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 Lord Huron 『Music for The Starling Girl』

 

 

Label: Mercury/Republic

Release: 2023/7/11


Review

 

『スターリング・ガール』は、ローレル・パーメット監督による2023年のアメリカのドラマ映画。この映画は、2023年1月21日に2023年のサンダンス映画祭でプレミア上映され、ブリーカー・ストリートによって2023年5月12日に公開された。フォークシンガー、ベン・シュナイダーによるプロジェクト、Lord Huronは、この最新作で同名の映画のオリジナルスコアに取り組むことになった。

 

『The Starling Girl』との関わりをシュナイダーは振り返っている。 「ストーリーの中で実際に役割を果たす曲の作曲を依頼されることは、ソングライターにとって夢のようなことだ。」



『The Starling Girl』の映画では、17歳のジェム・スターリングが、キリスト教原理主義者の中で自分の居場所を見つけようと奮闘する。


ケンタッキー州の田舎町にあるキリスト教原理主義者のコミュニティの中で、ジェムは自分の居場所を見つけようと奮闘する。教会のグループでダンスを踊るという彼女の最大の喜びでさえも自分の行動が罪深いのではないかという心配にさいなまれ、自分の性に対して芽生えつつある意識との板挟みになる。自分のセクシュアリティへの自覚と宗教的献身との間で揺れ動く。謎めいた青年牧師オーウェンが戻ってくると、ジェムはすぐに彼の世俗性と魅力に惹かれていく。

 

2021年の最新アルバム『Long Lost』では、モノクロ映画やマカロニ・ウェスタン調のノスタルジックな世界観を下地にし、自身のフォーク・ミュージックにより、独特の世界観を形成したベン・シュナイダーの音楽性は、このオリジナルスコアでも健在である。キリスト教のテーマが映画に内包されることもあってか、オープニング「Stained Glass」では、ハモンドオルガンのようなフレーズが神々しい雰囲気を生み出しており、これらのストーリーに忠実な音楽に、陶酔した甘美な感覚すら見出せる。抽象的な音楽性も内包されてはいるが、やはりロード・ヒューロンらしさが満載だ。レッド・フォーリーやジョニー・キャッシュの古典的なカントリー/フォークを下地にし、ローファイ、ヨットロック、トロピカルが宝石のように散りばめられている。

 

アルバムの多くはインスト曲で占められている。ボーカルは、稀にトラックの中に挿入されることはあっても、タイトル曲のような意義を持つフォークソング「Ace Up My  Sleeve」を除けば、そのほとんどは器楽的な音響性が追求されている。このバンドを古くから知るファンは、「Deadbeats Jam Tape Winter '94」等にフォーク音楽と古典的な世界観の融合性を発見するかもしれない。また、バンドの音楽性の真骨頂であるトロピカルな雰囲気も本曲の中に漂っている。また、ベース、ギター、ドラムの上に取り入れられるテルミンの響きもモリコーネサウンドを彷彿とさせる。


「Tunnel of Tree」では、ミステリアスな瞬間をドローン風の音色で表現するが、その後にはロード・ヒューロンらしいトロピカルやヨットロック調のフレーズを交え、神秘的な瞬間へと導かれる。その中には確かに敬虔な何かが宿り、それらが賛美歌のような祝福されたアンビエントへと直結する。


続いて「Jemi's Theme」は、前の曲の雰囲気を受け継ぎ、かつてヨ・ラ・テンゴが00年代に書いたような抽象的な音像を形作るようになる。しかし、アンビエント調の音楽の後には、やはり古典的なフォーク/カントリーがそれ以前の音楽と絶妙に溶け込んでいく。音楽は、心地よさと映像を引き立てるための脇役として存在する。無個性というわけではなく、実際の映像の持つストーリー性や情感を引き立てるための働きを成す。曲の最後では鐘の音がシンセとして取り入れられるが、ある種、祝福された瞬間を感じ取ることも出来るかもしれない。

 

その後も、「Fill Me to The Brim」ではアンビエントの癒やしや安らいだ感じが到来し、まるでそれは果てない無限性に直結するように思える。三曲目の続編でもある「Deadbeats Jam Tape Winter '95」は、前の曲と同じようなレッド・フォーリーのような音楽性を通じ、ビブラフォーンの響き、ターンテーブルのようなスクラッチ、チョップの技法を織り交ぜ、西部劇のような曲調にベン・シュナイダーのボーカルが挿入される。彼の声はまるで20世紀の初めを彷徨うかのようだ。それはアウトロを通じてラジオの混線のような形で別の曲調へと変遷を辿る。続く「 Evening Ride」は短いインスト曲であり、前の曲の雰囲気を強化するような役割を担っている。グロッケンシュピール、テレミンのようなオーケストラ楽器の導入は、その雰囲気を実際に効果的に高めている。「Summer Air」では、アルバム前半部と同じよう実験的な電子音の世界を安らいだフォーク音楽と一つに結びつけている。ベン・シュナイダーのギターはムードたっぷりで、いつまでもこの音楽の中に浸っていたいと思わせる何かが存在している。

 

オリジナルスコアはその後、「Hands To Sky」を通じてローファイや以前よりもエクスペリメンタルフォークの性質を強めていき、映画のストーリー性をより強化するような構成を形成している。「Mysteries」は、アンビエント調で、映画の中の印象的なシーンを伺わせるものがある。さらに、この曲には何かスピリチュアルな何かが浮かび上がるような感覚に充ちている。これは実際の映画をご覧いただき、音楽がどのような形で実際の映画のワンシーンを印象深くしているのかを確認してもらいたい。アルバムの世界観は終盤においてさらに深みを増していき、「Overflowing」では、これまでのバンドの音楽性とは異なる形のハイライトを見出すことも出来る。

 

そもそもロード・ヒューロンは、ベン・シュナイダーがヒューロン湖を旅したときに、神々しい感覚に打たれ、その後、ロサンゼルスに行き、友人とともに音楽活動を始めたのが始まりだ。また、ロード・ヒューロンは、そういった人智では計り知ることの出来ない自然の中にある霊妙な感覚を、フォーク/カントリー、ローファイ、モリコーネ・サウンドを介して追い求めてきた印象もある。そして、この映画のサウンドトラックでは、バンドの既存作品の中で最も神秘的な瞬間が実際の音楽の中に見いだせるという気がする。このオリジナルスコアの音楽は、映像がなくとも、それ自体が素晴らしいが、もちろん映像を鑑賞してみたいという気を起こさせる何かがある。


 

 

87/100

 

 

米国のシンガーソングライター、Sharon Van Etten(シャロン・ヴァン・エッテン)が、韓国系カナダ人の映画監督、Celine Song(セリーヌ・ソン)のA24新作映画『Past Lives』のサウンドトラックに新曲「Quiet Eyes」を提供しました。オフィシャルビデオは下記よりご覧ください。

プロデューサーのZachary Dawes(ザッカリー・ドウズ)と共に作曲・演奏した「Quiet Lives」は、映画のようなパーカッションと広範なストリングスにより、失われた1960年代のガールグループのバラードのように感じられます。

 

曲の中でヴァン・エッテンは、「雨の中で消えゆくモザイクの顔」を描写し、「これは本当に神秘的な人生なのだろうか?」と考えます。「私たちは自分の過ちから逃げているのではないか」と。この曲は、旧友が初めて出会ってから数十年後に再会するロマンス映画のサウンドトラックに使われるようなドラマティックな曲です。

 

 「Quiet Eyes」

 

 

「Past Lives」のサウンドトラックには、ヴァン・エッテンの新しいオリジナル曲に加えて、グリズリー・ベアのダニエル・ロッセンとクリストファー・ベアがスコアを提供しています。これまでのところ、アーティストたちは「Why Are You Going to New York」と「Across the Ocean」という曲を共有しています。サウンドトラックはA24 Musicから6月9日に発売される。

 

シャロン・ヴァン・エッテンの最新のアルバムは2022年の『We've Been Going About This All Wrong』です。その後、未発表のボーナストラック2曲を収録したデラックスエディションをリリースした。3月には、2012年のアルバム『Tramp』の記念リイシューをリリースした。

 

©Luke Rogers


Angel Olsenが、Larry Clinton & His Orchestraによって人気を博した「My Reverie」のテイクを提供しました。このカバーは、エステ・ハイムがエグゼクティブ音楽プロデューサーを務めるナショナル・ジオグラフィックの新しい限定シリーズ「A Small Light」のために録音されたものです。以下、チェックしてみてください。


