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dj woahhausは東京をベースに、韓国、ベルリンのアンダーグラウンドシーンで活動するDJ、サウンドヴィジュアルアーティスト。本日、プロデューサーは新曲「@鳴家」をストリーミングで配信リリースした。

 

彼のサウンドは、本来、ダンスミュージックが地下に鳴り響くものというコンセプトを改めて思い出させてくれる。ダブステップ、フューチャーベースなどをクロスオーバーしながら、ひんやりとした質感を持つクラブテイストを提供する。そのサウンドはフライング・ロータスやデビュー当時のBurialを彷彿とさせるものがある。


本曲は都市の閉塞感と侘しさ、無機質の冷たい哀しみ、青年が追い求めるドラマと官能を描いた。テクノをベースにクラブオルタナティブ、スポークンワード、アンビエント・ノイズの要素を織り交ぜた、genre: woahhausを体現するニュー・オルタナティブクラブミュージック。ツンと張り詰めた空気の中、彼独自の言語である"鳴音"がコンクリート剥き出しの都市にこだまする。

 

近日中に、djwoahhaus自ら手掛けたミュージックビデオが公開予定。詳細は後日発表されるという。配信リンクは下記をチェック。

 

 

 

dj woahhaus  「@鳴家」- new single


 

配信リンク(Stream): https://linkco.re/xcNpEC6t

 

 

dj woahhaus

 

dj woahhausは東京を拠点に韓国やドイツなどのアンダーグラウンドシーンでグローバルに活動を展開するdj、オーディオ・ヴィジュアル・アーティストです。
 

国内外でのdjアクト・イベントのオーガナイズの他、東京を拠点にインディペンデントアーティストを支援することを目的に活動するコレクティブ、"Mana Online"の代表も務め、また香港コミュニティラジオのレジデントとして、マンスリーのmixシリーズをホストするなど、アンダーグラウンドクラブカルチャーに根ざした幅広い活動を行っています。



ジェシー・ウェアがイギリス・マンチェスターを拠点とするプロデューサー、サルートと新曲 「Heaven in Your Arms 」でタッグを組んだ。ダンスナンバーはNinja Tuneからリリースされている。(ストリーミングはこちら


今回のコラボレーションについて、ジェシー・ウェアはプレスリリースで次のように語っている。

 

 「以前からサルートのファンで、今年の夏にSonarで彼らのセットを観たんだ。そのときから、彼らと一緒に仕事をしようと決めていた。サルートはたくさんのトラックを送ってくれたが、ビートは際立っていた。楽観的でロマンチックなものを作りたかった。10代の頃によく踊っていたガレージを思い起こさせるけど、もちろんサルートのユニークで未来的なサウンドは真新しく感じる! この曲は大好きで、サルートのアメリカでのライヴでの盛り上がりを見ていると、いつか彼らと一緒に、あるいは2人でこの曲を演奏するのがとても楽しみになってくる」



 

©Park Sangjun


DJ/プロデューサー、Peggy Gou(ペギー・グー)が、今週末にロンドンのガナーズベリー・パークで開催される自身最大規模のヘッドライン・ライヴに先駆けて、ニューシングル「Find the Way」を発表した。今夏の初め、デビューアルバムをリリースした後、自身の主宰するインディペンデントレーベル”Gudu Records”に戻ってきた。

 

デビューアルバム『I Hear You』以来となるペギーの新曲「Find the Way」は、彼女のフェザー・ライトなヴォーカルと90年代のハウス・ビート、メロウなキー、催眠術のようなベースラインが融合している。
 

2024年は、ペギー・グーにとって飛躍の年となった。XLレコーディングスから待望のデビューアルバム「I Hear You」をリリースし、オブザーバー誌、NME誌、ザ・ライン・オブ・ベスト・フィット誌などで絶賛された。その他、ビルボード誌(アメリカ)、ヴォーグ誌(ドイツ)、L'Officiel Italia誌の表紙を飾った。今、最も勢いに乗っているDJ/プロデューサーである。

 

2023年にはライヴイベントで100万人以上を動員し、インフルエンサーとしての実力を発揮しはじめると。快進撃は続いた。2024年にはコーチェラ、ウルトラ、EDC、プリマヴェーラ、フジロックなどの世界的なフェスティヴァルに次々と出演。グラストンベリーのパーク・ステージではヘッドライン・スロットを務め、プロデューサーとしての名声を世界的なものとした。

 

ニューシングルの各種ストリーミングはこちらから。


「Find the Way」

 Best New Tracks- Bonobo 「Exapander」


Bonoboが1年半の活動休止を経て、ニューシングル「Expander」をNinja Tuneからリリースした。アシッドハウスのビートにジャズのエッセンス、ボーカルのサンプリングを加え、絶妙な風味を持つレイヴミュージックに仕上げている。数年前、プロデューサーは来日ツアー時に鰹節の制作体験をしたが、それと同じように、きわめて''職人的''である。(ストリーミング/ご購入はこちら

 

Ninja Tuneから今週末にリリースされた 「Expander 」は、紛れもないボノボのEDMの一片を切り取ったトラックである。オーガニックなヴォーカルとインストゥルメンタルをピーク・タイムのダンスフロアの感性を巧みに織り込んだこの曲は、この夏を代表する曲のひとつとなるだろう。

 

先日、グラストンベリーのLEVELSステージで行われた彼のロードブロック・セットに続いて、未発表曲のクリップが多数公開された。ステージでのロードブロック・セットの後、この未発表曲のクリップが多数ネット上に出回り始めている。ファンの間でIDを求める声が上がっている。


このトラックは、彼の伝説的なイヴェント”OUTLIERセット”ですでに定番となっているという。Bonobo自身がキュレートしたこのイベント・シリーズは、彼のDJとしての継続的な影響力を示すと同時に、新世代のアーティストが彼自身のリリースに抱いている尊敬の念も示している。

 

昨年は、以下の豪華なメンバーがイベントのDJラインナップに加わっている。Barry Can't Swim、DJ Koze、Sofia Kourtesis、salute、Kelly Lee Owens、Mall Grab、DJ Tennis、Dixon、TSHA、SG Lewis、Young Marco、Kerri Chandler、Carlita、Elkka、HAAi、John Talabot、Paula Tapeなど。

 

ロンドンのドラムシェッズで開催された15,000人収容のライヴイベントは、今シーズン最速のセールスを記録した。Bonoboはまた、先日ロサンゼルスで行われた”Friends & Family”のポップアップでDisclosureとB2Bを行った際にもサイモン・グリーンは「Expander」をプレイしている。

 


「Expander」は、ボノボがアルバムの発表の合間にリリースする、ヘヴィでクラブ・テイストなシリーズの一貫として発売された。2022年の 「Defender 」と 「ATK」、続く、ジャック・グリーンとのコラボ曲 「Fold」、2020年のTotally Enormous Extinct Dinosaursとのアンセミックなニューヨーク・ディスコ風 「Heartbreak 」12インチシングルに続く作品となる。今後の作品にも期待したい。

 


「Expander」

 


