アイルランドのガレージパンクトリオ、Adore(アドーア)は、「Stay Free Old Stranger」に続く2025年第2弾シングル「Show Me Your Teeth」を5月8日にBig Scary Monstersからリリースした。また、バンドはこのリリースと合わせて、同レーベルと新たな契約を結んでいる。

 

また昨日、ファンメイドのゴシック映画風のミュージックビデオが公開されている。下記より御覧ください。


この曲は、数ヶ月に及ぶ睡眠不足、繰り返し見る悪夢、そして恐怖を直視することで得られる奇妙な明晰さによって生み出された。


ラクラン・オフィオンナイン、ララ・ミンチン、ローレン・マクガヴァン、ナオイス・ジョーダン・カヴァナーによって書かれた。プロデュースはアイルランドのポスト・パンク・バンド、ギラ・バンドのベーシスト、ダニエル・フォックス。


バンドのリード・ヴォーカル、ララ・ミンチンはこの曲について次のように説明している。

 

「『Show Me Your Teeth』は、5ヶ月間毎晩悪夢にうなされていた時期に書かれた。このような悪夢によって、私は一晩中何度も目を覚まし、異なる、時には織り成すストーリーの悪夢を何度も見ることになった。これらの悪夢に対するアンビヴァレンス(両価性)が芽生え、それが起きているときの生活にも反映されるようになった」

 

Adoreは、ララ・ミンチン(ギター/ヴォーカル)、ラクラン・オ・フィオナイン(ベース/ヴォーカル)、ナオイセ・ジョーダン・カヴァナー(ドラムス)からなる。 ガレージ・パンクの荒削りなギターリフはそのままに、西海岸発祥のポップパンクのイディオムをアイルランド風に置き換えるという、新しい試みをアドーアは行っている。彼らの音楽にはパンク・ロックの楽しさとはつらつとしたエナジーが凝縮されている。今後注目したいパンクロックトリオだ。

 

 

「Show Me Your Teeth」

 ▪️「N .E .R.O. presents borderless night」 2025.06.19 [thu] Shibuya WWW (HighSchool (Based in Melbourne), POL (Based in Paris), Luby Sparks (Based in Tokyo))


 
N.E.R.O.(エヌイーアールオー)がZINEの立ち上げを記念するスペシャルパーティの開催を発表しました。HighSchool(メルボルン)/POL(パリ)/Luby Sparks(トーキョー)が集う、美しく衝動的な一夜。


音楽とアートを軸に2010年に創刊され、インディペンデントな視点でカルチャーを追い続けた''nero magazine''の編集長が、新たに立ち上げたニューメディア<N.E.R.O.>(エヌイーアールオー)。


その第一弾として、新たなZINEを立ち上げた。それを記念したスペシャルパーティが、6/19、渋谷WWWで開催される。


ファウンダーの井上由紀子さんは、音楽ライターとして『POPEYE』をはじめ数多くの媒体で活躍したのみならず、渋谷系バンド・フリッパーズ・ギターの創世記メンバーとしても知られる人物。


90年代の東京カルチャーのリアルな熱気を知る彼女が、現在の音楽シーンとカルチャーに新たな息吹を吹き込むべく、2010年に”nero magazine”をインディペンデントで立ち上げた。


コロナというアーティストにとっての長い暗黒期を経て、2025年、新たなメディア<N.E.R.O.>を若い支持者と設立、よりグローバルな活動を再始動させる。


今回のイベントでは、<N.E.R.O.>第一弾に登場する3組の若手注目アーティストが出演する。
さらに、この日、新しいZINEも発売される。ZINEのテーマは「ボーダレス」であることが明かされた。


国やジャンルにとらわれない自由な発想が反映され、今の時代に必要不可欠な視点を提供する内容となっている。


この日、オーストラリア、フランス、東京から魅力的なアウトフィットが集結し、ライブパフォーマンスを行う。東京発の新しいミュージックウェイブの目撃者となるのは参加者になる!? いずれにせよ、ご都合のつく方はぜひ参加を検討してみてはいかがでしょうか??




▪️N .E .R.O. presents borderless night


日程: 2025.06.19 [thu]

会場:Shibuya WWW

開場:Open 18:00 / Start 19:00

料金:ADV. 8500 (+1drink)


チケット:

▼e+ 【https://eplus.jp/NERO/】※5/15(木)12:00公開・発売

 

※5/15(木)12:00公開・発売



▪️出演アーティストの紹介


・HighSchool(メルボルン)




ゴシックなムードとポストパンクの冷たさが同居する、注目のバンド。シューゲイズやニューウェーブの影響を受けつつ、現代的な感覚でアップデートされたサウンドが魅力。





・POL(パリ)



詩的で繊細なサウンドを奏でるニューウェーブ・デュオ。ヨーロッパのアートシーンと強く結びついた美学と、感情の機微を音に落とし込む表現力で注目を集めている。





・Luby Sparks(トーキョー)



日本のインディーシーンを代表する存在。UKインディー/シューゲイズを下地にしながら、透明感のあるメロディと現代的な感性で国内外から支持を得ている。





この夜の意義とは??


これはただのパーティではない。新たなメディア<N.E.R.O.>誕生へ――その変化は、メディアの再起動であり、新しい時代の始まりの合図。


過去と現在が交錯し、未来を照らすカルチャーの祝祭を、ぜひ目撃してほしい。今回の出演アーティストは、その「ボーダレス」なテーマにぴったりな革新的な才能を持つ、世界のニューカマーたち。



For Internatinal 


Japanese Brand New Zine "N.E.R.O." will hold a special party- a beautiful and impulsive night with HighSchool (Melbourne), POL (Paris), and Luby Sparks (Tokyo)


N.E.R.O.> is a new media project launched by the editor-in-chief of nero magazine, which was launched in 2010 with a focus on music and art and has been featuring culture from an independent perspective.


As their first step, a new zine will be launched. A special party will be held at Shibuya WWW on 19th June to commemorate the launch.



The founder, Yukiko Inoue, is a music writer who has worked for “POPEYE” and many other media, and is also known as a founding member of the original Shibuya-style band Flipper's Guitar. In 2010, she independently launched nero magazine in order to breathe new life into the current music scene and culture. 


After a long dark period of lockdown for artists during the pandemic, in 2025, she founded a new media <N.E.R.O.> with her young supporters to re-launch a more global activity.



This event will feature three young and upcoming artists who will appear in the first phase of <N.E.R.O.> In addition, a new zine will be released on the same day. The theme of the zine is “borderless. The contents of the zine reflect free ideas that are not bound by country or genre, and offer perspectives that are indispensable in this day and age.



■N.E.R.O. presents "borderless night":


2025.06.19 [thu]
 
Shibuya WWW
 
Open 18:00 / Start 19:00
 
ADV. 8500 (+1drink)


Tickets:
 
▼e+【https://eplus.jp/NERO/】*Sales start at 12:00 on Thursday, May 15

▼ZAIKO【https://wwwwwwx.zaiko.io/e/NERO】*Sales start at 12:00 on Thursday, May 15


 
■Performing Artists:


・HighSchool (Based in Melbourne)

A band to watch, HighSchool combines a gothic mood with a post-punk chill. Their sound is influenced by shoegaze and new wave, but updated with a modern sensibility.



・POL (Based in Paris)

A new wave duo with a poetic and delicate sound. Their aesthetic is strongly connected to the European art scene, and their ability to express the subtleties of emotion in their sound has garnered attention.


・Luby Sparks (Based in Tokyo)

A representative of Japan's indie scene, Luby Sparks has a UK indie/shoegaze background, but has gained domestic and international support for their transparent melodies and contemporary sensibility.
 
 

■Significance of this night:
 
 
This is not just a party.The birth of a new media platform, <N.E.R.O.>—this transformation marks not only the reboot of a publication but the beginning of a new era.
 
 
A celebration of culture where past and present intersect to illuminate the future, and we welcome you to witness it for yourself.
 
 
The featured artists in this issue are groundbreaking newcomers from around the world, each perfectly embodying the theme of "borderless".
Zazen Boys


昨年ニューアルバムをリリースした向井秀徳擁するロックバンド、ZAZEN BOYSが同年に行われた武道館ライブの模様を収録した音源を本日デジタルリリースした。


2024年10月27日に日本武道館で行われた、ZAZEN BOYS MATSURI SESSION。メンバーの誰もがコードを全く憶えていない名曲などを含め豊富なセットリストを組み、二部構成により、3時間超の劇的な公演を行った。これはナンバーガールのラスト公演のような記録的な試みでもあった。


その3時間20分にも及ぶ模様を完全収録したライブ・アルバム「MATSURI SESSION AT BUDOKAN」が遂にデジタル・リリース。生々しいバンドの息遣い、そして体温を感じてほしい。


・ZAZEN BOYS「MATSURI SESSION AT BUDOKAN」



Digital | 2025.05.14 Release

LINK [ https://ssm.lnk.to/matsurisessionatbudokan ]


1 You Make Me Feel So Bad

2 SUGAR MAN

3 MABOROSHI IN MY BLOOD

4 IKASAMA LOVE

5 Himitsu Girl's Top Secret

6 Riff Man

7 Weekend

8 バラクーダ

9 八方美人

10 This is NORANEKO

11 杉並の少年

12 チャイコフスキーでよろしく

13 ブルーサンダー


14 サンドペーパーざらざら

15 ポテトサラダ

16 はあとぶれいく

17 ブッカツ帰りのハイスクールボーイ

18 破裂音の朝

19 I Don't Wanna Be With You

20 Sabaku [ https://www.youtube.com/watch?v=dV3W4SQtP3U ]

21 DANBIRA

22 USODARAKE

23 安眠棒

24 黄泉の国

25 Cold Beat

26 HENTAI TERMINATED

27 HARD LIQUOR


28 6本の狂ったハガネの振動

29 Honnoji

30 半透明少女関係

31 CRAZY DAYS CRAZY FEELING

32 YAKIIMO

33 永遠少女

34 乱土

35 胸焼けうどんの作り方

36 Kimochi


All songs and lyrics written by Mukai Shutoku

Recorded and mixed by Kamijo Yuji

Mastered by Nakamura Soichiro at Peace Music

Art direction and design by Mukai Shutoku and Misu Kazuaki (eyepop)



