・ドリームポップの先駆者

 

Dream Popのオリジネーターと称されるCocteau Twins

 

「ドリーム・ポップの先駆者は、Cocteau Twins(コクトー・ツインズ)である」と意気揚々と書こうとしたところで、ダメ出しが入った。というのも、一般的にはそう見なされているが、実際にはそれ以前に、A.R.Kane(アレックス・アユリ、ルディ・タンバラのユニット)がみずからの浮遊感のあるボーカル、そしてドリーミーな雰囲気のバンドサウンドが溶け合った音楽性を「Dream Pop」と称したのが始まりだというのだ。

 

これは実際、今まであまり一般的には知られていなかったことである。それから現在、ベラ・ユニオンを主宰するコクトー・ツインズのサイモン・レイモンド氏が、みずからのバンドの音楽を”Dream Pop”と称したことから、このジャンルの呼び名が一般的に普及していった。音楽ジャーナリストや雑誌のライターがこの名前を使うようになったのはそれ以降のこと。A.R.Kaneは、1994年から長らくリリースをおこなっていなかったが、2023年に入り、カムバックし、『i』というフルレングスを発表している。このアルバムでは、以前とは見違えるようなニュー・ロマンティックやダンス・ポップ風のスタイルに挑戦している。

 

ドリーム・ポップというジャンルの音楽性の定義は、従来、一般的な商業音楽誌で説明されてこなかったという。シューゲイズに関しては、ジン、フリーペーパー、そしてシンコー・ミュージックが発刊する名盤ガイド等では、これまで再三再四、詳細な説明がなされてきた。けれど、ドリーム・ポップに関する音楽性の定義づけは、これまであまりされてこなかったという意見も見受けられる。

 

そもそも、コクトー・ツインズの80年代のアーティスト写真を見ると分かるとおり、このドリーム・ポップというジャンルは推測するに、Joy Divisionなどのゴシック・パンクの系譜にある音楽なのではないか、ということである。そして、それはゴシックを取り巻く表層的な概念ーー暗鬱、アンニュイ、耽美的、退廃的、甘美的、夢想的、ルネッサンス主義ーーと、こういった複合的なイメージが実際の音楽性と合わさり、ドリーム・ポップという音楽の概念を形成していく。


バンドのメンバーのキャラクター性に関しては、以前の1970年代のT-Rexのマーク・ボラン、David Bowie(デヴィッド・ボウイ)のグリッター・ロック(グラム・ロック)のイメージを継承している。


音楽性に関して言うなら、それ以前のJAPANなどのニュー・ロマンティックの音楽のイメージが合体し、ポスト・パンク/ニューウェイブの立ち位置を取りつつも、ポップで親しみやすい音楽という形で、複数の英国のグループがドリームポップの礎を構築していき、 Slowdive、Rideを筆頭とする1990年代のシューゲイズのムーヴメントへと繋げていった。


そのなかでは、スコットランドのギター・ポップの甘いメロディーと掛け合わせようとする試みを行うグループも複数登場した。同時に、シューゲイズの源流を形成するUKのクリエイション・レコード周辺のJesus and Mary Chain、Chapterhouse、さらに4ADのLush、Pale Saintsをはじめとする最初のウェイヴを形成するバンドも登場する。また、後のクラブ・ミュージックを音楽性の内核に擁するイメージからは想像もできないが、Primal Screamのギター・ポップ/ネオ・アコースティックを下地したデビュー・アルバムも、ドリーム・ポップに属すると見てもそれほど違和感がない。指摘しておきたいのは、シューゲイズからドリーム・ポップが生まれたのではなく、ドリーム・ポップからシューゲイズというジャンルが生み出されたということなのである。

 

 

 

・Dream Popの名盤ガイド 

 


 

Primal Scream 『Sonic Flower Groove』 1987/ Warner Music UK

 

 

 

Primal Screamの代表作といえば、真っ先に『XTRMNTR』が思い浮かぶ。しかし、その後のクラブ・ミュージックの影響を商業ロックと融合させたスタイルからは想像も出来ない音楽を引っ提げ、彼らはミュージック・シーンに名乗りを上げた。スコットランドのネオ・アコースティック/ギター・ポップに触発を受けた甘美さと憂愁を兼ね備える抽象的なギターロック・サウンドに、グラスゴー出身のバンドの郷土的な原点が見出せる。その後、イングランドからワールドワイドなグループに変身を遂げ、大掛かりで扇動的なダンス・ロックのスターに上り詰めるが、ジム/ウィリアム・リード兄弟のジーザス&メリー・チェインズ時代のドリーム・ポップに近い音楽性は今もなお貴重である。知る限りにおいて、プライマル・スクリームが繊細さとメロディーの良さを追求したのは、後にも先にもこのデビュー作だけだったのではないだろうか。

 


 


 

 

Cocteau Twins 『The Moon and The Melodies』 1986  / 4AD




コクトー・ツインズは、スコットランドで1979年に結成され、97年に解散した。Pixiesとともに4ADの黎明期を代表するグループ。もちろん、同レーベルの知名度を引き上げた貢献者として知られる。ボーカルのエリザベス・フレイザーは現在、Sun's Signatureとして活動し、ベースのサイモン・レイモンドは、ベラ・ユニオンを主宰している。グループのサウンドは、スコットランドのギター・ポップを下地にし、それらをニュー・ロマンティックやゴシック的なサウンドと結びつけている。別の見方をすると、コクトー・ツインズは、シンセ・ポップやポスト・ロック的なサウンドにも挑戦し、活動期を通じて様々な音楽を展開した。フレイザーの夢想的なボーカルと、エレクトロニックやバンドアンサンブルを融合させ、時代に先んじた音楽性に取り組んだ。1986年の『The Moon and The Melodies』では、コクトー・ツインズの代名詞的であるサウンドを体験することが出来る。オープニング「Sea, Swallow Me」の甘美的なサウンドも素晴らしいが、「Eyes Are Mosaics」の夢想的な雰囲気も捨てがたい。レーベルの最初期のゴシック的なイメージと合致を果たして、ドリーム・ポップの美学を生み出すことになった。

 



 

 

Wannadies 『The Wannadies』 1990 /MNW

 



Wannadies(ワナディーズ)は、スウェーデンの最初期のオルタナティヴ・シーンの牽引者。1988年にSkellefteåで結成。1996年に一度解散するも、2020年に復活している。バンドの音楽性は、ロック、ギター・ポップ、ジャングル・ポップ、パンキッシュな曲と広範にわたる。バンドはスウェーデンのバンドとしては大きな期待を受け、マイク・ヘッジズや、カーズのリック・オケイセックをプロデューサーに招いて、アルバムの制作を行った。後に、MNWとの関係が悪化し、最終的にBMGとライセンス契約を締結した。Wannadiesのアンセム曲としては、「You And Me Song」、「Combat Honey」が真っ先に挙げられるが、ドリーム・ポップという括りで語るなら、『The Wannadies』が最適だ。このファースト・アルバムには、スコットランドのギター・ポップの影響も見受けられる。ノスタルジア溢れるドリーム・ポップソングが満載である。

 


 

 

Slowdive 『Souvlaki』 1994/Sony Music

 



SlowdiveはMy Bloody Valentineとともに、クリエイション・レコーズの象徴的な存在であり、ブリット・ポップと次の時代のイギリスのミュージックシーンを架橋するような役割を果たしたと言えるだろう。シューゲイズとして取り上げられることも多いバンドだが、特に、良質なメロディー、そして夢想的な雰囲気がこのバンドの象徴的な音楽性に挙げられる。『Souvlaki』はコクトー・ツインズの音楽性を受け継ぎ、甘美的なインディーロックサウンドを追求している。「Alison」、「Machine Gun」、「40Days」等、良質なオルタナティヴ・ロック・ソングを収録。ノイジーなサウンドづくりに加え、その合間のサイレンスもスロウダイヴの唯一無二の魅力と言える。バンドは、今年に入り、『Everything Is Alive』を発表し、新境地を開拓している。

