今週金曜日にマタドールからリリースされる『The Scholars』は、カー・シート・ヘッドレスト(Car Seat Headrest)の5年ぶりとなるニューアルバムである。

 

本作は、荘厳なグラムロックからザ・フーに匹敵するロック・オペラの大作まで、シームレスに展開する広大な楽曲群である。アルバムの三作目のシングルで、陽気なロックンロール・ツアー日記 「The Catastrophe (Good Luck With That Man) 」を下記より聴くことができる。



バンドは、キルビー・ブロック・パーティーとガヴァナーズ・ボールでのフェスティバル公演に加え、シカゴ、ロサンゼルス、フィラデルフィアでの公演を予定。また、5月1日に開催されるBandcamp Liveでのスニーク・プレビュー・リスニング・パーティーにも参加する。


Car Seat Headrestの最新シングル "The Catastrophe (Good Luck With That, Man) "は、他の曲に比べると、5分半という簡潔な曲だ。 80年代のUSロックをモチーフにしたハードロッキンな曲だが、サーフロックが登場したり、あるいはビーチ・ボーイズ風のコーラスも登場する。

 

ボーカリスト、ウィル・トレドの歌詞には鋭い暗喩が含まれている。ツアーが "アメリカの町の骨、乾いた骨 "に出会っているようなもので、"親の要求に応えられなかったために血を流す理由を知らない子供たち "の置き土産であることを綴っている。”一番狭いグリーンルームで立ち往生/メインルームを通るしか出口はない/背中のシャツと4つの切れた電話、タバコの箱で1時間つぶす”


「The Catastrophe (Good Luck With That Man) 」




【先行情報】


 

アイルランドのミュージシャン、ジョエル・ジョンストンのソロプロジェクト、Far Caspianは、リードシングル「First Day」のリリースと同時に、7月下旬に発売予定のニューアルバム『Autofiction』を発表した。


2023年のアルバム『The Last Remaining Light』以来の新作である。前作アルバムの発表後、ミュージシャンはアメリカツアーを開催し、ベースメントでありながら好評を得た。


「''First Day "は、ある朝、パートナーを新しい職場に送り出した後に書いた曲だ。 彼女は過渡期で、何もかもが大変で生々しく感じていた。 同じような時期に、私はクローン病で新しい薬を飲み始めていて、8週間ごとに病院に行って点滴を受けなければならなかった。 初めて行ったときは、パートナーが運転してくれた。 この曲は、先のことがどんなに不安でも、お互いの背中と最善の利益を一番に考えていることを思い出させるために書いた」


『Autofiction』の歌詞は、精神的な重荷、自己の許し、回復、支えとなり元気づけてくれるパートナーシップへの感謝に深く切り込んでいる。ジョンストンにとってこれまでで最も直接的で、日記的で、文字通りのものだ。 そのため、この作品は彼にとって最も傷つきやすい作品でもある。


 「メッセージを伝えたかった。 私の曲について、"何を言っているのかわからない "と言われることがある。 僕はもう少し聴かせるレコードを作りたかった。 ボーカルもいつもより大きくしてみた」


「First Day」



Far Caspian 『Autofiction』

Label: Tiny Library

Release: 2025年4月29日


Tracklist:


1.Ditch

2.First Day

3.The Sound of Changing Place

4.Window

5.Lough

6.Here Is Now

7.A Drawing Of The Sun

8.An Outstretched Hand

9.Autofiction

10.Whim

11.End


Pre-save:  https://artist.tinylibraryrecords.com/farcaspian

1990年代を象徴するUKオルタナティヴロックバンド、Stereolabは、Metal Filmからリリース予定のアルバム『Instant Holograms』からセカンドシングル「Melodie is a Wound」を発表した。 


「Melodie is a Wound」は、8分近いフル・バージョンと4分半のラジオ・エディットの2種類がある。 

 

フルバージョンは、アレックス・ラムジーによるドラムフィルで疾走し、フェイクアウトのエンディングでは、曲は陽光に満ちたアコースティックなインストゥルメンタルへと変化し、後には静的なシンセサイザーのサイケデリックなトラックへと変貌する。 

 

レティシア・サディエの歌詞は政治色が強く、報道の自由の欠如を批判しているようだ。「吹っ飛んだ良心の自由/何らかの形の正義は可能なのか、それとも/長い間、真実を知る国民の権利/権力者によって口封じされ、口封じされている」と彼女は歌う。

 

 

 「Melodie is a Wound」

 MOULD 『Almost Feels Like Purpose』EP 

 

Label: 5dB Records

Release: 2025年4月24日



Review

 

 

ブリストル/ロンドンに跨って活動するMOULD。 2024年デビューEPをリリースし、BBC Radio 6でオンエアされ、DORKでも特集が組まれた。イギリスの有望なパンクロックトリオである。『Almost Feels Like Purpose』EPは間違いなく先週のベストアルバムの一つに挙げられる。パンクロックの魅力は完成度だけではない。時には少しの欠点も魅力になり得ることも教えてくれる。

 

モールドのサウンドは、Wireのようなニューウェイブを絡めたイギリスのポストパンク、エモ、ハードコア、Fugaziのようなポストロック、グランジ、そして時々、最初期のグリーン・デイのようなメロディックパンクの雰囲気を持つ。デビューEPでは、まだ定かではなかった彼らのサウンドは『Almost Feels Like Purpose』において、より鮮明さを増したと言えるかもしれない。侮れないものがある。

 

MOULDは、特定の決められたサウンドを目指しているわけではないという。ただもちろん、思いつきのみでパンクをやっているというわけでもない。モールドの曲は緻密な構成を持つ場合があり、バンドアンサンブルとして玄人を唸らせる。こだわり抜いた職人気質のギターサウンド、ニューウェイヴに依拠したしなやかなベースライン、そしてメチャクチャ打数が多いが、バンドのラウドなサウンドをタイトにまとめ上げるドラム等、聞き所は満載だ。これらはジェイムスが言う通り、このバンドよりも前にやってきたことの成果が巧緻なサウンドにあらわれている。

 

 二作目のEPは、昨年の夏に彼らのホームタウンのブリストルでレコーディングされた。同時に全般的なサウンドとして音圧のレベルが上がっている。いわば、リスナーの元にダイナミックなモールドのサウンドが届いた。デビューEPのサウンドと地続きにあり、同時にファーストEPでは見られなかった新しいサウンドの萌芽もある。



「Oh〜!」というサッカースタジアムのチャントのように陽気に始まる「FRANCES」では、従来のStiff Little Fingersのようなガレージロックサウンドのようなブギーで粘り気のあるギターリフを00年代以降のメロディック・パンクのイディオムと結びつけ、軽快なサウンドを作り出している。このバンドの持ち味のシャウトやドライブ感のあるパンクロックが所狭しと散りばめられているが、一方で、楽曲の展開の面で工夫が凝らされている。つまり、変拍子、静と動、緩急を生かしたサウンドが、性急で疾走感のあるパンクサウンドを巧みに引き立てているのだ。

 

MOULDのサウンドは「落ち着きのない人のための音楽」と言われることがあるとジェイムスさんから教えていただいたが、それはジェットコースターのようにくるくると変化する曲調に要因がありそう。そして、実際的に、これはMOULDの現在の大きな武器や長所、そして特性でもある。「TEMPS」は、Wireのようなニューウェイブ系のパンク・ロックサウンドを印象付け、そしてこのトリオらしいシンガロングを誘うキャッチーで温和なメロディーで占められている。


さらに、このバンドの持ち味であるガレージロック風の硬質なギターリフを中心とし、パブでの馬鹿騒ぎをイメージづけるような、ノリの良いパンクロックソングが繰り広げられる。時々、ラウドとサイレンスを巧みに行き来しながら緩急のある構成力を活かし、全般的には、最初期のグリーン・デイのように、ロックンロールの要素が心地良いサウンドを作り上げていく。

 

また、MOULDのサウンドはバイクで疾走するようなスピード感が特徴である。これらのデビューソング「Birdsong」と地続きにあるのが「Snails」である。ガレージ・ロックの系譜にある骨太なギターラインで始まるこの曲は、バクパイプの残響を思わせるギターの減退の後にボーカルが加わると、驚くほどイメージが様変わりし、メロディックパンクの次世代のサウンドの印象に縁取られる。いわばモールドらしいコミカルなパンクサウンドが顕わになるのである。


「Snails」は、ドラムの演奏が巧みで、爆発的なリズムやビートを統制するスネア捌きに注目である。さらに、曲調がくるくると変化していき、曲の中盤から後半にかけて、シンガロングなボーカルのフレーズが強い印象を放つ。ロックソングのメロディー性に彼らは重点を置いている。特に、この曲のサビは素晴らしく、モールドの爽快感のあるエモーションが生かされている。

 

 

また、モールドは単なるパンクバンドではなく、音楽性が幅広く、そして何より器用である。さらに、柔軟性も持っている。単一のジャンルにこだわらない感じが、彼らのクロスオーバー性を作り出し、そして多角的で奥行きのあるロックサウンドを作り上げていく。 パンクロックソングの中にあるロックバラードの性質、言わば、泣きの要素が続く「Wheeze」に示唆されている。


この曲では、ゆったりとしたテンポが特徴のオルタナティヴロックソングである。同じようなフレーズが続くのに過ぎないのだけれど、実験的なホーンが取り入れられたりと、アメリカン・フットボールのエモを巧みに吸収しながら、モールドらしいサウンドとして抽出している。


さらに、曲の中盤では、ビートルズ・ライクのサウンドも登場したりと、音楽的な魅力が満載である。そしてモールドらしく熱狂性が曲の後半で炸裂し、ピクシーズの「RIver Ehphrates」のようなチョーキングでトーンが変調するサウンドや、チェンバーポップ風のチェンバロをあしらったアレンジメントが登場したりと、オルタナティヴロック・バンドとしての表情も伺わせる。