リバプールのピクシーが最新シングル「Give A Little Of Your Love」をリリースした。この曲は、8月2日にチェス・クラブ・レコードからリリースされる待望のデビューアルバム『Million Dollar Baby』の収録曲。


グラストンベリー・デビューを果たしたピクシーは、今年後半にはイギリスのネイバーフッド・フェスティバルへの出演も決定している。


「Give A Little Of Your Love」の制作について、ピクシーは次のように語っている。「私は普段、ロマンチックな愛について書くことはないんだ」


「Abletonで古いロイヤリティ・フリーのサンプルをピッキングして、ドラム・ループをかぶせ、ハイハット、ミディ・シンセ、プログラムされたストリングスを加えた。William Onyeaborの'Atomic Bomb'は、わたしが音楽を始めるきっかけとなった曲だ。この曲は、愛に対する心からの訴えであり、美しく単純なもの」



「Give A Little Of Your Love」
©Abiella Aband


ロンドンのシンガーソングライター、ロージー・ロウ(Rosie Lowe)はニューアルバム『Lover, Other』を発表した。この発表に伴い、シンガー・ソングライターのロージー・ロウは新曲「In My Head」を公開した。アルバムのジャケットとトラックリストは以下の通り。


『In My Head』は、人生の変化を感じ、考えすぎず、ただそれに身を委ねることを学ぼうとしている曲です」とロウはプレスリリースで説明している。「この曲は、心の奥底にある場所を深く掘り下げることについて歌っている」


ルイス・ヘミング=ロウは、ビジュアルについてこう付け加えた。「このことを念頭に置いて、ノスタルジアの感覚が伝わってきました。手描きのアニメーションと夢のシークエンスが象徴的につながるような、抽象的でファンタジーな感じを目指しました。懐かしさ、振り返り、前向き、時間と繰り返し、エピソードや記憶の追体験、始まりと終わり、生と死。夢から覚め、その意味を読み解こうとするように、見る人にそれらを理解してもらいたかったのです」

 

Rosie Loweによる『Lover, Other』は8月16日にブルー・フラワーズ/PIASからリリースされる。

 

 「In My Head」

 

 

 

Rosie Lowe  『Lover, Other』


Label: Blue Flowers/PIAS

Release: 2024年8月16日


Tracklist:


1. Sundown

2. Mood To Make Love

3. In My Head

4. Bezerk

5. There Goes The Light

6. Walk In The Park

7. Something

8. Don’t Go

9. In The Morning

10. Out Of You

11. Gratitudes

12. This Before

13. Lay Me

14. Lover, Other

15. Sundown (Reprise)

 


UKのダブステップシーンの先導者、現在は覆面アーティストではなくなっているBurialと”ハイパーダブ”の創始者スティーヴ・グッドマンことKode9が強烈なダッグを組み、スプリット・シングル「Phoneglow」/「Eyes Go Blank」をサプライズリリース。


シングルは、2023年にリリースされたジョイントEP「Infirmary / Unknown Summer」に続く作品。試聴は以下から。

 


 


Charli XCXがニューシングルとビデオ「360」を公開した。このニューシングルは近日発売予定のアルバム『BRAT』の収録曲となっています。最初の試聴曲である「Von dutch」は、パリのシャルル・ド・ゴール空港で撮影された混沌とした見事なビデオとともに今月初めに到着した。


2022年の「CRASH」に続く「BRAT」は6月7日(金)にリリースされる。プレスリリースでは「ハイアートの引用と社会的な論評を中心に構築された爽快なクラブレコード」と説明されている。


「360」

 


イギリスのプロデューサー、DJ,ソングライター、ニア・アーカイヴス(Nia Archieves)がニューシングル「Unfinished Business」をリリースした。


音楽性の代名詞であるドラムンベースの軽快なビートを背景にシンガーはクールなリリックを紡ぐ。アーティストはDJセットのライブで名高い。同時公開のMVではサウスロンドン風のクラシカルな雰囲気とモダンな空気感を融合させている。


「Unfinished Business」は先日発表されたデビューアルバム『Silence Is Loud』の収録曲となる。『Silence Is Loud』は4月12日(金)にHIJINXX/Island Recordsからリリースされます。

 


「Unfinished Business」

 

 

新作アルバムから「Crowded Roomz」、昨年の「Off Wiv Ya Headz」「Bad Gyalz」が先行配信されています。

 

 

 

 


Charli XCXが待望のニューアルバム『BRAT』のファーストシングル「Von dutch 」をリリースした。

 

トルソが監督したこのミュージックビデオは、パリのシャルル・ド・ゴール空港で撮影された。シュワルツコフがオフィシャル・ヘア・パートナーとして参加している。この曲は、2022年の『CRASH』に続く待望の6枚目のスタジオ・アルバム『BRAT』に収録される。


先週、チャーリーはブルックリンで、A.G.クック、ジョージ・ダニエル、EASYFUN、ドスとともに新キャンペーンを発表するボイラールームを開催した。アディソン・レイやジュリア・フォックスらがスペシャル・ゲストとして登場し、ボイラー・ルームのイベント史上最多参加登録者数を更新した。


全15曲入りのニューアルバム『BRAT』は41分23秒で構成されている。今年の夏にリリース予定だ。また、"私はダンス・ミュージックを作るために生まれてきたの......。私はクラブから来たの......。『xcx6』は私がずっと作りたかったアルバム "とも書いている。

 

 「Von dutch」

Pool Side © Ninja Tune


サンゼルスを拠点に活動するプロデューサー、ソングライター、マルチ・インストゥルメンタリスト、ジェフリー・パラダイスのレコーディング・プロジェクト、プールサイドがスタジオ・アルバム『Blame It All On Love』(Ninja Tuneのサブレーベル、Counter Records)のリリースする。このレトロなローファイ・トラックは、プールサイドがミネソタ州のオルタナティヴ/インディー・ドリーム・ポップ・アクト、ヴァンシアと組んで制作された。


「Float Away」は、VansireのJosh Augustinをボーカルに迎えたドリーミーなサウンドスケープ。古典的なポップ・ソングライティングの構成、フック、グルーヴは、プールサイドが最も得意とする古典的な「デイタイム・ディスコ」サウンドに適している。


「僕は15年間、"ルールなんてクソ食らえ "という感じで過ごしてきた。だからこのアルバムにとても興奮しているよ」 プールサイドの4枚目のスタジオ・アルバム『Blame It All On Love』で、パラダイスは浅瀬を離れ、彼自身の創造的な声の深みに入った。その11曲はファンキーでソウルフル、レイドバックしたフックに溢れ、プールサイドのサウンドを痛烈なポップへと昇華させている。


エレクトロニックな筋肉を鍛えるのではなく、彼のライブ・ミュージックのルーツに立ち返ったプロダクションは、シンプルで輝きのあるサウンドのレイヤーに安らぎを見出し、夢が叶うという複雑な現実に直面する。


この曲は、彼がこれまで歩んできた場所と、戦うことも証明することも何もないこの瞬間にたどり着くまでの曲がりくねった旅路の産物であり、以前リリースされた、メイジーをフィーチャーしたシングル "Each Night "やパナマとのシングル "Back To Life "で聴けるような完璧なグルーヴだけがある。


