』 -EP


Label: Transgressive

Release: 2025年10月17日

 

Pre-save: https://transgressive.lnk.to/greencar

 

 

Tour Date: 

 

24th September - Regent's Park Open Air Theatre (supporting Johnny & Lillie Flynn)

25th September - Birmingham Town Hall (supporting The Crane Wives)

26th September - O2 Ritz Manchester (supporting The Crane Wives)

27th September - O2 Academy Glasgow (supporting The Crane Wives)

29th September - SWX Bristol (supporting The Crane Wives)

30th September - Islington Assembly Hall London (supporting The Crane Wives)

14th - 18th October - Wild Paths Festival, Norwich

4th November - The Forge at The Lower Third, London

7th November - Mutations Festival, Brighton

8th November - Pitchfork Festival, London

14th - 17th January - ESNS, Groningen, NL

 


Nadia Kadek


エイドリアン・レンカーとリジー・マカルパインの鋭い感性を彷彿とさせるグリーン・カー・カデックは、ほのかなアコースティック・ギターの上に詩的な観察眼を紡ぎ出す。初EPながら、ナディアは言葉にできない感情を捉える才能を持つソングライターの系譜に、当然のように名を連ねている。


*アーティスト名に誤りがございました。お詫びを申し上げます。


Mitskiが初のコンサート映画を発表。10月22日より世界各国の劇場で公開される。アトランタのフォックス・シアターで3夜にわたり撮影された『Mitski The Land』は、グラント・ジェームズ監督作品で、トラファルガー・リリーシングとの提携により公開される。 (公式サイトはこちら)


ミツキの長年のプロデューサーであるパトリック・ハイランドが音響ミキシングを担当。本作は『The Land Is Inhospitable and So Are We』のプロモーション公演を収録しつつ、ミツキの全ディスコグラフィーから選りすぐった楽曲の「驚異的な再構築と再解釈」を披露している。


「ミツキ:ザ・ランド」は、ミツキのライブを目の当たりにする魔法と威厳をスクリーンへと変換する。2024年、アトランタのフォックス・シアターで3夜にわたって撮影された本作は、世界中の会場で何十万人ものファンを魅了し続けたその姿を、スリリングに描き出す。


驚異的なライブパフォーマーであるミツキは、絶賛された7作目のアルバム『The Land Is Inhospitable and So Are We』を、劇場的で大胆な手法で世界のステージに届け、壮大なライブショーと並ぶスペクタクルを披露した。 7人編成のバンドとモニカ・ミラビレによる振付を伴い、ミツキはステージの隅々までを駆使し、スポットライトと影の間を自在に行き来する。



『ミツキ:ザ・ランド』は音楽的才能の頂点に立つアーティストを捉え、壮大なライブ体験に映画的な親密さを加えながら、『The Land Is…』収録曲に加え、彼女の幅広いキャリアを彩る楽曲の再構築や再解釈を披露する。


アンディ・ワトソンによる舞台デザインの簡素さは、アルバムのテーマである孤立、憧憬、そして人間関係の野性的な美しさを喚起し、視覚的要素は印象的なミニマリズムから豊かで夢幻的な情景へと移り変わる。


グラント・ジェームズ監督、長年のプロデューサーであるパトリック・ハイランドによるミキシングで制作された『ミツキ:ザ・ランド』は、これらの公演を直接体験した豊かな生のオーラを保ちつつ、ファンが共に記憶を辿る機会、あるいはミツキの魔法を初めて目撃する機会を提供する。

 


Wispは先月フルアルバム『If Not Winter』をリリースし、現在はシステム・オブ・ア・ダウンのオープニングアクトとしてスタジアムツアー中だ。以前TikTokで「Yellow」カバー動画を公開したところ数百万回再生を記録した。今回、このカバーソングがリリースされた。アコースティック・バージョンの素晴らしい一曲です。


フルバージョンが公開された今、この曲がニューシューゲイザーの文脈で見事に機能しているのは当然と言える。 ナタリー・R・ルーのかすれるような歌声は、ファズギターの大爆発と見事に調和し、まるで子供の頃、寝る前に聴いた子守唄のように「イエロー」を歌い上げる。


ウィスプはプレスリリースで次のように語っています。「『イエロー』は私にとって、現在の生活に再解釈したかった幼い頃の記憶です。かつては深く理解できなかったこの曲を、今や歌詞に共感し、この1年の恋愛の旅路で感じた感情を込めて歌っています」。なんて素敵なんだ!彼女のカバーとコールドプレイのオリジナルビデオを以下でチェックしよう。


「Yellow」 

アメリカのソングライター、Scullcrusherがニューシングル「Dragon」を公開した。10月17日にDirty Hitからリリースされるアルバム『And Your Song Is Like A Circle』は内省的な作品となっており、スカルクラッシャーは様々なアイデアを自身の芸術に取り入れている。

 

