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Khruangbin 『A LA SALA』



Label: Dead Oceans

Release: 2024/04/05


 

Review


ヒューストンのR&Bグループ、クルアンビンはCoachellaへの出演を控えている。『A LA SALA』はアルバムのオープナーで示されるように、シンプルに言えば、安らぎに満ちたアルバムである。

 

2021年頃から多くのバンドに散見されたケースは、バンドアンサンブルの一体感を失いつつあった。しかし、徐々にであるが、それらの分離的な感覚も解消されつつあり、バンドらしい息の取れたサウンドが出てくるはずだ。


その手始めとなるのが、クルアンビンの『A LA SALA」となるかもしれない。クルアンビンのサウンドは全般的にはアフロソウルの範疇にあり、トミー・ゲレーロ(Tommy Guerro)のサウンドを彷彿とさせる。


もちろん、それだけではなく、レゲエ/ダブに近いギターサウンドやリズム、ヨットロックに比する安らいだトロピカルなサウンドというように、単一のジャンルでは語り尽くせないものがある。月並みな言い方になってしまうが、クロスオーバーサウンドの代表例となりえる。しかし、最新作に共通したサウンドの特徴があるとすれば、ホリー・クックの主要な楽曲に見出されるような”リゾート的な雰囲気を帯びたダブ/レゲエ・サウンド”と言えるかもしれない。ただ、クルアンビンはバンドであるので、スタジオのライブセッションの妙味に重点が置かれている。

 

アルバムで抑えておきたい曲を挙げるとすれば、3曲目の「May Ninth」がその筆頭となりそうか。ダブ風のスネアの一打から始まり、反復的なベースラインとフュージョンジャズに基軸をおいたギターサウンドがしなやかなグルーブ感を生み出す。そこに心地よいボーカルが合わさり、メロウなムードを生み出す。


クルアンビンのトリオが重視するのは曲の構成やロジカルではなく、スタジオのライブセッションから作り出されるリアルな心地良さ。ムード感とも言えるが、シンプルなスネアドラムとベースライン、フランジャーの印象が強いギターは見事な融合をみせ、アフロソウルを基調とする唯一無二のサウンドを丹念に作り上げていく。ライブセッションでの間の取り方やリズムの合わせ方など、演奏面では目を瞠るものがあり、それらはリゾート的な雰囲気を越えて、Architecture In Helsinkiの名曲「Need To Shout」のように天国の空気感にたどり着く場合がある。

 


前のアルバムがどうだったのかは定かではないが、アフロソウルやフュージョンの要素に加え最新作ではレゲエ/ダブのサウンドが強い印象を放つ。「Todavia Viva」はスネアのリムショットで心地よいリズムを生み出し、淡いダブサウンドを追求する。「Juegos y Nubes」は、Trojan時代のボブ・マーリーの古典的なレゲエをベースに、ライブセッションを通じて、心地よい音を探ろうとしている。


やはり「May Ninth」と同じように、ムード感が重視されていて、コンフォタブルな感覚を味わうことができる。正確な年代こそ不明であるが、60年代、70年代のファンクソウルをベースにした「Hold Me Up」はヴィンテージソウルに対する彼らの最大の賛辞代わりである。アルバムの終盤に収録されている「A Love International」では、セッションのリアルな空気感とスリリングな音の運びを楽しむことができる。この曲でもフュージョン・ジャズに焦点が置かれている。

 

アルバムの中にダンスフロアのクールダウンのような形で導入されているトラックが複数ある。例えば、「Farolim de Felguriras」では、ダブやアフロソウルをニューエイジやアンビエントのような形に置き換えていて面白い。その他、「Caja de la Sala」ではギターのリバーブやディレイのエッフェクトを元に、ニューエイジ/ヒーリングミュージックに近い質感を作り出している。


アルバムの終盤は、やはりトミー・ゲレーロを彷彿とさせるジャズとアフロソウルの中間に位置するコアなアプローチ。ただ、ライブセッションを重視している中でも、曲の起伏のようなものが設けられている点が今作の最大の特徴である。これはリスニングの際にもユニークさが感じられるかもしれない。アフロソウルをサティのフランスの近代和声と組み合わせたクローズ「Les Petis Gris」は新しい気風があり、ちょっとしたエスプリみたいなものを感じる。

 

このアルバムはムードや空気感やライブセッションの心地よさが追求されている。その点では、聴くごとに渋さが出てくるような作品と言えるかもしれない。 ソウルというより、レゲエやダブ、そしてフュージョンジャズに近いアルバムで、たしかにビンテージな感覚に満ちている。

 

 

78/100
 

 

 「May Ninth」

 



ヴィッキー・フェアウェル(Vicky Farewell)の2ndアルバム『Give a Damn』はMac's Record Labelから5月10日にリリースされる。その名の通り、LAを拠点とするこのアーティストを、スウィートなヴォーカルに彩られたR&Bのスロージャムと官能的なシンセファンクの立役者として紹介している。


アルバムの最新シングル "Push It "は、彼女の最もシュガーコーティングされた作品のひとつに数えられる。ミニマルな催眠インストゥルメンタルが、昔の恋愛を回想するファーウェルのクーイング・ヴォーカルの土台を築く。


「この曲では、『ジョパディ!』のテーマ・ソングの私なりのひねったバージョンを目指していたの」と彼女はこの曲のシンプルで効果的なメロディについて話している。歌詞についてこう続ける。


「停滞することへのフラストレーションを表現したかった。時には、みんなを一緒に連れて行くことができない、という悲痛な現実に直面することもあるのだから。ポール・サイモンの『Still Crazy After All These Years』という曲をいつも思い出す。この特別な曲をどの視点から見るかにもよるけれど、『Push It』はそれを私が翻案したものなの」


この曲と一緒に、フェアウェルはアルバムジャケットにある西海岸の雰囲気を見事にアニメーション化したミュージックビデオを公開している。

 

 

「Push It」 

 




Vicky Farewell 『Give A Down』


Label : Mac's Record Label

Release: 2024年5月10日

 

Tracklist:

1. Intro (Remember Me)

2. Semi Auto

3. Make Me

4. Push It

5. Textbook

6. Isn't It Strange

7. Tern Me On

8. Luxury Hellscape

9. Love Ya Like Me

10. Always There

 Fabiana Palladino 『Fabiana Palladino』

 

 

Label: XL Recordings(Paul Institute)

Release: 2024/ 04/05



Review


ロンドンを拠点に活動するソングライター/プロデューサーによる記念すべきデビュー・アルバム『Fabiana Palladino』は、大胆不敵にもアーティスト名をタイトルに冠している。ファビアーナは、間違いなくジェシー・ウェアのポスト世代に位置づけられるシンガーである。現在、ロンドンではR&Bのリバイバルが盛んで、JUNGLEを始めとする、ディスコソウルをヒップホップ的に解釈するグループ、もしくはGirl Rayのようにディスコサウンドをインディーロック風に再解釈を試みるグループ等、多彩なディスコリバイバルによるシーンが構築されつつあるようだ。

 

レディオヘッドなどのリリースでおなじみのXL Recordingsは90年代にはロックのリリースも手掛けるようになったが、80年代まではクラブミュージックを得意としていたレーベルであった。つまり、今回のファビアーナ・パラディーノの最新作は、レーベルにとって原点回帰のような意味を持つ。R&Bにとってターニングポイントとなるようなリリースになるかもしれない。

 

ファビアーナ・パラディーノのサウンドは、やはりリバイバルの気風に彩られている。 アーティストは、80年代のクインシー、ダイアナ・ロス、ジョージ・ベンソンといったブラック・コンテンポラリー/アーバン・コンテンポラリーの象徴的なアーティストの音楽の系譜を受け継ぎ、それらを現代的なクラブミュージックの視点を通し、斑のないモダンなサウンドを見事に構築する。それらのモダンなテイストは、現代のR&Bのスター、ジェシー・ウェア、ロイシン・マーフィーのようなデュープ・ハウスを絡めた重厚なサウンドのプロダクションが特徴である。

 

しかし、リバイバルや現代の音楽シーンを踏襲しているとはいえ、アーティストの唯一無二のカラーがないかといえばそうではない。ロジャー・プリンスがかつて、ファンクソウルを下地にジャズやロック、ラップ、そしてポップスと、このジャンルの可能性を敷衍してみせたように、ファビアーナもアーバン・コンテンポラリーをベースとして、多彩なサウンドをその中に織り交ぜる。これこそが、このアーティストが”次世代のプリンス”と称される所以なのである。

 

 

アルバムのオープニングを飾る「Closer」はディープ・ハウスの気風を残しつつも、そのサウンドの風味は驚くほど軽やかで爽やかである。それはかつてのアーバン・コンテンポラリーに属するアーティストがR&Bとポップスを融合させ、ブラック・ミュージックとしての深みとは対極にある軽やかさという点に焦点を絞っていたのを思い出す。これらのサウンドの最終形態は、チャカ・カーンの1984年の「Feel For You」によって集大成を見ることになった。チャカ・カーン等のニューソウルにまつわるサウンドについては、ブラック・ミュージックの評論の専門家によると、以前のR&Bに比べて、「編集的なサウンド」と称される場合がある。これはソングライターのリアルな歌唱力や、R&Bそのものが持つ渋さとは相異なる新境地を開拓し、その後のマイケル・ジャクスンに象徴されるような、きらびやかなポップスへの流れを形作った経緯がある。これは、現代的なオルタナティヴロックと同じように、録音したものをスティーブ・ライヒのようにミュージック・コンクレートの編集を加え、磨き上げるという手法によく似ている。

