イギリスのロックバンド、Black Country,New Road(ブラック・カントリー、ニュー・ロード)は新作ライブアルバム『Live At Bush Hall』を発表しました。3月24日にデジタルで先行ストリーミングが開始され、フィジカル盤は4月28日にNinja Tuneからリリースされる。


アルバム発表と同時に、彼らは10月10日にシェパーズ・ブッシュ・エンパイアでこれまでで最大のヘッドライン・ショーを行うことも決定しています。


『Live At Bush Hall』は、前フロントマン/ボーカリストのIsaac Woodが脱退して以来、6人組として初めて制作された。昨年12月にロンドンのBush Hallで行われた3回のヘッドライン公演のライブを収録。アビーロードでジョン・パリッシュがミキシング、クリスチャン・ライトがマスタリングを担当した。 バンドは、これらの新曲をライブステージで試しながら、次なる作品への弾みをつける。

 



Black Country,New Road 『Live At Bush Hall』



Label: Ninja Tune

Release: 2023年4月28日(ストリーミングは3月24日)


Tracklist:

1.Up Song  (Live at Bush Hall) 

2.The Boy  (Live at Bush Hall) 

3.I Won’t Always Love You  (Live at Bush Hall) 

4.Across The Pond Friend  (Live at Bush Hall) 

5.Laughing Song  (Live at Bush Hall) 

6.The Wrong Trousers  (Live at Bush Hall) 

7.Turbines/Pigs  (Live at Bush Hall) 

8.Dancers  (Live at Bush Hall) 

9.Up Song (Reprise)  (Live at Bush Hall) 

 

 

Description

 
ブラック・カントリー、ニュー・ロードの未発表音源を収録した全く新しいアルバムは、2022年12月末にロンドンの歴史ある音楽会場ブッシュ・ホールで行われた一連のユニークなライヴで録音されました。 ジョン・パリッシュがミックスし、アビーロードでクリスチャン・ライトがマスタリングしたこの新しいアルバムと素材は、6人組としてのバンドの新しい章を示すものです。



「Ants From Up There」の成功から間もない2022年、ブラックカントリー、ニューロードことルイス・エヴァンス、メイ・カーショウ、ジョージア・エラリー、ルーク・マーク、タイラー・ハイド、チャーリー・ウェインは、演奏するために全く新しい曲を書き下ろした。Primavera、Green Man、Fuji Rockでの凱旋公演を含むフェスティバルで膨れ上がる観客の前で演奏し、わずか数週間前の曲をナビゲートして発展させながら、彼らは新しい音楽フェーズに入った。また、全米ツアーを行い、ニューヨークでは2回のソールドアウト公演のヘッドライナーを務めた。

これらの新しいパフォーマンスは、英国ローリングストーン誌がGreen Manのセットを「見逃せないものだ」と評し、ガーディアン誌は「歓喜に近いものに迎えられた」と述べるなど、バンドは各方面から広く支持を集めている。

 

これらのパフォーマンスは、NYタイムズのプロフィール、複数の熱烈なライブレビュー、AIM Independent Music Awards 2022のBest Live Performerにノミネートされるなど、注目を浴びている。

 Ralph Towner 『At First Light』

Label: ECM Records

Release Date:2023年3月17日

 

 

Review 

 

ワシントン州出身の名ギタープレイヤー、ラルフ・タウナーはECMとともに長きにわたるキャリアを歩んできた。これまでの作品において、このレーベルに所属する他のアーティストと同様、コンテンポラリー・ジャズ、アヴァンギャルド・ジャズ、エキゾチック・ジャズと幅広い音楽性に挑んできた。ヤン・ガルバレク、ゲイリー・ピーコック、ゲイリー・バートン、これまで世界有数のジャズ演奏者を交え、コンスタントに良質なジャズギターを通じて作品を発表してきた。


ラルフ・タウナーは82歳のギタープレイヤーであるが、この作品はミュージシャンのハイライトを形成する一作である。そして面白いことに、本作には、これまでのジャズギターの革新者としての姿とともに、デビュー作『Diary』のアーティストの原点にある姿を捉えることが出来る。

 

アルバムは、オリジナル曲とカバー曲で構成されている。ホーギー・カーマイケルの「Little Old Lady」、ジュール・スタインの「Make Someone Happy」、フォーク・トラッドの「Danny Boy」、またたタウナー自身のジャズ・バンドであるOregonの曲の再解釈も収録されている。しかし、クラシカル、フォーク、ジャズ、 ミュージカルと多くのポイントから捉えられたクラシカルギター/ジャズ・ギターの素朴な演奏は、一貫してジャズのアプローチに収束するのである。

 

もちろん、そのフィンガーピッキングに拠る繊細なニュアンス、ジャズのスケールの中にスパニッシュ音楽の旋律を付け加えつつ、ラルフ・ターナーは最初の『Diary』の時代の原点に立ち返ろうとしているように思える。また、そのことは一曲目の「Flow」の上品で素朴なギターの模範的な演奏から立ち上る演奏者のクールな佇まいがアルバム全体を通じて感じられる。もちろん、単なる原点回帰というのは、アヴァンギャルド・ジャズ、ニュージャズを通過してきた偉大なジャズプレイヤーに対して礼を失した表現ともなるかもしれない。原点を振り返った上で現在の観点からどのように新しい音楽性が見いだせるのか、あらためてチャレンジを挑んだともいえるだろうか。

 

アルバムは全体的にカバー/オリジナルを問わず、穏やかで素朴な雰囲気に充ちた曲が占めており、演奏自体の豊富な経験による遊び心や優雅さも感じとることが出来る。そしてラルフ・タウナーの旧作を概観した際、タイトル・トラックは往年の名曲のレパートリーと比べても全く遜色がないように思える。デビュー当時の『Diary』の音楽性を踏襲した上で、そこにスペインの作曲家、フェデリコ・モンポウの「Impresiones intimes」を想起させる哀愁に満ちたエモーションを加味し、カントリーの要素を交えながら情感たっぷりのギター曲を展開させている。

 

