【インタビュー】 高木正勝  ~音楽や鍵盤楽器との出会い、アメリカの売り込み時代 ライフワーク、最新映画「違国日記」までを解き明かす~

 

高木正勝
高木正勝 ご自宅にて お子さんと(アーティスト提供)

 

◾️高木正勝さんの音楽を初めて聴いたのは、2013年に発表された「Sail」。本作はレイ・ハラカミの「lust」と並び、日本の不朽のエレクトロニックの名盤。双方共に京都にゆかりがあるのは、単なる偶然というわけには行かないでしょう。日本的な文化の中枢が残っているのか、それを音楽に反映する術を心得ているのか。少なくとも本作は、今でも、日本のエレクトロニックの最低水準を判断するときの欠かせないアイテムとなっている。実は、今では映画音楽の世界で活躍する高木正勝さんは新進気鋭の電子音楽家として、米国のレーベル、Carparkからキャリアを出発させたことは付記しておくべきでしょう。


その後、高木正勝さんは、ピアノ、メディエーション、ミニマルミュージックとボーカルを融合させた「Tai Rei Tei Rio」を発表後、映画音楽やドラマ音楽の世界に入っていった。言わば、映像効果のための音楽、また、ストーリーやシナリオを強化するための音楽にシフトチェンジしていく。これは、彼の音楽がもともと何らかの文学性や物語性が込められていたことを表す。そして、その中には映像を伴わずに聞いても聴き入らせる作品もきわめて多い。


以降の活躍は皆さんもご存知の通りで、『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』の映画音楽、そして、最近では、NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』のドラマ音楽も手がけている。また、仕事の合間を縫うようにして、小さな山村にある自宅の窓を開け自然を招き入れたピアノ曲集『マージナリア』を発表し続けている。いずれの作品でも、高木正勝さんのピアノには、自然や生き物と深く共鳴するかのように、柔らかさと凛とした響きが含まれており、そしてその音楽は必ずと言っていいほど情景的な感覚、サウンドスケープを呼び起こす。


今回のインタビューでは、音楽との出会いから、ミュージシャンとしてのバックグラウンド、デビューのきっかけ、最新映画「違国日記」をどのように楽しむべきか、実際の制作者としての貴重なご意見をいただくことができました。


Music Tribuneは、日本、海外を問わず、制作者の実際的な考えや意見を何らかの形でストレートに反映し、10年後も楽しめるアーカイブシリーズのような形として残しておきたいと思っています。何かしら下記のエピソードの中から、音楽制作者、もちろん高木正勝さんのファンに至るまで、興味深いエピソードが紹介出来れば非常に光栄です。




ーーまずは、高木さんの音楽との出会い、また、夢中になったきっかけについて教えてください。


高木正勝:  心を掴まれたのはファミコンの音楽だと思います。はじめてカセットテープを買ったのが『ドラゴンクエストIII』のサントラでした。9歳の頃です。ファミコンの音はピコピコしたシンセの音でしたが、サントラにはオーケストラのアレンジで収録されていて、とても驚きました。小さな楽譜も付いていて、リコーダーやピアノで奏でようと思えば奏でられるんだというのは衝撃でした。ファミコンの音はファミコンの音だと思っていたので、まさかピアノと結びつくとは考えもしなったので。また、音楽には、必ず作者がいることも、この時期に意識し始めました。いい音楽が流れる度に悔しいと思っていました。自分も作りたいと本気で思っていました。


その後、10歳の頃に遊んだ『MOTHER』はCMで流れた音楽ですでに感動して、自宅にあった電子ピアノで音を探って自分なりに演奏していました。はじめて弾けるようになったのは『MOTHER』の『Eight Melodies』という曲でした。(編注: 『MOTHER』は、エイプとパックスソフトニカが開発し任天堂より1989年7月27日に発売されたファミリーコンピュータ用ゲームソフト)



ーー正勝さんといえば、ピアノというイメージがありますが、最初に楽器を手にしたのはいつ頃でしょうか。また、その時代の思い出について聞かせていただけますか。


高木正勝:  通っていた幼稚園では鼓笛隊に力をいれていて、結構難しい曲を皆で演奏していました。発表会があり、確かミッキーマウスのマーチだったと思いますが、他の人はいろんな楽器を演奏していたのですが、僕は全然楽器が演奏できなかったため、引っ張るとピューイと変な音の鳴る笛を担当しました。小さい頃はまるで音楽が苦手でしたね。


妹がピアノを習い始めたので、自宅に電子ピアノが置いてありました。10歳の頃です。ゲームの音楽やテレビから流れてくる曲を自分で音を探って弾いて遊んでいました。中学にあがった頃に母親の勧めでピアノを習い始めました。レッスンは中高6年間ほど続けて、以降は自分なりに弾いています。


その時代、ピアノの先生が、弾き方だけでなく、作曲家がどうやって作曲したかというような話をたくさんしてくれたのもよかったです。アップライトピアノを祖母が買ってくれてピアノの練習が楽しくて、1日中、何時間も弾いていました。学校でも音楽室に行くと、グランドピアノがあるので、休み時間とかに弾いていました。中学の時に、シンセサイザーを高価でしたが買ってもらえたのが今の仕事に繋がっているように感じます。シンセサイザーがあれば、自分で音が作れて、また、作曲も出来たので、曲らしきものを毎日たくさん作ったり、誰かの曲を一つずつ音を分解して聴きながら再現したりして遊んでいました。




ーー高木さんは、大学で外国語を専攻しておられますね。具体的に、どの言語を学ばれていましたか。また、その言語に興味を持つ契機となった出来事はありましたか。


高木正勝:  大学では英語を専攻しました。英語というより、アメリカの文化について興味があったのだろうと思います。子供の頃に繰り返し観た映画は、殆どアメリカのものでしたし、ゲームの『MOTHER』もアメリカを意識した世界観でした。テレビでも『フルハウス』や『ピーナッツ(スヌーピー)』など、当時はアメリカのものがたくさん流れていて、好んで観ていました。


大学に入ったら、英会話や文化を学べる授業がたくさんあるのかと期待していたのですが、なぜ''he''や''she''の場合だけ動詞に"s"が付くのか、というような細やかな授業が多くて、自分が時間を掛けて学びたいものは他にあるんじゃないかと気づいて一年で中退してしまいました。


ただ、たった一年なんですが、ひとつの単語にはひとつのイメージしかない、という授業が印象にとても残っています。単語を英和辞典で調べると、たくさんの意味が書かれていますが、ネイティブで英語を使っている人はひとつの単語にひとつのイメージを持っているだけで、そのイメージをうまく組み合わせることで伝えたいことを伝えているだけだと習い、視界が開けてシンプルにものごとを考えられるようになりました。


日本語も同じなんですが、例えば「は」というと、葉、歯、刃など、それぞれ別のものを言い表す漢字が思い浮かびますが、よくよく考えるとどれも共通するイメージがあると思います。それが「は」のイメージで、それが掴めると、「は」という音、言葉を自分なりに使えるようになる。細分化されたように思える世界を、もう一度、ありのままの姿に戻すような、豊かな捉え方で、音楽を制作する時にも役に立っています。


高木正勝


ーー学生時代から音楽家や芸術関係の仕事に携わることを考えていましたか。明確にミュー ジシャンとしてやっていきたいと決意した出来事などがあれば教えてください。


高木正勝:  小学生の頃が一番明確に、自分は音楽を作る人なんだと意識していました。まだ一曲も作ったこともありませんでしたし、ろくに演奏もできませんでしたが……。将来の夢を聞かれると、自然豊かな場所にぽつりと家があって、その側に小川が流れていて、お茶でも飲みながらピアノを弾いている姿がいつも頭に浮かんでいましたが、このことについては誰にも言えませんでした。いま、実はそういう暮らしをしているんですが……(笑)。