この "Float Away "は、"Each Night "のビデオを手がけ、レミ・ウルフ、ジャクソン・ワン、Surf Curseなどの作品を手がける新鋭アーティスト、ネイサン・キャスティエル(nathancastiel.com)が監督を務めた、ダークでコミカルなエッジを効かせた爽やかでチャーミングなパフォーマンス・ビデオとともにリリースされる。


マリブの丘にあるサイケデリックな家で撮影されたParadiseは、VansireのJosh AugustinとSam Winemiller、PoolsideのギタリストAlton Allen、アーティストのTaylor Olinと共に、Poolsideが率いるカルト集団のメンバーを演じている。ストーリーはゆるやかで、家のさまざまな場所でカルト的なニュアンスをほのめかす小話を見せながら、風変わりで、楽しく、ゆるやかな雰囲気を保っている。


『Float Away』は、プールサイドのヨット・ロックへのラブレター。このジャンルは、長い間とてもクールではなかったが、今では正当な評価を得ている。いつもこのサウンドに足を踏み入れていたが、「Float Away」で完全に飛び込み、このジャンルのあらゆる決まり文句を受け入れることにした。


この曲は、(自分で言うのもなんだけど)信じられないほど巧みなプロダクション、ヴァンサイアの提供による大量のヴォーカル・ハーモニー、スティーヴ・シルツの提供によるアフロ・ハーモナイズド・ギターで構成されている。

 

この曲は、もっとストレートなアコースティック・ソングとして始まったんだけど、ヴァンザイアが彼らのパートを送ってくれた途端にガラッと変わったんだ。彼らはフック・マシーンで、マキシマリストのヨット・ロック・ソングを作ろうとするときにまさに必要なんだ! 

 

彼らが送ってくれたヴォーカル・パートには、彼らの様々なパートを入れるスペースを作るために、曲を完全にアレンジし直さなければならないほど、たくさんの要素が含まれていた。プールサイドの曲の中で一番好きかもしれないね。


ジェフリーが送ってきたオリジナルのデモは "yacht luv "という曲だったので、海のイメージにこだわって、自分の人生の選択を後悔し、ボートに取り残された裕福なバツイチのイメージで書いて歌いました。


ヴァンサイアのジョシュ・オーガスティンは語っている。

 

ヴォーカルは、ニューヨークにスタジオを構える前に、自分のアパートの小さな奥の部屋でレコーディングしたんだけど、なぜか借りたギター・マイクと短いXLRコードしかなくて、歌うときはかなり前傾姿勢にならざるを得なかった。そのような環境から、マリブで撮影した素敵なミュージックビデオになるなんて、ちょっと愉快だ!!



Poolside 『Blame It All On Love』 Ninja Tune / Counter Records

 

 


サンゼルスのジェフリー・パラダイスは、Poolside名義のバンドとしても活動しているが、地元のロサンゼルスでは名の通ったソロ・プロデューサーとして知られている。今年、地元のフェスティバル、”Outside Lands”に出演し、Lil Yachtyの前に出演した。また、アーティストは、同じイベントに出演したコンプトンのメガスター、ケンドリック・ラマーのステージを見たかったというが、出演時間の関係でその念願が叶わなかったという。ジェフリーによるバンド、Poolsideというのは、文字通り、庭のプールサイドでのパーティーやささやかな楽しみのために結成されたジャム・セッションの延長線上にある遊び心満載のライブ・バンド。2010年代初頭からアルバムを発表し、Miami Horrorと同じようにヨット・ロック、ディスコ、ローファイを融合させ、 地元ロサンゼルスのローファイ・シーンに根ざしたインディーロックを制作している。

 

アーティストの音楽のルーツを辿ると、オールドスクールのヒップホップがその根底にあり、De La Soulを始めとするサンプリング/チョップの技術をDJとして吸収しながら音楽観を形成していった。しかし、ジェフリーの音楽のキャリアは意外にも、ギタリストとして始まった。最初はボブ・ディランの曲を聴いて「音楽は音楽以上の意味を持つ」ことを悟る。これが、イビサ島のバレアリックのダンスビートの中に、 Bee Geesの系譜にあるウェスト・コーストサウンドを見出せる理由だ。もちろん、ヨット・ロックのレイド・バックな感覚にも溢れている。Poolsideのサウンドはビーチサイドのトロピカルな感覚に彩られ、ルヴァン・ニールソン率いるUnknown Mortal Orchestraにも近いローファイの影響下にある和らいだロックソングが生み出された。

 

ジェフリー・パラダイスは、近年、カルフォルニアの海沿いの高級住宅街にあるマリブへと転居した。ビーチにほど近い丘。つまり、Poolsideは自然で素朴な環境にあって、ギターを取り上げて、曲を書き始めた。そして、友達と人生を謳歌しながら今作の制作に取り掛かった。従来は、ソングライターとして曲を書いてきたというが、今回だけは、ちょっとだけ趣旨が異なるようだ。たくさんのアイディアが彼の頭脳には溢れ、サンフランシスコ州立大学の寮で出会ったドラマー、ヴィトを中心にライブセッションの性質が色濃く反映された11曲が制作された。このアルバムにはマリブの海岸への慈しみの眼差しを浮かべるアーティストの姿が目に浮かぶようだ。また、ジェフリーはダンストラックではなく明確な歌ものを作り上げようとした。「すべての曲は、愛、ロマンチック、その他の不合理な選択について書かれた」とUCLA Radioに語っている。このアルバムの音楽から立ち上る温かみは、他の何者にも例えがたいものがある。

 

ルバムの冒頭「Ride With You』から、Bee Geesやヨット・ロック、ディスコ・サウンドをクロスオーバーした爽快なトラックで、リスナーをトロピカルな境地へと導く。バレアリックのベタなダンスビートを背後に、バンド及び、Ben Browingのグルーヴィーなロックが繰り広げられる。ヨット・ロックを基調としたサウンドは、確かに時代の最先端を行くものではないかもしれないが、現代のシリアスなロックサウンドの渦中にあって、驚くほど爽やかな気風に彩られている。これらのスタイリッシュな感覚は、ジェフリーがファッションデザイナーを昔目指していたことによるものなのか。それは定かではないが、アルバム全編を通じてタイトなロックサウンドが展開される。レイド・バックに次ぐレイド・バックの応酬。そのサウンドを波乗りのように、スイスイと掻き分けていくと、やはりそこにはレイド・バックが存在する。柔らかいクッションみたいに柔らかいシンセはAORやニューロマンティック以上にチープだが、その安っぽさにやられてしまう。ここにはどのような険しい表情もほころばせてしまう何かがある。

 

続いて、Poolsideは「Float Away」を通じて、ヨット・ロックへの弛まぬ愛の賛歌を捧げる。暫定のタイトルを見ても、Lil Yachtyへのリスペクトが捧げられた一曲なのだろうか。この曲ではJack Jacksonさながらに安らいだフォークとトロピカル・サウンドの融合し、魅惑的なサウンドを生み出す。バンドアンサンブルの軽やかなカッティング・ギターを織り交ぜたAOR/ソフト・ロックサウンドは、この曲にロマンティックでスタイリッシュな感覚を及ぼす。ボーカルトラックには、イタロのバレアリック・サウンドに象徴されるボコーダーのようなエフェクトを加え、レイドバックの感覚を入念に引き出そうとしている。こういった軽やかなディスコサウンドとヨットロックの中間にある音楽性がこのアルバムの序盤のリゾート感覚をリードしている。

