レーベル提供のリリース情報を基にして7月の邦楽の作品を以下にピックアップし、ご紹介致します。先月は、''NHKワークス''の一貫として発売された蓮沼執太の芸術と音楽の融合作品「Ⅰ (Neo-Japonism Immersive Theater Original Sound Track)」を筆頭に注目すべき音源が複数リリースされました。夏らしいテーマを選んだカジヒデキの四曲入りのEP「Start A Summer」も発売。他にも豪華ゲストが参加したU-Zhaanの新作アルバムも発売。下記よりお好みの音楽をお探し下さい。
蓮沼執太 「Ⅰ (Neo-Japonism Immersive Theater Original Sound Track)」
DETERMINATIONS、BUSH OF GHOSTSでの活動を経て、現在は、YOSSY LITTLE NOISE WEAVERとして活動するicchie。
ニューシングル「Ask Me Now」は、ジャズピアニスト、Thelonious Monk(セロニアス・モンク)作曲のカヴァー。この曲は、のちにジャズシンガー、Jon Hendricks(ジョン・ヘンドリックス)が詩をつけた。YOSSYのコーラスを除くトラック全編をicchieが一人で制作した。ジャマイカ音楽、ダブ、テクノなどからの影響が強かった前2作ともYOSSY LITTLE NOISE WEAVERとも異なるエクスペリメンタルな風合いを持ちながらもどこか温かいユニークな作品となっている。
カジヒデキ「START A SUMMER」2025.07.23 リリース 来る2026年はカジヒデキのソロデビュー30周年の記念イヤー。それに向けてのキック・オフ作品として、カジをデビュー時から支えてきたニールとイライザの二人(堀江博久&松田 "chabe "岳二)と『夏』『ヴァカンス』をテーマに作り上げたご機嫌なサマーが完成した。
カジヒデキのソロデビュー30周年の記念イヤーに向けてのキック・オフ作品として、カジをデビュー時から支えてきたNEIL AND IRAIZAの二人(堀江博久&松田“CHABE”岳二)と『夏』『ヴァカンス』をテーマに作り上げたご機嫌なサマーEPが完成。ゲスト・ギタリストとしておとぎ話の牛尾健太、コーラスには前作にも参加したミサトとアマイワナが加わり、彩りを添えた。
タイトル曲「雨と」、同曲を軽やかなアレンジで再構築したカップリング「雨と(versão de bolso)」の全2曲が収録。会話するように展開するパルチード・アウトのリズムと、詩的な歌詞が織りなす作品が特徴の本作では、古川麦のギターが軽快にリードし、サンバージャズの風合いが漂う中、鈴木真海子の新たな一面を見いだせる。
「雨と」
U-Zhaan 『Tabla Dhi, Tabla Dha』-New Album
前作『タブラロックマウンテン』から約11年ぶりに、ニューアルバム『Tabla Dhi, Tabla Dha』を2025年7月23日にリリース。
Yannis & The Yaw followed their critically acclaimed EP ‘Lagos Paris London’ (featuring Tony Allen) with a series of high-energy live performances, including sold-out shows in Amsterdam & Paris, during the Autumn of 2024. These electric concerts are now the basis for a live album ‘Onstage’, released digitally today via Transgressive Records, and on limited-edition double gatefold black vinyl on November 14th.
The 6-track offering showcases the expansive, old school Afrobeat-inspired jams from Yannis & The Yaw’s debut EP; capturing the spirit of the musicianship and personality that made the late, legendary Tony Allen such an inimitable figure.
‘Onstage’ includes an electrifying and extended rendition of EP highlight ‘Night Green, Heavy Love’ as well as a previously unreleased composition ‘3’ and a dazzling cover of the Tony Allen masterpiece 'Afrodisco Beat' from his groundbreaking 1979 record ‘Progress, Jealousy’.
