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 Fiddlehead 『Death Is Nothing To Us』

 


 

Label:  Run For Cover

Release: 2023/8/18



Review


今週、新宿ACBでライブを行ったボストンの五人組のポスト・ハードコアバンド、Fiddleheadの最新作をご紹介します。


現在、アメリカのパンクシーンでは、依然としてエモーショナル・ハードコア・バンドが強烈な印象を放っている。一例では、Narrow Head、Militarie Gun,Home Is Where、Drug Church、Origami Angelを始め、数多くのバンドが各地で活躍している。もちろん、フィドルヘッドも、そのアメリカのパンクシーンの筆頭格に挙げられる。

 

プレスリリースによると、Discord  Recordsに端を発するレヴォリューション・サマーに触発されているとの話。実際聴いてみると、シンプルなベースライン、硬質なギターラインの掛け合いは、イアン・マッケイ擁する、FUGAZIの1990年代のポスト・ハードコアを彷彿とさせる。(ドロップ D?)チューニングのギターのヘヴィネスは、Jimmy Eat Worldの最初期、Fall Out Boy、Strike Anywhere周辺のエモーショナル・ハードコアバンドのアプローチに近い。



『Death Is Nothing To Us』はそのほとんどが2分弱、長くとも3分の曲で占められている。バンドの演奏力は傑出しており、メンバー間の連携の取れたアンサンブルが繰り広げられる。音楽性は、メインストリームでもなく、アンダーグランドでもなく、その中間にあるエモコアサウンドに属する。


オープニング「The Deathlife」は、爽やかで存在感のあるメロディック・パンクサウンドが全開である。一見、勢いのみで突っ走っているようにも聞こえるかもしれないが、念入りにスタジオで作り込まれたハードコア・サウンドは、少なくとも一度聴いて飽きるような代物ではないと思う。パンチ力、力強さ、フック、アンセミックな展開を一分弱の中に無理やり凝縮したようなサウンドが魅力的だ。ドラムのタム回しは、強いインパクトとドライブ感をもたらしている。


 

「Sleephead」は、カッティング・ギターの後、静と動を織り交ぜたエモーショナル・ハードコアが展開される。ヘヴィーなギターラインと対象的に、パット・フリンのボーカルがエモさを醸し出す。Perspective,a Lovely Hand To Holdの「Mosh Town USA」を思わせる内省的な面と激情的な面がせめぎ合っている。これらのエモコア・サウンドをアンサンブルとしてリードしているのがドラムで、タイトなスネアとタムの迫力あるヒットが激烈なインパクトをもたらしている。



「Loserman」はシンプルかつストレートなメロディック・パンクで、パット・フリンのシンガロングを重視したボーカルは淡いエモーションを漂わせる。Fall Out Boyを思わせるオーバーグラウンドのエモサウンドとしても楽しめる。後半ではフリンの咆哮が熱っぽい雰囲気を生み出している。

 

「True Hardcore (Ⅲ)」は、Helmet、Mission Of Burmaに象徴される実験的なポスト・ハードコアの性質が強い。イントロのギターのハーモニクス、オーバー・ドライブ/ファズを掛けたベースラインの後、パンチ力の強いメロディック・ハードコアが展開。パット・フリンのボーカルは、ライブのオーディエンスを熱狂させる感染力を持っている。安定感があり、他のパートを圧倒するパワフルなドラムは、曲にドライブ感を付与している。さらに、曲の後半では、やはりシャウトを交えつつ、エモーショナル・ハードコアのマニアックな領域を探ろうとしている。


 

続く「Welcome To The Situation」も同様に、上記のポスト・ハードコアバンドに触発されたと思われるアクの強いサウンドを展開させる。それとは対象的にフリンのボーカルは、エモーショナル性を漂わせている。ここでは、FUGAZIのイアン・マッケイのようなノイジーな面とは別の内省的な感情がボーカルに乗り移っている。これらの激情性と内省的なサウンドの対象性は、Jimmy Eat Worldが最初期において試していたこともあってか、ほんの少しだけ古びているような印象もなくはない。それでも、フィドルヘッドの音楽には、洗練された趣があり、一定の聴き応えがある。途中のボーカルのシャウトに関しては、Midwest Emoの原初的なサウンドを思い起こさせる。

 

