Tom Waits

 

米国のシンガーソングライター、コンセプト・アルバム『アリス』と『ブラッド・マネー』のリリースから20周年記念として、トム・ウェイツが各アルバムをバイナルで再発売することが明らかとなった。さらに10月7日の再リリースに先立ち、アルバムからの未発表曲のライブカットが公開されている。まずトム・ウェイツは「All the World Is Green」と 「Fish and Bird」のライブ・バージョンを提供した。


2002年に正式にリリースされたが、ウェイツは10年前にロバート・ウィルソンの同名の劇の一部として、妻のキャスリーン・ブレナンとともに『アリス』の制作を開始した。このアルバムは、バスサックス、ビブラフォン、ポンプオルガン、フレンチホルン、ベース、バイオリン、チェロの異色のチェンバーに乗せ、「不思議の国のアリス」の引用に満ちている。「70年代、私の曲の多くはストリングスに惑溺していた。もうバイオリンの音は聞きたくなかった」とウェイツは振り返る。「だから、自分の楽器に同じ気持ちを持つ弦楽器奏者を見つけ、奇妙で骨格のある室内オーケストラを結成し、弦楽器が好きな古典的なフレーズをすべて避けようとしていた」


2002年のフルアルバム『Blood Money』は、1837年の社会政治劇『Woyzeck』を題材にしており、最終的にはウィルソンが2000年に手がけた同作品のサウンドトラックとなった。「ブラッド・マネーは、肉と骨と地続きだ」とウェイツは言う。「曲は、現実に根ざしている:嫉妬、怒り、人間の肉欲...、彼らはより肉欲的である。キャサリンと私は、この素材によく合っている。彼女は陽気で、冒涜的で、不吉なところがある。つまり、私は、恐ろしいことを伝える美しい歌が好きなんだ」


『Alice』のリイシュー盤は半透明の青盤、Blood Moneyは半透明の赤盤で、それぞれ10月7日に再発される。ミラノで演奏された「All the World is Green」とロンドンで演奏された「Fish and Bird」のライブバージョンを下記でお楽しみください。 

 

 「All the World is Green」

 

 

 

 「Fish and Bird」

 

 

 

Olivia Newton=John ©︎Michelle John


 オリビア・ニュートン=ジョンが73歳で死去した。彼女の夫であるジョン・イースタリングは、歌手のソーシャルメディアへの投稿でこのニュースを報告した。

 

「デイム・オリビア・ニュートン・ジョンが、今朝、南カリフォルニアの自身の牧場で家族や友人に囲まれて安らかに息を引き取りました」と彼は書いています。「この非常に困難な時期に、ぜひみなさまにはご家族のプライバシーを尊重していただくよう心からお願いいたします」


ジョン・イースタリングの声明は次のように続いています。


オリビアは30年以上にわたって、乳がんとの闘いを通して、勝利と希望のシンボルとなってきました。彼女の癒しのインスピレーションと植物療法の先駆的な経験は、植物療法と癌の研究を目的としたオリビア・ニュートン=ジョン財団の基金によってこの活動は続けられています。ぜひ、仏花に代えて、オリビア・ニュートン・ジョン財団基金(ONJFoundationFund.org)に彼女を偲んで寄付をお願いいたします。


 オリビア・ニュートン=ジョンには、夫のジョン・イースターリング、娘のクロエ・ラッタンジ、姉のサラ・ニュートン・ジョン、弟のトビー・ニュートン=ジョン、姪と甥のトッティ、フィオナ、ブレット・ゴールドスミス、エマーソン、チャーリー、ザック、ジェレミー、ランドール、ピアス・ニュートン=ジョン、ジュード・ニュートンスタック、レイラ・リー、キラとターシャ・エデルスタイン、さらにブリンとヴァレリー・ホールなどが遺族として名を連ねています。


 イギリスのケンブリッジで生まれたニュートン・ジョンは、父親がドイツ語の教授とオーモンド・カレッジの校長として働いていたオーストラリアのメルボルンで育ちました。10代のころは、学校の友人3人と女性だけのボーカルグループ「ソル・フォー」を結成した。このグループが解散した後、テレビ番組「Sing, Sing, Sing」のタレント・コンテストに応募して優勝し、ロンドンへの旅券を手に入れた。そこで同じく、オーストラリア人歌手のパット・キャロルとデュオを結成したが、ビザの期限が切れたためイギリスを離れた。その後、1966年にデッカ・レコードで初のシングル、ジャッキー・デシャノンの「Till You Say You'll Be Mine」を録音した。


 その後、プロデューサー、ドン・カシュナーが結成したバブルガムグループ、トゥモロウに参加し、同名のSFミュージカル映画に出演し、1970年に「I Could Never Live Without Your Love」というマイナーな英国ヒットを記録した。ニュートン・ジョンのファースト・ソロ・アルバム『イフ・ノット・フォー・ユー』は、その1年後に発売された。その最初のシングル、ボブ・ディランの「If Not for You」の演奏は、彼女にとって初めての世界的ヒットとなり、それに続く「Banks of the Ohio」は、イギリスとオーストラリアでトップ10入りを果たしました。


 イギリスでのセカンド・アルバム『Olivia』は、アメリカでは正式発売されなかったが、次のアルバム『Let Me Be There』のタイトル曲は大成功を収め、グラミー賞の最優秀カントリー女性賞を受賞した。その後、「If You Love Me (Let Me Know)」、「I Honestly Love You」、「Have You Never Been Mellow」、「Please Mr.Please」などのヒットシングルを次々と発表。1974年にロサンゼルスに移住したニュートン・ジョンは、カントリーミュージック協会の年間最優秀女性ボーカリスト賞を受賞。このジャンルでの彼女の成功は、業界の純粋主義者の間で議論を呼び、CMAの多くのメンバーが抗議のために組織を脱退することになった。