それでも、成長するにつれて、音楽を仕事にするのは無理だろうなと感じていました。ピアノ教室で音大を目指すような生徒さんたちは理解できないくらい上手でしたし、耳もよかった。それで、デザインや写真、映像に興味が移っていきました。当時、テレビや雑誌くらいしか情報源がなかったので、音楽を仕事にするというのは、何十万枚も売れるような、そういう音楽を作るしかないのだと思い込んでいました。


大学生の頃に自費出版で雑誌を作って、ラジオ局の賞をもらったりしたので、音楽よりもそっちの道に進むだろうと考えていました。その雑誌には、自分の写真やデザインを載せたり、毎回カセットテープを封入していて、大学の先輩のAOKI takamasa君の曲を入れていました。雑誌づくりを本格的に進めようとAOKI君と同居して、僕は映像を作るようになり、彼の音楽に合わせたミュージック・ビデオを2年間、毎日集中して多数制作しました。作品がたまってきて、自信がついてきた頃に、DVDのリリースの話をいただきまして、「SILICOM」という名前で活動をスタートしました。DJのパーティーに呼ばれて映像を流すVJをやらせてもらったり。なので、はじめて仕事になったのは、映像でしたね。


普通ならば、これから映像でやっていくぞ、というタイミングだったと思いますが、馴染みのないクラブという場所での活動や、誰かの音楽に映像をつけるというのがやりたかった訳ではないと、ずっとモヤモヤしたものを抱えていたので、思い切って自分でも音楽を作ってみると、あっという間にアルバム3枚分くらいの曲ができました。


何度も聴きたくなる音楽を自分で作れたことが本当に嬉しくて、音楽の仕事がしたいというよりも、これから何曲でも作りたいし、作れるというので頭が一杯でした。また、時代が味方してくれ、世界中のベッドルームで作った個人的な音楽がきちんと流通して、たくさんの人が楽しめる環境が整っていました。映像も、美術館やギャラリーで発表できたり、ずっとやりたかったことが叶う自分たちの時代が来たと実感していました。


映像も音楽と同時にいくらでも作れる感じでしたし、発表の場や機会も世界中どこにでもある雰囲気でしたので、決意というより、とても自然に自信を持って制作に没頭していました。21歳の頃です。



ーー当初、高木さんは海外のレーベルから作品をリリースしていましたね。最初のリリースは Carparkで驚いたんですが、海外のレーベルから作品を発表したのはなぜだったのでしょうか??


高木正勝:  当時、音楽をリリースすることはあまり念頭においていませんでした。自分は映像作家なんだと思っていましたので……。


現在、"ミナ ペルホネン"という服のブランドで活躍されている田中景子さんが母親同士仲がよくて。彼女がニューヨークで働き出したと聞いて、映像作品をダビングしたビデオテープを20本くらい抱えて遊びに行きました。それも21歳の頃です。ギャラリーや美術館に配って歩きました。自信だけはあったので、何処かで採用されるだろうと思っていたのですが、何も手応えもなく。いま考えると、よっぽど度胸があるとおもいます。近代美術館のような場所に行って、自分の作品を手渡ししてきたのですから。


それで、手持ちのビデオテープが最後の一本になってしまった時に、田中景子さんから、「知り合いにレコード屋さんで働いている人がいるから渡してみたら?」と言われ、音楽じゃないんだけど、としぶしぶ思いながら、一緒に音源を渡しに行きました。


それがCarpark Recordsを始めたばかりのTodd Hymanさんでした。帰国すると直ぐにメールが来て、「CDをリリースしたい」と言われて……。とても嬉しかったのですが、僕は映像作家だとその時も思っていましたので、むりやりCD-ROMに映像を入れて2枚組にして出してもらいました。その後、映像だけでなく音楽もいけるかなと思って、他の曲も大好きだったドイツのKaraoke Kalkというレーベルに送ってみると、こちらも直ぐにリリースしたいとお返事いただいて、トントン拍子で話が進みました。



ーーミュージシャンとして手応えを感じるようになったというか、仕事として繋がってくるようになった時期はいつ頃でしたか。


高木正勝:  ありがたいことにマネージメントをしてくれる方が付いてくれていたので、作品の発表の機会は次々と繋がっていったのですが、ひとつひとつの作品にかける時間や労力が年々増えていったので、ずっと大変でしたね。


明確に仕事としてやっていけるのかなと感じたのは、2011年以降です。震災があり、自分の仕事のやり方を根本的に変えました。


それまではほとんど自分のために作品を作っていましたが、誰かのために作る機会がぐんと増えました。マネージメントも自分自身でするようになりまして、戸惑いはありましたが、仕事で分からないことがなくなり、すべてを把握することで、やっていけるという自信に繋がりました。


高木正勝


ーー現在、高木さんは、多数の映像作品や、芸術に付随する音楽など、多数の制作経験をお持ちですよね。自分でいちばん気に入っている音楽作品、あるいはまた、芸術作品を挙げるとするならどれでしょうか??


高木正勝:  どれも好きなんですが、いまも取り掛かっている「Marginalia」のプロジェクトは、僕がこれまでやってきたことの集大成でもあり、また誰の評価も気にしないで、日々の記録として、自分だけのために録音しているので、よく聴いています。



 ーー今、高木さんが仰ったようにメインプロジェクトと並んで、ピアノと環境音楽を結びつけた「Marginalia」を発表し続けています。現在、176もの長大なシリーズとなりましたが、この録音作品のテーマやコンセプト、そして、発表するようになったきっかけについて教えていただけますか。


高木正勝:  幾つかきっかけがあります。ひとつは、ピアノソロのアルバムが作りたいとずっと考えていました。これまで色々なアルバムを出してきましたが、ピアノのみというのは『YMENE』だけでした。


『YMENE』は2010年、はじめてのピアノ・コンサートで、自分なりのピアノがようやく弾けた手応えがありました。録音したものを整える作業をしていたのですが、その最中に震災が起こり、手が止まってしまいました。今は、こんなことをしている場合じゃないよな、と。誰かの役に立ちたいといいますか、その後は、人から頼まれた仕事を断らずに全て受けていこうという方向に切り替えました。それから、ずっと映画音楽やCM音楽、ダンスの音楽、学校の校歌など、頼まれるままに作ってきたのですが、そろそろ自分のために作りたいな、と。それで『YMENE 』の続きがやりたいなと思って、『YMENE 2』というタイトルで進めようとはじめは考えていました。


もうひとつは、同じ頃、2017年にソロモン諸島に旅行に行ったのが大きなきっかけでした。宿泊所しかないような小さな孤島に泊まったのですが、周りは海しかなくて、身も心も自然と一体になっていました。「全体性」という言葉が浮かんで、とてもしっくり来ました。身の周りの環境も含めて、ひとつ残らずあるものを全部受け止めた作品が作りたいと思って。


それで、ある夜、波の音を聞きながらとても静かに眠っていると、頭の中にドンドンという音が鳴りはじめました。周りには海しかなく、幻聴かなと思ったのですが、妻も同じように音が聞こえるというので、耳を澄ませると、20km以上離れた向こうに小さく見える島から音が聞こえてくるのがわかりました。


おそらくパーティでもやっていたのでしょう、ブンブンというベースの音も感じはじめました。それまではちゃぷちゃぷという心地よい海の音に包まれていたので、とても気分が悪かった。ドンドンという音も、夜に聴きたいリズムではなく、眠ろうとしても身体が覚醒してしまいます。その時、海の生き物たちも、こういった音を聴かされるのはさぞ迷惑だろうと思いました。考えてみれば、人が音を出す度に、人間以外の生き物たちもそれを聞いているわけです。


この出来事をきっかけにして、「彼らにとって音とはなんだろう?」と本気で考えるようになりました。家に帰ってから、窓を開けはなち、外の世界と繋がったまま、自然の音をよく聴きながら、ピアノを弾くようになりました。「Marginalia」の初期の頃は、外の音がほとんど録れていないのですが、途中から外に向けてマイクを置き、自然の音を録音するようになりました。