 



 

 

Alison's Halo   『Eyedazzler』1998/ Manufactured Recordings

 



Alison's Halo(アリソンズ・ヘイロー)は、キャサリン/アダム夫妻を中心に、1992年にアリゾナで結成された。シューゲイズ・バンドとしてマニアの間でひっそりと知られている。ただ、ここでは、ドリーム・ポップのグループとして紹介する。Alisson's Haloは、92年から98年まで活動した。六年間で1998年に唯一リリースされたのがこのアルバムだった。発売当初は二枚組としてアーカイブ的な意味合いでリリースされた。『Eyesdazzler』は、シューゲイズ・ギターと、シンプルなベースライン、キャサリン・クーパーの甘ったるいボーカルを特徴とする幻の傑作である。シューゲイズサウンドの中に見られる奇妙なアンニュイさは、コクトー・ツインズのフォロワー的な存在と見て良いかもしれない。「Sunsy」、「Jetpacks For Julian」は必聴。

 


 

 

 Kitty Craft 『Beats and Brakes from The Flower Patch』 1998 / Takotsubo Records




Kitty Craftは、1994年にPamela Valfer(パメーラ・ヴァルファー)により立ち上げられたソロ・プロジェクト。最初期のEPやアルバムは、鍵盤やサンプラーにより制作された。そのうちのほとんどはホームレコーディングを中心に自主制作をおこなった。年代的に見て世界初のベッドルームポップ・プロジェクトで、本物の天才プロデューサーである。1998年に発売された『Beats and Brakes from The Flower Patch』は、ヒップホップ/ヴィンテージ・ソウル/クラシックのサンプリングや、ブレイクビーツを取り入れたローファイ・ホップである。しかし、Pamela Valfer(パメーラ・ヴァルファー)のボーカルには夢想的な雰囲気が漂い、ドリーム・ポップ風のフレーズが生み出されている。ソウルとはまったくかけ離れた音楽でありながら、ハートウォーミングな感覚に浸されている。なお、今作は、昨年、Takotubo Recordsよりボーナス・トラックを追加収録して発売された。現在も、Pamela ValferはLAを拠点に活動中とのこと。


 

 

 Asobi Seksu  『Citrus』 2007/ One Little Independent



 

米国の日本人ボーカルのバンドといえば、まず最初に、ニューヨークのジャズシーンで高い評価を受けたMakino Kazu擁するBlonde Redheadが思い浮かぶが、Yuki Chikudate (ボーカル、キーボード)とJames Hanna (ギター)からなるユニット、Asobi Seksu(アソビ・セクス)も忘れてはならないだろう。本拠地はニューヨークのブロンクス。2人はマンハッタン音楽院でクラシックを専攻していた際に出会った。バンドは、その後、William Pavone、Larry Gormanをラインナップに迎え、四人編成で活動し、2001年から2013年まで活動をつづけた。


セルフ・タイトルのデビュー・アルバムのフィジカル盤の内ジャケットには、「ドリーム・ポップ・ワールド」と銘打たれており、キラキラしてフワフワした浮遊感のあるシューゲイズに近いインディー・ポップを特徴としていた。デビュー作で、すでに良質なソングライターとしての片鱗を見せたYuki Chikudate。その才覚が花開いた2ndアルバム『Citrus』は、バンドの最高傑作と見ても良いかもしれない。マニア向けのドリーム・ポップバンドでありながら、Pitchfork,New York Times,SPIN、NMEでもレビューで取り上げられ、好意的に受け入れられた。 Yuki Chikudateのハイトーンのボーカル、トレモロ・ギター、独特なキラキラした世界観が劇的な融合を果たして、2010年代以降のドリームポップ・リバイバル時代への重要な橋渡し役となった。

 


 

 

Mass Of The Fermenting Dregs 『World Is Yours」 2009/ Universal Music

 

 

 

意外と、日本よりも海外で人気が高い印象もある、Mass Of The Fermenting Dregs。デビュー前は、Audio Leafで無料で曲が聞くことが出来た。バンド名からも分かるとおり、マス・ロックに近いテクニカルな構成力を持つオルタナティヴロックバンド。フジかサマー・ソニックの新人枠で出演する以前、グランジに近い音楽性を特徴としており、ワンピースでベースをかき鳴らす様子は、当時の東京のインディーズ・シーンで異彩を放っていた。徐々にJ-Popの影響を交えた曲も書くようになり、人気が定着する。


オリジナル・メンバーの脱退、メンバー加入等、紆余曲折あったが、近年復活を果たし、昨年、『Awakening: Sleeping』をリリース後、ヨーロッパ・ツアーを成功させた。へヴィーロックからドリーム・ポップ、日本語ロックまでを網羅的に収録。今回、ご紹介する実質的なデビュー作「World Is Yours EP 」は、Mass Of The Fermenting Dregsの名を海外にも知らしめることになった傑作。ナンバー・ガールを思わせるパンキッシュなギター・ロックに加え、ドリーム・ポップにも近い雰囲気も漂う。正直、このEPに関しては現在、流通状態がどうなっているのかは不明。タイトル曲「World Is Yours」は日本のインディーロックの歴史に残る名曲のひとつだ。


 

 

 

Beach Fossils 『Beach Fossils』 2010/ Bayonet Records(オリジナルの発売はCaptured Tracks)

 

 


今では、2010年代のニューヨークのベースメント・ロックの象徴的な存在として知られるようになったBeach Fossilsであるが、当時、私が海外盤を発売当初入手して、すごいバンドが出たと吹聴した時、周りの人たちは誰もこのバンドのことを気にも留めていなかった。少なくとも、ビーチ・フォッシルズは2010年代のニューヨークのインディーロック・シーンの最重要バンドであることに変わりはない。しかし、このサーフ・ロックとドリーム・ポップ、そしてストーンズの古典的なロックを融合させた「Daydream/ Desert Sand」を引っ提げ、ビーチ・フォッシルズが登場したときの衝撃は未だに忘れることが出来ない。


リバイバルという形はすでにニューヨークのローワーイーストサイドで、2000年代に沸き起こっていたが、ビーチ・フォッシルズは、ガレージ・ロックのリバイバルの構図を、シューゲイズやドリーム・ポップの音に一新させてしまった。その後、バンドは、『Clash The Truth』、『Somersault』を発表した。元ドラマーで、ジュリアード音楽院でジャズを学んだトミー・ガードナーとのバンドの楽曲をジャズにアレンジしたアルバム『The Other Side of LIfe: Piano Ballads』を発表した。現在、ダスティン・ペイザーは、Bayonet Recordsを立ち上げ、新進バンドの発掘にも貢献している。バンドは今年に入り、最新作『Bunny』をBayonetからリリースしている。

 

 


 

 

Sea Oleena 『Sea Oleena』2010  / Charlotte Loseth

 


 

Sea Oleenaは、カナダ・モントリオールの兄妹、シャルロット・オリーナとルーク・ロゼスのエレクトロニカ・ユニット。現行のベッドルーム・ポップの先駆的な存在でもある。レコーディングの多くは、兄妹の自宅で行われ、ギター、ピアノをはじめとする楽器が自前のラップトップで録音され、レコーディングからリリースまでのおおよそが兄妹二人の手でなされている。Youtubeの公式のPV以外は、音源リリースは、カセットテープ、Sound Cloudでのリリースを中心に活動している。昨今、リリース音源がCDというかたちで市場に残るようになった。 Sea Oleenaの鮮烈なセルフ・タイトルのデビュー作は、ミニマルなインディー・フォークとドリーム・ポップを融合させた「Swimming Story」等が収録。2013年にはオリジナル盤に「Sister」を始めとする七曲を追加収録したバージョンが発売されている。


