SFのようなコミカルな世界観、AKIRA風のアニメーションのアルバムジャケットとMV、エレクトロニックの周りを縦横無尽に駆け巡る次世代のシンセ・ポップ。今年、マタドールと契約を結んでニューアルバムを発表したネイト・エイモスとレイチェル・ブラウンによるWater From Your Eyesには様々な呼称が与えられて然るべきだろう。とにかく彼らが志すのは、次世代のシンセ・ポップで、近未来のエレクトロニックである。しかし、その中にはB級映画のようなニッチな二人の興味や好奇心が取り巻き、それらがなんとも良い味を出しまくっているのである。
その後、アルバムはよりポストパンク性の強い展開へと結びつき、「Out There」では同じようにレトロな音色のリードシンセとディスコポップを融合させ、聴きやすく親しみやすい音楽で初見のリスナーを魅惑する。金属的なパーカッションはシンセで構成されるが、ここにデュオの『No New York』に近い旧来のニューヨークのナンセンスなポスト・パンクへのコアな偏愛も読み解くことが出来る。さらにこの曲で手の内をさり気なくみせておいた上で、ノイズパンクの要素は「Open」でより顕著になる。ここではUKのニューウェイブに対するNYのノーウェイブの残映を旧来のリスナーは捉えることに成功することだろう。しかし、それは実験的ではあるが、その音楽は飽くまでポピュラーミュージックの範疇に留められていることが肝といえるのだ。
アルバムの終盤になると、中盤までのポスト・パンクデュオとしての性質はいくらか薄れ、「14」には現代音楽に近いアプローチが取り入れられている。ストリングスとシンセサイザーのオシレータートーンが織りなす奇妙なエモーションは、レイチェル・ブラウンの同じような繊細かつふてぶてしさのあるボーカルにより、ダイナミクスは最大限に高められていく。このトラックはアルバムの中でもデュオがアヴァン・ポップに最接近した瞬間となろう。しかし、そのドラマティックな展開も束の間、最後の「Buy My Product」ではふてぶてしいポスト・パンクへと立ち返るのが素晴らしい。センスのみならず実力も兼ね備えたブルックリンのデュオの最新作に注目すべし。
イギリスのポストパンクバンド、OSEESは、In the Redから8月18日にリリースされる予定の新作『Intercepted Message』を発表しました。バンドの『Live At Levitation』(2012年)のリリースに合わせた本日の発表には、アルバムのタイトル・トラックが収録されています。以下、そのビデオをチェックしてみてください。
「この感情を克服するために使うネガティブな手段を示すことで、毒性という自己実現的な予言から逃れるために人が取るかもしれない旅を探求することができます。このビジュアルは、Julia DucournauやGaspar Noeといった新フランスの過激派監督の作品に大きな影響を受けています。特にNoeの『Enter the Void』は、主人公が早すぎる死の後に自分の記憶を辿るサイケデリックな旅に突入していきます」
ニューヨークのポスト・パンクバンド、Interpolは、最新アルバム「The Other Side Of Make-Believe」の収録曲を、Daniel Avery、Makaya McCraven、Jeff Parker、Jesu、Water From Your Eyesといった魅力的なアーティストがリワークを手掛けたプロジェクト「Interpolations」を発表しました。現時点では発売日は未定ですが、今後数ヶ月でリリースされます。
また、バンドは、オリジナル・アルバムのレコーディング中にアティバ・ジェファーソンが撮影した新しいドキュメンタリービデオを公開しました。タイトルは「Interpol - Making 'The Other Side of Make-Believe'」で、この曲のオリジナルは昨年、同レーベルから発売された最新作『The Other Side Of Make Believe』に収録されています。
5人の才能あるアーティストに最新アルバム『The Other Side of Make-Believe』の楽曲を再構築してもらうというコラボレーションシリーズ、"Interpolations "プロジェクトを発表することを誇りに思います。その結果は、本当にインスピレーションに満ちたものでした。
Makaya McCravenが「Big Shot City」に適用したラテンドラムとベースのリズムから、Water From Your Eyesが「Something Changed」に作成した難解で推進力のあるサウンドスケープに至るまで、「Interpolations」は、我々の曲を再構築し、我々が賞賛する才能あるアーティストたちのビジョンと結合させる異国の旅なのです。