 

EPの後半では、ハードコアやヘヴィーなロックサウンドに傾倒する。しかし、曲の展開の意外性、先の読めなさというのが今作を楽しむ際の最大のポイントとなるだろう。


ハードなエッジを持つポストハードコア・サウンドで始まる「Brace」であるが、その後はコミカルな風味を持つキャッチーなポップパンクソングに変遷していく。このあたりの''変わり身の早さ''が、モールドの最大の魅力といえるか。この曲は少しずつギアチェンジをしていくように、三段階の変化をし、最初はポスト・ハードコア、そして、ポップ・パンク、ジョン・レノン風のロックソング、あるいはビートルズのホワイトアルバムのようなサウンドへと移ろい変わる。

 

曲の後半では、Bad Religionのようなエッジの効いたパンクロックソングを聴ける。この曲で、近年、ハードになりがちなパンクに安らぎや癒しを彼らはもたらそうとしている。このEPはモールドの多趣味さや音楽的な幅広い興味が満載である。何度聴いても飽きさせないものがある。

 

アンプリフターから放たれる強烈なフィードバックノイズをイントロに配した「Chunks」は、昨年の「Outside Session」でも披露された。Fugaziのような実験的なポスト・ハードコアサウンドだが、その途中に若さの奔流が存在する。


ハイハットのマシンガンのような連射、グランジのように低く唸るベースライン、タムのドラムのヘヴィーな響き、マスロックやトゥインクルエモ(ポストエモ: メロディックパンクとエモの複合体)の性急なタッピングギター、そして、結成当初はハードコアパンクを前面に押し出していたBeastie Boys(ビースティボーイズ)のように、ラップからパンクに至るまで変幻自在なジャンルを織り込んだボーカルスタイルが織り交ぜられ、モールドの持つ”宇宙的な広大さ”が露わとなる。


そして彼らは、サウンドをほとんど限定することなく、思いつくがままに、刺激的で緻密なパンク/ロックサウンドを展開させる。


アークティック・モンキーズの最初期のスポークワードやラップの影響下にあるロックサウンドを垣間見せたかと思えば、曲の中盤から、デスメタル/グラインドコア風のシャウトの唸り、そして、疾走感のある痛快なパンクロックサウンドへと移ろい変わっていく。曲の展開はまるで怒涛の嵐さながら。これぞまさしく、若いバンドだけに与えられた特権のようなものであろう。

 

デビューEPは曲の寄せ集めのような初々しさがあったが、二作目のEP『Almost Feels Like Purpose』ではいよいよモールドらしさ、音楽の流れのようなものが出てきた。ライヴレコーディングのような迫力、そして若いバンドらしい鮮烈さに満ち溢れている。聞いたところによると、まだまだ持ち曲はたくさんあるということ。今後もモールドのアクティビティに注目だ。

 

 

 

85/100 

 

 

Mouldの特集記事:

MOULD  Bristol up-and-comer explains about making debut EP  -ブリストルの新進気鋭  デビューEPの制作について解き明かす- 


NZを拠点とするThe BethsがANTI- Recordsと契約を発表した。ベスはライブアクトとしては世界的な好評価を得ているが、エピタフの派生レーベルとの契約により注目を集めそう。 本日の発表は、新曲「Metal」と同時に発表された。 ストークスの美麗なボーカルのメロディーを生かした、じっくり聞かせるジャグリーなポップロック。このシングルのミュージックビデオを下記よりチェック。


”Metal”を書いている間、ストークスは過酷なツアー、精神的な闘い、いくつかの診断の影響を処理していた。 

 

「ある意味、『Metal』は生きていること、そして人間の身体に存在していることについての歌なんだ。 ここ数年、私は "健康の旅 "とでも呼べるような旅をしていました。 ここ数年、自分の身体は、これまでうまく私を運んできた乗り物のようなもので、自分ではほとんどコントロールできないものだと感じていた」


「人生というルーブ・ゴールドバーグ・マシンのすべてのステップは、ありそうでなかったものだ。 私には、自分を取り巻く世界について、そして自分自身について学ぶことへの飢えと好奇心がある。 そして、自分の体が壊れた機械のように感じられることがあるにもかかわらず、そのような機械の複雑さに驚嘆する」


「私はその知識を片手に持ちながら、もう片方の手で自分の姿を指さして、"お前はクソだ "と言うこともできる。そして、 醜いとも言える。 あるいは "無価値"。 どんな些細なことでも成し遂げられるかもしれないという提案には、確実に『ノー』と答えることができる。 そして、これらは、この曲で言及されている "短い言葉 "のバリエーションでもあるんだ」


音楽的には、この曲はドライヴ感があり、ジャングリーだ。そしてベスらしい爽やかなロックソングだ。

 

 「オリジナルのデモでは、アコースティックな打ち込みのパターンに推進力があった。トリスタンのドラムは、列車が線路を突き進むような感覚にぴったり合っている。 ジョナサンはバーンズの12弦ギターを思う存分きらびやかに弾くことができたし、ベンはいつものように低音域を抑えることができない。 最終的には、エンジンが動いているときの熱狂的な複雑さを体現するようなアレンジになったと思う。 いろいろなことが起こっているようで、起こっていないんだ」

 

The Bethsは、ヴォーカリストのエリザベス・ストークス、ギタリストのジョナサン・ピアース、ベーシストのベンジャミン・シンクレア、ドラマーのトリスタン・デックにより構成される。


「Metal」

 

©Molly Daniel

ロンドンのシンガーソングライター、Nilufer Yanya(ニルファー・ヤンヤ)が新曲「Cold Heart」をニンジャ・チューンから発表した。このシンガー・ソングライターは、前作『My Method Actor』のツアー後、クリエイティブ・パートナーのウィルマ・アーチャーと再訪した曲集の一部としてこの曲を書いた。従来のネオソウルとエレクトロニックの融合を聴くことが出来る。

 

この曲は、ヤンヤの魅惑的なヴォーカルと、切ないギター・ラインとブーミーなドラムの組み合わせで、オリジナルのデモからどのように成長したかを聴くことができる。

 

「この曲は、私が想像していたものとはかなり違うものになった。最初のメロディーはとても広々としていて、何でも起こりうる余地があるように感じた。一種の実験のような感じだった」



このニューシングルは、ニルファー・ヤーニャの最新アルバム『マイ・メソッド・アクター』に続くもので、ピッチフォーク誌のベスト・ニュー・ミュージック・スタンプやニューヨーク・タイムズ誌の 「アイデンティティ、欲望、そして心痛の残響に関するメロディアスで豊かな瞑想」と評されるなど、圧倒的な批評家の称賛を浴びた。


このアルバムは、ヤンヤが自分の世界とそれが変化していく様を理解し、20代後半に突入し、確立されたミュージシャンであることの意味と格闘する上で、思いがけない形で開花した。

 

 

「Cold Heart」


2025年のロックの殿堂入りが明らかになった。 シンディ・ローパー、アウトキャスト、サウンドガーデン、ホワイト・ストライプスが、殿堂入りのミュージシャンの仲間入りを果たした。


その他の殿堂入り者には、ジョー・コッカー、バッド・カンパニー、チャビー・チェッカーが加わった。 発表は、日曜日の『アメリカン・アイドル』の "ロックの殿堂ナイト "エピソードの中で行われ、司会のライアン・シークレストがテーマに沿ったエピソードの中で殿堂入り者を発表した。


ロックンロールの進化に直接的な影響を与えたり、このジャンルを代表するアーティストにインスピレーションを与えたりしたアーティストを称える「Musical Influence Award」の受賞者には、Salt-N-Pepaとウォーレン・ゼヴォンが選出された。


ミュージカル・エクセレンス賞は、デルフォニックス、スタイリスティックス、スピナーズとの仕事で知られるフィリーソウルの伝説的プロデューサー、トム・ベル、レッキング・クルーのメンバーでビーチ・ボーイズの「グッド・ヴァイブレーション」やナンシー・シナトラの「These Boots Are Made for Walkin'」に参加したセッション・ミュージシャン、キャロル・ケイ、ローリング・ストーンズ、ザ・フー、その他のブリティッシュ・インヴェイジョンとの仕事で知られるスタジオ・キーボーディスト、ニッキー・ホプキンスに贈られる。 ドリームワークス・レコードの共同設立者であるレニー・ワロンカーがアーメット・エルテガン賞を受賞する。


2025年ロックの殿堂入り式典は、11月8日にロサンゼルスのピーコック・シアターからDisney+を通じて生中継される。 翌日にはHuluでストリーミング配信され、後日ABCで再放送される。


2025年ロックの殿堂入り:


Bad Company

Thom Bell

Chubby Checker

Joe Cocker

Nicky Hopkins

Carol Kaye 

Cyndi Lauper 

Outkast 

Salt-N-Pepa 

Soundgarden 

Lenny Waronker 

The White Stripes 

Warren Devon

 

トロージャン・レコード(Trojan Records)は、1968年にイギリスに設立されたジャマイカ専門のレーベルである。

 

デューク・レイド、リー・ゴプサル、クリス・ブラックウェルが設立。スカ、ロック・ステディ、レゲエ、ダブ専門のレーベルで、ジャマイカの本格的なミュージシャンを対外的に紹介した。商業的にも成功を収めました。

 

その中には、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ、リー・スクラッチ・ペリーもいた。詳細は他のサイトの説明に譲りますが、70年代以降のジャマイカ音楽の普及は、このレーベルの功績が大きい。

 

レーベルがジャンルを作り出すことは少ないが、トロージャンはジャマイカ音楽に専心し、レゲエだけではなく、その音楽に内包されるアメリカのブラックミュージックーーアメリカンソウル、コーラス・グループ、ジェイムス・ブラウン風のファンク、モータウンサウンドーーをジャマイカ音楽に乗せて紹介しました。その独特な音楽性は、「Trojan Reggae」と呼ばれるほど。