 

 

 

Lightning Bug 『A Color Of The Sky』  2021 / Fat Possum


 

Audrey Kang(オードリー・カン)を中心に結成されたニューヨークのLightning Bug。2015年から三作のフルレングスを発表している。フロントパーソンの透明感のあるボーカルが特色で、フェイザー・ギターやフォーク音楽を吸収したリズムがその音楽の魅力を引き立てる。バンドサウンドの風味は、シューゲイザー、ドリーム・ポップの中間点に位置し、不可思議な幻想性がほのかに漂う。「A Color Of The Sky」は、ニューヨークのキャッツキルでレコーディングされ、「リスナーには、自分の内面の世界を探求してほしいと思います。この作品は、自分を信頼すること、自分に深く正直になること、そして、自己受容が無私の愛を生み出すことを主題にしている」とフロントパーソンのオードリー・カンは説明している。ドリーム・ポップにみならず、落ち着いたフォークミュージックとして楽しめる。長く活躍してほしいバンドのひとつ。



 


 

Living Hour 『Someday Is Today』2022/ Next Door


 


カナダ、マニトバ州のウィニペグのバンド、Living Hour(リヴィング・アワー)。シューゲイズ寄りの骨太なロックサウンドが最大の魅力ではあるが、その中にドリーム・ポップ、トロピカル、エレクトロ等のクロスオーバーが見られることもカナダのロック・バンドらしい特徴である。デビュー・アルバムも捨てがたいものの、最新作『Someday Is Today』はリヴィング・アワーの出世作。今作には、Jay Somがゲストとして参加。制作は当初の予定よりも遅れ、最も寒い期間に制作が行われている。バンドが、ドラキュラが出そうな中世ヨーロッパの雰囲気と説明するレコーディング・スタジオで制作されたのも、特異なインディーロックサウンドを生み出す契機となった。シューゲイズのアンセム「Feeling Meeting」もクールだが、ドリーム・ポップという観点からは「Hump」がおすすめ。また、スロウコア風の「Curve」なども収録されている。

 



 

Lande Hekt 『Romantic』 Single 2022/ Emotional Response

 


 

マンシー・ガールズのフロントマンとして知られるランデ・ヘクトのソロ・プロジェクト。しかし、マンシー・ガールズは解散を発表し、フェアウェル・ツアーが今年の11月と12月に開催される予定。ということは、今後、ソロプロジェクトの専念するということなのか。ランデ・ヘクトは、パンキッシュな印象のあるマンシー・ガールズとは異なり、このソロ・プロジェクトを通じて、スコットランドのネオ・アコースティック、ギター・ポップを継承して、それらをエモーショナルなロックソングに昇華している。アーティストのゴシックへの興味についても曲にユニーク性を付与している。ジャングル・ポップ/パワー・ポップの名曲「Romantic」は、ぜひチェックしてもらいたい。2022年発売された2ndアルバム『House Without A View』はギター・ポップとしてはもちろん、ドリーム・ポップとしても楽しめるアルバムとなっている。

 



 

 

 

Smut 『How The Light Felt』2022 / Bayonet

 



シカゴの四人組インディーロックバンド、シンプルなロックソングが特徴。その中にはドリーム・ポップに近い夢想的な雰囲気に溢れている。バンドは先日、Audio Treeのラジオ・セッションに登場し、このアルバムの収録曲を演奏している。オアシス、クランベリーズを彷彿とさせるクラシカルなロックの型に加え、メロディアスな楽曲が特色である。このアルバムはボーカリストの妹の死を原動力に書かれた。実際、その中には落胆した人々の肩を支えるような力強さもある。Bayonet Records所属というのもあり、今後の動向に注目しておきたいオルタナティヴロックバンド。このアルバムには「Supersolar」、「Believe You Me」といった良曲が収録されている。


 

©︎Graham Machindoe

先週末にシンシナティで開催されたホームカミング・フェスティバルのステージで彼らが語ったように、ザ・ナショナルは2023年のセカンド・アルバムの続編をリリースした。


彼らはこのアルバムを、4月の『First Two Pages of Frankenstein』から始まった2枚組アルバムの後半と考えている。2022年にシングルとしてリリースされたボン・イヴェールとのコラボ曲「Weird Goodbyes」のように、フランケンシュタインが発表される前から世間に紹介されていたものもあるが、その多くはフランケンシュタインがすでにリリースされた後の今年5月にレコーディングされたものだ。


また、最近のシングル "Space Invader "と "Alphabet City "も収録されている。ボン・イヴェールに加え、フィービー・ブリジャーズ(フランケンシュタインの2曲にも参加)とロザンヌ・キャッシュがゲスト・ヴォーカルとして参加している。また、ロンドン・コンテンポラリー・オーケストラ、ソー・パーカッション、トーマス・バートレット、リサ・ハニガン、ベンジャミン・ランツ、ミナ・ティンドル、ヤン・セント・ヴェルナーなどが参加している。フルアルバムのストリーミングはこちらから。


 

Lime Gardenがニュー・シングル「ラヴ・ソング」をリリースし、デビュー・アルバム『One More Thing』を発表した。

 

来年2月中旬にソー・ヤング・レコーズからリリース予定のこのアルバムは、アリ・チャント(PJハーヴェイ、パフューム・ジーニアス)がプロデュースしたもので、印象的な一連のシングルと絶え間なく続くライブに続くものだ。ギルフォードで結成されたライム・ガーデンは、バンドとしても個人としてもブライトンに落ち着き、結成以来オーディエンスを魅了してきた。


アルバムのリード・シングル'Love Song'は、発売日に向けての彼らの下り坂を先導するもので、近づくアルバムの美しいバランスのサンプラーである。このシングルについて、クロエ・ハワードはこう語っている。

 

「アナベルは、音楽的にスランプに陥っていて、ヤー・ヤー・ヤーズやLCDサウンドシステムを聴きまくっていた時に、ベッドルームでこの曲を書いたんだ。私たちは何カ月も "アップビート "な曲を書こうとしていて、ついにこの曲ができたのです」

 

「Love Song」が誇る "アップビート "と "傷つきやすさ "の融合は、インディー・ロックにエレクトロニカの要素を加えたもので、前述のYeah Yeah Yeahsのようなニューヨークの巨人を彷彿とさせる。



「One More Thing」はSo Young Recordsより2月16日発売。アルバムのプレオーダーはこちらから。

 

 

 Lime Garden 『One More Thing』


 

Label: So Young

Release: 2024/2/16

 

Tracklist:

 

1.Love Song

2.Mother

3.Nepotism(baby)

4.Popstar

5.Pine

6.I Want To Be You

7.Floor

8.Fears

9.It

10.Looking

 


最近サード・マン・レコードと契約し、「Protocol」などシューゲイザー・ファンにはたまらない楽曲をリリースしているミュージシャンのウィル・アンダーソンが発案したHotline TNTは、11月に新レーベルからリリースされる初のアルバム『Cartwheel』を発表した。アルバムは11月3日に発売される。


ヘッドライン・トラック 「I Thought You'd Change」は、自責の念とロマンチックな難問の暗く陰鬱な水域にすぐに入り込める。青春時代の夢を回想するスプリット・スクリーンをフィーチャーした、シネマティックな演出のミュージック・ビデオと組み合わされたこの曲は、アンダーソンのこれまでのグランジに満ちた靄のかかった嘆きと相性がよく、一方でより重く深いものをミックスに持ち込んでいる。