 

しかし、ソロ作品としてのプロデュース的なサウンドが目立つとはいえ、ファビアーナの生み出すサウンドは驚くほど耳に馴染む。編集的なサウンドだからといって、複雑な構成を避けて、ジェシー・ウェアのようなビートに乗りやすく、そして、なめらかな曲の構成が重視されている。そこにロジャー・プリンスのように色彩的な和音やメロディーが加わる。これが現時点のファビアーナの音楽の最大の長所であり、言い換えれば唯一無二のオリジナリティである。

 

迫力のあるベースラインを強調するロイシンやジェシーとは異なり、明らかにファビアーナのR&Bサウンドは、軽妙なAOR/ソフト・ロックの系譜に属する。いわばその軽やかさは、二曲目の「Can You Look In The Mirror?」で示されるように、クインシー・ジョーンズやマーヴィンの80年代のアプローチに近いものがある。そしてこの点が低音域が強調されるハウスのサウンドとはまったく異なる。ファビアーナのサウンドは、ココ・シャネルのデザインのように足し算ではなく引き算によって生み出される。これがおそらく耳にすんなりと馴染む理由なのだろう。

 

80年代のアーバンコンテンポラリーの見過ごせない特徴として、いわばドリーミーな感覚がR&Bサウンドの中に織り込まれていた。それらの特徴は、「I Can't Dream Anymore」に見出すことが可能だ。そして面白いことに、パラディーノの場合はそれらをエクスペリメンタルポップのフィルターを通し、かつてのプリンスが試みたように近未来的なR&Bを構築するのである。もうひとつ、現代的なR&Bのシーンのアーティストとは少し異なるサウンドの特徴が垣間見える。それが80年代以前のブラック・ミュージックの重要なテーマのひとつだったファンクの要素である。これらは、カーティス・メイフィールドのR&Bやマーヴィン・ゲイの曲のベースという形で繋がっていったのだったが、それらの系譜をファビアーナは踏襲した上で、最終的には、やはり軽快で聞きやすいポップスとして落とし込んでいる。ここにもアーティストのシンガーソングライターとは相異なる、敏腕プロデューサーとしての表情を伺い知ることができる。

 

そして、かならずしもR&Bという枠組みに囚われていないということも痛感し得る。「I Care」では現代的なUKのピューラーミュージックを踏襲し、ボウルの中でかき混ぜ、R&Bやネオソウルのテイストをバニラ・エッセンスのようにまぶす。これがメロウなサウンドから、ほんのりと甘い香りが立ち込めてきそうな理由なのだ。特に、心を惹かれるのは、商業主義のポピュラーサウンドに軸をおいた上で、その中にエクスペリメンタルポップのニュアンスを添えていること。ここにも歌手とは異なるプロデューサーとしての才覚が非常にさりげなく示されている。

 

R&Bシンガーとしての才覚が遺憾なく発揮された「Stay With Me Through The Night」はこのアルバムのハイライトとなりそうだ。ダイアナ・ロスの80年代の作風をわずかに思い出させる。この時代、ロスは以前の時代の作風から離れ、開放的で明るいサウンドを志向していた。ファビアーナの場合は、それよりも落ち着いたメロウなサウンドを作り出している。この曲には、デビューアルバムということを忘れさせてしまうほど、どっしりとした安定感が込められている。もちろん、その道二十年で活躍するようなベテランのシンガーのような信頼感がある。また他の曲に比べ、ファンクソウルの性質が強く、そしてベースラインも強調されている。これが他の曲よりも深いグルーブ感をもたらしている。ダンスフロア向きのナンバーと言えそうだ。

 

80年代のジョージ・ベンソンを始めとする、偉大なブラックミュージックの開拓者は、あの時代に何を求めていたのか、そして何を提示しようとしていたのか。おそらくであるが、彼らすべてのブラックミュージックに属する歌手やグループは、どのような苦難の時代にあろうとも明るい未来を見据えていたし、そして心から希望を歌っていた。だからこそ、多くの人を勇気づけてきたのだった。最終的には決して絶望を歌うことはなかったことは、ライオネル・リッチーやマイケル・ジャクスンといった面々が示したことである。ファビアーナの場合も同様で、現代的な悲壮感に基軸を置く場合もあるが、ベンソンのように未来における希望を歌おうとしている。そして、これが音楽そのものにワクワクした感覚や漠然とした期待感をもたらす。

 

ファビアーナ・パラディーノのアーバンソウル/ネオソウルの次世代を行くサウンドは、その後、さらに明るい印象を以ってクライマックスへと向かう。 「Deeper」では同じように、ジョージ・ベンソンの近未来的なソウルのバトンを受け継ぎ、よりモダンな印象を持つサウンドへと昇華させる。続く「In The Fire」では、低音域の強いディープ・ハウス、アシッド的な香りを持つR&BをEDMのサウンドと結びつける。パラディーノのR&Bの表現は、その後もスムーズに繋がっていく。これらの流動的なR&Bサウンドを経たのち、クローズ「Forever」において、しっとりとしたメロウなソウルでエンディングを迎える。分けてもバラードという側面でシンガーの並々ならぬ才覚が発揮された瞬間だ。今年度のR&Bの中では間違いなく注目作の一つとなる。

 

 

 

90/100

 

 

Best Track- 「I Can't Dream Anymore」

 

©Nikita Freyermuth


Yaya Bey(ヤヤ・ベイ)が新曲「me and all my n*****s」を発表した。この曲は、彼女の次のアルバム『Ten Fold』に収録される。この曲には、シャシディ・デイヴィッドが監督し、ベイ自身が振り付けをしたビデオが付属している。

 

「このビデオは、私の父と彼のファースト・アルバムのスタイルへのオード」と彼女は説明した。彼女の父でラッパーの故グランド・ダディI.U.は、1990年にデビューアルバム『Smooth Assassin』をリリースした。


Yaya Bey(ヤヤ・ベイ)による新作アルバム『Ten Fold』は5月10日にBig Dadaからリリースされる。

  

「me and all my n*****s」


©Rocket Weijers


メルボルンのフューチャーソウルグループ、ハイエイタス・カイヨーテ'(Hiatus Kaiyote)は、ニューアルバム『Love Heart Cheat Code』を発表した。Brainfeeder/Ninja Tuneから6月28日にリリースされる。注目のリリースなので、ぜひとも発売日を抑えておきたい。

 

2021年の『Mood Valiant』に続くこのアルバムは、先にリリースされた「Everything's Beautiful」に続くシングル「Make Friends」がリードしている。アルバムのアートワークとトラックリストは下記よりチェック。


この曲について、ヴォーカルのナオミ・"ナイ・パーム"・サーフィールドは声明でこう語っている。

 

「私の人生における女性たちから、男性たち、そして私のノンバイナリーな友人たちに至るまで、私が愛する人たちの様々な例を表現したかったの」


「私は最大主義者なの。私は何でも複雑にしてしまう。でも、人生でいろいろなことを経験すればするほど、リラックスして奔放になれる。このアルバムは、私たちがそれを明確にした結果だと感じている。曲が複雑さを必要としないのであれば、複雑さを表現する必要はなかったの」


「Make Friends」

 


Hiatus Kaiyote 『Love Heart Cheat Code』


Label: Brainfeeder/ Ninja Tune

Release : 2024/06/28


Tracklist:


1. Dreamboat

2. Telescope

3. Make Friends

4. BMO is Beautiful

5. Everything’s Beautiful

6. Dimitri

7. Longcat

8. How To Meet Yourself

9. Love Heart Cheat Code

10. Cinnamon Temple

11. White Rabbit

 

POND Creative


ニューヨークを拠点に活動するSSWの新星、S. Raekwon(S.レイクウォン)は、j次作アルバム『Steven』の最新シングル「If There's No God...」をリリースした。フォーク・ミュージックとソウルを融合させたスタイルは「Folk-Soul」とも称するべきだろうか。この曲は、前作「Old Thing」と「Steven's Smile」に続くシングル。この曲のミュージックビデオは以下よりご覧下さい。


「『If There's No God...』はアルバムの感情的、テーマ的な中心作なんだ。自分の中にある醜さが自分という人間を定義しているのかどうかを問うている。人間というのは、自分の最悪の部分によって判断されるべきなのだろうか? それとも、私はちょっとだけ自分に厳しすぎるのだろうか? しばらくの間、この曲をどんなふうに仕上げるか迷っていたんだ。やはり、宗教と道徳は大きなテーマになっている。でも、この作品が本当に好きなのは、そのどれにも答えようとしないからなんだ。誰も批判しちゃいない。だれも自分のことしか考えていないだけだよ」


PONDクリエイティブはビデオについてこう付け加えた。「ニューヨークを中心としたグラウンドホッグ・デイのような物語を実現するため、マンハッタンからスタテン島まで、スタテン島フェリーに乗り、何度も何度も往復してみた」

 

「日の出、日没、朝、昼、夜明け、夕暮れ、後悔から羞恥心、怒り、混沌まで、スティーヴンがフェリーの壁の中で様々な感情を経験するのを見守っていた」


S. Raekwonによる新作アルバム『Steven』は5月3日にFather/Daughter Recordsからリリースされる。黄昏に照らされるマンハッタンのフェリーのミュージックビデオは、ヴィンテージな映像処理が施され、クールで美しい。アーティストはマンハッタンの望洋の果てに何を見るのか??



