カナダの5人組、フォックスウォーレン(アンディ・シャウフ、エイブリー&ダリル・キシック、ダラス・ブライソン、コリン・ニアリス)は、近日発売予定のアルバム『2』からの最新シングルとしてローファイなインディーロックソング「Deadhead」をリリースした。

 

この曲の風変わりなミュージックビデオは、ジョー・カッパが監督した。「かつらと中世の衣装をたくさん買って、人形に服を着せているうちにビデオの前提を思いついたんだ。主人公に金髪のかつらと口ひげをつけたとき、本当に心に響いたんだ。フルートを吹いている赤ちゃんの足は、10ヶ月の息子のものなんだ」


「デッドヘッズのみんなにはダンスをやめないでと言いたい」とバンドは付け加えた。フォックスウォーレンの7年ぶりとなるフルアルバムは、2018年のセルフタイトルアルバムに続く作品。

 

 

「Deadhead」

 

Big Star

 

メンフィスが生んだロックバンド、Big Starは、秀逸なソングライター、タレント、バンドのスター性をすべて持ちあわせても、ヒットソングやヒットアルバムを作り出すことの難しさを歴史的に証明している。

 

メンフィスは古くはサザン・ソウルのメッカで、ミシシッピ川周辺のソウルミュージック、そしてほど近いニューオリンズのジャズとの連携において発展してきた。その象徴的なレコード会社がStaxレコードであった。

 

しかし、オーティス・レディングのようなスターを輩出した経験を持つレコード会社ですら、ビック・スターの管理には手を焼いていた。というか、宣伝に力を入れなかったのではないかと推測される。結局のところ、Big Starは米国の最初のインディーロックスターである”アレックス・チルトンの在籍したバンド”という条件付きの共通認識で音楽ファンに知られるようになる。ビックスターを信奉するアーティストは殊の外多い。ティーネイジ・ファンクラブ、REM、ウィルコなどカレッジロック/インディーロックの著名なバンドはみな、Big Starを聴いて育ったと言える。ある意味ではオルタナティヴという源流はこのバンドにあると断言出来る。

 

そもそも、ビッグ・スターを生んだ時代のロックは、結局、ビートルズのフォロワー・サウンド、そしてフォーク・ミュージックやソウルという自家薬籠中の音楽をどのように結びつけるかという試作段階にあった。その代表格がバッド・フィンガーである。彼らは確かに、ヒット・ソングを作り出すことに成功した。しかし、ビートルズに匹敵する実力派のバンドであったにもかかわらず、アイドルのようなプロモーションが行われたことに不満を示し、さらにメンバー内のマージンの分配の問題を抱え、最終的にはバンドとして空中分解をする。代表曲「Without You」はレコード業界の光と影であるとよく言われ、売ることの代償、バンドというものの難しさを表している。そして、彼らと似たような運命を辿ったのがビッグスターだった。



・Big Star   第一期 デビューアルバム『#1 Record』の誕生まで 

 


アレックス・チルトンはビッグ・スターに参加する以前に公式なヒット・ソングを持っていた。彼は、元々、ソウル・ミュージック(ブルーアイド・ソウル)を主要なバックグラウンドとしていた。メンフィスのセントラル高校に在籍していた16歳の時点で、ソウルグループThe Box Topsのメンバーに参加していた。1960年代の後半には、「Cry Like A Body」「The Letter」「Soul Deep」、「Sweet Cream Ladies, Forward March」というヒット・ソングを持っていた。

 

1971年に、このグループは解散し、しばらくチルトンは音楽的な漂流を重ねた。チルトンは21歳の頃、ナショナル・ストリートにあるジョン・フライのアーデン・スタジオに出入りするようになった。そのスタジオで偶然、物静かで少し愛想の悪い青年と出会う。それがクリス・ベルだった。彼は、メンフィス大学を出たあと、テネシー大学に短期間通っていた。そしてアイスウォーターというバンドで活動していた。

 

二人は意気投合して、ビッグ・スターを結成する。そしてクリスの高校時代の友人であったアンディ・フンメル、そしてジョディ・スティーヴンスが参加し、ベース、ドラムが加わり、1971年にラインナップが完全に整った。当初、彼らはLed Zeppelin,Bad Finger,James Gangのカバーソングとオリジナル曲を演奏し始めた。「Big Star」という名称は、当時、メンフィスにあった食料品店に因んで名付けられた。

 

当初、彼らはビートルズのようなロックソングを書きたいと切望していた。チルトンとベルは集中的に作曲を行い、わずか数ヶ月で十数曲を書き上げた。そしてフンメルとスティーヴンスとのライブセッションでそれらを形にしていく。そのための環境は整っていた。当時、ビックスターのメンバーは、アーデント・スタジオに気楽にアクセスし、セッションを行うことが可能だった。

 

そしてすでに、彼らのデビュー・アルバム『#1 Record』の大まかな骨子は、この年に出来上がっていた。アーデントはスタックスの子会社で、傘下のインディーズレーベルから1972年にデビューを果たす。 『#1 Record』は、STAXの説明によると、二番目のアーデントのリリースだった。

 

 

 

 

 

しかし、このアルバムが、なぜ後にロックファンの間で伝説化したのか.......。 それは、当時、このアルバムが一般的には販売されていなかったという理由である。そのため、『#1 Record」は一部の評論筋やロック雑誌の間だけで知られるに過ぎなかった。特に、このバンドのデビュー・アルバムを高く評価していたのが、ローリング・ストーン誌だ。後にローリングストーンは『史上最高の500枚のアルバム』にランクインさせた。チルトン/ベルのソングライティングは、マッカートニー/レノンとよく比較された。しかし、スタックスは、アルバムをほとんど宣伝せず、レコードショップでの販売はもちろん、ラジオでもあまりオンエアされなかった。アルバムには「The Ballad Of El Goodo」、「Thirteen」、「The India Song」が収録されていたにもかかわらず、ヒットには恵まれなかった。リリース時は数千枚の売上にとどまった。

 

クリス・ベルは、デビューレコードのために、レコーディングとミキシングに関して相当な試行錯誤を重ねたため、これらの商業的な失敗は、かなり堪えるものがあった。1972年末までに、ベルはこのバンドを去っていた。それに加え、チルトンに焦点を当てたレビューが彼を悩ませた。スティーヴンスは、「クリスがデビュー・アルバムのレビューを読み始めたとき、物事が少しずつ悪化しはじめた」とドキュメンタリー映像『Nothing Can Hurt Me』で語る。「それは彼の創造的なビジョンの非常に大きなウェイトを占めていたので、プレスのレビューがアレックスに焦点を当てて帰ってきたとき、彼はミュージシャンとして今後その影響下で生きなければならないと考えたのだった」

 


・第二期 セカンドアルバム『Radio City』の制作の難航 バンドの空中分解

 



 

主要メンバーのベルが去った後、ビッグ・スターの活動は行き詰まっていた。残された三人のメンバーは、ラフィエットのミュージック・ホールの閉会式の後のコンサートで演奏するために久しぶりに再会した。このショーは成功し、アーデントのジョン・キングがチルトン、フンメル、スティーヴンスを説得し、セカンドの制作をするように勧めた。


ジョン・フライは、「バンドが次のアルバムの制作を決めたことは嬉しかった。けれど、それはナイトクラブ、バーや酒のために生み出されたとも言える。つまり、(セカンド・アルバム)ラジオ・シティに映る地理がここに見えてくる」と回想する。

 

 

プロデュース的なロック/フォークサウンドであったファーストと比べると、その違いは一目瞭然である。ブルースやソウル、サザンロックといったチルトンの音楽的な背景を駆使し、ライブサウンドに近いロックがセカンドアルバムには見いだせる。セカンドの制作に取り掛かったビッグ・スターは、チルトンを中心に作曲を行い、フンメルやスティーヴンスも同じように、ソングライティングに貢献を果たした。その中には、バンドを去ったクリス・ベルが残した遺産も含まれていた。それが、「O My Soul」「Back of A Car」といったトラックだ。

 

 

スタジオのセッションでは、音楽的なプロデュースの役割を担っていたベルの不在のため、以前よりも緩くなり、散漫に陥ることもあったが、バンドはそれらの欠点を受け入れようとした。しかし、デビュー時のような熱量は失われつつあった。ライブセッションに価値を見いだせなかったフンメルは、ビッグ・スターを脱退し、ロッキードに勤務し始める。メンバーの多くは、この年代にありがちな進路の問題を抱え、ビッグスターの活動は暗礁に乗り上がりつつあった。

 

セカンド・アルバムは、バンドとしての見通しがたたない中、1974年2月にリリースされる。アルバムの中では、「September Gurls」がヒットの可能性があると目されていた。しかし、デビュー・アルバムと同じように、STAXの流通の問題が再燃した。『Radio City』は数千枚の売上にとどまり、商業的な成功には至らなかった。しかし、このアルバムの収録曲にはカバーアンセムが含まれている。The Replacements,The Banglesがカバーしていることは付記しておくべきだろう。

 

ビッグ・スターは、公式には二作のアルバムをリリースしたに過ぎなかった。次のアルバム『Third』を加えたとしても三作。しかし、3つ目のアルバムがリリースされたのは2000年代以降、正確に言えば2016年である。こうした中、最初のオリジナルメンバーは、チルトンとスティーヴンスだけになる。1974年の秋、彼らはプロデューサー、ジム・ディッキンソンとリボルビング・キャスト・スタジオに戻り、新しいレコードの制作に取り組もうとした。