この曲についてアンダーソンはこう答えている。 「この曲は、友情がそれ以上のものに変わることを望んでいて、どんな困難にもかかわらずそれが起こるのを見て、それが正しいことだったのかどうか疑問に思い、そして友情に戻ることを望んでいる。二人の語り手の間を行ったり来たりする曲を書いたのはこれが初めてで、どの言葉が私のもので、どれが恋人のものなのかわからない」


ブルックリンを拠点に活動するミュージシャン、ウィル・アンダーソンのプロジェクト、ホットラインTNTが、11月3日に待望のニュー・アルバム、サード・マン・レコードのデビュー作『Cartwheel』をリリースする。その後 絶え間ないツアーを行い、果てしないラインナップの入れ替わりに耐えてきたHotline TNTは、いくつかのDIYシーンの要となっている。彼らのデビュー・アルバム『ナインティーン・イン・ラブ』は、LP盤の垂涎の的となった。
 

 

その次のアルバムは、美しく、過激で、夢中にさせるレコードだ。私たちの多くがまだ到達していないもの、それは「充実感」だ。アンダーソンは『Cartwheel』のほぼ全曲を自ら演奏し、歌っている。ひとつは、多作なアート・ポップ・パンクの作家イアン・ティープル(シリコン・プレーリー)とのセッションで、彼はあらゆるアイデアに取り組み続けるよう背中を押され、もうひとつは、二国間のエンジニア、アロン・コバヤシ・リッチ(Momma)とのセッションで、彼はアイデアを書き留め、前進し続けるよう励まされた。しかし、『カートウィール』そのものははシームレスであり、ベッドルーム・スタジオの大らかさとパンクのシンプルさがアンダーソンの中に完璧に紡ぎ出されている。しかし、『Cartwheel』自体には隙がない。真実の愛。



Club Chinois
 

いわずもがな、ヨーロッパは全般的にクラブカルチャーが盛んな土地である。どうやらそれは、スペインのクラブカルチャーが1980年代から現在まで続いてきたことに要因があるようだ。南洋のサンゴ礁が輝く諸島のようなエメラルドの海、白亜石のような白っぽい建築素材でできた家々、ギリシャのエーゲ海のサントリニ島、ミコノス島、ロードス島に見られるカラフルな塗料を施した建築群、そして、もちろん、カラフルなビーチ・パラソルが目立つ寛いだ砂浜。こういったギリシャやイタリアで見られるような個性的な景観は、南ヨーロッパの国土の最大の美点だろう。

 

そして、西ヨーロッパのパーティー・サーキットが世界的に有名なのには理由がある。雰囲気はアメリカよりもはるかにリラックスしていて、バカンス寄りだ。飲み物は豊富で、特に強力なリキュールを使っている。パーティーは遅く始まり、遅く終わる。フランス、スペイン、イタリアのクラブでは、Alors On DanseやDragostea Din Teiがいまだに愛されていることに驚くだろう。


ヨーロッパは文化の奥深さにより知られていると言うとき、それはルネッサンスの芸術や建築と同様にナイト・ライフにも該当する。フィレンツェはウフィツィ美術館とメディチ家の貢献で知られているが、ナイトクラブでも知られている。そしてパリでは、昼間はオルセー美術館のマネやドガの絵画、ルーヴル美術館のエジプト・コレクションを見ることに挑戦する。しかし、夜には、午前2時の地下鉄に乗り遅れたら、電車が再開する午前6時まで外にいることも出来る。


スペインのナイトライフは、マドリードからマヨルカまで、その種類はさまざま。アシュトン・カッチャーと同じウェスト・ハリウッドのクラブに入ろうとするようなL.A.のクラブ遊びとは違うらしい。髪を下ろして、Ai Se Eu Te Pego(ノッサ!ノッサ!)の大合唱に参加するような、のんびりしたパーティーだ。スペインのパーティー文化は、音楽を感じ、魅惑的な雰囲気に身を任せるというもの。アメリカでは、たとえラスベガスやマイアミであってもそのノリは通じない。


スペインのパーティーの聖地といえば、イビサ島だ。バレアレス諸島の一部であるイビサは、バレンシア沖、パルマとメノルカの南に位置する。イビサは、パーティーの主要地として国際的に高い評価を得ているが、その客観的価値はすぐに変わることはないだろう。2000年代初頭のベニー・ベナシやベースハンターのヴァイブスから、最近のデュア・リパのヒット曲まで、ハウスミュージックとポップスのリミックスが君臨する場所だ。イボシム(Ibosim)のようなイビサのクラフトビール、島の有名な蒸留酒ヒエルバ(Hierbas)、アブサン(Absinthe)のような古典的なヨーロッパのパーティー・リキュールなど、ドリンクもビーチと同様に文化の一部だ。


では、イビサがアルコールと音楽に酔いしれる快楽主義的な評判を実際に高めたのはいつなのだろう? ヨーロッパのみならず、世界の真のパーティーの首都となったのはいつなのだろうか?


当然、イビサのパーティー・カルチャーは、60年代から70年代にかけて、ヒッピー、クリエーター、アーティストたちが、社会への適合性(そして現実の仕事)から逃れてきたことに端を発している。このような考え方に由来しないパーティー・カルチャーがあるだろうか? イビサ島には、よりのんびりとしたアーティスティックな文化の先例がすでにあった(それは30年代にスペイン本土を出発した人々まで遡る)ので、70年代にこの文化がさらに定着しても驚くには値しなかった。


一般の人々は、イビサをエレクトロニック・ハウス・ミュージックのシーンとしか見ていないかもしれないが、イビサのサウンドはもっと多面的で複雑だ。70年代に形成されたほとんどの音楽シーンと同様に、ロックンロールはイビサの初期のパーティーの歴史の大きな部分を占めている。実際、BBC Travelによると、エリック・クラプトンは、77年にジョージ・ハリスンと一緒にこの島に現れ、フレディ・マーキュリーは、41歳の誕生日をイビサで迎え、Wham!は今や象徴的なホテルとなったパイクスでクラブ・トロピカーナのビデオをレコーディングしたという。


この頃、イビサ島で最も古いクラブが2つオープンした。70年代のパチャ、そして80年代のアムネシア。この2つのクラブは、70年代と80年代のアンセムに加え、低音を効かせたハウス・ミュージックやデヴィッド・ゲッタなどのゲストDJシリーズを歓迎する環境を作り上げた。80年代から90年代にかけて、クラブはPachaとAmnesiaの2店舗をお手本とし、イビサのパーティーシーンは、セレブリティ主催のパーティーナイトや、必ず訪れるべきクラブハウスを軸に成長していった。


Club Eden

音楽は、イビサの文化の大きな部分を占めているおり、90年代から2000年代初頭にかけてライブコンサートや音楽フェスティバルが開催された。そしてパーティーを中心とする文化の成長を促進した。70年代のロック・スターが誇りに思うような才能を歓迎し、イビサは、音楽面でも様々なジャンルのミュージシャンを受け入れるように。その後の年代には、ロック・ミュージックが盛んになった。たとえば、Ibiza Rocks Festivalでは、アークティック・モンキーズやザ・リバティーンズがホスト役を務め、「I Bet That You Look Good on the Dance Floor」を口ずさむオーディエンスが、ハウス・ミュージックの先駆者たちと仲良くプレイできることを証明している。


イビサ島の魅力は、ただ純粋に楽しみ、朝まで飲み明かすだけの場所ではないこと。イビサが世界中の人々を惹きつけてやまない理由もそこにある。テクノ、ボーホー、ロックンロール、どのような雰囲気に惹かれるかに関わらず、イビサ島は奥深いカルチャーの魅力があるようです。


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南アフリカで誕生した新たなミュージックシーンの息吹 ーAMAPIANOー

Weekly Music Feature

 