音源に関しては、ひと筆書きのように演奏したものを、加工や編集や手直しをせずに、そのまま直ぐにリリースするようにしています。SNSの代わりにはじめたような側面もありました。写真や文章に割く時間や労力があるなら、ピアノを録音しようと思って。その日その日の季節をそのまま録音して残すような、季節を自然と一緒に作り上げているような感覚でやっています。最初は108作でゴールかな? と考えていたのですが、続けたいだけ続けようと思っています。



ーー高木さんにとって音楽を制作する楽しみとは??  また、ご自身の音楽から何を汲み取ってもらいたいとお考えですか。


高木正勝:  聴いていただけるだけで本当に嬉しいです。何でもそうですが、何かを作るのは、自分の頭や心や魂の蓋を開けて、受け取ったものをできるだけそのまま出すような感じです。知らないことがたくさん身体に入ってきますし、忘れたと思っていた記憶が鮮明に蘇ったりします。とても豊かな時間ですね。


ーーさて、今年6月には、ヤマシタトモコさん原作の映画「違国日記」が劇場公開されました。このサウンドトラックを手掛けてみた感想はいかがでしたか?  そしてまた、この作品をご覧になる方に、どんな点に注目してもらいたいですか??


高木正勝:  『違国日記』は原作が素晴らしく、できるだけ原作に沿った音を奏でたいと考えていました。


この映画では、原作と同じシーンもありますが、原作にないシーンがたくさん描かれています。長く広く展開された原作を2時間に収めなければならないのに、わざわざ付け足されたシーンをどう受け止めるかが重要でした。監督からは、ほとんど説明はいただけず、自分で考えながら音を入れていったので、自分流のこの映画の見方がそのまま映画音楽になっていると思います。たくさんの感想を読まさせていただきましたが、僕と同じ見方をしている感想にはまだ出会えていません。原作にはないシーンをなぜ描いたのか、そこに注目して観てもらえると、何か新しい発見があるかもしれません。



「違国日記」予告動画 (東京テアトル)

 

 

(取材: MUSIC TRIBUNE  中村 2024年8月30日)

Best New Tracks:  Roger Eno 「Above And Below」(August Week 5)
 


 

ブライアン・イーノの弟であるロジャー・イーノは、9月下旬にドイツ・グラモフォンから発売予定のアルバム「The Skies: Rarities」のセカンドシングル「Above And Below」を公開した。最初のリードシングルでは、音数の少ない清涼感のあるピアノ曲を聴くことが出来た。この曲では、アンビエントシリーズのイーノの作曲に依拠し、瞑想的な音楽を組み上げている。


ブライアン・イーノのアンビエントの概念は、今は亡きハロルド・バッドのピアノの演奏と分かちがたく結びついていた。弟のロジャー・イーノは、「Above And Below」において、上記の二人の作曲家のイデアを受け継いで、それらを瞑想的な作曲として昇華させている。おそらく、イーノの名作『The Plateaux of Mirror』に触発されたと推測される。その中には、神秘的な音の要素が含まれ、映画のような音響効果、ドローンのような抽象的な音像の中から、ダークでありながら静謐な音楽がぼんやりと立ち上ってくる。アンビエントの名品の登場である。


 

ロジャー・イーノは、現代の精神性を失った作曲家とは異なり、思弁的な感性を持ち合わせている。それは実際的に、ピンク・フロイドのようなサウンドに反映されている。



「Above And Below」

 

 

 

Roger Eno 新作アルバム『The Skies : Rarities』を発表 9月27日にドイツ・グラモフォンから発売

 Kitty Craft 『I Got Rulez』

Label; Takotsubo Records

Release: 2024年8月30日

 

Review

 

LAのプロデューサー、Pamela Valfer(パメーラ・ヴァルファー)は、最初期のローファイポップを形成する重要な制作者であるとともに、ベッドルームポップの先駆者のアーティストでもある。


Kitty Craftは、原初的なブレイクビーツのスタイルに、夢想的なドリーム・ポップの要素を加え、ホーム・レコーディングにおける理想的なサウンドプロダクションを探求してきた。特に、カットアップ・コラージュのように細かなマテリアルを組み合わせて、文字通り、「ハンドクラフトのインディーポップ」を構築する。オルタナティブポップやベッドルームポップなどという言葉が流行る以前の1990年代から、Palmela Valferは独力でそれらの音楽を作っていた。それがKity Craftが独自に体系づけた音楽ジャンル「Kitchen Pop」の正体なのかも知れない。

 

『I Got Rulez』は長らく入手困難だった96,97年の音源の再発である。そして、Palmelaの音楽制作とは、最初期のヒップホップに近いものであり、ターンテーブルのような音のディレイ等を活かし、ループサウンドとなるビートをトラックの背景に敷き詰め、ラップの代わりにインディーポップ風のさらりとしたボーカルを歌う。淡白な音作りなのは事実だが、聴いていると妙に癖になるものがありはしないか。ブレイクビーツの影響を絡めた音楽は、男性の音楽のように血気盛んになることはなく、午後の白昼夢さながらにほんわかとしていて、安らいだ空気感に縁取られている。これが、ローファイとしてのドリーム・ポップに近づくことがある。

 

「I Got Rulez」は、インディーロックのギター、レトロで安価なシンセ、サンプラーをブレイクビーツのドラムに乗せ、それらにThrowing Musesのようなファンシーなボーカルを乗せる。時々、気の抜けたようなコーラスが加えられる。これらの適度に脱力したサウンドが、ニッチなローファイの魅力を呼び覚まし、テープ音楽のプリミティヴな音の質感を呼び起こす。デジタルリマスターを掛けても、音のラフさや荒削りさは立ち消えにならず、良いウェイブを生み出す。また、ヴィンテージのアナログレコードのようなあたたかな質感を呼び起こすこともある。

 

Pamela Valferは、絵本のような童話的な世界を作り出すことで知られているが、「Alice」はまさしくこのアーティストの代名詞となるようなトラックである。90年代頃のインディーロックを参考にしたような音楽だが、レトロでチープなシンセがファンシーな感覚を生み出している。そして、Palmela Valferのボーカルは、ボソボソと小声で歌われ、ドラム、ギター(ベース)の演奏の間が取れていないこともあるが、それらの演奏の違和感もむしろ長所のように聞こえてくる。そして、音作りもへったくれもないギターは、曲の最後になって良い雰囲気を生み出す。アマチュア志向のサウンドであるが、完成度の高い作品よりも聴きやすさあるのは不思議だ。

 

「Find Out」では、90年代のYo La Tengoの作風をベースにし、ブレイクビーツのドラムを背景に一気呵成に録音し、ドリーム・ポップやインディーポップの音楽性で縁取っている。MTRで録音したような素人臭さがあるのだが、結局、やはり前の二曲と同じように、それらの荒削りなプロダクションの向こうから、Palmela Valferのボーカルが立ち上ると、独特な空気感を呼び覚ます。 

 

アルバムのクローズ「Wuite Clear」では、サイケデリック風のグワングワンなギターが聞き手の頭を掻き回す。最初期のガレージロックやグランジのような荒削りなギター、The Vaselines,Violent Femmesのように破天荒で破れかぶれな感覚、これらすべての食材をボウルの中で混ぜ込み、夢想的な音楽という形で提供している。放課後にガレージで録音したようなアルバム。やはり、既存の音楽に似ているようでいて、どれにも似ていないのが、Kitty Craftの音楽の凄さなのだ。



76/100


 

 


プライマル・スクリームは、8年ぶりとなるニューアルバム『Come Ahead』を11月8日にBMGからリリースする。

 

セカンド・シングルとなるプロテスト・ソング「Deep Dark Waters」が公開された。この曲は、長年のコラボレーターであるダグラス・ハートが監督したビデオで公開された。ビデオとフルレングス・ヴァージョン(ビデオで紹介されたラジオ・エディットより1分20秒長い)は以下から。