 

実際に音楽に触れていただけるとわかるかと思うが、ディープなソウルならぬディープなレゲエである。後のダンスミュージックとクロスオーバー化したレゲエの最初期のお手本を形作った。

 

2018年にはドキュメンタリーフィルム「Rudeboy: The Story of Trojan」がロンドンで放映された。さらにレーベルの1971年のディープなコンピレーション・アルバム『The Trojan History』も新装版で発売されている。


今回はトロージャン・レゲエの名曲を紹介したいと思います。このレーベルに所属したダブのイノベーターのひとり、スクラッチ・ペリーは、レーベルを以下のように紹介したことがあった。

 

トロージャンの音楽はレゲエの鼓動である-- そう、トロージャンはレゲエの始まりなのだ。ジュニア・バイレズ、ボブ・マーリー、ダスモンド・デッカーが他の場所からのスピリットを持ったVOICEを届ける。 

”スピリット”こそがレゲエを生かし続ける。レゲエを聴く人は、皆、幸せな気分になり、良いヴァイブスを感じる。 

これは理由があってのことで、この音楽はこれからも、この世の内外で人々を幸せにし続けるだろう。全てがなくなっても、これらの曲には鼓動と魂がある。- Lee Scratch Perry

 

 

 

・Harry J All Stars 「Liquidator」

 

この1969年のインストゥルメンタル曲のインストロダクションが有名に聞こえるなら、それはステイプル・シンガーによる1972年のNo.1ヒット「I'll Take you There」の冒頭の音符によるものだ。


英国で9位のヒットを記録した「Liquidator」は、保険のセールスマンからプロデューサー兼スタジオ・オペレーターに華麗な転身をしたハリー・ジョンソン、スタジオのプロフェッショナルの演奏、特にウィンストン・ライトの筋張ったオルガン・ラインがこの曲のバックボーンを支えている。ジョンソンは1972年にキングストンにハリー・J・スタジオをオープンさせ、ボブ・マーリーのお気に入りとなった。

 

 

 

 

・The Slickers 「Johnny Too Bad」

 

1972年に公開されたペリー・ヘンゼルの代表作『The Harder They Come』のサウンドトラックは、多くのポップ・ファンやロック・ファンにとって、レゲエへの最良の入門編となった。マイルストーンに満ちたこのアルバムの収録曲「Johnny Too Bad」は、ザ・スリッカーズとして知られるミステリアスなバンドによるもの。オリジナル・アルバム『Panther 45』にも収録されている。

 

この頃、スリッカーズこそがパイオニアだったというコンセンサスが形成された。デリック・クルックス(Derrick Crooks)と、"Johnny Too Bad "を生み出した1970年のセッションでリード・ヴォーカルを務めたアブラハム・グリーン(Abraham Green)、通称ラス・エイブラハム(Ras Abraham)を含む気まぐれなキャストたちだ。


荒れ狂う 「a-lootin' and a-shootin 」はルードボーイへの指令であり、その結末は暗く予兆的で絶対的である。

 

 


 ・John Holt  「Stick By Me」(And I'll Stick By You)

 

ジャマイカのアーティストたちがますます政治的でスピリチュアルな方向に向かっていた頃、キングストン生まれのシンガー、ジョン・ホルトはロマンスに心を奪われていた。


1970年代後半に定着したラヴァーズ・ロック・ムーヴメントの先駆者であるホルトは、1960年代のロックステディ・ヴォーカル・グループ、パラゴのベテランであり、その後ソロで成功を収めた。

 

 

 

 

・Dennis Brown  「Westbound Train」 


1973年に"Westbound Train "をリリースした頃、デニス・ブラウンはまだ10代だったが、すでにクレメント・"コクソン"・ドッドやプリンス・バスターなど、ジャマイカの一流プロデューサーたちとレコーディングをしていた。しかし、ブラウンの数年先輩に当たるナイニー "ザ・オブザーバー "ホルメスとのコンビで、その才能を開花させた。

 

''Westbound Train''は、レゲエとサザン・ソウルの間を行き来するもうひとつの例を示している。オープニングでは、1年前にApeearedからリリースされたアル・グリーンの "Love And Happiness "のテニー・ホッジスのキックオフ・ギター・リフが引用されている。サンプリングの元祖である。

 

 

 

 

・The Jamaican 「Ba Ba Boom」

 

ジャマイカ政府主催のインディペンデンス・フェスティバル・ソング・コンペティションのために書かれた「Ba Ba Boom」は、トミー・カウンド、ノリス・ウィアー、マーティン・ウィリアムズ(ザ・ハメリカンズ)の3人により、1967年に最優秀賞を獲得した。

 

デューク・リードがプロデュースし、彼のトリチュア・イスル・スタジオのハウスバンド、スーパーソニックがバックを務めたこの曲は、1960年代後半にスカとレゲエの架け橋となったロックステディを研究したものだ。


そのキャッチフレーズ「フレディ、ロックステディをやろうぜ」は、カリフォルニアのシンガー・ソングライター、ウォーレン・ウェヴォンの耳に留まり、彼は1978年に 「Johnny strikes up the band 」の中でそれを引用している。

 

 

 

 

・Dave & Ansel Collins 「Double Barrel」 


デイヴとアンセル・コリンズに血縁関係はない。実際、彼らの短命な音楽的パートナーシップはセレンディピティの産物だった。オルガン奏者アンセル・コリンズと楽器奏者の仲間たちは、ピアノとオルガンで構成されたトラックの上で乾杯する美味しいロックステディ楽器を作り上げた。

 

オルガン奏者アンセル・コリンズと楽器奏者の仲間たちは、ピアノとオルガンで構成されたトラックの上で乾杯する美味しいロックステディ楽器を作り上げた。バーカーはこの仕事をこなし、不条理な、その場しのぎの叫びを披露。「Double Barrel」は1971年の春に国際的な成功を収めた。

 

 

 


・Bob Marley &The Wailers 「Soul Shakedown Party」

  

ボブ・マーリーのアメリカンソウルへの傾倒は、スーパー・ストリートの前のセレクション「Souk Almighty」、「Soul Rebel」、「Soul shakedown Party」のタイトルにかなり明確に表れている。トロージャンとアイランド時代ではマーリーの音楽は異なるものであることはファンならご存知だろう。


後者は1970年午前、ジミー・クリフ(Jimmy Cliff)、デスモンド・デッカー(Desmond Dekker)、ジョン・ホルト(John Holt)らとの仕事でレゲエ界に名を馳せたレスリー・コング(Leslie Kong)がプロデュースしたもので、コングはマーリー、ピーター・トッシュ(Peter Tosh)、バニー・リヴィングストン(Bunny LIvingston)らウェイラーズをキングストンのダイナミック・サウンド・スタジオに招き、彼のビヴァリーズ・オールスターズ(Beverley's All stars)に最先端のレゲエを聴かせた。


その結果、グループの遊び心に溢れたポップな60's作品と、成熟した70年代のアイランド・レコーディングが受け継がれた。

 

 

 

 


・The Chosen Few 「I Second That Emotion」

 

1967年、デリック・ハリオット(Derrick Harriott)がまだ「Penny for your song」に参加していたキングストンのグループ、フェデラルズ(Federals)の廃墟から「Tears of a clown」と「The Chosen Few」が誕生した。


再結成されたこのグループはアフロビートやR&Bとレゲエのリズムを巧みに融合させることで名声を得た。「Thme from Shaft」、「Drift Away」、「Everybody plays the fool」、そしてスモーキー・ロビンソンの名曲の数々。「Tears of a clown」、「I second That Emotion」などは、シルキーなヴォーカル・カルテットによってジャマイカ風にアレンジされたヒット曲である。

 

 

 

 

・Desmond Decker 「You Can Get It You Really Want」

 

ボブ・マーリー(Bob Marley)やトゥーツ・ヒバート(Toots Hibbert)と同じく、デスモンド・アドルファス・ダクレス(Desmond Adolphus Dacres)はジャマイカ音楽界において驚くべき機敏さで変化に対応した。当初はスカと関連していたが、シングル「Honour Thy Mother and Father」でジャマイカでNO.1を獲得。


ルード・ボーイ・アンセムが流行していた頃、彼はより硬質な「007(Shanty Town)」をヒットさせた。


「The Israelities」は世界的なヒットとなり、レゲエにおける社会意識の橋頭堡を築いた。ジミー・クリフが作曲した「You Can Get It if YOu Really Want」は、『The Harder They Come』に収録されたこともある。


今日では彼のヴァージョンが最もよく知られているが、デッカーが先にレコーディングした。クリフのテイクは、オリジナルのバッキング・ヴォーカルとインストゥルメンタルを残しており、違うのはリード・ヴォーカルだけだ。

 

 

 


・Junior Byles 「A Place Called Africa」 

 

レゲエの偉大な世代における多くのパフォーマー同様、ケリー・ジュニア・バイルス(Kerrie   Byles)は1960年代をトレンドの変化に順応し、ジャマイカで最も精通したプロデューサーたちによって形作られながら過ごした。


ヴォーカリストは1970年代に独立する前にバーサタイルズ(Versatiles)のメンバーとしてジョー・ギブス(Joe Gibbs)や彼の弟子リー・スクラッチ・ペリー(Lee Scratch Perry)、ナイニー・ホルネス(Niney Holness)と活動を共にした。

 

ペリーとの再会を果たしたバイルズは、奴隷制度と抑圧についての感動的な瞑想曲「A Place Called Africa」を筆頭に、ルーツ・レゲエの名曲を次々と発表し、本領を発揮した。1975年にエチオピアのハイレ・セラシエ皇帝が崩御した後、敬虔なラスタファリアンは自殺を図り、その後数十年間は散発的に活動していた。

 



 ・Lee Scratch Perry 「I am The Upsetter」

 