 

ところが、プロデューサーのディッキンソンは、明らかにこのバンドがすでに空中分解しようとしているのを肌で感じ取っていた。「その頃すべてが悪化していたんだ。そして、それはレコードにはっきりと表れ出ていた。 しかし、まだ地理性のようなものが含まれていた。ミッドタウン……、つまり、メンフィスらしさがあった。しかし、バンドとしてはすべてが悪化しつつあった。それはレコードにはっきりと捉えられている。芸術的なビジョンの分解という....... 」

 

 

Big Starの三枚目のアルバムのレコード制作の噂は長いあいだ眉唾ものとされていたが、マッシュアップタイトル「Third/ Sister Lovers」の出現により、現実視されるに至った。しかし、全般的には、ジョン・フライがレコーディングを中止したほど、アルバムの制作は完成には程遠かった。


結局のところ、彼らのファンの間では、三枚目のアルバムは幻となり、「#1 Record」「Radio City」がビッグ・スターの公式のリリースという見解が根強い。STAXもバンドのおすすめ作品として、ファーストとセカンドを重要視しているようだ。

 

 

「I'm In Love With A Girl」(Radio Cityに収録)




参考:  Culturesonar:  Big Star: An Appreciation
©︎Steve Gullick


ザック・ボウカー(ヴォーカル/ギター)、ユアン・バートン(ベース)、ドラマーのジョエル・スミス、そしてエディ(マスコット)からなるクルーを拠点に活動するUNIVERSITY。本日、BBCラジオ1のロック・ショーでのプレミアに続いて、ニューシングルとビデオ 「GTA Online」を公開した。  


「GTA Online」は、2025年6月20日にTransgressiveからリリースされるデビューアルバム『McCartney, It'll Be OK』からの第3弾である。ストリーミングはこちら

 

アルバムのサードシングル「GTA Online」 は、マスロック風のミニマルなギターロックで始まり、終盤にかけて、バンドの持ち味である狂騒的なノイズパンクが怒涛のごとく荒れ狂う。

 

カルト的な初期ビッフィ・クライロのレコードのような4分近い巨大なロック、"GTA Online "は、何層にも増幅されたファズの上に山のようなギター・リフをフィーチャーしている。部分的にはよりソフトで調和のとれたエッジを保っている。 

 

この新曲について、バンドは次のように語っている。 「ボッシュの退屈な夢を見る。 知りたくもない」


新曲の付属のミュージックビデオは、ニーナ・デローが監督した。 「この素晴らしいバンドの生き生きとしたエネルギーをとらえるため、アナログ・テクノロジーを限界まで活用することに重点を置いた。 構成された3つのショットを中心に作品を作り上げたが、その中心にあるのは、ありのままのバンドのリアルな姿であり、彼らの活動に対する情熱であり、そして、アーティストとミュージシャンがコラボレーションする際に生まれる遊び心、喜び、リスクなんだ」


プロデューサーのKwes Darko(Sampa The Great、Denzel Curry)とロンドンにあるDamon AlbarnのStudio 13でレコーディングされたデビュー・アルバム『McCartney, It'll Be OK』は、2023年のデビューEP『Title Track』のエキサイティングな始まりを発展させたもので、フックはより明るくメロディックに、ブレイクダウンはヘヴィに、歌詞はさらに磨きがかけられた。

 

『McCartney, It'll Be OK』は完全なライヴ・レコーディング・アルバム。これまでの彼らの作品を特徴づけてきた、すべてが今にも崩れ去りそうなスリリングで狂おしいまでのエネルギーがほとばしる。


ニューアルバムからの3枚目のシングル "GTA Online "は、広大で煽情的なパンク・ロック・ソング。ソフトで明瞭な音楽の瞬間を切り取っている。 この曲は、不条理なユーモアと切り裂くようなパンクが印象的な "Curwen "や、"世界で最悪のタトゥーは何だろう?"というゲームの答えにちなんで名付けられた無粋な "Massive Twenty One Pilots Tattoo "に続くリリースとなる。


「GTA Online」


 

 

各誌の反応:


"ザック・ボウカーが断続的な叫び声を大渦の上に響かせながら、彼らはスリントのようなポストロックからピクシーズのようなリフ、ハードコアの絶叫や数学ロックのようなスタッカートまで、満足のいく廃墟のように駆け抜けていく" - Uncut

''今年聴いたことのないようなエネルギーの爆発" - NME

''ノイズ・パンク界で最も有望な新人バンドが放つ暴れ狂うような耳触り" - Dork

''檻の中から飛び出そうとするバンド" - DIY Mag

''輝かしい寂寥感" - So Young



また、UNIVERSITY6月にリバプール、ロンドン、ブリストルのラフ・トレードで開催されるUKインストア・イベントへの出演も発表しました。 全日程は以下の通りです。
 

Live Date:

Sat 14/06/2025 Outbreak Festival, Manchester United Kingdom
Mon 23/06/2025 INSTORE - Rough Trade Liverpool
Wed 25/06/2025 INSTORE - Rough Trade East, London
Thu 26/06/2025 INSTORE - Rough Trade Bristol
Fri 05/09/2025 Paradiso (Upstairs), Amsterdam Netherlands
Sat 06/09/2025 Misty Fields Festival, Asten-Heusden (NL) Netherlands
Mon 08/09/2025 La Mécanique Ondulatoire, Paris, France
Tue 09/09/2025 Aéronef, Lille, France
Thu 11/09/2025 Schokoladen, Berlin, Germany
Sat 13/09/2025 Botanique, Brussels, Belgium
Mon 15/09/2025 Louisiana, Bristol United Kingdom
Tue 16/09/2025 Where Else?, Margate United Kingdom
Wed 17/09/2025 George Tavern, London United Kingdom
Fri 19/09/2025 The Castle, Manchester United Kingdom
Sun 21/09/2025 Hug & Pint, Glasgow United Kingdom
Mon 22/09/2025 Brudenell Social Club (Community Room), Leeds United Kingdom
Tue 23/09/2025 Hare & Hounds 2, Birmingham United Kingdom
Fri 07/11/2025 Mutations Festival at Patterns, Brighton United Kingdom

東京・原宿を拠点とするオークションハウス''NEW AUCTION''は、2025年5月28日(水)より、ポスター、本、写真、デザインなどを対象とした「NEW MARKET」を開催する。オークションは6月4日まで開催される。


このオークションでは、パウル・クレー、アンリ・マティスなど巨匠画家から、横尾忠則、荒木経惟(アラーキー)など、現代の芸術家、フォトグラファーのアイテム70点がオークションに並ぶ。購入は書面のオークション形式で行われる。

 

ーー本セールは、入札額が他者に公開されないシークレットオークション形式(非公開入札)で行われ、もっとも高額でご入札いただいた方が落札者となります。また、ほぼすべてのアイテムがノンリザーブ(最低落札価格なし)となっており、ご希望の金額でご入札いただけます。

 

本セールは事前のご予約不要で、どなたでもご参加いただけます。皆さまのご参加を心よりお待ち申し上げておりますーー

 


●主な出品作品

 

Joseph Beuys(ヨーゼフ・ボイス) / Georges BRAQUE(ジョルジュ・ブラック) / Paul Klee(パウル・クレー) / Ben Shahn(ベン・シャーン) / Robert MOTHERWELL(ロバート・マザウェル) /Terry WINTERS(テリー・ウィンタース) / Henri Matisse(アンリ・マティス) / Terry Winters(テリー・ウィンタース) / Christo(クリスト) / Josef ALBERS(ジョゼフ・アルバース) / Joan MIRO(ジョアン・ミロ) / 横尾 忠則 / 粟津 潔/ 田中 一光 / 北代 省三 / 菅井 汲 / 荒木 経惟 / 槙 文彦 / 杉浦 康平 /若林 奮 / 脇田 愛ニ郎 / 杉浦 康平 etc...