 「Sullenboy」はポスト・ハードコアの最初期の時代に立ち返っている。前半部の曲に比べると単調にも思えるが、曲の終盤にて面目躍如となる。熱量を詰め込んだハードコアはスクリーモに近い性質へと変化し、一定の熱狂性をバンド・サウンドの中に留めることに成功している。アウトロのシャウトのコーラスに関しては、レヴォリューション・サマーの時代の狂乱を刻印している。

 

これらのパワフルなハードコア・サウンドの渦中にあって、静謐な印象を残す曲も収録されている。中盤のハイライトとなる「Give It Time(Ⅱ)」は、フィドルヘッドのポスト・ロックに近い一面が表れ出ている。たとえば、Mineral(Christie Front Drive)に象徴されるクリーントーンのギターのアルペジオを中心とした曲は、癒やしの瞬間ともなりえる。現行のポスト・エモの音楽性に属する、聴きやすさとマニアックさを兼ね備えた一曲として楽しむことができるはず。


 

その後、「Queen of Limerrick」ではシンプルなポスト・ハードコアに回帰している。アルバムの前半と同じく、FUGAZIとエモーショナル・ハードコアを直結させたアグレッシヴなサウンドが目眩く様に展開される。

 

「The Woes」もHot Water Musicをはじめとするメロディック・ハードコアの熱狂性が蘇る。サビに関しては、ライブでシンガロングやモッシュピットを誘発することは間違いない。もちろん卓越した演奏力があるからこそ、こういった安定感のある楽曲としてパッケージすることができるのだろう。



「Fiddlehead」は、テクニカルなベースラインを取り巻くようにして、Helmet、Mission Of Burmaを彷彿とさせるポスト・ハードコアが展開される。しかし、ここには、ノイジーなハードコアとは別の虚脱という側面が示され、バンドのソングライティングにおける引き出しの多さが伺える。その後、フィドルヘッドらしいアンセミックなハードコアへと変遷を辿る。終盤でのシンガロングは、彼らの最もメロディックかつエモーショナルな性質が現れ出た瞬間となる。



本作は全体的に抜群の安定感があり、メロディック・ハードコアの良盤として楽しめる。実際のライブでは、バンドの熱狂性がより身近に伝わることだろう。音源としての評価は抜きにしたとしても、ポストハードコア/メロディック・ハードコアに目がないリスナーは、必ずチェックしておくべし。

 


80/100 



ワシントンDCのレーベル、Discord  Records関連のガイドは、以前に特集としてご紹介しております。詳しくは、DISCHORD RECORDS TOP 10 ALBUM DISCHORD 名盤ガイドをご参照下さい。





もし、ACBのライブを見たよ!と言う方いらっしゃいましたら、下記コメント欄よりご意見やご感想をお寄せください。

©Alexis Gross
 

TurnstileとBADBADNOTGOODが、EP『New Heart Designs』のために手を組んだ。(ストリーミングはこちらから)

 

このEPには、ターンスタイルが2021年にリリースしたアルバム『GLOW ON』に収録されていた三曲「Mystery」、「Alien Love Call」、「Underwater Boi」が収録されています。アレックス・ヘネリーとブレンダン・イェーツが監督したミュージックビデオは以下からご覧下さい。



 


デトロイト、ハードコアバンド、the armedは、Julien Baker(ジュリアン・ベイカー: ソロ・フォークシンガー、ボーイ・ジーニアスとしても活動中)のヴォーカルとイギー・ポップのビデオをフィーチャーした「Everything Glitter」を発表した。本日リリースされたセカンド・シングルは、ゲスト・スターを起用せず、アームドのコア・ラインナップをフィーチャーしている。

 

ニューアルバム『Perfect Saviors』は8月25日に発売予定だ。先行シングルとして、「Sport of Formをリリースしている。


 

©Aaron Jones

デトロイトのハードコアバンド、The Armed(ザ・アームド)が次のアルバムのニュースを携えて戻ってきた。『Perfect Saviors』は8月25日にSargent Houseからリリースされる。

 

2021年の『ULTRAPOP』に続くこのアルバムは、ジュリアン・ベイカーのヴォーカルをフィーチャーしたシングル「Sport of Form」を筆頭に、イギー・ポップが神に扮したビデオが収録されている。ザ・アームドのトニー・ウォルスキーは、ベン・チショルムとトロイ・ヴァン・ルーウェンと共にこの新作をプロデュースし、アラン・モルダーがミキシングを担当した。

 