レゲエの形に与えた全体的な影響という点では、そびえ立つボブ・マーリーはリー・スクラッチ・ペリーの後塵を拝することになる。

 

1936年にジャマイカ/ケダルで生まれたペリーは、1950年代後半にレコード・ビジネスの世界に入り、活躍した。1960年代の彼の革新は、ロックステディ期の終焉とレゲエの誕生の先駆けとなり、ダブとヒップホップの発展における彼の重要な役割は議論の余地がない。1968年にリリースされた 「I Am The Upsetter 」は”音占い師”の奇妙な気まぐれを示す代表的な事例である。

 

 

 

 

 ・The Melodians 「Rivers of Babylon」

 

レゲエのカノンの中で最も人気のある曲として親しまれている「Rivers of babylon」は、ユダヤ人がシオンの家から連れ去られ、バビロンに移住させられたという詩篇137篇に基づいている。


メロディアンのブレント・ダウとレバー・マクノートンは、アフリカからアメリカ大陸への大西洋を横断する奴隷貿易との類似性を、ラスタファリアンの信念を反映した重厚な歌詞で表現している。


レスリー・コングのセンシティブなプロダクションとトリオの素直なヴォーカルが組み合わさり、「Rivers of Babylon」は、音楽のジャンルや宗教の違いを超えた不朽の賛美歌となった。


 

 

 

・Pioneers 「Long Shot Kick De Bucket」

 

ヴォーカル・グループ、パイオニアの最大のヒットがこの曲だった。1960年代初頭に結成されたこのグループは、同名の人気競走馬の活躍を歌った『ロング・ショット』で最初のヒットを記録した。

 

その成功が、創設メンバーであるシドニー・クルックス、ジオード・アガード、ジャッキー・ロビンソンのトリオに、キングストンのケイマナス・パークで起こった哀れなロングショットの悲しい最期を語らせた。「スターブライト、コンバット、コラソン、ロングショットが後ろにいた。ロングショットが倒れた/俺たちの金はすべて地獄に堕ちた。" 

 

このシングルの成功により、グループは一時期イギリスに戻ることになった。1970年代後半、スペシャルズやマッドネスのような”2トーン・アクト”がスカの旗を掲げると、彼らの影響はイギリスでも明瞭に感じられるようになった。

 

 

 

 

・ The Upsetters 「Return Of Django」

 

1960年代後半のスパゲッティ・ウエスタンは、ジャマイカのミュージシャンにとって特異なインスピレーションの源のひとつであった。風変わりなスタジオの錬金術師は、「For Few Dollars more 」や 「Clint Eastwood 」のようなトラックで、当時人気のあったこのジャンルに脱帽した。

 

ザ・アップセッターズ(ペリーのお抱えバンド)は、イタリア人監督セルジオ・コルブッチの『ジャンゴ』にインスパイアされた 「Return of Django 」で全英5位を記録した。この超暴力的なジャンゴのキャラクターはペリーの特にお気に入りで、ペリーは1968年にサー・ロード・コミックの『Django Shoot First』をプロデュースし、ペリーに敬意を表した。このインストゥルメンタルの軽快な、スカを取り入れた音楽が、19世紀のアメリカ西部とどのように関係しているのか不思議に思っているなら.....、このバンドの音楽を聴いておくべきかもしれない。

 

 

  




▪映像作品 【Rude Boy- The Story Of Trojan Records(Documentary Film)】

 



この重要なドキュメンタリーは、ニコラス・ジャック・デイヴィス監督によって、魅力的なアーカイブ映像、撮り下ろしのドラマ、リー・スクラッチ・ペリー、トゥーツ・ヒバート、ケン・ブース、ネヴィル・ステイプル、パイオニアーズ、マーシャ・グリフィス、デイヴ・バーカー、ダンディ・リヴィングストン、ロイド・コクソン、ポーリン・ブラック、デリック・モーガンなど伝説的アーティストたちの新たなインタビューとともに、難なく活写されている。

 

トロージャン・レコードのストーリーと、50年代、60年代、そしてそれ以降にこの街に移り住んだジャマイカと西インド諸島のコミュニティにとって、トロージャン・レコードが象徴するすべてを、この上なく支持する。

 

60年代の文化革命を想像するとき、多くの人が思い浮かべるスウィンギングでヒッピーなロンドンの裏側がここにあった。だが、この物語は現実的、その後の世代に永続的な影響を与え続けている。



Sam Robbins  『So Much I Still Don't See』      〜45,000マイルの旅から生み出された良質なフォークミュージック〜

 

Sam Robbins


アメリカの国土の広さ、それは人生の旅という視点から見ると、人間性を大きく成長させることがある。それは今までとは違う自分に出会い、そして今までとは異なる広い視点を見つけるということだ。サム・ロビンスさんの場合は自分よりも大きな何かに出会い、そしていかに自分の考えが小さかったかということを、神妙なフォークミュージックに乗せて歌い上げている。


ニューイングランドを拠点に活動するシンガー・ソングライター、サム・ロビンスのニュー・アルバム『So Much I Still Don't See』は、年間45,000マイルをドライブし、ニューハンプシャー出身の20代の男である彼自身とは全く異なる背景や考え方を持つ多くの人々と出会ったことで生み出された。


サム・ロビンスのサード・アルバム『So Much I Still Don't See』は、シンガー・ソングライターとしての20代、年間45,000マイルに及ぶツアーとトルバドールとしてのキャリアの始まりという形成期の旅の証だ。 そして何よりも、ハードな旅と大冒険を通して集めた実体験の集大成なのだ。


リスナーにとっては、これらの大冒険がソフトで内省的なサウンドスケープを通して聴くことができる。 シンガー・ソングライターのセス・グリアーがプロデュースしたこのアルバムは、ソロのアコースティック・ギターとヴォーカルを中心に、ステージで生演奏されるのと同じようにライブ・トラックで惜しげもなく構成されている。 


マサチューセッツ州/スプリングフィールドにある古めかしい教会でレコーディングされた『So Much I Still Don't See』のサウンドの中心は、旅をして自分よりはるかに大きな世界を経験することで得られる謙虚さである。 アップライトベース、キーボード、オルガン、エレキギターのタッチで歌われるストーリーテリングだが、アルバムの核となるのは、ひとりの男と、数年前にナッシュビルに引っ越して1週間後に新調したばかりの使い古されたマーティン・ギターだ。


『So Much I Still Don't See』のサウンドは、ジェイムス・テイラー、ジム・クローチェ、ハリー・チャピンといったシンガー・ソングライターのレコーディングにインスパイアされている。 ニューハンプシャーで育ったロビンズは、週末になると父親と白い山へハイキングに出かけ、古いトラックには70年代のシンガー・ソングライターのCDボックスセットが積まれていた。 


この音楽はロビンズの魂に染み込み、幼少期の山の風景を体験することと相まって、この "オールド・ソウル・シンガー・ソングライター "は、これらのレコーディングと、それらが例証する直接的でソフトかつ厳格なソングライティング・ヴォイスによって形作られた。 


『So Much I Still Don't See』のストーリーテリングは、タイトル曲の冒頭を飾る「食料品店でグラディスの後ろに並んで立ち往生した/孫娘のために新しい人形を見せてくれて微笑む」といった歌詞に見られるように、小さな瞬間を通して構築されている、 


そして、オープニング・トラック「Piles of Sand」の "I'm standing in the sunlight in a public park in Tennessee/ and I know the soft earth below has always made room for me "や、チェット・アトキンスにインスパイアされたアップビートな「The Real Thing」の "The Hooters parking lots are all so bright "などの歌詞がある。 


2018年にNBCの『ザ・ヴォイス』に短期間出演したロビンスは、2019年にバークリー音楽大学を卒業し、すぐにナッシュビルに拠点を移した。 


ミュージック・シティでの波乱万丈の5年間を経て、2024年初めにボストン地域に戻った後に制作された最初のレコーディングが『So Much I Still Don't See』である。 週に5日、カントリー・ソングの共作に挑戦した後、ロビンズは路上ライブに活路を見出し、今では全米のリスニング・ルームやフェスティバルで年間200本以上のライブをこなしている。


長年のツアーを通してアコースティック・ギターの腕前を成長させたロビンスは、フィンガースタイル・ギターの多くのファンを獲得した。


『So Much I Still Don't See』は、彼の妻のミドルネームにちなんで名付けられたオリジナル・インストゥルメンタル・トラック「Rosie」を含む初のアルバムである。 この曲は、アルバムの中盤に位置する過渡期の曲で、あるメロディー・ラインを最後までたどり、そのラインを中心にコード・カラーを変化させながら流れていくという、画家のようなスタイルで書かれている。 


このインストゥルメンタル・ライティングへの進出は、ロビンスが単にヴォーカルの伴奏者としてだけでなく、米国のフィンガースタイル・ギター演奏における強力なボイスとして認知されつつあることを受けてのこと。


このツアーとその後のソングライティングの成長により、ロビンスはいくつかの賞を受賞し、フェスティバルに出演するようになった。2021年カーヴィル・フォーク・フェスティバルのニュー・フォーク・コンテスト優勝者、2022年ファルコン・リッジ・フォーク・フェスティバルの「Most Wanted to Return」アーティスト、その後、2023年と2024年には各フェスティバルのソロ・メインステージ出演者となった。 


ロビンズはミシガン州のウィートランド・フェスティバル、フォックス・ヴァレー・フォーク・ミュージック・アンド・ストーリーテリング・フェスティバルなど全米のフェスティバルにツアーを広げ、「同世代で最も有望な新人ソングライターのひとり」-マイク・デイヴィス(英Fateau Magazine誌)の称号を得た。


