DJ/プロデューサー、Peggy Gou(ペギー・グー)が、今週末にロンドンのガナーズベリー・パークで開催される自身最大規模のヘッドライン・ライヴに先駆けて、ニューシングル「Find the Way」を発表した。今夏の初め、デビューアルバムをリリースした後、自身の主宰するインディペンデントレーベル”Gudu Records”に戻ってきた。
デビューアルバム『I Hear You』以来となるペギーの新曲「Find the Way」は、彼女のフェザー・ライトなヴォーカルと90年代のハウス・ビート、メロウなキー、催眠術のようなベースラインが融合している。
ロサンゼルスを拠点に活動するプロデューサー、ソングライター、マルチ・インストゥルメンタリスト、ジェフリー・パラダイスのレコーディング・プロジェクト、プールサイドがスタジオ・アルバム『Blame It All On Love』(Ninja Tuneのサブレーベル、Counter Records)のリリースする。このレトロなローファイ・トラックは、プールサイドがミネソタ州のオルタナティヴ/インディー・ドリーム・ポップ・アクト、ヴァンシアと組んで制作された。
「僕は15年間、"ルールなんてクソ食らえ "という感じで過ごしてきた。だからこのアルバムにとても興奮しているよ」 プールサイドの4枚目のスタジオ・アルバム『Blame It All On Love』で、パラダイスは浅瀬を離れ、彼自身の創造的な声の深みに入った。その11曲はファンキーでソウルフル、レイドバックしたフックに溢れ、プールサイドのサウンドを痛烈なポップへと昇華させている。
この曲は、彼がこれまで歩んできた場所と、戦うことも証明することも何もないこの瞬間にたどり着くまでの曲がりくねった旅路の産物であり、以前リリースされた、メイジーをフィーチャーしたシングル "Each Night "やパナマとのシングル "Back To Life "で聴けるような完璧なグルーヴだけがある。
この "Float Away "は、"Each Night "のビデオを手がけ、レミ・ウルフ、ジャクソン・ワン、Surf Curseなどの作品を手がける新鋭アーティスト、ネイサン・キャスティエル(nathancastiel.com)が監督を務めた、ダークでコミカルなエッジを効かせた爽やかでチャーミングなパフォーマンス・ビデオとともにリリースされる。
アルバムの冒頭「Ride With You』から、Bee Geesやヨット・ロック、ディスコ・サウンドをクロスオーバーした爽快なトラックで、リスナーをトロピカルな境地へと導く。バレアリックのベタなダンスビートを背後に、バンド及び、Ben Browingのグルーヴィーなロックが繰り広げられる。ヨット・ロックを基調としたサウンドは、確かに時代の最先端を行くものではないかもしれないが、現代のシリアスなロックサウンドの渦中にあって、驚くほど爽やかな気風に彩られている。これらのスタイリッシュな感覚は、ジェフリーがファッションデザイナーを昔目指していたことによるものなのか。それは定かではないが、アルバム全編を通じてタイトなロックサウンドが展開される。レイド・バックに次ぐレイド・バックの応酬。そのサウンドを波乗りのように、スイスイと掻き分けていくと、やはりそこにはレイド・バックが存在する。柔らかいクッションみたいに柔らかいシンセはAORやニューロマンティック以上にチープだが、その安っぽさにやられてしまう。ここにはどのような険しい表情もほころばせてしまう何かがある。
Poolsideのディスコ/ヨットロックの音の方向性にバリエーションをもたらしているのが、女性ボーカルのゲスト参加。その一曲目「Where Is The Thunder?」では、ループサウンドを元にしてAOR、果ては現代のディスコ・ポップにも近いトラックに昇華している。スペインのエレクトロ・トリオ、Ora The Moleculeのゲスト参加は、爽やかな雰囲気を与え、曲自体を聞きやすくしている。例えば、Wet Legのデビュー・アルバムの収録曲にようにメインストリームに対するアンチテーゼをこの曲に見出したとしても不思議ではない。トロピカルな音楽性とリゾート的な安らぎが反映され、「レイド・バック・ロック」と称すべきソフト・ロックの進化系が生み出されている。