『Perfect Saviors』について、アームドは声明でこう語っている。


「あまりにも多くの情報が私たちを愚かにし、混乱させている。つながる方法が多すぎて、不注意にも孤立してしまった。期待されすぎて、誰もが有名人にならざるを得なくなった。予測可能な原始的な危険は、より新しい社会的な危険に道を譲った。その結果、混乱と恐怖に満ちた、しかし究極的には美しい世界が生まれた。私たちは、このレコードがまさにそのすべてでもあることを願っている。Perfect Saviors』は、21世紀最大の偉大なロック・アルバムを作ろうとする、まったく皮肉を感じさせない真摯な取り組みなのだ」

 

 「Sport of Form」

 

 

「Sport of Form」について、トニー・ウォルスキーは次のように語っている。


「スポーツには2つのタイプがある。バスケットボール、フットボール、サッカーのような計量のスポーツには、ポイント制があり、勝利への二元的な道筋がある。形のスポーツとは、ダイビングやフィギュアスケート、ボディビルのようなもので、進化する基準と主観性の層、そしてある種の重要な要素を持つものである」


「私たちを取り囲む世界は複雑で、私たちの生活はまさに、物差しよりも形のスポーツに近い。しかし、多くの人々はそれを正反対のものとして捉えている。この曲の歌詞は、実際にプレーしているわけでもないゲームに勝ちたいという人間の欲求について歌っている。音的には、美と醜さ、厳しさと優しさ、猥雑さと優美さの間の絶え間ないむち打ちによって、その認知的不協和音の反映となっている」



Armed 『Perfect Saviors』



Label: Sargent House

Release: 2023/8/25 


Tracklist:


1. Sport of Measure


2. FKA World


3. Clone


4. Modern Vanity


5. Everything’s Glitter


6. Burned Mind


7. Sport of Form

8.Patient Mind


9. Vatican Under Construction


10. Liar 2
11. In Heaven


12. Public Grieving

Fucked Up
 

先月、カナダ/トロントの伝説的なポスト・ハードコアバンド、Fucked Upは、一日で録音されたアルバム『One Day』(MT Review)に続く最初のシングル「Cops」を発表しました。このシングルでは、オタワのエレクトロデュオ、The Hulluci Nationとの理想的なコラボレーションが実現しました。

 

昨日、続いて、彼らは第二弾コラボレーション「John Wayne Was a Nazi」を発表しています。そもそもこのコラボレーションは、Fucked Upのボーカリスト、Damian Abraham(ダミアン・アブラハム)がEhren "Bear Witness" Thomasと以前から親交があり、そのうち何かしようと話し合っていた結果、実現したコラボレーションです。前回のシングルでは、エレクトロとパンクの劇的な融合を見ることが出来ましたが、2ndシングルについても同様のアプローチが取られています。


こちらも今週のHot  New  Singleとして読者の皆様にご紹介致します。

 


©Deanie Chen

 

ボストンのポストハードコアバンド、、2021年の『Between the Richness』に続く作品を発表しました。(フィドルヘッド)はニュー・アルバム『Death Is Nothing to Us』を発表しました。新作は8月18日にRun for Coverから発売されます。

 

この発表を記念し、ボストンのポストハードコア・グループはリードシングル「Sullenboy」を公開しました。アルバムのジャケット、トラックリストとともに、下記をチェックしてみて下さい。


ボーカルのPatrick Flynn(パトリック・フィン)は声明の中で次のように説明しています。

 

「私も含め、悲しみや鬱をロマンチックに捉えて欲しくはないな。でも私は、喪失が人生の中でこの悲しみの感覚を永続させる方法について書きたかった。アルバムでは、これまで取り上げられなかった悲しみの段階、憂鬱な態度が持つ粘着性の感覚を柔らかく表現しているんだ」

 

「もう少しアグレッシブなサウンドにしたいと思っていた」ギタリストのアレックス・ヘナリーは付け加えた。

 

「そういうものがバンドの根拠になっているんだ。多分、みんなはこのLPで僕らがよりクリーンになることを期待したと思うけど、僕はこれを最初の2つの本当のミックスだと思ってる」

 

「Sullenboy」



Fiddlehead 『Death Is Nothing to Us』


Label: Run For Cover

Release: 2023/8/18


Tracklist:

 
1. The Deathlife


2. Sleepyhead


3. Loserman


4. True Hardcore (II) [feat. Justice Tripp]


5. Welcome to the Situation


6. Sullenboy


7. Give It Time (II)


8. Queen of Limerick


9. The Woes


10. Fiddleheads


11. Fifteen to Infinity


12. Going to Die

 

