昨年10月に開催された“世界初演”コンサート<ICHIKO AOBA “Luminescent Creatures” World Premiere>より、東京公演で披露された「Luciférine」のライブ映像をYouTubeにてプレミア公開しました。


総勢10名によるバンド編成で、最新アルバム『Luminescent Creatures』の世界を再現。一般的なライブ・アーカイブとは異なり、まるで映画のように構成され、幻想的な映像作品となりました。



2月末にリリースされた最新作『Luminescent Creatures』は、世界各国のメディアで高い評価を受け、3月12日付の”Billboard World Albums”のチャートで17位に初登場するなど、国内外で大きな反響を呼んでいます。



現在、キャリア史上最大規模となるワールド・ツアー<Luminescent Creatures World Tour>を開催中。先週3/31(月)には約3年ぶりとなるロンドンでの単独公演をヨーロッパ最大級の複合文化施設、バービカン・センター内のBarbican Hall(約2,000席)にて実施しました。

 

バービカン・センターは、BBCシンフォニーオーケストラやロンドン交響楽団の本拠地となっており、コンサートホールはもちろん、図書館などを内蔵するロンドンの象徴的な文化施設です。

 

この特別な一夜では、アルバムの共作者でありプロデューサーの梅林太郎さんに加えて、英国を代表する弦楽オーケストラ<12 Ensemble>と共演しました。10人のサポート・ミュージシャンとともに代表曲の数々を新たなアレンジで披露し、大きな喝采を浴びました。

 




今後は、来週4/17(木)からスタートするハワイ・ホノルルでの公演を皮切りに、北米で20公演を予定。さらに新たなツアー日程も発表されました。5月にはオーストラリア、ニュージーランドで4公演、6月には北欧を含むヨーロッパ各地を再訪。年末の南米ツアーの追加公演も決定しました。

 

そして今夏、東京・横浜・大阪にてバンド編成による国内コンサート<Reflections of Luminescent Creatures>を計5公演開催!

 

ワールド・ツアーを経てさらに深化した『Luminescent Creatures』の世界を、東西を代表する音響に優れたコンサートホールにて再構築します。どうぞお楽しみに!!



■ライブ映像

 
青葉市子「Luciférine」


https://youtu.be/fgKJ63rcbgE



※4/7(月)18:00 YouTubeにてプレミア公開



■リリース情報

 
青葉市子 8thアルバム『Luminescent Creatures』


2025/2/28(金)全世界同時発売(配信/CD/Vinyl)

 

ストリーミング: https://linktr.ee/luminescentcreatures


【収録曲】

01. COLORATURA
02. 24° 3' 27.0" N, 123° 47' 7.5” E
03. mazamun
04. tower
05. aurora
06. FLAG
07. Cochlea
08. Luciférine
09. pirsomnia
10. SONAR
11. 惑星の泪



■MV

 
青葉市子「SONAR」


https://ichiko.lnk.to/SONAR_YT

 

■コンサート情報

 
公演名:Reflections of Luminescent Creatures

日程:2025年8月13日(水)
会場:東京・サントリーホール 大ホール
開場17:30 / 18:30

日程:2025年8月18日(月)
会場:神奈川・横浜みなとみらいホール 大ホール
開場17:30 / 18:30

日程:2025年8月20日(水)
会場:東京・すみだトリフォニーホール 大ホール
開場17:30 / 18:30

日程:2025年8月22日(金)
会場:大阪・NHK大阪ホール
開場17:30 / 18:30

日程:2025年8月23日(土)
会場:大阪・NHK大阪ホール
開場16:00 / 17:00

出演:青葉市子


参加ミュージシャン:梅林太郎,
町田匡(Violin), 荒井優利奈(Violin), 三国レイチェル由依(Viola), 小畠幸法(Cello), 丸地郁海(Contrabass),
朝川朋之(Harp), 丁仁愛(Flute), 角銅真実(Percussion)



■チケット

 
全席指定 ¥8,800
全席指定<学割> ¥6,800
※⼩学⽣以上有料 / 未就学児童⼊場不可
※学割:公演当日、入場口におきまして学生証を確認させていただきます (小、中、高校生、大学生、専門学校生 対象)。

イープラス: https://eplus.jp/ichikoaoba-2025/
ぴあ: https://w.pia.jp/t/ichikoaoba-2025/
ローソン: https://l-tike.com/ichikoaoba/


イープラス(海外居住者向け)https://eplus.tickets/ichikoaoba-2025/

チケット一般発売日:5/10(土)10:00〜



■お問い合わせ

 
東京・横浜公演:ホットスタッフ・プロモーション 050-5211-6077

 http://www.red-hot.ne.jp

 
大阪公演:清水音泉 06-6357-3666 / info@shimizuonsen.com

 http://www.shimizuonsen.com



□海外公演情報

 

■Luminescent Creatures World Tour
 

・Asia

 
Mon. Feb. 24 - Hong Kong, CN @ Xi Qu Centre, Grand Theatre [with Musicians from HK Phil]
Wed. Feb. 26 - Seoul, KR @ Sky Arts Hall
Thu. Feb 27- Seoul, KR @ Sky Arts Hall
Thu. March 6 - Taipei, TW @ Zhongshan Hall



・Europe

 
Mon. March 10 - Barcelona, ES @ Paral.lel 62
Tue. March 11 - Valencia, ES @ Teatro Rambleta
Thu. March 13 - Milan, IT @ Auditorium San Fedele
Sat. March 15 - Zurich, CH @ Mascotte
Tue. March 18 - Hamburg, DE @ Laiszhalle
Wed. March 19 - Berlin, DE @ Urania (Humboldtsaal)
Fri. March 21 - Utrecht, NL @ TivoliVredenburg (Grote Zaal)
Sun. March 23 - Groningen, NL @ Oosterpoort
Tue. March 25 - Antwerp, BE @ De Roma
Thu. March 27 - Paris, FR @ La Trianon (LOW TICKETS)
Mon. March 31 - London, UK @ Barbican [with 12 Ensemble]
Wed. April 2 - Manchester, UK @ Albert Hall
Fri. April 4 - Gateshead, UK @ The Glasshouse
Sat. April 5 - Glasgow, UK @ City Halls


・North America

 
Thu. April 17 - Honolulu, HI @ Hawaii Theatre
Sat. April 19 - Vancouver, BC @ Chan Centre)
Sun. April 20 - Portland, OR @ Revolution Hall
Mon. April 21 - Seattle, WA @ The Moore
Wed. April 23 - Oakland, CA @ Fox Oakland
Sat. April 26 - Los Angeles, CA @ The Wiltern [with Wordless Music Quintet]
Sun. April 27 - Los Angeles, CA @ The Wiltern [with Wordless Music Quintet]
Tue. April 29 - Scottsdale, AZ @ Scottsdale Center
Thu. May 1 - Denver, CO @ Paramount Theatre
Sat. May 3 - St. Paul, MN @ Fitzgerald Theatre
Sun. May 4- St Paul, MN @ Fitzgerald Theatre
Tue. May 6 - Chicago, IL @ Thalia Hall
Wed. May 7 - Chicago, IL @ Thalia Hall
Fri. May 9 - Detroit, MI @ Masonic Cathedral Theatre
Sat. May 10 - Cleveland, OH @ Agora Theatre
Mon. May 12 - Boston, MA @ Berklee Performance Center
Wed. May 14 - New York, NY @ Kings Theatre [with Wordless Music Quintet]
Sat. May 17 - Philadelphia, PA @ Miller Theatre
Sun. May 18 - Washington, DC @ Warner Theatre
Thu. May 22 - Mexico City, MX @ Teatro Metropolitan



・Australia and New Zealand <NEW>

 
Thu. May 29 - Sydney, AU @ Sydney Opera House
Fri. May 30 - Sydney, AU @ Sydney Opera House
Sat. May 31 - Sydney, AU @ Sydney Opera House
Tue. Jun 03 - Auckland, NZ @ Bruce Mason Centre

 

・Europe <NEW>

 
Tue. Jun 24 - Helsinki, FI @ Temppelinaukio Church
Thu. Jun 26 - Oslo, NO @ Cosmopolite
Tue. Jul 01 - Florence, IT @ Teatro Romano Fiesole
Wed. Jul 02 - Rome, IT @ Case Del Jazz
Fri. Jul 04 - ES, Vida Festival
Sun. Jul 06 - NL, Down the Rabbit Hole Festival



・South America

 
Tue. Nov 25 - São Paulo BR @ Teatro Liberdade
Thu. Nov 27 - Buenos Aires, AR @ Teatro El Nacional
Sat. Nov 29 - Santiago, CL @ Teatro Teleton
Tue. Dec 02 - São Paulo BR @ Teatro Bradesco <NEW>



日程の詳細: https://ichikoaoba.com/live-dates/



2026年、数々の伝説的なコンサートが行われてきた英国ロイヤル・アルバート・ホールでの単独公演が決定!!