NEW MARKET

入札受付期間:2025年5月28日(水)~ 6月4日(水)

時間 : 12:00 - 19:00

会場:NEW AUCTION

住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-9-15 B1

対象作品:ポスター、本、写真、デザインなどをはじめとした約70点 

入札方法:会場にて書面入札受付

落札結果通知:入札期間終了後、落札者様のみに個別ご連絡

落札手数料:19.8 %(税込)

●ABOUT NEW AUCTION

 

INTRODUCTION

 

2021年6月、東京の文化発信地である原宿を拠点に新たなアートオークションハウス 「NEW AUCTION」 がスタートしました。 私たちは従来のアートオークションという枠組みに縛られることなく、 新しい体験、 新しい価値観を提供することを目的とし、 オークションの可能性を、 原宿から世界に向けて拡張していきます。

 

 

APPROACH

 

NEW AUCTIONは、日本で唯一、アーティスト還元金システムを導入しているオークションハウスです。アートマーケットの持続可能な循環を促進するため、落札作品の著作権者に対して独自にアーティスト還元金を支払い、NEW AUCTIONを通じた取引がアーティスト支援に直結する仕組みを築いています。

さらに、NEW AUCTIONは国内外のコレクター、ギャラリー、ディーラーとの独自ネットワークを構築するとともに、ファッション、カルチャー、建築、食、インフルエンサーなど、業界の枠を超えた多様なチームとの連携を積極的に取り入れ、作品の最大限のプロモーションに取り組んでいます。


インディーポップアーティスト/ソングライターであるMistine(ミスティーン)がニューアルバム『i guess this is where we're at』をリリースした。 ダイナミックなインディーポップ/ロックアルバムを携えて、ポップシーンに新鮮な息吹を吹き込む。


アルバムの冒頭を飾る超絶ロックバンガー「Changing With The Weather」、「Litium Town」を中心に、インディーロック、アルトフォークなど多彩な音楽が繰り広げられる。

 

このアルバムは、持続可能性と環境保護主義というトピックに取り組んだ、11曲からなる魅惑的な曲のコレクション。 


グランジ調のギター、実験的なヴォーカル・ライン、80年代にインスパイアされたシンセをフィーチャー。ミスティーヌにとってこれまでで最もクリエイティヴな作品だ。 


ミスティーンは、ハイデンやコナン・グレイとのツアーで成功を収め、最近ではケリー・クラークソン・ショーでマッケナ・グレイスと共演している。 ミスティーンの音楽は、Barefoot in the ParkやNew Pop Picks、Apple MusicのNew in Alternativeなど、Spotifyの人気プレイリストに追加されている。 


ログハウス生まれでジャージー育ちのミスティーヌは、クラシック・ロックのリズムと暖かさに、彼女独自のアンジュルム・ポップの真摯さを融合させた新進気鋭のポップ/ロック・アーティスト。 エアロスミス、テイラー・スウィフト、アヴリル・ラヴィーン、1975、マギー・ロジャースといったクラシックからインスピレーションを得ている。


ミスティーヌとして活動する前のクリスティーン・マイゼンヘルターは、『ピグレットのビッグ・ムービー』をよく観ていた小学3年生の子供に過ぎなかった。 少なくとも、カーリー・サイモンがギターを弾きながら歌う姿をスクリーンに映し出すまでは……。 


だが、突然、マイゼンヘルターは天命を受けたかのように、自分が何をしたいのかがわかった。 この初期のインスピレーションから数年後、彼女はUSCのソーントン・スクール・オブ・ミュージックに通い、コナン・グレイと2年以上ツアーを行い、アーティスト、ミュージシャンとしての声を磨いた。 アーティストとしての驚くべき飛翔。

 

その後、ミスティーンのミュージシャンとしてのキャリアは開花し、アーティスト、ソングライター、セッション/ツアー・ミュージシャンとしての強力な経歴を築きあげることになる。 コナン・グレイ、aespa、BiigPiig、Meg Smith、WiztheMC、Zeph、McKenna Grace、Haiden Henderson、INJI、Sierra Spiritらとツアーを行った。  


ミスティーヌは音楽だけでなく、持続可能性と環境にも人生を捧げている。 持続可能なビジネス・リーダーシップの科学修士号を取得後、ラスベガスのスフィアでグレイトフル・デッドのレジデンシーのサステナビリティ・コーディネーターを務めた。その後、ビリー・エイリッシュの''ヒット・ミー・ハード・アンド・ソフト・ツアー''にも携わった。


ミスティーヌは音楽と地球環境の2つの情熱を結びつけ、聴衆に人間同士のつながりを語りつつ、人間破壊や自然を暗示する音楽を届けている。


彼女の音楽は、Spotifyの「Barefoot in the Park」や「New Pop Picks」、Apple Musicの「New in Alternative」、OnestoWatch #NowWatchingのような強力なサードパーティのプレイリストなどのエディトリアルで紹介されている。


そのほか、LADYGUNN、Earmilk、Bass Magazine、C-Heads、Atwood Magazine、Luna Collective、TRASH Magなどのメディアにも取り上げられている。


ミスティーンのニューアルバム『i guess this is where we're at』は、インディー・ポップとオルタナティヴが融合した全11曲で、持続可能性と環境保護というトピックにも取り組んでいる。 彼女は次のように説明する。

 

「私はいつも環境について考えています。 私たちの地球を、友人や人間関係に見立てて、それぞれのメンバーがこの気晴らしや気候変動に対してどう感じるか、私たちが残されたものをどう守ろうとしているのかを。まるで愛する人との関係を救おうとしているかのように………」


この魅惑的なアルバムは、グランジ風のギター、実験的なヴォーカル・ライン、80年代にインスパイアされたシンセをフィーチャーしており、ミスティーンにとって、これまでで最もクリエイティブなリリースとなった。 


結局のところ、ミスティーヌは人々に考えさせ、学ばせ、気持ちよくさせ、最終的には、窓を開いて、海岸線をドライブさせるような爽快な音楽を作りたいと考えている。  


彼女の控えめな魅力が、作品をとても心地よいものにしている。"ファンのみんなを親友のように感じてほしい"とミスティーン。そういったフレンドリーかつオープンな感覚はこのアルバム全体に滲み出ている。


「Changing With The Weather」





Log cabin-born but Jersey-bred, Mistine is a rising Pop / Rock artist combining the rhythm and warmth of classic rock with her own brand of angsty pop sincerity. Mistine’s music is a perfect blend of modern and vintage, drawing inspiration from classics like Aerosmith, Taylor Swift, Avril Lavigne to the 1975 and Maggie Rogers.


Before she was Mistine, Christine Meisenhelter was just another third-grade kid watching Piglet’s Big Movie. At least, she was, until Carly Simon showed up on screen playing guitar and singing along. Suddenly, Meisenhelter knew what she wanted to do, and it’s been music ever since. 
 
 
In the years following this early spark, she attended USC’s Thornton School of Music, toured with Conan Gray for over two years, and honed her voice as an artist and musician as Mistine. 

Mistine’s career as a musician blossomed and she developed a strong resume as both an artist, songwriter, and session/touring musician. 
 
 
She’s toured with Conan Gray, aespa, BiigPiig, Meg Smith, WiztheMC, Zeph, McKenna Grace, Haiden Henderson, INJI, and Sierra Spirit to name a few.  


Mistine devotes her life not only to music, but also to sustainability and the environment. After obtaining a Masters in Science for Sustainable Business Leadership, Christine has served as the Sustainability On-Site Coordinator at the Las Vegas Sphere for the Grateful Dead residency and worked on the Billie Eilish Hit Me Hard and Soft Tour.


Mistine ties her two passions together to bring audiences music that speaks to the human connection to one another, but also has underlying innuendos of human destruction and nature.


Her music has been featured in editorial placements including Spotify’s Barefoot in the Park and New Pop Picks, Apple Music’s New in Alternative, and strong third party playlists like OnestoWatch #NowWatching. She’s been featured in press outlets including LADYGUNN, Earmilk, Bass Magazine, C-Heads, Atwood Magazine, Luna Collective, TRASH Mag, amongst others.


Mistine's new album "i guess this is where we're at" is a 11 track collection of indie pop meets alternative songs that tackle the topic of sustainability and environmentalism. 
 
She shares, "I am constantly thinking about our environment. I really tired to incorporate ways to tell the story of what our world is going through in the climate crisis without explicitly saying it in the song - I began exploring thinking about our planet as a friend or relationship and how each member would feel though this distraction and climate change - how we’re trying to preserve what we have left - as if I were trying to salvage a relationship with a loved one." 
 
 
The enthralling album features grunge soaked guitars, experimental vocal lines and 80's inspired synths and is Mistine's most creative release to date.

When it comes down to it, Mistine wants to make music that makes people think, learn, feel good, and ultimately, drive down a coast line with their windows down.  Her unassuming charm is what makes her work just so welcoming; “I want my fans to feel like they’re my best friends.”


Weekly Music Feature: Sophia Kennedy  ドイツの新しいウェイヴを体現するソングライターの登場

Sofia Kennedy ©︎Rosana Graf


ソフィア・ケネディのサード・アルバム『Squeeze Me』はヨーロッパの芸術運動の再燃を意味し、今日の世界情勢に際して、ポピュラーソングの現在と未来を問う。ドイツのポップカルチャーはボウイの三部作で終わったわけではない。現在の注目すべきポピュラー運動はベルリンに見つかる。


ケネディはボルチモア出身、現在はハンブルグ/ベルリンを拠点に活動する。この3世紀の世界は、ローマ帝国、大英帝国、アメリカという流れで覇権は推移してきたが、覇権が分散し多極化しつつある世界情勢の中、北米と欧州の二つの文化を知るハイブリッドなポピュラーソングを提示するシンガーソングライターが出てきたというのは、当然の帰結と言えるかもしれない。


幼い頃、ゲッティンゲンに引っ越したソフィア・ケネディは、家では英語を喋り、そして幼稚園ではドイツ語を学んだ。これらの二つの言語や文化観の中で養われた彼女の感性はアンビバレントになり、ヨーロッパ的な感性とアメリカ的な感性の間で揺れ動きながら、カラフルな性質を持つようになった。大学に通う頃にはハンブルグへ移り住んだ。その後、映画を学ぶようになったが、音楽が頭の中にはちらつく。以降はテレビや映画のサントラを手がけるようになった。