 1978年、ブロードウェイ・ミュージカル「グリース」の映画化に主演し、ジョン・トラボルタと共演したことで、ニュートン・ジョンのキャリアは急激に上昇した。そのサウンドトラックアルバムは12週連続1位を獲得し、3曲の大ヒット曲を生み出した。Hopelessly Devoted to You」、「Summer Nights」、「You're the One That I Want」の3曲が大ヒットし、全米と全英のチャートで1位を獲得。この年、ニュートン・ジョンは、ソフトロックとディスコをミックスした「Totally Hot」をリリースした。Grease」の後、彼女が初めて映画に出演したのは、ジーン・ケリーとマイケル・ベックが共演した「Xanadu」だった。映画は成功しなかったが、サウンドトラックにはELOとのタイトル曲「Magic」やクリフ・リチャードとのデュエット曲「Suddenly」が収録され、大ヒットとなった。


 オリビア・ニュートン・ジョンはその後、自身のイメージを塗り替え続け、次のアルバム『Physical』ではよりロックミュージックに傾倒した。このアルバムは彼女にとって最大の商業的成功となり、大人気のタイトル曲やトップ10ヒットとなった「Make a Move on Me」を生み出した。その後、ジョン・トラボルタと共演した1983年のコメディ映画『Two of a Kind』に出演し、興行面は失敗に終わったものの、この映画のために録音した曲「Twist of Fate」が再び大ヒットした。俳優のマット・ラッタンジと結婚した後、オリビア・ニュートン=ジョンは『ソウル・キス』を発表するものの、これは低調な評価がもたらされた。1986年に娘のクロエを出産し、歌手として3年近く活動を休止を余儀なくされたが、1988年にアルバム『The Rumour』をリリースする。1988年にアルバム『The Rumour』で大々的なカムバクを果たす。


 1992年、『The Essential Collection 1971-1992』をリリースした直後、オリビア・ニュートン=ジョンは乳がんと診断された。翌年には治療を受けなんとか回復し、乳がん研究やその他の健康問題におけるオピニオンリーダーとなった。また、マグロ漁の網にかかったイルカの殺傷に抗議するため、1978年の日本公演を中止するなど、環境保護や動物愛護の活動にも注力していたことでも知られる。さらに、2008年には、オーストラリアのメルボルンに「オリビア・ニュートン・ジョン キャンサー&ウェルネスセンター」を開設する。 2012年、トラボルタとホリデー・チャリティ・アルバム『This Christmas』で再会し、オーストラリアのコメディ映画『A Few Best Men』で主演した。その数年後、エイミー・スカイ、ベス・ニールセン・チャップマンと組み、インスピレーションを与えるアルバム『LIVE ON』を発表した。昨年1月には、娘のクロエとレコーディングした新曲「Window in the Wall」を発表しています。


 

©︎Daniel Peralta Rasmussen


スペインのエレクトロポップトリオ、Ora The Molecule (aka Nora Schjelderup) がデビューアルバム『Human Safari』の発売1周年を記念して、デラックスバージョンをリリースしました。このデラックス・バージョンは、オリジナルの楽曲に加えてアルバムからの未発表のB面曲やリミックスざ収録されており、Muteからリリースされている。ストリーミングは以下からどうぞ。


本作には、シングル「Creator」「Die to Be a Butterfly」『The Ball」が収録されています。Ora the Moleculeは、今年3月にAmerican Laundromatからリリースされています。


 

ROGER WATERS


ロジャー・ウォーターズは、現在進行中の「This Is Not a Drill Tour」の中で、CNNのマイケル・スマーコニッシュ氏と対談し、彼のコンサートで提示された過度に政治的なテーマやメッセージについて議論しました。


マイケル・スマーコニッシュは、ウォーターズに、なぜ、ジョー・バイデン大統領を "戦争犯罪人 "と呼ぶのかと尋ね、インタビューを開始した。「彼はウクライナでの戦争を煽っている」と元ピンク・フロイドのメンバーは答えた。「これは大きな犯罪なんだ。なぜアメリカは、ヴォロディミル・ゼレンスキーに交渉するよう促し、この恐ろしい戦争の必要性を回避しないのだろう?」


スマーコニッシュがウォーターズは「あなたは侵略された側を責めているのでは?」と指摘すると、ウォーターズはロシアに手を出させたNATOを批判し反論した。「どんな戦争でも、いつから始まったのか?必要なのは歴史を見ることだ。"まあ、この日に始まった "と言うこともできる。この戦争は基本的に、NATOがロシアの国境まで押し進めた行動とその反応によるものだ」


ロジャー・ウォーターズはまたアメリカには "解放者 "の役割があるというスメルコニッシュの主張を否定した。 

 

「第二次世界大戦に突入したのは、パール・ハーバーがあったからでしょう。あなた方は完全に孤立主義者だった」とウォーターズ氏は主張した。「そのときすでにロシアが血なまぐさい戦争に勝っていたことを神に感謝するんだ。2300万人のロシア人が死に、ナチスの脅威からあなたと私を守ってくれたのです」


「私は、あなたが...どこかに行って、もう少し深い解釈をし、中国がメキシコとカナダに核武装ミサイルを入れていたら、アメリカはどうするのか考えてみることをお勧めしますよ」とロジャー・ウォーターズは付け加えた。


スマーコニッシュ氏が、中国は「こうしている間にも台湾を包囲するのに躍起になっているのではないか?」と指摘すると、ウォーターズ氏はこのように反論した。「台湾は、中国の一部です。1948年以来、国際社会全体がそれを絶対的に受け入れている。台湾は中国の一部であることは、1948年以来、国際社会全体が認めている。自分の側のプロパガンダを鵜呑みにしているのではないか。実際に理解してみなければ、人権や台湾について適切な会話をすることはできない」