 

・UK


Tue, March 31, 2026 – London, UK @ ROYAL ALBERT HALL


 

イギリスのパンクの歴史の原点は一つは、マルコム・マクラーレンがもたらした宣伝的な概念である。そしてもう一つは、社会に内在する政治的な側面である。これは源流に当たるニューヨークのパンクグループよりもその性質が強い。特に、ジョン・ライドンやシドの影に隠れがちだが、イギリスの音楽の系譜を見る際には、ジョー・ストラマー、そしてミック・ジョーンズ、ポール・シムノンを素通りすること出来ない。


当初のザ・クラッシュはラモーンズの音楽に触発されたということもあり、4カウントで始まる直情的なパンクロックソングを特色としていた。その後、レゲエ、スカ、ラヴァーズ・ロックなどを融合させ、パンクロックそのものの裾野を広げていった。パンクの可能性というのは、内包されるジャンルの多彩性にある。それはジャズと同じようになんでも出来るという、ある種の無謀な音楽的な挑戦でもあったわけなのだ。

 

しかし、ジョー・ストラマーやジョーンズがなぜ、レゲエやスカといったカリビアンの共同体の音楽を取り入れるようになったのかという点は、当時の1970年代後半のイギリス社会の情勢が如実に反映されている。


例えば、ノッティング・ヒルの1976年のカリブ系移民と白人を巻き込んだライオットにジョー・ストラマーは偶然居合わせ、この事件に触発され、白人が黒人と一緒に共闘すべきであること、そして白人もまたカリブ系移民のように政治に怒ることをステートメントの中に取り入れたのだ。これは1970年代のサッチャリズムの渦中で、資本を搾取される市民に対し、彼らに倣い、権力に従属することなかれという意見をパンクソングの中に織り交ぜたのであった。


パンクロックの初心者は、例えば、デビューアルバムに何らかの共感を示し、そのあと『London Calling』のようなハイブリッドのパンクの魅力に惹かれていく場合が多いと思うが、ザ・クラッシュのメンバーがなぜカリブ系の音楽をパンクの文脈に取り入れるようになったかを知るのはとても大切だろう。デビュー時のパンクロックソングはもちろん、『Sandanista!』のように一般的に亜流と称されるアルバムまで、表向きの印象だけでなく聴き方が変わってくるからだ。

 

1976年、もう一つのパンクの始まりを告げる動きがロンドンで発生しつつあった。この年の7月にニューヨークのパンクバンド、ラモーンズがノースロンドンにあるラウンドハウスでギグを行い、このライブにはイギリスの最初期のパンクバンドが多く参加していた。彼等はロックソングを簡素化したラモーンズのスタイルに共感を示し、それらを同地で再現させるべく試みた。セックス・ピストルズが1975年11月6日にウェストロンドンのセント・マーチング・スクール・オブ・アートで初演を行い、時を同じくして、ザ・クラッシュは1976年7月4日にはシェフィールドのザ・ブラック・スワンでピストルズを支援するライブを行った。


驚くべきは、この最初の流れが発生したあと、ロンドンのパンクの先駆的な動きはわずか数年で終焉を迎える。いわばこの音楽ムーブメントそのものが''衝動的''であったと言わざるを得ない。


当時の音楽ジャーナリスト、キャロライン・クーンは、この最初のパンクバンドの台頭に直面した時、ピストルズについて、「個人的な政治」であるとし、クラッシュについて、「真剣な政治」と報道しているため、政治的な性質が強かったと言わざるを得ない。


ジョー・ストラマーとシモノンは、ロンドン西部にあるノッティングヒルやドブローク・グローブなどのレゲエ・クラブに足を運んで、ジャマイカの音楽に慣れ親しんでいた。これが結局、クラッシュの多彩な音楽性を形成したのにとどまらず、パンクロックの音楽の網羅性や裾野の広さを構築することになった。

 

 

1976年の夏、ザ・クラッシュのメンバーはノースロンドンのカムデン・タウン、そして西ロンドンのラドブローグ・グルーブ、ノッティングヒルの区域に不法に滞在していた。しかも取り壊し予定の古い空き家に陣取っていた。ギタリストのミック・ジョーンズは、ウィルコム・ハウスと呼ばれる議会のタワーの18階に祖母と一緒に住んでいた。この場所は、ロンドンの高速道路であるウェストウェイが見下され、名曲「London’s Burning」の歌詞でも取り上げられている。 

 

 

彼等が重要な音楽の根幹に置いたアフロカリブの音楽、ジャマイカのレゲエ/スカはおそらくノッティングヒルのカーニバルでも演奏される機会が多かったのではないか。現在も開催されているこのフェスティバルは当時それほど大規模ではなかった。このフェスティバル自体も1958年の最初の人種的な暴動の反省を踏まえて、愛に満ちた祝祭として行われるようになった。

 

しかし、当時の社会情勢の影響もあってか、1976年に二十年前と似たような事件が発生する。それが「ノッティングヒルの暴動」と呼ばれる事件である。この年のカーニバルが終了すると、ストリートが独特な緊張に満ち始め、黒人の一部のカリブ系の若者(白人も参加したという説もある)が警察側に対して暴徒化したのだった。

 

1976年のノッティングヒルの暴動に参加したDJ、映画監督のドン・レッツ

 

この暴動に居合わせたストラマーとシモノンは、黒人の暴動に深い共感を示し、彼等の勇気に接して、「同じように自分たちも怒るべきだ」と最初のパンクロックソング「White Riot」にその意見を込めた。この暴動にはシド・ヴィシャスもいて、二人は彼を捕まえるため暴動に戻った。その様子をテラスハウスから見た黒人の年配女性は彼等に言った。「あそこにいくな。少年たち。殺されるわ!!」

 

ところが、彼等は戻らず、この暴動に最後まで居残った400人規模の黒人たちを英雄視し、「ハードコアのハードコア」と呼んだ。そして、これがすでにオリジナルパンクの後の80年代の「ハードコアという概念」が誕生した瞬間であると言えるだろう。もちろん、この曲は白人側に対するステートメントであると言えるが、そこにはカリブ・コミュニティの考えに対する深い共感を見出すことが出来る。拡大解釈をすると、人種を越えて協働すべきという内在的なメッセージも滲んでいる。その証立てとして、彼等はセカンドアルバム『London Calling』ではレゲエ、スカ、そしてフォーク/カントリーと人種を超越した音楽へと接近していったのである。これは単なる音楽の寄せ集めのような意味ではなく、音楽は人種を超えるという提言がある。

 

個人的なことにとどまらず、他者や社会全体のことを考えられるというのはスペシャルな才能ではないか。そして、意外にも激しいイメージを持つジョー・ストラマーがこういった性質を持ち合わせていたのは、以降の「I Fought The Law」のような友愛的な一曲を見れば歴然としている。ザ・クラッシュはこの日の出来事に強い感銘を受け、デビュー曲「White Riot」を書き上げた。

 

「黒人は多くの問題を抱えている。彼等は確かにレンガを投げる方法を知っている。白人は学校に行って、そこで厚くなる(賢くなる)方法を教えられる。彼等の誰もがムショには行きたがらない」


扇動的な内容であるが、権威や権力に対し反抗を企てることも時には必要であると彼らは訴えかけたのだった。

 

この曲は当初、それほど大きな話題を呼ばなかったが、BBCのジョン・ピールが高く評価し、そしてラジオでも積極的にオンエアした。また、以降の時代になると、ミック・ジョーンズは若気の至りのような部分があったということで「White Riot」を演奏することを忌避したという。しかし、市民が権力に従属せぬこと、反対意見を唱えることの重要性を訴えたという点では、粗野で直情的という欠点もあるにせよ、パンクロックの重要な原点を形作ったと言えるか。

 

なお、最近もノッティングヒルのカーニバルは続いており、現在では、フレンドシップに脚光を当てた友愛的なイベントへと変化している。1976年の暴動をドキュメンタリーフィルムとして追った映画「白い暴動(White Riot)」は、日本で2021年に公開された。この映像では経済破綻状態にあった70年代のイギリスの世相が的確に映し出されている。こちらの映像もぜひ。 

 


 


 

フィラデルフィアを拠点に活動するインディーロックバンド、The Indestructible Water Bear(ザ・インデストラクティブル・ウォーター・ベア)のデビューアルバム『Everything Is OK』から「Missing You」のミュージックビデオを公開した。


アルヴェイズ、ホップ・アロング、ザ・サンデーズ、クランベリーズのファンのために、ザ・インデストラクティブル・ウォーター・ベアーは、インディー・ロック、90'sにインスパイアされたオルタナティヴ、ジャングリーなドリームポップにエモを加えた独自のブレンドを創り上げている。 


The Indestructible Water Bearは、フィラデルフィアを拠点に活動するエモ・エッジの効いたオリジナル・インディー・ロック・バンド。 アルヴェイズ、ホップ・アロング、ザ・サンデーズ、クランベリーズといったバンドと比較される90年代のアルト・ロック・サウンドを持つ。


エモーショナルな歌詞とダイナミックな楽器編成で知られる彼らは、リスナーの心に深く響く曲を作る。 彼らの音楽は内省と激しさのバランスを保ち、心に響くメロディーとドライヴするリズムを織り交ぜ、ユニークで忘れがたいサウンドを生み出している。


彼らのデビューアルバム『Everything Is OK』は、「愛の複雑さと力強さ、そして愛が私たちを癒したり傷つけたりするような方法で、私たちの感情の風景をどのように定義づけることができるかを探求する」7曲からなる音楽作品だ。 


このアルバムは、インディー・ロック、90年代にインスパイアされたオルタナティヴ、そしてドリーミーなジャングルがミックスされ、パワフルな歌声が魅力的だ。 さらにファーマーは
「このアルバムの曲は、子育て、友情、ロマンチックな愛、そして自分自身を愛することに伴う感情の激しさと複雑さを映し出すような、ダイナミクスに富んだものにしたかった」と打ち明ける。 


「私たちの願いは、すべてのリスナーが、喜び、憧れ、安心感、恐れ、喜び、痛みといった、他者と深くつながることから生まれるテーマに共感してくれることです。 すべての曲に共通するのは、浮き沈みを受け入れるということ。人生において、自分の気持ちに大きな解決策や解決策はないことが多いからだ。 むしろ、これらの曲で私たちは物事のあり方を探求し、最終的にはそれを受け入れたい」


「Missing You」





The Indestructible Water Bear is a Philadelphia-based original indie rock band with an emo edge, fronted by a powerhouse female vocalist whose voice captivates and commands. They have a ‘90s alt rock sound that has been compared to bands like Alvvays, Hop Along, The Sundays, and The Cranberries.

Known for their emotive lyrics and dynamic instrumentation, they craft songs that resonate deeply with listeners. Their music balances introspection with intensity, weaving heartfelt melodies with driving rhythms that create a unique and unforgettable sound.

Their debut album Everything Is OK is a seven song musical envelopment that "explores the complexities and power of love and how it can define our emotional landscape in ways that both heal and hurt us," shares frontwoman Gail Farmer. The album is a riveting mix of indie rock, 90's inspired alternative and dreamy jangle, with a powerful delivery. 
 
Farmer further confides, "We wanted the songs on this album to be rich with dynamics, mirroring the intensity and complexity of feelings that come with parenthood, friendship, romantic love and loving oneself. Our hope is that every listener will be able to connect with the themes of joy, longing, security, fear, pleasure and pain that stem from allowing yourself to connect deeply with others. 
 