A Small Light」は、アムステルダムの屋根裏部屋にアンネ・フランクとその家族を隠すのを手伝ったオーストリア系オランダ人女性、ミープ・ギーサ(ベル・パウリー扮)の物語です。5月23日発売のサウンドトラックには、ダニエル・ハイム、カマシ・ワシントン、ウェイズ・ブラッド、モーゼス・サムニーらのカバーが収録されています。また、Sharon Van EttenとMichael ImperioliがInk Spotsの「I Don't Want to Set the World on Fire」の演奏を番組で披露しています。

 

 

©Ian Laidlaw

Sharon Van Etten(シャロン・ヴァン・エッテン)は、米国の俳優であるMichael Imperioli(マイケル・インペリオリ)と組んで、Ink Spotsの「I Don't Want to Set the World on Fire」をカヴァーしています。

 

この曲は、ナショナル・ジオグラフィックの新シリーズ「A Small Light」のサウンドトラックの一部として録音されたもので、「The Sopranos」と「The White Lotus」の俳優Michael Imperioliがスポークンワードバースを披露しています。


「A Small Light」は、アンネ・フランクとその家族をアムステルダムの屋根裏部屋に隠すのを手伝った女性、Miep Gies(ベル・パウリー扮する)の人生をベースにしています。エステ・ハイムはこの番組でエグゼクティブ音楽プロデューサーを務め、アリエル・マルクスはオリジナルスコアを作曲しています。

 

5月23日に発売された『Songs From the Limited Series』では、ハイムはエンジェル・オルセン、ダニエル・ハイム、カマシ・ワシントン、ウェイズ・ブラッド、モーゼス・サムニーなどのアーティストを起用しました。ダニエル・ハイムのドリス・デイの「Till We Meet Again」の演奏とカマシ・ワシントンのチャーリー・パーカーの「Cheryl」のカバーは先行リリースされている。エンジェル・オルセンの「My Reverie」バージョンは今日リリースされたばかり。


 


The Cinematic Orchestra(シネマティック・オーケストラ)は、今年9月1日に『Man With A Movie Camera』の20周年記念エディションをNinja Tuneからリリースする予定です。このスペシャルエディションはLPで発売予定です。

 

ザ・シネマティック・オーケストラが、2003年の代表的なアルバム『Man With A Movie Camera"』の20周年記念ツアー&オーディオ・リイシューを発表しました。彼らはアルバムからの楽曲をすべて新しいビジュアルで表現し、ヨーロッパ全土で発売を記念したライブを行う予定です。



2001年、ポルトが欧州文化都市になったことを祝う映画祭の一環として、シネマティック・オーケストラのジェイソン・スウィンスコーは、一回限りのパフォーマンスとして無声映画のサウンドトラックの作曲を依頼された。この映画は、1929年にソビエト連邦で製作された初期のドキュメンタリー。英国映画協会をはじめとする多くの人々から、製作から100年近く経った今でも史上最高の映画のひとつと称賛されている。ソビエトのジガ・ヴェルトフが監督を務めている。

 

最初の公演は、歴史あるポルトのコリセウで行われ、3,500人のスタンディングオベーションで幕を閉じた。シネマティック・オーケストラはその後、ロンドンのバービカン、ニューヨークのウィンターガーデン(WTC)、シドニー・オペラハウスなど、長年にわたって国際的にこのショーをツアーしています。



バンドは「Every Day」を書いている最中にフィルムコミッションが発生し、「Man With A Movie Camera」に形成的な影響を及ぼした。

 

「Every Day」に収録された曲の中には、この曲のために特別に書かれたものや、すでに開発されていたものがあり、スウィンスコーとバンドは、映画の展開に合わせたモチーフを作り直した。タイトルの「Every Day」は、理想的なソビエト社会の1日を描いた映画の物語に基づくもので、人々の起床からストーリーが始まり、様々な職場環境を経て、余暇や活動へと移っていきます。
 

『Man With A Movie Camera』は、録音盤として2003年にリリースされましたが、多くの賞賛を受けました。

 

ガーディアン紙は4/5をつけ、「ジャズ楽器、DJシャドウのようなグルーヴ、繰り返されるコード・シーケンスを解剖しても、どうしてこんなにシンプルな組み合わせで、こんなにハートフルな音楽を作るのか、頭を悩ますことになるだろう」と謙遜した絶賛を与えている。インディペンデント・オン・サンデー紙は、「独り立ちし、誇り高く、完全なものである」と評している。また、ダンス雑誌のDJ Magazineは、「The Cinematic Orchestraの天才、この言葉を軽々しく使うことはできない、まるで境界がないようだ」と手放しに賞賛している。



1999年に「Motion」でデビューして以来、ザ・シネマティック・オーケストラは数多くのアルバムを売り上げ、10億回以上のストリームを生み出している。Pitchfork、The Guardian、New York Times、Le Monde、Resident Advisor、Fader、Crack、 Rolling Stone、Gilles Peterson、Benji B、 Jason Bentley、 Mary Anne Hobbsなどの評論家から支持を得ている。2007年にリリースされたアルバム「マ・フルール」は、グループのサウンドの伝統から大胆に逸脱していることが評価されましたが、それ以来、このアルバムは、多くの人に愛されている。

 

 



Chinematic Orchestra 『Man With A Movie Camera』(20th Anniversary Reissue)

 



Tracklist:

 
Side A:
1. The Projectionist
2. Melody
3. Dawn
4. The Awakening Of A Woman (Burnout)
Side B:
1. Reel Life (Evolution II)
2. Postlude
3. Evolution (Versao Portuense)
Side C:
1. Man With The Movie Camera
2. Voyage
3. Odessa
4. Theme De Yoyo
5. The Magician
Side D:
1. Theme Reprise
2. Yoyo Waltz
3. Drunken Tune
4. The Animated Tripod
5. All Things


 


大の親日家であり、近年、日本に住んでいるという噂もあったJim O'Rourke(ジム・オルーク)は、カイル・アームストロング監督の映画作品『Hands That Bind』のサウンドトラックを7月7日にDrag Cityからリリースすることを発表した。また、「A Man's Mind Will Play Tricks On Him」という曲の編集と、アームストロング自身が監督したビデオも公開されています。以下、ご覧ください。


カナダのアルバータ州の農地を舞台にした『Hands That Bind』には、ポール・スパークス、スーザン・ケント、ランドン・リボイロン、ニコラス・キャンベル、ウィル・オールダム(別名ボニー・プリンス・ビリー)、ブルース・ダーンらが出演。

 

 

 「A Man's Mind Will Play Tricks On Him」





Jim O'Rourke『Hands That Bind』(Original Soundtrack)
 

Label: Drag City
 
Release: 2023/7/7


Tracklist:
 
1. Go Spend Some Time With Your Kids
2. Wasn’t There Last Night
3. He’s Only Got One Oar in the Water
4. That’s Not How the World Works
5. A Man’s Mind Will Play Tricks On Him
6. Here is Where I Seem to Be / The Good Lord Doesn’t Need Paperwork
7. You Have No Idea What I Want
8. One Way or Another I’m Gone
American Grafitti

全般的に見ると、映画やサウンドトラック、つまり映像や映画の中で流れる音楽は、その映像媒体の単なる付加物に過ぎません。

 

ところが、なんの変哲もない、つまらない映像のワンショットが、ある種の情感を引き立てるようなBGMが付加されることで、時代を象徴するような名シーンに変化する場合がある。そして、それは時に映画全体の評価すら変えてしまう場合もあるのだから不思議だ。ローマの休日、スタンド・バイ・ミー、さらに、時計じかけのオレンジ、シャイニングといった著名な映画のワンシーンではそのことがよく理解出来る。つまり、映画のサウンドトラックとは、本質的には映像の付加物に過ぎないけれども、一方では、映像そのものよりも優位に立ち、ストーリーや映像を支配する場合すらあるのです。

 

例えば、ホラー映画のワンシーンにおいて、そのシーンとは全く別のユニークな音楽が流れたらどう考えるでしょう。多くの鑑賞者は、その瞬間、恐怖を忘れ、また、失望し、興ざめしてしまうはずです。反対にコメディー映画のワンシーンで、場違いなホラーの音楽が流れたら、(それはそれで前衛的で面白いと考える人もいるかもしれませんが)興ざめすることでしょう。つまり、一見、映像とその付加物に過ぎない音楽が分かちがたく結びついた途端、主媒体の持つ意味が変化し、本来、付加物であるはずの音楽が優位に立つケースが極稀に存在するのです。このことについて、映画評論家のジェイムズ・モナコーー”映画を読む”という考えに基づいて作品の評論を行った人物ーーは、そもそも映画の音楽が効果的な形で活用されるようになったのは、ブロードウェイのミュージカルの時代であると指摘しており、この2つの媒体がどのように関連しているかについて、以下のように述べています。「だが、今日、ミュージカル形式の映画の中で、最も成功しているのは、純然たるコンサート・フィルムである。これはサウンドトラックがフィルムを伴っていて、映像がサウンドトラックに支配されているのだ・・・(以下略)」というのです。

