Interview- Tetsumasa

 


Tetsumasaは名古屋市出身の日本のエレクトロニック・プロデューサー、DJ、シンガー/ラッパー。Downtempo、Hip Hop、House、Dub、Bass Music全般に深い影響を受け、2016年よりベルリンを拠点に活動中。


Tetsumasaは、2000年代には別名義の”Dececly Bitte”としてU-cover、Sublime Porte、AUN Muteや+MUS等、ヨーロッパ/日本のレーベルから、ダブ/テクノ/アンビエント等の音響作品を発表してきた。

 

その後、”Tetsumasa”名義で活動を開始し、実験的な電子音楽の作品 『ASA EP (vinyl)”』、『Obake EP (cassette)』をリリースしました。Urban Spree for Libel Null Berlin、Griessmühle (Berlin)、OHM Berlin、ATOM Festival (ウクライナ) などでもライブセットでプレイしている。

 

今回のインタビューでは、海外に活動拠点を移した経緯や、ベルリンでの生活、今後のアーティストとしての展望等についてお話を伺うことが出来ました。エピソードの全容を以下にご紹介します。



Music Tribune:  意外に活動期間が長いようなのでびっくりしました。テツマサさんは2000年代頃からプロデューサーとして活動なさっているようですが、日本にいた頃は、どういった感じで音楽活動を行なっていたのか、大まかで構いませんので、教えてください。



Tetsumasa:  ベルリンに来る以前は、日本やヨーロッパのレーベルから作品をリリースをしたりしながら、地元名古屋を中心に、時々、東京等でもライブしたりしていました。今はなくなりましたが、名古屋の”Club Domina”でライブをよくやっていて、その後、Dominaのオーナーが新たに設立した”spazio rita”というアートスペースで定期的にパーティーも主催していました。その頃は、Dark Electronic Exparimentalのような音楽をやっていましたね。



Music Tribune:  2016年から日本からベルリンに拠点を移して活動なさっているとのことですが、現在はどのような感じで日常生活を送っているのか教えてください。また、なぜドイツに移住しようと思ったのかについても教えてください。さらに言語的なコミュニケーションやドイツの文化に馴染むのは、なかなか大変なことではないですか??



Tetsumasa:  僕はフリーランサーなので、いつも自宅で仕事しています。あとは週に3回か4回くらいジムに行ったり、公園を散歩したりとか。友達と飲みに行くのが好きなので、週末は友達とバーとかたまにパーティー行ったりして過ごしてますね。
 

ベルリンに移住しようと思ったのは、ベルリンの音楽が昔から好きだったのと、ビザが比較的取得しやすいというのを知っていたので決断しました。僕は今でも、ドイツ語はまったくしゃべれないので、基本的に英語で人とコミュニケーションをとってます。ベルリンはインターナショナルな都市なので、そんな人結構いるかなと思います。



Music Tribune:   テツマサさんは、2017年に「OBAKE EP」を発表しています。この作品は「レフトフィールド・テクノ」とも称されるように、かなり実験的な電子音楽に挑んでいると思いますが、このアルバムについては、2000年代からの音楽性を受け継いだものだったのでしょうか?



Tetsumasa:   そうですね。「OBAKE EP」 は2000年代からやっていた音楽の延長線上にあると思います。2010年くらいからのインダストリアルとかエクスペリメンタルなテクノとかのエレクトロニック・ミュージックがほんの一部ですけど少しトレンドになっていたと思います。その辺りの音楽に影響受けてその時は制作を行っていました。



Music Tribune:  以後、2020年の「On The Way」(食品まつり a.k.a foodmanが参加)からガラッと作風が変化したように思えます。私は、この辺りの音楽にはあまり詳しくないんですが、これは現地のフロアのダンス・ミュージックに感化されたことが大きいのでしょうか。また、最近では髪の色も赤に変わり、かなりイメージチェンジを図っていますね??



Tetsumasa:   いや、ベルリンのダンスミュージックとはぜんぜん関係ないと思います。でも、この頃からシーン全体が大きく変わったように思いますね。

 

元々ポップミュージックを聴いていたんですけど、この頃から、更にポップスのジャンルやシーンにはまっていきました。(SOPHIE, Lapalux, Kilo Kish, Sega Bodega, BABii, Jessy Lanza, Tirzah等を好んで聴いていたという)

 

逆に、以前僕がやっていたスタイルの音楽は目に見えて廃れていくのがわかりました。僕自身、そうゆう音楽を聴かなくなってしまったし、その手のジャンルの人達も何かしらのスタイルチェンジを図った人も少なくなかったと思います。2020年以前はモチベーションも結構下がっていたため、2018年頃からは、新たにやりたいことを見つける旅でした。


髪の色については、髪を染めようと思って、その当時の彼女に聞いたら「赤が良いんじゃない?」ってことで赤にしました。結構自分でも気に入っているんで、そのまま赤にしてます。最近ファッション系の人とつながりも結構あって、ファッションも気にしたりもしていますね。




Music Tribune:   続いて、11月2日発売の新作EPについても質問したいと思います。「Lots of Question」のテーマ、コンセプト、全般的な構想などについて教えてください。



Tetsumasa:  タイトルの”Lots Of Questions”は自分自身とオーディエンスに対しての疑問がテーマになってます。自分が今どこにいて、どこに向かっているのかがはっきりわからないので、「Lots Of Questions」というタイトルにしました。僕の疑問にオーディエンスが何か答えをおしえてくれることを期待しています。



Music Tribune:  テツマサさんは、これまでウクライナやベルリンでのライブを経験されているようですね。日本とヨーロッパのクラブ・シーンの違いや、ライブ時の迫力の違い等があれば教えてください。


Tetsumasa:  特にベルリンがそうなんだと思いますけど、なんか日本に比べてヨーロッパの方がクラブという場所がカジュアルだと思います。

 

その他に娯楽も特にないし、みんなで楽しむ場所という感じですね。日本のそういったテクノとかのクラブに行く人って結構本当に好きな人が多いと思うんですけど、ベルリンはそうじゃない人の方が多いと思います。

 

あと、ベルリンのクラブって、結構、ガーデンがついているところがあって、チルスペースみたいな? そうゆうのとか凄くいいなと思いますね。ライブの迫力とかは大きい箱か小さい箱かみたいな違いで、日本とそんな変わらないじゃないかと思いますけど、お客さんのノリは日本よりいい気がしますね。それは単純に日本人がシャイな人が多いからという気がしますけど・・・。

 

(クラブのフロアから外に出ると、庭のようなスペースがあるという。そこでも室内と同じように、DJのプレイが行われており、アンビエント寄りのリラックスした音楽が掛かっている。意外にも広く、屋内のスペースと同じか、それよりも広いスペースである場合もあるのだという)


Music Tribune:  ドイツ名物といえば、ビール、ソーセージ、ザワークラウト等が真っ先に思い浮かびますが、日頃どんな感じの食生活を送っているのかお聞きしたいです。ドイツの食文化の中で、一番好きなものはなんでしょうか? また外国文化で生きていく上で、日本食が恋しくなることはありますか??