「If There's No God...」

 

©David Black

 

R&Bやサイケ、ダブ、レゲエ、ウェストコーストロックをごった煮にし、それらをスタイリッシュなエレクトロニック・サウンドに落とし込み、フロアをダンスの熱狂へと導くテキサス/オースティンのトリオ、クルアンビン(Khruangbin)がニューシングル「Pon Pón」をリリースした。

 

このシングルで、クルアンビンはヴィンテージソウルとトロピカルとの中間点を探る。いかにもアナログレコードのサウンドに依拠しているが、スノビズムよりもポピュラリティに照準が置かれ、親しみやすいナンバーとなっている。古典的なR&B/ファンクのギターラインとボーカルのサンプリングの合致がスモーキーな印象を醸し出す。しなるようなベースラインにも注目したい。

 


「Pon Pón」

 

 


アルバムのレビューは以下よりお読み下さい。


New Album Review-  Khruangbin 

 

 

 Khruangbin 『A la Sala』


Label: Dead Oceans

Release: 2024/04/05

 

Tracklist:


1. Fifteen Fifty-Three

2. May Ninth

3. Ada Jean

4. Farolim de Felgueiras

5. Pon Pón

6. Todavía Viva

7. Juegos y Nubes

8. Hold Me Up (Thank You)

9. Caja de la Sala

10. Three From Two

11. A Love International

12. Les Petits Gris




Khruangbin – 2024 Tour Dates


4/14/24 – Coachella – Indio, CA
4/18/24 – Alex Madonna Expo Center – San Luis Obispo, CA*
4/19/24 – Alex Madonna Expo Center – San Luis Obispo, CA*
4/21/24 – Coachella – Indio, CA
4/23/24 – Brooklyn Bowl – Las Vegas, NV *
4/24/24 – Brooklyn Bowl – Las Vegas, NV *
4/26/24 – Revel – Albuquerque, NM *
4/27/24 – Revel – Albuquerque, NM *
5/21/24 – The Met – Philadelphia, PA ^
5/22/24 – The Met – Philadelphia, PA ^
5/23/24 – The Met – Philadelphia, PA ^
5/25/24 – Boston Calling – Boston, MA
5/26/24 – Saratoga Performing Arts Center – Saratoga Springs, NY ^
5/28/24 – Rockin’ At The Knox – Buffalo, NY ^
5/29/24 – Jacob’s Pavillion – Cleveland, OH ^
5/31/24 – History – Toronto, ON ^
6/1/24 – History – Toronto, ON ^
6/2/24 – History – Toronto, ON ^
6/4/24 -The Masonic Temple Theatre – Detroit, MI ^
6/7/24 – The Salt Shed – Chicago, IL
6/8/24 – The Salt Shed – Chicago, IL ^
6/9/24 – The Salt Shed – Chicago, IL ^
6/11/24 – Red Hat Amphitheater – Raleigh, NC
6/14/24 – Bonnaroo – Manchester, TN
7/4/24 – Roskilde Festival – Roskilde, DK
7/6/24 – Werchter Festival – Werchter, BE
7/7/24 – Down The Rabbit Hole – Ewijk, NE
7/10/24 – Jardin Sonore – Vitrolles, FR
7/11/24 – Musilac Festival – Aix-les-Bains, FR
7/12/24 – Bilbao BBK – Bilbao, ES
7/13/24 – Nos Alive Festival – Lisbon, PT
7/16/24 – Zagreb SRC Salata – Zagreb, HR
7/17/24 – Metastadt Open Air – Vienna, AT
7/18/24 – Colours of Ostrava – Ostrava, CZ
7/20/24 – Electric Castle – Bontida, RO
7/24/24 -Luzern Live Festival – Lucerne, CH
7/26/24 – Latitude Festival – Suffolk, UK
8/14/24 – Greek Theatre – Berkeley, CA %
8/15/24 – Greek Theatre – Berkeley, CA %
8/16/24 – Greek Theatre – Berkeley, CA %
8/18/24 – Edgefield – Troutdale, OR %
8/19/24 – Edgefield – Troutdale, OR %
8/21/24 – Kettlehouse – Bonner, MT %
8/22/24 Kettlehouse – Bonner, MT %
8/24/24 – Granary Live – Salt Lake City, UT %
8/26/24 – Red Rocks – Morrison, CO &
8/27/24 – Red Rocks – Morrison, CO &
8/28/24 – Red Rocks – Morrison, CO %
9/20/24 – Forest Hills Tennis Stadium – New York, New York +
9/21/24 – Forest Hills Tennis Stadium – New York, New York +
9/23/24 – The Anthem – Washington, DC $
9/24/24 – The Anthem – Washington, DC $
10/2/24 – The Factory – St.Louis, MO $
10/3/24 – The Factory – St.Louis, MO $
10/9/24 – Saenger Theatre – New Orleans, LA $
10/10/24- Saenger Theatre – New Orleans, LA $

* w/ Hermano Gutiérrez
^ w/ John Carroll Kirby
% w/ Peter Cat Recording Co.
+ w/ Men I Trust
$ w/ Arooj Aftab

 


デュア・リパがニューアルバムを正式に発表した。2020年の『Future Nostalgia』に続くアルバム『Radical Optimism』は5月3日にリリースされる。
 
 
先にリリースされたシングル「Houdini」と「Training Season」が収録されている。ジャケットアートワークとトラックリストは以下をチェック。
 

「数年前、友人がラディカル・オプティミズムという言葉を紹介してくれた。そのコンセプトは私の心に響いたし、それを自分の人生に織り込んで遊び始めたら、もっと興味が湧いてきた。カオスを優雅に乗り越え、どんな嵐も切り抜けられるような気がする。それと同時に、サイケデリア、トリップホップ、ブリットポップといった音楽の歴史にも目を通すようになった。サイケデリア、トリップ・ホップ、ブリット・ポップといった音楽の歴史は、私にとって常に自信に満ちた楽観的なもので、その正直さと姿勢は、レコーディング・セッションに持ち込んだ感覚」
 
 
アルバムでの彼女の主要なコラボレーターは、『Houdini』や『Training Season』と同じだ: テーム・インパラのケヴィン・パーカー、キャロライン・ポラチェック/チャーリーXCXのコラボレーターであるダニー・L・ハーレ、トビアス・ジェッソ・ジュニア(アデル、ハリー・スタイルズ、マイリー・サイラス)、キャロライン・アイリン(リパのヒット曲の共同作曲者)である。

 
ニューアルバムがどのようなサウンドになるのか、事前情報はほとんどない。彼女は最近、ニューヨーク・タイムズ紙に「1970年代スタイルのサイケデリア」にインスパイアされていると語っている(そのような兆候はほとんどないが)。2022年初頭、リパは自身のポッドキャスト『デュア・リパ:アット・ユア・サービス』でエルトン・ジョンにアルバムは半分ほど完成していると話していた。
 
 
同年末にVarietyの取材に対して、デュア・リパは次のように述べた。「制作を続けているうちに一転して、まとまりのあるサウンドになりつつあると今は本当に感じている。だから、新年の初めの数カ月は書き続けて、それが私をどこに連れて行くのか見てみようと思っている。アルバムはこれまでとは違っていて、ポップであることに変わりはないんだけど、サウンド的にも違うし、歌詞のテーマもより明確になっている。タイトルを言えば、すべてが理解できるだろうね」



 
Dua Lipa  『Radical Optimism』



Tracklist:

1. End of an Era
2. Houdini
3. Training Season
4. These Walls
5. Whatcha Doing
6. French Exit
7. Illusion
8. Falling Forever
9. Anything for Love
10. Maria
11. Happy for You


ニューヨーク/バッファローを拠点にS.Raekwonとしてレコーディングを行うシンガーソングライター、Steven Raekwon Reynolds(スティーヴン・レイクウォン・レイノルズ)がニューアルバムを発表した。

 

2021年のデビューアルバム『Where I'm at Now』と2022年のEP『I Like It When You Smile』に続く『Steven』は、Father/Daughter Recordsから5月3日にリリースされる。新曲「Old Thing」は以下より。


「このアルバムは去年の夏、長年の友人でドラマーのマリオ・マラチと一緒に南イリノイのリビングルームでレコーディングした。僕ら2人は数本のマイクを囲んで向かい合って座り、シングルテイクから曲を作っていった。ライヴを反映した、より生々しくダイレクトなサウンドを撮りたかったのさ」


「スティーヴンは、自分という人間を鏡のように映し出し、振り返っている音なんだ。自分の中にある多種多様なものを理解しようとしているんだよ。この曲を通して、自分が与えられた愛に値しないと感じることがあるのは、自分一人ではないとわかった。そして、その愛が得られたときに、それを受け入れることを学ぶんだ」