 

例えば、ジュディー・ガーランドのミュージカルの時代から、その後のハリウッドを中心とする映画全盛期の時代にかけて、もしくはフランスのパリ、イタリアのミラノを始めとするヨーロッパを中心とする映画の時代において、音楽がその映像作品のストーリーを強化することは決して珍しいことではありませんでした。たとえば、好例としてはトーマス・マン原作の「ヴェニスに死す」があります。この映画の最後のシーンでは、疫病に侵された音楽家が、人気のなくなったイタリアの浜辺で息絶えますが、明暗のコントラストを最大限に活用することで知られるイタリアの巨匠であるヴィスコンティ監督は、この印象的なシーンに、グスタフ・マーラーの『アダージェット』を使用し、その光と影の微細な変化と同期させ、この映画を不朽の名作たらしめた。つまり、実際の良い映画音楽は、単なる付加物にとどまることはほとんどなく、本来の役割を離れ、映像すら超越し、その映画のワンシーンを印象的な形で鑑賞者の記憶に留めておくのです。

 

今回、改めて、映画の中に導入される音楽が重要視されるようになったブロードウェイの時代から、 映画産業の最盛期にかけての名作映画とサウンドトラックを、下記に網羅的にご紹介致します。以下のプレイリストを参考にすることで、実際の映画を鑑賞するときに、”音響効果としてサウンドトラックがどのような形で映像に効果を及ぼしているのか?”という観点から映画を観ることもまた映画鑑賞の一興となるでしょう。

 

 

 

Louis Armstrong  『Hello Dolly!』 映画『Hello Dolly!』(69年)より


 



ジェイムズ・モナコが指摘するように、ミュージカルがサウンドトラックの原点にあるとするならば、まずはじめに紹介しなければならないのは、同名のミュージカル『Hello Dolly!』が映画化された本作である。

 

監督は、ジーン・ケリー、振り付けはマイケル・キッドが担当した。第42回アカデミー賞で美術賞、ミュージカル賞、録音賞の3部門を獲得した。ジャズボーカル/トランペットの巨匠であるルイ・アームストロングが客演した同名の作品のテーマソングである「ハロー・ドリー!』は、マンハッタンのブロードウェイミュージカル全盛時代の華やかな雰囲気を味わうのに最適である。


 

 

 

Irving Berlin/ Ethel Merman 映画『There’s No Business Like Show Business』 『There’s No Business Like Show Business』(54年)より


 



 

もし、ブロードウェイのミュージカルがどのような音楽として出発したのかを知りたいのであれば、ハロードリーの次に思いうかぶのがエセル・マーマンが歌った映画『There’s No Business Like Show Business』の表題曲である。

 

20世紀のニューヨーク/マンハッタンが最も反映した時代の華やかさを見事に捉えた名曲。エセル・マーマンは、この曲の中で、まるで舞台女優のように歌うのだが、実際の音源からもミュージカルの様子を想像することが出来る。まさにショービジネスのような華やかなビジネスはこの世に存在しないことを体現している。ブロードウェイのネオンが目に浮かぶような一曲である。

 

 『ショウほど素敵な商売はない』(There's No Business Like Show Business)は、1954年のアメリカ合衆国のミュージカル。監督はウォルター・ラング、出演はエセル・マーマンとマリリン・モンロー!! など。 ミュージカル『アニーよ、銃をとれ』のために書かれたアーヴィング・バーリンの歌「ショウほど素敵な商売はない」の曲名をそのまま映画のタイトルにしている。

 

 

 


『Love is a Splendered-Thing(慕情)』 映画『Love is a Splendered-Thing(慕情)』(55年)

 





『慕情』(Love Is a Many-Splendored Thing)は、1955年のアメリカ合衆国の恋愛映画で、20世紀フォックスが配給し、同年、日本でも公開されている。

 

監督はヘンリー・キングで、出演はジェニファー・ジョーンズとウィリアム・ホールデンほか。ベルギー人と中国人の血を引く女性医師ハン・スーインの同名の自伝的小説(英語版)を映画化した作品である。

 

 主題歌「Love Is a Many-Splendored Thing 慕情」は第28回アカデミー賞歌曲賞を受賞し、多くの歌手によりカバーされた。同曲を作曲したサミー・フェインはジャコモ・プッチーニの歌劇『蝶々夫人』のアリア「ある晴れた日に」を参考に作曲した。

 

この原曲のバージョンはミュージカルであるものな、映画のアレンジバージョンが複数存在すると記憶しており、一番有名なメインテーマのオーケストラ・バージョンに加え、実は、中国風のイントロのメロディーがきわめて印象的なボーカル・バージョンのバラードのレコーディングが存在する。

 

テーマソング『Love Is a Many-Splendored Thing 慕情』は、オーストリアの作曲家であるグスタフ・マーラーの管弦楽法の影響を直接的に受けた爽やかな雰囲気を擁するオーケストラレーションは、映像の持つ魅力を最大限に引き出すことに成功している。


 


 

Debby Reynolds 『Tammy』 映画『Tammy and the Bachelor(タミーと独身者)』(57年)より


 



 

デビー・レイノルズは、女優としても演技力が随一といっても差し支えないはずだが、歌手としても他のミュージックスター達の歌唱力に引けを取らない甘美な歌声を持った伝説的なシンガーである。女優としての才能だけでなく、歌手としての素晴らしい才覚を示してみせたのが、ロマン・コメディ映画の「タミーと独身者」だった。

 

米ユニバーサルから配給された映画「タミーと独身者」1957は、シド・リケッツ・サムナーの小説を原作とし、ジョセフ・ペブニーがメガホンを取った。年頃の少女が自分の恋心の芽生えに気づいた淡い感情を描いてみせた名作の一つで、コメディの風味も感じられるが、米国らしいロマンティックさに彩られた往年の名画といっても良い。

 

 

 

 

Judy Garland  『Over The Rainbow』 映画「The Wizzard Of OZ』(39年)より


 



 
ハリウッド映画の黄金時代を象徴する女優/歌手のジュディー・ガーランドの華やかな人生は、反面、その影であるドラッグ産業とともに象徴づけられる。ガーランドは20世紀初頭の華やかなミュージカルの時代の過渡期に伝説的な女優として活躍した。
 
 
ミュージカルと映画の転換期にあたる『オズの魔法使い」におけるガーランドの名演は、映画史に残るべきものである。劇中歌で使われた『Over The Rainbow』も米国のポピュラー史の中でも屈指の名曲に挙げられる。推測に過ぎないが、後の時代に隆盛をきわめるディズニー映画の音楽のステレオタイプは『Over The Rainbow』の夢見るようなロマンチシズムに求められるといっても過言ではない。ライマン・フランク・ボーム原作の『The Wondeful Wizzard Of OZ』(1900)のファンタジックな物語性を音楽的な側面から見事に捉えた伝説的な名曲である。
 

 

 


Pat Boone 『April Love』   映画『April Love』(57年)より






パット・ブーンの「April Love」を聴けば、映画の中に挿入される音楽が、どれほど映像の持つ雰囲気を盛り上げるのかがよく分かる。

 

ビルボード・マガジンの集計によると、パット・ブーンは、エルヴィス・プレスリーに次ぐチャート記録があるヒットメイカーとして知られている。同名映画のテーマソングである「4月の恋」50~60年代において大成功を収めたポピュラー歌手で俳優/作家のパット・ブーンが、1957年にDOTレーベルからリリースしたシングル。ビルボード・ホット100チャートで最高1位、さらにUKシングルチャートで最高7位を記録した。

 

サミー・フェインが作曲し、ポール・フランシス・ウェブスターが作詞したポピュラーソングである。パット・ブーンとシャーリー・ジョーンズが主演を務めた、ヘンリー・レヴィン監督の1957年の映画『エイプリル・ラヴ』の主題歌として書かれた。春先のロマンチックな雰囲気を漂わせる甘いバラードソングだが、これ以上に爽やかな映画のテーマソングは寡聞にして知らない。


 


 

8.Buddy Holly 『That's ll Be The  Day』  映画『American Grafitti』(73年)より


 



 ”Mel’s Drive-In"に行ったことがある人はいるだろうか? それは冗談としても、SFの傑作『スターウォーズ』で知られるジョージ・ルーカルのもう一つの傑作が、70年代の米国の若者の暮らしを見事に活写した『アメリカン・グラフィティ』 である。


実は、この映画、米国のオールディーズ、ドゥワップの名曲ぞろいで、ほとんどこのジャンルのベスト盤といっても過言ではない。

 

ロックのアイコン、チャック・ベリーを始め、スカイライナーズ、プラターズ、バディー・ホリーと怒涛のドゥワップの名曲のオンパレードで、実際の映像のムードを盛り上げている。特に、スターウォーズのように大掛かりな演出が施されているわけではないのに、私はこの映画が大好きである。

 

特に、エンディングにかけてのビーチ・ボーイズの名曲『All Summer Long』は、劇中の主人公たちの青春と相まって、ほとんど涙ぐまさせる何かが込められている。また、この曲の中では、HONDAが登場し、若者の間で日本の外車がトレンドであったことも容易に伺える。ドライブインやクールな車が登場し、その物語の中を若者たちが所狭しと動き回る様子は、同じく青春映画の傑作『スタンド・バイ・ミー」に匹敵する。この時代の奇妙な近未来的な作風は、後の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に大いに影響を与えたのではないだろうか?