 

フレーズのボーカルの逆再生で始まる三曲目の「Back To Life」は、イントロから中盤にかけてミラーボール・ディスコを反映させたアンセミックな曲調に変遷を辿っていく。ソフトなボーカルとバンドセッションは、Bee GeesーMiami Horrowのサウンドの間を変幻自在に行き来する。ビートは波のような畝りの中を揺らめきながら、徹底して心地良さを重視したライブ・サウンドが展開される。ここには、彼らが呼び習わす「Daytime Disco」の真骨頂が現れ、昼のプールサイドのパーティーで流すのに最適なパブリーなサウンドの妙味が生み出されている。ただ、パブリーさやキャッチーさばかりが売りというわけではない。ジェフリーによる内省的な感覚が、これらの外交的なダンスビートの中に漂い、このトラックの骨格を強固なものとしている。 

 

 「Back To Life」

 

 

 

アルバムの序盤は、一貫してパブリーな感覚に浸されているが、大きな音楽性の変更を経ずに、Poolsideは、徐々に音楽に内包される世界観を様変わりさせていく。「Moonlight」はイントロのテクノ/ハウスを足掛かりにした後、 メインストリームのディスコ・ロックへと移行する。 

 

サウンドの中には、Jackson 5、ダイアナ・ロス以降の70年代のカルチャー、及び、その後の80年代の商業主義的なMTVのディスコ・ロックの系譜をなぞらえる感覚もある。デトロイト・テクノを踏襲した原始的な4つ打ちのビートが曲の中核を担うが、シンコペーションを多用したファンク色の強いバンドサウンドがトラックに強烈なフックとグルーブ感をもたらしている。パーラメント/ファンカデリックのファンクロックほどにはアクが強くないが、むしろそれを希釈したかのようなサウンドが昔日への哀愁と懐古感を漂わせている。歌ものとしても楽しめるし、コーラスワークにはアルバムの重要なコンセプトであるロマンチックな感覚が漂う。


Poolsideのディスコ/ヨットロックの音の方向性にバリエーションをもたらしているのが、女性ボーカルのゲスト参加。その一曲目「Where Is The Thunder?」では、ループサウンドを元にしてAOR、果ては現代のディスコ・ポップにも近いトラックに昇華している。スペインのエレクトロ・トリオ、Ora The Moleculeのゲスト参加は、爽やかな雰囲気を与え、曲自体を聞きやすくしている。例えば、Wet Legのデビュー・アルバムの収録曲にようにメインストリームに対するアンチテーゼをこの曲に見出したとしても不思議ではない。トロピカルな音楽性とリゾート的な安らぎが反映され、「レイド・バック・ロック」と称すべきソフト・ロックの進化系が生み出されている。


続いて、逆再生のループをベースにした「Each Night」は、リゾート的な感覚を超越し、天国的な雰囲気を感じさせる。イタロ・ディスコのバレアリック・サウンドを基調としながらも、それをソフト・ロックとしての語法に組み換えて、フレーズの節々に切ない感覚を織り交ぜる。この曲には、ジェフリー・パラダイスのソングライティングの才覚が鮮烈にほとばしる瞬間を見いだせる。サウンドスケープとしての効果もあり、マリブの海岸線がロマンティックに夕景の中に沈みゆく情景を思い浮かべることも、それほど困難なことではない。また、表向きなトラックとしてアウトプットされる形こそ違えど、旋律の運びにはニール・ヤングやBeach Boysのブライアン・ウィルソンのような伝説的なソングライターへの敬意も感じ取ることが出来る。

 

 

 「Each Night」

 

 

 

アルバムの終盤の最初のトラック「We Could Be Falling In Love」では、DJとしてのジェフリー・パラダイスの矜持をうかがい知ることが出来る。トロピカル・サウンドのフレーズとアッパーなディスコサウンドの融合は、カルフォルニアの2020年代の象徴的なサウンドが作り出された証ともなる。80年代のミラーボール・ディスコの軽快なコーラスワークを織り交ぜながら、コーチェラを始めとする大舞台でDJとして鳴らしたコアなループサウンド、及びコラージュ的なサウンドの混在は、ケンドリック・ラマーの最新アルバムのラップとは異なる、レイドバック感満載のクラブミュージックなるスタイルを継承している。そして、この曲に渋さを与えているのが、裏拍を強調したしなやかなドラム、ギター、ベースの三位一体のバンドサウンド。ここにはジェフリー・パラダイスのこよなく愛するカーティス・メイフィールド、ウィリアム・コリンズから受け継いだレトロなファンク、Pファンクの影響を捉えられなくもない。

 

 

アーシー・ソウルの影響を感じさせる「Ventura Highway Blues」 も今作の象徴的なトラックと言えるのでは。1970年代に活躍した同名のバンドにリスペクトを捧げたこの曲は懐古的な気分に浸らせるとともに、現代的なネオソウルの語法を受け継いで、ロンドンのJUNGLEのようなコアなダンス・ソウルとして楽しめる。しかし、そこにはカルフォルニアらしい開けた感覚が満ちていて、「Each Night」と同じように、夕暮れ時の淡いエモーションを漂わせている。アーティストは犬と散歩したり、食事を作ったりするのが何よりも好きだというが、そういったリラックスした感覚に浸されている。さらに、オールドスクール・ヒップホップのチョップ/サンプリングの技法が組み合わされ、ミドルテンポのチルウェイブに近い佳曲が生み出されている。

 

続く、「Hold On You」でもディスコ・ソウルをポップにした軽快なサウンドで前の曲の雰囲気を高めている。ここでも、バレアリックサウンドの軽快なビートを取り入れつつ、ソウルとしての落とし所を探っている。


ゲストとして参加したslenderboiedは、コロンビアのKali Uchisのように南米的な気風を与えている。曲の終盤では、二つの音楽性が化学反応を起こし、アンセミックな瞬間を生み出している。驚くべきは、音楽性に若干の変化が訪れようとも、海岸のリゾート気分やレイドバック感は途切れることはない。終盤に至ってもなお安らいだ心地良い、ふかふかな感覚に満たされている。これらのアルバムのテーマである、ロマンティックな感覚が通奏低音のように響きわたる。

 

AOR/ニューロマンティックの象徴的なグループ、Human Leagueを思わせるチープなシンセ・ポップ・ソング「Sea Of Dreams」は、人生には、辛さやほろ苦さとともに、それらを痛快に笑い飛ばす軽やかさと爽やかさが必要になってくることを教えてくれる。そして、その軽やかさと爽やかさは、人生を生きる上で欠かさざるロマンティックと愛という概念を体現している。アルバムのクロージング・トラック「Lonely Night」は、MUNYAがゲストで参加し、一連のヨットロック、AOR/ソフト・ロック、ディスコ・ソウルの世界から離れ、名残り惜しく別れを告げる。