 
A common thread across all the songs is accepting these ups and downs, because in life, there often are no great resolutions or solutions to how we feel. Rather, with these songs we explore, and ultimately accept, the way things are."


 


 

ニューヨークの四人組のインディーフォークバンド、フローリスト(Florist)は、エイドリアン・レンカー/バック・ミーク擁するBig Thiefと並んで同地のフォークシーンをリードする存在である。もちろん彼等はニューヨークのインディーズ音楽の最前線を紹介するグループ。

 

フローリストはエミリー・A・スプラグを中心に四人組のバンドとしてたえず緊密な人間関係を築いてきた。2017年にリリースされた2ndアルバム『If Blue Could Talk』の後、バンドは少しの休止期間を取ることに決めた。直後、エミリー・スプラグは母親の死の報告を受けたが、なかなかそのことを受け入れることが出来なかった。「どうやって生きるのか?」を考えるため、西海岸に移住。その間、エミリー・A・スプラグは『Emily Alone』をリリースしたが、これは実質的に”Florist”という名義でリリースされたソロアルバムとなった。しかし、このアルバムで、スプラグは、既に次のバンドのセルフタイトルの音楽性の萌芽のようなものを見出していた。バンドでの密接な関係とは対極にある個人的な孤立を探求した作品が重要なヒントとなった。



その後、エミリー・スプラグは、3年間、ロサンゼルスで孤独を味わい、自分のアイデンティティを探った。深い内面の探求が行われた後、彼女はよりバンドとして密接な関係を築き上げることが重要だと気がついた。それは、この人物にとっての数年間の疑問である「どうやって生きるのか」についての答えの端緒を見出したともいえるかも知れなかった。このときのことについてスプラグは、「ようやく家に帰る時期が来たと思いました。そして、複雑だから、辛いからという理由で、何かを敬遠するようなことはしたくない」と振り返っている。「だから、もう一人でいるのはやめようと思いました。もう1人でいるのは嫌だと思った」と話している。


彼女は2019年6月、フローリストの残りのメンバーであるリック・スパタロ、ジョニー・ベイカー、フェリックス・ウォルワースと再び会い、レコーディングに取り掛かった。セルフタイトルへの制作環境を彼女はメンバーとともに築き上げていく。バンドは、アメリカ合衆国の東部、ニューヨーク州を流れるハドソン渓谷の大きな丘の端にある古い家をフローリストは間借りし、その裏には畑と小川があった。

 

バンドのスプラグとスパタロは先に家に到着し、自然の中に完全に浸ることができる網戸付きの大きなポーチで機材をセットアップすることに決めた。これらの豊かな自然に包まれた静かな制作環境は、前作のセルフタイトルアルバム『Florist』に大きな影響を与え、彼らに大きなインスピレーションを授けた。フォークミュージックとネイチャーの融合というこのアルバムのに掲げられる主要な音楽性は、この制作段階の環境の影響を受けて生み出された。もちろん、アルバムの中に流れる音楽の温もりやたおやかさについてはいうまでもないことである。これらのハドソン川流域の景色は、このメンバーに音楽とは何たるかを思い出させたとも言えるだろう。 


『Jellywish』で、フローリストはリスナーをあらゆることに疑問を投げかけ、魔法、超現実主義、超自然的なものが日常生活の仲間である世界を想像するよう誘う。 "ジェリーウィッシュ"は、杓子定規で、制限的で、ひどく感じられる時代に、あえて可能性と想像力の領域を提示する。


このアルバムでFloristは明確な答えを提示することなく、人生の大きな問いを探求している。 その代わりに、バンドはおそらく最も難しい問いを投げかけている 。「染み付いた思考サイクルや、ありきたりな生き方から抜け出すことは可能なのだろうか? それこそが、真に幸福で、満たされ、自由になる唯一の方法なのかもしれない」


シンガー、ギタリスト、そして主要ソングライターであるエミリー・スプレイグは、このアルバムはわざと複雑にしてあると言う。 『本当に混沌としていて、混乱していて、多面的なものを優しく伝えようとしている』と彼女は説明する。 

 

「私たちの世界にインスパイアされたテクニカラーと、私たちの世界から脱出するためのファンタジー的な要素もある」


バンドはおよそ2年間ツアーを中心に活動しながら、苦しみや喜びをはじめとする様々な感覚が人々とどこかで繋がっているのを感じていた。そのことをエミリー・スプレイグは哲学や思想的な側面から解き明かそうとしている。もちろん、それは西海岸に住んでいた時代から続いていたものだった。我々は多くの経験をして学ぶ生き物なのであり、地球に生まれたからにはそのことを心に留めなければ。そしてどのような人も生きている限りは例外ではない。さらにフローリストは目に見えないものを大切にし続け、より良い世界を作るために音楽を作り続ける。


「セルフタイトルのレコードをリリースしてから数年間、私たち(人間は集合体として、多くの小さな行動、感情、反応によって互いに影響し合い、周りの世界に影響を与えている。 この曲は、私たちのそばにある目に見えない世界を信じ、その視点を使ってベールを突き破り、謙虚な現実の中で、共感、愛、他者との繋がりを生み出すための強力なツールを作ることを提案している」

 

「私たちの種としての力を引き出し、実際の善のための変化を生み出し、すべての人々の人生をより良く、平等にするため、私たちはあえて互いを大切にし、地球上の生命を大切にしないものに反対を唱えたい」



Florist 『Jellywish』- Double Double Whammy



フローリストと出会ったのは2022年のセルフタイトル『Florist』だった。結局、この時期と前後して、バーモントのLutaloという素晴らしいシンガーの音楽にも出会うことができたことに感謝したい。古くはパンクやロックのメッカとして栄えてきたニューヨークという土地が現在では様相が変化し、インディーズのフォーク音楽の重要な生産地であるということが掴めてきた。


あるミュージシャンの話によると、現在の同地には、CBGBのフォークシーン、マクシス・カンサス・シティのような固まったロックムーブメントというものは存在しないかもしれない。しかし、CBGBの創業者のクリスタルがカントリー・グラスのムーブメントを作ろうとした壮大な着想が花開いたのは、2020年代に入ってからだった。


しかも、それは、CBGBが閉店してずいぶん後になってからといえるかもしれない。元々、ニューヨークのパンクは、実はそのほとんどがカントリー・ミュージックを宣伝しようとするライブハウスから始まったせいもあり、テレビジョンを筆頭に、詩学などの文学性やインテリジェンスを感じさせる音楽性が含まれていたのである。同時に、ウォール街を象徴として発展してきた金融街であるニューヨークは、その時代ごとに音楽文化を様変わりさせてきた。

 

パティ・スミスにせよ、ラモーンズのような存在にせよ、また、バックストリートで屯していたヒップホップミュージシャン、あるいは2000年以降のミレニアム世代のフォークミュージックを象徴するビックシーフ、あるいはBODEGAのようなポスト世代のパンクバンドですら、彼等は20世紀の経済発展の象徴とも言えるニューヨークの街角で生活し、資本主義の価値観が蔓延する中で、それぞれが人間としてどのように生きるのかというテーマを探し求めてきた。 


なぜそこまでをするのか、と考える人もいるかもしれない。そして、それは摩天楼の世界があまりに強大であるがゆえ、個人やグループとして音楽を作るということが、異質なほど切実な意味を持つようになるからだ。音楽やそれに付随する何らかの芸術作品を制作し、ライブハウスやファンと交流すること、それは自分の存在を確認するためでもあった。これは専業か否かという問題ではなく、音楽そのものがもの凄く切実な意味を持っていた。そうでもしなければ、個人という存在すらかき消されてしまうことがある。これが資本主義社会の実態なのである。

 

今後の社会情勢がどのように移ろい変わっていくにしても、大局というのはそれほど大きくは変化しないのではないだろうか。近年、後期資本主義という概念を提唱する経済学者もいたかもしれないが、結局、これらは手を変え品を変えといった具合に、別のルートをぐるぐる回っていくのだろう。ある資本主義の形態に限界が来ると、次の資本形態に移行していく。確かにそうかもしれない。繰り返しが今後も続く事が予測される。しかし、人間はいつも制限的な社会の中で暮らさねばならないが、こういった外的な環境に左右されない普遍性というものが存在する。いつの時代もそれに人々は癒やされ、心を躍らせる。そして外側の風景などは移ろい変わっていくだけの、ただの風物のようなものであると気が付かずにはいられない。こんなことを言うのは、いま現在、世界でカオスをもたらす原因が再び発生しようとしているからである。

 

 

そして、政治は敵対意識や反抗意識を市民に植え付けるが、もし、世界の中に融和や協調という概念が生じるとすれば、それはやはりリベラルアーツを始めとする分野、それから音楽のようなものを通してと言わざるを得ない。最近では日本の大手銀行の社員研修で芸術鑑賞をするという話題があったが、''なぜ仕事に関係のないことをするのか''と疑念を抱く人もいるに違いない。そういうことをするのは、この世界には無数の道筋があるということを確認するためなのだ。それは、何らかの苦境に陥った時、安心や癒やしの瞬間をもたらす場合がある。もし、この世の中のすべての生産物が何らかの経済的な利益を生み出すため”だけ”に存在しているすれば、利益を生み出さないものは存在価値がないということになる。しかし、人生が順風満帆であるときにはわからないけれど、利益を生み出さなくとも意義を持つ生産物は限りなく存在する。そういうことを理解したとき、本当のものの価値を知ることになる。そして、同時に、この世界の多くのものが相対的な価値という杓子定規で計測されているに過ぎないことに気がつく。

 

 

フローリストの音楽は少なくとも、こういった相対的な価値に軸足を置いていない。 流行り廃りというのは確実に存在し、昨日までは絶対的な価値を持つとされていたものが、数年経つと、なんの価値も見出されないようになる事例がよくある。そして、これが相対的な価値を元にした世界のかなり残酷な一面なのである。


しかし、上記のようなことを踏まえた上で大切にすべきポイントがある。それは、好き、熱中する、もしくはワクワクする、というような独自の評価軸を人生の指針にするということである。誰かの意見やお墨付きをもらわなくとも、自分の感覚を重要視してゆっくりと歩いていくべきなのだ。そして、水かけ論のようになってしまうけれど、『Jerrywish』は四人組のフォークバンドの”好き”という感覚が重要視されている。彼等は音楽に心から夢中になっているし、そして、彼らは音楽の力を心から信じている。