プレスリリースの中で、フロントマンのボビー・ガレスピーはこの政治的な曲について次のように語っている。『Deep Dark Waters』はフランコ'ビフォ'ベラルディの著作に影響を受けている。歴史からの警告が含まれている。過去から学ばない者は、それを繰り返す運命にある』」


このサイケポップ風の曲でガレスピーは植民地政策に関して、忌憚ない意見を交えて、以下のように辛辣に歌っている。

 

われわれの要塞大陸/われわれの価値観は引き裂かれ、曲げられている/われわれは爆撃し、彼らが逃げたら/われわれは彼らに来ることはできないと言う/第2次世界大戦のように/

 

われわれはユダヤ人に憐憫の情を示さなかった/われわれは彼らをも異質な存在とした/彼らを地獄に見捨てた/われわれは言う、"彼らはここでは歓迎されない "と/"彼ら全員をあそこに送り返せ "と/

 

啓蒙はどこにあるのか/われわれの罪と彼らの罰の中に?/ 植民地略奪の上に築かれた/我々の要塞大陸/ヨーロッパの混乱。



「Deep Dark Waters」



 


マニック・ストリート・プリーチャーズは本日8月29日(木)、2021年の『The Ultra Vivid Lament』以来となる新曲を発表した。


マニックスの寵児ザ・スキッズ、グラン・ツーリスモ時代のザ・カーディガンズ、そしてウォー・オン・ドラッグスのドライヴ・パルスから音楽的インスピレーションを得た「Decline & Fall」は、自己嫌悪の時代に対する多幸的で陽気なアンセムだ。

 

ニューポートにあるバンドのDoor To The Riverスタジオとモンマスのロックフィールド・スタジオでレコーディングされた "Decline & Fall "は、常連コラボレーターのデイヴ・エリンガとロズ・ウィリアムズがプロデュースし、シーザー・エドマンズ(ビーチ・ハウス/スウェーデン/ウェット・レッグ)がミックスした。



新曲についてバンドはこう語っている。「音楽的に『Decline & Fall』では、前進する動きを作り出そうとした。この曲は、過去を利用して未来へと推進させるもので、歌詞は、管理された衰退を受け入れて受け入れる一方で、まだ存在する小さな奇跡を祝うという、気づきと理解の1つである」


バンドは、先月のマンチェスター公演を含め、『Under the Radar』で軒並み素晴らしい評価を受けたスウェードとのUK共同ヘッドライン・ツアーを完売させたばかりで、絶賛されたサード・アルバム『The Holy Bible』は明日8月30日(金)に発売30周年を迎える。彼らの次のライブは、9月8日にプレストンのムーア・パークで行われるRadio 2 In The Parkである。


 

©Run Music


キラー・マイクが、ラン・ザ・ジュエルズのバンドメイトであるEl-Pがプロデュースした新曲「Detonator」を発表した。ロック・D・ザ・レジェンドをフィーチャーしたこの曲は、近日発売予定のビデオゲーム「コール・オブ・デューティ:ブラックオプス6」のためにレコーディングされた。アクションシーンなどに最適なヒップホップトラック。以下からチェックしてほしい。


マイクは声明で「アクティビジョンがゲームのテーマと探しているものを教えてくれた時、誰に連絡すればいいかはっきりわかった。「それに、El-Pのビートでラップしたくてうずうずしていたんだ。


ラン・ザ・ジュエルズは2020年に最新スタジオ・アルバム『RTJ4』をリリース。先月、マイクはゴスペルにインスパイアされたアルバム『Songs For Sinners & Saints』をリリースしたが、これは昨年の『Michael』のエピローグ的な意味合いを持っていた。

 

「Detonator」


SOPHIEの遺作アルバムからの新曲が発表された。ビビ・ブーレリーとのコラボ曲「Exhilarate」は、SOPHIE、ブーレリー、ケネディ・ライケン(デュア・リパ、ケシャ)が作詞作曲した。試聴は以下から。


SOPHIEは9月27日にTransgressiveとFuture Classicからリリースされる。これまでのところ、故プロデューサーのセカンド・アルバムは、「Berlin Nightmare」(Evita Manjiをフィーチャリング)、「One More Time」(Popstarをフィーチャリング)、「Reason Why」(BC KingdomとKim Petrasをフィーチャリング)でプレビューされている。



「Exhilarate」






ブレア・ハワードンが、ホワイ・ボニーの2ndアルバム制作のためにバンドメイトのチャンス・ウィリアムズとジョシュ・マレットを引き合わせたとき、彼女が最初に見せた曲が、これからの曲のトーンを決定づけた。「Fake Out」は、「そうであることを不可能にする世界で、本物であろうとすること」を歌っており、ホワイ・ボニーの大胆なニューアルバム『Wish on the Bone』で最もラウドな曲となっている。サビでハワードンは、曲の終わりまで彼女を覆い尽くす音の壁に向かって泣き叫ぶ。「It's not my face/ I imitate/ It's not my face/ I imitate」


そのアルバムは、ワクサハッチーやウェンズデーと比較されるほど、ノスタルジックで広大な空間を描写したことで賞賛された。そのアルバムは、ニューヨークに住む20代の彼女が、バラ色のメガネを通して青春時代のテキサスに憧れるという、当時のハワトンの気持ちを捉えていたが、彼女の自己概念は永遠に流動的だ。『ウィッシュ・オン・ザ・ボーン』では、ホワイ・ボニーはある風景やジャンルの特殊性から解き放たれている。「あのアルバム以来、私は変わったし、これからも変わり続けるだろうと信じている」とハワードンは言う。「もしかしたら、2年後の私はまったく同じ人間ではないかもしれない」


不思議なことに、その気まぐれな人としての感覚が、個人的な人間関係においてもスタジオにおいても、ハワードンに自分自身をより信頼させるようになった。ハワードンは変わるかもしれないが、彼女の信念は揺るぎない。


「これらの曲は、より良い未来への希望から書かれた。私はナイーブではないし、世界はめちゃくちゃだけど、それを根本的に受け入れつつ、物事を変えることは可能だと信じられると思う」とハワードンは言う。「私にとって希望とは強さだ。そしてそれを持つためには、現代アメリカの見せかけの存在を覆すことのできる批判的な感性を養わなければならない。"Fake Out "はそれを端的に表現している。「Something you thought/ Was only something that you heard.」


ホワイ・ボニーが11月に『90』をレコーディングしたとき、彼らはカントリー・アルバムを作ることを目指し、それぞれの技術的直感をこのジャンルの装いと一致させた。『ウィッシュ・オン・ザ・ボーン』では、ハワードンはジャンルの基準に固執する気はなかった。ブロークン・ソーシャル・シーンやHAIMのような期待にとらわれないバンドが、ハワートン、ウィリアムス、マレットが、共同プロデュースを担当したジョナサン・シェンクの助けを借りて楽曲に肉付けしていく際の指針となった。


「私たちは音楽的な帽子をかぶって試していたんだ」とハワードンは笑って言う。「このアルバムにはまだカントリーも入っているけど、1つのことに固執しようとは思っていなかったんだ」とハワードンは笑う。より大胆に、より自己主張することを学び、自分自身を信頼するようになった個人的な経験は、私の音楽にも受け継がれている。私はリスクを冒すことを恐れない」 ハワードンは、SF小説にインスパイアされ、その中の1曲、ゴージャスで痛快な "Three Big Moons "を遠い惑星に設定するほど自由になった。


リリカルな『骨に願いを』は、マクロとミクロの両方のスケールの問題に立ち向かっている。「Dotted Line」は、ハワードンが「資本主義の重さ」を経験していたときに書かれた。「私たちが成功の指標だと言われているものすべてについて考えていた。問題の "点線 "にサインすることは、ファウスト的な取引をすることだった。「金を払えば、いい日が待っている」とハワードン、あるいは悪魔はコーラスで約束し、バックのビートはハスラーのように催眠術をかける。この曲は、『骨に願いを』に収録されている数少ない曲のひとつで、聴衆に一緒に叫ぶように手招きしている。ハワードンが語るような取引をして、失敗に終わったことがどれだけあるだろうか。「もっと知っておくべきだった」と、私たちは自分自身に怒りをぶつけたりもする。