 

MUNYAの”やくしまるえつこ”を彷彿とさせるボーカルについては、説明を控えておきたい。しかし、なぜか、アルバムの最後の曲に行き着いた時、ある意味では、これらの収録曲に飽食気味に陥りながらも、ウェストコースト・サウンドを反映させたこのアルバムを聴き終えたくない、という感覚に浸される。サマー・バケーションで、海外の見知らぬ土地へ旅した滞在最終日のような感じで、この安らいだ場所から離れたくない。そんな不思議な余韻をもたらすのだ。

 

 

 

85/100 

 

 

 

Weekend Featured Track- 「Lonely Night」

 

©︎Dan Medhurst

Sofia Kourtesis(ソフィア・クルテシス)は、デビューアルバム『Madres』の最終シングル「How Music Makes You Feel Better」を公開した。「どんな嵐の中でも、どんな浮き沈みの中でも、痛みや悲しみの中でも、音楽はいつもあなたを元気にしてくれる最も美しいものです」


Sofia Kourtesis(ソフィア・クルテシス)の『Madres』はニンジャ・チューンから今週金曜日に発売される。


 

©Dan Medhurst


ソフィア・クルテシスは、近日発売予定のアルバム『Madres』からの新曲「Vajkoczy」を公開した。

 

この曲は、有名な神経外科医、ピーター・ヴァイコッツィにちなんで名付けられた。「私のミューズで、私のヒーローであり、世界はもっとヴァイコッツィを持つべきだ」とコートシス。試聴は以下から。


新作アルバム『Madres』はNinja Tuneより10月27日リリース予定。これまでにリリースされた「Si Te Portas Bonito」、そしてタイトル曲が収録されている。


「Vajkoczy」

 

©Alexa Viscius


ウィル・バトラーとシスター・スクエアーズは、9月22日にMergeからリリースされるセルフ・タイトル・アルバムからのニュー・シングルを発表した。



このシングルは、前作「Long Grass」「Arrow of Time」「Willows」に続く作品だ。この曲のリリック・ビデオは以下から。


ウィル・バトラーは今回の声明の中でも謎めいたメッセージを添えている。

 

「これはアルバムに収録されている "夢の歌 "のひとつなんだ。夢の中の感情、現実の中の夢、疲れて混乱している」

 

「この曲は、"夢の中の感情"、"現実の中の夢"を示し、疲れて混乱している様子を表している。果たして、この曲が、"話すのを止めてくれ、言うことは何もない"。"止めてくれ!"という拒絶として機能しているのか、それとも、"言う必要はない、もう分かっているから"という愛のしるしとして機能しているのかどうかは分からない。それでも、この曲はなんらかの恐怖に満ちているんだ」


「Stop Talking」



Hollie Cook   『Happy Hour In Dub』

 

 


 

Label: Merge

Release: 2023/8/11

 

 

Review


現行コズミック/トロピカル・ポップを代表するイギリス・ウェストロンドン出身の歌手、ホリー・クックによる正真正銘のダブ・アルバム。本作は最近、バラエティーに富んだカタログをリリースするMerge Recordsから発売となっている。

 

本作は、ホリー・クックの絶賛された2022年のアルバム『ハッピー・アワー』と対になる天国のようなダブ・ヴァージョンのセット。2012年以来となるホリーのフル・ダブ・アルバム『Happy Hour in Dub』は、オリジナル・アルバムのモダンなラヴァーズ・ロックをよく聴くことによって生まれた。

 

本作はレゲエのサンプリングのサブ・ジャンル、ラヴァーズ・ロックを基調にしたトロピカル・ポップが満載である。ダブのエグミのあるディレイのエフェクトは、パーカッション、リズムトラックに全面的に施されている。ファンクを基調とするホルガー・シューカイというよりは、リントン・クェシ・ジョンソン、マッド・プロフェッサー周辺のダブの先駆的なサウンドに立ち返っている。音楽的な見識、理解度の深さに関しては、もちろん、彼女の血縁関係を見れば明らかだろう。ホリー・クックの父親はセックス・ピストルズのドラマー、ポール・クック、母親はカルチャー・クラブのバッキングボーカリストであったジェニ。もちろん、ホリー・クック自身もポスト・パンク時代にThe Slitsのメンバーとして活躍していることは周知のとおり。 


The Slitsのセルフタイトルのデビュー・アルバムでは、オープニング曲を聞けば分かる通り、いわばパーティー色のあるご機嫌なダブが最大の魅力だった。このアルバムでは、ダブとともに当時隆盛をきわめたスカ風のサウンドも含まれていたと思う。他方、クックのソロ作では、スカの要素はほとんどなく、プロデューサーと協力して、コンフォタブルなダブの精髄を探求している。収録曲全てにダブというサブタイトルが銘打たれている念の入れようには頭が下がる。

 

 

 

アルバムは、「Praing In Dub」を通じてエレクトーンの懐かしい音色で始まる。まったりとしたラヴァーズ・ロック・サウンドはTrojan時代のボブ・マーリー・サウンドへ回帰を果たしたかのようだ。そしてそれは単なるレゲエというにとどまらず、蠱惑的な雰囲気を醸成する場合もある。


裏拍の強いリズムはもとより、エレクトーンの紡ぎ出す甘ったるいメロディーにも注目したい。分けても、ダブ・サウンドとして主要な特徴であるスネア/タムのミックス/マスターの洗練度が生半可ではない。俗に言う「音のヌケ」というのを徹底して試行錯誤した痕跡が残されている。ダブの制作者としては、プロデュースとしう側面に関しては大いに学ぶべき点があるかもしれない。


もちろん、音質やプロデュースの側面から離れ、単なるリスニング体験としても、本作はエンターテインメント性に溢れている。

 

レゲエを基調としたベースライン、ギターのⅱ拍目とⅳ拍目を強調したカッティング、ドラムのインプロバイゼーション、ライブセッションの醍醐味が随所に詰め込まれている。ときには、The Clashの『London Calling』、『Sandanista!』のようなコアなサウンド・アプローチをセンスよく取り入れていることにも注目したい。長らくメインストリームのパンク・バンドは、これらのレゲエの影響下にあるダブ・サウンドを忘れていたかもしれないが、ホリー・クックだけは、これらの音楽を忘れる由もなかった。リアルタイムのミュージシャンとして当然のことだろう。


もちろん、復刻やリヴァイバルばかりがホリー・クックの使命なのではあるまい。ロンドンのポスト・パンク・バンドの音楽性の中核を担う、まったりとしたトロピカル・ポップ/ラヴァーズ・ロックで、このジャンルの印象を改めようとしている。また、ダブに加えて、懐かしのAOR/ソフト・ロック、ニュー・ロマンティックのシンセの宇宙的な雰囲気も漂っている。これらの要素は、アンビエントまではいかないが、ニューエイジっぽい通好みの空気感を作り出している。

 

 

 