 

 

現在の米国の社会情勢はカオスに陥っている印象である。考えの相違によって何らかの分断が起きていても不思議ではない。例えば、フォークミュージックの象徴であるニール・ヤングは、グラストンベリーに出演するため、アメリカを出国したあと、母国に帰れなくなるのではないかと懸念しているのだという。また、ノーベル賞受賞者のボブ・ディランは、近年は公の発言を控えている印象であるが、社会的な提言を言いたくて、うずうずしているかもしれない。


そして、フローリストに関して言えば、彼等の伝統的なフォーク音楽を受け継いで、それらを未来の世代に伝える重要な継承者のような存在である。そして、このアルバム『Jerrywish』では、幻想主義を交えながら、現実世界を俯瞰し、2020年代を生きるミュージシャンとして何を歌うべきかという点に照準が絞られている。


すべてが理想の通りにいったとはいえないかもしれないが、エミリー・ スプラグを中心とするバンドは、より良き社会を作り上げるため、軽やかなフォーク音楽に乗せて、建設的な提言を行っている。そしてそれは、ヤングやディランと同じように、社会を変えるような大きなパワーを持っている。また、本来は地球の人々が一つに繋がっているという理想主義的な概念を捉えられる。条件や環境、価値観の違いを乗り越えるという考え、それらはジョン・レノンに近いものである。同時にそれは、現実社会では容易には達成しがたいので、リベラルアーツや音楽という形で多くのクリエイターたちが提言してきた、ないしは伝えてきた内容でもあるのだ。

 

 

フローリストは、ニューヨークの山岳地帯のキャッツキルのプロジェクトとして知られている通り、自然主義者としての側面を持っている。それはアルバムの全体に通奏低音のように響きわたり、生き物全般を愛するという普遍的な博愛主義に縁取られている。アルバムはオーガニックな質感を持つアコースティックのフォークミュージックで始まり、「Levitate」はその序章となる。


「Levitate」は、音楽の助走のような役割を果たし、風車小屋の水の流れを補佐するかのように、アルバムの世界を少しずつ広げていく。


アルペジオを中心とする滑らかなフォークギターに合わせて、エミリー・スプラグは、心を和ませるような和平的な歌を歌い上げて、混乱した世界に規律をもたらす。こういった音楽は、世界と自分の生きている社会がどこかで繋がっていることを知らないと作れない。そしてまた、自分たちの音楽が聴き手にどんな影響を及ぼすのかを考えないと到達しえない。実際的に、スプラグはディランの影響下にある渋いボーカルを披露し、牧歌的な世界観を押し広げていく。

 

野原や牧草地のような情景を思わせる伸びやかな音楽で始まり、「Have Heaven」では、まるで小川の縁に堰き止めている小舟に乗り、実際に櫂を漕ぎながら、歌をうたうかのように雰囲気だ。ローファイなサウンド処理、マイクでドラムの近い音域を拾う指向性など、VUのような音楽作りを元に、どことなくシネマティックで幻想的なフォーク・ミュージックが構築される。音楽そのものが実際的な情景を呼び起こすのが素晴らしい点で、聞き手は映画「草原の実験」のように自由に発想をめぐらすことが出来る。バンドとしての音の運びもお見事としかいいようがなく、ロマンティックな感覚を滑らかなフォークミュージックによって表現している。ここでは、そよ風に揺られて、歌をつむぐような独特なサウンドスケープを呼び起こすことがある。そして印象的なフレーズ「私の中には天国がある」という、啓示的な歌詞を幻想的に歌う。 


 

「Have Heaven」

 

 

アルバムは一連なりの川の流れのように繋がっている。「Jellyfish」について、スプラグは次のように語る。


「Jellyfishはアルバムのタイトル曲であり、また、世界観を押し広げるための役割を担っている」


「この曲は、私たちの世界の神秘に驚嘆すると同時に、人間の手によってその多くが破壊されたことを嘆いている。 私たちの心と自然界との間に一本の線を引き、この曲とレコードの重要なテーマを確立している」


「この曲は、リスナーに対して、私たちは幸せと愛に値するというパワーセンターを思い出させることで終わっている。これは、以前の歌詞を反映している。"地球のすべてを破壊する "という歌詞は、物事がどのように見えるかについての考察である」 


制作者の言葉の通り、タイトル曲は人生の嘆きのなかで本質的な概念とはなんなのかを思い出させる。暗さと明るさの感情の合間を行き来するフォークミュージックをベースにし、少し遊び心のある水の音のサンプリングなどを介して、魅惑的な音楽が繰り広げられる。

 

 

「Started To Glow」は、具体的な曲名が思い浮かばないが、ビートルズの初期の楽曲を彷彿とさせる。柔らかいアコースティックギターのストロークが音楽的な開放感をもたらし、そしてソフトな感じのボーカルが乗せられる。 曲はどこまでも爽やかで、ピアノのユニゾンのフレーズを相まってどこまでも精妙かつ静謐である。ギターの開放弦を強調したコードの演奏は滑らかであるが、ボーカルも他のアンサンブルとの息の取り方をよく配慮していて、ボーカルとギターそれぞれが主役として入れ替わる。これが音楽の休符の重要性を示唆するにとどまらず、癒やしの瞬間をもたらす。時々、これらのフレーズの合間に入るアンビエント風のシンセも幻想的な雰囲気を与えている。録音全体にもさりげない工夫が凝らされ、テープディレイの処理が入ることも。これらは実験的な要素もあるが、全体的な音楽の聴きやすさが維持されている。

 

制作者のコメントでは「タイトル曲が暗め」ということであるが、「This Was A Gift」は、より物憂げなトーンに縁取られている。しかし、曲自体は内省的な雰囲気があるとしても、ドラムがそのメロディーをリズム的な側面から支えることで、曲全体の印象をダイナミックにしている。


「This Was A Gift」はドラムが傑出している。他の曲では、ジャズで使われるブラシの音色が登場することもあるが、この曲ではスティックでゆったりとしたリズムを作り出している。スネアにリバーブ/ディレイを施し、程よい広さの音像を作り上げ、空間的なアンビエンスを維持している。大切なのは、ドラムのフィルが曲の憂鬱なイメージをドラマティックにしていることだろう。つまり、パーカッションがボーカルの旋律の情感を上手く引き出そうと手助けしている。


ドラムがボーカルのフレーズとユニゾンを描き、三連符のように省略されて演奏されたりもする。バンドの演奏の連携がうまく取れていて、音楽自体が高い水準に達しているが、それを感じさせず、気楽に演奏しているのがクール。さらに、ローズピアノも登場し、アクセントをつけるため、きらめきのあるフレーズが導入される。どの楽器も乱雑に演奏されるのではなく、各々の楽器が器楽的に重要な役割を担い、しかもタイトにまとめ上げられているのが素晴らしい。

 

 

アルバムの前半ではモダンなフォークバンドとしての姿を見出だせる。一方で、中盤の収録曲において、Floristは古典的なコンテンポラリーフォークにも取り組んでいる。


「All The Same Light」ではボブ・ディラン風のフォークソングとして楽しめる。ただやはり、男性的な音楽であったフォーク音楽は時代が変わり、レッテルや性別を超えた中性的な音楽に代わりつつあるのを実感せざるをえない。これらは完全に女性のものになったとは言えないけれど、少なくとも、従来のカントリー/ブルーグラスのヒロイックな男性シンガーという枠組みだけではこの音楽を語りつくせないものがある。


フォーク音楽は、古くは男性的なロマンやアウトサイダーの心情を反映してきたが、類型的な表現から個人的な表現へと少しずつ変化してきている。そして、それらは西部劇的な英雄というイメージのあったフォーク歌手の従来の固定概念から脱却し、一般的な音楽へと変化しつつあるのかもしれない。これらはアメリカのフォークミュージックの源泉を再訪する意味がもとめられる。


「Sparkle Song」も同じタイプの曲として楽しめるはず。おそらくフローリストはアルバムの制作するときに、スムーズな流れを断ち切らないように、前の曲の雰囲気を重視した上で、その雰囲気を壊さないように曲を慎重に収録している。それは実際的に、アルバムの楽しむ際に、聴きやすさをもたらすにとどまらず、何度もリピートしたいという欲求すら生じさせるのである。

 

 

一作品として語る上で、アルバムの真の醍醐味や凄さは、終盤のいくつかの収録曲に見出せる。フローリストが掲げる全体的なモチーフやテーマも、聴きすすめていくうち、なんとなく直感的に掴めてくるようになるはず。例えば、絵画や文学も同様であるが、はじめは手探りで不思議な世界を垣間見ていくと、なんとなく全体像が掴めてくるという感じ。そして、このアルバムは、音楽の持つ世界にじっくりと浸らせてくれる懐深さがあるということも重要だろうか。


それがなんに依るものかは明言出来ないが、少なくとも、アルバムをハンドクラフトのように制作する根気強さ、音楽に対する普遍的な信頼感、さらには前述したようなニューヨークに綿々と受け継がれる文化的な感覚が、こういった奥深いフォークミュージックの世界を形作ったのかもしれない。曲単体では即効性がないように思えるかもしれないが、必ずしもそうではないことが分かる。フローリストの曲はフルレングスとして聴くと、その真価が掴めるようになる。いうなればフローリストの音楽は聴けば聴くほど、深〜い味わいが滲み出てくるのである。

 

「Moon, Sea , Devil」、「Our Hearts In A Room」はフローリストの代表曲となる可能性があるだけではなく、2020年代のインディーフォークミュージックの名曲であるため、この音楽のファンは出来るだけ聞き逃さないようにしていただきたい。


「Moon, Sea , Devil」は同地のビック・シーフとも共鳴するような音楽であるが、フローリストの曲はよりオープンで、オーガニックな雰囲気に満ちている。そして、フローリストの音楽は、このアルバム全体を通して泣かせる要素を出来るかぎり避けているが、パーソナルでセンチメンタルな心情をバンド全体で共有したとき、心を揺さぶられるような崇高な感覚が現れる。