「Dotted Line」のような曲は、ハワードンが言うように、"車輪を回しているだけだ "という権力に向けられた反抗的なキスオフ、叫びとして書かれている。しかし、『ウィッシュ・オン・ザ・ボーン』に収録されている他の曲は、ハワードンがリスナーを個室に招き入れ、決定的瞬間を目撃させているかのような親密さを感じさせる。


「I Took the Shot」では、陽に焼けたようなハワードンの声が、きらめくシンセサイザーのベッドの上で人間関係の解消を語る。"昔のバーで待っていた/でも君は現れなかった/だから君に買ったショットを持って行った/そしてもう一杯、道連れにしよう"。まるで青春映画のラスト・ショットのように、主人公が自分を自分以外の何かに作り変えようとして失敗した力を拒絶する。この曲は、ハワードンのソングライターとしての最大の才能のひとつである、苦闘した希望の感覚を残してくれる。


「最悪の事態を体験している人々に対して、あなたはただ押し続ける義務があるのです」とハワードンは言う。新しい一日一日に希望を再生させようという姿勢は、兄を亡くしたときに彼女の中に刻み込まれた。それは、ハワートンがミュージシャンとして本領を発揮し始め、テキサス州オースティンのDIYシーンの中で自分の声を見つけようとしていた矢先のことだった。それに対処するため、彼女は次々と曲を書き、苦しみながらもカタログを作り、そうすることでスピリチュアリティとの新しい関係を築いた。


ハワートンはブリッジで、愛の温もりを失うことがどのような感覚なのかを警告している。『ウィッシュ・オン・ザ・ボーン』では、ハワードンは目を見開いて待ち続け、たとえ最悪の日であっても、絶望は避けられないものではないと自分自身に言い聞かせている。このアルバムは、希望、美、そして愛を毎日選ぶことについて歌っている。

 


Why Bonnie 『Wish On The Bone』/ Fire Talk


 

ブレア・ハワードンのWhy Bonnieの二作目のアルバムは、Fire Talk移籍後最初のアルバムとなる。2022年から二年が経過し、シンガー、そしてソングライターとしても一回り成長して帰ってきた。特に、今年のオルタナティヴロック系の女性シンガーの中で歌唱力は随一、オルタナティヴシーンでこれほど長くビブラートが伸びる歌手を正直なところ見たことがない。それに加えて、良質なソングライティングに磨きがかかり、素晴らしいアルバムが作り出された。

 

デビュー・アルバム「90」ではワクサハッチー、MJ Lendermanと同じようにアメリカーナとオルトロックの融合を目指したホワイ・ボニー。セカンドアルバムでは、前作の延長線上にある幽玄なオルタナティヴロックの世界が展開される。ブレア・ハワードンは、おなじみの繊細さとダイナミックさを兼ね備えた素晴らしいインディーロックのアプローチによって、サザン・ロックの継承者であることを示し、若い世代として南部の文化性を次の時代に伝えようとしている。

 

アルバムのタイトル曲、及び、オープニングを飾る「Wish On The Bone」は、タイトルもウィットがあるが、実際の音楽性にも同じような含蓄がある。ここ数年のニューヨークでの暮らしを踏まえ、ブロードウェイのような都会的なセンスを兼ね備えながらも、やはり南部的な幻想性のあるアメリカンロック、ギターロックを最終的にポップスという形に落とし込み、そして部分的には劇的なボーカルを披露している。ピアノとギターを重ね、バラードのテイストをもたらすハワードンのボーカルは、曲の進行ごとに徐々に迫力を増していき、起伏のある旋律を描きながら、サビとなるポイントへ向けて、歌声の抑揚やイントネーションをひきあげていく。結局のところ、高音部のビブラートの伸び方が素晴らしく、背後のギターやドラムのミックスに埋もれることがない。そしてこの曲では、情熱的なギターソロが曲の後半で最大の盛り上がりを見せる。まるでアルバムのエンディングのような結末がオープニングで示されているかのようだ。

 

「Dotted Line」ではオルタナティヴロックの形に直結している。同レーベルのCOLAのようなシンセサイザー、ミニマルなギターを重ね、落ち着きがありながらも、叙情的なインディーロックを組み上げていく。そしてそれに独特のカラーを付け加えるのが、ハワードンのアメリカーナやカントリー/フォークを継承したボーカルだ。一見すると、同じようなオルトロックソングは、たくさん存在するように思える。しかし、このボーカリストは歌によって次の展開を呼び覚ます力があり、そして、実際的に他の平凡なロックソングには見出し難い深みを持ち合わせている。


これは、ブレア・ハワードンが、ブルース・スプリングスティーンやトム・ペティはいうに及ばず、サザン・ロックやそれ以前の南部のブラックミュージックの音楽性を何らかの形で吸収していることを伺わせる。つまり、表向きには出てこないが、ブルースと南部のR&Bの影響が背景にあることを思わせる。例えば、ミシシッピ河口にあるSun Records等のメンフィスの音楽である。これが西海岸や北部のロックとは異なり、渋みのある雰囲気を漂わせることがある。こういった音楽を本人が自覚的に聴いているかは別として、若い頃に親戚や誰かが聞かせていたことが推測できる。実際的に、ほとんど数年ぶりに、メンフィスらしい音楽を耳にすることができる。ブルースやR&Bを絡めた渋さ、奥深さ、たぶんこれこそ米国南部のロック音楽なのだ。



エミネムの曲と同じタイトル「Rythm or Reason」において、アメリカーナ特有のビブラートの歌唱法を活かし、ここでも渋みのあるサザンロックを切ないモダンロックに置き換えている。ここではニューヨークの実際的な暮らしの様子が、オルタネイトなギター、シンセのシークエンスを交えて、センチメンタルな雰囲気を持つ曲に昇華される。ここでは、都会的な生活から引き出されるボブ・ディランのような孤独を現代的な若者の感性として歌い込んでいるのが素晴らしい。


この曲のボーカルには、たしかにディランのように肩で風を切るようなクールな感じもあるが、そこには、テキサスとニューヨークという二つの都市の間で揺れ動くような独特な抒情性が織り交ぜられている。オルタナティヴロックとしては素晴らしい出来の一曲。そしてそれ以上の評価を獲得することができるかが争点になるかもしれない。また、何気ないスタンダードなロックソングも、ハワードンの手に掛かると、全然別の音楽に変わる。


「Fake Out」では、絶妙で効果的な旋律を描きながら、シンプルなシンセのフレーズを重ね、そして切ないイメージを押し出している。特に、落ち着いた立ち上がりから、それとは対象的な叫ぶようなボーカルに移行する瞬間、歌手の傑出した才覚を見て取ることができる。曲は最終的に激しさを帯びた後、虚脱したかのように静かなアウトロの導入部、編集的な音響効果を交えたアウトロの最後に繋がっていく。一見すると、普通のオルタナティヴロックソングにも聞こえるかもしれないが、実際は、何かしら新しいジャンルの萌芽を、この曲に見出すことができる。 


 

 「Rythm or Reason」

 

 

 

「Headlight Sun」では、 ワクサハッチーのようなオルタナティヴロックを聴くことができる。しかし、やはり、ハワードンの方は、なぜか南部的な音楽性を示すことにそれほど抵抗がないらしい。そして、国内ではいざしらず、海外の人間にとっては、グローバルなものよりも、より地域的な音楽や、そこにしか存在しないものに尊敬を覚え、俄然興味を持ったりするものだ。この曲では、古典的なポピュラーやバラードへの傾倒を見せ、幻想的な雰囲気と、小さなライブハウスの楽屋の裏側のようなミュージシャンにしか表現しえないイメージを織り交ぜている。さらに、前作のテーマと同じように、ホームタウンへの郷愁のような感覚が歌われているのかもしれない。中盤の「Green Things」は、Why Bonnieのハイライト曲の一つであり、センチメンタルな感覚と、繊細なピアノとギターが掛け合わされ、最も心地よい瞬間が形作られる。