アルバムの前半部は、セッションの面白さを追求したミュージシャン好みのインスト曲が多いが、中盤になると、少し音楽的なストーリー性、つまりナラティヴな要素をダブサウンドの中に織り混ぜようとしている。Josh Skints、Jah 9といったコラボレーターが参加したボーカル・トラックでは、リントン・クェシ・ジョンソンの「Inglan Is A Bitch」のごとき渋い印象を生み出す。スネア/タムの波形にディレイ/リヴァーヴを掛け、サンプリングをリズム・トラックとして出力するという基本的な作法により、幻惑的なダビング録音の渦の中にリスナーを呼び入れる。


実際、アルバムを聴いていると、心地よいサウンドにいつまでも浸っていたいという気分になる。また、これらの原初的なダブに、ホリー・クックはR&Bのボーカルのエッセンスを加え、メロウな雰囲気を加味し、モータウン・サウンドに代表されるサザン・ソウルをボーカルにより再現している。このことは、中盤の注目の楽曲「Kush Dub」にて体感していただけると思う。

 

AORやソフト・ロック、ニューエイジの影響もありながら、アルバムの最後に収録されている「Happy Dub」は、ラヴァーズ・ロックを越え、レゲエの原初的なサウンドに回帰し、ジミー・クリフ、ボブ・マーリーに象徴される、ジャマイカ音楽の本質的な良さを継承している。トロピカル、リゾート、ヤシの木、ココナッツの木、エメラルドの海、パラソル、カクテル、ビーチ、雲ひとつない見渡すかぎりの青空を、アルバムの音楽を介してイメージすることは何の造作もない。そういったリラックスした感覚に満ちあふれた夏らしい快作としておすすめします。

 

 

82/100

 


 

©Cecilia Chiaramonte


Mykki Blanco(ミッキー・ブランコ)はEP『Postcards From Italia』を発表しました。2022年の『Stay Close to Music』以来の新曲となるこの6曲入りプロジェクトは、再びFaltyDと共に制作され、新曲「Holidays in the Sun」が収録されている。このEPはTransgressiveから9月22日にリリース予定。

 

「"Holidays in the Sun”は、クリスマス・イブにポルトガルの地下室で制作された。サマセットのウィリアム・イーブスがプロデュースし、マイッキ・ブランコが作曲、アーティストのZamZamがボーカルを担当したこの曲は、海で泳いだり、音楽フェスティバルをはしごしたり、人生を楽しみ、太陽を浴びながらドルチェ・ヴィータな日々を過ごすという、心地よい夏のアンセムだ。

 

この曲は、90年代のユーロ・ダンスやアシッド・ハウスを彷彿とさせるサマー・レイヴ・バップであり、イビサやナポリのビーチからロンドンやベルリンのウェアハウス・パーティーまで、世界中のあらゆる場所でヒットしている。ENJOY!」


 

©︎Chad Maclean

ニア・アーカイブスがニューシングル「Bad Gyalz」をリリースした。


この曲は、8月6日(日)に60 Dock Roadで開催される、DJ Flight、PXSSY PALACE、Sim0ne、Izzy BossyなどのDJセットをフィーチャーしたリリース・パーティー「Bad Gyalz Day Party」の詳細とともに到着した。


この曲についてニアは、「クリップスとスタジオに向かう途中、私の大好きなMCの一人であるランキング・アンの曲を聴いていたの。私のショーに行くと、85%が18歳から25歳の女性で、とても素晴らしいわ!彼女たちはみんな悪役で、絶対的なジャングリストなんだ。だから、それを象徴するような曲を作りたかったんだ。そうしてBad Gyalzが生まれたんだ!」



 Jessy Lanza 『Love Hallucination』


 

Label: Hyperdub

Release: 2023/7/28 



Review


良質なダンス/エレクトロのリリースを続けるイギリスの気鋭のレーベル、ハイパーダブから発売となったカナダのソングライター、ジェシー・ランザの通算5作目のアルバム。とは言っても、プレスリリースにも記されているようにアーティストは既にロサンゼルスへと転居している。

 

この空間的な移動がどのような心理的な影響をジェシー・ランザに与えたのかわからない。 それでも、明らかにアルバムアートワークにも見えるように、オープンハートなハウスミュージックが展開されている。そして、Avalon Emersonのように、DJとしての姿とソングライターの姿が合体し、それらが乗りの良いチルアウトの良曲として昇華されている。例えば、西海岸の海辺で夕日を遠目にパラソルの下に寝っ転がりながらオーディオを通して聴いたらこれほど心地よい音楽は他に存在しないはずだ。

 

アルバムの収録曲を通してジェシー・ランザのボーカルは甘く、そしてメロウで、キュートというより、カワイイの系譜に属している。それがトロイモア風のチルアウト /チルウェイブへと痛快に昇華されているとあれば、この辺りのジャンルに詳しいリスナーとしては見過ごすことが出来なくなる。それほど作品にストーリー性があるわけでもないし、強い概念性があるわけでもないのに、この抜け感というのは、セレブ系のシンガーにも比するものがあるのではないだろうか。明らかにロサンゼルスへと拠点を移したこと、つまり環境の変化がこのアルバムには色濃く反映されているように思えてならない。ロサンゼルスの透き通るように青い空なのか、もしくは土地的に開けた気風なのか、それとも、文化的にオープンハートだからなのか。これは日本人メジャーリーガーに聞かなければわからないことだろう。いずれにしても、ここには、虚心坦懐にソングライティングを行おうというジェシー・ランザの姿勢が伺えなくもない。


曲はそのほとんどがアーティストが考えるカワイイのイメージを余すところなく織り込もうとしている。アルバムの立ち上がりはゆっくりでまったりとしているが、「Don't Cry On My Pillow」では、少しシリアスな領域へと踏み入れていき、個人的な恋愛における仄かな切なさを漂わせようとしている。ダンスミュージックを下地にして甘口のインディーポップと結びついているこの曲は、本作の中で注目すべきトラックの一つとなるかもしれない。ここにはアーティストの繊細な一面が表れ、それがメロディーラインやボーカルにしっかりと反映されている。 

 

アルバムの序盤では、こういった聞きやすさのあるダンス・ミュージックが占めているが、一方、その後の「Big Pink Rose」ではライブを意識したアッパーなエレクトロを織り交ぜている。そしてこれが、まったりとしたアルバム全体で明るい印象をもたらす。華やかとも言って良い。しかし、曲作りに関して非常に作り込まれていて、ドリルンベース風のマテリアルやダブステップ風の変拍子を織り交ぜ、ソングライティングの巧緻さを伺わせる内容となっている。

 

さらにアルバムの後半に差し掛かると、よりエレクトロ/ダンスミュージックとしてマニアックな一面が表れ、音の出力のタイミングに工夫を凝らすことで、上手く聞き手の注意を惹きつけることに成功している。もちろん、その中には序盤から一貫して曲そのものの軽快さに商店が絞られており、これはアルバムの終盤まで変わらない。アルバムの構想が一本の線でスッと通っているような感じは、実際、リスナーにほどより安らぎと開放的な気持ちを与えるだろうと思われる。また自愛的な歌詞もある一方で、「I Hate Myself」という一曲もあり、自愛と自虐という両極端にも思える性質が混在している。そして、この曲ではヒップホップに近いアプローチを取り、それらをユニークなジョークにより、適度に聞きやすい曲として仕上げられている。