「中国人は2013年にイラクを侵略し、100万人を殺したわけではない」とウォーターズは付け加えた。「中国人は誰を侵略し虐殺したのか?」


中国が "再教育キャンプ "に入れ、強制不妊手術と強制レッテルを貼らせたウイグル人やその他多くのイスラム教徒のことをスマーコニッシュは指摘したところ、「まったく馬鹿げている。それは絶対にナンセンスだ! まったくナンセンスだ!」とウォーターズは答えている。


今回のCNNが行ったロジャー・ウォーターズのインタビューの全容はこちらからご覧いただけます。

 


今月から、その月のおすすめのアルバムを特集していきます。取り上げるものからぜひ良盤を探す手がかりとしてみて下さい。洋楽のインディーズレーベルの作品を中心にピックアップします。 

 


8/5 リリース予定の注目作

 

 

Calvin Harris 『Funk Wav Bounces Vol. 2 』(Columbia Records)


 

先週の最大の注目のリリースはスコットランドのエレクトロプロデューサーのカルビン・ハリスでした。リアルサウンドでは前作超えとの高い評価。現在最も勢いが感じられるアーティストで、彼の生み出す爽やかなエレクトロポップスは国内にとどまらず、世界的な注目を集めている。




 

8/12 リリース予定の注目作

 

 

Boris 『Heavy Rocks 』(Relapse)


ジャパニーズヘヴィーロック界の重鎮、ボリス。1992年に結成され、ノイズコアのバンドとして世界的な知名度を擁する、ある一定のジャンルに留まることなく、ストーナー、サイケ、ノイズときわめて多彩なアプローチをこれまでの作品で図って来ている。国内よりもアメリカを中心に海外で評価が高い。2002年と2011年にリリースされたBorisの他の2枚のアルバムと同名です。しかし、この作品は全く新しいものです。リード・シングル "She Is Burning" をリリースされています。

 


Kiwi Jr. 『Chopper』 (Sub Pop)


 

 

Kiwi Jr.は近年のサブ・ポップらしい雰囲気を持つバンドに挙げられるでしょうか。既に先行シングル「Unsparkable Things」「Night Vision」「The Extra Sees The Film」がリリースされています。これらの先行シングルでは、1990年代のUSインディーロックと、モダンなシンセポップを融合させたサウンドが展開されています。サブ・ポップ好きは聴き逃がせないリリースとなります。


 

Pale Waves 「Unwanted』 (Dirty Hit)


 

The 1975、Rina Sawayama等と契約するダーティー・ヒットの注目のインディーロックバンドです。

 

ペール・ウェイヴズは、今年、来日公演を控えています。ゴシック調のアーティスト写真の印象とは裏腹に、シンガロング性の高いキャッチーかつ爽快なアリーナロックが特徴です。現在は、バンドの佇まいから醸し出されるのは高いスター性については言うまでもないでしょう。今後、スターダムに上り詰める気配もあるバンドなので、ぜひチェックしておきたい新作アルバムです。



Sylvan Esso『No Rules Sandy』 (Loma Vista)


シルヴァン・エッソは、ノースカロライナ、ダーラムを拠点とするエレクトロデュオです。歌手のアメリアミースとプロデューサーのニックサンボーンで構成されています。アルバムの先行シングルとして「Your Reality」「Sun Burn」「Don’t Care」がリリースされています。モダンエレクトロ、テクノを歌もののポピュラー・ミュージックと融合させた作風で、これまでの米国のポピュラー・ミュージックとは異なる音楽性を追求する。アルバムの到着が楽しみです。

 

 

 8/19 リリース予定の注目作


Madonna  Finally Enough Love   (Warner)
 

 

6月に16曲入りの『Finally Enough Love』のティーザー映像が公開されたが、今月は待望のフルパッケージが登場します。マドンナが2020年に「Girl Gone Wild」で達成したビルボード・ダンスクラブのナンバーワンヒット50曲を記念したこのコンピレーションには、Honey Dijon、Felix Da Housecat、Bob Sinclairなどのアーティストによるリミックス、未発表の楽曲が収録されています。

 


 

Hot Chip 『Chopper』 (Sub Pop)


近年、サブ・ポップは以前に比べると、多彩なジャンルを要するアーティストとの契約を結ぶように鳴ってきており、その代表格とも称せるのがこのイギリスのロックバンド、Hot Chipです。

 

ドイツのクラフトワークを下地にした摩訶不思議でスペーシーなテクノポップサウンドに軽快なヴォーカルが舞う。そのほかにも、イギリスのFoalsのような軽妙なダンスロックも演奏しており、彼らの楽曲はライブで凄まじいパワーを発揮することでしょう。今後、アリーナ級のバンドに上り詰める可能性も秘めている。既にアルバムのテースターとして「Down」「Eleanor」「Eleanor-Edit」「Freakout/Release」が先行シングルとしてリリースされています。

 

 

Why Bonnie 「90 In November 」(Keeled Scales)


 

 

テキサス州オースティンのWhy Bonnieは、米国の90年代のインディーロックがお好きなリスナーはチェックして貰いたいインディー・ロックバンドです。良質なメロディーセンス、Pavement、Guide By Voicesをはじめとする90年代のUSオルタナティヴ/ローファイを継承し、それらを女性ボーカルに象徴されるスタイリッシュで軽妙な雰囲気で彩っています。楽曲に漂うエモ・スロウコアの内省的で落ち着いた大人びた雰囲気は、他のバンドにはなかなか見出しづらいものです。新作アルバムの先行シングルとして、「Galveston」「90 In November」「Hot Car」「Sailor Mouth」「Nowhere LA」がリリースされています。

 

 

Cass McCombs   Heartmind (Anti-)


インディーロック/フォークアーティストとして米国内で注目されつつあるのが、 キャス・マックームス。フォーク・カントリーを下地にした郷愁を誘う温和なサウンド、70年代のクラシックポップスからの影響も感じさせ、昔の洋楽ポップスを彷彿とさせるような良質な男性ソングライターです。先行シングルとして「Unproud Warrior」「Karaoke」がリリースされています。