他にもカバーソングでは他ジャンルの曲をどのようにジャズギターとして魅力的にするのか、トラッド・フォーク「Danny Boy」やブルース「Fat Foot」といった曲を通じて試行錯誤を重ねていった様子が伺える。もちろん、それは実際、聞きやすく親しみやすいジャズとして再構成が施されているのである。他にも、ラルフ・タウナーのOregonにおけるフォーク/カントリーの影響を「Argentina Nights」に見い出すことが出来る。さらに、ディキシーランド・ジャズのリズムを取り入れた「Little Old Lady」もまたソロ演奏ではありながら心楽しい雰囲気が生み出されている。アルバムの最後を飾る「Empty Space」はラルフ・タウナーらしい気品溢れる一曲となっている。


『At First Light」は、ジャズ・ギターの基本的なアルバムに位置づけられ、その中に、フォーク/カントリー、ブルース、クラシックといった多彩な要素が織り交ぜられている。以下のドキュメントを見てもわかる通り、音楽家としてのルーツを踏まえたかなり意義深い作品として楽しめるはずだ。同時に、タウナーの先行作品とは異なる清新な気風も感じ取れる作品となっている。

 

 

94/100

 

 

 

ノッティンガムのインディーロックバンド、Cucamarasは、2023年初のニューシングル「Cotton Wool」を発表しました。


このニューシングルは5月にリリースされる予定の新作EP「Buck Rogers Time」の先行曲で、バンドのOllie Bowleyは「『Cotton Wool』は賞賛の物語で、一方で誰かの影にいるような気がする。不器用な人がいて、その人はいろんな問題にぶつかっているけど、もう一人は穏やかに眠っていて、前者はその人の人生への影響を失う準備ができていない」と説明しています。


 Yves Tumor  『Praise A Lord Who Chews But Which Does Not Consume; (Or Simply, Hot Between Worlds) 』

 

 

Label: Warp Records

Release Date: 2023年3月17日

 


 

 

Review

 

前作『Heaven To A Tortured Mind』でエクスペリメンタル・ポップの旗手としてワープ・レコーズから名乗りを上げたYves Tumor。二作目でどういった革新的なアプローチで聞き手を惑乱するのかと予想していたら、2ndアルバムはクラシカルなシンセポップへとシフトチェンジを果たした。

 

デビューアルバムでは、ブレイクビーツを駆使しながら、R&Bのサンプリングを織り交ぜ、実験的な領域を切り開いたYves Tumorだったが、今作でアーティストのエキセントリックな印象はなりを潜め、どちらかといえば土台のどっしりとしたロック/シンセ・ポップが今作の下地となっている。

 

「God Is A Circle」では、奇矯な悲鳴でいきなりリスナーを面食らわすが、それもアーティストらしい愛嬌とも言えるだろう。遊園地のアトラクションのように次になにが出てくるのかわからない感じがYves Tumorの魅力でもある。前作では前衛的な作風に取り組みつつ、その中にシンプルな4つ打ちのビートが音楽性の骨組みとなっていたが、そういったアーティストの音楽性の背景が前作よりも鮮明になったと言える。


2ndアルバムは、例えば、プリンスのようなグラム・ロックの後の時代を引き継いだシンセ・ポップ、ダンサンブルなビートとクラシカルなロックが融合し、それらがYves Tumorらしいユニークさによって縁取られている。そして、アーティストが意外に古き良きシンセ・ロックに影響を受けているらしいことも二曲目「Lovely Sewer」で理解出来る。70年代のSilver Applesを彷彿とさせるレトロなアナログシンセ風の音色は妙な懐かしさがある。そこにニューヨークのアンダーグランドの伝説、Suicideのようなロック寄りのアプローチが加わっている。この時代、アラン・ヴェガはアナログシンセひとつでもロック・ミュージックを再現出来ることを証明したわけだが、Yvesも同様に一人でこのようなバンドアンサンブルにも比する痛快なロックミュージックを構成出来ることを証明しているのだ。

 

しかし、アプローチがいくらか変更されたとはいえ、ファースト・アルバムの最大の魅力であったこのアーティストらしい雑多性、そしてクロスオーバー性はこの2ndにも引き継がれている。

 

3曲目の「Meteora Blues」では、ブルースと銘打っておきながら、インディーフォークに近い方向性で聞き手を驚愕させる。しかし、この曲に見受けられる聞きやすさ、親しみやすさは明らかにデビュー作にはなかった要素でもある。そして、この曲で明らかになるのは、Yvesのボーカルがグリッター・ロックのような艶やかな雰囲気を擁するのと同時に、その表面上の印象とは正反対に爽やかな印象に満ちていることである。以前のようなえぐみだけではなく、オルト・ポップに内在する涼やかな雰囲気をさらりとしたボーカルを通じて呼び起こすことに成功している。


アルバムの中盤の盛り上がりは「Heaven Surround Us Like A Hood」で訪れる。ここでは、タイトルにも見られるように、一作目の方向性を受け継ぎ、そこにロック風の熱狂性を加味している。一見すると、Slowthaiの書きそうな一曲にも思えるが、実はこれらのバックトラックを掠めるのは、Thin Lizzyのようなツインリードのハードロック調のギターであり、これらが新しいとも古いともつかない異質な音楽性として昇華されている。ノイズを突き出したシンセ・ロックという点では、やはり、近年のハイパー・ポップに属しているが、その最後にはこのアーティストの創造性の高さが伺える。轟音のノイズ・ポップの最後は奇妙な静寂が聞き手を迎え入れるのである。

 

さらに、「Operator」では、ザ・キラーズのようなパワフルかつ内省的な雰囲気をもったインディーロックで前曲のエネルギーを上昇させる。しかし、このトラックを核心にあるのは、やはりグリッター・ロックのきらびやかな雰囲気であり、Yvesの中性的なボーカルなのである。奇妙なトーンの変化で抑揚をつけるYvesのボーカルは、これらの分厚いベースラインとシンセリードを基調とした迫力満点のバックトラックと絡み合うようにし、ボーカルの強いエナジーとアジテーションで曲そのものに熱狂性を加味していくのである。さらに中盤から終盤にかけてそのエネルギーは常に上昇の一途を辿り、ライブに近いリアルな熱狂性を呼び覚ます。