そしてそれは、ソングライターの個人的な考えが、バンドメンバーと共有された素晴らしい瞬間であり、抽象的な概念が音楽という目に映らないかたちを通じて、しっかりと具象化された''奇跡の瞬間''なのである。

 

音楽の核心のようなコアが最後に出現する。そして、その音楽が持つコアに触れたとき、アルバムやバンドのイメージが変化する。『Jellywish』の最も感動的な瞬間ーーそれはギミック的なものとは対極にあるささやかな喜びと驚きと共に到来する。彼らが伝えたいこと……、たぶんそれは、なにかを心から純粋に愛することの尊さである。


「Our Hearts In A Room」は雄大な感じがし、フォークソングとして普遍的な光輝を放ってやまない。メインボーカルとコーラスが合わさる時、フローリストのフォークバンドとしての圧倒的な偉大さが明らかになる。そしてそういう感覚を普段は控えめにしているのがこのバンドの魅力。『Jellywish』は清涼感を持って終わる。音楽そのものがさっぱりしていて後味を残すことがない。

 

 

 

95/100

 

 

 

 Best Track- 「Our Hearts In A Room」

 


ブルックリンのシンガーソングライター、Mei Semonesがニューシングル「Zarigani」をリリースした。

 

この曲はBayonet(ビーチ・フォッシルズのボーカリストとキャプチャード・トラックスのマネージャが設立したレーベル)から5月2日に発売予定のデビューアルバム『Animaru』に収録される。

 

アーティストが得意とするボサノヴァをジャズ/フォーク/ポップスとして昇華した素敵なシングル。この曲では、アーティストが子供の頃に妹と一緒に遊んだ思い出がインスピレーションとなっている。ミュージックビデオはアーティストが住んでいるブルックリンの街角で撮影された。 


メイ・シモネスのコメントは下記の通りとなっている。

 

「Zarigani」は、私がこのアルバムで試みていたジャンルの融合を象徴している。明るく、複雑で、動きの速いボッサ・タイプのヴァースが、よりシンプルな響きのインディー・ロック的なコーラスと強く対比している。


各コーラスの前に繰り返されるメインのリックは、メロディック・マイナー・コルトレーンにインスパイアされたものだ。

 

曲名はザリガニという意味で、小さい頃に妹と小川でザリガニを捕まえた思い出に由来している。

 

 

現在、メイ・シモネスは自身初のヨーロッパツアーを開催中。本日、ベルギー/アントワープでの公演を予定している。さらに今後のツアー日程も追加で発表された。注目は日本の最大級の音楽祭”フジロックフェスティバル 2025”にも出演が決定。下記よりライブ日程の詳細をご確認下さい。

 

 

「Zarigani」

 

 

 

◆2024年のインタビュー記事はこちらからお読み下さい。

 

 

【Mei Semones:  2025 TOUR DATES】

 

Fri. Apr. 4 - Antwerp, BL @ Trix ~
Sat. Apr. 5 - Paris, FR @ Petit Bain ~
Sun. Apr. 6 - Paris, FR @ The Mixtape

Wed. May 7 - Brooklyn, NY @ Music Hall of Williamsburg*
Thu. May 29 - Philadelphia, PA @ World Cafe Live*
Fri. May 30 - Washington, DC @ The Atlantis*
Sat. May 31 - Carrboro, NC @ Cat’s Cradle Back Room*
Mon. June 2 - Atlanta, GA @ Aisle 5*
Tue. June 3 - Nashville, TN @ DRKMTTR*
Wed. June 4 - Louisville, KY @ Zanzabar*
Fri. June 6 - Columbus, OH @ Ace of Cups*
Sat. June 7 - Chicago, IL @ Lincoln Hall*
Sun. June 8 - Milwaukee, WI @ Cactus Club*
Mon. June 9 - Minneapolis, MN @ 7th St Entry*
Wed. June 11 - Ferndale, MI @ The Loving Touch*
Thu. June 12 - Toronto, ON @ Longboat Hall*
Fri. June 13 - Montreal, QC @ Bar Le Ritz PDB*
Sat. June 14 - Boston, MA @ Red Room Cafe 939*

Fri. July 11 - Dallas, TX @ Club Dada
Sat. July 12 - Austin, TX @ Parish
Tue. July 15 - Phoenix, AZ @ Valley Bar
Wed. July 16 - San Diego, CA @ Quartyard
Fri. July 18 - Los Angeles, CA @ Lodge Room
Sat. July 19 - San Francisco, CA @ The Independent
Mon. July 21 - Portland, OR @ Polaris Hall
Tue. July 22 - Vancouver, BC @ Biltmore Cabaret
Wed. July 23 - Seattle, WA @ Barboza

Sun. July 27- Minamiuonuma, Japan @ Fuji Rock Festival

~ supporting Panchiko
* with John Roseboro

 girlpuppy 『Sweetness』

 

Label: Captured Tracks

Release:2025年3月28日

 

Review

 

キャプチャード・トラックスと新契約を結んで発表されたベッカ・ハーヴェイによる新作アルバム『Sweetness』はインディーロックの純粋な魅力に溢れている。ガールパピーは記憶に間違いがなければ、従来はインディーポップ寄りのソングライティングを特色としていたシンガーであったが、今回のアルバムではロック的なアプローチを選んでいる。むしろオルタネイトな要素を削ぎ落として、聴きやすいロックソングとは何かという点を追求した作品となっている。バンガー的な曲も幾つか収録されているが、失恋という全体的なテーマからも分かる通り、エモーショナルで切ない雰囲気を帯びたアンニュイなロックソングが特徴のアルバムである。このアルバムでは傷ついた心を癒やすような活力に満ち溢れたロックソングを楽しめるはず。

 

アルバムはシンセの壮大なインスト曲「Intro」で始まり、ソングライターとしての成長を印象付ける「I Just Do」が続く。心地よい8ビートにインディーロックのラフなバッキング・ギター、そしてベッカ・ハーヴェイの内省的なボーカルが徐々にドライブ感を帯び、サビの箇所で轟音性を増す。そしてそれはセンチメンタルな雰囲気がありながらも、若い年代のシンガーらしい純粋な感覚を表現していて、聴いていて何か爽快感やカタルシスをもたらす瞬間がある。このアルバムでは痛快な轟音のインディーロックが強い印象をはなつ。レーベルの契約と合わせて発表された「Champ」はベタであることを恐れず、ロックソングの本来の輝きを放つ。シューゲイズの響きとグランジの重さがこの曲のロック的な魅力を強調している。使い古されたと思えるようなロックの手法もベッカ・ハーヴェイの手にかかると、新鮮な音楽に生まれ変わる。「Champ」はギターソロが力強い印象を放ち、雄大なイメージを呼び覚ます瞬間がある。

 

従来のインディーポップ風の曲も収録されている。「In My Eyes」はドリーム・ポップ風の曲であるが、ハーヴェイのボーカルはこの曲に切ないエバーグリーンな感覚を添えている。過去の数年間を振り返るようなポップソングで憂いや悲しみをアンニュイなポップソングとして昇華している。その後、このアルバムの音楽はやや夢想的になっていき、同レーベルのデュオ、Widowspeakにも似たセンチメンタルなインディーロックソングへと傾倒していく。そしてセンチメンタルであることを恐れないという点にソングライターとしての力強さが宿っている。「Windows」、「Since April」はそれほどオルタナティヴロックファンにも詳しくないリスナーにも琴線に触れるものがあるに違いない。それはソングライターとして感覚的なもの、一般的には見えにくいエモーションを歌で表現することにガールパピーは長けているからである。

 

本作の音楽はゆっくりと歩きだしかと思うと、徐々に走りが軽快になっていき、クライマックスでそれらが軽妙な感覚に変わる瞬間がある。それらは過去の傷ついた心を癒やすような優しさに満ちている。人間としての成長が断片的に描かれ、それらがスナップショットのように音楽に収められている。シンガーとしてはそれらの過去を振り返りつつも、別れを爽やかに告げるという瞬間が織り交ぜられている。それはまた過去に浸らず、次の未来へとあるき出したということだろう。終盤の収録曲に聞かせる部分が多い。「Beaches」はアメリカーナやカントリー/フォークをポップの側面から解釈し、聴きやすく、つかみやすい曲である。特にシンパシーを超えたエンパシーという感覚が体現されるのが「I Was Her Too」だ。サッカー・マミー、MOMMAといったトレンドのロックシンガーの音楽をわずかに彷彿とさせる。その一方で、エモに近い雰囲気が立ち込め、それらがドラムやシンセストリングスの演奏により、ドラマティックな空気感を帯びる。そして、なかなか表しがたい内在的な感情性をロックソングに体現させている。この曲はガールパピーの象徴的な一曲が生み出されたと見ても違和感がないように思える。

 

ガールパピーは、TilTokなどのカルチャーの波に乗り、それらをベッドルームポップの系譜にある軽快なロックソングに落とし込んでいる。しかし、その中には個性的な雰囲気が漂い、それが『Sweetness』の潜在的な魅力となっている。それほど肩ひじを張らず気楽に楽しめると思いますが、一方でポストパンクからの影響も読み解ける。例えば、「For You Two」は象徴的な一曲で、ドライブ感というパンクの要素が聴きやすく甘いポップセンスと融合している。これらはパワーポップとまではいかないものの、 それに似た甘く切ない雰囲気に満ちている。言葉で具象化することの難しい感覚を表すのがロックソングの醍醐味であるとすれば、『Sweetness』はその一端を味わえる。そして実際なんらかのカタルシスをもたらすはず。クローズ「I Think Did」はアコースティックギターをメインにした開放的なフォークポップ。ロックソングの音楽性が瞬間的なものであるがゆえか、アルバムを聴いた後に切ない余韻を残す。

 

 

 

 

80/100 

 

 

Best Track-「For You Two」



スウェーデンの実験音楽家の新作アルバムに注目したい。同地の作曲家、ギタリスト、鍵盤奏者、エレン・アークブロ(Ellen Arkbro)の4枚目のアルバム『Nightclouds』は、2023年から24年にかけて中央ヨーロッパ各地で録音された、ソロオルガンのための5つの即興曲を集めた。