 8/26 リリース予定の注目作

 

 

Julia  Jacklin 『Pre Pleasure』(Transgressive Records)

 


 オーストラリア・シドニーを拠点とするジュリア・ジャックリンは、インディーポップ、インディーフォーク、オルタナ・カントリーを楽曲の特徴とし、2013年からSSWとして活動しています。米国のインディーフォークに近いアプローチを感じさせる楽曲に加えて、キュートなキャラクター性を持っている。既に先行シングルとして発表されている「Lydia Wears A Cross」「I Was Neon」「Love Try Not To Go」をみる限りでは佳作以上の出来映えとなるでしょうか。

 

 

Laufey 『Everything I Know About Love』(AWAL)

 


 

Laufey(レイヴェイ)は、スコットランドのフォーク/ケルトの正当な継承者ともいえる十代の天才的なシンガーソングライター。良質なインディーフォークを書くシンガーソングライターで、映画のようにドラマティックな展開力を持つ。ラーフェイの美しい旋律の運びはまるでハープの音色のように滑らかで、さらに、歌声も温かく、心に響くものがあり。伸びやかな歌声と牧歌的な雰囲気のフォークミュージックに加え、初期のビョークを彷彿とさせる繊細なストリングスアレンジを込めた映画のような壮大な物語性を感じさせる楽曲、さらに、その楽曲の良さを存分に引き出すロマンティックなヴォーカルスタイルを擁する。アルバム発売に先駆けて発表されたシングル、「Everything I Know About Love」、「Fragile」、このサイトでもご紹介している「Dear Soulmate」では、このシンガーソングライターの底知れぬ才能が引き出されています。

 

 

Stella Donelly  Flood (Secretly Canadian)

 


 

 

ステラ・ドネリーもジュリア・ジャクリンと同様、オーストラリア国内の注目のアーティストのひとり。2018年にシークレットカナディアンと契約を結び、デビュー・アルバムをリリースした後、着々と知名度を獲得、ファン層を増やしている。ステラ・ドネリーは強いインディーロックの要素に加え、軽妙なベッドルームポップの雰囲気を兼ね備える。次作「Flood」はパンデミックのロックダウンを題材に取り、それらの孤独感と個人的にどのように向き合うかが表現されているとか。新作の先行シングルとして「Lungs」「Flood」「How was Your Day?」 がリリースされています。ジャック・ジョックリンと共に世界的な知名度を獲得する可能性もある。

 


Florist


Floristが、先週(7月29日)”Double Double Whammy”からリリースしたセルフタイトル『Florist』は、鳥の声のサンプリングが導入されているほか、自然味あふれる作風となっており、早耳のリスナーの間で話題を呼んでいる作品でもあります。近年の米国のフォークシーンでは、こういった都会的な趣とは先端帯の自然の雰囲気を擁する作風が増えてきている。このアルバムには、フローリストのたおやかなフォークセンスが濃縮されているだけでなく、バンドメンバーとして、また親友として、彼らを結びつける強力な愛情の証ともなっている。


フローリストのシンガーソングライター兼ギタリストを務め、バンドの中心的な人物であるエミリー・スプラグは、まずはじめにこのアルバムが完成へとこぎ着けたことについて、バンドメンバー、彼らとの人間関係に深い感謝をする。そこには、スプラグの他のメンバーへの深い信頼の思いを読み解くことができる。スプラグは、アルバムの制作段階を振り返るにあたって、「このアルバムを一緒に作るにあたってとても重要であったのは、メンバーがお互いに協力し合い、直接的な意味でつながっていることの意味そのものを祝うことであり、同時に、私たちが多くの人と協力していることを伝えることでした。それは基本的に人生の意味であり、多くの意味で、つながりから意味を見出そうと努力し続けることに価値がある理由です」と話しています。これは、数年間、深い孤独を味わったこらこそ引き出された重みのある言葉だ。


フローリストは、2013年と結成されてからか久しいバンドです。にもかかわらずそれほど多作なバンドとは言いがたい。それはこのバンドが音楽というものの価値を深く知っているだけでなく、音楽を心から大切にしている証ともいえるでしょう。四人のメンバーは功を急がず、その現在位置をしかと捉え、丹念にアルバムを作り込むことで知られている。これらの要素がインディーミュージックファンをうならせるような緻密な作風となる最大の理由といえる。

 

フローリストは、エミリー・A・スプラグを中心に四人組のバンドとして常に緊密な人間関係を築いてきたが、2017年にリリースされた2ndアルバム『If Blue Could Talk』の後、バンドは少しの休止期間を取ることに決めた。その直後、エミリー・スプラグは母親の死を受けたが、なかなかそのことを受け入れることが出来ず、「どうやって生きるのか」を考えるため、西海岸に移住した。その間、エミリー・A・スプラグは『Emily Alone』をリリースしたが、これは実質的にFloristという名義でリリースされたソロ・アルバムとなった。しかし、このアルバムで、スプラグは既に次のバンドのセルフタイトルの音楽性の萌芽のようなものを見出していた。バンドでの密接な関係とは対局にある個人的な孤立を探求した作品が重要なヒントとなった。


その後、エミリー・スプラグは、3年間、ロサンゼルスで孤独を味わい、自分のアイデンティティを探った。深い内面の探求が行われた後、彼女はよりバンドとして密接な関係を築き上げることが重要だと気がついた。それは、この人物にとっての数年間の疑問である「どうやって生きるのか」についての答えの端緒を見出したともいえる。このときのことについてスプラグは、「ようやく家に帰る時が来たと思いました。そして、「複雑だから、辛いからという理由で、何かを敬遠するようなことはしたくない」とスプラグは振り返る。だから、もう一人でいるのはやめようと思いました。もう1人でいるのは嫌だと思った」と話している。


