ニール・ヤングは、自身の運営する公式サイト、Neil Young Archives Webへの最近の投稿において、この新しいアルバムを "Real magic lasts and we think we have it. (本物の魔法は永続するものであり、私達もまた、そうありたいと考えている)"というように表現している。
カレン・O率いるヤー・ヤー・ヤーズは、 知るかぎりにおいて、当初、シカゴのレーベル、Touch And Goが発掘したロックバンドで、最初のEP作品のリリースを契機に、当時のジャック・ホワイト擁するホワイト・ストライプスを始めとするガレージ・ロックリバイバルのムーブメントの機運を受け、着実な人気を獲得していきました。
それは残りの二人のミュージシャンについても同様のことがいえ、つまり、このヴェルヴェット・アンダーグラウンドの『Loaded』の曲にちなんで名付けられたという「Cool It Down」には、カレン・O、ニック・ジナー、ブライアン・チェイスという三者三様の人生が色濃く反映されているともいえる。一般的に、家庭の生活とミュージシャンの両立ほど難しいものはない。そして、憶測ではあるものの、カレン・Oはこの九年間に苦悩していたかもしれず、ファンもそのことを考えると、どうするのかとやきもきするような気持ちになったに違いありません。しかし、今回の新作はこのボーカリストからのファンに対する明るい回答とも言える。今作を聴くかぎり、彼女は音楽を心から愛していることが分かる。
フロントパーソンのカレン・Oは、今回の新作『Cool It Down』のリリースに関して以下のようなメッセージを添えています。下記のコメントにはこのボーカリストの作品に対する一方ならぬ思いが込められています。
アルバムの全体は、デビュー当時とは全く別のバンドの音楽に様変わりしていて、華麗なる転身ぶりが窺えます。「Cool It Down」の全編は、シンセ・ポップやポスト・ディスコを基調としており、ハイパーポップとまでは行かないのかもしれませんが、最新鋭のポピュラーミュージックが提示されていることに変わりなく、そこにはやはり、アート・ロック/ガレージロックバンドとしての芯がしっかり通っている。この作品はいくらかポピュラリティーに堕している部分もあるものの、カレン・Oの歌声は以前よりも晴れやかです。何かしら暗鬱な雰囲気を漂わせていた『Mosquito』に比べ、良い意味で、吹っ切れたかのような清々しさがアルバムの全編に漂っている。
次いで言えば、ヤー・ヤー・ヤーズは新しいバンドとして生まれ変わることを、あるいは、以前のイメージから完全に脱却することをきっぱりと決意したかのように思える。その決意が、実際の歌にも乗り移ったかのようで、カレン・Oのこれらの八曲の歌声に、凄まじいパワーとエネルギーがこもっています。そして、それは、先行シングルとしてリリースされたオープニング「Spitting off the Edge of the World」に象徴されるように、外向性と内向性を兼ね備えた麗しい楽曲群がそのことを如実に物語っている。さらに「Burning」において、ポストディスコ、R&B、ロックの融合に果敢にチャレンジしており、カレン・Oの音楽に対するダイナミックな情熱が表現されている。ほかにも、バンドはこのアルバムの終盤に収録されている「Different Today」では、シーンの最前線のシンセポップのモダニズムに挑んでおり、これらの楽曲は、カレン・Oの音楽に対する深い愛情と慈愛に根ざしているように感じられます。
「そのことを心から楽しむ人間に叶う者は居ない・・・」
ひとつの結論として、『Cool It Down』は、以上の格言を体現する一枚であり、ここには、カレン・Oの音楽に対する大きな愛情と喜びが満ちている。今作はきっと長らく復活を待ち望んでいたファンにとっては記憶に残るようなアルバムとなるでしょう。
80年代後半から90年代にかけて、ピクシーズは「Surfer Rosa」「Come On Pilgrim」「Bossanova」といった名作群で、数々のオルタナティヴ・ロックの金字塔を打ち立てました。(『Surfer Rosa』収録の「Where is My Mind?」は、ブラッド・ピット主演映画『ファイト・クラブ』の主題歌としても知られています)
アルバムの序盤は、マイナーコード主体のミドルテンポの楽曲が繰り広げられていく。『No Matter Day』でピクシーズは、ピクシーズワールドの中にリスナーを誘う。その次のトラック「Vault Of Heaven」では、ピクシーズ節ともいうべき独特なコード進行で、さらに、その世界観を徐々に押し広げていく。ブラック・フランシスのボーカルはこれらのオープニングをさらりと歌い上げ、作品のテーマ性を丹念に引き出し、中盤部分へと物語を引き継いでいきます。
#3の「Dregs Of Wine」では、ビートルズの「Because」を彷彿とさせるマイナー調のチェンバー・ポップ風のイントロから、曲のサビにかけて渋さのあるロックミュージックへと変容していく。ここでもピクシーズらしさは健在であり、特異なコード進行が見られる点にも注目したいが、さらにツインボーカルの兼ね合いにも着目です。