Tetsumasa:  ドナー(ケバブ)がベルリン発祥みたいで、ケバブ屋さんがたくさんあって安くて早いのでたまに食べますが、ドイツ料理はほとんど食べないです。

 

お酒を飲む時は、カクテルとかが高いので、ビールかワインをよく飲んでますね。普段は基本的に自炊していて、毎日、大体同じものしか食べないんですけど、栄養バランスを気にしてます。脂質の少ない肉、卵、オートミール、米、ブロッコリー、トマトをよく食べてます。ベルリンにラーメン屋さんとか日本食料理屋は結構あるんですけど、寿司屋だけはクオリティが違いすぎるので、日本に帰って久しぶりにおいしいお寿司を食べたいです。



Music Tribune:  理想とするミュージシャン、今後、一緒にやってみたいと思うコラボレーターがいたら教えてください。



Tetsumasa:   理想としているミュージシャンとかは特にいないですけど、コラボレーション自体に対してはすごくオープンです。コラボレーションは、自分の想定外の作品が出来上がるのでいいですよね。特定のアーティストはいませんが、ボーカルの人とコラボレーションできたら嬉しいです。あと、最近は、「Salamanda」(韓国のエレクトロニックデュオ、アンビエントの作品も発表している)の曲にはまっているので、そのうちコラボレーションできたらいいですね。


Music Tribune: いよいよ『Lots of Question』が11月2日に発売されました。ずばり手応えはいかがでしょうか?? アルバムの収録曲の中で、これだけはチェックしておいて欲しいという注目の一曲を教えてください。


Tetsumasa:  手応えは今までで1番良い感じがしてます。EPのタイトルにもなっている2曲目「Lots of Question」が関係者から良いと言ってもらえることが多く、フックになっている気がしています。自分的には、1曲目の「Moment In Berlin」が自分らしい世界観が最も出せたし好きですね。タイトル、曲の雰囲気、MV、全てが合致したと思える作品になったので、是非、MVも見てほしいです!!

 

 

Music Tribune: 今後、ミュージシャン(プロデューサー)としてどういうふうになりたいか、こういった音楽を作っていきたい等の展望をお持ちであれば、教えてください。

 


Tetsumasa: 今後の展望は、次のEPも既に制作中で近々リリースできると思います。しばらくは今回の"Lots Of Questions”のような方向性の音楽のリリースを続けようと今のところ考えてます。でも僕はよく気が変わるのでどうなるかわからないですけどね。DJやライブセットも積極的に色々な場所でやっていきたいです。



インタビューをお受けいただき、厚く御礼申し上げます。 今後のさらなる活躍に期待しております。

 


 

 

Tetsumasaの新作EP「Lots Of Questions』は11月2日より発売中です。ストリーミングとご購入はこちらから。

 

 

「Moment In Berlin」 MV

 

 

「Lots Of Questions」 MV

 

Sen Morimoto


セン・モリモトはこれまでに2枚のアルバムをリリースし、Pitchfork、KEXP、FADER、Viceなどのメディアから高い評価を得ている。


シカゴの緊密で多作なDIYシーンの著名なメンバーであるセンが、初めてプロのスタジオで制作したのが、「If The Answer Isn't Love」だった。 シカゴのFriends Of Friendsレコーディング・スタジオで作業し、曲の肉付けに彼のコミュニティのメンバーを起用したこの曲は、ブロック・メンデがエンジニアを務め、ライアン・パーソンがドラム、マイケル・カンテラがベース、KAINAがバッキング・ヴォーカルを担当した。

 

センは高校卒業後、荷物をまとめてニューイングランドからシカゴに移り住み、その後数年間、シカゴの音楽シーン全体と深い関係を築きながら、ジャンルの垣根を越え、その間に橋を架けていった。昼はレストランで皿洗いをし、夜はプロデュースの腕を磨いたセン。エキサイティングな彼の音楽はほどなくシカゴで知られるようになった。

 

音楽的なつながりを求める彼はやがて、共同制作者であるNNAMDÏとグレン・カランが設立した地元のレーベル、スーパー・レコードに共同経営者として参加することになった。この小さなレーベルは、ジャンルにとらわれないレコードをリリースし、シカゴのミュージシャン・コミュニティから国際的なステージに立つアーティストを輩出したことで、瞬く間にシカゴで有名に。

 

デビュー・アルバム『キャノンボール!』と2枚目のセルフタイトル・アルバムをスーパー・レコードからリリースし、これをきっかけに彼はアメリカ、カナダ、日本、ヨーロッパをツアーする生活に突入。センとスーパーは現在、3枚目のアルバムの制作のため、彼自身が尊敬してやまないシティ・スラングと素晴らしいチームを組んでいる。

 

 

 『Diagnosis』 City Slang


 

 

今から数ヶ月前、ある見知らぬ日本人ミュージシャンがCity Slangと契約を交わしたとの知らせが飛び込んできた。以前、アトランタのMckinly Dicksonの最新作を週末に紹介したこともあり、数ヶ月を経てより興味を駆り立てられた。複数のシングルの中において、弟である裕也さんが手掛けたというミュージックビデオもこのアーティストに対する興味を募らせる要因ともなった。

 

日本出身で、現在、米国を拠点に活動するセン・モリモトの音楽は、シカゴのミュージックシーンの多彩さを色濃く反映している。コレクティヴのような形でライブを行うこともあるアーティストの音楽の中には、彼が知りうる以上の音楽が詰め込まれているのかもしれない。ワシントンという地区では、ギャングスタのラップが流行ったこともあったし、彼が親交を深めているというNNAMDÏのジャズからの影響は、このアルバムの最高の魅力といえるかもしれない。

 

「差し迫った気候災害、戦争、終わりのない病気に直面すると、何が残るのか、何がそのすべてを価値あるものにしたのかを考え始めるのは自然なことです」「私の音楽のサウンドも、同じような緊急性を反映させたいのです。楽器の音はビートの上でゆらめき、そして飛び散り、メロディーはもつれ、矛盾しています。この曲は、愛の不朽の力と、危機に陥ったときにその気持ちにしがみつくことの葛藤について書いたんだ」

 

アルバムのオープニングを飾る「If The Answer Isn't Love」では、ジャズ、ファンクの影響を巧みに取り入れ、それを爽快感のあるロックへと昇華している。インディーロックと言わないのは普遍性があるから。リズムのハネを意識したボーカルはフロウに近い質感を帯びている。しかし、曲において対比的に導入されるソウルフルなコーラスがメロウな空気感を作り出す。制作者に触発を与えたNNAMDÏの既存の枠組みにとらわれない自由奔放な音楽性も今一つの魅力として加わっている。それらが幻惑的なボーカルとローファイの質感を前面に押し出したプロダクションの構成と組み合わされ、親しみやすさとアヴァン性を兼ね備えたナンバーが生み出された。先行シングルとして公開された「Bad State」は、オープニングよりもファンクからの影響が強く、巧みなシンコペーションを駆使し、前のめりな感じを生み出している。聴き方によっては、Eagles、Doobie Brothersのようなウェストコーストサウンドを吸収し、微細なドラムフィルを導入し、シカゴのドリル的なリズムの効果を生み出している。以前、シカゴで靴がかっこいいというのをそう称したように「ドリルな」ナンバーとして楽しめる。また、アーティストの弟の裕也さんが撮影したというミュージックビデオも同様にドリルとしか言いようがない。 

 

「Bad State」

 

 

「St. Peter Blind」は、アブストラクトヒップホップとネオソウルの中間にあるトラックといえるか。と同時に、ジャズのメロウな雰囲気にも充ちている。さらに無数のクロスオーバーがなされているものと思われるが、 前衛的なビートを交え、ゴスペルを次世代の音楽へと進化させている。もしくは、これはラップやジャズ、ファンクを網羅した2020年代のクリスマスソングのニュートレンドなのかもしれない。たとえ、JPEGMAFIA、Danny Brownが書くヒップホップのようにリズムがアブストラクトの範疇にあり、相当構成が複雑なものであるとしても、ほのかな温かみを失うことがなく、爽快感すら感じられる。また、リリックとして歌われるかは別として、アーティストのブラック・ミュージックへの愛着が良質なウェイブを生み出している。


タイトル曲「Diagnosis」は、ラップのフロウをオルト・ロックの側面から解釈している、曲にあるラテン的なノリに加えて、メロディー性に重きを置いたモリモトのボーカルは、プエルトリコのBad Bunnyのようなパブリーな質感を生み出す瞬間もある。しかし、一見するとキャッチーさを追求したトラックの最中にあって、妙な重みと深みがある。これがアンビバレントな効果を生み出し、さながら人種や文化の複雑さを反映しているかのようなのだ。