 

Pre-order:

 

https://www.runforcoverrecords.com/collections/fiddlehead-products

Butthole Surfers
 

Matador Recordsは、Butthole Surfersの一連のクラシック・アルバムをリイシューすることを発表しました。

 

1984年の『Psychic...Powerless...Another Man's Sac』、1986年の『Rembrandt Pussyhorse』、1987年の『Locust Abortion Technician』、1988年の『Hairway to Steven』、1991年の『Pioughd』というバンドのファーストアルバム5枚のデジタルおよびフィジカル・リイシューを統括しています。デジタルストリーミングはこちらからご視聴いただけます。

 


 

さらにマタドールは、テキサスのノイズロック・グループの最初の10年間に録音されたEPやその他の音源をリリースする予定だとも述べている。


リイシューのフィジカル盤のリリース日は現時点では発表されていませんが、これらのアルバムはすべてストリーミング・プロバイダーで視聴可能で、さらにMatadorはバンド初期のハイライトを集めたプレイリスト "The Butthole Surfers:1984-91 A Primer "を公開しました。


 

©Daniel Topete

ロサンゼルスのハードコアバンド、Militarie Gun(ミリタリー・ガン)がデビューアルバム「Life Under the Gun」から新曲「Will Logic」をドロップしました。以下よりチェックしてみてください。


「"ウィル・ロジック "は、誰かが自分を利用しようとしていることに気づき、それを許さないと決めた瞬間の純粋な辛さを表現した」とボーカルのイアン・シェルトンは声明で述べています。「メランコリーや疲労感もありますが、最終的には世界が信頼できるものであってほしいという願いが込められています」


ミリタリー・ガンの『ライフ・アンダー・ザ・ガン』は、6月23日にLoma Vistaからリリースされる。このアルバムには、以前にリリースされたトラック「Do It Faster」「Very High」が含まれています。

 

「Will Logic」

©︎John Jr.

フロリダのハードコアバンド、Gouge Awayが3年ぶりのニューシングル「Idealized」で帰ってきました。下記よりチェックしてみてください。


「この曲は、フロリダの倉庫で書いたんだ。この曲は、僕らが好きでいつも書きたかったことの集大成で、その時僕らが精神的にいた場所の雰囲気に合っている。”Idealized”は長らく日の目を見なかったけれど、この曲がとても気に入ったので、きちんと録音して世に出す必要を感じていた。この曲をライブで演奏したくてたまらなかったんだ」


「Idealized」は、Gouge Awayの2020年のシングル「Consider」に続く作品です。彼らのデビュー・アルバム『Burnt Sugar』は、2018年に発売された。

 

「Idealized」

 

©︎Daniel Topote

米国のパンクロックバンド、Militarie Gunがデビューアルバム『Life Under tge Gun』のリリースを発表しました。『Life Under the Gun』はLoma Vista Recordingsから6月23日に発売されます。

 

『All Roads Lead to the Gun EP』に続くアルバムには、初期のシングル「Do It Faster」と、新曲「Very High」が収録される。Mason Mercerが監督したミュージック・ビデオ、アルバムのジャケットとトラックリストは以下より。

 

バンドリーダーのイアン・シェルトンは、プレスリリースで「『Very High』は、日々の生活の恥ずかしさからできるだけ逃れたいという願望が中心になっている」と説明しています。

 

歌詞からビデオ、そしてアルバムのカバーアートに至るまで、「とても気分が落ち込んでいるから、とてもハイになる」という、誰も見ていないものと格闘していることが描かれています。


また、バンドは昨年10月に『All Roads Lead To The Gun』のデラックス・エディションをリリースしている。


「Very High」





Militarie Gun 『Life Under the Gun』
 


Label: Loma Vista
 
Release:2023/6/23
 
 
 
Tracklist:
 

1. Do It Faster

2. Very High

3. Will Logic

4. My Friends Are Having A Hard Time

5. Think Less

6. Return Policy

7. Seizure of Assets

8. Never Fucked Up Once

9. Big Disappointment

10. Sway Too

11. See You Around

12. Life Under The Gun


Pre-order:


https://i.militariegun.com/VeryHigh

 malegoat   『plan infiltration』(Reissue)

 

 