 

 

 


The Platters 『Smoke Gets In Your Eyes』映画『A Guy Named Joe』(43年)/『Always』(89年)


 




ザ・プラターズの『煙が目に染みる』は、1933年、ジェローム・カーンの作曲により、ミュージカル『ロバータ』 (Roberta) のミュージカルのショー・チューンとして書かれた。作詞はオットー・ハルバック(Otto Harbach)が手掛けている。 同年10月13日に、ガートルード・ニーセン(Gertrude Niesen)により最初のレコード録音が行われた。1946年には、ナット・キング・コールもカヴァーしている。1958年、コーラスグループのザ・プラターズがカバーしてリバイバル・ヒットした。

 

1958年、プラターズのドゥワップのカバーは全米R&Bチャートで3位、全英では1位を記録し世界中で大ヒットしたことはよく知られている。1943年のアメリカ映画『A Guy Named Joe』のリメイク版、1989年スティーブン・スピルバーグ監督の映画「オールウェイズ」でも、この曲が効果的に使われた。前者の映画は古すぎるため、一度も観たことがない。特にサントラとして効果的に使用されているのはスティーヴン・スピルバーグ監督の作品の方だろう。歴代のバラードソングの中でも屈指の名曲/カバーといっても良いのではないだろうか? 


 

 

 

The Righteous Brothers 『Unchained Melody』 映画『Ghost』(90年)より


 




90年の『ゴースト』は、興行的には大成功をおさめた作品であるのは事実だが、永遠の名作なのかは疑問符が残る。私はそれほど映画には詳しくない、と断った上で言わせていただきたいが、この映画の発想自体は斬新で面白く、90年代に流行ったということについても頷ける話だけれども、現代的な感覚から見ると、どことなくB級感漂う作品というのが個人的な感想なのである。

 

もちろん、一方で、映画のサウンドトラックという観点から見ると、「Unchained Melody」は映像効果のムードの側面に素晴らしい影響を与えている。原曲は55年で、35年の時を経て、同映画の表題曲として採用され、英国一位のリバイバルヒットを記録している。例えば、最近の『ストレンジャー・シングス 未知の世界」のメタリカやケイト・ブッシュの例を見ても分かる通り、オリジナルの楽曲が、数十年も後になってリバイバルヒットを記録するケースはそれほど稀有なことではないのだ。

 

また「ゴースト」のプロデューサーは、ビートルズのレコーディングプロデューサーとしてお馴染みのフィル・スペクターである。ジョン・レノンやジョージ・ハリスンはフィル・スペクターのことを気に入っていたと言うが、ポール・マッカートニーはあまり好きではなかったという。この噂の真相までは定かではない。ともあれ、「Unchained Melody」は幻想的でありながら現実的であるという、この映画の核心をうまく体現している。また映画のサントラとしては問答無用に素晴らしい一曲である。



Simon & Garfunkel 『Sound Of Silence』 映画『The Graduate』(67年)より 


 




 
「サウンド・オブ・サイレンス」(原題はThe Sound of Silence、またはThe Sounds of Silence)は、サイモン&ガーファンクルが1964年に発表した。1964年のオリジナルレコーディングは商業的に成功せず、直後にバンドは解散することになる。しかし、1965年、オーバー・ダビングされたバージョンが1966年にビルボード誌で2週に渡って週間ランキング第1位を獲得した。ビルボード誌1966年年間ランキングは第25位。 1967年のアメリカ映画『卒業』では挿入曲となった。


『卒業』は1967年に公開された作品で、主演はダスティン・ホフマンである。今では大物俳優の彼の記念すべきデビュー作である。この映画は、アメリカン・ニューシネマの代表作としても認知されており、当時のアメリカの時代背景(ベトナム戦争や女性運動など)が反映され、政治に対する不信感を感じることができる作品となっている。

 

『明日に架ける橋』など他の全般的な代表作を見ると、それほどマイナー調の曲は少ないサイモン & ガーファンクルではあるものの、「サウンド・オブ・サイレンス」だけは非常に暗鬱な雰囲気が漂う。ある意味では、ベトナム戦争時代の米国の当時の若者のリアリティを反映させた作品とも称せる。


 


Steppenwolf 『Bone To Be Wild』 映画『Easy Rider』(69年)より






私はバイク乗りではないものの、デニスホッパー主演の『Easy Rider」ほどモーターサイクルやハーレー・ダヴィッドソンがかっこよく思える映画もそうそうないと思う。


映画のテーマ曲「Born To Be Wild(ワイルドで行こう)」(68年)を提供したステッペン・ウルフの方は、60年代後半のアメリカンロックを代表するバンドである。元々、バンド名も、カルフォルニアのUCLAの学生が好んで読んでいたという作家のヘルマン・ヘッセの前衛小説「荒野のおおかみ」に因んでいる。そう考えると、カルフォルニアのヒッピーの自由主義、ラブ・アンド・ピースのキャッチフレーズを掲げて登場したロックバンドと、ワイルドであることを生きる上での金科玉条とする作中人物たちの生き様は、他のどの映画よりも絶妙にマッチしていたのだ。

 

「Born To Be Wild」は60年代のアメリカン・ロックの最高傑作の一つであり、映画のサウンドトラックとしても超一級品である。ちなみに、バンドのアルバムの原曲では存在しないが、映画のサウンドトラックのバージョンのイントロには、バイクのマフラーをブンブン吹かす音が入っている。

 

 

 



Ben E King 『Stand By Me』  『Stand By Me』(86年)


 




四人の若者たちが、青空の下の線路の上を仲睦まじく歩く姿を想像してもらいたい。そしてそれは、それ以前の映画の作中人物の人間関係をしっかり辿った上で見ると、涙ぐまずにはいられないような映画史きっての印象的なシーンなのだ。つまり、青春映画の最高傑作『Stand By Me』の魅力は、あの名場面に尽きるのである。ただ、Music Tribuneは映画サイトではないため、あのシーンが本来どのような意味を持つのかについては考察するのを遠慮しておきたい。

 

軽快なコントラバス(ウッドベース)の演奏で始まる『Stand By Me』は、1961年にアトコ・レコードからシングルとして発売されたベン・E・キングのシングル作である。1986年に公開された同名の映画で主題歌として使用され、映画の宣伝のためにミュージック・ビデオが制作された。同年、再発売され、全英シングルチャートで第1位を獲得した。作詞作曲は、キングとジェリー・リーバーとマイク・ストーラーが手掛け、チャールズ・アルバート・ティンドリーによって作曲された黒人霊歌「Load, Stand By Me」に触発されて書かれた。つまり、あまり知られていないことだが、「スタンド・バイ・ミー」はポピュラーミュージックである前にゴスペルソングなのである。


「Stand By Me」は初盤の発売以降、そうそうたるミュージシャンに気に入られ、ジョン・レノン、ブルース・スプリングスティーン、レディー・ガガ、忌野清志郎によってカバーされた。現時点でのカバー・バージョンの総数は400を超える。 映画の最高のテーマ曲の一つとして最後に挙げておきたい。




 Weekly Recommendation  


Hania Rani 『On Giacometti』

 



Label: Gondwana Records


Release: 2023年2月17日



ハニャ・ラニの言葉 

 

 "ジャコメッティについて" 


 ジャコメッティの家族についての映画のサウンドトラックを依頼されたとき、私は考えもしなかった。


 アルベルト・ジャコメッティはスイスの芸術家で、主に画家と彫刻家として活動し、長い間、私のお気に入りの芸術家の一人だった。彼のスタイル、美学、創作活動の特徴には、今でも様々な面で魅了されています。ですから、彼の世界にさらに深く入り込み、彼だけでなく彼の家族も知ることができるのは、私にとって見逃せない機会でした。