アルバムの終盤の最初のトラック「We Could Be Falling In Love」では、DJとしてのジェフリー・パラダイスの矜持をうかがい知ることが出来る。トロピカル・サウンドのフレーズとアッパーなディスコサウンドの融合は、カルフォルニアの2020年代の象徴的なサウンドが作り出された証ともなる。80年代のミラーボール・ディスコの軽快なコーラスワークを織り交ぜながら、コーチェラを始めとする大舞台でDJとして鳴らしたコアなループサウンド、及びコラージュ的なサウンドの混在は、ケンドリック・ラマーの最新アルバムのラップとは異なる、レイドバック感満載のクラブミュージックなるスタイルを継承している。そして、この曲に渋さを与えているのが、裏拍を強調したしなやかなドラム、ギター、ベースの三位一体のバンドサウンド。ここにはジェフリー・パラダイスのこよなく愛するカーティス・メイフィールド、ウィリアム・コリンズから受け継いだレトロなファンク、Pファンクの影響を捉えられなくもない。
AOR/ニューロマンティックの象徴的なグループ、Human Leagueを思わせるチープなシンセ・ポップ・ソング「Sea Of Dreams」は、人生には、辛さやほろ苦さとともに、それらを痛快に笑い飛ばす軽やかさと爽やかさが必要になってくることを教えてくれる。そして、その軽やかさと爽やかさは、人生を生きる上で欠かさざるロマンティックと愛という概念を体現している。アルバムのクロージング・トラック「Lonely Night」は、MUNYAがゲストで参加し、一連のヨットロック、AOR/ソフト・ロック、ディスコ・ソウルの世界から離れ、名残り惜しく別れを告げる。
Sofia Kourtesis(ソフィア・クルテシス)は、デビューアルバム『Madres』の最終シングル「How Music Makes You Feel Better」を公開した。「どんな嵐の中でも、どんな浮き沈みの中でも、痛みや悲しみの中でも、音楽はいつもあなたを元気にしてくれる最も美しいものです」
Sofia Kourtesis(ソフィア・クルテシス)の『Madres』はニンジャ・チューンから今週金曜日に発売される。
The Slitsのセルフタイトルのデビュー・アルバムでは、オープニング曲を聞けば分かる通り、いわばパーティー色のあるご機嫌なダブが最大の魅力だった。このアルバムでは、ダブとともに当時隆盛をきわめたスカ風のサウンドも含まれていたと思う。他方、クックのソロ作では、スカの要素はほとんどなく、プロデューサーと協力して、コンフォタブルなダブの精髄を探求している。収録曲全てにダブというサブタイトルが銘打たれている念の入れようには頭が下がる。
アルバムは、「Praing In Dub」を通じてエレクトーンの懐かしい音色で始まる。まったりとしたラヴァーズ・ロック・サウンドはTrojan時代のボブ・マーリー・サウンドへ回帰を果たしたかのようだ。そしてそれは単なるレゲエというにとどまらず、蠱惑的な雰囲気を醸成する場合もある。
アルバムの前半部は、セッションの面白さを追求したミュージシャン好みのインスト曲が多いが、中盤になると、少し音楽的なストーリー性、つまりナラティヴな要素をダブサウンドの中に織り混ぜようとしている。Josh Skints、Jah 9といったコラボレーターが参加したボーカル・トラックでは、リントン・クェシ・ジョンソンの「Inglan Is A Bitch」のごとき渋い印象を生み出す。スネア/タムの波形にディレイ/リヴァーヴを掛け、サンプリングをリズム・トラックとして出力するという基本的な作法により、幻惑的なダビング録音の渦の中にリスナーを呼び入れる。
Mykki Blanco(ミッキー・ブランコ)はEP『Postcards From Italia』を発表しました。2022年の『Stay Close to Music』以来の新曲となるこの6曲入りプロジェクトは、再びFaltyDと共に制作され、新曲「Holidays in the Sun」が収録されている。このEPはTransgressiveから9月22日にリリース予定。
「"Holidays in the Sun”は、クリスマス・イブにポルトガルの地下室で制作された。サマセットのウィリアム・イーブスがプロデュースし、マイッキ・ブランコが作曲、アーティストのZamZamがボーカルを担当したこの曲は、海で泳いだり、音楽フェスティバルをはしごしたり、人生を楽しみ、太陽を浴びながらドルチェ・ヴィータな日々を過ごすという、心地よい夏のアンセムだ。