終盤の展開の中でパワフルな印象を与える「Echlolia」も聴き逃がせない一曲となるはずだ。プリンスのようなドライブ感のあるバックビートを背に淡々と歌うYvesではあるが、そこには独特な内省的な雰囲気も感じ取る事ができる。それに加えて、ディープ・ハウスを基調にした分厚いグルーブとディスコ調のビートが組み合わさることにより、特異なハイパーポップが形成されている。以前のシンセ・ポップリバイバルを受け継ぎ、そこにドラムンベースの要素をセンス良く加味することで、ダンスミュージックの未来形をYvesは提示しているのだ。

 

アルバムのクライマックスに至ると、新しい要素はいくらか薄まり、一作目にもみられたブレイクビーツを駆使した曲に回帰する。「Purified By the Fire」では、ヒップホップ/R&Bのトラックをサンプラーとして処理したYvesらしい先鋭的な音楽性を垣間見られる。ここでアーティストは、エクスペリメンタルポップ/ハイパーポップの限界にチャレンジし、未知の境地を切り開いている。総じて本作は、Yvesの新奇性と前衛性を味わうのには最適な快作といえそうだ。


76/100

 

 

©︎Max Barnett


イギリス/バッキンガムシャー出身のシンガーソングライター、The Japanese Houseは約3年ぶりのニューシングル「Boyhood」をDirty Hitからリリースしました。

 

アンバー・ベインはこのシングルについてこう語っています。「ケイティと私が若くて恋をしていたとき、当時、恋をしていることから生じるあらゆる問題から逃れ、彼女の馬に乗って遠くへ旅立つことを空想していました。

 

「この曲は、どんなに頑張っても、人生の初期に自分に起こったことや足かせになったことの産物であることを避けられないことがあるということを歌っています。でも、もっと重要なのは、そうしたことを克服するための希望についても歌っていることです。今、私たちを見てください。逃げるのではなく、何かに向かって走っている」

 

「この馬は私たちにとても可愛がってくれたけど、心の奥底ではバンバンが私たちがずっと乗っていた馬だと思う。"私が人生のどこで無謀にも疾走しようと、ケイティは狂人のように私の後ろに裸馬で乗り、腕を回して、ずっと計画してきたようにする」

 

ニューシングル「Boyhood」は、The Japanse Houseの2020年のEP『Chewing Cotton Wool』に続く作品です。彼女のデビュー・アルバム『Good at Falling』は2019年3月にDirty Hitからリリース済み。


 


米国のシンガーソングライター、Shannon Lay(シャノン・レイ)はNick Drakeの「From the Morning」のカヴァーを公開しました。この曲は近日発売のアルバム『Covers, Vol.1』に収録される予定です。カリフォルニアのシンガーソングライターは、先月、エリオット・スミスの「Angeles」を演奏して、このアルバムについて発表しました。両者のカバー曲は下記よりお聴きいただけます。


『Covers, Vol.』はSub Popから4月14日に発売予定で、Ty Segall、Velvet Underground、Arthur Russell、Vashti Bunyanなどの曲のカバーが収録されています。"私はカバーをすることが絶対に好きです "と、Layは以前の声明で述べています。「私が尊敬する曲に私の視点を提供し、素晴らしいアーティストを広めることができるのは、とても嬉しいことです。Covers Vol.1は、私の曲へのこだわりを祝うカバーレコードのシリーズの第一弾です」


シャノン・レイは2021年に最新アルバム『Geist』をリリースしています。

 

 

 


 


UKのラップアーティスト、Little Simzは、サプライズアルバム「NO THANK YOU」リリース後のヨーロッパ各地を追った40分に及ぶツアードキュメンタリー「On Stage Off Stage」を公開しました。「On Stage Off Stage」は、Abu Dumbuyaによって撮影・編集され、Little Simzがヨーロッパ各地で行ったパフォーマンスや、休日にショーの合間にリトル・シムズを追う様子が映し出されています。


この新しいツアードキュメンタリーを公開するとともに、Little Simzは、12月にリリースしたサプライズアルバム『NO THANK YOU』が6月16日にフィジカルリリースされることを発表、現在予約受付中。


先月、Joan ArmatradingはBAFTAsでLittle Simzと一緒に「Heart on Fire」を演奏しました。同月、Little SimzとCleo Solは、Moncler London Fashion WeekのイベントでAlicia Keysと共演している。


©︎poonehghana

7月21日から23日までシカゴのユニオンパークで開催されるPitchfork Music Festivalは、 2023年版のラインナップを発表しました。


The Smile、Big Thief、Bon Iverが今年のヘッドライナーで、Alvvays、Perfume Genius、Weyes Blood、King Krule、Kelela、Koffee、Rachika Nayar、Nation of Language、Snail Mail、Grace Ives、MJ Lenderman、Black Belt Eagle Scoutも出演が予定されている。チケットは現在発売中。詳細はこちらで、全ラインナップは下記でご確認ください。


Pitchfork編集長のプジャ・パテルは声明で語っています。


「オールウェイズ、ケレラ、ヤヤ・ベイ、シャーロット・アディジェリー&ボリス・ピューピル、グレース・アイヴス、700ブリスなど、この1年で最も優れた音楽を生み出したアーティストが揃い、インディーズ界のアイコンたちと一緒に特別な時間を過ごせることに興奮しています」


「例えば、今年はThom YorkeとJonny Greenwood(The Smileとして)とBon Iverがシカゴのフェスティバルで初めて演奏します。そして、Big Thiefは、この規模のフェスティバルでは初となるヘッドライナー・セットで、長年にわたるフェスティバルのステージ・ツアーを完了する予定です」



Pitchfork Music Festival Lineup




 

 

喉をガラガラに潰したシンガーというのが存在する。真っ先にジャズ・ボーカルの名手であるルイ・アームストロングが思い浮かぶ。彼もクリーンなトーンで歌う歌手とは違い、独特な渋みと抒情性でリスナーを魅了する人物であった。ルイ・アームストロングに関しては、他の同年代の歌手が総じて彼の独特な嗄れた声を真似するという、いわば現代のインフルエンサーのような存在だった。そして、米国のポピュラー・ミュージック史を概観した際に、もうひとり重要な歌手が存在するのをご存知だろうか。そう、それがカルフォルニアのトム・ウェイツなのだ。