The Y&TY touring band was led by Yannis Philippakis, Foals frontman and creative force behind the EP. He was joined by key EP collaborators Vincent Taurelle (keys) and Vincent Taeger (drums) along with Dave Okumu (guitar, The Invisible) Seye Adelekan (bass, Gorillaz) and the project’s visual collaborator Kit Monteith (percussion, synths).
UK/ダーラムのロックバンド、Fortitude Valleyは、BBC Radio 6で楽曲のオンエア経験を持つグループ。The Beths、The Go-Go's、 Pavementなどのサウンドに触発を受けてきた。バンドは、ロス・カンペシーノス!、アロ・ダーリン、グルーフ・リース、ザ・ウェーブ・ピクチャーズとステージを共にしてきた。ローラは以前、サイケデリック・ポップ・バンド、タイガーキャッツで活動しており、バンドにはマーサやファスト・ブラッドのメンバーも参加している。パンクやパワーポップ、インディーポップのエッセンスをくまなく吸収したインディーズサウンドが特徴である。
『Part of The Problem, Baby』はオープニング「Everything Everywhere」を中心に、個人的な感覚や追憶を複数のグループで共有し、それらを的確なロックサウンドに絞っている。ボーカルのメロディーは親しみやすく、時々は湿っぽさがあるが、バンド全体のサウンドには融和があり、それらが良質なハーモニーを奏でている。このアルバムの冒頭曲には、ソングライターのローラが若い時代に夢中になっていたレコードの影響がそこかしこに散りばめられている。それらがたとえ思い出に過ぎないとしても、キラキラとしたまばゆいほどの輝きを放ってやまない。もちろん、音楽そのものが人生の流れと結びつき、センチメンタルな感覚を呼び起こす。それらのエモーションは、パワー・ポップの響きとガレージ・ロック風の響きと呼応している。コーラスやサビの箇所で歌われるのは、一般的な感覚であり、それがシンパシーを生み出す働きを持つのは言うまでもない。卓越したものを選ばず、誰もが共感するような個人的な感覚を見つけて歌い上げる。アルバムの冒頭は、脆いようなセンチメンタルな響きが込められている。しかし、対象的にアップテンポなパンキッシュなロックナンバー「Totally」では、明朗でソリッドなギターのリフを中心に、ハードロックやパワーポップを基幹にした甘酸っぱいロックソングを聴くことが出来る。特にボーカルの旋律進行は、青春の切ないような響きを導き出す。
「Video(Right Here With You)」では、The Bethsと共通するような夢想的なインディーポップとパンクサウンドの融合を楽しめる。この曲では、特にギターが全体の中で押し出され、硬質な響きを持ち、全体のアンサンブルの中で良いヴァイブスを生み出す。ガレージロック風のジャキジャキしたサウンドはギターファンであれば必聴である。 そして、それらがこのバンドの持ち味である、ほのかに甘酸っぱいメロディーと融和している。もちろん、パンキッシュでエッジの効いたサウンドだが、その中には温和さが併存している。トゲトゲしいパンクも一つの魅力ではあるのだが、メロディアスなパンクも捨てがたいものがある。そして、フォーティテュード・ヴァレーの場合は、ナンバーガールの最初期のように鮮烈で青春の雰囲気に包まれたギターロックサウンドを提供している。これらは、音楽全体に良いヴァイヴを生み出している。曲の後半では、ドラムの演奏に特に注目してほしい。メロディやビート的確に補佐し、主役的な立ち位置になる。実際的に、ネイサンのドラムは、このパンキッシュな曲にソリッドなダイナミズムを及ぼしている。