『Nightclouds』は、アークブロのコンセプトを定義するようになった厳格さと正確さにしっかりと根ざしているものの、これまでの作品よりも臆することなくロマンティックで内省的な作品となっている。 


空間化されたハーモニー、触感、テクスチャーを探求してきたアークブロは、聖なる音楽、ECMスタイルのジャズ、ダウンタウンのミニマリズムを等しく取り入れ、クールな親密さと音色を生み出している。


 彼女の減速主義的な和音即興は、ディルジのようなウォッシュで聴き手を包み込み、彼女のクローズ・マイキングは、リードのざらざらした触感を明らかにし、聴き手を音の内と外の両方に引き込む。 

 

『Nightclouds』はキェル・ジョンセンとヤン・ガルバレクのデュエット、ラ・モンテ・ヤングとトニー・コンラッドがユーリンガーとハーマーのカウボーイ・ソング「Oh Bury Me Not」を演奏したことを想起させる。厳格に抑制されたアーキテクチャーを通してスピリチュアルなペーソスを表現している。



昨年の『Sounds While Waiting』(W.25TH, 2024)に続き、アークブロの空間オルガンのインスタレーションを記録したステレオ・ミックスのセレクション『Nightclouds』は、即興の作曲と即興に焦点を当て、方向性を転換している。 エレガントでシンプルな和音の足場が、絶えず変化する豊かなテクスチャーを支える。 小品集の最後を飾るのは、イギリスのジャズ・ギタリスト、アラン・ホールズワースを意識したタイトル曲「Nightclouds」の2つのヴァリエーション。


最初のテイクは、連続的に転調する和声進行をスローダウンして伸ばしたもので、短いクロージング・ヴァージョンは、単に3つの和音をループさせたもの。 これらの曲の間には、スイスのヴェヴェイにあるラ・トゥール・ド・ペイユ寺院で録音された「Still Life」と「Chordalities」がある。

 

アルバムの後半は、ベルリンの再建されたゲデヒトニスキルヒェ(カイザー・ヴィルヘルム記念教会)で録音された広大な作品「Morningclouds」。 アークブロの簡潔な音楽的語彙と形式的構成は、感情の両義性を呼び起こし、同時に高揚感と哀愁を漂わせ、冷静で遠い美しさをもって聴き手を感情のスペクトラムへと導く。


『Nightclouds』は、アークブロの進化する作品群における深遠なステートメントとして位置づけられ、内省的であると同時に広がりがある。このアルバムは、シンプルなハーモニーを深い影響を与える音の風景に変える彼女の特異な能力を再確認させ、リスナーを瞑想と感情的な深みの空間へと誘う。

 

アルバムの発表と合わせてパイプオルガンの演奏をフィーチャーしたタイトル曲がストリーミング配信されている。

 

この新曲ではドローン音楽のアプローチが取り入れられている。しかし、通奏低音の中で微妙な和音の変化により、色彩的なトーンの変化を楽しめる。今までに存在しなかった新鮮な音楽が登場した。

 

 

「Nightclouds」

 

 


Ellen Arkbro 『Nightclouds』


Label: Blank Forms Editions

Release: 2025年5月30日

 

Tracklist: 


1. Nightclouds

2. Still Life

3. Chordalities

4. Nightclouds (variation)

5. Morningclouds

 


ニュージーランドのポップバンド、Phoebe Rongs(フィービー・リングス)の初のフルアルバム『Aseurai』が6月6日にCarparkからリリースされる。「Aseuraiとは、大気の中であなたの周りにある、届きにくい、消えていく、という意味です」とバンドリーダーのクリスタル・チョイは言う。 


フィービー・リングスの新曲「Get Up」は、ベーシスト、ベンジャミン・ロックのヴォーカルデビューとなる特別な曲でもある。 

 

「この曲は、ディスコ、特にナイル・ロジャースの作品(シック、シスター・スレッジ)をよく聴いていた時期に書いた。 同じような時期に『マトリックス』を観たのをよく覚えている」

 

冒頭のシーンで、トリニティがエージェントに追われていて、『トリニティ、立ち上がるんだ』と自分に言い聞かせるんだ。 自分から進んで起き上がろうという考え方は、遊びとして面白いと思ったし、そのシーンは少し心に残った。 古いディスコ・トラックには、しばしばこのような命令形の言葉(「Everybody Dance!」、「Leave your cares behind」)がある。 たくさんのストリングス、BV、そして熱烈なアープのソロで、かなり包括的なディスコ処理を施した」

 


「Get Up」





フォークポップシンガー、リーヴァイ・ロビン(Levi Robin)が新曲「Healing Is Coming」をリリースした。哀愁を感じさせるフォークポップ。リリックビデオも下記よりチェックしてみよう。


この曲は、降伏と勇気の歌であり、あらゆる障害に立ち向かい、人生の計り知れない真実に立ち向かい、暗闇に立ち向かい、私たちのユニークな魂の光をもたらし、蛇の目を見据えるための歌です」とリーバイは語っている。 

 

「Healing Is Coming」では、ぶつかり合うギターに乗せて、リーヴァイの紛れもないヴォーカルがフィーチャーされている。 魂を揺さぶる繊細なハーモニーが曲に華を添え、美しさとほろ苦さが同居するフォーク・ポップ・トラックを作り上げている。 


リーヴァイは100万回以上のストリーミングを記録し、世界中にファンを獲得している。 また、マティスヤフの前座を務めたこともある。 


リーバイ・ロビンの探求と好奇心の旅は、彼を様々な道へと導いてきた。 魂を剥き出しにしたフォーク・アーティストの独特な音楽スタイルは、深く個人的で変容的な歌詞と感情を揺さぶるヴォーカルを組み合わせ、意味とつながりに満ちたサウンドを生み出している。


カリフォルニア州オレンジ郡で育ったリーヴァイは、10代の頃、彼や多くの人が "ベルトコンベアー式の学校システム "と表現するものに深い不満を抱くようになった。 背中のシャツとギターしかなかった彼は、別の道、つまり音楽の道に踏み出した。 

 

家出から東洋のスピリチュアリティとの出会い、サイケデリアから自分自身の古代ユダヤ教的ルーツの発掘まで、ソングライティングはユニークに統合する不変のものだった」とリーヴァイは打ち明ける。 

 

 ソングライティングは、彼の心の奥底にある感情をメロディと詩へと変換するパワフルな方法となった。 バッハ、ストラヴィンスキー、ミンガス、ヘンドリックス、ディラン、ベック、ガイ、ディアンジェロ、レディオヘッドなど、多彩なアーティストからインスピレーションを得て、リーバイ・ロビンは独自のマインドフルでジャンルを超えた音楽作品を生み出している。

 

 

「Healing Is Coming」



このアーティストが最初に注目を集めたのは2014年、セルフタイトルのデビューEPのリリースと、それに続くマティスヤフとのツアーだった。 以来、シングルやアルバムを次々と発表し、100万回以上のストリーミングを記録、世界中にファンを獲得した。

 

2023年、LeviはあるコンサートでプロデューサーのYoel Kreisler、通称'FRAYMES'と出会い、セレンディピティな瞬間を経験した。 すぐにクリエイティブなつながりと友情が生まれ、ふたりはスタジオに入った。 私たちは音楽と影響を交換し始め、この新しい音楽をレコーディングするための新しい方法を構想し始めた。 この新しいコラボレーションの結果であり、最初の試みがシングル "Whole As A Broken Heart "である。 


彼の新しいシングル "Healing Is Coming "は、「あらゆる障害に立ち向かい、人生の計り知れない真実に立ち向かい、暗闇に立ち向かい、私たちのユニークな魂の光をもたらし、蛇の目を見据える、降伏と勇気の歌です」とリーヴァイは語っている。 

 

「Healing Is Coming "では、ぶつかり合うギターに乗せて、リーヴァイの紛れもないヴォーカルがフィーチャーされている。 魂を揺さぶる繊細なハーモニーが曲に華を添え、美しさとほろ苦さが同居するフォーク・ポップに仕上がっている。 




Levi Robin's journey of exploration and curiosity has taken him down many roads. The soul-baring folk artist’s distinctive musical style combines deeply personal and transformative lyrics with emotive stirring vocals, creating a sound that is filled with meaning and connection.


Growing up in Orange County, California, as a teenager Levi became deeply dissatisfied with what he and many describe as “the conveyor belt trajectory of the school system.” With nothing but a shirt on his back and guitar in hand, he took a chance on a different path - a musical one. Levi confides, “From being a runaway to encountering eastern spirituality, from psychedelia to unearthing my own ancient Judaic roots, songwriting has been a uniquely integrating constant.”  Songwriting became a powerful way to translate his deepest feelings into melody and verse. Taking inspiration from an eclectic array of artists including Bach, Stravinski, Mingus, Hendrix, Dylan, Beck, Gaye, D'Angelo and Radiohead, and more, Levi Robin creates his own mindful and genre-defying musical releases. 


The artist first attracted attention in 2014, with the release of his debut self-titled EP as well as his subsequent tour with Matisyahu. Since then, he has shared a series of singles and albums, racking up over a million streams, garnering him a fanbase worldwide. In 2023, Levi experienced a serendipitous moment when he met producer Yoel Kreisler, aka 'FRAYMES', at one of his concerts. Sparking up an instant and immediate creative connection and friendship, the duo entered the studio. He shares, “We started trading music and influences, and began conceptualizing new ways of approaching recording this new music.” The result and first taste of this new collaboration is the single “Whole As A Broken Heart”. 


His new single "Healing Is Coming", "is a song of surrender and courage, to face all obstacles, to face the ineffable truth of life, to face the darkness, to bring forth the light of our unique souls and look the serpent in the eyes," shares Levi. "Healing Is Coming" features Levi's unmistakable vocal hues over colliding guitars. Soul-baring delicate harmonies add to the song, creating a folk pop track that is equal parts beautiful and bittersweet. 