 

彼もまた、サッチモと同じように、嗄れたハスキーなボーカルを特徴とする。先日、トム・ウェイツは、オリジナル作品の再発を行うと発表したばかりだが、ウェイツのデビュー当時のエピソードはすごくロマン溢れるものである。そのエピソードをざっと紹介していこうとおもう。デビュー前まで真夜中のザ・ドアーマンとして勤務していたウェイツであったが、その数年後にメジャーレーベルのアサイラム(エレクトラ)と契約を交わし、劇的なデビュー作『Closing Time』を世に送り出した。その後のシンガーソングライターとしての活躍については周知の通りである。

 

デビューアルバム『Closing Time」のリリース時、ウェイツは青年時代について次のように回想している。

 

「私は、1949年12月7日、カルフォルニア州のボモーナに生まれました。 幼い頃の日々をカルフォルニアのホイッティアで過ごし、12歳の時、サンディエゴに引っ越してきた。このサンディエゴはカルフォルニア州の南外れに近い都会なんだ。隣国メキシコにも近く、海軍の軍港地として栄え、またメキシコ風のエキゾチックムードの味わえる観光地としても知られている。それだけにここにはクラブや娯楽施設も多い」

 

「15歳になるまで、私は平凡な少年として過ごしていたのだったが、たぶん家庭の事情もあったのだろう。15歳の時から、"ナポレオンのピッツァ・ハウス”で働きはじめた。といっても」とウェイツは回想している。

 

「シンガーとして雇われたのではなかった。この店の経営者であるジョー・サルドとサン・クリヴェーロのために雑役を任された。私は午前三時から四時(つまり夜明け近く)まで働いた。料理をやったり、フロアを掃除したり、皿も洗った。そして私は、真夜中の人生の教育を受けたものでした。たしかに、こんな環境では学校では教えてくれないことをいろいろ学んだのだろう」

 

トム・ウェイツのこうした生活はおよそ五年ばかり続いたという。それから、トム・ウェイツはミッション・ビーチに移住した。そして”ザ・ヘリテイジ”というフォーク・クラブで働いた。ここで彼はここで多くのフォークシンガー仲間、知られざる音楽家と運命的な出会いを果たす。トムが列挙しているのは以下のような歌手たち。レイ・ビール、グラディ・タック、スティーヴ・ゴードン、バム・オストレグレン、ボビー・トーマス、ウェイン・ストロンバーグ、ジャック・テンプチン、マック&クレイア、ブッチ・レイジー、トム・プレストリー、シェップ・クック、フランシス・サム、ボブ・ウェッブ、スティーヴ・ヴァン・ラッツ、サム・ジョーンズ、リック・クンハ、ルディ・ギャンブル、オーナ・シレイカ、ボブ・ダフィといった面々だ。


この時代をすぎると、トムは”ザ・ドアーマン”という店に職を求め、約二年間ほど働いた。彼は真夜中の勉強を続けた。コーヒーの香りとタバコの煙の中で歌を作り、ギターとピアノを弾いて歌いはじめた。これがたちまち仲間たちの間で評判となり、その二年間の終わり頃には仲間のひとりとコンビを組み、ボブ・リボー&トム・ウェイツとしてステージに立つ。その後、トムはYMCAやジュニア・ハイスクール、ザ・バックドアー、ジ・アリー、ザ・ボニタ・イン、ザ・マンハッタン・クラブといった場所で歌った。こういった生活を送るうち、トム・ウェイツは合衆国とメキシコの国境に位置するバハ・カルフォルニア州のティフアナ周辺でもよく知られる存在となった。


「私はそれから、ロサンゼルス行きのバスに乗ったんだ。私のビュイックで行きたかったんだけど、そういうわけにはいかなかった」と語るように、彼はいくらかのポケットマネーを懐に詰め、大都市ロサンゼルスを目指した。ウェイツが目指したのは、ロサンゼルスにあるロックとフォークファンが集まる老舗クラブ、”The Troubadour(ザ・トルバドール)だった。(80年代にはガンズ・アンド・ローゼズも出演した)このクラブでは、毎週月曜日の夜になると、新人のオーディションが開催されるのが恒例だった。スターシンガーになるチャンスを求めてオーディションを受ける月曜日の夜はいつも大賑わいだった。自分の順番が来るまでかなり待たされたトム・ウェイツは、この月曜のオーディションに出演し、数曲を歌う。そして、このクラブへの出演により、メジャーレーベルとの契約とデビューへの大きなきっかけを掴み取ったのだ。

 

「Ol'55」

 

 

ある夜、歌い終えたウェイツは、 アサイラム・レコードと関係のあるハーブ・コーエン氏と遭った。

 

このときのことについて、彼はこう回想している。「彼コーエンは、初めてソングライターとして私と契約してくれた。いくらかのお金をくれ、ジェリー・イエスターという人物に取り次いでくれた」このジェリー・イエスターは、アソシエーション、ラヴィン・スプーンフル、ティム・バックリーといった錚々たるミュージシャンを手掛けてきた敏腕プロデューサーだった。作曲家、編曲家として知られ、また自分で歌もうたえば、ピアノも弾くという才人であった。

 

ジェリー・イエスターは、早速ウェイツを連れてスタジオミュージシャンと一緒にハリウッドのサンセット・サウンド・スタジオに入った。全力を込めてレコーディングを行い、ジェリー・イエスターは、ウェイツが書き上げていた一曲「Closing Time」を夢中で編曲した。出来上がったアルバムは、アサイラム・レコードのボスであるデイヴィッド・ゲフィンのお気に入りとなった。トム・ウェイツは「彼はアサイラムから発売しようといってくれた」と回想している。

 