 


S. Rakewon 『Steven』

Label: Father/Daughter

Release: 2024/05/03

 

Tracklist:


1. Steven’s Smile

2. Old Thing

3. Winner’s & Losers

4. The Fight

5. The Camel

6. If There’s No God…

7. Does the Song Still Sound the Same?

8. It’s Nothing

9. What Love Makes You Do

10. Katherine’s Song


Pre-order(INT):


https://sraekwon.lnk.to/steven


本日、イギリスの多国籍グループ、イビビオ・サウンド・マシーンは、2024年5月3日にマージ・レコードからリリースされる『Pull The Rope』のタイトル・トラックを公開した。


「プル・ザ・ロープ」は、脈打つ、催眠術のようなダンスフロアバンガーで、分断された世界における団結を願う、インスタント・クラシックのイビビオ・サウンド・マシーン・ジャムだ。ファンカデリックの次世代のサウンドに酔いしれてみよう。


このトラックは、世界における違いを克服する平和的な方法を見つける希望について歌っている。ロープの両端に立つというアイデアがそれを象徴している。友人のリッチモンド・ケッシーとヘレン・マクドナルド、そしてイーノ・ウィリアムスの母親をコーラスのボーカルに起用し、より大きなサウンドを提供してもらった。音楽的には、ポスト・パンクとエレクトロニック・サウンドがミックスされている。


"Pull the Rope "には、ダーリントン・エニアムが監督したミュージック・ビデオが付属している。アフロフューチャーとクラシックなダンス・ビデオの雰囲気を思わせる、宇宙を飛び回るような映像だ。


「イーノの美しい歌声と存在感に魅了された私は、彼女のビジュアル・パフォーマンスをパワフルな存在のモノマネに変えてしまった」と、ウィリアムズが天空のファラオに扮したことについてエニアムは説明する。



「Pull The Rope」



Ibibio Sound Machine on tour:

May 06 Newcastle, UK – Boiler Shop

May 11 Belfast, UK – Cathedral Quarter Arts Festival

May 22 Portsmouth, UK – Wedgewood Rooms

May 23–26 Walton-on-Trent, UK – Bearded Theory Festival

May 23 Norwich, UK – Arts Centre

May 25 Birkenhead, UK – Future Yard

Jun 05 Cambridge, UK – Junction 2

Jun 06 London, UK – KOKO

Aug 01–04 Oxfordshire, UK – Wilderness Festival

Aug 15–18 Brecon Beacons, UK – Green Man Festival

Nov 08 Bristol, UK – SWX

Nov 09 Leeds, UK – Project House

Nov 14 Brighton, UK – Concorde 2

Nov 15 Manchester, UK – Academy 2

Nov 16 Dublin, IE – Whelan’s

Nov 18 Edinburgh, UK – Summerhall

Nov 19 Nottingham, UK – Rescue Rooms

 

©Emily Lipson

カナダのR&Bシンガー、Sharlotte Day Wilson(シャーロット・デイ・ウィルソン)は、ニューアルバム『Cyan Blue(シアン・ブルー)』を発表しました。
 
 
シャーロット・デイ・ウィルソンはトロントを拠点に活動するカナダのシンガー・ソングライター。ウィルソンは、ジャズやR&Bの影響を受けた、ゆっくり燃え上がるような、いぶし銀のようなサウンドの持ち主だ。
 
 
 R&Bの影響を受けたサウンドは、すでにクラシックな雰囲気を醸し出している。彼女はこれまで 4月に発表したゴスペル調の "Work "から、BADBADへのゲスト参加まで、静かに曲を作り続けている。からBADBADNOTGOODの "In Your Eyes "へのゲスト参加まで、彼女は静かに曲を生み出している。
 
 
彼女のデビューEP『CDW、 ウィルソンは、彼女の時代を超えたサウンドを確固たるものにした。ここまで来るのは簡単ではなかった、 アーティストが言うように、"必死に働いてきた"。言うまでもなく、その努力は報われた。 ウィルソンのトラックは、アップル・ミュージックのCMからグレイス&フランキー(「グレイス&フラキー」)のCMまで、あらゆるところでフィーチャーされている。 
 
 
2021年の『Alpha』に続くこのアルバムは、ウィルソンのStone Woman MusicとXL Recordingsから5月3日にリリースされる。リード・シングル「I Don't Love You」のミュージック・ビデオはダニ・アフロディーテが監督。
 

「この曲は、愛を失い別れることは、愛を見つけることと同じくらい感動的なことなのだということを思い出させてくれるものです」とウィルソンは声明で語っている。このアルバムについて、彼女はこう付け加えた。
 
 
「荷物が少なかった頃、たくさんの人生を生きた頃。でも、若い頃の自分に今の私を見てほしいとも思う。私が今持っている知恵や明晰さの一部を、彼女に伝授することができたらいいと思う」
 
 


Sharlotte Day Wilson 『Cyan Blue』


 
 
Label: XL Recordings
Release: 2024/05/03
 

Tracklist:

1. My Way
2. Money
3. Dovetail
4. Forever [feat. Snoh Aalegra]
5. Do U Still
6. New Day
7. Last Call
8. Canopy
9. Over The Rainbow
10. Kiss & Tell
11. I Don’t Love You
12. Cyan Blue
13. Walk With Me
 
 
 
「I Don’t Love You」
©Jacob Webster


SZAがニューシングル「Saturn」をリリースした。彼女は、「Kill Bill」と「Snooze」を披露した2024年グラミー賞の放送中に、マスターカードの広告でこのニューシングルを予告していた。

 

SZA、カーター・ラング、ロブ・ビゼル、ソロモンフォニック、そしてモンシュンが共作したこの曲は以下で聴くことができる。アーティストは前作『SOS』でノミネート、見事グラミー賞に輝いた。

 

「Saturn」

 



テキサスのR&Bグループ、Khruangbinがネクストアルバム『A LA SALA』からセカンドシングルを発表しました。「May Ninth」は、ダウンテンポ・グルーヴを得意とするこの3人組にとって特にチルな曲で、これまでで最も効果的なヴォーカル曲のひとつ。ジェニー・ルシア・マシアとジェレミー・ヒギンズによる、とてもかわいらしいアニメーション・ビデオを以下からご視聴下さい。


『A LA SALA』は4月5日にDead Oceansからリリースされる。その後コーチェラでツアーが始まる。

 

最初の発表以来、コロラドのレッド・ロックス、バークレーのグリーク・シアター、フィリーのザ・メットでの第3弾公演、DCとサンルイス・オビスポでの追加公演など、いくつかのツアー日程を追加しています。

 

 

「May Ninth」




アルバムのレビューは以下よりお読み下さい。


New Album Review-  Khruangbin 

 

 

『A LA SALA』  Khruangbin 『A la Sala』


Label: Dead Oceans

Release: 2024/04/05

 

Tracklist:


1. Fifteen Fifty-Three

2. May Ninth

3. Ada Jean

4. Farolim de Felgueiras

5. Pon Pón

6. Todavía Viva

7. Juegos y Nubes

8. Hold Me Up (Thank You)

9. Caja de la Sala

10. Three From Two

11. A Love International

12. Les Petits Gris




Khruangbin – 2024 Tour Dates


4/14/24 – Coachella – Indio, CA
4/18/24 – Alex Madonna Expo Center – San Luis Obispo, CA*
4/19/24 – Alex Madonna Expo Center – San Luis Obispo, CA*
4/21/24 – Coachella – Indio, CA
4/23/24 – Brooklyn Bowl – Las Vegas, NV *
4/24/24 – Brooklyn Bowl – Las Vegas, NV *
4/26/24 – Revel – Albuquerque, NM *
4/27/24 – Revel – Albuquerque, NM *
5/21/24 – The Met – Philadelphia, PA ^
5/22/24 – The Met – Philadelphia, PA ^
5/23/24 – The Met – Philadelphia, PA ^
5/25/24 – Boston Calling – Boston, MA
5/26/24 – Saratoga Performing Arts Center – Saratoga Springs, NY ^
5/28/24 – Rockin’ At The Knox – Buffalo, NY ^
5/29/24 – Jacob’s Pavillion – Cleveland, OH ^
5/31/24 – History – Toronto, ON ^
6/1/24 – History – Toronto, ON ^
6/2/24 – History – Toronto, ON ^
6/4/24 -The Masonic Temple Theatre – Detroit, MI ^
6/7/24 – The Salt Shed – Chicago, IL
6/8/24 – The Salt Shed – Chicago, IL ^
6/9/24 – The Salt Shed – Chicago, IL ^
6/11/24 – Red Hat Amphitheater – Raleigh, NC
6/14/24 – Bonnaroo – Manchester, TN
7/4/24 – Roskilde Festival – Roskilde, DK
7/6/24 – Werchter Festival – Werchter, BE
7/7/24 – Down The Rabbit Hole – Ewijk, NE
7/10/24 – Jardin Sonore – Vitrolles, FR
7/11/24 – Musilac Festival – Aix-les-Bains, FR
7/12/24 – Bilbao BBK – Bilbao, ES
7/13/24 – Nos Alive Festival – Lisbon, PT
7/16/24 – Zagreb SRC Salata – Zagreb, HR
7/17/24 – Metastadt Open Air – Vienna, AT
7/18/24 – Colours of Ostrava – Ostrava, CZ
7/20/24 – Electric Castle – Bontida, RO
7/24/24 -Luzern Live Festival – Lucerne, CH
7/26/24 – Latitude Festival – Suffolk, UK
8/14/24 – Greek Theatre – Berkeley, CA %
8/15/24 – Greek Theatre – Berkeley, CA %
8/16/24 – Greek Theatre – Berkeley, CA %
8/18/24 – Edgefield – Troutdale, OR %
8/19/24 – Edgefield – Troutdale, OR %
8/21/24 – Kettlehouse – Bonner, MT %
8/22/24 Kettlehouse – Bonner, MT %
8/24/24 – Granary Live – Salt Lake City, UT %
8/26/24 – Red Rocks – Morrison, CO &
8/27/24 – Red Rocks – Morrison, CO &
8/28/24 – Red Rocks – Morrison, CO %
9/20/24 – Forest Hills Tennis Stadium – New York, New York +
9/21/24 – Forest Hills Tennis Stadium – New York, New York +
9/23/24 – The Anthem – Washington, DC $
9/24/24 – The Anthem – Washington, DC $
10/2/24 – The Factory – St.Louis, MO $
10/3/24 – The Factory – St.Louis, MO $
10/9/24 – Saenger Theatre – New Orleans, LA $
10/10/24- Saenger Theatre – New Orleans, LA $