 

続いてアルバム発売前の最後に公開された「Pressure On The Pulse」は周囲にある混沌を理解することにテーマが縁取られている。「静かな面は、なぜ、世界はこんなにも残酷なんだろう、その答えを本当に聞いて理解できるのかと問いかけている。また、その反対に、答えがまったく得られないという場合、どうすれば前に進み続けることができるかについても考えている」とプレスリリースで紹介されているシングルは、イントロのネオソウル風のメロウな感覚からポスト・ロックに転じていく。この切り替えというべきか、大きく飛躍する展開力にこそアーティストの最大の魅力があり、それはNinja Tuneに所属するノルウェーのJaga Jazzistのようなジャズとロックとエレクトロの融合という面で最大のハイライトを形成し、その山場を越えた後、イントロのように一瞬の間、静寂が訪れた後、一挙に大きくジャンプするかのように、ポップ・バンガーへと変化していく。ライブで聴くと、最高に盛り上がれそうな劇的なトラックだ。

 

「Naive」はアルバムの全体的な収録曲がモダンな音楽性に焦点が絞られているのに対して、この曲はジャック・ジャクソンのようなヨットロックやフォークへ親しみがしめされているように思える。アルバムのタイトルに見られるナイーヴ性は、ギターの繊細なハーモニーの中で展開されている。しかし、こういった古典的な音楽性を選択しようとも、その音楽的な印象が旧来のカタログに埋もれることはない。もちろん、セン・モリモトのボーカルは、ボサノバのように軽やかかつ穏やかで、ギターのシンプルと演奏の弾き語りは、おしゃれな感覚を生み出している。続く「What You Say」はNNAMDÏの多彩な音楽性を思わせるものがあり、ギターアンビエントをベースに前衛的なトラックが生み出されている。曲の中でたえず音楽性が移り変わっていき、後半ではファンカデリックに象徴されるようなクロスオーバー性の真骨頂を見出す事もできる。 

 

「Naive」

 

 

「Surrender」ではシカゴ・ドリルの複雑なリズム性を織り交ぜた新鮮なポスト・ロック/プログレッシヴ・ロックを追求している。タイトルのフレーズを元に、トラックの構成におけるマキシマムとミニマルの両視点がカメラワークのように切り替わる瞬間は劇的であり、本作のハイライトとも称せるかもしれない。さらに、本作に伏在する音楽的な要素ーーサイケロックと綿密にそれらのアブストラクトな曲の構成が組み合わされることによって、このアーティストしか持ち得ない、そして他の誰にも売り渡すことが出来ない人間的な本質へと繋がっていく。しかし、それは最初からオリジナリティを得ようとするのではなく、他の考えを咀嚼した後に苦心惨憺してファイトをしながら最終的なゴールへとたどり着く。


「Deeper」は、知りうる限りでは、最もアーティストらしさが出た一曲といえ、サクスフォンの演奏がメロウなムード感を誘い、ローファイ・ホップの範疇にある安らぎとクランチな感覚を兼ね備えたトラックへと導かれていく。偉大なジャズ・ギタリストであるウェス・モンゴメリーを思わせるセンス抜群のギターの瞬間的なフレーズを交え、適度なブレイクを間に挟みながら最終的には変拍子によるネオソウルという答えに導かれていく。

 

「Pain」では、ザ・ビートルズのジョン・レノンが好んだような和らいだ開放的なフレーズを駆使し、スペインのフラメンコ/アーバン・フラメンコの旋律性をかけあわせ、それをやはりこのアルバムの一つのテーマともなっているリズミカルなトラックとしてアウトプットしている。曲のベースに関しては古典的な要素もありながら、やはりこのアーティストやバンドらしい変拍子や劇的な展開力を交え、モダンなポップスとして昇華しているのが素晴らしいと思う。アルバムの最後は、「Forsythia」ではモダンなインディーフォークで空気感を落ち着かせた後、MTV時代のジャクソンのように華麗なダンス・ポップがラストトラックとして収録されている。 

 

「Reality」は、ミュージカル的なクローズ曲で、ネオソウル、ファンク、ジャズ、ラップというSen Morimotoというアーティストの持つ多彩な感覚が織り交ぜられている。しかし、この曲にもアルバム序盤とは正反対のクラシカルなポップスに対する親しみが示され、それは今は亡きジョン・レノンのソングライティングを思わせるものがある。もちろん、このアルバムには英国のサウスロンドンのアーティストと同様に、米国中西部のカルチャーの奥深さが反映されているように思える。



88/100

 

©︎Mark Seliger

シェリル・クロウがニューアルバムの制作を発表した。『Evolution』は3月29日にリリースされ、彼女が『The Tonight Show Starring Jimmy Fallon』で初披露した新曲「Alarm Clock」は本日リリースされる。


2019年の『Threads』に続くこの作品は、マイク・エリゾンド(ドクター・ドレー、マルーン5、キース・アーバン)がプロデュースした。"今はストリーミングですべてが曲中心になっており、アルバムを作るのは大きな努力だ "とクロウはプレス声明で語った。"マイクにデモを送り始めたんだけど、曲はどんどん溢れ出てきて、これがアルバムになるのは明らかだった"


「この音楽と歌詞は、静かな場所に座って、深い魂の場所から書いたものなんだ。「もうレコードは作らないと言ったし、意味がないと思っていた。でも、この音楽は私の魂から生まれた。そして、このレコードを聴いた人がそれを感じてくれることを願っている」


今夜(11月3日)、クロウはロックの殿堂入りを果たし、オリヴィア・ロドリゴとともに殿堂入りセレモニーを行う予定だ。


 


 Sheril Crow 『Evolution』



Label: Valory Music Group

Release: 2024/3/29




Tracklist:


1. Alarm Clock

2. Do It Again

3. Love Life

4. You Can’t Change the Weather

5. Evolution

6. Where?

7. Don’t Walk Away

8. Broken Record

9. Waiting in the Wings

Drop Nineteens 『Hard Light』

 


Label: Wharf Car Records

Release: 2023/11/3



ボストンの伝説的なシューゲイズバンド、Drop Nineteensは1993年以来新作から遠ざかっていた。92年の『Declare』をリリース後、一時的にメンバー内の均衡が変化し、グループという形態から離れざるをえなかった。


以後、95年までにバンドに残ったのはアッケルだけとなった。昨年、ほとんど30年もの歳月を経、再結成を発表し、そして、全米各地でのレコーディングに取りかかった。しかし、長年のブランクにより失われた感覚的な何かを取り戻すことは容易ではなかった。Drop Nineteensの音楽は、現代の最新鋭のものではないし、流行の先を行くようなバンドではないことは明白だった。


しかしながら、結局のところ、彼らが再び、Drop Nineteensとして立ち上がり、新しい作品の制作に着手し、失われていたバンドの核心となる音楽を追求し、友人としての絆を深めるように促したのは、Merge Recordsに所属するThe Clienteleだった。懐かしさと新しさが混在する陶酔感のあるインディーロックの音楽性は、Drop Nineteensに力を与え、そして早足ではないものの、前に向けて歩き出すことを促した。

 

ドロップ・ナインティーンズのフロントパードンであるアッケルが強い触発を受けたと語る、The Beatles、The Clientele、 LCD Soundsystem。一見したところ、共通項を見出すことが難しいように思える。けれど、表向きにアウトプットされる音楽こそ違えど、普遍的な音楽を探求するというテーゼがある。


現代に染まらないサウンド。時代という観念を遠ざけるサウンド。音楽の中にとどまらせることを約束するサウンド。誇大広告がなされる現代の音楽業界の渦中にあり、それとは正反対に位置づけられる音楽に対して深い信頼感を覚えるリスナーもいることを忘れてはいけない。アッケルもまたそのひとりなのであり、「クライアンテレがただレコードを作ってくれるなら、私はそれだけで生きていけると考えていた、あるいはビートルズかもしれない。私はそれを永遠に聴き続けることだろう」と語っている。