Mitski 



©Ebru Yildiz

 

「希望や魂や愛が存在しないほうが人生は楽だと感じることがある・・・」とミツキは言う。しかし目を閉じ、何が本当に自分のものであるのか、差し押さえられたり取り壊されたりすることのないものは何なのかを考えたとき、ほんとうの愛が見えてくる。「私の人生で最高のことは、人を愛することだ」

 

「私が死んだ後、私が持っているすべての愛を残せたらいいのに、と思う。そうすれば、私が作り出したすべての善意、すべての善良な愛を他の人々に輝かせることができるのだから・・・」彼女は、最新アルバム『The Land Is Inhospitable and So Are We』が、自分の死後もずっとその愛を照らし続けてくれることを願っている。このアルバムを聴くと、まさにそのように感じる。「この土地に取り憑いている愛のようだ。これは私にとって最もアメリカ的なアルバム」と、ミツキは7枚目のアルバムについて語っているが、その音楽は、私的な悲しみや痛ましい矛盾を抱えたアメリカなる国家を直視する深甚な行為であるかのように感じられる。

 

このアルバムは、サウンド的にもミツキの最も広大かつ壮大、そして賢明な内容に彩られている。曲はアーティストの心の傷を示し、そして同時に積極的に癒しているかのようだ。ここでは、愛は数億光年も先にある遠い星からの光の反射さながらに、私達の優しい日々を祝福するため、タイムリープしている。アルバムの全体には、大人になり、一見すると平凡な心の傷や、しばしば表向きには歌われることがない莫大にも感じられる喜びによる痛みがあふれている。

 

これはアーティストによる小さく大きな叙事詩である。グラスの底から、思い出と雪でぬかるんだ車道、アメリカ中西部を疾走する貨物列車のアムトラック、そして目が眩むほど私達が住む場所から離れた月へと、すべてが、そして誰もが、痛みで叫びながら、愛に向かってアーチを描いているのだ。愛とはそもそも、人を寄せ付けぬサンクチュアリなのであり、私たちを手招きしながらも、時に拒絶する。この場所--この地球、このアメリカ、この身体--を愛するには、積極的な努力が必要となる。しかし、それは不可能かもしれない。最高のものはいつだってそうなのだから。

 

 

『The Land Is Inhospitaland and So Are We』/ Dead Oceans

 




前作『Laurel Hell』では、ビルボード・トップ・アルバム・チャートで初登場一位を記録し、Talking Headsのデイヴィッド・バーンとのコラボレーションにより、2023年度のアカデミー賞にもノミネートされ、また、イギリスの偉大なエレクトロニック・プロディーサー、Clarkへのリミックスの依頼する等、ミツキはアルバムをリリースから2年ほど遠ざかっていたものの、表層的な話題に事欠くことはほとんどなかった。


ボストンのRoadrunnerを除けば、世界的なフェスティバルにはほとんど出演しなかったものの、このアルバムの制作及び発表にむけて、そのクリエイティヴィティーをひそかに磨きつづけていた。
 
ミツキが一度は表舞台からの引退発表を行ったことは事実であるが、一方、前作の『Laurel Hell』でミュージック・シーンに返り咲き、インディーズの女王の名を再び手中に収めた。アーティストは、その謎めいた空白の期間、アーティストとして生きるということはいかなることであるのかを悩んだに違いない。


そして、オーディエンスの奇異な注目を浴びることの意味についても考えを巡らせたに違いない。例えば、Mitskiは、近年のライブにおいて、観客がアーティストの音楽に耳を傾けず、デジタル・デバイスを暗闇にかざし、無数のフラッシュをステージに浴びせることに関し、強い違和感を抱いていたはずである。


アーティストは写真を撮影されるために何万人もの前でライブを行うわけではない。また、ゴシップ的な興味を抱かれるためにライブを行うわけでもない。無数のカメラのフラッシュのすぐとなりで、ひっそりと音楽に純粋に耳を傾ける良心的なファンのため、普通の人ならほとんど膝が震えるような信じがたいほど大きな舞台に立つのである。またそのために、人知れず長い準備を行うのだ。この無数のオーディエンスは、とミツキは考えたに違いない。自分の音楽を聴きに来ているのだろうかと。

 
そして実際、アーティストは以前、そういった音楽を聞かず、写真だけを撮影しに来るオーディエンスに対して、次のような声明を出していたことは記憶に新しい。「観客とパフォーマンスを行う私たちが同じ空間にいるのにもかかわらず、なぜか一緒にその場にいないような気がする」と。さらに彼女は、ライブ・セットをスマートフォン等で全撮影をおこなう節度を弁えない(ライブを聴いていない)ファンにも率直に苦言を呈した。「ライブでの電話に反対だと言ったことはありません。私がプロとしてパフォーマンスをしているかぎり、オーディエンスは自由にライブを録画したり写真を撮ったりしてきた」彼女はもちろん、「ライブショー全体を撮影する観客のことを指している」と付け加え、「ステージの上で、静止したままの携帯電話の海を見て、ショー全体の観客の顔が全然見えなくなる」ことがとても残念であると述べた。

 
最新アルバム『The Land Is Inhospital and So Are We』を見るかぎり、上記の現代のライブにおけるマナーに関するコメントは、意外にも、重要な意味を帯びて来ることが分かる。ニューヨークの山間部に自生しているバラの名前にちなんだ前作アルバム『Laurel Hell』では、ライブを意識したダンス・ポップ/エレクトロ・ポップの音楽性を主体にしていたが、最新作では、驚くほど音楽性が様変わりしている。単体のアルバムとしてのクオリティーの高さを追求したことは勿論、ライブで静かに聴かせることを意識して制作された作品と定義付けられる。いわば多幸感や表向きの扇動性を徹底して削ぎ落として、純なるポピュラーミュージックの良さをとことん追求した作品である。これまで幾度も二人三脚で制作を行ってきたプロデューサー、そしてオーケストラとの合奏という形で録音された『The Land Is Inhospital and So Are W』は、厳密に言えばライブ・アルバムではないのだが、まるでスタジオで録音されたライヴ・レコーディングであるようなイメージに充ちている。すべての音は生きている。そして絶えず揺れ動いているのだ。

 
先行シングルとして公開された「Bug Like A Angel」のイントロは、アコースティック・ギターのコードにより始まる。しかし、その後に続くミツキのボーカルは、アンニュイなムードで歌われていて、そして、ソフトな印象をもたらす。そして、そのフレーズはゴスペル風のクワイアによって、印象深いものに変化する。まさにイントロから断続的に音楽がより深い領域へと徐々に入り込んでいく。ゴスペルのコーラスの箇所では華美な印象性をもたらす場合もあるが、メインボーカルは、一貫して落ち着いており、一切昂じるところはなく、徹底して素朴な感覚に浸されている。しかし、それにも関わらず、複数人のサブボーカルがメインボーカルの周りを取り巻くような形で歌われる、アフリカの民族音楽のグリオ(教会のゴスペルのルーツ)のスタイルを取り、曲の中盤から終わりにかけて、なだらかな旋律の起伏が設けられている。歌詞についても同様である。安直に感動させる言葉を避け、シンプルな言葉が紡がれるがゆえ、言葉の断片には人の心を揺さぶる何かが含まれている。この曲は、叙事詩的なアルバムの序章であるとともに、この数年間のシンガーソングライターとしての深化が留められている。
 
 

「Bug Like A Angel」

 

 

 