・ZAZEN BOYS


向井秀徳 Mukai Shutoku : Vocals, Guitar

松下敦 Matsushita Atsushi : Drums

MIYA : Bass

吉兼聡 Yoshikane Sou : Guitar


 Maia Friedman 『Goodbye Long Winter Shadow』

 

 Label: Last Gang

Release: 2025年5月9日


Review

 

先週のアルバムのもう一つの実力作。マイア・フリードマンはカルフォルニア出身で、現在はニューヨークを中心に活動している。 現在、ニューヨークではインディーポップやフォークが比較的盛んな印象がある。このグループは懐古的なサウンドと現代的なサウンドを結びつけ、新しい流れを呼び込もうとしている。

 

マイア・フリードマンは、ダーティー・プロジェクター、そして、ココのメンバーとして活動してきた。二作目のアルバム『Goodbye Long Winter Shadow』はフローリストやエイドリアン・レンカーのプロデューサー、フィリップ・ワインローブ、そして、マグダレナ・ベイやヘラド・ネグロのプロデューサー、オリヴァー・ヒルとともに制作された。


このセカンド・アルバムでは、木管楽器、弦楽器、アコースティックギターが組み合わされたチェンバーポップ/バロックポップの音楽が通底している。このジャンルは、ビートルズに代表される規則的な4ビート(8ビート)の心地よいビートでよく知られている。マイア・フリードマンはこれらの60~70年代のポップソングにフォーク・ソングの要素を付け加えている。また、聴き方によっては、ジャズやミュージカルからのフィードバックも読み解くことが出来るかもしれない。

 

アメリカの世界都市の周辺で活動するミュージシャンには、意外なことに、普遍的な音楽性を追求する人々が多い。普遍性とは何なのかといえば、時代に左右されず、流行に流されないということである。マイア・フリードマンもまた、このグループに属している。フリードマンは、夢想的なメロディーを書く達人であり、それが純度の高いソングライティングに結びついている。 脚色的な表現を避け、人間の本質的な姿、あるいは、内的な感覚の多様さを親しみやすいポピュラー・ソングに結びつける。彼女の音楽は、扇動的なもの、あるいは即効的なものとは距離を置いているが、それがゆえにじんわりと心に響き、心を絆されるものがあるはずだ。タイプ的にはイギリスのAnna B Savageに近いものがある。アートポップとしても楽しめるはず。

 

 

ソングライターの作り出すオーガニックな雰囲気は、このセカンド・アルバムの最大の魅力となるだろう。アコースティックギターの涼し気なカッティングから始まる「1-Happy」は、フリードマンの優しげな歌声と呼応するように、木管楽器や弦楽器のトレモロの一連の演奏を通じて、映画のワンシーンのようなシネマティックなサウンドスケープを呼びさます。全般的には、エレクトロニクスのビートも断片的に入っているため、アートポップの領域に属するが、必ずしもそれはマニアックな音楽にとどまることはない。ボーカル/コーラスを自然に歌い上げ、それと弦楽器の描く旋律の美しさと調和することにかけては秀でている。時々、転調を交えた弦楽器がのレガートが色彩的なパレットのように音楽の世界を上手く押し広げていくのだ。

 

こうした比較的現代的なアートポップソングがアルバムの導入部を飾った後、「New Flowers」では、60-70年代のバロックポップ/チェンバーポップのアプローチを選んでいる。しかし、これは単なるアナクロニズムではなく、音楽的な世界を深化させるための役割を果たしている。マイア・フリードマンのボーカルは淡々としていて、曲ごとに別の歌唱法を選ぶことはほとんどない。それは考えようによっては音楽により自然体のセルフパーソナリティを表現しようと試みているように思える。二曲目では、ざっくりとしたドラムテイクを導入し、曲にノリを与えたり、フレーズの合間に木管楽器と弦楽器のユニゾンを導入したりと相当な工夫が凝らされている。しかし、曲が分散的になることはほとんどない。これは歌そのものの力を信じている証拠で、実際的にフリードマンの歌は、遠い場所まで聞き手を連れていく不思議な力がある。

 

また、音楽的に言及すれば、複数の楽器のユニゾンを組み合わせて、新鮮な響きをもたらしている。3曲目「In A Dream It Could Happen」はアコースティックギターとピアノのユニゾンで始まり、おしゃれな印象を及ぼす。そしてフリードマンの歌は伸びやかで、音楽的なナラティヴの要素を引き伸ばすような効果を発揮している。その後、弦楽器のレガートと呼応するような形で、ボーカルが美しいハーモニーを描く。ボーカルは、ささやくようなウィスパーとミドルトーンのボイスが組み合わされて、心あたたまるような情感たっぷりの音楽を組み上げていく。これはボーカルだけではなく、オーケストラ楽器の演奏が優れているからに他ならない。曲を聴いていると、驚くような美麗なハーモニクスを節々に捉えることが出来る。 そしてそれは調和的なハーモニーを形成する。曲の後半ではジャズふうになり、コーラスが芳醇な響きを形成する。これは単発的な歌の旋律だけではなく、全体的な調和に気が配られている証拠なのだ。

 

こういった中で、インスト曲の持つ醍醐味が楽しめる曲が続く。「Iapetus Crater」は弦楽器と木管楽器の演奏がフィーチャーされ、スタッカートのチェロに対してオーボエが主旋律の役割を担う。モダンクラシカルな一曲であるが、気楽な雰囲気に満ち溢れていて、聴きやすいインタリュードである。続く「Russian Blue」はフォークをベースにしたアートポップソングで、オーガニックな雰囲気が強く、アコースティックギターとドラムが活躍する。この曲はゆったりとしたテンポで進んでいくが、メロの後にすんなりとサビに入っていく。その後の間奏の箇所では、オーボエの演奏が入り、いわばボーカルの全般的なフレーズの余韻を形作る。良いボーカルソングを書くためには、どこかで余韻をもたせる箇所を作るのが最適であるという事例がこの曲では示唆されている。そしてその後、サビに戻るというかなりシンプルな構成から成り立っている。続く「Suppersup」は、しっとりとしたフォークソングで、とりわけ、アコギの録音にこだわりが感じられる。ゆったりとしていて、リラックス出来るようなインスト曲となっている。さらに、「A Long Straight Path」では赤ん坊の声の録音を用い、短いシークエンスを作る。

 

 同じようなタイプの楽曲を収録するときに、フルアルバムとしては飽きさせるという問題が生じることがある。しかし、マイア・フリードマンは、音楽的な背景の広さを活かし、それらをクリアしている。ただ、その全般的な音楽の基礎となるのは、飽くまで、フォーク・ミュージックで、その中心点を取り巻くような感じで、アートポップ、ジャズ、クラシック、さらには映画音楽を始めとする音楽の表現が打ち広がっていく。言い換えれば、フォーク・ミュージックから遠心力をつけて遠ざかるというソングライティングのスタイルがアルバム全般において通底している。また、どの部分の要素が強くなるかは、制作者やプロデュースの裁量や配分で決まり、どこで何が来るかわからないというのが、セカンドアルバムの面白さとなりそうである。

 

例えば、「On Passing」は、何の変哲もないアコースティックギターをメインとするフォークソングにきこえるかもしれない。しかし、ソングライティングの配分が傑出していて、ケイト・ルボンのようなアートポップのエッセンスを添えることで、新鮮な響きをもたらしている。

 

器楽的な音響効果というのも重視されている。「Foggy」は、グロッケンシュピールを使用して、アトモスフェリックな音楽を作り上げている。アルバムの収録曲は、すべてシングルのような形で収めることは、最適とは言えない。フルアルバムは、いわば掴みのためのシングル曲のような強進行の曲(力強い印象を放つ主役の楽曲)と、B面曲のような効果を発揮する弱進行の曲(脇役のような意味を持つ曲)の共存により成立しているのである。もしも、シングルだけを集めたら、それはオリジナルアルバムではなく、アンソロジーになってしまう。こういった中、雰囲気に浸らせるような弱進行の曲が他の曲の存在感を際立たせ、一連の流れを作り上げる。

 

マイア・フリードマンのアルバムは、フルアルバムが物語のような流れを作る模範例のようなものを示している。一貫して牧歌的な音楽性が歌われ、それは混乱の多い世界情勢の癒やしとも言えるだろう。「Vessel」は繊細な趣を持つインディーフォーク・ソングであり、いわばこれはメインストリームの音楽とは別の形で発展してきた音楽の系譜を次世代に受け継ぐものである。 そして、ここでも、エイドリアン・レンカー(Big Thief)やエミリー・スプラグ(Florist)といったニューヨークのソングライターの曲と音楽性に違いをもたらすのが、アートポップの要素だ。イントロはフォークソングだが、サビの部分でアートポップに飛躍する。つまり、マイア・フリードマンの曲は、イントロを一つの芽として、それがどのように花咲くのかという、果物や植物を育てていくような楽しさに満ちあふれているのである。 こういった女性的な感性は、成果主義や結果を追求する男性的なミュージシャンには、あまり感じられない要素かもしれない。

 

「A Heavenly Body」のようなピアノの伴奏をベースにした楽曲は、哀感やペーソスのような感情の領域を直截的にアウトプットするために存在する。ようするに、制作者は器楽的に感情表現や言いたいことを選り分けるため、楽器を使い分ける。その点では、オーケストレーションの初歩的な技法が用いられていると言える。もちろん、制作者は音楽的な変化を通じて、それらを使い分ける。マイア・フリードマンは感情の波を見定め、曲と曲を繋ぐ橋のような役割に見立てている。「Open Book」はモダンクラシカルの曲で、気品のある弦楽器がボーカルと合致している。そういった中で、あまり格式高くなりすぎないのは、オーボエの演奏に理由がある。曲そのものにルーズな感覚を与え、音楽の間口の広さのようなものを設けているのである。

 

アルバムは、連作を除いて、アルバムという一つの世界で終わりを迎えるべきである。それは一つの世界の追求を意味する。オーケストラ、ジャズ、フォーク、アートポップが重層的に折り重なる中、マイア・フリードマンの音楽的な世界は、絵本のような童話的な領域を押し広げていき、見方によっては、平穏で美しい世界を形成している。権力、動乱、混乱、闘争といった世界とは対極にある和平の世界を作り上げる人もいてはいいのではないか? そのことを象徴付けるかのように、北欧神話、ケルト神話のようなファンタジー性を持つ楽曲性が、オーケストラ楽器により構築され、北欧やアイスランドの音楽に近くなる。それは「Soft Pall Soft Hue」のような楽曲にはっきりあらわれている。室内楽として本格的な楽曲も収録されている。これらは、Rachel'sやレイチェル・グリム、あるいはアイスランドのAmiinaのような室内楽をポピュラーソングやジャズの方向から再解釈しようとしたモダンクラシカルの一派に位置づけられる。