「What More Do You Want」では、"あなたは、さらに何を望むのか?"というフレーズを四度連呼し、聞き手を震え上がらせた後、ノイズ・インダストリアルとフリージャズの融合を通じて空前絶後のアバンギャルドな領域に踏み入れる。これらのノイズは、魔術的な音響を曲の中盤から終盤にかけて生み出すことに成功し、ジャーマン・プログレッシヴの最深部のソロアーティスト、Klaus Schulze(クラウス・シュルツェ)のようなアーティスティックな世界へと突入していきます。
ドラムのビートとDJセットのカオティックな融合は、主にビートやリズムを破壊するための役割を果たし、キングズレイのボーカル/スポークンワードの威力を高めさえします。このあたりで、リスナーの五感の深くにそれらの言葉がマインドセットのように刷り込まれ、全身が総毛立つような奇異な感覚が満ちはじめる。そう、リスナーは、この時、これまで一度も聴いた事がないアヴァンギャルド・ミュージックの極北を、「What More Do You Want」に見出すことになるのです。
その表現は「Where were you be?」という形で、この曲の中で印象的に幾度も繰り返され、それはまた、日頃、私たちがその真偽すら疑わない政治的なプロパガンダのように連続する。次いで、これらの言葉は、マイクロフォンを通じ録音という形で放たれた途端、聞き手側の心に刻みこまれ、その問いに対して無関心を装うことが出来なくなってしまう。そして自分のなかに、その問いに対する答えが見つからないことに絶句してしまう。 これはとても恐ろしいことなのです。
バンドは、昨年10月、4ADから発売されたセカンドアルバム『Stumpworks』の収録曲「Gary Ashby」、「Hot Penny Day」、「
No Decent Shoes For Rain」
「Anna Calls From The Arctic」を取り上げ、クールなパフォーマンスを行っています。
以前、バンドは米国のトーク番組”The Tonight Show Starring Jimmy Fallon”にも出演しているほか、3月上旬には最新EP『Swampy』を同レーベルから発売しています。 またボーカルのフローレンス・ショーは、Sleaford Modsの最新作『UK GRIM』の収録曲「Force 10 From Navarone」にもコラボレーターとして参加しています。
1. Penge 2. End Of The World 3. Car Chase 4. Being Stupid Again 5. Walls 6. Pretty Awful 7. Strange 8. Down On The Clown 9. Dirty Murky Delight 10. The Do That 11. L F C F 12. North West Passage 13. Hawaii
スリーフォード・モッズは、2009年までに三作のフルアルバムとEPをリリースした。まだこの時代にはスポークンワードとグライムの融合という現在の持ち味が出ていなかった。この状況を変えたのが、相方であるアンドリュー・ファーンだった。彼はUKのアンダーグランドシーンでDJをしており、2010年10月に、2人は出会ったのである。このとき、両者は、「All That Glue」という曲を書いて、翌年に共にデュオとして活動するようになった。スリーフォード・モッズがプロミュージシャンとして独り立ちしたのは、2014年のことであり、グラスゴーでスカオリジナルバンド、ザ・スペシャルズのサポートを務めたとき。その後、英国に対する風刺を効かせたスポークンワード、UKのダンスフロア出身者らしいコアなグライムを制作するアンドリュー・ファーンのクールなトラックメイクが彼らの代名詞となった。彼らがザ・スペシャルズのサポートを務めた後、ミュージシャンとして独立したのは偶然ではあるまい。先日亡くなったテリー・ホールがそうであったように、デュオは労働者階級のヒーローともいうべき存在なのである。
その他、2ndシングルとして公開された「Force 10 from Navarone」では、2022年、4ADから『Stumpwork』を発売したイギリスのポスト・パンクバンド、Dry Cleaningのボーカリスト、フローレンス・ショーとコラボレーションを実現させている。これは表向きには、異色のコラボとも思えるかもしれないが、他方、両者とも知的なスポークンワードの要素を兼ね備えるという点では理にかなった共演と言える。情熱的なウィリアムソンのボーカルとショーのクールなボーカルという両極端の掛け合いは、スリーフォード・モッズの音楽に新鮮味をもたらしている。