無限に細分化していき、音楽そのものが消費されるための商品として見なされる風潮の中、ボストンの5人組は普遍的な音楽とは何なのかを探しもとめることになった。アッケルの言葉によれば、「永遠に聴き続けられる」音楽とは何なのかということである、およそ30年の歳月を経て発売された『Hard Light』の中には、その答えが全般的に示されている。アルバムの音楽には、ビートルズのようなアート・ロックを下地にしたポップネスもあるし、クライアンテレの最初期の60年代志向のレトロなロック、ブリット・ポップ、ネオ・アコースティック、そしてシューゲイズ/ドリーム・ポップのアプローチがほとんどダイヤモンドのように散りばめられている。

 

アルバムのオープニングを飾るタイトル曲「Hard Light」は、Drop Nineteensが直接的な影響を受けたと語る、MBV、Jesus&Mary Chains の系譜に属するネオ・アコースティックとギターロック、ドリーム・ポップの中間にある方向性を選んでいる。アイルランド/ウェールズの80年代のギターロックをベースにし、この時代の音楽に内包されるレトロな感覚や陶酔的な雰囲気を繊細なギターラインによって再現しようとしている。90年代のシューゲイズの登場前夜のプリミティヴなドリーム・ポップやシューゲイズの音楽性から滲み出るエモーションは、二人のボーカリスト、アッケルとケリーの声の融合性によってもたらされる。

 

Drop Nineteensが戻び制作に取り掛かることは、既に誰かがやっていることを後から擬えるのとは意味が異なっていた。ほとんど前例のないことであり、彼らは、電話で連絡を取りあった後、ほとんど制作前には曲を用意していなかったという。しかし、それは良い効果を与え、新しい学びや経験の機会をもたらした。「Scapa Flow」は、80、90年代のギターロック/ネオ・アコースティックの影響を取り入れ、よりモダンでダイナミックなシューゲイズ・サウンドへと進化させている。しかし、その中にはやはりノスタルジアが滲み、内省的な感覚とレトロな雰囲気を生み出し、アッケルの親しみやすいボーカルがディストーションの轟音と合致している。

 

続く「Gal」は、シンセサイザーの反復的なマシンビートを元にし、瞑想的な雰囲気のあるインディーロックとディケイサウンドが展開される。表向きには70年代のポスト・パンクや最初期のドイツ時代のMBVに象徴されるシューゲイズの原始的な響きを留めているが、アッケルのボーカルは、どことなくYo La Tengoのアイラ・カプランの声の持つ柔和な響きに近い雰囲気が漂う。ギターロック、ネオアコ、ドリーム・ポップ、シューゲイズをクロスオーバーし、アンサンブルの核心となるUSのオルタナティヴ性を捉えようとしているといえるかもしれない。これらの複数のサウンドの合致は、どちらかといえば和らいだ響きを作り出し、さらに曲の後半では、シネマティックなストリングスが導入されることで、曲に漂う感情性を巧みに引き出している。

 


 

 

続く「Tarantula」は、 スコットランドのネオ・アコースティックやアノラックの要素を受け継いだ上で、ビートルズのポップセンスの影響を取り入れ、懐古的な音楽性を探求している。シューゲイズサウンドとともにボーカルのコーラスワークの秀逸さが光る。そのメロディーは、ウェールズのYoung Marble Giants等に象徴される奇妙な孤独感や切なさが漂っている。さらに「The Price Was High」では、ボーカルが入れ替わり、ドリーム・ポップに近い音楽性に転じる。彼らのルーツであるMTV時代のサウンドを受け継ぎ、それをシューゲイズとして解釈しているようだ。ポーラ・ケリーのボーカルは、このトラックにわずかながらのペーソスを添えている。

 

「Rose With Smoke」は「Gal」と同様に、MBVの2ndアルバム『Isn’t Anything』に見出された ディケイサウンドの復刻が見受けられる。ギターのトーンの独特の畝りは聞き手の感覚に直に伝わり、切なさや陶酔的な感覚を呼び覚ます。シューゲイズバンドをやっているプレイヤーはかなり参考になる点が多いと思われる。30年もの長い試行の末にたどり着いた究極のサウンドである。


 

 

 

続く「A Hitch」では、The Clientele、The Beatlesに対するリスペクトが示されている。レトロなオルトロックサウンドをローファイ寄りのサウンドで処理し、安江のシューゲイズギターが炸裂し、劇的なハイライトを作る。他方、アッケルのボーカルは気安い感覚を生み出し、レトロな感覚を擁し、リスナーを淡いノスタルジアの中に招き入れる。曲の展開の中では、80、90年代のブリット・ポップやネオ・アコースティック風のサウンドへと鞍替えをする瞬間もある。


多少、これらのサウンドは時代に埋もれかけているような気もするが、アッケルのソングライティングの才質とドロップ・ナインティーンズの潤沢な経験によるバンドアンサンブルは、シューゲイズの一瞬のキラメキのような瞬間を生み出す。ビートルズのデモ・トラックのようなローファイ感のある「Lookout」。


その後に続く「Another on Another」では、ドロップ・ナインティーンズのサウンドの真髄が示され、「Policeman Getting Lost」では再びポーラ・ケリーが牧歌的なフォークの音楽性を示す。クローズ「T」では、The Clienteleのフォロワーであることを示し、ローファイと幻惑的な雰囲気を兼ね備えたサウンドでアルバムを締めくくっている。


 


80/100

 

 

「Scapa Flow」






今年、ゲフィン・レコードから2ndアルバムを発表した米国のシンガーソングライター、Olivia Rodrigo(オリヴィア・ロドリゴ)がニューシングル「Can't Catch Me Now」を発表した。2ndアルバムの収録曲のイメージとは裏腹に、内省的なフォークミュージックへと転じた。


「Can't Catch Me Now」は、映画が公開される11月17日にリリースされる17曲入りのサウンドトラック『The Ballad of Songbirds & Snakes Soundtrack』のオープニングとして収録されている。

 

このアルバムには、レイチェル・ツェグラー、モリー・タトル、ビリー・ストリングス、シエラ・フェレル、フラットランド・キャバルリー、ベラ・ホワイト、チャールズ・ウェズリー・ゴドウィンの新曲も収録されている。


この曲は彼女のセカンド・アルバム「GUTS」のリリースに続き、来年5月にはレミ・ウルフがサポートするUKツアーが予定されている。この曲は最新の予告編にも登場しており、以下でチェックできる。



 

Mckinly Dickson ©City Slang

 

今年6月にCity Slangから『Beloved! Paradise! Jazz!?』をリリースした後、現在、シカゴを拠点に活動するラッパー、McKinly Dickson(マッキンリー・ディクソン)は、ヒット・シングル「Run Run Run」で、同じアメリカ出身のラッパー、ブルーをコラボレーションに招いた。この作品はオリジナル・バージョンと合わせて2曲収録EPとして発売中である。ストリーミングはこちら



マッキンリーとブルーはともに、リリックの深みとパワフルな表現で知られている。このコンビはオリジナル・トラックの陽気でありながら物悲しい衝動と完璧にマッチしている。オリジナル・トラックの楽しげでありながら地味な緊迫感にぴったりであり、ニューシングルの発売についてもマッキンリーが11月2日にイギリスとヨーロッパで公演を行う前の絶好のタイミングとなった。



このコラボレーションシングルについて、マッキンリー・ディクソンは次のように語っている。

 

”Below The Heavens”は私の人生において極めて重要なポイントだったんだ。ラップ・ミュージックが表現方法として使えることを発見した瞬間だった!