「Buffalo Replaced」ではアーティストのインディーロック・シンガーとしての意外な表情が伺える。表向きに歌われるフレーズはポピュラー音楽に属するが、一方、アコースティックギターのノイジーなプロダクションは、まるでグランジとポップの混合体であるように思える。そしてニヒリズムに根ざした感じのあるミツキのボーカルは、これらの重量感のあるギターラインとリズムにロック的な印象を付与している。ここには、不動のスターシンガーとみなされるようになろうとも、パンキッシュな魂を失うことのないアーティストの姿を垣間見ることが出来る。特にミニマルな構成を活かし、後半部では、スティーヴ・ライヒの『Music For 18 Musicians』の「Pulse」のパーカッシブな効果を活用し、独特なグルーヴを生み出す。これはモダンクラシカルとポップス、そしてインディーロックが画期的な融合を果たした瞬間でもある。

 

Mitskiはこのアルバムを「最もアメリカ的」であると説明しているが、その米国の文化性が「Heaven」に反映されている。ペダル・スティールや大きめのサウンドホールを持つアコースティック・ギターの演奏を通じて、カントリー/ウェスタンの懐古的な音楽性に脚光を当てようとしている。この曲は例えば、同じレーベルに所属するAngel Olsen(エンジェル・オルセン)が『Big Time』で示したアメリカの古き良き時代への愛のオマージュとなり、Mitskiというシンガーの場合も同じく、保守的な米国文化への憧れの眼差しが注がれている。実際、プロデューサーの傑出したミックス/マスタリングにより、曲全体にはアルバムの主要なテーマが断片的に散りばめられている。それは単なる偏愛や執着ではなく、アーティストの真心の込められた寛容で温かく包み込む感覚ーーἀγάπη(アガペー)ーーが示されていると言える。そしてその感覚は、実際、部分的にシンガーの歌にμ'sのごとく立ちあらわれ、温和な感情に満たされる。音楽というのは、そもそも肉体で奏でるものにあらず、魂で語られるべきものである。


先日、頭にいきなり思い浮かんだ来た言葉があった。それは良いシンガーソングライターとはどういった存在であるのかについて、「生きて傷つきながらも、その傷ついた魂を剥き出しにしたまま走り続けるランナー」であるという考えだ。実際、それは誰にでも出来ることではないために、ことさら崇高な感覚を与える。そして、ギリシャ神話にも登場する女神とはかくなるものではないかとおもわせるものがある。「I Don't Like My Mind」は、まさにそういった形容がふさわしく、アーティストのμ'sのような性格がどの曲よりもわかりやすいかたちであらわれている。前の曲「Heaven」と同じように、カントリーを基調にした一曲であり、自己嫌悪が端的に歌われる。ペダル・スティールはアメリカの国土の雄大さと無限性を思わせる。そしてその嫌悪的な感覚の底には、わたしたちが見落としてしまいそうな得難いかたちの愛が潜んでいる。それはシンガーの力強いビブラート、つまり、すべての骨格を震わせて発せられる声のレガートが最大限に伸びた瞬間、自己嫌悪の裏に見えづらい形で隠れていた真の愛が発露する。愛とはひけらかすものではなく、いつもその裏側で、目に映らぬほどかすかに瞬くのだ。

 

「The Deal」は、まるで暗い海の上をどこに向かうともしれず漂うような不安定なバラードである。表向きにはアメリカのフォーク/ポップの形が際立ち、それはシアトリカルなイメージに縁取られている。曲調はラナ・デル・レイにも近い。しかし、日本人として指摘しておきたいのは、サビのボーカル・ラインの旋律の節々には、日本の昭和歌謡の伝統性がかなり見えづらい形で反映されていることだろう。これらのナイーヴとダイナミックな性質の間を絶えず揺れ動く名バラードは、なぜか、曲の後半でアバンギャルドな展開へと移行していく。破砕的なドラム・フィルが導入され、米国のフォーク音楽が、にわかにメタルに接近する。これは、プロデューサーの冒険心が”Folk Metal”というユニークな音楽を作り出したのか。それともプロデューサーのミドルスブラのBenefitsに対する隠れた偏愛が示されているのか。いずれにしても、それらのダイナミックな印象を引き立てるドラム・フィルの断片が示された後、曲はグランド・コアに近いアヴァンギャルドな様相を呈してから、徐々にフェード・アウトしていく。このプロデュースの手法には賛否両論あるかもしれないが、アルバムの中ではユニークな一曲と呼べる。


「When Memories Snow」では、シンガーとしては珍しく、古典的なジャズ・ポップスに挑戦している。実際の年代は不明だが、これこそシナトラやピアフの時代への最大の敬愛が示された一曲である。ストリング、ホーン、ドラムとビック・バンド形式を取り、ミュージカルのような世界観を組み上げている。メロディーやリズムの親しみやすさはもちろん、ミツキのボーカルは稀にブロードウェイ・ミュージカルの舞台俳優のようにムードたっぷりに歌われることもあり、昨年、Father John Mistyが『Chloe and the Next 21th Century』で示したミュージカル調のポップスを踏襲している。



クワイア調のコーラスがメインボーカルの存在感を際立たせる。アウトロにかけては、Beatlesが取り組んだポップとオーケストラの融合を、クラシック・ジャズ寄りのスタイルにアップデートしている。実際、ストリングのトレモロ、 ホーン・セクションのアレンジは、ミュージカルのような大掛かりな舞台装置の演出のような迫力をもたらす。かつてのOASISの最盛期のブリット・ポップの作風にも比する壮大さである。


ミツキが今後、どのようなシンガーソングライターになっていくのか、それはわからないことだとしても、「My Love Mine All Mine」で、その青写真のようなものが示されているのではないか。ジャズの気風を反映したポップだが、この曲に溢れる甘美的な雰囲気は一体なんなのか。他のミツキの主要曲と同じように、中音域を波の満ち引きように行き来しながら、淡々とうたわれるバラード。もったいつけたようなメロディーの劇的な跳躍もなければ、リズムもシンプルで、音楽に詳しくない人にも、わかりやすく作られている。


それにもかかわらず、この素朴なバラード・ソングは、60年代から六十年続く世界のポピュラー・ミュージックの精髄を突いており、そして2分弱という短尺の中で、シンガーは、片時もその核心を手放すことはない。このNorah Jonesのデビュー作のヒット・ソングとも、一昨年のSnail Mailの『Valentine』のクローズのバラード・ソングとも付かない、従来のシンガーソングライターのキャリアの中で最も大胆かつ勇敢な音楽へのアプローチは、実際のところ、あっという間に通り過ぎていくほんの一瞬の音の流れに、永遠の美しさの影を留めている。

 

「My Love Mine All Mine」

 

 

 

「The Forest」では、カントリー/ウェスタンの懐古的な音楽性へと舞い戻る。この曲では、ハンク・ウィリムズのような古典から、WW2の後のジョニー・キャッシュ、レッド・フォーリーに至るまでのフォーク音楽を綿密に吸収して、それを普遍的なポップスの形に落とし込んでいる。「No One」や「Memory」といった理解しやすいフレーズを多用し、語感の良さを情感たっぷりに歌っている点が、非英語圏のスペインをはじめとするヨーロッパの主要な国々でも安定した支持を獲得している理由でもある。そして、ペダル・スティールやジャズのブラシ・ドラムのようにしなやかなスネアは、温和なボーカルと綿密に溶け合い、この上なく心地よい瞬間を生み出す。それはやはり、他の収録曲と同じように、あっけなく通りすぎていってしまうのだ。