 この「イエス」という言葉が、私を精神的、創造的なレベルだけでなく、肉体的にもどこまで導いてくれるかは、まだ分かっていませんでした。ドキュメンタリーの監督であるスザンナ・ファンツーンのおかげで、そして幸運といくつかの追加質問のおかげで、私はジャコメッティが生まれ、彼が住んでいなかったにもかかわらず故郷と呼んでいた場所からそう遠くないスイスの山々に数ヶ月間移り住むことにした

 

。スザンナは、彼女の故郷の近くに、スタジオを借りてサウンドトラックだけでなく、他のプロジェクトもできる場所を教えてくれた。その日は真冬で、辺りは氷と雪で覆われていて、山の中ならではの光景でした。レジデンスハウスは高い山に囲まれた谷間にあり、冬の季節の太陽は日中あまり長く昇ってきませんでした。彼女はそのことを私に話し、「そこでみんなが元気になっているわけではないけれど、元気になってほしい」と付け加えたのを覚えています。もちろん私はそうするつもりでした。


 現実からほとんど切り離されて、街や娯楽、急ぐ人々、普段私の注意を引くあらゆるものから、私は音楽やサウンドトラックに完全に集中し、一日の大半を自分の考えで過ごし、創造的なプロセスで実験し自由になるための十分なスペースを持つことができた。このサウンドトラックは、私が普段生活している場所で作曲したら、おそらく全く違うものになったでしょう。私はこれを、作曲家として、また人間としての自分について、何か新しいことを探求するチャンスと捉え、普段の自分とは逆の方向を選び取りました。


 アルバム「ジャコメッティについて」には、サウンドトラックからの抜粋、代表的な曲、声そのものが強くなった曲などが収録されています。即興的なメロディー、シンプルなハーモニー、構造、そして静寂をベースにしたこのアルバムは、私のデビューアルバム「Esja」を思い起こさせるものです。精神的にも肉体的にも、これらの要素が私を主要な楽器であるピアノへと導き、私は自分が作業している空間の言語を用いて再び定義しようとしました。空間は通常、プロジェクトの配置や性格について私に答えを与えてくれる重要な要素です。空間は最初に現れるようで、音楽はその天使を変化させる目に見えない力なのです。


 かつてアルベルト・ジャコメッティが手紙の中で書いた有名な言葉があるように、山に囲まれて生活していると、視点やスケール感の捉え方が変わってくる。


 山のように遠くにあるものが近くに感じられ、人間のようにそれほど遠くないものが、遠くから見ていると小さく感じられるようになるのだ。


 指で山の頂上を触るのが、鼻先に触れるくらい簡単なことのように感じられる。


 雪が積もっているためか、音は静かに地面に落ち、計り知れない空間の響きを伴っている。ひっかき傷やささやき声のひとつひとつが自律した存在となり、幽霊や迷子の世界への入り口を開いている。一見、何も動いていない、何も変わっていないように見えるが、そこには時間が止まっているように見える。


 しかし、氷と雪は時間の流れを明らかにし、凍りついた水路は、一日、一時間、一秒ごとに荒々しい水の流れに姿を変える。溶けては消え、白い粉やノイズに覆われた空間がクリアになる。一晩の旅行者には見えないが、長く滞在する人にとっては痛いほどリアルなプロセスなのだ。


 時間は、川を流れる音の新しい波とともに流れ、私たちが限りなく繰り返されるサイクルの一部であることを思い起こさせる。私は春の息吹とともにこの谷を後にした。


プレスリリースより。


Hania Rani

 

  大胆な細いフォルムを採用することで知られるスイスの造形作家、アルベルト・ジャコメッティの映画のサウンドトラックのために制作された全13曲に及ぶ、ピアノ、オーケストラレーション、エレクトロニカのコラージュ、アンビエントのようなディレイ効果、様々な観点から組み上げられたポーランドのハニャ・ラニの『On Giacometi』は、ポスト・クラシカルの快作のひとつで、作者自身が語っている通り、制作者が置かれる環境により実際に生み出される作風は著しく変化することを端的に表しています。

 

アイスランドのピアニスト/作曲家Olafur Arnoldsのピアノ作品の再構築『some kind of piece-piano reworks』(2022)にも参加しているハニャ・ラニは、今作で視覚的な音響空間を生み出していて、アルバムの収録曲は細やかなピアノの演奏に加えて、空間にディレイを施したアンビエント効果、さらに作曲家の管弦楽法の巧みさが絶妙な合致を果たすことで、静謐に富み、そして内的な対話のような奥深い世界観がかなり綿密に組み上げられている。

 

 ハニャ・ラニは、具体的な場所こそは不明であるが、友人の所有するスイスの山間部にあるスタジオに滞在し、これらの映画のサウンドトラックとして最適なピアノとオーケストラにまつわる壮大なアルバムを製作することになった。そして実際に、この作品を聴くと分かる通り、 作曲家の紡ぎ出す音楽は、さながらこの山間部の冬の季節における変化、それと反対に山脈の向こう側から日が昇り、そして夕暮れをすぎて夜がふけていき、まさに風の音しか聴こえないようになる非常に孤独ではあるが潤沢な1日という短い時間を、ピアノ/オーケストラという観点から丹念にスケッチしているように思える。ジャコメッティと同じような内的に豊かな時間を過ごすことを選択し、芸術家が彫刻刀により造形のための材質をひとつひとつ繊細に削り取っていったのと同じように、ハニャ・ラニもまたピアノのノートを丹念に紡ぎ出していきます。制作者はその録音スタジオの外側の世界にある様々な自然現象、山岳に降り積もる雪や風の音や雨音、急に晴れ間がのぞく様子など、外側の天候の変化をくまなく鋭い感性により捉えることで、それらを内省的な音響空間として組み上げていくのである。

 

 サウンドトラックの大部分を占めるピアノ音楽は、抽象的なフレーズや、もしくはニルス・フラームのような深い哀感に富んだミニマル・ミュージック、それに加え、上記のアーノルズのような叙情的なフレーズが中心となっている。だが、そこには時にブラームスの音楽にあるロマン派に対する親和性のような感慨が滲んでいる。アルバムの序盤こそ、近年のポストクラシカル/モダンクラシカルの作曲家/演奏家の作風とそれほど大きな差異はないように思えるけれど、中盤のアンビエントに近い先鋭的な空間処理が実際のピアノ演奏の情感を際立たせているため、さらりと聴き通すことが出来ない部分もある。それはスイスの巨匠の創作の際の苦悩に寄り添うかのような深く悩ましい感慨が、さほど技巧を衒うことのないシンプルな演奏の中に見いだされる。これがサウンドトラックとして、どのような効果を発揮するのかまでは不透明ではあるが、単体の音楽作品として接した際、音響に奥行きと深みをもたらしている。映画音楽のサウンドトラックとして、その映像の効果を引き出すにとどまらず、その映像の中にあるテーマともいうべき内容を印象深くするための仕掛けが本作にはいくつか取り入れられているようにも思える。

 

 アルバムに収録された曲が進むたびに、まさに、作曲家が滞在した山間部の冬の間に景色が春に向けて少しずつ移ろい変わっていく様子を連想させる。山間部に滞在すると、見えるものが明らかに変化すると作者が語っているが、その言葉が音楽そのものに乗り移ったかのようでもある。実にシンプルなフレーズであろうとも、短い楽節のレンズを通して組み上げられていく音の連続性は、この作曲家が自らの目で見た景色、憂いある様子、喜ばしい様子、人智を越えた神秘的な様子、それら多彩な自然的な現象がアンビエンスとして緻密に処理され、それがピアノ演奏と合わせて刻々と移ろい変わっていくかのようである。言い換えれば、都会に住んでいると、誰も目にとめないような天候の細やかな変化、それがもたらす淡い抒情性について、印象派の音楽という形で緩やかに紡がれていきます。それはまた、美術家であるアルベルト・ジャコメッティが彼自身の目で物体に隠れた細いフォルムを発見したということに非常に近い意味合いが込められているように思える。そして、これとまったく同じように、隠された本質的な万物に潜んでいる美しさを、ハニャ・ラニはこのピアノとオーケストラ音楽を通じて発見していくのである。


 もしかすると、音楽も造形芸術とその本質は同じかもしれません。制作過程の始めこそ、自分の目に映る美しさの正体を見定めることは困難を極めるけれど、ひとつずつ作業を進めていくうち、そして作者自らの生み出すものをしっかりと見定めつつ、その核心にあるものを探し求めるうち、その作業に真摯なものが伴うのであれば、優れた芸術家はどうあろうとも美しさの本質に突きあたらずにはいられないのである。