ソフィア・ケネディにとって、音楽とはアメリカを召喚するような働きをなし、遠ざかる故郷ボルチモアを呼び覚ます役割がある。ケネディにとって、英語は''耳になれない言語''になりつつある。しかし、歌をうたう時、そのルーツが他の誰よりもくっきりと浮かび上がる。「音楽を作るとき、私はいつも心の中でボルチモアに行くような気分になります。都市ではなくて、子供の頃に遠く離れて育った葛藤へと行きつく。私はもうほとんど英語をまともに話せませんが、歌うときの声にアメリカ訛りがあり、それがまだそこにある私の一部であるという感覚です」


「スクイーズ・ミー」はおもちゃ屋のカラフルな世界でのリクエスト。 デパートの暖かな明かりに照らされたそれは、おいしい誘惑のように見えるが、生気のないぬいぐるみやプラスチックの顔という魅力的な誘い文句の裏には何かが隠されているかもしれない。無邪気に見えるものが、いたずらっぽく歪む。「あなたは私を抱きしめているのか、強く抱きしめすぎているのか?」 これが、ケネディが10曲にわたって崇高かつ揺るぎない決意で追求する中心的な問いである。


グレート・アメリカン・ソングブックの華やかさ、エレクトロニックなテクスチャー、クラブランドの影響の間で輝くダンスを披露し、国際的な称賛を得たセルフタイトルのデビュー作(2017)に続き、ケネディはセカンド・アルバム『モンスターズ』(2021)をリリースし、超現実主義と超越について掘り下げた。


『Squeeze Me』では、ケネディと彼女の長年の音楽的コラボレーターで、共作者でもあるメンセ・リエンツ(Egoexpress、Die Vögel、Die Goldenen Zitronen)が、世界全体の現状に対するより幻滅的なコメントを描きだす。 対人関係の複雑さ、パワー・ダイナミクスへの疑問、自己決定への探求など、ケネディの長年のテーマが、アルバムを通して一貫した物語として展開される。


前作よりコンパクトになった『Squeeze Me』にはケネディのポップでキャッチーなメロディとサイケデリックな才能が溢れている。反復されるピアノのコード、煌びやかなシンセのベース、揺らめくクワイア、そして叫び声までもが、"Rodeo "のサウンドステージを作り上げる。アルバムのポップなハイライト"Imaginary Friend "と並び、"Rodeo "は差し迫った疑問を投げかけている。


「私たちはどこへ向かっているのだろう?」 ケネディはその答えを提示する代わりに、熱意に満ちた歌声で前進する。


終盤の"Hot Match"では、熱狂的な夢のように加速していき、モーターを煽るようなビートと燃え盛るタイヤで、立ちのぼる煙の向こうに駆け抜けていく。厳格さと美しさ、ユーモアとメランコリー、運命論と力強さ。『Squeeze Me』は、ソフィア・ケネディのすべてを反転させ、アルバム・ジャケットと呼応している。 それぞれの視点によって、彼女も世界も逆さまになるのだ。 


従来よりも集中し、ポップになった『Squeeze Me』は、ケネディにとって最もまとまりのあるアルバムである。一種の芸術的マニフェストとさえ言える。 多層的で、自信に満ちた声明であり、歌手の周囲や向こう側にあるあらゆる内外の危機があるにもかかわらず、それゆえに功を奏した。 『スクイーズ・ミー』は、外の世界を度外視するのではなく、私たちが何となく知っているようで、これまであまり垣間見たことのない、彼女独自の世界を通じて世界に対抗する。

 

 

Sophia Kennedy  『Squeeze Me』- City Slang


ベルリンといえば、デヴィッド・ボウイの『ベルリン三部作』が真っ先に思い浮かぶ。それまでロサンゼルスに住んでいたボウイは、この作品を期にベルリンで数年間を過ごし、刺激的な生活を送った。ベルリンはコスモポリタンの都市で、芸術文化の街。ボウイはかつて、「私は10代の頃、特にこの土地の芸術家や映画製作者の怒りに満ちた感情的な作品に夢中になっていた」のだった。

 

「ベルリンは、ディ・ブルッケ運動、マックス・ラインハルト、ブレヒト、そして『メトロポリス』、『カルガリ』の発祥の地であった。それは出来事を反映するのではなく、ある気分によって人生を映し出す芸術だった。当時の私にとっては、これが仕事の方向性になった。1974年にリリースされた『Autobahn』によって、私の関心はヨーロッパに戻った。電子楽器が多かったので、この分野は徹底的にもう少し調べてみないといけない。そう確信したのだった」


ボウイがもたらした「ベルリン三部作」は、この都市に、電子音楽の他、ポピュラー文化を強く意識付けることになった。もちろん、クラフトワークが”電子音楽のビートルズ”と呼ばれることがあるように、その音楽にポップネスを内包していたことを考えたとしてもである。18世紀の神聖ローマ帝国時代に崇高な音楽文化を誇り、大学教育などのリベラルアーツでも高い水準を持つドイツ。それは、その後の近代文明や現代文明の中で工業的な発展を重ねるうちに、音楽として、”芸術と商業的なポピュラリティを結びつける”というテーゼをもたざるをえなくなったのである。その突破口を切り拓いたのがクラフトワークとボウイであったのだと思う。

 

音楽というのは文化を醸成する都市や地域から生み出され、その暮らしの中で、いかなる作品を作り出すべきかという必然性から生じる。必然性を持たない音楽作品は、趣味の範疇を出ることは稀有である。ロンドンにはロンドンの、パリにはパリの、ニューヨークにはニューヨークの、ベルリンにはベルリンの、ケープタウンにはケープタウンの、東京には東京の音楽が作り出される必要があるのだ。そして、模倣性や重複性ではなく、差異やスペシャリティ(特性)により新しい芽がどこかに育まれる。もちろん、ドイツに関して言えば、都市性や工業性、市民の現代的なライフスタイルが合致し、新しい表現を生みだすための下地が形成されている。

 

日頃、生活をしていて、ふと思う疑問だったり、自己のアイデンティティにまつわる思いは、新しい音楽が発生するための大きなヒントやテーマになりえるのである。ドイツは、EUとの関係の中で、00年代前後を境に、ヨーロッパ全体のユーロビートやダンスミュージックの発展の影響を受け、音楽市場の拡大や、ライヴマーケットの成長期を経て、新しい音楽文化が花開く可能性を持っている。それは、ENJI(ベルリン)のようなビョークの次世代を担うシンガーの登場を見ても明らかだ。ハンブルグ/ベルリンのソフィア・ケネディーは、今後のポピュラー・ソングとは、どのようなものであるべきか、それを三作目のアルバム『Squeeze Me』で示唆している。

 

 

ソフィア・ケネディの音楽の表層を形成するのが、ファッショナブルでスタイリッシュなイメージ。これは間違いなく、制作者の日頃の生活や考えから汲み出されるものであり、他の人が真似しようとしても出来ない。アルバムの冒頭を飾る「Nose for a Mountain」を聴くとわかるように、シンセポップを基調とする親しみやすく軽妙な音楽的なアプローチの中に、セイント・ヴィンセントやビョークのようなファッショナブルな感覚が揺らめく。そして、その音楽性を背後から支えているのは、工業都市の音楽であるエレクトロニックである。これらの現代性や近代文明の工業性の発展の中で培われた音楽的な核心、それらは、現代的な宣伝広告やファッションの要素と結びついて、アートポップソングを作り上げるための素地となっている。




アルバムはその後、エレクトロポップに転じる。アヴァロン・エマーソンの系譜にあるDJライクなサウンドに、ソフィア・ケネディ独自のボーカルが乗せられる。スポークンワードでもなく、ソウルでもない、ダンスミュージックから汲み出された特異なボーカルスタイルが心地良いビートの底に揺らめく。ケネディのボーカルは、夢想的な感覚を生み出し、ある種の幻想性を呼び起こす。「Imginary Friend」というタイトルに相応しい。「Drive The Lorry」では、レトロなマシンビートを配して、チルウェイブとレゲエ/ラヴァースロックの中間にある独特な音楽性に転じる。現代のヨットロックやソフィスティポップに通じるようなアメリカの西海岸の音楽を呼び覚ます。これらのチルウェイブに属する音楽は、ホリー・クックにも近い感覚がある。しかし、ボーカルは依然としてスタイリッシュな印象があり、華やかな雰囲気に満ちている。

 

 

「Runner」は、EUらしいイメージに縁取られている。現代的なヨーロッパの文化性を音楽的に端的に表現したかのようである。例えば、2000年代以降のユーロビートの音楽性を継承し、それらを現代的なシンセポップに組み替えている。そしてスポークンワードの影響を受けたニュアンスに近いボーカルは、音階の抑揚をつけながら、トラックの背景となる反復的なシンセのパルスのビートと呼応するように、多彩なシークエンスを作り上げる。この曲は、フレーズごとに印象が様変わりし、音楽のカラフルな印象を強化している。緊張感に満ちたかと思えば、さわやかになり、また、ミステリアスにもなり、宇宙的にもなる。トラックの全体に、ヒップホップやブレイクビーツを反映させたリズムをループで配し、ドラムンベースのようなハネを強める。これは間違いなく、Wu-Luが最新EPでやっていたリズムの技法によく似ている。

 