 

そういった中で、軽快なアルバムのエンディングを迎える。「Witness」はいくつかの変遷を経て、制作者が明確な答えのようなものを見出した瞬間である。マイア・フリードマンは、長い冬を背後に、次なる新しい季節へと意気揚々とあるき出す。余韻を残すことはなく、また後味を残さない、さっぱりしたアルバム。15曲というボリューミーな構成であるが、それほど長さを感じさせない。と同時に長く楽しめるようなアルバムとなっている。個人的にはイチオシ。

 

 

 

 

85/100

 

 

 

「New Flowers」


フリーパレスチナの運動は収まりを見せる気配がない。新しくザ・マーダー・キャピタルがこの運動に加わった。マーダーキャピタルのフロントマンはこの言動は平和的な行動を促すものだと主張している。


北アイルランドのヒップホップトリオ、ニーキャップがあからさまなパレスチナ支援で物議を醸しているように、アイルランドのポストパンク・グループ、マーダー・キャピタルもまた、ステージ上にパレスチナ国旗を掲げたためにドイツでの2公演がキャンセルされた。この中にはケルンで予定されている公演も含まれている。


ザ・マーダー・キャピタルは、5月10日(土)にベルリンのライブハウスGretchenで公演を行う予定だったが、ライブ中にステージ上にパレスチナ国旗を掲揚する習慣についてバンドと話し合った結果、このイベントはキャンセルされたと報じられている。


このキャンセルに対し、ザ・マーダー・キャピタルは会場の外からパレスチナ国旗を掲げながら、次のような声明を発表した。 


「今朝、ベルリンに車を停めた。 今日ここでこの旗を掲げることが許されないとは思いもしませんでした」と彼らは説明した。



「どうすべきか、1時間も話し合った。 ステージから旗を降ろすつもりはないという決断に至った」と彼らは続けた。 「でも、"もし彼らがショーをキャンセルすると決めたらどうする?"と、起こりうる結果について話し合ったんだ」


バンドによると、ステージ上に国旗を掲げることを決めた後、それはできないと言われたという。"フリー・パレスチナ "と書かれた旗に置き換えることもできないと言われたことを明かした。


「国旗の問題だけではない。 政治的な声明についてです。 私たちにとっては、これは単なる政治的声明ではなく、人道的声明なのです。 私たちはインタビューでもずっとそう言ってきました。 政治的なことばかりではなく、毎日死んでいく人たち、虐殺されていく人たち、そしてそれは今まさに起こっていることなんだ」


「だから、僕らバンドにとって、Whoは数え切れないほどのショーでこの旗をステージに掲げてきた。 会場を満足させるためにこの旗をステージから外すのは、僕らにとって間違ったことだ。 それは賛成できない。 賛成できない。 ライブ・ミュージックやアートや演劇が、政治的な議論やそういうものから自由であるべきだと願っています」


「というわけで、できる限り早くまたご連絡します」と彼らは締めくくった。 「皆さんの支援に深く感謝します。 しかし、最も重要なことは、パレスチナを自由にしてほしいということです」



 ▪️MODEが、パティ・スミスを招聘する「コレスポンデンス」に続いて、2025年第二弾プログラムを発表

Credit: Yuichiro Noda

MODEが、パティ・スミスを招聘する「コレスポンデンス」に続いて、2025年第二弾プログラムの開催を発表しました。


今回は、銀座の空きビル地下階(コリドースクエア銀座7丁目 B1F)にて世界各国で実験的な表現を発表するアーティストたちによるパフォーマンスや映像作品のスクリーニングを開催します。



”SuperDeluxe”を共同キュレーターに迎えたMarginal Consort(マージナル・コンソート)による貴重なパフォーマンスをはじめ、Carl Stone、立石雷、Park Jiha、Aki Ondaが出演。映像作家Aura Satzと斎藤玲児による映像作品も上映します。

 

MODEの第二弾プログラムは、複合的なアートイベントです。パフォーマンス、スクリーニング、ポップアップの三つに分けられ、会期中にそれぞれ異なるイベントやパフォーマンスが開催されます。

 

パフォーマンスでは、日本の即興演奏の象徴的なミュージシャンが出演し、パフォーマンスを行います。このパフォーマンスは5月16日から3日間にわたって開催されます。

 

スクリーニングでは、 多岐にわたる分野で活躍するアーティスト、Aura Satz、そして映像作家・斎藤玲児の映像作品が上映されます。また、伝説的なアートスペースとして名高いSuperDeluxeにて開催された、さまざまなアーティストによるパフォーマンス映像の上映も行われます。

 

ポップアップイベントでは、栃木県のレコードショップ、Art Into Lifeとの協賛により、選りすぐりのレコードアイテムが並び、そしてMODEから発売された音源や書籍も販売予定。


それぞれ趣きの異なる複合的なアートイベント/パフォーマンスにご期待下さい。イベントの詳細につきましては下記をご参照下さい。

 


【パフォーマンス】  

 

・2025年5月16日(金)

Credit: 同上

 

開催日時:5月16日(金)OPEN 18:30/START 19:00


チケット料金 :前売5,500円 ※ZAIKOにて販売中


出演者:Marginal Consort


共同キュレーター:SuperDeluxe

 



プログラム初日には、日本における即興演奏の黎明期を築きあげた高柳昌行や小杉武久に師事した、今井和雄を中心に、越川友尚、椎啓、多田正美の4人で構成される伝説的即興プロジェクトMarginal Consortが出演します。

 

約3時間におよぶ長時間のパフォーマンスは、国際的にも高く評価されており、世界で年に1回から数回のみ行われる貴重なライブパフォーマンスです。

 

本プログラムは、2002年から2019年までの17年間にわたり東京を代表するオルタナティブスペースとして親しまれた”SuperDeluxe”との共同キュレーションにより開催されます。



・5月17日(土)


 

開催日時:5月17日(土)OPEN 18:00/START 18:30


チケット料金 :前売4,000円 ※ZAIKOにて販売中


出演者:Carl Stone / Rai Tateishi (Live processing by Koshiro Hino)



5月17日には、コンピュータミュージックの先駆者で、現在はロサンゼルスと日本を拠点に活動する巨匠、2002年にオープンしたSuperDeluxeの柿落としも務めたCarl Stone(カール・ストーン)によるライブパフォーマンスが行われます。


また、昨年、goat主宰の日野浩志郎(Koshiro Hino)のプロデュースによりソロアルバム『Presence』を発表したgoatのメンバーで、かつて太鼓芸能集団「鼓童」に所属していた篠笛奏者・立石雷(Rai Tateishi)も出演します。日野によるライブプロセッシングを組み合わせた最新パフォーマンスが披露されます。

 

 

・5月18日(日)


開催日時:5月18日(日)OPEN 18:00/START 18:30


チケット料金 :前売5,000円 ※ZAIKOにて販売中


出演者:Aki Onda presents Spirits Known and Unknown / Park Jiha



最終日となる5月18日には、韓国のさまざまな伝統楽器を用いて実験的なサウンドスケープを創造し、今年2月には最新アルバム『All Living Things』をリリースしたマルチインストゥルメンタリスト/コンポーザー・Park Jiha(パク・ジハ)が登場します。 

 

続いて、アーティスト/パフォーマー/コンポーザーとして、パフォーマンス、インスタレーション、映像など多岐にわたる表現を通じてジャンルを越境し、世界各地の美術館やアートセンターで作品を発表してきた恩田晃(Aki Onda)による、ベルを用いた最新パフォーマンス『Spirits Known and Unknown』が披露されます。

 

 

【スクリーニング】  

 

5月17日~18日


開催日:5月17日(土)、18日(日)


映像作家:Aura Satz / Reiji Saito / SuperDeluxe Archives 2002-2019

 


上映スケジュール: 

 

・5月17日(土)

 
①Aura Satz《Preemptive Listening》


受付開始:11:00
上映時間:11:15 - 12:45

②Reiji Saito 《13》,《17-2》,《19》,《25-2》,《27》他


受付開始:13:45
上映時間:14:00 - 16:00


チケット料金 :各プログラム 1,000円 ※ZAIKOにて販売中

 

・5月18日(日)


①Reiji Saito 《13》,《17-2》,《19》,《25-2》,《27》他


受付開始:11:00
上映時間:11:15 - 13:15



②Aura Satz《Preemptive Listening》

 
受付開始:14:15
上映時間:14:30 - 16:00


チケット料金 :各プログラム 1,000円 ※ZAIKOにて販売中

 

・5月17日(土)、18日(日)  

 

SuperDeluxe Archives 2002–2019


上映時間:12:00 - 16:00(※1F別スペースにて随時上映)


チケット料金:無料

 



スクリーニングは、5月17日と18日の2日間にわたり開催されます。

 

ロンドンを拠点に、映像・サウンド・パフォーマンス・彫刻を軸に活動するアーティストAura Satzによる初の長編映画《Preemptive Listening》の上映に加え、東京を拠点に、日常の中で撮りためた膨大な写真や動画を素材に映像作品を制作する映像作家・斎藤玲児(Reiji Saito)の初期作から近作までを集めた作品群を上映します。


また、会場1階では、2002年から2019年までの17年間にわたり、東京を代表するオルタナティブスペースとして活動したSuperDeluxe にて開催された、さまざまなアーティストによるパフォーマンス映像の上映も行います。



※本プログラムでは、1枚のチケットにつき1作品のみご鑑賞いただけます。複数の作品をご覧になりたい場合や、同じ作品を別日に再度ご覧になりたい場合は、追加でチケットをご購入ください。

 

 

【ポップアップ】

 

開催日時:5月16日(金)・17日(土)・18日(日)

パフォーマンスおよびスクリーニングの開催時間中


出店:Art into Life

 

プログラム開催期間中、栃木県益子町に実店舗を構える実験音楽及び非音楽を中心に取り扱うストア兼レーベルの”Art into Life”によりセレクトされたレコード盤やアイテムが並ぶ、ポップアップを開催します。加えて、MODEよりリリースされた音源や書籍なども販売予定です。