アルバムの序盤において、ピクシーズはより円熟味を帯びたクラシカルなロックバンドの一面を見せているが、中盤にさしかかると、オルタナティヴ・ロックの始祖としての独特なひねりを持つ楽曲が徐々に現れて来る。「Get Simulated」から、変拍子を交えた荒削りなギターフレーズを生かした、ピクシーズらしいサウンドに回帰を果たしています。「The Lord Has Come Back Sound」は、往年の名曲「Here Comes Your Man」を彷彿とさせる、温和なインディー・ロックで、初見のリスナーにも親しめるような楽曲となっている。これらの曲の流れに、ピクシーズの熱烈なファンは、甘美なノスタルジアを覚えるに違いありません。さらに、それに続く「Thunder and Lightning」で、ピクシーズは、クラシカルなフォークミュージックに依拠したオルト・ロックに挑戦している。ブラック・フランシスは、近年のソロ活動の経験を踏まえ、シンガーソングライターとしての才覚を十分発揮してみせている。聴けば、聴くほどに、渋さが滲み出てくるような楽曲です。
#11「You’re Such A Sadduce」で、ピクシーズは、オルト・ロックの未知なる領域に踏み入れている。ジョーイ・サンティアゴの名ギタリストとしての才覚が遺憾なく発揮されているにとどまらず、バンドサウンドとしての1つのスパークが見受けられる。ブラック・フランシスの覇気のあるパワフルなボーカル、パズ・レンチャンティンのキム・ディールを彷彿とさせるコケティッシュなボーカル、さらに、デイヴィッド・ラヴァリングのシンプルでタイトなドラミングが見事に劇的な合致を果たし、緊密なバンドアンサンブルが生み出されている。さらに、ジョーイ・サンティアゴのギターは、かつての「River Euphrates」時代のように、宇宙的な壮大さを内包しています。
「You’re Such A Sadducee」は、ピクシーズの”New Classic”と称すことが出来る。さらにクローズド・トラック「Doggerel」で、ピクシーズは、この作品で終わりではないという宣誓をファンに提示し、ダブ、ファンクの雰囲気を取り入れたロックソングで、リスナーの期待を良い意味で裏切ってみせる。これまでのピクシーズの音楽性からは想像できないような楽曲となっている。
少なくとも、私見においては、ピクシーズは、このアルバム「Doggerel」で、復活の呼び声を高らかに告げており、現行のオルタナティヴ・ロックバンドとの存在感の違いを明確に示すことにも成功している。また、前作「Beneath the Eyrie」とは別のバンドに転身を果たしたような印象を受ける。
86/100
Weekly Featured Track 「You’re Such A Sadducee」
Sofcult
カナダのSoftcult(Mercedes/ Phoenix)がニューシングル「One Of A Million」で戻ってきました。
“Following the recent cancellation of US dates due to medical issues, we regret to say that we are also going to need to cancel our upcoming Japanese shows. We will have more news on returning there soon but please rest assured that everyone is recovering well.”
Numero Groupは、近年、リイシュー・レーベルから総合的な著作権管理組織へと移行し、ストリーミング、映画やテレビでの起用などを通じて、音楽とストーリーにさらに新しい命を与えている。まったくの無名だった音源を、数千万人のSpotifyリスナー、TikTokトレンド、Netflixシリーズでの同期、ヒップホップヒットでのサンプルなど、はるかに超えた存在に育て上げた。
Numero Groupは拡大を続ける中で、20周年イヤーを迎える。シカゴのフラッグシップ拠点から、2018年にはロサンゼルスオフィス、2022年には英国チームが新たに結成され、10月5日から9日にかけて5日間のロンドンでのテイクオーバーを控えている。
Benjamin Clementineが、来るサード・アルバム『And I Have Been』のプレビュー第4弾として、ニュー・カット "Delighted "を公開した。
1ヶ月前に "Genesis "でAnd I Have Beenを発表したベンジャミン・クレメンタインは、カーティス・エッセルが監督したビデオとともに「Delighted 」と題された先行シングルを共有している。この曲は、"Copening"、"Weakened "とともにニューアルバムに収録される予定となっています。
米国のシンガーソングライター、Alex Gが昨夜のThe Late Show with Stephen Colbertにゲストとして招かれ、自身の曲「Miracles」を披露しました。ライブパフォーマンスの模様は下記でご覧いただけます。
「Miracles」は、Alex Gの9枚目のスタジオ・アルバム『God Save the Animals』に先行シングル「Runner」、「Blessing」、「Cross the Sea」とともに収録されいる。この最新作はDominoから先週リリースされた。アルバムは先週の金曜日にDominoからリリースされ、7月にはAlex GがThe Tonight Showに "Runner "を持ち込んでテレビデビューを果たしています。