彼女は2019年6月、フローリストの残りのメンバーであるリック・スパタロ、ジョニー・ベイカー、フェリックス・ウォルワースと再び会い、レコーディングに取り掛かった。セルフタイトルへの制作環境を彼女はメンバーとともに築き上げていく。バンドは、アメリカ合衆国の東部、ニューヨーク州を流れるハドソン渓谷の大きな丘の端にある古い家をフローリストは間借りし、その裏には畑と小川があった。スプラグとスパタロは先に家に到着し、自然の中に完全に浸ることができる網戸付きの大きなポーチで機材をセットアップすることに決めた。これらの豊かな自然に包まれた静かな制作環境は、このセルフタイトル『Florist』に大きな影響を与え、彼らに大きなインスピレーションを授けた。フォーク音楽と自然との融合というこのアルバムの主要な音楽性はこの制作段階の環境の影響を受けて生み出された。もちろん、アルバムの中に流れる音楽の温もりやたおやかさについてはいうまでもないことである。これらのハドソン川流域の景色は、このメンバーに音楽とは何たるかを思い出させたとも言えるだろう。


 



その結果、驚くべきフォーク音楽、まさにコンテンポラリーフォークの要素に加え、アンビエントのように生活環境のある音が実際の音の素材としてとりいれられたことは自然な成り行きであった。このセルフタイトルでは、鳥のさえずり、木々の柔らかな風、葉のかすかなざわめきがふんだんに盛り込んだレコーディングとなった。それはほんとどこの四人組が自然のなかに響いている音楽の美しさに思い至り、それを多彩な手法で取り入れていることがこの作品の多くのリスナーを魅了する理由ともなっているようだ。「6月9日の夜」には、アンビエント・フォークの背後にコオロギの鳴き声が聞こえるし、「ギターと雨のためのデュエット」では、バックの土砂降りが、指で弾く繊細なリフに完璧に寄り添う別の楽器のように聴こえる。また、"Finally "では柳のようなシンセサイザーが流れ、川や鳥、花などのモチーフが散りばめられ、穏やかなハーモニーを奏でている。実に、ハドソン渓谷にある生きた音を実際の三宝リング、そしてシンセサイザーといった多角的なアプローチにより練度の高い作風となっているのです。


しかし、ニューヨーク州のハドソン渓谷での録音はお世辞にも実際の作風とは裏腹に、ロマンチックな制作環境とは呼べなかったようだ。このレコーディングの環境は、作風の中に見える表向きのイメージとはまったく異なるもので、「科学的、臨床的な観点から言えば、あそこで活動するのは最悪のアイデアだった。私たちが作ったものは、すべて楽器店に一旦持ち込まなければならなかった」とジョニー・ベイカーは言う。「いや、でも、あれは衝動的なものだった。彼らは、あのポーチを見て、あそこで魔法が使える、これは物語の一部になり得ると思ったんだ」。


これは冗談ではない。彼らは親密な関係を通して、魔法のような魅力を持つアルバムを制作している。互いへの信頼は、このアルバムの中にみえる緊密なストーリーを通して目に見える形で表れている。彼らはシームレスに連携しながらも、Floristは単一の生物になろうとするのではなく、全体が機能するために彼らだけが果たすことのできる特別な役割を全員が持っている生態系全体になろうとしているのである。 

 

ポーチでの即興ジャムセッションから生まれた即興インストゥルメンタル曲「Sci-fi Silence」での羽のようなボーカルの楽な融合も、このアルバムにはお互いを信じる気持ちがあり、誰かが自分を完全に見ている時にだけ感じられる安心感を与えている。作品全体に漂う奇妙な温もり、それは彼らの信頼関係が表れ出たものなのだ。その後、しばらく、バンドメンバーは自分たちがお互いに感じている純粋な「魔法と愛」をどのように捉えられるかを考えていた。そして、レコーディングの後に完成した『Florist』でばらばらとなっていたピースが揃い、セルフタイトルにふさわしい作品として出来上がった。



「このアルバムがいかに特別なものであるかと気づかせてくれた」とジョニー・ベイカーは言う。でも、このアルバムを作っていた時、「待てよ、これは特別なことだ、僕たちはこれに惹かれ、これを必要としている、そして僕たちはお互いを愛しているんだ」という瞬間があったんだ。それ以外の他の言葉では表現できない。突然、その辺の言葉や、実際に意識的に理解したような気がしたんだ」。


このアルバムの音楽には、彼らの生活がそのまま反映されている。ウォルワースが作ってくれるストロベリー・ルバーブ・パイ、ワインを優雅に飲む夜、そしてレコーディングを始めることになった午後5時まで、ただメンバーが一緒に過ごす日々の音が聞こえてきそうでもある。彼らの利害関係を超えた、ビジネス関係を超越した温かで純粋な友情はこのアルバムにも表れ出ていて、実際の音楽の温度にぬくもりや優しさのような情感をもたらしている。「あなたは私が持っているものではなく、私が愛しているものだ」というような曲に見られる歌詞だけでなく、最小限の、しかし、意味のある楽器演奏に見られる繊細さをしたたかに物語るものとなっています。

 

セリフタイトル『Florist』の最大の魅力、この数年間で見出した人生の素晴らしさをフローリストのスプレイグは次のように話している。それは音楽の価値にとどまらず、魅力的な人生を築き上げる上での教訓、見本のような言葉が込められている。「これらの曲の多くは、自分の人生にいる人々について、また、自分の人生に人々がいること、また、いないことのどちらが価値があるかということについて書かれています。これらの曲は、家庭や家族と再びつながることの強さと力を見いだし、たとえそれがちょっとした苦痛に感じたとしても、その反対側にありありと見えてくるというものです」と、エミリー・スプレイグは語っています。「きっとだれだって心から人を受け入れるのは怖いだろうし、何かを失うことへの恐怖は常に人生につきものなんだと思います。それでも、今回、私達がリリースした19曲を収録した『Florist』は、”お互いを愛する”ことが、この世界を生き抜くためのたったひとつの方法であることを証明しています」