 

このアルバムには甘い感覚もあるが、それと同時に、「All The Money」では、00年頃のWilcoの『Yankee Hotel Foxtrot』のようなフォークとアート・ロックをかけ合わせ、それらをザ・ビートルズの次時代のモダン・ロックとして完成させようという試みもある。ストリングスやベース、そして、ギターを短く重ね合わせ、それらを取り巻くようにして、ハワードンは、これまででもっともアートポップに近い音楽を組み上げようとしている。 これはチャンス・ウィリアムズとジョシュ・マレットとのコミュニケーションやライブセッションが上手くいった結果がアルバムの音源という形で表れ出ている。また、辛抱強さもあり、セッションを丹念に続けたおかげで、ライブサウンドとして聴いても興味深い一曲になっている。同じように、単なるレコーディングアルバムと見るのは不当であり、続く「Peppermint」でも、ライブサウンドの側面に焦点を当てている。これがレコードとしてじっくり聞かせる曲と、それとは対極に、ライブのように体を動かす曲という二つの相乗効果をもたらしていることは、言うまでもないことだろう。

 

 

デビュー作のラフなフォークソングもこのセカンドアルバムには受け継がれている。「Three Big Moon」はゆったりとしたイントロから、フィドルの演奏を交えて、夢想的な雰囲気は最大限に引き上げられる。シンプルなメロディー、口ずさめるボーカル、そして、それらの雰囲気に美麗な印象を縁取るフィドルの演奏は、Why Bonnieのフォークバンドとしての性質が立ち表れている。今週末、アメリカのカントリーラジオ局でこの曲がオンエアされることを祈るばかりだ。

 

アルバムは、その後、劇的な展開へと向かうかと思いきや、それとは対象的に、孤独の感覚を織り交ぜた内省的な楽曲へと続いていく。実際的に、それは不思議なくらい瞑想的な響きを帯びることがあり、「Wheather Song」では、内的な悲しみをもとにしているが、その先に、より雄大な感覚へと変化していく。そして、やはり、この収録曲から、独特な幻想性や夢想的な感覚がぼんやり立ち上りはじめ、本作の全体的な音楽性を決定づけていく。最早この段階で、このアルバムを佳作にとどめておくことは難しくなる、それどころか、単なるオルタナティヴロックというには惜しいところまで来ていて、ポピュラーとして聴いても素晴らしい作品である。

 

アルバムのクローズ「I Took The Shot」では、内的な孤独を感じさせる切ないバラードをクールに歌っている。そして、このような曲は聴いたのは、トム・ウェイツのデビュー・アルバム以来。これは、ハワードンというソングライターが、ポール・ウェスターバーグどころか、トム・ウェイツ、マッカートニー級の珠玉のソングライティングの才能を持つことを伺わせる。シカゴのBnnyの最新アルバム「One Million Love Songs」と並んで、Fire Talkの象徴的なカタログとなるかもしれない。サザン・ロックの最後の継承者、Why Bonnie(ブレア・ハワードン)の勝利。この二作目のアルバムでは、エンジェル・オルセンのような風格が備わってきたかなあと思う。



 

92/100


 

 

「Green Things」

 

 

Why Bonnie 「Wish On The Bone」はFire Talkから本日発売。ストリーミングはこちらから。

 

関連記事:   WEEKLY RECOMMENDATION  WHY BONNIE 『90 IN NOVEMBER』

 

 

2020年にNYCで結成され、現在はシアトルを拠点に活動中のAndiとKatによるドリームポップ・デュオ、Bubble Tea and Cigaretteが11月1日に2ndアルバム『We should've killed each other』をリリースすることを発表した。
 

 
Bubble Tea and Cigaretteは2022年にリリースしたデビューアルバム『There's Nothing But Pleasure』で作り上げた幻想的なドリームポップとレトロでノスタルジーなムードを融合させた世界観で注目を集め、アメリカ国内だけではなく、来日公演も含んだアジアツアーも大盛況を収めた。バンドへの期待も高まる中で完成させたこの2ndアルバム『We should've killed each other』はBubble Tea and Cigarettesがデビューアルバムで表現したサウンドを継続しつつも、更に魅惑的でノスタルジックな世界を鳴らした作品に仕上がっている。
 

 
日本限定でCDとしてリリースされる他、日本限定のレコードとして10月30日に先行販売されることも決定した。CD/LPの予約は各種ストア、P-VINEオフィシャルストアから可能だ。(ご予約: https://p-vine.lnk.to/YxMrcE)

 


「French Movie」



【リリース情報】 

 Bubble Tea and Cigarettes 『We should've killed each other』
 




Release Date:2024.11.01(Fri.)/ CD/LP先行リリース:2024.10.30(Wed)
Label:P-VINE

Tracklist:
1.Dead Flowers
2.Plane Crash
3.Envelope
4.French Movie
5.Room 907
6.Emi
7.Swallowtail Butterfly
8.Glider


*CD限定ボーナストラック収録予定

 

「Room 907」

日本の敏腕トラックメイカー、JJJが『July Tour』東京公演のライブ音源を本日配信リリース。 新たなツアー『Nov Tour』を開催を発表。



JJJが今年7月のワンマンツアー『July Tour』東京公演のライブ音源を本日配信リリースした。

 

7月11日(木) Zepp Hanedaで開催した当公演では、バックDJのAru-2に加え、 尺八奏者の瀧北榮山、箏奏者の岡村秀太郎、コントラバス奏者の岩見継吾を迎えたコラボレーション楽曲の数々を披露。縁の深いラッパーも多数登場し、大きな盛り上がりを見せた。その熱気を封じ込めた、臨場感あふれる音源はJJJ本人がミックスを手掛けており、アートワークのライブ写真は安藤政信が撮影を担当している。



また、ライブ音源のリリースにあわせて、11月に行われる新たなツアー『Nov Tour』の開催を発表。



11月5日(火)福岡・UNITEDLABを皮切りに、13日(水)台北・THE WALL、20日(水)仙台・darwin、30日(土)東京・日比谷公園大音楽堂の4公演を行う。



福岡公演、東京公演はAru-2(DJ)、瀧北榮山(尺八)、岡村秀太郎(箏)、岩見継吾(cb)による編成、台北公演はCampanella、Daichi Yamamoto、MFSが客演で参加。また、東京公演にはDJとして、Kazuhiko Fujita、KID FRESINO、KMの出演が決定している。



チケットは本日8月30日(金)12:00より、オフィシャル先行受付がスタート。



【リリース情報】 JJJ『July Tour at Zepp Haneda (Live)』

発売日 : 2024年8月30日(金)
レーベル : FL$Nation / AWDR/LR2
フォーマット : DIGITAL


LINK : https://ssm.lnk.to/JTaZH


TRACK LIST


1. Kids Return
2. Synthese Freestyle feat. 岩見継吾
3. Mihara feat. 瀧北榮山, 岡村秀太郎, 岩見継吾
4. July feat. 岡村秀太郎
5. Friendskill feat. Campanella, 瀧北榮山, 岡村秀太郎, 岩見継吾
6. Cyberpunk
7. Mirror feat. MFS
8. Maktub feat. 瀧北榮山, 岡村秀太郎
9. Beautiful Mind feat. 瀧北榮山, 岡村秀太郎, 岩見継吾
10. STRAND feat. KEIJU, 岩見継吾
11. 2024 feat. KID FRESINO, febb
12. wakamatsu feat. 瀧北榮山, 岡村秀太郎

 

 