1973年の春頃、トム・ウェイツのデビュー・アルバム『Closing Time』はリリースされた。レコーディングでは、トム・ウェイツがザ・ドアーマンの時代から培ってきたピアノやボーカルの腕前を披露し、トムの旧友であるシェップ・クックがギター、ボーカルとして参加している。その他、ビル・プラマーがベース、トランペッターとしてトニー・テランもレコーディングに参加している。このデビュー作では、ウェイツのハスキーで嗄れたボーカルの妙味に加え、カルフォルニアの真夜中の雰囲気が堪能出来る。カントリー、ブルース、ポップス、ジャズと様々な作風を込めているが、それは15歳の時代から彼がずっと温めてきた作風でもあったのだ。

 

『Closing Time』はセールス的には成功しなかったが、彼がスターシンガーとなる布石となった。ローリング・ストーン誌のスティーヴン・ホールデンが、「型にはまらないセンスとユーモア」「天性の演技力」を好意的に評価した。また、この作風は、2ndアルバム『The Heart Of Saturday Night』に引き継がれた。トム・ウェイツはこの二作目でよりジャジーな作風に舵をとることになる。


「Martha」

 

For Tracy Hyde


1月5日、東京のシューゲイザーバンド、For Tracy Hydeは解散を発表した。約10年間活動を通じ、これ以上の音楽を作ることができないという結論に達したことが主な活動停止の理由となっている。

 

現在、バンドは、最新作『Hotel Insomnia』のリリースを記念したツアーを開催中で、3月25日の渋谷WWWXの公演で10年に及ぶ活動に終止符を打つ。この日のラストライブはyoutubeを通じて無料ストリーミング配信される予定。配信の詳細については後日発表されるとのこと。

 

For Tracy Hydeの解散発表時の声明は以下の通り。声明の全文はバンドの公式ホームページよりお読みいただけます。



親愛なるリスナーの皆様へ
 

まずはじめに、いつもFor Tracy Hydeを応援していただきありがとうございます。この度、3月25日(土)の渋谷WWWXでの公演を最後に解散することになりましたのでご報告いたします。突然の発表となり、大変申し訳ございません。

昨年の暮れから、今後の方向性について徹底的に話し合い、今のメンバーでは、このままではバンドとして、個人として、成長しきれないという結論に達しました。と同時に、誰かを入れ替えるというのは想像を絶することであり、10年という節目も過ぎたので、そろそろ区切りをつけようというタイミングでもありました。

長いようで短い、短いようで長い10年でしたが、この間、音楽を通じて国内外の多くの方々の心に触れることができたことに感謝します。残り少ないライブですが、いつも通り一生懸命に演奏します。それぞれの道を歩みながらも、それぞれのペースで音楽を作り続けていきますので、これからも応援よろしくお願いします。改めまして、皆様に感謝申し上げます。
Unknown Mortal Orchestra 『V』/  Weekly Recommendaiton


 

Label: jagujaguwar

Release Date: 2023/3/17




ルーバン・ニールソン率いるUMOことアンノウン・モータル・オーケストラは、既存作品において、ローファイ、サイケ、ファンク、ディスコ・ポップ、ソウル、多様な音楽性を探求して来た。ニュージーランドとハワイのオワフ島にルーツを持つニールソンは、『V』で自分自身のポリネシア人としてのルーツを辿るとともに、そして、これまでで最も刺激的な作風を確立している。

 

最初のシングル「This Life」から二年が経ち、ようやくUMOのアルバムが完成し、多くのリスナーの手元に届いた。この作品は満を持してリリースされたという気もするし、UMOのキャリアの最高峰に位置づけられる作品である。ボーカル/ギタリストであるルーバン・ニールソンの歌声の変化、そして、バンドそのものの音楽性の転換に気がついたリスナーもいるかもしれない。以前は、Ariel Pinkとならんで、コアなサイケ/ローファイの音楽性を『Ⅱ』で確立したUMOであったが、サイケ/ローファイの要素は、確かに今作『V』にも、目に見えるような形で引き継がれているものの、しかしながら、このアルバムの魅力はそれだけにとどまらない。今作はロックミュージックとして、例えば、ビートルズのような古典的なロック、ザ・ポリスのようなニューウェイブの影響を受けたポップスの後継的な作品としてもお楽しみいただけるはずである。

 

先日、米国の偉大なシンガーソングライター、ボビー・コールドウェルが亡くなったことをご存知の方も少なくないかもしれない。そしてなんの因果か、アンノウン・モータル・オーケストラの『V』の作品の核心にあるのは、(以前のようなサイケ/ローファイ、チルアウトの要素もあるにせよ)間違いなく、コールドウェルに象徴される70/80年代のAOR/ソフト・ロックというジャンでもあるのだ。私見に過ぎないが、このジャンルは、その時代のR&Bやダンスフロアのミラーボールに象徴されるディスコ・ファンクに触発された口当たりのよいポップス/ロックがテーマの内郭に置かれていた。無論、この時代に活躍したコールドウェルとともに、ボズ・スキャッグスの爽やかなロック/ポップスがルパーン・ニールソンの脳裏にはよぎったはずである。そして、それらが以前のファンクやサイケロックの要素と、かれのルーツであるポリネシアのトロピカルな要素が融合し、新鮮なロック・ミュージックが生み出されることになったのである。

 

本作『V』では、バンドのアンサンブル/ソングライティングにおいて磨きに磨きを掛けた珠玉のロックミュージックが徹頭徹尾貫かれている。


ファズを取り入れたエレクトリック・ピアノ、フィルターを掛けたドラム、そして、渋いビンテージ・ソウルに触発されたルバーン・ニールソンのボーカルの融合は、全体に強固な印象をもたらしている。バンドは、オープニングを飾る「The Garden」において、ファンクとソウルをローファイと融合させている。六分にも及ぶループフレーズに全然飽きが来ないのは、ファンクのシンコペーションによるハネが重厚なグルーブ感を与えるとともに、バンドの情熱がこのトラックに全面的に注がれているからである。

 

アルバム発売直前に公開された「Messugah」は、先にも述べたように、ボズ・スキャッグスやボビー・コールドウェルの時代のAORの核心にある音楽性を捉え、それらをワウを用いたサイケデリック・ロック風のトラックとして昇華している。ダンサンブルな要素とポリネシア的なトロピカル性が劇的に融合し、チルアルトとローファイの中間を行く軽快なトラックがここに生み出されている。しかし、この曲の核心にあるのは、70/80年代のディスコ・ファンクやソフト・ロックの爽やかさとグルーブ感であり、それらの要素が意外なコード進行と絡み合い異質なグルーブをもたらす。