 

それはこのアーティストから提言であり、必ずしも、その考えを押し付けるものではない。こういった考え方もあるとだけ示しているだけである。それでも、わからないなかでもなにかをわかろうとすることの重要性、フローリストは、この作品でそのことをわたしたちにおしえてくれる。それがこの作品のいちばんの魅力といえるかもしれない。セルフタイトル作でフローリストは、2つの選択肢をわたしたちに示してくれている。人間は、いつも、ひとりで孤独に生き、複雑な人間関係を避けることにより自己を守ることもできる、あるいは、また、エミリー・スプラグが言うようにこの世で誰かと緊密に協力しあい、「彼女は、鳥の歌の中にいる、彼女は消えない」と暗喩的に歌う「Red Bird Pt. 2(Morning)」に象徴されるように、複数の人間関係の中でいくつかの困難を乗り越えながら、その先にある開かれた愛を経験することもできる。

 

 

 

 

 

『Florist』 

 


Listen/Streaming Official: https://lnk.to/florist

 


 

Gift

ブルックリンを拠点とするサイケ・ロック・クインテットGIFTが、10月14日にDedstrangeからデビュー・アルバム『Momentary Presence』をリリースすることを発表しました。また、アルバムのリード・シングルとなる "Gumball Garden "のビデオも公開されています。James Thomsonが監督を務めたこのビデオは、アルバムのトラックリストとカバーアートとともに、以下のページでご覧いただけます。


"ほとんどの人がパンデミックという言葉の意味を知るずっと前にこの曲を書いたんだ "と、バンドのリーダーTJフレダはプレスリリースで "ガムボール・ガーデン "について述べている。

 

2019年末に、ある日起きたら地球上に誰もいない夢を見たんだ。私は無駄にあらゆる生命体を探して歩き回っていた。

 

それは悲しいことでしたが、不思議と平和でもありました。パンデミックが起きたとき、この曲はまったく新しい意味を持つようになった。ある日、私たちは目を覚ますと、通りには誰もいなかったのです。みんなどこかへ行ってしまったのです。この曲は、孤独の中に平和を見出すことを歌っているんです。







Gift 『Momentary Presence』
 
 

 

Tracklist:
 
 
1. When You Feel It Come Around
2. Gumball Garden
3. Share The Present
4. Lost For You
5. Pez
6. Stuck In A Dream
7. Dune
8. Feather
9. Pinkhouse Secret Rave
10. Here And Now (Time Floats By)




 

Bien et Toi


NYを拠点に活動するソングライタ兼プロデューサーとして知られるBien et Toiが、ニューシングル「Rainbow Tables」を8月5日に公開しました。楽曲のコラボレーターとしてBiig Piigが参加しています。

 

Bien et Toiは、モダンポピュラーミュージックに多大な影響を与える人物であり、プロデューサーとしての手腕は広く知られているところです。彼の手掛けるプロデュース作は何度もグラミー賞にノミネートされている。有名どころでは、Arlo Parks(アーロ・パークス)とのパートナーシップにより、彼女のデビューアルバム「Collapsed In Sunbeams」を世に送り出したほか、他にも、様々な有名アーティストとの仕事をこなしています。

 

Bien et Toi(Gianluca Buccellati)がこの度、ソロアーティストとして制作した「Rainbow Tables」は、ソウルフルで爽やかなポップ・ミュージック。今後、シンガーソングライターとして活躍が期待できるでしょう。Bien et Toiがこのニューシングルに添えるコメントは以下の通りです。

 

「このニューシングル”Rainbow Tables”は、Biig Piig(現在、ロンドンを拠点に活動するアイルランドのラップ歌手で、RCAと契約している)と「The Sky is Bleeding」(2021年にリリースされたBiig Piigの最新アルバム)に取り組んでいる間に書きました。僕たちはリラックスしたコラボレーションに二人で取り組んでいて、この曲はそのことを証明するものとなっています」


 


WILLOW(ウィロー・スミス)が、昨年発表した『I feel EVERYTHING』に続く作品を発表しました。

 

タイトルは<COPINGMECHANISM>となり、9月23日にリリースされる予定です。この発表と同時に、ウィロー・スミスはニュー・シングル「hover like a GODDESS」を先週末に公開しました。Jaxon Whittingtonが監督したビデオも到着しています。さらにアルバムのカバーアートワークも公開されています。


 


「この世のすべての女性は崇拝されるに値します」と、WILLOWは声明の中でこのニューシングルについて述べている。「この曲は、私たちの中にいる神聖な女神へ捧げられた頌歌なのです」



Willow  <COPINGMECHANISM> Artwork:



 

ダブ・ミュージックの第一人者として知られる故・リー "スクラッチ "ペリーの新しいボックスセット『King Scratch (Musical Masterpieces from the Upsetter Ark-ive)』が、今年8月に、ボブ・マーリーのリリースでお馴染みのロンドンのレゲエ専門レーベル”Trojan”からリリースが決定しました。リリースの告知に合わせて、Trojanは収録曲「Jungle Lion」を公開しています。

 

今回発売される4xLPのボックスセットには、「Disco Devil」や「Soul Fire」などのリー・スクラッチ・ペリーの代表曲のほか、レアな未発表ミックスも収録されている、また、このボックスセットには特典として、スクラッチ・ペリーの公式伝記作家であるデイヴィッド・カッツによる50ページに及ぶイラストブック、エイドリアン・ブートが撮影した写真も同梱されています。


豪華ボックスセット『King Scratch (Musical Masterpieces from the Upsetter Ark-ive)』は、伝説のプロデューサーの死から1年後の2021年8月26日に発売されます。



 