2023年初頭、サム・ロビンスは、16代ローマ皇帝が記した名著、マルクス・アウレリウスの『瞑想録』を贈られた。 ストイシズムの概念を中心としたこの本からのアイデアは、『So Much I Still Don't See』の楽曲に染み込んでいった。 このアルバムの多くは、過去1年間の旅を通してこの本を読んで発見したストイックな哲学によって見出された内なる平和を反映している。 


「All So Important」の軽快でアップビートなバディ・ホリー・サウンドは、この哲学を瞑想した歌詞と相性がよく、私たちは、皆、大きな宇宙の中の砂粒に過ぎないという感覚を表現している。 「ローマ帝国の支配者のブロンズの胸像、太陽が照らすあらゆる場所の皇帝/彼の名前は永遠に生き続けると思っていた/それでも、今は目を細めなければ読めなくなった」というような歌詞の後に、「It's all so, all so important」という皮肉なコーラスがシンプルに繰り返される。


『So Much I Still Don't See』の曲作りにもうひとつ影響を与えたのが、ロビンズが主催するグループ、ミュージック・セラピー・リトリートでの活動だ。 


この団体は、ソングライターと退役軍人のペアを組み、彼らがしばしば耳にすることのない感動的なストーリーを歌にする手助けをする。 この人生を変え、人生を肯定する体験は、ロビンス自身の作曲と音楽に、より深い感情とより深い物語を引き出し、幸運にも一緒に仕事をすることになった退役軍人の開かれた心と物語に触発された。


『So Much I Still Don't See』のラストは、全米ツアー中のシンガーソングライターであり、ロビンスの婚約者でもあるハレー・ニールとの静かで穏やかなひととき。 2人はバークリー音楽大学で出会った後、別々のキャリアを歩んできたが、ここぞというときに一緒になる。 最後の10曲目に収録されているビートルズのカバー「I Will」は、レコーディング最終日にスタジオの隅にあった安物のナイロン弦ギターでレコーディングされた。 短くて甘いラブソングは、内省的で温かみのあるアルバムのシンプルな仕上げであり、『So Much I Still Don't See』に貫流する真の精神である。冷静さとシンプルさ、そして、常に未来を見据えていることにスポットを当てている。 



「What a Little Love Can Do」



アルバムからの最初のシングル「What a Little Love Can Do」は、ある瞬間を切り取った曲だ。 ナッシュビルで起きた銃乱射事件のニュースを聞いた後、ロビンズは一人でギターを抱えていた。 ニューイングランドの故郷から遠く離れた赤い州の中心部に住んでいた彼は、その日の出来事によって、今まで見たこともないような亀裂がくっきりと浮かび上がった。 


その瞬間に現れた歌詞が、この曲の最初の歌詞である。"It's gonna be a long road when we look at where we started, one nation broken hearted, always running from ourselves"。 (長い道のりになりそうだ、私たちがどこから出発したかを見渡せば、ひとつの国が傷つき、いつも自分自身から逃げていたのだった)


その日のニュース、そして、それ以降の毎日のニュースの重苦しさは、この曲が作られた2023年以降も収まっていない。 


この歌詞から導かれたのは、流れ作業のような作曲作業だった。 ロビンズがツアーで全米を旅し、2年間で10万マイル以上を走り、何百ものショーをこなし、まったく異なる背景を持つ何千人もの人々と出会ったことから築かれた学びとつながりの物語。 


バーミンガムからデトロイト、ニューオリンズからロサンゼルス、ボストンからデンバーまで、この曲は知らず知らずのうちに、これらの冒険から学んだ教訓の集大成として書かれた。 お互いに物理的に一緒にいるとき、話したり、笑ったり、お互いを見ることができるときに見出される一体感の深さが、『What a Little Love Can Do』、そしてこのアルバム全体の核心となる。


この曲では、「閉め切った窓から光が射すのを見た/ケンタッキーの未舗装の道やニューヨークの月も」、「愛が目の前にあるときが一番意味があることを知っている/でも、周りを見渡しても、新聞には載っていない/スクリーンには映っていないけど、君の中には見えるんだ」といった歌詞に、この考えがはっきりと感じられる。


ヴァースとサビ前の歌詞は、モータウンにインスパイアされたシンプルなコーラスへと続く。 「君に手を伸ばそう、君に手を伸ばそう/小さな愛ができることを見せてあげよう、小さな愛ができることを見せてあげよう」 当初は、これは場当たり的なフレーズだったという。 しかし、この歌詞を中心に曲が構成されていくにつれ、この歌詞が曲全体を支えるピースであることが明らかになった。


「What a Little Love Can Do」のサウンド・ランドスケープは、アルバムの中でもユニークだ。セス・グリアーが優しく弾く、荒々しく柔らかいピアノの瞬間から始まる唯一の曲である。


この曲のピアノとアコースティック・ギターの織り成すハーモニーは、ロビンズのライヴとサウンド・センスを象徴している。 ギター、ピアノ、そしてサム自身の温かみのあるリード・ヴォーカルが一体となった 「What a Little Love Can Do」は、サード・アルバム『So Much I Still Don't See』への完璧なキックオフだ。



『So Much I Still Don't See』のセカンド・シングルでありオープニング・トラックである、きらびやかで内省的な「Piles of Sand」は、このアルバムのために書かれた最初の曲だった。 この曲はナッシュビルで書かれ、アルバムの多くと同様、シンプルで観察的な視点から出発している。


冒頭の「テネシーの公園で陽の光の中に立っている/その下にある柔らかい大地が、いつも私の居場所を作ってくれているのがわかる」という控えめな歌詞が曲の土台を作る。この曲は過ぎゆく時間と、私たちの人生のそれぞれの舞台となる小さな瞬間についての謙虚だが力強い瞑想へと花開く。



この曲は、『So Much I Still Don't See』に収録されている多くの曲と同様、ある瞬間のために書かれた。 ナッシュビルの川沿いの小道を歩いていて、刑務所の有刺鉄線の横を通り、向かいの高層マンションのために砂利がぶちまけられるのを見たり感じたりしたのは感動的な瞬間だった。


さらにロビンスは歩き、通りの向こうに高くそびえ立つ巨大な砂利の山を見た後、最初のコーラスの歌詞はすぐに書き留められた。 「山だと思ったけど、ただの砂の山だ!」  このセリフとリズムは、その日の午後に書かれた、ストイシズムに彩られた曲の残りの部分への踏み台となった。


アルバムのオープニング・トラックである "Piles of Sand "のサウンドは、一人の男とギターのシンプルなサウンドを中心に構成されており、アルバムの幕開けにふさわしい完璧なサウンドだ。 ジェームス・テイラーのライヴ・アルバム『One Man Band』にインスパイアされた、この曲には、ピアノの音だけがまばらに入っている。サム・ロビンスの見事なギター・ワークとフレッシュで明瞭なソングライティング・ヴォイスを披露するアルバムの重要な舞台となっている。


『So Much I Still Don't See』からの3枚目のシングル、チェット・アトキンスにインスパイアされたアップビートな "The Real Thing "は、アルバムの2曲目に収録されており、10曲からなるコレクション全体の様々なエネルギーの一例である。


 「The Real Thing」は、歌詞のグルーヴから始まった。ツアー中のアメリカのある都市を車で出発し、自宅から何千マイルも離れた場所で、12時間のドライブを前にして、インスピレーションの火花が散った。 「郊外の柔らかな灯りの下、滑らかなハイウェイを走っている/アップルビーズが角を曲がるたびに視界に飛び込んでくる」という最初の行のノリから、「The Real Thing 」の残りの部分は、アメリカの人里離れたホテルで一晩で書き上げられた。 



この曲は、アルバム全体に存在する実存的な問いかけを軽やかに表現している。 環境保護主義、世界における人間の居場所、作家の居場所についての質問に言及する「The Real Thing」は、ソフトでカッティング、詮索好きな「So Much I Still Don't See」へのアップビートなキックオフ曲である。 


サウンド的には、「The Real Thing」はロビンスがギターで影響を受けた偉大なフィンガースタイル・プレイヤー、チェット・アトキンスへのオマージュである。 


チェットの特徴である親指をトントンと鳴らす奏法により、サム・ロビンスは、この古典的なサウンドを生かしながら、彼独自のモダンなテイストを加えたサウンド・パレットを作り上げた。 歌詞の雰囲気、ようするに、埃っぽいハイウェイを疾走して、今いる場所以外のどこへでも行くという、いかにもアメリカ的な感覚を、西部劇風のド迫力のグルーヴが体現しているのだ。



「So Much I Still Don't See」





『So Much I Still Don't See』のタイトル・トラックは、白人としてニューハンプシャーで育ったロビンズの人生と生い立ちの瞬間を中心とした、澄んだ瞳と澄んだ声の曲だ。
 
 
歌詞のニュアンスとしては''世界には自分はまだ知らないことがたくさんあった''ということを感嘆を込めて歌っている。曲全体を通して歌われる「There's so much I still don't see(まだ見えないものがたくさんある)」という柔らかく、小康状態で瞑想的なリフレインが、テーマをひとつにまとめる結びとなっている。 


その物語は、テネシー州の食料品店で、年配の黒人女性が孫娘のために黒人のディズニー・プリンセスの人形を買うのを彼が目撃するという偶然の出会いから始まった。 


この偶然の出会いは、サム・ロビンスに、彼が幼少期に経験したメディアの表現をふと思い起こさせた。 白人男性はどこにでもいて、支配的なアイデンティティが表現されている。従って表現について深く考える機会がなかった。 このことは、次のヴァースの歌詞にはつきりとした形で表れている。「私は古典の中で育った、英雄と愛の物語/私が何になれるかを映し出す淡い海」



「So Much I Still Don't See」の最後のヴァースは、曲の残りの部分を通して聴かれる小さな物語を最も明確に表している。 


「マーティン・ルーサー・キング牧師を読み、南北戦争について学んだつもりだった/でもすべてが遠く感じられ、彼らと私をつなぐ100万の小さな糸を信じるのはとても難しかった/ああ、まだ見えないことがたくさんあるんだ」