 

 

 

 

 

ザ・ニュー・ポルノグラファーズがニューシングル「Ballad of the Last Payphone」をリリースした。 (楽曲のストリーミングはこちら)インディーロックをベースにした渋いトラックだが、コーラスワークや開放的な雰囲気を持つホーンセクションが異彩を放ち、この音楽を魅惑的にしている。

 

このシングルは、バンドが先月A.C.ニューマンのレーベル、Substackからリリースした限定7インチのA面で、レコードのみのB面「Ego Death for Beginners」も収録されている。 試聴は以下から。


この曲は、レイモンド・カーヴァーの "Fat "という物語にインスパイアされたもので、時代遅れのものに対する憧れが体現されている。A.C.ニューマンはこの曲について次のように述べている。

 

「ある人物がニューヨークで最後の公衆電話を訪れるというストーリーになっている。 語り手は、なぜその公衆電話に魅了されるのかわからない。 それでも、少なくとも私には明らかなんだ」

 


「Ballad of the Last Payphone」

 


ワイト島のポストパンクバンド、Wet Leg(ウェット・レッグ)が2ndアルバムのリリースを正式に発表した。 アルバム初の新曲 "catch these fists "も公開された。


『moisturizer』は2022年にリリースされたウェット・レッグのセルフタイトルデビュー作に続くアルバムで、前作同様、ダン・キャリーがプロデュース。

 

リアン・ティースデイルとヘスター・チェンバースの2人組からバンド編成に進化したウェット・レッグにとって、”moisturizer”はツアー・メンバーのエリス・デュランド(ベース)、ヘンリー・ホームズ(ドラムス)、ジョシュア・モバラキ(ギター、シンセ)が参加し、クレジットされた初のリリースとなった。

 

アルバムは、2022年から2023年にかけて絶え間なく行われたツアーの経験、ホラー映画、恋に落ちること、そして "ライブで演奏したら楽しそうなこと "からインスピレーションを得ているという。


ニューアルバム「moisturizer」の具体的なインスピレーションについては、バンドがリストを挙げている。「有効成分:  友情、ダヴィナ・マッコール、ツアーバーン、ケタミン、真実の愛、すべてのエイリアン映画、ダン・キャリー、献身、ソレント海峡、CPR人形、急速な成功、ジェニファーとニーディ、強迫観念、ギター、レズビアン・セックス、サフォーク、山小屋熱」


彼らは今日、"catch these fists "で最初のプレビューを提供した。 ウェット・レッグのファースト・アルバムのファンは、"catch these fists "が彼らのアイロニーに満ちたポスト・パンクの手法を変えていないことに驚くはず。

 

しかし、今回、彼らは獰猛さを増し、ダンス・パンクの要素を少し加えている。ティースデイルは、サビで "あなたがどんな人なのか、私は十分すぎるほど知っている/あなたの愛はいらない、ただ戦いたいだけだ"と宣言し、好戦的な男をシャットアウトしている。


バンドは「catch these fists」の公式PVも公開した。プレスリリースによると、このPVは "新作の適当な気まぐれな導入"だという。 ティースデイルとチェンバースの出身地であるワイト島で撮影されたこのビデオは、バンドが "Wet Dream "や "Chaise Lounge "のビジュアルに見られるような風景を練り歩く様子を描いている。 走りながら牛乳を飲んだりホットドッグを食べたり、ラジカセやビーチボールで踊ったり、一緒にカンカンをしたりする。 ビジュアルは以下から。


ウェット・レッグは、このアルバムを引っ提げた北米ツアーをまだ発表していないが、今年の夏にはヨーロッパでプリマヴェーラ・サウンド、グラストンベリー、ロック・ヴェルヒター、ウェイ・アウト・ウェストなど、多数のフェスティバルへの出演が決定。 

 

 

「catch these fists」





Wet Leg 『moisturizer』


Label: Domino

Release: 2025年7月11日


Tracklist:

1.CPR
2.liquidize
3.catch these fists
4.davina mccall
5.jennifer's body
6.mangetout
7.pond song
8.pokemon
9.pillow talk
10.don’t speak
11.11:21
12.u and me at home
 


アメリカ人ギタリスト/シンガー、セント・ヴィンセントのニューシングル「DOA」が正式に発表された。前作アルバムでは90年代のロックを彷彿とさせる音楽性を選んだが、この曲ではデビュー当時のダンスミュージック路線に回帰している。しかし、楽曲はグレードアップしている。


"DOA"は、ダンスミュージックとガレージミュージックが融合した音楽で、EUAの映画館で6日に公開された映画 "Death of a Unicorn "の三部作となっている。 長編ホラー・コメディで、ポール・ラッドとジェナ・オルテガが出演。


トータル・シンセサイザーでギターが少ない、あるいはエレクトロニック・バンドを駆使したプリンスやシックのようなギター・タレントの "DOA "は、一昨年のセント・ヴィンセントのアルバム、"All Born Screaming "で聴いたような、ナイン・インチ・ネイルズ、インダストリアル・ペサディーノ、アート・ロックに傾倒したエスプリを持つ作品とは大きく異なっている。

 

セイント・ヴィンセントは最新アルバムをロマ・ヴィスタから発表したが、同時に自主レーベルも運営している。公式サイトではマーチャンダイズを展開し、グッズ販売などをおこなっている。


「DOA」

 

10年後、ノルウェーのアーティスト、AURORAが彼女の楽曲「Through the Eyes of a Child」を再リリースした。デビュー・アルバム『All My Demons Greeting Me as a Friend』に収録されていたこの曲は、2016年のオリジナル・リリースから10年近くを経て、新たな命を得た。この曲のすばらしさを聴くと、のちのサクセスもうなずけるような内容である。


「人々がこの曲とつながっているのを見るのは、不思議で素晴らしいこと。 この曲を書いてから、私を取り巻く世界は大きく変わった。 そして今、この言葉は私にとってより多くの意味を持つようになった。 内なる子供をないがしろにすること、無邪気さと弱さを混同することをやめてほしいという世の中の深いニーズ」
 
 
「この歌が人々に何か良いものを与えることを願っています。 この曲はいつも、人々がこの曲を見つけ、優しく接してくれることを願って書かれている。 自分自身の人生を生きているこの歌は、私にとっては不思議な存在ですが、とても美しいと思います」とAURORAは言う。


AURORAが「Through the Eyes of a Child」を書いたのは、主人公と同じ13歳のときだった。 『アドレセンス』のフィリップ・バランティーニ監督はソーシャルメディア上でこう語っている。「この曲を最後に使わなければならないことは、かなり早い段階からわかっていました! とても心にしみるし、力強いんだ」
 



「Through the Eyes of a Child」

 


ワイルドでクリエイティブなソングライターであり、LGBTQ+インフルエンサーのBoy Jr.(they/them)のニューシングルとミュージックビデオを公開した。 'Zitty Stardust "と名付けられたこの曲は、アーティストの移行期とその間に経験したジェンダーの幸福感を歌った、活気に満ちたエレクトロ・ポップ・バンガーだ。 


このアーティストは、何百万ものストリーミングと膨大な数の熱心なソーシャルメディア・ファンを持ち、Wonderland、LADYGUNN、Atwood Magazineなどから賞賛を受けている、 


BOY JR.はアリエル・アレン=ラブマン(they/them)のソングライティング&プロデュース・プロジェクトで、エレクトロニック、ポップ、インディー、パンクを融合させ、感染力のあるソングライティングとシャープなプロダクションで表現するクリエイティヴ・パワーハウスだ。 


最新アルバム『I Love Getting Dumped! (2024年10月)は、傷心、ユーモア、自分探しのハイエナジーな探求である。 Galoreはこのアルバムを「魅惑的」と評し、「メインストリームとアンダーグラウンドの両方の音楽を愛するすべてのファンにとって必聴の一枚」と名付け、Earmilkはこの音楽を「衝撃的」と絶賛した。 


DIYの大御所であるBoy Jr.は、全米の草の根ツアーのヘッドライナーを務め、The Living Tombstone、Lovejoy、KOPPS、Jhariah、Vial、Jerらとステージを共にしてきた。アリエルは音楽を超えて、若いクィアピープルの希望と抵抗の重要な代弁者となり、文化的・政治的な反発の中で自己表現を支持するために彼らのプラットフォームを利用している。


ジャンルを超えたサウンドと大胆不敵な創造性で、Boy Jr.はインディペンデント・アーティストであることの意味を再定義し続けている。 彼らの新曲「Zitty Stardust」は、アーティストの変遷の旅とその間に経験した喜びの感情を歌った、活気に満ちたエレクトロ・ポップ・バンガーだ。 


ボーイ・ジュニアは次のように述べています。「去年、テストステロンを飲み始めて数カ月経った頃、ニキビがたくさんでき始めて、そのニキビについてネットでたくさんの意地悪なコメントをもらったんだ」と打ち明ける。 ある人は "Zitty Stardust "と言った。 そしてそれはすぐに曲のタイトル候補として頭の片隅に浮かんだ。 僕を侮辱したかったんだろうけど、この曲は本当に象徴的でクールなんだ。 それからしばらくして、パーカッションのパートを作るために男性ホルモンを使いながら、自分が感じていたジェンダーの幸福感について歌い始めた。 あの "Zitty Stardust "のコメントを思い出したとき、この曲のタイトルにしなければならないと思ったんだ」


「Zitty Sturdust」

  Frenchie 『Frenchie』

Label: Frenchie

Release: 2025年3月28日

 

Review

 

 

80年代くらいに”アーバン・コンテンポラリー”というジャンルがアメリカを中心に盛り上がった。 日本ではブラック・コンテンポラリーという名称で親しまれていた。いわゆるクインシー・ジョーンズやマーヴィン、スティーヴィーといったアーティストを中心に新感覚派のソウルミュージックが登場したのである。これらはきらびやかなソウルという音楽性をもって従来のブルージーなソウルミュージックに華やかな印象を添えたのだった。以降、このジャンルはイギリスにも伝播し、ポピュラーミュージックと組み合わせる動きが出てきた。Tina Turner,Billy Ocean,Heatwaveなどがその筆頭格といえるが、正直なところを言えば、米国のアーティストに比べれば小粒な感じがあった。いまだこの音楽は完全には洗練されていなかったのである。

 