 

#3「The Window」は、これまでのUMOにはあまり見られなかったような珍らかな作風となっている。この曲は、フュージョン・ジャズやボサノバを始めとする他地域の音楽の影響が大きく、シティ・ポップに近い作風である。加えて、ファンクと変則的なリズムを融合させることにより、 ジャズ・インストゥルメンタル調の作風に仕上げている。スタイリッシュではあるが、ダンサンブルな要素を失うことのない鮮かな印象は、アルバムに強いアクセントをもたらしている。


2021年の初公開からおよそ二年を経た「That Life」は、シンプルなローファイソングではあるものの、再度聞き直してもいまだなお当時の鮮烈さを失っていない。可愛らしいセサミストリート風の人形が踊るミュージック・ビデオは、UMOの音楽がそれほど難しいわけでもスノビズムに堕するわけでもなく、一般的なリスナーの心に温かく響くものであることを象徴づけている。


「That Life」



その後も、アンノウン・モータル・オーケストラは一貫してハイレベルの音楽をやってのける。#7「Layla」では、70/80年代のソフト・ロックの影響を受け継いだ、ネオ・ソフト・ロックを楽しむことができる。#8「Shin Ramyun」では、ビートルズのアート・ロック、『Hotel California」のイーグルスの音楽をローファイ/チルアウトとして昇華している。内省的な哀愁渦巻くアンノウン・モータル・オーケストラの世界を堪能出来るインストゥルメンタルとなっている。

 

#9「Weekend Run」では、前曲「Shin Ramyun」のギターリフのテーマを反転させたフレーズが象徴的だ。ディスコ時代のボーカルのフレーズとボズ・スキャッグス風の軽妙なロックを融合させ、ファンクの裏拍を強調するダンサンブルなビートを込め、終盤における展開を力強く引っ張っていく。

 

さらに、#10「The Beach」は、マイケル・ジャクソンのJackson 5の象徴的なファンクとR&Bを織り交ぜた痛快なトラックである。ここでUMOは、それ以前の曲と同様、音源ではありながらダンサンブルな空間を提供し、聞き手を往年のミラーボール全盛時代のダンスフロアの幻想的な空間へと誘う。特に、シンコペーションを多用した独特な変拍子のリズムに注目しておきたい。


その後の展開も劇的で、終わりまでスリリングさを片時も失うことはない。


「Nadja」は「The Garden」と呼応するトラックで、ソングライター、ルーバン・ニールソンの恋愛の切ない気持ちが内省的なローファイソングに込められている。それほどしんみりした曲調ではないにも関わらず、ボーカルの切ない雰囲気はメロウな気分を呼び覚ますことだろう。

 

アンビエントに近い抽象的な音楽に挑戦した「Keaukaha」も良い流れを作り、クック船長をテーマにする「I Killed Captain Cook」は、オワフ島のハワイアン・ミュージックの伝統を受け継ぎ、青い海と清々しい砂浜を印象づける曲として楽しめる。さらに「Drag」でも、ハワイミュージックの影響を反映させている。



88/100



Weekend Featured Track「The Beach」

 

 



 

カリフォルニア州パームスプリングスの乾いたフリーウェイとハワイ州ヒロの緑豊かな海岸線の間で作られたVは、Unknown Mortal Orchestraの決定的なレコードとなる。


ハワイとニュージーランドのアーティスト、ルバン・ニールソンが率いるVは、西海岸のAOR、クラシック・ヒット、風変わりなポップス、ハワイのハパ・ホーレ音楽の豊かな伝統からインスピレーションを得ている。


UMOにするために最も鋭い耳を持つルーバン・ニールソンは、手つかずの表面の下に潜む闇に決して目を背けることなく、青い空、ビーチサイドのカクテルバー、ホテルのプールをリスナーの脳裏に呼び起こす。


Vへの道は、そもそも、2019年4月、UMOがコーチェラ出演のため、カリフォルニア州インディオに向かったことから始まった。


その2週間のため、ルーバンは近くのパームスプリングスにAirbnbを予約し、家族も一緒に連れてきた。彼はパフォーマンスの合間に、砂漠のリゾート地のヤシの木が並ぶ通りを見ると、芸能人の両親が太平洋や東アジアのショーバンドに出演している間、兄弟と白いホテルのプールサイドで遊んでいた子供時代を思い出すことに気づいた。


1年後、COVID-19の大流行が目前に迫る中、ニールソンは再び、パームスプリングスのことを考えるようになった。ポートランドの自宅に閉じこもることも考えたが、パームスプリングスに家を購入する。10年間ツアーを続けてきたルーバンは、健康上の問題や燃え尽き症候群に対処しなければならないことを理解していた。


アメリカがロックダウンする中、彼は強制的なダウンタイムを過ごすことになった。さらにヤシの木の下で、彼は内省する空間を得た。そして、音楽が与えてくれたライフスタイルに感謝の念を抱いた。暖かく乾燥した気候は、長年患っていた喘息の問題を解決し、以前にも増して歌がうまくなり、自宅のスタジオで新しい歌が溢れ出すようになった。


3枚目のアルバム『Multi-Love』を録音したとき、ニールソンは最初の2枚のアルバムのローファイなファンクロックのドリームスケープに、ディスコの要素を取り入れた。


「ディスコはクソだ」というスローガンが気軽に飛び交うパンク出身の彼は、その台本をひっくり返すことに喜びを感じていた。Vでは、「Meshuggah」の乾いたディスコ・ファンクに、この衝動の一端を見出すことができる。「音楽の好みには、構築的なものと本能的なものの2種類がある」とルーバンは言う。


「影響力としての味覚は、芸術にとって危険だと私は思う。それから、背筋がゾクゾクするような音楽もある。その震えは、あなたが望んだわけではない。たまたまそうなっただけなんだよ」