しかし、ボーカルはそれらと対象的なコントラストを描く。ケネディのボーカルは、オペレッタからブリジット・フォンテーヌのようなアートポップの形態を活かし、迫力と上品さを兼ね備えた新鮮な音楽のインディオムを作り出している。ビートやリズムはかなり堅牢であるが、シンセのアルペジオは一貫してメロディアスで聴きやすさがある。もちろん、シンセだけではなく、ケネディーのボーカルも旋律をはっきりと意識している。表向きにはニューウェイブの一曲であるが、全般的にいえば、"ダンスミュージックのオペレッタ"ともいうべき優雅な印象をもたらすことがある。歌詞もシュールな印象がある。"I Can See in Through My Eyes"などを聴くと分かる通り。

 

 

 「Runner」

 

 

 

『Squeeze Me』は明確に言えば、ソウルアルバムではあるまい。ただ、部分的にR&Bやコーラス・グループからの影響が感じられる。 


「Rodeo」では、ディスコポップの影響が強まり、コーラスの箇所にブラックミュージックからの強いフィードバックが感じられる。シンセベースがファンクのビートを強調するが、ボーカルは内省的な雰囲気に満ちている。ボーカルとシンセ、リズムの組み合わせは、レトロなドリームポップ、懐古的なソフィスティポップともいうべき特異な空気感を持たせる。コーラスには異言語的な発音の響きを活かし、外国語の言葉遊びのようなユーモラスなニュアンスを強め、言語の訛りを長所として活かしている。

 

これらのエキセントリックな言語の響きの組み合わせは、これまであまり知られていなかった言語のユーモラスな性質を強めるだけではなく、ノスタルジックな感覚を呼び起こすことがある。それは、ドイツ語と英語の異文化圏のハイブリッドという歌手の人生観のフィードバックとも解釈出来る。


シンガーは、幼少期に聞いていたかもしれない音楽、そのわずかな記憶の糸を手繰り寄せて、独創的で抽象的な音楽空間を作り出す。そして、Broadcast(Warp)の制作していたような、抽象的であるが夢想的な感覚を、ものの見事に呼び覚ます。というか、これらの贔屓目のあるプロデュースを聴くかぎり、ソフィア・ケネディはWarpが結構好きなのではないかという疑惑すら生じる。

 

 

「Feed Me」は、フォーク風の楽曲で、ちょっと自虐的なニュアンスが込められている。このアルバムとしては珍しく、ベースとピアノが活躍し、ライブでぜひとも聞いてみたい一曲である。ジョン・レノンの「Imagine」を彷彿とさせる、ポピュラーソングの古典的な和声進行から、牧歌的で穏やかな感覚が汲み出される。スペーシーなSEの音響効果や叫びが途中で入ったりもするが、全般的には慈愛の雰囲気に満ちたポップソングとなっている。このアルバムでは、一番温かい雰囲気が感じられる。そして、過去の英語の訛りは、ドイツ語の訛りへと"反転"している。明確なタイトル曲がないアルバムだが、暗示的にタイトルのフレーズが歌われているのを見ると、隠れたタイトル曲である。この曲ではシンガーの複数の内面の感覚が様々な形で表されている。

 

 

最も心を揺さぶられる曲がある。それが七曲目に収録されている「Oakwood 21」である。ジャズの香りを添えた王道のバラードソングで、ケネディーのボーカルは静かなピアノと相まって、心に染み入る感じがある。アルペジオによるシンプルなピアノの伴奏の中で、同じように、シンプルなコールアンドレスポンスの手法で、ボーカルが歌われている。もしかすると、このような曲は、時代を超えた自分自身との繋がりを取り戻すための手立てであり、それは遠く離れてしまったアメリカへの親和性を我が手に取り戻すための回路のような働きをなす。この曲の中で、彼女はまるで、かつての自己やその思い出を抱擁するかのように、最もシンプルで美しいボーカルを披露する。

 

「Oakwood 21」は映画音楽のサウンドトラックやBGM(バック・グランド・ミュージック)のコンポジションの技法、もしくは舞台のミュージカルやオペラティックな劇伴音楽の効果を活かし、イントロのささやかなモチーフは信じがたいほど広大なスケールを持つバラードに成長する。これまでのアーティストの生き方を表すような素晴らしい一曲として聞き入らせてくれる。

 

 

 「Oakwood 21」

 

 

 

映像と音のイメージを直結させるという技法は、「Upstairs Cabaret」にも発見することが出来る。これは、フランスのドビュッシーが『Images』で、いち早く取り入れた画期的な作曲技法だった。また、一例では、アメリカの映画評論家のジェイムス・モナコ氏は、''映画音楽は映像の付加物である''と定義付けたが、''優れた映画音楽は映像を超越する瞬間がある''とも述べている。音楽が想像を超える神秘性を持ちうることはデヴィッド・リンチも認めていた。そういった音楽の神秘的な一面をインストゥルメンタルとして体現させたのがこの曲だ。映画音楽の持つ独特なムードやアトモスフィアの醍醐味を知り尽くしているから、こういった曲を作ることが出来るのだろう。

 

 

一般的には、ジェイムス・ジョイスやプルースト、マルケスの著作のように、連続した音楽作品のアルバムの中に、長期的な十年や二十年のような長い時間が流れが含まれることは歴史的に見てもきわめて稀である。


しかし、『Squeeze Me』は、推察するかぎりでは、短いミクロの単位を起点にし、より大きなマクロのシンガーの人生が断片的に反映されている気がする。つまり、一日の始まりから終わりまでを音楽的に網羅したと言える。そして、アルバムの曲の印象は、朝の爽快さや個人的な出来事から夜の雰囲気に移り変わる。アルバムの中盤では夕方になり、そして終盤では夜から真夜中になる。ある意味では、人生の一コマの流れが、この40分近い作品に凝縮されている。

 

夜のテーマを印象付ける「Closing Time」は、同名のアルバムを持つトム・ウェイツのように、淡く渋いバラードソングである。しかし、ウェイツが深夜過ぎのピザ屋での労働の気怠さや哀愁を反映していたのに対して、ケネディの場合は、音楽全体が着飾るようなスタイリッシュさ、ファッショナブルな感覚に縁取られている。夜になると、心楽しい空気感やエンターテイメントの雰囲気が強まる。これこそ、Berlinerとしての独特なライフスタイルを伺わせる。


最後に収録されている「Hot Match」は、アルバムの中で最もパワフルな印象に縁取られている。ニューウェイブ/ポストパンク的とも言えるだろうし、ブロンディのデボラ・ハリー的とも言える。この曲ではきっと、シンガーソングライターのこの上なくクールな一面を体験することが出来るはずだ。

 

 

88/100

 

 

 

Sophia Kennedy(ソフィア・ケネディー)の3rdアルバム『Squeeze Me』は本日(5/23)、City Slangから発売されました。 アルバムのストリーミングはこちら


 

Yumi Zouma、Fazerdazeなど良質なインディ&ドリームポップを産出するニュージーランドのシーンで新たに注目を集めるドリームポップバンド、PHOEBE RINGS待望の1stアルバムリリース&来日ツアー決定!


ユミ・ゾウマ、Fazerdazeなど良質なインディ&ドリームポップを産出するニュージーランドのシーンで新たに注目を集めるドリームポップバンド、PHOEBE RINGS待望の1stアルバムの日本国内盤のリリースが決定しました。本作はP-Vineから6月6日に発売予定です。(LPは6月25日に発売)


なお、国内盤には二曲のライヴバージョンが追加収録されます。アルバムの先行シングルが公開されていますので、下記よりチェック!!


Phoebe Ringsは、クリスタル・チョイのソロ・プロジェクトとして始まった。以降、バンドメンバーのシメオン・カヴァナー・ヴィンセント、ベンジャミン・ロック、アレックス・フリーアが加入し、本格的なコラボレーションに発展した。4人のミュージシャンは、プリンセス・チェルシー、フェイザーデイズ、タイニー・ルインズ、ACフリージー、シー・ビューズ、ラッキー・ボーイといったニュージーランドの有名なプロジェクトでミュージシャンの経験を積んできた。

 

フィービー・リングスのデビューアルバム『Aseurai』は、リード・シンガー/シンセサイザーのクリスタル・チェの母国語である韓国語を用いてテーマを表現している。

 

「Aseuraiとは大気の中であなたの周りにある、届きにくい、消えていく、という意味です」とチェは言う。「詩的な表現なので普通の会話では言わないだろうけど、私はそれが好きなんだ」

 

2024セルフタイトルEPに続くデビューアルバムはバンドのドリームポップのルーツに忠実でありながら、ディスコとシティポップの影響を加えている。元々、フィービー・リングスはチェのソロプロジェクトだったが、『Aseurai』はバンド全員が作曲に参加し、シフトチェンジを果たしている。

  

バンドは2023年から2024年にかけて、ターマキ・マカウラウ(オークランド)のスタジオとメンバーの自宅を行き来しながら、アルバムの作曲、プロデュース、エンジニアリングを行った。


The Bethsのジョナサンエンジニアとして参加した1st EP『Phoebe Rings』同様に、リード・シンガー、チェク・クリスタルの柔らかな包み込まれるような優しい歌声にジャズやボノサヴァといったニュアンスからディスコやシティポップのテイストも含んだ浮遊感のあるドリーミィ・サウンドは最高です。来月のアルバムリリースに合わせて来日公演も決定しました。お見逃しなく!!