中心的な歌詞の微妙なひねりは、ロビンスの作詞の特徴である。この曲のソフトでありながら鋭いメッセージに貢献している。 


明確な認識(気がつくこと)は変化への第一歩であり、「So Much I Still Don't See」は政治的な歌の静かな瞑想として書かれた。 ただこれは、説教じみた、不遜なマニフェストではない。 この曲は、明瞭で、柔らかく、内向きの曲であり、書き手と聴き手の内省のひとときを意味している。



「So Much I Still Don't See」のサウンドは、歌詞とメッセージの瞑想的な雰囲気を反映している。鳴り響くオープン・アコースティック・ギターのストリングス、うねるような暖かいコード、ロビンスの柔らかく誘うようなヴォーカルが、聴く者を曲の世界へ、そして曲とともに自分自身の物語や歴史へと導いていく。


 「So Much I Still Don't See」は、同名のアルバムのアンカーとして、そして、10曲の核となる曲として、ロビンスの明晰な眼差しと真摯でフレッシュなソングライティング・ヴォイスを端的に表している。
 

本作は、ジェイムズ・テイラー(James Taylor)、 ジャクソン・ブラウン(Jackson Browne)のような良質なシンガーソングライターの系譜にある渋い魅力に満ちた深遠なフォークソング集である。
 
 

▪️Sam Robbins  「So Much I Still Don't See」- Sam Robbins c/o Shamus Records
 
 

 
 
 



東京を中心に活動しているミュージシャン、ソングライター、Satomimagae(サトミマガエ)のソロ名義で通算5作目となるニューアルバム『Taba』がRVNG Intl.(US) / PLANCHA(JP)から4月25日に発売となりました。


続いてアルバムの発売を記念するイベントの開催が発表されました。主催は発売元のPlancha。6月28日に下北沢SPREADにてワンマンライヴが行われます。フライヤー/イベント詳細は下記の通りです。



「Tonbo」- ニューアルバム『Taba』に収録



【先行情報】


東京拠点の孤高のエクスペリメンタル・フォーク・シンガー、SATOMIMAGAEがRVNG INTL.からニューアルバム『TABA』を4月25日にリリース



【イベント情報】漠日  BAKUJITSU curated by Bias & Relax adv.



日程:2025年6月28日 (土)

時間:OPEN 18:30 / START 19:00

会場:下北沢SPREAD

料金:ADV ¥4,000 *別途1ドリンク代800円必要


・入場制限:未就学児童入場不可

・ 再入場可 *再入場毎にドリンク代を頂きます / A drink ticket fee charged at every re-entry


チケット:e+  https://eplus.jp/satoimagae/

問い合わせ 03-6413-8550


LINE UP:

・Satomimagae (LIVE)

・AKHIRA SANO (DJ / LIVE DRAWING)



▪️孤高のフォークアンビエント・ミュージシャン、Satomimagaeのワンマンライブが決定!!


エクスペリメンタルフォークアンビエント作家、Satomimagae(サトミマガエ)が(米)RVNGレコードより本日リリースした待望のニューアルバム「Taba」を携えたワンマンライブを開催します。


今回、DJ / LIVE DRAWINGのアーティスト、AKHIRA SANO氏がライブサポートを務めます。サトミマガエのVJ Setは貴重であり、”Taba”へ実際にシンセサイザーで参加したAKHIRA SANOのライブドローイングとコラボレーションという機会は今後おそらくないでしょう。


イマジネーション豊かな考察を集め、広大なイデアを辿り、謙虚な瞬間に静かな余韻を残すニューアルバム”Taba”は、個人と集団、構築物と宇宙、明瞭なものと感じられるものの間に鮮やかな線を結ぶ。彼女の真髄を堪能できる貴重な機会です。ぜひお見逃しなく!!


主催/企画/制作:BIAS & RELAX adv


柴田聡子の最新シングル「Passing」のMVが新たに公開された。ロマンティックなムードを漂わせた新曲で、現行のドリーム・ポップに近い、しかし、そこにはやはり柴田聡子らしい歌謡風のテイストが漂う。

 

「Passing」のビジュアルの監督を手がけた山中瑤子のコメントは下記の通りです。


『ナミビアの砂漠』を編集していた時期、毎日柴田さんの音楽に励まされていたので、今回こうしてお任せいただけました!」


そして、ナミビアの才能あふれるスタッフたちがまた集まってくれて、一緒につくることができた奇跡の時間にも感謝しています。


「パス」の持つ孤高でふくよかなイメージ。そして、さまざまなフェーズを移行しながら、変化し続けている柴田聡子さんという存在そのものがとっても魅力的なので、そのすべてが響き合うような映像を目指しました。

 

かつてのことも、いまこの瞬間も、これから訪れる未来も。そのすべてが愛しく、懐かしく思えます。ー山中瑶子

 



柴田聡子(Satoko Shibata) - Passing Official Music Video 

 

 

[ミュージックビデオ・クレジット]


主演:柴田聡子


監督:山中陽子


プロデューサー:鈴木徳志

撮影監督:米倉伸、大西啓太

照明:秋山敬二郎

スタイリング:高山絵里

ヘアメイク:甲本佳代

第1助監督:平波亘

プロダクションマネージャー:田中篤郎

編集:米倉伸

振付:竹澤陽子

タイトルデザイン/VFX:牛尾安治


撮影助手:平井亮

照明助手:平谷リサ、関大輔、柴崎凪

第2助監督:永井敬人

プロダクション・アシスタント:坂口ひまわり、高島彩菜

ロケ協力:高崎フィルムコミッション、高崎電気館、東洋熱工業

機材協力:アシスト、日本照明

衣装協力:DRESSEDUNDRESSED、MARELLA、大野洋平

スペシャルサンクス:長尾琢磨、アストラルプロジェクターズ

製作会社:有限会社コギトワークス

提供: AWDR/LR2, IDEAL MUSIC



そして、PAS TASTAによる「追い越し」リミックスのリリースも4月30日(金)に決定。事前追加/事前保存が開始している。

 


▪柴田聡子「Passing (PAS TASTA Remix)

 

デジタル|2024.04.30リリース|発売元:AWDR/LR2


[https://ssm.lnk.to/shibatasatoko_passing ] 追加/保存前



▪柴田聡子「パッシング」

デジタル|2025.01.15 リリース|AWDR/LR2よりリリース

[https://ssm.lnk.to/Passing


作詞・作曲:柴田聡子 作曲・作詞:柴田聡子

プロデュース、アレンジ:岡田拓郎、柴田聡子 プロデュース&アレンジ:岡田拓郎&柴田聡子


柴田聡子:ボーカル、プログラミング 柴田聡子:ボーカル&プログラミング

岡田拓郎:エレクトリック・ギター、デジタル・ギター、シンセサイザー、サンプリング 岡田拓郎:エレキギター、デジタルギター、シンセサイザー、サンプリング

まきやまはる菜:エレクトリック・ベース 牧山春奈:エレクトリック・ベース

浜公氣:ドラム 浜公氣:ドラムス

谷口雄:シンセサイザー 谷口雄:シンセサイザー


レコーディング・エンジニア:葛西敏彦、岡田拓郎、柴田聡子 レコーディング・エンジニア:葛西敏彦、岡田拓郎、柴田聡子

レコーディング・アシスタント:馬場友美 レコーディング・アシスタント:馬場友美

レコーディング・スタジオ:IDEAL MUSIC FABRIK、OKD Sound Studio レコーディング・スタジオ:IDEAL MUSIC FABRIK、OKD Sound Studio

ミキシング・エンジニア:岡田拓郎、葛西敏彦 ミキシング・エンジニア:岡田拓郎、葛西敏彦

ミキシング・スタジオ:OKDサウンドスタジオ&プレイス柿 ミキシング・スタジオ:OKDサウンドスタジオ&プレイス柿

マスタリング・エンジニア:Dave Cooley (Elysian Masters, LA) マスタリング・エンジニア:Dave Cooley (Elysian Masters, LA)


アートディレクション、デザイン:坂脇慶 アートディレクション、デザイン:坂脇慶

 



今世紀、アメリカのソロギタリスト/ウィリアム・タイラーほど、その豊穣なシーンに衝撃を与えたギタリストはいない。 Silver Jews、Lambchopでのベースメントの重要な活動を経て、彼はナッシュビルの名物的なミュージシャンになった。過去10年の幕開けに、カントリー育ちでクラシックに熱中した後、ポストモダンの実験、フィールドレコーディング、絶妙なメロディーの下に折り重なる静的な漂流物への熱意を露わにした好奇心旺盛なアルバムにより頭角を現した。 

 

ウィリアム・タイラーは、チェット・アトキンス、ギャヴィン・ブライヤーズ、電子音響の抽象化、エンドレスなブギーをとりわけ好きこのんだ。 彼の生産的なインストゥルメンタル・ミュージックの小さく大きな枠組みは、そうしたカソリックな嗜好にますます沿うようになり、新しいサウンドやテクスチャーを取り入れたり、新しい声や視点も重要視するようになった。


5年ぶりのソロ・アルバム『Time Indefinite』は、輝かしく、勇ましく、美しい。 このギターは、タイラーだけでなく、ある分野全体の可能性と到達点を再考させるアルバムの出発点となっている。ノイズとハーモニー、亡霊と夢、苦悩と希望が渦巻く『Time Indefinite』は、単なるギターアルバムではない。偉大なギタリストによる私たちの不安な時代を象徴する傑作。


2020年初頭、世界が未曾有の不安の淵に立たされていた頃、タイラーはロサンゼルスを離れ、人生の大半を過ごしたナッシュビルへと向かった。 ほとんどの機材(そして、その価値はあるにせよ、彼のレコードのすべて)はカリフォルニアに残り、早い帰郷を待っていた。 