パンデミックの初期、ルーバンの弟のコーディがニュージーランドからパームスプリングスに飛んできて、彼のレコーディングを手伝ってくれたことがあったという。背筋が凍るような感動を覚えたレコードの話をしたとき、ルーバンは、両親がエンターテイナーとして働いているとき、子供のころに聞いた、70年代のAMラジオのロックや80年代のポップスのことをふと思い浮かべはじめるようになる。ニールソンはそれらのレコードの自分バージョンを書きたいと思った。その着想は2021年にリリースした2枚の輝かしいアップテンポなシングル「Weekend Run」と「That Life」で結実した。


しかし、黄金のような楽しい時間は、決して永遠には続かなかった。


ハワイの叔父の一人が健康問題に悩まされるようになり、ルーバンは、より鋭く鋭い死が迫っている感覚に直面することに。そこで、ルバンは、レコードのことはさておき、母親ともう一人の兄弟をニュージーランドとポートランドからハワイに呼び寄せ、一緒に暮らすことにした。それが落ち着いた頃、ようやくルーバンはパームスプリングスとハワイ島北東部のヒロの間を行き来するようになった。


パームスプリングスとのつながりは、幼いころの思い出を呼び起こすことにあるのだという。ルーバンにとって、ハワイは同じような意味を持つが、それはまた両親のライフスタイルの暗黒面を思い出させる色あせた記憶でもある。ハワイの旅では、コディと話したAMラジオのロックの名盤をあちこちで聴いた。ヤシの木やプール、華やかな享楽主義など、彼が子供の頃から内面化していたものと、表裏一体となっていた。


ハワイには、ハパハオレ(半白)という音楽がある。Vの最後を飾る曲「I Killed Captain Cook」の湿度の高いギターを中心とした雰囲気から、UMOの特徴的なスタイルで表現されているのを聞くことができる。曲は、ハワイの伝統的な手法で表現され、多くは英語で歌われている。UMOのファーストアルバムからハワイアンミュージックに影響を受けてきたルーバンは、遂にその伝統に自分の居場所を見出した。自分の成功を振り返った時、自分にはハパハオレ音楽を世界的な舞台で表現する責任とプラットフォームがあることに気づいたのだ。


ハワイのいとこの結婚式でコディと再会した後、兄弟はパームスプリングスに向かった。そこで、父親のクリス・ニールソン(サックス/フルート)とUMOの長年のメンバーであるジェイク・ポートレイトの協力を得て、14曲のシンガロング・アンセム、シネマティック・インストルメンタル、お茶目なポップソングを通して、ルーバンが熟考していたすべてを結集し、Vを組み上げていった。「ハワイでは、私や私の音楽から、すべてがシフトしていきました」と彼は回想している。


「突然、私は他の人が何を必要としているのか、家族の中で自分の役割は何なのかを考えることに多くの時間を費やすようになりました。それにまた、自分では真実だと思っていたことが、思っていたよりも大きなものであることも知りました。


私のちょっとしたいたずらの仕方は、私だけのものではなくて、ポリネシア人としての側面がある。しばらく家族のことに集中するために音楽から離れると思ったけど、結局のところ、この二つはつながったんだ」


 Sandrayati 『Safe Ground』

 



 

Label: Decca/Universal Music

Release Date: 2023年3月17日

 


 

 

Review

 

インドネシアのサンドラヤティは、今後世界的な活躍が期待されるシンガーソングライターである。


米国人とフィリピン人の両親を持つ歌手、サンドラヤティは、既に最初のアルバム『Bahasa Hati』をリリースしているが、自主レーベルからイギリスの大手レーベルのDeccaへ移籍しての記念すべき第一作となる。元々、英国の名指揮者とロンドン交響楽団のリリースを始め、クラシック音楽の印象が強いデッカではあるものの、サンドラヤティはソフトなポピュラーシンガーに属している。いかにこのシンガーに対するレーベルの期待が大きいか伺えるようである。

 

説明しておくと、サンドラヤティは、メジャー移籍後の2ndアルバムにおいて自身のルーツを音楽を通じて探求している。東インドネシアの固有の民族であるモロ族から特殊なインスピレーションを受けて制作された。

 

彼女の2つのルーツ、英語とインドネシアの言語を融合させ、コンテンポラリー・フォークとポピュラー・ミュージックの中間点に位置するリラックスした音楽性を提示している。サンドラヤティの音楽は、南アジアの青く美しい海、そして自然と開放感に溢れた情景を聞き手の脳裏に呼び覚ますことになるだろう。そして、サンドラヤティの慈しみ溢れる歌声、温かな文学的な眼差しは、インドネシアの先住民の文化性、また、土地と家の関係や父祖の年代との関係、それから、近年の環境破壊へと注がれる。彼女は、COP26で代表としてパフォーマンスを行っているように、ある地域にある美しさ、それは人工物ではなく、以前からそこに存在していた文化に潜む重要性を今作で見出そうとしているように思える。そして、曲中に稀に現れるインドネシアの民族的な音階と独特な歌唱法は、そのことを明かし立てている。穏やかな歌声と和やかなアコースティックギターを基調にした麗しい楽曲の数々は、普遍的な音楽の良さを追求したものであるともいえるかもしれない。

 

オープニングの「Easy Quiet」から最後までサンドラヤティの音楽は終始一貫している。繊細なアコースティックギターをバックに、その演奏に馴染むような形で、雰囲気を尊重した柔らかな感じのボーカルが紡がれていく。英語とインドネシア語の混交はある意味では、このアーティストのルーツを象徴づけるものといえそうだが、一方で、実際にこのアルバムにゲスト参加しているアイスランドのアーティスト、ジョフリズール・アーカドッティルと同じように、アイスランドのフォークミュージックに近い雰囲気も感じ取ることが出来る。地域性を重んじた上で、そして、その中にしか存在しえぬ概念をサンドラヤティは抽出し、それらの要素を介し、やさしく語りかけるようなボーカルを交え、純粋で聞きやすいフォーク・ミュージックを提示するのである。