「Sunshine State」では、バンドのアンセミックなコーラスが力強い印象を放つ。 同じようにThe Bethsを彷彿とさせるようなメロディアスなパンクサウンド。そして一貫してスリーコードを中心に組み立てられ、それがボーカルを浮き立たせるような役目を担っている。ヴァースからブリッジにかけての盛り上がりが、サビのコーラスの部分へと期待感を盛り上げ、実際的にそれを裏切らない形で、聞かせどころが登場する。コーラスの箇所では、ほどよく力の抜けたフレーズ、そして少しノスタルジックな雰囲気を持つ音楽性が際立っている。もちろん、ボーカルとギターソロが対旋律を描き、バンドとして連携の取れたサウンドを作り上げている。曲の後半では、シンガロング必須のチャントが登場する。ベタではあるが、その中に熱狂性がこもる。ポップスに強烈に傾倒したサウンドもある。「Don't You Wanna Be Near Me?」は、どこまでも純粋な雰囲気を持つパワーポップソング。ものすごく簡素で、単純な楽曲構成であるが、その中に、なぜかほろりとさせるものがある。これもまた、実際的な経験が含まれているからこその感情的な共鳴効果なのである。ローラの作曲は、夢想的な感覚もありつつも、現実性に基づいている。
アルバムの後半の3曲では、音楽性に多彩な側面を持たせていて、コーダのように聞くことができる。しかし、同時に、大きく音楽性が変更されるというわけでもない。よりセンチメンタルでナイーブな感覚を顕にした「Take Me Away,I'm Dreaming」では、現実逃避的なニュアンスもあるが、その足はしっかりと地についている。 そして、ベースがソロ的なパートで間奏を担っている。このバンドは、チームとしての連携が最高のストロングポイントであり、どのメンバーの個性も軽視しないという点が、良質なロックソングを作り出すためのよすがになっていることが分かる。ソロではできない音楽を、彼らフォーティテュード・ヴァレーは巧みに実践してみせるのだ。
音楽性という側面では、むしろアルバムの終盤になればなるほど、深遠な感覚が色濃くなってくる。それは音楽という靄の向こう側に実際的な意味を見出す行為のようであり、また、バンドの音楽の本質的な部分に近づいていくということである。続く「Into The Wild」では、方法論こそ同じでありながら、ブリットポップのような哀愁のあるフレーズが時折登場することがある。
Jets to Brazilの前身、伝説的なエモコアバンド、Jawbreakerのカットソーの先入観は裏切らない。バンドはこの数年、パンクやヘヴィロックを中心に聴いていたというが、アルバムのクローズ「Oceans Apart」には、このエピソードがはっきりとした形で現れ出ている。疾走感があり、爽やか。2000年代以降のメロディックパンクの教本のような曲ですが、懐かしさこそあれ、新しいモダンな感覚によりアップデートされている。相変わらず、フォーティテュード・ヴァレーは軽やかで親しみやすい音楽を提供し、そのクオリティは最後まで続いている。サビ(コーラス)でも期待を裏切らない。良いメロディーの条件とは、万人が口ずさめることである。徹底して簡素さを強調するロックサウンドは今後多くのリスナーを獲得しても全く不思議ではありません。
82/100
「Part of The Problem, Baby」
▪Fortitude Valley 『Part of The Problem, Baby』はSpecialist Subjectより発売。Bandcampでの視聴はこちらからどうぞ。
その後、メンバーはプロデューサー、ソングライター、ミュージシャンとして、それぞれのキャリアを広げ、ソウル/R&B、ジャズ、ヒップホップシーンで活躍。Lauryn Hill、Nas、Anderson .Paak、Solange、Corey Henryなどのビッグネームから、Amber Mark、Poppy Ajudha、Standing on the Cornerなどの新進気鋭のアーティストまで、幅広くコラボレーションを重ねてきた。
NYを拠点に活動するフューチャーソウルバンド/コレクティブ、The Love Experiment(ラブ・エクスペリメント、以下LEX)。チャールス・バーチェル(ドラム)、パーカー・マクアリスター(ベース)、アンドリュー・バーグラス(ギター)、デヴォン・ディクソン Jr.(キーボード)、シル・デュベニオン(サクスフォン/ボーカル)、キム・マヨ(ボーカル)で構成される。