* w/ Hermano Gutiérrez
^ w/ John Carroll Kirby
% w/ Peter Cat Recording Co.
+ w/ Men I Trust
$ w/ Arooj Aftab

 

©︎Ebru Yildiz

ムーア・マザーが、近日発売予定のアルバム『The Great Bailout』から新曲「All the Money」を発表した。ロニー・ホリー、メアリー・ラティモア、ライア・ワズとのコラボレーションによるリード・シングル「GUILTY」に続くこの曲は、ヴィジャイ・エアーが共同プロデュースし、アリヤ・アル・スルターニが参加している。監督のコーリーン・スミスによるPVは以下より。


2022年の『Jazz Codes』に続く新作アルバム『The Great Bailout』はANTI-から3月8日にリリースされる。



 

Donny Hathaway

 

現代のラップ/ヒップホップやネオソウルが政治的な主張、よりミクロな視点で見るなら、内的な問題の主張という内在的なテーマがあるように、R&Bミュージックが政治的な主張を持たぬ時代を見つけるほうが困難かもしれない。そもそもR&Bに関しては、公民権運動やブラックパンサー党の活動等の前の時代からブラックミュージックという音楽に乗せてミュージシャンが何らかの主張を交えるということは、それほどめずらしくはなかった。それは基本的に社会的な主張が許されなかった時代であるからこそ、有意義なメッセージを発信することが出来たのである。

 

R&Bは80年代に入ると、政治的な主張性における首座を、アイス・キューブを筆頭とするギャングスタ・ラップ勢に象徴される西海岸のグループに譲り、白人のロックやAORとの融合を試みた通称”ブラコン”(ブラック・コンテンポラリー)というジャンルが主流派となっていった。現地名ではUrban Contemporary(アーバン・コンテンポラリー)とも呼ばれている。


R&Bで「アーバンなサウンド」とよく評されるのは、このジャンルの余波を受けた評論用語と思われる。モータウン・サウンド等に象徴されるノーザン・ソウル、そして公民権運動に象徴されるニューソウルと呼ばれる、60年代と70年代にかけての動きの後に、黒人としての主張性が薄められ、ポピュラーなサウンドが主流となっていったのが80年代のR&Bであったらしい。

 

その時代、R&Bは死語になりつつあったが、このジャンルを節目に復活する。80年代のR&Bは日本では「ブラコン(ブラック・コンテンポラリーの略)」という名称で親しまれたのは有名で、スティービー・ワンダー、マイケル・ジャクソン、クインシー・ジョーンズ、マーヴィン・ゲイ、ダイアナ・ロスを始めとするミュージシャンがその代表的なアーティストに挙げられる。

 

上記のミュージシャンに共通するのは、それ以前の時代にジャクソン5としてニューソウルの運動の中心的な存在であったジャクソンを除いては、ポピュラー音楽との融合というテーマを持っていたことである。それは後にAORやソフト・ロックと合わさり、より軽やかなR&Bという形でメインストリームを席巻する。これらをプロモーションとして後押ししたのはMTVで、この放送局は24時間流行りの音楽をオンエアし続けていた。

 

やがて、R&Bはワンダーをはじめグラミー賞に多数のシンガーを送り出し、文字通り、スターシステムの中に組み込まれていったのは周知の通り。以後、R&Bはチャカ・カーンに代表されるようにプロデュース的なサウンドに発展し、また、90年代に入ると、ヒップホップとクロスオーバーが隆盛となる。その合間の世代にはDR. Dreなどの象徴的なミュージシャンも登場した。

 

2020年代のソウル・ミュージックを見ると、AORやジャズの影響を交えたR&Bが登場している。黒人のミュージシャンのみならず白人のアーティストにも好意的に受け入れられ、その影響を絡めたネオソウルというジャンルが2020年代のメインストリームを形成している。70、80年代のR&Bと現代のネオソウルは上辺だけ解釈してみると全然違うように聞こえるかも知れないが、実はそうではない。ブラックコンテンポラリーと現在のネオソウルの相違点を挙げるなら、現代的なポップス、テクノ、ハウスといったクラブミュージックの影響が含まれているか否かの違いしかない。そして、現代的なポップスとは、すでにハサウェイやチャカ・カーンが代表曲「Feel For You」で明示していたプロデュース的な視点を持つサウンドなのである。

 

リバイバルが発生するのは、何もロックやパンクだけにはとどまらない。スタイリッシュでアーバン、比較的、ライトな印象のあるブラック・ミュージックのジャンルが、2020年代中盤のR&Bに重要なエフェクトを及ぼす可能性は少なくない。ジェシー・ウェアをはじめとするアーティストにディスコサウンドの影響がハウスやテクノとともに含まれているのと同様である。

 

今回、ご紹介するブラック・コンテンポラリーの入門編とアーティストは、その最初期のウェイブを形成した先駆者で、80年代のR&Bシーンの音楽市場の土壌を形成した。以下のガイドは、アーバンなソウルとはどんな感じなのか、その答えを掴むための最良のヒントになるはずである。よりコアなブラコンのディスクガイドに関しては専門的な書籍を当たってみていただきたい。

 

 

Stevie Wonder  『Song In The Key Life』 1976




ブラックコンテンポラリーの先駆者として名高いのがご存知、スティービー・ワンダーである。モータウン時代はもとより、70年代のニューソウル運動を率い、現在でも大きな影響力を持つ。70年代のブラック・ミュージックの思想的な側面を削ぎ落とし、それらをライトで親しみやすい音楽にしたことが、ブラック・コンテンポラリーの最大の功績と言われている。

 

スティーヴィー・ワンダーといえば、ソウルバラードの達人であり、ピアノの弾き語りのイメージが強いが、このアルバムではファンクやホーンをフィーチャーしたご機嫌なファンクソウルサウンドが主体である。それはハサウェイと同じようにフュージョンジャズの音楽を取り入れている。代表曲「Sir Duke」はご機嫌なホーンのフィーチャーがマイルドなワンダーと声と見事な合致を果たしている。「I Wish」ではのちにジャクスンが80年代に試みたブラコンの商業的なイメージの萌芽を見出せる。80年代のメインストリームのR&Bの素地を作ったアルバムと見ても良さそうだ。

 

 

 


Donny Hathaway 『Extension Of a Man』 1973

 

 

ブラック・コンテンポラリーという趣旨に沿った推薦盤としては、『Robert Flick Feat. Donny Hathaway」が真っ先に挙げられることが多いのだが、ダニー・ハサウェイはやはりこのアルバムで、クロスオーバーの先駆的なアルバム。映画のような壮大なストリングスを交えたオープニング、ジャズやニューソウルの影響を交えた「Someday We'll All Be Free」はソウルミュージックの歴史的な名曲とも言えるだろう。


ファンク、フュージョン・ジャズの影響はもとより、このアルバムには、ブラジル音楽等の影響も取り入れられている。その合間に導入される現在のサンプリングやミュージックコンクレートのような手法を見る限り、現代の多くのアルバムは、今作の足元にも及ばない。発想力の豊かさ、卓越した演奏力、圧倒的な歌唱力、どれをとっても一級品であり、現在のデジタルの音質にも引けを取らない作品。ハサウェイの最高傑作と目されるのも頷けるR&Bの大作である。

 

 

 

 

Quincy Jones 『The Dude』 1981


アメリカのミュージシャン、プロデューサーのクインシー・ジョーンズによる1981年のスタジオ・アルバム。ジョーンズは多くのスタジオ・ミュージシャンを起用した。元々、トランペット奏者であったクインシーはジャズ、ソウル、ポップス、ロックと多角的な音楽性をもたらした。70年代には盛んだったクロスオーバーを洗練された音楽性へと昇華させたのがクインシーだ。元々プロデューサーとして活躍していたクインシーこそ、ブラコンの仕掛け人であるという。