Label : Waterslide Records

Release: 2023/4/14



Review 


東京/八王子出身のエモーショナルハードコアバンド、Malegoat(メールゴート)は、2000年代より、西東京のパンクロックシーンにおいて力強い存在感を示して来た。八王子のライブハウス、Matchvoxと関わりが深く、The Well Wellsとともに、新宿周辺のパンクシーンとは一風異なる魅力的なミュージックシーンを作り上げてきた。



 

例えば、東東京のパンクシーンが都会的に洗練された雰囲気を持つメロディックパンクやポスト・ハードコアの音が優勢なのに対して、他方、西東京のパンクシーンは、ミッドウェストエモや、往年のパワーポップに触発された個性的で親しみやすいメロディックパンクバンドが数多く活動を行っている。

 

四人組エモ/ハードコアバンド、Malegoatの楽曲はそのすべてが英語で歌われ、そして疾走感のあるスピードチューン、ポストロック/マスロックに触発された変拍子の多い曲展開、プロミス・リングのようにヘタウマ(下手だけど上手い)のボーカルを特徴とする。

 

Malegoatは、以前から、米国のエモシーンとも関わりがあり、Algernon Cadawallderのライブツアーにも参加しているほか、Empire! Emprire!とのスプリットも発売している。もしかすると、米国のエモ/ハードコアのファンで、Malegoatを知っている人も少なくないのではないか。実際、Malegoatの音楽性は米国中西部のミッドウェスト・エモ/トゥインクル・エモの範疇にある。テクニカルで色彩的なギターのフレーズ、ラウドなスクリーモのボーカルの掛け合いは、まさしくAlgernon Cadwallderの兄弟分といえるかもしれない。



 

先週末、アートワークを一新し、バンド初のヴァイナル盤としてWaterslideから発売された『Plan Infiltration』は、デビューEPの再発とともに、複数の未発表曲が新たに収録されている。十年前、私はディスクユニオンで初盤のオリジナル盤を購入していますが、音質自体はそれほど初盤と変わらない印象である。とはいえ、この再発は単なる思い出づくりのために行われたわけではないだろう。現行のどのバンドとも似て非なるMalegoatの音楽性の印象は、より強められ、鮮明になったと言えるかもしれない。

 

リイシューアルバムでは、デビューEPにも収録された「Transparency」、そして、The Get Up Kids/Promise Ring/Algernon Cadawallderを合体させたドライブ感のあるエモ・ソング「Resistance Activity of Brain」、ポスト・ロックのような変拍子に近いテクニカルな構成力とひねりが効いたコード進行、そして、分厚いベースラインが特徴である「Entire」、さらに、近年のリバイバル・エモバンドとも近似性を見出せる「Cogwheel」を中心として、疾走感のあるポストハードコアサウンドが際立っている。また、その一方で、Don Caballero/American Footballに近いミニマルなギターロックサウンドの真骨頂を「Osmosis」に見出すことも出来るはずである。




 

この度、デビューEPに未発表トラックを加えて再発された『plain Infiltration』は、現代の米国のエモバンドのサウンドに比べても遜色ないどころか、音の完成度と勢いに関しては現地のバンドよりも上回る部分もあるかもしれない。ライブ・バンドとして、着実に東京のベースメントシーンでファンベースを広げ、その知名度を上げてきたMalegoatの真骨頂を味わうにはこれ以上はない一枚。また、”日本のパンクロック/ハードコアの決定盤”としても是非おすすめしておきたい。現在、Waterslide Recordsの公式ショップのほか、ディスクユニオンでも購入可能。 

 

82/100



 

Origami Angel


ワシントンDCのエモコア・デュオ、Origami Angelは、ニューシングル「Thank You, New Jersey」をリリースしました。同時にBob Sweeneyが監督したビデオを公開。オリガミ・エンジェルはデュオの構成ではありながら、ライブのパワフルさに定評があり、今最もホットなパンクデュオの一つ。

 

昨年に続いて発表されたこのニューシングルは、来週から始まるライブフェス、ピンクシフト、スウィートピルのUSヘッドライナー・ツアーに先駆けて公開された。この曲は下記よりご覧いただけます。


Origami Angelは昨年、2作のEP、『re: turn』『Depart』をサプライズ・リリースしています。

 

「Thank You,New Jersey」

 

©Alice Baxleymain


サンタクルーズを拠点に置くハードコアバンド、Scowlが、近日発売予定の『Psychic Dance Routine』 EPから最新シングルをドロップした。スカウルは、日本のDJ/ピーター・バラカン氏も推薦のバンド。女性ボーカルのハードコアバンドとしてZULUとともに頭角を現しつつある。