アルバムの先行シングルとして公開された「Star」は、ポピュラー歌手としての新機軸を示している。この曲は編曲家/指揮者のドリュー・エリクソンとロサンゼルスのサンセット・スタジオで録音された。アーティストは、オーケストラを曲の中に導入する場合、別の場所で録音されたものでは意味がないと考え、そのオーケストラとポップの瞬間的なエネルギーを生み出そうと試みた。ハリウッド映画『Armagedon』のオープニング/エンディングのような壮大さを思わせるダイナミックなサウンドは圧巻だ。パイプ・オルガンを交えたシネマティックな音響効果が、宇宙的な壮大さを擁するバラードという最終形態に直結していく。そしてイントロの内省的なボーカルは、オーケストラやオルガンの演奏の抑揚がゆっくりと引き上げられていくにつれ、神々しい雰囲気へと変貌を遂げる。それは、このアルバムを通じて紡がれていくナラティヴな試みーー生命体がこの世に生まれてから、いくつもの悲しみや痛みを乗り越えて、ヒロイックなエンディングを迎える壮大な叙事詩の集大成ーーを意味している。そしてこの曲には、アーティストが隠そうともしない心の痛みが、己が魂を剥き出しにするがごとく表れている。

 

 「Star」

 

 

この段階までで、すでに大名盤の要素が十分に示されているが、このアルバムの真の凄さは、むしろこの後に訪れるというのが率直な意見である。アルバムの序盤では封じていた印象もある憂鬱な印象を擁する「I'm Your Man」では、サッド・コアにも近いインディーズ・アーティストとしての一面を示す。これは大掛かりなしかけのある中で、そういったダイナミックな曲に共感を示すことができない人々への贈り物となっている。そして、この曲では、(前曲「Star」の三重県出身のアーティストが若い頃に影響を受けたという中島みゆきからの影響に加えて)次のクローズ曲とともに、日本の原初的な感覚が示される。それは、曲の後半で、犬の声のサンプリング、山を思わせる大地の息吹、そして虫の声、と多様な形を取って現れる。最初に聴いた時、曲調とそぐわない印象もあったが、二度目以降に聴いた時、最初の印象が面白いように覆された。おそらく日本的なフォークロアに対する親しみが示されているのではないか。

 

アルバムの序盤では、一貫してアメリカの民謡やその文化性に対する最大限の敬愛が示されたが、その後半ではシンガーソングライターのもう一つのルーツである日本古来の民族的な感覚へと変貌し、ニンジャや着物姿のアーティスト写真の姿のイメージとピタリと合致する。また、それは、『日本奥地旅行』で、イギリス人の貴族階級の旅行家であるイザベラ・バード(Isabella Lucy Bird)が観察した、明治時代の日本人の原初的な生活ーー陸奥の農民の文化性、さらに、北海道の北部のアイヌ民族の奇妙なエキゾチズムーーに対する憧憬に限りなく近いものがある。ややもすると、それらの文化の混淆性は、歌手の最も奥深い日本人としての性質を表しており、今もなお、このシンガーの背中をしっかりと支え続けているのかもしれない。

 

アルバムのクローズ「I Love Me After You」は、前作のシンセ・ポップ/ダンス・ポップの延長線上にあるトラックで、アーティストのナイチンゲールのような献身性が示されている。しかし、驚くべきことに、その表現性は、己が存在を披歴しようとしているわけではないにもかかわらず、弱くなりもしないし、曇ったものにもならない。いや、それどころか、歌手の奥ゆかしい神妙な表現性により、その存在感は他の曲よりもはるかに際立ち、輝かしく、迫力ある印象となっている。ぜひ、これらの叙事詩のような音楽がいかなる結末を迎えるのか、めいめいの感覚で体験してみていただきたい。そして、実際、この国土的な観念を集約した傑出したポピュラー・アルバムは、2023年度の代表的な作品と目されても何ら不思議はないのである。


 

 100/100(Masterpiece)

  

 

「I Love Me After You」

 

 

 

Mitskiの新作アルバム『The Land Is Inhospital and So We Are」はDead Oceansより発売中です。日本国内では、Tower Record、HMV,Disc Unionにてご購入できます。

 

 

Chartreuseは、デビュー・アルバム「Morning Ritual」を11月10日にCommunion Musicからリリースすると発表した。 彼らは一連のEPと昨年のオーランド・ウィークスとのコラボ・シングル「Satellites」で技術を磨いてきた。このニュースは、タイトル・トラックとアルバムのオープニング曲「All Seeing All The Time」のダブル・シングルのリリースと同時に発表された。


「All Seeing All The Time」について、バンドのハティー・ウィルソンはこう語っている。「この曲は、私たちが欲しいときにいつでも手に入る、たくさんの情報について歌っている。それが事実であれ偽物であれね。ローリーが四六時中ニュースをチェックし、目を覚ましてそれを見ていた。当時も今も、世界ではいろいろなことが起こっているんだ」


「この曲をライブで演奏すると、まるで命をかけてしがみついているような気分になる。とても詰まっていて複雑なので、何が起こったのかよくわからないうちに始まり、終わってしまう。ライブで演奏するのが好きな曲のひとつだ」

 

 

「All Seeing All The Time」



Chartreuse 『Morning Ritual』

 


 

1. All Seeing All The Time

2. Backstroke

3. Switch It On, Switch It Off

4. Who Bites Down

5. Shield From Bedlam

6. Agitated

7. Never To Be Real

8. Whippet

9. Morning Ritual

10. This Could Be Anything

11. Are You Looking For Something

12. Sorcerer’s Eyes



 


ザラ・ラーソン(Zara Larsson)とデヴィッド・ゲッタ(David Guetta)の初コラボレーションから7年、2人のミュージシャンが新曲を携えて帰ってきた。


今週、金曜日に、スウェーデンのポップ・スターとイギリスのDJ/プロデューサーがタッグを組んだ「On My Love」は、無条件の愛で結ばれた大切な絆をテーマにしたクラブ向けのダンス・トラックで、この曲はザラ・ラーソンの妹であるハンナ・クリスティーナ・ラーソンをフィーチャーした絵のように美しいミュージック・ビデオとともに到着した。


「"オン・マイ・ラヴ "は、あなたにとってとても大切で、すべてを捧げたいと思えるような人間関係について歌っています」とプレス声明で語っている。


「On My Love "は、愛する人についての情熱的な歌詞が特徴で、ゲッタ・プロデュースのダンス・ビートに乗せてザラが歌い、夏の終わりのフェスティバルにぴったりの陶酔的なクライマックスへとゆっくりと盛り上がっていく。


「暗闇の中へ、光の中へ、ベイビー、私は行く/それが間違っていようが、正しかろうが、私はついていく/代償を払う、犠牲になる/それは私の愛に、ええ」と彼女はこの曲で歌っている。


この曲の心温まるミュージック・ビデオは、幼いザラがハンナ・クリスティーナを紹介する自宅でのパフォーマンスという幼少期の映像から始まり、誕生日パーティーやその他の幼少期の瞬間のクリップが続く。次に映像は現在に切り替わり、姉妹が原付バイクに乗ったり泳いだりしながら、ゴージャスな屋外の風景の中でくつろいでいる様子が映し出される。

 

ザラとゲッタは以前、2016年の「This One's for You」でコラボしており、この曲はフランスで開催されたUEFAユーロ2016の公式ソングである。


 


ノースカロライナのポストパンクバンド、Truth Club(トゥルース・クラブ)がニューシングル「Uh Oh」を発表した。この曲は、2ndアルバム『Running From the Chase』からの3曲目。この曲は、インディゴ・デ・ソーザ(Indigo De Souza)がゲスト・ヴォーカルを務めた前作「Blue Eternal」と「Exit Cycle」に続く作品である。この曲のリリック・ビデオは以下よりご視聴ください。


『Running From the Chase』は10月6日にDouble Double Whammyよりリリースされる。



©Nikki Milan Houston

ヴァージニアのシンガーソングライター、Kate Bollinger(ケイト・ボリンジャー)が、Dirty Projectorsのデイヴ・ロングストレスと共同で作曲・録音した新曲「You At Home」を公開した。この曲のビデオは以下より。