『The Dude』はディスコサウンドの影響を残しながら、ポピュラー音楽寄りのアプローチをみせている。「Ai No Corrida」はどれくらいラジオやテレビでオンエアされたか計測不可能である。クインシーはこのアルバムを通じて、ロックやファンクを視点にして、グルーブ感のあるダンサンブルなソウルを追求している。AOR/ソフト・ロックに近いバラード「Velas」も必聴だ。

 

リード・シングル「Ai No Corrida」のダンス・エアプレイが多く、トップ40で28位、UKシングル・チャートで14位を記録。イギリスで11位を記録した「Razzamatazz」(パティ・オースティンがヴォーカル)も収録。同国におけるジョーンズのソロ最大のヒット曲となった。ルバム・オブ・ザ・イヤーを含むグラミー賞12部門にノミネートされ、第24回グラミー賞では3部門を受賞した。


 

 


 

Marvin Gaye 『Midnights』 1982


それまでモータウンの看板アーティストであった、マーヴィン・ゲイは、レーベルとの関係が悪化し、制作費を捻出できなったことから、いわゆるバンド主体のアプローチとは別のシンセ主体の音楽性へと突き進んだ。マーヴィンは、その後、CBSからの提案を受け入れ、コロムビアから三作のアルバムのリリースの契約を交わした。モータウンとの距離を置いたことが良い影響を及ぼし、ノーザン・ソウルから距離を置いたアーバンなソウルを生み出す契機となった。

 

享楽的ともいえるアーバンソウルの音楽には以前のマーヴィンのソウルから見ると、軽薄なニュアンスすら感じられるかもしれないが、レーベルとの契約の間で揺れ動いていたのを見ると、致し方無い部分もある。それ以前に対人のアルバムを制作したために、ファン離れを起こしていたマーヴィンはファンを取り戻すために、メインストリームの音楽を録音しようとした。前作『In Our Lifetime』のように内面に目を向けるのではなく、商業的なサウンドを追求することにした理由について、「今を逃すわけにはいかない。ヒットが必要なんだ」と語っていた。


 

 


Michael Jackson  『Off The Wall』 1971


 

 1979年の最大のベストセラーであり、ブラックコンテンポラリーの象徴的なアルバムと言われている。ソウルミュージックの評論家の中には、『Thriller』よりも高い評価を与える方もいるが、まったくの同意である。というか、マイケル・ジャクソンの最高傑作はこのアルバム。

 
『オフ・ザ・ウォール』(Off The Wall)は、1979年に発売されたマイケル・ジャクソンの5作目のオリジナル・アルバム。『ローリング・ストーン誌が選ぶオールタイム・ベストアルバム500』(2020年版)に於いて、36位にランクイン。


1979年、初めてクインシー・ジョーンズをプロデューサーに迎えて制作された。エピック・レコードからは初、モータウン・レコード時代を含めた通算では5作目のソロ・アルバム。



それまでのマイケルのソロ・アルバムは、制作サイドが主導して作られたもので、マイケルは用意された曲を歌うだけだったが、本作ではクインシーが主導権を持っていたものの、マイケルの自作曲やアイデアも随所に入れられている。ロッド・テンパートン、ポール・マッカートニー、スティーヴィー・ワンダーからの楽曲提供、バックの演奏もクインシーの息のかかった一流ミュージシャンを起用するなど、アルバムのクオリティがそれまでと比べて格段に洗練された。このアルバムから真の意味でのマイケルのソロ活動が始まったと言って良く、「『オフ・ザ・ウォール』こそ、マイケルの本当の意味でのファースト・アルバム」と言う人もいる。 




 


Whitney Houston 『Whitney Houston』 1985

 


なぜ、このアルバムを入れるのかというと、R&Bやポピュラー音楽としての影響力はもとより、現在のシンセ・ポップというジャンルにかなり深い影響を及ぼしている可能性があるということ。ホイットニー・ヒューストンは80年代の最高の歌手の一人であるが、このアルバムは基本的にはポピュラーアルバムで、ディープなソウルファンには物足りなさもあるかも知れない。


ただ、ポップスにソウルの要素をさりげなくまぶすというセンスの良さについては、現代のミュージシャンにとってヒントになりえる。アーバンソウルの都会的な雰囲気や、同年代に、ジョージ・ベンソンが試みた近未来志向のポップスという要素も散りばめられている。80年代の懐メロという印象があるかもしれないが、ケイト・ブッシュの再ヒットなどを見る限り、むしろ、現在こそ、ホイットニー・ヒューストンの再評価の機運が高まる可能性も予想される。

 

AOR/ソフト・ロック志向のR&Bポップスの名盤という意味では、ホイットニーは現代のリスナーの耳に馴染むようなアーティストと言えるのではないか。なぜなら現代のミュージックシーンはAORが重要視されているからである。ファルセットの美しさに関しては不世出のシンガーである。人を酔わせるメロディーとはいかなるものなのか、その模範的な事例がここにある。


 



Diana Ross 『Diana』 1980

 

 


 

シュープリームスを離脱後、ダイアナ・ロスはソロアーティストとして「Ain't Know Mountain High Enough」等、複数のヒット作に恵まれた。70年代には低迷期があったというダイアナ・ロスであるが、ナイル・ロジャースがプロデュースした『Diana』で第二の全盛期を迎える。反ディスコの気風の中、制作されたというが、その実、ファンクやディスコの影響も取り入れられている。それがロスの持つスタイリッシュかつアーバンな雰囲気と一致した一作だ。

 

 TV Oneの『Unsung』のエピソードでナイル・ロジャースは、曲の大半はロスとの直接の会話の後に作られたと語った。彼女はロジャースとバーナード・エドワーズに、自分のキャリアを "ひっくり返したい"、"もう一度楽しみたい "と言ったと伝えられている。結果、ロジャースとエドワーズは 「Upside Down」と 「Have Fun (Again)」を書いた。

 

クラブでダイアナ・ロスの格好をした何人かのドラッグ・クイーンに出くわしたロジャースは、「I'm Coming Out」を書いた。My Old Piano」だけが、彼らの通常の曲作りのプロセスから生まれた。「Upside Down」は全米チャート首位を獲得し、「I’m Coming Out」も5位以内にチャートインした。ロスの80年代のキャリアを決定づける傑作と言っても良いかもしれない。


 

 

Chaka Khan 『I Feel For You』 1984


 

 

今聴いても新鮮な感覚を持って耳に迫るチャカ・カーンの『I Feel For You』。カーンはルーファスのフィーチャリング・シンガーとして、70年代にヒットを飛ばしていた。ダニー・ハサウェイと同じようにゴスペルにルーツを持ちながらも、それをあまり表に出さず、叫ぶようなボーカルを特徴とするカーンのボーカルスタイルは70年代の女性シンガーに多大な影響を与えた。『I Feel For You』はプリンスのカバーで、スティーヴィー・ワンダーのハーモニカをフィーチャーしている。チャカ・カーンにとっての最大のヒット・ソングとなった。現在のプロデュース的な視点を交えたポップスに傾倒したR&Bのアルバムとして楽しむことが出来る。


現在、チャカ・カーンはローリングストーンのインタビューに答え、ツアーの引退を表明し、ガーデニングをしながら悠々自適の生活を送っている。単発のライブに関しては行う可能性があるという。





George Benson 『While The City Sleeps』 1986

 


ジョージ・ベンソンはソウル・ジャズのオルガン奏者、ジャック・マクダフとのバンドを経たギタリストで、76年にはフュージョンの先駆けのような曲「Breezin」を制作した。だが、この年代にはスティービー・ワンダーとダニー・ハサウェイの影響を受け始め、ブラックコンテンポラリーの道に入っていくことになる。

 

1986年のアルバム『While The City Sleeps』は驚くほどライトなポップで、アーティストのイメージを覆す。AOR/ソフト・ロックに、ベンソンが傾倒したことを裏付ける作品である。その中にはこのジャンルの中にある近未来的なシンセ・ポップの影響も伺い知ることが出来る。ジョージ・ベンソンというと、渋いソウルというイメージがあるが、それらのイメージを払拭するような作品である。この年代、前のニューソウルの時代から活躍していたシンガーの中で、最も時代に敏感な感覚を持つミュージシャンはこぞって、ロックやポップスとのクロスオーバーを図っていたことがわかる。今聴いても洗練されたポピュラー・アルバムと言えるのだ。 


 

 



Lionel Ritchie 『Dancing On The Ceiling』 1986



 

コモドアーズのメンバーでもあり、後にソロアーティストとして、そしてパラディ・ソウルの象徴的なシンガーに挙げられるライオネル・リッチー。彼の全盛期を知らない私のようなリスナーにとっては、ジャクソンやスティーヴィーと共演した「We Are The World」のイメージの人という感じだ。どうやら、リッチーが歌手としての実力に恵まれながらも、いまいちコアなソウルファンからの評価が芳しくないのは、白人の音楽市場に特化したことが理由であるらしい。