また、ファーストアルバム『Aseurai』のリリースを記念するツアーもアナウンスされました。本ツアーは6月28に新宿スペース、30日に大阪コンパスで行われます。イベント/チケット詳細は以下よりご確認下さい。


「Aseurai」



【PHOEBE RINGS ASEURAI 2025 TOUR IN JAPAN】



TOKYO [to’morrow vol.39]

 

2025.6.28(Sat) at SPACE / SHINJUKU  

OPEN 19:00 / START 19:30

ADV ¥4000 / DOOR ¥5000

Acts:Phoebe Rings(from New Zealand), xiexie

Info:https://t.livepocket.jp/e/phoeberings


OSAKA [TONE FLAKES Vol.167]

 

2025.6.30(Mon) at CONPASS / SHINSAIBASHI  

OPEN 18:30 / START 19:00

ADV ¥4000 / DOOR ¥5000

Acts:Phoebe Rings(from New Zealand), with guest

Info:https://www.flakerecords.com/news_toneflakes167.php


「Drifting」



【リリース詳細】

アーティスト:PHOEBE RINGS / フィービー・リングス

タイトル:Aseurai / アセウライ

フォーマット:CD / LP(Color Vinyl) / DIGITAL

発売日:CD/DIGITAL 2025.6.6, LP 2025.6.25

品番: CD PCD-25477 / LP PLP-7583CB

定価: CD ¥2,750(税抜¥2,500) / LP ¥4,950(税抜¥4,500)


【Track List】

1.Aseurai

2.Not A Necessity

3.Mandarin Tree

4.Get Up

5.Playground Song

6.Fading Star

7.Static

8.Drifting

9.Blue Butterfly

10.Goodnight

11.Drifting (Live Version)*

12. Playground Song (Live Version)*

LP : SIDE A M1-5 / SIDE B M6-M10

 

*日本盤CD限定ボーナストラック(LP,DIGITALには未収録)


Pre-order(P-Vine オフィシャルショップで予約受付中): https://p-vine.lnk.to/NTumNz

 


【Phoebe Rings (フィービー・リングス)】

 

フィービー・リングスは2019年ニュージーランド/オークランドで活動を開始した。当初はジャズスクール出身のリード・シンガー兼キーボーディストのチェ・クリスタルのソロプロジェクトとしてスタートしたが、現在はサイモン・カヴァナー-ヴィンセント(ギター)、ベン・ロック(ベース)、アレックス・フリーア(ドラム)を加えた4人編成のバンドとして活動する。


ジャズやボサノヴァといったニュアンスも含んだオリジナリティ溢れるドリームポップでじわじわと知名度を高めると、同じくオークランドを拠点にワールドワイドなインディーロックシーンで活躍するThe Bethsが行った地元オークランドでのライヴで早々にオープニングアクトに抜擢されるなどニュージーランドで注目の存在となる。


その後、USを代表するインディーレーベル、Carpark Recordsと契約を交わし、2024年10月にデビューEP『Phoebe Rings』をリリース、本国ニュージーランドやUSはもちろんのこと日本でも話題を集めるようになる。


2025年3月にはThe Bethsのオープニングアクトとしてオーストラリアツアーに帯同、さらに台湾公演も実現するなど東アジアへと活動の範囲を拡げている。2025年6月に同じくCarpark Recordsから1stアルバム『Aseurai』がリリースされる。


ブルックリンのアーティスト、キャシー・ウィーランドのプロジェクト、Vinesがデビューアルバム『I'll be here』を発表した。


 2023年のBirthday Party EPに続き、10曲入りの作品は7月18日にリリースされる。 魅惑的なリードシングル「Evicted」がアルバムの発表に合わせて公開された。

 

この曲において、ウィーランドは、「私は病気になっているのか/それとも乗り越えているのか/私は生まれているのか/それともただ追い出されただけなのか」という問いを繰り返し、次から次へと音の層を積み重ねていく。 


エヴァン・チャップマンが監督したミュージックビデオは以下よりご覧ください。


「"Evicted "は、このアルバムのために初めて書いた歌詞の曲です。 この曲は、人生の過渡期を経験し、それがどこに向かっているのかわからないことについて歌っている」

 

 

「Evicted」

 

 

 

Vines 『I’ll Be Here』



 Tracklist:


1. I’m getting sick

2. Evicted

3. We’ve made it this far

4. Undercurrent

5. King of swords

6. Omw

7. Happy is hard

8. Tired

9. Keep driving

10. I’ll be here



 

ノースカロライナのバンド、Wednesdayは、2023年の『Rat Saw God』以来となる新曲を発表した。 繊細な美しさを持つ「Elderberry Wine」は、スペンサー・ケリー監督によるミュージック・ビデオとセットになっている。 以下からチェックしてほしい。


「Elderberry Wine」は、人生における甘いもの(愛、家族、成功)が、正しく準備し対処しなければ毒になる可能性について歌われている。

 

 「エルダーベリーは癒しの果実として知られ、免疫系を助ける多くのトニックやシロップの原料となっている。 しかしある時、私の妹がエルダーベリーを生で食べたところ、すぐに嘔吐してしまった」

 

「だから「エルダーベリー・ワイン」は充実感を得るための適切な環境を作ることについてのラブソングなのだ。 特に恋愛においては、2つの人生が互いを毒することなく交わるためには、微妙なバランスが必要だ」


今夜彼らは『レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルバート』でテレビデビューも果たす。 昨年、ソロアルバムをリリースして好評だったギタリストのMJ・レンダーマンは最近、Wednesdayのツアーに参加しないことを明らかにしたが、依然として彼はバンドの一員である。


「Elderberry Wine」

 


シューゲイズアーティスト、Winterがニューアルバム『Adult Romantix』を発表した。 2022年の『What Kind Of Blue Are You』と昨年の『...And She's Still Listening』EPに続くこのアルバムは、Winspearから8月22日にリリースされる。 

 

恍惚としたノスタルジアを体現するシューゲイズバンガー「Just Like a Flower」を筆頭に、ウィンターがサミー・ラムと共に監督したビデオが収録されている。 以下よりチェックしてほしい。


アルバムのリードシングル「Just Like a Flower」について、ウィンターは次のように説明している。


「この曲は、ベッドルームで白昼夢を見ているときのエッセンスをとらえている。 この曲は、カリフォルニア州エコー・パークにある昔のベッドルームで曲を書いていた頃の思い出と結びついている。 夏の夜、地元のショーから帰ってくると、驚きと魅惑に包まれ、ベッドに横たわり、頭の中で起こったことすべてを映画のように再生していた」


「ビデオを撮影するためにLAに戻ってくると、信じられないほど懐かしい気分になった。 彼女たちは、あの失われたLAの夏に私にインスピレーションを与えてくれた人たちとほぼ同じ年だった。 火事の直後で、デヴィッド・リンチが亡くなった直後だったから、余計に傷つきやすい空気が漂っていた。 コミュニティがひとつになるのを見るのはとても美しかった。 ある意味、私たちは彼女たちの最も親密な空間のひとつで撮影された、ある瞬間を記録していたのです」



「Just Like a Flower」





Winter 『Adult Romantix』


Label: Winspear

Release: 2025年8月22日

 

Tracklist:


1. Just Like A Flower (intro)

2. Just Like A Flower

3. Misery

4. Hide-A-Lullaby

5. Existentialism

6. Sometimes I Think About Death

7. Like Lovers Do

8. Without You

9. In My Basement Room

10. The Beach

11. Candy #9

12. Running

13. Hollow

 

Pre-save: https://lnk.to/adult-romantix




Charli XCXは、昨年ヒットアルバム『BRAT』を発表したばかり。このアルバムは前作よりも大きな反響を呼んだ。彼女はこのサクセスの後すぐに、次のアルバムの制作を見据えている。


チャーリーxcxは今週のカンヌ映画祭でカルテッドに内心を語った。「ブラットのような別のレコードを作成するプレッシャーを本当に感じていません。なぜなら、私がそれを作っていたとき、私はそれを信じて、それで何をしたいのかを完全に知っていたにもかかわらず、それがどのように受け取られるかわかりませんからです」


「私は本当に自分のためにそれをやって、自分のためにしたい方法でそれをマーケティングしていましたが、人々が彼らがした方法でそれにつながるとは知りませんでした。そうそう、同じことを2度行うことはできないと感じているので、あまりプレッシャーを感じません。そして、私の次のレコードはおそらく失敗するかもしれません。正直に言うと、私は落ち込んでいますね」


次のアルバムがどう評価されるかわからないにもかかわらず、彼女はこの夏が "BRAT Summer 2.0 "になっても構わないと思っている。 "それはライフスタイルのようなものだし、私はその理論が好きだから、そう、私個人としてはそうするつもりよ"とチャーリー。何れにせよヒットアルバムを聴きながら次のアルバムに期待しよう。

 


 

昨日(5月21日)、オーストラリア/メルボルンを拠点に活動するTamas Wells(タマス・ウェルズ)が2曲入りのニューシングルをデジタルでリリースした。

 