こでタイラーは、パンデミック時代のあの果てしなく緊張した時代の憂鬱、神経、疑問と向き合いながら、携帯電話とカセットデッキでちょっとしたアイデアやテーマをレコーディングし始めた。



タイラーは、フォー・テットのキーラン・ヘブデンとレコードを作ることを初期に交渉していたという。これらの作品のいくつかは、彼らが一緒にやるかもしれないことの試験運転のように感じられた。 

 

コラボレーションが別の方向に進むにつれ、タイラーは他のサウンドを探った。 彼はすぐ長年の友人でありプロデューサーのジェイク・デイヴィスに、それらをつなぎ合わせ、不完全な部分をきれいにする手助けをしてくれるように頼んだ。

 

やがてロサンゼルスに戻り、アレックス・サマーズが仕上げに加わった。 デイヴィスとタイラーは逆に、ヒスノイズやぐらつきを受け入れ、最終的には意図せずして、あの時代とこの時代を反映した、不器用で、傷つきやすく、正直なレコードを制作することになった。


タイラーの音楽は当初から、彼の価値観を形成した古い観念や慣習を現代的な価値観に照らし出し、過去を呼び起こした。 2020年11月、家族でミズーリ州ジャクソンを訪れ、ダウンタウンにあった亡き祖父のオフィスを片付けたタイラーは、遺産の中に封印されたままの古めかしいテープマシンを見つける。 彼は、それをナッシュビルに持ち帰り、デイヴィスのところへ持ち寄り、彼らはそれを使い、未知の瞬間の眩暈を呼び起こすようなテープループを作り始めた。


『Time Indefinite』は、そのアンティークの破片をサンプリングしたものから始まる。 薄気味悪く、心配になるようなシグナル・フレア。


この作品は、まるで遊園地のお化け屋敷のように展開していくが、まだ生きている人々が息づいている。 それから10分も経たないうちに、タイラーは「Concern」の冒頭で、シンプルなフォーク・ワルツの下に太陽のように昇るストリングスとスティールという、彼のどの曲よりもゴージャスなメロディーを奏でてみせる。 それは肩に手を置いたような、輝きに満ちた音楽。私はここにいる。状況は厳しいが、私たちは努力している。まるでそのように物語るかのように。



苦悩と信念、そしてそれらをつなぐ小道の地図である。「Electric Lake "は、ラ・モンテ・ヤングを今世紀に呼び起こす恍惚としたドローンだが、その輝きの下には内的な痛みに溢れている。
 
 
「Howling "は絶対的な素晴らしさで、その穏やかなギターのなびきと響き渡るホーンと鍵盤の合唱は、ウィンダム・ヒルの栄光の日々を思い起こさせる。しかし、その背景には実際に吠え声があり、潜在的な心配がただ轟くのを待っているのだ。しなやかな 「Anima Hotel 」ではそうならなかったが、そう長くは続かないことは分かっている。
 
 
「これは精神病領域にあるレコードなんだ」とタイラーは恥ずかしげもなく話す。「心を失いながらも、それを望まず、戻ろうとする音楽なんだ」 しかし、彼がそれを語る必要はない。あなたはそれを感じ取ることができ、おそらくあなた自身の経験からそれに気づくことさえできるだろう。


タイラーのアルバムは、スピリチュアリティと哲学の間を行き来し、より偉大なアメリカの想像力の風景や伝説を呼び起こすように、音楽以外の参照や影響が重層的に折り重なっている。
 
 
『Time Indefinite』もその例にたがわず、ロス・マッケルウィーの深く個人的な映画を想起させる。1980年代半ば、彼は、シャーマンの南部進軍を題材にした映画を作り始めたが、それは家族、喪失、そして想像しうる最悪の事態に最良の本能が屈服したとき、私たちがとる行動についてのもつれた歴史へといざなう。
 
 
 
 
William Tyler 『Time Indefinite』 - Psychic Hotline




 
ウィリアム・タイラーの新作『Time Indefinite(不確定な時間)』は考えられる限りにおいて、この世の最も奇妙なレコードの一つである。タイトルも深遠だ。
 
 
タイラーの作り出す音楽は、実験音楽の領域に属すると思われる。しかし、この世のどの音楽にも似ていない。シンプルに言うと、どこからこういった音楽が出てくるのかさっぱりわからない。
 
 
部分的にはアンドレイ・タルコフスキーの映画のサントラのようでもあり、明確な音楽作品とも言えるのかどうかも定かではない。何らかの付属的な映画音楽のようでもある。そして、確かに『不確定な時間』は、思弁的ないしは哲学的な要素もあり、そしてナラティヴな試みが含まれてはいるが、同時に、それを「テーマ音楽」と称するのは適切とは言えないかもしれない。
 
 
『Time Indefinite』 は、アルバムのタイトルにあるように、我々の住む時間の中にある抽象的な空間性、そして、形而上にある概念を実験的な音楽として発露させたかのようである。一度聴いただけでは、その全容を把握するのがきわめて難しい、カオティックなアルバムとなっている。いってみれば、シュールレアリスムの音楽、それをタイラーは今作で発現させているのだ。それはダリ、ルドンを筆頭とするアートの巨匠のような不可思議な時間性を脳裏に呼び覚ます。
 
 
 
サウンドの形態としては、昨年、アメリカのブログサイトや小規模メディアを中心に賞賛を受けた、Cindy Leeの『Diamond Jubilee』に近い雰囲気が感じられる。テープループを執拗に繰り返し、ブライヤーズ、バシンスキーのようなアシッド的なアンビエンスを呼び覚ます。なおかつ音質を落としたサイケでローファイなサウンドという側面でも、シンディのアルバムに通じている。


しかし、このアルバムは、はっきりいえば、ポップでもフォークでもない。ダニエル・ロパティンの『Again』のように、音楽の集合体のような意味合いがある。恐ろしいほどの音楽的に緻密な構成力は、ブルータルリズム建築のような畏怖の感覚を呼び覚まし、音楽という素材を礎石とするポストモダニズムの音楽が徐々にブロックのように積み上がっていく。高みのようなものに目を凝らすと、目がくらんでくる。アメリカの音楽の土壌の奥深さに恐れおののくのだ。

 
 
かと思えば、ノイズの先鋭的な表現も含まれている。例えば、Merzbow(秋田昌美)を彷彿とさせる先鋭的なアナログノイズで始まる「Cabin Six」は、アルバムを聴くリスナーを拒絶するかのようだ。まるで、ドイツのNEU!が蘇り、意気揚々と逆再生とテープループを始めたかのようである。



それらの断続的なパルスは、基本的にはエレクトロニックの領域に属する。その後、ダークなドローンが展開される。時間も場所もない前衛音楽は、奇妙なモノクロ映画のような世界観と掛け合わさり、独特で強固な音楽世界を構築していく。そして、その抽象的な音楽は、カール・シュトックハウゼンのトーン・クラスターの技法と重なり合うように、前衛の前衛としての気風を放つ。音楽を理解するということの無謀さを脳裏に植え付けさせるような凄まじい音楽。
 
 
 
続く「Concern」は、カントリーをルーツにもつウィリアム・タイラーの南部的な音楽観が露わとなる。シンプルなアコースティックギターのアルペジオが背景となるアンビエント的なシークエンスと合わさり、無限の世界を押し広げていくアンビエントフォークとも言える一曲である。
 
 
 
オープニングを飾る「Cabin SIx」のデモーニッシュなイメージと相対する、エンジェリックなイマジネーションを敷衍させる。このアーティストらしさも満載で、テープディレイをかけたり、コラージュやアナログのデチューンを施したり、サイケな雰囲気も含まれている。続く「Star Of Hope」は、エイフェックス・ツイン、Stars of The Lidのダウンテンポのアンビエントという側面から既存のクワイア(賛美歌)を再解釈している。時々、トーンの変容を交え、遠方に鳴り響く賛美歌を表現する。タイラーはアコースティックギターを伴奏のように奏でるが、これらは最終的に、カンタータやオラトリオのようなクラシカルな音楽性へと接近していく。曲のアウトロでは、賛美歌を再構成し、電子音楽に拠るシンフォニーのような音楽性が強まる。
 
 
 
ハイライトが「Hawling at The Second Moon」である。ガット弦を用いたアコースティックギターにあえてエレクトロニック風のサウンド処理を施し、エレアコのような音の雰囲気を生み出す。そして、シンディ・リーのようなビンテージのアナログサウンド、70年代のレコードのようなレコーディングと、最新のデジタルレコーディングの技術を組み合わせ、不確定な時間というアルバムの表題のモチーフを展開させていく。全般的なカントリー/フォークのニュアンスとしては、Hayden Pedigo(ヘイデン・ペディゴ)に近い何かを感じ取ってもらえるかもしれない。
 
 
 
 
コラージュサウンドとして理解不能な領域に達したのが「A Dream, A Flood」である。グロッケンシュピールをリングモジュラー系統のシンセで出力し、アルペジエーターのように配した後、アナログディレイのディケイを用い、音を遅れて発生させ、ミニマル・ミュージックのように組み合わせる手法を見出せる。
 
 
晩年のスティーヴ・アルビニも、全体的なミックス/マスタリングの過程で、ノイズとミニマリズムを共存させていたが、それに類するような前衛主義である。今作ではそれらがエレクトロニックという土壌で展開され、プリペイドピアノの演奏を全体的なレイヤーとしてコラージュのように重ねたり、テープループを施したりすることで、理解不能なサウンドに到達している。最終的には、シュトックハウゼン、武満徹/湯浅譲二のテープ音楽に近い、実験主義の音楽に変遷していく。そしてこれらは、ミニマル/ドローンの次世代の音楽が含まれているという気がする。
 
 
 