しかし、最近、UKソウルはこの80年代のプロデュース的なソウルミュージックを受け継いで、再びリバイバルの運動が発生している。そして、80年代の米国のソウルと比べても引けを取らないシンガーが台頭してきている。例えば、JUNGLEはもちろん、サム・ヘンショー、NAO、ファビアーナ・パラディーノなどがいる。エズラ・コレクティヴの最新アルバムにもコラボレーターとして参加したヤズミン・レイシーはレゲエやカリブ音楽の方向からダンスミュージックを再編するシンガーである。これらがソウル・リバイバルのような二次的なムーブメントに結びつくかは不透明だが、米国ではラディカルなラップが目立つ中、一定数リスナーの需要がありそうだ。これらのグループはソウルミュージックの歌唱とポップソングのセンスを融合した存在である。ただ、これらは90年代の日本のミュージック・シーンには不可欠な音楽だった。

 

 

フレンチーはその名の通り、フランス系のシンガーで、移民が多いロンドンの世相を反映している。移民は少なくとも、従来の文化観に新しい風を呼び込む存在なのであり、音楽的には、そういった新しいグループを尊重することは、なかなか避けられないだろう。フレンチーは、ネイキッド・アイズというグループで元々活動していたらしく、その後ソロシンガーに転向している。その歌声を聴けば、グループのシンガーではもったいないというイメージを抱くことだろう。セルフタイトルを冠した「Frenchie」は、UKソウルのリバイバルを象徴付ける作品で、NAOの作風にも近い雰囲気があり、フレンチーの場合はよりメロウでうっとりとした感覚に満ちている。おそらくダンスミュージックにも精通しているフレンチーは、今回のアルバムにおいて、複数のバンドメンバーの協働し、魅惑的なアーバン・コンテンポラリーの世界を見事に構築した。鍵盤奏者のルーク・スミス、KOKOROKOのドラマー、アヨ・サラウ、ホーネン・フォード、フライデー・トゥーレイのバッキングボーカル、そしてアーロン・テイラー、アレックス・メイデュー、クリス・ハイソン・ジャス・カイザーが楽器とプロデュースで参加した。

 

80年代の米国のソウルミュージックは、多くが70年代のファンクグループからの影響を元に成立しており、ジャクソン5などを筆頭に大活躍した。また、専門家によると、プリンスのようなエキセントリックなシンガーの音楽でさえ、その基盤となるのはファンクだったということであり、結局、ヒップホップが存在感を放つ90年代〜00年代のブラックミュージックの前夜はファンクの要素が欠かせなかったのである。


さすがにブルースやドゥワップは古典的過ぎるとしても、James Brownのようなファンクはいまだ現代的に聞こえることがある。それはソウル/ヒップホップという音楽の成立にファンクの要素が不可欠だからである。そして、UKソウルの多くの歌手が曲りなりにもファンクのイディオムを上手く吸収している。だからダンスミュージックのビート/リズムに乗せたとき、軽快に聞こえ、メロウな歌と結びついたとき、心地よさをもたらす。もし、これらのファンクの要素を完全に外すと、それらのソウルはニュートラルな感覚に近づき、ポピュラーに傾倒していくのである。これらは音楽的には親しみやすいけれど、深みに欠けるという印象を与えることがある。

 

 

ただ、ファンクを吸収したソウルというだけでは、米国の70年代や80年代のソウルミュージックの二番煎じになってしまう。そこで、ロンドンの移民性という個性的な文化観が生きてくる。例えば、このデビューアルバムは、本格派としてのソウルの雰囲気が通底しているが、一方で、ワールドミュージックの要素が満載である。そしてこれがR&Bのイディオムを懐古的にせず、おしゃれな感覚やエスプリの要素を付け加えている。特に、ボサノヴァを意識したリゾート的なアコースティックギター、さらにはフレンチポップ(イエイエ)の系譜にあるフランス語のポップスが登場したりもする。これらのワールド・ミュージックの要素はおそらく、音楽が閉塞したり、陳腐になりかけたとき、偉大な力を発揮するようになるのではないかと思う。


そして、それらは、とりも直さず、現代の世界情勢に分かちがたく結びついている。いままでの音楽の世界は、商業的に強い地域で繁栄する場合が多かったが、現今では多極主義の情勢の影響を受け、固有の地域の音楽がエキゾ(異国的)ではなくなり、ワールドスタンダードに変化した。そして、これはグローバリズムや自由貿易といった政策がもたらした功績の一つでもあったろう。もちろん、EU圏内をパスポートなしで自由な旅行ができるという点も功を奏した。旅行や貿易は、人やモノだけではなく、''文化を運搬する''という点を念頭に置かねばならない。また、音楽という形態は、他の地域の人が固有の音楽や民謡を発見することで、従来の音楽的なアプローチにささやかな変化をもたらしてきた。これは他のどの媒体よりも顕著な点である。

 

フレンチーのデビューアルバムは、そういった「自由貿易の時代の産物」である。「Can I Lean On You」ではUKソウルを下地にして、メロウなエレクトリック・ピアノがストリングスやリズムの輪郭を際立たせるドラム、そしてフレンチーのボーカル、そして同じように美麗なコーラスが溶け合い、重厚なソウルミュージックが作り上げられる。近年、米国のソウルはディープになりがちだが、フレンチーの音楽はどこまでも軽快でソフト。しかし、ニュートラルな音楽には陥らない。そして、それは何より、メロディーやリズムのセンスの良さだけではなく、ファンクの要素がポピュラーソングと上手く干渉し、ハイセンスなソウルミュージックが作り上げられていく。この曲はガール・レイのようなイギリスのバンド形式のソウルの録音の影響が含まれ、ソロシンガーとしての性質を保ちながら、バンドの音楽にもなっているのである。

 

近年、ヒップホップが流行ると、ファンクの持ち味である華麗な調性の転回が少なくなってしまった。しかし、「Searching」は、バンドアンサンブルのグルーブと華麗な転調がセンスの良い音楽性を作り上げる。そしてさらにStylisticsなどに象徴されるようなポピュラー寄りのコーラスグループの音楽性を踏まえ、ソウルミュージックの醍醐味とはなにかを探っている。懐かしさがあるが、やはりヒップホップやファンクを意識したグルーヴィーなリズムがハネるような感覚をもたらし、曲を聴きやすくしている。この曲はドライブのお供にも最適なトラックである。同じようにヒップホップの軽快なリズムを活用した「Love Reservior」は、ニルファー・ヤンヤの書くソウルに近い雰囲気がある。ドライブ感のあるリズムを反復的に続け、そこに心地よいさらっとした歌を添える。スポークンワードと歌の中間にあるニュアンスのような形式で、わざと音程(ピッチ)をぼかすという現代的で高度な歌唱法が巧みに取り入れられている。

 

本作の中盤の二曲はソウルバラードとして聞き入らせる。「Werewolf」はオルガンの音色を用いたゴスペルの雰囲気を印象付けている。三拍目を強調する変則的なリズムを用い、心を和ませるような巧みなバラードを書き上げている。メインボーカルとコーラスと伴奏という形の王道の作風に、ジャズ風のピアノのアレンジメントを配し、甘美な趣のあるソウルミュージックが流れていく。さらに失恋をテーマにした歌詞がこれらの曲に切なさを添えている。しかし、曲は悲しくなりすぎず、ジャズ風のピアノが曲にハリのような感覚を与えている。続いて、アイスランドや北欧のポストクラシカルと呼応した曲も収録されているのに注目したい。「Almost There」はクラシックとポピュラーの融合で、同じようにそれらをバラード・ソングとして昇華している。上記2曲の流れはアルバムのハイライトとなり、うっとりした時間を提供する。

 

続く「Distance」はアルバムの序盤の音楽性に再帰し、ファンクの要素が色濃くなる。それらをディスコ風のサウンドとして処理し、懐かしのEW&Fのようなミラーボール華やかなディスコソウルの音楽性が強まる。しかし、同時に、80年代のアーバン・コンテンポラリーの作風が強く、マーヴィン、クインシー、スティーヴィーのポップソングとしてのR&Bの要素が色濃い。

 

これらは古典性と新奇性という両側面において二律背反や矛盾撞着の意味を付与するが、曲の軽快さだけではなく、ディープさを併せ持っている。これが欠点を長所に変えている。そして曲に聴きやすさがある理由は、ファビアーナ・パラディーノのようにポップセンスがあり、曲の横向きの旋律進行を最重要視しているからだろう。美しい和音が発生するように聞こえるのは、モーダルな要素であるポリフォニーの動きと倍音の調和が偶発的に生み出したものである。これらが立体的な音楽を作り上げ、リズムにしても、メロディーにしても、ベースとなる通奏低音にしても、流動的な動きをもたらす。たぶんそれが聴いていて飽きさせない理由なのだろう。

 

結局、バリエーションという要素が曲の中で生きてくるのは、根幹となる音楽性がしっかりと定まっている場合に限定される。その点においてフレンチーは、バンドとともに本格派としてのソウルを構築している。アルバムの後半には遊び心のある曲が多い。「Shower Argument」はアコースティックギターを用いたボサを聴くことができ、小野リサのようなブラジル音楽を彷彿とさせる。かと思えば、音楽そのものは軽くなりすぎることはない。「It' Not Funny」ではしっとりしたピアノバラードを慎ましく歌い上げている。この点は、例えば、ブルーノートに所属するSSW、ノラ・ジョーンズのようなシンガーにも何か共鳴するものがあるのではないかと思う。

 

音楽が移り気になろうとも、全体の水準が下がらない。これはおそらく歌手としての卓越した才覚をさりげなく示唆しているのではないだろうか。「Que Je T'aime」はボサノヴァをワールドミュージックとして再考している。この曲ではゲンスブールのようなフランスの音楽を受け継いでいる。クローズもフレンチポップの気配が濃い。しかし、現代的なUKソウルの要素が音楽自体を前の時代に埋没させることがない。音楽が明るく、スタイリッシュな感覚に満ちている。


以前のソウルといえば、地域やレーベルのカラーが強かったが、今は必ずしもそうではない。そして海を越え、イギリスでこのジャンルが再び花開こうとしている。もちろん、自主制作でも、メジャーレーベルのクオリティに引けをとらない作品を制作することは今や夢物語ではなくなったのである。

 

 

 

 

85/100 

 

 

 

Best Track-  「Werewolf」