 

その後も、軽やかさをテーマとするカワイイの概念はつづく「Gossamar」にも見られる。この曲が単なる軽薄なポピュリズムに根ざした楽曲ではないことは、勘の鋭いリスナーであればお気づきになられるだろう。曲に漂うソウルやファンクの要素は、この曲に深みを与え、また淡い情感を付け加えている。クライマックスに至っても、「Marathon」ではダンスミュージックの性質をより強めている。クローズを飾る「Double Time」もテンションや姿勢は変わることがない。

 

これらのクラブ・シーンに根ざしたアーティストの愛着が凝縮されたダンスミュージック/インディーポップは、表面上は軽やかさが重視されている。だが、その中には強い個性があり、そして聞き手の感性を惹きつける何かも込められている。暑い夏を爽やかに、そして涼やかにする良盤。

 

 

83/100




The Chemical Brothers(ケミカル・ブラザーズ)が10枚目のスタジオ・アルバムの詳細を発表した。アルバムのタイトルは『For That Beautiful Feeling(フォー・ザット・ビューティフル・フィーリング)』で、9月8日にリパブリックからリリースされる。


自身のスタジオでレコーディングされた『フォー・ザット・ビューティフル・フィーリング』は、ケミカル・ブラザーズが "音に圧倒され、引きずり込まれそうになりながらも、最終的にはその波に乗せられ、未知の目的地へと向かうワイルドな瞬間 "をボトリングした作品だ。


このアルバムには、Beck(ベック)とフランスのサイケ・ポップ・シンガー、Halo Mauが参加しており、ハロ・モードは最近のシングル "Live Again "で歌っている。この曲は、ケミカル・ブラザーズのビデオで長年コラボレートしてきたDom & Nicが監督した、アルバム発表を記念した新しいビデオが公開されている。

 

「Live Again」
 

 


The Chemical Brothers 『For That Beautiful Feeling』


 
Label: Republic
Release: 2023/9/8
 

Tracklist:


1.Intro
2.Live Again (feat. Halo Maud)
3.No Reason
4.Goodbye
5.Fountains
6.Magic Wand
7.The Weight
8.Skipping Like a Stone (feat. Beck)
9.The Darkness That You Fear (Harvest Mix)
10.Feels Like I’m Dreaming
11.For That Beautiful Feeling (feat. Halo Maud)

Saint Sinner  『hydration」 

 

 

Label:Grace Tron

Release: 2023/7/14


Review


Saint Sinnerは、テキサス/オースティンのDJ/プロデューサー/ボーカリストで、既にTychoの作品に親しんでいるファンにはとってはお馴染みのシンガーだろう。そのスタイリッシュな佇まいを裏切らないセンス抜群のボーカルで着実にファンベースを広げてきた。セイント・シナーは、「Pink & Blue」、「Japan」でゲスト・ボーカルで参加し、見事なボーカルを披露している。個人的にイチオシのボーカリストだ。このシンガーの最大の魅力は、エレクトロニックと劇的にマッチする力強いボーカル、そして、電子音楽に対して情感を失わない繊細性を見せる瞬間に宿る。ベースラインの強いエレクトロと融合したとき、セイント・シナーのヴォイスはトラック全体にポップネスをもたらす。インスト曲として寂しい感じがある場合に素晴らしい貢献を果たすボーカリストなのだ。いくつかの声色とトーンを自在に使い分け、様々な音楽に対応して見せる器用さはもちろん、歌声の迫力はバルセロナのキャロライン・ポラチェクにも引けを取らない。 

 

既に、グラミー賞にノミネート経験のあるセイント・シナーは、2021年にソロ・デビュー作「Silver Tears」を発表している。 このデビュー・アルバムではギターやピアノを通じてポピュラー音楽のメインストリームにある音楽を探求していた。その中で、ティコのフィーチャー曲でもお馴染みの内省的でメロウなヴォーカリストとしての評価を不動のものにした。ギターの録音を駆使し、それをベッドルームポップのような感じの軽やかなポップソングとして昇華していたのがこのデビュー作だった。プロダクションの中にはギタリストとしての音作りもこだわりが感じられ、リバーブ/ディレイを深く施したギターラインは、アンビエントギターに近い印象性をもたらした。そして、その実験的な要素に加え、シナーのボーカルは徹底してアートポップの領域に属し、Tiktokなどで話題を呼ぶギターロックシンガーとの一定の線引きを図っていた。親しみやすいが、そこに深い内省的な情感がこのデビュー作には漂っていたのだ。 

 

2ndアルバムは、はっきり言えば、デビュー作とは似ても似つかない新たな音楽性へ方向転換を図り、想像もできない劇的な変化が表れ、ベッドルームポップアーティストとしてトレンドに準じたファーストアルバムから、ベースラインの強いディープハウスの最もコアな領域へと華麗な転身を果たした。ハウスはそもそも、古典的なジャンルとしては4つうちのジャンルではあるが、その後に台頭したディープ・ハウスやUKのガラージ/ベースラインのジャンルはその簡素なリズムにより複雑性をもたらすために発生した。結局、同じスタイルの音楽をフロアで続けていると、どこかで飽きが来るのは当然のことであって、基本的なリズムのバリエーションを作ろうとする。リズムの変容の試行錯誤の過程で行き着くのは、その後のドラムンベース、はてはドリルンベースの極北にあるリズムの徹底的な刻み、つまり、ビートの細分化と複雑化である。これがクラスターのようになるか、もしくは正反対のベクトルに行くとアンビエントになる。


セイント・シナーは考えようによっては、ティコとのコラボレーションを介してリアルなエレクトロの洗礼を受けたとも捉えられる。それは言い換えれば、ダンスミュージックに本当の意味で目を開かれたとも言えよう。その経験がこの2ndでは存分に生かされ、ガラージをはじめとする複雑なリズムが既にオープニングを飾る「surf on me」の中に見えている。それはダブステップほど流動的ではないが、深いベースラインが幻惑を誘い、その抽象的なムードの合間を縫うようにして、アンニュイで聞きようによっては物憂げなシナーのボーカルが音響性を拡張していく。ジャリジャリとしたパーカションとディープなベースラインはアーティストがDJとして鋭いセンスを持ち合わせていることの証だ。そこに憂いに満ちているが、セクシャルなシナーのボーカルが重なると、アシッド・ハウスのディープな要素が加わる、つまり、リスニング空間をベースメントの真夜中のフロアに変容させるほどの魔力をそのボーカルは兼ね備えている。 

 

ティコとのコラボの経験は続く「gold brick」でもわかりやすく生かされている。清涼感のあるエレクトロのトラックの上を軽やかに舞うセイント・シナーのボーカルは、「Pink & Blue」、「Japan」を聴いてファンになったリスナーの期待に答えるにとどまらず、それ以上のものを示している。コラボの域を越え、ソロアーティストとしての自立性が音楽的な魅力となって耳に迫ってくる。アートポップを意識したトラックメイクの上に流れる親しみやすいメロディーラインはこのアーティストの近年のリリースで最もオープンハートな瞬間が垣間見える。普及力のあるインフルエンサーとしてのポップ・アーティストの潜在性が遺憾なく発揮された瞬間となった。