2 0 1 7 年から2 0 1 8 年にか けて、東 京を拠 点に活 動 するエクスペリメンタル・ソウルバンド、WONKとのコラボアルバム『BINARY』をリリースし、東京・大阪・名古屋でツーマンツアーも成功させた。その後、個々のメンバーはプロデューサー、ソングライター、ミュージシャンとしてソウル/ R & B 、ジャズ、ヒップホップの 各シーンで活躍。
L a u r y n H i l l 、N a s 、Anderson .Paak、Solange、Corey Henryなどのビッグネームから、Amber MarkやPoppy Ajudhaといった新進気鋭のアーティストまで、幅広い共演歴を誇る。
コレクティブとしての側面も強いLEXは、新たにニューヨークのアヴァンギャルド・ジャズ~ヒップホップコレクティブ、Standing on the CornerのメンバーでもあるSyl DuBenion(サックス&ヴォーカル)をローテーションに加え、Kim Mayo(ヴォーカル)とのツインヴォーカルスタイルを採用。新たな編成で、LEXの可能性を広げている。ソングライティングやプロダクションにおいて、各メンバーが変幻自在に役割を変えながら、多彩なフィーチャリングアーティストをクルーに迎え、LEXが見上げる宇宙へとスペースシップが飛び立つ。
アルバムの中では、フォーク・ロックやジャングルポップなどの音楽性が強いように思える。しかし、その中でシューゲイズ色が強いのが続く「Here Is Now」である。 このアルバムの重要な録音方法であるギターの多重録音で得た重厚なギターサウンドをベースにして、ドリームポップのような夢想的なジョンストンのボーカルが揺らめく。
アルバムの前半部から中盤部は、前作アルバムの復習ともいうべきサウンドが顕著だ。しかし、完全な自己模倣には陥っていない。新しい音楽性がアルバムの終盤になって登場する。アーティストの持ち前のローファイ性をサイケのテイストで縁取った「A Drawing Of The Sun」は、American Footballの『LP1』のポスト世代に位置づけられる。エモ好きは要チェックだ。
また、「An Outstreched Hand/ Rain From Here to Kerry」はオーストラリアのRoyel Otisのようなポストパンク勢からのフィードバックを感じさせる。ただ、ファー・カスピアンの場合は、美麗なギターのアルペジオを徹底して強調させたキラキラとした星の瞬きのようなサウンドが特色である。音楽の系統としてはエモ。しかし、このアルバムでは、柔らかさと強さが共存している。これはたぶん、前作にはなかった要素であり、シンガーソングライターとしての進歩を意味する。
ザ・ベスの2022年のアルバム『Expert In A Dying Field』から『Straight Line Was A Lie』までの道のりは、一筋縄ではいかなかった。 ストークスは初めて、携帯電話で録音した断片以上の新しい曲を書くのに苦労していた。 彼女は最近、SSRIを服用し始めたが、そのせいで、精神的、肉体的な健康状態から、家族間のいざこざまで、自分の人生で壊れているものすべてを「解決」できるような気がしていた。 だが、同時に、書くことが以前のように簡単にはできなくなっていた。
『Straight Line Was A Lie』では、ストークスとピアースは典型的なベスの執筆プロセスを打ち破り、創造的なインプットの波に自分たちを開放した。 すでに有名な作詞家であるストークスは、個人的なことをとらえ、普遍的なことを梯子するキャッチーでインスタント・クラシックなフレーズで、長い間ファンや批評家に感動を与えてきた。
しかし、ストークスは作詞との関係を意図的に解体し、再構築した結果、完全に生まれ変わった。 彼女のソングライティングは、洞察力と脆弱性という驚くべき新たな深みを獲得し、『Straight Line Was A Lie』はこれまでで最も鋭い観察眼と真実味に溢れ、詩的なベス・プロジェクトとなった。
今年初め、ベスは今秋、北米、英国、ヨーロッパを回るワールド・ツアーを発表した。 ロサンゼルスのThe Wiltern、サンフランシスコのThe Fillmore、シカゴのThe Salt Shed、ニューヨークのBrooklyn Paramount、フィラデルフィアのUnion Transfer、ワシントンDCの9:30 Clubなど、これまでで最大規模の会場でヘッドライナーを務める。