曲はそのほとんどがアーティストが考えるカワイイのイメージを余すところなく織り込もうとしている。アルバムの立ち上がりはゆっくりでまったりとしているが、「Don't Cry On My Pillow」では、少しシリアスな領域へと踏み入れていき、個人的な恋愛における仄かな切なさを漂わせようとしている。ダンスミュージックを下地にして甘口のインディーポップと結びついているこの曲は、本作の中で注目すべきトラックの一つとなるかもしれない。ここにはアーティストの繊細な一面が表れ、それがメロディーラインやボーカルにしっかりと反映されている。
さらにアルバムの後半に差し掛かると、よりエレクトロ/ダンスミュージックとしてマニアックな一面が表れ、音の出力のタイミングに工夫を凝らすことで、上手く聞き手の注意を惹きつけることに成功している。もちろん、その中には序盤から一貫して曲そのものの軽快さに商店が絞られており、これはアルバムの終盤まで変わらない。アルバムの構想が一本の線でスッと通っているような感じは、実際、リスナーにほどより安らぎと開放的な気持ちを与えるだろうと思われる。また自愛的な歌詞もある一方で、「I Hate Myself」という一曲もあり、自愛と自虐という両極端にも思える性質が混在している。そして、この曲ではヒップホップに近いアプローチを取り、それらをユニークなジョークにより、適度に聞きやすい曲として仕上げられている。
このアルバムには、Beck(ベック)とフランスのサイケ・ポップ・シンガー、Halo Mauが参加しており、ハロ・モードは最近のシングル "Live Again "で歌っている。この曲は、ケミカル・ブラザーズのビデオで長年コラボレートしてきたDom & Nicが監督した、アルバム発表を記念した新しいビデオが公開されている。
「Live Again」
The Chemical Brothers 『For That Beautiful Feeling』
Label: Republic
Release: 2023/9/8
Tracklist:
1.Intro 2.Live Again (feat. Halo Maud) 3.No Reason 4.Goodbye 5.Fountains 6.Magic Wand 7.The Weight 8.Skipping Like a Stone (feat. Beck) 9.The Darkness That You Fear (Harvest Mix) 10.Feels Like I’m Dreaming 11.For That Beautiful Feeling (feat. Halo Maud)
Saint Sinner 『hydration」
Label:Grace Tron
Release: 2023/7/14
Review
Saint Sinnerは、テキサス/オースティンのDJ/プロデューサー/ボーカリストで、既にTychoの作品に親しんでいるファンにはとってはお馴染みのシンガーだろう。そのスタイリッシュな佇まいを裏切らないセンス抜群のボーカルで着実にファンベースを広げてきた。セイント・シナーは、「Pink & Blue」、「Japan」でゲスト・ボーカルで参加し、見事なボーカルを披露している。個人的にイチオシのボーカリストだ。このシンガーの最大の魅力は、エレクトロニックと劇的にマッチする力強いボーカル、そして、電子音楽に対して情感を失わない繊細性を見せる瞬間に宿る。ベースラインの強いエレクトロと融合したとき、セイント・シナーのヴォイスはトラック全体にポップネスをもたらす。インスト曲として寂しい感じがある場合に素晴らしい貢献を果たすボーカリストなのだ。いくつかの声色とトーンを自在に使い分け、様々な音楽に対応して見せる器用さはもちろん、歌声の迫力はバルセロナのキャロライン・ポラチェクにも引けを取らない。
セイント・シナーは考えようによっては、ティコとのコラボレーションを介してリアルなエレクトロの洗礼を受けたとも捉えられる。それは言い換えれば、ダンスミュージックに本当の意味で目を開かれたとも言えよう。その経験がこの2ndでは存分に生かされ、ガラージをはじめとする複雑なリズムが既にオープニングを飾る「surf on me」の中に見えている。それはダブステップほど流動的ではないが、深いベースラインが幻惑を誘い、その抽象的なムードの合間を縫うようにして、アンニュイで聞きようによっては物憂げなシナーのボーカルが音響性を拡張していく。ジャリジャリとしたパーカションとディープなベースラインはアーティストがDJとして鋭いセンスを持ち合わせていることの証だ。そこに憂いに満ちているが、セクシャルなシナーのボーカルが重なると、アシッド・ハウスのディープな要素が加わる、つまり、リスニング空間をベースメントの真夜中のフロアに変容させるほどの魔力をそのボーカルは兼ね備えている。