時代を経て、ベーシストのギーナ・バーチはソロ転向し、サード・マン・レコーズからデビュー・アルバム『I Plat My Bas Loud」をリリースしている。既にそれ以前の時代に有名なバンドのメンバーがソロ転向して何かそれまでと異なる新しい音楽性を生み出すことは非常に稀有なことである。それは以前の成功体験のようなものがむしろ足かせとなり、新しいことにチャレンジできなくなる場合が多いからです。もちろんすべてがこのケースに当てはまるとは言えません。ザ・スマイルのトム・ヨークは少なくとも、レディオヘッドとは違い、ポスト・パンクやダブ、エレクトロの要素を上手く取り入れており、そして、ギーナ・バーチも同様にこのソロ・デビュー作で見違えるような転身をみせています。いや、それは前時代の延長線上にあるが、少なくともレインコーツの時代を知るリスナーに意外性を与えるような新鮮味に富んでいる。そしてかのアーティストが傑出したベーシストであることを対外的に示し、さらにレインコーツの時代見えづらかった副次的なテーマのようなものが随所に感じ取れる作品となっているのです。
このデビュー・アルバムには面白い曲が満載です。没時代的なロックバンガー「Wish I Was You」は、キム・ディール擁するBreedersにも比する快活なオルタナティヴサウンドとなっている。ポストパンクの実験性を交え、ガールズバンドの出身者らしくロックンロールの見過ごされてきたユニークな魅力を再提示する。まさにこの曲はステージでのライブを意識しており、近年のポストパンクバンドにも引けを取らない迫力満点のロックサウンドを生み出してみせたのです。
「I Am Rage」、「I Will Never Wear Stilettos」、「Dance Like A Devil」などなど、その他、レインコーツの時代のジャンルレスの要素を継承するかのように、アートポップ、ノイズポップ、アヴァンギャルドポップを始めとする、最近のジョックストラップのような前衛性を感じさせる特異な音楽が続く。
Algeirs(アルジェ)は2020年のサード・アルバム『There Is No Year』を「衝撃的で予測不可能」(The Observer)、「緻密で思慮深く、パワフル」(NME)と評され、近年最も刺激的なカタログを作り上げた。カルト的人気を誇るバンドは同じ志を持つアーティストたちを集めて4thアルバム『SHOOK』を制作した。
アルジェは常に冷徹であるが、『SHOOK』は、同時に喜びに満ちた作品である。このアルバムは、フィッシャーとマハンが数ヶ月間、故郷のアトランタに戻り、ツアー・ミュージシャンとしてのプレッシャーと燃え尽き症候群から立ち直った時期に生みだされた。Rhythm RouletteやAgainst the Clockのエピソードに何時間も浸り、YouTubeのオルタナティブ・ラップにはまり込み、友人として再会したことが、ビートメイキングの激しい期間の引き金となった。
DJ Grand Wizard Theodoreの1970年代のパンクを取り入れたニューヨーク・ラップの傑作「Subway Theme」の再訪は、アーバンとカウンターカルチャーのスタイルを絶妙に掛け合わせた精神的ムードボードとして機能する。DJ Premier、DJ Screw、Dead BoysからLukah、Griselda、Dïatまで、ラップとパンクの革新者たちの系譜に多大なる敬意を表し、SP-404とSequential Circuits Tempestでビートを刻み、ゼロからサンプルライブラリを構築していったのだ。
ライナーノーツには、Zack de la Rocha、Big Rube (The Dungeon Family)、billy woods、Samuel T. Herring (Future Islands)、J.S.A.S.A.、Michael H. (Michael)など、革新的で現代のアンダーグラウンドミュージックの著名人たちが名を連ねている。さらに、レコーディングには、Herring (Future Islands), Jae Matthews (Boy Harsher), LaToya Kent (Mourning [A] BLKstar), Backxwash, Nadah El Shazly, DeForrest Brown Jr. (Speaker Music), Patrick Shiroishi, Lee Bains III, Mark Cisneros (Hammered Hulls, The Make-Up, Kid Congo Powers)など、現代のアンダーグラウンドミュージック界の有名人が多数参加している。