 

あれから何年も経って、Bluが僕の曲でハングリーなサウンドを聴かせてくれるなんて光栄だよ。聴かせてくれたことを光栄に思う。



John Tejada 『Resound』

 

 

Label: Palette Recordings

Release: 2023/11/3

 

Review

 

オーストリア出身で、現在ロサンゼルスを拠点に活動するジョン・テハダ。もはや、この周辺のシーンに詳しい方であればご存知だろうし、テック・ハウスの重鎮と言えるだろうか。テクノ的なサウンド処理をするが、ハウス特有の分厚いベースラインが特徴である。もちろん、ジョン・テハダのトラックメイクは、ダンスフロアのリアルな鳴りを意識しているのは瞭然であるが、アルバムの中にはいつも非常に内的な静けさを内包させたIDMのトラックが収録されている。さらに、数学的な要素が散りばめられ、理知的な曲の構成を組み上げることで知られている。近年のジョン・テハダの注目曲を挙げておくと、「Father and Fainter」、「Reminische」等がある。 



今年既に3作目となる『Resound』はテハダ自身がこれまで手掛けてきた音楽や映画からインスピレーションを得ている。クラシックなアナログのドラムマシンとフィードバック、そしてノイジーなディレイによるテクスチャを基盤として、テハダは元ある素材を引き伸ばしたり、曲げたり、歪ませたりしてトーンに変容をもたらす。さらにはシンセを通じてギターのような音色を作り出し、テックハウスの先にあるロック・ミュージックに近いウェイブを作り出すこともある。

 

「Simulacrum」は、テハダの音楽性の一貫を担うデトロイトテクノのフィードバックである。さらに、Tychoが近年、ダンスミュージックをロックやポップス的に解釈するのと同じように、テハダもロック的なスケールの進行を交え、ロックに近いフレーバーを生み出していることがわかる。ただ、複雑なEDMの要素を散りばめたダンスビートの底流には、CLARKのデビュー作で見受けられたロック的な音響性や、ダンスミュージックの傑作『Turning Dragon』でのゴアトランスの要素が内包されているように思える。これらのベテランプロデューサーらしい深い見地に基づくリズムの運行は、ループサウンドを徐々に変化させていくという形式を取りながらも、より奥深い領域へとリスナーを導いてゆく。ダンスフロアでの多幸感、それとは対極にある冷静な感覚が見事に合致した、ジョン・テハダの代名詞的なサウンドとして楽しめる。

 

 続く「Someday」では、Authecre(オウテカ)の抽象的なビートと繊細なメロディーを融合させている。ベースラインを元にしたリズムに、Tychoのようなギターロックの要素を加味することにより、一定の構造の中に変容と動きをもたらしている。その中には、Aphex Twinの「Film」に見受けられるような内省的な感覚が含まれているかと思えば、それとは対極に、ダブステップのしなやかなリズムが強固なコントラストを形成している。その後、ノイジーなテクスチャーが音像の持つ空間性をダイナミックに押し広げ、その中にグリッチテクノで使用されるようなシンプルかつレトロなシンセリードが加わる。リズム的には大げさな誇張がなされることはないにせよ、入れ子構造のような重層的なリズムが建築さながらに積み上げられていき、しなやかなグルーブを生み出す。曲のクライマックスでは、ノイジーなテクスチャーに加えて崇高な感覚のあるシークエンスを組み合わせることで、シネマティックな効果を及ぼしている。

 

 

三曲目の「Disease of Image」はテックハウスの代名詞的なサウンドといえるかもしれない。ループサウンドを元に、複数のトラック要素を付け加えたり、それとは反対に減らしながら、メリハリのあるダンストラックを制作している。特にリズム、メロディー、テクスチャーの3つの要素をどこで増やし、どこで減らすのか。細心の注意を払うことによって、非常に洗練されたサウンドが生み出されている。5分40秒のランタイムの中には音によるストーリー性や流れのようなものを感じ取ることもできる。アウトロに至った時、最初のループサウンドからは想像もできないような地点にたどり着く。こういった変奏の巧緻さも醍醐味のひとつ。

 

「Fight or Flight」ではテハダのバンド、オプトメトリーのパートナーであるマーチ・アドストラムがボーカルを担当している。ビートのクールさは言わずもがな、このボーカルがトラック自体に奇妙な清涼感を与えている。Massive Attackの黄金時代のサウンドを思わせる瞬間もある。こういったボーカルトラックが今後どのような形で集大成を迎えるのかを楽しみにしたい。

 

 次の「Centered」は、シンセの音色の選択と配置がかなりユニークな魅力を放つ。 反復的なビートはアシッド・ハウスのエグみのある幻惑の中に誘う。バスドラムのビートに対比的に導入されるシンセベースは色彩的な響きを生み出し、さらに続いてゴアトランスのような抽象的なサウンドへと行き着く。 テハダは、アルバムの序盤のトラックとおなじようにトーンシフターを駆使し、音響性に微妙な変化を与える。しかし、音の運びは、脇道にそれることは殆どなく、力学的なベクトルやエネルギーを、中心点に向け、的を射るかのように放射する。これが実際に表向きに鳴らされるサウンドに集中性を与え、音に内包される深層の領域に踏み入れることを促すのである。

 

「Trace Remnant」は、ダウンテンポのイントロからしなやかなテックハウスに展開していく。この曲でも従来のループ構造のトラック制作から離れ、より劇的な展開力のある曲構成へと転じており、ドラムに関してはロック的な効果が重視されている。これらはTychoが近年制作しているような「ポップスとしてのダンスミュージック」の醍醐味を味わえる。アルバムのクローズでも凄まじい才覚が迸る。「Different Mirror」は、TR-909によるドラムマシンのジャムである。しかし、アシッド・ハウスの核心をつく音楽的なアプローチの中には、アルバムの全般的なトラックと同様、遊び以上の何かが潜んでいることが分かる。

 

 

86/100

 


「Fight or Flight」

 ©︎Emi America

グリーン・デイは2024年のツアーの詳細を発表した。スマッシング・パンプキンズ、ランシド、リンダ・リンダズのサポートを務める予定。


5月にスタートするヨーロッパ・ツアーでは、ハイヴス、ナッシング・バット・シーヴス、ドノッツ、ザ・インターラプターズ、メイド・オブ・エースが異なる日程でオープニングを飾る。北米ツアーは7月29日のワシントンD.C.から始まり、9月28日のサンディエゴで終了する。以下、日程リストとライアン・バクスリー監督によるバンドの新曲「Look Ma, No Brains!」を試聴してみて下さい。


グリーン・デイのグローバル・ツアーは、最新アルバム『Saviors』のリリース、『Dookie』30周年と『American Idiot』20周年と、ダブルアニバーサリーを記念して開催される。「Look Ma, No Brains!」は、1月19日にリリースされるアルバムからのセカンド・シングル。以前、バンドはシングル「The American Dream Is Killing Me」をリリースした。


グリーン・デイは声明で次のように述べた。「『Saviors』ほど新曲を発表することに興奮したことはない。だからスラッシュしようぜ。僕らには素晴らしい仲間たちがついてきてくれるんだ!」






グリーンデイはアルバム発売後、ニューヨークの地下鉄でジミーファロンとライブセッションを行い、「Bascket Case」を披露している。後日掲載したレビューはこちらよりお読み下さい。



Green Day 2024 Tour Dates:


Thu May 30 – Monte do Gozo, Spain – O Son do Camino*
Sat Jun 1 – Madrid Spain – Road to Rio Babel*
Wed Jun 5 – Lyon Decines – LDLC Arena – with The Interrupters
Fri Jun 7 – Nurnberg Germany – Rock im Park*
Sat Jun 8 – Nurburgring Germany – Rock am Ring*
Mon Jun 10 – Berlin Germany – Waldbühne – with Donots
Tue Jun 11 – Hamburg Germany – Trabrennbahn Bahrenfeld – with Donots
Sat Jun 15 – Interlaken Switzerland – Greenfield Festival*
Sun Jun 16 – Milan Italy – I Days – Hippodrome La Maura*
Tue Jun 18 – Paris France – Accor Arena – with The Interrupters
Wed Jun 19 – Arnhem Netherlands – GelreDome – with The Hives & The Interrupters
Fri Jun 21 – Manchester UK – Emirates Old Trafford – with Nothing But Thieves & Maid of Ace
Sun Jun 23 – Isle of Wight UK – Isle of Wight Festival*
Tue Jun 25 – Glasgow UK – Bellahouston Park – with Nothing But Thieves & Maid of Ace
Thu Jun 27 – Dublin Ireland – Marlay Park – with Nothing But Thieves & Maid of Ace
Sat Jun 29 London UK – Wembley Stadium – with Nothing But Thieves & Maid of Ace


* Festival date

Mon Jul 29 – Washington, DC – Nationals Park
Thu Aug 1 – Toronto, ON – Rogers Centre
Sat Aug 3 – Montreal, QC – Osheaga Music and Arts Festival*
Mon Aug 5 – New York, NY – Citi Field
Wed Aug 7 – Boston, MA – Fenway Park
Fri Aug 9 – Philadelphia, PA – Citizens Bank Park
Sat Aug 10 – Hershey, PA – Hersheypark Stadium
Tue Aug 13 – Chicago, IL – Wrigley Field
Thu Aug 15 – St. Louis, MO – Hollywood Casino Amphitheatre !
Sat Aug 17 – Minneapolis, MN – Target Field
Tue Aug 20 – Kansas City, KS – Azura Amphitheatre !
Thu Aug 22 – Cincinnati, OH – Great American Ballpark
Sat Aug 24 – Milwaukee, WI – American Family Field
Mon Aug 26 – Charlotte, NC – PNC Music Pavilion !
Wed Aug 28 – Atlanta, GA – Truist Park
Fri Aug 30 – Nashville, TN – Geodis Park
Sun Sep 1 – Pittsburgh, PA – PNC Park
Wed Sep 4 – Detroit, MI – Comerica Park
Sat Sep 7 – Denver, CO – Coors Field
Tue Sep 10 – Austin, TX – Germania Insurance Amphitheater !
Wed Sep 11 – Arlington, TX – Globe Life Field
Sat Sep 14 – Los Angeles, CA – SoFi Stadium
Wed Sep 18 – Phoenix, AZ – Chase Field
Fri Sep 20 – San Francisco, CA – Oracle Park
Mon Sep 23 – Seattle, WA – T-Mobile Park
Wed Sep 25 – Portland, OR – Providence Park
Sat Sep 28 – San Diego, CA – Petco Park

* Festival date

! with support from Rancid and The Linda Lindas only



 


クリーブランドのトリオ、クラウド・ナッシングスがピュア・ノイズ・レコードと契約、その発表を記念してニューシングル 「Final Summer」をリリースした。


この曲は、ジェフ・ザイグラー(カート・ヴァイル、ザ・ウォー・オン・ドラッグス、トーレス、パーリング・ヒス)とレコーディングされ、サラ・タジン(ポーチズ、ティム・ハイデッカー、ポム・ポム・スクワッド)がミックス、ジャック・キャラハン(ライリー・ウォーカー、マーチャンダイズ、ウルフ・アイズ)がマスタリングを担当した。


ギター/ヴォーカルのディラン・バルディは新曲についてこう語っている:"ファイナル・サマー "は、過去の自分と毎朝鏡を見た時の自分との調和について歌っている。クラウド・ナッシングスは結成から14年が経つが、その間の浮き沈みの多い日々を力強く乗り越えてこられたのは、「ファイナル・サマー」のコーラスを心に刻んできたからに他ならない:私には考えがあり、夢がある。





ケイト・ブッシュが驚異的なカムバックを記念して、彼女のアルバムをフィジカル・フォーマットでリイシューする。


この謎めいた英国人シンガーのレーベル、フィッシュ・ピープルは、全英No.1の『ハウンズ・オブ・ラヴ』、『ネヴァー・フォー・エヴァー』、『ザ・ドリーミング』、デビュー作『ザ・キック・インサイド』を含む10枚のスタジオ作品と、リミックス・アルバム『ディレクターズ・カット』を含む、彼女のリイシュー・アルバムの「アンリミテッド・エディション」を発売する。


「独立系レコード店向けのカラー・ヴァイナルを含め、これらの新しいヴァージョンをまとめるのはとても楽しかった」とブッシュは声明でコメントしている。


「"セット "としてデザインされている。レコードでリリースされたアルバムの物理的な存在に対する評価が復活しているのを見るのは、とてもエキサイティングなことだ。特に10代の頃はそうだった。レコード店の賑わいは経験の一部だった。アルバムを買うことは一種のイベントだった」


「アルバム、音楽、アートワークが現実世界に存在するとき、それを所有する人の間に起こる特別な感情的なつながりがあります。それは、私たちがユニークな方法で大切にできるものです」


今回のリイシューは、ブッシュの全音楽作品が4つのボックス・セットにわたってヴァイナルでリリースされた2018年のキャンペーンによるリマスター音源をフィーチャーしており、これまでワックスにプレスされたことのなかった楽曲も含まれている。


このリリース・キャンペーンは、近年のブッシュのスリリングな復活を象徴している。ストレンジャー・シングス』の第4シーズンに後押しされ、ブッシュの1985年のヒット曲「Running Up That Hill (A Deal With God)」は再びチャート現象となった。


2022年半ばまでに、彼女はホット100ソングライターズ・チャートで1位を獲得し、この曲はオーストラリアとイギリスで何週も1位を記録し、イギリスの公式シングル・チャートで首位を獲得した史上最高齢の女性アーティスト(63歳11ヶ月)に選ばれた。今週金曜日(11月3日)、ブッシュはディズニー+で生放送されるセレモニーでロックの殿堂入りを果たす。


「これらのリイシューを楽しんでほしい」とブッシュは書いている。「このリイシューには多大な配慮と思いが込められている」


今日、ビートルズは正真正銘の彼らの最後の曲をリリースします。45年の歳月をかけて制作された『Now And Then』は、ジョン・レノンが70年代に録音したヴォーカルをフィーチャーしており、AIを駆使したステム分離技術によって1978年のデモ・カセットから抽出されている。


ここ数年のステム・セパレーションの進歩のおかげで、ピーター・ジャクソン(ドキュメンタリー映画『ゲット・バック』シリーズの製作者)とエンジニアのチームは、ポールとリンゴが新たに録音したベースとドラム、そしてジョージ・ハリスンが1995年に録音したギター・パートをフィーチャーした新バージョンの曲にミックスするために、デモからレノンのヴォーカルを抽出することができた。


ステム・セパレーション・ソフトウェアは、複数の楽器を含むレコーディングを構成するパーツ、つまりステムに分離するもので、これによってプロデューサーたちは、この曲の新バージョンをミックスする際に、レノンのヴォーカルを他の音楽要素と統合することが可能になった。残されたビートルズが最初にデモのレコーディングを検討した1995年当時、このソフトウェアはまだ存在していなかったため、この曲はお蔵入りとなった。


ステム・セパレーション・ツールは、ボーカル、ギター、ドラムといったミックスの各要素が通常占める傾向のある周波数帯域を理解・認識するために、何千もの既存の楽曲を使ってソフトウェアが学習された機械学習の一種を利用している。


時間周波数(TF)マスキングと呼ばれるプロセスを使用すると、音楽を構成する周波数の組み合わせがフィルタリングされ、どの周波数を残すか、または取り除くかを選択できるようになります。こうして、レノンがピアノの上で歌っている低品質のデモテープから、比較的クリーンなヴォーカル・アカペラが取り出された。デモ録音とレノンの分離されたヴォーカルは、以下のショートフィルムで聴くことができる。