 『On Giacometti』は、音楽作品として高水準に位置づけられており、美術家ジャコメッティのミニマルな生活とスタイリッシュさをモダン・クラシカルという形で見事に再現しています。特に音楽としては、アルバムのラストに注目しておきたいところでしょう。ベートーベンやブラームス、シューベルトのドイツ・ロマン派の作風の余韻を残した凛として高級感溢れるピアノ曲は、作品の終わりに近づけば近づくほど迫力を増していき、聞き手を圧倒するものがある。ハニア・ラニのピアノ曲は、映画音楽にありがちな大掛かりなまやかしにより驚かせるという手法ではなく、内的な静かな思索の深みと奥深さによって聞き手にじんわりとした感銘を与える。もちろん、映画から音楽を抜粋する形で発表されたアルバムであるため、必ずしも、トラックリストの順序通りに曲が制作されたわけではないと思われますが、「Anette」、「Alberto」において、アルベルト・ジャコメッティの彫刻における美学と同じように、それまで見出すことが叶わなかった本質的な美しさの真髄をハニャ・ラニもきっと見出したに違いない。

 

 

94/100

 

 

Weekend Featured Track #12「Anette」 

 

 

 

 

Hania Raniの新作アルバム『On Giacometti』は2月17日にGondawana Recordsより発売。

 

 

Hania Rani


 1990年、ポーランド音楽シーンの重要人物を多数輩出した北部のバルト海に面した湾都市グダンスク生まれ。

 

ピアニスト、作曲・編曲家。基本的にはクラシック畑の奏者だがそのキャパシティは広く、ポスト・クラシカルからチェンバー・ジャズ、アンビエント、フォーク他を幅広いヴィジョンで捉えている。


現在はワルシャワとベルリンをベースに活動。学生時代はショパン音楽アカデミーで学び、2015年に同世代のチェロ奏者ドブラヴァ・チョヘル(1991年生まれ)と共に、ポーランドのカリスマ的ロック・ミュージシャンであるグジェゴシュ・チェホフスキのメモリアル・フェスティヴァルに出演、チェホフスキのナンバーを斬新に解釈した演奏がもとで、2015年『ビャワ・フラガ(白い旗)』を発表し一躍注目を集める。


その後は2018年に女性ヴォーカリストのヨアンナ・ロンギチと組んだユニット、テンスクノによる『m』を発表、コンテンポラリーな要素を持つ室内楽サウンドでジャンルを越えたその才能がさらに開花する。2019年には、ゴーゴー・ペンギン他を輩出したUKマンチェスターの先鋭的レーベル"Gondwana Records"から初のソロ・アルバム『エーシャ(Esja)』を発表する。同年50ケ所以上のヨーロッパ・ツアーを重ねながらワールドワイドな知名度となりつつあり、2019年12月には東京で開催された「ザ・ピアノ・エラ2019」に出演し大反響を呼んだ。


スワヴェク・ヤスクウケのピアノソロにも通じる美しい音楽世界は官能的で繊細、リズミカルで独特の空気感を纏わせ、Z世代に近いミレニアル世代らしい新しさに満ちた活動を続けている。ピアニスト、コンポーザー、アレンジャーという枠も越えた「アーティスト」として認知されている。

 

©︎Chantal Anderson

Kevin Morbyは昨年、新しいアルバムをリリースしたが、時間を見つけて初の長編映画のスコアリングも行った。Haley Lu RichardsonとOwen Teagueが主演する『Montana Story』は、2021年に公開され、現在オンデマンドでストリーミング配信されています。ストリーミングはこちら

 

ケヴィン・モービーは、「いつか映画の音楽を担当するのが長年の夢でしたが、『モンタナ・ストーリー』は、そのためにこれ以上完璧な作品はありません」と声明で述べています。「映画では、広大な風景が辛抱強く、そして見事に捉えられています。すべてがうまくいったことを誇りに思う。私を起用してくれたスコット・マクギーヒー監督とデヴィッド・シーゲル監督に一生感謝します。」

 

ケヴィン・モービーは、サウンドトラック全体と合わせて「Like A Flower」のミュージック・ビデオも公開しています。下記よりご視聴ください。

 

The Weeknd

今月初め、カナダの次世代のソウル・シンガー、The Weekndは、ジェームズ・キャメロン監督の『アバター:ザ・ウェイ・オブ・ウォーター』のサウンドトラックに収録される新曲を予告していた。

 

同作品は、本日、12月16日(金)に公開され、ウィークエンドの新曲「Nothing Is Lost (You Give Me Strength)」も同時公開となっている。

 

この曲は、ザ・ウィークエンドが作曲し、Swedish House Mafiaと作曲家のSimon Franglenがプロデュースした。


 

Kali Malone


本日、デジタルストリーミングのみで公開された「Does Spring Hide Its Joy v2.3」は、同名の映像作品のために提供された。実験音楽作曲家、Kali Malone(カリ・マローン)による没入型オーディオ体験で、スティーブン・オマリーとルーシー・レイルトンがミュージシャンとして参加しています。

 

4日間にわたるマルチチャンネル・サウンド・インスタレーションで、バーケンヘッド・ドックにある水圧塔とエンジンハウスで、深いリスニング環境が提供される。

 

『Does Spring Hide Its Joy』は、2020年春のロックダウンの期間中に、ベルリン・ファンクハウス&モノムで制作・録音された。音楽は、7進数のジャスト・イントネーションとビートの干渉パターンに焦点を当てた、長尺の非線形デュレーション作曲の研究である。その長さは22分にも及び、これまでのこのアーティストと同様、ドローンの音響の可能性を追求している。 

 

この映像作品に登場する1868年にエンジニアのジェシー・ハートリーによって設計された中央水力塔とエンジンハウスは、イタリアのフィレンツェにあるルネッサンス期の洞窟、パラッツォ・ヴェッキオを基にしている。

 

 

 

第二次世界大戦中に爆撃され、19世紀の象徴的なグレードII指定建造物は、何十年も使用されないまま放置されてきました。この産業エネルギーの空っぽの部屋で、マローンのデュレイショナル・コンポジションは、多孔質のレンガの壁を通して呼吸し、蛇行し、ドックランドの水面に向かって反響しています。

 

映像監督のコメントは以下の通り。


  「私は、この作品に付随するフィルムを監督しました。バーケンヘッド・ドックの水圧塔とエンジンハウスの廃墟を撮影し、自然が静かにその権利を取り戻したこの工業地帯の震えるような肖像画を作りました。
私は、カメラの熱っぽい動きと彷徨によって、この荒涼とした空間に人間の存在を導入しようとした。建物を巨大な空の骨格として撮影するだけではなく、建物や崩壊した屋根、穴、床に散らばる苔や瓦礫、焼けた木片、そしてこの廃墟を彼らの王国としたすべての生き物たちと一緒に撮影しようとしたのである」


    この映像作品『Does Spring Hide Its Joy』は、Abandon Normal Devicesの依頼を受け、アーツカウンシル・イングランドの資金援助を得て、オイスター・フィルムズが配給している。助監督はスウェットマザーが担当。

 

映像作品の公開は未定となっている。


また、Kali Maloneは新作アルバム『Does Spring Hide Its Joy』のリリースを発表しました。この新作は来年の1月20日にリリースされる。

 

Ideologic Organは、Kali Maloneの新しいアルバムDoes Spring Hide Its Joyを、2時間のLP盤、3時間のCD盤、そして全てのデジタルフォーマットでお届けすることを嬉しく思います。


『Does Spring Hide Its Joy』は、作曲家Kali Maloneによる没入型の作品で、Stephen O'Malley(エレキギター)、Lucy Railton(チェロ)、そしてM Malone自身が調律したサイン波オシレーターを使用しています。この音楽は、ハーモニクスと非線形作曲の研究であり、イントネーションとビートの干渉パターンに焦点を当てたものです。パイプオルガンの調律、和声理論、長時間の作曲の経験が、この作品の出発点となっています。彼女のニュアンスに富んだミニマリズムは、驚くべき焦点の深さを展開し、リスナーの注意の中に瞑想的な空間を切り開くのです。

 
『Does Spring Hide Its Joy』は、マローンの絶賛されたレコード『The Sacrificial Code [Ideal Recordings, 2019] & Living Torch [Portraits GRM, 2022]』に続く作品である。彼女のコラボレーション・アプローチは前作から拡大し、ミュージシャンのスティーヴン・オマリー&ルーシー・レイルトンを作品の制作と発展に密接に巻き込んでいる。音楽はマローンのサウンドパレットでありながら、彼女はオマリー&レイルトンのユニークなスタイルとテクニックのために特別に作曲し、音楽全体に主観的解釈と非階層的な動きのためのフレームワークを提示します。