【会場について】 コリドースクエア銀座7丁目 B1F


各プログラムの会場となるのは、銀座コリドー通りに面したビル「コリドースクエア銀座7丁目」。再開発により間もなく建て壊しが予定されている同ビルの地下に広がるスケルトン空間を一時的に活用し、パフォーマンスとスクリーニングで構成されたプログラムが展開されます。



会場:コリドースクエア銀座7丁目 B1F

住所:東京都中央区銀座7-2-22


MAP:https://maps.app.goo.gl/ammRzVA5RfUER6aD6



【各日程の出演者】

 

・Marginal Consort(マージナル・コンソート):

©︎Chris Perry


マージナル・コンソートは1997年にスタートした集団即興の為のプロジェクト。この即興は個人が音を発するという衝動から始まり、その発音の継続が音に変化を与える。音の変化はメンバーで異なり、その異なる音が偶然に重なり音の形が生まれる。この音の形に音楽を感じた人がいればその人に音楽が生まれたのだろう。それは5分間だけかもしれないが。(今井和雄)



・SuperDeluxe(スーパー・デラックス):

 



SuperDeluxe Inc.は、2002年に多目的なスペース「SuperDeluxe」を創設するために設立されました。同スペースは、実験音楽やパフォーミングアーツの東京における代表的な拠点として広く知られ、PechaKuchaの発祥の地でもあり、日本を代表するカルチャーの発信地の一つとして位置づけられてきました。

 

SuperDeluxeは17年間にわたり、著名・無名を問わず国内外のアーティストによる数千におよぶイベントを開催しましたが、2019年に入居ビルの解体によりクローズしました。



その後2020年、SuperDeluxeは千葉県鴨川市に拠点を移し、2022年にはPermaculture AWAとともに「SupernaturalDeluxe」を始動。

 

文化財に登録された広大な敷地に位置するこの場は、表現、教育、新たな体験、リサーチ、内省のためのスペースとして開かれています。SupernaturalDeluxeは現在も進行中のプロジェクトであり、地域社会と生態系の健全性を重視した持続可能な運営を目指しています。

 

 

・Carl Stone(カール・ストーン):

 

©︎Martin Holtkamp

 
現在のコンピュータミュージックの先駆者の一人であり、ヴィレッジボイス誌は『サンプリングの王者』『現在のアメリカで最も優れた作曲家の一人』と賞賛している。彼は1986年からライブパフォーマンスでコンピューターを使用している。

 

カール・ストーンはロサンジェルスで生まれ、現在は、ロサンゼルスと日本を拠点に活躍している。カリフォルニア芸術大学で、Morton Subotnick、 James Tenneyに師事し、1972年から電子アコースティック音楽の作曲を始めたが、この分野は殆ど彼の独壇場である。

 

その作品は、アメリカ・カナダ・ヨーロッパ・アジア・オーストラリア・南米・北東アフリカなどで演奏されており、日本の中京大学工学部メディア工学科の教授を22年にわたり務めあげた。

 

現在、演奏、作曲、ツアーを勢力的におこない、世界中で活躍している。日本のアーティストとコラボレーションは、大友良英,高橋悠治、清水靖晃, 田中悠美子、渋谷慶一郎, 中村としまル,内橋和久、赤いヒル女、池田 謙、桜井真樹子、恩田晃、高橋アキ、山崎 亜美、SAEBORG、他。

 

 

・Rai Tateishi(立石雷):

 

©︎Yuichiro Noda

 
日本の限界集落に住み、自然と向き合う中で感性を磨きながら活動を行う篠笛奏者。日本を代表する太鼓芸能集団「鼓童」に入団し、国内外で公演活動を行ってきた。


鼓童退団後は、振付師、Sidi Larbi Cherkaoui、人間国宝の歌舞伎役者、坂東玉三郎、市川團十郎らと共演した。その他、リズムアンサンブル「goat」、韓国・チベット・日本の伝統音楽家による多民族芸能楽団「わたら」、パフォーマンスアーティストコレクティブ「ANTIBODIES Collective」、青森県八戸市「八太郎えんぶり組」に所属する。


近年では、従来の活動の中で培ってきた伝統的な手法とエレクトロニクスによる実験的な手法を掛け合わせ、独自の笛の表現を追求する。「goat」や「YPY」などで知られる音楽家 日野浩志郎によるプロデュースのもと、デビューアルバム「Presence」を日野が運営するレーベル「NAKID」よりリリースした。

 

 

・Koshiro Hino(日野浩志郎):

 

©︎Yuichiro Noda


音楽家、作曲家。1985年生まれ、島根県出身。現在は大阪を拠点に活動。メロディ楽器も打楽器として使い、複数拍子を組み合わせた作曲などをバンド編成で試みる「goat」や、そのノイズ/ハードコア的解釈のバンド「bonanzas」、電子音楽ソロプロジェクト「YPY」等を行っており、そのアウトプットの方向性はダンスミュージックや前衛的コラージュ/ノイズと多岐に渡る。

 

これまでの主な作曲作品は、クラシック楽器や 電子音を融合させたハイブリッドオーケストラ「Virginal Variations」(2016)、多数のスピーカーや移動する演奏者を混じえた全身聴覚ライブ「GEIST(ガイスト)」(2018-)の他、サウンドアーティストFUJI|||||||||||TAと共に作曲・演奏した作品「INTERDIFFUSION A tribute to Yoshi Wada」(2021-)、古舘健や藤田正嘉らと共に作曲した「Phase Transition」(2023)、等。

 

佐渡を拠点に活動する太鼓芸能集団「鼓童」とは2019年以降コラボレーションを重ねており、中でも延べ1ヶ月に及ぶ佐渡島での滞在制作で映像化した音楽映画「戦慄せしめよ/Shiver」(2021、監督 豊田利晃)では全編の作曲を日野が担当し、その演奏を鼓童が行った。

 

音楽家・演出家のカジワラトシオと舞踊家・振付家の東野祥子によって設立された”ANTIBODIES Collective”に所属する他、振付師Cindy Van Acker「Without References」、映画「The Invisible Fighit」(2024年公開、監督Rainer Sarnet)等の音楽制作を行う。エストニアフィルムアワード「EFTA2024」にて映画「The Invisible Fighit」の最優秀作曲賞を受賞。 

 


Aki Onda(恩田晃):

 

©︎Chris Uhren

 

アーティスト、パフォーマー、コンポーザー。長らくNYに暮らしていたが、現在は水戸を拠点にしている。

 

過去30年間に渡って録り溜めたフィールドレコーディングによるサウンド・ダイアリーを用いたプロジェクト《カセット・メモリーズ》で知られ、「記憶」にまつわる作品群を制作してきた。近年は、ラジオ、ベルなどのメディウムを用いたプロジェクトも行う。

 

パフォーマンス、インスタレーション、映像など、多肢に渡る表現形態でジャンルを越境し、ポンピドゥー・センター、ルーブル美術館、パレ・ド・トーキョー、ドクメンタ、ロッテルダム国際映画祭、MoMA、MoMA PS1、ウォーカー・アートセンター、ナム・ジュン・パイク・アートセンターなどで作品を発表。

 

加えて、キュレーターとしての仕事も継続し、過去にはTPAM-国際舞台芸術ミーティング in 横浜(現YPAM)で、現在はバンクーバーのウェスタン・フロントでプログラムを組んでいる。



Park Jiha(パク・ジハ):

 

©︎Marcin  T Jozefiak

 

韓国の作曲家Park Jihaは、伝統と即興の間を巧みに行き来しながら、古典的な枠組みを揺るがし、古楽器に新たな息吹を吹き込んでいる。

 

正統な音楽教育を経た彼女は、ヤングム(打弦楽器)、セァンファン(フリーリード式の笛)、ピリ(竹製のダブルリード笛)を独自に再構築し、革新的でミニマルなスタイルを生み出している。時代を超越するかのような彼女の哀歌は、深く瞑想的でありながら劇的なダイナミズムも併せ持ち、常に明日を予見するような響きを放っている。

 

2018年にソロ作品『Communion』でデビューし、2019年の『Philos』、2022年の『The Gleam』と、作品ごとにその手法を研ぎ澄ませてきた。創造の新たな地平を果敢に切り拓く中で、2022年には、リバプール出身の詩人、ロイ・クレア・ポッターとの予測不能なコラボレーションをBBC Radio 3の「Late Junction」で録音 Café OtoのレーベルOtorokuからリリースされた。

 

映画音楽にも初挑戦し、ガース・デイヴィス監督による気候変動を題材にした心理スリラー『Foe』では、オリヴァー・コーツとの対比と交錯の中で、滅びゆく地球を音で描き出した。
 

現在、彼女は新作アルバム『All Living Things』(2025年2月リリース/Tak:tilおよびGlitterbeat)を発表し、ツアーも敢行している。すべての生きとし生けるものに捧げるオマージュとして、その響きを世界に届けている。


 

 Aura Satz(オーラ・サッツ):

 

©︎Paul Winch-Furness

 
Aura Satz(1974年バルセロナ生まれ)は、ロンドンを拠点に活動するアーティストで、映像、サウンド、パフォーマンス、彫刻などを手がけています。

 

彼女の作品は、「声」という概念を分散的・拡張的かつ共有可能なものとして探求しており、対話を手法であると同時にテーマとして用いながら制作されています。

 

これまでに、リスニングや作曲の実践を描いたフィルムポートレート、音響技術や独特な記譜法を題材にした作品などを数多く制作してきました。
 

長編初監督作となる『Preemptive Listening』は、ウォーカー・アート・センターおよびEMPACでのアーティスト・レジデンシーの支援を受け、王立芸術大学(RCA)におけるAHRCフェローシップの助成を受けて制作されました。


これまでに、テート・モダン、BFIサウスバンク、ヘイワード・ギャラリー、シドニー・ビエンナーレ、NTTインターコミュニケーション・センター(東京)、ハイライン・アート(ニューヨーク)、ロッテルダム国際映画祭、MoMA(ニューヨーク)、シャルジャ・アート財団、カディスト・サンフランシスコ、オナシス・ステギ、ソニック・アクトなど、世界各地でパフォーマンス、展示、上映を行ってきました。