ゲット・バック・チームは、ドキュメンタリーの制作中に "Mal "というニックネームのカスタムメイドのステム・セパレーション・ソフトウェアを開発したと伝えられているが、この種のツールは、多くのアプリやプラグイン、ブラウザベースのプラットフォームにもあり、最近では人気のDAW FL Studioにも統合されている。(試してみたい方は、無料のステム・セパレーション・プラットフォーム、Gaudio Studioの使用をお勧めする)


「音の復元は最もエキサイティングなことだ」とジャクソンは2021年のVarietyのインタビューで語った。「私たちはオーディオの分野で大きなブレークスルーを成し遂げました。私たちは機械学習システムを開発し、ギターの音、ベースの音、声の音を教えました。実際、ジョンの音やポールの音をコンピューターに教えたんだ」


「モノラルのトラックを分割して、ボーカルとギターだけを聴くことができるんだ。リンゴがバックでドラムを叩いているのは見えるけど、ドラムの音はまったく聞こえない。そのおかげで、本当にきれいにリミックスできるんだ」


ジャクソンは『ゲット・バック』の制作でステム・セパレーションを活用したが、同じ技術で亡きバンドメイトが彼に残したデモ・カセットからレノンの声を救い出せるのではないかと最初に考えたのはマッカートニーだった。彼はそれが可能だと知って大喜びした。


「いつも問題のひとつだったピアノを持ち上げることなく、ジョンの声を持ち上げることができた。これでミックスして、ちゃんとしたレコードを作ることができたんだ」 


マッカートニーは、この曲のリリースを記念して制作されたショートフィルムの中でこう語っている。「そこにあったのは、透き通ったジョンの声だった。とてもエモーショナルだ」


「彼が部屋に戻ってくるというのは、これまでで一番近いことだったから、僕ら全員にとってとても感動的だった」とリンゴは続けた。「ジョンがそこにいるみたいだった。はるか遠くにね」


「父もそれを気に入っていただろうね。彼はレコーディング・テクノロジーを使うことを決して恥ずかしがらなかった」


この曲の制作に人工知能が使用されたことで、当初は賛否両論が巻き起こった。一部のファンは、AIがどのように利用されるのか、またAIの音声モデリングによってレノンが本来録音したものではない偽のボーカルを生成するために使用されるのかどうか、正確なところがわからなかったからだ。


しかし、マッカートニーはすぐにファンを安心させるために、ザ・ビートルズはAIを使ってレノンの声を "決して "偽造しないとRolling Stone誌に語った。「人工的、合成的に作られたものは何もない」と彼はTwitter/Xの投稿で続けた。「すべて本物で、私たち全員がその上で演奏しています。我々は既存の録音をクリーンアップした」


「Now and Then」 Short Film






往年の名盤を振り返る ーGEORGE HARRISON 「ALL THINGS MUST PASS」1970ー

 Sofia Kourtesis 『Madras』


 

Label: Ninja Tune

Release: 2023/10/27

 


Review



ドイツ、ベルリンを拠点とするシンガーソングライター、ソフィア・クルテシスの最新アルバム『Madras』は、ハウスをベースとして、清涼感と強いグルーブを併せ持つ快作となっている。


『マドレス』は、レーベルのプレスリリースによると、クルテシスの母親に捧げられた作品だ。しかし、もっと驚くべきことに、この曲は世界的に有名な神経外科医ピーター・ヴァイコッツィにも捧げられている。世界的に有名な神経外科医がこのレコードのライナーノーツに登場することになった経緯は、粘り強さ、奇跡、すべてを飲み込む愛、そして最終的には希望の物語である。オープニング曲「Madras」を聴くと分かる通り、原始的なハウスの4つ打ちのビートを背に、ソフィア・クルテシスの抽象的なメロディーが美麗に舞う。歌の中には取り立てて、主義主張は見当たらない。しかし、そういった緩やかな感じが心地よさを誘う場合がある。メロディーには、ジャングルの風景を思わせる鳥の声のサンプリングが導入され、南米やアフリカの民族音楽を思わせる時もあり、それが一貫してクリアな感じで耳に迫る。フロアで聴いても乗れる曲であり、もちろんIDMとしても楽しめる。オープニングの癒やしに充ちた感覚はバックビートを背に、少しずつボーカルそのものにエナジーを纏うかのように上昇していく。

 

アルバムの制作の前に、アーティストはペルーへの旅をしているが、こういったエキゾチックなサウンドスケープは、続く「Si Te Portas Bonito」でも継続している。よりローエンドを押し出したベースラインの要素を付け加え、やはり4ビートのシンプルなハウスミュージックを起点としてエネルギーを上昇させていくような感じがある。さらにスペイン語/ポルトガル語で歌われるボーカルもリラックスした気分に浸らせてくれる。Kali Uchisのような艶やかさには欠けるかもしれないが、ソフィア・クルテシスのボーカルにはやはりリラックスした感じがある。やがて、イントロから中盤にかけて、ハウスやチルと思われていたビートは、終盤にかけて心楽しいサンバ風のブラジリアン・ビートへと変遷をたどり、クルテシスのボーカルを上手くフォローしながら、そして彼女の持つメロディーの美麗さを引き出していく。やがてバック・ビートはシンコペーションを駆使し裏拍を強調しながら、 お祭り気分を演出する。もし旅行でブラジルを訪れて、サンバのお祭りをやっていたらと、そんな不思議な気分にひたらせてくれる。

 

クルテシスの朗らかな音の旅は続く。北欧/アイスランドのシーンの主要な音楽であるFolktoronica/Toytoronicaの実験的な音楽性が、それまでとは違い、おとぎ話への扉を開くかのようでもある。しかしながら、クルテシスはこの後、このイントロの印象を上手く反転させ、スペインのバレアック等のコアなダンスフロアのためのミュージックが展開される。途中では、金管楽器のサンプリング等を配して、この南欧のリゾート地の祝祭的な雰囲気を上手くエレクトロニックにより演出する。しかしながらクルテシスのトラックメイクはほとんど陳腐にならないのが驚きで、トラックの後半部では、やはりイントロのモチーフへと回帰し、それらの祝祭的な気風にちょっとしたエスプリや可愛らしさを添える。ヨーロッパの洋菓子のような美しさ。


「How Music Makes You Better」では、Burialのデビュー当時を思わせるベースライン/ダブステップのビートが炸裂する。表向きには、ダブステップの裏拍を徹底的に強調したトラックメイクとなっているが、その背後には、よく耳を済ますと、サザン・ソウルやアレサ・フランクリンのような古典的な型を継承したソフィア・クルテシス自身のR&Bがサンプリング的に配されている。それらのボーカルラインをゴージャスにしているのが、同じくディープソウルの影響を織り交ぜたゴスペル/クワイア風のコーラスである。そしてコーラスには男性女性問わず様々な声がメインボーカルのウェイブを美麗なものとしている。 曲の後半部ではシンセリードが重層的に積み重ねられ、ビートやグルーヴをより強調し、ベースラインの最深部へと向かっていく。


「Habla Con Ella」は、サイモン・グリーンことBonoboが書くようなチルアウト風の涼し気なエレクトリックで、仮想的なダンスフロアにいるリスナーをクールダウンさせる。しかし、先にも述べたようにこのアルバムの楽曲がステレオタイプに陥ることはない。ソフィア・クルテシスは、このシンプルなテクノに南米的なアトモスフィアを添えることにより、エキゾチックな雰囲気へとリスナーを誘う。ビートは最終的にサンバのような音楽に変わり、エスニックな気分は最高潮に達する。特に、ループサウンドの形態を取りつつも、その中に複雑なリズム性を巧みに織り交ぜているので、ほとんど飽きを覚えさせることがない。分けてもメインボーカルとコーラスのコールアンドレスポンスのようなやり取りには迫力がある。ダンスビートの最もコアな部分を取り入れながらも、アルバムのオープナーのようなくつろぎがこぼたれることはない。