サンドラヤティのフォーク・ミュージックは、東南アジアとヨーロッパ、あるいは、米国といった他地域の間を繊細に揺れ動いていくが、中盤に収録されている「Saura Dunia」ではインドネシア語のルーツに重点を置き、モロ族の民族音楽的な音響性を親しみやすい音楽として伝えようとする。特に音楽的に言えば、アイスランドの音楽にも親和性のある開放的で伸びやかな彼女の歌声、そして、この民族音楽の特有の独特なビブラートは他のどの地域にも見出すことが叶わない。地上の音楽というより、天上にある祝福的な音楽とも称せるこの曲は、実際の音楽に触れてみなければ、その音の持つ核心に迫ることは難しいだろう。


他にも「Vast」では、ピアノとストリングスとボーカルの融合させたサウンドトラックのような壮大な音楽性を楽しむ事ができる。しかし、一見して映画のBGMなどではお馴染みの形式は、決して古びたものになっていないことに気がつく。サンドラヤティという歌手の繊細なトーンの変化や、そのボーカルスタイルの変化があり、清新な印象を聞き手に与える場合もある。コラボレーターのアイスランドのオーラブル・アーノルズのピアノは絶妙にシンガーの歌声を抒情的に強化し、繊細かつダイナミックな喚起力を呼び覚ますことに成功している。

 

また、アルバムの最後に収録されている「Holding Will Do」ではゴスペルに近いアーティストのソロボーカルを楽しめる。ピアノのフレーズと共に、ジャズ・ボーカルの影響を受けた曲で、アルバムのクライマックスに仄かな余韻を添える。最後には、語りに近いスタイルに変化するが、これで終わりではなく、次作アルバムへとこれらのテーマが持ち越されていきそうな期待感がある。

 

サンドラヤティの2ndアルバム『Safe Ground』には、インドネシアやバリ島、ジャワ島、それらの土地にゆかりを持つアーティストの人生観が温和なポピュラーミュージックの中に取り入れられている。アーティストは、これらの10曲を通じて、安全な地帯を見出そうと努めているように思える。そして、それらの表現はロジカルな音楽ではなく、詩情を織り交ぜた感覚的な音楽として紡がれてゆく。最初から完成しているものを小分けにして示すというわけではなく、各々のトラックを通じて、何らかの道筋を作りながら、最後に完成品に徐々に変化していくとも捉えることが出来る。


セカンドアルバムで、サンドラヤティの語るべきことが語り尽くされたとまでは言いがたいが、しかし、一方で、シンガーの歌の卓越性の一端に触れる事が出来る。本作は、週末をゆったり過ごしたいとお考えの方に潤沢な時間を授けてくれると思われる。



86/100





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 Fred again...、Skrillex、Four Tetの3人は、本日(3月17日)、初のコラボレーションシングルをリリースしました。

 

現在国内のエレクトロシーンで高い知名度を誇るFred again...、そして米国のプロデューサー、Skirillex,さらにはベテランの域に達しつつあるテクノシーンの象徴的な存在、Four Tetというこのジャンルのファンにとっては願ってもないようなスペシャルコラボレーションです。


「Baby again...」は、昨年7月のFred again...のBoiler Roomのセットで初めて演奏され、以来このパフォーマンスは1600万回ストリーミングされています。さらに、このトラックは、Lil BabyとDa Babyの2019年のトラック「Baby」をサンプリングしている。

 

さらに、この曲は、イギリスのパングボーンでの即席のスタジオセッションで制作された。このことにより、トリオはファンの間で、パングボーン・ハウス・マフィアというニックネームを獲得したようです。それ以来、この曲は3人のアーティストのライブセットの定番となっている。


先日、フルカタログをストリーミングで全公開した伝説的なヒップホップトリオ、De La Soul。今回、ストリーミングでの公開もあり、長い時を経て、デ・ラ・ソウルのリバイバルが到来しつつあるようです。

 

今週、メンバーであるMaseoとPosdnuosは、米国の深夜トーク番組”The Tonight Show Starring Jimmy Fallon”に出演し、同じくヒップホップの象徴的な存在であるThe Rootsと共に「Stakes Is High」をライブパフォーマンスしました。

 

De La Soulは、今年2月に54歳で亡くなったトゥルゴイ・ザ・ダヴの訃報に続き、待望のストリーミング・サービスでのバックカタログのリリースについてジミー・ファロンとトークしています。実際のパフォーマンスもまったく年齢を感じさせない躍動的なフロウを披露しています。

 

 

 

 

UKのエレクトロニック・デュオ、ケミカル・ブラザーズが2023年最初の新曲「No Reason」を携えてカムバックを果たした。


この新曲は、彼らの最近のライブ・セットのハイライトでもあり、2019年のアルバム「No Geography」、さらに2021年にリリースしたシングル「The Darkness That You Fear」と「Work Energy Principle」に続く。デュオは、現在、フォローアップの制作に取り掛かっているという。


「No Reason」の付属ビデオはSmith & Lyallが監督、Gecko Theatreの振付をフィーチャーしています。


また、このトラックは、未発表のB面「All Of A Sudden」と共に限定版の赤い12インチ・ヴァイナルとして4月28日より発売されます。



チケットマスターの販売時のトラブルなどもありましたが、テイラー・スウィフトのthe Eras Tourが3月17日、アリゾナ州グレンデールにて無事開幕しました。

 

今回、埋め合わせのような形で、テイラー・スウィフトは複数の新しいシングルバージョンを四曲同時にファンに対して公開します。

 

そのうちの3曲は、カタログに掲載されている曲のテイラーズ・ヴァージョンを再録音した「Eyes Open」、「Safe & Sound」、「If This Was A Movie」。また、加えて、スウィフトがルイス・ベルとフランク・デュークスと共同プロデュースした2019年のアルバム『Lover』のアウトテイク「All Of The Girls You Loved Before」という新曲も併せて公開された。


「Eyes Open」と「Safe and Sound」は、いずれも2012年の『ハンガー・ゲーム』のサウンドトラックとして提供されている。

 

シビル・ウォーズとしてスウィフトと「Safe and Sound」でコラボしたジョイ・ウィリアムズとジョン・ポール・ホワイトは、この新しいバージョンで個別にクレジットされています。「If This Was a Movie」は、2010年の『Speak Now』のデラックス・エディションに収録されている。