 

ニューシングルは「Shot Down」と呼ばれ、先日公開された「Opening Night」に続く作品。以下よりチェックしてみて下さい。


「この曲は、自分の恐れや弱さを隠すことと、その恐れについて必死に打ち明けることの間の戦いを表現することになっています」と、バンドのKat Moss(キャット・モス)はプレスリリースで説明しています。

 

「自分の中の恐怖の部分に対して嫌悪と怒りを表現している。"Hate you right now "は自分自身に向けられたものだ。感動したい、印象的な音-自分の作品に自信を持ちたいと懇願している。この曲は、バブルガムのフックでその内なる恐怖をこっそりと隠しているが、すぐに速いギターと厳しいボーカルで腹を殴られるような気がするんだ」


Scowlの『The Psychic Dance Routine』 EPは4月7日にFlatspot Recordsからリリースされる。


「Shot Down」

 


BLACK FLAGのような80年代のハードコア・パンクとPIXIESら90年代のオルタナティブ・ロックやグランジの影響を反映させた独自のポストパンク/ハードコアバンド、Drug Churchがニューシングル「Myopic」で戻ってきました。ミュージック・ビデオは以下からご覧下さい。


Drug Churchは昨年、最新アルバム『Hygiene』を発表しています。本日、Prince Daddy and the Hyena、Anxious、Webbed Wingのサポートを得て、USヘッドライン・ツアーに出発します。


「Myopic」

 

©Libby Zanders


MSPAINTが新曲「Titan of Hope」をドロップした。この曲は、デビュー・アルバム『Post-American』からの最新シングルです。「Titan of Hope」のビデオは、以下からご覧ください。


『Post-American』は、Convulse Recordsから3/10にリリースされる予定です。アルバムは、Militarie GunのIan SheltonとエンジニアのTaylor Youngが共同プロデュースしてます。先行予約はこちら


 

Envy


ジャパニーズ・ハードコアバンドの代表格、Envyが新作EP『seimei』の発売を記念して、今年4月に東名阪のワンマンツアーの開催を発表した。オフィシャル先行予約は、1月31日 17:00からチケットぴあで開始されている。Envyの4月のライブスケジュールは下記よりご確認下さい。

 

Envyは、1995年に神奈川で結成された。Gauzeの名物企画「消毒Gig」を始めとする東京のアンダーグランド・シーンと深いかかわりをもち、2000年代には、ニュースクール・ハードコアの代表的な存在と目されるようになった。


2001年には『君の靴と未来』、2003年には『A Dead Sinking Story』といった伝説的なハードコア・パンクの金字塔を打ち立ててみせた。その後も、ポスト・ロック的な方向転換を図った『Insomniac Doze』、東日本大震災に触発されて制作された『Recitation』をリリースしている。

 

以後、ENVYは国外に活躍の幅を広げ、フランスで開催される世界最大級のメタル・フェス、Hellfestにも出演し、さらにスコットランドのポスト・ロックバンド、Mogwaiの『My Beast』でフロントマンの深川哲也がボーカルとしてゲスト参加するなど、世界的なロックバンドとの関わりを持つ。2016年、最初期からのメンバーであった深川が脱退するも数年後に復帰。Temporary Residenceからリリースされた最新EP『seimei』では、Envyらしいヘヴィー・ロックの路線に回帰している。 

 

 



・2023/4/18 (Tue) LIQUIDROOM 
(東京)


OPEN 18:30 START 19:30
スタンディング 前売り:¥4,000



ドリンク代別 


お問い合わせ 
SMASH 03-3444-6751 



・2023/4/20 (Thu) LIVEHOUSE ANIMA(大阪)

 

 
OPEN 19:00 START 19:30
スタンディング

前売り:¥4,000



ドリンク代別 


お問い合わせ
 SMASH WEST 06-6535-5569  

 


・2023/4/22 (Sat)  池下 CLUB UPSET (名古屋)

 


OPEN 18:00 START 18:30
スタンディング

 

前売り:¥4,000



ドリンク代別 


お問い合わせ 
CLUB UPSET 052-763-5439 



ライブスケジュール、チケットの詳細:

 

https://smash-jpn.com/live/?id=3873 

 

 Fucked Up 『One Day』

 

 


Label: Merge Records

Release :2023/1/28



Review 

 