【ライブ情報】 『JJJ - Nov Tour』

日時 : 2024年11月5日(火) OPEN 18:30 / START 19:30
会場 : 福岡・UNITEDLAB
料金 : 前売 ¥5,000 / 当日 ¥5,500 (D代別)
LIVE : JJJ w/ Aru-2, 岩見継吾, 岡村秀太郎, 瀧北榮山
INFO : BEA 092-712-4221 (平日12:00〜16:00) https://www.bea-net.com

[オフィシャル先行]
受付期間 : 2024年8月30日(金)12:00〜9月5日(木)23:59まで
受付方法 : 抽選
受付URL : https://w.pia.jp/t/jjj/

[BEA WEB先行]
2024年9月6日(金)12:00〜9月16日(月・祝)23:59まで
受付URL : https://l-tike.com/st1/beaweb-jjj

[現地先行]
ぴあ : https://w.pia.jp/t/jjj/ (2024年9月10日(火)11:00〜9月16日(月・祝)23:59まで)
ローチケ : https://l-tike.com/jjj/ (2024年9月6日(金)12:00〜9月16日(月・祝)23:59まで)
e+ : https://eplus.jp/jjj/  (2024年9月6日(金)12:00~9月16日(月・祝)23:59まで)

[一般発売]
2024年9月21日(土)10:00〜
ぴあ : https://w.pia.jp/t/jjj/
ローチケ : https://l-tike.com/jjj/
e+ : https://eplus.jp/jjj/

日時 : 2024年11月13日(水) OPEN 19:00 / START 20:00
会場 : 台北・THE WALL LIVE HOUSE
料金 : 前売 NT$1200 / 当日 NT$1400
LIVE : JJJ w/ Aru-2, Campanella, Daichi Yamamoto, MFS
INFO : 浪漫的工作室 Romantic Office https://www.instagram.com/romanticoffice/

発売日:台湾時間2024年8月30日(金)12:00〜(日本13:00)
TICKET : https://romanticoffice.kktix.cc/events/241113

日時:2024年11月20日(水) OPEN 18:30 / START 19:30
会場:仙台・darwin
料金:前売 ¥5,000 / 当日 ¥5,500 (D代別)
LIVE : JJJ w/ Aru-2
INFO : EDWARD LIVE 022-266-7555 (平日11:00~15:00)

[オフィシャル先行]
受付期間 : 2024年8月30日(金)12:00〜9月5日(木)23:59まで
受付方法 : 抽選
受付URL : https://w.pia.jp/t/jjj/

[現地先行]
ぴあ : https://w.pia.jp/t/jjj/ (2024年9月6日(金)11:00〜9月12日(木)11:00まで)
ローチケ : https://l-tike.com/jjj/ (2024年9月6日(金)12:00〜9月16日(月・祝)23:59まで)
e+ : https://eplus.jp/jjj/ (2024年9月6日(金)12:00~9月11日(水)18:00まで)

[一般発売]
2024年9月21日(土)10:00〜
ぴあ : https://w.pia.jp/t/jjj/
ローチケ : https://l-tike.com/jjj/
e+ : https://eplus.jp/jjj/

日時 : 2024年11月30日(土) OPEN 16:00 / START 17:00
会場 : 東京・日比谷公園大音楽堂
料金 : スタンディング, 指定席 ¥6,500 (D代別)
LIVE : JJJ w/ Aru-2, 岩見継吾, 岡村秀太郎, 瀧北榮山
DJ : Kazuhiko Fujita, KID FRESINO, KM
INFO : SMASH 03-3444-6751 https://smash-jpn.com / HOT STUFF PROMOTION 050-5211-6077 https://www.red-hot.ne.jp

[オフィシャル先行]
受付期間 : 2024年8月30日(金)12:00〜9月5日(木)23:59まで
受付方法 : 抽選
受付URL : https://w.pia.jp/t/jjj/

[一般発売]
2024年9月21日(土)10:00〜
ぴあ : https://w.pia.jp/t/jjj/
ローチケ : https://l-tike.com/jjj/
e+ : https://eplus.jp/jjj/

※未就学児入場不可、小学生以上はチケットが必要になります。
※お1人様4枚までお申し込み可能です。
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【TV オンエア】

SPACE SHOWER TV Special Program
O.A : 2024.09.03 (Tue) 23:30~
https://tv.spaceshower.jp/p/00088498

 


先日、9作目のスタジオ・アルバム『アナザー・サイド・オブ・スキンシェイプ』を9月27日(金)に発売することを発表したイギリスのマルチ奏者でプロデューサー、ウィル・ドーリーのソロ・プロジェクト、スキンシェイプ。本日、収録曲の「Lady Sun (feat. Hollie Cook)」を配信リリースした。


父親はセックス・ピストルズのドラマー、ポール・クック、母親はカルチャー・クラブ&ボーイ・ジョージのバック・ヴォーカルとして活動していた歌手のジェニというサラブレッドであるホリー・クックは、自身もラヴァーズ・ロックの女王として知られ、そのかすれたソウルフルなヴォーカルが特徴だ。


 
ウィル・ドーリーの最新アルバムは、これまでの彼のどの作品とも似つかない内容となっている。
幼少期の思い出やエチオピアのリズムからインスピレーションを得たと言う今作は、ウィルの心の最も難解な部分にアクセスしている。

 

今作について彼は、「1990年代へのオマージュのような曲もあれば、1960年代や1970年代に敬意を表した曲もある。ただし、受け取る側によってはそういった表現だと感じ取れない人もいるかもしれない。いずれにせよ、このアルバムが楽しく、一日の流れにさりげなく溶け込むことを願っているよ」と話している。
 

クルアンビン、テーム・インパラ、エズラ・コレクティヴといったサイケ/フォーク/インディ/ファンク好きに突き刺さること間違いなしのニュー・アルバム『アナザー・サイド・オブ・スキンシェイプ』に乞うご期待!



 
【リリース情報】 アルバム


アーティスト名:Skinshape(スキンシェイプ)
タイトル:Another Side Of Skinshape(アナザー・サイド・オブ・スキンシェイプ)
発売日:2024年9月27日(金)
レーベル: Lewis Recordings



Tracklist:


1. Stornoway
2. Mulatu Of Ethiopia
3. Can You Play Me A Song?
4. Lady Sun (feat. Hollie Cook)
5. It’s About Time
6. How Can It Be?
7. Ananda
8. Road
9. Massako
10. There’s Only Hope



アルバム配信予約受付中!


ご予約: https://orcd.co/0db0e46

 

シングル情報 Lady Sun (feat. Hollie Cook)(レディ・サン(フィーチャリング・ホリー・クック))



タイトル:Lady Sun (feat. Hollie Cook)(レディ・サン(フィーチャリング・ホリー・クック))
配信開始日:配信中!
レーベル: Lewis Recordings

<Tracklist>

1. Lady Sun (feat. Hollie Cook)
 
配信リンク: https://orcd.co/40azn73

 
 
 
【バイオグラフィー】

 
ロンドンのインディ・シーンを拠点に活動するマルチ・プロデューサー、ウィル・ドーリーによるソロ・プロジェクト。2012年結成のロンドンのアート・ロック・バンド、パレスの元ベーシストとしても知られている。


これまで、ソウル、ファンク、サイケ、ソフト・ロック、ヒップホップ、アフロビートといった様々なサウンドをキャリアで築いてきた彼は、身近にある楽器はドラム以外、ほぼ全て(ギター、ベース、キーボード、パーカッション、シタール、フルート、そしてヴォーカル)自らが手がけるという、まさにマルチ・プレイヤー。2012年に4曲入りセルフ・タイトルEPでデビューし、2014年には同名のアルバムをリリース。そして、これまでにスキンシェイプとして8枚のアルバムを発表している。

 

2014年にはロンドンのインディー・バンド、パレスにベーシストとして参加し、2015年の『チェイス・ザ・ライト』、2016年の『ソー・ロング・フォーエヴァー』といった2枚のアルバムの制作に携わっている。その後、スキンシェイプの活動に専念するために同バンドを脱退。来る2024年9月に9作目のアルバムとなる『アナザー・サイド・オブ・スキンシェイプ』をリリースした後は、UK/USツアーが決定している。