Blue Bendy


サウスロンドンから彗星の如く現れたセクステットのインディー・ロックバンド、Blue Bendyが4曲収録のデビューEP「Motorbike」に続き、EPカット「Clean is Core」のPVを公開しました。下記よりご覧下さい。

 

ブルー・ベンディは、フォーク/トラッドからクラウト・ロック、ポストロック、エレクトロを吸収したいかにもサウスロンドンのバンドらしい雑食性を持つ。ヴォーカルのメロディーやムードは、ポストパンクのテイストと同じ部類に入りつつも、サウンドは更に愉快さと奇妙さが入り混じったアートロックを演出する。BCNRやCarolineに近い実験的なロックバンドといえよう。




デビューEPからのシングル・カット「Clean is core」は、純粋さについて書かれた曲だという。「クリーンで、信念に忠実であるという考え ・・・それがもう本当に存在するのならね。これは何度も言われてきたことだけど、パンチラインのあるリリックには楽しいトピックだね」


3日前に公開されたMVについて、ギタリストのハリソンは、「ブルーベンディがCGがはびこる風景/ナインティーズレイヴを飛びまわりながらカラオケを披露している...お楽しみに」と語っている。

 

デビューEP「Motorbike」は今年2月11日にリリースされています。ご視聴はこちらからどうぞ。




 

Lounge Society  Credit:Alex  Evans

英・ヘブデンブリッジの若きエクスペリメンタル・ロックバンド、The Lounge Societyは8月26日にSpeedy Wundergroundよりリリースされる記念すべきデビュー・アルバム『Tired of Liberty』を控えています。バンドは、ティーンネイジャーを中心に構成されている将来が楽しみなロックバンドです。

 

ザ・ラウンジ・ソサイエティは、8月3日に最新シングル「Upheaval」を公開しました。この曲の前には、「Blood Money」「No Driver」と二曲のプレビューシングルがリリースされています。


"Upheavalは今までのどの曲よりも落ち着いた雰囲気で、アルバム全体を振り返ると、実は、最も重要な曲の一つかもしれないね "と、バンドはこの新曲について以下のように説明しています。

 

「レコーディングスタジオでは、Dan Carey、プロデューサー)が、深い質感のアコースティックギターと、アルバムの終盤にフォーカスしたアンビエント・ルーム・ミキシングの影響を受けて、ある種のヴィンテージ感を実現するために、本当に手助けしてくれたんだ。この曲は、今までのどの曲よりも、僕たち4人が一緒に大好きな曲を演奏しているように感じられる」




Enumclawは、現在、インディーロックファンの間で密かに話題をもたらしているロックバンドである。彼らは、以前までの殻を破り、次回作「Save The Baby」で大きな飛躍を遂げようとしている。

 

ワシントン州タコマ出身のこの4人組は、拡散力のあるインパクトのあるライブ、全米の様々なフェスティバルでの "You should have Been-There" セットにより、大きな話題となった。昨年リリースされたスカジーなファーストシングル「Fast N All」は、この言葉を国外に広める景気となり、そして今、デビューLP 『Save The Baby'』10月14日発売)の発表とともに、その話題は沸騰状態に達している。しかし、この関心の高まりは、バンド自身のスタンスには何ら影響はない。


ボーカルのAramis Johnson(アラミス・ジョンソン)は、以前から大きな目標を掲げている。インディーロックバンドでありながら、彼らが目指すのはオアシスのようなロックスターであるというのだ。このことについて、アラミスは、「不当だとは思わないし、詐欺師症候群だとも思わない。僕たちは本当に良いレコードを作ったと思うし、聴いてみればそれは一目瞭然だ」と語る。


Enumclaw(ギタリスト、Nathan Cornell、ドラマー、LaDaniel Gipson、ベーシストEli Edwards)は、前述のGallagher兄弟のような冷静さと、ちょっとした物知り感を持ち、自分たちが誇張的な発言をすることに何ら遠慮はしない。どちらかというと、自分たちのシーンを揺さぶるのにちょうどいい時期に来たと断言し、それを後押しし、盛り上げようとさえしているのだ。


「ここ数年、私が感銘を受けたバンドはほとんどないんだ」とアラミス・ジョンソンは続ける。「最近のバンドは最低のバンドが多い。このバンドは何をやっているんだろう?  ホットでクールな人たちがいるのに、音は3匹の猿がブリキ缶を叩いているような感じじゃないか」と。


アラミスの発言はなんとも大胆不敵な言葉だが、この世界観が彼らに他とは何か異質なものを提供することを促し、現状のミュージックシーンになかったものをもたらす可能性を秘めている。「僕たちは、人々が自分自身を見ることができるような音楽を作っている」とアラミスは主張する。「多くのバンドは、人々のための空間を作ることよりも、雰囲気を重視していると思うんだ」。


スリリングでロックテイストのバンガーを通して、グループはポップやヒップホップからのインスピレーションを融合させており、アラミスは、PJハーヴェイの「Rid Of Me」やドレイクを最近よく聴くという。「この男は、Drakeが大好きなんだ」とLaDanielが微笑むと、Aramisが言い返す。「昨夜、バーでこのことについて口論になった。でも、彼はバンガーを持っているんだ!」


バンドが深夜のカラオケで初めて結束したのは、同じワシントン州タコマにある有名なダイブバーBob's Java Jive(コーヒーポットの形をした店)であったという。アラミスがバンド結成を提案した後、LaDanielの言葉を借りれば「ピーチ&クリーム」のような関係が続いている。