また、ウェルカム・コレクション、ヘイワード・ギャラリー・プロジェクトスペース、ジョン・ハンサード・ギャラリー、ジョージ・イーストマン美術館、ダラス・コンテンポラリー、ARTIUM(バスク現代美術館)、クンストネレス・フスなどで個展を開催し、ロッテルダム映画祭、ニューヨーク映画祭、テート・ブリテン、ホワイトチャペル・ギャラリーなどでも特集上映が行われています。彼女の映像作品は、LUXによって配給されています。

 

 

Reiji Saito(斎藤玲児):

 

©︎ Nils Junji Edström

 
映像作家。2008年より日々撮りためた大量の写真と動画を素材とした映像作品を制作。東京を拠点に国内外の展覧会、映画祭で作品を発表。

 

断片化、抽象化された映像は情報を失い、それらを継ぎ合わせた作品は絵画のようでも彫刻のようでもありながら、時間そのものがより純度の高いものとして立ち現れる。 

 

近年の展示/上映には以下のような作品がある。『PAF OLOMOUC 2024』(オロモウツ)、『斎藤玲児レトロスペクティブ』(SCOOL / 東京)、『European Media Art Festival 2024』(Lagerhalle / オスナブリュック)、『断片と空白のあいだ』(BnA Alter Museum / 京都)、『松果体刺身』(合美術館 / 武漢)、『具ささ』(青山|目黒 / 東京)、『27  28 29』(People / 東京)、『25-3』(外 / 京都)、『斎藤玲児作品特集 -Experimental film culture vol.4 in Japan-』(ポレポレ坐 / 東京)、『25』(gFAL / 東京)、『A WAY OF DOCUMENTATION』(Á Space / ハノイ)、『Art au Centre』(リエージュ)、『24』(LAVENDER OPENER CHAIR / 東京)、『And again {I wait for collision}』(KINGS / メルボルン)、『5月』(以外スタジオ / 東京)、『野分、崇高、相模原』(八王子市・相模原市内)、『01』(pe.hu / 大阪)、『鈴木光/斎藤玲児 映像上映』(KAYOKOYUKI / 東京)、『もうひとつの選択 Alternative Choice』(横浜市民ギャラリーあざみ野 / 神奈川)など。 


 

Art into Life(アート・イントゥ・ライフ):



実験音楽及び非音楽を中心にセレクトしたウェブショップとして2006年に始動。2012年に同コンセプトのレーベルを設立、現行の音楽家の録音、復刻作品を合わせ、現在まで30タイトル以上を出版。 

 

2017年には栃木県益子町に実店舗をオープンした。 現在は店補運営を基軸に置き、より汎用性の高いアプローチを模索。



【開催団体】


主催:MODE


助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【芸術文化魅力創出助成】(採択団体:株式会社YY)


Vernon Spring(ヴァーノン・スプリング)は、ノース・ロンドン出身のミュージシャン、サム・ベステのレコーディング・プロジェクト。

 

サム・ベステは幼い時代からジャズ、フォーク、現代音楽ネオソウルに親しみ、幅広い音楽的なバックグランドを持つ。さらに彼は元々バックミュージシャンとして活動していて、音楽的なセンスに磨きをかけてきた。その中には、エイミー・ワインハウスのライブステージを背後から支えたという功績がある。サム・ベステの音楽は、こういった世界的なスターの背後で培われた。

 

ベステが最も早く音楽に触れたのは、セロニアス・モンクからボブ・ディラン、ディアンジェロからルイジ・ノーノまで、多彩なレコード・コレクションを持つ父親の影響だった。 11歳のとき、偶然のピアノ・レッスンがベステを重要な方向へと導き、即興演奏への継続的な情熱を促し、彼の人生の軌跡を形作った。


かれのたゆまぬ努力と才能は、エイミー・ワインハウスの成功の軌道に乗せられ、彼女の出世作の大半をライブ・ピアニストとして伴奏した。 この2人のペアは、ガブリエルズ、ケンドリック・ラマーのプロデューサー、サウンウェーブ、ベス・オートン、カノ、ジョイ・クルークス、マシュー・ハーバート、MFドゥームなど、他の重要で多様なコラボレーションへの道を開いた。


20代半ばにアルト・ソウルの”Hejira”で何年も作曲とリリースを行った後、ベステは”Lima Limo”という集団とレーベルの結成に協力、支援的なコミュニティと刺激的な創造的基盤を提供した。その後、サム・ベステは表舞台に出る準備が整ったとばかりに、ソロ活動を始めた。 2019年までに、ザ・ヴァーノン・スプリングを名乗り、ソロ作品をリリースし始め、ジャズのバックグラウンドと現代的なエレクトロニック・プロダクションを融合させた歌声を展開した。 


『A Plane Over Woods』や『Earth, On A Good Day』を含む彼のデビューEPとその後のリリースは、エモーショナルなヴォーカルと繊細なエレクトロニクスを重ねた幽玄なピアノ・ワークから構成される特徴的なサウンドを確立した。2021年のデビュー・アルバム『A Plane Over Woods』はロングセラーを記録。その後、LPのみでリリースしたマーヴィン・ゲイの名作『What’s Going On』を独自に解釈したアルバム『What’s Going On』も高い評価を獲得した。


ニューアルバム『Under a Familiar Sun』は、アイスランドの著名な作曲家、ピアニスト、さらにKiasmosとしても活動するÓlafur Arnalds(オーラヴル・アーノルズ)が主宰するレーベル”OPIA Community”(EU)、RVNG Intl(US)、インパートメント(JP)の3レーベルからの共同リリースとなる。 これはヨーロッパ、北米、そして日本を超える新しいリリースの形態である。


最新作『Under a Familiar Sun』は、彼の芸術的進化の幅の広さと深みを物語る。作曲とプロセスに基づく長い実験期間を経て生まれ、これまでの即興的なプロダクションから、複雑なアプローチへの転換を果たした。

 

サムは、プロデューサーのIko Nicheと一緒に、彼自身の所有するレコーディングスタジオでアルバム制作を進行させるなかで、彼は音楽的な背景を包み隠さず披瀝している。ヒップホップの影響や、サンプリングを活用した前衛的な手法を取り入れながら、The Vernon Springらしいピアノ・コンポジションを全編にわたって貫き、前人未到のサウンドスケープを描き出す。


本作には、ソロプロデューサーの音楽を通じて、未知の世界の扉を開く、というコンセプトがある。その案内役をつとめるが、複数のコラボレーターである。また、それはベステの別の人を通じて新しい音楽を発見するというキャリアを象徴づけるものだといっても過言ではないはずである。アルバムの案内役、それは彼に近しいミュージシャンだけとは限らない。全く異分野のミュージシャン、ないしは、その表現者たちは、ベステの音楽に鮮やかな命を吹き込む。


「The Breadline」の詩でアルバム全体のコンセプトにインスピレーションを与えた作家のMax Porter(マックス・ポーター)直感的なアレンジが没入感のあるレイヤーと深みを加えたチェリストのKate Ellis(ケイト・エリス)、ブルックリンを拠点に活動するヴォーカリスト、プロデューサー、作家、天体物理学博士のadenが参加し、それぞれ魅惑的な表現で作品に命を吹き込んでいる。

 


The Vernon Spring 『Under a Familiar Sun』- OPIA Community(EU)/RVNG(US)/p*dis・ Impartment (JP)

 


 

サム・ベステのニューアルバム『Under a Familiar Sun』 が駆け出しの新進ミュージシャンが制作したものではないことは、それなりに多くの音楽を聴いてきた方であれば理解していただけるだろうと思う。そして、彼の音楽的な才能は、エイミー・ワインハウスのピアノ演奏者として活躍していたことからも分かる通り、共演者の音楽性を際立たせることにある。もちろん、ソロミュージシャンとしての独自性も加わり、説得力のあるアルバムが完成したと言えるだろう。

 

本作は、ヒップホップ、ネオソウル、ブレイクビーツを基調とした都会的な空気感を吸い込んだスタイリッシュなモダンクラシカルのアルバムである。もちろん、アンビエントの要素もあるが、Autechreの”ノンリズム”が騒がれていた時代のビートが希薄なダンス・ミュージックとはかけ離れている。サム・ベステの音楽やアウトプットには明確なリズムが示唆される。そして、控えめではあるが、微かなグルーヴも感じられる。エレクトロニカのブレイクビーツのリズムがワインハウスの次世代のネオソウルと絡み合い、新しいモダンクラシカルの形が登場したと言える。

 

次のモダンクラシックの主流となるのは、間違いなく、ダンスミュージックやネオソウルといったジャンルとの融合で、もちろんボーカルも入る可能性がある。最終的には、全般的なポピュラー、ダンス、フォーク、ジャズとの融合が、今後のモダンクラシカルの主眼となりそうだ。直感的なミュージシャンはすでにその気配を察知している。これはクラシック音楽がその時代の流行のジャンルを吸収し、発展してきたことを考えれば、当然の成り行きではないかと思う。

 

 

 『Under a Familiar Sun』は、ザ・スミスの未発表のアルバムのタイトルのようである。部分的には、イギリスの音楽の気配をどこかに留めている。ただ、これはイギリスの音楽というよりも、2000年以降のグローバリゼーションの時代を反映した”EUの音楽”とも言える。また、言い換えれば、なんでも簡単に気安く取り出せる”インターネット時代の音楽”とも呼べるかもしれない。そして、ヴァーノン・スプリングは持ち前の傑出したプロデュース技術を駆使しながら、変幻自在なビート、作風、そしてアンビエンスを用い、アルバムの意義を紐解こうとする。

 

アルバムとは、写真のファイルようなもので、各々の曲を聞くごとに、異なる情景やシーンが順繰りに繋がっていく。そして、こういった科学的には解明しがたい不思議なイメージの換気力は、例えば、そのアルバムをリアルタイムで聴いていた時点から、十年、二十年が経って、アルバムを聞き直したとき、その時代の出来事をぼんやりと思いださせることがある。そう、記憶の蘇生ともいうべき効果を発揮するのである。つまり、その瞬間、本来は、一方的であるはずの音楽制作やその演奏という営為が、コネクションとしての意義を与えられることになる。


そして、再三再四申し上げているように、アルバムは単なる曲の寄せ集めとはかぎらない。 制作者が込めた思い、それが別の形をとってぼんやり流れていく、そんな不思議な感覚なのである。そしてそれが聞き手側の感覚と共鳴したとき、感情的な交流のようなものが発生する。見ず知らずの人の考えを掴んだり、そしてどんな背景であるのかを断片的に理解するということである。