Does Spring Hide Its Joyは、チェロ、サイン波、エレクトリックギターの間でゆっくりと進化するハーモニーと音色を追った、長さを変えられる持続的な体験です。リスナーとしては、これらの分岐点の間の移行を特定することは困難である。


エレキギターの飽和した音色とチェロの豊かな周期性が混ざり合い、正確なサイン波に対して倍音のフィードバックが干渉パターンを描き、楽器編成や演奏者のアイデンティティは不明瞭でありながら統一されている。エレキギターの飽和するような音色とチェロの豊かな周期性が混ざり合い、正確なサイン波に対して倍音のフィードバックが干渉し合い、緩やかながらも常に起こり続けるハーモニーの変化は、聴き手の静と動の感覚を挑発する。音楽を把握した瞬間、わずかな視点の変化により、新たなハーモニーの体験へと注意が導かれる。


『Does Spring Hide Its Joy』は、2020年の3月から5月にかけて制作されました。パンデミックのこの不穏な時期に、マローンはベルリンで、新しい作曲方法を考えるための多くの時間と概念的空間を手に入れた。

 

現地に残っていた数名のインターン生とともに、MaloneはBerlin Funkhaus & MONOMに招かれ、誰もいないコンサートホール内で新しい音楽を開発し、レコーディングすることになりました。この機会に、彼女は親しい友人であり、コラボレーターでもあるルーシー・レイルトン、スティーブン・オマリーとともに小さなアンサンブルを結成し、それらの様々な音響空間の中で、これらの新しい構造的なアイデアを探求することにしました。そして、Does Spring Hide Its Joyの基礎が築かれたのです。



カリ自身の言葉を借りれば 「世界中のほとんどの人と同じように、私の時間に対する認識は、2020年の春の大流行の閉塞感の中で、大きな変容を遂げました。慣れ親しんだ人生の節目もなく、日や月が流れ、本能的に混ざり合い、終わりが見えなかった。時間が止まっているのは、環境の微妙な変化により、時間が経過したことが示唆されるときである。記憶は不連続に曖昧になり、現実の布は劣化し、予期せぬ親族関係が生まれては消え、その間、季節は移り変わり、失ったものはないまま進んでいく。この音楽を何時間もかけて演奏することは、数え切れないほどの人生の転機を消化し、一緒に時間を過ごすための深い方法だった」



『Does Spring Hide Its Joy』は、その後、ヨーロッパの多くの舞台で60分と90分のライブ演奏が行われた。チューリッヒのSchauspielhaus、ブリュッセルのBozar、ミュンヘンのHaus Der Kunst、オスロのMunch Museumなど、ヨーロッパの多くの舞台で60分と90分のライブ公演が行われました。

 

今後、クラクフのUnsound Festival、バルセロナのMira Festival、ヴェネツィア・ビエンナーレ、ロンドンのサウスバンク・センターのパーセルルームなどでのコンサートが予定されている。



ライブコンサートだけでなく、Funkhausで録音された『Does Spring Hide Its Joy』は、サイトスペシフィックなサウンドインスタレーションとして並行して展開されている。さらにマローンは、ビデオアーティストのニカ・ミラノを招き、楽譜を解釈し、第4の奏者として伴奏するアナログビデオ作品をカスタム制作し、作曲の音響原理からインスピレーションを得た視覚的雰囲気を作り上げました。ミラノの作品から8つの連続したビデオスチールがアルバムアートワークに採用されています。

 

 

Kali Malone 『Does Spring Hide Its Joy』

 

 

Label: Ideologic Organ

Release: 2023年1月20日

 

 

 Tracklist:

 

1.Does Spring Hide Its Joy v1.1

2.Does Spring Hide Its Joy v1.2

3.Does Spring Hide Its Joy v1.3

4.Does Spring Hide Its Joy v2.1

5.Does Spring Hide Its Joy v2.2

6.Does Spring Hide Its Joy v2.3

7.Does Spring Hide Its Joy v1

8.Does Spring Hide Its Joy v2

9.Does Spring Hide Its Joy v3

 

James Blake


 UKのソングライター、James Blakeは、Neal Brrenan(ニール・ブレナン、コメディアン、作家)の最近のNetflixの番組『Blocks』に「When You Put It Like That」というタイトルの新曲を提供したようだ。


先週、ニール・ブレナンの新作ネットフリックス・スペシャル『ブロック』がストリーミング・プラットフォームに登場したが、昨日(11月14日)、ジェイムス・ブレイクはインスタグラムで『ホエン・ユー・プット・イット・ライク・ザット』というタイトルの新曲を提供したと明かし、そのトラックのクリップもシェアしている。


ジェイムス・ブレイクは「ニール・ブレナンの新しいネットフリックス特番『ブロックス』という陽気で、深く個人的な、観察力に富んだ傑作の音楽を作ることができて光栄だ!」と綴っている。


「最初、ニールがこの作品の初期の脚本を送ってきて、それに付随する音楽を書いてくれないか、と言ったとき、私はそれにとても感動して、そのままスタジオに入り、Dom Makerと@joshinfilmが送ってきたインストゥルメンタルを引っ張り出し、1時間以内に「Say What You Will」を書き、録音を行ったんだ」とJames Blakeは続けた。「そして、ニールが僕の最高の曲にインスピレーションを与えてくれたことにすぐに気づいたから、それをアルバム用に取っておいて、彼に "まだ何もできていないけど、これからも頑張るよ "って手紙を書いたんだ」


「今思えば、あの曲は今回のアルバムには使えないということで意見が一致しましたが、あの曲にインスピレーションを与え、Blocksに合うものを一緒に探してくれたNealに感謝しています」とJames Blakeは付け加えました。「最終的に出来上がった曲は "when you put it like that "という曲です。スワイプしてクリップを聴いてみてね!」

 



8月にJIDはアルバム『The Forever Story』をリリースし、ブレイクはそのプロデューサーとして名を連ねています。

  

©︎Hisham Bharoocha


Animal Collectiveは、A24が制作する映画「The Inspection」のサウンドトラックの詳細を発表しました。

 

この映画には、バンドのオリジナル曲のほか、Indigo de Souzaが参加しています。本日、彼らは「Crucible」という曲でサウンドトラックの最初のプレビューを公開しました。以下、ご覧ください。




The Inspection」は、脚本家兼監督のエレガンス・ブラットンの人生をベースに、「家族からも機会からも排除された若い黒人ゲイ男性、エリス・フレンチ」を描いています(プレスリリースによる)。「エリスは自活のために海兵隊に入隊しますが、新兵訓練所で、彼の行く手を阻むのは物理的な障害だけではありません」


"Animal CollectiveのAvey Tareは声明の中で、「私は私たちに、強いけれども弱さを見せるという感覚を呼び起こさせたかったのです」と述べています。"コミュニティや愛する人に自分の背中を押してほしい、支えてほしいと願う気持ちと、それが叶うという期待。"




"私たちは、作曲家であるAnimal Collectiveの音楽にとてもインスパイアされました。"とBrattonはコメントしています。

 

「私たちは、フランス人が考える現実と実際に起こっていることの境界線を曖昧にするために、適切なリズムを作りたかったのです。そして、そのようなファンタジーのシークエンスは、フレンチの内面を進化させるものとして機能させることができました。要するに、単調なブートキャンプの狂気と、エリス・フレンチが経験する大きな変化を重ね合わせた感じを作りたかったのです。Animal Collectiveは、感情に応じて時間を縮めたり広げたりするための完璧な背景を提供してくれます」

 

Trailer



 

 

 「Crucible」

 




インスペクション』サウンドトラックは11月18日に発売される。Animal Collectiveは今年初めに最新アルバム『Time Skiffs』をリリースしている。

 



Animal Collective  『The Inspection』

 


Tracklist:


1. Shelter to Inez

2. Birth Certificate

3. Bus Ride

4. Laws Beat

5. Seeing Rosales

6. Buzz Cuts

7. Reveille

8. Caterpillars

9. Phase 1

10. Shower Fantasy (Movie Edit)

11. Shower Fantasy (Original Mix)

12. Shower Anger

13. Thanksgiving

14. Stress Position

15. Drills

16. Phase 2

17. Drowning Man

18. Flashlights

19. Human Target

20. Cover Up

21. Phone Call

22. Phase 3

23. War Paint

24. Crucible

25. Fight Pit

26. Disappear French

27. Oohrah

28. Sixteen With Nobody

29. Reflection

30. Wish I Knew You [feat. Indigo De Souza]

 

 