2001年にカナダ/トロントで結成され、USインディー・ロックの総本山”Matador”,Promise Ringを輩出したエモ・コアの名門レーベル”Jade Tree”を渡り歩いてきたFucked Upの通算5作目となるフル・アルバム『One Day』は、近年のパンクシーンにあって鮮烈な印象を放つ傑作となっている。今作のリスニングは多くのコアなパンクファンの熱狂性を呼び覚ます機会を与えるはずだ。

 

「One Day」と銘打たれた5thアルバムは、文字通り、一日で録音されたコンセプト・アルバムとなる。ただ、バンドの一発取りではなく、トラックごとに分けられて、八時間ごとの三つのセクションに分割してレコーディングが行われ、2019年と2020年の二回にわたって制作された作品であるが、それらの個別のトラックは正真正銘、「一日」で録音されたものだという。これはポスト・ハードコアバンドとして20年以上の長いキャリアを積むバンドの一つの高い山へのタフな挑戦ともなった。

 

Fucked Upは、プロフィールとしてポスト・ハードコアという形で紹介される場合が多いが、その内実はエモーショナル・ハードコア・バンドに近い音楽性を擁している。それは近年あまり見られなくなった形ではあるが、彼らの哀愁に充ちたハードコア・サウンドはどちらかといえば、メロディック・ハードコア・バンド、Hot Water Musicに近いものである。ボーカルについてはニュースクール・ハードコアの範疇にあり、かなりゴツさのあるメタリックなデス・ヴォイスが展開されている。これらは旧来のボストンのハードコアバンド、Negative FX、またはデトロイトのNegative Approachに匹敵する無骨な雰囲気に満ちている。その反面、この屈強なメイン・ボーカルに対するコーラスワークは明らかにエモに近い質感が込められており、サウンドのバランスが絶妙に保たれている。そして曲の全般においてシンガロング性が強いという側面、また、ライブサンドに重点を置くサウンドという側面では、マサチューセッツのDropkick Murphysのように力強く痛快なサウンドの特徴も併せ持つ。今作で繰り広げられるパンクロックサウンドはパワフルであるだけでなく、爽快な雰囲気が漂い、さらに繊細性をも兼ね備えているのだ。

 

「一日」というシンプルなタイトルには、バンドがファンに伝えておきたい趣旨がすべて集約されている。


パンク・ロックに長い時間はいらず、ただ、言いたいことの核心を叩きつければよく、余計な言葉や音を徹底的に削ぎ落とした表現がパンクの核心と言える。しかし、このアルバムは必ずしも勢いに任せたハードコア・サウンドとはいえない。実際の収録曲は綿密に作り込まれている。レコーディング以前からスタジオで演奏を通じて曲の原型となるアイディアを練り上げて行った感もある。つまり、これらの曲の制作に費やした時間は1日ではあるが、その中には気の遠くなるような時間が内包されている。そして、20年のキャリアを誇るバンドとしての豊富な経験に裏打ちされた信頼感と聞き応えのある名曲がレコードには数多く収録されているのである。

 

近年では、アメリカには、Turnstile等の勢いのあるハードコアバンドが数多く登場し、これらはNew York Timesの記事でも紹介されていた。そこには、ハードコアは、ニューヨークの文化でもあると記されていた覚えもある。そして、カナダのファックト・アップもまた、米国の現代的なハードコア・サウンドに良い刺激を受けつつ、上記のHot Water Musicのような往年のメロディック・ハードコアやエモーショナル・ハードコアの良い影響を受け、それらをシンプルでキャッチーな楽曲として提示している。Fucked Upのパワフルな音楽性は、大衆にわかりやすいように作り込まれており、拳を突き上げ、共にシンガロングせずにはいられないアジテーションが内包されている。そして、何より、アルバムの収録曲は聴いていると、不思議と元気が漲り、気分が明るくなってくる。もう、それでパンクロックソングとしては百点満点といえるのではないか。

 

このレコードの中には、パンク・ソングとして傑出した曲が複数収録されている。#4「Lords Of Kensington」は、新時代のメロディック・パンクの名曲であり、ここには近年のハードコアバンドが実際の音楽を生み出す上で見過ごしてきたエモーションと哀愁が曲全体に押し出されている。もちろん、線の太い迫力満点のボーカルと、それと相対する清涼感のあるコーラスワーク、ポップパンクのキャッチーなメロディー、いかにもこのバンドらしいキャラクター性に彩られた激情ハードコアサウンドは一連のイギリスを題材とするコンセプトアルバムとして緊密に紡がれていくのである。