ダニー・ハサウェイのような黒人としてのアイデンティティ云々という要素は乏しいが、現在、メロウなポップスやAORというジャンルが取りざたされるのを見ると、今、まさに聴くべきアーティストなのではないかというのが印象である。確かにヒット曲でさえもその曲調はいくらか古びてしまったが、今なお彼の卓越した歌唱力、メロウな音の運びは現代的なリスナーにも親しまれる可能性を秘めている。『Can’t Slow Down』とともにリッチーの代表作に挙げられる。

 





Prince  『1999』  1982

 


 

プリンスといえば真っ先に『Purple Rain』のヒットにより、スターミュージシャンの仲間入りを果たした。ノーザンとサザン、サウスで別れていたR&Bの勢力図をスライ・ザ・ファミリーとともに塗り替えた。彼は10代の頃からすでにバンドにおいて、ダンスソウルの音楽性、そしてマルチインストゥルメンタリストとしての演奏力に磨きを掛けてきたが、その後のレコード契約、ひいてはスターミュージシャンとしての道のりはある意味では、付加物のようなものだったと思われる。


革新的とされたファンク・ソウルやシンセサイザーをフィーチャーしたスタイルは、それ以前の80年代にすでに行われていたものだったというが、彼のサウンドはエキセントリックかつエポックメイキングであるにとどまらず、現在のハイパーポップやエクスペリメンタルポップというジャンルの先駆者である。つまり、R&Bというのはプリンスにとって1つの装置のようなもので、その影響をもとに、様々な要素を取り入れ、それらの実験的でカラフルなイメージを持つポップスとして組み上げていった。

 

『1999』は今聴いても新鮮なアルバム。解釈によってはロジャー・プリンスの全盛期をかたどったアルバムと言えるだろうが、ボーカルから立ち上るスター性や独特な艶気はシアトリカルな要素を込めた「総合芸術としてのライブエンターテイメント」の始まりではなかったかと思われる。



 

©Matilda Hill-Jenckins

 

アフロ・ビートとエレクトロを融合させる多国籍のグループ、Ibibio Sound Machine(イビビオ・サウンド・マシーン)が次作『Pull The Rope』を発表した。2022年の『Electricity』に続くこのアルバムは、Mergeから5月3日にリリースされる予定。


「”Got to Be Who U Are”は、私たちを結びつけるものは、私たちを隔てるものよりも強いという考えについて歌っている」とバンドはプレスリリースで説明している。

 

私たちを隔てる場所や物事は、信じられているほど重要ではない。自分が誰であるか、何であるかに幸せと誇りを持とう。


音楽的には、この曲は伝統的なアフリカのムビラのパートでメッセージを述べて始まり、同じようなヴォーカルになり、今度はエレクトロニック・ダンス・ヴァイブになる。

 

サビの中で出てくる "スルレレ、イサレ・エコ、イコイ、ヤバ "という場所はすべて、イーノ・ウィリアムズが育ったナイジェリアのラゴスにある地域だ。音楽の異なる部分は、まったく異なる音を使っているにもかかわらず、つながっており、世界中を移動する人々や、どこにいても場所と人の根本的なつながりを象徴している。

 

 

「Got to Be Who U Are」



ロンドンは、スペシャルズを筆頭に、1970年代から人種を越えたグループを輩出してきた。音楽という言語は国境を超えざるを得ないことを考えると、Ibibio Sound Machineはエズラ・コレクティヴのように、音楽の持つ本来の意義を呼び覚ます重要なグループだ。それはかつてアフリカの一地域でとどまっていたアフロビートが世界的な音楽と認められるようになった証拠でもある。



Ibibio Sound Machine 『Pull the Rope』


Label: Merge

Release: 2024/05/03

 

Tracklist:


1. Pull The Rope

2. Got To Be Who U Are

3. Fire

4. Them Say

5. Political Incorrect

6. Mama Say

7. Let My Yes Be Yes

8. Touch The Ceiling

9. Far Away

10. Dance in the Rain

 



R&B界のニュースター、ヤヤ・ベイ(Yaya Bey)が待望の新作アルバム『Ten Fold』を発表した。5月10日にBig Dadaから発売される。ビック・ダダはニューヨークの気鋭のインディーレーベルの一つ。Sampha The Great、Kae Tempestをはじめ、魅力的なミュージシャンを擁する。

 

昨年、ニューヨークからR&Bの新星、マディソン・マクファーリンが登場したが、ヤヤ・ベイに関しては、よりスポークンワードのニュアンスが強い、現代的でアーバンなR&Bシンガーである。


2022年のアルバム『Remember Your North Star』と2023年のEP『Exodus the North Star』の強力なワン・ツー・パンチを受け継いだヤヤのニュー・アルバムは、過去、現在、未来についてのその時々の考察によって定義された、自由なスポークンワードと流れるようなポートレイトである。


ヤヤのアイデンティティの微妙なニュアンスと、創作活動の様々な側面が凝縮された『Ten Fold』は、彼女の作品の特徴であるユーモアと鋭い社会的論評のための余白を確保しつつも、彼女の瞑想的な内面に焦点を当てている。


『テン・フォールド』の発表と同時に、フル・アルバムの最新テイスト「chasing the bus」を彼女自身が監督・振付を手がけたミュージック・ビデオと同時公開した。このシングルの穏やかなファルセット、及び切ない散文は、新しいアルバムのために練り上げられた無限のサウンドの次なる反復を示唆する。


「『バスを追いかけて』には二重の意味が込められている」とヤヤはニュー・シングルについて語る。


「表面的には、ロマンチックな関係で当然と思われていることについて歌ってます。それでも表面的な意味だけに止まらず、私が業界の多くのシーンで感じざるをえない事実に対するメタファーでもある。なおかつ自分自身を肯定したり、評価やそれにまつわる欠乏感を手放すことを思い出させてくれる曲でもある。私は肯定的であらねばならないと思うから、そのことを介在させずにはいられない」 

 

 

「Chasing The Bus」




Yaya Bey 『Ten Fold』



Tracklist:


1. crying through my teeth

2. the evidence

3. chrysanthemums

4. sir princess bad bitch

5. east coast mami

6. chasing the bus

7. all around los angeles

8. slow dancing in the kitchen

9. so fantastic [feat. Grand Daddy I.U.]

10. eric adams in the club [feat. Exaktly]

11. me and all my niggas

12. iloveyoufrankiebeverly

13. career day

14. carl thomas sliding down the wall

15. yvette’s cooking show

16. let go

 

Pre-order:

 

https://yaya-bey.lnk.to/ten-foldYo 

 


Fabiana Palladino(ファビアナ・パラディーノ)は、Paul Institute/XLRecordingsから4月5日にリリースされるセルフタイトルのデビューアルバムを発表した。ファビアーナ・パラディーノはプリンス以来の天才といわれ、ジャイ・ポール、ジェシー・ウェア等から熱烈なラブコールを受ける。リーク的な音源のリリースの手法を図ってきた個性的なシンガーである。

 

10曲入りのこの新作アルバムには、ジャイ・ポール、ロブ・ムース、ドラマーのスティーヴ・フェローネ、そしてパラディーノの父と兄であるベーシストのピノとロッコ・パラディーノが参加している。新曲「Stay With Me Through the Night」がリードシングルとして公開された。


アルバムについて、パラディーノは声明の中で次のように述べている。


このアルバムの中心的なテーマは孤独です。誰かとのつながりを求めている曲であれ、孤独を受け入れようとしている曲であれ、それは私自身に帰ってくる傾向がある。全体的にかなり内省的なアルバムだと思う。曲は、自分自身をより深く掘り下げようとすること、自分の本当の気持ちを探求すること、そしてそれが他者との関係にどう関係し、どう影響するかを歌っていることが多い。


「Stay With Me Through The Night」は、このアルバムのために最初に書いた曲だ。この曲は、2年近く曲を書いていなかった厄介な時期の終わりに、ちょっとした洪水のように出てきたもので、どこでどうやって書いたのかほとんど覚えていないが、自分にとって重要な曲になることはわかっていた。結局、アルバムの中心的な曲になった。この曲には、アルバムの他の部分のフィーリングや感情が凝縮されているし、音楽的にも、古いものと新しいものが融合している。

 

 

 「Stay With Me Through the Night」


後日掲載されたアルバムレビューはこちらからお読み下さい。


Fabiana Palladino 『Fabiana Palladino』


Label:  XL Recordings

Release: 2024/04/05


Tracklist:


1. Closer

2. Can You Look In The Mirror?

3. I Can’t Dream Anymore

4. Give Me A Sign

5. I Care

6. Stay With Me Through The Night

7. Shoulda

8. Deeper

9. In The Fire

10. Forever

 

 

Pre-order:

 

https://fabianapalladino.ffm.to/fpalbum 

 

©Joelle Grace Taylor

 

ノラ・ジョーンズ(Norah Jones)はプロデューサー兼マルチ・インストゥルメンタリストのレオン・ミシェルズとコラボレートした9枚目のスタジオアルバム『Visions』をブルーノートから3月8日にリリースする。リード・シングル「Running」も公開された。