 

 

「Funkhaus」はおそらくベルリン・ファンクハウスに因んでいる。2000年代、ニューヨークからベルリンへとハウス音楽が伝播した時期に、一大的な拠点となった歴史的なスタジオである。この曲では、スペーシーなシンセのフレーズを巧みに駆使し、ハウスミュージックの真髄へと迫る。00年代にベルリンのホールで響いていたのはかくなるものかと想像させるものがある。しなるようなビートが特徴で、特に中盤にかけて、ハイレベルなビートの変容を見いだせる。このあたりは詳細に説明することは出来ない。しかし、ここには強いウェイブとグルーブがあるのは確かで、そのリズムの連続は同じように聞き手に強いノリを与えることだろう。この曲もコーラスワークを駆使して、リズム的なものと、メロディー的なものをかけあわせてどのような化学反応を起こすのかという実験が行われている。それはクライマックスで示される。

 

一転して「Moving House」はアルバムで唯一、アンビエント風のトラックに制作者は挑戦している。テープディレイを用いながら、ちょっとした遊び心のある実験的なテクノを制作している。ただこの曲もまたインストでは終わらずに、エクスペリメンタルポップのようなトラックへと直結していく。しかし、こういったジャンルにある音楽がほとんどそうであるように、ボーカルは器楽的な解釈がなされている。これはすでにトム・ヨークが「KID A」で示していたことである。



アルバムの終盤にかけては、タイトルを見るとわかる通り、南欧や南米のお祭り的な気分がいよいよ最高潮を迎える。「Estacion Esperanza」は、土着的なお祭りで聴かれるような現地の音楽ではないかと思わせるものがあり、それは鈴のような不思議な音色を用いたパーカッション的な側面にも顕著に表れている。ただイントロでの民族音楽的な音楽はやはり、アーバン・フラメンコを吸収したハウスへと変遷を辿っていく。この両者の音楽の相性の良さはもはや説明するまでもないが、特にボーカルやコーラスを複雑に組み合わせ、さらに金管楽器のコラージュを混ぜることで、単なる多幸感というよりも、スパニッシュ風の哀愁を秘めた魅惑的なダンスミュージックへと最終的に変遷を辿っていく。ベースラインを吸収し、「Cecilla」はサブウーファーを吹き飛ばす勢いがある。さらにダンス・ミュージックの核心を突いており、おしゃれさもある。クローズ「El Carmen」はタイトルの通り、カルメンをミニマル的なテクノへと昇華させて、南欧的な雰囲気はかなり深い領域にまで迫っていく。これらの音楽は南欧文化にしか見られない哀愁的な気分をひたらせるとともに、その場所へ旅したかのような雰囲気に浸ることができる。そういった面では、Poolsideの最新作とコンセプト的に非常に近いものがあると思う。



82/100


 

Atomosphere

 

ミネアポリスのラップ・デュオ、米国中西部のアンダーグランドヒップホップの担い手であるAtmosphereが新作『Talk Talk』EPを12月1日にリリース。Ant/Slugは、デュオとして長い期間活動し、これまで20作ものアルバムをリリースしている。デュオは今年、『So Many Other Realities Exist Simultaneously』を発表後、リイシュー「Sad Clown,Bad Dub」をリリースした。


最新作『Talk Talk EP』では、ミネアポリスのレジェンドが時空の糸を飛び越え、スラッグとアントが彼らの青春の礎となったエレクトロ・ラップの巨人となった場所を掴んでいる。クラフトワークやエジプシャン・ラヴァーのようなアーティストを呼び起こすことで、アトモスフィアは40年前の未来のヴィジョンを再び新しいものに見せている。


『Talk Talk EP』の始まりは、『So Many Other Realities Exist Simultaneously』に収録された同名の曲のセッションだった。リフター・プラー出身のバット・フラワーとのコラボレーション曲「Talk Talk」は、エレクトロ・クラシックと並んで、不気味の峡谷に存在し、そこはかとなく異質でありながら深く人間的な、ナイトクラブへと直結している。


この曲の仕上がりに魅了されたスラッグとアントが、このサウンドをより長く探求するために再び訪れ、魅惑的な結果をもたらした。脈打つ「Rotary Telephone」では、テレビのアンテナが私たちの世界とは少しずれた世界に向いているようで、スラッグの奔放なヴォーカルと曲の教えられた構成との間の緊張感が、曲の内容と完璧にマッチしている。そして "Hear Hear "では、人間的なつながりを作ろうと奮闘する姿を垣間見れる。


 

 

Atomsphere 『Talk Talk』EP

Tracklist: 

 

1.Wetter
     
2.Attachings
   
3.Rotary Telephone
    
4.Don't Mind Me

5.Where I'm/You're At
   
6.Talk Talk (feat. Bat Flower)
   
7.Hear Hear (feat. Bat Flower)
  
8.Hello Pete (feat. Buck 65 and Kool Keith)
    
9.Make Party Politics

10.Travelling Forever


Sharon Van Etten(シャロン・ヴァン・エッテン)が、Apple TV+で放送予定のシリーズ「The Buccaneers」のサウンドトラックに提供した「Close to You」をリリースした。試聴は以下から。


ルシアス、グレイシー・エイブラムス、ミヤ・フォリックは、Warpaintのステラ・モズガワがプロデュースした『The Buccaneers』のサウンドトラックにも参加している。このアルバムは、イーディス・ウォートンの未完の同名小説にインスパイアされた番組がストリーミング・プラットフォームに登場するのと同じ11月8日にリリースされる。


ステラ・モズガワは声明の中で、「ユニークな才能を持つアーティストたちと仕事をするのは、本当に素晴らしい経験でした。全員が"A-game"を発揮し、創作プロセスについてかけがえのないことを教えてくれました。アーティストたちが歌を通してそれぞれのキャラクターの旅路を描くのを目の当たりにするのは喜びで、このアルバムは本当にエキサイティングな番組のお供のような感じだ」と述べた。


今年初め、ヴァン・エッテンはA24の新作映画『Past Lives』のサウンドトラックの一部として「Quiet Eyes」を発表した。

 

 

 「Close to You」


ノッティンガムのバンド、Divorce(ディヴォース)が、11月17日にGravity/EMIからリリースされるEP『Heady Metal』から新曲「Eat My Words」をリリースした。以下よりチェックしてほしい。


この曲について、共同ヴォーカル/ギタリストのフェリックス・マッケンジー=バロウは声明でこう語っている。「この曲は、私が不快に感じた状況に対する感情的な反応を精査したもので、そのような状況から、時には良い方向に、時にはそうでない方向に、言い残したことに対するフラストレーションを抱えたまま抜け出したものなんだ。

 

 

「Eat My Words」





 

マンチェスターの4人組、Porijが今年最初のリリースとなる「You Should Know Me」を携えて帰ってきました。この曲は、バンドがPlay It Again Sam Records(PIAS)からのデビュー作となる。


「このレコードの中で最も壁にボールをぶつける曲。この曲は、サウンド的にも歌詞的にも、すべて虚勢を張っている。この曲は、サウンド的にも歌詞的にも、すべてが虚勢について歌っている」


ロンドンの象徴であるヘヴンをソールド・アウトさせ、グラストンベリーでセットを披露し、今年初めにはコールド・プレイのスタジアム・ライヴをサポート。ポリジの新曲は、伝説的なデヴィッド・レンチ(フランク・オーシャン、ザ・エックス・エックス、ヤング・ファーザーズ)が共同プロデュース。バンドは今月末にフレンドリー・ファイアーズとツアーを行い、2024年には1月18日のザ・ウィンドミルでのアンダープレイを含む一連の親密なイギリス公演を行う。

 

 

「You Should Know Me」