 

他にも続く、#5「Broken Little Boys」では、Dropkick MurphysやSocial Distortionのようなロックンロール/ロカビリーサウンドを反映させながら現代的なパンク・ロックアンセムを生み出している。#7「Failing  Right Under」も、エバーグリーンな雰囲気を持った硬派なニュースクール・ハードコアとして聞き逃せない。さらにアルバム発売直前にリリースされた#9「Cicada」はひときわ強い異彩を放っている。他のメンバーがメインボーカルをとり、Hüsker Dü/Sugar(Bob Mould)を彷彿とさせる哀愁溢れるメロディック・パンクを聴かせてくれる。


近年、さらに細分化しつつあるハードコア・パンク界隈ではあるが、『One Day』を聴いて分かる通り、本来、パンクロックに複雑性はそれほど必要ではないように思える。それは、複雑化して難解になったプログレッシブ・ロックやハード・ロックのアンチテーゼとして、音楽に詳しくない人でも親しめるものとして、この音楽ジャンルは70年代に登場した経緯があるからである。


現在、あらためて多くのファンから望まれるのは、パンクロックの原点にある痛快さ、明快さなのだろう。Fucked Upは、頼もしいことに、そのパンクの本義を『One Day』で見事に呼び覚ましてくれた。意外にも、現代のパンクとして多くのファンの心の掴む鍵は、時代を経るごとに細分化されていったマニア性にあるのではなく、パンク・ロックの簡素な音楽性に求められるのか。まだ、2023年始めなので、断定づけるのはあまりに性急のように思えるが、『One Day』は今年度のパンクロックの最高傑作となる可能性がきわめて高い。

  

100/100(Masterpiece)

 

 


カナダのポスト・ハードコアバンド、Fucked Upが、今週金曜日に発売されるニューアルバム『One Day』の最終シングル「Cicada」を公開しました。

 

是非、ニューシングル「Cicada」を発売前に改めてチェックしてみてください。ギタリストのMike Haliechukがリード・ヴォーカルをとるこの曲は、Colin Medleyが監督したビデオ付きでリリースされました。今回のシングルについて、バンドはプレスリリースを通して次のように説明しています。


"Cicada "は、人を失った後の人生とはどんなものか、そして彼らが教えてくれたことを光として、未来に引き継ぐ私たちの責任についての曲です。

 

蝉の鳴き声を、私たちのサブカルチャーにおける奇妙な生活のメタファーとして想像するのが好きだ。私たちは皆、土の中で奇妙な小さな隠れ生活を送り、ある世代に一度、私たちの誰かが土から飛び出して、全体に聞こえるほど大きな声で歌を詠む。


『One Day』は、Superchunkのマック・マコーン氏が主催するMergeから1月27日に発売されます。既発のシングル「I Think I Might Be Weird」「Found」タイトル曲が収録されています。ニューアルバムの先行予約はこちら


「Cicada」

 

American Nightmare

ボストンのニュースクール・ハードコア・クルー、American Naightmara(アメリカン・ナイトメア)がニューEPを発表した。

 

『Dedicated To The Next World』は、2020年の『Life Support EP』以来となるバンドの新曲で、初の10インチ・ヴァイナルは6月2日に”Heartworm Press”からリリースされる予定だ。

 

ボストンのMystic Valley Recording StudioでドラマーのAlex Garcia-Riveraがテープにライブ録音したこの4曲は、ブリスター・パンクの鋭い衝撃となること間違いなし。新曲「Self Check-Out」の試聴は以下から。

 





American Nightmare 『Dedicated To The Next World』EP

 

 

 
 
Label: Heartworm Press
 
Release: 2023年6月2日 


Tracklist:


1. How I Got Away

2. Self Check-Out

3. Real Love

4. Praying Hands On Fire

 

©︎Spencer Chamberlain

米国のニュースクール・ハードコアバンド、One Step Closerが、Run for CoverよりEP「Songs for the Willow」をサプライズ・リリースしました。

 

デビュー・アルバム『This Place You Know』を手がけたEric Chesek、Drug Church、Koyo、さらに、Soul Blindのアルバムに参加しているJon Marksonが再び参加した3曲入りのこのプロジェクトは、先に先行シングルとして公開されている「Dark Blue」が収録されている。EPのストリーミングは以下から。