 



Wu-Luが最新EP「Learning to Swim on Empty」の収録曲「Last Night With You」のインストゥルメンタルバージョンを公開。

 

イントロの静かなインディーロック風のギターからオーケストラストリングスのレガートを経た後、グルーヴィーなブレイクビーツへと移行する瞬間等、聞き所がたくさん用意されている。ヒップホップは、トラックメイクの作り込みで出来が決定されてしまう。視聴は下記より。

 

「Learning To Swim On Empty」は5月17日にWarpから発売。アーティストはアルバム発売前、メキシコを旅行していた。9月25日にはロンドン/ブッシュホールでのヘッドライナー公演を控えている。

 


「Last Night With You」




【WEEKLY MUSIC FEATURE】 WU-LU - LEARNING TO SWIM ON EMPTY ヒップホップの新基軸

 

©︎Alexa Viscius

シカゴのシンガーソングライター、Tasha(ターシャ)は、ニューシングル「Love's Changing」を発表した。アルバム『All This and So Much More』に収録。ミュージックビデオを以下でチェックしてみよう。


「Love's Changing』はアルバムのために書き終えた最後の曲で、完璧なラストノートだと感じている」とターシャは声明で説明している。

 

「このアルバムはある意味、喪失について歌っているけれど、同時に喪失の向こう側で発見される美しさについても歌っていて、この曲にはその暖かさと楽観主義が凝縮されている。この曲のインストゥルメンテーションもビデオも、周囲の愛に身を委ねたときに生まれる爽やかさと安らぎを反映させたかった。痛みの記憶は決して私たちから離れないし、実際、(曲の中で聴けるように)思いもよらないときに忍び寄ることがよくある」



「Love's Changing』

 

 

Tashaのニューアルバム『All This and So Much More』 はBayonetから9月20日に発売予定。

 

©Richard Kenworthy


Caribouは、ニューアルバム『Honey』を発表した。本作はドイツのCity Slangから10月4日にリリースされる。アルバムには、先行リリースされたタイトルトラック「Broke My Heart」「Volume」が収録されている。

 

次いで、ダン・スナイスは三作目のシングル「Come Find Me」を公開した。リチャード・ケンワースが監督したビデオは以下から、アルバムのアートワークとトラックリストは以下よりチェック。


「私はこのようなコード配列とフレンチ・タッチのような雰囲気が大好きなのですが、適切なヴォーカル・フックとブレイクダウンを見つけ、よりポップで簡潔なものにするのにとても時間がかかりました。DJセットでこの曲をプレイする時、歌声だけになり、突然押し寄せてくるような曲になる」


『Honey』は、2020年の『Suddenly』に続く作品となる。アルバムについてスナイスはこう語っている。敏腕のエレクトリックプロデューサーが追い求めるものは、子供のような好奇心と感動なのかもしれない。


「私にとって当初から変わっていないことのひとつは、音から何を作り出せるかというマニアックな好奇心なんだ。多くのコラボレーターやリソースを自由に使える "プロ "と呼ばれる人たちが音から何を作り出せるかではなく、私自身が...私の小さな地下スタジオで。以前より機材は増えたが、基本的にはこれまでと同じなんだ。何かが本当に激しくヒットしたときのスリルを追い求めて、気がつくと飛び上がっていたり、興奮して腕の毛が逆立っていたりする。それがなくならないなんて、私はなんてラッキーなんだろうって」

 

「新しくてエキサイティングなものを作るチャンスは、相変わらず爽快だ。そして相変わらず楽しい。何もないところから1日が始まり、(ほとんどの日は何もないまま終わるが、たまに...)1日が終わるころには、それまでなかったものが頭の中にこびりついている。それは今でも一種の錬金術のように思える」


アルバムのニュースとともに、スナイスはロンドンのザ・ウェイティング・ルームでの4夜にわたるライブ・レジデンスも発表した。

 

 

「Come Find Me」


Caribou 『Honey』


Label: City Slang

Release: 2024年10月4日

 

Tracklist:


1. Broke My Heart

2. Honey

3. Volume

4. Do Without You

5. Come Find Me

6. August

7. Dear Life

8. Over Now

9. Campfire

10. Climbing

11. Only You

12. Got To Change


 

ロンドンを拠点に活動するプロデューサーでシンガー・ソングライターのリザ・ローが、「A Messenger」「Confiarme」に続くサード・シングル「What I Used To Do」を発表した。

 

リザ・ローのシングルは、見知らぬ本に出会い、そのページを一枚ごとめくるような楽しさがある。次に何が起こるかわからないし、それぞれ各章ごとに違うストーリーが綴られている。前2作は、アコースティックギターを元にしたナンバーで、メディエーションからネオソウル風のフォークというふうに異なるテイストがあったが、三作目の「What I Used To Do」はインディーポップ風のシングルで、ドラムのアップテンポなビート、シンセリードが織り交ぜられ、楽しく軽妙な感覚が押し出されている。

 

ビーバドゥービー(UK)、ジュリア・ジャックリン(AU)、メン・アイ・トラスト(CA)など世界的なインディーポップシンガーからインスピレーションを受けたというリザ。そのサウンドは、穏やかなフォーク風のインストゥルメンテーションとインディー・ポップがクロスオーバーする場所にある。オランダでの作曲キャンプで生まれたこのニュー・シングルは、カントリー調の温かみのあるコード進行とレトロ・ポップ調のシンセとベースに乗せ、リザが情熱的なヴォーカルを歌う。従来で最もフックの効いた作品で、彼女のサウンドの新たな広がりを示す。

 




同楽曲の制作プロセスについて、リザは次のように語っている。「私たちは、親しみがありながらも新鮮で、ちょっとパンチのある曲を書きたかったの。一緒に制作したHebe VrijhofとWouter Vingerhoedenと3人で、自分達が影響を受けたアーティストについて話し始め、クレイロ、クレオ・ソル、ディジョンなど様々なアーティストの話をしたわ。この曲のヴァースは、晴れた日にリビングルームでまどろみから目覚めたような感じにしたかったの。

 

 時代が変わり、自分が変わり、成長することで、過去や古い自分を手放すことができる。魔法のような空間が生まれることを思い出させてくれる、自分自身への楽しい小さな手紙のような曲にしたかった。すべてを深刻に受け止めず、ただ変化を受け入れるようにと、やる気を起こさせるために書いた曲なの。人生のとある1日の、良い雰囲気に焦点を当てた、完璧な主人公のフィーリングが込められているわ」


そしてリザは7月にリリースした「Confiarme」のパフォーマンス動画も公開した。こちらも下記より。


「Confiarme」


Liza Lo 「What I Used To」- New Single

Label: Gear Box (London/Tokyo)

Release: 2024年8月29日


ストリーミング: https://bfan.link/what-i-used-to-do



バイオグラフィー:

 

スペインとオランダで育ち、現在はロンドンを拠点に活動するシンガー・ソングライター、プロデューサー、ミュージシャン。親密で詩的な独自の音楽世界を創り出す彼女は、ドーター、マロ、ビリー・マーティンなどからインスピレーションを受け、生々しいヴォーカルと誠実なソングライティングで聴く者を内省と静寂の世界へと誘う。

 

最新EP『flourish』は、Spotifyの「New Music Friday UK」、「NL」、「BE」にセレクトされ、「the most beautiful songs in the world」プレイリストでも紹介された。今年5月にGaerbox Recordsと契約し、これまでに「A Messenger」「Confiarme」「What I Used To Do」の3曲のデジタル・シングルをリリース。現在は、西ロンドンのスタジオ13で、ジョン・ケリー(ポール・マッカートニー、ケイト・ブッシュ)とバンドと共にアルバムの制作に取り組んでいる。