現在配信中の新曲「Dragon」は美しく構築されており、各要素が優しく調和し、自立した構造がスカルクラッシャーの魅惑的な言葉遊びを包み込む。メンタルヘルスと地に足をつけることの重要性をテーマに、ソングライターは自身の作品とスタジオジブリの夢幻的な世界観を対比させている。アーティストはこの新曲について次のように語る。


「『ドラゴン』は解離状態と、そこから現実へ引き戻される感覚について考えながら書いた。千と千尋の神隠しで千尋が霊界で消えかけ、ハクの手を触れて引き戻されるが足が動かない場面のように。生きる重みを実感し、自らを地上へ引き戻すのは重い行為だ」

 

「この感覚が重い負担であると同時に生きる上で必要な側面であるという考えに興味を持ちました。希望に満ちているが同時に恐ろしい。鎧が身体的・精神的な保護であると同時に負担であるのと似ています。自分自身を守るのは難しいのです」

 

「Dragon」 

 Shame 『Cutthroat』


 

Label: Dead Oceans

Release: 2025年9月5日

 

Listen/Stream 

 

 

Review

 

Shameのニューアルバムは、メタリックな雰囲気を持つ硬派のポストパンクのスタイルを選んでいる。とはいえ、2025年の世界のミュージックシーンの中でも、彼らは最もロックなバンドの一つにあげられる。もっといえば、ボーカリストのチャーリー・スティーンの歌詞には、国際的な政治問題に関する思想が込められているが、十代の若者のような純粋な眼差しがそそがれている。若い頃の''なぜ''という疑問は、いつしか世の中の体制的な概念に絡め取られてしまう。年齢を重ねるにつれて、それが当たり前のことになり、ある意味では感覚が鈍化してしまう。どうにもならないのだから仕方がない。だが、Shameの面々にはそのような言葉は当てはまらない。

 

Shameの音楽が期待感を抱かせる理由は、彼らは基本的には主流派に対して、カウンターの役割を担っているからである。アルバムの冒頭を飾る「Cutthroat」をきいてみてほしい。彼らは他のいかなるものにも魂を売り渡さない。


前作アルバムと同様に、ブリット・ポップやポストブリット・ポップのサウンドを織り交ぜながら、2025年のロックソングとはかくあるべきという理想形を突きつける。チャーリー・スティーンのユーモア満載のボーカルも最高の域に達しているが、コイル・スミスが中心となる電子音楽のトリッピーなサウンドも目の覚めるような輝きを放つ。重厚なギターやベースが織りなす骨太のサウンドは聴いていて惚れ惚れするほど。現代ロックの最高のエンジニア、コングルトンの手腕が表れ出た瞬間だ。ダンサンブルなロックは、全盛期のBlurのような響きを持ち、ボーカルの扇動的なアジテーションと混在している。これはおそらく、かれらがライブを意識したレコーディングを心がけているから、こういったドライブ感のあるサウンドが出てくるのだろう。



「Cutthroat」-Best Track



全力で疾走するかのような勢いは、続く「Cowards Around」でも維持されている。スネアのロールのような連打から始まり、緩急のあるヴォーカルがこの曲を先導していく。この曲では、スティーヴ・アルビニやBig Blackのメタリックなサウンドワークがギラリと光る。

 

 

こういった軸となるサウンドは後半にもぽつりと出てくるが、今回のアルバムでは、Shameとしてはいくつか新しい試みが取り入れられている。イギリスのバンドが本気でアメリカーナのロックをやるとどうなるか。その答えが「Quiet Life」で示されている。カントリーとロックの融合で、ジョニー・キャッシュの曲をポストパンクに組み替えたかのようである。しかし、この曲もShameの手にかかると、奇妙なオルタネイトな曲展開となり、オフキルターなリズムが形成される。カントリーとポストパンクの融合といった感じで、このバンドらしいユーモアが満載。


「Nothing Better」は、オーバードライブのかかったベースを中心とするポストパンクソングだ。ヴォーカルのスポークンワードは、このジャンルの定形ともいえるが、コーラスの箇所に至ると、お馴染みのShameの節回しが出てくる。P.I.Lのサウンドを通過したような不協和音を生かした歪んだギターがリズミカルに演奏され、強烈な印象を及ぼす。これぞポスト・パンクの真骨頂だ。また、このバンドは、ポストパンクの以外にもロックバラードの名手である。続く「Plaster」を聴けば、そのことがよくわかるのではないかと思う。オアシスやヴァーヴの系譜にあるポピュラーなロックバラードだが、電子音楽の要素が加わり、従来のShameの曲よりも未来志向になっている。また、この曲のスポークンワードは、コテコテのお好み焼きのような味わいだが、それもまたこのバンドらしさ。曲の後半ではオアシスのフォロワー的なサウンドに至る。

 

「Spartak」は、スミスやオアシスの初期のサウンドを受け継ぎ、哀愁に満ちたオルタナティヴロックに昇華している。また、サウンドの中には、Happy Mondays、Inspiral Carpetsのような''マッドチェスター''からの影響も伺え、80年代後半のUKロックのサウンドを継承している。この曲から立ちのぼる哀愁のあるロックサウンドはイギリスのバンドならではといえるか。