「Please Don't Leave」はアーティストにとって一年半振りの新作。タマス・バンドの長年のメンバーとして知られるメルボルンのアーティストNathan Collinsによる新プロジェクトThe Ground Applesとのコラボレーション作品。近年はバンド・サウンドに移行していましたが、「Please Don't Leave」「It's Not Right That You're Alone, Madison」では、かつてのアコースティック・サウンドに回帰。美しいメロディを擁する上質なフォークソングとなっている。

 

タマス・ウェルズは、ミュージシャンとして活動するほか、東アジアの政治学者として学術的な活動を行っている。メルボルン大学の社会政治学の学者であり、学会に入る以前には、ミャンマーの七年間滞在し、NGOで公衆衛生やカバナンスのプログラムに携わっていた。最近の主要な著書には、「ミャンマーの民主主義を語る」等がある。

 

この新曲は、イースト・ブランズウィック・トーン果樹園でレコーディングされた。ザ・グラウンド・アップルズとウェルズが共同プロデュースを手掛けた。タマス・ウェルズは、ビートルズからの強い影響を受けたと明かしているが、マッカートニー/レノン・ライクのソングライティングに加えて、ニック・ドレイク風のコンテンポラリーフォークの要素が付け加えられている。

 

「Please Don't Leave」では、ミュージシャン自身によるみずみずしいアコースティックギターの音色とボーカルの美しいハーモニーを体感することが出来る。 他方、「It’s Not Right That Alone, Madison」ではアメリカの最初のインディーロックスター、アレックス・チルトン(Big Star)を彷彿とさせる、奥深い雰囲気を持つインディーズライクのフォークミュージックを収録している。いずれの楽曲も良質なメロディーと心地よいサウンドを楽しむことが出来ます。

 

タイトル曲のリリックビデオが公開されているので、下記よりご覧下さい。The Ground Applesが映像のプロデュースを手掛けています。

 

 

「Please Don't Leave」

 

 

 

 

The Ground Apples & Tamas Wells 「Please Don't Leave」- New Single




アーティスト:The Ground Apples & Tamas Wells
タイトル:Please Don't Leave


リリース日:2025年5月21日


フォーマット:デジタル・ダウンロード/ストリーミング

 

ストリーミング: https://lirico.lnk.to/groundappletamaswells


イスラエルに対する厳しく冷ややかな視線が注がれ、世界各地でフリーパレスチナの運動が加速している。反イスラエル運動や停戦に向けた国際世論は日に日に高まっている。


今回、この動きに同調をしめしたのが、アート・ミュージックの巨匠ブライアン・イーノだった。ブライアン・イーノ氏は、マイクロソフト社の開発したウィンドウズ95の起動音(PCを起動するたびに鳴る7秒間の音)を制作したことにより、環境音楽の世界でも有名になった。2025年初め、イーノの起動音は米国議会図書館のナショナル・レコーディング・レジストリに登録された。


すでに大手メディアで報じられているようにブライアン・イーノはマイクロソフト社にイスラエルとの提携を解消するよう呼びかけている。また、ウィンドウズ95の環境音の使用料を、イスラエルによるガザでのジェノサイドの犠牲者に寄付することも約束している。


今朝、ブライアン・イーノはマイクロソフトへの公開書簡「Not In My Name」をインスタグラムに投稿した。 彼のソーシャルメディアを通じて明らかにされた声明は以下の通りです。


ーー1990年代半ば、私はマイクロソフトのウィンドウズ95オペレーティング・システムのために短い音楽を作曲するよう依頼されたんだ。以来、何百万、いや何十億という人々が、この短い起動チャイムを耳にしたことだろう。 私は創造的な挑戦としてこのプロジェクトを喜んで引き受け、会社の人々との交流を楽しんだ。 しかし、同じ会社が、ある日突然、抑圧と戦争の機械に関与していたとは信じられなかっただろう。


今日、私は作曲家としてではなく、マイクロソフトがパレスチナにおける監視、暴力、破壊につながる、まったく異なる種類の作曲に果たしている役割に警鐘を鳴らす一市民として、語らざるを得ない。


2025年5月15日付けのブログ投稿で、マイクロソフトはイスラエル国防省に「ソフトウェア、プロフェッショナルサービス、Azureクラウドサービス、言語翻訳を含むAzure AIサービス」を提供していることを認めた。そのうえで、"マイクロソフトは、顧客が自社のサーバーやその他のデバイスで当社のソフトウェアをどのように使用しているかを可視化していないことを認識することが重要である "と述べている。 


 これらの "サービス "は、一流の法学者や人権団体、国連の専門家、そして世界中の多くの政府によってジェノサイドと評される行為に従事している政権を支援している。 つまり、マイクロソフトとイスラエル政府・軍との協力関係は秘密ではなく、同社のソフトウェアがパレスチナ人を追跡し、自宅で爆破するための誘導システムなんだ。


組織的な民族浄化(イスラエル側のガザに対する攻撃)を行っている政府に高度なAIやクラウドサービスを販売し、促進することは、「通常のビジネス」とはいえない。 それはもはや共犯なのだ。 戦争犯罪を可能にするシステムを故意に構築すれば、必然的にその犯罪に加担することになるんだ。


私たちは今、マイクロソフトのような企業が、政府よりも大きな影響力を持つ時代に生きている。 私は、そのような力には絶対的な倫理的責任が伴うだろうと信じている。 従って、私は、マイクロソフト社に対し、国際法違反に加担する活動を支援するすべてのサービスを停止するよう求める。


真に破壊的なことを行い、沈黙を拒否した、勇敢なマイクロソフトの従業員と連帯すること。 彼らは、これまで命を失い、これからも命を失い続けるだろう人々のために、自分たちの生活を危険にさらしている。


私は、アーティスト、技術者、音楽家、そして良心を持つすべての人々に、ぜひこの呼びかけに参加してもらいたいと思います。


そして、私がウィンドウズ95の起動音で受け取った使用料は、ガザ攻撃の犠牲者を支援するために使われることを、ここに誓います。 ひとつの音が真の変化をもたらすとしたら、それはこの音になるはずだ。ーー




 Billy Nomates 『Metal Horse』


 

Label: Invada

Release: 2025年5月16日

 

 

Review

 

ビリー・ノメイツ(Billy Nomates)はイギリス/レスター出身のシンガーソングライター。 元はバンドで活動していたが、なかなか芽が出なかった。しかし、スリーフォード・モッズのライブギグを見た後、ボーンマスに転居し、再びシンガーソングライターとしての道を歩むようになった。そして再起までの数年間が彼女の音楽に不屈の精神をもたらすことになった。2023年には『CACTI』をリリースし、話題を呼んだ。

 

前回のアルバムは、当サイトではリリース情報を扱うのみだったが、今回は素晴らしいのでレビューでご紹介します。『Metal Horse』はビリー・ノメイツの代表的なカタログが登場したと言って良いかもしれない。『CACTI』よりも遥かにパワフルで、そしてセンチメンタルなアルバム。

 

『Metal Horse』は、ソロアルバムとしては初めてフル・バンドでスタジオ制作された。ベース奏者のマンディ・クラーク(KTタンストール、ザ・ゴー!チーム)とドラマーのリアム・チャップマン(ロジ・プレイン、BMXバンディッツ)が参加、さらにストラングラーズのフロントマン、ヒュー・コーンウェルが「Dark Horse Friend」で特別参加している。共同制作者も豪華なメンバーで占められている。

 

ビリー・ノメイツのサウンドはニューウェイブとポストパンク、そして全般的なポピュラーの中間に位置付けられる。そして力強い華やかな歌声を前作アルバムでは聴くことが出来た。もちろん、シンガーとしての従来から培われた性質は維持した上で、『Metal Horse』では、彼女の良質なメロディーメイカーとしての才覚が遺憾なく発揮されている。前作『CACTI』では、商業的な音楽が中心だったが、今作はビリー・ノメイツが本当に好きな音楽を追求したという気がする。それがゆえ、なにかしら心を揺さぶられるものがある。

 

このアルバムは、ニューウェイブ史上最も静けさを感じさせる。それは音量的なものではなく、耳を澄ました時、その向こうに浮かんでくる瞑想的な静けさ。そしてなぜ、静かな印象があるのかといえば、それは極力楽器や音符を絞り、音の要素を削ぎ落としたことに理由がある。

 

ボーカルもコーラスが入っているとはいえ、非常に洗練されている。そしてニューウェイブ風の作品でありながら、フォーク、ブルース、AOR(現代風に言えば、ソフィスティポップ)を織り交ぜ、個性的なアルバムが作り出された。そして、全般的にはシンディ・ローパーのポップソングに近い雰囲気に満ちている。もちろん、ローパーほどにはエキセントリックではないのだが、ノメイツの歌手としての個性が80年代のスターシンガーに劣っているとはいいがたい。

 

 

アルバムにはシンセサイザー、ギター、ドラム、ベースを中心にシンガーのパワフルなボーカルをバンドセクションで支えている。アルバムの冒頭を飾る「Metal Horse」ではノメイツのブルースを意識したボーカルに、ジョン・スクワイアを彷彿とさせる渋いギターリフが戯れるようにコールアンドレスポンスを重ねる。うねるようなグルーブを作り出し、オルガンのシンセにより三拍子のリズムを強調させたり、ボーカルの録音をいくつか入念に重ねたり、そして抽象的な旋律のラインを描きながら、見事な構造のポップソングを作り上げている。この曲の音楽は上がったり下がったりを繰り返しながら、徐々に余韻を残しながらフェードアウトしていく。