Enumclawは、彼らが「タコマの呪い」と呼ぶ、地元の才能が地元にとどまりがちな傾向をすでに払拭している。そして、今、彼らは「Save The Baby」でさらに大きく羽ばたく準備ができている。ここ数年の人間関係、家庭、友人、人生の様々な側面に関する物語から引き出された(アラミスの「イースターエッグ」もある)このアルバムは、ノスタルジーに溢れ、グラングアップした良質の11トラックで構成されている。「このアルバムには、ノスタルジックな雰囲気が漂う全11曲が収録されている。このアルバムには、人々が共感でき、楽しい時間を過ごせるような曲が収録されているといいなと思っています。僕は、この曲でとても感動したことがあるので、他の人にも同じような衝撃を与えられたらいいなと思っている」とアラミスは語る。


ワシントン州タコマを拠点にするインディー・ロックバンド・Enumclawは、今年最もエキサイティングな話題をもたらす新人アーティストとして確固たる地位を築き挙げようとしている。「このアルバムをぜひともブレイクさせたい」とアラミスは語る。「このアルバムをきっかけにして、もうアルバイトをする必要はないんだ」

 

さらに、「これから、イギリスのグラストンベリーで演奏したい。それに日本でも演奏したいんだ」と彼は息巻いている。「もっとクールな人たちと友達になりたいし、もっとクールな女の子と付き合いたい。The Strokesの『Is This It』やOasisの『Definitely Maybe』のように、シーンに飛び出すようなアルバムにしたいんだ 」


もちろん、現時点はまだ大胆で誇張的な計画に思えるかもしれない。なぜならオアシスも小さな会場で無数のアクトをこなした後、著名な存在になっていった。一夜にして状況が変わるということはありえない。今後、イーナムクロウがスターダムに上り詰めるには、表からは見えない形で何らかの基礎を築き上げていく必要がある。それでも、彼らの野望を裏付ける才能と意欲、そして成功までの道のりに耐えうる胆力さえあれば、Enumclawにとって、不可能は不可能ではなくなる。今、着実に耳の肥えたインディーロック・ディガーの間で話題を呼んでいるイーナム・クロウ。少なくとも、次作アルバムはこのバンドにとって分岐点ともなるような作品になるといえる。

 


ニューアルバム『Home, before and after』をリリースしたばかりのRegina Spektorが、タイニーデスクコンサートで新旧の楽曲を披露した。


レジーナ・スペクターは、この日、Tiny Deskに向かう旅について書いた短いアカペラの小曲「Tiny Song」でセットを開始しました。「ニューヨークからD.C.まで電車に乗って、みんなに咳をされて、でも、私はしっかりマスクをつけて、COVIDテストも陰性で、この小さな机で皆さんに歌えるようになりました」と笑顔で歌い、カメラの向こうの観客からはちょっとした笑いが起こった。


スペクターはこの日のささやかなコンサートで、アップライトピアノと弾き語りのみで、代表的なシングル「Loveology」と「Becoming All Alone」の前後に「Home」を演奏し、その間、後ろの本棚に置かれた水筒の水を飲み干すという、なんとも贅沢でゆったりした時間を過ごした。

 

「あの棚から水を飲むのはちょっと難しいですよね。なぜなら、小さなメモを全部読み、すべてを読んで、あなたがたがここにいることを思い出させなければならないからです」と恥ずかしそうに話した。「30分ほど、こっそり、ここで働いている人たちを全部チェックしてみようかなと思ってます」


レジーナ・スペクターのTiny Desk Concertの後半は、2006年のアルバムBegin to Hopeからのハイライト3曲、"Après Moi", "Samson", そしてブレイクしたシングル "Fidelity "で構成されています。パフォーマンスの全貌は、下記でご覧いただけます。今月末には、デビュー・アルバム『11:11』の20周年を記念したスペシャル・ボックス・セットがリリースされる予定です。

 

 

Kevin Mazur


プリンスは2016年4月にミネソタ州で死去している。その後、問題となっていたのが生前、このビッグ・スターが残した財産の処遇であった。彼の死後、ミネソタ州で六年に及ぶ裁判が行われてきたが、ようやくこの法廷闘争に決着が付き、プリンス・ロジャーズ・ネルソンが生前に残した資産は、相続人、アドバイザー、管理会社プライマリー・ウェイブの三者間で分割されることになった。


米Billboardの報道によると、プリンスの資産の分配をめぐる法廷闘争が6年の時を経て、ついに決着の時を迎えた。当時、プリンスは、鎮痛剤の一種であるフェンタニルの過剰摂取で急逝したとの報道がなされた。突然の死去であったため、プリンスは財産付与の遺書を書いていなかった。2016年の死後、彼の遺産や資産の分け方を決定するために検認が開始されたが、彼には配偶者も子供もいなかったため、一旦は、6人の異母兄妹が法定相続人とされた。その後、3人はプライマリー・ウェイブに対して株式を売却したが、残りの3人は株式を保有したままだった。


今回、ミネソタ州の裁判判事が承認した新しい取り決めにおいて、プリンスの資産は最終的に、相続人とそのアドバイザーである、L. Londell McMillan氏、Charles Spicer氏が共同で設立した持ち株会社「プリンス・レガシーLLC」と「プリンス・オート・ホールディングスLLC」(プライマリー・ウェイブ)で、均等に分割される判決がくだされた。この裁判所の裁定について、相続人のロンデル・マクミランは次のような声明を提出している。「私は、13年以上にわたってプリンスの代理人を務め、音楽業界を改革するためのイノベーションを先導してきました。今後もまた、彼の音楽、映画コンテンツ、展示物、商品、ペイズリー・パークのイベント、ブランド商品など、彼の素晴らしい資産とカタログで同様のことができればと考えています」


さらに、プリンスの相続付与における判決が裁定されたことで、彼の死後、定かならぬものとなっていたプリンス作品、マーチャンダイズのライセンスの在処もより明確なものとなった。今回の判決により、プリンス・ロジャー・ネルソンの作品は様々な形でリイシュー(再発)が行われる可能性も出てきた。もちろん、グッズを始めとするマーチャンダイズについても同様である。今後、多くのファンは、プリンスの新製品を目にすることができるようになるかもしれない。