 

このアルバムは、音楽が、文学、映画、絵画といった他の媒体と連動するような形で成立し、それが人生の反映させる効果があることを思い出させる。彼の音楽には、幼い時代に音楽を聞き始めたころ、多感な時期に音楽に夢中になったころ、バックミュージシャンであったころ、それから、ソロアーティストとしての人生を選ぶことになったころ、そういった追憶が連なり、幾重もの層を作り上げている。ヴァーノン・スプリングの音楽的な観念の世界には、明確なジャンルの選り分けという括りのような概念は存在しないのかもしれない。言い換えれば、サム・ベステは、どのような音楽も、自分の友人や子供のように愛してきたことをうかがわせるのだ。



Photo: Saoirse Fitzpatrick


 

アルバムは、ブレイクビーツをネオソウルと結びつけた「Norton」で始まる。そして実際的にヴァーノン・スプリングの音楽がコラージュアートのように断片的なマテリアルを中心に組み上げられるのはそれなりの理由があり、それは記憶の代用としての機能を持つからである。その切れ切れの音源のリサンプリングは、彼の人生の歩みを映し出すように、音楽的なシーンが流れていく。


それはバックミュージシャンの時代から始まり、かなり広い年代の記憶を音楽という形で収めている。それが音楽的にはヒップホップのビートとピアノのリサンプリングというネオソウルのいち部分を形成する彼独自の手法で展開されることは言うまでもない。特に、オープニングの場合は、ネオソウルのコーラスワークという部分に最もきらめく瞬間がある。これはワインハウスに対する何らかの追憶のようなものが込められているといえる。

 

 

ムードたっぷりで始まり、アーバンなUKソウルというのをひとつの出入り口として、『Under a Familiar Sun』の音楽は異分野の表現形態と結び付けられる。「The Breadline」はジャズ/ソウル風のピアノがスポークンワードと合わさり、Benjamin Clementineのようなシアトリカルな音楽に変化する。


マックス・ポーターは、この曲に文学的な感性を付与し、音楽の領域を見事に押し広げる。この曲はロマンティックな変遷を辿り、その最後にはゴスペル風のコーラスで最も美しいモーメントを作り上げる。全般的には、音楽というものが、ひとりだけの力では成立しえないことを知っているからこそ、彼はこういった友愛的な音楽を作り上げることが出来るのかもしれない。

 

「Musutafa」は、OPIA Communityらしい独自のキャラクターを押し出されたUKソウルである。ヴァーノン・スプリングは、コラボレーターのIko Nicheと共同制作をしたとき、ヒップホップの魅力を体感するようになったというが、そういった異分野への興味がこの曲には反映されている。モダンクラシックのピアノ、サンプリング、先鋭的なエレクトロニクスの処理、そしてネオソウルの範疇にある美麗でソウルフルなボーカルという、スプリング独自の形が出来上がった。この曲では前曲に続き、現在のゴスペルがどのように変わったかを実感することができる。

 

プロデューサーとしての敏腕の才覚を伺わせる「Other Tongues」はアルバムのハイライトの一つ。この曲では、ミュージック・コンクレートの手法を用い、ジャズ・ボーカルの新しい境地を切り拓く。

 

同じようにゴスペルを基調にした曲であるが、トリップ・ホップの要素、ダークな質感を持ったネオソウルを踏襲し、UKソウルの新境地に達している。アトモスフェリックなサウンド、スポークンワードのサンプリングの導入、これらが一緒くたとなり、メインの演奏を構成し、ピアノで伴奏をする。ただ、この場合もピアノはアコースティックの本来の音を活かすのではなく、ケージやノーノ以降のデチューニングされたリサンプリングのピアノが録音の中で存在感を持つ。

 

それは2つのボーカルの録音の背後で、ソロ演奏として存在感を増したり、それとは対象的に存在感を薄めたりしながら、絵の具の色彩のように緻密で淡いハーモニクスを形成する。こういった曲を聴くと、どのようなジャンルも単体では存在しえないということがわかるかも知れない。

 

「Other Tongues」 

 

 

中盤の二曲は、 モダンクラシカルの象徴的なミュージシャン、Olafur Arnoldsの系譜にある曲として楽しめるに違いない。ただ、タイトル曲、「Fume」はいずれもミュージック・コンクレートの性質が強いが、タイプが少しだけ異なる。タイトル曲はポストクラシカル風の曲で、遊び心のあるピアノのパッセージを組み合わせて、前衛的なサウンドを作り出している。「Fume」はアンビエントとスタイリッシュなビートを背景に、ネオソウルを抽出したインスト曲である。

 

 

「In The Middle」はアルバムの中盤のハイライトである。弦楽器の微細なトレモロをイントロに配して、徐々に曲の雰囲気が盛り上がっていく。 重層的なストリングスとボーカルが精妙な空気感を放つ。ピアノの叙情的な伴奏を背景に、同じく琴線に触れるようなボーカルが乗せられる。


アンセミックに歌い上げられるタイトルを含む歌詞の箇所は、ポール・ガイガーのような前衛的な奏法を組み合わせることで曲にメリハリがもたらされる。コラールの輪唱がボーカルとピアノの交互に演奏され、別の音域に主要なモチーフが出現するという側面を見ると、プロデュースの形を取って現れた''新しいフーガ''とも呼ぶべき構成である。そして、サム・ベステのソングライティングは基本的に、ゴスペルやコラールにある神妙な雰囲気を感じ取ることが出来る。

 

ピアノがアコースティックでそのまま出力されることは稀有である。波形のモーフィング、ディレイ、リバーヴを駆使し、夢想的でアトモスフェリックな音像を作り出す。これは残響的なサウンドで、音響派の音楽に近い。そして落ち着いてはいるが、陶酔感に満ちた独特な雰囲気を作り出す。こういったアシッドハウス的な雰囲気については、好き嫌いが分かれる箇所かもしれない。


しかし、サム・ベステの紡ぎ出す演奏は、シンプルだけど深みがある。たとえ脚色的なサウンドであることを加味しても、本質的なコアが込められている。夜の雰囲気、そして祝福的な感覚は、UKネオソウルの核心と一致するものである。


前の曲と連曲の構成をなす「Esrever Ni Rehtaf」では、ミュージシャンの過去が暗示的に表され、子供の声のサンプリングとして出現する。これらは、現実性と物語性が陸続きにあることを伺わせ、リアリティの一端を語るための機能を果たす。そして、それはなぜか温かい雰囲気に縁取られている。ジャズ風の軽やかなパッセージ、ボーカルが組み合わされ、ネオソウルの新機軸が示される。

 

 

アルバムの終盤にはもう一つハイライトがある。「Counting Strings」は、ピアノの同音反復による通奏低音、木管楽器がイントロに配された、スタイリッシュな雰囲気を持つ曲である。ボーカルが入ると、この曲は、ダイナミックでゴージャスなネオソウルへと変化していく。他の曲はコラージュサウンドが行き過ぎ、まとまりがつかない部分もあるものの、この曲は非常に研ぎ澄まされている。前曲と同様に謎めいたシンガー、adenの歌唱の魅力を引き立てている。

 

 「Requiem for Reem」は、フレドリック・ショパンの『ノクターン』を彷彿とさせる。基本的には、夜想曲の雰囲気に近い。しかし、このノクターンの形式は、サム・ベステのプロデュースにより、現代的なエレクトロニクスと組み合わされ、アーバンな空気感に縁取られている。演奏の合間には、アンビエント風のシークエンスが配され、休符による静寂を電子音楽で表現している。レクイエムと題されているので、追悼曲と思われる。しかし、やはり美麗なピアノの演奏を引き立てているのは背景のシークエンスであり、全体には祝福的な音が敷き詰められている。アルバムの終曲は''ポスト・トム・ウェイツ''とも呼ぶべき祝祭的なピアノバラードである。



 

このアルバムは、後半部にハイライトが多いため、聞き逃さないようにしていただきたい。それはヴェーノン・スプリングのミュージシャンとしての人生を反映するかのように、ネオソウルを入り口とし、様々な音楽が無尽蔵に飛び交う。さまざまな人種が渦巻く多文化のイギリスの都市性を反映した音楽といえ、制作者の心にはそれらを許容して慈しむような感覚が溢れている。

 

ネオソウルから始まり、音楽全般が多彩な形で反映される。やはり、その手解きをするのが複数の秀逸なコラボレーターである。このアルバムには、白人の音楽もあり、黒人の音楽もある。そして古い音楽も、新しい音楽もある。掴み所がないようでいて、実は核心のようなものが存在する。

 

感覚的な音楽とも言え、アーティストは必ずしもそれらを明瞭な形で表現しようと思っていないらしい。これは、良い音楽には多くの言葉を費やす必要がないという考えのあらわれのように思える。ぼんやりと遠方に鳴り響く祝福的な楽の音、それは、ジャズ、ソウル、ヒップホップ、クラシックと様々な形をとって、アルバムの節々に立ち現れ、聞き手を飽きさせることがない。

 

 

85/100 

 

 

 「Requiem for Reem」

 

 

▪ The Vernon Spring(ザ・ヴァーノン・スプリング)のニューアルバム『Under a Familiar sun』は、OPIA Communityから(日本ではp*dis/インパートメントから)本日発売されました。各種ストリーミングはこちら




 【国内盤 リリースのご案内】


アーティスト:The Vernon Spring(ザ・ヴァーノン・スプリング)

タイトル:アンダー・ア・ファミリア・サン(Under a Familiar Sun)

品番: CD: PDIP-6612 / LP: PDIP-6613LP

価格:CD:2,500円(税抜)/LP:2,750円(税込)

LP: 5,000円(税抜) / 5,500円(税込)

発売日:2025年5月9日(金)

バーコード:CD: 4532813536125 / LP: 4532813536132

フォーマット:国内盤CD / LP / デジタル

ジャンル:ポスト・クラシカル・ジャズ / アンビエント


レーベル:p*dis

販売元・発売元:株式会社インパートメント


パッケージ仕様:ブラックヴァイナル+グロススポット加工ジャケット+プリントインナースリーヴ+帯トラックリスト


トラックリスト:


 1. Norton

2. The Breadline (feat. Max Porter)

3. Mustafa (feat. Iko Niche)

4. Other Tongues

5. Under a Familiar Sun

6. Fume

7. In The Middle

8. Fitz

9. Esrever Ni Rehtaf (feat. aden)

10. Counted Strings (feat. aden)

11. Requiem For Reem

12. Known

Andy Tongren

ブルックリンのシンガーソングライター、アンディ・トングレン(ヤング・ライジング・サンズのフロントマン)のデビューシングルとミュージック・ビデオ「So Good」をリリースした。


さらりとしたアコースティックギターの弾き語りからロックバンガー風のダイナミックなサビに移行する瞬間にカタルシスがある。


この曲は、冬の時期に書かれたこともあってか、温かい春の到来へのひそかな期待が込められている。そこには人間の生きる営みのサイクル、そして希望のメッセージがある。


アンディ・トングレンはヤング・ライジング・サンズのフロントマンとして知られ、2億2,500万回以上のストリーミング再生数を誇り、ザ・1975、ウィーザー、ブリーチャーズ、ホルシーなどのオープニングを務めている。 


インディー・ポップ・ミーツ・フォーク・ロックのシングルは、シンガーいわく「次に何が起こるか心配することなく、屈託のない無謀なエネルギーで現在を受け入れることを歌っている。 暗くて孤独に感じられる世界で火種を見つけ、それにガソリンを注ぐ。  セロトニンの短いヒットを感じるために、高揚感を追い求めることなんだ」


アンディ・トングレンは自他ともに認める楽天家である。 ブルックリンを拠点とするこのシンガー・ソングライターは言う。 


「私の根底にあるのは、私にできることは他に何もないという率直な気持ちなのです」


その晴れやかな性格が、デビュー・シングル "So Good "の光り輝く核となっている。 この気楽でコンパクトな曲は、アコースティックをバックにしたヴァースから始まり、喜びと暖かさを放つ至福のコーラスへと続く。


芸術の偉大な皮肉として、トングレンは「So Good」がそうでない状況から生まれたと言う。 


「面白いもので、この曲は暗い場所から生まれたようなものなんだ。 ブッシュウィック郊外の寒くて暗い地下室に住んでいて、毎日を何とかやり過ごそうとしていた...。冬が始まって、少し暖かさを感じたかったんだと思う」


トングレンは、"So Good "を何よりも雰囲気を捉えたものにしたかった。 「書くことへのアプローチに過度な尊さはなかった」と彼は説明する。 


「芸術と商業の融合に伴う些細なこと...、それにとらわれるのは簡単だ。しかし、 ''So Good''では、何も考えず、ただ書いただけさ」


「少しずれていても、そのままでいいと思った」と彼は続ける。 「なぜなら、この作品には本当の人間的な要素があるのだから」


オハイオ出身の彼が、ニューヨークとニュージャージーの国境を越えて結束の固い友人たちと前身バンド、ヤング・ライジング・サンズを結成して以来、彼の作品がファンに愛されてきたのはそれなりの理由がある。彼の曲には、AIにはないもの、そう、リアルな人間的な要素が込められているからだ。


デビュー・シングルの "High "は聴衆の度肝を抜き、インタースコープ・レコードとの契約と、The 1975、Weezer、Bleachers、Halseyなどのオープニングを務める、めまぐるしいツアー・スケジュールにつながった。


''So Good''で、トングレンは彼のキャリアのエキサイティングな新章を書き始め、ツアーに戻り、彼のようにどんな困難にも負けず、良いものを探し続けるファンとつながろうとしている。 


「それは今のところ、私という人間そのものなんだ。 自分が書いたもの、あるいは自分が関わったものに対して人々が反応するのを見るのは、言葉では言い表しがたい。 私はいつもその感覚を追い求めているんだ」

 

 

「So Good」




 

 
Brooklyn singer-songwriter Andy Tongren (frontman of Young Rising Sons) has released his debut single and music video, “So Good.”


There is a cathartic moment when the song transitions from a crisp acoustic guitar strumming to a dynamic chorus in the style of a rock banger. The song was written during the winter season and is filled with anticipation for the arrival of a warm spring. There is a message of the cycle of human life and hope.

 

By his own admission, Andy Tongren is an optimist. “I really do try and find the silver lining any way I can,” says the Brooklyn-based singer/songwriter. “At my core, I feel like there’s nothing else I can do.”


That sunny disposition is the glowing core of his debut single “So Good.” The easygoing, compact tune is driven by an acoustic-backed verse before launching a blissful firework of a chorus that radiates joy and warmth - perfect for a summer playlist or a crucial year-round dopamine hit.


In one of art’s great ironies, Tongren says “So Good” was born of circumstances that were anything but. “It’s funny - it kind of came from a dark place,” he admits. “I’m living in a cold, dark basement on the outskirts of Bushwick, trying to get by day to day…Winter was starting and I think I just wanted to feel a little bit of warmth.”


Tongren wanted “So Good” to capture a vibe more than anything else. “I wasn’t overly precious with the approach to writing,” he explains. “All the minutiae that comes with blending art and commerce…it’s so easy to get caught up in that. On ‘So Good,’ I didn’t think - I just did.


“If it’s a little bit off, leave it,” he continues. “There’s real human elements in this.”


And real human elements are what Tongren’s fans have loved about his work ever since the Ohio-born musician formed his previous band, Young Rising Sons with a tight-knit group of friends across the New York-New Jersey border. Their debut single “High” dazzled audiences,leading to a deal with Interscope Records and a dizzying tour schedule that found the group opening for The 1975, Weezer, Bleachers, Halsey and more.


With “So Good,” Tongren is starting to write an exciting new chapter of his career, looking to return to the road and connect with fans who, like him, continue searching for the good against all odds. “It’s in the fabric of who I am at this point,” he says. “Seeing people react to something you’ve written or been a part of, there’s no words to describe that. I’ve always found myself chasing that feeling.”

 

・Upcoming show:

June 22: Berlin, NYC 

 


 


レインコーツのジーナ・バーチ(Gina Birch)がセカンド・ソロ・アルバム『Trouble』を発表した。

 

 2023年の『I Play My Bass Loud』(レビューを読む)に続くこのアルバムは、7月11日にThird Manからリリースされる。 前作同様、キリング・ジョークのユースがプロデュースを手がけた。 


リード・シングルの「Causing Trouble Again」は、バーチの1977年の短編映画『3 Minute Scream』を含む、テート・ブリテンで開催されたフェミニズム・アートとアクティビズムの展覧会、2024年の『Women in Revolt』にインスパイアされた。

 

 この騒々しいポストパンク大作は、何人かの女性アーティストが、自分たちにインスピレーションを与えてくれた女性の名前を自分で言って録音している。


ディーン・チョークリーが監督した「Causing Trouble Again」のミュージックビデオには、バーチのレインコーツのバンドメイトであるアナ・ダ・シルヴァをはじめ、ローラ・ロジック(X-レイ・スペックス、エッセンシャル・ロジック)、エイミー・リグビー、ネオ・ナチュリストの共同設立者クリスティン・ビニー、画家のデイジー・パリス、アーティストのジョージナ・スター、作家のジル・ウェストウッド、アーティストで活動家のボビー・ベイカー、衣装デザイナーのアニー・シモンズ、写真家のシャーリー・オローリンなどが友情出演している。


"Causing Trouble Again "のビデオでは、ボブ・ディランが白いはしごを水に浸して歌っているのを聞いてから、白いはしごに夢中になった。 

 

「これはヤコブの梯子と地上から天国へのつながりを表しているのだと後で気づいたけど、梯子を "乗る"、"立ち上がる "の象徴として考えていたんだと思う。 私は、このはしごを使って4人で振り付けをした動きをしたかった。 梯子を持ってどう動くか。 一緒に動くのか、戦うのか、踊るのか?」


「また、映画『ザクロの色』の風のシーンを参考にしたかったし、『ウーマン・イン・レヴォルト』展のアーティストの女性たちをできるだけ多く登場させたかった。 彼女たちには厄介者になってほしかったし、"トラブルを引き起こす!"と叫んでほしかった。 結局、撮影に参加できる知り合いのアーティスト・ミュージシャンの女性たちを全員招待したんだけど、素晴らしい女性たちの出会いになった」



「Causing Trouble」

 

 

Gina Birch 『Trouble』

Label: Third Man

Release: 2025年7月11日

 

Tracklist:


1. I Thought I’d Live Forever

2. Happiness

3. Causing Trouble Again

4. Cello Song

5. Keep To The Left

6. Doom Monger

7. Don’t Fight Your Friends

8. Nothing Will Ever Change That

9. Hey Hey

10. Train Platform

11. Sleep (Digital-Only Bonus Track)

 

このアルバムでバーチは、グラミー賞受賞プロデューサーでキリング・ジョーク創設メンバーのユース(ポール・マッカートニー、ザ・オーブ、ザ・ヴァーヴ)、エンジニア/ミキサーのマイケル・レンダル(ピーター・マーフィー、ジーザス・アンド・メリー・チェイン)と再びタッグを組んだ。


「レコードのタイトルは、私の人生で起こった小さな革命のすべてを指している」とジーナ・バーチ。「普通の道をたどらず、穴に落ち、何度も同じ間違いを犯し、秘書、母親、セックスワーカーという選択肢が一般的だった時代に若い女性であることのトラブル。私が引き起こしたトラブルと、私が今いるトラブル......」

©︎Daniel Topete

サッカー・マミー(ソフィ・アリソンのプロジェクト)は、2024年のアルバム『エバーグリーン』(レビューを読む)を再構築したEP『Evergreen (stripped)』を6月6日にロマ・ヴィスタからリリースすると発表した。 

 

この再構築では、アルバムのハイライト曲をピックアップし、ロック主体の原曲をアコースティックソングに組み直し、曲の持つメロディーの良さを引き出そうと試みている。

 

ソフィー・アリソンは新曲「She Is (stripped)」を公開し、現在進行中のワールド・ツアーを延長し、今年9月に2度目のアメリカ公演を行うことを明らかにした。


『Evergreen (stripped)』には、ジミー・キンメル・ライブで初披露された「Driver (stripped)」を含む、アリソンの4枚目のアルバムからの5曲のリワーク・ヴァージョンが収録されている。


オリジナル・ヴァージョンの「She Is」はエバーグリーンの最終トラックリストには入らなかったが、アリソンはプレスリリースで、この曲が彼女の心の中で特別な位置を占めていることを明かした。