「To and Fro」では、英国のポストパンクが新しいサウンドに移行した瞬間を捉えられる。この曲は、サビ(コーラス)の部分が最高で、バンドのポップセンスが遺憾なく発揮されている。シンガロングを誘い、ライブでかなり盛り上がりそうな一曲である。曲の終わりでは一音ずつ上昇していき、アウトロにかけての期待感を盛り上げている。アルバムの中では異色の曲といえる「Lampiao」では、伝説的な盗賊団のリーダーをポルトガル語で揶揄している。

 

 「After Party」では従来にはなかった試みで、驚くことに、Shameはテクノポップに挑戦している。シンセのメロディがきらびやかに響き、メロディアスで叙情的なボーカルと合致している。激しいポストパンクサウンドの後のチルアウトともいうべきゆったりした瞬間を楽しめる。Shameの落ち着きのないサウンドは以降も健在だ。以後、ドライブ感に満ちたポストパンクソング「Screwdriver」に戻り、眠りかけたリスナーを畳み掛けるようなサウンドで起き上がらせる。


最も前衛的なトラック「Packshot」では、Jesus Lizardや初期のグランジのような不協和音を押し出したパンクサウンドで、このアルバムをまとめにかかる。スロウバーナーの曲であるが、奇妙な重さがあり、不穏な響きに圧倒されてしまう。世界の紛争を描いた曲であるかのごときリアリズムが奔出し、戦時下のサイレンのような不穏なノイズが、ギター、シンセ、ベース、ドラムで描かれる。ボーカルのチャーリー・スティーンはシェイクスピアの戯曲を制作時に読んでいたというが、この曲は間違いなく印象主義のポストパンクであり、どことなく映像的である。

 

『Cutthorat』はハチャメチャに陽気なダンスナンバーで締めくくられる。「Axis of Evil」はどことなくSparksのサウンドを彷彿とさせる。Underworld、New Orderを想起させる大胆不敵なダンスロックは、Shameのバンドとしてのポテンシャルの高さを印象付けている。アルバム全体としても相当聴きごたえがある。何度も聴くたびに面白い発見があるかもしれない。Shameは必ずしも単一のジャンルにこだわらず、広大なイマジネーションを働かせ、良質なアルバムを制作している。アルバム全体を聴きとおすのに、かなりの精神力とカロリーを消費するはずだ。奇異な作品である。

 

 

 

85/100

 

 

 

 Best Track-「Cowards Around」


The Mountain Goats(マウンテン・ゴーツ)が、11月7日に自身のレーベルから新アルバム『Through This Fire Across From Peter Balkan』をリリースすると発表した。このアルバムは「本格的なミュージカル」と評されており、レプリケイツのトミー・スティンソン、ハープ奏者のミカエラ・デイヴィス、ハミルトンの作者リン=マニュエル・ミランダが参加している。


このミュージカルのストーリーの概要は次の通りとなっている。

 

ーーその謎めいたタイトルから想像できるように、『Through This Fire Across From Peter Balkan』 は、無人島で難破した小さな乗組員の物語だ。生き残った3人、名前のない語り手、ピーター・バルカン船長、そしてアダムは、減少する資源と終末的なビジョンに悩まされている。 これは、生存と荒廃、残忍さと優しさ、苦労して得た知恵と思いやり、小説のような細部、そして言語を超越した、叫び声のような言葉のない合唱の物語である。ーー


ーー漁船には 16 人の男が乗っていましたが、嵐を生き延びたのは 3 人だけでした。そのうちの 1 人は行方不明になり、死亡したと推定されています。残ったのは私とピーター・バルカンだけですが、彼の健康状態は悪化しており、その終末的なビジョンは海岸の波しぶきの中で消え去ってしまうーー

 

ジョン・ダーニエルはアルバムのコンセプトについて詳しく説明しています。 

 

「このアルバムは 1 月にドリームランド・スタジオで録音しました。マット・ダグラスがプロデュース、ツアーでおなじみのベン・ローグランがマットと共謀してシンセを担当、ハープはミカエラ・デイヴィス、ブリッジのハーモニーでリン=マニュエル・ミランダのように聞こえる声は、ピーター・バルカンの物語を初期の段階から実現まで追ってきたリン=マニュエル・ミランダその人です」


ミュージカル的な意図とリン=マニュエル・ミランダのハーモニーが盛り込まれているにもかかわらず、依然としてマウンテン・ゴーツらしい楽曲であるファーストシングル「Armies of the Lord」を、以下で聴くことができる。

 

「Armies of the Lord」


 

 

The Mountain Goats 『Through This Fire Across From Peter Balkan』


Label: Cadman Dawn

Release: 2025年11月7日

 

Tracklist: 

1. Overture

2. Fishing Boat

3. Cold at Night

4. Dawn of Revelation

5. Your Bandage

6. Peru

7. Through This Fire

8. Rocks in My Pockets

9. Armies of the Lord

10. Your Glow

11. The Lady from Shanghai 2

12. Broken To Begin With