 

二曲目で暗示的に提示されたアートポップの要素は次曲「diamonds」でより深い領域に差し掛かる。カラフルな音色をトラック全体に散りばめ、マレットシンセを基調としたリズムを駆使し、そこに複数のポイントを設けるように、セイントシナーのボーカルが加わる。そしてマレットシンセの音色とボーカルが掛け合わされると、どことなくエキゾジックな感じが立ち現れる。インドなのか、それともパキスタン地方なのか、いずれにせよ、アジアンテイストあふれる奇妙なエレクトロニックは奇妙な新鮮さと清涼感すら漂わせている。また、一曲の流れの中でその音楽の持つ印象はゆっくりと変化していき、最後までリスナーの興味を惹きつけ続ける。これはDJ/プロデューサーとしてのアーティストの才覚が最も目に見える形で現れたトラックでもある。 

 

続く、「drive by」は、例えば、わかりやすく言えば、ビヨンセが最新作でみせたようなハウスの要素をポップネスとして昇華している。ボーカル・トラックの波形にエフェクトを薄く掛けており、裏拍の強い音楽性を見るかぎり、オーバーグラウンドの現行のハウス音楽を基調としているが、ヴォイスの中に情感が失われていないのが最も素晴らしい点に挙げられる。厳密に言えば、ジャンルこそ異なるが、ビブラートの微細な変化やピッチの変容の中に微妙なソウルフルな要素が取り入れられている。機械的なものを駆使した上で人間的な情感を失わないことはその逆のアプローチを取るより遥かに難しいが、その機械的なものと人間的なものの両面性をもたらそうというセイント・シナーの音作りは洗練されていて、2つの対極にある音楽性の間に絶妙にせめぎ合うようにして、個性味溢れるポップ音楽として昇華されている。特にバックビートが入念に作り込まれているため、楽曲そのものに強度と聞き応えもたらしている。

 

その後、メインストリームのディープ・ハウスに準じた「Careface」が続くが、この音楽の中には、Andy Stottや Laurel Haloのようなダブステップで使われるようなシンセの音色の影響があり、それがトラック全体にエキゾチシズムをもたらしている。上層の部分では、トレンドのハウスが流れているにも関わらず、その最下層ではベースメントのコアなクラブ音楽が流れているのに驚きを覚える。この奇妙な二面性が、楽曲を聴いたときに、一番面白いと感じる部分かもしれない。表面的には、チャーリー・XCXのような現行のモダンポップに近いニュアンスを感じるが、しぶといベースラインはヘヴィーな感覚をもたらし、消費的な音楽を聴いているという気分を沸き起こらせない。おそらく、トラックの細部にはエレクトロに対するセイント・シナーのマニアックな興味が取り入れられることで、タフな感じをもたらしている。ただ、それはアーティストのボーカルの主要な特徴のひとつであるスタイリッシュな感覚に裏打ちされている。

 

このアルバムは、クラブミュージックや、モダンポップを意識してはいるが、それほど多幸感を感じさせないのは不思議だ。

 

続く「switch」では、さらに落ち着いたモダンなアートポップが提示されている。ピアノの音色を交え、それらを前の曲と同様にスタイリッシュな音楽性へと昇華されているが、これは例えば、アイスランドのSSWであるJFDRが志向するようなモダンクラシカルとアートポップの中間点にあるような音楽として楽しむことが出来る。そこには何かふと考えさせられるものもある。それは思弁的な瞬間が歌詞の中に表れ、実際の録音ではその思弁性から離れたところでボーカルが披露されていることから生じるものである。相変わらず、セイント・シナーのボーカルは軽やかで爽やかだが、ときにその中に意外な哀感や孤独性を見せる場合もある。この明るい部分と暗い部分の奇妙な抑揚の揺れ動きのようなものがたえず感情性を表するヴォイスとして曲のメロディーの中をさまよう。それは受け手側の感覚と瞬間的に折り重なった時、それまでまったく遠い場所にいると思われた歌手の存在がすごく身近にあると感じさせるときがある。また、それは受け手側との感覚の中にセンチメンタリズムとして浸透してくることもある。いわば、これまでにない共感性を重視したバラードに近い雰囲気のあるナンバーとなっている。


憂いのある曲の後には同じようにしっとりとしたハウスを基調にしたポップが続く。アルバムの曲の中で、セイント・シナーは最も淡々としたボーカルを披露している。ここではティコの「Skate」というナンバーで披露した妙に切ない感覚を再び四年の月日を経て呼び覚まそうとしている。ただそれは、それほど「Skate」のような音程の跳躍はなく、かなりまったりとした感じで中音域を彷徨う。「sky」と銘打たれてはいるものの、それを単なる苦悩と断定づけることは出来ないが、少なくともそのボーカルの感情性の中には何か悩ましげな感覚に充ちている。また、それほど考えこまずとも、ダンサンブルなポップとして楽しむための余地も残されている。

 

一転して、コアなハウスから少し遠ざかり、テクノやシンセ・ポップの要素をまぶした「for Lily」もまた聴き応え十分だ。特にDJ/プロデューサーとしての手腕が光る一曲で、リズムトラックにフィルターを掛け、遠近感のあるアートポップを追求している。それほど抑揚があるわけではないけれど、手前の音楽ではなく、背後の音楽の抑揚によって、曲全体に絶妙なダイナミクスを設けている。リズムトラックのダイナミクスの変化は、シンプルで中音域を中心に流れる心地よいシナーのボーカルに一定の迫力をもたらしている。途中まではかなり難解な構成ではあるのだが、曲の後半ではキャッチーさに焦点が絞られ、アンセミックとまではいかないものの、つかみやすいメロディーとボーカルは、この曲そのものにわかりやすい側面をもたらしている。 

 

アルバムの収録曲の中で最も劇的なのがエンディング曲「3:38am」であり、おそらく前曲のテーマの続きのような役割を担っているのではないか。少なくとも、アーティストからの解き明かされることのない問いが提示された瞬間とも取れる。これはミステリアスな感覚、いわば音楽そのものを奇怪なベールにより覆うような感覚。曲の途中ではミステリアスな曲調から、セイント・シナーらしい清涼感のあるポップ・アンセムへと変遷を辿る。曲の最後では、最もラウドなベースラインを強調した瞬間が出現する。それまで徹底してそのラウド性をコントロールしてきたからこそ、奇妙な印象をリスニング後の余韻として残しもするのである。

 

このアルバムのミステリアスな要素が単なる憶測なのかどうかまでは定かならぬこと。しかし、その真偽がどうであれ、このアルバムのクローズは、エグみのあるクラブミュージックの最深部へと迫っている。これらの独創的なクラブ・ミュージックとアート・ポップの融合は、現行のポピュラー音楽に準じているが、同時にそれに倣っているわけでもない。いうなれば、独立したソロアーティストの音楽として現代アートの造形のような存在感を持って屹立している。

 

 

90/100