その後、カントリーをベースとする牧歌的で幻惑的なギターミュージックへと回帰する。音楽的な枠組みがシュールレアリスティックであるため、印象主義のようなイメージを擁する。これはシカゴのアヴァンフォークの祖、ジム・オルークの作風にも近似するが、少なくとも、ウィリアム・テイラーは、無調音楽やセリエリズムではなく、調性音楽という側面から実験的なフォークミュージックを繰り広げる。しかし、同時に、トラックの背景となるアンビエントのシークエンスは、視覚的な要素ーーサウンドスケープーーを呼び起こし、制作者の亡き親族とのほのかな思い出を蘇らせる。それはある意味では、フォーク音楽における神聖さの肩代わりのような概念となる。アウトロでは、アンビエントふうのシークエンスが極限まで引き伸ばされ、「Electric Lake」の導入部となり、タイムラグをもうけず、そのまま、次曲に繋がっている。


制作者が、本作を''病理的なアルバム''と称する理由は、間違いなく、音の情報量の多さと過剰さに起因すると思われる。「Electric Lake」は、音楽がまるで洪水のように溢れ出し、カットアップコラージュのように敷き詰められたミュージック・コンクレートの技法が満載となっている。これはシュトックハウゼンのエレクトロニックの原点である「群の音楽」の現代的な解釈である。それはもちろん、音符の過剰さはたいてい、ノイズと隣接していることを思い出させる。


同時に、ジェイク・デイヴィスのプロデュースによるヒップホップのサンプリングの技法と組み合わされ、まったく前代未聞の前衛音楽がここに誕生した、といえるのである。しかし、その電子音楽による壮大なシンフォニーが終わると、弦楽器のトレモロだけが最後に謎めいて残る。この音楽には宇宙のカオスのようなものが凝縮されている。聞き手はその壮大さに目が眩む。

 
 
終盤でも、ウィリアム・タイラーの前衛主義が満載である。ニール・ヤングとギャヴィン・ブライヤーズの音楽を組み合わせたら、どうなるのか……。たぶんそんなことを考えるのは、この世には、彼を差し置いては他に誰もいないであろう。「The Hardest Land To Harvest」は、現代アメリカに対する概念的な表れという点では、バシンスキーの2000年代の作風を思い出させる。また、給水塔のような工業的なアンビエンスを感じさせるという点では、「第二次産業革命の遺構」としての実験音楽を制作した現代音楽家/コントラバス奏者のギャヴィン・ブライヤーズのライフワークである「The Sinking Of Titanic(タイタニック号の沈没)」を彷彿とさせる。
 
 
しかし、この曲は、サイケデリックなテイストこそあるが、その背景には、抽象音楽としての賛美歌が流れている。これらが、構成が存在せず、音階も希薄な音楽という形で展開されるという意味では、タイラーがブライアン・イーノの最盛期の音楽に肉薄したとも称せるかもしれない。
 
 
前衛主義の音楽にはどんな意味があるのか。それは、アートの領域でも繰り返される普遍的な問い。アートでは、取引される金銭的な価値により、評価が定まるが、音楽の場合はせいぜい、プレミア価格がつくかどうかくらいしか付加価値というのがもたらされない。もしくは支持者やファンがつくかどうかなど。しかし、新しい藝術表現はたいてい不気味な一角から出てくる。
 
 
このアルバムは、Stars of The Lidに対する敬愛や賞賛を意味するような印象的な楽曲「Held」で終わる。


『Time Indefinite』はまだ傑作かどうかは言い切れない。なぜなら価値というのはどうしても単一的な視点でしかもたらされない。単一的な価値を見るより、どのように音を楽しむかのほうが有意義であろう。そもそも音楽は良し悪しという二元論だけで語り尽くせるものではないのだ。


しかし、聞けども、聞けども、先が見えない、''音楽による無限の迷宮''のような作品である。聴く人によっては、ほとんど価値を見いだせないかもしれないし、その反面、大きな価値を見つける人もいるだろう。音楽の領域を未来に受け継ぐ内容であり、未知なる音楽の可能性を探求しているという点では、これまでとは違う価値観を見出すヒントを授けてくれるかもしれない。
 
 
 
 
 
90/100
 

 
©Richmond Lam


カナダ/トロントのスーパーグループ、Broken Social Scene(ブロークン・ソーシャル・シーン)によるブレイク作『You Forgot It in People』(2002)を記念するカヴァーアルバムが発表した。

 

『Anthems: A Celebration of Broken Social Scene's You Forgot It in People』は、6月6日にArts & Craftsからリリースされる。先行シングルとして、マギー・ロジャースとシルヴァン・エッソによる「Anthems for a Seventeen Year-Old Girl」のカヴァーが公開された。

 

Toro y Moi、Mdou Moctar、Weather Station、Miya Folick、 Hand Habits、Hovvdy、Spirit of the Beehiveのカバーなどが収録され、それぞれ異なるBroken Social Sceneのアレンジを披露している。


『Anthems』は、私の人生を根本的に変えた曲のひとつです」とロジャースはプレスリリースで語っている。

 

「歌詞の繰り返しには、曲の中で一種のマントラとして機能する何かがあり、音楽が瞑想の一形態になり得ることを、創作人生の非常に早い段階で理解させてくれた。ブロークン・ソーシャル・シーンは昔から大好きなバンドのひとつで、親愛なる友人であるシルヴァン・エッソのニックとアメリアと一緒にこの曲をカバーすることは、絶対的な喜びのビーム・ドリームだった」


シルヴァン・エッソはこう付け加えた。「マギーとこの美しい曲をカバーすることは喜びでした。私たちは皆、このレコードを愛して育ちました。」一緒に『Anthems...』をカバーするよう依頼されたことは光栄であり、本当に素敵な時間につながりました。」

 

 

「Anthems For A Seventeen Year-Old Girl」



Broken Social Scene『Anthems: A Celebration of Broken Social Scene’s You Forgot It in People』- Cover Album

Label: Arts & Crafts

Release: 2025年6月6日


Tracklist:


1. Capture the Flag – Ouri

2. KC Accidental – Hovvdy

3. Stars and Sons – Toro y Moi

4. Almost Crimes – Miya Folick & Hand Habits

5. Looks Just Like The Sun – The Weather Station

6. Pacific Theme – Mdou Moctar

7. Anthems for a Seventeen Year-Old Girl – Maggie Rogers & Sylvan Esso

8. Cause = Time – Middle Kids

9. Late Nineties Bedroom Rock for the Missionaries – Benny Sings

10. Shampoo Suicide – Spirit of the Beehive

11. Lover’s Spit – serpentwithfeet

12. Ainda Sou Seu Moleque – Sessa

13. Pitter Patter Goes My Heart – Babygirl




イギリスの実験的なポストパンク5人組バンド、Squid(スクイッド)がWarpからニューアルバム『Cowards』をリリースした。(レビューを読む)


今回、彼らは新曲 「The Hearth and Circle Round Fire」 をリリースした。最新アルバムのようにマスロック風のテイストであるが、一方で、パンキッシュなエネルギーに満ちあふれている。いわば彼らのパワフルな音楽性がにじみ出た一曲である。


ボーカル兼ドラマーのオリー・ジャッジは、プレスリリースでこの曲について次のように語っています。


「”The Hearth and Circle Round Fire "はパンキッシュな曲で、とても簡単にできたんだけど、その簡単さに不満を感じていた。最初は、15分のジャムとしてレコーディングし、その後、音源をバラバラにしてテープで貼り合わせることに決めた。この曲は実は、レイ・ブラッドベリの『華氏451』やケイ・ディックの『They』に出てくるディストピアの世界にインスパイアされたんだ」
 
 
 
 
 「The Hearth and Circle Round Fire」


オークランドのシンガーソングライター、Madeline Kenny(マデリーン・ケニー)が新譜『Kiss from the Balcony』をCarpark Recordsから7月18日にリリースすると発表した。マデリーン・ケニーはカーパークレコードが送り出すアートポップシンガーだ。


アルバムのリードシングル「All I Need」は、Carparkのアーティスト、ジミー・ウィスパーズが監督した新しいミュージック・ビデオとともに現在リリースされている。


「私のヒーローが帰ってきた」とマデリーン・ケニーは最新作『Kiss from the Balcony』の2曲目で快活に歌っている。この曲は、友人のベン・スローン、スティーヴン・パトータとオークランドで数回に渡って直接スタジオ・セッションを行い、制作された。マデリンの成長と回復力に関する考察の集大成。生成的で活気あるコラボレーションによって新しい命を吹き込まれた。

 

親しいリスナーは、彼女の作品のさまざまな時代から受け継がれてきた幅広いスタイルとテーマを聴くことができるかもしれない。それらはすべて、まとまりのある時代を超えたレコードにまとめあげられている。


2週間に及ぶ集中的なレコーディングセッションで、3人のコラボレーターは、断片、スケッチ、種からこの9曲を育んでいった。


実験的なパーカッションとサウンド・デザインのバックグラウンドを持つベン・スローンは、ケニーの作曲にエレクトロニック・サウンドをもたらした。他方、スティーヴン・パトータは、独創的なギターのメロディーを全編に提供し、このプロジェクトをアコースティックな要素で支えている。


『キス・フロム・ザ・バルコニー』は当初EPになる予定だったというが、録音のセッションで実りあるアイデアと遊びが生まれ、フルレングス・アルバムに拡張された。


このアルバムは、マデリンのディスコグラフィーの中で、愛についてのアイデアを反芻し、全作品を通して新たなサウンド・モチーフを探求している。本作はまた歌手のテーマ及び音楽的な進歩として位置づけられている。

 

 

「All I Need」

 

 

Madeline Kenney 『Kiss from the Balcony』



Label: Carpark
Release: 2025月7日18日
 

Tracklist:

1. Scoop

2. I Never

3. Breakdown

4. Slap

5. Cue

6. Semitones

7. Paycheck

8. They Go Wild

9. All I Need

 

 

Pre-save: https://found.ee/mk_kftb