「デイヴと私は、私が初めてLAを訪れた時に一緒にこの曲を書いた。彼のバンド、ダーティ・プロジェクターズがずっと好きだったから、彼と一緒に音楽をやるのは夢のようだった。一緒になったその日に作曲とレコーディングを同時に行い、ほぼちょうど1年後にいくつかの追加要素を加えた。ギターを増やし、ハウス・キー・パーカッションを加え、僕の下駄が階段を歩くようにね」


2022年、ボリンジャーはデビューEP『Look at It in the Light』をリリースした。

 

 

©Pat Martin


Lol Tolhurst & Budgie & Jacknife Lee(The Cureの創始者ドラマー、ロル・トルハースト、Siouxsie & The Bansheesのドラマー、バギー、プロデューサー、ジャックナイフ・リーによるプロジェクト)は、最新曲「Ghosted at Home」に参加した。

 

トリオは以前、LCD Soundsystemのジェームス・マーフィーをフィーチャーした次作アルバムのタイトル・トラック「Los Angeles」を発表している。今週、公開された「Ghosted at Home」は、ジュリアン・ガブリエル・ベンダニャ監督によるビデオ付き。


「もしセルジュ・ゲンスブールとCanが僕らと一緒に演奏していたら、ポランスキーの『反撥』をサウンドトラックにしようとしたろう。私たちはグルーヴを得て、その上で即興演奏し、この曲に行き着いた。私たちは閉所恐怖症のような感覚を目指していたのですが、ボビーは私たちがトラックを送ったときにそれを巧みに拾い上げてくれた。これは、私たちがこのアルバムでコラボレーターたちと、時には離れ離れになっていた。にもかかわらず、いかに同調していたかを示すもうひとつの例となるでしょう」


ロル・トルハーストは、以下のようにコメントしている。「”Ghosted at Home"で最初に聴こえる音は、ヨセミテの神聖な場所で一緒に作った最初のレコーディングでもあり、この音には、私たちが作っている音楽に対するすべての希望と期待が込められている。森で最初に演奏した楽器が、最も古くからあるドラムだったのは、レコードを作るのにふさわしいと思った」


「"人生において、誰かが自分の物語を語るのを聞いて、それを自分自身の物語であると認識することは稀なことだ。その物語が、複雑で危険で、心理的にダメージを与えるような人間関係に関連している場合は、さらに稀である。このような共感を呼び起こすのは、おそらく偉大な作詞家・作曲家の才能であり技術なのだろう。ボビー・ガレスピーはそのような作家の一人なんだ」


ニューアルバムはゴシック的な概念に縁取られたトリオのクラウト・ロックへのオマージュが捧げられている。ニューアルバム『Los Angeles』は11月3日、Play It Again Samよりリリースされる。

 

「Ghosted at Home」

 


Girl Scoutがニュー・シングル「Bruises」をリリースした。この曲は、近々リリースされるニューEPの収録曲で、自分の周りにいる人々が「本当は大人ではなく、年老いた体にはまった子供たち」であることに気づくことを歌ったもので、ライブ・パフォーマンス・ビデオと一緒に公開された。


ギタリストのヴィクトル・スパソフはこう説明する。「 "Bruises "は、ある年齢に達した時に、周りの大人や人々が本当の大人ではなく、年老いた身体から抜け出せない子供に過ぎないことに気づくことを歌った。ある意味、この曲全体は、怒りや苛立ちの代わりに愛と忍耐を選ぼうとする自分への戒めの曲でもあるんだ」


『GrannyMusic EP』は9月29日リリース予定。


イースト・ロンドンのロックバンド、Bad Nervesがニューシングル「USA」をリリースした。この曲は、リアム・リンチの「United States of Whatever」とシャム69の「Borstal Breakout」からインスピレーションを得たという。ガレージロックを思わせるフックの効いたナンバー。12月に行われるThe DarknessのソールドアウトUKツアーへの参加に先駆けてリリースされる。


フロントマンのボビー・バードは、次のように説明している。「『ユナイテッド・ステーツ・オブ・アメリカ』と何度も叫ぶのは、妙に満足感があるよね。それが喉の奥に張り付いてくるのを感じるんだ。西部の比類なき大国。ヨセミテとブラック・ロックの緑の山々!! アメリカン・ドリームとスーパー・ボウル!! しかし、おそらくそれは単なる音韻の違いに過ぎないんだろう。結局のところ、パプア・ニューギニアには同じような響きが見つからなかったんだ」


「USA」


ボンベイ・バイシクル・クラブが新曲「Turn The World On」を発表した。10月20日にリリースされる6枚目のアルバム『My Big Day』からの最新シングルで、Blurのデイモン・アルバーン、ジェイ・ソム、ニルファー・ヤンヤがゲスト参加している。下記よりチェックしてみて下さい。


この曲とビデオについて、バンドは以下のように説明している。「”Turn The World On」は、ジャックがアルバムのために書いた最後の曲であり、最も個人的な曲でもある。ここ2、3年の間に作曲とレコーディングをしていた時、僕らの何人かは初めて親になったんだ。『Turn The World On』は、親になることと、若者の希望に満ちた気持ちを歌ったものなんだ。この曲の精神を表現するために、ジャックの子供時代の寝室を再現してみたんだ」


「Turn The World On」

 

©Alexa Viscius


Ian Sweetは、リリース予定のアルバム『SUCKER』からの新曲「Emergency Contact」を発表した。リード・シングル「Your Spit」に続くこの曲には、ブリタニー・リーバーが監督を務め、サタデー・ナイト・ライブのマーティン・ハーリィが出演したビデオが付いている。視聴は以下から。


「Emergency Contact」は、核心をついた皮肉な曲だ。ジリアン・メドフォードは声明でこう語っている。

 

「その結果に対処する方法として、そもそも失ったものは本当に欲しくなかったのだと自分自身を納得させようとしている。この曲のために作ったビデオは、イアン・スウィートのビデオの中でも特に気に入っている。私は、深い悲しみと隣り合わせにあるユーモアを表現したかった。ビデオでは、(監督役の)マーティンが私を深い暗闇から素早く連れ出し、私のボタンを押し続けて、興奮させようとするんだ」


「ジュリアンの長年のファンだったので、コラボレーションの依頼を受けたときは本当に感激した。『Emergency Contact』は新譜の中で一番好きな曲かもしれない。胸が締め付けられるような曲だ。だから、バラードのシリアスな性格を生かしたコンセプトに傾倒するのが最も真実だと感じた。また、『Your Spit』とテーマ的につながるものを作りたかったので、映画のセット(映画館で上映されている映画)を中心にコンセプトを作り、ジュリアンの威圧的でマニアックな監督役にSNLのマーティン・ハーリィを起用した」


Ian Sweetの新作アルバム『SUCKER』は11月3日にPolyvinylからリリースされる予定。

 

 


 

来週、エレクトロニック・シューゲイザー・エクスペリメンタリスト、yeuleのニューアルバム『softscars』がNinja Tuneよりリリースされる。今回、アーティストはタイトル曲を公開した。おそらくアルバムの最後のプレビューとなるはずだ。シンガポールのニューライザーによるGacha Pop(ガチャ・ガチャから命名されたポップ音楽のことを指す。KAWAIIの概念的なものをキャッチーなポップスとして示している)は、世界のミュージック・シーンを牽引するのか。


『softscars』のコンセプトは、各曲がyeuleの過去の "傷跡 "にまつわる日記のような形を取っている。グリッチーな「softscars」は、コンセプトのテーゼと銘打たれており、ユールがクリエイティブなペルソナの中に本当の自分をより多く取り込むことに関係している。「アーティストとしての人格から自分を無理やり切り離し、自分をトーンダウンさせようとしていた」とyeuleは言う。

 

「softcars」