Listen/Stream:


https://a24music.lnk.to/crucible





 

Let's Eat Grandma

10/28よりNetflixに上陸した映像作品『The Bastard Son & The Devil Himself』は、Sally Greenによる『Half Bad』3部作をベースにしたシリーズで、Let's Eat Grandmaがスコアを担当している。サウンドトラックが先週に公開されていますので、改めてチェックしてみて下さい。アルバムの全曲ストリーミングはこちらから。


このオリジナルスコアについて、レッツ・イート・グランマは、「『The Bastard Son & The Devil Himself』のOSTに取り組むことは、確かにとても有益なプロセスであり、私たちの作曲方法や音楽に対する考え方を形成し広げてくれる素晴らしい新しい経験となりました。私たちは常に音楽的に前進する方法を探していますが、他の多くの人たちがさまざまな方法で創造的に働いている大きなプロジェクトの一員であることは、とても貴重で刺激的なことだと思います」


このサウンドトラックは、Let's Eat Grandmaにとって、9月の『Give Me A Reason』以来の作品となる。


『The Bastard Son & The Devil Himself』には、魔女マーキュリー役のロイシン・マーフィーをはじめ、ジェイ・リカーゴ、ナディア・パークス、エミリアン・ヴェケマンスなどが出演しています。


Let's Eat Grandmaの『The Bastard Son & The Devil Himself』のスコアは、Netflixで配信中のシリーズと同時にTransgressiveから発売中です。

 

 

 

Flying Lotus


フライング・ロータスが『Flying Lotus Presents: Music From The Hit Game Show Ozzy's Dungeon』は、彼が自ら監督した映画「V/H/S/99」のセグメントで使用された7曲のサウンドトラックです。

 

『V/H/S/99』は、今年9月にカナダのトロント国際映画祭で初公開されました。10月20日、Flying Lotus、Johannes Roberts、Vanessa & Joseph Winter、Maggie Levin、Tyler MacIntyreが監督したセグメントが収録された映画が、Flying LotusのセグメントOzzy's Dungeonの7曲のサウンドトラックと共に正式にリリースされました。


フライング・ロータスは、ゾーイ・クーパーと共作した彼のセグメント「Ozzy's Dungeon」の監督とスコアを作曲し、本作は2017年の『Kuso』に続くフライング・ロータスのメジャー監督作となる。


『Flying Lotus Presents:Music From The Hit Game Show Ozzy's Dungeon』は、6月のデヴィン・トレーシーとのダブル・シングル「The Room」/「You Don't Know」以来のフライング・ロータスの新曲となる。


今年8月には、フライング・ロータスのSFスリラー長編映画「Ash」が、ジョセフ・ゴードン=レヴィットとテッサ・トンプソンを主演に迎えて公開されることが発表されました。

 

 

 Flying Lotus  『Flying Lotus Presents: Music From The Hit Game Show Ozzy's Dungeon』

 

 

 

Lawrence English

 

 UKのサウンド・プロデューサーLawrence Englishがドキュメンタリー作家アダム・カーティスのBBC最新シリーズ「Russia 1985-1999: TraumaZone」のサウンドトラックを制作しました。


「Russia 1985-1999: TraumaZone」は、ソビエト共産主義から民主主義への移行を7つのエピソードで描いている。10月13日、BBCで公開され、今月末にはサウンドトラックがリリースされる。

 

ローレンス・イングリッシュは、「アダム・カーティスの映像編集、サウンドデザイン、構造へのアプローチ方法は私が大いに参考にしたものです」と述べています。「私が最初に見た作品の草稿はまだ最終的なものになっておらず、つい、最近、このシリーズのタイトルを知ったのです」


この3年間、『Field Recordings From The Zone』やMerzbow(秋田昌美)とのデュエット作品『Eternal Stalker』などのアルバムで直接的に捉えた「ゾーン」に夢中になっていたので、これは強く私の心に響きました。

 

「Aproach Ⅲ」は言うまでもなく、デフォルトで非常に関係性の高い領域に位置するものと思われます。

 


 
 
Room40は、2022年10月28日にBBCドキュメンタリードラマのオリジナルスコア「Themes And Atmospheres For Adam Curtis's Russia 1985-1999 TraumaZone」をリリースします。また、Lowrence Englishは、Merzbowとの共作アルバム「Eternal Stalker」で前衛的なノイズ・ミュージックの新境地を開拓している。

 


WMEは、英国の作曲家マックス・リヒターと全面的に契約を締結した。リヒターはこれまで、ソロアルバムや映画音楽など多岐にわたる活躍をしてきたが、映画やテレビの作曲分野でのみWMEに所属していた。


リヒターは、史上最もストリーミングされた作曲家であり、キャリアのストリーミングは30億を超えます。彼の音楽は、バレエ、劇場公演、コンサートホールでのパフォーマンス、ファッションショーのほか、映画、テレビシリーズ、アートインスタレーションなどでも使用されています。


マルチプラチナセラーのスタジオアルバム『Sleep』(2015年)は、万里の長城などの場所での宿泊ライブ、ドキュメンタリー、SLEEPアプリなどで世界的に注目を集め続けている。


リヒターは次のように述べています。"WMEのルーシーと彼女の素晴らしいチームと一緒に、私の音楽を世界中の新しいオーディエンスに届け続けることに興奮しています"


Studio Richter Mahrのマネージングディレクターであり、RichterのマネージャーであるDanielle Wadeは、次のように続けます。「今年初めにStudio Richter Mahrを立ち上げたので、これはWMEとの既存の関係を深めるための完璧な機会だと感じています。アーティストとしても作曲家としても、マックスは常に境界と期待を破り続けています。ですから、私たちがこの新しい章に入り、将来に向けて持っている野心的な計画を実行することは、大きな興奮とともにあります」

©︎ Sophie Gransard / Emma Wondra 

 

John Carpenterと、彼の音楽仲間であるCody CarpenterとDaniel Daviesは、今年、10月14日にSacred Bonesからリリースされる映画『Halloween Ends』のサウンドトラックから新曲「The Junk Yard」を公開しました。

 

また、Carpenterは、Boy Harsherの "Burn It Down "のリワークも公開しており、この曲は2人が10月14日にリリースする同名のEPに収録される予定です。両曲の試聴は以下からどうぞ。


 

「The Junk Yard」 

 

 

 

「Burn It Down」

  

 


昨年10月、カーペンターは映画『ハロウィン・キルズ』のサウンドトラックを発表。彼の最新のインストゥルメンタル・アルバム『Lost Themes III: Alive After Death』は、今年初めにSacred Bonesからリリースされた。


 

©︎Zamer Velez

ギブオンが新曲「Time」を公開した。この曲は、デヴィッド・O・ラッセル監督の映画『アムステルダム』のサウンドト ラックに収録されている。

 

この曲は、Drakeとグラミー賞受賞プロデューサーJahaan Sweet、映画のスコアを作曲したDaniel Pembertonが共同で書き下ろした。ペンバートンは「Time」のプロデュースも担当しています。試聴は以下からどうぞ。


ギブオンのデビューアルバム『Give or Take』は6月に発売された。映画『アムステルダム』は10月公開予定です。


 

坂本龍一が、Netflixで放送中のアニメシリーズ『Exception』のサウンドトラックを新たに手掛けている。このアニメーションのサウンドトラックは10月14日にMilan Recordsから発売される。


先行公開されたサントラの楽曲「Oxygen」は海外のみで試聴可能となってますが、映像の予告編が公開されています。こちらは日本国内でもご視聴することが出来ます。下記よりご覧下さい。

 

 


『Exception』は、人類が地球から追い出された未来を舞台としたSFホラー。テラフォーミングに適した惑星を探す宇宙ミッションのクルーを描く。しかし、このクルーは普通の宇宙船のクルーではなく、3Dプリントされたクルーであり、そのうちの一人は奇形であることが分かっている。


脚本は乙一こと安達寛高、監督は佐藤雄三が担当。このアニメは、「何が我々を人間たらしめるのか」を問うものとなる。オリジナルスコアについて、坂本龍一は次のようにコメントしています。

 

「メインテーマは、『スター・ウォーズ』以来、SFの定番となったシンフォニックな曲にしたかったんです。サウンドトラック全体としては、ダークなアンビエントを意識して、シーンごとに区切るのではなく、ひとつの音楽として感じられるようにしました」「とはいえ、戦闘シーンではある程度、激しい音も入れています。全体的にとても気に入ったサウンドトラックを作ることができました」

 

また、現在、坂本龍一は、新潮社の文芸誌「新潮」において、大好評の連載「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」を執筆中。今月発売された最新号で、新しい連載を公開したばかりです。