 

アルバムの曲を聴いていると、なぜかスタイリッシュなイメージを感じさせる。まるでノメイツは肩で風を切って歩くような勇壮なイメージをボーカルで表現している。「Nothin Worth Winnin」では規則的なマシンビートを背景に、シンセサイザーのメロディーと呼応するような形でノメイツは美しいハーモニーを作り出す。曲全体が波のようにうねり、グルーブを作り上げ、そして聞き手の心を和ませたり、時には勇気づけてくれたりもする。この瞬間、ビリー・ノメイツのソングライティングは個人的な感覚から離れ、共有される感覚という強固な意義を持つ。

 

 

今回のアルバムでは、前回よりもAORの性質が強く、それがニューウェイブやポスト・パンクの音楽に干渉し、聴きやすい曲が生み出された。続く二曲はその好例となりえる。「The Test」、「Override」ではいずれも80年代のドン・ヘンリーのような爽やかな音楽をヒントにし、それらを現代的なポップソングに置き換えている。これらは2020年代の感覚で聴くと、ややバブリーな印象を覚えるが、オーバードライヴのかかったベースやそれほど世間ずれしないノメイツの現実的なボーカルは、むしろ、ザ・1975、The Japanese House以降のロックやポップに慣れ親しんだリスナーにも共感を覚えるなにがあるかもしれない。音楽的には80年代やMTVの商業的なポップスのリバイバルであるが、ノメイツの歌は誰の真似にもならない。まるで自らの生き方を示すかのようなクールな歌声で、バックバンドと楽曲全体をリードする。

 

特に、素晴らしいのが続く「Dark Horse Friend」である。この曲は、ニューウェイブ・リバイバルの名曲と言っても過言ではない。このあたりは音楽的な蓄積が並み居るシンガーとの格の違いを見せつけている感じである。特に、このシンガーは繊細な脆さ、言い換えれば、センチメンタルでブルーな感覚をメロディーに昇華する術に長けている。イントロからニューウェイブ風の淡い雰囲気を持つシンセに馴染むようなムードを持つ巧みなボーカルを披露している。


しかもフレーズの繰り返しのあと、パーカッションだけでサビに持っていく。力技とも言えるが、この単純さがむしろ軽快さをもたらす。そして、そのサビに力強い印象を及ぼすのが、ヒュー・コーンウェルの渋いボーカルだ。彼のボーカルは、ノメイツと見事なコントラスを描き、「You're Dark Horse Friend」というフレーズを心地よくしている。その後のボーカルのやりとり、コーラスも息がぴったり取れている。コラボレーションのお手本を彼らは示している。

 

ノメイツはこのアルバムの録音において、強い決意を表明するかのように、勇敢なボーカルを披露している。それらが見事なバラードソングとして昇華されたのが「Life's Under」である。オルガンの演奏を背景に、エルトン・ジョン級の堂々たるソングライティングの腕前を披露している。その中で、ゴスペル、ブルースといった渋い音楽のテイストを添えて、いよいよビリー・ノメイツの音楽の世界は盤石となる。この曲は、徐々に精妙な雰囲気を増し、一分後半の箇所でのコーラスを交えたフレーズで最高潮に達する。非常に大掛かりな曲想を精緻に組み上げている。曲の後半では、三拍子のリズムが浮かび上がり、幻想的な雰囲気に縁取られフェードアウトしていく。かと思えば、一転して、軽快な楽曲「Plans」が続いている。曲の収録順にアップダウンやメリハリがある。まるで軽快にドライヴをするようなアップテンポで陽気で直情的なロックソングが紡がれる。80年代に流行したブライアン・アダムスのような軽快なロックソングを見事に受けつぐ。

 

 

 

アルバムの後半は、ビリー・ノメイツの趣味が満載で、とてもファニーだ。「Gas」はニューウェイブ/ニューロマンティック風の曲で、レトロなドリーム・ポップともいうべき曲である。ただ、やはり、ベースラインの強固さが際立ち、オーバードライヴの効いたファジーなベースがノメイツのボーカルと鋭いコントラストを形作る。そしてサビでは、むしろ典型的なメタル/ハードロック風のシンガーに変化する。EUROPEのような熱血な雰囲気を帯びた80年代のメタル/ロックソングへと曲の印象が移り変わる。かと思えば、「Comedic Timing」では精神的に円熟したシンガーとしての気配を見せる。一作の中で歌手としての性格を絶えず様変わりさせるのは、ムービースターさながらといえるかもしれない。この曲では、心あたたまるようなハートウォーミングな音楽性を垣間見させる。

 

 アルバムの後半でも、個性派のシンガーとしての性質が影を潜めることはまったくない。「Strande Gift」では、ブルースを下地にし、美しいポピュラーソングを作り上げている。しかし、あらためて、美しさとは何かといえば、丹念に制作に取り組んでいること、自分の真心から制作に情熱を注ぐこと、それ以外には存在しないのではないか。それがミニチュアや織物のように精細であるほど、あるいは、それとは対照的に、広大でダイナミックであるほど、人は大きな感動を覚える。それほど複雑な楽曲構成ではないし、難解な音楽理論も用いていないと思われるが、琴線に触れるエモーションが随所に出現する。過去を振り返るように、あるいは、現在を踏みしめるかのように、シンガーの人生のワンシーンが脳裏をよぎる。本作の最後の楽曲「Moon Explode」では、ノメイツが生粋のロックシンガーであることを暗にほのめかしている。

 

どうやら、このアルバムの真価は、理論や理知では語り尽くせないらしい。いや、果たして、良い音楽が単純な言葉や理論だけで解き明かせたことがこれまで一度でもあったろうか。良い音楽は、常に理知を超越し、我々の常識を塗り替えるような力を持つ。


ビリー・ノメイツの『Metal Horse』を聴くと、シンガーソングライターというのは、ある種の生き方そのものであるということがよくわかる。その姿を見ると、頼もしくなる。有為転変.......、苦しみや喜び、悩みとそれからの解放、優しさや労り、そのほか、人生にまつわる様々な感情を体験した歌手や音楽家にしか表現しえないものがこの世には実在する。それこそが『Metal Horse』の本質、あるいは魅力なのであろう。

 

 

 

85/100

 

 

Best Track- 「Dark Horse Friend」


グランジ、ローファイ、シューゲーズまでもオルタナティブに取り込んで真向からロックを体現するSAGOSAID。

 

爽快に駆け抜ける全6曲本日配信リリース!オルタナティブロック、インディーロックを基調にバンドスタイルで楽曲をリリースするソロアーティストSAGOSAIDが本日新作「itsumademo shinu noha kowai ?」をリリースした。

 

前作からよりソリッドさを増したギターサウンド、投げっ放すメッセージは爽快でありながら親しみや温かみをも感じさせる。

 

カウンターを超えた真向から鳴らされたロックサウンドは清々しく心に響く。レコーディングはライブサポートも務めるVINCE;NT、ベランダ等のメンバーを迎え行われ、マスタリングをDavid Bowie、BECK、Vampire Weekendなども手掛けたグラミー賞受賞者でもあるエミリー・ラザールが担当。

 

今作は6月18日にはCDでもリリース。CDは6月5日(木)渋谷WWWでの新作リリースパーティ(ゲスト:ラブリーサマーちゃん)にて先行販売を予定。


東京公演を皮切りに広島、名古屋、大阪でのリリースツアーも決定している。代表曲「Am I afraid of dying?」のミュージックビデオが、2025年5月21日(火)20:00に公開予定。

 

ディレクションは、映像作家のRachel Chie Millerが担当。EPの世界観をより深く映像で表現した作品となっている。

 

 「Am I afraid of dying?」

 

 

 

 


SAGOSAID Mini Album


「itsumademo shinu noha kowai?」


 Tracklist:

 

1.Am I afraid of dying?
2.Morning Boy
3.inside your eyes
4.the shore, you
5.iimmaaggee
6.dance / wings



Digital:2025.5.21 Release


https://big-up.style/ndQK3RJWGm

CD:2025.6.18 Release


SRCD-074 / ¥2,000(税抜価格1,818円) 

 

 



■SAGOSAID(サゴセッド)


オルタナティブロック、インディーロックを基調にした楽曲をバンド形式で発表するソロアーティスト。ライブもバンド形態でパフォーマンスを行う。

 

2021年『REIMEI』、2023年『Tough Love Therapy』とコンスタントに作品を発表しつつ、東京・西調布で音楽スタジオ"Studio REIMEI"を運営。同スタジオでのライブセッション企画『REIMEI SESSION』をYouTube動画と音楽配信サービスにてシリーズ公開している。 



■LIVE SCHEDULE   


SAGOSAID“itsumademo shinu noha kowai ?”Release show
2025/6/5(木)


会場:渋谷WWW


with ラブリーサマーちゃん


DJ:alien.melissa / 1797071


OPEN/DJ START 18:30


前売:3,500円+1Drink / U-23:2,500円+1 Drink


e+:https://eplus.jp/sagosaid250605/



■SAGOSAID“itsumademo shinu noha kowai ?” Release Tour


7/6(日) 広島 CONQUEST
8/2(土) 名古屋CLUB ROCK'N'ROLL
8/3(日) 大阪NOON+CAFE