「この曲はエバーグリーンのトラックリストには入らなかったけれど、私にとって特別な曲だった。 この曲はエバーグリーンに収録されなかったけど、私にとってずっと特別な曲だったの」


アコースティックな曲で、誰かを、痛みを引き起こすこともある拠り所として描写している。"She Is "には、"[She is] the one I think of when I'm losing faith/ The one who leads me back this way "といった歌詞がある。


サッカー・マミーは今年来日公演を予定しています。12月2日には大阪アニマ、3日には東京リキッドルームで公演を開催する。

 

 

 「She Is (stripped)」




Soccer Mommy  Evergreen (stripped) EP

 

Label: Loma Vista

Release: 2025年6月6日

 

Tracklist:

 

1. Abigail (stripped)

2. She Is (stripped)

3. Driver (stripped)

4. Some Sunny Day (stripped)

5. Thinking Of You (stripped)

6. M (stripped)

 

 The New Eves   Photo:Katie Silvester

ブライトンを拠点とする4人組、The New Eves(ザ・ニュー・イヴス)が本日、記念すべきデビューアルバム『The New Eve Is Rising』をトランスグレッシヴ・レコードより2025年8月1日にリリースすることを発表した。 レーベルが送り出す期待の若手バンド、今後の活躍に注目しよう。


この発表には、アルバムのオープニング曲 "The New Eve "とトラック "Rivers Run Red"、そしてビジュアライザーが添えられている。(ストリーミングはこちら


''The New Eve"は、マニフェストのような重要な役割を果たしている。雰囲気のある呪文であり、彼らの世界への開かれた扉でもある。それは以下のファンタジックな詩を見てみるとよくわかる。


 ''新しいイヴは土のもの/花崗岩、黄土色、マグマ、土/彼女の体の骨はすべて聖なるもの/彼女のポケットの中の石はすべて家庭的なもの。そこには反抗心があるが、それは誰にでも開かれている。''


バンドは言う。「この詩はニーナがスウェーデンの山中にある家族の山小屋で書いたものだ。 それは私たちのこと。 若い自分たちのためでもある。 みんなのこと。 誰のためでもある。 大音量で演奏し、それに合わせて逃げたり、銀行強盗をしたり、行進したり、踊ったり、笑ったりするための曲。 ある意味、ラブソングで、頌歌でもある。 そして栄光の雄叫びでもあるんだ」


''Rivers Run Red''は、「ヴァイオレットが踊れるような、奇妙で小さな曲として」生まれたとエラは言う。初期のハロウィーン・バージョンでは、ヴァイオレットがステージで血を流しながらパティ・スミスの歌詞を歌っていた。


今では、フルート、魅惑的な円形のベースライン、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド風の催眠術を駆使した、本格的なニュー・イヴスの曲になっている。 この曲には、ケイトが振るマッチ箱まで登場する。


「最初の歌詞は、エラが10代の頃に書いた詩。 私たちがジャムっている間に、たまたま彼女が暗記していたものなの。 彼女は、曲の後半でケイトの歌詞にインスピレーションを与える別の詩も書いたんだけど、最終的には10代の頃の詩に戻った」


「この曲全体は偶然のようなもので、そのおかげで、ニーナの "ディスコ・チェロ "やヴァイオレットの "キャンピング・カップ・パーカッション・デビュー "のように、たくさんの変身を遂げ、私たちを新しい場所に連れて行ってくれた。 今、私たちはこの曲が大好きなのよ」


ザ・ニュー・イヴスは、ヴァイオレット・ファラー(ギター、ヴァイオリン、ヴォーカル)、ニーナ・ウィンダー・リンド(チェロ、ギター、ヴォーカル)、ケイト・メイガー(ベース、ヴォーカル)、エラ・オーナ・ラッセル(ドラムス、フルート、ヴォーカル)の四人からなる。おどろくべきは、全てのメンバーがボーカルを歌う。ソロシンガーという固定概念はない。


パティ・スミスやルー・リードのような文学性、イギリスの古典的な民族音楽を組み合わせたグループである。その瞑想的な音楽性は、BC,NR、Last Dinner Partyといった現代的なバンドのシアトリカルな性質もあるが、それと同時に70年代のUKロックと呼応する側面もある。彼女たちの音楽にはLed Zeppelinのような民族音楽のフォークミュージックの影響をとらえることも難しくない。


バンドは5月から国内ツアーを出発させ、冬にはピッチフォーク・フェスティバル(パリ)に出演予定。複数のツアー日程では、Ninja Tuneの人気バンドで、新作アルバムをリリースした、BC, NR(Black  Country, New Road)と共演予定だ。港町ブライトンが輩出する新鋭グループの船出。

 


「Rivers Run Red」

 

 

 

The New Eves 『The New Eve Is Rising』



Label:  Transgressive

Release:2025年8月1日


Tracklist:


The New Eve

Highway Man

Cow Song

Mid-Air Glass

Astrolabe

Circles

Mary

Rivers Run Red

Volcano


Live dates:


May 15th - 16th - The Great Escape, Brighton, UK

May 24th - Dot to Dot Festival, Bristol, UK

May 25th - Dot to Dot Festival, Nottingham, UK

July 24th - 27th - Latitude Festival, Suffolk, UK

July 31st - Aug 3rd - Wilderness Festival, UK

August 30th - End of The Road Festival, UK

September 15th - Hare and Hounds 2, Birmingham, UK

September 16th - Hyde Park Book Club, Leeds, UK

September 18th - Barrowland, Glasgow, UK [w/ BCNR]

September 20th - The Glasshouse, Gateshead, UK [w/ BCNR]

September 22nd - Bristol Beacon, Bristol, UK [w/ BCNR]

September 24th - Corn Exchange, Cambridge, UK [w/ BCNR]

September 27th - The Castle, Manchester, UK

October 3rd - The Old England, Bristol, UK

October 7th - Hoxton Hall, London, UK

October 9th - Concorde 2, Brighton, UK

November 7th - Pitchfork Festival, Paris, FR

 

 

トロントのオルタナティヴロックバンド、Colaがニューシングル「Mendicant」を携えて帰ってきた。 モントリオールのジャズシーンに触発されたロックバンドで、8ビートを中心とするミニマルなロックの構成の中で巧みなアンサンブルが光る。この新曲では、フルートが演奏に取り入れられている。古楽/民族音楽とロックの融合という、これまでに類を見ない取り組みである。


2ndアルバム『The Gloss』(レビューを読む)のリリースに続き、『メンディカント』ではコーラが中世的な展開を見せている。 「メンディカント』は、ホイッスルとウイリアンパイプのライン、そしてダーシーの特徴的な歌唱によって支えられている。 


冒頭で "グッド・ゴッド!"と叫び、"ローマ法王が今言ったことは何だろう?"と疑問を投げかけ、"規制を破り、規範を破る "という謙虚な視点に立った歌詞に入る。 ダーシーの性格分析を補う楽器編成は相変わらず信頼性がある。 木管楽器が上昇し、ギターがうねり、ドラムが飛び交う。スティッドワーシーとカートのライトの貢献は、コーラの次の章への運動的な発射台を提供します。


「Mendican」は、コーラのヨーロッパ・ツアーに先駆けてリリースされる。 アイルランド公演にはM(h)aol、Junk Drawerが参加し、コーラはこの夏の終わりに北米ツアーに戻る予定だ。 

 

Colaは、ギタリスト/ヴォーカリストのティム・ダーシー、ベーシストのベン・スティッドワージー、ドラマーのエヴァン・J・カートライトのトリオ。Fire Talkの看板バンドのひとつです。

 

「Mendicant」


Lifeguardはシカゴ発のオルタナティヴロックバンドの新星である。FACSのブライアン・ケースの息子アッシャーが所属している。最近、ローリングストーン誌でも特集記事が組まれている。

 

ライフガードの新曲「Under Your Reach」は、バンドの実験的かつポップな衝動を巧みに融合させた、これまでで最もハードな楽曲のひとつだ。 ギタリストのカイレーターとアッシャー・ケースがゆるやかなハーモニーでヴォーカルをとる。 この曲は、シカゴを拠点とするトリオのデビュー・アルバム『Ripped and Torn』(6月6日に発売)に収録されている。


『Ripped and Torn』には苦悩に満ちたインストゥルメンテーションとフィードバックに支配された雰囲気が盛り込まれている。 しかし、バンドはその特質、今年最もタイトでキャッチーなロック・ソングのために使っている。


アッシャー・ケース(ベース、バリトン・ギター、ヴォーカル)、アイザック・ローウェンスタイン(ドラムス、シンセンス)、カイ・スレーター(ギター、ヴォーカル)の3人組は、高校生の頃から一緒に音楽を作ってきた。 パンク、ダブ、パワーポップ、エクスペリメンタルなサウンドからインスピレーションを受け、それらを爆発的なな不協和音にまとめ上げる。

 

 「Under Your Reach」

 

 


エディンバラのフォークデュオ、No Windows(ノー・ウィンドウズ)が、近日リリース予定のEP『The Great Traitor』の最終プレビューとして「Tricky」を公開した。先行シングル「Easter Island」に続く静かでほろ苦いフォーク・ソングだ。

 

このシングルについてモーガン・モリスはこう語っている。”ヴェリティと私はかなり皮肉屋なので、ラブソングが良質に思えることもある。 でも、時と場合というものがある。 この曲は、ライブで演奏するのが嫌いなほど難しいギターパートがあるにもかかわらず、書くのが楽しかった。”


2020年の結成以来、エディンバラのデュオ、ノー・ウィンドウズは急成長を遂げてきた。マルチ・インストゥルメンタリストのモーガン・モリスと作詞家のヴェリティ・スランゲンによるクラシック・ポップとフォークの刺激的なブレンドは、ラジオやプレスから広く支持された。


2023年にはスコティッシュ・アルバム・オブ・ザ・イヤー(SAY)アワードで切望されていたサウンド・オブ・ヤング・スコットランド賞を受賞した。


2024年、彼らはファット・ポッサム・レコードと契約し、自主制作EPを1枚リリースした。地球上で最も孤立した場所にちなんで名付けられた彼らの『Point Nemo EP』(2024年)は、孤独と疎外感をテーマにしている。


No Windowsの新譜『The Great Traitor』は5月9日にFat Possum Recordsからリリースされる。

 

「Tricky」