本作は、2021年にリリースされたノラ初のクリスマス・アルバム『アイ・ドリーム・オブ・クリスマス』も手掛けたリオン・マイケルズがプロデュースを担当した。


オリジナル・アルバムとしては2020年の『ピック・ミー・アップ・オフ・ザ・フロア』以来約4年振りとなる本作では、ほぼ全てのパートをノラとリオンの2人でレコーディングしている。収録されている12曲は、自由を感じること、踊りたくなること、人生がもたらすものを受け入れることなど活気に溢れポジティヴな内容に満ちている。


ダウンホームでアーシーなサウンドも印象的であり、懐かしい雰囲気ながらもどこか新しさを感じさせる。これまでの作品には無かったノラの新たな一面を感じ取れる、必聴の仕上がりだ。


本作、そして第1弾シングルとなった「ランニング」について、ノラは「私がアルバムを『ヴィジョンズ』と名付けたのは、多くのアイデアが真夜中か寝る直前の瞬間に思いついたからで、「ランニング」は半分眠っているのに、ちょっと目が覚めたような気分になる曲のひとつだった。ほとんどの曲は、私がピアノかギターで、リオンがドラムを叩いて、ただジャムるというやり方で作っていった。 その生々しさが好きで、ガレージっぽいけどソウルフルな感じになったと思う。それがリオンのサウンドの原点だし、完璧すぎないというのも魅力のひとつだしね」と語っている。

 

 

「Running」

 

 

 

日本盤には、2023年6月にリリースされたシングル「キャン・ユー・ビリーヴ」をボーナス・トラックとして収録。さらに限定盤、シングルレイヤーSACD~SHM仕様といった形態も日本盤のみで同時発売される。

 

ノラ・ジョーンズは2021年にクリスマス・アルバム『I Dream Of Chrismas』をリリースした。以後、昨年末にはLaufeyとのコラボレーションを行い、クリスマスソングをライブで披露した。



Norah Jones 『Visions』


Label: Blue Note

Release: 2024/03/08

 

Tracklist:

 

All This Time

Staring at the Wall

Paradise

Queen of the Sea

Visions

Running

 

I Just Wanna Dance

I’m Awake

Swept Up in the Night

On My Way

Alone With My Thoughts

That’s Life


Pre-order/Pre-save:


https://norah-jones.lnk.to/Visions


 


Label: Geffen

Release: 2023/01/12



Review 

 

グラミー賞アーティスト、カリ・ウチスはR&Bの清新なスタイルを模索するシンガーであるとともに、コロンビア、そして、ラテン・カルチャーの重要な継承者でもある。

 

最近では、南米や南欧文化に世界的な目が注がれているのは明らかである。いわば昔は、ボサノバ、サンバ、サルサを筆頭に、「ワールド・ミュージック」というジャンルで語られることが多かったラテン音楽が、世界のポピュラー音楽の最前線になりつつあるのは、時代の流れといえるかもしれない。それらは、レゲトンという形になったかと思えば、アーバン・フラメンコという、ポピュラー・ミュージックのトレンドの形になることもある。ロザリア、バッド・バニーに象徴されるように、南米にルーツを持つポップ・アーティストやラッパーたちに対して、ビルボード、及びレコーディング・アカデミーが軒並み高い評価を与えるようになったという事実は、南米という地域の文化が世界的に浸透するようになってきている証ともいえるかもしれない。

 

カリ・ウチスによる最新作『ORQUIDEAS』は、昨年の『Red Moon In Venus』の続編で、前作と同様にスペイン語で歌われている。上記のアートワークを見ると分かる通り、真の意味で続編のような意味を持ち、原題は、英語で「Orchid」、日本語で「ラン」を意味する。


アーティストみずからの肉体を花そのものに見立てたアートワークは、クリムト、アルチンボルドのパッチワークの技法を模し、肉体そのものにより鮮烈な美を表現しようと試みている。これらの表現性が南米文化の含まれる独特な情熱を秘めた美の表現の一環であることは想像に難くない。


前作のアルバムでは、メロウで、しっとりとしたスロウなR&Bのソングライティングにより、音楽における射幸性と高揚感のみがアーティストの魅力ではないということが示されたが、果たしてその反動によるものなのか、最新作はアップテンポなトラックで占められている。リアルなダンスミュージックのビートを意識し、ライブでの鳴りと観客との協和性を重視している。

 

「Como Asi?」 は、ラテンの文化を音楽というファクターを介し追い求め、ディスコ/バレアリックサウンドを基調とするダンサンブルなビートの中に妖艶さを漂わせる。アルバム全体を通じて、バリエーションの幅広さを意識し、変拍子を交え、プログレッシヴ・テクノのような音楽性を内包させ、曲の全体に起伏を設けている。これはシンガーソングライターとしてのたゆまぬ前進をあらわし、そして、DJとしての意外な表情を伺わせるものである。「Me Pongo Loca」そのアプローチは、ビヨンセやデュア・リパが示すようにハウスとポップの融合にある。そして、カリ・ウチスのダンスミュージックは、表向きからは見えないような形で、ラテンの情熱がその内側に秘められ、それが奥深い領域で、ふつふつとマグマのように煮えたぎっている。

 

 このアルバムのもう一つの際立った特徴は、ジェシー・ウェアが昨年のアルバムで示唆したように、ディスコ・サウンドのエンターテイメント性のリバイバルにある。それらをスペイン語の歌詞とその背後に漂うラテンのテンションが融合を果たし、部分的に清新な音楽が生み出されていることだ。「Iqual Que Un Angel」は、クインシー・ジョーンズのR&B、フュージョンの延長線上にあるノスタルジア溢れるアーバン・ソウルを、ラテンの文化性と結びつけようとしている。この曲は、日本のシティ・ポップにも近い雰囲気があり、バブリーな空気感を心ゆくまでたのしめる。「Pensamientos Intruviors」も「Iqual Que Un Angel」の系譜にあり、ハウスのグルーブ感が押し出され、バレンシア沖のサンゴ礁のエメラルドの輝きを思わせるものがある。

 

旧来のソウルのアプローチの後には、レゲトンに象徴づけられるモダンなサウンドが「Diosa」には見いだせる。しかし、トレンドのアプローチの中にも、モダンなヒップホップの要素を交え、グリッチを織り交ぜたりと、複数のアヴァンギャルドな工夫も見受けられる。その中で、ウチスの同音反復の多いスペイン語のボーカルが中音域の通奏低音のような響きを形成し、その周りに独特のグルーヴ、いわば音のウェイブを呼び起こし、それらがどこまで永続するのかを試行錯誤している。それらは最終的に、グリッチノイズの中にモジュラーシンセの音色がうねりながらその中核を貫いて、強烈なエナジーを生み出している。


ラテン音楽の継承者としてのアウトプットは、現時点で多数のリスナーから支持されている「Te Mata」に登場する。イントロのメロウな響きの後には、フラメンコ・ギター、コンガ/ポンゴ、ギロといった、ラテン音楽のパーカッションを配し、ムードたっぷりに哀感のあるフレーズをカリ・ウチスはポピュラーソングとして紡ぐ。リズムの前衛性は、ラテンのメロディーとともに、この曲にラテン文化の象徴的な意味合いをもたらす。フラメンコ調の流動的なリズムがあったかと思えば、アルゼンチン・タンゴに象徴される二拍子のリズムを複合的に配している。それらの底抜けに陽気なリズムは、最終的にフラメンコ調のスケールに引き立てられ、曲のクライマックスにドラマティックな演出を付与する。アウトロはタンゴ調のピアノでしとやかに終わる。

 

 

「Te Mata」

 

 

続く、「Perdiste」、「Young Rich & In Love」、「Tu Corazon & Es Mio...」は、ハウスとポップの融合というトレンドの形が示される。その中に、チルウェイブの爽やかさ、エレクトロ・サウンドの前衛性が刺激的にミックスされ、風通しのよいクリアなナンバーに昇華されている。これらは、イタロディスコやバレアリックのクラブミュージックの反映が心地良いサウンドとして昇華されている。「Munekita」は、今、最もトレンドな曲といえ、アルバムのアートワークに象徴される艶やかな雰囲気にレゲトンの要素をどのように浸透させるのかを試作しているように思える。この曲でも、エンターテインメント性を重要視しており、ボーカルのテクスチャーに流動的な動きをつけ、展開そのものに変拍子を加え、ビートの革新性に刺激的な響きをもたらす。

 

アルバムの最後の数曲では、序盤や終盤の収録曲で示されたバリエーション豊かな音楽性のミックスが楽しめる。その中に、ポップスの中にあるラテン音楽、ローエンドの強いハリのあるバレアリック・サウンドを基調としたハウス/プログレッシヴ・ハウスのダンスミュージックのアプローチ、続く、「Heladito」では、『Red Moon In Venus』で示されたR&Bのスロウバーナーのモチーフが再登場する。


「Dame Beso// Mueveto」では、サンバ/サルサをダンス・ミュージックという側面から示している。テネリフェ島やリオのカーニバルに見い出せるようなエンターテイメント性は音楽という枠組みをかるがると超越し、最終的にはリアルに近い体験に近づく。ウチスは、これらのダンスミュージックを通じて、ラテン音楽やカルチャーに鮮烈な息吹を吹き込む。本作の一番の醍醐味は、ラテン文化の純粋なエンターテイメント性とその躍動感に求められるのではないでしょうか。


 

 

78/100